(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】X線CT装置
(51)【国際特許分類】
G01N 23/046 20180101AFI20241004BHJP
【FI】
G01N23/046
(21)【出願番号】P 2020196617
(22)【出願日】2020-11-27
【審査請求日】2023-08-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】506382792
【氏名又は名称】コムスキャンテクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】増岡 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】熊本 創
(72)【発明者】
【氏名】山本 肇
(72)【発明者】
【氏名】菊池 一夫
(72)【発明者】
【氏名】冨塚 貴史
【審査官】井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-161507(JP,A)
【文献】国際公開第2018/198242(WO,A1)
【文献】特開2007-159987(JP,A)
【文献】国際公開第2009/063974(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00-G01N 23/2276
G01B 15/00-G01B 15/08
A61B 6/00-A61B 6/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持台と、
前記支持台上において縦軸を中心に回転する架台と、
供試体を設置する設置台と、
前記供試体に対してX線を照射するX線源と、
前記供試体を透過したX線を検出するX線検出器と、を備えるX線CT装置であって、
前記X線源は、前記架台の一方の端部に配設されていて、
前記X線検出器は、前記架台の他方の端部に配設されており、
前記架台は、前記縦軸が設定された中央部に開口を有し、
前記設置台は、前記架台とは物理的に独立しており、前記開口を
通って前記支持台に
立設された支柱により支持されていることを特徴とする、X線CT装置。
【請求項2】
前記X線検出器が、前記X線源に対して前後左右方向に移動可能であることを特徴とする、請求項1に記載のX線CT装置。
【請求項3】
前記設置台を回転させながらのX線の照射と、前記架台を回転させながらX線の照射が選択可能であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のX線CT装置。
【請求項4】
前記設置台が、縦軸を中心に回転可能で、かつ、上下動可能で、なおかつ、前後左右方向に移動可能であることを特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のX線CT装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線CT装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線CT装置により、検体の内部構造の三次元画像を作成する場合がある。
例えば、医療用X線CT装置は、X線源と、被験者を挟んでX線源と対向するX線検出器とを横軸(通常は水平軸)を中心に回転させつつ撮影を行う(例えば、特許文献1参照)。
また、産業用X線CT装置では、縦軸(通常は鉛直軸)を中心に検体を回転させながら、検体をはさんで対向するように設けられたX線源とX線検出器により撮影を行うのが一般的である。
近年、地盤供試体または岩盤供試体を用いた室内要素試験(例えば、一軸圧縮試験、三軸圧縮試験、圧密試験、透水試験等)を行いながら、供試体の内部の状況変化をCT画像により観察、分析するニーズが高まっている。室内要素試験を実施しながらCT画像を撮影するためには、供試体を試験装置にセットした状態で、X線源およびX線検出器を試験装置の周囲を回転させながら撮影する必要がある。ところで、強度試験や通水試験などの室内要素試験の試験装置の多くは、供試体の上下に治具等を配置する必要があるためX線源およびX線検出器を横軸を中心に回転させるタイプのX線CT装置では、X線が試験装置に遮られ供試体を鮮明に撮影できない。また、設置台や試験装置等に付属する電力用ケーブルや計測用ケーブルが撮影視野内に入ると、ハレーションなどのノイズが生じ、鮮明なCT画像を得られ難くなる。また、縦軸を中心に供試体を回転させる従来の産業用X線CT装置を利用して室内要素試験を行いながらCT画像を撮影しようとすると、試験装置に接続される配管や配線が装置から外れたり、よじれたりする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、供試体に対して、外部から配管・配線等を接続して室内要素試験を実施しながら鮮明なCT画像を撮影することを可能としたX線CT装置を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための本発明は、縦軸を中心に回転する架台と、供試体を設置する設置台と、前記供試体に対してX線を照射するX線源と、前記供試体を透過したX線を検出するX線検出器とを備えるX線CT装置である。前記X線源は前記架台の一方の端部に配設されていて、前記X線検出器は前記架台の他方の端部に配設されている。また、前記架台は前記縦軸が設定された中央部に開口を有している。そして、X線CT装置は、前記架台が支持台上において回転可能に支持されていて、前記設置台は前記架台とは物理的に独立しており、前記開口を通って前記支持台に立設された支柱により支持されている。
かかるX線CT装置によれば、縦軸を中心に回転する架台の両端部にX線源とX線検出器が配置されている一方で、架台の中央部に形成された開口を通じて設置台が支持台に支持されているため、X線源およびX線検出器は、設置台の周囲を旋回する。そのため、供試体に対して試験を行いつつ、供試体内部をX線CT撮影することが可能である。また、供試体に対して各種室内要素試験を実施するための電力ケーブル等を前記開口を通じて試験装置や供試体まで配線できるため、撮影視野外に電力ケーブルなどを逃がすことができる。
また、前記X線検出器が、前記X線源に近接または離間する方向(前後方向)および左右方向に移動可能であれば、撮影画像の倍率をある程度調整可能にするとともに、供試体を透過したX線量の減衰を調整することができる。
また、架台の回転を停止させて設置台(供試体)を回転させた状態(スタティックモード)によるX線の照射と、架台を回転させた状態(ダイナミックモード)によるX線の照射が選択可能であるのが望ましい。設置台が、上下動可能で、かつ、X線源に対して前後方向に移動可能で、なおかつ、縦軸に対して回転可能なため、低倍率から高倍率までの選択が可能な状態で、スタティックモードによる撮影が可能なため、通常の工業用CT装置としての機能も兼備できる。
さらに、前記設置台が、縦軸を中心に回転可能で、かつ、上下動可能で、なおかつ、前後左右方向に移動可能であれば、供試体や室内試験装置等の規模に応じて、設置台と架台のいずれかを回転させることを選択できる。また、設置台を上下動させることで、撮影したい部位を任意に選択できる。
【発明の効果】
【0006】
本発明のX線CT装置によれば、外部から配管・配線等を接続して室内要素試験を供試体に対して実施しながら鮮明なCT画像を撮影することができるとともに、広範な倍率における撮影が可能な工業用CT装置としての機能も兼備できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第一実施形態に係るX線CT装置を示す斜視図である。
【
図2】第一実施形態のX線CT装置の縦断図である。
【
図3】第一実施形態のX線CT装置の横断図である。
【
図4】第二実施形態に係るX線CT装置を示す図であって、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<第一実施形態>
第一実施形態では、土砂や岩盤により形成された供試体に対して室内要素試験を行いながら、供試体の内部の状況変化をCT画像により観察、分析する場合について説明する。CT画像は、X線CT装置1を利用して撮影する。
図1にX線CT装置1を示す。また、
図2に
図1のA-A矢視図、
図3に
図1のB-B矢視図を示す。
X線CT装置1は、
図1に示すように、支持台2、架台3、X線源4、X線検出器5および設置台6を備えている。X線CT装置1は、設置台6の上方が開放されているため、供試体Sの上方に加圧手段(油圧シリンダ等)を備える縦長の装置を利用した室内要素試験(例えば一軸圧縮試験など)を行う場合であっても、CT画像を撮影可能としている。
【0009】
支持台2は、本体部21と、本体部21に縦軸(本実施形態では鉛直軸)を中心に回転可能に設けられた回転部22と、回転部22に回転力を付与する動力部23とを備えている。
本実施形態の本体部21は、箱型に形成されている。本体部21は、X線CT装置1のメンテナンスやX線CT装置1に供試体Sを設置する際の足場としても機能する。また、本体部21には、
図2に示すように、ダクト7が配管されている。ダクト7は、室内要素試験において、試験装置に接続するケーブルや送液チューブなどを挿通するための管路である。ダクト7の一端は、支持台2の中央部において上向きに延びていて、ダクト7の他端は、支持台2の側部において、外向きに開口している。
【0010】
回転部22は、本体部21に回転可能に支持されている。本実施形態の回転部22は、本体部21上に回転可能に設けられている。回転部22は、環状を呈していて、回転部22の中央には、上下に貫通した空間24が形成されている。回転部22には、架台3が上載されていて、回転部22と架台3が一緒に回転する。
動力部23は、モーター等からなり回転部22に回転力を付与する。本実施形態の回転部22の外面には、動力部23に形成された歯車と歯合する歯車が形成されていて、動力部23が駆動に伴い回転部22が回転する。なお、回転部22への動力伝達手段は限定されるものではなく、例えば、ベルトやチェーン等を利用したものであってもよい。
【0011】
架台3は、回転部22の上面に固定されている。架台3は、外形形状が平面視矩形状を呈している。架台3は、鋼材を組み合わせることにより格子状(
図1では板状に表示している)に形成されていて、
図2および
図3に示すように、中央部に開口31を有している。架台3(本体部21)の回転中心である縦軸は、開口31の中央を通るように設定されている。架台3は、支持台2上において、回転部22の回転に伴って縦軸を中心に回転する。開口31には、設置台6を支持する支持部材(支柱61)が挿通されている。また、開口31には、支持台2から延設したダクト7が挿通されている。開口31に配設された支柱61やダクト7は、架台3から独立して支持台2に支持されており、架台3に伴って回転することはない。
【0012】
X線源4は、供試体Sに対してX線を照射する。
図2に示すように、X線源4は、架台3の一方の端部(
図2において右側の端部)に配設されている。X線源4は、架台3の一方の端部に立設された支持部材41の上端に固定されている。支持部材41は、架台3の端部に一体に固定されている。そのため、X線源4は、架台3の回転に伴って、供試体Sの周囲を回転する。本実施形態の支持部材41は、角鋼管により形成された柱状部材であるが、支持部材41の構成は限定されるものではなく、例えば、壁状の部材であってもよいし、複数の鋼材を組み合わせることにより形成された部材であってもよい。X線源4に必要な配線(電力線や通信用の配線等)は、支持部材41内または支持部材41に沿って設けられている。
X線源4によるX線の照射は、架台3の回転を停止させて設置台を回転させた状態(スタティックモード)と、架台3を回転させた状態(ダイナミックモード)とが選択可能である。
【0013】
X線検出器5は、X線源4から照射されて供試体Sを透過したX線を検出する。
図2に示すように、X線検出器5は、架台3の他方の端部(
図2において左側の端部)に配設されている。X線検出器5は、X線源4と供試体Sを挟んで対向している。また、X線検出器5は、X線源4に対して前後左右に移動可能である。
X線検出器5は、架台3の他方の端部に立設された支持部材51の上端に設けられている。支持部材51は、架台3に一体に固定されている。そのため、X線検出器5は、架台3の回転に伴って、供試体Sの周囲を回転する。X線検出器5に必要な配線(電力線や通信用の配線等)は、支持部材51内または支持部材51に沿って設けられている。
【0014】
支持部材51の上端には、縦レール52と、横レール53が配設されている。縦レール52は、X線源4に対して前後方向に延設されている。横レール53は、縦レール52に上載されていて、縦レール52と直交する方向に延設されている。横レール53は、縦レール52をガイドとして、縦レール52に沿って前後方向に移動する。また、横レール53には、横レール53に沿って横移動する取付部材54が設けられている。取付部材54には、X線検出器5が取り付けられている。すなわち、X線検出器5は、縦レール52および横レール53を介して、前後左右に移動可能である。X線検出器5が前後左右に移動することで、X線源4に対する向きの調整が可能である。また、縦レール52によりX線検出器5がX線源4に対して前後(X線源に近接あるいは離間する方向)に移動することで、撮影画像の倍率や解像度の調整が可能となるとともに、供試体を透過したX線量の減衰を調整することもできる。また、X線検出器5が横レール53によりX線源に対して左右方向に移動することで、X線検出器5の幅を超える大きな供試体でも、複数回に分けて撮影した画像をつなぎ合わせることにより、全体を一つの画像として構築できる。
【0015】
設置台6は、供試体Sを設置するための台座である。設置台6は、
図2および
図3に示すように、開口31を通って支持台2に立設された支柱61により支持されている。本実施形態では、四本の支柱61が設けられている。すなわち、設置台6は、開口31を通じて支持台2に支持されていて、架台3とは独立している。
設置台6は、供試体Sを載置する台本体60と、支柱61に支持された第一横移動手段62と、第一横移動手段62に上載された第二横移動手段63と、第二横移動手段63に設けられたリフト手段64と、リフト手段64に支持された回転手段65とを備えている。
【0016】
第一横移動手段62は、X線源4に対して前後方向(
図2において左右方向)に延設されていて、第二横移動手段63をX線源4に対して前後方向に移動可能に支持している。すなわち、第二横移動手段63は、第一横移動手段62上を前後に移動可能に設けられている。
また、第二横移動手段63は、左右方向(第一横移動手段62と直交する方向)に延設されていて、リフト手段64を左右に移動可能に支持している。
リフト手段64は、
図3に示すように、第二横移動手段63上に設けられた支持部66と、支持部66に対して上下動可能に設けられた昇降部67とを備えている。昇降部67は、回転手段65を支持している。
そして、回転手段65は、台本体60を回転可能に支持している。すなわち、台本体60は、縦軸を中心に回転可能である。なお、回転手段65と台本体60との間には、微調整手段68が開設されていて、台本体60の位置を前後左右方向に微調整することが可能である。また、微調整手段68を利用して回転手段65上で前後左右に移動させることで、供試体の中心を回転手段65の回転中心に合わせて、供試体の回転半径を最小化することができる。
このように、設置台6(台本体60)は、回転手段65により縦軸を中心に回転可能で、かつ、リフト手段64により上下動可能で、なおかつ、第一横移動手段62および第二横移動手段63によりX線源4に対して前後左右に移動可能である。
【0017】
X線CT装置1は、金属製の箱体により構成された測定ボックス内に設けられている。測定ボックスは、密閉空間を形成し、X線CT装置1を利用した撮影時(測定時)の放射線の流出を抑制する。
【0018】
以下、X線CT装置1を利用してダイナミックモードにより供試体SのCT画像を撮影する一例を示す。まず設置台6に供試体Sを設置する。設置台6に供試体Sを設置したら、設置台6の第一横移動手段62、第二横移動手段63およびリフト手段64を利用して、供試体Sの位置調整を行う。このとき、供試体Sに対して室内要素試験を行うための試験装置を設置する。試験装置に必要な電力ケーブル等は、ダクト7に挿通し、設置台6の下側から試験装置に接続する。供試体Sの設置台6への設置にともない、X線検出器5の位置調整を行う。
供試体Sの設置が完了したら、室内要素試験を実施しながらX線CT装置1を起動させる。X線CT装置1が起動すると、X線源4からX線が照射されるとともに、X線源4と対向する位置に配設されたX線検出器5によりX線を検出する。このとき、X線源4およびX線検出器5が供試体Sの周囲を回転(旋回)しつつ、X線源4が供試体Sに対してX線を照射する。また、設置台6のリフト手段64により供試体Sを上下に移動させることで、高さ位置の異なる箇所での撮影を行うことも可能である。X線検出器5により検出したデータは、図示しない演算手段(コンピュータ)に送信され、画像データとして処理される。このように、供試体Sに対して半周以上の方向から多数の透過画像を採取することで、供試体Sの三次元的な内部構造の画像データを入手する。
スタティックモードにより供試体SのCT画像を撮影する場合には、まず、供試体Sを設置台6に設置した後、台本体60を前後左右に移動させて、供試体Sの中心軸が設置台6の回転軸(縦軸)に一致あるいは近づくように位置調整を行う。位置調整を行ったら、架台3を固定した状態で、設置台6を回転させつつ、X線源4からX線を照射し、X線検出器5によりX線を検出する。
【0019】
本実施形態のX線CT装置1によれば、縦軸を中心に回転する架台3の両端部にX線源4とX線検出器5が配置されている一方で、架台3の中央部に形成された開口31を通じて設置台6が支持台2に支持されているため、X線源4およびX線検出器5は、設置台6の周囲を旋回する。そのため、供試体Sに対して試験を行いつつ、供試体S内部をX線CT撮影することが可能である。すなわち、室内要素試験を実施中の供試体Sに生じる内部の変化をCT画像により確認することができる。
架台3(X線源4およびX線検出器5)は、縦軸を中心に水平方向に360°回転するため、縦長の試験装置を配置した場合でも、X線源4およびX線検出器5と干渉することはなく、したがって、室内要素試験中の供試体SのCT画像を撮影できる。
また、室内要素試験を実施するための電力ケーブル等は、架台3の開口31を通じて設置台6の下側から配線されているため、撮影視野内に入りに難くい。さらに、電力ケーブルなどは、ダクト7を利用して配線するため、配線作業が容易である。
【0020】
また、X線検出器5が、X線源4に対して前後に移動可能なため、撮影画像の倍率を調整可能であるとともに、X線量の減衰調整も可能となる。そのため、供試体Sのサイズに応じて倍率の変更を容易に行うことができる。
また、スタティックモードによるX線の照射と、ダイナミックモードによるX線の照射が選択可能であるので、試験の目的に応じて必要な範囲でCT画像を取得できる。
また、設置台6は、縦軸を中心に回転可能で、かつ、上下動可能で、なおかつ、X線源4に対して前後方向に移動可能であるため、供試体Sや室内試験装置等の規模に応じて、設置台6と架台3とのいずれかを回転させることを選択でき、また、供試体Sの位置の微調整が容易である。また、供試体Sの高さ位置を調整可能なため、供試体Sの撮影高さ位置を任意に選べる。
【0021】
<第二実施形態>
第二実施形態では、第一実施形態と同様に、土砂や岩盤により形成された供試体に対して室内要素試験を行いながら、供試体の内部の状況変化をCT画像により観察、分析する場合について説明する。
図4(a)および(b)に第二実施形態のX線CT装置1を示す。
X線CT装置1は、
図4(a)および(b)に示すように、支持体20、架台3、X線源4、X線検出器5および設置台6を備えている。
【0022】
図4(b)に示すように、支持体20は、平面視矩形状の支持台2と、支持台2の少なくとも四隅に立設された支柱25と、支柱25の上端部に固定された枠体26と、枠体26に固定された吊持部27と、吊持部27によって支持された回転部22とを備えている。
吊持部27は、枠体26の対向する一対の辺に横架されている。吊持部27の中央には、貫通孔27aが形成されている。なお、本実施形態では、枠体26に吊持部27が固定されているものとしたが、吊持部27の構成は限定されるものではなく、例えば、支柱25によって支持された板状部材であってもよいし、格子状の部材であってもよい。
【0023】
回転部22は、吊持部27に回転可能に支持されている。本実施形態の回転部22は、吊持部27の下面中央部に設けられている。回転部22は、環状を呈していて、回転部22の中央には、上下に貫通した空間24が形成されている。回転部22の空間24は、吊持部27の貫通孔27aと連通している。回転部22には、架台3が吊下されていて、回転部22と架台3が一緒に回転する。
【0024】
架台3は、回転部22の下に固定されている。架台3は、
図4(a)示すように、外形形状が平面視矩形状を呈している。架台3の中央部には、吊持部27の貫通孔27aおよび回転部22の空間24と連通する開口31が形成されている。架台3(本体部21)の回転中心である縦軸は、開口31の中央を通るように設定されている。架台3は、回転部22の回転に伴って縦軸を中心に回転する。開口31には、設置台6に設けられた試験装置等の配線等を挿通可能である。
【0025】
X線源4は、設置台6に設置された供試体Sに対してX線を照射する。
図4(b)に示すように、X線源4は、架台3の一方の端部(
図4において右側の端部)に配設されている。X線源4は、架台3の一方の端部から吊下された支持部材41に固定されている。支持部材41は、架台3の端部に一体に固定されている。そのため、X線源4は、架台3の回転に伴って、供試体Sの周囲を回転する。この他のX線源4の詳細は、第一実施形態で示したX線源4と同様なため、詳細な説明は省略する。
【0026】
X線検出器5は、X線源4から照射されて供試体Sを透過したX線を検出する。
図4(b)に示すように、X線検出器5は、架台3の他方の端部(
図4において左側の端部)に配設されている。X線検出器5は、X線源4と供試体Sを挟んで対向している。また、X線検出器5は、X線源4に対して前後左右に移動可能である。
X線検出器5は、架台3の他方の端部に吊下された支持部材51取り付けられている。X線検出器5は、架台3の回転に伴って、供試体Sの周囲を回転する。
【0027】
支持部材51は、レール55を介して架台3に取り付けられている。支持部材51は、レール55に沿って移動可能である。本実施形態のレール55は、架台3の長手方向に沿って延設されている。すなわち、X線検出器5は、レール55を介して、前後に移動可能である。X線検出器5が前後に移動することで、X線源4に対する向きの調整が可能である。また、縦レール52によりX線検出器5がX線源4に対して前後(X線源に近接あるいは離間する方向)に移動することで、試料の大きさに応じた撮影が可能となる(大きな試料に対しても撮影を可能にする)とともに、供試体を透過したX線量の減衰を調整することもできる。
【0028】
設置台6は、供試体Sを設置するための台座である。設置台6は、供試体Sを載置する台本体60と、台座本体60を支持する回転手段65と、回転手段を支持するリフト手段64とを備えている。
リフト手段64は、
図4(b)に示すように、土台69と、土台69上に前後動(
図4において左右方向に移動)可能に設けられた支持部66と、支持部66に対して上下動可能に設けられた昇降部67とを備えている。昇降部67は、回転手段65を支持している。
そして、回転手段65は、台本体60を回転可能に支持している。すなわち、台本体60は、縦軸を中心に回転可能である。
このように、設置台6(台本体60)は、回転手段65により縦軸を中心に回転可能で、かつ、リフト手段64により上下動可能で、なおかつ、X線源4に対して前後に移動可能である。
【0029】
以下、X線CT装置1を利用して供試体SのCT画像を撮影する一例を示す。まず設置台6に供試体Sを設置する。設置台6に供試体Sを設置したら、設置台6を利用して、供試体Sの位置調整を行う。このとき、供試体Sに対して室内要素試験を行うための試験装置を設置する。試験装置に必要な電力ケーブル等は、架台3の開口を挿通させて、設置台6の上方から試験装置に接続する。供試体Sの設置台6への設置にともない、X線検出器5の位置調整を行う。
供試体Sの設置が完了したら、室内要素試験を実施しながらX線CT装置1を起動させる。X線CT装置1が起動すると、X線源4からX線が照射されるとともに、X線源4と対向する位置に配設されたX線検出器5によりX線を検出する。このとき、X線源4およびX線検出器5が供試体Sの周囲を回転(旋回)しつつ、X線源4が供試体Sに対してX線を照射する。また、設置台6のリフト手段64により供試体Sを上下に移動させることで、高さ位置の異なる箇所での撮影を行うことも可能である。X線検出器5により検出したデータは、図示しない演算手段(コンピュータ)に送信され、画像データとして処理される。このように、供試体Sに対して、半周以上の方向から多数の透過画像を採取することで、供試体Sの三次元的な内部構造の画像データを入手する。
【0030】
本実施形態のX線CT装置1によれば、室内要素試験を実施するための電力ケーブル等を、架台3の開口31を通じて設置台6の上側から配線できるため、設置台6の周囲を旋回するX線源4およびX線検出器5の撮影視野内に電力ケーブル等が入りに難くい。
この他の第二実施形態のX線CT装置1の作用効果は、第一実施形態のX線CT装置1と同様なため、詳細な説明は省略する。
【0031】
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、本発明は前述の実施形態に限らず、前記の各構成要素については本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
前記実施形態では、架台3が、鋼材を組み合わせることにより格子状に形成されている場合について説明したが、架台3を構成する材料は限定されるものではなく、例えば、板状を呈していてもよい。
また、ダクト7は、必要に応じて設置すればよい。
X線検出器5は、必ずしも移動可能である必要はない。
設置台6は、必ずしも回転または移動可能である必要はなく、固定されていてもよい。
第一実施形態では、支持台2の本体部21が箱型の場合について説明したが、本体部21の形状は限定されるものではなく、例えば、版状であってもよい。
また、第一実施形態では、回転部22が本体部21の上に設けられている場合について説明したが、回転部22の配置は架台3を設置することが可能であれば限定されるものではない。
前記各実施形態では、供試体Sに対して、全周方向から多数のCT画像を採取するものとしtが、半周方向から採取してもよい。
【符号の説明】
【0032】
1 X線CT装置
2 支持台
20 支持体
3 架台
31 開口
4 X線源
5 X線検出器
6 設置台
7 ダクト
S 供試体