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  • 特許-電解水生成装置及び電解水生成方法 図1
  • 特許-電解水生成装置及び電解水生成方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】電解水生成装置及び電解水生成方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/461 20230101AFI20241004BHJP
【FI】
C02F1/461 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020154236
(22)【出願日】2020-09-15
(65)【公開番号】P2022048421
(43)【公開日】2022-03-28
【審査請求日】2023-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】520101878
【氏名又は名称】株式会社環科研
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100187506
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 優子
(72)【発明者】
【氏名】田中 哲也
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-313096(JP,A)
【文献】特公昭32-009191(JP,B2)
【文献】特開平07-313983(JP,A)
【文献】特開2006-346203(JP,A)
【文献】特開平09-155360(JP,A)
【文献】特開2008-289682(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/46- 1/48
C25B 1/00- 9/77
C25B 13/00-15/08
C25B 11/00-11/097
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
家庭において使用される、食塩水を電解する電解水生成装置であって、
食塩水が収容される容器と、
前記食塩水を電解する、厚さが0.3mm~0.5mmのアルミニウム板からなる、陽極及び陰極と、
家庭用電源の交流を直流に変換し、前記陽極と陰極に直流電圧を印加するAC/DCアダプタとを備え、
前記陽極と陰極が、前記アルミニウム板主面の上端部から下方向に延びる切込みと、前記切込みに対して、アルミニウム板上端部の一方側に設けられた折曲げ部と、前記切込みに対して、アルミニウム板上端部の他方側に設けられた接続部と、を有し、
前記折曲げ部を容器の縁に掛けることによって、前記陽極と陰極が取り付けられ、かつ前記接続部にAC/DCアダプタからの接続線が取り付けられることを特徴とする電解水生成装置。
【請求項2】
前記請求項1に記載された電解水生成装置を用いた電解水生成法において、
容器に1リットル以下の水を入れ、1リットルあたり1グラム以上3グラム以下の食塩を入れ、食塩水を作る工程と、
電極の折曲げ部を容器の縁に取り付け、前記電極を容器の相対抗する位置に配置すると共に、電極の接続部にAC/DCアダプタからの接続線を取り付ける工程と、
電極に対して、直流電圧を印加する工程と、
陽極側からの塩素ガスの発生を抑制しつつ電解を行い、電解水としてH,Cl,Na,OHを含有する電解水を得る工程を備え、
前記食塩水を作る工程において、
容器に1リットル以下の水を入れ、1リットルあたり1グラム以上3グラム以下の食塩を入れると共に、ミョウバンを、1リットルあたり0.5グラム以上1.5グラム以下を入れて、食塩水を作ることを特徴とする電解水生成法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電解水生成装置及び電解水生成方法に関し、特に、食塩水を電気分解して製造する電解水生成装置及び電解水生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から食塩水を直流電源により電気分解して電解水を生成する方法が知られており、電解法として、隔膜電解法と無隔膜電解法がある。
隔膜電解法によれば、陽極および陰極では、以下の電解反応が起こる。
陽極:2Cl →Cl + 2e
Cl +HO → HClO+ HCl (酸性)
陰極:2HO +2e → H+ 2OH (アルカリ性)
そして、陽極側に、殺菌効果がある次亜塩素酸(HClO)が生成される。
【0003】
また、特許文献1には無隔膜電解法が示され、この無隔膜電解法によれば、以下の反応が起こり、液性はアルカリとなる。
2NaCl+2HO → 2NaOH +Cl +H
2NaOH+Cl → NaClO + NaCl +HO (アルカリ性)
アルカリ性においては、NaClOは、次のように解離し次亜塩素イオンを生成するため、殺菌に有効なHClO(次亜塩素酸)の比率が極めて低い。
NaClO → Na + ClO
【0004】
これを解消するために、あらかじめ酸、例えばHClを含むNaCl溶液を電解する方
法が採られている。このことにより生成電解水のpHを弱酸性(pH4~6)に保ち、次
亜塩素酸(HClO)の存在比を上げることが出来る。
ClO + H → HClO
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平5-237478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、一般的な電解水生成装置は、電解水を多量に、しかも連続的に生成できる大型の電解水生成装置がほとんどで、家庭で簡単に電解水を生成できる電解水生成装置は提供されていなかった。
また、従来の電解水生成装置は、隔膜電解法、無隔膜電解法であっても、塩素ガスが生成されるため、一般家庭では安全に使用できないという虞があった。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、家庭で簡単に、食塩水を電気分解して電解水を生成できる電解水生成装置であって、電解水を生成する際に塩素ガスの発生を抑制でき、一般家庭で安全に使用できる電解水生成装置及び電解水生成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するためになされた本発明にかかる電解水生成装置にあっては、家庭において使用される、食塩水を電解する電解水生成装置であって、食塩水が収容される容器と、前記食塩水を電解する、厚さが0.3mm~0.5mmのアルミニウム板からなる、陽極及び陰極と、家庭用電源の交流を直流に変換し、前記陽極と陰極に直流電圧を印加するAC/DCアダプタとを備え、前記陽極と陰極が、前記アルミニウム板主面の上端部から下方向に延びる切込みと、前記切込みに対して、アルミニウム板上端部の一方側に設けられた折曲げ部と、前記切込みに対して、アルミニウム板上端部の他方側に設けられた接続部と、を有し、前記折曲げ部を容器の縁に掛けることによって、前記陽極と陰極が取り付けられ、かつ前記接続部にAC/DCアダプタからの接続線が取り付けられることを特徴としている。
【0009】
このように、本発明にかかる電解水生成装置は、食塩水を電解する電極である陽極及び陰極と、家庭用電源の交流を直流に変換し、前記陽極と陰極に直流電圧を印加するAC/DCアダプタとを備えているため、一般家庭で容易に、かつ簡単に電解水を生成することができる。また、前記陽極がアルミニウム板で構成されているため、陽極から塩素ガスの発生が抑制され、一般家庭で安全に使用できる。
尚、陰極についても、陽極と同様にアルミニウム板で形成しても良い。
【0010】
また、本発明にあっては、前記アルミニウム板主面の上端部から下方向に延びる切込みと、前記切込みに対して、アルミニウム板上端部の一方側に設けられた折曲げ部と、前記切込みに対して、アルミニウム板上端部の他方側に設けられた接続部と、を備え、前記折曲げ部を容器の縁に掛けることによって電極が取り付けられ、かつ前記接続部にAC/DCアダプタからの接続線が取り付けられる。
このように、アルミニウム板主面の上端部に、折曲げ部と接続部とが設けられているため、容器に対する電極の取り付け、電極に対する接続線の取り付けを容易になすことができる。
【0011】
更に、上記電解水生成装置を用いた電解水生成法において、容器に1リットル以下の水を入れ、1リットルあたり1グラム以上3グラム以下の食塩を入れ、食塩水を作る工程と、 電極の折曲げ部を容器の縁に取り付け、前記電極を容器の相対抗する位置に配置すると共に、電極の接続部にAC/DCアダプタからの接続線を取り付ける工程と、電極に対して、直流電圧を印加する工程と、陽極側からの塩素ガスの発生を抑制しつつ電解を行い、電解水としてH,Cl,Na,OHを含有する電解水を得る工程を備え、前記食塩水を作る工程において、容器に1リットル以下の水を入れ、1リットルあたり1グラム以上3グラム以下の食塩を入れると共に、ミョウバンを、1リットルあたり0.5グラム以上1.5グラム以下を入れて、食塩水を作ることを特徴としている。
【0012】
食塩水を作る工程において、水を1リットル以下としたのは、家庭で使用する量を考慮した為である。
また、水1リットルあたり1グラム以上3グラム以下の食塩が入れられる。この1グラム未満の場合には、電解が進まないため、好ましくなく、また3グラムを超える場合には、塩分濃度が高く、塩素ガスの発生量が多くなり、好ましくない。好ましくは、1リットルあたり1グラム以上3グラム以下である。
更に、電極に対して、直流電圧を印加する時間は、特に限定されないが、約5分から約10分程度が好ましい。
また、前記食塩水を作る工程において、容器に1リットル以下の水を入れ、1リットルあたり1グラム以上3グラム以下の食塩を入れると共に、ミョウバンを、1リットルあたり0.5グラム以上1.5グラム以下を入れて、食塩水を作ることが望ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、家庭で簡単に、食塩水を電気分解して電解水を生成できる電解水生成装置であって、電解水を生成する際に塩素ガスの発生を抑制でき、一般家庭で安全に使用できる電解水生成装置及び電解水生成方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は本発明にかかる電解水生成装置の一実施形態を示す図である。
図2図2は、図1に示した電極を示す図であって、(a)は正面図、(b)は側面図である。
図3図3は、本発明にかかる電解水生成装置の電極の変形例を示す図であって、(a)は正面図、(b)は側面図である。
図4図4は、図3に示した電極を容器に取り付けた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明にかかる電解水生成装置の一実施形態について、図1乃至図4に基づいて説明する。
電解水生成装置1は、図1に示すように、食塩水(電解水)が収容される容器2と、この食塩水を電解する陽極3と陰極4と、家庭用電源5である交流100Vを、例えば、直流6Vに変換し、前記陽極3と陰極4に直流電圧を印加するAC/DCアダプタ6とを備えている。
【0016】
この容器2は、特に限定されものではなく、小型で携帯可能であれば良い。一例として、内部に液体を350cc~1000cc程度収容可能な容器2であれば良い。
この容器2は、円筒形の有底の容器であり、この容器2内には、板状の陽極3及び陰極4の電極が収容される。
この陽極3及び陰極4はアルミニウム板で形成され、図2に示すように、その厚さt1は0.3mm~0.5mm、幅t2は20mm~40mm、高さt3は100mm~160mmに形成されている。
【0017】
この陽極3及び陰極4の変形例を、図3に示す。この陽極3及び陰極4の変形例にあっては、図3に示すように、陽極3及び陰極4は、アルミニウム板主面の上端部から下方向に延びる切込み3a、4aと、前記切込み3a、4aに対して、アルミニウム板上端部の一方側に設けられた折曲げ部3b、4bと、前記前記切込み3a、4aに対して、アルミニウム板上端部の他方側に設けられた接続部3c、4cを備えている。
そして、図4に示しように、折曲げ部3b、4bを容器2の縁に掛けることによって、陽極3及び陰極4が容器2の上縁部2aに取り付けられ、かつ接続部3c、4cにAC/DCアダプタ6からの接続線6a,6bが取り付けられる。
【0018】
陽極3及び陰極4は、上記したように、AC/DCアダプタ6に接続線6a、6bを介して接続される。一例をあげると、AC/DCアダプタ6は、いわゆるAC/DC変換器であり、交流100Vを、例えば直流4Vに変換するAC/DCアダプタを用いることができる。
【0019】
また、図1に示すように、陽極3及び陰極4とAC/DCアダプタ6の間に、制御装置7を介在させても良い。制御装置7は、陽極3及び陰極4に印加する直流電圧の正負の極性を一定間隔で反転する極性転換機能、またタイマー機能を備えている。
極性転換機能により、陽極3、陰極4に印加する直流電圧の正負を一定間隔で反転することにより、陽極3及び陰極4の電極への水酸化アルミニウムのスケールの付着を抑制することができる。また、タイマー機能により、陽極3及び陰極4に直流電圧を一定時間印加した後、電源の印加を遮断するように構成しても良い。
【0020】
本発明は、陽極3及び陰極4にアルミニウム板を用い、塩素ガスの発生を抑制した点に特徴があり、以下に塩素ガスの発生が抑制される理由を説明する。
まず、水に食塩を添加することにより食塩水となり、水溶液中には、ナトリウムイオンNaと塩化物イオンClが存在する。
【0021】
そして、下記(1)に示すように、電気分解中は、陰イオンの塩化物イオンが陽極に引かれて陽極周辺に集まり、陽イオンのナトリウムイオンが陰極に引かれて陰極周辺に集まる。
[陽極+]Cl ←NaCl→ Na[-陰極] ……(1)
【0022】
このように溶液の電気的中性が破れると、水が分解(解離という)して中性が保たれる。
O → H+OH ……(2)
【0023】
このため、陽極と陰極では、(3)の反応が起きる。
[陽極]OH←HO→H,Cl←NaCl→Na,OH←HO→H[陰極]→H
……(3)
即ち、陽極の周辺には塩酸HClを、陰極の周辺には水酸化ナトリウムNaOHを溶かしたのと同じ状態となり、陽極周辺は酸性に、陰極周辺はアルカリ性になる。
【0024】
また電極をアルミニウムとした場合、アルミニウムは反応性が高く、アルミニウムは溶出する。
Al → Al3+ + 3e ……(4)
しかし,アルミニウムイオンAl3+は中性附近で加水分解し、水酸化アルミニウムは沈澱する。
Al3+ + 3HO → Al(OH)↓ +3H ……(5)
【0025】
これら反応をまとめると、陽極のアルミニウムが溶け出して、(6)の反応になる。
[陽極]→Al3++OH←HO→H,Cl←NaCl→Na,OH←HO→H[陰極]→H↑ ……(6)
そして、陽極では、Al3++OHからAl(OH)が析出し、沈殿する。最終的に液性が酸性(pH5.5程度)になった水素の泡とともに、NaOHを含むClよりNaとなる。
【0026】
この陽極近傍の溶液はアルミニウム塩の溶液であり、弱酸性を示す。そして、(6)式からわかるように、陽極から塩素ガスは発生しない。そして、溶液を攪拌しながら電気分解を続けると、陽極のアルミニウム板は溶け出し、白い水酸化アルミニウムの沈澱が生じる。
【0027】
このように、電極をアルミニウムとした場合、食塩水の電解水は、H,ClとNa,OHとなり、殺菌効果を有する電解水となり、また塩素ガスの発生が抑制される。
【0028】
上記生成装置を用いて、電解水の生成方法について説明する。
まず、容器に水350ccを入れ、食塩(NaCl)を0.5g入れ、攪拌する。
この食塩量は1リットルあたり1グラムから3グラム程度で良く、水350ccの場合に、食塩(NaCl)が必ずしも0.5gである必要はない。
【0029】
一方、陽極3、陰極4の折曲げ部3b、4bを容器2の上縁部2aに取り付ける。そして、陽極3、陰極4の接続部3c、4cに接続コード6a,6bを取り付ける。
陽極3、陰極4は、容器2の相対抗する位置に配置する。そして、AC/DCアダプタ6を家庭用電源5に接続し、例えば、直流電圧6V(ボルト)を、陽極3、陰極4に印加する。
【0030】
電解が始まると、陰極4側から水素ガスが発生し、前記気泡が発生後、4分程度で電解を終了する。この食塩水の電解水は、H,ClとNa,OHの水溶液となり、殺菌効果を有する電解水となる。殺菌水、除菌水として使用することができる。
この電解水は弱酸性を示すが、電解と共に中性(pH7)に近づき、殺菌水、除菌水としての効果が低減する。そのため、前記食塩水を作る工程において、容器に1リットル以下の水を入れ、1リットルあたり1グラム以上3グラム以下の食塩を入れると共に、ミョウバンを、1リットルあたり0.5グラム以上1.5グラム以下を入れて、食塩水を作ることが望ましい。このように、ミョウバンを入れることにより、弱酸性を維持でき、殺菌水、除菌水としての効果の低減を抑制できる。
【0031】
尚、本発明にかかる生成装置は上記実施形態に限らず、各種の変形が可能である。例えば、AC/DCアダプタ6から陽極3、陰極4に入力される電圧は、4V、6V、12V等であっても良い。制御装置7は、陽極3、陰極4への通電時間のほか、通電時間とともに通電電圧を制御しても良い。また容器2の収容量は、350ccに限らず、1リットル程度あっても良い。容器2の収容量が大きくなると、電解水生成のための時間が長くなり好ましくない。また、家庭における使用量を超える電解水を一度に生成しても、時間とともに殺菌効果が薄れ、無駄になるため、容器は大きくても1リットル程度が良い。
【符号の説明】
【0032】
1 電解水生成装置
2 容器
2a 上縁部
3 陽極
3a 切込み
3b 折り曲げ部
3c 接続部
4 陰極
4a 切込み
4b 折り曲げ部
4c 接続部
5 家庭用電源
6 AC/DCアダプタ
6a 接続線
6b 接続線
7 制御装置
図1
図2
図3
図4