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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】クッション材及び枕
(51)【国際特許分類】
   A47C 27/14 20060101AFI20241004BHJP
   A47G 9/10 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
A47C27/14 B
A47G9/10 E
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019228466
(22)【出願日】2019-12-18
(65)【公開番号】P2021094274
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】522345803
【氏名又は名称】株式会社アーケム
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(73)【特許権者】
【識別番号】000196129
【氏名又は名称】西川株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100211395
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】下澤 信明
(72)【発明者】
【氏名】江村 直人
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 将崇
(72)【発明者】
【氏名】三宅 皓大
【審査官】井出 和水
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-063316(JP,A)
【文献】特開2007-061295(JP,A)
【文献】特表2017-529945(JP,A)
【文献】特開2016-002361(JP,A)
【文献】特開2001-286379(JP,A)
【文献】特開平10-146247(JP,A)
【文献】登録実用新案第3108760(JP,U)
【文献】米国特許第04726087(US,A)
【文献】中国実用新案第202820482(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 27/00 - A47C 27/22
A47G 9/00 - A47G 9/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
枕用のクッション材であって、
前記クッション材の表面には複数の突起が設けられており、
前記クッション材の表面は、前記クッション材の上に人間が横たわる際に前記人間の肩幅方向と略同一となる方向である前記クッション材の幅方向における中心を含む第1領域と、前記第1領域よりも前記幅方向外側に位置する第2領域と、前記第2領域よりも前記幅方向外側に位置する第3領域と、を含み、
前記第1領域は、前記第2領域よりも剛性が小さく、前記第2領域は、前記第3領域よりも剛性が小さく、
前記クッション材の前記表面及び裏面とは異なる複数の側面の全周にわたって、前記クッション材の厚さ方向を横切るように延在する切り込み溝が設けられている、クッション材。
【請求項2】
前記クッション材の表面に、前記クッション材の長さ方向に延在する、複数の溝を備えている、請求項1に記載のクッション材。
【請求項3】
前記複数の溝の前記クッション材の幅方向における間隔が、前記クッション材の幅方向内側よりも幅方向外側において広い、請求項2に記載のクッション材。
【請求項4】
前記複数の溝の前記クッション材の幅方向における間隔が、前記クッション材の幅方向内側から幅方向外側に向かうに従って広くなっている、請求項3に記載のクッション材。
【請求項5】
前記複数の溝の各々は、前記複数の突起のうち前記クッション材の幅方向に並んだ少なくとも2つの突起に挟まれた位置に開口部を有している、請求項2から4のいずれか一項に記載のクッション材。
【請求項6】
前記複数の溝の各々は、前記開口部から前記クッション材の裏面側裏面に向かって延在する拡幅部を有し、
前記クッション材の長さ方向に直交する断面視において、前記拡幅部の溝幅は、前記開口部の溝幅よりも広い、請求項5に記載のクッション材。
【請求項7】
前記クッション材を前記クッション材の厚さ方向に貫通する、スリットを備えている、請求項1から6のいずれか一項に記載のクッション材。
【請求項8】
前記スリットは、前記クッション材の長さ方向に長い形状をしている、請求項7に記載のクッション材。
【請求項9】
前記スリットは、前記クッション材の前記第1領域に配置されている、請求項7又は8に記載のクッション材。
【請求項10】
前記スリットは、前記複数の突起のうち前記クッション材の幅方向に並んだ少なくとも2つの突起に挟まれた位置に開口部を有している、請求項7から9にいずれか一項に記載のクッション材。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載のクッション材を含む、枕。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はクッション材及び枕に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、枕等に用いられるクッション材において、快適性を向上させるために、外面を凹凸形状とした板状の弾性発泡体で構成されるクッション材が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-306285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のクッション材には、快適性の更なる向上が求められている。とりわけ、寝返り等により、クッション材の上に横たわる人間の体勢が変化した場合における、快適性の更なる向上が求められている。
【0005】
かかる事情に鑑みてなされた本発明の目的は、快適性を向上させることができる、クッション材及び枕を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るクッション材は、
枕用のクッション材であって、
前記クッション材の表面には複数の突起が設けられており、
前記クッション材の幅方向における中心を含む中心領域は、前記中心領域よりも前記クッション材の幅方向外側に位置する少なくとも一部の領域に比べて剛性が小さい。
本発明に係るクッション材によれば、人間がクッション材の上に頭部を載せて仰向けに横たわった場合に、人間の頭部を中心領域において安定させることができる。したがって、クッション材の快適性が向上する。
【0007】
本発明に係るクッション材では、前記クッション材の表面に、前記クッション材の長さ方向に延在する、複数の溝を備えていることが好ましい。
かかる構成によれば、クッション材の幅方向における剛性の差を容易に生じさせることができる。
【0008】
本発明に係るクッション材では、前記複数の溝の前記クッション材の幅方向における間隔が、前記クッション材の幅方向内側よりも幅方向外側において広いことが好ましい。
かかる構成によれば、クッション材の幅方向における剛性の差を容易に生じさせることができる。
【0009】
本発明に係るクッション材では、前記複数の溝の前記クッション材の幅方向における間隔が、前記クッション材の幅方向内側から幅方向外側に向かって段階的に広くなっていることが好ましい。
かかる構成によれば、クッション材の上に載せられた人間の頭部がクッション材の幅方向に移動しやすくなる。
【0010】
本発明に係るクッション材では、前記複数の溝の各々は、前記複数の突起のうち前記クッション材の幅方向に並んだ少なくとも2つの突起に挟まれた位置に開口部を有していることが好ましい。
かかる構成によれば、クッション材の上に載せられた人間の頭部がクッション材の幅方向に移動しやすくなる。
【0011】
本発明に係るクッション材では、前記複数の溝の各々は、前記開口部から前記クッション材の裏面側に向かって延在する拡幅部を有し、前記クッション材の長さ方向に直交する断面視において、前記拡幅部の溝幅は、前記開口部の溝幅よりも広いことが好ましい。
かかる構成によれば、クッション材のクッション性が向上する。
【0012】
本発明に係るクッション材では、前記クッション材を前記クッション材の厚さ方向に貫通する、スリットを備えていることが好ましい。
かかる構成によれば、クッション材の通気性を向上させるとともに、クッション材1のクッション性が向上する。
【0013】
本発明に係るクッション材では、前記スリットは、前記クッション材の長さ方向に長い形状をしていることが好ましい。
かかる構成によれば、クッション材の上に載せられた人間の頭部がクッション材の幅方向に移動しやすくなる。
【0014】
本発明に係るクッション材では、前記スリットは、前記クッション材の前記中心領域に配置されていることが好ましい。
かかる構成によれば、仰向け時に人間の頭部が載せられる中心領域の通気性を向上させることができる。
【0015】
本発明に係るクッション材では、前記スリットは、前記複数の突起のうち前記クッション材の幅方向に並んだ少なくとも2つの突起に挟まれた位置に開口部を有していることが好ましい。
かかる構成によれば、クッション材の上に載せられた人間の頭部がクッション材の幅方向に移動しやすくなる。
【0016】
本発明に係るクッション材では、前記クッション材の側面の少なくとも一部には、前記クッション材の厚さ方向を横切るように延存する切り込み溝が設けられていることが好ましい。
かかる構成によれば、クッション材の上に頭部を載せた人間の頸部に対するクッション材のフィット性を向上させることができる。
【0017】
本発明に係る枕は、上述したクッション材を含む。
本発明に係る枕によれば、人間が枕の上に頭部を載せて仰向けに横たわった場合に、人間の頭部を中心領域において安定させることができる。したがって、枕の快適性が向上する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、快適性を向上させることができる、クッション材及び枕を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るクッション材を、表面側から示す、表面図である。
図2図2は、図1に示すクッション材の長さ方向側面図である。
図3図3は、図1に示すクッション材の幅方向側面図である。
図4図4は、図1に示すクッション材の表面の一部分を拡大して示す、斜視図である。
図5図5は、図1に示すクッション材が有する複数の領域を示す、表面図である。
図6図6は、図1に示すクッション材を含む枕の幅方向側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態に係るクッション材及び枕について、図面を参照して説明する。各図において共通する部品・部位には同一の符号を付している。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態に係るクッション材1を、表面側から示す、表面図である。図2は、図1に示すクッション材1の長さ方向側面図である。図3は、図1に示すクッション材1の幅方向側面図である。本明細書において、クッション材1の「表面」とは、クッション材1の上に人間が横たわることによって荷重を受ける面をいう。また、クッション材1の表面と反対側の面を裏面という。クッション材1の幅方向とは、クッション材1の表面における一方向をいう。具体的には、クッション材1の幅方向は、クッション材1の上に人間が横たわる際に、人間の肩幅方向と略同一となる方向であってもよい。クッション材1の長さ方向とは、クッション材1の幅方向と直交する方向をいう。クッション材1の厚さ方向とは、クッション材1の幅方向及び長さ方向と直交する方向をいう。図中において、符号W、符号L、及び符号Dは、それぞれクッション材1の幅方向、クッション材1の長さ方向、及びクッション材1の厚さ方向である。
【0022】
本実施形態において、クッション材1は、例えば、枕用のクッション材1である。本実施形態では、クッション材1は、クッション材1の長さ方向に横たわった人間の頭部等を支持するために用いられるものとして説明する。しかしながら、クッション材1は、枕に限られず、敷布団、マットレス、クッション、及び椅子等に用いられる、人間を支持するためのクッション材1としても適用可能である。また、クッション材1に対する人間が横たわる方向は、本実施形態に限定されるものではない。
【0023】
図1に示されるように、クッション材1は、クッション材1の厚さ方向からの平面視において、略矩形の平板状の部材である。本実施形態では、クッション材1は、クッション材1の幅方向における中心線CLに対して対称な構成である。しかしながら、クッション材1は、中心線CLに対して非対称な構成であってもよい。クッション材1の幅方向における中心線CLとは、クッション材1の幅方向における中心を通り、クッション材1の長さ方向に延びる線である。
【0024】
クッション材1は、例えば、ウレタンフォーム等の、弾性発泡体によって形成されている。これにより、クッション材1の通気性が良くなる。本実施形態では、クッション材1は、1つの弾性発泡体で形成されている。しかしながら、クッション材1は、複数の弾性発泡体によって形成されていてもよい。例えば、クッション材1は、クッション材1の厚さ方向に重ね合わされ互いに接合されている、複数の弾性発泡体により層状に形成されていてもよい。
【0025】
クッション材1は、クッション材1の表面に、複数の区画2を有する。図1に示されるように、クッション材1の表面において、複数の区画2は、互いに間隔を置いて、クッション材1の幅方向及び長さ方向に沿って格子状に並んで配置されている。
【0026】
それぞれの区画2には、突起3が設けられている。したがって、クッション材1は、クッション材1の表面に、クッション材1の幅方向及び長さ方向に沿って格子状に並ぶ複数の突起3を備えている。本実施形態では、クッション材1の表面には、複数の区画2が、中心線CLを挟んで、クッション材1の幅方向の両側に同数だけ並んで配置されている。
【0027】
以下、それぞれの区画2に設けられた突起3について、図4を参照して、説明する。図4は、図1に示すクッション材1の表面の一部分を拡大して示す、斜視図である。図4に示されるように、突起3は、底面が略矩形であり、クッション材1の厚さ方向にある上面まで延びる、丸みを帯びた略四角錐の形状である。突起3の上面は、底面よりも小さい。突起3は、突起3の上面により、クッション材1の表面上に人間の頭部が載せられた際に、頭部を支える。このため、クッション材1は、突起3により、クッション材1の人間に対する指圧効果を発揮することができる。しかしながら、突起3の形状は、四角錐に限られず、四角柱又は半球等、クッション材1の厚さ方向に凸状の形状であってもよい。
【0028】
本実施形態に係るクッション材1は、クッション材1の幅方向において、剛性が異なる複数の領域Rを有している。図5に示されるように、クッション材1は、クッション材1の幅方向において、3つの領域Rを有している。図5は、図1に示すクッション材1が有する複数の領域を示す、表面図である。クッション材1は、クッション材1の幅方向内側から、第1領域R1、第2領域R2、及び第3領域R3の3つの領域Rを有している。本実施形態では、領域Rは、区画2と対応付けられている。第1領域R1は、クッション材1の幅方向において、中心線CLの両側にそれぞれ並んだ2列の区画2を含んでいる。第2領域R2は、クッション材1の幅方向において、第1領域R1よりも幅方向外側にそれぞれ並んだ2列の区画2を含んでいる。第3領域R3は、クッション材1の幅方向において、第2領域R2よりも幅方向外側にそれぞれ並んだ3列の区画2の列を含んでいる。
【0029】
クッション材1の幅方向における中心線CLを含む中心領域は、中心領域よりもクッション材1の幅方向外側に位置する少なくとも一部の領域に比べて剛性が小さい。クッション材1の「中心領域」は、クッション材1の中心線CLを中心として、クッション材1の幅方向の長さが、クッション材1の幅方向における最大長さの略1/4~1/2の領域である。本実施形態では、第1領域R1が中心領域である。クッション材1の中心領域である第1領域R1は、第1領域R1よりもクッション材1の幅方向外側に位置する第2領域R2及び第3領域R3に比べて剛性が小さい。より具体的には、クッション材1の剛性は、第1領域R1、第2領域R2、第3領域R3の順に、幅方向内側から幅方向外側に向かって、段階的に大きくなっている。
【0030】
これによって、人間がクッション材1の上に頭部を載せて仰向けに横たわった場合に、人間の頭部は、クッション材1の幅方向外側にある第2領域R2及び第3領域R3に比べて剛性が小さいクッション材1の中心領域である第1領域R1において安定しやすくなる。
【0031】
また、人間がクッション材1の第1領域R1の上に頭部を載せて仰向けに横たわった状態から横向きに体勢を変化させる場合に、人間の頭部は、第1領域R1から第2領域R2を経由して第3領域R3へと移動する。その際に、第3領域R3が第1領域R1よりも剛性が大きいことで、仰向け時よりも寝床面からの頭部の高さが高くなる横向き時においても、クッション材1の第3領域R3が、人間の頭部を安定的に支えることができる。このように、クッション材1は、クッション材1の上に頭部を載せて横になった人間の仰向け時と横向き時とにおいて、異なる剛性で人間の頭部を支持することができる。したがって、クッション材1の快適性が向上する。
【0032】
さらに、クッション材1の剛性が、第1領域R1、第2領域R2、第3領域R3の順に段階的に大きくなっていることで、クッション材1の上に載せられた人間の頭部がクッション材1の幅方向に移動しやすくなる。したがって、クッション材1は、仰向けから横向きに、或いは横向きから仰向けに、人間が寝返り等の体勢を変化させる動作を行いやすくすることができる。
【0033】
クッション材1の領域Rにおける剛性は、任意の方法で評価されてもよい。例えば、クッション材1の領域Rの剛性は、その領域Rに対して、クッション材1の厚さ方向に所定の力を加えた際のクッション材1による反発弾性率の大きさを測定することで評価されてもよい。例えば、反発弾性率の測定法として、例えば、JIS K 6400-3に規定された反発弾性試験法が挙げられる。或いは、クッション材1のある領域Rの剛性は、クッション材1の厚さ方向に所定の力を加えた際のクッション材1の厚さ方向における厚さの変化を計測することによって、評価されてもよい。また、領域Rにおける剛性は、領域Rの1つの位置における代表値で評価されてもよく、或いは領域Rの複数の位置における平均値等で評価されてもよい。
【0034】
再び図1を参照すると、クッション材1は、クッション材1の表面に、クッション材1の長さ方向に延在する、複数の溝4を備えている。本実施形態では、複数の溝4の各々は、クッション材1の表面において、複数の区画2のうちクッション材1の幅方向に並んだ少なくとも2つの区画2に挟まれた位置に開口部4Aを有している。即ち、複数の溝4の各々は、クッション材1の表面において、複数の突起3のうちクッション材1の幅方向に並んだ少なくとも2つの突起3に挟まれた位置に開口部4Aを有している。これによって、溝4に隣接する突起3は、人間の頭部により押圧された際に、溝4側に沈み込みやすくなる。これによって、溝4の近傍におけるクッション材1の剛性を小さくすることができる。特に、溝4がクッション材1の長さ方向に延在していることで、人間の寝返り等によって、クッション材1の上に載せられた人間の頭部がクッション材1の幅方向に移動する際の、溝4の近傍におけるクッション材1の剛性を小さくすることができる。したがって、クッション材の上に載せられた人間の頭部がクッション材の幅方向に移動しやすくなる。さらに、溝4は、クッション材1の表面に開口し、クッション材1の長さ方向の両側面に貫通する通気溝として機能することができる。したがって、溝4は、クッション材1の通気性を向上させるとともに、クッション材1の幅方向における剛性の差を生じさせることができる。
【0035】
図2に示されるように、複数の溝4は、開口部4Aと、開口部4Aからクッション材1の裏面側に向かって延在する拡幅部4Bとで構成されている。拡幅部4Bの溝幅W2は、溝4の延在方向(本実施形態ではクッション材1の長さ方向)に直交する断面視において、開口部4Aの溝幅W1よりも広くなっている。ここで、開口部4Aの溝幅W1及び拡幅部4Bの溝幅W2は、それぞれ開口部4Aの溝幅及び拡幅部4Bの溝幅のうち最大値を意味する。拡幅部4Bの、溝4の延在方向に直交する断面の形状は、楕円形であることが好ましい。かかる構成を有することによって、クッション材1は、拡幅部4Bの内壁面に亀裂が生じにくい。
【0036】
複数の溝4のクッション材1の幅方向における間隔は、クッション材1の幅方向内側よりも幅方向外側において広い。より具体的には、複数の溝4のクッション材1の幅方向における間隔は、クッション材1の幅方向内側から幅方向外側に向かって段階的に広くなっている。本実施形態では、クッション材1の幅方向に隣り合う2つの溝4に挟まれる突起3の列は、中心線CLから幅方向外側に向かうに従って、1列、2列、3列と段階的に広くなっている。
【0037】
本実施形態に係るクッション材1では、上述した領域Rと、溝4の間隔とが対応付けられている。中心線CLを含む第1領域R1では、クッション材1の幅方向に隣り合う2つの溝4は、1列の突起3を挟んで設けられている。第2領域R2では、クッション材1の幅方向に隣り合う2つの溝4は、2列の突起3を挟んで設けられている。第3領域R3では、クッション材1の幅方向に隣り合う2つの溝4は、3列の突起3を挟んで設けられている。領域Rにおけるクッション材1の幅方向の長さに対する溝4の数が増えると、領域Rに設けられた突起3は、クッション材1の厚さ方向に沈み込みやすくなる。そのため、領域Rにおけるクッション材1の幅方向の長さに対する溝4の数が多くなると、クッション材1の剛性は小さくなる。しがたって、クッション材1の第1領域R1は、第2領域R2及び第3領域R3よりも、剛性が小さくなっている。より具体的には、クッション材1の剛性は、第1領域R1、第2領域R2、第3領域R3の順に、幅方向内側から幅方向外側に向かって、段階的に大きくなっている。
【0038】
溝4の形状及び間隔は、上述した例に限られず、クッション材1に求められる剛性の要件に応じて任意に定められてもよい。本実施形態では、クッション材1の長さ方向に直交する断面視における、溝4の断面の形状は全て同一とされている。しかしながら、溝4の断面の形状は同一でなくてもよい。例えば、クッション材1の一部の領域に設けられた溝4の断面の面積を、他の領域に設けられた溝4の断面の面積よりも大きくすることで、一部の領域の剛性を他の領域に比べて小さくしてもよい。
【0039】
再び図1を参照して、クッション材1は、クッション材1の表面に、クッション材1の幅方向に延在する、複数の溝5を備えている。本実施形態では、複数の溝5の各々は、クッション材1の表面において、複数の区画2のうちクッション材1の長さ方向に並んだ少なくとも2つの区画2に挟まれた位置に開口部5Aを有している。即ち、複数の溝5の各々は、クッション材1の表面において、複数の突起3のうちクッション材1の長さ方向に並んだ少なくとも2つの突起3に挟まれた位置に開口部5Aを有している。これによって、溝5に隣接する突起3は、人間の頭部により押圧された際に、溝5側に沈み込みやすくなる。さらに、溝5は、クッション材1の表面に開口し、クッション材1の幅方向の両側面に貫通する通気溝として機能することができる。
【0040】
図3に示されるように、複数の溝5は、開口部5Aと、開口部5Aからクッション材1の裏面側に向かって延在する拡幅部5Bとで構成されている。拡幅部5Bの溝幅W4は、溝5の延在方向(本実施形態ではクッション材1の幅方向)に直交する断面視において、開口部5Aの溝幅W3よりも広くなっている。ここで、溝5の、開口部5Aの溝幅W3及び拡幅部5Bの溝幅W4は、それぞれ開口部5Aの溝幅及び拡幅部5Bの溝幅のうち最大値を意味する。拡幅部5Bの、溝5の延在方向に直交する断面の形状は、楕円形であることが好ましい。かかる構成を有することによって、クッション材1は、拡幅部5Bの内壁面に亀裂が生じにくい。
【0041】
本実施形態において、複数の溝5のクッション材1の長さ方向における間隔は、等しい。具体的には、複数の溝5は、クッション材1の長さ方向において、それぞれの2列の突起3を挟んで設けられている。
【0042】
本実施形態では、クッション材1の長さ方向に直交する断面視における、溝5の断面の形状は、全て溝4の断面の形状と同一とされている。しかしながら、溝5の断面の形状は、溝4の断面の形状は同一でなくてもよい。
【0043】
再び図1を参照すると、クッション材1は、クッション材1をクッション材1の厚さ方向に貫通する、スリット6を備えている。スリット6は、クッション材1の表面と裏面とのそれぞれに開口し、クッション材1を厚さ方向に貫通する通気口として機能することができる。
【0044】
本実施形態では、スリット6は、クッション材1の中心領域である第1領域R1に配置されている。第1領域R1にスリット6が設けられていることによって、第1領域R1は、クッション材1の厚さ方向に沈み込みやすい。すなわち、スリット6は、第1領域R1の剛性を小さくする効果を有している。これによって、クッション材1の中心領域である第1領域R1は、中心領域よりもクッション材1の幅方向外側に位置する少なくとも一部の領域に比べて剛性が小さくなる。したがって、スリット6は、クッション材1の通気性を向上させるとともに、クッション材1の幅方向における剛性の差を生じさせることができる。
【0045】
スリット6は、第1領域R1の中央部分に設けられている。具体的には、スリット6は、第1領域R1において、中心線CL上の位置に1つ、中心線CLよりも幅方向外側の位置に2つずつ設けられている。これによって、仰向け時に人間の頭部が載せられるクッション材1の中心領域の通気性が向上する。
【0046】
スリット6は、クッション材1の厚さ方向からの平面視において、クッション材1の長さ方向に長い形状をしている。より具体的には、それぞれのスリット6は、クッション材1の厚さ方向からの平面視において、複数の突起3のうちクッション材1の幅方向に並んだ少なくとも2つの突起3に挟まれた位置に開口部6Aを有している。これによって、スリット6に隣接する突起3は、スリット6側に沈み込みやすくなる。そのため、クッション材1において、クッション材1の上に載せられた人間の頭部がクッション材1の幅方向に移動しやすくなる。したがって、クッション材1は、仰向けから横向きに、或いは横向きから仰向けに、人間が寝返り等の体勢を変化させる動作を行いやすくすることができる。しかしながら、スリット6の形状は、円形形状、幅方向に長い形状、クロス形状等の、任意の形状とされてもよい。その際、スリット6の、クッション材1の厚さ方向に直交する断面の形状は、円形又は楕円形状であることが好ましい。かかる構成を有することによって、クッション材1は、スリット6の内壁面に亀裂が生じにくい。
【0047】
本実施形態では、スリット6は、クッション材1の表面において、長さ方向に延在する溝4と幅方向に延在する溝5が交差する位置に設けられている。これによって、スリット6は、溝4及び溝5の通気性を向上させることができる。
【0048】
図2及び図3に示されるように、クッション材1の側面の少なくとも一部には、クッション材1の厚さ方向を横切るように延存する切り込み溝7が設けられている。本実施形態では、クッション材1の側面の全てにわたって、クッション材1の厚さ方向に略直交して延存する切り込み溝7が設けられている。
【0049】
特に、クッション材1の側面のうち、クッション材1の長さ方向における側面には、クッション材1の上に人間の頭部が載せられた際に、人間の頸部が位置する。これによって、クッション材1の上に人間の頭部が載せられた際に、人間の頸部の形状に沿うように、クッション材1の側面が切り込み溝7側に沈み込むことができる。切り込み溝7は、クッション材1の上に頭部を載せた人間の頸部に対するクッション材1のフィット性を向上させることができる。
【0050】
また、クッション材1にクッション材1を覆う枕カバーを取り付けた際に、枕カバーの形状に応じて、クッション材1の側面が切り込み溝7側に沈み込むことができる。したがって、切り込み溝7は、クッション材1に取り付け可能な枕カバーのバリエーションを増やす効果を有している。
【0051】
以下、上述したクッション材1を含む枕10の一実施形態について、説明する。クッション材1は、単体で枕として用いられてもよい。或いは、クッション材1は、他のユニット11と組み合わせて、枕10として用いられてもよい。図6は、図1に示すクッション材1を含む枕10の幅方向側面図である。図6において、枕10の幅方向、長さ方向、及び厚さ方向は、それぞれクッション材1の幅方向、長さ方向、及び厚さ方向と同一である。図6に示されるように、枕10は、クッション材1の厚さ方向に重ねられた、クッション材1及び他のユニット11と、クッション材1及び他のユニット11を覆う枕カバー12で構成されている。
【0052】
他のユニット11は、例えば、ウレタンフォーム、わた、スポンジ、パイプ、及びそば殻等の、任意の素材が詰められた袋状の部材である。
【0053】
クッション材1は、クッション材1の裏面が他のユニット11と対抗するように、重ねられている。これによって、クッション材1の表面が、枕10の上に載せられた人間の頭部を支えることができる。かかる構成を有することで、枕10において、クッション材1の効果が発揮される。そのため、クッション材1は、他のユニット11を単体で枕として用いる場合に比べて、枕10の快適性を向上させることができる。
【0054】
以上述べたように、本発明の一実施形態に係るクッション材1は、枕用のクッション材である。クッション材1の表面には複数の突起3が設けられている。クッション材1の幅方向における中心を含む中心領域は、中心領域よりもクッション材1の幅方向外側に位置する少なくとも一部の領域に比べて剛性が小さい。かかる構成を有するクッション材1によれば、クッション材1は、人間がクッション材1の上に頭部を載せて仰向けに横たわった場合に、人間の頭部を中心領域において安定させることができる。したがって、クッション材1の快適性が向上する。
【0055】
本発明の一実施形態に係るクッション材1では、クッション材1の表面に、クッション材1の長さ方向に延在する、複数の溝4を備えていることが好ましい。かかる構成によれば、クッション材1の幅方向における剛性の差を容易に生じさせることができる。
【0056】
本発明の一実施形態に係るクッション材1では、複数の溝4のクッション材1の幅方向における間隔が、クッション材1の幅方向内側よりも幅方向外側において広いことが好ましい。かかる構成によれば、クッション材1の幅方向内側の剛性を、幅方向外側の剛性よりも小さくすることができる。そのため、クッション材1の幅方向における剛性の差を容易に生じさせることができる。
【0057】
本発明の一実施形態に係るクッション材1では、複数の溝4のクッション材1の幅方向における間隔が、クッション材1の幅方向内側から幅方向外側に向かって段階的に広くなっていることが好ましい。かかる構成によれば、クッション材1の上に載せられた人間の頭部がクッション材1の幅方向に移動しやすくなる。
【0058】
本発明の一実施形態に係るクッション材1では、複数の溝4の各々は、複数の突起3のうちクッション材1の幅方向に並んだ少なくとも2つの突起3に挟まれた位置に開口部4Aを有していることが好ましい。かかる構成によれば、溝4に隣接する突起3が、溝4側に沈み込みやすくなる。そのため、クッション材1の上に載せられた人間の頭部がクッション材1の幅方向に移動しやすくなる。
【0059】
本発明の一実施形態に係るクッション材1では、複数の溝4は、開口部4Aからクッション材1の裏面側に向かって延在する拡幅部4Bを有し、クッション材1の長さ方向に直交する断面視において、拡幅部4Bの溝幅は、開口部4Aの溝幅よりも広いことが好ましい。かかる構成によれば、クッション材1の表面において溝4の近傍が、溝4側に更に沈み込みやすくなり、クッション材1のクッション性が向上する。そのため、クッション材1の快適性が更に向上する。
【0060】
本発明の一実施形態に係るクッション材1では、クッション材1をクッション材1の厚さ方向に貫通する、スリット6を備えていることが好ましい。かかる構成によれば、クッション材1の通気性を向上させるとともに、クッション材1のクッション性が向上する。そのため、クッション材1の快適性が更に向上する。
【0061】
本発明の一実施形態に係るクッション材1では、スリット6は、クッション材1の長さ方向に長い形状をしていることが好ましい。かかる構成によれば、クッション材1の表面においてスリット6の近傍が、スリット6側に沈み込みやすくなる。そのため、クッション材1の上に載せられた人間の頭部がクッション材1の幅方向に移動しやすくなる。
【0062】
本発明の一実施形態に係るクッション材1では、スリット6は、クッション材1の中心領域に配置されていることが好ましい。かかる構成によれば、仰向け時に人間の頭部が載せられるクッション材1の中心領域の剛性を下げるとともに、中心領域の通気性を向上させることができる。
【0063】
本発明の一実施形態に係るクッション材1では、スリット6は、複数の突起3のうちクッション材1の幅方向に並んだ少なくとも2つの突起3に挟まれた位置に開口部4Aを有していることが好ましい。かかる構成によれば、スリット6に隣接する突起3が、スリット6側に沈み込みやすくなる。そのため、クッション材1の上に載せられた人間の頭部がクッション材1の幅方向に移動しやすくなる。
【0064】
本発明の一実施形態に係るクッション材1では、クッション材1の側面の少なくとも一部には、クッション材1の厚さ方向を横切るように延存する切り込み溝7が設けられていることが好ましい。かかる構成によれば、クッション材1の上に人間の頭部が載せられた際に、人間の頸部の形状に沿うように、クッション材1の側面が切り込み溝7側に沈み込むことができる。そのため、クッション材1の上に頭部を載せた人間の頸部に対するクッション材1のフィット性を向上させることができる。
【0065】
本発明の一実施形態に係る枕10は、上述したクッション材1を含む。かかる構成を有する枕10によれば、枕10の上に頭部を載せて横になった人間の仰向け時と横向き時とにおいて、異なる剛性で人間の頭部を支持することができる。したがって、枕10の快適性が向上する。
【0066】
本発明を諸図面及び実施形態に基づき説明してきたが、当業者であれば本発明に基づき種々の変形及び修正を行うことが容易であることに注意されたい。したがって、これらの変形及び修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各実施形態又は各実施例に含まれる構成又は機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能である。また、各実施形態に含まれる構成又は機能等は、他の実施形態又は他の実施例に組み合わせて用いることができ、複数の構成又は機能等を1つに組み合わせたり、分割したり、或いは一部を省略したりすることが可能である。
【0067】
例えば、上述した実施形態において、クッション材1は、クッション材1の厚さ方向からの平面視において、略矩形の平板状の部材であるものとして説明した。しかしながら、クッション材1は、クッション材1の厚さ方向からの平面視において、楕円形、多角形等、任意の形状を有する平板状の部材とされてもよい。
【0068】
また例えば、上述した実施形態において、クッション材1は、クッション材1の幅方向において、3つの剛性が異なる領域R1、R2、及びR3を有するものとして説明した。しかしながら、クッション材1がクッション材1の幅方向に有する、剛性の異なる領域Rの数は、任意に定められていてもよい。
【0069】
また例えば、上述した実施形態において、クッション材1の幅方向における溝4の間隔、クッション材1におけるスリット6の位置、或いはそれらの組み合わせにより、クッション材1の幅方向における剛性の差が生じるものとして説明した。しかしながら、クッション材1の幅方向における剛性の差は、クッション材1の幅方向における材質の違い、厚さの違い、或いは、溝4の断面形状の違い等、任意の方法で実現されてもよい。例えば、クッション材1の幅方向外側に設けられた溝4よりも幅方向内側に設けられた溝4の断面積を大きくすることで、幅方向内側の剛性が幅方向外側の剛性よりも小さくされてもよい。
【符号の説明】
【0070】
1:クッション材、 2:区画、 3:突起、 4:溝、 4A:開口部、 4B:拡幅部、 5:溝、 5A:開口部、 5B:拡幅部、 6:スリット、 7:切り込み溝、 10:枕、 11:他のユニット、 12:枕カバー、 R:領域、 R1:第1領域、 R2:第2領域、 R3:第3領域、 W:幅方向、 L:長さ方向、 D:厚さ方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6