(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】遮光ユニットおよびそれを備えるレンズ鏡筒
(51)【国際特許分類】
G03B 9/02 20210101AFI20241004BHJP
【FI】
G03B9/02 Z
(21)【出願番号】P 2024002809
(22)【出願日】2024-01-11
【審査請求日】2024-03-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100183265
【氏名又は名称】中谷 剣一
(72)【発明者】
【氏名】鮎川 修平
【審査官】藏田 敦之
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-091770(JP,A)
【文献】特開2009-175258(JP,A)
【文献】実開昭64-047080(JP,U)
【文献】特開平02-201992(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 9/00 - 9/70
G03B 11/00 -11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の絞り羽根と、
回転して前記複数の絞り羽根を駆動する駆動リングと、
前記駆動リングの回転角度を検出するためのセンサと、
前記センサを備えるフレキシブルプリント基板と、
前記駆動リングを回転可能に支持し、前記フレキシブルプリント基板が載置される載置面およびめねじ穴を備えるベース部材と、
前記めねじ穴と係合し、前記センサが設けられた前記フレキシブルプリント基板の第1の部分を前記ベース部材の前記載置面に対して固定する固定ねじと、
前記固定ねじの頭部と前記フレキシブルプリント基板の前記第1の部分との間に介在するシート部材とを有し、
前記ベース部材が、前記シート部材の回転を制限する係止部を備える、遮光ユニット。
【請求項2】
前記シート部材が、前記フレキシブルプリント基板における前記第1の部分と異なる第2の部分であって、
前記第1の部分に前記第2の部分が重なるように、前記フレキシブルプリント基板が折り曲げられている、請求項1に記載の遮光ユニット。
【請求項3】
前記フレキシブルプリント基板における前記第1の部分および前記第2の部分それぞれに、前記固定ねじが通過する第1および第2の貫通穴が設けられている、請求項2に記載の遮光ユニット。
【請求項4】
前記第1の貫通穴が、前記第2の貫通穴に比べて大き
く、
前記ベース部材と前記第1の部分とが当接しており、
前記第2の部分に対して前記固定ねじの前記頭部が当接している、請求項3に記載の遮光ユニット。
【請求項5】
前記ベース部材が、前記係止部として係止ピンを備え、
前記フレキシブルプリント基板における前記第2の部分に、前記係止ピンが通過する係止穴が設けられている、請求項2に記載の遮光ユニット。
【請求項6】
前記ベース部材が、前記載置面に前記センサが収容される凹部を備え、
前記フレキシブルプリント基板の前記第2の部分の一部分が、前記載置面に対して直交する方向視で、前記センサの少なくとも一部分にオーバーラップする、請求項2に記載の遮光ユニット。
【請求項7】
前記載置面に対して直交する方向視で前記めねじ穴を挟んで前記センサに対向しつつ前記固定ねじの頭部の一部分に対してオーバーラップする凸部が、前記ベース部材に形成されている、請求項6に記載の遮光ユニット。
【請求項8】
前記ベース部材に設けられ、前記駆動リングを回転させるモータを、さらに有し、
前記フレキシブルプリント基板が、前記モータに接続されている、請求項1に記載の遮光ユニット。
【請求項9】
少なくとも1つのレンズと、
請求項1から8のいずれか一項に記載の遮光ユニットと、を有する、レンズ鏡筒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レンズ鏡筒を通過する光量を調節するための遮光ユニットおよびそれを備えるレンズ鏡筒に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数の絞り羽根を駆動する駆動リングの回転角度を検出するためのホール素子(センサ)を備えるカメラ用絞り装置(遮光ユニット)が開示されている。ホール素子は、駆動リングに接着された磁石を検出する。また、ホール素子はフレキシブルプリント基板に設けられている。駆動リングを回転可能に支持するベース部材に対してフレキシブルプリント基板が固定ねじを介して固定されることにより、駆動リングの磁石に対してホール素子が適切に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された遮光ユニットの場合、フレキシブルプリント基板の取り付け時における固定ねじの頭部の回転により、固定ねじの頭部と接触するフレキシブルプリント基板の表面に、その表面と平行なせん断力が作用する。そのせん断力により、フレキシブルプリント基板が回転し、その結果としてホール素子(センサ)の信号経路が損傷する可能性がある。
【0005】
例えば、フレキシブルプリント基板の回転によってホール素子がベース部材に強く接触し、その接触状態が維持されると、フレキシブルプリント基板は、内部応力が発生した状態で維持される。その応力により、フレキシブルプリント基板が損傷しうる。また、ホール素子とフレキブルプリント基板とを電気的に接続しているはんだも、内部応力が発生した状態で維持される。その応力によってはんだが損傷する可能性がある。すなわち、センサの信号経路が損傷する可能性がある。
【0006】
そこで、本開示は、センサを備えるフレキシブルプリント基板が固定ねじによって固定されるレンズ鏡筒の遮光ユニットにおいて、センサの信号経路の損傷を抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するために、本開示の一態様によれば、
複数の絞り羽根と、
回転して前記複数の絞り羽根を駆動する駆動リングと、
前記駆動リングの回転角度を検出するためのセンサと、
前記センサを備えるフレキシブルプリント基板と、
前記駆動リングを回転可能に支持し、前記フレキシブルプリント基板が載置される載置面およびめねじ穴を備えるベース部材と、
前記めねじ穴と係合し、前記センサが設けられた前記フレキシブルプリント基板の第1の部分を前記ベース部材の前記載置面に対して固定する固定ねじと、
前記固定ねじの頭部と前記フレキシブルプリント基板の前記第1の部分との間に介在するシート部材とを有し、
前記ベース部材が、前記シート部材の回転を制限する係止部を備える、遮光ユニットが提供される。
【0008】
また、本開示の別態様によれば、
少なくとも1つのレンズと、
前記遮光ユニットと、を有する、レンズ鏡筒が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、センサを備えるフレキシブルプリント基板が固定ねじによって固定されるレンズ鏡筒の遮光ユニットにおいて、センサの信号経路の損傷を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の一実施の形態に係るレンズ鏡筒の前方斜視図
【
図4】絞り羽根を開いた状態の遮光ユニットの前方斜視図
【
図5】絞り羽根を開いた状態の遮光ユニットの後方斜視図
【
図6】絞り羽根を閉じた状態の遮光ユニットの前方斜視図
【
図9】モータとフレキシブルプリント基板が取り付けられた状態のベース部材の斜視図
【
図10】モータとフレキシブルプリント基板が取り付けられた状態のベース部材の一部分の前面図
【
図11】モータとフレキシブルプリント基板が取り外された状態のベース部材の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、適宜図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0012】
なお、発明者(ら)は、当業者が本開示を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
【0013】
以下、本開示の一実施の形態に係るレンズ鏡筒について図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1は、本開示の一実施の形態に係るレンズ鏡筒の前方斜視図である。また、
図2は、レンズ鏡筒の後方斜視図である。そして、
図3は、レンズ鏡筒の概略的な断面図である。
【0015】
ここで、図に示すX-Y-Z直交座標系は、本開示の実施の形態の理解を容易にするためのものであって、本開示の実施の形態を限定するものではない。Z軸方向はレンズ鏡筒の光軸の延在方向であって、X軸方向およびY軸方向は光軸の延在方向と直交する方向である。なお、本明細書において「前側(F)」は被写体側であって、「後側(R)」は撮像装置側である。
【0016】
図1~
図3に示すように、本実施の形態に係るレンズ鏡筒10は、複数のレンズ12~20を備える。レンズ12が最も被写体側のレンズであって、レンズ14が最も撮像装置側のレンズである。また、レンズ鏡筒10は、レンズ16、18の間に配置され、レンズ鏡筒10を通過する光量を調節するための遮光ユニット30を有する。
【0017】
図4は、絞り羽根34を開いた状態の遮光ユニットの前方斜視図である。また、
図5は、絞り羽根34を開いた状態の遮光ユニットの後方斜視図である。さらに、
図6は、絞り羽根34を閉じた状態の遮光ユニットの前方斜視図である。さらにまた、
図7は、遮光ユニットの前方分解斜視図である。そして、
図8は、遮光ユニットの後方分解斜視図である。
【0018】
図7および
図8に示すように、遮光ユニット30は、ベース部材32と、複数の絞り羽根34と、複数の絞り羽根34を駆動する駆動リング36と、複数の絞り羽根34に対して前側に配置された第1のシート38と、複数の絞り羽根34に対して後側に配置された第2のシート40と、カバー部材42と、を有する。
【0019】
ベース部材32は、概略、円環状の端面からレンズ鏡筒10の後部に向かって円筒状壁が延在する形状を備える。ベース部材32は、複数の絞り羽根34、駆動リング36、第1のシート38、および第2のシート40を収容する。
【0020】
複数の絞り羽根34は、レンズ鏡筒10を通過する光量を調節するための部材である。本実施の形態の場合、遮光ユニット30は、同一形状の絞り羽根34を9枚備える。複数の絞り羽根34それぞれは、レンズ鏡筒10の光軸Cの延在方向(Z軸方向)に延在する回動中心線を中心にして回動可能に、ベース部材32に支持されている。そのために、複数の絞り羽根34それぞれが貫通穴34aを備え、ベース部材32がそれぞれの貫通穴34aを通過する複数の支持ピン32aを備える。複数の絞り羽根34が回動することにより、遮光ユニット30が
図4に示す開いた状態または
図6に示す閉じた状態になる。すなわち、複数の絞り羽根34が回動することにより、光が通過する遮光ユニット30の開口30aの開口面積が変化し、その結果、遮光ユニット30を通過する光量が変化する。
【0021】
駆動リング36は、リング状の部材であって、ベース部材32と複数の絞り羽根34との間に配置されている。また、駆動リング36は、光軸Cを中心として回転可能にベース部材32に支持されている。駆動リング36が回転すると、複数の絞り羽根34それぞれが
図4に示す開いた状態から
図6に示す閉じた状態またはその逆に駆動される。そのために、複数の絞り羽根34それぞれがカム溝34bを備え、駆動リング36がそれぞれのカム溝34b内を従動するピン状の複数のカムフォロア36aを備える。
【0022】
また、本実施の形態の場合、駆動リング36は、モータ44によって回転駆動される。そのために、遮光ユニット30は、モータ44に取り付けられた駆動ギア46と、駆動ギア46と噛み合う動力伝達ギア48とを有する。動力伝達ギア48は、駆動ギア46と噛み合う大径ギア部48aと、駆動リング36に形成されたギア歯36bと噛み合う小径ギア部48bとを含んでいる。なお、動力伝達ギア48は、ベース部材32に設けられた支持ピン32bに支持されている。
【0023】
モータ44は、フレキシブルプリント基板50を介して、
図1に示すコンタクト端子52に電気的に接続されている。それにより、モータ44は、コンタクト端子52を介して撮像装置と電気的に接続される。また、モータ44は、固定ねじ54によってベース部材32に固定され、フレキシブルプリント基板50は、固定ねじ56を介してベース部材32に固定されている。なお、
図8に示すように、フレキシブルプリント基板50には、駆動リング36の回転角度(具体的には駆動リング36に設けられた舌片部36cの位置)を検出するための位置センサ58が実装されている。
【0024】
第1および第2のシート38、40は、開口部38a、40aが形成された円環状のシート部材であって、遮光性および平滑性を備えた材料、例えばPETシートから作製されている。第1のシート38は、ベース部材32と複数の絞り羽根34との間に配置されている。また、第2のシート40は、複数の絞り羽根34とカバー部材42との間に配置されている。すなわち、第1および第2のシート38、40は、複数の絞り羽根34を光軸Cの延在方向(Z軸方向)に挟んだ状態で、遮光ユニット30内に設けられている。なお、本実施の形態の場合、第2のシート40の開口部40aの径が、レンズ鏡筒10のアパーチャである。
【0025】
第1および第2のシート38、40の表面上を滑りながら、複数の絞り羽根34は、駆動リング36によって回動される。平滑性を備える第1および第2のシート38、40により、駆動リング36を低トルクで回転させることができる。なお、第1および第2のシート38、40は、ベース部材32の支持ピン32aと係合する係合穴38b、40bと、駆動リング36のカムフォロア36aが通過する長穴38c、40cとを備える。
【0026】
カバー部材42は、開口部42aを備えた円盤状の部材であって、ベース部材32に取り付けられる。カバー部材42は、本実施の形態の場合、スナップフィットによってベース部材32に係合する。そのために、ベース部材32には複数のフック32cが設けられ、カバー部材42にはフック32cと係合する凹部42bが形成されている。スナップフィットした後、カバー部材42は、固定ねじ60を介してベース部材32に固定される。なお、カバー部材42には、ベース部材32の複数の支持ピン32aの先端を支持する複数の支持穴42cと、駆動リング36の複数のカムフォロア36aをガイドする複数のガイド溝42dとが形成されている。このようなカバー部材42がベース部材32に取り付けられると、カバー部材42とベース部材32によって画定された空間に、複数の絞り羽根34、駆動リング36、第1のシート38、および第2のシート40が収容される。
【0027】
なお、補足すると、
図8に示すように、駆動リング36は、ベース部材32の円環状の凹部32d内に収容される。複数の絞り羽根34、第1のシート38、および第2のシート40は、凹部32d内に収容されずに、円環状凹部32dに対して内側および外側に位置する内側および外側環状面32e、32fとカバー部材42との間に配置される。そのため、複数の絞り羽根34、第1のシート38、および第2のシート40を支持する複数の支持ピン32aは、外側環状面32f上に設けられている。
【0028】
ここからは、本実施の形態に係る遮光ユニット30の更なる特徴について説明する。
【0029】
図9は、モータとフレキシブルプリント基板が取り付けられた状態のベース部材の斜視図である。また、
図10は、モータとフレキシブルプリント基板が取り付けられた状態のベース部材の一部分の前面図である。さらに、
図11は、モータとフレキシブルプリント基板が取り外された状態のベース部材の斜視図である。さらにまた、
図12は、ベース部材の一部分の前面図である。そして、
図13は、フレキシブルプリント基板の展開図である。
【0030】
図11および
図12に示すように、ベース部材32の前面には、モータ44が載置されて固定される載置面32gと、フレキシブルプリント基板50が載置されて固定される載置面32hが形成されている。モータ44は、固定ねじ54を介してベース部材32の載置面32gに固定されている。そのために、載置面32gには、固定ねじ54と係合するめねじ穴32iが形成されている。
【0031】
フレキシブルプリント基板50は、固定ねじ56を介してベース部材32の載置面32hに固定されている。そのために、載置面32hには、固定ねじ56と係合するめねじ穴32jが形成されている。
【0032】
具体的には、
図13に示すように、フレキシブルプリント基板50は、位置センサ58が設けられた第1の部分50aを含んでいる。また、本実施の形態の場合、フレキシブルプリント基板50は、第1の部分50aと異なる第2の部分50bを含んでいる。さらに、本実施の形態の場合、フレキシブルプリント基板50は、モータ44に電気的に接続される第3の部分50cと、コンタクト端子52に電気的に接続される第4の部分50dとを含んでいる。
【0033】
図9~
図11に示すように、フレキシブルプリント基板50の第1の部分50aは、ベース部材32の載置面32h上に、位置センサ58が載置面32hに向いた状態で載置される。そのために、
図11~
図12に示すように、載置面32hには、位置センサ58が収容される凹部32kが形成されている。
【0034】
なお、
図12に示すように、なお、凹部32kの底には、位置センサ58によって検出される駆動リング36の舌片部36cが通過する貫通穴36lが形成されている。また、位置センサ58と接触することにより、位置センサ58を一方向(レンズ鏡筒10の径方向および光軸Cの両方に対して直交する方向)について位置決めする位置決め面32mが凹部32k内に設けられている。
【0035】
本実施の形態の場合、ベース部材32の載置面32h上に載置されたフレキシブルプリント基板50の第1の部分50aに対して第2の部分50bが重なるように、フレキシブルプリント基板50は、折り曲げられている。
図13に示す谷折り線L1に沿ってフレキシブルプリント基板50を折り曲げることにより、第1の部分50aに対して第2の部分50bが重なる。なお、
図13において、一点鎖線は谷折り線を示し、二点鎖線は山折り線を示している。
【0036】
図13に示すように、本実施の形態の場合、フレキシブルプリント基板50の第1の部分50aおよび第2の部分50bそれぞれには、固定ねじ56が通過する第1および第2の貫通穴50e、50fが形成されている。第1の部分50aに対して第2の部分50bが重なると、
図11に示すように、第1および第2の第1および第2の貫通穴50e、50fも重なる。また、第1の部分50aに設けられた位置センサ58がベース部材32の位置決め面32mによって位置決めされると、貫通穴50e、50fそれぞれが、ベース部材32のめねじ穴32jに重なる。固定ねじ56は、第1および第2の貫通穴50e、50fそれぞれを通過してめねじ穴32jに係合する。その結果、フレキシブルプリント基板50の第1の部分50aと第2の部分50bが互いに重なった状態でベース部材32の載置面32hに固定されつつ、位置決めされる。なお、理由は後述するが、第1の貫通穴50eは、第2の貫通穴50fに比べて大きくされている。
【0037】
また、
図9~
図12に示すように、ベース部材32には、フレキシブルプリント基板50の第2の部分50bの回転を制限する係止部32nが設けられている。本実施の形態の場合、係止部32nは、載置面32hから突出する係止ピンである。この係止部32nと係合する係止穴50gが、フレキシブルプリント基板50の第2の部分50bに設けられている。
【0038】
このようにフレキシブルプリント基板50の第1の部分50aと第2の部分50bとを重ねた状態でこれらをベース部材32に固定ねじ56を介して固定しつつ、第2の部分50bの回転を係止部32nによって制限する理由について説明する。
【0039】
図11に示すように、固定ねじ56をめねじ穴32jに係合させるために、固定ねじ56の頭部56aは、ねじ回しによって回転される。その回転する固定ねじ56の頭部56aがフレキシブルプリント基板50の第2の部分50bに接触すると、その頭部56aと接触する第2の部分50bの表面に、その表面と平行なせん断力が発生する。そのせん断力により、第2の部分50bは、固定ねじ56の軸方向に延在する回転中心線を中心として回転しようとする。しかしながら、その第2の部分50bの回転は、ベース部材32に設けられた係止部32nによって制限されている。
【0040】
一方、フレキシブルプリント基板50の第1の部分50aでは、回転する固定ねじ56の頭部56aに直接的に接触していないので、且つ、第2の部分50bの回転が制限されているので、その表面(第2の部分50bに対向する表面)と平行なせん断力は生じない。そのため、第1の部分50aの回転が制限されている。その結果、第1の部分50aに設けられた位置センサ58がベース部材32に強く接触し続けるような第1の部分50aの回転が実質的に起こらない。その結果、位置センサ58とフレキシブルプリント基板50とを電気的に接続するはんだの損傷が抑制され、フレキシブルプリント基板50における位置センサ58の信号経路の損傷が抑制されている。
【0041】
なお、本実施の形態と異なり、第2の部分50bを設けずに、第1の部分50aを固定ねじ56によって直接的にベース部材32に固定し、第1の部分50aを係止部32nによって回転止めすることが考えられる。しかしながら、第1の部分50aに係止穴50gと位置決めセンサ58を形成した場合、係止穴と位置決めセンサの実装のいずれかの位置もしくは、両方の位置が大きくずれる可能性がある。その場合、位置決めセンサ58が
設計位置からずれたり、凹部32kに入らない恐れがある。
【0042】
当然ながら、本実施の形態の場合、第2の部分50bの第2の貫通穴50fと係止穴50gとの間の領域に内部応力が発生する。しかしながら、第2の部分50bには、位置センサ58の信号経路(それに加えてモータ44の信号経路)などの導線パターンが設けられていない。そのため、固定ねじ56の頭部56aの回転によって第2の部分50bに内部応力が生じても、位置センサ58の信号経路には影響しない。
【0043】
本実施の形態の場合、上述したように、固定ねじ56が通過する第1の部分50aの第1の貫通穴50eの径は、第2の部分50bの第2の貫通穴50fに比べて大きくされている。すなわち、固定ねじ56の頭部56aと対向する第1の部分50aの領域の面積が、固定ねじ56の頭部56aと対向する第2の部分50bの領域の面積に比べて小さい。これにより、固定ねじ56の頭部56aの回転による第1の部分50aの回転が抑制されている。
【0044】
また、本実施の形態の場合、
図10に示すように、ベース部材32の載置面32hに対して直交する方向視(すなわち光軸Cの延在方向視)で、フレキシブルプリント基板50の第2の部分50bの一部分が、位置センサ58の少なくとも一部分にオーバーラップしている。これにより、位置センサ58のベース部材32の凹部32k内からの離脱が抑制されている。具体的には、第2の部分50bが位置センサ58にオーバーラップするように第1の部分50aに重なることにより、第1の部分50aのたわみの発生が抑制され、それにより、第1の部分50aがたわんで位置センサ58が凹部32kから離脱することを抑制している。すなわち、位置センサ58は、第1の部分50aと第2の部分50bによって凹部32k内で維持されている。
【0045】
さらにまた、本実施の形態の場合、
図10~
図12に示すように、ベース部材32には、めねじ穴32jの開口近傍に凸部32pが設けられている。本実施の形態の場合、凸部32pは、めねじ穴32jの開口に沿った円弧状である。また、凸部32pは、載置面32hの直交する方向視(すなわち光軸Cの延在方向視)で、めねじ穴32jを挟んで位置センサ58に対向しつつ、固定ねじ56の頭部56aの一部分に対してオーバーラップしている。このような凸部32pにより、フレキシブルプリント基板50の第1の部分50aと第2の部分50bは、平面状態ではなく、載置面32hに向かって凸に沿った状態で、載置面32hに固定される。その結果、第1および第2の部分50a、50bの復元力(弾性力)により、位置センサ58が載置面32hの凹部32k内でより維持される。
【0046】
本実施の形態の場合、
図13に示すように、フレキシブルプリント基板50における第1および第2の部分50a、50bそれぞれには、補強シート62、64が貼り付けられている。これにより、第1および第2の部分50a、50bの弾性力が増加している。
【0047】
なお、本実施の形態と異なり、フレキシブルプリント基板50(特に第1および第2の部分50a、50b)が高い弾性力を備える材料から作製されている場合、第2の部分50bは位置センサ58にオーバーラップしなくてもよく、また凸部32pをベース部材32に設けなくてもよい。
【0048】
以上のような実施の形態によれば、センサを備えるフレキシブルプリント基板が固定ねじによって固定されるレンズ鏡筒の遮光ユニットにおいて、センサの信号経路の損傷を抑制することができる。
【0049】
以上、上述の実施の形態を挙げて本開示の実施の形態を説明したが、本開示の実施の形態は上述の実施の形態に限定されない。
【0050】
例えば、上述の実施の形態の場合、
図9~
図11に示すように、フレキシブルプリント基板50の第2の部分50bの係止穴50gが、ベース部材32のピン状の係止部32nに係合している。これにより、固定ねじ56の頭部56aの回転にともなって第2の部分50bが回転することを抑制している。しかしながら、第2の部分50bの回転の抑制は、これに限らない。例えば、第2の部分50bの外周縁に接触する凸部を係止部としてベース部材32に設けてもよい。
【0051】
また、上述の実施の形態の場合、
図13に示すように、フレキシブルプリント基板50の第1および第2の部分50a、50bには、固定ねじ56が通過する第1および第2の貫通穴50e、50fが設けられている。この第1および第2の貫通穴に代わって、固定ねじ56が通過する「U」字状の切り欠き部を第1および第2の部分50a、50bそれぞれに設けてもよい。
【0052】
さらに、上述の実施の形態の場合、フレキシブルプリント基板50の第1の部分50aと固定ねじ56の頭部56aとの間には、第1の部分50aと異なるフレキシブルプリント基板50の第2の部分50bが介在する。しかしながら、本実施の形態はこれに限らない。フレキシブルプリント基板50の第1の部分50aと固定ねじ56の頭部56aとに介在する部材は、フレキシブルプリント基板の一部分でなくてもよく、他のシート状の部材であってもよい。
【0053】
すなわち、本開示の実施の形態に係る遮光ユニットは、広義には、複数の絞り羽根と、回転して前記複数の絞り羽根を駆動する駆動リングと、前記駆動リングの回転角度を検出するためのセンサと、前記センサを備えるフレキシブルプリント基板と、前記駆動リングを回転可能に支持し、前記フレキシブルプリント基板が載置される載置面およびめねじ穴を備えるベース部材と、前記めねじ穴と係合し、前記センサが設けられた前記フレキシブルプリント基板の第1の部分を前記ベース部材の前記載置面に対して固定する固定ねじと、前記固定ねじの頭部と前記フレキシブルプリント基板の前記第1の部分との間に介在するシート部材とを有し、前記ベース部材が、前記シート部材の回転を制限する係止部を備える、遮光ユニットである。
【0054】
以上のように、本開示における技術の例示として、上述の実施の形態を説明してきた。そのために、図面および詳細な説明を提供している。したがって、図面及び詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、上述の技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0055】
また、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲又はその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略等を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本開示は、遮光ユニットを備えるレンズ鏡筒に適用可能である。
【符号の説明】
【0057】
32 ベース部材
32h 載置面
32j めねじ穴
32n 係止部
34 絞り羽根
36 駆動リング
50 フレキシブルプリント基板
50a 第1の部分
50b 第2の部分(シート部材)
56 固定ねじ
58 位置センサ(センサ)
【要約】
【課題】センサを備えるフレキシブルプリント基板が固定ねじによって固定されるレンズ鏡筒の遮光ユニットにおいて、センサの信号経路の損傷を抑制する。
【解決手段】遮光ユニットは、複数の絞り羽根と、回転して複数の絞り羽根を駆動する駆動リングと、前記駆動リングの回転角度を検出するためのセンサ58と、センサ58を備えるフレキシブルプリント基板50と、フレキシブルプリント基板50が載置される載置面32hおよびめねじ穴32jを備えるベース部材32と、めねじ穴32jと係合し、センサ58が設けられたフレキシブルプリント基板50の第1の部分50aをベース部材32の載置面32hに対して固定する固定ねじ56と、固定ねじ56の頭部56aとフレキシブルプリント基板50の第1の部分50aとの間に介在するシート部材50bとを有する。ベース部材32が、シート部材50bの回転を制限する係止部32nを備える。
【選択図】
図11