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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】皮膚酸化ダメージの評価方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/35 20060101AFI20241004BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20241004BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20241004BHJP
   G01N 21/33 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
A61K8/35
A61Q17/04
G01N33/50 Q
G01N21/33
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020166683
(22)【出願日】2020-10-01
(65)【公開番号】P2022059138
(43)【公開日】2022-04-13
【審査請求日】2023-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】391056701
【氏名又は名称】池田物産株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】599125249
【氏名又は名称】学校法人武庫川学院
(74)【代理人】
【識別番号】100076071
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 恵治
(72)【発明者】
【氏名】山内 尚
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 信子
(72)【発明者】
【氏名】新井 泰裕
(72)【発明者】
【氏名】平尾 哲二
【審査官】井上 莉子
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-010505(JP,A)
【文献】特開2003-342159(JP,A)
【文献】特開平01-135887(JP,A)
【文献】米国特許第05415875(US,A)
【文献】特開2008-255067(JP,A)
【文献】特開平05-060686(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61Q
G01N
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
評価試料を紫外線照射光路の中に含まれるよう介在させて皮脂成分に紫外線を照射し、照射後の皮脂成分の紫外線吸収スペクトルを測定して、その吸光度に対応する過酸化物価を指標とすることを特徴とする皮膚酸化ダメージの評価方法。
【請求項2】
(A)皮脂成分を容器に用意する工程
(B)評価試料を紫外線照射光路内に含まれるよう介在させる工程
(C)皮脂成分に紫外線を照射する工程
(D)紫外線照射後の皮脂成分の紫外線吸収スペクトルを測定する工程
(E)紫外線吸収スペクトルの吸光度と過酸化物価との相関関係図を用いて、皮脂成分の吸光度から内挿して過酸化物価を知る工程
(F)過酸化物価を指標として評価試料の角層の酸化ダメージに対する作用を評価する工程。
を含んでなる請求項1に記載の皮膚酸化ダメージの評価方法。
【請求項3】
皮脂成分がスクワレンである請求項1又は2に記載の皮膚酸化ダメージの評価方法。
【請求項4】
工程(B)において、評価試料を単独で介在させる請求項1~3のいずれかに記載の皮膚酸化ダメージの評価方法。
【請求項5】
工程(B)において、評価試料を他の原料成分を用いて溶解、乳化、分散等の均一混合状態として介在させる請求項1~3のいずれかに記載の皮膚酸化ダメージの評価方法。
【請求項6】
工程(B)において、評価試料を直接皮脂成分に混入することにより介在させる請求項1~5のいずれかに記載の皮膚酸化ダメージの評価方法。
【請求項7】
工程(B)において、評価試料を紫外線照射に影響しないプレートに塗布して、紫外線照射の光路の中に設置することにより、間接的に介在させる請求項1~5のいずれかに記載の皮膚酸化ダメージの評価方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は皮膚の酸化ダメージを評価する方法に関する。より具体的には、本発明は皮脂成分の過酸化物価を知って皮膚の酸化ダメージを評価する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚は、外界との境界に位置するために、様々な外的刺激に晒される。中でも太陽光に含まれる紫外線の照射により発生する活性酸素が関与する酸化ダメージは大きく、その影響は皮膚表面の皮脂、角層を含む表皮、さらには真皮にまで多岐に及び、様々な皮膚トラブルをもたらす。特に、角層は皮膚最外層に位置しバリア機能と保水機能を担う重要な組織であるが、酸化ダメージによりタンパクの変性が生じるとそれらの機能が失われることになるばかりか、外観の美しさも損なわれる。一方、皮脂は皮脂腺で生成され毛穴から皮膚表面に分泌される。この皮脂は、トリグリセリド、ワックスエステル、脂肪酸、スクワレンなどを主要成分とし皮膚を保護するが、スクワレンなどの不飽和脂質は酸化を受けやすく、紫外線による酸化ダメージの標的となることが知られている。
【0003】
角層酸化ダメージであるタンパクの変性は、主に、角層タンパクが皮脂の存在下で紫外線に照射されることにより、下記の反応ステップで進行する。
1)皮脂成分、特にスクワレンが紫外線照射を受け、過酸化脂質を生成する。
2)過酸化脂質からアルデヒド類が生成する。
3)アルデヒド類が角層のケラチンタンパクに作用してカルボニル化タンパク生成などのタンパク変性が進行する。
このタンパクの変性を抑制することが皮膚の酸化ダメージを抑制することになり、皮膚延いては身体を健常に保つために、この重要性が最近広く認識されるようになった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】岩井一郎、桑原智祐、平尾哲二:角層タンパク質のカルボニル化による肌透明感の低下日本化粧品技術者会誌 第42巻第1号(2008)16-21頁
【文献】河野善行、高橋元次 皮膚における過酸化反応とその制御 油化学 第44巻第4号 (1995) 248-255頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
タンパク変性を検討する際、例えば、カルボニル化タンパクの測定を効率よく、そして精度よく行うことが求められる。その評価方法には、Anti-DNP Antibody法、Western blotting techniqueなどの方法があるが、最近は Simple and non-invasive method といわれる蛍光ヒドラジド染色を用いる方法がよく使用されている。
【0006】
しかしながら、タンパク変性の測定に使われているこれら従来の方法は、角層サンプルの採取を含めて操作が煩雑である、測定に時間がかかる、条件により再現性に難があるなどの課題があった。以上のような状況から、タンパク変性を効率よく、そして精度よく測定して、皮膚の酸化ダメージを評価する方法が強く求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記のような状況下でなされたものであり、タンパク変性が進行する前段階である過酸化脂質の生成に注目したものである。即ち、紫外線照射後の皮脂成分の吸収スペクトルの吸光度と過酸化物価とが相関関係にあることを発見して、過酸化物価を指標とすれば皮膚の酸化ダメージを評価することができることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明の請求項1に示すものは、評価試料を紫外線照射光路の中に含まれるよう介在させて皮脂成分に紫外線を照射し、照射後の皮脂成分の紫外線吸収スペクトルを測定して、その吸光度に対応する過酸化物価を指標とすることを特徴とする皮膚酸化ダメージの評価方法である。
【0009】
本発明の請求項2に示すものは、
(A)皮脂成分を容器に用意する工程
(B)評価試料を紫外線照射光路内に含まれるよう介在させる工程
(C)皮脂成分に紫外線を照射する工程
(D)紫外線照射後の皮脂成分の紫外線吸収スペクトルを測定する工程
(E)紫外線吸収スペクトルの吸光度と過酸化物価との相関関係図を用いて、皮脂成分の吸光度から内挿して過酸化物価を知る工程
(F)過酸化物価を指標として評価試料の角層の酸化ダメージに対する作用を評価する工程。
を含んでなる請求項1に記載の皮膚酸化ダメージの評価方法である。
【0010】
本発明の請求項3に示すものは、皮脂成分がスクワレンである請求項1又は2に記載の皮膚酸化ダメージの評価方法である。
【0011】
本発明の請求項4に示すものは、工程(B)において、評価試料を単独で介在させる請求項1~3のいずれかに記載の皮膚酸化ダメージの評価方法である。
【0012】
本発明の請求項5に示すものは、工程(B)において、評価試料を他の原料成分を用いて溶解、乳化、分散等の均一混合状態として介在させる請求項1~3のいずれかに記載の皮膚酸化ダメージの評価方法である。
【0013】
本発明の請求項6に示すものは、工程(B)において、評価試料を直接皮脂成分に混入することにより介在させる請求項1~5のいずれかに記載の皮膚酸化ダメージの評価方法である。
【0014】
本発明の請求項7に示すものは、工程(B)において、評価試料を紫外線照射に影響しないプレートに塗布して、紫外線照射の光路の中に設置することにより、間接的に介在させる請求項1~5のいずれかに記載の皮膚酸化ダメージの評価方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の評価方法を用いることにより、従来法と異なり、単に皮脂成分の紫外線吸収スペクトルを測定するだけで、タンパク変性の程度を格段に簡便に知ることができる。例えば、種々の化粧品原料、紫外線防御剤、或いはそれらを含有したサンスクリーン剤処方のカルボニル化タンパク生成の抑制効果を容易に推定することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は紫外線照射後のスクワレンの波長276nmにおける吸光度と過酸化物価の関係を示す図である。
【0017】
図2図2は実施例1に於ける紫外線照射後のスクワレンの紫外線吸収スペクトル図である。
【0018】
図3図3は実施例1に於ける紫外線照射量とカルボニル化タンパク量との関係を示す図である。
【0019】
図4図4は実施例2に於ける紫外線照射後のスクワレンの紫外線吸収スペクトル図である。
【0020】
図5図5は実施例2に於ける紫外線吸収剤の種類とカルボニル化タンパク量との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明について詳述する。皮膚の酸化ダメージの主な要因のひとつが角層ケラチンのタンパク変性であること、その変性が主に紫外線照射によって惹起されること、この時、その初期の過程で皮脂成分の過酸化反応が重要な役割を果たすこと、その結果生成した過酸化脂質、そしてアルデヒド類により、タンパクの酸化反応が進行し、最終的に皮膚の酸化ダメージとなることが知られている。
【0022】
本発明は、上記一連の反応の中で重要な役割を果たす皮脂の過酸化反応に注目したものである。即ち、その生成物である過酸化脂質の生成量を過酸化物価として測定して、この値を指標として、タンパク変性の変化から、皮膚の酸化ダメージを評価する方法である。
【0023】
皮脂の過酸化脂質と皮膚の酸化ダメージとの関係については、既に多くの知見があり、例えば、非特許文献1、2に詳しい。非特許文献1では、皮脂の過酸化生成物に由来するアクロレインが角層のタンパクをカルボニル化して透明性を損なうこと、非特許文献2では、スクワレンから、その過酸化物であるスクワレンモノヒドロペルオキシドへ転換する比率がアトピー性皮膚疾患者は、健常人に比べて有意に高いことが報告されている。
【0024】
ここで、過酸化脂質の生成量は過酸化物価として定量できることはよく知られているが、その測定は従来の煩雑な測定法、例えば基準油脂分析試験法にある酢酸-イソオクタン法に頼らざるを得なかった。
【0025】
本発明は、紫外線照射後の皮脂成分の過酸化物価が紫外線吸収スペクトルの吸光度と相関関係にあるということを発見したことにより、面倒な過酸化物価の測定をせずに、吸光度から過酸化物価が知れることを見出し、完成に至ったのである。
【0026】
そこで、本発明の評価方法においては、紫外線照射後の皮脂成分の紫外線吸収スペクトルの吸光度と過酸化物価との関係図を予め作成しておくことが重要である。本発明では、下記のようにしてその相関関係図を得た。
【0027】
1)内径Φ41mmのシャーレにスクワレンを10g量り取った。
2)ポリメチルメタクリレートプレートの表面に、紫外線吸収剤のエチルヘキサン酸セチル10%溶液を1.3 mg/cm2になるよう塗布した。
3)紫外線光源はソーラーシミュレーター MAX-350(朝日分光株式会社製)を使用し、モジュールとカットフィルターで300~385 nmの波長に調節した。
4)ソーラーシミュレーターの光路内に2)のプレートを設置して室温下で1)のスクワレンに紫外線を照射した。
5)紫外線の照射後、スクワレンを採取し、紫外線吸収スペクトルと過酸化物価を測定した。
6)紫外線吸収スペクトルはシャーレからスクワレンを採取し、5%濃度のエタノール溶液を調製して、ダブルビーム分光光度計 UH5300 (日立ハイテクサイエンス製)を使用し、波長 250-400 nmで測定した。
7)過酸化物価はシャーレからスクワレンを採取し、日本油化学会制定の基準油脂分析試験法の酢酸-イソオクタン法で測定した。
8)得られた紫外線吸収スペクトルから、波長276nmに於ける吸光度と、過酸化物価をプロットして図1を得た。
【0028】
得られた相関関係図を図1に示す。図1では、吸光度と過酸化物価との間に負の強い相関関係(r=-0.83)が認められた。
【0029】
本発明の評価方法において、評価可能な試料は、紫外線が関与する皮膚ダメージに関わる物質であれば全て対象になる。特に化粧品原料の紫外線防御剤、酸化防止剤、或いはそれらを含有した処方組成物等の評価に有効である。
【0030】
本発明の評価方法において、使用する皮脂成分は、実際に皮膚の角層で起きている皮脂の酸化反応を再現できるように、紫外線照射により過酸化脂質が定量的に生成されるものが好ましい。このような意味で、スクワレン、オレイン酸、パルミトオレイン酸が挙げられ、実際にカルボニル化タンパク生成に最も強く関与しているとされるスクワレンが特に好ましい。
【0031】
本発明の評価方法においては、評価試料を紫外線照射の光路内に介在させる手段は特に制限されない。評価試料は単独でも勿論良いが、例えば粉体状試料の場合、他の原料成分、例えば、溶媒、或いは界面活性剤等を用いて溶液、乳化、分散等の混合状態にしても良い。この時、皮脂成分と共存する条件下で均一な状態にすることが重要である。これらの中で、エチルヘキサン酸セチル、シクロペンタンシロキサン、スクワランなど紫外線領域に吸収を極力持たない溶媒を用いて溶解して、均一溶液として間接的に紫外線照射光路内に介在させる手段が簡便で好ましい。
【0032】
本発明の評価方法においては、上記の評価試料を紫外線照射の光路内に介在させる時、皮脂成分に直接混入しても、或いは間接的に介在させてもよい。間接的に介在させるには例えば、紫外線照射に影響しない、例えば石英プレート、ポリメチルメタクリレートプレートに塗布して、紫外線照射の光路内に設置すればよい。上記の手段の中で、溶媒により一定濃度にした試料の溶液を、ポリメチルメタクリレートプレートに塗布して、紫外線照射の光路内に設置する手段が簡便で好ましい。
【0033】
本発明の評価方法において使用する紫外線は、太陽の紫外線に近似させたものであって、照射条件を一定に保つために、波長、照射強度、照射時間を一定にすることが重要であり、通常用いられるモジュールとカットフィルターで調節される。
【0034】
本発明の評価方法においては、紫外線照射後の皮脂成分の紫外線吸収スペクトルを測定するが、それは分光光度計を用いて通常の測定方法によって為される。
【0035】
本発明の評価方法においては、測定した紫外線吸収スペクトルの波長276nmに於ける吸光度から図1の相関関係図を使用して、対応する過酸化物価を得る。
【0036】
過酸化物価と種々のタンパク変性との関係はすでに多く知られているので、本発明の評価方法においては、上記のようにして得た過酸化物価から直接、評価試料の皮膚酸化ダメージを評価することが出来るのである。
【実施例
【0037】
次に本発明について、実施例を挙げて更に具体的に説明する。
実施例1
紫外線吸収剤t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン(以下、BMDBMと略記)のカルボニル化タンパク抑制効果において、紫外線照射量が及ぼす影響を皮膚酸化ダメージの観点から評価した。
1.内径Φ41mmのシャーレにスクワレンを10g量り取った。
2.ポリメチルメタクリレートプレートの表面に、BMDBMのエチルヘキサン酸セチル10%溶液を1.3 mg/cm2になるよう塗布した。
3.紫外線光源はソーラーシミュレーター MAX-350(朝日分光株式会社製)を使用し、モジュールとカットフィルターで300~385 nmの波長に調節した。
4.ソーラーシュミレーターの光路内に2.のプレートを設置して室温下で照射量30J/cm2の紫外線を照射した。
5.シャーレから紫外線の照射後のスクワレンを採取し、5%濃度のエタノール溶液を調製した。
6.この溶液をダブルビーム分光光度計 UH5300 (日立ハイテクサイエンス製)を使用し、波長 250-400 nmで紫外線吸収スペクトルを測定した。
7.得られた紫外線吸収スペクトルを図2に示す。図2から波長276 nmにおける吸光度の値が「0.87」であることを知った。
8.図1の相関図を使用して、吸光度「0.87」から内挿して過酸化物価「16.6」を知った。
9.同様の工程で照射量120J/cm2の紫外線を照射した時の吸光度が「0.65」であり、対応する過酸化物価が「53.9」であることを知った。
10.参考までに、テープストリッピング法で採取した角層に、上記工程と同一条件で紫外線を照射した時のカルボニル化タンパク量の生成量を図3に示す。
【0038】
実施例1に於ける、本発明の皮膚酸化ダメージの評価方法により知った吸光度と過酸化物価、そして対応するカルボニル化タンパク量の参考値を表1に示す。
【0039】
【表1】
【0040】
紫外線吸収剤BMDBMのタンパク変性抑制効果を評価しようとした時、表1より、紫外線照射量が30J/cm2から120J/cm2に増大するに従い、過酸化物価が増大したことにより、タンパク変性が進むことが推定できた。そして、このことは、参考として測定した角層のカルボニル化タンパク量が増大している(図3)ことから確認でき、本発明の評価方法が有用であることが判る。
【0041】
実施例2
UVA紫外線吸収剤であるBMDBMを単独使用する場合と、UVB紫外線吸収剤であるオクトクリレン(以下、OCRと略記)を加えた組み合わせ使用する場合とで、皮膚酸化ダメージがどのように異なるか評価した。
1.内径Φ41mmのシャーレにスクワレンを10g量り取った。
2.ポリメチルメタクリレートプレートの表面に、BMDBMのエチルヘキサン酸セチル10%溶液を1.3 mg/cm2になるよう塗布した。
3.紫外線光源はソーラーシミュレーター MAX-350(朝日分光株式会社製)を使用し、モジュールとカットフィルターで300~385 nmの波長に調節した。
4.ソーラーシミュレーターの光路内に2.のプレートを設置して室温下で照射量120J/cm2の紫外線を照射した。
5.シャーレから紫外線の照射後のスクワレンを採取し、5%濃度のエタノール溶液を調製した。
6.この溶液をダブルビーム分光光度計 UH5300 (日立ハイテクサイエンス製)を使用し、波長 250-400 nmで紫外線吸収スペクトルを測定した。
7.得られた紫外線吸収スペクトルを図4に示す。図4から波長276 nmにおけるBMDBMを単独使用の場合の吸光度の値が「0.65」であることを知った。
8.図1の相関図を使用して、吸光度「0.65」から内挿して過酸化物価「53.9」を知った。
9.工程2.におけるBMDBMのエチルヘキサン酸セチル10%溶液に替えて、BMDBMのエチルヘキサン酸セチル10%溶液とOCRのエチルヘキサン酸セチル10%溶液の混合液を1.3 mg/cm2になるよう塗布した。
10.得られた紫外線吸収スペクトルを図4に示す。図4から波長276 nmにおける、OCRを加えた組み合わせ使用の場合の吸光度の値が「0.90」であることを知った。
11.図1の相関図を使用して、吸光度「0.90」から内挿して過酸化物価「11.5」を知った。
12.参考までに、テープストリッピング法で採取した角層に、上記工程と同一条件で紫外線を照射した時のカルボニル化タンパク量の生成量を図5に示す。
【0042】
実施例2に於ける、本発明の皮膚酸化ダメージの評価方法により知った吸光度と過酸化物価、そして対応するカルボニル化タンパク量の参考値を、紫外線吸収剤無しの場合も含めて表2に示す。
【0043】
【表2】
【0044】
BMDBMとOCRとを組み合わせて使用した場合、BMDBMの単独使用の場合に比べて、過酸化物価が減少したことにより、タンパク変性が抑制されることが推定できた。そして、このことは、参考として測定した角層のカルボニル化タンパク量が減少している(図5)ことから確認でき、本発明の評価方法が有用であることが判る。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、化粧品、医薬部外品、医薬品の試験、検査、研究、製造、販売の場で広く利用することができる。


図1
図2
図3
図4
図5