(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】ぼかしミラー
(51)【国際特許分類】
G02B 5/08 20060101AFI20241004BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20241004BHJP
D03D 1/00 20060101ALI20241004BHJP
D04B 21/00 20060101ALI20241004BHJP
D04B 1/00 20060101ALI20241004BHJP
G02B 5/10 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
G02B5/08 A
B32B15/08 E
D03D1/00 Z
D04B21/00 A
D04B1/00 A
G02B5/10 A
(21)【出願番号】P 2021015120
(22)【出願日】2021-02-02
【審査請求日】2023-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】390010526
【氏名又は名称】コミー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】植木 あゆみ
(72)【発明者】
【氏名】後関 実
【審査官】植野 孝郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-201621(JP,A)
【文献】特開平1-112203(JP,A)
【文献】特開2018-54813(JP,A)
【文献】登録実用新案第3154560(JP,U)
【文献】特開2001-46200(JP,A)
【文献】国際公開第2018/198357(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/00- 5/136
D03D 1/00
D04B 1/00
D04B21/00
B32B 1/00-43/00
C03C 3/16- 3/21
A63H 1/00-37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明プラスチックからなる基板の一方の面に金属膜からなる反射層を積層し、前記基板の他方の面を前記反射層が透視可能な鏡面にした構成からなるミラーであって、前記鏡面に多数の凸部と凹部とが交互に周期的に配列した凹凸模様からなる粗面を形成して
おり、
前記凹凸模様に分布する前記凹部の密度が9000~42000個/100cm
2
であるぼかしミラー。
【請求項2】
前記ミラーが凸面鏡機能を有するフレネルミラーである請求項1に記載のぼかしミラー。
【請求項3】
前記多数の凸部と凹部とが交互に周期的に配列した凹凸模様が織物組織又は編物組織の転写模様からなる請求項1又は2に記載のぼかしミラー。
【請求項4】
前記織物組織が平織又は綾織である請求項3に記載のぼかしミラー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はぼかしミラーに関し、さらに詳しくは、死角にいる人物を明確に特定することは出来ないが、その存在だけを確認可能にするぼかしミラーに関する。
【背景技術】
【0002】
T字路のような通路が交差する場所での通行人同士の衝突事故を防止するため、店舗における万引きを防止するため、機械式立体駐車装置における起動時の安全確認のため、或いは、エレベータのような密室に互いに面識の無い人同士が乗り合わせる場合の防犯のためなどに、従来からミラーを死角確認位置に設置することが行われている。特許文献1、2、3には、こうしたミラーの一例が記載されている。
【0003】
ミラーは、姿見など自分の姿を映すために使用されるものの場合は、プライバシーへの配慮が必要となることはほとんどない。しかし、死角などに居る不特定多数の人を映すために設置されるミラーに関しては、プライバシーへの配慮が必要となることがある。例えば、駅のトイレやホテルのトイレなどの出入口に内部確認用のミラーを設置すると、そのミラーを介して外部から内部の様子が明瞭に見えるようになるため、プライバシー保護上の問題が生ずる。しかし。このように不特定多数の人が出入りする場所では、人同士の衝突、盗撮や覗き見などの犯罪、その他多くののトラブルが起こりやすい問題があるため、死角確認用のミラーを設置する必要性との間でジレンマを生じているのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-248912号公報
【文献】特開2020-041331号公報
【文献】特開2020-109428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上述した従来技術の問題を解決することを課題とし、死角にいる人の存在の確認を可能にするが、それを不鮮明なぼかし映像による確認にすることにより、プライバシーの保護との両立を可能にしたぼかしミラーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成する本発明のぼかしミラーは、透明プラスチックからなる基板の一方の面に金属膜からなる反射層を積層し、前記基板の他方の面を前記反射層が透視可能な鏡面にした構成からなるミラーであって、前記鏡面に多数の凸部と凹部とが交互に周期的に配列した凹凸模様からなる粗面を形成していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のぼかしミラーによれば、鏡面が多数の凸部と凹部が交互に周期的に配列する凹凸模様の粗面で形成されているので、鏡面に侵入した被写体からの入射光は、凸部に入射した光と凹部に入射した光との間の位相変化などを生じ、さらに反射層で反射して再び鏡面から出射するとき同様の位相変化をするため、鏡面の映像がぼかされた状態になる。したがって、被写体の特定が不可能であるから、被写体のプライバシーを守りながら、その存在のみの確認を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施態様に係るぼかしミラーの概略縦断面図である。
【
図2】本発明のぼかしミラーの鏡面における織物組織の凹凸模様を例示する拡大写真である。
【
図3】本発明のぼかしミラーの鏡面における織物組織の凹凸模様の他の例を示す拡大写真である。
【
図4】本発明のぼかしミラーの鏡面における織物組織の凹凸模様の他の例を示す拡大写真である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施態様について説明するが、本発明は以下の態様に限定されず、特許請求の範囲の精神及び範囲から逸脱しない任意の改変が本発明に包含されることが意図される。図面において、同一の符号が付された要素は、同様の構成又は機能を有することが意図される。
【0010】
図1は、本発明の実施態様に係るぼかしミラーMの概略縦断面図である。ミラーMは、基板1が透明なプラスチックから構成されている。その基板1の裏面側に金属膜からなる反射層2が積層され、さらに反射層2に保護層4が被覆され、反射層2の酸化劣化を防止するようになっている。一方、基板1の表面側は、反射層2が視認可能な鏡面5を構成している。
【0011】
上記ミラーの構成において、基板1の裏面は多数の径及び傾斜角が順次異なる多数のV字状断面の環状溝3が中心Cの周りに同心円状に配列するように形成され、かつこれら環状溝3に反射層2が積層されている。このように多段の環状溝3に反射層2が積層されたことにより、凸面鏡機能を有するフレネルミラーが構成され、平面形状でありながら凸面鏡と同等の視野が拡大した機能を具備している。
【0012】
なお、
図1では、理解を容易にするため、多段の環状溝3の傾斜面が粗いピッチで示されているが、実際には、1mm幅当たり、典型的には2~10段程度の高い密度で形成されている。また、基板1の素材の透明プラスチックとしては、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂等が例示される。反射層2の素材の金属としては、アルミニウム、銀、クロム、スズ等の金属及びこれら金属の合金又は酸化物等を例示することができる。好ましくはアルミニウム及びこれを含む合金がよい。金属膜の形成方法は、めっき、蒸着、スパッタ、イオンプレーティング等の方法によるのがよい。金属膜からなる反射層2の保護層4には、一般的にはアルキッド樹脂などが原料の塗料が使用される
【0013】
上記ミラーMにおいて、鏡面5には多数の凸部6と凹部7とが交互に一定の周期的な配列をなす凹凸模様の粗面が形成されている。かつ、その凸部6と凹部7の周期的な配列は、鏡面5のほぼ全面にわたり縦方向及び横方向に複数列に及んでいる。したがって、被写体から鏡面5に入射した光は、凸部6から入射した光と凹部7から入射した光との間で位相変化を生じ、さらに反射層2で反射して再び鏡面5から出射するとき、同様の位相変化をするため、鏡面5の映像がぼかされた状態になる。したがって、ミラーMをトイレ等の出入口などに設置した場合、死角の人物の存在は認識可能であるが、特定は不可能であるから、死角の人物のプライバシーを守りながら、その存在のみの確認を可能にする。
【0014】
本発明において、多数の凸部6と凹部7が一定の周期的に配列した凹凸模様の好ましい例としては、織物組織又は編物組織の転写模様を挙げることができる。特に織物組織の転写模様では、平織又は綾織の転写模様が好ましく、縦糸と横糸との交点が凸部を形成し、縦糸と横糸との交点同士の間に凹部を形成する。これら織物組織又は編物組織の転写模様は、ガラス繊維やアラミド繊維など耐熱性に優れた繊維で織物又は編物を作成し、必要によりフッ素樹脂などの耐熱樹脂を含侵させて作った型をミラーの成形型に使用すれば転写することができる。
【0015】
図2、
図3および
図4は、それぞれミラーMの鏡面5に平織の織物組織を転写した凹凸模様を例示している。縦糸と横糸との交点が凸部6を形成し、これら多数の交点6が縦方向と横方向に列状に配列しており、かつ互いに隣接する交点6と交点6との間に凹部7が形成されている。これらの鏡面5に分布する10cm四方(100cm
2)の面積当たりの凹部7(シボ)の密度としては、9000~42000個/100cm
2が好ましく、さらに好ましくは9500~40000個/100cm
2であるのがよい。
図2の凹凸模様の凹部の密度は23062個/100cm
2であって、映像は見え過ぎない程度に適度にぼけており、また
図3の凹凸模様の密度は41500個/100cm
2であり、
図4の凹凸模様の密度は9417個/100cm
2であったが、いずれも映像が微かに確認可能であったものの、ぼけの程度がかなり進んでいた。
【0016】
本発明のぼかしミラーは、不特定多数の人が利用する駅、量販店、役所、学校、病院、介護施設などのトイレの出入口に死角確認用として利用することができる。また、不特定多数の人が利用する乗物の壁面などにも、映る人との目が合うことなどで起きるトラブル防止用として利用することもできる。
【符号の説明】
【0017】
1 基板
2 反射層
4 保護層
5 鏡面
6 凸部
7 凹部
M ぼかしミラー