(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】泥土処理剤、及び泥土処理方法
(51)【国際特許分類】
C02F 11/00 20060101AFI20241004BHJP
E21D 9/13 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
C02F11/00 101Z
C02F11/00 ZAB
E21D9/13 C
(21)【出願番号】P 2020169860
(22)【出願日】2020-10-07
【審査請求日】2023-09-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390002185
【氏名又は名称】大成ロテック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】501350394
【氏名又は名称】東昭化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】高見沢 計夫
(72)【発明者】
【氏名】青木 政樹
(72)【発明者】
【氏名】岡田 明
(72)【発明者】
【氏名】中村 元城
【審査官】山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-136676(JP,A)
【文献】特開2018-076529(JP,A)
【文献】特開2018-100313(JP,A)
【文献】特開昭56-076292(JP,A)
【文献】特開2006-265885(JP,A)
【文献】特開2002-282894(JP,A)
【文献】特開平10-337575(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101955345(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 11/00-11/20
E21D 1/00- 9/14
C09K 17/00-17/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末状の天然高分子と、粉末状の酸化マグネシウム系固化
剤とを含有し、
前記天然高分子の90質量%以上が、200メッシュの篩を通過し、
前記酸化マグネシウム系固化
剤の90質量%以上が、100メッシュの篩を通過し、
前記酸化マグネシウム系固化
剤の90質量%以上が、200メッシュの篩を通過しない泥土処理剤
であって、
前記天然高分子がグアガムであることを特徴とする泥土処理剤。
【請求項2】
硫酸鉄を含有し、
前記酸化マグネシウム系固化剤と前記硫酸鉄と前記天然高分子の質量比は、86.5~90.5:4.5~8.5:4.5~7.0であることを特徴とする請求項1に記載の泥土処理剤。
【請求項3】
前記酸化マグネシウム系固化
剤が、軽焼ドロマイトまたは軽焼マグネシウムであることを特徴とする請求項1
または請求項2に記載の泥土処理剤。
【請求項4】
シールド工法で発生した掘削泥土に、請求項1~
3のいずれか1項に記載の泥土処理剤を添加して、前記掘削泥土を固化する工程を有する泥土処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、泥土処理剤、及び泥土処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シールド工法(例えば、気泡シールド工法、泥土圧シールド工法等)を行う作業現場では、水分を多く含んだ泥土(掘削泥土)が発生する。このような泥土は、そのままの状態では運搬や埋立等に支障をきたすため、ある程度の硬さとなるように処理されている。
【0003】
従来、例えば、気泡シールド工法で発生した泥土には、グアガム等の天然高分子が添加、混合されて泥土が造粒され、その後、石膏等の無機系固化剤が添加、混合されていた(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、従来の泥土処理方法は、天然高分子を添加して泥土を造粒する工程と、無機系固化剤を添加して泥土を固化する工程の2工程に分かれていた。つまり、泥土処理に利用される添加剤(天然高分子、無機系固化剤)は、2剤に分けて使用されていた。このように、従来の泥土処理は煩雑であり、しかも、処理設備が大型化する問題もあった。
【0006】
本発明の課題は、1剤型の泥土処理剤、及びそれを用いた泥土処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明に係る泥土処理剤は、グアガムである粉末状の天然高分子と、粉末状の酸化マグネシウム系固化剤とを含有し、前記天然高分子の90質量%以上が、200メッシュの篩を通過し、前記酸化マグネシウム系固化剤の90質量%以上が、100メッシュの篩を通過し、前記酸化マグネシウム系固化剤の90質量%以上が、200メッシュの篩を通過しない。
【0008】
かかる泥土処理剤によれば、生分解性の高い天然高分子を用いているので、泥土処理剤の環境性を高めることができる。また、かかる泥土処理剤によれば、酸化マグネシウム系固化剤の粒径よりも天然高分子の粒径の方が小さいので、酸化マグネシウム系固化剤よりも天然高分子を処理対象物に対して優先的に反応させることができ、その結果、天然高分子による処理対象物の吸水・造粒化を促進させることができる。処理対象物が吸水・造粒化されることにより、酸化マグネシウム系固化剤の固化能力を発揮させやすくなるため、1剤型であっても、処理対象物を固化させることができる。さらに、酸化マグネシウム系固化剤は、ヒ素等の重金属を吸着するので、処理対象物からの重金属の溶出を抑制することもできる。
【0009】
さらに、本発明に係る泥土処理剤は、硫酸鉄を含有し、前記酸化マグネシウム系固化剤と前記硫酸鉄と前記天然高分子の質量比は、86.5~90.5:4.5~8.5:4.5~7.0であることが好ましい。
【0010】
かかる泥土処理剤によれば、硫酸鉄が重金属を吸着するので、処理対象物からの重金属の溶出をさらに抑制できる。また、酸化マグネシウム系固化剤によってアルカリ性を呈する泥土処理剤を、硫酸鉄によって中和することができる。
【0011】
前記天然高分子がグアガムであるため、例えば、塩化ナトリウム、金属イオン、セメント等を含む地山由来の処理対象物を処理する場合でも、増粘・凝集効果を奏することができる。また、グアガムは、増粘・凝集効果の発現が速いため、処理対象物の固化時間を短縮させることもできる。
【0012】
前記酸化マグネシウム系固化剤は、軽焼ドロマイトまたは軽焼マグネシウムであることが好ましい。軽焼ドロマイトまたは軽焼マグネシウムを用いることにより、固化させた処理対象物の強度を高めることができる。
【0013】
本発明に係る泥土処理方法は、シールド工法で発生した掘削泥土に、前記のいずれかの泥土処理剤を添加して、前記掘削泥土を固化する工程を有する。かかる泥土処理方法によれば、掘削泥土を1工程で固化させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、1剤型の泥土処理剤、及びそれを用いた泥土処理方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を具体的に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は「~」前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。また、「部」および「%」は、特に断らない限り、それぞれ「質量部」および「質量%」を示す。
【0016】
(泥土処理剤)
本実施形態の泥土処理剤は、少なくとも、凝集・増粘作用を有する粉末状の天然高分子と、粉末状の酸化マグネシウム系固化剤とを含有する。泥土処理剤においては、天然高分子と酸化マグネシウム系固化剤とがプレミックスされている。つまり、本実施形態の泥土処理剤は1剤型である。
【0017】
泥土処理剤は、水分を含んだ掘削泥土等の処理対象物に添加されると、処理対象物の流動性が低下し、かつ処理対象物がある程度の硬さ以上に固化する。例えば、シールド工事で発生した掘削泥土に泥土処理剤を添加すると、掘削泥土を運搬・搬出可能な硬さ(初期強度)に調整することができる。
【0018】
なお、泥土処理剤で処理された処理対象物の硬さ(初期強度)は、処理対象物の種類や状態等によっても異なるものの、少なくとも、泥土処理剤の添加から1時間後のコーン指数で150kN/m2以上であり、180kN/m2以上であることが好ましく、200kN/m2以上であることがより好ましい。
【0019】
泥土処理剤の添加量は、本発明の目的を損なわない限り、特に制限はないが、例えば、泥土等の処理対象物に対して、20~300kg/m3の割合で添加される。
【0020】
(天然高分子)
天然高分子は、主として、水分を含んだ泥土等の処理対象物を凝集させ、増粘させる凝集剤(増粘剤)として機能する。天然高分子は、処理対象物の水分を吸収し、かつ処理対象物を造粒化する。処理対象物の水分吸収および造粒化に適した天然高分子としては天然多糖類等が挙げられ、中でもグアガムが好ましい。
【0021】
グアガムは、ガラクトマンノースを主成分とするノニオン系の天然多糖類である。グアガムは、処理対象物が例えば、海水(塩)、金属イオン、セメント等を含む掘削土砂である場合でも、凝集効果を安定して発揮し、処理対象物を造粒化させることができる。また、グアガムは、凝集効果を素早く発現するので、固化時間を短縮できる。
【0022】
天然高分子は、粉末状であり、90質量%以上が200メッシュ(目開き75μm)の篩を通過する粒径である。
【0023】
(酸化マグネシウム系固化剤)
酸化マグネシウム系固化剤は、泥土等の処理対象物を運搬・埋立等に適した硬さに固化させる。酸化マグネシウム系固化剤は、処理対象物中のヒ素等の重金属を吸着するので、重金属の溶出を抑制することもできる。酸化マグネシウム系固化剤としては、軽焼ドロマイト(CaMg(CO3)2)または軽焼マグネシウム(MgO)が好ましい。酸化マグネシウム系固化剤は粉末状であり、90質量%以上が100メッシュ(目開き149μm)の篩を通過し、90質量%以上が200メッシュ(目開き75μm)の篩を通過しない粒径である。すなわち、酸化マグネシウム系固化剤は、90質量%以上が200メッシュの篩の上に残り、10質量%未満だけが200メッシュの篩を通過する。
【0024】
(粒径の差による効果)
このように、天然高分子の粒径が酸化マグネシウム系固化剤の粒径よりも小さくなるように調整すると、酸化マグネシウム系固化剤と天然高分子とがプレミックスされた状態で処理対象物に添加されても、天然高分子の方が酸化マグネシウム系固化剤よりも優先的に処理対象物に対して反応するようになる。
【0025】
本発明者らは、粒子径の差による作用を検証するために、試薬の添加順序に関して以下の実験を行った。本実験では、処理対象物として、以下を混合した粒径検証用の模擬土を用いた。
<模擬土>
砂質土:1050g
土丹(2mm以下に解砕):600g
水:350g
【0026】
本実験では、泥土処理剤として以下の試薬を用いた。以降、例えば「200メッシュ」という記載は、対象の90質量%以上が200メッシュ(目開き75μm)の篩を通過する粒径であることを意味する。「100メッシュ」、「60メッシュ」についても同様である。
<泥土処理剤>
天然高分子・粒径小(グアガム・200メッシュ):0.6g
硫酸鉄(硫酸第一鉄・四水和物):3.4g
酸化マグネシウム系固化剤・粒径大(軽焼マグネシウム・60メッシュ):26g
【0027】
模擬土および泥土処理剤の配合を表1に示す。
【0028】
【0029】
本実験では、以下の2つのサンプルを作成した。
サンプル1:模擬土に対して、天然高分子、硫酸鉄、酸化マグネシウム系固化剤の順に試薬を添加して混合したサンプル
サンプル2:模擬土に対して、酸化マグネシウム系固化剤、硫酸鉄、天然高分子の順に試薬を添加して混合したサンプル
【0030】
サンプル1、サンプル2について、最後の試薬を添加してから1時間後と24時間後にコーン指数を測定した。コーン指数は、JIS A 1228「締固めた土のコーン指数試験方法」に準拠して測定した。結果を表2に示す。
【0031】
【0032】
通常、天然高分子を先に投入したサンプルと酸化マグネシウム系固化剤を先に投入したサンプルとを比較すれば、前者のコーン指数の方が高いはずだと考えられる。天然高分子を先に投入することにより、当該天然高分子に処理対象物の水分を吸収させ、処理対象物の造粒効果を向上させることができるためである。
【0033】
しかしながら、表2に示すように、天然高分子を先に入れたサンプル1と、酸化マグネシウム系固化剤を先に入れたサンプル2のコーン指数に大きな差はない。これは、天然高分子の粒径が酸化マグネシウム系固化剤の粒径よりも十分小さいことにより、当該天然高分子の反応性が向上し、当該天然高分子を後から入れた場合であっても造粒効果が発揮されたためだと考えられる。
【0034】
本実験から分かるように、天然高分子の粒径を酸化マグネシウム系固化剤の粒径よりも十分小さくすることにより、天然高分子を後に入れた場合ですら吸水・造粒効果が発揮され、模擬土が固化される。従って、このような天然高分子と酸化マグネシウム系固化剤をプレミックスした一剤型の泥土処理剤においても、天然高分子による吸水・造粒作用と酸化マグネシウム系固化剤による固化作用により、迅速に処理対象物を固化できると考えられる。
【0035】
(硫酸鉄)
処理対象物中に含まれるヒ素等の重金属の溶出を抑制できるよう、泥土処理剤は、粉末状の硫酸鉄を含有することが好ましい。つまり、泥土処理剤には、硫酸鉄がプレミックスされることが好ましい。泥土処理剤に硫酸鉄が配合されることにより、処理対象物中のヒ素等の重金属が硫酸鉄に吸着され、不溶化されるため、処理対象物からの重金属の溶出を抑制することができる。処理対象物のヒ素溶出試験結果は、不溶化により、0.01mg/L以下にされることが好ましい。なお、硫酸鉄は、酸化マグネシウム系固化剤によってアルカリ性を呈する泥土処理剤の中性化にも寄与する。
【0036】
硫酸鉄としては硫酸第一鉄、硫酸第二鉄が存在するが、入手が容易で食品添加物に使用できるほど安全性の高い硫酸第一鉄が泥土処理剤への使用に適している。硫酸鉄には水和水の数が異なる各種水和物が存在するが、水和水を多く有するほど高い水溶性を示す。泥土処理剤に用いる硫酸鉄は水和水によって限定されないが、例えば硫酸第一鉄・一水和物は入手容易性等から好ましい。
【0037】
泥土処理剤を添加した処理対象物のpHは7~11であることが望ましい。そこで、本発明者らは、酸化マグネシウム系固化剤によってアルカリ性を呈した泥土処理剤のpHを低下させる硫酸鉄の配合について検討するため、硫酸鉄の配合の異なる泥土処理剤のサンプルを作成した。
【0038】
泥土処理剤に配合する硫酸鉄には硫酸第一鉄・一水和物を用いた。酸化マグネシウム系固化剤には以下の(1)~(4)の軽焼マグネシウムを用いた。
(1)軽焼マグネシウムA(200メッシュ)
(2)軽焼マグネシウムB(100メッシュ)
(3)軽焼マグネシウムC(200メッシュ)
(4)軽焼マグネシウムD(60メッシュ)
【0039】
上記の硫酸鉄および酸化マグネシウム系固化剤を利用して、以下の泥土処理剤のサンプルを作成した。
サンプル1:軽焼マグネシウムA
サンプル2:軽焼マグネシウムB
サンプル3:軽焼マグネシウムC
サンプル4:軽焼マグネシウムD
サンプル5:軽焼マグネシウムBと硫酸鉄を質量比100:5.26で混合
サンプル6:軽焼マグネシウムBと硫酸鉄を質量比100:6.38で混合
サンプル7:軽焼マグネシウムBと硫酸鉄を質量比100:7.53で混合
サンプル8:軽焼マグネシウムBと硫酸鉄を質量比100:8.70で混合
【0040】
表3に、各泥土処理剤のサンプルを模擬土2000gに対して30g添加して混合した後、模擬土のpHをJIS K0102 12.1「ガラス電極法」に準拠して測定した。なお、模擬土の配合は、表1のものと同じである。
【0041】
【0042】
表3に示すように、酸化マグネシウム系固化剤の粒径の相違は、pHに大きな影響を及ぼさなかった。また、酸化マグネシウム系固化剤のみのサンプルのpHが11を超える一方で、質量比にして酸化マグネシウム系固化剤100に対して硫酸鉄を5.26以上含有するサンプルのpHは11以下であった。
【0043】
(酸化マグネシウム系固化剤と硫化鉄の質量比)
泥土処理剤における酸化マグネシウム系固化剤と硫化鉄の質量比は、酸化マグネシウム系固化剤100に対して硫化鉄が5.20~10.00であることが好ましい。酸化マグネシウム系固化剤と硫化鉄の質量比がこのような範囲にあると、処理対象物のpHを7~11にすることができ、かつ、硫化鉄が酸化マグネシウム系固化剤の固化作用を妨げることを抑制できる。
【0044】
(泥土処理剤の配合割合)
泥土処理剤中の、酸化マグネシウム系固化剤と硫酸鉄と天然高分子の質量比は、86.5~90.5:4.5~8.5:4.5~7.0であることが好ましい。泥土処理剤における配合割合が上記の範囲にあると、天然高分子による吸水・造粒作用と酸化マグネシウム系固化剤による固化作用によって迅速に処理対象物を固化し、硫酸鉄が酸化マグネシウム系固化剤の固化作用を妨げることを抑制し、かつ、泥土処理剤を添加した処理対象物のpHを7~11にすることができる。
【0045】
本実施形態の泥土処理剤の処理対象物は、シールド工法で発生する掘削泥土に限られず、その他の建設現場等で発生する残土等であってもよい。
【0046】
(泥土処理剤を使用した泥土処理方法)
本実施形態の泥土処理方法は、例えば、気泡シールド工法等のシールド工法で発生した掘削泥土(処理対象物)に上記泥土処理剤を添加し、バックホウ等を利用して、泥土処理剤が添加された掘削泥土(処理対象物)を混合、撹拌して処理する工程(混練り工程)を備える。この処理工程により、処理対象物である掘削泥土は、所定の硬さ以上に固化され、また、処理対象物にヒ素が含まれている場合には、この処理工程により、処理対象物中のヒ素が不溶化される。
【0047】
本実施形態の泥土処理剤は、土砂等の処理対象物に対して添加された後、その処理対象物を混練りする工程(混練り工程)を1回に簡略化することができる。つまり、1工程で処理対象物を処理することができる。本実施形態の泥土処理剤が添加された土砂等の処理対象物は、短時間(例えば、1時間程度)で、搬出可能な程度の強度(硬さ)を発現する。そのため、処理対象物を、泥土処理剤で処理した後から搬出するまでの時間を、従来技術(2剤型の泥土処理剤)と比べて大幅に短縮することが可能であり、しかも、泥土処理剤で処理された処理対象物(処理済み対象物)を、搬出までの間、一時的に保管するスペースを小さくすることができる。したがって、本実施形態の泥土処理剤を使用すれば、全体として、工事費用を低く抑えることができる。
【実施例】
【0048】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。なお、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0049】
(模擬土の作製)
以下のヒ素含有量の異なる模擬土1,2を作製した。模擬土1のヒ素溶出試験結果は0.051mg/Lであり、模擬土2のヒ素溶出試験結果は0.039mg/Lであった。なお、ヒ素溶出試験の方法については後述する。
【0050】
<模擬土1>
砂質土:1050g
土丹(2mm以下に解砕):600g
水:350g
ヒ素試薬(富士フイルム和光純薬株式会社製:As1000):3.3cc
【0051】
<模擬土2>
砂質土:1050g
土丹(2mm以下に解砕):600g
水:350g
ヒ素試薬(富士フイルム和光純薬株式会社製:As1000):2.2cc
【0052】
(泥土処理剤に用いた試薬)
泥土処理剤には以下の試薬を使用した。
(1)軽焼マグネシウム・粒径小(200メッシュ)
(2)軽焼マグネシウム・粒径大(100メッシュ)
(3)グアガム・粒径小(200メッシュ)
(4)グアガム・粒径大(100メッシュ)
(5)硫酸第一鉄・一水和物
【0053】
<実施例1>
軽焼マグネシウム・粒径大27.0g、硫酸第一鉄・一水和物1.5g、グアガム・粒径小1.5gを予め混合して30gの泥土処理剤を得た。この泥土処理剤を2000gの模擬土1に添加し、混合して実施例1の泥土とした。
【0054】
<実施例2>
軽焼マグネシウム・粒径大26.1g、硫酸第一鉄・一水和物2.4g、グアガム・粒径小1.5gを予め混合して30gの泥土処理剤を得たこと以外は実施例1と同様にして、実施例2の泥土とした。
【0055】
<実施例3>
軽焼マグネシウム・粒径大26.7g、硫酸第一鉄・一水和物1.5g、グアガム・粒径小1.8gを予め混合して30gの泥土処理剤を得たこと以外は実施例1と同様にして、実施例3の泥土とした。
【0056】
<実施例4>
軽焼マグネシウム・粒径大26.4g、硫酸第一鉄・一水和物2.1g、グアガム・粒径小1.5gを予め混合して30gの泥土処理剤を得たこと以外は実施例1と同様にして、実施例4の泥土とした。
【0057】
<実施例5>
軽焼マグネシウム・粒径大27.0g、硫酸第一鉄・一水和物1.5g、グアガム・粒径小1.5gを予め混合して30gの泥土処理剤を得た。この泥土処理剤を2000gの模擬土2に添加し、混合して実施例5の泥土とした。
【0058】
<実施例6>
軽焼マグネシウム・粒径大26.1g、硫酸第一鉄・一水和物2.4g、グアガム・粒径小1.5gを予め混合して30gの泥土処理剤を得たこと以外は実施例5と同様にして、実施例6の泥土とした。
【0059】
<実施例7>
軽焼マグネシウム・粒径大26.7g、硫酸第一鉄・一水和物1.5g、グアガム・粒径小1.8gを予め混合して30gの泥土処理剤を得たこと以外は実施例5と同様にして、実施例7の泥土とした。
【0060】
<実施例8>
軽焼マグネシウム・粒径大26.4g、硫酸第一鉄・一水和物2.1g、グアガム・粒径小1.5gを予め混合して30gの泥土処理剤を得たこと以外は実施例5と同様にして、実施例8の泥土とした。
【0061】
<比較例1>
軽焼マグネシウム・粒径大27.0g、硫酸第一鉄・一水和物1.5g、グアガム・粒径大1.5gを予め混合して30gの泥土処理剤を得たこと以外は実施例1と同様にして、比較例1の泥土とした。
【0062】
<比較例2>
軽焼マグネシウム・粒径小27.0g、硫酸第一鉄・一水和物1.5g、グアガム・粒径小1.5gを予め混合して30gの泥土処理剤を得たこと以外は実施例1と同様にして、比較例2の泥土とした。
【0063】
<比較例3>
軽焼マグネシウム・粒径小27.0g、硫酸第一鉄・一水和物1.5g、グアガム・粒径大1.5gを予め混合して30gの泥土処理剤を得たこと以外は実施例1と同様にして、比較例3の泥土とした。
【0064】
<比較例4>
軽焼マグネシウム・粒径大26.1g、硫酸第一鉄・一水和物2.4g、グアガム・粒径大1.5gを予め混合して30gの泥土処理剤を得たこと以外は実施例1と同様にして、比較例4の泥土とした。
【0065】
<比較例5>
軽焼マグネシウム・粒径小26.1g、硫酸第一鉄・一水和物2.4g、グアガム・粒径小1.5gを予め混合して30gの泥土処理剤を得たこと以外は実施例1と同様にして、比較例5の泥土とした。
【0066】
<比較例6>
軽焼マグネシウム・粒径小26.1g、硫酸第一鉄・一水和物2.4g、グアガム・粒径大1.5gを予め混合して30gの泥土処理剤を得たこと以外は実施例1と同様にして、比較例6の泥土とした。
【0067】
<比較例7>
軽焼マグネシウム・粒径大26.7g、硫酸第一鉄・一水和物1.5g、グアガム・粒径大1.8gを予め混合して30gの泥土処理剤を得たこと以外は実施例1と同様にして、比較例7の泥土とした。
【0068】
<比較例8>
軽焼マグネシウム・粒径小26.7g、硫酸第一鉄・一水和物1.5g、グアガム・粒径小1.8gを予め混合して30gの泥土処理剤を得たこと以外は実施例1と同様にして、比較例8の泥土とした。
【0069】
<比較例9>
軽焼マグネシウム・粒径小26.7g、硫酸第一鉄・一水和物1.5g、グアガム・粒径大1.8gを予め混合して30gの泥土処理剤を得たこと以外は実施例1と同様にして、比較例9の泥土とした。
【0070】
<比較例10>
軽焼マグネシウム・粒径大26.4g、硫酸第一鉄・一水和物2.1g、グアガム・粒径大1.5gを予め混合して30gの泥土処理剤を得たこと以外は実施例1と同様にして、比較例10の泥土とした。
【0071】
<比較例11>
軽焼マグネシウム・粒径小26.4g、硫酸第一鉄・一水和物2.1g、グアガム・粒径小1.5gを予め混合して30gの泥土処理剤を得たこと以外は実施例1と同様にして、比較例11の泥土とした。
【0072】
<比較例12>
軽焼マグネシウム・粒径小26.4g、硫酸第一鉄・一水和物2.1g、グアガム・粒径大1.5gを予め混合して30gの泥土処理剤を得たこと以外は実施例1と同様にして、比較例12の泥土とした。
【0073】
<比較例13>
軽焼マグネシウム・粒径大27.0g、硫酸第一鉄・一水和物1.5g、グアガム・粒径大1.5gを予め混合して30gの泥土処理剤を得たこと以外は実施例5と同様にして、比較例13の泥土とした。
【0074】
<比較例14>
軽焼マグネシウム・粒径小27.0g、硫酸第一鉄・一水和物1.5g、グアガム・粒径小1.5gを予め混合して30gの泥土処理剤を得たこと以外は実施例5と同様にして、比較例14の泥土とした。
【0075】
<比較例15>
軽焼マグネシウム・粒径小27.0g、硫酸第一鉄・一水和物1.5g、グアガム・粒径大1.5gを予め混合して30gの泥土処理剤を得たこと以外は実施例5と同様にして、比較例15の泥土とした。
【0076】
<比較例16>
軽焼マグネシウム・粒径大26.1g、硫酸第一鉄・一水和物2.4g、グアガム・粒径大1.5gを予め混合して30gの泥土処理剤を得たこと以外は実施例5と同様にして、比較例16の泥土とした。
【0077】
<比較例17>
軽焼マグネシウム・粒径小26.1g、硫酸第一鉄・一水和物2.4g、グアガム・粒径小1.5gを予め混合して30gの泥土処理剤を得たこと以外は実施例5と同様にして、比較例17の泥土とした。
【0078】
<比較例18>
軽焼マグネシウム・粒径小26.1g、硫酸第一鉄・一水和物2.4g、グアガム・粒径大1.5gを予め混合して30gの泥土処理剤を得たこと以外は実施例5と同様にして、比較例18の泥土とした。
【0079】
<比較例19>
軽焼マグネシウム・粒径大26.7g、硫酸第一鉄・一水和物1.5g、グアガム・粒径大1.8gを予め混合して30gの泥土処理剤を得たこと以外は実施例5と同様にして、比較例19の泥土とした。
【0080】
<比較例20>
軽焼マグネシウム・粒径小26.7g、硫酸第一鉄・一水和物1.5g、グアガム・粒径小1.8gを予め混合して30gの泥土処理剤を得たこと以外は実施例5と同様にして、比較例20の泥土とした。
【0081】
<比較例21>
軽焼マグネシウム・粒径小26.7g、硫酸第一鉄・一水和物1.5g、グアガム・粒径大1.8gを予め混合して30gの泥土処理剤を得たこと以外は実施例5と同様にして、比較例21の泥土とした。
【0082】
<比較例22>
軽焼マグネシウム・粒径大26.4g、硫酸第一鉄・一水和物2.1g、グアガム・粒径大1.5gを予め混合して30gの泥土処理剤を得たこと以外は実施例5と同様にして、比較例22の泥土とした。
【0083】
<比較例23>
軽焼マグネシウム・粒径小26.4g、硫酸第一鉄・一水和物2.1g、グアガム・粒径小1.5gを予め混合して30gの泥土処理剤を得たこと以外は実施例5と同様にして、比較例23の泥土とした。
【0084】
<比較例24>
軽焼マグネシウム・粒径小26.4g、硫酸第一鉄・一水和物2.1g、グアガム・粒径大1.5gを予め混合して30gの泥土処理剤を得たこと以外は実施例5と同様にして、比較例24の泥土とした。
【0085】
(ヒ素溶出試験)
実施例・比較例に対するヒ素溶出試験はJIS K0102 61.2「水素化物発生原子吸光法」に準拠し、ヒ素測定キット「MQuant Arsenic Test」を用いて行った。本試験方法によるヒ素の測定範囲は0.005~0.5mg/Lである。泥土処理剤で処理した後の処理対象物のヒ素溶出試験結果は、0.1mg/L未満であることが環境基準に照らして好ましい。
【0086】
(コーン指数)
実施例・比較例のコーン指数は、JIS A 1228「締固めた土のコーン指数試験方法」に準拠して測定した。コーン指数は、泥土処理剤を模擬土に添加してから1時間後および24時間後に測定した。泥土処理剤添加から1時間後のコーン指数が150KN/m2を越えたときに合格とした。
【0087】
模擬土1に係る実験の結果を表4に、模擬土2に係る実験の結果を表5に示す。
【0088】
【0089】
【0090】
表4,5から分かるように、全ての実施例・比較例においてヒ素溶出試験結果は定量下限の0.005mg/L未満であり、模擬土1のヒ素溶出試験結果0.051mg/L、模擬土2のヒ素溶出試験結果0.039mg/Lを大幅に下回り、環境基準を満たしていた。これは、硫酸第一鉄・一水和物のヒ素吸着作用が働いたためだと考えられる。
【0091】
実施例1~8における、泥土処理剤添加から1時間後のコーン指数は、150KN/m2を上回り、模擬土1、模擬土2を十分に固化していた。一方、グアガムの粒径が高分子の粒径以上である比較例1~24における、泥土処理剤添加から1時間後のコーン指数は、合格基準を満たさなかった。