(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】土壌掘削サンプリング装置及び土壌掘削サンプリング方法
(51)【国際特許分類】
E02D 1/04 20060101AFI20241004BHJP
G01N 1/08 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
E02D1/04
G01N1/08 C
(21)【出願番号】P 2021039775
(22)【出願日】2021-03-12
【審査請求日】2023-11-20
(73)【特許権者】
【識別番号】500302552
【氏名又は名称】株式会社IHIエアロスペース
(73)【特許権者】
【識別番号】390025759
【氏名又は名称】株式会社ワイビーエム
(73)【特許権者】
【識別番号】000140719
【氏名又は名称】株式会社加藤製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】川添 謙一
(72)【発明者】
【氏名】川崎 賢一郎
(72)【発明者】
【氏名】近藤 純矢
(72)【発明者】
【氏名】沢井 秋司
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-047531(JP,A)
【文献】特開昭60-095019(JP,A)
【文献】特開2005-171487(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第00149918(EP,A2)
【文献】特開2014-077231(JP,A)
【文献】特開昭57-175242(JP,A)
【文献】特開2014-173398(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 1/04
G01N 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中にロッドを挿入し、所定深度の土壌を採取する土壌掘削サンプリング装置であって、
上記ロッドの先端部は、外周に螺旋状の切り刃と逃げ溝とが形成され、その内部に土試料を収容する試料室と、該試料室の後方に駆動装置とを備え、
上記試料室が
上記ロッドの先端に採取口を有するものであり、
さらに、上記ロッドの先端から進退可能に設けられた小ドリルを備え、
上記小ドリルは、上記試料室を貫通すると共に台形ねじが設けられた連結棒で、上記駆動装置と繋がっており、
上記小ドリル
は、上記駆動装置
が上記台形ねじを介して上記連結棒を上記ロッドの軸方向に駆動することによって進退し、上記採取口を開閉することを特徴とする土壌掘削サンプリング装置。
【請求項2】
上記試料室と
上記駆動装置との間に台座を有し、
上記台座と上記小ドリルとが連結し、これらが一定の間隔で進退することを特徴とする請求項1に記載の土壌掘削サンプリング装置。
【請求項3】
上記試料室後方のロッド内壁に上記台座をガイドするスライドレールを備
えることを特徴とする請求項2に記載の土壌掘削サンプリング装置。
【請求項4】
上記請求項1~3のいずれか1つの項に記載の土壌掘削サンプリング装置を用いた土壌掘削サンプリング方法であって、
上記試料室を閉じた状態で
、上記土壌掘削サンプリング装置に取り付けられたボーリング装置で上記ロッドを回転させて掘削し、
所定深度に達したら
上記駆動装置によって上記小ドリルを進めて上記試料室の
上記採取口を開き、
上記ロッドを回転させて上記試料室に土試料を取り込み、
上記駆動装置によって上記小ドリルを後退させて上記試料室の
上記採取口を閉じて、
上記ロッドを地盤から引き抜くことを特徴とする土壌掘削サンプリング方法。
【請求項5】
上記ボーリング装置によって上記ロッドを回転させながら
上記駆動装置によって上記小ドリルを進めて掘削し、上記試料室を開口することを特徴とする請求項4に記載の土壌掘削サンプリング方法。
【請求項6】
上記ボーリング装置によって上記ロッドを回転させて引き抜きながら上記小ドリルを進めて上記試料室を開口することを特徴とする請求項4又は5に記載の土壌掘削サンプリング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土壌掘削サンプリング装置に係り、更に詳細には、掘削に要するエネルギーが少なく、惑星探査などに有利な土壌掘削サンプリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地中の土試料を採取して地盤を調査することが行われている。
従来の土試料の採取法は、まず所定の深度まで調査孔を掘削し、ロッドを引き抜いた後、この調査孔にサンプラーを所定深度まで挿入し調査孔側壁の土試料を採取する。
【0003】
上記サンプラーは、相対回転可能な内管と外管とを備え、内管内に試料室を有しその側面に採取口と採取刃とを有する。そしてサンプラーを回転させることで採取口を開いて土試料を採取し、逆回転することで採取口を閉じる。
【0004】
この採取法では、調査する地盤によっては、調査孔の孔壁が崩壊してサンプラーの挿入が困難となることや、孔径が拡大してサンプラーの採取刃が孔壁まで達せず土試料を採取できないことがある。
【0005】
また、上方の土試料が調査孔の底に落下したり、サンプラー挿入中に採取口が開いたりして、所定深度以外の土試料が混入してしまうことがある。
【0006】
特許文献1には、サンプラーを打撃によって打ち込んで所定深度の土試料を採取することが開示されている。
【0007】
特許文献1に記載のサンプラーは、ロッド先端部の側面に採取口と採取刃とを有し、その内側に試料室を有する。また、上記試料室を貫通して先端に至るシャフトを有し、このシャフトによって地上からの打撃力をロッド先端部に伝えてサンプラーを地中に貫入し、上記シャフトのみを引き抜くことでロッド内に試料室を確保するものである。
【0008】
このサンプリング方法によれば、予め調査孔を掘削する必要がなく、一回のロッドの打ち込みによって土試料を採取できるので効率がよく、仮に、打ち込み時にサンプラーの試料採取口が開いたとしても、打ち込み時には、試料室をシャフトが貫通しているため、試料室内に土試料が入らず、所定深度以外の土試料が混入することが防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、サンプラーを打撃によって打ち込むには、ハンマーなどの重量物に勢いをつけてロッドを打撃する必要があり、打ち込み装置が重くなるだけでなく、重いハンマーなどを動かすエネルギーも大きくなって、土試料の採取に多くのエネルギーを必要とする。したがって、使用できるエネルギー量が制限される衛星や惑星などの探査には不向きである。また、所定深度以外の土試料が混入しては、正確な調査ができない。
【0011】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、所定深度以外の土試料が混入する恐れがなく、軽量化が可能でかつ省エネルギーで土試料を採取できる土壌掘削サンプリング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、ドリルの先端を開口させて上記ドリルの内部に土試料を収容する試料室を設け、その先端から進退可能な小ドリルによって上記開口部を塞ぐことにより、上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
即ち、本発明の上記課題は、下記(1)~(3)のいずれか1つに記載の土壌掘削サンプリング装置によって解決される。
(1)地中にロッドを挿入し、所定深度の土壌を採取する土壌掘削サンプリング装置であって、
上記ロッドの先端部は、外周に螺旋状の切り刃と逃げ溝とが形成され、その内部に土試料を収容する試料室と、該試料室の後方に駆動装置とを備え、
上記試料室がロッドの先端に採取口を有するものであり、
さらに、上記ロッドの先端から進退可能に設けられた小ドリルを備え、
上記小ドリルが、上記駆動装置によって進退し、上記採取口を開閉することを特徴とする土壌掘削サンプリング装置。
(2)上記試料室と駆動装置との間に台座を有し、
上記台座と上記小ドリルとが連結し、これらが一定の間隔で進退することを特徴とする上記第(1)項に記載の土壌掘削サンプリング装置。
(3)上記試料室後方のロッド内壁に上記台座をガイドするスライドレールを備え、
上記駆動装置が、台形ねじを介して小ドリルを進退させることを特徴とする上記第(2)項に記載の土壌掘削サンプリング装置。
【0014】
また、本発明の上記課題は、下記(4)~(6)のいずれか1つに記載の土壌掘削サンプリング方法によって解決される。
上記請求項1~3のいずれか1つの項に記載の土壌掘削サンプリング装置を用いた土壌掘削サンプリング方法であって、
上記試料室を閉じた状態で上記ロッドを回転させて掘削し、
所定深度に達したら上記小ドリルを進めて上記試料室の採取口を開き、
上記ロッドを回転させて上記試料室に土試料を取り込み、
上記小ドリルを後退させて上記試料室の採取口を閉じて、
上記ロッドを地盤から引き抜くことを特徴とする土壌掘削サンプリング方法。
(5)上記ロッドを回転させながら上記小ドリルを進めて掘削し、上記試料室を開口することを特徴とする上記第(4)項に記載の土壌掘削サンプリング方法。
(6)上記ロッドを回転させて引き抜きながら上記小ドリルを進めて上記試料室を開口することを特徴とする上記第(4)項又は第(5)項に記載の土壌掘削サンプリング方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ロッドの先端を開口させて上記ロッドの内部に土試料を収容する試料室を設け、その先端から進退可能な小ドリルによって上記開口部を塞ぐこととしたため、軽量化が可能で、かつ省エネルギーで土試料を採取できる土壌掘削サンプリング装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の土壌掘削サンプリング装置の外観を示す概略図である。
【
図3】本発明の土壌掘削サンプリング装置で土試料を採取する状態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<土壌掘削サンプリング装置>
本発明の土壌掘削サンプリング装置について詳細に説明する。
上記土壌掘削サンプリング装置は、地中にロッドを挿入して所定深度の土試料の採取を行うものである。
【0018】
図1に示すように、上記ロッドの先端部2には、その外周に螺旋状の切り刃3と逃げ溝4とが形成され、その先端から進退可能に設けられた小ドリル10を有する。
【0019】
上記小ドリルが後退した状態、すなわち小ドリルがロッドの先端に当接した状態で、小ドリルと、上記螺旋状の切り刃及び逃げ溝とが一体となって1つの大きなドリルを構成し、ロッドの回転によって、小ドリルがロッドと一緒に回転して掘削する。
【0020】
図1中、A-A’の断面図を
図2に示す。
上記先端部の内部には、
図2に示すように、ロッドの先端に採取口61を有する試料室6と、該試料室よりも後方に駆動装置5とを備えている。この駆動装置5は、ロッドに対して相対的に回転しないようにロッドの内壁に固定されており、上記小ドリルを進退させて採取口を開閉する。上記試料室の蓋となる小ドリルの後端には、土試料を受ける凹部を設けることが好ましい。
【0021】
本発明の土壌掘削サンプリング装置は、上記ロッドと小ドリルとが一体となったドリルを回転させて地盤の掘削を行うため、ロッドを打ち込む方法に比して、掘削に要するエネルギーを省力化できるのに加えて、掘削時には小ドリルによって採取口が閉じているため、所定深度以外の土試料が混入することがない。
【0022】
上記小ドリルは、試料室を貫通する連結棒7で駆動装置と繋がっており、上記駆動装置で連結棒を進退させることで小ドリルが進退する。このとき、小ドリルがロッドに対して相対的に回転しながら進退してもよいが、小ドリルがロッドに対して相対的に回転するのではなく、ロッドに対して進退するだけであることが好ましい。
【0023】
小ドリルがロッドに対して進退するだけであると、駆動装置は小ドリルを進退させる出力を有すれば十分であり、小ドリルを単独で回転させて掘削を可能にする機構や大きな出力は不要であるので小型軽量化が可能である。上記駆動装置としては、電気モータやソレノイドを使用できる。
【0024】
上記連結棒に台形ねじを設け、この台形ねじを介して連結棒を駆動することが好ましい。台形ねじはセルフロック機能を有するので、小ドリルなどから軸方向の力を受けて連結棒が移動することが防止される。
【0025】
したがって、駆動装置にブレーキを設ける必要がないのに加え、台形ねじは三角ねじに比べて小さなモーメントで軸方向に大きな力が伝達できるので、上記駆動装置のさらなる小型軽量化が可能である。
【0026】
上記試料室と駆動装置との間に台座8が設けられる。
また、上記台座と小ドリルとの間にシール81を設けることが好ましい。このシールは試料室の内壁に当接して後方への土試料の侵入を防止している。これにより土試料による駆動装置の故障を防止できる。
【0027】
上記シールは、試料室の内壁に固定されていてもよいが連結棒に固定されていることが好ましい。これにより、連結棒の進退によって上記小ドリルとシールとが一定の間隔を保って進退する。したがって、掘削孔が崩れたとしても小ドリルとシールとの間に試料室の容積以上の土試料がなだれ込むことがなく、これによって試料室を閉じられなくなることを防止できる。
【0028】
上記台座の位置を検知するセンサをロッド先端部の内部に有することが好ましい。
台座の位置を検知することで小ドリルの位置がわかり、採取口が完全に閉じているか否かや、採取口の開き具合を検知することができる。
台座の位置は、駆動装置による駆動量、具体的には駆動装置が電気モータである場合、その回転数によって台座ねじの進退量を知ることができる。またリミットスイッチを使用すると台座位置を、さらに正確に把握することが可能である。
【0029】
また、駆動装置が電気モータである場合には、試料室後方のロッド内壁にロッドの軸方向に延びるガイド9が設けられ、このガイドに沿って台座が移動することが好ましい。上記ガイドによって台座や、該台座が固定された連結棒の回転が制止されていることで、小さな駆動力で小ドリルを進退させることが可能である。
【0030】
上記ガイドとしては、例えば、スライドレールや溝などを挙げることができる。中でもスライドレールは、小さな力で台座を移動させることができるので好ましく使用できる。
【0031】
<土壌掘削サンプリング方法>
次に、本発明の土壌掘削サンプリング装置を用いた土壌掘削サンプリング方法について説明する。
【0032】
地上で上記土壌掘削サンプリング装置をボーリング装置に取り付ける。このとき、小ドリルは、ロッドの先端に当接し採取口が完全に閉じた状態であり、ロッドの外周に設けられた螺旋状の切り刃及び逃げ溝と一体となって1つの大きなドリルを構成している。
【0033】
この大きなドリルをボーリング装置で正回転させて地盤を掘削する。ロッドの先端部が所定深度に達したら、駆動装置を稼働させ、
図3に示すように、小ドリルを進め、ロッドに対して相対的に押し出して上記試料室を開口する。
【0034】
試料室を開口する際は、所定深度に達するまでの掘削にかかった回転トルクなどのフィードバック情報から土質を予測し、試料室の開口方法を変えることが好ましい。
【0035】
例えば、所定深度の土質が粘土などの自立性が高い土質であると予想されるときは、ロッドを正回転させて小ドリルでさらに掘削しながら、駆動装置で小ドリルを押し出す。小ドリルで掘削された土試料は、小ドリルの切り刃に沿って上方に送られて、小ドリルの後端の上部に乗る。
【0036】
ロッドを正回転させて採取口を開くときは、ロッドの深度を変えずに小ドリルのみの深度が深くなるように掘削してもよく、小ドリルでの掘削速度がロッドでの掘削速度よりも速くなるように、小ドリルとロッドの両方で掘削してもよい。
【0037】
また、所定深度の土質が砂利などの自立性が低い土質であると予想されるときは、小ドリルの深度を変えずにロッドを逆回転させてロッドを引き抜き、ロッドの切り刃の上に乗った土試料を小ドリルの後端に落とす。小ドリルの後端は、上記のように土試料を受ける凹部を有するので、土試料が小ドリルからこぼれ落ちることがない。
【0038】
このようにして土試料を小ドリルの後端に乗せ、小ドリルを後退させて採取口を閉じることで土試料を試料室に収容することができる。
【0039】
土試料を試料室に収容したら、小ドリルによって採取口が完全に閉じていることを確認し、ロッドを引き抜くことで所定深度の土試料のみを地上に取り出すことができる。
【符号の説明】
【0040】
1 土壌掘削サンプリング装置
2 先端部(ロッド)
3 切り刃
4 逃げ溝
5 駆動装置
6 試料室
61 採取口
7 連結棒
8 台座
81 シール
9 ガイド
10 小ドリル