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特許7565562炎症及び炎症性疾患の予防及び処置するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】炎症及び炎症性疾患の予防及び処置するための方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/69 20170101AFI20241004BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20241004BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20241004BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20241004BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20241004BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20241004BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20241004BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20241004BHJP
   A61K 9/50 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
A61K47/69
A61K31/7105
A61P29/00
A61P17/02
A61P1/04
A61K47/02
A61K47/36
A61K47/42
A61K9/50
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2021545990
(86)(22)【出願日】2020-02-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-11
(86)【国際出願番号】 US2020016630
(87)【国際公開番号】W WO2020163371
(87)【国際公開日】2020-08-13
【審査請求日】2023-02-03
(31)【優先権主張番号】62/800,988
(32)【優先日】2019-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/905,841
(32)【優先日】2019-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512304032
【氏名又は名称】ザ・リージェンツ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・コロラド・ア・ボディ・コーポレイト
【氏名又は名称原語表記】THE REGENTS OF THE UNIVERSITY OF COLORADO A BODY CORPORATE
(73)【特許権者】
【識別番号】521346483
【氏名又は名称】コロラド・スクール・オブ・マインズ
【氏名又は名称原語表記】COLORADO SCHOOL OF MINES
(73)【特許権者】
【識別番号】519209680
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ セントラル フロリダ リサーチ ファウンデーション、インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(74)【代理人】
【識別番号】100221534
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 志穂
(72)【発明者】
【氏名】リーチティ,ケネス
(72)【発明者】
【氏名】ゾギーブ,カルロス
(72)【発明者】
【氏名】クレブス,メリッサ ディ
(72)【発明者】
【氏名】デューベリー,リンデル
(72)【発明者】
【氏名】シール,スディプタ
【審査官】三上 晶子
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2019-0029900(KR,A)
【文献】特開2012-056936(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0344764(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0111007(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2012-0066369(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0221490(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03093027(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00- 47/69
A61K 31/33- 33/44
A61P 1/00- 43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イクロRNAコンジュゲート酸化セリウムナノ粒子(CNP)を含むキトサンミクロゲルを含む、炎症を処置するための医薬
【請求項2】
炎症が、創傷と関連する、請求項1に記載の医薬
【請求項3】
創傷が、糖尿病性潰瘍である、請求項2に記載の医薬
【請求項4】
処置により、未処置の対象の創傷閉鎖の速度と比較して、創傷閉鎖の速度の増加がもたらされる、請求項2または3に記載の医薬
【請求項5】
キトサンミクロゲルが、局所的、皮内または筋肉内投与される、請求項1~3のいずれか1項に記載の医薬
【請求項6】
炎症が、潰瘍性大腸炎またはクローン病と関連する、請求項1に記載の医薬
【請求項7】
キトサンミクロゲルが、経口または直腸投与される、請求項6に記載の医薬
【請求項8】
キトサンミクロゲルが、複数回投与される、請求項1~7のいずれか1項に記載の医薬
【請求項9】
キトサンミクロゲルが、毎日投与される、請求項1~8のいずれか1項に記載の医薬
【請求項10】
キトサンミクロゲルの投与が、酸化ストレスを処置または防止する、請求項1~9のいずれか1項に記載の医薬
【請求項11】
マイクロRNAが、miRNA-146aを含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の医薬
【請求項12】
CNPの表面が、ヒアルロン酸、コラーゲン及びフィブリノーゲンから選択される1つ以上の生体適合性分子でコーティングされている、請求項1~11のいずれか1項に記載の医薬
【請求項13】
CNPが、約3~5nmのサイズ範囲を有する、請求項1~12のいずれか1項に記載の医薬
【請求項14】
CNPが、ユーロピウム(Eu)、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)及びルテチウム(Lu)のうちの1つ以上から選択されるランタニドを添加されている、請求項1~13のいずれか1項に記載の医薬
【請求項15】
キトサンミクロゲル内に包埋されたmiRNA146aコンジュゲート酸化セリウムナノ粒子(CNP)を含む、医薬組成物。
【請求項16】
CNPの表面が、ヒアルロン酸、コラーゲン及びフィブリノーゲンから選択される1つ以上の生体適合性分子でコーティングされている、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
CNPが、約3~5nmのサイズ範囲を有する、請求項15または16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
CNPが、ユーロピウム(Eu)、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)及びルテチウム(Lu)のうちの1つ以上から選択されるランタニドを添加されている、請求項15~17のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項19】
キトサンポリマー;及び
マイクロRNA(miRNA)を含む酸化セリウムナノ粒子(CNP)
を含む、ミクロゲル。
【請求項20】
miRNAが、miRNA 146aである、請求項19に記載のミクロゲル。
【請求項21】
a)複数のキトサンポリマー及びマイクロRNA(miRNA)を含む酸化セリウムナノ粒子(CNP)を含む組成物を形成すること;ならびに
b)キトサンポリマーをゲニピンで架橋して、抗炎症性CNPを含むキトサンミクロゲルを形成するこ
を含む、抗炎症性キトサンミクロゲル組成物の作製方法。
【請求項22】
miRNAが、miRNA 146aである、請求項21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、炎症ならびに創傷及び炎症性腸管障害を含む炎症性障害を予防及び/または処置するための、ゲルベースの送達粒子で送達される酸化セリウムナノ粒子の使用に関する。
【0002】
20190925_SequenceListing_P282008WO01.txtという名称の、2019年9月25日を作成された、425バイトを含む配列表は、ASCIIテキストファイルとして提出され、本明細書で参照により組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
糖尿病は、世界中でパンデミック規模に達し、糖尿病の合併症、例えば、糖尿病性潰瘍及び創傷治癒障害は、重大な医学的問題を代表し、糖尿病性下肢潰瘍単独の年間費用は、15億ドルを超える。これらの慢性創傷は、長期入院、抗生物質への長期曝露、急性及び慢性疼痛、面倒な創傷ケアの必要性、及び運動の制限を含む、個体の重大な病的状態をもたらす。加えて、下肢の潰瘍は、全糖尿病性下肢切断の84%の前に生じ、糖尿病患者の入院の主な原因である。これらの慢性創傷が個人及び社会の両方に多大な影響を及ぼしているにもかかわらず、効果的な治療法がない。従って、糖尿病による創傷治癒障害の修正、是正、または予防は、患者の転帰及び医療費の両方に広範囲にわたる結果をもたらす。
【0004】
正常な創傷修復及び損傷に対する応答は、多くの細胞型、例えば、炎症細胞、線維芽細胞、ケラチノサイト、内皮細胞、及び前駆細胞、の相互作用、ならびに多くの成長因子、細胞外マトリックス(ECM)タンパク質、及び酵素の関与、を要する規則正しく明確に定義された一連の事象に続く。糖尿病性創傷治癒では、創傷治癒プロセスのこの複雑な組織化が中断され、治癒障害がもたらされる。糖尿病性創傷治癒を含む創傷治癒の有意な改善が、酸化ストレス及び炎症を緩和する治療的介入の後にみられている。
【0005】
炎症性腸疾患(IBD)、特に、潰瘍性大腸炎は、同様に、腸の炎症、酸化ストレス、及び粘膜バリアの破壊を特徴とする。現在の処置は、潰瘍性大腸炎などのIBDに罹患する患者の症状及び生存率を改善するには、ほとんど効果がないので、代替療法が緊急に必要とされる。本発明は、そのようなニーズを扱う。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、(「CeOナノ粒子」、「ナノセリア」、または「CNP」とも呼ばれる)酸化セリウムナノ粒子を含む有効量のキトサンミクロゲルまたはヒドロゲル(総称的に本明細書では「ゲルベースの粒子」または「ゲルベースの送達粒子」と称される)を対象に投与することにより、対象の炎症または炎症性疾患もしくは状態、例えば、創傷、糖尿病性潰瘍、炎症性腸疾患、または大腸炎、の症状を処置、リスク低減、予防、または緩和する方法を提供する。本開示のゲルベースの粒子製剤中のCNPは、遺伝子発現の転写後調節に関与する小さな非コードRNA分子であるマイクロRNA(miRまたはmiRNA)を含んでもよい。miRは、複数のレベルで炎症性応答を調節する。特に、miR-146a(配列ugagaacugaauuccauggguuを有する配列番号1)は、炎症性応答の「分子ブレーキ」として機能する。
【0007】
従って、本開示の製剤におけるCNPは、miR-146aコンジュゲートCNPが本開示のゲルベースの組成物に組み込まれる活性剤または治療薬として作用するように、CNPに結合するか、またはCNP内に包埋された(すなわち、非共有結合的に会合した)miR-146aを含んでもよい。
【0008】
本開示は、また、対象の創傷修復を促進するか、または炎症性腸疾患を処置するための薬品の製造における、CNPを含むゲルベースの粒子組成物の使用に関する。本開示は、また、対象に創傷修復を促進するか、または炎症性腸疾患を処置するためのCNPを含む医薬製剤に関する。
【0009】
本開示は、また、対象の炎症性疾患または状態、例えば、創傷、糖尿病性潰瘍、炎症性腸疾患、または大腸炎、の症状を処置、リスク低減、予防、または緩和するための、ゲルベースのCNP組成物を含む医薬製剤に関する。
【0010】
本開示の実施形態によれば、炎症の処置を必要とする対象の炎症を処置するための方法は、マイクロRNAコンジュゲート酸化セリウムナノ粒子(CNP)を含む治療有効量のキトサンミクロゲルを対象に投与することを含んでもよい。いくつかの例では、炎症は、糖尿病性潰瘍であり得る創傷と関連する。いくつかの例では、炎症を処置すると、未処置の対象の創傷閉鎖の速度と比較して、対象の創傷閉鎖の速度の増加がもたらされる。
【0011】
いくつかの例では、キトサンミクロゲルは、対象に局所的に、皮内に、または筋肉内に投与される。いくつかの例では、炎症は、潰瘍性大腸炎またはクローン病と関連する。いくつかの例では、キトサンミクロゲルは、対象に経口的または直腸的に投与される。いくつかの例では、キトサンミクロゲルは、対象に複数回投与される。いくつかの例では、キトサンミクロゲルは、対象に毎日投与される。いくつかの例では、キトサンミクロゲルの投与は、対象の酸化ストレスを処置または予防する。
【0012】
いくつかの例では、マイクロRNAは、miRNA-146aを含む。いくつかの例では、CNPの表面は、ヒアルロン酸、コラーゲン、及びフィブリノーゲンから選択される1つ以上の生体適合性分子でコーティングされる。いくつかの例では、CNPは、約3~5nmのサイズ範囲を有する。いくつかの例では、CNPは、ユーロピウム(Eu)、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、及びルテチウム(Lu)のうちの1つ以上から選択されるランタニドを添加される。
【0013】
本開示の実施形態によれば、医薬組成物は、キトサンミクロゲル内に包埋されたmiRNA146aコンジュゲート酸化セリウムナノ粒子(CNP)を含む。いくつかの例では、CNPの表面は、ヒアルロン酸、コラーゲン、及びフィブリノーゲンから選択される1つ以上の生体適合性分子でコーティングされる。いくつかの例では、CNPは、約3~5nmのサイズ範囲を有する。いくつかの例では、CNPは、ユーロピウム(Eu)、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、及びルテチウム(Lu)のうちの1つ以上から選択されるランタニドを添加される。
【0014】
本開示の実施形態によれば、ミクロゲルは、キトサンポリマー及び酸化セリウムナノ粒子(CNP)を含む。いくつかの例では、CNPは、治療薬を含む。いくつかの例では、治療薬は、抗炎症薬である。いくつかの例では、治療薬は、マイクロRNA(miRNA)である。いくつかの例では、miRNAは、miRNA-146aである。
【0015】
本開示の実施形態によれば、抗炎症性キトサンミクロゲル組成物の作製方法は、複数のキトサンポリマー及び酸化セリウムナノ粒子(CNP)を含む組成物を形成すること;ならびにキトサンポリマーをゲニピンと架橋させて抗炎症性CNPを含むキトサンミクロゲルを形成すること、を含む。
【0016】
いくつかの例では、CNPは、治療薬を含む。いくつかの例では、治療薬は、抗炎症薬である。いくつかの例では、治療薬は、マイクロRNA(miRNA)である。いくつかの例では、miRNAは、miRNA-146aである。
【0017】
本開示の実施形態によれば、炎症の処置を必要とする対象の炎症を処置するための方法は、マイクロRNAコンジュゲート酸化セリウムナノ粒子(CNP)を含む治療有効量の双性イオン型ゲルを対象に投与することを含む。
【0018】
いくつかの例では、炎症は、糖尿病性潰瘍であり得る創傷と関連する。いくつかの例では、対象の炎症を処置すると、未処置の対象の創傷閉鎖の速度と比較して、対象の創傷閉鎖の速度の増加がもたらされる。いくつかの例では、双性イオン型ゲルは、対象に局所、皮内、または筋肉内投与される。いくつかの例では、炎症は、潰瘍性大腸炎またはクローン病と関連する。いくつかの例では、双性イオン型ゲルは、対象に経口または直腸投与される。いくつかの例では、双性イオン型ゲルは、対象に複数回投与される。いくつかの例では、双性イオン型ゲルの投与は、対象の酸化ストレスを処置または予防する。いくつかの例では、双性イオン型ゲルは、双性イオン型クリオゲルである。いくつかの例では、双性イオン型ゲルは、[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]ジメチル-(3-スルホプロピル)アンモニウムヒドロキシド(SBMA)及び/または2-ヒドロキシエチルメタクリラート(HEMA)モノマーを含む。いくつかの例では、マイクロRNAは、miRNA-146aを含む。いくつかの例では、CNPの表面は、ヒアルロン酸、コラーゲン、及びフィブリノーゲンから選択される1つ以上の生体適合性分子でコーティングされる。いくつかの例では、CNPは、約3~5nmのサイズ範囲を有する。いくつかの例では、CNPは、ユーロピウム(Eu)、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、及びルテチウム(Lu)のうちの1つ以上から選択されるランタニドを添加される。
【0019】
本開示の実施形態によれば、医薬組成物は、双性イオン型ヒドロゲル内に包埋されたmiRNA146aコンジュゲート酸化セリウムナノ粒子(CNP)を含んでもよい。いくつかの例では、CNPの表面は、ヒアルロン酸、コラーゲン、及びフィブリノーゲンから選択される1つ以上の生体適合性分子でコーティングされる。いくつかの例では、CNPは、約3~5nmのサイズ範囲を有する。いくつかの例では、CNPは、ユーロピウム(Eu)、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、及びルテチウム(Lu)のうちの1つ以上から選択されるランタニドを添加される。
【0020】
本開示の実施形態によれば、ヒドロゲルは、スルホベタインメタクリラート(SBMA)、カルボキシベタインメタクリラート(CBMA)、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される重合双性イオン型モノマーを含んでもよい。ヒドロゲルは、さらに、重合ヒドロキシエチルメタクリラート(HEMA)モノマー及び酸化セリウムナノ粒子(CNP)を含んでもよい。
【0021】
いくつかの例では、CNPは、治療薬を含む。いくつかの例では、治療薬は、抗炎症薬である。いくつかの例では、治療薬は、マイクロRNA(miRNA)である。いくつかの例では、miRNAは、miRNA-146aである。
【0022】
本開示の実施形態によれば、抗炎症性ヒドロゲル組成物の作製方法は、スルホベタインメタクリラート(SBMA)及びカルボキシベタインメタクリラート(CBMA);ヒドロキシエチルメタクリラート(HEMA)モノマー;及び酸化セリウムナノ粒子(CNP)からなる群より選択される少なくとも1つの双性イオン型モノマーを含む組成物を形成することを含んでもよい。方法は、さらに、化学的重合剤を組成物に添加することにより、組成物中のモノマーの重合を開始すること、ならびに、0℃未満の温度で組成物中のモノマーを重合して、抗炎症性CNPを含むヒドロゲルを形成することを含んでもよい。
【0023】
いくつかの例では、CNPは、治療薬を含む。いくつかの例では、治療薬は、抗炎症薬である。いくつかの例では、治療薬は、マイクロRNA(miRNA)である。いくつかの例では、miRNAは、miRNA-146aである。いくつかの例では、重合剤は、過硫酸アンモニウム(APS)及びN,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(TEMED)を含む。いくつかの例では、組成物中のモノマーを重合するステップは、約-20℃の温度で実施される。
【0024】
この概要は、本開示の全範囲及び範囲を表すものと意図されるものでも、解釈されるものでもない。さらに、本明細書で、「本開示」またはその態様になされる言及は、本開示の特定の実施形態を意味すると理解されるべきであり、必ずしも、特定の説明に全ての実施形態を限定するものとして解釈されるべきではない。本開示は、本概要ならびに添付の図面及び発明を実施するための形態に、様々なレベルで詳述され、本開示の範囲に関する制限は、本概要において、要素、構成要素などを包含するか、または包含しないかにより意図されない。本発明の他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】乾燥した双性イオン型コポリマークリオゲル(a)SBMA、及び(b)CBMAのFTIRスペクトルを示す。
図2】双性イオン型(CBMAまたはSBMA)及び非双性イオン型モノマー(HEMA)のモル比1:1を使用して調製された双性イオン型クリオゲルのレオロジー結果を示す。
図3】異なるモル比のモノマーを使用して調製されたクリオゲルのレオロジー結果を示す。
図4】低温条件または室温で重合された双性イオン型ゲルのレオロジー結果を示す。
図5】室温での重合(RTゲル)または-20℃での低温ゲル化(クリオゲル)のいずれかで作成された本開示のヒドロゲルのGPC結果を示す。
図6】追加の凍結融解サイクル後のCH1c試料のレオロジーを示す。
図7】本開示の2つのクリオゲルの膨潤(経時的な質量の増加)を示す。
図8】本開示の2つのクリオゲルの分解(経時的な質量の減少)を示す。
図9】皮膚創傷を有する糖尿病マウスにおける完全な創傷治癒を完了させる時間への(CNP-miR146aを用いた、または用いない)本開示のクリオゲルの局所適用の効果を示す。
図10】(CNP-miR146aを用いた、または用いない)本開示のクリオゲルで処置されたマウス皮膚のストレス試験の結果を示す。
図11】様々なCNP-miR146a送達ビヒクルを使用したmiR146aの遺伝子発現を示す。
図12】CNP-miR146aゲル、対照ゲルで処置された、及び未処置のDSSマウス間の経時的な疾患活動指数(DAI)を示す。
図13】CNP-miR146aキトサンミクロゲル、CNP-miR146aを含まないキトサンミクロゲル、対照ゲルで処置された及び未処置のDSSマウス間の経時的な体重減少を示す。
図14】CNP-miR146aキトサンミクロゲル、CNP-miR146aを含まないキトサンミクロゲル、対照ゲルで処置された及び未処置のDSSマウス間の経時的なDAIを示す。
図15】CNP-miR146aキトサンミクロゲル、CNP-miR146aを含まないキトサンミクロゲル、対照ゲルで処置された及び未処置のDSSマウスの結腸の長さを示す。
図16】CNP-miR146aキトサンミクロゲル、CNP-miR146aを含まないキトサンミクロゲル、対照ゲルでの2日間の処置後及び未処置のDSSマウスにおけるIL-1bの遺伝子発現を示す。
図17】CNP-miR146aキトサンミクロゲル及びCNP-miR146aを含まないキトサンミクロゲルでの処置後のDSSマウスにおけるTNFαの遺伝子発現を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本開示は、酸化セリウムナノ粒子が充填されたゲルベースの粒子製剤を、そのような処置を必要とする対象に投与することにより、糖尿病性創傷を含む創傷、及び炎症性腸疾患(IBD)の症状を処置、リスク低減、予防、または緩和する方法に関する。具体例としては、双性イオン型クリオゲルまたはキトサンミクロゲルを含むゲルベースの粒子が挙げられる。
【0027】
別途定義のない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する当業者が一般に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合は、定義を含む本明細書が優先されるであろう。本明細書では、単数形は、文脈に別途明示のない限り、複数形も含む。本明細書に記載されているものと類似または同等の方法及び材料は、本発明の実施または試験に使用することができるが、好適な方法及び材料が以下に記載される。本明細書に記載の全ての刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献は、参照により組み込まれる。本明細書で引用された参考文献は、特許請求された発明の先行技術であると認められていない。加えて、材料、方法、及び例は、例示にすぎず、限定することが意図されない。
【0028】
治療用組成物
特に、本開示の治療方法に有用である、本開示の治療用組成物は、抗炎症治療薬を含むゲルベースの送達粒子を含む。抗炎症治療薬は、ゲルベースの粒子の構成要素に共有結合されても、ゲルベースの粒子内に非共有結合的に封入または包埋されてもよい。好ましくは、抗炎症治療薬は、ゲルベースの粒子内に非共有結合的に保持され、ゲルベースの粒子で処置された対象への投与の部位に放出される。
【0029】
ゲルベースの粒子は、キトサンミクロゲルまたはヒドロゲルを含み得る。キトサンミクロゲルは、結合したグルコサミン及びN-アセチル-グルコサミンモノマーからなる線状多糖ポリマーであるキトサン分子を含む。キトサンミクロゲルは、様々な手法で架橋、結合、または別の方法でカップリングされ得るキトサン分子の3次元ネットワークである。架橋キトサンミクロゲルは、様々な物理的及び/または化学的方法により、例えば、ゲニピンで架橋することができる。キトサンミクロゲルは、ミクロゲルの形成前、形成中、または形成後に、1つ以上の抗炎症治療薬を充填することができる。これらのミクロゲルの特性(例えば、充填、弾性、多孔性、生分解速度、粘度、防汚特性など)は、キトサンポリマーサブユニットの濃度を変化させることにより変更されてもよい。
【0030】
キトサンミクロゲルは、本明細書に開示の抗炎症治療薬(複数可)を含む、固体もしくは半固体の足場、ゲル、フィルム、またはコーティングを形成し得る。キトサンミクロゲルは、例えば、本明細書に記載のヒドロゲル製剤と比較して、カーゴ、例えば、CNP、をより長い時間保持し得る。例示的なミクロゲル製剤は、また、開示されたヒドロゲル及び/または他の送達粒子と比較して、より高濃度のカーゴ、例えば、CNP、を含有するように構成されてもよい。キトサンミクロゲルは、また、本明細書に開示のヒドロゲルと比較して、より高い融解温度及び/または増強された凝集、接着及び/または一般的な「粘着性」を示し得る。また、少なくとも部分的には上述の改善のために、キトサンミクロゲルを使用すると、炎症に関与する遺伝子マーカーの発現が、より一貫して低減し得る。キトサンミクロゲルは、吸収性であってよく、優れた防汚特性及び生体適合性を有してもよい。それらは、また、自己修復特性を示し得る。さらに、キトサンポリマーの比較的少ない量を含むミクロゲルの実施形態は、より柔らかくものであってよく、それ故、注射による投与に適してもよい。
【0031】
ミクロゲルを形成する方法は変えてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、ミクロゲルは、キトサンポリマーをゲニピンなどの架橋剤で架橋することにより形成することができる。そのような実施形態の具体例は、まず、酢酸に精製キトサン、例えば、6%の酢酸約40mLに約2.4グラムのキトサン、を溶解させることを含んでもよい。次に、例えば、40℃で約3時間または全てのキトサンが完全に溶解するまで、例えば、温度制御された水浴中、約200rpmで、混合物を撹拌することができる。撹拌しながら、架橋剤、例えば、ゲニピンを添加することができる。いくつかの例では、無水エタノール中の100mMのゲニピン約2mLを、このステップに使用することができる。次に、キトサン-ゲニピン溶液を撹拌棒で混合し、少なくとも約10分間開放することができ、この時点で、蒸発を防ぐために、PARAFILMを適用することができる。覆われた溶液は、同じまたは同様の温度、例えば、約40℃で、長期間、例えば、一晩混合することができる。この混合期間の後、新しく形成された架橋ゲルを、ふるい、例えば、106μmのふるい、に移すことができる。ゲルを手動でふるいにかけ、分離されたミクロゲル粒子を収集することができる。定期的に水を加えると、このステップでミクロゲル粒子の分離が促進され得る。次に、収集されたミクロゲルをふるいにさらに1回以上かけて、均一なサイズの粒子の形成を確認することができる。特に、例えば、250μmを超える、大きな粒子は、水ですすぎながら、収集物を250μmのふるいにかけることにより、ミクロゲル粒子の収集物から分離することができる。次に、真空濾過を使用して余分な水を取り除くことができる。次に、ミクロゲル粒子を、適用のために適切な媒体に再懸濁することができる。粒子が平衡状態に達するまで、膨潤及び脱膨潤を生じさせることができ、この後、最終懸濁液は、50mLのファルコンチューブ中、約2000xgで、約5分間に1回以上、例えば、3回、遠心分離することができる。格納されたミクロゲル粒子の各遠心分離及び収集後に、上清をデカントする。使用する準備ができる時、ミクロゲルを再度遠心分離し、次に、1:1の希釈を得るために、懸濁媒体中に再懸濁させることができる。
【0032】
さらなる実施形態では、エマルションベースの方法は、キトサンミクロゲルを形成するために使用することができる。そのような方法は、例えば、Michael S.Riederer et al.in “Injectable and microporous scaffold of densely-packed,growth factor-encapsulating chitosan microgels,”Carbohydrate Polymers,152:792-801(2016)(全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるように、キトサン及びゲニピンの混合物を安定なエマルションとして架橋すること、そこから油相を除去すること、及びpHを調整すること、を含んでもよい。
【0033】
本開示のヒドロゲル製剤は、いくつかの例では、物理的及び/または化学的方法により架橋され得るモノマーの3次元ネットワークである。モノマーは、所与のpH範囲にわたって2つ以上の荷電基を有してもよい。実施形態では、ポリマーは、双性イオン型モノマーを含む。本明細書で使用される場合、双性イオン型モノマーは、重合することができる任意の化合物であり、同時に、生理的条件下で正荷電基及び負荷電基の両方を含む。これらのヒドロゲルの特性(例えば、充填、弾性、多孔性、生分解速度、粘度、防汚特性など)は、モノマーサブユニットの濃度を変化させることにより変更されてもよい。
【0034】
ヒドロゲルの例は、双性イオン型モノマーであるスルホベタインメタクリラート(SBMA)、及び/またはカルボキシベタインメタクリラート(CBMA)、ならびに非双性イオン型モノマーであるヒドロキシエチルメタクリラート(HEMA)の一方または両方を含むコポリマーとして形成することができる。いくつかの例では、重合の前に、1つ以上の抗炎症治療薬をモノマーの組成物に添加することができる。実施形態では、モノマーは、例えば、Gulsu Sener et al.in“Injectable,self-healable zwitterionic cryogels with sustained microRNA-cerium oxide nanoparticle release promote accelerated wound healing,”Acta Biomaterialia,101:262-272(2020)(全体が参照により本明細書に組み込まれる)により記載される、任意の化学的架橋剤の不存在下で重合することができる。モノマーの重合は、過硫酸アンモニウム(APS)及びN,N,N’,N-テトラメチルエチレンジアミン(TEMED)を添加することで開始することができる。
【0035】
ヒドロゲル重合は、ほぼ室温~約-20℃の温度範囲で実施することができる。ゲル溶液の水相の凝固点より低い温度で重合が実施される場合、得られるヒドロゲルは、「クリオゲル」または「クリオトピックゲル」と呼ばれ得る。従って、これらのクリオゲルは、解凍後に相互接続されたマクロ細孔を生じさせるために、媒体中で形成される氷晶がポロゲン(細孔形成剤)として作用する半凍結液体媒体中で合成されてもよい。氷晶の形状及びサイズは、得られるクリオゲルの形態及び多孔性を変更するのに役立ち得る。重合温度は、ゲル溶液の水相の凝固点より低い任意の温度であり得る。モノマーサブユニットの比率、重合温度、凍結速度、及び溶媒組成などの要因は、クリオゲルの特性を変更するために使用されてもよい。例えば、クリオゲルの内部孔径及び密度は、モノマーサブユニットの比率及び重合温度を変更することにより変化させてもよい。実施形態では、開示されたクリオゲルの平均孔径は、約50μm~約100μmであってよい。
【0036】
ヒドロゲルの重合は、約-20℃で実施することができる(それにより、クリオゲルを調製する)。重合は、約1時間~約24時間の期間に進行し得る。特定の実施形態では、重合は、約-20℃の温度で、約24時間の期間実施することができる。重合後、クリオゲルは、室温で解凍されてもよい。双性イオン型モノマー(SBMA及び/またはCBMA)、対、非双性イオン型モノマー(HEMA)のモル比は、約50:1~約1:50の範囲であってよい。例えば、双性イオン型モノマー、対、非双性イオン型モノマーのモル比は、約50:1、49:1、48:1、47:1、46:1、45:1、44:1、43:1、42:1、41:1、40:1、39:1、38:1、37:1、36:1、35:1、34:1、33:1、32:1、31:1、30:1、29:1、28:1、27:1、26:1、25:1、24:1、23:1、22:1、21:1、20:1、19:1、18:1、17:1、16:1、15:1、14:1、13:1、12:1、11:1、10:1、9:1、8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、1:10、1:11、1:12、1:13、1:14、1:15、1:16、1:17、1:18、1:19、1:20、1:21、1:22、1:23、1:24、1:25、1:26、1:27、1:28、1:29、1:30、1:31、1:32、1:33、1:34、1:35、1:36、1:37、1:38、1:39、1:40、1:41、1:42、1:43、1:44、1:45、1:46、1:47、1:48、1:49、1:50、または記載のいずれか2つの値の間(すなわち、約1:3~1:4もしくは約2:1~1:2)であってよい。双性イオン型モノマー(SBMA及び/またはCBMA)対非双性イオン型モノマー(HEMA)のモル比は、約1:1であり得る。いくつかの実施形態では、ゲル中のモノマーの総濃度は、約30mg/ml以下から約230mg/ml以上まで、例えば、約25mg/ml、30mg/ml、40mg/ml、45mg/ml、50mg/ml、55mg/ml、60mg/ml、65mg/ml、70mg/ml、75mg/ml、80mg/ml、85mg/ml、90mg/ml、95mg/ml、100mg/ml、110mg/ml、120mg/ml、130mg/ml、140mg/ml、150mg/ml、160mg/ml、170mg/ml、180mg/ml、190mg/ml、200mg/ml、210mg/ml、または220mg/ml超、且つ、約250mg/ml、240mg/ml、230mg/ml、220mg/ml、210mg/ml、200mg/ml、190mg/ml、180mg/ml、170mg/ml、160mg/ml、150mg/ml、140mg/ml、130mg/ml、120mg/ml、110mg/ml、100mg/ml、90mg/ml、80mg/ml、70mg/ml、60mg/ml、50mg/ml、40mg/ml、または30mg/ml未満で、変化してもよい。重合したヒドロゲルは、相互接続された細孔を備えたマクロポーラス構造を有する。いくつかの例では、クリオゲルは、任意の化学的架橋剤の不存在下で形成されてもよく、これにより、架橋剤で形成されたクリオゲルよりも脆いクリオゲルがもたらされ得る。
【0037】
重合後、これらのヒドロゲルは、抗炎症治療薬(複数可)を含む固体もしくは半固体の足場、ゲル、フィルム、またはコーティングを形成し得る。これらのヒドロゲルは、吸収性であってもよく、優れた防汚特性及び生体適合性を有してもよい。生体適合性は、天然の細胞外ネットワークに対するヒドロゲルの高含水量及び物理化学的類似性によるものであってよい。双性イオン型モノマー(SBMA及び/またはCBMA)ならびに非双性イオン型モノマー(HEMA)から形成されたこれらのクリオゲルは、延伸または圧縮後に機械的に安定していることが判明する。それらは、また、自己修復特性を示し、これにより、部分的または完全に、それらが自己を修復することを可能にすることによる物理的ストレス及び/または損傷からの回復力が与えられる。さらに、より少量の双性イオン型モノマーを含むヒドロゲルは、より柔らかく、それ故、注射による投与に適し得る。
【0038】
上記のゲルベースの粒子に組み込むための例示的な抗炎症治療薬は、酸化セリウムナノ粒子(「CeOナノ粒子」、「ナノセリア」、または「CNP」とも呼ばれる)である。これらのCNPは、特に、本開示の医薬製剤に有用な活性剤である。そのような酸化セリウムナノ粒子の生成は、例えば、Chigurupati,et al.,Biomaterials 34(9):2194-2201(2013);及び米国特許第7,534,453号(全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。これらの医薬製剤中のCNPSは、約2~10nm、特に、約3~5nmのサイズ範囲を有してもよい。これらのCNPは、追加の治療薬(例えば、以下に記載されるようなマイクロRNA分子)に共有結合的にコンジュゲートされても、別の方法で組み込まれてもよい(すなわち、非共有結合的に包埋または会合してもよい)。
【0039】
これらのゲルベースの粒子製剤における別の有用な活性剤は、マイクロRNA(miRまたはmiRNA)であり、これは、遺伝子発現の転写後調節に関与する小さな非コードRNA分子である。miRは、複数のレベルで炎症性応答を調節する。特に、miR-146aは、NFκB炎症経路の活性化を標的及び抑制することにより、炎症性応答の「分子ブレーキ」として機能する。従って、本開示のゲルベースの製剤は、miR-146a(配列番号1)を含んでもよい。これらのmiR-146a活性剤は、miR-146aコンジュゲートCNP(「CNP-146a」)が本開示のゲルベースの製剤において活性薬または治療薬として作用するように、さらに、上記のCNPにコンジュゲートされてもよい。miRNA-146aにコンジュゲートされるCNPの詳細な合成及び特性評価は、国際出願日が2016年11月23日であるPCT公開第WO2017/091700号(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。要約すると、オリゴヌクレオチド(すなわち、miRNA-146a)は、CNPの正荷電の表面と静電的に相互作用することができる鎖に沿って負荷電を運ぶリン酸基を含有する。加えて、オリゴヌクレオチドは、リボースの水酸基及びCNPSとのコンジュゲーションのために利用可能なアミノ基を有する。コンジュゲーション用の末端官能基(アミノ、チオール、アジド)も選択肢である。反応媒体中に適切な過剰のオリゴヌクレオチド(基本的にナノ粒子当たり10~15分子)の場合、コンジュゲーションは、様々な反応を介して達成することができる。例えば、オリゴヌクレオチドのアミノ基は、カルボジイミド(CDI)または他の二官能性活性剤で活性化した後、CNPヒドロキシル基またはCNPコーティングの官能基とカップリングすることができる。未結合の化合物、ならびに副産物は、少なくとも20kDaのカットオフを有するミニ透析カラムを使用して、8000g、10分間の遠心分離により、及び水またはPBSに対する透析により除去することができる。
【0040】
CNP-146aは、対象へのゲルベースの粒子の投与の部位のゲルベースの粒子から放出される有効量のCNP-146aが充填されたゲルベースの粒子を形成するために、CNP-146aをキトサンポリマーの組成物に、または、ヒドロゲル製剤を含む実施形態では、重合(上記のように、好ましくは、低温ゲル化)前にモノマー(双性イオン型モノマー(SBMA及び/もしくはCBMA)ならびに非双性イオン型モノマー(HEMA))の組成物に、添加することにより、ゲルベースの粒子に組み込まれてもよい。
【0041】
本開示のCNP-146a組成物の「有効量」は、具体的に記載される目的を実行するのに十分な量である。「有効量」は、記載された目的と関連して、経験的且つ日常的な方法で決定されてもよい。「治療有効量」という用語は、対象の疾患または障害を「処置」するための、CNP組成物の量を指す。
【0042】
本明細書で使用される場合、「促進すること」または「促進する」は、皮膚または腸粘膜が、皮膚または結腸の粘膜への損傷または炎症から修復または回復する時間を低減させて、組織修復または回復の程度を増加させることを意味する。これらの製剤は、上皮または粘膜組織の炎症を低減または抑制することにより、修復または回復を促進し得る。
【0043】
本明細書で使用される場合、「抑制すること」、「抑制する」、または「抑制」は、炎症の発生、悪化、持続、存続、または再発を阻止することを意味する。
【0044】
「低減すること」、「低減する」、または「低減」は、炎症の重症度、頻度、または長さを減少させることを意味する。
【0045】
「処置すること」または「処置」または「緩和」は、治療的処置と防止的または予防的手段の両方を指し、目的は、標的とされる病的状態または障害を予防または減速(軽減)させることである。処置を必要とする者は、既に障害を有する者、及び、障害を有する傾向がある者または障害が予防されることになる者を含む。対象または哺乳動物は、本開示の方法によるCNP組成物の治療量を投与された後に、炎症性疾患もしくは障害の1つ以上の症状の観察可能及び/もしくは測定可能な低減、またはそれの不存在、あるいは治癒または修復の速度の増加を、対象が示す場合、炎症性疾患または障害が効率よく「処置」される。これらの兆候または症状の低減も患者が感じることがある。
【0046】
治療製剤
本開示のゲルベースのCNP-146a組成物は、医薬製剤として投与されてもよい。本開示のCNP-146aゲルベースの組成物は、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤を含んでもよく、通常は、対象に、局所、直腸、または経口投与に適合した剤形に製剤化される。
【0047】
本明細書における「対象」は、通常、ヒトである。特定の実施形態では、対象は、非ヒト哺乳動物である。例示的な非ヒト哺乳動物としては、実験、家畜、ペット、スポーツ、及びストック動物、例えば、マウス、ネコ、イヌ、ウマ、及びウシが挙げられる。通常は、対象は、処置、例えば、炎症性腸管障害の処置、に適格である。本明細書で使用される場合、「患者」という用語は、処置が望まれる任意の単一の対象を指す。特定の実施形態では、本明細書の患者は、ヒトである。対象は、処置を必要であるとみなすことができる。
【0048】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される賦形剤」または「薬学的に許容される担体」は、医薬組成物に形態または一貫性を与えることに関与する薬学的に許容される材料、組成物、またはビヒクルを意味する。対象に投与される時に本開示の活性CNP組成物の有効性を実質的に低減させる相互作用、及び薬学的に許容されない医薬組成物をもたらす相互作用が回避されるように混合される場合、各賦形剤または担体は、医薬組成物の他の成分と適合性でなければならない。さらに、各賦形剤または担体は、当然、それを薬学的に許容可能にするために十分に高純度でなければならない。好適な薬学的に許容される賦形剤は、選択された特定の剤形、組成物において役立つ特定の機能、安定した剤形の生成を促進する能力、及び/または患者の遵守を高めるそれらの能力に応じて変化するであろう。好適な薬学的に許容される賦形剤は、希釈剤、充填剤、結合剤、崩壊剤、潤滑剤、流動促進剤、造粒剤、コーティング剤、湿潤剤、溶媒、共溶媒、懸濁剤、乳化剤、甘味料、香味剤、フレーバーマスキング剤、着色剤、固結防止剤、保湿剤、キレート剤、可塑剤、増粘剤、抗酸化剤、防腐剤、安定剤、界面活性剤、及び緩衝剤を含んでもよい。特定の薬学的に許容される賦形剤が、複数の機能を果たし得、賦形剤が製剤中に存在する量及び製剤中に存在する他の成分のいずれかに応じて、代替機能を果たし得ることを、当業者は理解するであろう。
【0049】
当業者らは、本開示のゲルベースの製剤に使用される適切な量の好適な薬学的に許容される賦形剤を選択することを可能にする当該技術分野での知識及び技能を有する。加えて、薬学的に許容される賦形剤について記載し且つ本開示のゲルベースの組成物に使用される好適な賦形剤を選択するのに有用であり得る、当業者に利用可能な情報資源が存在する。例としては、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Mack Publishing Company)、The Handbook of Pharmaceutical Additives(Gower Publishing Limited)、及びThe Handbook of Pharmaceutical Excipients(the American Pharmaceutical Association and the Pharmaceutical Press)が挙げられる。
【0050】
本開示のゲルベースのCNP-146a組成物を含む治療製剤は、水溶液の形態、凍結乾燥または他の乾燥製剤で、所望の程度の純度を有するゲルベースのCNP-146a組成物を任意の生理学的に許容される担体、賦形剤、または安定剤と混合することにより、貯蔵のために調製されてもよい(Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980))。
【0051】
徐放性調製物は、調製されてもよい。徐放性調製物の好適な例としては、成形品の形態、例えば、フィルムまたはマイクロカプセルの、本開示のゲルベースのCNP-146a組成物を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスが挙げられ得る。徐放性マトリックスの例としては、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリラート)、またはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L-グルタミン酸及びγ-エチル-L-グルタミン酸のコポリマー、非分解性エチレン酢酸ビニル、分解性乳酸-グリコール酸コポリマー、例えば、LUPRON DEPOT.TM(乳酸-グリコール酸コポリマー及び酢酸リュープロリドからなる注射用ミクロスフェア)、ならびに、ポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸が挙げられる。一方、エチレン酢酸ビニル及び乳酸-グリコール酸などのポリマーは、100日以上にわたって分子の放出を可能にする。
【0052】
従って、本開示の一態様は、対象への局所投与に適する本開示のゲルベースのCNP-146a組成物を含む治療製剤である。そのような局所製剤は、特に、本開示の糖尿病性創傷を含む創傷を処置、予防、または緩和する方法に有用である。治療製剤は、本開示のゲルベースのCNP-146a組成物を含む、局所投与に適切な剤形、例えば、ゲル剤、クリーム剤、軟膏剤、塗剤、または薬用包帯、を含んでもよい。
【0053】
本開示の別の態様は、対象への直腸投与に適する本開示のゲルベースのCNP-146a組成物を含む治療製剤である。そのような直腸製剤は、特に、本開示の炎症性腸疾患、例えば、大腸炎、を処置、予防、または緩和する方法に有用である。治療製剤は、本開示のゲルベースのCNP-146a組成物を含む、直腸投与に適切な剤形、例えば、ゲル剤、懸濁剤、または液剤、を含んでもよい。
【0054】
本開示の別の態様は、対象への経口投与に適する本開示のゲルベースのCNP-146a組成物を含む治療製剤である。そのような経口製剤は、特に、本開示の炎症性腸疾患を処置、予防、または和する方法に有用である。ゲルベースのCNP-146a組成物を含む、経口投与に適切な剤形、例えば、錠剤、カプセル剤、液剤、または懸濁剤は、従来手法で調製されてもよい。
【0055】
治療法
本開示のゲルベースのCNP-146a組成物は、様々な炎症性疾患または状態、例えば、大腸炎、の症状の処置、リスク低減、予防、または緩和に適する。理論に拘束されることを意図することなく、本開示のCNP組成物は、活性酸素種スカベンジャーであり、上皮細胞により急速に取り込まれ、これは、炎症を減少させ、及び/または循環から炎症組織への白血球もしくは線維細胞の移動を抑制する。これらのCNP組成物は、細胞生存率及び細胞再生も改善し得る。
【0056】
本開示の医薬製剤は、炎症性腸疾患などの炎症により引き起こされるか、またはそれと関連する炎症性皮膚疾患または状態の症状を処置、リスク低減、予防、または緩和するのに適する。
【0057】
A.創傷治癒
糖尿病対象の損傷後の創傷治癒障害は、長期の入院及び多額の医療費をもたらす主要な臨床的問題を表す。全非外傷性切断の3分の2は、糖尿病性創傷の後に生じる。糖尿病性創傷の治癒障害は、多因子性であり、ケモカインの産生の減少、血管新生の減少、及び異常な炎症反応を特徴としている。増加する証拠は、炎症性遺伝子発現の持続的な上方調節が、炎症経路の活性化を通じて慢性糖尿病性創傷の病因に寄与し得ることを示唆する。糖尿病性創傷治癒障害の間葉系幹細胞(MSC)是正の機序の1つは、炎症性応答を減少させることによるものである。
【0058】
炎症は、正常の創傷治癒の重要な構成要素である。しかし、炎症の増加または持続により、活性酸素種(ROS)の蓄積及び酸化ストレスの増加がもたらされる。本開示のゲルベースのCNP-146a組成物に存在するCNPは、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)及びカタラーゼの触媒活性と同様に、過剰なROSを除去し得る。それ故、CNPは、未処置の対象における創傷治癒の速度と比較して、それを必要とする対象の創傷の治癒を増進する方法に有用である。CNPは、また、未処置の対象における創傷治癒の速度と比較して、それを必要とする対象の切除創の治癒を加速する方法に有用である。
【0059】
炎症性応答の調節は、複数のレベルで生じ、上述したように、miR-146aは、NFκB炎症経路の活性化を標的及び抑制することにより、炎症性反応を減少または予防する。慢性炎症は、創傷の酸化ストレスを増加させることによる糖尿病性創傷治癒障害の病因の主要な構成要素として関与している。microRNA-146a及びその標的となる炎症誘発性シグナル伝達経路は、糖尿病対象では調節不全であり、それにより、炎症の増加及び持続がもたらされることが観察された。miR-146aの発現は、糖尿病性創傷において著しく下方調節され、創傷治癒障害のMSC是正は、miR-146aの発現の増加及び炎症性サイトカイン産生の下方調節と関連する。従って、本開示のゲルベースのCNP-146a組成物は、そのような処置を必要とする対象の創傷の処置のための方法に有用である。これらの方法では、創傷は、糖尿病性創傷であってよい。これらの方法では、本開示のゲルベースのCNP-146a組成物の投与により、7日及び10日での非糖尿病性創傷のサイズと同様に、糖尿病性創傷の面積が減少する。これらの方法では、本開示のゲルベースのCNP-146a組成物の投与により、炎症性応答が減少して、ROS及び酸化ストレスの減少がもたらされ、糖尿病性創傷の治癒の改善がもたらされ得る。
【0060】
損傷後の創傷治癒障害に加えて、糖尿病患者は、損傷及び慢性の非治癒性創傷の発症の素因となる。米国の全非外傷性切断の3分の2は、糖尿病性の足の創傷の後に生じる。糖尿病患者に損傷の傾向を与える重要な要因は、糖尿病患者の最大50%に影響を及ぼす末梢神経障害の発症であり、熱、触覚、及び振動刺激の知覚を変化がもたらされる。これにより、糖尿病患者の足の損傷を最小限に抑え且つ非治癒糖尿病性創傷の発病率を減少させる予防的手段に焦点を当てるようになっている。しかし、多くの研究は、医師及び患者が単純なフットケア評価プログラムにあまり準拠していないことを示している。以前の研究は、糖尿病性皮膚に損傷の傾向を与え得るベースラインでの糖尿病性皮膚における潜在的な機能障害に焦点を当てている。ベースラインでのマウス及びヒトの糖尿病性皮膚の生体力学的特性を検討した研究では、マウス及びヒトの両方の糖尿病性皮膚が、皮膚の完全性の障害を示し、ベースラインでの生体力学的特性が著しく劣っていた。最大応力及び弾性率の両方は、糖尿病性皮膚に損傷を与えやすくし得る非糖尿病性皮膚と比較して大幅に減少した。ベースラインでの糖尿病性皮膚のこれらの生体力学的特性の是正は、糖尿病性皮膚の損傷しやすさを減少させ、慢性創傷の発症の予防を補助し得る。従って、本開示のゲルベースのCNP-146a組成物は、また、そのような処置を必要とする対象に局所投与することにより、糖尿病性皮膚の損傷しやすさを減少させるための、及び/または慢性創傷の発症の予防を補助するための方法に有用である。
【0061】
B.炎症性腸管障害
「炎症性腸管障害」は、粘膜に炎症及び/または潰瘍形成を引き起こす慢性障害のグループである。これらの障害は、例えば、炎症性腸疾患(例えば、クローン病、潰瘍性大腸炎、不確定大腸炎、及び感染性大腸炎)、粘膜炎(例えば、口腔粘膜炎、胃腸粘膜炎、鼻粘膜炎、及び直腸炎)、壊死性腸炎、ならびに食道炎を含む。炎症性腸疾患(IBD)は、本明細書では互換的に使用され、炎症及び/または潰瘍形成を引き起こす腸の疾患を指し、クローン病及び潰瘍性大腸炎を含むがこれらに限定されない。クローン病(CD)及び潰瘍性大腸炎(UC)は、未知の病因の慢性炎症性腸疾患である。クローン病は、潰瘍性大腸炎とは異なり、腸のいかなる部分にも影響を与え得る。クローン病の最も顕著な特徴は、腸壁の粒状の赤紫色の浮腫性肥厚である。炎症の発症に伴い、これらの肉芽腫は、多くの場合、外接した境界を失い、周囲の組織と一体化される。下痢及び腸の閉塞が、主な臨床的特徴である。潰瘍性大腸炎と同様に、クローン病の進行は、軽度または重度の持続性または再発性であり得るが、潰瘍性大腸炎とは異なり、クローン病は、腸の関与する部分の切除により治療可能ではない。クローン病患者のほとんどは、ある時点で手術を必要とするが、その後の再発が一般的であり、継続的な医療処置が通常である。
【0062】
クローン病は、口から肛門までの消化管の任意の部分を含み得るが、通常、回結腸、小腸、または結腸-肛門直腸領域にみられる。組織病理学的には、疾患は、不連続な肉芽腫、陰窩膿瘍、裂傷、及び口内炎により現れる。炎症性浸潤物は、混合され、リンパ球(T細胞及びB細胞の両方)、形質細胞、マクロファージ、及び好中球からなる。IgM及びIgG分泌形質細胞、マクロファージ、及び好中球に、不均衡な増加がある。
【0063】
抗炎症薬のスルファサラジン及び5-アミノサリチル酸(5-ASA)は、軽度活性結腸クローン病を処置するために使用され、一般に、疾患の寛解を維持するために処方される。メトロイダゾール及びシプロフロキサシンは、スルファサラジンと有効性が類似しており、特に、肛門周囲疾患の処置のために処方される。より重症の場合、コルチコステロイドは、活発な増悪を処置するために処方され、場合により、寛解を維持し得る。アザチオプリン及び6-メルカプトプリンは、コルチコステロイドの長期投与を必要とする患者にも使用されている。これらの薬剤は、長期的な予防に関与し得ることが示唆されている。残念ながら、いくつかの患者における作用の開始前に、非常に長い遅延(最大6ヶ月)があり得る。止瀉薬は、また、いくつかの患者に対症療法を提供し得る。栄養療法または成分栄養剤は、患者の栄養状態を改善し得、急性疾患の症状の改善を誘導するが、持続的な臨床的寛解を誘導しない。抗生物質は、2次小腸細菌の異常増殖の処置及び化膿性合併症の処置に使用される。
【0064】
潰瘍性大腸炎(UC)は、大腸に罹患する。疾患の経過は、連続的または再発性、軽度または重度であってよい。最早期の病変は、リーベルクーンの陰窩の基部に膿瘍形成を有する炎症性浸潤である。これらの膨張して破裂した陰窩の癒着は、上にある粘膜を血液供給から分離する傾向があり、これは、潰瘍形成につながる。疾患の症状は、痙性下腹部痛、直腸出血、及び、主に、血液、膿、及びわずかな糞便粒子含む粘液からなる頻繁で緩い排出を含む。結腸全摘術は、急性、重症、または慢性の軽減しない潰瘍性大腸炎に必要とされ得る。UCの臨床的特徴は、非常に多様であり、発症は、潜行性または突発性であってもよく、下痢、しぶり、及び再発性直腸出血を含んでもよい。結腸全体の劇症的な関与により、生命を脅かす緊急事態である中毒性巨大結腸症が生じ得る。腸管外症状は、関節炎、壊疽性膿皮症、ブドウ膜炎、及び結節性紅斑を含む。
【0065】
UCの処置は、軽症例ではスルファサラジン及び関連サリチル酸含有薬、ならびに、重症例ではコルチコステロイド薬を含む。サリチル酸塩またはコルチコステロイドのいずれかの局所投与は、特に、疾患が遠位腸に制限されており且つ全身的使用と比べて減少した副作用と関連する場合、有効である場合がある。場合により、鉄及び止瀉薬の投与などの対症手段が示される。アザチオプリン、6-メルカプトプリン、及びメトトレキサートは、場合により、難治性コルチコステロイド依存性の症例で使用するためにも処方される。
【0066】
腫瘍壊死因子α(TNF-α)を標的とするモノクローナル抗体、例えば、インフリキシマブ(キメラ抗体)及びアダリムマブ(完全ヒト抗体)もCDの管理に使用される。インフリキシマブは、有効性も示しており、UCでの使用が承認されている。しかし、CD患者の約10%~20%は、抗TNF療法に対する主要な非応答者であり、CD患者の約20%~30%は、経時的に応答を喪失する。抗TNF療法と関連する他の有害事象は、結核、よりまれに、リンパ腫及び脱髄、を含む細菌感染率の上昇を含む。さらに、ほとんどの患者は、持続的なステロイドフリーの寛解及び粘膜の治癒、真の疾患の緩和と相関する臨床転帰を達成しない。それ故、抗TNF治療薬に決して応答しないか、または経時的に応答を喪失する患者を含む患者の大部分で、持続的寛解、特に、長期合併症のステロイドフリーの寛解及び長期合併症の予防、を有する安全性プロファイルの改善を含む、長期使用に最適化されるIBDの治療法が必要とされる。
【0067】
皮膚創傷の治癒の遅延または予防における炎症の役割と同様に、炎症性腸疾患(IBD)、特に、潰瘍性大腸炎は、腸の炎症及び酸化ストレスを特徴とする。それ故、酸化ストレスを標的とするための本開示のゲルベースのCNP-146a組成物の投与は、腸粘膜の炎症及び酸化ストレスを低減することにより炎症性腸疾患を処置するために使用することができる。
【0068】
本開示のゲルベースのCNP-146a組成物は、慢性または断続的基準で、経口または直腸投与されてもよく、潰瘍性大腸炎、不確定大腸炎、及びクローン病を含む炎症性腸疾患の症状を処置、リスク低減、予防、または緩和するのに適する。これらの方法では、本開示のゲルベースのCNP-146a組成物の投与に対する応答は、臨床応答、粘膜治癒、及び寛解のうちの1つ以上を含んでもよい。
【0069】
炎症を起こした腸粘膜にゲルベースのCNP-146a組成物を接触させるために、これらのゲルベースのCNP-146a組成物は、上記のように、経口または直腸投与用に製剤化されてもよい。これらの方法では、本開示のゲルベースのCNP-146a組成物を含む治療製剤の経口及び/または直腸投与は、炎症性腸疾患を処置、予防、または緩和するのに有用であり得る。
【0070】
C.投与
本開示のこれらの治療方法では、処置を投与する臨床医は、体重ベースまたは均一投与のための個々の対象に適切な用量(すなわち、体重に関係なく、全ての患者に投与されるゲルベースのCNP-146a組成物の特定量)を決定することが可能であろう。疾患の予防または処置のために、ゲルベースのCNP-146a組成物及びゲルベースのCNP-146a組成物と組み合わせて投与される任意の第2の治療薬または他の化合物の適切な投薬量は、処置される疾患状態、例えば、処置されるべき創傷のタイプまたは処置されるべき炎症性腸管障害(IBD、UC、CD)、疾患の重症度及び経過(ゲルベースのCNP-146a組成物または組み合わせが予防または治療目的で投与されるかどうかにかかわらず)、以前の治療、患者の病歴、及びCNP-146aヒドロゲルまたはキトサンミクロゲルに対する応答、ならびに臨床医の判断に依存し得る。これらの方法では、ゲルベースのCNP-146a組成物は、一度に、または、より通常は、一連の処置にわたって、患者に適切に投与することができる。例えば、ゲルベースのCNP-146a組成物は、1ヶ月間(4週間)、または2ヶ月間、3ヶ月間、または6ヶ月間、または12ヶ月間、または18ヶ月間、または24ヶ月間、または患者の生涯にわたる長期で、週1回、または2週に1回、または4週に1回、または6週に1回、または8週に1回に投与されてもよい。代替的または追加的に、ゲルベースのCNP-146a組成物処置は、患者により自己投与されてもよい。状態に応じて数日以上にわたる反復投与では、処置は、疾患症状の所望の抑制が起こるまで持続することができる。しかし、他の投薬レジメンが有用であり得る。通常は、臨床医は、投薬量(複数可)が必要な生物学的効果を提供する投薬量に達するまで、本発明の(単独でまたは第2の化合物と組み合わせて)本開示のゲルベースのCNP-146a組成物を投与するであろう。本発明の治療の進行は、従来の手法及びアッセイにより容易に監視される。
【0071】
上記のように、ゲルベースのCNP-146a組成物は、局所、病巣内、経口、及び/または直腸投与を含む、任意の好適な手段により投与することができる。
【0072】
上述の明細書及び以下の実施例は、当業者が本発明の実施することを可能にするのに十分であると考えられる。本明細書に示され且つ記載のものに加えて、本発明の様々な変更は、上述の説明及び以下の実施例から当業者らに明らかとなり、添付の特許請求の範囲内に入るであろう。本明細書における全ての引用の開示は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【実施例
【0073】
実施例1
双性イオン型モノマーからのCNP-146aヒドロゲル組成物の調製
コポリマーヒドロゲルを、2つの異なる双性イオン型モノマーの異なる組み合わせから調製した。以下の材料及び方法を使用して、ヒドロゲル組成物を作成及び試験した。
【0074】
材料:[2-(メタクリロキシ)エチル]ジメチル-(3-スルホプロピル)アンモニウムヒドロキシド(SBMA)をAFG Bioscienceから購入し、3-[[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]ジメチルアンモニオ]プロピオナート(CBMA)をTCI Americaから購入し、2-ヒドロキシエチルメタクリラート(HEMA)、過硫酸アンモニウム(APS)、及びN,N,N,N-テトラメチルエチレンジアミン(TEMED)をAcros Organicsから購入した。カルシウム及びマグネシウムを含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS)をHyCloneから購入した。全ての化学物質を受け取ったままの状態で使用した。
【0075】
ゲルの調製:適切な量のSBMAまたはCBMA及び2-ヒドロキシエチルメタクリラート(HEMA)を0.45mLの水に溶解させることにより、ヒドロゲルを調製した。この研究で使用されたモノマー濃度は、表1及び2に示される。13.6mg/mLのAPS溶液50μL及びTEMED 0.85μLを使用して、重合を開始し、反応混合物を、プラスチック金型(内径0.5cmの3mLシリンジまたは12ウェル組織培養プレート)に注ぎ、室温または-20℃で24時間重合した。重合が完了した後、クリオゲルを室温で解凍した。
【0076】
特性評価:レオロジー測定のために、直径約22mm及び高さ約4mmのゲル試料を12ウェルプレート中で調製した。ゲルのレオロジー特性を決定するために、37℃で直径20mmのクロスハッチパラレルプレートを備えたAR-G2レオメーター(TA Instruments)を使用して、周波数スイープ及びひずみスイープ試験を実施した。周波数スイープ測定を、1%のひずみで実施した。ひずみスイープ測定を、10rad/sの周波数で実施した。FTIR測定のために、ゲル試料を凍結乾燥させ、ATRアクセサリー(Specac、Golden Gate)を備えたNexus 470 ESP FT-IR分光計を使用して、乾燥粉末を分析した。
【0077】
膨潤試験:クリオゲルの膨潤挙動を決定するために、調製されたままのゲルを計量して、初期試料(M初期)の質量を決定し、PBS(pH7.4)に浸漬させ、37℃のインキュベーター内で膨潤させた。選択された時間間隔でヒドロゲルを採取し、1つのペトリ皿から別のペトリ皿に数回移してヒドロゲル表面から過剰な水を除去し、次に、(m湿潤ゲル)を計量してゲルの膨潤を決定した。
【0078】
分解度試験:ヒドロゲルの分解挙動を決定するために、ゲルをPBS(pH7.4)中に浸漬させ、37℃のインキュベーター内に放置した。選択された時間間隔でヒドロゲルを採取し、凍結乾燥させ、異なる時間間隔で計量して、分解率を決定した。
【0079】
コポリマーヒドロゲルを調製するために、2つの双性イオン型モノマー(スルホベタインメタクリラート(SBMA)またはカルボキシベタインメタクリラート(CBMA))の種々の組み合わせ、及び非双性イオン型モノマー(ヒドロキシエチルメタクリラート(HEMA))を化学的架橋剤の不存在下で重合した。重合を開始するために、過硫酸アンモニウム(APS)及びN,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(TEMED)のカップルを使用し、(クリオゲルを調製するために)室温または-20℃のいずれかで24時間、重合を実施した。重合後、クリオゲルを室温で解凍した。
【0080】
最初の実験では、双性イオン型モノマー(SBMAまたはCBMA)対非双性イオン型HEMAモノマーのモル比を一定(1:1)に保ったが、モノマーの総量を変化させた。全ての組成及び重合条件が表1にまとめられる。
【0081】
一般に、重合後に、5つの異なるタイプの材料を得た:透明ゲル、半透明ゲル、不透明ゲル、粘稠液体、及び溶液(すなわち、ゲル化なし)。
【0082】
表1.双性イオン型(CBMAまたはSBMA)及び非双性イオン型モノマー(HEMA)のモル比1:1で調製されたコポリマーの組成及び重合条件。対照実験のために純粋なモノマーを使用して調製されたポリマーは、また、表の下部で与えられる。物質は、以下のように呼ばれた;大文字は、それぞれ、合成に使用された双性イオン型モノマー(SBMAまたはCBMAの場合、『S』」または『C』)及び非双性イオン型モノマー(HEMAの場合、『H』)を示す。番号は、同じモノマー及び重合温度を使用して調製された試料番号を示す。最後に、小文字(複数可)は、重合温度を示す(室温の場合、『rt』、-20℃の場合、『c』)。
【表1】
【0083】
化学的架橋剤を使用しなかったので、ゲル形成は、ポリマーの双性イオン型側鎖基間の強い物理的相互作用に起因する可能性がある。加えて、ポリマーのヒドロキシル側鎖基は、さらに、2つのポリマー鎖との間の相互作用を改善し得る水素結合を形成し得る。興味深いことに、低温条件(-20℃)で重合された全ての製剤(表1)はゲルを形成したが、同じ組成物(大量のCBMA(144mg/mL)を使用)を室温で重合した場合、ゲル形成がCH4rt試料でのみ観察された。SBMAモノマーでは、150mg/mLの高モノマー濃度のSH3rt試料の場合、室温重合によりゲル化は生じなかった。対照実験では、本発明者らは、-20℃でSBMA、CBMA、及びHEMAのみを含有する溶液も重合した。本発明者らは、150mg/mLのモノマー濃度でも、SBMA重合溶液のゲル形成を観察することができなかった。あるいは、CBMAは、144mg/mLの濃度でゲルを形成したが、ゲルは、CBMA及びHEMAの両方のモノマーを使用して調製されたゲルと比較して、はるかに弱かった。HEMA溶液(81mg/mL)の重合により、不透明ゲルの形成ももたらされた。FTIR分光法を使用して、ポリマー及びコポリマーの化学組成を特性評価した(図1)。両方のモノマーに対応するFTIR吸着ピークがFTIRスペクトルに存在し、これは、両方のモノマーがコポリマーに存在したことを示す。
【0084】
双性イオン型モノマーを含有するゲルは、延伸または圧縮後に機械的に安定であることが判明した。S3c試料は、破断することなく、初期サイズの5倍以上に延伸することができ、高度に有意な変形なしに圧縮することができる。
【0085】
ゲルの物理的架橋が破損後に再確立することができるかどうかを判定するために、本発明者らは、2つのCH3cまたはSH3cクリオゲルを調製し、2片に切断した。Alizarin Red S色素(25μg/mL)を使用して、2つのゲル片のうちの1つを赤色に着色した。次に、各ゲルの1つの着色片及び1つの未着色片を一緒にして延伸し、自己修復したかどうかを判定した。本発明者らは、両方のゲルで、ほぼ即時の自己修復を観察した。
【0086】
より少ないモノマー量を使用して調製されたより柔らかいクリオゲル(例えば、SH1cゲル)は、21ゲージの針から注入することができる。比較すると、HEMAモノマーのみを使用して調製されたクリオゲルは、圧縮後に高度に変形し、圧縮後に初期形状を回復することができなかった。さらに、自己修復は、純粋HEMAクリオゲルでは観察されず、それらは、注射用ではなかった。これらの結果により、ポリマーの双性イオン型側鎖基がクリオゲルに良好な機械的特性及び自己修復能を提供することが示唆される。
【0087】
機械的特性をよりよく評価するためにレオメトリーを使用して、クリオゲルの粘弾性特性を調査した。図2は、モル比のSBMAまたはCBMA及びHEMAモノマーのモル比1:1を使用して調製されたクリオゲルのレオロジーを示す。全てのクリオゲルに対し、損失弾性率(G’’)値よりも大きい貯蔵弾性率(G’)値が観察された。これは、粘弾性特性を示す。加えて、CBMAクリオゲルではより高いG’及びG’’が観察され、これらのゲルのより優れた機械的特性を示す。SBMAモノマーを使用して調製されたゲルでは、その双性イオン型サブユニットのイオン強度の差がより大きいので、より強いゲル形成が予想される。これにより、ポリマー鎖間により強いイオン相互作用が生じるはずである。しかし、本発明者らは、この研究で調製されたクリオゲルでは、反対のものを観察した。イオン強度の差を増加させる以外に、ポリマーの平均分子量を増加させると、ポリマー鎖間の物理的相互作用がより強くなるはずであるという点に留意すべきである。これは、SBMAモノマーと比較して、CBMAモノマーとのゲル形成がより強い理由であり得る。
【0088】
総モノマー量が72mg/mLのCBMA濃度まで増加したので、より高いG’及びG’’値が、CBMAゲルでも観察された(図2)。さらに、CBMA濃度を144mg/mLに増加させても、クリオゲルの機械的特性は大幅に改善されなかった。あるいは、SBMAモノマー濃度を増加させても、ゲルの機械的特性に有意な影響がなく(図2);150mg/mLの高SBMA濃度を使用した後でも、G’及びG’’値には、わずかな改善しかなかった。
【0089】
ヒドロゲルの機械的特性へのモノマーのモル比の影響を理解するために、総モノマー量を一定に保ちながら、モノマーのモル比を変化させた。重合組成物を表2にまとめた。
【0090】
表2.異なるモル比のモノマーを使用して調製されたコポリマーの組成
【表2】
【0091】
上述したように、100モル%のSBMAモノマーを含有する重合組成物は、試験された条件のいずれにおいてもゲルを形成しなかったが、純粋なHEMA及びCBMAモノマーを使用してヒドロゲルを調製することは可能であった。さらに、75モル%のSBMAを含有する溶液は、ゲルを形成しなかったが、他の全てのコポリマー組成物は、低温条件で重合した場合にゲルを形成した。次に、ヒドロゲルを生じた組成物を、レオロジー測定により特性評価した(図3)。純粋なHEMA及びCBMAヒドロゲルは、それぞれ、最高及び最低のG’及びG’’を示し、コポリマーヒドロゲルは、純粋なヒドロゲルの機械的特性の間の機械的特性を示した。一般に、HEMAモノマーのモル百分率を増加させると、より高いG’値及びG’’値がもたらされたことが観察された。唯一の例外は、75モル%のCBMAを使用して調製されたヒドロゲルであった。これにより、50モル%のCBMA含有ヒドロゲルよりも高いG’値及びG’’値が得られた。
【0092】
また、本発明者らは、室温重合CH4rtを使用したヒドロゲル形成をもたらした唯一の組成物のレオロジー特性評価を実施し、クリオゲル対応物と比較した(図4)。室温で形成されたゲルは非常に弱かったが、低温条件を使用して重合された同じ組成物について、約10倍高いG’値及びG’’値が測定された。これは、低温条件下での重合がゲルの機械的特性を改善することを示す。室温で調製されたものと比較して、低温条件で重合されたゲルの機械的特性の改善には、いくつかの考えられる理由がある。第1に、凍結中のモノマー相及び水相の相分離によりモノマー濃度を局所的に増強する低温濃縮効果は、室温で調製した対応物よりも、高密度のポリマーネットワークの形成をもたらし得る。第2に、低温条件で高密度なネットワークに加えて、より長いポリマー鎖(より高い平均分子量)は、重合速度の低減により形成されてもよく、これは、ポリマー鎖間の相互作用を改善し、それにより、ゲルの機械的特性を改善し得る。最後に、凍結融解プロセスは、PVAベースの物理的に架橋されたヒドロゲルで以前に観察されたように、ゲルの機械的特性を改善し得る。
【0093】
低温濃縮効果を直接観察する方法はないが、他の考えられる理由の寄与を試験することができる。同じ組成物を低温で重合した場合に形成された鎖が高分子量を有するかどうかを調べるために、本発明者らは、異なる温度(室温、及び-20℃)であることを除いて同じ重合溶液を使用して調製された2つのポリ(SBMA:HEMA)ポリマーにGPC分析を実施した。ゲル化を防ぐために、モノマー量を低く保った(0.04mg/mLのSBMA及び0.015mg/mLのHEMA)。GPCの結果(図5及び表3)は、低温条件で調製されたポリマーについて有意に高い分子量を示した。
【0094】
表3.GPCの結果
【表3】
【0095】
ゲルの凍結及び解凍がクリオゲルの機械的特性の改善に寄与するかどうかを判定するために、本発明者らは、CH1c試料に追加の凍結融解サイクルを実施し、その後に、レオロジー測定を実施した(図6)。4回の凍結融解サイクル後、ゲルの貯蔵または損失弾性率に有意な変化はなかった。これらの結果は、クリオゲルの機械的特性の改善のための主な理由は、重合中の平均分子量が高いポリマー形成によるものであることを示唆し、これにより、ポリマー鎖間に強い相互作用が生じるはずである。加えて、低温濃縮効果による、より高密度のポリマーネットワーク形成は、ゲルの機械的特性を改善し得る。
【0096】
PBS中のコポリマークリオゲルの膨潤特性もまた、SH2c及びCH3c試料について研究された(図7)。SH2c試料は、徐々に、2日間、初期容量の約3.5倍に膨潤し、容量は、13日間、PBS中でさらにインキュベートした後に変化しなかった。あるいは、CH3c試料の場合、膨潤は、非常に急速であった。このゲルは、数分で初期容量の約5倍に膨潤し、容量は、15日間その後変更しなかった。
【0097】
これらの物理的架橋ヒドロゲルの起こりうる分解を研究するために、SH2c及びCH3c試料を、37℃でPBS中、様々な時間間隔でインキュベートし、ヒドロゲルのいくつかを乾燥し、乾燥生成物の重量を測定した。42日後、SH2c試料の重量減少は、30%を超えたが、CH3c試料ではわずか8%であったことが観察された(図8)。CBMAベースのヒドロゲルの低い分解速度は、ポリマー鎖間の強力な相互作用に起因する可能性がある。
【0098】
実施例2
双性イオン型ゲルにより送達されるMicroRNA 146aを含む酸化セリウムナノ粒子は、皮膚張力を改善する。
創傷治癒及び創傷張力の障害は、糖尿病性創傷における重大な臨床的問題である。双性イオン型ゲル中のCNP-miR146aの局所送達が、治癒の改善及び創傷張力の改善をもたらす臨床的関連性があるかどうかを試験するために、ホモ接合型糖尿病(Db/Db)品種の12週齢の雌マウスの頸部背側皮膚に、マウス毎に1つの8mmの全層欠損創を施した。水にSBMA及びHEMAを溶解させることにより、上記のように、双性イオン型ゲルを調製した。CNP-miR146aをゲル化溶液に添加し、APS及びTEMEDを使用して、重合を開始した。反応混合物を、内径0.5cmを有するプラスチック金型に注ぎ、-20℃で24時間重合した。クリオゲルを室温で解凍させ、未反応のモノマー及び他の未結合の成分を除去し、クリオゲルをPBSで数回洗浄した。
【0099】
創傷をヒドロゲルのみ(n=5)、またはCNP-miR146aを含浸させたヒドロゲル(n=5、約10ng)の1回投与で処置した。創傷を経時的に撮影して閉鎖し、動物を生体力学的試験のための創傷閉鎖の4週間後に安楽死させた。中央に治癒した創傷がある各マウスの頭蓋から尾側にかけて、ダンベル型試料を採取した。最大荷重、伸び、引張りひずみを検査するために、Bluehill 3ソフトウェアを備えたInstron 5942試験ユニットを使用した。
【0100】
CNP-miR146aヒドロゲルで処置されたマウスの創傷は、創傷治癒を完了させるまでの時間の有意な改善を示した(図9)。未処置の糖尿病マウスの創傷は、通常、治療後22~24日目に治癒する。対照ゲル(非CNP-miR146a)で処置された創傷は、20日目に治癒し、CNP-miR146aを含浸させたゲルで処置された創傷は、14日目に治癒した(P値=0.002)。創傷は、また、治癒後に張力の改善を示し、2.04Nと比較して増加した最大負荷が3.24Nであった(P値=0.03)。
【0101】
弾性率は、応力が加えられた場合に変形されることに対する抵抗を測定する。本発明者らは、対照ゲルと比較して、CNP-146aゲルを用いて改善された弾性率を観察した(14.68MPaと比較して22.26MPa;P値=0.02)(図10)。PBSも対照として適用した。最大負荷の引張り応力も改善される(処置ゲルの2.59と比較して対照ゲルの1.63MPa;P値=0.03)(図10)。
【0102】
これらのデータは、CNP-miR146aを含浸させた双性イオン型ゲルで処置された糖尿病マウスの創傷が、創傷治癒を完了させる時間、治癒後の張力、弾力性、及び応力に対する耐性を改善したことを示す。この研究は、本開示のヒドロゲルを介して糖尿病性創傷治癒のための治療薬の局所送達の実現可能性を示し、創傷張力への悪影響を示さない。
【0103】
実施例3
CNP-miR146aは、マウスDSS大腸炎モデルの疾患活動指数を減少させる。
炎症性腸疾患(IBD)、特に、潰瘍性大腸炎は、腸の炎症、酸化ストレス、及び粘膜バリアの破壊を特徴とする。酸化ストレス及び炎症が、本開示のCNP-146aヒドロゲルを使用して標的とすることができるかどうか判定するために、本発明者らは、最初に、5日間、8週齢の雄C57/BL6野生型マウスの大腸炎を誘発するために、3%のDSSを使用して、大腸炎モデルを開発した。次に、本発明者らは、PBS対照、10ngのCNP-miR146a(液体)、10ngのCNP-miR146a(ヒドロゲル)、10ngのCNP-miR146a(SF-粘性)を添加された11%の粘稠性絹フィブロイン(SF)、またはCNP-miR146aを含有するSF(SF-液体)を用いてマウスの直腸を処置した治療薬送達モデルを開発した。
【0104】
CNP-miR146aの送達が最適化された時点で、マウス(n=5)を20ngのCNP-miR146aヒドロゲルで、DSS投与の5日目から4日間処置した。それらを、対照ゲルで処置されたもの及び処置を受けていないものと比較した。疾患活動指数(DAI)を毎日測定した。
【0105】
遺伝子発現は、ヒドロゲルを送達ビヒクルとして使用して、最高レベルのmiR146aを示した(図11)。CNP-miR146aゲルを用いる処置により、7日目(処置の3日目、p<0.05)で有意に低いDAIがもたらされた(図12)。
【0106】
これらの結果は、マウスDSS大腸炎モデルにおいて、本開示のCNP-miR146aヒドロゲルが効果的な局所薬物送達媒体を表すことを示す。さらに、CNP-miR146aゲルは、DAIを減少させ、これは、急性大腸炎の新規の治療法としての可能性を示す。
【0107】
実施例4
CM-CNP-miR146aは、マウスDSS大腸炎モデルにおいて、体重減少を減少させ、疾患活動指数を減少させ、結腸の長さの短縮を減少させ、IL-1b及びTNFαの発現を減少させる。
酸化ストレス及び炎症が、本開示のCNP-146aキトサンミクロゲルを使用して効率よく処置することもできるかどうかを判定するために、本発明者らは、再度、大腸炎のマウスモデルを利用した。今回は、本発明者らは、飲料水にDSSを6日間加えることにより、14週齢の雄C57/BL6野生型マウスに大腸炎を誘発した。次に、本発明者らは、キトサンミクロゲルを使用して、CNP-miR146aに対する新規の治療薬送達方策を開発し、PBS(DSS)、キトサンミクロゲル単独(DSS+CM)、または500ngのCNP-miR146aを含有するキトサンミクロゲル(DSS+CM-CNP-miR146a)のいずれかを用いて、マウスを6日目に経直腸的に処置した。対照(CTL)群は、DSSまたは他の任意の処置を受けなかった。疾患活動指数(DAI)を、パーセント体重減少、便の硬さ、及び血便に基づいて計算した。炎症性遺伝子発現を検討するために、8日目に、PCRのために結腸を採取した。
【0108】
図13に示されるように、CM-CNP-miR146aを用いる処置により、DSS及びDSS+CMで処置されたマウスと比較して、経時的なより低いパーセンテージの体重減少がもたらされた。CM-CNP-miR146aで処置されたマウスは、また、PBS処置群と比較して、8日目(処置後2日目、p<0.05)で有意に低いDAIを示した(図14)。CM-CNP-miR146aの処置では、結腸の短縮が少なくなる傾向もあった(図15)。CM-CNP-miR146a処置マウスは、また、血便と関連するスコアが低いことを示した。さらに、図16は、IL-1b遺伝子発現が、PBS群と比較して、CM-CNP-miR146aで処置された群において減少したことを示す(p<0.05)。図17は、また、CNP-miR146aを欠くキトサンミクロゲルで処置されたDSSマウスと比較して、CNP-miR146aキトサンミクロゲルで処置された後のDSSマウスにおいてTNFα遺伝子発現が減少したことを示す。
【0109】
これらの結果は、キトサンミクロゲルを使用したCNP-miR146aの送達が、マウス大腸炎モデルにおける炎症性遺伝子発現及び全体的なDAIを減少させることを示す。従って、CNP-miR146aのキトサンミクロゲル送達は、効果的な大腸炎治療を提供し得る。さらに、CNP-miR146aキトサンミクロゲルは、DAIを減少させ、これは、急性大腸炎の新規治療法としての可能性を示す。
【0110】
上述の様々な特徴及びプロセスは、互いに独立して使用されても、または様々な方法で組み合わされてもよい。全ての可能な組み合わせ及び副組み合わせは、本開示の範囲内に含まれることを意図する。さらに、いくつかの実装では、特定の方法またはプロセスブロックが省略されてもよい。本明細書に記載の方法及びプロセスは、また、任意の特定の順序に限定されるものではなく、それに関連するブロックまたは状態が適切である他の順序で実施することができる。例えば、記載のブロックもしくは状態が、具体的に開示された以外の順序で実行されても、または、複数のブロックもしくは状態が、単一のブロックもしくは状態に組み合わされてもよい。例示的なブロックまたは状態は、直列、並列、または他の何らかの方法で実施されてもよい。ブロックまたは状態は、開示された例示的な実施形態に追加されても、それから削除されてもよい。本明細書に記載の例示的なシステム及び構成要素は、記載されるものとは異なって構成されてもよい。例えば、要素は、開示された例示的な実施形態と比較して、追加、除去、または再配置されてもよい。
【0111】
本明細書で使用される仮定的文言、例えば、とりわけ、「できる(can)」、「できる(could)」、「得る(might)」、「得る(may)」、「例えば」などは、別途具体的な記載のない限り、または別途使用される文脈内で共通認識がない限り、一般に、特定の実施形態は、特定の特徴、要素、及び/またはステップを含むが、他の実施形態は、それらを含まないことを意味することが意図される。従って、そのような仮定的文言は、一般に、特徴、要素及び/もしくはステップが、任意の方法で1つ以上の実施形態に必要とされること、または、これらの特徴、要素、及び/もしくはステップが、任意の特定の実施形態に含まれるか、もしくはそれで実施されることになるかにかかわらず、1つ以上の実施形態が、著者の示唆もしくは指示の有無に関係なく決定するためのロジックを必ず含むこと、を意味するものではない。「含むこと(comprising)」、「含むこと(including)」、「有する(having)」などの用語は、同義語であり、制限のない方法で包括的に使用され、追加の要素、特徴、行為、操作などを除外しない。また、「または」という用語は、包括的な意味で使用され(及び、排他的な意味では使用されず)、従って、例えば、要素のリストに関して使用される場合、「または」という用語は、リスト中の要素の1つ、いくつか、または全てを意味する。
【0112】
特定の例示的な実施形態が記載されているが、これらの実施形態は、単なる例として提示されており、本明細書に開示の本発明の範囲を限定することを意図するものではない。従って、上述の説明には、特定の特徴、特性、またはステップが必要または不可欠であることを意味するものはない。本明細書に記載の新規の方法及びシステムは、様々な他の形態で具体化されてもよく;さらに、本明細書に記載の方法及びシステムの形態における様々な省略、置換、及び変更は、本明細書に開示の発明の趣旨から逸脱することなく行われてもよい。添付の特許請求の範囲及びそれらの同等物は、本明細書に開示の特定の発明の範囲及び趣旨に含まれるような形態または修正を網羅することが意図される。
本発明は、以下の態様および実施形態を含む。
[1] 炎症の処置を必要とする対象において前記炎症を処置するための方法であって、前記方法が、マイクロRNAコンジュゲート酸化セリウムナノ粒子(CNP)を含む治療有効量のキトサンミクロゲルを前記対象に投与することを含む、前記方法。
[2] 前記炎症が、創傷と関連する、[1]に記載の方法。
[3] 前記創傷が、糖尿病性潰瘍である、[2]に記載の方法。
[4] 前記処置により、未処置の対象の創傷閉鎖の速度と比較して、前記対象の創傷閉鎖の速度の増加がもたらされる、[2]または[3]に記載の方法。
[5] 前記キトサンミクロゲルが、前記対象に局所的、皮内、または筋肉内投与される、[1]~[3]のいずれかに記載の方法。
[6] 前記炎症が、潰瘍性大腸炎またはクローン病と関連する、[1]に記載の方法。
[7] 前記キトサンミクロゲルが、前記対象に経口または直腸投与される、[6]に記載の方法。
[8] 前記キトサンミクロゲルが、前記対象に複数回投与される、[1]~[7]のいずれかに記載の方法。
[9] 前記キトサンミクロゲルが、前記対象に毎日投与される、[1]~[8]のいずれかに記載の方法。
[10] 前記キトサンミクロゲルの投与が、前記対象の酸化ストレスを処置または防止する、[1]~[9]のいずれかに記載の方法。
[11] 前記マイクロRNAが、miRNA-146aを含む、[1]~[10]のいずれかに記載の方法。
[12] 前記CNPの表面が、ヒアルロン酸、コラーゲン、及びフィブリノーゲンから選択される1つ以上の生体適合性分子でコーティングされる、[1]~[11]のいずれかに記載の方法。
[13] 前記CNPが、約3~5nmのサイズ範囲を有する、[1]~[12]のいずれかに記載の方法。
[14] 前記CNPが、ユーロピウム(Eu)、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、及びルテチウム(Lu)のうちの1つ以上から選択されるランタニドを添加される、[1]~[13]のいずれかに記載の方法。
[15] キトサンミクロゲル内に包埋されたmiRNA146aコンジュゲート酸化セリウムナノ粒子(CNP)を含む、医薬組成物。
[16] 前記CNPの表面が、ヒアルロン酸、コラーゲン、及びフィブリノーゲンから選択される1つ以上の生体適合性分子でコーティングされる、[15]に記載の医薬組成物。
[17] 前記CNPが、約3~5nmのサイズ範囲を有する、[15]または[16]に記載の医薬組成物。
[18] 前記CNPが、ユーロピウム(Eu)、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、及びルテチウム(Lu)のうちの1つ以上から選択されるランタニドを添加される、[15]~[17]のいずれかに記載の医薬組成物。
[19] ミクロゲルであって、
キトサンポリマー;及び
酸化セリウムナノ粒子(CNP)
を含む、前記ミクロゲル。
[20] 前記CNPが、治療薬を含む、[19]に記載のミクロゲル。
[21] 前記治療薬が、抗炎症薬である、[20]に記載のミクロゲル。
[22] 前記治療薬が、マイクロRNA(miRNA)である、[20]または[21]に記載のミクロゲル。
[23] 前記miRNAが、miRNA 146aである、[22]に記載のミクロゲル。
[24] 抗炎症性キトサンミクロゲル組成物の作製方法であって、前記方法が、
a)複数のキトサンポリマー及び酸化セリウムナノ粒子(CNP)を含む組成物を形成すること;ならびに
b)抗炎症性CNPを含むキトサンミクロゲルを形成するためにゲニピンで前記キトサンポリマーを架橋すること
を含む、前記方法。
[25] 前記CNPが、治療薬を含む、[24]に記載の方法。
[26] 前記治療薬が、抗炎症薬である、[25]に記載の方法。
[27] 前記治療薬が、マイクロRNA(miRNA)である、[25]または[26]に記載の方法。
[28] 前記miRNAが、miRNA 146aである、[27]に記載の方法。
[29] 炎症の処置を必要とする対象の前記炎症を処置するための方法であって、前記方法が、前記対象にマイクロRNAコンジュゲート酸化セリウムナノ粒子(CNP)を含む治療有効量の双性イオン型ゲルを投与することを含む、前記方法。
[30] 前記炎症は、創傷と関連する、[29]に記載の方法。
[31] 前記創傷が、糖尿病性潰瘍である、[30]に記載の方法。
[32] 前記処置により、未処置の対象の創傷閉鎖の速度と比較して、前記対象の創傷閉鎖の速度の増加がもたらされる、[30]または[31]に記載の方法。
[33] 前記双性イオン型ゲルが、前記対象に局所、皮内、または筋肉内投与される、[29]~[31]のいずれかに記載の方法。
[34] 前記炎症が、潰瘍性大腸炎またはクローン病と関連する、[29]に記載の方法。
[35] 前記双性イオン型ゲルが、前記対象に経口または直腸投与される、[34]に記載の方法。
[36] 前記双性イオン型ゲルが、前記対象に複数回投与される、[29]~[35]のいずれかに記載の方法。
[37] 前記双性イオン型ゲルが、前記対象に毎日投与される、[29]~[36]のいずれかに記載の方法。
[38] 前記双性イオン型ゲルの投与が、前記対象の酸化ストレスを処置または予防する、[29]~[37]のいずれかに記載の方法。
[39] 前記双性イオン型ゲルが、双性イオン型クリオゲルである、[29]~[38]のいずれかに記載の方法。
[40] 前記双性イオン型ゲルが、[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]ジメチル-(3-スルホプロピル)アンモニウムヒドロキシド(SBMA)及び/または2-ヒドロキシエチルメタクリラート(HEMA)モノマーを含む、[29]~[39]のいずれかに記載の方法。
[41] 前記マイクロRNAが、miRNA-146aを含む、[29]~[40]のいずれかに記載の方法。
[42] 前記CNPの表面が、ヒアルロン酸、コラーゲン、及びフィブリノーゲンから選択される1つ以上の生体適合性分子でコーティングされる、[29]~[41]のいずれかに記載の方法。
[43] 前記CNPが、約3~5nmのサイズ範囲を有する、[29]~[42]のいずれかに記載の方法。
[44] 前記CNPが、ユーロピウム(Eu)、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、及びルテチウム(Lu)のうちの1つ以上から選択されるランタニドを添加される、[29]~[43]のいずれかに記載の方法。
[45] 双性イオン型ヒドロゲル内に包埋されたmiRNA146aコンジュゲート酸化セリウムナノ粒子(CNP)を含む、医薬組成物。
[46] 前記CNPの表面が、ヒアルロン酸、コラーゲン、及びフィブリノーゲンから選択される1つ以上の生体適合性分子でコーティングされる、[45]に記載の医薬組成物。
[47] 前記CNPが、約3~5nmのサイズ範囲を有する、[45]または[46]に記載の医薬組成物。
[48] 前記CNPが、ユーロピウム(Eu)、ランタン(La)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、及びルテチウム(Lu)のうちの1つ以上から選択されるランタニドを添加される、[45]~[47]のいずれかに記載の医薬組成物。
[49] ヒドロゲルであって、
a)スルホベタインメタクリラート(SBMA)、カルボキシベタインメタクリラート(CBMA)、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される重合双性イオン型モノマー、
b)重合ヒドロキシエチルメタクリラート(HEMA)モノマー、ならびに
c)酸化セリウムナノ粒子(CNP)
を含む、前記ヒドロゲル。
[50] 前記CNPが、治療薬を含む、[49]に記載のヒドロゲル。
[51] 前記治療薬が、抗炎症薬である、[50]に記載のヒドロゲル。
[52] 前記治療薬が、マイクロRNA(miRNA)である、[50]または[51]に記載のヒドロゲル。
[53] 前記miRNAが、miRNA-146aである、[52]に記載のヒドロゲル。
[54] 抗炎症性ヒドロゲル組成物の作製方法であって、
a)スルホベタインメタクリラート(SBMA)及びカルボキシベタインメタクリラート(CBMA);ヒドロキシエチルメタクリラート(HEMA)モノマー;ならびに酸化セリウムナノ粒子(CNP)からなる群より選択される少なくとも1つの双性イオン型モノマーを含む組成物を形成すること、
b)前記組成物に化学的重合剤の添加により前記組成物中の前記モノマーの前記重合を開始すること、ならびに
c)抗炎症性CNPを含むヒドロゲルを形成するために、0℃未満の温度で前記組成物中の前記モノマーを重合すること、
を含む、前記方法。
[55] 前記CNPが、治療薬を含む、[54]に記載の方法。
[56] 前記治療薬が、抗炎症薬である、[55]に記載の方法。
[57] 前記治療薬が、マイクロRNA(miRNA)である、[55]または[56]に記載の方法。
[58] 前記miRNAが、miRNA-146aである、[57]に記載の方法。
[59] 前記重合剤が、過硫酸アンモニウム(APS)及びN,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(TEMED)を含む、[54]に記載の方法。
[60] 前記組成物中の前記モノマーを重合させるステップが、約-20℃の温度で行われる、[54]に記載の方法。

図1
図2
図3
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図6
図7
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図10
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図15
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【配列表】
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