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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】段ボールシート製函機
(51)【国際特許分類】
   B31B 50/22 20170101AFI20241004BHJP
【FI】
B31B50/22
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020160850
(22)【出願日】2020-09-25
(65)【公開番号】P2022053943
(43)【公開日】2022-04-06
【審査請求日】2023-08-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000139931
【氏名又は名称】株式会社ISOWA
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162824
【弁理士】
【氏名又は名称】石崎 亮
(72)【発明者】
【氏名】宮下 隼輔
(72)【発明者】
【氏名】中西 俊介
【審査官】佐藤 秀之
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-103535(JP,A)
【文献】特開2013-169687(JP,A)
【文献】特開2007-017276(JP,A)
【文献】特開平04-223145(JP,A)
【文献】特開2002-067190(JP,A)
【文献】実開昭60-034426(JP,U)
【文献】特開2006-234564(JP,A)
【文献】特開昭58-038147(JP,A)
【文献】英国特許出願公開第02302834(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B31B 50/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
段ボールシート製函機であって、
回転するシリンダ状のスロッタと、前記スロッタの外周上に着脱可能に取り付けられるスロッタ刃とを備え、前記スロッタ刃によって段ボールシートに溝切り加工を行うスロッタ装置と、
少なくとも前記スロッタ装置を制御するよう構成された制御装置と、
を有し、
前記制御装置は、
前記スロッタの周長と、前記段ボールシート製函機により生産すべき箱の寸法と、生産すべき前記箱に応じて前記スロッタ装置を動作させるために設定すべき生産モードと、から定まる所定条件を満たすためのスロッタ刃の長さの制限値を設定し、
前記スロッタ装置に取り付けられる所定のスロッタ刃の長さが前記制限値を超過しているか否かを判定する、
よう構成され、
前記制御装置は、前記所定条件に基づき前記スロッタ刃の長さの上限値を求めて、前記上限値を前記制限値として設定するよう構成されている、ことを特徴とする段ボールシート製函機。
【請求項2】
前記制御装置は、前記スロッタ装置が前記段ボールシートの搬送方向において隣り合う2枚の段ボールシートに対して同時に溝切り加工を行わないという条件を、前記所定条件として用いて、前記制限値を設定するよう構成されている、請求項1に記載の段ボールシート製函機。
【請求項3】
前記スロッタ装置は、前記段ボールシートの搬送方向に沿って並べて配置され、前記スロッタ及び2組の前記スロッタ刃をそれぞれ備える第1及び第2スロッタユニットを有し、
前記第1及び第2スロッタユニットは、前記スロッタが1回転する間に2枚の段ボールシートが送り込まれて、これら2枚の段ボールシートに対する溝切り加工を当該第1及び第2スロッタユニットのそれぞれによって行わせる所定の生産モードにより動作され、
前記制御装置は、この所定の生産モードにおいて、2組の前記スロッタ刃が前記スロッタの外周上において干渉しないという条件を、前記所定条件として用いて、前記制限値を設定するよう構成されている、請求項1又は2に記載の段ボールシート製函機。
【請求項4】
前記スロッタ装置は、前記段ボールシートの搬送方向に沿って並べて配置され、前記スロッタ及び2組の前記スロッタ刃をそれぞれ備える第1及び第2スロッタユニットを有し、
前記第1及び第2スロッタユニットは、前記スロッタが1回転する間に2枚の段ボールシートが送り込まれて、これら2枚の段ボールシートに対する溝切り加工を当該第1及び第2スロッタユニットのそれぞれによって行わせる所定の生産モードにより動作され、
前記制御装置は、この所定の生産モードにおいて、前記スロッタ装置が前記段ボールシートにおいて前フラップと後フラップとの間にある糊付け部に対して溝切り加工を行わないという条件を、前記所定条件として用いて、前記制限値を設定するよう構成されている、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の段ボールシート製函機。
【請求項5】
前記スロッタ装置は、前記段ボールシートの搬送方向に沿って並べて配置され、前記スロッタ及び1組の前記スロッタ刃をそれぞれ備える第1及び第2スロッタユニットを有し、
前記第1及び第2スロッタユニットは、前記スロッタが1回転する間に1枚の段ボールシートが送り込まれて、この1枚の段ボールシートに対する溝切り加工を当該第1及び第2スロッタユニットの両方によって行わせる所定の生産モードにより動作され、
前記制御装置は、この所定の生産モードにおいて、前記スロッタ装置が前記段ボールシートの搬送方向において隣り合う2枚の段ボールシートに対して同時に溝切り加工を行わないという条件を、前記所定条件として用い、前記段ボールシートから生産される箱の前フラップの寸法E、箱深さの寸法F及び後フラップの寸法Gと、前記スロッタの周長Nと、所定の余裕値Oと、に基づき、前記制限値を「N-E-F-O」又は「N-G-F-O」から求められる値に設定し、前記所定のスロッタ刃における切断部の周方向に沿った長さが前記制限値を超過しているか否かを判定する、
よう構成されている、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の段ボールシート製函機。
【請求項6】
前記スロッタ装置は、前記段ボールシートの搬送方向に沿って並べて配置され、前記スロッタ及び1組の前記スロッタ刃をそれぞれ備える第1及び第2スロッタユニットを有し、
前記第1及び第2スロッタユニットは、前記スロッタが2回転する間に1枚の段ボールシートが送り込まれて、この1枚の段ボールシートに対する溝切り加工を当該第1及び第2スロッタユニットの両方によって行わせる所定の生産モードにより動作され、
前記制御装置は、この所定の生産モードにおいて、前記スロッタ装置が前記段ボールシートの搬送方向において隣り合う2枚の段ボールシートに対して同時に溝切り加工を行わないという条件を、前記所定条件として用い、前記段ボールシートから生産される箱の前フラップの寸法E、箱深さの寸法F及び後フラップの寸法Gと、前記スロッタの周長Nと、所定の余裕値Oと、に基づき、前記制限値を「2N-E-F-O」又は「2N-G-F-O」から求められる値に設定し、前記所定のスロッタ刃における切断部の周方向に沿った長さが前記制限値を超過しているか否かを判定する、
よう構成されている、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の段ボールシート製函機。
【請求項7】
前記スロッタ装置は、前記段ボールシートの搬送方向に沿って並べて配置され、前記スロッタ及び2組の前記スロッタ刃をそれぞれ備える第1及び第2スロッタユニットを有し、
前記第1及び第2スロッタユニットは、前記スロッタが1回転する間に2枚の段ボールシートが送り込まれて、これら2枚の段ボールシートに対する溝切り加工を当該第1及び第2スロッタユニットのそれぞれによって行わせる所定の生産モードにより動作され、
前記制御装置は、この所定の生産モードにおいて、
(1)前記スロッタ装置が前記段ボールシートの搬送方向において隣り合う2枚の段ボールシートに対して同時に溝切り加工を行わないという条件を、前記所定条件として用い、前記段ボールシートから生産される箱の前フラップの寸法E、箱深さの寸法F及び後フラップの寸法Gと、前記スロッタの周長Nと、所定の余裕値Oと、に基づき、前記制限値を「N/2-E-F-O」又は「N/2-G-F-O」から求められる値に設定し、前記所定のスロッタ刃における切断部の周方向に沿った長さがこの制限値を超過しているか否かを判定し、更に、
(2)2組の前記スロッタ刃が前記スロッタの外周上において干渉しないという条件を、前記所定条件として用い、前記スロッタの周長Nと、前記箱深さの寸法Fと、所定の余裕値Zと、に基づき、前記制限値を「(N-F-Z)/2」から求められる値に設定し、前記所定のスロッタ刃の周方向に沿った全長がこの制限値を超過しているか否かを判定する、
よう構成されている、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の段ボールシート製函機。
【請求項8】
前記スロッタ装置は、前記段ボールシートの搬送方向に沿って並べて配置され、前記スロッタ及び2組の前記スロッタ刃をそれぞれ備える第1及び第2スロッタユニットを有し、
前記第1及び第2スロッタユニットは、前記スロッタ装置の下流のダイカッタ装置により前後に2枚に切断される前の、2枚の段ボールシートを含む1枚の段ボールシートが、前記スロッタが1回転する間に送り込まれて、この1枚の段ボールシートに含まれる2枚の段ボールシートに対する溝切り加工を当該第1及び第2スロッタユニットのそれぞれによって行わせる所定の生産モードにより動作され、
前記制御装置は、この所定の生産モードにおいて、
(1)前記スロッタ装置が前記段ボールシートの搬送方向において隣り合う2枚の段ボールシートに対して同時に溝切り加工を行わないという条件を、前記所定条件として用い、前記段ボールシートから生産される箱の前フラップの寸法E、箱深さの寸法F及び後フラップの寸法Gと、前記スロッタの周長Nと、所定の余裕値Oと、に基づき、前記制限値を「N-E-2F-2G-O」又は「N-2E-2F-G-O」から求められる値に設定し、前記所定のスロッタ刃における切断部の周方向に沿った長さがこの制限値を超過しているか否かを判定し、更に、
(2)2組の前記スロッタ刃が前記スロッタの外周上において干渉しないという条件を、前記所定条件として用い、前記スロッタの周長Nと、前記箱深さの寸法Fと、所定の余裕値Zと、に基づき、前記制限値を「(N-F-Z)/2」から求められる値に設定し、前記所定のスロッタ刃の周方向に沿った全長がこの制限値を超過しているか否かを判定し、更に、
(3)前記スロッタ装置が前記段ボールシートにおいて前フラップと後フラップとの間にある糊付け部に対して溝切り加工を行わないという条件を、前記所定条件として用いて、前記前フラップの寸法Eと、前記後フラップの寸法Gと、所定の余裕値Qと、に基づき、前記制限値を「E+G-Q」から求められる値に設定し、前記所定のスロッタ刃における前記切断部の周方向に沿った長さがこの制限値を超過しているか否かを判定する、
よう構成されている、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の段ボールシート製函機。
【請求項9】
前記段ボールシート製函機は、表示装置を更に有し、
前記制御装置は、前記所定のスロッタ刃の長さが前記制限値を超過していると判定した場合に、前記所定のスロッタ刃の長さが前記制限値を超過していることを前記表示装置に表示させるよう構成されている、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の段ボールシート製函機。
【請求項10】
前記制御装置は、
複数のオーダにより生産すべき前記箱の寸法、及び前記複数のオーダにおいて設定される前記生産モードに基づき、前記複数のオーダのそれぞれにおいて適用される前記制限値を設定し、
前記所定のスロッタ刃の長さとして、前記スロッタ装置に取り付けられる所定の基準刃及び継刃の組み合わせにより定まる長さを用いて、前記複数のオーダのそれぞれについて、前記所定のスロッタ刃の長さが前記制限値を超過しているか否かを判定し、
前記複数のオーダのそれぞれについて、前記所定のスロッタ刃の長さが前記制限値を超過しているか否かの判定結果に応じて、前記所定の基準刃及び継刃の組み合わせに対して基準刃及び/又は継刃を取り外す必要があるか否かを更に判定する、
よう構成されている、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の段ボールシート製函機。
【請求項11】
前記段ボールシート製函機は、表示装置を更に有し、
前記制御装置は、前記複数のオーダのそれぞれについて、前記所定の基準刃及び継刃の組み合わせに対して基準刃及び/又は継刃を取り外す必要があるか否かの判定結果を、前記表示装置に一覧表示させるよう構成されている、請求項10に記載の段ボールシート製函機。
【請求項12】
前記段ボールシート製函機は、前記スロッタ装置を含む複数の加工装置を有し、
前記制御装置は、前記所定のスロッタ刃の長さとして、前記スロッタ装置に現在取り付けられているスロッタ刃の長さを用い、このスロッタ刃の長さが前記制限値を超過していると判定した場合に、次のオーダの生産を行う前に、前記スロッタ装置と、前記複数の加工装置の中で前記スロッタ装置に隣接する加工装置との間隔を広げる制御を行うよう構成されている、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の段ボールシート製函機。
【請求項13】
前記複数の加工装置は、前記段ボールシートの搬送方向において上流側から順に、前記段ボールシートに対して印刷を施す2つ以上の印刷ユニットを備える印刷装置と、前記段ボールシートに対して罫線を施すクリーザ装置と、前記スロッタ装置と、前記段ボールシートに対して打ち抜き加工を行うダイカッタ装置と、を有し、
前記制御装置は、前記2つ以上の印刷ユニットの中で、前記次のオーダの生産のために印版を交換すべき印刷ユニットの数に応じて、前記スロッタ装置と前記ダイカッタ装置との間隔のみを広げる制御と、前記スロッタ装置と前記ダイカッタ装置との間隔及び前記スロッタ装置と前記クリーザ装置との間隔の両方を広げる制御と、を切り替えるよう構成されている、請求項12に記載の段ボールシート製函機。
【請求項14】
前記スロッタ装置は、前記スロッタ刃と係合する別のスロッタ刃が取り付けられ、前記スロッタの下方に配置された別のスロッタを更に有すると共に、前記スロッタと前記別のスロッタとの組を前記段ボールシートの搬送方向に直交する方向に複数組有し、
前記制御装置は、前記所定のスロッタ刃の長さとして、前記スロッタ装置に現在取り付けられているスロッタ刃の長さを用い、このスロッタ刃の長さが前記制限値を超過していると判定した場合に、次のオーダの生産を行う前に、複数組の前記スロッタを前記搬送方向に直交する方向に等間隔に位置決めする制御、及び/又は、前記スロッタ刃を前記別のスロッタ刃と係合しないように、前記スロッタ刃を周方向に位置決めする制御を行うよう構成されている、請求項1乃至13のいずれか一項に記載の段ボールシート製函機。
【請求項15】
前記制御装置は、前記所定のスロッタ刃の長さが、前記段ボールシートに溝切り加工を行うべき長さに対して不足するか否かを更に判定するよう構成されている、請求項1乃至14のいずれか一項に記載の段ボールシート製函機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、段ボールシート製函機に係わり、特に、段ボールシートに溝切り加工を行うスロッタ装置を有する段ボールシート製函機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、段ボールシートを1枚ずつ送り出す給紙装置と、給紙装置によって送り出された段ボールシートに印刷を施す印刷装置と、印刷装置によって印刷が施された段ボールシートに溝切り加工(スロット溝加工)を行うスロッタ装置と、スロッタ装置によって溝切り加工が施された段ボールシートに打ち抜き加工を行うダイカッタ装置などを備える段ボールシート製函機が知られている。特に、スロッタ装置は、典型的には、搬送される段ボールシートの下流端部(前フラップ部分に相当する)及び上流端部(後フラップ部分に相当する)の2箇所に対して溝切り加工を行う。
【0003】
ところで、段ボールシート製函機でのオーダ変更時には、次回のオーダにおいて生産する段ボールシートの製品仕様などに応じて、印刷装置では印刷ユニットの印版交換やインクの色替えが行われ、スロッタ装置ではスロッタ刃の着脱(例えば継刃の着脱)が行われ、ダイカッタ装置では打ち抜き木型の交換が行われる場合がある。この場合、スロッタ装置では、次回のオーダに適した長さのスロッタ刃を適用するように、スロッタ刃の着脱を行う必要がある(例えば特許文献1参照)。
【0004】
具体的には、特許文献1には、スロッタ刃の長さが段ボールシートに対して溝切り加工を行うべき長さ、つまり段ボールシートのフラップ部分の寸法(前フラップ部分、後フラップ部分のそれぞれの寸法であり、以下では適宜「フラップ寸法」と呼ぶ。)に対して短い場合に、現在取り付けられているスロッタ刃により次オーダの段ボールシートが加工可能でないと判断し、スロッタ刃において継刃を取り付ける必要がある旨を警告表示する技術が記載されている。この技術によれば、作業者(オペレータ)は、オーダ変更の作業時に、継刃を取り付ける必要があることを容易に把握することができ、継刃の取り付け忘れによって段ボールシートの加工不良が発生することを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-103535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の特許文献1に記載された技術では、スロッタ刃の長さが短いか否かの判定(以下では適宜「不足判定」と呼ぶ。)しか行っておらず、スロッタ刃の長さが長いか否かの判定(以下では適宜「超過判定」と呼ぶ。)は行っていない。前者のスロッタ刃の長さの不足判定では、段ボールシートにおけるフラップ部分の全体をスロッタ刃により確実に切断させる観点から、スロッタ刃の長さがフラップ寸法に対して短いか否かを判定すれば足りる。この場合、スロッタ刃の長さとフラップ寸法との単純な比較を行えばよいので、作業者自らが判定することも可能である。
【0007】
一方で、スロッタ刃の長さの超過判定は、上記のスロッタ刃の長さの不足判定よりも、複雑な条件を考慮する必要があり、作業者自らが正確に判定することは困難である(換言すると正確に判定しようとすると時間がかかる)と言える。これは、スロッタ刃が長過ぎると、後述するような様々な問題が発生し得るからである。そこで、本願発明者らは、スロッタ刃が長過ぎるために発生し得る複数の問題に着目して、この複数の問題の発生を防止するための所定条件を用いて、スロッタ刃の長さの超過判定を行うことを考えた。
【0008】
第1に、スロッタ刃が長過ぎると、スロッタ刃が搬送方向において隣り合う2枚の段ボールシートを同時に切断することがある。第2に、スロッタが1回転する間に2枚の段ボールシートを送り込んで、これら2枚の段ボールシートに対する溝切り加工を、スロッタ装置の第1及び第2スロッタユニットのそれぞれに取り付けられた2組のスロッタ刃によって行う所定の生産モード(上記の特許文献1に記載された「シングルスロッタモード」)において、スロッタ刃が長過ぎると、各スロッタユニットの2組のスロッタ刃がスロッタの外周上において干渉(換言すると接触)することがある。第3に、シングルスロッタモードにおいて、スロッタ刃が長過ぎると、スロッタ刃が段ボールシートにおいて前フラップと後フラップとの間にある糊付け部を切断することがある。
【0009】
このようなことから、本願発明者らは、段ボールシート製函機により生産すべき箱の寸法(フラップ寸法など)や、スロッタ装置に設定する生産モードなどから定まる所定条件を満たすように、スロッタ刃の長さの超過判定を行うこと、具体的には所定条件を満たすための制限値に対してスロッタ刃の長さが長いか否かを判定することを考えた。
【0010】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、スロッタ装置のスロッタ刃の長さに対する超過判定を所定条件に基づき的確に行うことで、超過時に発生する問題を防止することができる段ボールシート製函機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明は、段ボールシート製函機であって、回転するシリンダ状のスロッタと、スロッタの外周上に着脱可能に取り付けられるスロッタ刃とを備え、スロッタ刃によって段ボールシートに溝切り加工を行うスロッタ装置と、少なくともスロッタ装置を制御するよう構成された制御装置と、を有し、制御装置は、スロッタの周長と、段ボールシート製函機により生産すべき箱の寸法と、生産すべき箱に応じてスロッタ装置を動作させるために設定すべき生産モードと、から定まる所定条件を満たすためのスロッタ刃の長さの制限値を設定し、スロッタ装置に取り付けられる所定のスロッタ刃の長さが制限値を超過しているか否かを判定する、よう構成され、制御装置は、所定条件に基づきスロッタ刃の長さの上限値を求めて、上限値を制限値として設定するよう構成されている、ことを特徴とする。
このように構成された本発明によれば、制御装置は、スロッタの周長と、箱の寸法と、スロッタ装置を動作させるために設定すべき生産モードと、から定まる所定条件に応じた制限値を設定し、スロッタ刃の長さがこの制限値を超過しているか否かの判定(超過判定)を行う。これにより、スロッタ刃の長さに対する超過判定を的確に行うことができ、スロッタ刃の長さの超過時に発生する問題を防止することができる。
【0012】
本発明において、好ましくは、制御装置は、スロッタ装置が段ボールシートの搬送方向において隣り合う2枚の段ボールシートに対して同時に溝切り加工を行わないという条件を、所定条件として用いて、制限値を設定するよう構成されている。
このように構成された本発明によれば、スロッタ刃が長過ぎることで、スロッタ装置が搬送方向において隣り合う2枚の段ボールシートを同時に切断することを確実に防止できる。
【0013】
本発明において、好ましくは、スロッタ装置は、段ボールシートの搬送方向に沿って並べて配置され、スロッタ及び2組のスロッタ刃をそれぞれ備える第1及び第2スロッタユニットを有し、第1及び第2スロッタユニットは、スロッタが1回転する間に2枚の段ボールシートが送り込まれて、これら2枚の段ボールシートに対する溝切り加工を当該第1及び第2スロッタユニットのそれぞれによって行わせる所定の生産モードにより動作され、制御装置は、この所定の生産モードにおいて、2組のスロッタ刃がスロッタの外周上において干渉しないという条件を、所定条件として用いて、制限値を設定するよう構成されている。
このように構成された本発明によれば、スロッタ刃が長過ぎることで、スロッタに取り付けられた2組のスロッタ刃が当該スロッタの外周上において干渉(換言すると接触)することを確実に防止できる。
【0014】
本発明において、好ましくは、スロッタ装置は、段ボールシートの搬送方向に沿って並べて配置され、スロッタ及び2組のスロッタ刃をそれぞれ備える第1及び第2スロッタユニットを有し、第1及び第2スロッタユニットは、スロッタが1回転する間に2枚の段ボールシートが送り込まれて、これら2枚の段ボールシートに対する溝切り加工を当該第1及び第2スロッタユニットのそれぞれによって行わせる所定の生産モードにより動作され、制御装置は、この所定の生産モードにおいて、スロッタ装置が段ボールシートにおいて前フラップと後フラップとの間にある糊付け部に対して溝切り加工を行わないという条件を、所定条件として用いて、制限値を設定するよう構成されている。
このように構成された本発明によれば、スロッタ刃が長過ぎることで、スロッタ装置が段ボールシートの糊付け部を切断することを確実に防止できる。
【0015】
本発明において、好ましくは、スロッタ装置は、段ボールシートの搬送方向に沿って並べて配置され、スロッタ及び1組のスロッタ刃をそれぞれ備える第1及び第2スロッタユニットを有し、第1及び第2スロッタユニットは、スロッタが1回転する間に1枚の段ボールシートが送り込まれて、この1枚の段ボールシートに対する溝切り加工を当該第1及び第2スロッタユニットの両方によって行わせる所定の生産モードにより動作され、制御装置は、この所定の生産モードにおいて、スロッタ装置が段ボールシートの搬送方向において隣り合う2枚の段ボールシートに対して同時に溝切り加工を行わないという条件を、所定条件として用い、段ボールシートから生産される箱の前フラップの寸法E、箱深さの寸法F及び後フラップの寸法Gと、スロッタの周長Nと、所定の余裕値Oと、に基づき、制限値を「N-E-F-O」又は「N-G-F-O」から求められる値に設定し、所定のスロッタ刃における切断部の周方向に沿った長さが制限値を超過しているか否かを判定する、よう構成されている。
このように構成された本発明によれば、上記の生産モード(所謂ダブルスロッタモードでの通常生産に対応する)において、スロッタ刃の長さに対する超過判定を的確に行うので、スロッタ刃が長過ぎることにより、スロッタ装置が搬送方向において隣り合う2枚の段ボールシートを同時に切断することを確実に防止できる。
【0016】
本発明において、好ましくは、スロッタ装置は、段ボールシートの搬送方向に沿って並べて配置され、スロッタ及び1組のスロッタ刃をそれぞれ備える第1及び第2スロッタユニットを有し、第1及び第2スロッタユニットは、スロッタが2回転する間に1枚の段ボールシートが送り込まれて、この1枚の段ボールシートに対する溝切り加工を当該第1及び第2スロッタユニットの両方によって行わせる所定の生産モードにより動作され、制御装置は、この所定の生産モードにおいて、スロッタ装置が段ボールシートの搬送方向において隣り合う2枚の段ボールシートに対して同時に溝切り加工を行わないという条件を、所定条件として用い、段ボールシートから生産される箱の前フラップの寸法E、箱深さの寸法F及び後フラップの寸法Gと、スロッタの周長Nと、所定の余裕値Oと、に基づき、制限値を「2N-E-F-O」又は「2N-G-F-O」から求められる値に設定し、所定のスロッタ刃における切断部の周方向に沿った長さが制限値を超過しているか否かを判定する、よう構成されている。
このように構成された本発明によれば、上記の生産モード(ダブルスロッタモードでの所謂スキップフィードの生産に対応する)において、スロッタ刃の長さに対する超過判定を的確に行うので、スロッタ刃が長過ぎることにより、スロッタ装置が搬送方向において隣り合う2枚の段ボールシートを同時に切断することを確実に防止できる。
【0017】
本発明において、好ましくは、スロッタ装置は、段ボールシートの搬送方向に沿って並べて配置され、スロッタ及び2組のスロッタ刃をそれぞれ備える第1及び第2スロッタユニットを有し、第1及び第2スロッタユニットは、スロッタが1回転する間に2枚の段ボールシートが送り込まれて、これら2枚の段ボールシートに対する溝切り加工を当該第1及び第2スロッタユニットのそれぞれによって行わせる所定の生産モードにより動作され、制御装置は、この所定の生産モードにおいて、(1)スロッタ装置が段ボールシートの搬送方向において隣り合う2枚の段ボールシートに対して同時に溝切り加工を行わないという条件を、所定条件として用い、段ボールシートから生産される箱の前フラップの寸法E、箱深さの寸法F及び後フラップの寸法Gと、スロッタの周長Nと、所定の余裕値Oと、に基づき、制限値を「N/2-E-F-O」又は「N/2-G-F-O」から求められる値に設定し、所定のスロッタ刃における切断部の周方向に沿った長さがこの制限値を超過しているか否かを判定し、更に、(2)2組のスロッタ刃がスロッタの外周上において干渉しないという条件を、所定条件として用い、スロッタの周長Nと、箱深さの寸法Fと、所定の余裕値Zと、に基づき、制限値を「(N-F-Z)/2」から求められる値に設定し、所定のスロッタ刃の周方向に沿った全長がこの制限値を超過しているか否かを判定する、よう構成されている。
このように構成された本発明によれば、上記の生産モード(所謂2アップ生産のためのシングルスロッタモードの1つのモードに対応する)において、スロッタ刃の長さに対する超過判定を的確に行うので、スロッタ刃が長過ぎることにより、スロッタ装置が搬送方向において隣り合う2枚の段ボールシートを同時に切断すること、及び、スロッタに取り付けられた2組のスロッタ刃が当該スロッタの外周上において干渉することを確実に防止できる。
【0018】
本発明において、好ましくは、スロッタ装置は、段ボールシートの搬送方向に沿って並べて配置され、スロッタ及び2組のスロッタ刃をそれぞれ備える第1及び第2スロッタユニットを有し、第1及び第2スロッタユニットは、スロッタ装置の下流のダイカッタ装置により前後に2枚に切断される前の、2枚の段ボールシートを含む1枚の段ボールシートが、スロッタが1回転する間に送り込まれて、この1枚の段ボールシートに含まれる2枚の段ボールシートに対する溝切り加工を当該第1及び第2スロッタユニットのそれぞれによって行わせる所定の生産モードにより動作され、制御装置は、この所定の生産モードにおいて、(1)スロッタ装置が段ボールシートの搬送方向において隣り合う2枚の段ボールシートに対して同時に溝切り加工を行わないという条件を、所定条件として用い、段ボールシートから生産される箱の前フラップの寸法E、箱深さの寸法F及び後フラップの寸法Gと、スロッタの周長Nと、所定の余裕値Oと、に基づき、制限値を「N-E-2F-2G-O」又は「N-2E-2F-G-O」から求められる値に設定し、所定のスロッタ刃における切断部の周方向に沿った長さがこの制限値を超過しているか否かを判定し、更に、(2)2組のスロッタ刃がスロッタの外周上において干渉しないという条件を、所定条件として用い、スロッタの周長Nと、箱深さの寸法Fと、所定の余裕値Zと、に基づき、制限値を「(N-F-Z)/2」から求められる値に設定し、所定のスロッタ刃の周方向に沿った全長がこの制限値を超過しているか否かを判定し、更に、(3)スロッタ装置が段ボールシートにおいて前フラップと後フラップとの間にある糊付け部に対して溝切り加工を行わないという条件を、所定条件として用いて、前フラップの寸法Eと、後フラップの寸法Gと、所定の余裕値Qと、に基づき、制限値を「E+G-Q」から求められる値に設定し、所定のスロッタ刃における切断部の周方向に沿った長さがこの制限値を超過しているか否かを判定する、よう構成されている。
このように構成された本発明によれば、上記の生産モード(所謂2アップ生産のためのシングルスロッタモードの他のモードに対応する)において、スロッタ刃の長さに対する超過判定を的確に行うので、スロッタ刃が長過ぎることにより、スロッタ装置が搬送方向において隣り合う2枚の段ボールシートを同時に切断すること、及び、スロッタに取り付けられた2組のスロッタ刃が当該スロッタの外周上において干渉すること、並びに、スロッタ装置が糊付け部を切断することを確実に防止できる。
【0019】
本発明において、好ましくは、段ボールシート製函機は、表示装置を更に有し、制御装置は、所定のスロッタ刃の長さが制限値を超過していると判定した場合に、所定のスロッタ刃の長さが制限値を超過していることを表示装置に表示させるよう構成されている。
このように構成された本発明によれば、作業者は、スロッタ刃が長過ぎることを、視覚を通じて容易に知ることができる。
【0020】
本発明において、好ましくは、制御装置は、複数のオーダにより生産すべき箱の寸法、及び複数のオーダにおいて設定される生産モードに基づき、複数のオーダのそれぞれにおいて適用される制限値を設定し、所定のスロッタ刃の長さとして、スロッタ装置に取り付けられる所定の基準刃及び継刃の組み合わせにより定まる長さを用いて、複数のオーダのそれぞれについて、所定のスロッタ刃の長さが制限値を超過しているか否かを判定し、複数のオーダのそれぞれについて、所定のスロッタ刃の長さが制限値を超過しているか否かの判定結果に応じて、所定の基準刃及び継刃の組み合わせに対して基準刃及び/又は継刃を取り外す必要があるか否かを更に判定する、よう構成されている。
このように構成された本発明によれば、複数のオーダのそれぞれについて、スロッタ刃の長さに対する超過判定を的確に行うことができると共に、スロッタ刃(基準刃及び/又は継刃)の取り外しの要否判定を的確に行うことができる。
【0021】
本発明において、好ましくは、段ボールシート製函機は、表示装置を更に有し、制御装置は、複数のオーダのそれぞれについて、所定の基準刃及び継刃の組み合わせに対して基準刃及び/又は継刃を取り外す必要があるか否かの判定結果を、表示装置に一覧表示させるよう構成されている。
このように構成された本発明によれば、作業者は、複数のオーダのそれぞれについて、スロッタ刃の取り外しの要否を、視覚を通じて容易に把握することができる。
【0022】
本発明において、好ましくは、段ボールシート製函機は、スロッタ装置を含む複数の加工装置を有し、制御装置は、所定のスロッタ刃の長さとして、スロッタ装置に現在取り付けられているスロッタ刃の長さを用い、このスロッタ刃の長さが制限値を超過していると判定した場合に、次のオーダの生産を行う前に、スロッタ装置と、複数の加工装置の中でスロッタ装置に隣接する加工装置との間隔を広げる制御を行うよう構成されている。
このように構成された本発明によれば、次のオーダの生産を行う前に(具体的には前のオーダが終了してから次のオーダが開始されるまでのオーダ変更時)、スロッタ刃の着脱作業を行うためのスペースを速やかに確保することができる。
【0023】
本発明において、好ましくは、複数の加工装置は、段ボールシートの搬送方向において上流側から順に、段ボールシートに対して印刷を施す2つ以上の印刷ユニットを備える印刷装置と、段ボールシートに対して罫線を施すクリーザ装置と、スロッタ装置と、段ボールシートに対して打ち抜き加工を行うダイカッタ装置と、を有し、制御装置は、2つ以上の印刷ユニットの中で、次のオーダの生産のために印版を交換すべき印刷ユニットの数に応じて、スロッタ装置とダイカッタ装置との間隔のみを広げる制御と、スロッタ装置とダイカッタ装置との間隔及びスロッタ装置とクリーザ装置との間隔の両方を広げる制御と、を切り替えるよう構成されている。
このように構成された本発明によれば、印版を交換すべき印刷ユニットの数に応じて、つまり間隔を広げるべき印刷ユニットの条件に合わせて、スロッタ装置とこれに隣接する加工装置との間隔を最大限広げることができる。
【0024】
本発明において、好ましくは、スロッタ装置は、スロッタ刃と係合する別のスロッタ刃が取り付けられ、スロッタの下方に配置された別のスロッタを更に有すると共に、スロッタと別のスロッタとの組を段ボールシートの搬送方向に直交する方向に複数組有し、制御装置は、所定のスロッタ刃の長さとして、スロッタ装置に現在取り付けられているスロッタ刃の長さを用い、このスロッタ刃の長さが制限値を超過していると判定した場合に、次のオーダの生産を行う前に、複数組のスロッタを搬送方向に直交する方向に等間隔に位置決めする制御、及び/又は、スロッタ刃を別のスロッタ刃と係合しないように、スロッタ刃を周方向に位置決めする制御を行うよう構成されている。
このように構成された本発明によれば、次のオーダの生産を行う前に(具体的にはオーダ変更時)、複数組のスロッタを搬送方向に直交する方向に等間隔に位置決めすることで、スロッタ刃の着脱作業を行うためのスペースを適切に確保することができると共に、上下のスロッタ刃が係合しないようにスロッタ刃を周方向に位置決めすることで、作業者がスロッタ刃の着脱作業に速やかに取り掛かることができる。
【0025】
本発明において、好ましくは、制御装置は、所定のスロッタ刃の長さが、段ボールシートに溝切り加工を行うべき長さに対して不足するか否かを更に判定するよう構成されている。
このように構成された本発明によれば、スロッタ刃の長さの不足時に発生する加工不良を防止することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明による段ボールシート製函機によれば、スロッタ装置のスロッタ刃の長さに対する超過判定を所定条件に基づき的確に行うことで、スロッタ刃の長さの超過時に発生する問題を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の実施形態による段ボールシート製函機の全体構成を示す正面図である。
図2】本発明の実施形態によるスロッタ装置の第1及び第2スロッタユニットの詳細な構成を拡大して示す正面図である。
図3】本発明の実施形態による段ボールシート製函機の電気的構成を示すブロック図である。
図4】溝切り加工後の段ボールシートの平面図である。
図5】(a)は、最外周部の全体に切断部が形成されたスロッタ刃の平面図であり、(b)は、最外周部の一部分のみに切断部が形成されたスロッタ刃の平面図である。
図6】本発明の実施形態による第1生産モードで用いられる所定条件及び制限値についての説明図である。
図7】本発明の実施形態による第2生産モードで用いられる所定条件及び制限値についての説明図である。
図8】本発明の実施形態による第3生産モードで用いられる所定条件及び制限値についての説明図である。
図9】本発明の実施形態による第4生産モードで用いられる所定条件及び制限値についての説明図である。
図10】(a)は、1つの印刷ユニットの開動作を行う場合の、本発明の実施形態によるスロッタ刃の着脱のための開動作制御の説明図であり、(b)は、2つの印刷ユニットの開動作を行う場合の、本発明の実施形態によるスロッタ刃の着脱のための開動作制御の説明図である。
図11】本発明の実施形態において、スロッタ刃の着脱のために行われるスロッタ刃の周方向の位置決め制御の説明図である。
図12】本発明の実施形態によるスロッタ刃の長さの超過判定及び不足判定に応じた、上位管理装置の表示装置による表示画面例である。
図13】本発明の実施形態によるスロッタ刃の長さの超過判定及び不足判定に応じた、スロッタ表示装置による表示画面例である。
図14A】本発明の実施形態による制御処理を示すフローチャートである。
図14B】本発明の実施形態による制御処理を示すフローチャートである。
図15A】本発明の実施形態の変形例による制御処理を示すフローチャートである。
図15B】本発明の実施形態の変形例による制御処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態による段ボールシート製函機について説明する。
【0029】
<全体構成>
まず、図1を参照して、本発明の実施形態による段ボールシート製函機1の全体構成について説明する。図1は、本実施形態による段ボールシート製函機1の全体的構成を示す正面図である。
【0030】
図1に示すように、段ボールシート製函機1は、段ボールシートSHの搬送経路PL(段ボールシートSHの搬送方向は図1において右から左に向かう方向である)において上流側から順に、上下方向に積層された段ボールシートSHを1枚ずつ送り出す給紙装置2と、段ボールシートSHに対して印刷を施す印刷装置4と、段ボールシートSHに対して罫線を施すクリーザ装置5と、段ボールシートSHに対して溝切り加工(スロット溝加工)を行うスロッタ装置6と、段ボールシートSHに対して打ち抜き加工を行うダイカッタ装置7と、を有する。
【0031】
給紙装置2は、テーブル20、フロントゲート21及びバックガイド22を有し、多数の段ボールシートSHがフロントゲート21とバックガイド22との間においてテーブル20上に積載される。また、給紙装置2は、多数の給紙ローラと、昇降可能なグレイトと、一対のフィードロール23A、23Bとを有する。グレイトが多数の給紙ローラより下降したときに、多数の給紙ローラが、多数の段ボールシートSHのうち最も下側にある段ボールシートSHに接触することで、段ボールシートSHを1枚ずつ両フィードロール23A、23Bに送出する。フィードロール23A、23Bは、主駆動モータ8によって駆動される。
【0032】
印刷装置4は、3つの印刷ユニット4a、4b、4cを備える。各印刷ユニット4a、4b、4cは、版胴と呼ばれる印刷シリンダ40と、搬送経路PLを挟んで印刷シリンダ40と対向する位置に配設されたプレスロール43と、段ボールシートSHに印刷するための印版44と、印版44にインキを供給するためのインキ塗布装置45と、を有する。インキ塗布装置45は、印刷ユニット4a、4b、4cごとに異なる色のインキングロールを備えており、それにより、印刷装置4は、印刷ユニット4a、4b、4cによって段ボールシートSHに3色の印刷を施す。印刷シリンダ40及びプレスロール43は、主駆動モータ8によって駆動される。なお、印刷装置4において、3つの印刷ユニット4a、4b、4cを適用することに限定されず、2つ以下の印刷ユニットや4つ以上の印刷ユニットを適用してもよい。
【0033】
クリーザ装置5は、搬送経路PLを挟んで上部罫線ロール50と下部罫線ロール51とを有する。上部及び下部罫線ロール50、51は、搬送されてくる段ボールシートSHの所望の位置に罫線を施す。また、上部及び下部罫線ロール50、51は、主駆動モータ8によって駆動される。
【0034】
スロッタ装置6は、2つのスロッタユニット、つまり第1及び第2スロッタユニット61、62を有する。第1及び第2スロッタユニット61、62は、それぞれ、搬送経路PLを挟んで、2組のスロッタ刃が取り付けられた上部スロッタと、スロッタ刃と嵌合可能な溝が形成される下部スロッタとを有する。これら上部及び下部スロッタは、搬送されてくる段ボールシートSHの所望の位置に溝切り加工を行う。また、上部及び下部スロッタは、主駆動モータ8によって駆動される。
【0035】
ダイカッタ装置7は、搬送経路PLを挟んでダイシリンダ70とアンビルシリンダ71とを有する。段ボールシートSHを打ち抜くための一対の打ち抜きダイ73が合板ベニヤなどの板状体に取り付けられ、この板状体が、両ダイが点対称となる位置関係でダイシリンダ70の外周面に巻装される。打ち抜きダイ73の各々は、連続して搬送される段ボールシートSHの所望の位置に打ち抜き加工を行う。ダイシリンダ70及びアンビルシリンダ71は、主駆動モータ8によって駆動される。
【0036】
<スロッタ装置の構成>
次に、図2を参照して、本発明の実施形態によるスロッタ装置6の具体的な構成について説明する。図2は、本実施形態によるスロッタ装置6の第1及び第2スロッタユニット61、62の詳細な構成を拡大して示す正面図である。
【0037】
図2において、スロッタ装置6は、搬送経路PLに沿って、上流側に配置された第1スロッタユニット61と、下流側に配置された第2スロッタユニット62とを有する。第1及び第2スロッタユニット61、62は、搬送経路PLを挟んで配設された回転シリンダとしての上部スロッタ63と下部スロッタ64とからなる溝切りのためのスロッタ組を、搬送経路PLと直交する方向に例えば3組備えるとともに、継ぎしろを形成するための公知のスロッタ組を、直交方向に例えば1組備える。両スロッタ63、64は、公知の動力伝達機構を介して主駆動モータ8に連結され、その主駆動モータ8の回転により図2に示す矢印の方向に回転する。
【0038】
上部スロッタ63は、当該上部スロッタ63の外周上に固定され、回転方向と反対方向側の端部に角刃を備える固定スロッタ刃65aと、当該上部スロッタ63の外周上において周方向に移動可能に設けられ、回転方向側の端部に角刃を備える移動スロッタ刃65bと、を有する。これら固定スロッタ刃65a及び移動スロッタ刃65bは、上部スロッタ63に対して着脱可能になっている。また、上部スロッタ63は、スロッタ軸67を介してスロッタ装置6のフレームに回転可能に支持される。下部スロッタ64は、スロッタ装置6のフレームに回転可能に支持され、スロッタ刃66が外周部全域に形成されて構成される。
【0039】
なお、以下では、固定スロッタ刃65aと移動スロッタ刃65bとを区別しないで用いる場合には、これらを単に「スロッタ刃65」と表記する。また、固定スロッタ刃を単に「固定刃」と表記し、移動スロッタ刃を単に「移動刃」と表記することがある。スロッタ刃65(固定刃65a及び移動刃65b)は、基本的には、角刃が端部に設けられた1枚の基準刃に対して1枚以上の継刃が連結された1組(ひとまとまり)の刃によって構成される。場合によっては、基準刃のみによってスロッタ刃65が構成されることもある。
【0040】
第1スロッタユニット61と第2スロッタユニット62との間には、2つの位置センサ69が設けられている。これらの位置センサ69は、上下方向において互い違いになるように配置され、スロッタ装置6のフレームに固定されている。位置センサ69は、固定刃65a及び移動刃65bのそれぞれの位置を検知可能に構成されている。例えば、位置センサ69には金属を検知可能な近接センサが適用され、位置センサ69は、その近傍にスロッタ刃65が位置するときにオンとなる。
【0041】
<電気的構成>
次に、図3を参照して、本発明の実施形態による段ボールシート製函機1の電気的構成について説明する。図3は、本実施形態による段ボールシート製函機1の基本的な電気的構成を示すブロック図である。
【0042】
段ボールシート製函機1において段ボールシートSHの加工を全般的に管理するために、上位管理装置100および下位管理装置110が設けられる。上位管理装置100は、予め決められた順序で生産される複数のオーダ情報(換言すると生産管理計画)などを記憶する。上位管理装置100は、オーダ毎に、シート搬送速度や、段ボールシートSHの寸法(段ボールシートSHにより生産される箱の寸法も含む)や、生産モードや、加工数量などに関する制御指令情報を、下位管理装置110に送る。また、上位管理装置100は、各種情報を表示する表示装置102に接続される。他方で、下位管理装置110は、上位管理装置100から送られる制御指令情報に従って、主駆動モータ8などの駆動部の動作を制御するとともに、段ボールシートSHの加工数量を計数して上位管理装置100に送るなどの管理制御を行う装置である。なお、上位管理装置100及び/又は下位管理装置110は、本発明における「制御装置」の一例に相当する。
【0043】
具体的には、下位管理装置110には、スロッタ装置6に設けられたスロッタ表示装置104、及び、このスロッタ表示装置104に設けられたタッチパネルとしてのスロッタ操作パネル106が接続されている。スロッタ表示装置104は、現在の生産速度や給紙枚数などを表示し、スロッタ操作パネル106は、作業者(オペレータ)が、スロッタ装置6に現在取り付けられているスロッタ刃65に関する情報(例えばスロッタ刃65の長さ(基準刃及び継刃の寸法)など)を入力できるようになっている。
なお、スロッタ表示装置104は、実際には、段ボールシート製函機1におけるスロッタ装置6以外の加工装置、具体的には給紙装置2、印刷装置4、クリーザ装置5及びダイカッタ装置7に関する情報も表示する。つまり、スロッタ表示装置104は、これらの加工装置において共通で用いられる表示装置である。本明細書では、スロッタ装置6に関連する情報の表示を主に説明するので、説明の便宜上、段ボールシート製函機1の加工装置において共通で用いられる表示装置のことを「スロッタ表示装置104」と表記している。スロッタ操作パネル106も同様である。すなわち、本明細書では、スロッタ装置6に関連する操作を主に説明するので、説明の便宜上、段ボールシート製函機1の加工装置において共通で用いられる操作パネルのことを「スロッタ操作パネル106」と表記している。
【0044】
また、下位管理装置110には、段ボールシート製函機1の各加工装置間の間隔を自動で広げる動作(以下では「開動作」と呼ぶ。)を行わせるために、作業者によって操作される自動開ボタン107が接続されている。この自動開ボタン107は、作業者が、オーダ変更時において、印刷装置4での印版44の交換やインクの色替えや、スロッタ装置6でのスロッタ刃65の着脱(例えば継刃の着脱)や、ダイカッタ装置7での打ち抜きダイ73の交換などを行うために操作される。更に、下位管理装置110には、作業者がスロッタ装置6のスロッタ刃65の着脱作業を完了したときに操作するための刃物着脱完了ボタン108、及び、上述したスロッタ刃65(固定刃65a及び移動刃65b)の位置を検出するための位置センサ69が接続されている。
【0045】
他方で、下位管理装置110は、駆動制御装置120、印刷制御装置122、クリーザ制御装置124、スロッタ制御装置126、及びダイカッタ制御装置128にそれぞれ接続される。駆動制御装置120は、下位管理装置110からの制御指令情報に従って、主駆動モータMTの駆動および停止と、その回転速度とを制御する。主駆動モータMTの回転速度は、制御指令情報中のシート搬送速度に従って制御される。印刷制御装置122、クリーザ制御装置124、スロッタ制御装置126、及びダイカッタ制御装置128は、それぞれ、下位管理装置110からの制御指令情報に従って、印刷装置4の印刷ユニット4a~4c、クリーザ装置5、スロッタ装置6、及びダイカッタ装置7の動作を制御する。
【0046】
また、下位管理装置110は、上記した自動開ボタン107が作業者によって操作されたときに段ボールシート製函機1の各加工装置の開動作を制御するための開動作制御装置130に接続される。この開動作制御装置130は、印刷ユニット4a~4c、クリーザ装置5、スロッタ装置6、及びダイカッタ装置7を移動可能に構成された移動機構132に接続されている。例えば、移動機構132は、これらの加工装置を、例えば段ボールシートの搬送方向に沿った方向に移動させる。開動作制御装置130は、下位管理装置110からの制御指令情報に従って、印刷装置4の印刷ユニット4a~4cの間隔や、クリーザ装置5とスロッタ装置6との間隔や、スロッタ装置6とダイカッタ装置7との間隔を広げるように、移動機構132を制御する。
【0047】
<スロッタ刃の長さの超過判定>
次に、本実施形態によるスロッタ刃65の長さの超過判定について説明する。最初に、この超過判定の基本概念について説明する。スロッタ刃65が長過ぎると、「発明が解決しようとする課題」のセクションで述べたように複数の問題が発生し得る。そのため、本願発明者らは、スロッタ刃65が長過ぎるために発生し得る複数の問題に着目して、この複数の問題の発生を防止するための所定条件を用いて、スロッタ刃65の長さの超過判定を行うことを考えた。
【0048】
スロッタ刃65が長過ぎるために発生する複数の問題は、次の通りである。第1に、スロッタ刃65が長過ぎると、スロッタ刃65が搬送方向において隣り合う2枚の段ボールシートSHを同時に切断することがある。第2に、上部スロッタ63が1回転する間に2枚の段ボールシートSHを送り込む生産モード(特許文献1に記載されたシングルスロッタモード)において、スロッタ刃65が長過ぎると、固定刃65aと移動刃65bとが上部スロッタ63の外周上において干渉(換言すると接触)することがある。第3に、シングルスロッタモードにおいて、スロッタ刃65が長過ぎると、スロッタ刃65が段ボールシートSHにおいて前フラップと後フラップとの間にある糊付け部を切断することがある。
【0049】
このようなことから、本願発明者らは、上部スロッタ63の周長(基本的には印刷シリンダ40などの周長と同一)と、段ボールシート製函機1により生産すべき箱の寸法と、生産すべき箱に応じてスロッタ装置6を動作させるために設定すべき生産モードと、から定まる所定条件を満たすように、スロッタ刃65の長さの超過判定を行うことを考えた。特に、本願発明者らは、このような所定条件を満たすためのスロッタ刃65の長さについての制限値を設定し、スロッタ刃65の長さがこの制限値を超過しているか否かを判定することを考えた。こうすることで、スロッタ刃65の長さに対する超過判定を所定条件に基づき的確に行うことで、スロッタ刃65の長さの超過時に発生する問題を防止することが可能となる。
【0050】
ここで、本実施形態による超過判定の内容を説明する前に、その前提となる事項を図4及び図5を参照して説明する。
【0051】
図4は、スロッタ装置6による溝切り加工の基本的事項についての説明図である。図4は、溝切り加工後の段ボールシートSHの平面図を示している。図4において、符号LS1で示す部分(3箇所)は、スロッタ装置6により溝切り加工が行われた、段ボールシートSHの前フラップ部分FL1における箇所である。また、符号LS2で示す部分(3箇所)は、スロッタ装置6により溝切り加工が行われた、段ボールシートSHの後フラップ部分FL2における箇所である。また、符号GLで示す部分(搬送方向FDに直行する方向に突出する部分)は、前フラップ部分FL1と後フラップ部分FL2との間にある糊付け部である。段ボールシートSHから箱を作るときに、この糊付け部GLに糊が付与されて接着される。
【0052】
以下では、前フラップ部分FL1の長さ、つまり前フラップ寸法を「E」と表記し、後フラップ部分FL2の長さ、つまり後フラップ寸法を「G」と表記し、前フラップ部分FL1と後フラップ部分FL2との間の部分の長さ、つまり箱深さ寸法を「F」と表記する。なお、基本的には、前フラップ寸法Eと後フラップ寸法Gは等しい。ただし、前フラップ部分FL1及び後フラップ部分FL2のいずれかが存在しない段ボールシートSHがあり、そのような段ボールシートSHでは前フラップ寸法E及び後フラップ寸法Gのいずれかが0になる。
【0053】
次に、図5は、スロッタ刃65の長さの基本的事項についての説明図である。図5(a)及び(b)は、スロッタ刃65を構成する一枚の刃の平面図を示している。ここでは、角刃65d付きの基準刃を例示している。また、符号65eは、スロッタ刃65を上部スロッタ63に固定するためのボルト穴を示している。
【0054】
図5(a)は、最外周部(外側に位置する円弧部分)の全体に切断部が形成されたスロッタ刃65を示し、図5(b)は、最外周部の一部分のみに切断部が形成されたスロッタ刃65を示している。図5(a)のスロッタ刃65では、切断部の周方向に沿った長さ(つまり切断部に対応する円弧部分の長さであり、以下では単に「切断部の寸法」と呼ぶ。)を「S」とし、スロッタ刃65の周方向に沿った全長(つまりスロッタ刃65の最外周部に対応する円弧部分の全長であり、以下では単に「刃物長さ」と呼ぶ。)を「L」とすると、切断部の寸法Sは刃物長さLと等しい(S=L)。これに対して、図5(b)のスロッタ刃65では、切断部の寸法Sは刃物長さLと等しくない(S≠L)、具体的には切断部の寸法Sは刃物長さLよりも短い(S<L)。なお、スロッタ刃65を上部スロッタ63にしっかり固定するためにはボルト穴65eを比較的長く形成する必要があるが、そのようなボルト穴65eの長さよりも短い長さをスロッタ刃65にて切断できるように、図5(b)に示すような最外周部の一部分のみに切断部が形成されたスロッタ刃65が用いられる。
【0055】
ここで、上位管理装置100又は下位管理装置110は、後述するスロッタ刃65の長さの超過判定を行うに当たって、スロッタ刃65の基準刃及び継刃の情報を取得する。具体的には、上位管理装置100又は下位管理装置110は、第1及び第2スロッタユニット61、62のそれぞれのスロッタ刃65(つまり固定刃65a及び/又は移動刃65b)に適用される基準刃及び継刃について、上述した切断部の寸法S及び刃物長さL、並びに基準刃及び継刃の取り付けの有無の情報を取得する。なお、切断部の寸法Sと刃物長さLとが等しい場合には、切断部の寸法Sの情報のみを用いればよい。
【0056】
1つの例では、上位管理装置100又は下位管理装置110は、作業者がスロッタ操作パネル106を介して入力した情報に基づいて、スロッタ刃65の基準刃及び継刃の情報を取得する。この場合、作業者は、スロッタ操作パネル106を用いて基準刃及び継刃の寸法を入力し、上位管理装置100又は下位管理装置110は、こうして入力された寸法に基づいて、スロッタ刃65における切断部の寸法S及び刃物長さLを取得する(基本的には基準刃及び継刃のそれぞれの切断部の寸法S及び刃物長さLを別個に合計した長さを求めることとなる)。なお、予め登録された複数の基準刃及び継刃の情報をスロッタ表示装置104に表示させて、作業者は、表示された情報の中から該当する基準刃及び継刃の情報をスロッタ操作パネル106により選択してもよい。
【0057】
他の例では、上位管理装置100又は下位管理装置110は、上述した位置センサ69の検出結果に基づいて、スロッタ刃65の基準刃及び継刃の情報、具体的にはスロッタ刃65の切断部の寸法S及び刃物長さLを取得する。1つの例では、上部スロッタ63を一定速度で回転させている間に、位置センサ69がオンとなっている時間に基づき、スロッタ刃65の長さを求めればよい。また、上位管理装置100又は下位管理装置110は、作業者がスロッタ刃65の着脱作業を完了して刃物着脱完了ボタン108を操作した後に得られた位置センサ69の検出結果を用いるのがよい。
【0058】
以下では、本実施形態において、各種の生産モードのそれぞれについて、スロッタ刃65の長さの超過判定を行うために用いられる所定条件及び制限値を具体的に説明する。
【0059】
(第1生産モード)
図6を参照して、本実施形態において、第1生産モードで用いられる所定条件及び制限値について説明する。図6は、スロッタ装置6の第1及び第2スロッタユニット61、62と、スロッタ装置6によって溝切り加工される段ボールシートSHを概略的に示している。
【0060】
第1生産モードは、上部スロッタ63が1回転する間に、搬送方向長さが比較的長い1枚の段ボールシートSHが送り込まれて、この1枚の段ボールシートSHに対する溝切り加工を第1及び第2スロッタユニット61、62の両方によって行わせる生産モードである。第1生産モードは、所謂ダブルスロッタモードでの通常生産に対応する。この第1生産モードにおいては、第1スロッタユニット61では、固定刃65aが取り外され、移動刃65bのみが取り付けられており、第2スロッタユニット62では、移動刃65bが取り外され、固定刃65aのみが取り付けられている。第1生産モードにおいては、第2スロッタユニット62の固定刃65aによって段ボールシートSHの前フラップ部分FL1が溝切り加工され、第1スロッタユニット61の移動刃65bによって段ボールシートSHの後フラップ部分FL2が溝切り加工される。
【0061】
なお、他の例では、第1生産モードにおいて、第1スロッタユニット61では、移動刃65bが取り外され、固定刃65aのみが取り付けられてもよいし、第2スロッタユニット62では、固定刃65aが取り外され、移動刃65bのみが取り付けられてもよい。更に他の例では、第1生産モードにおいて、第1及び第2スロッタユニット61、62の両方とも、固定刃65a及び移動刃65bを連結したひとまとまりのスロッタ刃65を用いてもよい。
【0062】
ここで、第1スロッタユニット61の移動刃65bが、切断部の寸法がS0である基準刃65b1と、切断部の寸法がそれぞれS1、S2である継刃65b2、65b3とを有する場合(基本的にはS1=S2)、この移動刃65bの切断部の寸法Sは、これらの寸法S0、S1、S2を合計することで「S=S0+S1+S2」となる。同様に、第2スロッタユニット62の固定刃65aが、切断部の寸法がS0である基準刃65a1と、切断部の寸法がそれぞれS1、S2である継刃65a2、65a3とを有する場合(基本的にはS1=S2)、この固定刃65aの切断部の寸法Sは、これらの寸法S0、S1、S2を合計することで「S=S0+S1+S2」となる。基本的には、第2スロッタユニット62の固定刃65aにより溝切り加工される前フラップ寸法Eと、第1スロッタユニット61の移動刃65bにより溝切り加工される後フラップ寸法Gとが等しいため(E=G)、第2スロッタユニット62の固定刃65aにおける切断部の寸法Sと、第1スロッタユニット61の移動刃65bにおける切断部の寸法Sとは等しくなる。よって、以下では、これら固定刃65aと移動刃65bの切断部の寸法が等しい場合について説明する。なお、ここで述べたスロッタ刃65(固定刃65a及び移動刃65b)の切断部の寸法Sの求め方は、後述する他の生産モード(不足判定も含む)でも同様であるものとする。
【0063】
本実施形態において、上記のような第1生産モードでは、スロッタ刃65の長さの超過判定を行うために用いられる所定条件として、スロッタ装置6が搬送方向FDにおいて隣り合う2枚の段ボールシートSHに対して同時に溝切り加工を行わないという条件が適用される。この条件は、上記したような切断部の寸法Sと、前フラップ寸法Eと、箱深さ寸法Fと、後フラップ寸法Gと、上部スロッタ63の周長Nと、所定の余裕値Oと、を用いて、以下の式(1a)又は式(1b)で表される。
S-E≦(N-O)-(E+F+G) (1a)
S-G≦(N-O)-(E+F+G) (1b)
【0064】
式(1a)、(1b)において、左辺は、切断部の寸法(S)がフラップ寸法(E又はG)を超過する長さを示し、右辺は、スロッタの周長(N)から段ボールシートSHの全長(E+F+G)を引いた長さ、つまりスロッタの周長(N)のうちで段ボールシートSHが存在しない部分の長さから、所定の余裕値Oを引いた長さを示している。したがって、このような式(1a)、(1b)において左辺の値が右辺の値以下であれば、スロッタ装置6が搬送方向FDにおいて隣り合う2枚の段ボールシートSHに対して同時に溝切り加工を行わなくなる、換言すると、左辺の値が右辺の値より大きくなると、スロッタ装置6が搬送方向FDにおいて隣り合う2枚の段ボールシートSHに対して同時に溝切り加工を行うこととなる。
【0065】
なお、上記の余裕値Oは、スロッタ装置6が搬送方向FDにおいて隣り合う2枚の段ボールシートSHに対して同時に溝切り加工することを確実に抑制する観点から設定される余裕値(マージン)である。具体的には、余裕値Oは、基準刃及び継刃の取り付け誤差や、給紙装置2での給紙ずれや、段ボールシートSHの搬送ずれなどに基づいて設定される。例えば、余裕値Oは10~20mmに設定される。
【0066】
上記の式(1a)、(1b)を変形することで、スロッタ刃65の長さの超過判定を行うために用いられる制限値X1は、以下の式(1c)又は式(1d)で表される。よって、本実施形態において、第1生産モードでのスロッタ刃65の長さの超過判定では、スロッタ刃65の切断部の寸法Sが、式(1c)又は式(1d)の制限値X1を超過しているか否かの判定が行われる。なお、基本的には、前フラップ寸法Eと後フラップ寸法Gは等しいので、式(1c)と式(1d)のいずれを用いても制限値X1は同じ値となる(式(1a)と式(1b)も同様)。
X1=N-E-F-O (1c)
X1=N-G-F-O (1d)
【0067】
具体的には、本実施形態において、第1生産モードでは、スロッタ刃65の切断部の寸法Sがこの制限値X1を超過している場合に、スロッタ刃65が長過ぎると判定される。この場合、スロッタ刃65が長過ぎるとの判定結果がスロッタ表示装置104に表示される。これにより、作業者はスロッタ刃65の継刃などを取り外す必要があることを認識できる(なお、判定結果に加えて、スロッタ刃65の取り外しを行う必要がある旨も表示してもよい)。
【0068】
このような本実施形態によれば、第1生産モードにおいて、スロッタ刃65の長さに対する超過判定を的確に行うので、スロッタ刃65が長過ぎることにより、スロッタ装置6が搬送方向FDにおいて隣り合う2枚の段ボールシートSHを同時に切断することを確実に防止できる。
【0069】
(第2生産モード)
図7を参照して、本実施形態において、第2生産モードで用いられる所定条件及び制限値について説明する。図7は、スロッタ装置6の第1及び第2スロッタユニット61、62と、スロッタ装置6によって溝切り加工される段ボールシートSHを概略的に示している。
【0070】
第2生産モードは、上部スロッタ63が2回転する間に、搬送方向長さが非常に長い1枚の段ボールシートSHが送り込まれて、この1枚の段ボールシートSHに対する溝切り加工を第1及び第2スロッタユニット61、62の両方によって行わせる生産モードである。第2生産モードは、ダブルスロッタモードでの所謂スキップフィードの生産に対応する(例えば特開2016-98050号公報参照)。この第2生産モードでも、第1生産モードと同様に、第1スロッタユニット61では移動刃65bのみが取り付けられ、第2スロッタユニット62では固定刃65aのみが取り付けられており、第2スロッタユニット62の固定刃65aによって前フラップ部分FL1が溝切り加工され、第1スロッタユニット61の移動刃65bによって後フラップ部分FL2が溝切り加工される。
【0071】
このような第2生産モードでも、スロッタ刃65の長さの超過判定を行うために用いられる所定条件として、スロッタ装置6が搬送方向FDにおいて隣り合う2枚の段ボールシートSHに対して同時に溝切り加工を行わないという条件が適用される。この条件は、切断部の寸法Sと、前フラップ寸法Eと、箱深さ寸法Fと、後フラップ寸法Gと、上部スロッタ63の周長Nと、所定の余裕値Oと、を用いて、以下の式(2a)又は式(2b)で表される。
S-E≦(2N-O)-(E+F+G) (2a)
S-G≦(2N-O)-(E+F+G) (2b)
【0072】
第2生産モードでの式(2a)、(2b)は、右辺が「N」の代わりに「2N」を用いて表される点で、第1生産モードでの式(1a)、(1b)と異なる。これは、第2生産モードでは、上部スロッタ63が2回転する間に1枚の段ボールシートSHが送り込まれるからである。このような式(2a)、(2b)を変形することで、スロッタ刃65の長さの超過判定を行うために用いられる制限値X2は、以下の式(2c)又は式(2d)で表される。よって、本実施形態において、第2生産モードでのスロッタ刃65の長さの超過判定では、スロッタ刃65の切断部の寸法Sが、式(2c)又は式(2d)の制限値X2を超過しているか否かの判定が行われる。なお、基本的には、前フラップ寸法Eと後フラップ寸法Gは等しいので、式(2c)と式(2d)のいずれを用いても制限値X2は同じ値となる(式(2a)と式(2b)も同様)。
X2=2N-E-F-O (2c)
X2=2N-G-F-O (2d)
【0073】
具体的には、本実施形態において、第2生産モードでは、スロッタ刃65の切断部の寸法Sがこの制限値X2を超過している場合に、スロッタ刃65が長過ぎると判定される。この場合、スロッタ刃65が長過ぎるとの判定結果がスロッタ表示装置104に表示される。これにより、作業者はスロッタ刃65の継刃などを取り外す必要があることを認識できる(なお、判定結果に加えて、スロッタ刃65の取り外しを行う必要がある旨も表示してもよい)。
【0074】
このような本実施形態によれば、第2生産モードにおいて、スロッタ刃65の長さに対する超過判定を的確に行うので、スロッタ刃65が長過ぎることにより、スロッタ装置6が搬送方向FDにおいて隣り合う2枚の段ボールシートSHを同時に切断することを確実に防止できる。
【0075】
(第3生産モード)
図8を参照して、本実施形態において、第3生産モードで用いられる所定条件及び制限値について説明する。図8は、スロッタ装置6の第1及び第2スロッタユニット61、62と、スロッタ装置6によって溝切り加工される段ボールシートSH1、SH2を概略的に示している。
【0076】
第3生産モードは、上部スロッタ63が1回転する間に、搬送方向長さが比較的短い2枚の段ボールシートSH1、SH2が送り込まれて、この2枚の段ボールシートSH1、SH2に対する溝切り加工を第1及び第2スロッタユニット61、62のそれぞれによって行わせる生産モードである。この場合、2枚の段ボールシートSH1、SH2は、給紙装置2の給送間隔に応じた間隔が空けられるものとする。第3生産モードは、所謂2アップ生産のためのシングルスロッタモードに対応する。この第3生産モードにおいては、第1及び第2スロッタユニット61、62の両方とも、固定刃65a及び移動刃65bが取り付けられている。第3生産モードにおいては、第2スロッタユニット62の固定刃65a及び移動刃65bによって段ボールシートSH1の前フラップ部分FL1及び後フラップ部分FL2が溝切り加工され、第1スロッタユニット61の固定刃65a及び移動刃65bによって段ボールシートSH2の前フラップ部分FL1及び後フラップ部分FL2が溝切り加工される。
【0077】
ここで、第1生産モードで述べたように、第1及び第2スロッタユニット61、62の固定刃65a及び移動刃65bが、切断部の寸法がS0である基準刃と、切断部の寸法がそれぞれS1、S2である2枚の継刃とを有する場合、固定刃65a及び移動刃65bの切断部の寸法Sは「S=S0+S1+S2」となる。他方で、これら基準刃及び2枚の継刃の刃物長さがそれぞれL0、L1、L2である場合、固定刃65a及び移動刃65bの刃物長さLは「L=L0+L1+L2」となる。基本的には、固定刃65aと移動刃65bの刃物長さLは等しい。また、通常の固定刃65a及び移動刃65bでは、刃物長さLは切断部の寸法Sと等しい(L=S)。
【0078】
上記のような第3生産モードでも、スロッタ刃65の長さの超過判定を行うために用いられる所定条件として、スロッタ装置6が搬送方向FDにおいて隣り合う2枚の段ボールシートSHに対して同時に溝切り加工を行わないという条件が適用される。この条件は、切断部の寸法Sと、前フラップ寸法Eと、箱深さ寸法Fと、後フラップ寸法Gと、上部スロッタ63の周長Nと、所定の余裕値Oと、を用いて、以下の式(3a)又は式(3b)で表される。
S-E≦(N/2-O)-(E+F+G) (3a)
S-G≦(N/2-O)-(E+F+G) (3b)
【0079】
第3生産モードでの式(3a)、(3b)は、右辺が「N」の代わりに「N/2」を用いて表される点で、第1生産モードでの式(1a)、(1b)と異なる。これは、第3生産モードでは、上部スロッタ63が1回転する間に2枚の段ボールシートSH1、SH2が送り込まれるからである。このような式(3a)、(3b)を変形することで、スロッタ刃65の長さの超過判定を行うために用いられる制限値X31は、以下の式(3c)又は式(3d)で表される。よって、本実施形態において、第3生産モードでのスロッタ刃65の長さの超過判定では、スロッタ刃65の切断部の寸法Sが、式(3c)又は式(3d)の制限値X31を超過しているか否かの判定が行われる。なお、基本的には、前フラップ寸法Eと後フラップ寸法Gは等しいので、式(3c)と式(3d)のいずれを用いても制限値X31は同じ値となる(式(3a)と式(3b)も同様)。
X31=N/2-E-F-O (3c)
X31=N/2-G-F-O (3d)
【0080】
次いで、第3生産モードでは、更に、スロッタ刃65の長さの超過判定を行うために用いられる所定条件として、第1及び第2スロッタユニット61、62において固定刃65aと移動刃65bとが上部スロッタ63の外周上において干渉(換言すると接触)しないという条件が適用される。この条件は、上記したような刃物長さLと、箱深さ寸法Fと、上部スロッタ63の周長Nと、所定の余裕値Zと、を用いて、以下の式(3e)で表される。
2×L+F≦N-Z (3e)
【0081】
式(3e)において、左辺は、固定刃65a及び移動刃65bの刃物長さLの合計長さ(2×L)と、箱深さ寸法F、つまり段ボールシートSHにおいて箱深さの部分が切断されないように上部スロッタ63の外周上において固定刃65aと移動刃65bとが離間される長さと、を加算した長さを示している。また、右辺は、上部スロッタ63の周長Nから所定の余裕値Zを引いた長さを示している。したがって、このような式(3e)において左辺の値が右辺の値以下であれば、固定刃65aと移動刃65bとが上部スロッタ63の外周上において干渉しない、換言すると、左辺の値が右辺の値より大きくなると、固定刃65aと移動刃65bとが上部スロッタ63の外周上において干渉(接触)することとなる。
【0082】
なお、上記の余裕値Zは、固定刃65aと移動刃65bとが上部スロッタ63の外周上において干渉することを確実に抑制する観点から設定される余裕値(マージン)である。例えば、余裕値Zは10mm程度に設定される。
【0083】
上記の式(3e)を変形することで、スロッタ刃65の長さの超過判定を行うために用いられる制限値X32は、以下の式(3f)で表される。よって、本実施形態において、第3生産モードでのスロッタ刃65の長さの超過判定では、上述した式(3c)又は式(3d)の制限値X31を用いた判定に加えて、スロッタ刃65の刃物長さLが式(3f)の制限値X32を超過しているか否かの判定が更に行われる。なお、刃物長さLが切断部の寸法Sと等しい場合には(通常のスロッタ刃65ではL=Sとなる)、刃物長さLとして切断部の寸法Sを用いればよい。
X32=(N-F-Z)/2 (3f)
【0084】
具体的には、本実施形態において、第3生産モードでは、スロッタ刃65の切断部の寸法Sが式(3c)又は式(3d)の制限値X31を超過している場合、及び、スロッタ刃65の刃物長さLが式(3f)の制限値X32を超過している場合、のうちのいずれの場合に、スロッタ刃65が長過ぎると判定される。この場合、スロッタ刃65が長過ぎるとの判定結果がスロッタ表示装置104に表示される。これにより、作業者はスロッタ刃65の継刃などを取り外す必要があることを認識できる(なお、判定結果に加えて、スロッタ刃65の取り外しを行う必要がある旨も表示してもよい)。
【0085】
このような本実施形態によれば、第3生産モードにおいて、スロッタ刃65の長さに対する超過判定を的確に行うので、スロッタ刃65が長過ぎることにより、スロッタ装置6が搬送方向FDにおいて隣り合う2枚の段ボールシートSHを同時に切断すること、及び、固定刃65aと移動刃65bとが上部スロッタ63の外周上において干渉(接触)することを確実に防止できる。
【0086】
(第4生産モード)
図9を参照して、本実施形態において、第4生産モードで用いられる所定条件及び制限値について説明する。図9は、スロッタ装置6の第1及び第2スロッタユニット61、62と、スロッタ装置6によって溝切り加工される段ボールシートSHを概略的に示している。
【0087】
第4生産モードは、ダイカッタ装置7により前後に切断される前の、2枚の段ボールシートSH1、SH2が繋がった状態にある1枚の段ボールシートSHが、上部スロッタ63が1回転する間に送り込まれて、この段ボールシートSHに対する溝切り加工を第1及び第2スロッタユニット61、62の両方によって行わせる生産モードである。第4生産モードは、2アップ生産のためのシングルスロッタモードにおいて、上記した第3生産モードとは異なる生産モードである。この第4生産モードにおいても、第3生産モードと同様に、第1及び第2スロッタユニット61、62の両方とも固定刃65a及び移動刃65bが取り付けられ、そして、第2スロッタユニット62の固定刃65a及び移動刃65bによって段ボールシートSH1の前フラップ部分FL1及び後フラップ部分FL2が溝切り加工され、第1スロッタユニット61の固定刃65a及び移動刃65bによって段ボールシートSH2の前フラップ部分FL1及び後フラップ部分FL2が溝切り加工される。
【0088】
このような第4生産モードでも、スロッタ刃65の長さの超過判定を行うために用いられる所定条件として、スロッタ装置6が搬送方向FDにおいて隣り合う2枚の段ボールシートSHに対して同時に溝切り加工を行わないという条件が適用される。この条件は、切断部の寸法Sと、前フラップ寸法Eと、箱深さ寸法Fと、後フラップ寸法Gと、上部スロッタ63の周長Nと、所定の余裕値Oと、を用いて、以下の式(4a)又は式(4b)で表される。
S-E≦(N-O)-2×(E+F+G) (4a)
S-G≦(N-O)-2×(E+F+G) (4b)
【0089】
第4生産モードでの式(4a)、(4b)は、右辺が「E+F+G」の代わりに「2×(E+F+G)」を用いて表される点で、第1生産モードでの式(1a)、(1b)と異なる。これは、第4生産モードでは、上部スロッタ63が1回転する間に、2枚の段ボールシートSH1、SH2が繋がった状態にある1枚の段ボールシートSHが送り込まれるからである。このような式(4a)、(4b)を変形することで、スロッタ刃65の長さの超過判定を行うために用いられる制限値X41は、以下の式(4c)又は式(4d)で表される。よって、本実施形態において、第4生産モードでのスロッタ刃65の長さの超過判定では、スロッタ刃65の切断部の寸法Sが、式(4c)又は式(4d)の制限値X41を超過しているか否かの判定が行われる。なお、基本的には、前フラップ寸法Eと後フラップ寸法Gは等しいので、式(4c)と式(4d)のいずれを用いても制限値X41は同じ値となる(式(4a)と式(4b)も同様)。
X41=N-E-2F-2G-O (4c)
X41=N-2E-2F-G-O (4d)
【0090】
次いで、第4生産モードでは、第3生産モードと同様に、更に、スロッタ刃65の長さの超過判定を行うために用いられる所定条件として、第1及び第2スロッタユニット61、62において固定刃65aと移動刃65bとが上部スロッタ63の外周上において干渉(換言すると接触)しないという条件が適用される。この条件は、刃物長さLと、箱深さ寸法Fと、上部スロッタ63の周長Nと、所定の余裕値Zと、を用いて、以下の式(4e)で表される。
2×L+F≦N-Z (4e)
【0091】
式(4e)を変形することで、スロッタ刃65の長さの超過判定を行うために用いられる制限値X42は、以下の式(4f)で表される。よって、本実施形態において、第4生産モードでのスロッタ刃65の長さの超過判定では、上述した式(4c)又は式(4d)の制限値X42を用いた判定に加えて、スロッタ刃65の刃物長さLが式(4f)の制限値X42を超過しているか否かの判定が更に行われる。なお、刃物長さLが切断部の寸法Sと等しい場合には(通常のスロッタ刃65ではL=Sとなる)、刃物長さLとして切断部の寸法Sを用いればよい。
X42=(N-F-Z)/2 (4f)
【0092】
次いで、第4生産モードでは、更に、スロッタ刃65が糊付け部GLに対して溝切り加工を行わないという条件が適用される。この条件は、切断部の寸法Sと、前フラップ寸法Eと、後フラップ寸法Gと、所定の余裕値Qと、を用いて、以下の式(4g)で表される。
S≦E+G-Q (4g)
【0093】
式(4g)は、スロッタ刃65の切断部の寸法Sが、段ボールシートSHにおいて前後の糊付け部GLに挟まれた段ボールシートSH1の後フラップ部分FL2と段ボールシートSH2の前フラップ部分FL1との合計寸法(E+G)に対して所定の余裕値Qを加算した長さ以下であれば、スロッタ刃65が糊付け部GLに対して溝切り加工を行わないことを意味している。余裕値Qは、スロッタ刃65が糊付け部GLに対して溝切り加工することを確実に抑制する観点から設定される余裕値(マージン)である。例えば、余裕値Qは10~20mmに設定される。
【0094】
上記の式(4g)より、スロッタ刃65の長さの超過判定を行うために用いられる制限値X43は、以下の式(4h)で表される。よって、本実施形態において、第4生産モードでのスロッタ刃65の長さの超過判定では、上述した式(4c)又は式(4d)及び式(4f)のそれぞれの制限値X41、X42を用いた判定に加えて、スロッタ刃65の切断部の寸法Sが式(4h)の制限値X43を超過しているか否かの判定が更に行われる。
X43=E+G-Q (4h)
【0095】
具体的には、本実施形態において、第4生産モードでは、スロッタ刃65の切断部の寸法Sが式(4c)又は式(4d)の制限値X41を超過している場合、スロッタ刃65の刃物長さLが式(4f)の制限値X42を超過している場合、及び、スロッタ刃65の切断部の寸法Sが式(4h)の制限値X43を超過している場合、のうちのいずれの場合に、スロッタ刃65が長過ぎると判定される。この場合、スロッタ刃65が長過ぎるとの判定結果がスロッタ表示装置104に表示される。これにより、作業者はスロッタ刃65の継刃などを取り外す必要があることを認識できる(なお、判定結果に加えて、スロッタ刃65の取り外しを行う必要がある旨も表示してもよい)。
【0096】
このような本実施形態によれば、第4生産モードにおいて、スロッタ刃65の長さに対する超過判定を的確に行うので、スロッタ刃65が長過ぎることにより、スロッタ装置6が搬送方向FDにおいて隣り合う2枚の段ボールシートSHを同時に切断すること、及び、固定刃65aと移動刃65bとが上部スロッタ63の外周上において干渉(接触)すること、並びに、スロッタ装置6が糊付け部GLを切断することを確実に防止できる。
【0097】
<スロッタ刃の長さの不足判定>
次に、本実施形態によるスロッタ刃65の長さの不足判定について説明する。本実施形態では、上記した超過判定に加えて、スロッタ刃65の長さが段ボールシートSHに対して溝切り加工を行うべき長さ(つまり前フラップ寸法E、後フラップ寸法G)に対して不足するか否かの判定が行われる。
【0098】
具体的には、スロッタ刃65の長さの不足判定は、切断部の寸法Sと、前フラップ寸法Eと、後フラップ寸法Gと、所定の余裕値Yとによって表された以下の式(5a)又は式(5b)を用いて行われる。余裕値Yは、1組のスロッタ刃65により切断できるフラップ寸法E、Gの許容値補正量であり、例えば10mm程度に設定される。式(5a)又は式(5b)の右辺より得られる値が、不足判定において用いられる制限値となる。なお、基本的には、前フラップ寸法Eと後フラップ寸法Gは等しいので、式(5a)と式(5b)のいずれを用いても制限値は同じ値となる。
S≧E+Y (5a)
S≧G+Y (5b)
【0099】
本実施形態では、切断部の寸法Sが式(5a)又は式(5b)で表された条件を満たす場合、つまり切断部の寸法Sが制限値以上である場合、スロッタ刃65の長さが不足していないと判定される。これに対して、切断部の寸法Sが制限値未満である場合、スロッタ刃65の長さが不足すると判定される。後者の場合には、スロッタ刃65の長さが不足するとの判定結果がスロッタ表示装置104に表示される。これにより、作業者はスロッタ刃65の継刃などを取り付ける必要があることを認識できる(なお、判定結果に加えて、スロッタ刃65の取り付けを行う必要がある旨も表示してもよい)。その結果、スロッタ刃65の長さの不足時に発生する加工不良を防止することができる。
【0100】
<スロッタ刃の着脱のための制御>
次に、本実施形態において、上記の超過判定又は不足判定においてスロッタ刃65の長さが超過する又は不足すると判定された場合に、作業者によるスロッタ刃65の着脱のために行われる制御について説明する。
【0101】
図10は、本実施形態において、スロッタ刃65の着脱のために行われる開動作制御を説明するための図を示す。図10(a)、(b)は、段ボールシート製函機1の複数の加工装置(給紙装置2、印刷ユニット4a~4c、クリーザ装置5、スロッタ装置6、ダイカッタ装置7)を概略的に示す正面図である。
【0102】
本実施形態では、次のオーダの生産を行うに当たって、スロッタ装置6に現在取り付けられているスロッタ刃65の長さが超過する又は不足すると判定された場合に、次のオーダの生産の前に(具体的には前のオーダが終了してから次のオーダが開始されるまでのオーダ変更時)、作業者にスロッタ刃65の着脱を行わせるために、スロッタ装置6と当該スロッタ装置6に隣接する加工装置(クリーザ装置5及び/又はダイカッタ装置7)との間隔を広げる開動作制御が行われる。こうすることで、オーダ変更時にスロッタ刃65の着脱作業を行うためのスペースを速やかに確保することができる。
【0103】
より具体的には、本実施形態では、印刷ユニット4a~4cの中で次のオーダの生産のために印版44を交換すべき印刷ユニットの数に応じて、換言すると開動作すべき印刷ユニットの数に応じて、スロッタ装置6とダイカッタ装置7との間隔のみを広げる開動作と、スロッタ装置6とダイカッタ装置7との間隔及びスロッタ装置6とクリーザ装置5との間隔の両方を広げる開動作と、が切り替えられる。これにより、印刷ユニット4a~4cにおける開動作の条件に合わせて、スロッタ装置6とこれに隣接する加工装置との間隔を最大限広げることができる。なお、上記のような開動作制御は、下位管理装置110からの制御指令情報に従って、開動作制御装置130によって移動機構132に対して行われるものである(図3参照)。
【0104】
図10(a)は、次のオーダの生産のために印刷ユニット4bのみ印版44を交換する必要がある場合、つまり1つの印刷ユニット4bの開動作のみを行う必要がある場合を示している(矢印A11)。この場合には、スロッタ装置6とダイカッタ装置7との間隔及びスロッタ装置6とクリーザ装置5との間隔の両方を同時に広げる開動作が行われる(矢印A12、A13)。これに対して、図10(b)は、次のオーダの生産のために印刷ユニット4b、4cの印版44を交換する必要がある場合、つまり2つの印刷ユニット4b、4cの開動作を行う必要がある場合を示している(矢印A21、A22)。この場合には、スロッタ装置6とダイカッタ装置7との間隔及びスロッタ装置6とクリーザ装置5との間隔の両方を同時に広げる開動作を行うことはできず、スロッタ装置6とダイカッタ装置7との間隔のみを広げる開動作が行われる(矢印A23)。すなわち、ダイカッタ装置7の打ち抜きダイ73を交換できるようにするために、スロッタ装置6とクリーザ装置5との間隔を広げる開動作に対して、スロッタ装置6とダイカッタ装置7との間隔を広げる開動作が優先される。なお、打ち抜きダイ73が交換された後に、スロッタ装置6とダイカッタ装置7との間隔が閉じられて、スロッタ装置6とクリーザ装置5との間隔を広げる開動作が行われる。
【0105】
ここで、上記のように印版44を交換すべき印刷ユニットの数に応じて開動作を切り替える必要がある理由について、例を挙げて説明する。具体的には、段ボールシート製函機1全体の最大の開き寸法が2400mmであり、1つの印刷ユニットの開き寸法が600mmであり、クリーザ装置5とスロッタ装置6との開き寸法が600mmであり、スロッタ装置6とダイカッタ装置7との開き寸法が800mmである場合を例に挙げる。印版44の交換を行う印刷ユニットが1ユニットである場合に、「開き寸法の合計=印刷ユニットの開き寸法+クリーザ装置とスロッタ装置との開き寸法+スロッタ装置とダイカッタ装置との開き寸法」を計算すると、「600×1+600+800」より2000mmとなる。この開き寸法の合計2000mmは、段ボールシート製函機1全体の最大の開き寸法2400mm未満となる。そのため、スロッタ装置6とダイカッタ装置7との間隔及びスロッタ装置6とクリーザ装置5との間隔の両方を同時に広げる開動作を行うことができる。これに対して、印版44の交換を行う印刷ユニットが2ユニットである場合、開き寸法の合計は「600×2+600+800」より2600mmとなる。この開き寸法の合計2600mmは、段ボールシート製函機1全体の最大の開き寸法2400mm以上となる。そのため、スロッタ装置6とダイカッタ装置7との間隔及びスロッタ装置6とクリーザ装置5との間隔の両方を同時に広げる開動作を行うことができない。
【0106】
次に、図11は、本実施形態において、スロッタ刃65の着脱のために行われるスロッタ刃65の周方向の位置決め制御を説明するための図を示す。図11は、本実施形態によるスロッタ装置6の第1及び第2スロッタユニット61、62を概略的に示す正面図である。
【0107】
本実施形態では、次のオーダの生産を行うに当たって、スロッタ装置6に現在取り付けられているスロッタ刃65の長さが超過する又は不足すると判定された場合に、次のオーダの生産の前に(具体的にはオーダ変更時)、スロッタ刃65の周方向の位置決め制御が行われる。具体的には、図11に示すように、上部スロッタ63のスロッタ刃65が下部スロッタ64のスロッタ刃66に係合しないように、スロッタ刃65の周方向の位置決め制御が行われる。これにより、作業者がスロッタ刃65に対する着脱作業を行い易くなる。好ましくは、第1及び第2スロッタユニット61、62のそれぞれのスロッタ刃65がスロッタ装置6において対向する両外側近傍の領域に位置し、且つスロッタ刃65が上向きになるように、スロッタ刃65の周方向の位置決め制御が行われる。なお、このような位置決め制御は、下位管理装置110からの制御指令情報に従って、スロッタ制御装置126によって行われるものである(図3参照)。
【0108】
また、更に好ましくは、このようなスロッタ刃65の周方向の位置決め制御を行うときに、上部スロッタ63と下部スロッタ64とから成る複数組のスロッタを、搬送方向FDに直交する方向(以下では適宜「ヨーク方向」と呼ぶ。)に等間隔に位置決めする制御も一緒に行うのがよい。これにより、スロッタ刃65の着脱作業を行うためのスペースを確保して、作業者がスロッタ刃65に対する着脱作業を更に行い易くなる。なお、スロッタ刃65の周方向の位置決め制御及び複数組のスロッタのヨーク方向の位置決め制御は、上述した開動作制御の前に行われる。
【0109】
<表示画面>
次に、本実施形態によるスロッタ刃65の長さの超過判定及び不足判定に応じて表示される画面について説明する。図12は、本実施形態によるスロッタ刃65の長さの超過判定及び不足判定に応じて、上位管理装置100に接続された表示装置102に表示される画面例を示している。
【0110】
まず、本実施形態では、上位管理装置100は、複数のオーダにより生産すべき箱寸法(フラップ寸法及び箱深さ寸法)、及び複数のオーダにおいて設定される生産モード(第1乃至第4生産モードのいずれか)に基づき、複数のオーダのそれぞれについて、スロッタ刃65の長さの超過判定及び不足判定の各々において適用される制限値を設定する(詳細は上述した「スロッタ刃の長さの超過判定」及び「スロッタ刃の長さの不足判定」のセクション参照)。そして、上位管理装置100は、スロッタ装置6に取り付けられる所定の基準刃及び継刃の組み合わせ(例えば事前に決定された所定の基準刃と所定の2枚の継刃との組み合わせ)により定まる長さを、スロッタ刃65の長さとして用いて、複数のオーダのそれぞれについて、スロッタ刃65の長さが制限値を超過しているか否かの判定(超過判定)、及びスロッタ刃65の長さが制限値に対して不足しているか否かの判定(不足判定)を行う。
【0111】
次に、上位管理装置100は、このような超過判定及び不足判定の結果に応じて、複数のオーダのそれぞれについて、所定の基準刃及び継刃の組み合わせに対して、基準刃及び/又は継刃の着脱の要否を更に判定し、この判定結果を複数のオーダのそれぞれに対応付けて表示装置102に一覧表示させる。上位管理装置100は、スロッタ刃65の長さが制限値を超過している場合には、所定の基準刃及び継刃の組み合わせに対して、基準刃及び/又は継刃を取り外す必要があると判定し、スロッタ刃65の長さが制限値に対して不足している場合には、所定の基準刃及び継刃の組み合わせに対して、基準刃及び/又は継刃を取り付ける必要があると判定する。これに対して、上位管理装置100は、スロッタ刃65の長さが制限値を超過しておらず、且つスロッタ刃65の長さが制限値に対して不足していない場合には、所定の基準刃及び継刃の組み合わせに対して、基準刃及び/又は継刃を着脱する必要がないと判定する。このような本実施形態によれば、複数のオーダのそれぞれについて、スロッタ刃65の長さに対する超過判定及び不足判定を的確に行うことができると共に、スロッタ刃65の着脱の要否判定を的確に行うことができる。
なお、上記のように基準刃及び/又は継刃を着脱する必要がないと判定した場合に、更に、基準刃及び/又は継刃の取り付け又は取り外しをいずれとしてもよいかを判定してもよい。例えば、所定のオーダの生産について、基準刃及び2つの継刃(継刃1、継刃2)の組み合わせから成るスロッタ刃65の長さが制限値を超過していない場合に、継刃2を取り外した基準刃及び継刃1の組み合わせから成るスロッタ刃65の長さが不足しないことを判定した場合に、継刃2の取り付け又は取り外しをいずれとしてもよいことを判定すればよい。
【0112】
図12では、4つの異なるオーダに対応付けて、第1及び第2スロッタユニット61、62の両方について、固定刃65a及び移動刃65bのそれぞれの基準刃及び2枚の継刃の着脱の要否が一覧表示されている。図12において、「基」は所定の基準刃を示し、「継1」は所定の2枚の継刃の一方を示し、「継2」は所定の2枚の継刃の他方を示している。また、「■」は所定の基準刃を取り付ける必要があることを示し、「●」は所定の継刃を取り付ける必要があることを示し、「-」は所定の基準刃、所定の継刃を取り外す必要があることを示し、「〇」は所定の継刃を着脱する必要がないことを示している(なお、図示していないが、所定の基準刃を着脱する必要がない場合には「□」が表示される)。図12に示すような表示画面によれば、作業者は、複数のオーダのそれぞれについて、スロッタ刃65の着脱の要否を、視覚を通じて容易に把握することができる。
【0113】
次に、図13は、本実施形態によるスロッタ刃65の長さの超過判定及び不足判定に応じて、スロッタ表示装置104に表示される画面例を示している。この表示画面は、基本的には、下位管理装置110の制御によりスロッタ表示装置104に表示される。図13の上に示すように、スロッタ表示装置104には、次のオーダに関して、所定の基準刃及び所定の2枚の継刃のそれぞれの着脱の要否が表示される。スロッタ表示装置104には、図12に示したような複数のオーダのそれぞれについて一覧表示された着脱の要否のうちで、次のオーダに対応するもののみが表示される。具体的には、第1及び第2スロッタユニット61、62の両方について、次のオーダにおける固定刃65a及び移動刃65bのそれぞれの基準刃及び2枚の継刃1、2の着脱の要否が表示されている。図13において、「必須」にマークされている場合は、基準刃、継刃1、継刃2を取り付ける必要があることを示し、「可能」にマークされている場合は、基準刃、継刃1、継刃2を取り付ける必要がないことを示す(換言すると、基準刃、継刃1、継刃2を取り付けてもよいし、又は取り外してもよいことを示す)。また、「必須」及び「可能」のいずれにもマークされていない場合は、基準刃、継刃1、継刃2を取り外す必要があることを示す。
【0114】
更に、図13の下に示すように、スロッタ表示装置104には、スロッタ装置6に現在に取り付けられているスロッタ刃65に関して、次のオーダの生産のために着脱する必要があるか否かの判定結果が表示される。図13では、第1スロッタユニット61の固定刃65aの継刃1を取り外す必要があること、及び、第2スロッタユニット62の移動刃65bの基準刃及び継刃1を取り外す必要があることが警告表示される例を示している。作業者は、この警告表示を確認して、現在取り付けられているスロッタ刃65の着脱作業を確実に行うことができる。
【0115】
<フローチャート>
次に、図14A、14Bを参照して、本実施形態において、上述した判定や制御などの処理の流れについて具体的に説明する。図14A、14Bは、本実施形態による制御処理を示すフローチャートである。この制御処理は、上位管理装置100と下位管理装置110によって実行される。
【0116】
まず、ステップS101において、下位管理装置110は、スロッタ装置6に取り付けられる所定の基準刃及び継刃に関する情報を、上位管理装置100に送信する。具体的には、下位管理装置110は、所定の全ての基準刃及び継刃の長さの情報、つまり切断部の寸法Sや刃物長さLの情報を、上位管理装置100に送信する。例えば、下位管理装置110は、事前に決定された所定の基準刃と所定の2枚の継刃との組み合わせについての長さの情報を送信する。
【0117】
次いで、ステップS102において、上位管理装置100は、記憶している複数のオーダ情報(生産管理計画)に基づき、複数のオーダのそれぞれについて、所定の基準刃及び継刃の組み合わせに対して、基準刃及び/又は継刃の着脱の要否を判定する。この場合、まず、複数のオーダにより生産すべき箱寸法(フラップ寸法及び箱深さ寸法)、及び複数のオーダにおいて設定される生産モード(第1乃至第4生産モードのいずれか)に基づき、複数のオーダのそれぞれについて、スロッタ刃65の長さの超過判定及び不足判定の各々において適用される制限値を設定する。そして、上位管理装置100は、ステップS101で取得された所定の基準刃及び継刃の長さ、つまりスロッタ装置6に取り付けられる所定の基準刃及び継刃の組み合わせにより定まる長さを、スロッタ刃65の長さとして用いて、複数のオーダのそれぞれについて、このスロッタ刃65の長さが制限値を超過しているか否かの判定(超過判定)、及びスロッタ刃65の長さが制限値に対して不足しているか否かの判定(不足判定)を行う。そして、上位管理装置100は、このような超過判定及び不足判定の結果に応じて、複数のオーダのそれぞれについて、所定の基準刃及び継刃の組み合わせに対して、基準刃及び/又は継刃の着脱の要否を判定する。また、上位管理装置100は、この判定結果を複数のオーダのそれぞれに対応付けて表示装置102に一覧表示させる(図12参照)。
【0118】
次いで、ステップS103において、下位管理装置110は、オーダ変更するか否かを判定する。具体的には、下位管理装置110は、上位管理装置100からのオーダ変更指示信号の受信の有無に基づき、オーダ変更するか否かを判定する。オーダ変更する場合(ステップS103:Yes)、ステップS104に進む。これに対して、オーダ変更しない場合(ステップS103:No)、下位管理装置110は、ステップS103の判定を繰り返す。
【0119】
次いで、ステップS104において、上位管理装置100は、ステップS102で得られた複数のオーダのスロッタ刃65の着脱要否の判定結果のうちで、次のオーダに対応する着脱要否の判定結果の情報(着脱要否情報)を、下位管理装置110に送信する。
【0120】
次いで、ステップS105において、下位管理装置110は、ステップS104で上位管理装置100から送信された次のオーダの着脱要否情報と、スロッタ装置6に現在取り付けられているスロッタ刃65に関する状況、つまり現在の基準刃及び/又は継刃の取り付け状況とを比較する。そして、ステップS106において、下位管理装置110は、この比較結果より、次のオーダの生産のために、現在の基準刃及び/又は継刃を着脱する必要がないか否かを判定する。
【0121】
ステップS106において、現在の基準刃及び/又は継刃を着脱する必要がないと判定された場合(ステップS106:Yes)、ステップS107に進み、下位管理装置110は、次のオーダのために、第1及び第2スロッタユニット61、62のそれぞれの固定刃65a及び/又は移動刃65bの位置決め制御を、スロッタ制御装置126を介して行う。
【0122】
一方、現在の基準刃及び/又は継刃を着脱する必要があると判定された場合(ステップS106:No)、ステップS108に進み、下位管理装置110は、スロッタ刃65の着脱指示をスロッタ表示装置104に表示させる(例えば図13参照)。具体的には、下位管理装置110は、第1及び第2スロッタユニット61、62のそれぞれの固定刃65a及び/又は移動刃65bについて、該当する基準刃及び/又は継刃を取り外す必要があること及び/又は取り付ける必要があることを警告表示させる。
【0123】
次いで、ステップS109において、下位管理装置110は、上部スロッタ63と下部スロッタ64とから成る複数組のスロッタをヨーク方向(搬送方向FDに直交する方向)に等間隔に位置決めする制御を、スロッタ制御装置126を介して行う。次いで、ステップS110において、下位管理装置110は、スロッタ刃65の周方向の位置決め制御を、スロッタ制御装置126を介して行う。具体的には、下位管理装置110は、上部スロッタ63のスロッタ刃65が下部スロッタ64のスロッタ刃66と係合せず、且つ、第1及び第2スロッタユニット61、62のそれぞれのスロッタ刃65がスロッタ装置6において対向する両外側近傍の領域に位置するように、スロッタ刃65の周方向の位置決め制御を行う(図11参照)。
【0124】
上記のステップS108~S110と並行して、下位管理装置110は、ステップS111において、印刷ユニット4a~4cの中で次のオーダの生産のために印版44を交換すべき印刷ユニットの数に応じて、換言すると開動作すべき印刷ユニットの数に応じて、スロッタ装置6とダイカッタ装置7との間隔のみを広げる開動作と、スロッタ装置6とダイカッタ装置7との間隔及びスロッタ装置6とクリーザ装置5との間隔の両方を広げる開動作と、のうちのいずれを行うかを決定する。例えば、下位管理装置110は、印版44を交換すべき印刷ユニットの数が2つ以上である場合には、スロッタ装置6とダイカッタ装置7との間隔のみを広げる開動作を行うと決定し、印版44を交換すべき印刷ユニットの数が1つである場合には、スロッタ装置6とダイカッタ装置7との間隔及びスロッタ装置6とクリーザ装置5との間隔の両方を広げる開動作を行うと決定する。
【0125】
次いで、ステップS112において、下位管理装置110は、作業者によって自動開ボタン107が押下されたか否かを判定する。自動開ボタン107が押下された場合(ステップS112:Yes)、ステップS113に進む。この場合には、下位管理装置110は、ステップS111の判定結果に応じて、各加工装置の開動作を行う。具体的には、下位管理装置110は、印刷ユニット4a~4cの中で印版44を交換すべき印刷ユニットのための開動作を行うと共に、スロッタ装置6とダイカッタ装置7との間隔及びスロッタ装置6とクリーザ装置5との間隔の両方を広げる開動作(図10(a)参照)、又は、スロッタ装置6とダイカッタ装置7との間隔のみを広げる開動作(図10(b)参照)を行う。このような開動作の後、作業者は、スロッタ表示装置104に表示されたスロッタ刃65の着脱指示に従って(ステップS108)、スロッタ刃65を着脱する作業を行う。そして、作業者は、着脱したスロッタ刃65の情報、つまりスロッタ装置6に現在取り付けられているスロッタ刃65の情報(例えばスロッタ刃65の長さ(基準刃及び継刃の寸法)など)を、スロッタ操作パネル106に入力する。他方で、自動開ボタン107が押下されていない場合(ステップS112:No)、下位管理装置110は、ステップS112の判定を繰り返す。
【0126】
次いで、ステップS114において、下位管理装置110は、上記のように作業者がスロッタ操作パネル106に入力したスロッタ刃65の情報を記憶する。そして、ステップS115において、下位管理装置110は、作業者の手動のスイッチ操作に基づいて、ステップS113で開動作を行った加工装置を元に戻す動作(つまり閉動作)を行う。
【0127】
次いで、ステップS116において、下位管理装置110は、作業者によって刃物着脱完了ボタン108が押下されたか否かを判定する。刃物着脱完了ボタン108が押下された場合(ステップS116:Yes)、ステップS117に進み、下位管理装置110は、次のオーダのために、第1及び第2スロッタユニット61、62のそれぞれの固定刃65a及び/又は移動刃65bの位置決め制御を、スロッタ制御装置126を介して行う。これに対して、刃物着脱完了ボタン108が押下されていない場合(ステップS116:No)、下位管理装置110は、ステップS116の判定を繰り返す。
【0128】
なお、上述したフローチャートでは、上位管理装置100は、複数のオーダのそれぞれについてスロッタ刃65の着脱要否を判定し(ステップS102)、下位管理装置110は、この上位管理装置100から送信される複数のオーダの着脱要否の判定結果のうちで次のオーダに対応する着脱要否の判定結果を用いて、次のオーダのための現在のスロッタ刃65の着脱要否を判定していた(ステップS105、S106)。変形例では、下位管理装置110は、上位管理装置100による複数のオーダの着脱要否の判定結果を用いずに、次のオーダの箱寸法や生産モードなどに基づき、現在のスロッタ刃65の長さに対する超過判定及び不足判定を行って、次のオーダのための現在のスロッタ刃65の着脱要否を判定してもよい。
【0129】
図15A、15Bは、このような本実施形態の変形例による制御処理を示すフローチャートである。この制御処理が開始されると、まず、ステップS201において、下位管理装置110は、オーダ変更するか否かを判定する。その結果、オーダ変更する場合(ステップS201:Yes)、ステップS202に進み、オーダ変更しない場合(ステップS201:No)、ステップS201の判定を繰り返す。
【0130】
次いで、ステップS202において、上位管理装置100は、記憶している複数のオーダ情報(生産管理計画)の中から、次のオーダの情報を下位管理装置110に送信する。具体的には、上位管理装置100は、次のオーダにより生産すべき箱寸法(フラップ寸法及び箱深さ寸法)、及び次のオーダにおいて設定される生産モード(第1乃至第4生産モードのいずれか)を含む情報を、下位管理装置110に送信する。
【0131】
次いで、ステップS203において、下位管理装置110は、ステップS202で送信された次のオーダの情報と、現在のスロッタ刃65の取り付け状況に基づき、現在のスロッタ刃65の着脱要否を判定する。具体的には、下位管理装置110は、まず、次のオーダの箱寸法(フラップ寸法及び箱深さ寸法)及び生産モード(第1乃至第4生産モードのいずれか)に基づき、スロッタ刃65の長さの超過判定及び不足判定のそれぞれにおいて適用される制限値を設定する。そして、下位管理装置110は、現在取り付けられているスロッタ刃65の長さが制限値を超過しているか否かの判定(超過判定)、及び、現在取り付けられているスロッタ刃65の長さが制限値に対して不足しているか否かの判定(不足判定)を行う。そして、下位管理装置110は、このような超過判定及び不足判定の結果に応じて、現在取り付けられているスロッタ刃65の着脱の要否を判定する、つまり現在取り付けられている基準刃及び/又は継刃の着脱の要否を判定する。
【0132】
ステップS203の後、下位管理装置110は、現在の基準刃及び/又は継刃を着脱する必要がないと判定された場合(ステップS204:Yes)、ステップS205に進み、現在の基準刃及び/又は継刃を着脱する必要があると判定された場合(ステップS204:No)、ステップS206に進む。ステップS205~S215は、それぞれ、上述したステップS107~S117と同様であるため、その説明を省略する。
【0133】
<作用及び効果>
次に、上記した本実施形態による段ボールシート製函機1の主な作用及び効果について説明する。
【0134】
本実施形態によれば、上部スロッタ63の周長と、段ボールシート製函機1により生産すべき箱の寸法と、生産すべき箱に応じてスロッタ装置6を動作させるために設定すべき生産モードと、から定まる所定条件を満たすためのスロッタ刃65の長さの制限値を設定し、スロッタ装置6に取り付けられる所定のスロッタ刃65の長さが制限値を超過しているか否かを判定する。これにより、スロッタ刃65の長さに対する超過判定を所定条件に基づき的確に行うことで、スロッタ刃65の長さの超過時に発生する問題を防止することができる。
【0135】
特に、本実施形態によれば、スロッタ装置6が搬送方向FDにおいて隣り合う2枚の段ボールシートSHに対して同時に溝切り加工を行わないという条件を所定条件として用いて、超過判定のための制限値を設定する。これにより、スロッタ刃65が長過ぎることで、スロッタ装置6が搬送方向FDにおいて隣り合う2枚の段ボールシートSHを同時に切断することを確実に防止できる。
【0136】
また、本実施形態によれば、上部スロッタ63が1回転する間に2枚の段ボールシートSHが送り込まれて、この2枚の段ボールシートSHに対する溝切り加工を第1及び第2スロッタユニット61、62のそれぞれによって行う第3又は第4生産モード(2アップ生産のためのシングルスロッタモード)において、固定刃65aと移動刃65bとが上部スロッタ63の外周上において干渉しないという条件を所定条件として用いて、超過判定のための制限値を設定する。これにより、第3又は第4生産モードにおいて、スロッタ刃65が長過ぎることで、固定刃65aと移動刃65bとが上部スロッタ63の外周上において干渉(つまり接触)することを確実に防止できる。
【0137】
また、本実施形態によれば、ダイカッタ装置7により前後に切断される前の、2枚の段ボールシートSH1、SH2が繋がった状態にある1枚の段ボールシートSHが、上部スロッタ63が1回転する間に送り込まれて、この段ボールシートSHに対する溝切り加工を第1及び第2スロッタユニット61、62の両方によって行う第4生産モードにおいて、スロッタ装置6が糊付け部GLに対して溝切り加工を行わないという条件を所定条件として用いて、超過判定のための制限値を設定する。これにより、第4生産モードにおいて、スロッタ刃65が長過ぎることで、スロッタ装置6が糊付け部GLを切断することを確実に防止できる。
【符号の説明】
【0138】
1 段ボールシート製函機
2 給紙装置
4 印刷装置
4a、4b、4c 印刷ユニット
5 クリーザ装置
6 スロッタ装置
7 ダイカッタ装置
61 第1スロッタユニット
62 第2スロッタユニット
63 上部スロッタ
64 下部スロッタ
65 スロッタ刃
65a 固定スロッタ刃(固定刃)
65b 移動スロッタ刃(移動刃)
69 位置センサ
100 上位管理装置
102 表示装置
104 スロッタ表示装置
106 スロッタ操作パネル
107 自動開ボタン
108 刃物着脱完了ボタン
110 下位管理装置
126 スロッタ制御装置
130 開動作制御装置
132 移動機構
FL1 前フラップ部分
FL2 後フラップ部分
GL 糊付け部
SH、SH1、SH2 段ボールシート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14A
図14B
図15A
図15B