(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】無線送受信システム
(51)【国際特許分類】
H04B 7/06 20060101AFI20241004BHJP
H04B 1/04 20060101ALI20241004BHJP
H04B 7/08 20060101ALI20241004BHJP
H04N 23/60 20230101ALI20241004BHJP
【FI】
H04B7/06 950
H04B1/04 E
H04B7/08 800
H04N23/60 300
(21)【出願番号】P 2021180272
(22)【出願日】2021-11-04
【審査請求日】2022-10-03
【審判番号】
【審判請求日】2024-01-15
(73)【特許権者】
【識別番号】399011195
【氏名又は名称】ザインエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100110582
【氏名又は名称】柴田 昌聰
(74)【代理人】
【識別番号】100223424
【氏名又は名称】和田 雄二
(74)【代理人】
【識別番号】100165526
【氏名又は名称】阿部 寛
(72)【発明者】
【氏名】坂井 智洋
(72)【発明者】
【氏名】久保 俊一
(72)【発明者】
【氏名】三浦 賢
【合議体】
【審判長】高野 洋
【審判官】馬場 慎
【審判官】丸山 高政
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-48119(JP,A)
【文献】特開2011-41211(JP,A)
【文献】特開2011-82876(JP,A)
【文献】特開2011-151722(JP,A)
【文献】特表2020-533889(JP,A)
【文献】特表2014-531852(JP,A)
【文献】特開2005-72780(JP,A)
【文献】特開2020-5183(JP,A)
【文献】特開2013-51570(JP,A)
【文献】特開2002-262166(JP,A)
【文献】三浦 周,藤野義之,高機能アンテナ,情報通信研究機構研究報告,2014年,Vol.60.No.1,pp.67-72
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/06
H04B 1/04
H04B 7/08
H04N 23/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号を送信する無線送信器と、前記無線送信器から送信された信号を受信する無線受信器と、を備え、
前記無線送信器から前記無線受信器へ映像情報を含む信号を送信するゲームシステムとしての無線送受信システムであって、
前記無線送信器は、ビームフォーミングを利用することで送信ビーム方向の制御が可能であり信号を送信する第1アクティブアレイアンテナと、前記無線受信器を含む範囲を撮像する第1撮像部と、前記第1撮像部により撮像されて取得された画像における前記無線受信器の位置に基づいて前記第1アクティブアレイアンテナの送信ビーム方向を前記無線受信器へ向ける第1制御部と、を含み、
前記第1制御部は、前記第1撮像部の撮像により得られた画像の取得と、その取得した画像における前記無線受信器の位置の検出と、その検出した前記無線受信器の位置に基づく前記第1アクティブアレイアンテナの送信ビーム方向の制御と、を繰り返してリアルタイムに行い、
前記無線受信器は、ビームフォーミングを利用することで受信ビーム方向の制御が可能であり信号を受信する第2アクティブアレイアンテナと、前記無線送信器を含む範囲を撮像する第2撮像部と、前記第2撮像部により撮像されて取得された画像における前記無線送信器の位置に基づいて前記第2アクティブアレイアンテナの受信ビーム方向を前記無線送信器へ向ける第2制御部と、を含
み、
前記第2制御部は、前記第2撮像部の撮像により得られた画像の取得と、その取得した画像における前記無線送信器の位置の検出と、その検出した前記無線送信器の位置に基づく前記第2アクティブアレイアンテナの受信ビーム方向の制御と、を繰り返してリアルタイムに行う、
無線送受信システム。
【請求項2】
前記無線送信器は第1マーカが付されており、
前記無線受信器の第2制御部は、前記第2撮像部により撮像されて取得された画像における前記第1マーカの位置に基づいて前記第2アクティブアレイアンテナの受信ビーム方向を前記無線送信器へ向ける、
請求項1に記載の無線送受信システム。
【請求項3】
前記無線受信器は第2マーカが付されており、
前記無線送信器の第1制御部は、前記第1撮像部により撮像されて取得された画像における前記第2マーカの位置に基づいて前記第1アクティブアレイアンテナの送信ビーム方向を前記無線受信器へ向ける、
請求項1または2に記載の無線送受信システム。
【請求項4】
前記無線送信器は、前記無線受信器までの距離を測定する第1測距部を更に含み、前記第1制御部は、前記第1測距部による距離測定値に基づいて前記第1アクティブアレイアンテナの送信パワーを調整する、
請求項1~3の何れか1項に記載の無線送受信システム。
【請求項5】
前記無線受信器は、前記無線送信器までの距離を測定する第2測距部を更に含み、前記第2制御部は、前記第2測距部による距離測定値に基づいて前記第2アクティブアレイアンテナの受信感度を調整する、
請求項1~4の何れか1項に記載の無線送受信システム。
【請求項6】
前記無線送信器は前記無線受信器へ非圧縮の信号を送信する、
請求項1~
5の何れか1項に記載の無線送受信システム。
【請求項7】
前記無線送信器および前記無線受信器の双方または何れか一方の位置または方位が不定である、
請求項1~
6の何れか1項に記載の無線送受信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線送受信システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
無線送受信システムは、信号送信用のアンテナを有する無線送信器と、信号受信用のアンテナを有する無線受信器との間で、各々のアンテナを介して無線により信号を送受信するものである。無線送信器として用いられる機器として、例えば、アウトサイドインシステムで用いられるカメラ、ウェアラブルカメラ、ノートパソコンやスマートフォンなどのモバイル装置、映像再生装置、等が挙げられる。また、無線受信器として用いられる機器として、例えば、ヘッドマウントディスプレイ(Head Mount Display、HMD)、モニタ装置、ノートパソコンやスマートフォンなどのモバイル装置、スマートグラス(ARグラス)、等が挙げられる。
【0003】
無線送信器または無線受信器として用いられる機器は、上記の例に限られない。以下では、無線送受信システムとして、無線送信器としてのアウトサイドインカメラ(以下では単に「カメラ」という場合がある。)および無線受信器としてのHMDを備えるゲームシステムについて説明する。
【0004】
HMDを用いたゲームとして一人称型ゲームおよびミラー型ゲームがある。一人称型ゲームとは、プレイヤーキャラクター自身の目に映るグラフィック視点でプレイするゲームであり、例えば、キックボクシング、サッカーおよび野球ゲームなどがある。一人称型ゲームでは、HMDを装着した人物の挙動がゲーム中に反映される。これに対して、ミラー型ゲームとは、プレイヤーキャラクター自身を撮影した映像をゲーム中に反映させるゲームであり、例えばダンスゲームおよび着せ替えゲームなどがある。ミラー型ゲームでは、HMDを装着した人物の挙動がゲーム中に反映され、或いは、HMDを装着した人物を撮像した映像がゲーム中に表示される。
【0005】
HMDを用いたゲームシステムには、インサイドアウトシステムとアウトサイドインシステムとがある。インサイドアウトシステムは、HMDに設けられたカメラで撮像した映像を該HMDのディスプレイに表示する。インサイドアウトシステムは、アウトサイドインシステムに比べて、無線による信号の送受信が不要である点で設備が簡便であるが、HMDのカメラで周囲を撮像するという構造上、死角ができやすく、カメラの死角部の情報をとらえることが困難または不可能である。
【0006】
これに対して、アウトサイドインシステムは、HMDから死角になる人物自らの体の動き情報を使うことができる。アウトサイドインシステムは、例えば、キックボクシングなどでは足の動き情報を使い、着せ替えゲームでは背中側の動き情報を使う。アウトサイドインシステムでは、HMDとは別に離れた位置に設けられた1台または複数台のカメラは、HMDを装着した人物を撮像または挙動検出を行い、得られた撮像データまたは動きデータの信号をHMDへ無線により送信する。カメラから送信された信号を受信したHMDは、その信号に基づいて映像をHMDのディスプレイに表示する。
【0007】
上記の例のような無線送受信システムにおいて、無線送信器から無線により送信された信号を無線受信器が確実に受信することが重要である。このことを目的とした発明が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2013-51570号公報
【文献】特許第4689758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に開示された発明は、上記のような無線送受信システムにおいて限られた場面または用途では所期の目的を達成することができる。しかし、例えば、無線送信器と無線受信器との間の距離が長い場合、無線送信器から無線受信器へ無線により大容量の情報を高速に送る必要がある場合、無線送信器側の多眼カメラなどで取得した高解像度の映像を無線受信器側のディスプレイにおいてプレイヤーに違和感を与えないよう低レイテンシで表示させる必要がある場合、等においては、無線送信機と無線受信器との双方のアンテナゲインが高くかつ常に対向した状態もしくはそれに近い状態を保持しての継続的な高速通信が求められることが考えられるが、特許文献1に開示された発明の適用はアンテナゲインや周波数帯域の点から困難である。
【0010】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、様々な場面または用途においても無線送信器から無線により送信された信号を無線受信器が確実に受信することができる無線送受信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の無線送受信システムは、信号を送信する無線送信器と、無線送信器から送信された信号を受信する無線受信器と、を備える。無線送信器は、送信ビーム方向の制御が可能であり信号を送信する第1アンテナと、無線受信器を含む範囲を撮像する第1撮像部と、第1撮像部により撮像されて取得された画像における無線受信器の位置に基づいて第1アンテナの送信ビーム方向を無線受信器へ向ける第1制御部と、を含む。無線受信器は、受信ビーム方向の制御が可能であり信号を受信する第2アンテナと、無線送信器を含む範囲を撮像する第2撮像部と、第2撮像部により撮像されて取得された画像における無線送信器の位置に基づいて第2アンテナの受信ビーム方向を無線送信器へ向ける第2制御部と、を含む。
【0012】
無線送信器は第1マーカが付されているのが好適であり、この場合、無線受信器の第2制御部は、第2撮像部により撮像されて取得された画像における第1マーカの位置に基づいて第2アンテナの受信ビーム方向を無線送信器へ向けるのが好適である。また、無線受信器は第2マーカが付されているのが好適であり、この場合、無線送信器の第1制御部は、第1撮像部により撮像されて取得された画像における第2マーカの位置に基づいて第1アンテナの送信ビーム方向を無線受信器へ向けるのが好適である。
【0013】
無線送信器は、無線受信器までの距離を測定する第1測距部を更に含み、第1制御部は、第1測距部による距離測定値に基づいて第1アンテナの送信パワーを調整するのが好適である。また、無線受信器は、無線送信器までの距離を測定する第2測距部を更に含み、第2制御部は、第2測距部による距離測定値に基づいて第2アンテナの受信感度を調整するのが好適である。
【0014】
無線送信器は無線受信器へ映像情報を含む信号を送信するのが好適である。無線送信器は無線受信器へ非圧縮の信号を送信するのが好適である。無線送信器および無線受信器の双方または何れか一方の位置または方位は不定であってもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、様々な場面または用途においても、無線送信器から無線により送信された信号を無線受信器が確実に受信することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、無線送受信システム1の構成を示す図である。
【
図2】
図2は、HMDを含む範囲を撮像して得られた画像におけるHMDの位置を検出する方法について説明する図である。
【
図3】
図3は、無線送信器10の制御部19の動作を説明するフローチャートである。
【
図4】
図4は、無線受信器20の制御部29の動作を説明するフローチャートである。
【
図5】
図5は、無線送受信システム1Aの構成を示す図である。
【
図6】
図6は、無線送受信システム1Bの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。本発明は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0018】
無線送受信システムとして、無線送信器としてのカメラおよび無線受信器としてのHMDを備えるアウトサイドインシステムについて説明する。無線送受信システムにおいて、以下の理由により、無線送信器および無線受信器それぞれのアンテナの指向性は高いことが必要である。
【0019】
第1の理由は、高周波電波を使用する際の空間減衰対策の為である。カメラとHMDとの間で送受信される信号は主に映像信号である。HMDのディスプレイに表示される映像は、該HMDを装着した者の没入感の観点から、高解像度(例えば、4K,8K等)であって高フレームレート(例えば、60fps、120fps等)であることが望ましい。高解像度・高フレームレートの映像を伝送するには高速通信が必要である。無線による送受信において高速通信するには広帯域な電波の使用が必要である。この際、無線通信に用いる中心キャリア周波数として、ギガヘルツ以上のミリ波やテラヘルツといったサブミリ波が使用される。空間を伝搬する電波は、波長の二乗に反比例して空間ロスが大きくなること、すなわち、通信可能距離が短くなることが知られている(フリスの式)。通信距離を長くするには実効輻射電力(Equivalent Isotropic Radiated Power、EIRP)を大きくする必要がある。この為には、送信側および受信側の双方においてアンテナの指向性を高めて、送信側および受信側の双方のアンテナゲインを大きくすることが重要である。
【0020】
第2の理由は、複数の無線通信の間で電波の干渉を回避する為である。アウトサイドインシステムにおいては複数のカメラが設けられる場合がある。複数のカメラが設けられる場合、複数の無線通信の電波の干渉を回避する必要がある。これを回避する技術として、周波数分割多重や時分割多重などの多元接続がある。しかし、これらの多元接続は、通信帯域を圧迫するので、レイテンシ(通信の遅延、デバイスの反応速度低下)が増える要因となる。レイテンシは、一人称型ゲームやミラー型ゲームにおいて没入感を妨げる要因となるので、好ましくない。これを解決する為に、送信側および受信側の双方においてアンテナの指向性を高めることが重要である。
【0021】
以上のことから、指向性が高いアウトサイドインシステムを実現するに際して、カメラおよびHMDそれぞれのアンテナとしてアクティブアレイアンテナを用い、このアクティブアレイアンテナにおけるビームフォーミングを利用することで、カメラおよびHMDそれぞれのアンテナの指向性を高めることができる、と期待される。アクティブアレイアンテナは、アンテナによる送信または受信の方向を電気的に制御することにより、特定の方向に対するアンテナ感度を向上させることができるとともに、他の無線設備との干渉を低減させることができ、通信品質を向上させることができる。
【0022】
しかし、このアンテナシステムにより指向性を高めたアウトサイドインシステムを実現する際には、次のような問題がある。カメラとHMDとの間の無線通信は、指向性を高めた無線のメインビームを相手方へ向けることで実現される。すなわち、カメラのアンテナのメインビームを正確にHMDへ向けるととも、HMDのアンテナのメインビームを正確にカメラへ向ける必要がある。これを実現するには、送信側および受信側の双方において、相手方がいる方向を推定する必要がある。この相手方方向推定は、送受信した無線信号の情報を基に行う例があるが、電波パワーが小さいときには困難であり又は長時間を要する場合がある。
【0023】
例えば、ミリ波(60GHz)をキャリア周波数として使うIEEE802.11adでは、アダプティブビームフォーミングとしてSector Level Sweep方式が採用されている。この方式は、アンテナの指向性を広げたり狭めたりを繰り返すことで、ビーム方向推定(相手方方向推定)を行うものである。アンテナの指向性を広げる際には、無線ビームの到来方向を広く推定できるメリットがあるが、一方で、無線ビームのパワーが小さい場合には推定が困難となる。
【0024】
HMDを装着した者の位置や顔の向きによりHMDも時々刻々と動くことから、相手方方向推定に時間がかかると、コンテンツのレイテンシや接続ロストを招く。この問題は、無線通信の周波数が高いほど顕著となる。さらに、室内などの閉空間においては、壁などによって電波が乱反射するので、直接波よりも反射波の方が強くなることがあり、相手方のアンテナとは全く異なる方向にメインビームを向けてしまうことがある。アウトサイドインシステムは室内で利用されることが多いので、この問題への対処が重要となる。
【0025】
以下に説明する実施形態の無線送受信システムは、上記のような発明者らの知見や検討に基づいて考案されたものである。
【0026】
図1は、無線送受信システム1の構成を示す図である。無線送受信システム1は、無線送信器10および無線受信器20を備える。無線送信器10は、無線信号を無線受信器20へ送信する。無線受信器20は、無線送信器10から送信された信号を受信する。
【0027】
無線送信器10および無線受信器20の双方または何れか一方の位置または方位は不定である。無線送信器10は、例えば、カメラ、ウェアラブルカメラ、ノートパソコンやスマートフォンなどのモバイル装置、映像再生装置、等である。無線受信器20は、例えば、HMD、モニタ装置、ノートパソコンやスマートフォンなどのモバイル装置、スマートグラス(ARグラス)、等である。
【0028】
無線送信器10は、アンテナ(第1アンテナ)11、撮像部(第1撮像部)12、画像処理部13、ベースバンド処理部14、変調部15、アンテナ制御部16および制御部(第1制御部)19を含む。
【0029】
アンテナ11は、無線信号を送信するものであり、その無線信号の送信ビーム方向(メインビームの方向)の制御が可能である。撮像部12は、無線受信器20を含む範囲を撮像し、その撮像により得られた画像のデータを画像処理部13へ出力する。画像処理部13は、撮像部12から出力された画像データを入力し、その画像データに対して画像処理を行って、その処理後の画像データをベースバンド処理部14および制御部19へ出力する。
【0030】
ベースバンド処理部14は、画像処理部13から出力された画像データを入力し、その画像データに対してベースバンド処理を行って、その処理後の画像データを変調部15へ出力する。変調部15は、ベースバンド処理部14から出力された画像データを入力し、その画像データに対して変調処理を行って、その処理後の画像データをアンテナ11へ出力する。
【0031】
アンテナ制御部16は、アンテナ11により送信される無線信号の送信ビーム方向を制御する。制御部19は、無線送信器10の全体の動作を制御する。特に、制御部19は、撮像部12により撮像され画像処理部13により処理されて出力された画像のデータを入力し、その画像における無線受信器20の位置を検出して、その無線受信器20の位置に基づいてアンテナ11の送信ビーム方向を無線受信器20へ向けるようアンテナ制御部16へ指示する。
【0032】
無線受信器20は、アンテナ(第2アンテナ)21、撮像部(第2撮像部)22、画像処理部23、ベースバンド処理部24、変調部25、アンテナ制御部26、映像処理部27、表示部28および制御部(第2制御部)29を含む。
【0033】
アンテナ21は、無線信号(映像信号)を受信するものであり、その無線信号の受信ビーム方向(メインビームの方向)の制御が可能である。撮像部22は、無線送信器10を含む範囲を撮像し、その撮像により得られた画像のデータを画像処理部23へ出力する。画像処理部23は、撮像部22から出力された画像データを入力し、その画像データに対して画像処理を行って、その処理後の画像データを制御部29へ出力する。
【0034】
変調部25は、アンテナ21により受信された映像信号データを入力し、その映像信号データに対して復調処理を行って、その処理後の映像信号データをベースバンド処理部24へ出力する。ベースバンド処理部24は、変調部25から出力された映像信号データを入力し、その映像信号データに対してベースバンド処理を行って、その処理後の映像信号データを映像処理部27へ出力する。映像処理部27は、ベースバンド処理部24から出力された映像信号データを入力し、その映像信号データを表示部28において表示可能なデータに変換して、その変換後の映像信号データを表示部28へ出力する。表示部28は、映像処理部27から出力された映像信号データを入力して、その映像信号データに基づいて映像を表示する。
【0035】
アンテナ制御部26は、アンテナ21により受信される無線信号の受信ビーム方向を制御する。制御部29は、無線受信器20の全体の動作を制御する。特に、制御部29は、撮像部22により撮像され画像処理部23により処理されて出力された画像のデータを入力し、その画像における無線送信器10の位置を検出して、その無線送信器10の位置に基づいてアンテナ21の受信ビーム方向を無線送信器10へ向けるようアンテナ制御部26へ指示する。
【0036】
アンテナ11およびアンテナ21それぞれは、送信または受信するメインビームの指向性が高いことが好ましい。指向性が高いアンテナとして、アレイアンテナ、レンズを利用して指向性を高めたレンズアンテナ、反射鏡を利用したリフレクトアレイ、等が用いられる。アレイアンテナは、フェーズシフタを用いてビーム方向を制御することができる。レンズアンテナは、モータ等によりレンズの位置を変更することでビーム方向を制御することができる。
【0037】
撮像部12および撮像部22それぞれは、レンズ系および撮像素子を含む。撮像素子として、CMOSイメージセンサおよびCCDイメージセンサ等が用いられる。
【0038】
無線送信器10の制御部19による画像における無線受信器20の位置の検出、および、無線受信器20の制御部29による画像における無線送信器10の位置の検出は、種々の画像認識技術を用いて、画像における無線受信器20または無線送信器10の特徴点を検出することに行われてもよい。実装するハードウェアや必要とする位置精度などに応じて適切な画像認識技術を選択することができる。ここで用いられる画像認識技術として、例えば、YOLO(You Only Look Once)、深層ニューラルネットワーク(DeepNeural Network、DNN)、特許文献2に記載された画像認識技術、等がある。DNNのうちでもR-CNN(Region Based Convolutional Neural Network)が好適に用いられる。
【0039】
図2は、HMDを含む範囲を撮像して得られた画像におけるHMDの位置を検出する方法について説明する図である。HMDを含む範囲を撮像して得られた画像(
図2(a))において、その画像中の各位置を中心とする複数の領域(
図2(b))に区分し、それら複数の領域それぞれから部分画像を切り出す(
図2(c))。R-CNNは、予め、複数のHMDの教師画像データを用いて学習させておく。複数の領域それぞれの部分画像を学習済みR-CNNに入力させて(
図2(d))、各部分画像がHMDであるか否かの判定結果をR-CNNから出力させる(
図2(e))。これにより、R-CNNによりHMDであると判定された部分画像の位置(すなわち、画像(
図2(a))におけるHMDの位置)を検出することができる。
【0040】
図3は、無線送信器10の制御部19の動作を説明するフローチャートである。制御部19は、次のようなステップS11~S13の各処理を繰り返し行う。ステップS11では、制御部19は、無線受信器20を含む範囲を撮像部12が撮像して得られた画像を、撮像部12から取得する。ステップS12では、制御部19は、その取得した画像における無線受信器20の位置を検出する。ステップS13では、制御部19は、その検出した無線受信器20の位置に基づいてアンテナ11の送信ビーム方向を無線受信器20へ向ける。
【0041】
図4は、無線受信器20の制御部29の動作を説明するフローチャートである。制御部29は、次のようなステップS21~S23の各処理を繰り返し行う。ステップS21では、制御部29は、無線送信器10を含む範囲を撮像部22が撮像して得られた画像を、撮像部22から取得する。ステップS22では、制御部29は、その取得した画像における無線送信器10の位置を検出する。ステップS23では、制御部29は、その検出した無線送信器10の位置に基づいてアンテナ21の受信ビーム方向を無線送信器10へ向ける。
【0042】
無線送信器10および無線受信器20の双方または何れか一方の位置または方位が不定であっても、無線送信器10の制御部19がステップS11~S13の各処理を繰り返してリアルタイムに行うとともに、無線受信器20の制御部29がステップS21~S23の各処理を繰り返してリアルタイムに行うことにより、無線送信器10から無線により送信された信号を無線受信器20が確実に受信することができる。
【0043】
例えば、無線送信器10と無線受信器20との間の距離が長い場合、無線送信器10から無線受信器20へ無線により大容量の情報(例えば映像情報を含む信号)を高速に送る必要がある場合、無線送信器10側の撮像部12で取得した映像を無線受信器20側の表示部28においてレイテンシ無く表示させる必要がある場合、等においても、無線送信器10から無線により送信された信号を無線受信器20が確実に受信することができる。また、レイテンシを小さくする為には、無線送信器10から無線受信器20へ送信する信号は、H.264等の圧縮アルゴリズムにより圧縮された信号ではなく、非圧縮の信号であるのが好適である。
【0044】
次に、無線送受信システム1(
図1)の変形例について説明する。
図5は、無線送受信システム1Aの構成を示す図である。無線送受信システム1Aは、無線送信器10Aおよび無線受信器20Aを備える。無線送信器10Aは、無線信号を無線受信器20Aへ送信する。無線受信器20Aは、無線送信器10Aから送信された信号を受信する。
【0045】
無線送受信システム1(
図1)の構成と比較すると、無線送受信システム1A(
図5)では、無線送信器10Aはマーカ(第1マーカ)31が付されている点で相違し、無線受信器20Aはマーカ(第2マーカ)41が付されている点で相違する。無線送信器10Aの制御部19は、撮像部12により撮像されて取得された画像におけるマーカ41の位置に基づいて、アンテナ11の送信ビーム方向を無線受信器20Aへ向ける点で相違する。また、無線受信器20Aの制御部19は、撮像部22により撮像されて取得された画像におけるマーカ31の位置に基づいて、アンテナ21の受信ビーム方向を無線送信器10Aへ向ける点で相違する。
【0046】
マーカ31およびマーカ41それぞれは、特徴的な印であってもよいし、特定波長の光(例えば赤外線)を放射または反射させるものであってもよい。このようなマーカが無線送信器10Aおよび無線受信器20Aに付されていることで、無線送信器10Aの制御部19は、撮像部12により撮像されて取得された画像におけるマーカ41の位置の検出が容易となり、また、無線受信器20Aの制御部19は、撮像部22により撮像されて取得された画像におけるマーカ31の位置の検出が容易となる。これにより、無線送信器10Aにおけるアンテナ11の送信ビーム方向および無線受信器20Aにおけるアンテナ21の受信ビーム方向がより確実に調整可能となり、無線送信器10Aから無線により送信された信号を無線受信器20Aがより確実に受信することができる。
【0047】
次に、無線送受信システム1(
図1)の他の変形例について説明する。
図6は、無線送受信システム1Bの構成を示す図である。無線送受信システム1Bは、無線送信器10Bおよび無線受信器20Bを備える。無線送信器10Bは、無線信号を無線受信器20Bへ送信する。無線受信器20Bは、無線送信器10Bから送信された信号を受信する。
【0048】
無線送受信システム1(
図1)の構成と比較すると、無線送受信システム1B(
図6)では、無線送信器10Bは、無線受信器20Bまでの距離を測定する測距部(第1測距部)32を更に含み、制御部19は、測距部32による距離測定値に基づいてアンテナ11の送信パワーを調整する点で相違する。また、無線受信器20Bは、無線送信器10Bまでの距離を測定する測距部(第2測距部)42を更に含み、制御部29は、測距部42による距離測定値に基づいてアンテナ21の受信感度を調整する点で相違する。
【0049】
測距部32および測距部42それぞれは、TOF(Time-of-Flight)センサであってもよいし、ステレオカメラであってもよい。このような測距部が設けられていることにより、無線送信器10Bにおけるアンテナ11の送信パワーが適切に設定され、無線受信器20Bにおけるアンテナ21の受信感度が適切に設定されて、無線送信器10Bから無線により送信された信号を無線受信器20Bがより確実に受信することができる。
【符号の説明】
【0050】
1,1A,1B…無線送受信システム、10,10A,10B…無線送信器、11…アンテナ、12…撮像部、13…画像処理部、14…ベースバンド処理部、15…変調部、16…アンテナ制御部、19…制御部、20,20A,20B…無線受信器、21…アンテナ、22…撮像部、23…画像処理部、24…ベースバンド処理部、25…変調部、26…アンテナ制御部、27…映像処理部、28…表示部、29…制御部、31…マーカ、32…測距部、41…マーカ、42…測距部。