(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】身体状態の推定装置、身体状態の推定装置の作動方法、プログラム、および記録媒体
(51)【国際特許分類】
A61B 10/00 20060101AFI20241004BHJP
A61B 3/113 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
A61B10/00 H
A61B3/113
(21)【出願番号】P 2020194703
(22)【出願日】2020-11-24
【審査請求日】2023-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】505457994
【氏名又は名称】学校法人東京医科大学
(74)【代理人】
【識別番号】100113930
【氏名又は名称】鮫島 正洋
(74)【代理人】
【識別番号】230124202
【氏名又は名称】井上 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100129137
【氏名又は名称】中山 ゆみ
(72)【発明者】
【氏名】西村 太雅
(72)【発明者】
【氏名】野田 都里人
(72)【発明者】
【氏名】後藤 浩
(72)【発明者】
【氏名】毛塚 剛司
(72)【発明者】
【氏名】清水 聰一郎
(72)【発明者】
【氏名】黒田 雅彦
【審査官】磯野 光司
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-503414(JP,A)
【文献】特表2015-512299(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0213301(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0166193(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0246969(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0106315(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/113
A61B 5/00-5/398
A61B 10/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記憶部、表示部、被検者の眼球の画像を撮影する眼球画像取得部、眼球運動データの取得部、および被検者の身体状態の推定部を含み、
前記記憶部は、
少なくとも一つの視刺激用検査パターンデータを有し、
前記視刺激用検査パターンは、被検者の2項目以上の眼球運動データを取得するためのパターンであり、
前記表示部は、
前記視刺激用検査パターンデータに基づく視刺激用検査パターンを表示し、
前記眼球画像取得部は、
前記表示部に表示される前記視刺激用検査パターンを見ている被検者の眼球を連続的に撮影して、眼球画像を取得し、
前記眼球運動データの取得部は、
前記眼球画像を解析して、2項目以上の眼球運動の組み合わせ眼球運動データである眼球運動データを取得し、
前記推定部は、
取得した前記被検者の眼球運動データについて、身体状態推定情報により、前記被検者の身体状態を推定し、
前記身体状態推定情報は、視刺激用検査パターンデータと眼球運動データと身体状態との関係性とを示す情報であり、
推定対象の前記身体状態が、運転能力であ
り、
前記眼球運動の項目が、瞳孔位置、瞳孔径、瞳孔の散大縮小速度、輻輳開散運動、追視、サッケード、固視、眼球運動の左右差、眼振、および虹彩からなる群から選択された少なくとも一つを含むことを特徴とする身体状態の推定装置。
【請求項2】
前記眼球運動の項目が、少なくとも輻輳開散運動を含む、請求項1に記載の身体状態の推定装置。
【請求項3】
記憶部、表示部、被検者の眼球の画像を撮影する眼球画像取得部、眼球運動データの取得部、および被検者の身体状態の推定部を含み、
前記記憶部は、
少なくとも一つの視刺激用検査パターンデータを有し、
前記視刺激用検査パターンは、被検者の2項目以上の眼球運動データを取得するためのパターンであり、
前記表示部は、
前記視刺激用検査パターンデータに基づく視刺激用検査パターンを表示し、
前記眼球画像取得部は、
前記表示部に表示される前記視刺激用検査パターンを見ている被検者の眼球を連続的に撮影して、眼球画像を取得し、
前記眼球運動データの取得部は、
前記眼球画像を解析して、2項目以上の眼球運動の組み合わせ眼球運動データである眼球運動データを取得し、
前記推定部は、
取得した前記被検者の眼球運動データについて、身体状態推定情報により、前記被検者の身体状態を推定し、
前記身体状態推定情報は、視刺激用検査パターンデータと眼球運動データと身体状態との関係性とを示す情報であり、
推定対象の前記身体状態が、運転能力であり、
前記視刺激用検査パターンは、瞳孔対光反射検査用のパートを含む複数のパートから構成されることを特徴とする身体状態の推定装置。
【請求項4】
前記視刺激用検査パターンは、さらに追視検査用のパート、追従運動検査用のパート及び固視検査用のパートを含む、請求項3に記載の身体状態の推定装置。
【請求項5】
記憶部、表示部、被検者の眼球の画像を撮影する眼球画像取得部、眼球運動データの取得部、および被検者の身体状態の推定部を含み、
前記記憶部は、
少なくとも一つの視刺激用検査パターンデータを有し、
前記視刺激用検査パターンは、被検者の2項目以上の眼球運動データを取得するためのパターンであり、
前記表示部は、
前記視刺激用検査パターンデータに基づく視刺激用検査パターンを表示し、
前記眼球画像取得部は、
前記表示部に表示される前記視刺激用検査パターンを見ている被検者の眼球を連続的に撮影して、眼球画像を取得し、
前記眼球運動データの取得部は、
前記眼球画像を解析して、2項目以上の眼球運動の組み合わせ眼球運動データである眼球運動データを取得し、
前記推定部は、
取得した前記被検者の眼球運動データについて、身体状態推定情報により、前記被検者の身体状態を推定し、
前記身体状態推定情報は、視刺激用検査パターンデータと眼球運動データと身体状態との関係性とを示す情報であり、
推定対象の前記身体状態が、運転能力であり、
前記推定部が、身体状態推定モデルを含み、
前記身体状態推定モデルは、前記視刺激用検査パターンの表示により得られる、推定目的の身体状態である学習用サンプル群の眼球運動データと推定目的の身体状態ではない学習用サンプル群の眼球運動データとに加えて、さらに前記学習用サンプル群の対象者の過去の事故歴に係るデータから、学習により生成されるモデルであり、
前記身体状態推定モデルにより、前記被検者の身体状態を推定することを特徴とする身体状態の推定装置。
【請求項6】
記憶部、表示部、被検者の眼球の画像を撮影する眼球画像取得部、眼球運動データの取得部、および被検者の身体状態の推定部を含み、
前記記憶部は、
少なくとも一つの視刺激用検査パターンデータを有し、
前記視刺激用検査パターンは、被検者の2項目以上の眼球運動データを取得するためのパターンであり、
前記表示部は、
前記視刺激用検査パターンデータに基づく視刺激用検査パターンを表示し、
前記眼球画像取得部は、
前記表示部に表示される前記視刺激用検査パターンを見ている被検者の眼球を連続的に撮影して、眼球画像を取得し、
前記眼球運動データの取得部は、
前記眼球画像を解析して、2項目以上の眼球運動の組み合わせ眼球運動データである眼球運動データを取得し、
前記推定部は、
取得した前記被検者の眼球運動データについて、身体状態推定情報により、前記被検者の身体状態を推定し、
前記身体状態推定情報は、視刺激用検査パターンデータと眼球運動データと身体状態との関係性とを示す情報であり、
推定対象の前記身体状態が、運転能力であり、
前記推定部が、身体状態推定モデルを含み、
前記身体状態推定モデルは、前記視刺激用検査パターンの表示により得られる、推定目的の正常な身体状態である学習用サンプル群の眼球運動データに加えて、さらに前記学習用サンプル群の対象者の過去の事故歴に係るデータから、学習により生成されるモデルであり、
前記身体状態推定モデルにより、前記被検者の身体状態を推定することを特徴とする身体状態の推定装置。
【請求項7】
前記推定部が、身体状態推定モデルを含み、
前記身体状態推定モデルは、前記視刺激用検査パターンの表示により得られる、推定目的の身体状態である学習用サンプル群の眼球運動データと推定目的の身体状態ではない学習用サンプル群の眼球運動データとから、学習により生成されるモデルであり、
前記身体状態推定モデルにより、前記被検者の身体状態を推定する、請求項1
から4のいずれか一項に記載の身体状態の推定装置。
【請求項8】
前記推定部が、身体状態推定モデルを含み、
前記身体状態推定モデルは、前記視刺激用検査パターンの表示により得られる、推定目的の正常な身体状態である学習用サンプル群の眼球運動データから、学習により生成されるモデルであり、
前記身体状態推定モデルにより、前記被検者の身体状態を推定する、請求項1
から4のいずれか一項に記載の身体状態の推定装置。
【請求項9】
さらに、前記被検者の視野と前記表示部の前記被検者側との空間の明暗を調整する明暗調整部を有する、請求項1から
8のいずれか一項に記載の身体状態の推定装置。
【請求項10】
筐体を有し、
前記筐体の内部に、前記表示部、前記眼球画像取得部、および前記明暗調整部が配置され、
前記筐体の一面に、前記筐体の内部の前記表示部の表示面を見るための観察窓を有する、
請求項
9に記載の身体状態の推定装置。
【請求項11】
さらに、前記被検者の眼球と前記表示部との距離を一定に保つための、頭部の固定部を有する、請求項1から
10のいずれか一項に記載の身体状態の推定装置。
【請求項12】
表示部を有する端末と、
固定部、光条件測定部、補正部、前記記憶部、被検者の眼球の画像を撮影する前記眼球画像取得部、前記眼球運動データの取得部、および前記被検者の身体状態の推定部を含む装置とを含み、
前記端末と前記装置は、接続可能であり、
前記装置において、
前記固定部は、前記端末を固定し、
前記光条件測定部は、前記端末の表示部の光条件を測定し、
前記補正部は、測定した前記端末の光条件を任意の光条件とするための補正条件を算出し、
前記端末は、前記算出された補正条件に基づいて光条件を調整する、請求項1から
11のいずれか一項に記載の身体状態の推定装置。
【請求項13】
身体状態の推定装置が、記憶部、表示部、被検者の眼球の画像を撮影する眼球画像取得部、眼球運動データの取得部、および被検者の身体状態の推定部を含み、
表示工程、被検者の眼球の画像を撮影する眼球画像取得工程、眼球運動データの取得工程、および被検者の身体状態の推定工程を含み、
前記記憶部は、
少なくとも一つの視刺激用検査パターンデータを有し、
前記視刺激用検査パターンは、被検者の2項目以上の眼球運動データを取得するためのパターンであり、
前記表示工程は、
前記表示部が、前記視刺激用検査パターンデータに基づく視刺激用検査パターンを表示し、
前記眼球画像取得工程は、
前記眼球画像取得部が、前記表示部に表示される前記視刺激用検査パターンを見ている被検者の眼球を連続的に撮影して、眼球画像を取得し、
前記眼球運動データの取得工程は、
前記眼球運動データの取得部が、前記眼球画像を解析して、2項目以上の眼球運動の組み合わせ眼球運動データを取得し、
前記推定工程は、
前記推定部が、取得した前記被検者の組み合わせ眼球運動データについて、身体状態推定情報により、前記被検者の身体状態を推定し、
前記身体状態推定情報は、視刺激用検査パターンデータと組み合わせ眼球運動データと身体状態との関係性とを示す情報であり、
推定対象の前記身体状態が、運転能力であ
り、
前記眼球運動の項目が、瞳孔位置、瞳孔径、瞳孔の散大縮小速度、輻輳開散運動、追視、サッケード、固視、眼球運動の左右差、眼振、および虹彩からなる群から選択された少なくとも一つを含むことを特徴とする身体状態の推定装置の作動方法。
【請求項14】
前記眼球運動の項目が、少なくとも輻輳開散運動を含む、請求項13に記載の身体状態の推定装置の作動方法。
【請求項15】
身体状態の推定装置が、記憶部、表示部、被検者の眼球の画像を撮影する眼球画像取得部、眼球運動データの取得部、および被検者の身体状態の推定部を含み、
表示工程、被検者の眼球の画像を撮影する眼球画像取得工程、眼球運動データの取得工程、および被検者の身体状態の推定工程を含み、
前記記憶部は、
少なくとも一つの視刺激用検査パターンデータを有し、
前記視刺激用検査パターンは、被検者の2項目以上の眼球運動データを取得するためのパターンであり、
前記表示工程は、
前記表示部が、前記視刺激用検査パターンデータに基づく視刺激用検査パターンを表示し、
前記眼球画像取得工程は、
前記眼球画像取得部が、前記表示部に表示される前記視刺激用検査パターンを見ている被検者の眼球を連続的に撮影して、眼球画像を取得し、
前記眼球運動データの取得工程は、
前記眼球運動データの取得部が、前記眼球画像を解析して、2項目以上の眼球運動の組み合わせ眼球運動データを取得し、
前記推定工程は、
前記推定部が、取得した前記被検者の組み合わせ眼球運動データについて、身体状態推定情報により、前記被検者の身体状態を推定し、
前記身体状態推定情報は、視刺激用検査パターンデータと組み合わせ眼球運動データと身体状態との関係性とを示す情報であり、
推定対象の前記身体状態が、運転能力であり、
前記視刺激用検査パターンは、瞳孔対光反射検査用のパートを含む複数のパートから構成されることを特徴とする身体状態の推定装置の作動方法。
【請求項16】
前記視刺激用検査パターンは、さらに追視検査用のパート、追従運動検査用のパート及び固視検査用のパートを含む、請求項15に記載の身体状態の推定装置の作動方法。
【請求項17】
身体状態の推定装置が、記憶部、表示部、被検者の眼球の画像を撮影する眼球画像取得部、眼球運動データの取得部、および被検者の身体状態の推定部を含み、
表示工程、被検者の眼球の画像を撮影する眼球画像取得工程、眼球運動データの取得工程、および被検者の身体状態の推定工程を含み、
前記記憶部は、
少なくとも一つの視刺激用検査パターンデータを有し、
前記視刺激用検査パターンは、被検者の2項目以上の眼球運動データを取得するためのパターンであり、
前記表示工程は、
前記表示部が、前記視刺激用検査パターンデータに基づく視刺激用検査パターンを表示し、
前記眼球画像取得工程は、
前記眼球画像取得部が、前記表示部に表示される前記視刺激用検査パターンを見ている被検者の眼球を連続的に撮影して、眼球画像を取得し、
前記眼球運動データの取得工程は、
前記眼球運動データの取得部が、前記眼球画像を解析して、2項目以上の眼球運動の組み合わせ眼球運動データを取得し、
前記推定工程は、
前記推定部が、取得した前記被検者の組み合わせ眼球運動データについて、身体状態推定情報により、前記被検者の身体状態を推定し、
前記身体状態推定情報は、視刺激用検査パターンデータと組み合わせ眼球運動データと身体状態との関係性とを示す情報であり、
推定対象の前記身体状態が、運転能力であり、
前記推定部が、身体状態推定モデルを含み、
前記身体状態推定モデルは、前記視刺激用検査パターンの表示により得られる、推定目的の身体状態である学習用サンプル群の組み合わせ眼球運動データと推定目的の身体状態ではない学習用サンプル群の組み合わせ眼球運動データとに加えて、さらに前記学習用サンプル群の対象者の過去の事故歴に係るデータから、学習により生成されるモデルであり、
前記身体状態推定モデルが、前記被検者の身体状態を推定することを特徴とする身体状態の推定装置の作動方法。
【請求項18】
身体状態の推定装置が、記憶部、表示部、被検者の眼球の画像を撮影する眼球画像取得部、眼球運動データの取得部、および被検者の身体状態の推定部を含み、
表示工程、被検者の眼球の画像を撮影する眼球画像取得工程、眼球運動データの取得工程、および被検者の身体状態の推定工程を含み、
前記記憶部は、
少なくとも一つの視刺激用検査パターンデータを有し、
前記視刺激用検査パターンは、被検者の2項目以上の眼球運動データを取得するためのパターンであり、
前記表示工程は、
前記表示部が、前記視刺激用検査パターンデータに基づく視刺激用検査パターンを表示し、
前記眼球画像取得工程は、
前記眼球画像取得部が、前記表示部に表示される前記視刺激用検査パターンを見ている被検者の眼球を連続的に撮影して、眼球画像を取得し、
前記眼球運動データの取得工程は、
前記眼球運動データの取得部が、前記眼球画像を解析して、2項目以上の眼球運動の組み合わせ眼球運動データを取得し、
前記推定工程は、
前記推定部が、取得した前記被検者の組み合わせ眼球運動データについて、身体状態推定情報により、前記被検者の身体状態を推定し、
前記身体状態推定情報は、視刺激用検査パターンデータと組み合わせ眼球運動データと身体状態との関係性とを示す情報であり、
推定対象の前記身体状態が、運転能力であり、
前記推定部が、身体状態推定モデルを含み、
前記身体状態推定モデルは、前記視刺激用検査パターンの表示により得られる、推定目的の正常な身体状態である学習用サンプル群の眼球運動データに加えて、さらに前記学習用サンプル群の対象者の過去の事故歴に係るデータから、学習により生成されるモデルであり、
前記身体状態推定モデルが、前記被検者の身体状態を推定することを特徴とする身体状態の推定装置の作動方法。
【請求項19】
前記推定部が、身体状態推定モデルを含み、
前記身体状態推定モデルは、前記視刺激用検査パターンの表示により得られる、推定目的の身体状態である学習用サンプル群の組み合わせ眼球運動データと推定目的の身体状態ではない学習用サンプル群の組み合わせ眼球運動データとから、学習により生成されるモデルであり、
前記身体状態推定モデルが、前記被検者の身体状態を推定する、請求項
13から16のいずれか一項に記載の身体状態の推定装置の作動方法。
【請求項20】
前記推定部が、身体状態推定モデルを含み、
前記身体状態推定モデルは、前記視刺激用検査パターンの表示により得られる、推定目的の正常な身体状態である学習用サンプル群の眼球運動データから、学習により生成されるモデルであり、
前記身体状態推定モデルが、前記被検者の身体状態を推定する、請求項
13から16のいずれか一項に記載の身体状態の推定装置の作動方法。
【請求項21】
身体状態の推定装置が、さらに、明暗調整部を有し、
前記明暗調整部が、前記被検者の視野と前記表示部との空間の明暗を調整する、請求項
13から
20のいずれか一項に記載の身体状態の推定装置の作動方法。
【請求項22】
請求項
13から
21のいずれか一項に記載の身体状態の推定装置の作動方法をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項23】
請求項
22に記載のプログラムを記録したことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、身体状態の推定装置、身体状態の推定方法、プログラム、および記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高齢者の運転事故が社会問題となっており、運転能力に応じた免許返納が重要視されている。しかし、身体機能の低下または認知機能の低下を自ら認識できていないドライバーは、免許返納に積極的ではない場合が多い。また、ドライブシュミレーションのような装置が製品化されているが、運転技術を確認することはできても、例えば、認知症等の影響を客観的に判断することが困難である。このため、認知機能等の低下を認識できていないドライバーや、不安は抱えているものの免許返納の必要性までは感じていないドライバーに対して、免許返納の必要性を客観的に理解させるには至っていない。また、運転免許試験場等において、非医療従事者が、脳波等の高度な測定装置を使用することも現実的ではなく、運転能力に影響与える、身体機能の低下や、認知症等の疾患等の可能性等を判断することも困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このため、医療従事者でなくても、身体機能や認知機能の低下が影響する運転能力について、客観的に容易に推測できるシステムの構築は、非常に有用と考えられる。また、運転能力にかかわらず、例えば、認知症、脳障害等、様々な疾患に関しても、容易に推測ができれば、自宅における日々の健康管理にも有用である。
【0004】
そこで、本発明は、例えば、身体機能や疾患等の身体状態を容易に推測できる新たなシステムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するために、本発明の身体状態推測装置は、記憶部、表示部、被検者の眼球の画像を撮影する眼球画像取得部、眼球運動データの取得部、および被検者の身体状態の推定部を含み、
前記記憶部は、少なくとも一つの視刺激用検査パターンデータを有し、前記視刺激用検査パターンは、被検者の2項目以上の眼球運動データを取得するためのパターンであり、
前記表示部は、前記視刺激用検査パターンデータに基づく視刺激用検査パターンを表示し、
前記眼球画像取得部は、前記表示部に表示される前記視刺激用検査パターンを見ている被検者の眼球を連続的に撮影して、眼球画像を取得し、
前記眼球運動データの取得部は、前記眼球画像を解析して、2項目以上の眼球運動の組み合わせ眼球運動データを取得し、
前記推定部は、取得した前記被検者の組み合わせ眼球運動データについて、身体状態推定情報により、前記被検者の身体状態を推定し、
前記身体状態推定情報は、視刺激用検査パターンデータと組み合わせ眼球運動データと身体状態との関係性とを示す情報であることを特徴とする。
【0006】
本発明の身体状態の推定方法は、記憶部を使用し、表示工程、被検者の眼球の画像を撮影する眼球画像取得工程、眼球運動データの取得工程、および被検者の身体状態の推定工程を含み、
前記記憶部は、少なくとも一つの視刺激用検査パターンデータを有し、前記視刺激用検査パターンは、被検者の2項目以上の眼球運動データを取得するためのパターンであり、
前記表示工程は、表示部に、前記視刺激用検査パターンデータに基づく視刺激用検査パターンを表示し、
前記眼球画像取得工程は、前記表示部に表示される前記視刺激用検査パターンを見ている被検者の眼球を連続的に撮影して、眼球画像を取得し、
前記眼球運動データの取得工程は、前記眼球画像を解析して、2項目以上の眼球運動の組み合わせ眼球運動データを取得し、
前記推定工程は、取得した前記被検者の組み合わせ眼球運動データについて、身体状態推定情報により、前記被検者の身体状態を推定し、
前記身体状態推定情報は、視刺激用検査パターンデータと組み合わせ眼球運動データと身体状態との関係性とを示す情報であることを特徴とする。
【0007】
本発明のプログラムは、前記本発明の身体状態の推定方法をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0008】
本発明の記録媒体は、前記本発明のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、例えば、脳波測定装置のような高度な装置を使用することなく、被検者に視刺激用検査パターンを見せ、前記被検者の眼球画像を連続的に撮影し、その眼球画像から複数項目の眼球運動の組み合わせデータを取得し、この組み合わせデータから前記身体状態推定情報に基づき前記被検者の身体状態を推定できる。このため、例えば、医療従事者にかかわらず、容易に被検者の身体状態を推定できる。本発明によれば、例えば、運転能力の有無または程度、脳障害および認知症等の疾患の可能性等を、容易に推定できるため、運転免許返納や生活改善等にも役立てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態1の身体状態推定装置の一例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、実施形態1の身体状態推定装置のハードウエア構成のその他の例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、実施形態1における情報の紐づけの一例を示す概略図である。
【
図4】
図4は、実施形態2の身体状態推定システムの一例を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、実施形態2の身体状態推定システムの一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の身体状態の推定装置は、例えば、前記推定部が、身体状態推定モデルを含み、前記身体状態推定モデルは、前記視刺激用検査パターンの表示により得られる、推定目的の身体状態である学習用サンプル群の眼球運動データと推定目的の身体状態ではない学習用サンプル群の眼球運動データとから、学習により生成されるモデルであり、前記身体状態推定モデルにより、前記被検者の身体状態を推定する。
【0012】
本発明の身体状態の推定装置は、例えば、前記推定部が、身体状態推定モデルを含み、前記身体状態推定モデルは、前記視刺激用検査パターンの表示により得られる、推定目的の正常な身体状態である学習用サンプル群の眼球運動データから、学習により生成されるモデルであり、前記身体状態推定モデルにより、前記被検者の身体状態を推定する。
【0013】
本発明の身体状態の推定装置は、例えば、前記眼球運動の項目が、瞳孔位置、瞳孔径、瞳孔の散大縮小速度、輻輳開散運動、追視、サッケード、固視、眼球運動の左右差、眼振、および虹彩からなる群から選択された少なくとも一つを含む。
【0014】
本発明の身体状態の推定装置は、例えば、推定対象の前記身体状態が、運転能力、脳機能、神経機能、もしくは認知機能の有無または程度である。
【0015】
本発明の身体状態の推定装置は、例えば、推定対象の前記身体状態が、疾患である。
【0016】
本発明の身体状態の推定装置は、例えば、前記疾患が、脳障害、認知症、または精神疾患である。
【0017】
本発明の身体状態の推定装置は、例えば、さらに、前記被検者の視野と前記表示部との空間の明暗を調整する明暗調整部を有する。
【0018】
本発明の身体状態の推定装置は、例えば、筐体を有し、前記筐体の内部に、前記表示部、前記眼球画像取得部、および前記明暗調整部が配置され、前記筐体の一面に、前記筐体の内部の前記表示部の表示面を見るための観察窓を有する。
【0019】
本発明の身体状態の推定装置は、例えば、さらに、前記被検者の眼球と前記表示部との距離を一定に保つための、頭部の固定部を有する。
【0020】
本発明の身体状態の推定装置は、例えば、表示部を有する端末と、固定部、光条件測定部、補正部、前記記憶部、被検者の眼球の画像を撮影する前記眼球画像取得部、前記眼球運動データの取得部、および前記被検者の身体状態の推定部を含む装置とを含み、前記端末と前記装置は、接続可能であり、前記装置において、前記固定部は、前記端末を固定し、前記光条件測定部は、前記端末の表示部の光条件を測定し、前記補正部は、測定した前記端末の光条件を任意の光条件とするための補正条件を算出し、前記端末は、前記算出された補正条件に基づいて光条件を調整する。
【0021】
本発明の身体状態の推定方法は、例えば、前記推定工程が、身体状態推定モデルを使用し、前記身体状態推定モデルは、前記視刺激用検査パターンの表示により得られる、推定目的の身体状態である学習用サンプル群の組み合わせ眼球運動データと推定目的の身体状態ではない学習用サンプル群の組み合わせ眼球運動データとから、学習により生成されるモデルであり、前記身体状態推定モデルにより、前記被検者の身体状態を推定する。
【0022】
本発明の身体状態の推定方法は、例えば、前記推定工程が、身体状態推定モデルを使用し、前記身体状態推定モデルは、前記視刺激用検査パターンの表示により得られる、推定目的の正常な身体状態である学習用サンプル群の眼球運動データから、学習により生成されるモデルであり、前記身体状態推定モデルにより、前記被検者の身体状態を推定する。
【0023】
本発明の身体状態の推定方法は、例えば、前記眼球運動の項目が、瞳孔位置、瞳孔径、瞳孔の散大縮小速度、輻輳開散運動、追視、サッケード、固視、眼球運動の左右差、眼振、および虹彩からなる群から選択された少なくとも一つを含む。
【0024】
本発明の身体状態の推定方法は、例えば、推定対象の前記身体状態が、運転能力、脳機能、神経機能、または認知機能の有無または程度である。
【0025】
本発明の身体状態の推定方法は、例えば、推定対象の前記身体状態が、疾患である。
【0026】
本発明の身体状態の推定方法は、例えば、前記疾患が、脳障害、認知症、または精神疾患である。
【0027】
本発明の身体状態の推定方法は、例えば、前記被検者の視野と前記表示部との空間の明暗を調整しながら、前記表示部への表示と撮影を行う。
【0028】
本発明において、推定の対象である「身体状態」は、特に制限されず、任意の項目を設定できる。具体例としては、例えば、機能および能力等と、疾患等があげられる。前記機能および能力は、例えば、運転能力、脳機能、神経機能、または認知機能等の有無または程度である。前記疾患は、例えば、脳障害、認知症、精神疾患、糖尿病等である。前記脳障害は、例えば、脳梗塞、脳出血等の脳血管障害、てんかん等、認知症は、例えば、アルツハイマー等、神経疾患は、例えば、パーキンソン病、ADHD等の神経発達症、メランコリ型うつ病等のうつ病等があげられる。この他にも、例えば、内耳の疾患、前庭性疾患(例えば、メニエール病、突発性難聴、前庭神経炎等)、飲酒または薬物の中毒状態、梅毒、統合失調症、小脳障害(脊髄小脳変性症)等もあげられる。なお、本発明は、瞳孔径の変化、追視機能等の眼球運動の項目そのものを検査結果として得ることを目的とするものではなく、これらの複数の項目の眼球運動データの組み合わせを利用して、目的の身体状態を推定するものである。また、本発明において、推定の対象である「身体状態」は、例えば、前記項目から直接的に判断される視機能を除く。
【0029】
本発明の実施形態について、図を用いて説明する。本発明は、以下の実施形態には限定されない。以下の各図において、同一部分には、同一符号を付している。各実施形態の説明は、特に言及がない限り、互いの説明を援用できる。各実施形態の構成は、特に言及がない限り、組合せ可能である。
【0030】
[実施形態1]
本発明の身体状態推定装置および身体状態推定方法の一例について、図を用いて説明する。
【0031】
図1は、本実施形態の身体状態推定装置1の一例の構成を示すブロック図である。身体状態推定装置1は、記憶部10、表示部11、眼球画像取得部12、眼球運動データの取得部13、および身体状態の推定部14を有する。身体状態推定装置1は、例えば、さらに、出力部15を有してもよい。身体状態推定装置1は、例えば、身体状態推定システムともいう。
【0032】
つぎに、
図2に、身体状態推定装置1のハードウエア構成のブロック図を例示する。身体状態推定装置1は、例えば、CPU(中央処理装置)101、メモリ102、バス103、入力装置104、表示部11、撮影部105、通信デバイス106、記憶装置107等を有する。身体状態推定装置1の各部は、それぞれのインターフェース(I/F)により、バス103を介して、相互に接続されている。
【0033】
CPU101は、身体状態推定装置1の全体の制御を担うプロセッサであり、CPUには限定されず、他のプロセッサでもよい。身体状態推定装置1において、CPU101により、例えば、本発明のプログラムやその他のプログラムが実行され、また、各種情報の読み込みや書き込みが行われる。
【0034】
身体状態推定装置1は、例えば、バス103に接続された通信デバイス106により、通信回線網に接続でき、前記通信回線網を介して、外部機器とも接続できる。前記外部機器は、特に制限されず、例えば、端末、PC(パーソナルコンピュータ)、サーバ等があげられる。前記端末は、例えば、スマートフォン、携帯電話、タブレット等があげられる。身体状態推定装置1と前記外部機器との接続方式は、特に制限されず、例えば、有線による接続でもよいし、無線による接続でもよい。前記有線による接続は、例えば、コードによる接続でもよいし、通信回線網を利用するためのケーブル等による接続でもよい。前記無線による接続は、例えば、通信回線網を利用した接続でもよいし、無線通信を利用した接続でもよい。前記通信回線網は、特に制限されず、例えば、公知の通信回線網を使用でき、例えば、インターネット回線、電話回線、LAN(Local Area Network)、WiFi(Wireless Fidelity)等があげられる。
【0035】
メモリ102は、例えば、メインメモリを含み、前記メインメモリは、主記憶装置ともいう。CPU101が処理を行う際には、例えば、後述する補助記憶装置に記憶されている、本発明のプログラム等の種々の動作プログラム110を、メモリ102が読み込み、CPU101は、メモリ102からデータを受け取って、プログラム110を実行する。前記メインメモリは、例えば、RAM(ランダムアクセスメモリ)である。メモリ102は、例えば、さらに、ROM(読み出し専用メモリ)を含む。
【0036】
記憶装置107は、例えば、前記メインメモリ(主記憶装置)に対して、いわゆる補助記憶装置ともいう。記憶装置107は、例えば、記憶媒体と、前記記憶媒体に読み書きするドライブとを含む。前記記憶媒体は、特に制限されず、例えば、内蔵型でも外付け型でもよく、HD(ハードディスク)、CD-ROM、CD-R、CD-RW、MO、DVD、フラッシュメモリー、メモリーカード等があげられ、前記ドライブは、特に制限されない。記憶装置107は、例えば、記憶媒体とドライブとが一体化されたハードディスクドライブ(HDD)も例示できる。記憶装置107には、例えば、前述のように、プログラム110が格納され、前述のように、CPU101を実行させる際、メモリ102が、記憶装置106から動作プログラム110を読み込む。また、記憶装置107は、例えば、記憶部10を含む。記憶装置107は、例えば、さらに、後述する身体状態の推定モデル110を含んでもよい。
【0037】
身体状態推定装置1は、例えば、さらに、入力装置104を有してもよい。入力装置104は、例えば、スキャナー、タッチパネル、キーボード等である。
【0038】
身体状態推定装置1は、前述のように、表示部11および眼球画像取得部12を有する。表示部11は、例えば、ディスプレイであり、具体例として、LEDディスプレイ、液晶ディスプレイ等があげられる。眼球画像取得部12は、例えば、撮影部105であり、表示部11に表示される前記視刺激用検査パターンを見ている被検者の眼球を撮影できればよい。撮影部105の種類は、特にされず、例えば、IRカメラ、CCDカメラ等のカメラである。
【0039】
身体状態推定装置1について、前記各部を含む1つの装置を例にあげて、さらに詳細に説明する。
【0040】
記憶部10は、視刺激用検査パターンデータ16を含む。視刺激用検査パターンデータ16は、表示部11に視刺激用検査パターンを表示するための前記パターンのデータであり、前記視刺激用検査パターンは、被検者の2項目以上の眼球運動データを取得するためのパターンである。本発明の身体状態測定装置1は、表示部11に視刺激用検査パターンを表示して、前記視刺激用検査パターンを見ている被検者の眼球を連続的に撮影し、その撮影した眼球画像から、2項目以上の眼球運動を解析し、2項目以上の眼球運動の組み合わせ眼球運動データを取得する。このため、視刺激用検査パターンデータ16は、例えば、眼球運動の目的項目を解析するために必要な眼球運動を起こし得るパターンのデータであればよく、前記目的項目に応じて適宜設計できる。視刺激用検査パターンデータ16は、例えば、パターンの開始から終了まで、複数の目的項目を同時に対象とするパターンのデータでもよいし、パターンの開始から終了まで、経時的に、対象とする目的項目が変化していくパターンのデータでもよい。
【0041】
前記視刺激用検査パターンは、例えば、経時的に変化する画像、すなわち動画である。前記視刺激用検査パターンの一例として、連続する4つのパートから構成される動画(例えば、第1パートが瞳孔対反射検査用の動画、第2パートが追視検査用の動画、第3パートが追従運動検査用の動画、第4パートが固視検査用の動画)があげられる。この視刺激用検査パターンを見ている被検者の眼球画像を取得すれば、各パートに対応する眼球画像から、それぞれ、以下の項目のデータが取得できる。すなわち、第1パートから瞳孔の縮瞳および散瞳に基づく散大縮小速度、第2パートから追視、第3パートからサッカード、第4パートから固視のデータが得られる。なお、本発明においては、前述のように、各項目のデータそのもの取得が目的ではなく、これらの複数の項目のデータの組合せを組み合わせ眼球運動データとして取得し、後述する身体状態の推定に使用する。
【0042】
記憶部10は、例えば、視刺激用検査パターンの内容によって、得られる組み合わせ眼球運動データも変化することから、視刺激用検査パターンデータ16は、例えば、複数でもよい(データ1、2、3・・・n。nは正の整数。)。
【0043】
記憶部10は、さらに、身体状態情報108を含んでもよい。身体状態情報108は、例えば、本発明の身体状態推定装置により推定可能な対象となる身体状態の種類を含み、さらに、身体状態の種類ごとに、表示部11に表示させる視刺激用検査パターンデータ16の種類が紐づけられてもよい。
【0044】
すなわち、視刺激用検査パターンデータ16は、例えば、推定目的の身体状態の種類ごとに作成してもよいし、同じ視刺激用検査パターンデータ16によって、複数の身体状態を推定することも可能である。このため、記憶部10は、例えば、各視刺激用検査パターンデータ16が、推定可能な身体状態の種類と紐づけて記憶されてもよいし、また、推定の対象となる身体状態の各種類が、推定のために使用できる視刺激用検査パターンデータ16と紐づけて記憶されてもよい。具体例として、
図3の模式図に示すように、前者の場合は、例えば、視刺激用検査パターンデータ1と、それに対応する身体状態の種類Aが紐づけられ、刺激用検査パターンデータ2と、それに対応する身体状態の種類Bとが紐づけられ、刺激用検査パターンデータ3と、それに対応する身体状態の種類AおよびBとが紐づけられる、というような例示ができる。また、後者の場合も同様であり、
図3に示すように、例えば、身体状態の種類Aと、刺激用検査パターンデータ1および3とが紐づけられ、身体状態の種類Bと、刺激用検査パターンデータ2および3とが紐づけられる、というような例示ができる。
【0045】
記憶部10は、例えば、さらに被検者情報109を含んでもよい。被検者情報109は、例えば、入力装置104等によって入力され、記憶部10に記憶してもよい。被検者情報109は、例えば、被検者ごとに、識別情報が紐付けされている。前記識別情報は、特に制限されず、複数の被検者をそれぞれ識別できればよく、例えば、識別番号等のID、名前、住所、電話番号、メールアドレス等である。被検者情報109は、例えば、被検者ごとに、さらに、補足情報が紐づけされてもよい。前記補足情報は、例えば、病歴、問診情報、運転歴および事故歴等の運転情報等があげられる。
【0046】
表示部11は、視刺激用検査パターンデータ16に基づく視刺激用検査パターンを表示する。記憶部10に複数の視刺激用検査パターンデータ16が記憶されている場合、表示部11には、例えば、目的とする推定対象の身体状態の種類に応じて、前述のように身体状態に紐づけられた視刺激用検査パターンデータ16に基づく視刺激用検査パターンを表示できる。
【0047】
具体例として、表示部11は、例えば、まず、記憶部10に記憶されている身体情報情報108の種類を表示する。つぎに、被検者または前記被検者の補助者(例えば、介護者、医療従事者等を含む)が、前記被検者に対して推定が必要な身体状態の種類を選択すると、その選択結果が、入力装置104により身体状態推定装置1に入力される。そして、この入力された身体情報の種類に紐づけされた視刺激用検査パターンデータ16が選択され、それに基づく視刺激用検査パターンが表示部11に表示される。また、入力された身体情報の種類に紐づけされた視刺激用検査パターンデータ16が複数の場合には、例えば、さらにそれらを表示部11に表示することで、前記被検者らにより選択と選択結果の入力とが行われ、表示部11に視刺激用検査パターンが表示される。
【0048】
表示部11は、例えば、表示部11を見る被検者の眼球の位置より若干上に、被検者側に傾くような傾斜をつけて配置することが好ましい。これによって、例えば、被検者の目は上を向き、瞼を開かせることができる。このため、被検者の眼球の下方向から、眼球画像取得部12で撮影すれば、例えば、瞼とまつ毛の眼球画像に与える影響を抑制することができる。また、このような構成とすることで、眼球画像取得部12が、被検者の視野には入らず、視界の全てを表示部11で覆うこともできる。
【0049】
眼球画像取得部12は、表示部11に表示されている視刺激用検査パターンを見ている被検者の眼球を連続的に撮影する。この際、例えば、前記視刺激用検査パターンの表示開始から表示終了まで、前記表示部から一定距離に眼球が位置する状態とすることが好ましい。これによって、例えば、表示部11と被検者の眼球との距離が変動することで、後述する眼球運動データの取得において解析結果に変動が生じることを防止できる。また、同じ視刺激用検査パターンの表示によって、例えば、複数の被検者から組み合わせ眼球運動データを取得したり、後述するようなサンプル群からの組み合わせ眼球運動データを取得する場合も、同じ条件で取得された組み合わせ眼球運動データとすることができるため、個々の被検者および前記サンプル群の個々の対象者に対して、前記表示部から一定距離に眼球が位置する状態での前記視刺激用検査パターンの表示であることが好ましい。眼球画像は、例えば、左右ごとに、時系列をそろえたデータとして取得することが好ましい。
【0050】
前記眼球と表示部11の表示面との距離は、例えば、被検者の視野よりも、表示部11における前記パターンが表示される表示面の方が大きくなる距離であることが好ましい。前記距離の上限は、例えば、40cm以下であり、下限は、例えば、接眼しない程度の距離である。前記距離は、例えば、表示部11の表示面の大きさに応じて適宜設定できる。前記表示面の大きさは、特にされず、縦の長さの下限は、例えば、15cm以上であり、上限は、特に制限されず、例えば、70cm以下であり、横の長さの下限は、例えば、20cm以上であり、上限は、特に制限されず、例えば、1m以下である。具体例として、例えば、前記表示面の縦の長さ15cm以上であり、横の長さ20cmの場合、前記距離は、例えば、15~40cmである。
【0051】
また、身体状態推定装置1は、例えば、さらに、前記表示面に対する前記被検者の眼球の位置を固定できることから、頭部の固定部を有することが好ましい。前記固定部によって、例えば、前記被検者の眼球と前記表示部との距離を一定に保つことも容易である。前記頭部の固定部は、特に制限されず、例えば、被検者の顎を置くことで頭部を固定する顎固定部があげられる。
【0052】
また、前記眼球と表示部11の表示面との距離と同様に、例えば、前記2つの眼球の間の中点と、表示部11の表示面における中心軸との位置関係についても、同じ視刺激用検査パターンに対して、同じ位置関係であることが好ましい。前記2つの眼球の間の中点と、表示部11の表示面における中心軸とは、例えば、一致することが好ましい。
【0053】
なお、同じ視刺激用検査パターンの表示であって、個々の被検者および個々の対象者によって、前記表示部から眼球までの距離が異なる場合は、例えば、補正を行ってもよい。補正に関しては後述する。
【0054】
眼球運動データの取得部13は、前記眼球画像を解析して、2項目以上の眼球運動の組み合わせ眼球運動データを取得する。前記眼球画像の解析により取得される、眼球運動の項目は、特に制限されず、例えば、瞳孔位置、瞳孔径、瞳孔の散大縮小速度、輻輳開散運動、追視、サッケード、固視、眼球運動の左右差、眼振、虹彩等があげられる。例示列挙した個々の項目は、眼球運動の項目として公知であることから、各項目のデータを得るために被検者に表示するパターン(例えば、画像および動画)は、例えば、公知の技術に基づいて設定できる。このため、例えば、前記視刺激用検査パターンは、例えば、目的の複数の項目に対して必要な画像および/または動画をつなぎ合わせて、一つの動画として作成することができる。
【0055】
なお、本発明は、例えば、従来の眼科検診のように、項目ごとに被検者の眼球運動を確認し、項目ごとのデータに基づいて被検者の眼を診断することを目的とするものではない。本発明は、前記パターンの表示の開始から終了までの被検者の眼球画像から、2項目以上の眼球運動についてのデータを取得して、これらの複数項目の複数データの組合せ、すなわち複数データの全体の挙動を利用して、後述する身体状態を推定する。つまり、本発明は、例えば、眼科での検査のように、すでにそれが意味することが明らかとなっている各項目について、単体で検査し、各結果を評価するものではなく、また、すでに身体状態との直接的な関係性が公知となっている単体の眼球運動データから身体状態を推定するのでもない。本発明は、単項目ではなく、複数項目の全体挙動のデータ(2項目以上の眼球運動の組み合わせ眼球運動データ)を使用する。このため、前記項目は、例えば、2項目以上が好ましく、瞳孔対光反射により得られる項目、および眼振検出により得られる項目を基本項目として含むことがより好ましい。
【0056】
身体状態の推定部14は、表示された前記視刺激用検査パターンに対して取得された前記被検者の組み合わせ眼球運動データについて、身体状態推定情報により、前記被検者の身体状態を推定する。前記身体状態推定情報は、視刺激用検査パターンデータと組み合わせ眼球運動データと身体状態との関係性とを示す情報である。
【0057】
身体状態の推定部14は、例えば、身体状態推定モデル111を有することが好ましい。推定部14が身体状態推定モデル14を有するとは、例えば、推定部14における推定処理において身体状態推定モデル14を使用できる状態であればよく、
図2に示すハードウエア構成において、記憶装置107に格納されてもよく、CPU101に組み込まれてもよい。この形態によれば、例えば、身体状態推定モデル111によって、前記被検者の組み合わせ眼球運動データから前記被検者の身体状態が推定できる。このため、本形態においては、例えば、身体状態推定モデル111が、前記身体状態推定情報を有するともいえる。
【0058】
身体状態推定モデル111は、例えば、学習により生成されるモデルであり、特定の視刺激用検査パターンデータと、その視刺激用検査パターンを見ている対象者の眼球画像データから取得される前記組み合わせ眼球運動データと、目的の身体状態との関係性(アルゴリズム)を表すモデルである。身体状態推定モデル111は、例えば、前記視刺激用検査パターンの表示により得られる、推定目的の身体状態である学習用サンプル群の組み合わせ眼球運動データと推定目的の身体状態ではない学習用サンプル群の組み合わせ眼球運動データとを、学習データとして使用し、学習によって生成される。前記学習は、いわゆる機械学習があげられ、その中のディープラーニングでもよい。
【0059】
推定目的の身体状態である学習用サンプル群および推定目的の身体状態ではない学習群とは、目的の身体状態によって、適宜設定できる。推定目的の身体状態が認知症の場合、例えば、認知症である患者を対象者とする学習用サンプル群と、認知症ではない健常者を対象者とする学習用サンプル群とについて、同じ刺激用検査パターンの表示により眼球画像の取得、組み合わせ眼球運動データの取得を行い、認知症の学習用サンプル群の組み合わせ眼球運動データと認知症ではない学習用サンプル群の組み合わせ眼球運動データとを学習データとすることができる。さらに、より詳細な認知症の種類の分類の推定を目的とする場合には、例えば、アルツハイマー認知症の学習用サンプル群と、非アルツハイマーの認知症の学習用サンプル群とを設定することもできる。また、推定目的の身体状態か否かには限られず、その程度(ステージ)に関しても、例えば、低度の学習用サンプル群、中度の学習用サンプル群、および高度の学習サンプル群というようにステージごとの学習用サンプル群の組み合わせ眼球運動データを学習データとすることができる。
【0060】
また、身体状態推定モデル111の生成には、例えば、正常な身体状態である対象者の学習用サンプル群のみを学習データとして使用してもよい。この場合、正常な学習用サンプルと正常ではない学習用サンプルの両方を学習させるよりも、低コストでモデルを生成でき、また、生成されるモデルによれば、未知の異常の検出も可能になる。
【0061】
また、前記身体状態として運転能力を推定する場合、前記学習データには、例えば、対象者の情報として、過去の事故歴を含めることが好ましい。
【0062】
本発明の身体状態推定装置1は、例えば、すでに学習により生成された身体状態推定モデル111を備えてもよいし、さらに、身体状態推定モデル111を生成する学習部(図示せず)を備えてもよい。前記学習データを用いた機械学習は、例えば、市販のシステムを利用することもでき、身体状態推定装置1は、前記学習部として前記システムを含んでもよい。身体状態推定装置1において生成された身体状態推定モデル111は、例えば、記憶装置に保存される。
【0063】
身体状態推定装置1は、前述のように出力部15を有してもよい。身体状態推定装置1は、例えば、推定部14で推定された身体情報を、出力部15を介して、装置内の表示部11に表示してもよいし、出力部15を介して、前記外部機器等に出力してもよい。
【0064】
本発明の身体状態推定方法は、例えば、前述のように、記憶部を使用し、眼球画像取得工程、眼球運動データの取得工程、および被検者の身体状態の推定工程を含む。本発明の身体状態推定方法は、例えば、本発明の身体状態推定装置を使用することにより実行できる。本発明の身体状態推定方法は、例えば、特に示さない限り、本発明の身体状態推定装置の記載を援用できる。
【0065】
前記記憶部は、少なくとも一つの視刺激用検査パターンデータを有する。前記記憶部は、例えば、身体状態推定装置1の記憶部10である。
【0066】
前記表示工程は、表示部に、前記視刺激用検査パターンデータに基づく視刺激用検査パターンを表示する。この工程は、例えば、身体状態推定装置1の表示部11により実行できる。
【0067】
前記眼球画像取得工程は、前記表示部に表示される前記視刺激用検査パターンを見ている被検者の眼球を連続的に撮影して、眼球画像を取得する工程であり、例えば、身体状態推定装置1の眼球画像取得部12により実行できる。
【0068】
前記眼球運動データの取得工程は、前記眼球画像を解析して、2項目以上の眼球運動の組み合わせ眼球運動データを取得する工程であり、例えば、身体状態推定装置1の眼球運動データの取得部13により実行できる。
【0069】
前記推定工程は、取得した前記被検者の組み合わせ眼球運動データについて、前記身体状態推定情報により、前記被検者の身体状態を推定する工程である。この工程は、例えば、身体状態推定装置1の推定部14により実行できる。
【0070】
本実施形態の身体状態推定方法は、例えば、さらに出力工程を有してもよい。前記出力工程は、前記推定された被検者の身体状態を出力する工程であり、例えば、身体状態推定装置1の出力部15により実行できる。
【0071】
本実施形態によれば、例えば、同じ視刺激用検査パターンを表示して、複数回にわたって同一被検者の身体状態の推定を行い、推定結果を経時的に蓄積することで、推定項目の身体状態について、前記被検者の変化を分析することができる。また、同じ視刺激用検査パターンを表示して、複数回に渡って同一被検者の組み合わせ眼球運動データを取得し、これらを経時的に蓄積し、蓄積した複数回にわたる眼球運動データについて、所望の身体状態の推定を行うことで、その都度、目的とする身体状態の種類を変えて前記被検者の変化を分析することもできる。また、同じ視刺激用検査パターンを表示して、複数の被検者に対して同一条件における組み合わせ眼球運動データの取得と、同一の身体状態の種類について推定を行い、被検者間での身体状態の比較を行うこともできる。
【0072】
(変形例1)
身体状態推定装置1は、さらに、前記被検者の視野と表示部11(例えば、その前記被検者側(前記表示面側)の表示面)との間の空間の明暗を調整する明暗調整部(図示せず)を有してもよい。
【0073】
眼球運動データの項目によっては、例えば、前記パターンに対して、暗条件下での眼球画像、明条件下での眼球画像、暗条件と明条件との切替条件下での眼球画像を取得することも好ましい。このため、前記明暗調整部によれば、例えば、目的の眼球画像の取得のため、前記視刺激用検査パターンの種類に応じて、任意のタイミングで前記空間を暗条件と明条件とを切り替えることができる。
【0074】
前記明暗調整部の種類は、特に制限されない。身体状態推定装置は、例えば、筐体を有し、前記筐体の内部に、表示部11、眼球画像取得部12、および前記明暗調整部が配置され、前記筐体の一面に、前記筐体の内部の表示部11の表示面を見るための観察窓を有する形態があげられる。前記観察窓の形状は、特に制限されず、例えば、ゴーグル型である。この形態によれば、前記筐体の内部は、例えば、前記明暗調整部を使用しない場合、暗条件とすることができる。また、前記明暗調整部の種類は、特に制限されない。前記パターンを表示できるディスプレイは、一般的に、明るさ調整(光量調整)が可能であることから、前記明暗調整部は、例えば、表示部11が備える光量調整部が利用できる。前記視刺激用検査パターンの表示において必要なタイミングで、光量を変化させて、暗条件から明条件に変化させたり、明条件における明るさの調整を行うことができる。前記明暗調整部は、例えば、表示部11の明暗の調整部であってもよい。
【0075】
身体状態推測装置1は、例えば、前記観察窓の付近に光情報計測部を備えてもよく、さらに、光情報による影響を補正する補正部を有してもよい。前記光情報計測部によれば、使用時における光条件(画面の光度、照度等)の情報を取得でき、この光条件によって受ける眼球画像の影響または眼球運動データの影響を、前記補正部により補正することができる。
【0076】
(変形例2)
身体状態推定装置1は、例えば、さらに補正部(図示せず)を有してもよい。前述のように、同じ視刺激用検査パターンの表示であって、個々の被検者および学習データ用の個々の対象者によって、前記表示部から眼球までの距離が異なる場合は、例えば、前記補正部により補正を行うことが好ましい。前記補正は、例えば、取得した眼球画像に対して行い、補正した眼球画像から前記眼球運動データを取得してもよい。また、前記補正は、例えば、未補正の眼球画像から前記眼球運動データを取得し、取得した眼球運動データを補正して、補正した眼球運動データの組み合わせに基づいて、身体状態の推定を行ってもよい。
【0077】
補正の方法は、特に制限されず、例えば、前記表示部から眼球までの距離の違いに応じて生じる眼球画像の差異に基づいて、前記眼球画像を補正してもよいし、前記表示部から眼球までの距離の違いに応じて生じる眼球運動データの差異に基づいて、前記眼球運動データを補正してもよい。
【0078】
なお、前記2つの眼球の間の中点と、表示部11の表示面における中心軸との位置関係についても、眼球画像の取得時ごとに位置関係が異なる場合は、前記距離に対する方法と同様にして補正を行うことができる。
【0079】
(変形例3)
身体状態推定装置1は、例えば、前記変形例1に例示するような、筐体構造の装置でもよいし、端末でもよい。
【0080】
前記筐体構造の装置は、例えば、前記筐体の内部に、表示部11、眼球画像取得部12、および前記明暗調整部が配置され、前記筐体の一面に、前記筐体の内部の表示部11の表示面を見るための観察窓を有する形態があげられる。また、前記筐体において、前記観察窓を有する面の外側には、さらに、被検者の眼球位置を一定にする固定するための、前記頭部の固定部を有することが好ましい。
【0081】
一方、前記端末としては、例えば、スマートフォン、携帯電話、タブレット、ウェアラブル端末等があげられる。前記ウェアラブル端末は、例えば、ゴーグル型の端末等があげられる。前記端末は、例えば、スマートフォンおよびゴーグル型端末が好ましい。前記端末がスマートフォンの場合は、例えば、被験者の眼球と表示部11との距離および位置関係を固定できることから、ゴーグル型の固定ツールと組み合わせて使用することが好ましい。前記ゴーグル型の固定ツールは、例えば、スマートフォンを着脱可能な固定部を有する。被験者は、例えば、前記固定ツールの固定部にスマートフォンを固定し、頭部に装着し、スマートフォンのディスプレイに表示される視刺激用検査パターンを見る。スマートフォンは、それと同時に、スマートフォンのカメラで、被検者の眼球を撮影し、その眼球画像から組み合わせ眼球運動データの取得、身体状態の推測を行うことができる。また、ゴーグル型のウェアラブル端末の場合は、例えば、ゴーグル内部にカメラを配置することで、同様に身体状態の推測を行うことができる。
【0082】
身体状態推定装置1が端末の場合、例えば、被検者が、自宅や外出先において日常的に容易に身体状態の推測を行うことができる。
【0083】
(変形例4)
前記視刺激用検査パターンは、例えば、前述の動画の他に、風の噴射を含んでもよい。この場合、身体状態推定装置1は、例えば、記憶部10が前記視刺激用検査パターンデータとして風の噴射データを有し、さらに、風の噴射部を有する。眼球運動データの取得部13は、例えば、取得した眼球画像から、風により瞬きを引き起こした反応時間等を取得できる。
【0084】
また、前記視刺激用検査パターンは、例えば、前述の動画の他に、指標物体の移動を含んでもよい。この場合、身体状態推定装置1は、例えば、記憶部10が前記視刺激用検査パターンデータとして指標物体の移動データを有し、さらに、移動物体およびそれを移動させる移動調整部を有する。眼球運動データの取得部13は、例えば、取得した眼球画像から、前記指標物質が眼球側に近づくことにより近見反射を引き起こした反応時間等を測定できる。
【0085】
(変形例5)
身体状態推定装置1は、前述のように、例えば、通信回線網を介して前記外部端末と接続可能であってもよい。身体状態推定装置1により得られた推定結果は、例えば、情報共有のため、被検者自身の端末に送信してもよいし、医療従事者の端末に送信されてもよい。
【0086】
[実施形態2]
本発明の身体状態推定装置は、例えば、前記実施形態1に示すような、前記各部を含む1つの装置の他に、前記各部が、通信回線網を介して接続可能な装置(以下、身体状態推定システムという)でもよい。前記通信回線網は、例えば、前述と同様である。本実施形態として、表示部を有する端末と、それ以外の部が搭載された装置とが通信回線網を介して接続可能なシステム(本発明の身体状態推定システム)について、例をあげて説明する。
【0087】
また、前記身体状態推定システムに使用する、表示部を除く各部が搭載された装置は、本発明の第2の身体状態推定装置である。前記第2の身体状態推定装置は、特に示さない限り、前記実施形態1の記載を援用できる。前記第2の身体状態推定装置は、例えば、端末を固定する固定部、前記記憶部、被検者の眼球の画像を撮影する前記眼球画像取得部、前記眼球運動データの取得部、および前記被検者の身体状態の推定部を含む。前記第2の身体状態推定装置は、例えば、さらに、端末の光条件を測定する光条件測定部、および補正部を含んでもよい。前記装置は、前記端末と接続可能であり、接続方式は特に制限されず、前述のような通信回線網を介した接続があげられる。前記装置において、前記固定部は、前記端末を固定し、前記光条件測定部は、前記端末の表示部の光条件を測定し、前記補正部は、測定した前記端末の光条件を任意の光条件とするための補正条件を算出し、前記端末は、前記算出された補正条件に基づいて光条件を調整する。
【0088】
図4は、本実施形態の身体状態推定システムの一例の構成を示すブロック図である。スマートフォン等の端末2は、前記表示部としてディスプレイを有し、通信回線網4を介して、装置3と接続可能である。装置3は、本発明の第2の身体状態装置の一例であり、記憶部10、眼球画像取得部12、眼球運動データの取得部13、身体状態の推定部14を有し、さらに、推定結果を端末2に対して通信回線網4を介して出力するための出力部15を有する。なお、端末2とサーバ3とは有線で接続されてもよい。
【0089】
装置3は、例えば、端末2の固定部および観察窓を有する。装置3は、例えば、前記固定部に端末2を固定すると、被検者が端末2のディスプレイ(表示部)が見えるように前記観察窓が配置されている。前記システムによると、まず、固定した端末2のディスプレイに前記視刺激用検査パターンが表示される。被検者が、前記観察窓から前記ディスプレイの表示を見ている間、前記被検者の眼球が装置3の眼球画像取得部(カメラ)12で撮影される。そして、装置3は、取得した眼球画像からの組み合わせ眼球運動データの取得、身体状態の推定を行い、その推定結果を、通信回線網4を介して、端末2に出力する。前記推定結果を受信した端末2は、その推定結果を前記ディスプレイに表示し、また、必要に応じて、端末2の記憶部に前記推定結果を保存できる。
【0090】
(変形例1)
本発明のシステムは、例えば、
図5に示すように、個々のユーザが、個々の端末2(例えば、スマートフォン)を用いて利用することができる。この場合、複数のユーザが、同じ視刺激用検査パターンを前記端末に表示させる場合であっても、使用する端末2によって、そのディスプレイの条件は必ずしも一致しない。このため、装置3は、例えば、さらに、前記個々の使用状況、つまり端末2のディスプレイ条件を補正する補正部(図示せず)を有してもよい。
【0091】
スマートフォンの個体差としては、例えば、ディスプレイの大きさ、画素数、DPI、ディスプレイの種類(例えば、液晶か有機ELか、バックライトの性能等)によるディスプレイ自体の明るさ、スマートフォン自体の演算性能等があげられる。明るさに関しては、例えば、照度計によりディスプレイの明るさを定量的に測定し、スマートフォン間で均一にすることが好ましい。このため、装置3は、例えば、明るさ等のディスプレイ条件を測定する前記光条件測定部と前記補正部とを備えることが好ましい。この装置3によれば、例えば、前記光条件測定部により、前記スマートフォンのディスプレイの明るさ条件を測定し、前記補正部により目的の明るさ条件とするための補正条件を算出することができる。そして、装置3から、スマートフォン(端末2)に対して前記補正条件を出力することで、前記補正条件を受信したスマートフォンは、目的の明るさ条件でディスプレイ表示を行うことができる。
【0092】
[実施形態3]
本発明の実施形態3によるプログラムは、前記本発明の身体情報推定方法を、コンピュータ上で実行可能なプログラムである。または、本実施形態のプログラムは、例えば、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。前記記録媒体としては、特に限定されず、例えば、前述のような記憶媒体等があげられる。
【0093】
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は、上記実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明によれば、例えば、脳波測定装置のような高度な装置を使用することなく、被検者に視刺激用検査パターンを見せ、前記被検者の眼球画像を連続的に撮影し、その眼球画像から複数項目の眼球運動の組み合わせデータを取得し、この組み合わせデータから前記身体状態推定情報に基づき前記被検者の身体状態を推定できる。このため、例えば、医療従事者にかかわらず、容易に被検者の身体状態を推定できる。本発明によれば、例えば、運転能力の有無または程度、脳障害および認知症の可能性等を、容易に推定できるため、運転免許返納や生活改善等にも役立てることができる。
【符号の説明】
【0095】
1 身体状態推定装置
2 端末
3 装置(第2の身体状態推定装置)
4 通信回線網
10 記憶部
11 表示部
12 眼球画像の取得部
13 眼球運動データの取得部
14 身体状態の推定部
15 出力部
16 視刺激用検査パターンデータ
101 CPU
102 メモリ
103 バス
104 入力装置
105 撮影部
106 通信デバイス
107 記憶装置
108 身体状態情報
109 被検者情報
110 プログラム
111 身体状態の推定モデル