(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】肺の健康状態を決定するシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/53 20060101AFI20241004BHJP
G01N 33/533 20060101ALI20241004BHJP
G01N 33/483 20060101ALI20241004BHJP
G01N 21/78 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
G01N33/53 D
G01N33/533
G01N33/483 C
G01N21/78 C
(21)【出願番号】P 2021505631
(86)(22)【出願日】2019-04-15
(86)【国際出願番号】 US2019027550
(87)【国際公開番号】W WO2019200403
(87)【国際公開日】2019-10-17
【審査請求日】2022-04-14
(32)【優先日】2018-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520398696
【氏名又は名称】バイオアフィニティ テクノロジーズ,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BIOAFFINITY TECHNOLOGIES,INC.
【住所又は居所原語表記】22211 West Interstate 10,Suite 1206,San Antonio,TX 78257(US)
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レベル,ヴィヴィアン,アイ.
【審査官】川野 汐音
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-536275(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0189670(US,A1)
【文献】SHIOTA, Y. et al.,Flow cytometric analysis of lymphocytes and lymphocyte subpopulations in induced sputum from patients with asthma,ALLERGOLOGY INTERNATIONAL,JAPANESE SOCIETY OF ALLERGOLOGY,2000年05月31日,Vol.49/No.2,p.125-133
【文献】UEI Y. AND NOGUCHI, Y.,COMPARISON OF CYTOLOGIC MARKERS FOR AUTOMATED LUNG CANCER SCREENING,ANALYTICAL AND QUANTITATIVE CYTOLOGY AND HISTOLOGY,SCIENCE PRINTERS AND PUBLISHERS, INC,1990年10月,Vol.12/No.5,p.327-332
【文献】TYRER H.W. et al.,AUTOMATIC CELL INDENTIFICATION AND ENRICHMENT IN LUNG CANCER: V. ADENOCARCINOMA AND LARGE CELL UNDIFFERENTIATED CARCINOMA,CYTOMETRY,1985年,Vol.6/No.1,p.37-46
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の肺癌の可能性を
予測するための方法であって、
ex-vivo喀痰サンプルを、以下のプローブの組み合わせ、すなわち、
i)喀痰細胞の白血球集団に発現するバイオマーカに結合する第1の標識プローブ、
ii)喀痰細胞の顆粒球細胞集団に発現するバイオマーカに結合する顆粒球プローブ、喀痰細胞のT細胞細胞集団に発現するバイオマーカに結合するT細胞プローブ、喀痰細胞のB細胞細胞集団に発現するバイオマーカに結合するB細胞プローブ、又はそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される第2の標識プローブ、
iii)マクロファージ細胞集団のバイオマーカに結合する第3の標識プローブ、
iv)前記喀痰サンプル中の
肺癌関連細胞に結合する第4の標識プローブの組み合わせ、
または、
以下のプローブの組み合わせ、すなわち、
i)喀痰細胞の白血球集団に発現するバイオマーカに結合する第1の標識プローブ、
iv)前記喀痰サンプル中の
肺癌関連細胞に結合する第4の標識プローブ、
v)喀痰細胞の上皮細胞集団に発現するバイオマーカに結合する第5の標識プローブ、
vi)喀痰細胞の上皮細胞集団に発現する細胞表面バイオマーカに結合する第6の標識プローブの組み合わせ、
で標識するステップと、
前記標識された喀痰サンプルをフローサイトメトリーで分析して、細胞ごとのサイトメトリーデータを含むデータを取得するステップと、
前記標識された喀痰サンプルから取得されたデータから、
バイオマーカ1を同定するための、i)に対して陽性である喀痰細胞と比較して、i)に対して陰性である前記標識された喀痰サンプルから収集されたデータ中の前記喀痰細胞の比率、
バイオマーカ2を同定するための、i)に対して陰性かつiv)及びv)に対して陽性の前記喀痰細胞、
バイオマーカ3を同定するための、i)、iii)に対して陽性かつFITC自家蛍光を示す前記喀痰細胞、
バイオマーカ4を同定するための、i)に対して陰性かつv)及びvi)に対して陽性の前記喀痰細胞、
の少なくとも1つを決定するステップ
とを含み、
前記細胞ごとの標識データにおける標識プローブの存在又は不在のプロファイル
が、前記細胞ごとのデータから被験者の肺癌の可能性を
検出するためのものとなる方法。
【請求項2】
肺癌疾患を有する可能性が高い、中程度、又は低いとの前記喀痰サンプルの分類を生成するために、前記細胞ごとのサイトメトリーデータをプログラムされたコンピュータの訓練されたアルゴリズムに入力し、肺癌疾患に対する前記喀痰サンプルの分類を同定した報告書を電子的に出力するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
バイオマーカ1について、前記比率が2未満の場合、前記喀痰サンプルがバイオマーカ1に対して陽性であることを示す、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記バイオマーカ1が、少なくとも約80%の感度及び少なくとも50%の特異性を有する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
i)に対して陰性かつiv)及びv)に対して陽性の喀痰細胞の割合が0.03%を超える場合、前記喀痰サンプルがバイオマーカ2に対して陽性であることを示す、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記バイオマーカ2が、少なくとも90%の感度及び少なくとも50%の特異性を有する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
バイオマーカ2を同定するために、前記標識された喀痰サンプルから収集されたデータから、i)に対して陰性かつiv)及びv)に対して陽性の前記喀痰細胞を決定するステップをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
i)に対して陰性かつiv)及びv)に対して陽性の喀痰細胞の割合が0.03%を超える場合、前記喀痰サンプルがバイオマーカ2に対して陽性であることを示す、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記バイオマーカ1と
前記バイオマーカ2との組み合わせが、少なくとも80%の感度及び少なくとも80%の特異性を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
i)、iii)に対して陽性かつFITC自家蛍光を示す喀痰細胞の割合が0.03%を超える場合、前記喀痰サンプルがバイオマーカ3に対して陽性であることを示す、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記バイオマーカ3が、少なくとも60%の感度及び少なくとも70%の特異性を有する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
バイオマーカ3を同定するために、前記標識された喀痰サンプルから収集されたデータから、i)、iii)及びv)に対して陽性の前記喀痰細胞を決定するステップをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
i)、iii)に対して陽性かつFITC自家蛍光を示す喀痰細胞の割合が0.03%を超える場合、前記喀痰サンプルがバイオマーカ3に対して陽性であることを示す、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記バイオマーカ1、
前記バイオマーカ2、及び
前記バイオマーカ3の組み合わせが、少なくとも80%の感度及び少なくとも80%の特異性を有する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
i)に対して陰性かつv)及びvi)に対して陽性の細胞の割合が2%を超える場合、前記サンプルがバイオマーカ4に対して陽性であることを示す、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記バイオマーカ4が、少なくとも70%の感度及び少なくとも70%の特異性を有する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
バイオマーカ4を同定するために、前記標識された喀痰サンプルから収集されたデータから、i)に対して陰性かつv)及びvi)に対して陽性の前記喀痰細胞を決定するステップをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
i)に対して陰性かつv)及びvi)に対して陽性の細胞の割合が2%を超える場合、前記サンプルがバイオマーカ4に対して陽性であることを示す、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記バイオマーカ1、
前記バイオマーカ2、
前記バイオマーカ3、及び
前記バイオマーカ4の組み合わせが、少なくとも70%の感度及び少なくとも75%の特異性を有する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記フローサイトメトリー分析が、直径が約5μm未満及び約30μmを超える細胞をデータ分析から除外するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記フローサイトメトリー分析が、死細胞及び複数の細胞塊である細胞をデータ分析から除外するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
喀痰細胞の白血球集団に発現するバイオマーカに結合する前記第1の標識プローブが、CD45抗体又はそのフラグメントである、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記第2の標識プローブが、喀痰細胞の顆粒球細胞集団に発現するバイオマーカに結合する顆粒球プローブであり、CD66b抗体又はそのフラグメントである、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記第2の標識プローブが、喀痰細胞のT細胞細胞集団に発現するバイオマーカに結合するT細胞プローブであり、CD3抗体又はそのフラグメントである、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記第2の標識プローブが、喀痰細胞のB細胞細胞集団に発現するバイオマーカに結合するB細胞プローブであり、CD19抗体又はそのフラグメントである、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記第2の標識プローブが、前記顆粒球プローブ、前記T細胞プローブ、及び前記B細胞プローブの組み合わせである、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
前記顆粒球プローブがCD66b抗体又はそのフラグメントであり、前記T細胞プローブがCD3抗体又はそのフラグメントであり、前記B細胞プローブがCD19抗体又はそのフラグメントである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
喀痰細胞のマクロファージ細胞集団のバイオマーカに結合する前記第3の標識プローブが、CD206抗体又はそのフラグメントである、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
前記喀痰サンプル中の
肺癌関連細胞に結合する前記第4の標識プローブが、テトラ(4-カルボキシフェニル)ポルフィリン(TCPP)である、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
喀痰細胞の上皮細胞集団上に発現するバイオマーカに結合する前記第5の標識プローブが、panCytokeratin抗体又はそのフラグメントである、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
喀痰細胞の上皮細胞集団に発現する細胞表面バイオマーカに結合する前記第6の標識プローブが、EpCam抗体又はそのフラグメントである、請求項1に記載の方法。
【請求項32】
前記
肺癌関連細胞が、肺癌細胞又は腫瘍関連免疫細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項33】
前記喀痰細胞が固定されているか、又は固定されていない、請求項1に記載の方法。
【請求項34】
前記i)~vi)の標識プローブのいずれかの細胞ごとのサイトメトリーデータを含むデータが、喀痰サンプルシグネチャを生成する、請求項1に記載の方法。
【請求項35】
前記喀痰サンプルシグネチャが、
肺癌疾患を同定する、請求項
34に記載の方法。
【請求項36】
前記喀痰サンプルシグネチャが、コントロール喀痰サンプルシグネチャ(非罹患)及び
肺癌サンプルシグネチャのデータベースと比較されて、
肺癌が同定される、請求項
34に記載の方法。
【請求項37】
被験者の肺癌の可能性を
予測するための方法であって、
ex-vivo喀痰サンプルを、i)前記喀痰サンプル中の
肺癌関連細胞に結合する蛍光性のポルフィリン、及びii)喀痰細胞のマーカに対して向けられた1つ以上の蛍光色素結合プローブで標識するステップと、
前記標識された喀痰サンプルをフローサイトメトリーで分析して、細胞ごとのサイトメトリーデータを含むデータを取得するステップと
を含み、
前記細胞ごとの標識データにおけるi)及びii)の存在又は不在のプロファイル
が、前記細胞ごとのデータから被験者の
肺癌の可能性を
検出するためのものとなる方法。
【請求項38】
前記i)~ii)のいずれかの細胞ごとのサイトメトリーデータを含むデータが、喀痰サンプルシグネチャを生成する、請求項
37に記載の方法。
【請求項39】
前記喀痰サンプルシグネチャが、前記
肺癌を同定する、請求項
38に記載の方法。
【請求項40】
前記喀痰サンプルシグネチャが、コントロール喀痰サンプルシグネチャ(非罹患)及び
肺癌サンプルシグネチャのデータベースと比較されて、
肺癌が同定される、請求項
38に記載の方法。
【請求項41】
前記喀痰サンプル中の
肺癌関連細胞に結合する前記蛍光性のポルフィリンが、テトラ(4-カルボキシフェニル)ポルフィリン(TCPP)である、請求項
37に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、2018年4月13日に出願された「肺の健康状態を決定するシステム及び方法」と題された米国仮特許出願第62/657,584号の出願の優先権及び利益を主張し、その明細書及び特許請求の範囲は参照により本明細書に組み込まれる。
連邦政府による資金提供を受けた研究又は開発に関する声明
【0002】
該当せず
共同研究契約の当事者
【0003】
該当せず
コンパクトディスクで提出された資料の参照による組込み
【0004】
該当せず
発明者又は共同発明者による先行開示に関する陳述
【0005】
該当せず
著作権で保護された資料
【0006】
該当せず
【背景技術】
【0007】
以下の議論は、著者及び発行年による多数の刊行物に言及しており、最近の刊行日のために、特定の刊行物は、本発明に対する先行技術と見なされないことに留意されたい。本明細書におけるそのような刊行物の議論は、より完全な背景のために与えられており、そのような刊行物が特許性決定の目的のための先行技術であることを認めるものとして解釈されるべきではない。
【0008】
低線量コンピュータ断層撮影(LDCT)は、特に米国メディケア・メディケイドサービスセンター(CMS)によって、55歳~75歳の、30年間毎日1箱のタバコに相当する量を喫煙し、かつ15年間禁煙していない個人として定義された高リスク集団において、早期診断の方法として肺癌をスクリーニングする現在の標準治療である。これまでで最大の肺癌検診スクリーニング試験である全米肺癌スクリーニング試験(LCST:National Lung Cancer Screening Trial)によれば、LDCTの感度は93.8%である一方、その特異性は73.4%であることが示されている。LCSTによれば、調査した高リスク集団におけるLDCTの偽陽性率が3.8%であったことが示され、LDCTで陽性と判定されたが肺癌を患っていない患者では、多くの不必要な、しばしば侵襲的な、潜在的に有害な事後手順につながった。したがって、LDCTの特異性を改善し、それによってその偽陽性率を低下させることに差し迫った必要性がある。この必要性に対処するアプローチの1つは、LDCTの補助として使用できる、肺癌に対する高い特異性を備えた追加のアッセイの開発である。蛍光性の高いテトラ(4-カルボキシフェニル)ポルフィリン(TCPP)は、正常細胞と比較して癌細胞に選択的に結合するため、癌細胞を周囲のバックグラウンド細胞から区別できる診断標識の開発に独自に適している。肺癌のリスクが高い個人をスクリーニングする標準治療は、LDCTを使用した胸部の年次画像診断から構成される(1)。LDCTは非常に感度が高いものの、偽陽性率が高く、最終的に癌の検査で陰性となる患者に対して関連するリスクを伴う複数の反射診断手順につながる。リスクには、追加の高線量放射線被曝、並びに胸腔穿刺、気管支鏡検査、及びコア針生検などの侵襲的手順による合併症及び罹患状態が含まれる。これらの手順に関連する有害事象のリスク及び追加の経済的負担は重大であり、LDCT結果の陽性判定後の、より安全でより侵襲性の低い反射検査の医学的必要性は明らかである(2)。代替の検査方法は、手頃な価格の補助検査を用いて、特異性を高め、偽陽性率を下げ、スクリーニングの陽性予測値を改善することによって、LDCTの高感度を理想的に補完する。
【0009】
液体生検の形態の低侵襲技術が、LDCT結果の陽性判定後の、反射性肺癌検査のために提案されている。液体生検を使用して、循環腫瘍細胞(CTC)及び遊離腫瘍核酸を患者の末梢血サンプルから収集することができる。CTC及び核酸は、次世代シーケンシング(NGS)などの分子技術を使用して検査し、癌の存在を予測できる癌関連遺伝子変異の存在と、特定の標的療法に対する患者の腫瘍の反応とを判定する(3)。これらの技術は肺癌の推定50~75%の突然変異を同定できるが(4、5)、腫瘍にそのような特定の遺伝子異常がないLDCT陽性患者は、液体生検では陰性の結果となる。さらに、CTCはまれであり(109個の正常細胞あたり1細胞程度)、腫瘍の核酸濃度は、臨床的に利用可能なほとんどの分子検査法の検出限界を下回ることが多い(6)。したがって、液体生検は、患者の腫瘍ゲノムに関する貴重な治療情報を提供する可能性があるが、早期癌診断を目的とした検査よりも、肺癌診断アルゴリズムのより後の段階でより適切に利用される。
【0010】
気管支洗浄検体の液状化細胞診検査は、従来の喀痰スミアを使用した病理検査のために、潜在的な悪性細胞のサンプリングを提供する。患者の気道から細胞を回収するために使用される気管支鏡検査の手順は、コア針肺組織生検よりも侵襲性が低い。しかしながら、依然として出血などの有害事象のリスクがある(7)。さらに、関連する医療費は、特に入院患者ベースで実行される場合、多額になる可能性がある。LDCT陽性患者のごく少数(すなわち、4%未満)のみが実際に肺癌を患っていることが判明することを考えると、診断材料を提供するために、代替の、経済的で、よりアクセスしやすい肺の悪性細胞供給源に対する医学的必要性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
病理学者は、肺癌の非侵襲的で迅速かつ特異的な検出方法として、数十年にわたって喀痰の定期的な細胞学的検査を行ってきた。従来の喀痰細胞診では、サンプルを染色し、悪性細胞について顕微鏡でスクリーニングする。しかしながら、従来の喀痰細胞診は感度が低い(約65%)という問題がある(8)。KRAS変異検査を含む、喀痰分析の感度を高めるさまざまな方法が試みられてきた。患者の腫瘍が実際にKRAS変異している場合、KRAS検査は感度及び特異性の両方を有し得るが、実際にKRAS遺伝子変異を有するのは肺癌の15~20%だけである。したがって、KRAS変異陰性腫瘍細胞はこの技術では検出されない(9)。自動喀痰サイトメトリーと呼ばれる代替のDNAベースのアプローチは、悪性腫瘍に関連する変化について喀痰上皮細胞の核DNA特性を評価するために、特別な染色及びコンピュータ支援画像分析を利用する。この技術は、従来の細胞診よりもやや感度が高いものの、その特異性は約50%に過ぎない(10)。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一実施形態は、被験者の肺疾患の可能性を予測する方法であって、ex-vivo喀痰サンプルを、以下のプローブ、i)喀痰細胞の白血球集団に発現するバイオマーカに結合する第1の標識プローブ、ii)喀痰細胞の顆粒球細胞集団に発現するバイオマーカに結合する顆粒球プローブ、喀痰細胞のT細胞細胞集団に発現するバイオマーカに結合するT細胞プローブ、喀痰細胞のB細胞細胞集団に発現するバイオマーカに結合するB細胞プローブ、又はそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される第2の標識プローブ、iii)マクロファージ細胞集団のバイオマーカに結合する第3の標識プローブ、iv)前記喀痰サンプル中の疾患関連細胞に結合する第4の標識プローブ、v)喀痰細胞の上皮細胞集団に発現するバイオマーカに結合する第5の標識プローブ、及びvi)喀痰細胞の上皮細胞集団に発現する細胞表面バイオマーカに結合する第6の標識プローブの1つ以上で標識するステップを含む方法を提供する。標識された喀痰サンプルは、例えば、フローサイトメトリー分析されて、i)~vi)の標識プローブのいずれかの平均蛍光シグネチャに基づく細胞ごとのサイトメトリーデータを含むデータが取得される。細胞ごとのデータは、細胞ごとの標識データにおける標識プローブの存在又は不在のプロファイルに基づいて、被験者の肺疾患の可能性を決定するために検出される。得られたデータをさらに分析して、喀痰サンプル中のバイオマーカの存在又は不在を同定することができる。例えば、疾患関連細胞は、肺癌細胞又は腫瘍関連免疫細胞であり得る。肺疾患は、喘息、COPD、インフルエンザ、慢性気管支炎、結核、嚢胞性線維症、肺炎、移植片対宿主病、及び肺癌からなる群から選択され得る。さらに、標識された喀痰細胞は、固定されていても固定されていなくてもよい。
【0013】
標識された喀痰サンプルから収集されたデータは、細胞の集団及びそこから同定されたバイオマーカによって特徴付けることができる。例えば、バイオマーカ1を同定するために、i)に対して陽性である痰細胞と比較して、i)について陰性である、標識された喀痰サンプルから収集されたデータ中の喀痰細胞の比率が決定される。一例では、比率が2未満の場合、喀痰サンプルがバイオマーカ1に対して陽性であることを示す。一実施形態では、陽性バイオマーカ1は、バイオマーカ1を適用して、肺癌(c)喀痰サンプルを高リスク(HR)喀痰サンプルから区別するために、少なくとも約80%の感度及び少なくとも50%の特異性を有する。感度は、少なくとも85%、90%、又は95%であり、特異性は、少なくとも55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、又は95%である。
【0014】
別の例では、バイオマーカ2を同定するために、標識された喀痰サンプルから収集されたデータから、i)に対して陰性かつiv)及びv)に対して陽性の喀痰細胞を同定する。例えば、i)に対して陰性かつiv)及びv)に対して陽性の喀痰細胞の割合が0.03%を超える場合、喀痰サンプルがバイオマーカ2に対して陽性であることを示す。一実施形態では、陽性バイオマーカ2は、バイオマーカ2を適用して、肺癌(c)喀痰サンプルを高リスク(HR)喀痰サンプルから区別するために、少なくとも90%の感度及び少なくとも50%の特異性を有する。感度は、少なくとも80%、85%、又は95%であり、特異性は、少なくとも55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、又は95%である。
【0015】
別の例では、喀痰細胞がi)、iii)に対して陽性かつFITC自家蛍光を示す場合、バイオマーカ3が同定される。例えば、i)、iii)に対して陽性かつFITC自家蛍光を示す喀痰細胞の割合が0.03%を超える場合、喀痰サンプルがバイオマーカ3に対して陽性であることを示す。一実施形態では、陽性バイオマーカ3は、バイオマーカ3を適用して、肺癌(c)喀痰サンプルを高リスク(HR)喀痰サンプルから区別するために、少なくとも60%の感度及び少なくとも70%の特異性を有する。感度は、少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、又は95%であり、特異性は、少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、又は95%である。
【0016】
別の例では、バイオマーカ4を同定するために、喀痰細胞がi)に対して陰性かつv)及びvi)に対して陽性である場合、バイオマーカ4が同定される。例えば、i)に対して陰性かつv)及びvi)に対して陽性の細胞の割合が2%を超える場合、サンプルがバイオマーカ4に対して陽性であることを示す。一実施形態では、陽性バイオマーカ4は、バイオマーカ3を適用して、肺癌(c)喀痰サンプルを高リスク(HR)喀痰サンプルから区別するために、少なくとも70%の感度及び少なくとも70%の特異性を有する。感度は、少なくとも80%、85%、90%、又は95%であり、特異性は、少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、又は95%である。
【0017】
別の実施形態では、陽性バイオマーカ1と陽性バイオマーカ2との組み合わせなど、複数のバイオマーカを組み合わせることにより、バイオマーカ1及び2を適用して肺癌(c)喀痰サンプルを高リスク(HR)喀痰サンプルから区別するために、少なくとも80%の感度及び少なくとも80%の特異性を有することができる。さらに、陽性バイオマーカ1、2、及び3を組み合わせることにより、バイオマーカ1~3を適用して肺癌(c)喀痰サンプルを高リスク(HR)喀痰サンプルから区別するために、少なくとも80%の感度及び少なくとも80%の特異性を生成する。さらに、陽性バイオマーカ1~4によって、バイオマーカ1~4を適用して肺癌(c)喀痰サンプルを高リスク(HR)喀痰サンプルから区別するために、少なくとも70%の感度及び少なくとも75%の特異性を生成する。感度は、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、又は95%であり、特異性は、少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、又は95%である。
【0018】
一実施形態では、フローサイトメトリー分析は、データ分析から、直径が約5μm未満及び約30μmを超える細胞を除外すること、死細胞及び複数の細胞塊である細胞を除外することの2つ以上を含み得る。
【0019】
別の実施形態では、喀痰細胞の白血球集団に発現するバイオマーカに結合する第1の標識プローブは、CD45抗体又はそのフラグメントであり得る。
【0020】
別の実施形態では、第2の標識プローブは、喀痰細胞の顆粒球細胞集団に発現するバイオマーカに結合し、CD66b抗体又はそのフラグメントから選択され得る顆粒球プローブ、喀痰細胞のT細胞細胞集団に発現するバイオマーカに結合し、CD3抗体又はそのフラグメントであるT細胞プローブ、喀痰細胞のB細胞細胞集団に発現するバイオマーカに結合し、CD19抗体又はそのフラグメントであるB細胞プローブの1つ以上であり、個別に又は組み合わせて、喀痰サンプルに添加される。
【0021】
別の実施形態では、喀痰細胞のマクロファージ細胞集団のバイオマーカに結合する第3の標識プローブは、CD206抗体又はそのフラグメントである。
【0022】
さらに別の実施形態では、喀痰サンプル中の疾患関連細胞に結合する第4の標識プローブは、テトラ(4-カルボキシフェニル)ポルフィリン(TCPP)である。
【0023】
さらに別の実施形態では、喀痰細胞の上皮細胞集団に発現するバイオマーカに結合する第5の標識プローブは、panCytokeratin抗体又はそのフラグメントである。
【0024】
さらなる実施形態において、喀痰細胞の上皮細胞集団に発現する細胞表面バイオマーカに結合する第6の標識プローブは、EpCam抗体又はそのフラグメントである。
【0025】
収集されたデータは、喀痰サンプルシグネチャを生成するためのi)~vi)の標識プローブのいずれかの平均蛍光シグネチャに基づく細胞ごとのサイトメトリーデータを含み得る。喀痰サンプルのシグネチャは、肺及び/又は肺疾患の健康状態を同定する。肺疾患は、喘息、COPD、インフルエンザ、慢性気管支炎、結核、嚢胞性線維症、肺炎、移植片対宿主病、及び肺癌からなる群から選択され得る。さらに、喀痰サンプルのシグネチャは、コントロール喀痰サンプルシグネチャ(非罹患)及び肺疾患サンプルシグネチャのデータベースと比較されて、肺疾患が同定される。本発明のいくつかの実施形態では、結果は、訓練されたアルゴリズムを使用して分類される。本発明の訓練されたアルゴリズムは、疾患を発症するリスクが高い被験者からの既知の喀痰サンプル、疾患を有すると認められた被験者の喀痰サンプル、及び正常であると同定された(疾患を有さないか、又は疾患を発症するリスクが高い)被験者からの喀痰サンプルの参照セットを使用して開発されたアルゴリズムを含む。サンプルの分類に適したアルゴリズムには、k近傍アルゴリズム、概念ベクトルアルゴリズム、単純ベイズアルゴリズム、ニューラルネットワークアルゴリズム、隠れマルコフモデルアルゴリズム、遺伝的アルゴリズム、及び相互情報特徴選択アルゴリズム、又はそれらの任意の組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。場合によっては、本発明の実施形態の訓練されたアルゴリズムには、細胞学者又は病理学者による診断又は被験者の病歴に関する情報などの、喀痰サンプルシグネチャ又は細胞ごとのサイトメトリーデータ又は平均蛍光シグネチャ以外のデータが組み込まれ得る。プログラムされたコンピュータでは、データは訓練されたアルゴリズムに入力され、肺疾患を有する可能性が高い、中程度、又は低いものに喀痰サンプルを分類し、肺疾患の上記喀痰サンプルの上記分類を同定するレポートを電子的に出力する。
【0026】
本発明の一実施形態は、肺疾患の可能性に関連する細胞集団内の1つ以上のバイオマーカを同定するための、被験者の喀痰サンプルからの喀痰細胞のフローサイトメトリー表現型分類のための第1の試薬組成物であって、i)テトラ(4-カルボキシフェニル)ポルフィリン(TCPP)蛍光色素、並びにii)EpCAM、及び/又はpanCytokeratin、及びiii)CD45、CD206、CD3、CD19、CD66b又はそれらの任意の組み合わせから選択される細胞のマーカに対して向けられた蛍光色素結合抗体又はそのフラグメントを含む、試薬組成物を提供する。
【0027】
本発明の別の実施形態は、肺疾患の可能性に関連する細胞集団内の1つ以上のバイオマーカを同定するための、被験者の喀痰サンプルからの喀痰細胞のフローサイトメトリー表現型分類のための第2の試薬組成物であって、i)テトラ(4-カルボキシフェニル)ポルフィリン(TCPP)蛍光色素、並びに以下の細胞のマーカ、ii)EpCAM及び/又はpanCytokeratin、及びiii)CD45に対して向けられた蛍光色素結合抗体を含む、試薬組成物を提供する。
【0028】
本発明の別の実施形態は、肺疾患の可能性に関連する細胞集団内の1つ以上のバイオマーカを同定するための、被験者の喀痰サンプルからの喀痰細胞のフローサイトメトリー表現型分類のための第3の試薬組成物であって、i)テトラ(4-カルボキシフェニル)ポルフィリン(TCPP)蛍光色素、並びに以下の細胞のマーカ、CD45、CD206、CD3、CD19、及びCD66bの1つ以上に対して向けられた蛍光色素結合抗体を含む、試薬組成物を提供する。
【0029】
さらに別の実施形態は、被験者の肺疾患の可能性を予測する方法であって、ex-vivo喀痰サンプルを、i)喀痰サンプル中の疾患関連細胞に結合する標識プローブ、及びii)喀痰細胞のマーカに対して向けられた1つ以上の蛍光色素結合プローブで標識するステップを含む方法を提供する。標識された喀痰サンプルは、フローサイトメトリー分析されて、i)~ii)の標識プローブのいずれかの平均蛍光シグネチャに基づく細胞ごとのサイトメトリーデータを含むデータが取得される。細胞ごとの標識データにおけるi)及びii)の存在又は不在のプロファイルに基づいて、細胞ごとのデータから、被験者の肺疾患の可能性が検出される。細胞ごとのサイトメトリーデータを含むデータは、i)~ii)のいずれかの平均蛍光シグネチャに基づくことができ、喀痰サンプルシグネチャを生成する。一実施形態では、喀痰サンプルシグネチャは、例えば、肺疾患を同定し、肺疾患は、喘息、COPD、インフルエンザ、慢性気管支炎、結核、嚢胞性線維症、肺炎、移植片対宿主病、及び肺癌からなる群から選択される。さらに、喀痰サンプルシグネチャは、コントロール喀痰サンプルシグネチャ(非罹患)及び肺疾患サンプルシグネチャのデータベースと比較されて、標識された喀痰サンプルから肺疾患が同定される。一実施形態では、喀痰サンプル中の疾患関連細胞に結合する標識プローブは、テトラ(4-カルボキシフェニル)ポルフィリン(TCPP)である。
【0030】
本発明の適用性のさらなる範囲は、添付の図面と併せて、以下の詳細な説明に部分的に示され、以下を検討することにより当業者には部分的に明らかになるか、又は本発明の実施により学習される。本発明の目的及び利点は、添付の特許請求の範囲で特に指摘される手段及び組み合わせによって実現及び達成され得る。
【図面の簡単な説明】
【0031】
本明細書に組み込まれ、その一部を成す添付の図面は、本発明の1つ以上の実施形態を示し、説明とともに、本発明の原理を説明するのに役立つ。図面は、本発明の1つ以上の実施形態を例示することのみを目的とし、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0032】
【
図1A-B】解離した喀痰細胞のサイトスピンを示す。抗体又はTCPPで染色する前の、処理された喀痰細胞のライトギムザ染色サイトスピンスライド。
【0033】
【
図1C-E】細胞又は粒子の光学特性を分析する光源及び検出器を有するフローサイトメトリーベースのシステムを示し、前方散乱(FSC)及び側方散乱(SSC)は、
図1Dに示すヒストグラムの測定値としてのパルス高さ及び面積の測定値とともに、経時的にレーザ光源のゾーンを通過する細胞又は粒子の例示的な光学特性として同定される。
【0034】
【0035】
【
図3A-H】喀痰中の造血細胞の同定及び特性評価のためのドットプロット及び等高線プロットを示す。
【
図3I-K】喀痰中の造血細胞の同定及び特性評価のためのドットプロット及び等高線プロットを示す。
【0036】
【0037】
【
図5】y(軸)上に、内部に「×」の付いた黒丸として示されるマクロファージ/スライドの数、及び黒丸として示されるCD45
陽性/CD206
陽性細胞、並びにx(軸)上にサンプル数を示すグラフであり、CD206
陽性細胞集団の存在は、喀痰スミア上の多数のマクロファージの存在と一致する。
【0038】
【
図6】分析のための喀痰サンプル調製のフローチャートを示す。HCC15癌細胞をCellMask(商標)Greenで標識し(ステップ1)、別のチューブで、解離した喀痰細胞をPE標識抗CD45抗体で染色した(ステップ2)。
【0039】
【
図7A-C】喀痰細胞のドットプロットを示し、
図7Aは、CD45ゲートを表し、
図7Bは、CD45
陽性細胞のTCPPゲートを表し、
図7Cは、CD45
陰性細胞のTCPPゲートを表す。
【
図7D-F】
図7D~Fは、アイソタイプコントロールで処理された未染色の喀痰細胞及び染色された喀痰細胞を表す。
【0040】
【
図8A-B】健康なボランティア及び肺癌の有無にかかわらず高リスクの患者から得られた喀痰サンプルの予備的な比較分析を示す。
図6及び
図7に詳述された実験と同様に、異なるドナーからの5つの喀痰サンプルが分析された。白抜きのドットは健康なボランティアからのサンプル(H)を表し、黒のドットは癌のない高リスク患者からのサンプル(HR)を表し、×の付いたドットは肺癌が認められた患者からのサンプル(C)を表す。
図8Aは、分析された各サンプル内のCD45
陰性細胞(左)及びCD45
陽性細胞(右)の総数を示す。
図8Bは、分析された各サンプル内のCD45
陰性細胞(左)及びCD45
陽性細胞(右)内のTCPP
陽性細胞の割合を示す。
【0041】
【
図9A-F】本発明の一実施形態による、TCPP
陽性細胞の存在について喀痰細胞を分析する1つの戦略のドットプロットを示す。
【0042】
【
図10A-B】QCビーズ及びプロトコルに記載の喀痰サンプルチューブ#6が、フローサイトメトリー及び結果として得られるドットプロットを介して分析されることを示す。
図10Aは、実行中のQCビーズから得られたプロファイルに最初に設定されるビーズサイズ除外(「BSE」)ゲート(ボックス)を示す。
図10Bは、すべての喀痰サンプルに適用されたBSEゲートを示す。
【0043】
【
図11A-F】
図11A、
図11Bに示されるような未染色の喀痰細胞(チューブ#4)及び
図11Cのような染色された喀痰細胞(チューブ#6)を決定して、
図11Cのボックスに示されるような生細胞(LC)及び
図11Dに示されるような単一細胞(SC)を同定するためのフローサイトメトリー及び結果として得られるドットプロットを介して分析された喀痰サンプルを示す。
図11E及び
図11Fは、喀痰細胞のドットプロットを示し、
図11Eにアイソタイプコントロールを設定し、BSE、LC、SCゲートの適用後に残っている細胞のCD45
陽性及びCD45
陰性集団を設定する。
【0044】
【
図12A-C】チューブ#6の喀痰サンプルのCD45
陽性細胞分析を示す。すべてのプロファイルは、BSE、LC、及びSCゲートを介して選択されたCD45
陽性細胞を示す。
【0045】
【
図13A-B】FITC/Alexa488(F/A)のアイソタイプコントロール(チューブ#5)、及び(F/A)と結合されたCD66b/CD3/CD19細胞マーカのプローブで処理された細胞(チューブ#6)のドットプロットを示す。
【0046】
【
図14A-B】PE-CF594アイソタイプコントロール(チューブ#5)、及びPE-CF594と結合されたCD206細胞マーカのプローブで処理された細胞のドットプロットを示す。
【0047】
【
図15A-B】y軸にFITC/Alexa488、x(軸)にPE-CF594を示す、喀痰細胞(チューブ#5)のアイソタイプコントロールのドットプロットを示す。二重陰性ゲート又は集団1パラメータが確立される。提示されているのは、アイソタイプコントロールからのドットプロット
図15A及び疑似カラープロット
図15Bであり、これらは、BSE、LC、及びCD45
陽性細胞ゲートを介してゲートされている。水平の点線は、
図13で決定されたFITC/Alexa488の陽性/陰性のカットオフを表し、垂直の点線は、
図14で決定されたPE-CF594の陽性/陰性のカットオフから導出される。
【0048】
【
図16A-B】チューブ#6による喀痰サンプルからのドットプロット(A)及び疑似カラープロット(B)を示し、カクテル(CD66b/CD3/CD19-FITC/Alexa488抗体(y軸)及びPE-CF594と結合されたマーカCD206(x軸)からの平均蛍光強度を測定した。BSE、LC、及びSCゲートからも選択されたCD45
陽性細胞が示されている。
図15に描画されているのと同じ集団1(実線のボックス内部)及びカットオフ(点線)がこれらのプロファイルに適用される。
【0049】
【
図17A-C】2つのサンプル(A及びBは同じ)からの喀痰CD45
陽性チューブから生成された疑似カラープロットを示し、
図16の喀痰サンプルの集団2~6に設定されたゲートが適用される。すべてのプロットは、BSE、LC、及びSCゲートを介してゲートされたCD45
陽性喀痰細胞を示す。水平及び垂直の点線は、アイソタイプコントロール上に設定された(図示せず)。
図17A~Bは、集団5のFITC平均蛍光強度が中間であり、水平のカットオフラインを横切るときのゲート4及びゲート5の描画を示す。
図17Cは、集団6の右上のボックスを示す。
【0050】
【
図18】y軸に喀痰サンプル中のすべての血液(CD45
陽性)細胞の割合(%)及びx軸にプロファイルタイプ1、2、及び3のグラフを示す。示されているシグネチャは、高リスク(HR)サンプルのCD45
陽性細胞のプロファイル1のものである。
【0051】
【
図19A-C】HR及び癌細胞からのCD45
陽性喀痰細胞のシグネチャ1~3のグラフ、及びHR及びC喀痰サンプルのすべてのCD45
陽性血液細胞の割合としての集団6の分析を示す。
【0052】
【
図20A-D】喀痰中の異なる上皮亜集団について描画されたゲートを有するCD45
陰性喀痰サンプルのドットプロットを示す。
【0053】
【
図21A-B】FITC/Alexa488及びCD45
陰性喀痰細胞のアイソタイプコントロール(チューブ#5)及びpanCytokeratin/Alexas488で標識された喀痰細胞(チューブ#7)のドットプロットを示す。CD45
-喀痰細胞における陽性FITC/Alexa488染色のカットオフが決定される。
【0054】
【
図22A-B】PE-CF594及び喀痰細胞のアイソタイプコントロール(チューブ#5)、及びEpCAM-PE-CF594で標識された喀痰細胞(チューブ#7)のドットプロットを示す。CD45
陰性喀痰細胞及び喀痰における陽性PE-CF594染色のカットオフの決定。
【0055】
【
図23A-B】BSE、LC及びCD45細胞ゲートを介してゲートされた、アイソタイプコントロールを有するCD45
陰性細胞(チューブ#5)のドットプロットを示す。水平の点線は、
図21で決定されたFITC/Alexa488の陽性/陰性のカットオフを表し、垂直の点線は、
図22で決定されたPE-CF594の陽性/陰性のカットオフから導出される。
【0056】
【
図24A-B】CD45
陰性細胞の集団2~9の喀痰細胞及びゲートのドットプロットを示す。
【0057】
【
図25】集団1~9の異なるシグネチャを有するプロファイル1~4のCD45
陰
性ドットプロットの別のグラフを示す。
【0058】
【
図26】集団1、集団2、集団5、及びPanCK++の中央値を横切るプロファイル1のシグネチャを示す。
【0059】
【
図27】肺癌を発症するリスクが高いと分類された被験者からの喀痰サンプルからのCD45
陰性細胞と、肺癌を有すると分類された被験者からの喀痰サンプルとのシグネチャ1~4の比較を示す。
【0060】
【
図28A-B】喀痰サンプルからのすべてのCD45
陰性細胞の割合(%)としてのPanCK++(集団3+4+9)の量から生じるバイオマーカの適用に対する80%の感度及び85%の特異性を示す。
【0061】
【
図29A-C】喀痰サンプル中の細胞のCD45
陰性/CD45
陽性の比率(バイオマーカ1)を決定するための、HR及びC喀痰サンプルからの喀痰サンプル中の細胞の癌リスク分析を示す。
【0062】
【
図30A-B】分析された喀痰サンプルにバイオマーカ1を適用して、肺癌患者又は肺癌を発症するリスクが高い被験者からのサンプルを同定する際の90%の特異性及び54%の感度を示す。
【0063】
【
図31A-C】TCPPで陽性に標識された喀痰サンプル(チューブ#7)中のCD45
陰性細胞(バイオマーカ2)の癌リスク分析を示す。
【0064】
【
図32A-B】分析された喀痰サンプルにバイオマーカ2を適用して、肺癌患者又は肺癌を発症するリスクが高い被験者からのサンプルを同定する際の63%の特異性及び100%の感度を示す。
【0065】
【
図33A-C】分析される喀痰サンプルにバイオマーカ1+2を適用して、肺癌患者又は肺癌を発症するリスクが高い被験者からのものとしてサンプルを同定するための本発明の一実施形態に従って、90%の感度及び90%の特異性を得るように、HR及びC喀痰サンプルの喀痰サンプルを分析するための
図25及び
図27で同定されたバイオマーカ1とバイオマーカ2との組み合わせを示す。
【0066】
【
図34A-C】サンプル中のすべてのCD45+細胞の%として、HR及びC喀痰サンプルからの集団6中の細胞の量を特定するためのCD45
陽性細胞(バイオマーカ3)のドットプロットを示す。
【0067】
【
図35A-B】分析された喀痰サンプルにバイオマーカ3を適用して、肺癌患者又は肺癌を発症するリスクが高い被験者からのサンプルを同定する際の88%の特異性及び60%の感度を示す。
【0068】
【
図36A-B】HR及びC喀痰サンプルからの集団3+4及び9に見られる、panCytokeratin
陽性でもある喀痰サンプルからのCD45
陰性細胞(バイオマーカ4)の癌リスク分析を示す。
【0069】
【
図37A-B】分析された喀痰サンプルにバイオマーカ4を適用して、肺癌患者又は肺癌を発症するリスクが高い被験者からのサンプルを同定する際の83%の特異性及び80%の感度を示す。
【0070】
【
図38A-E】98%の特異性及び78%の感度を有する、HR及びC喀痰サンプルにバイオマーカ1~4を適用した、喀痰サンプルからの細胞の癌リスク分析を示す。
【0071】
【
図39】本明細書に記載の肺から細胞集団を分画するシステム及び方法、並びに肺疾患について高リスク、中リスク、及び低リスクとして喀痰サンプルを分類するアルゴリズムを含む、被験者の肺の健康に関するスクリーニングフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0072】
さらに、以下の用語の定義は以下のとおりである。特定の用語が本明細書で以下に定義されていない場合、その用語は、当業者による文脈内でのその典型的な使用の範囲内で意味を有するものとすることが理解される。
【0073】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「及び」及び「the」は、文脈から明らかに別段でない限り、複数形の参照を含むことに留意されたい。
【0074】
「較正する」という用語は、コントロール試薬に対する機械の感度を設定することを意味する。
【0075】
「補正する」という用語は、サンプルをコントロールと比較してバックグラウンドを決定することを意味する。
【0076】
「分画する」又は「分画された」という用語は、さらに分析するためにイベントのサブセットを選択することを意味する。分画の一例は、分析中にデータを除外する/含めるための「ゲート」を使用することである。
【0077】
「ゲート」という用語は、これらの対象集団を調査及び定量化するために、通常は前方散乱、側方散乱、及びマーカ発現などの共通の特性を有する細胞集団の周囲に境界が配置されることを意味する。
【0078】
「プローブ」という用語は、細胞若しくは粒子の表面上のバイオマーカ又は細胞若しくは粒子内のマーカに親和性を有し、それらに結合するリガンド、ペプチド、抗体又はそれらのフラグメントを意味する。
【0079】
ポルフィリンはあらゆる種類の癌細胞に集中する。さらに、特定のポルフィリンは自然に蛍光を発し、特徴的な光子放出プロファイルを有する。ポルフィリン組成物は、癌細胞又は病状に関連する細胞を標識するポルフィリンの蛍光を周囲のバックグラウンド細胞から区別するためのハイスループットアッセイ(特にフローサイトメトリーアッセイ)で使用するために本明細書に記載されている(11)。
【0080】
ここで
図1A~
図1Bを参照すると、解離した喀痰細胞のサイトスピンが示されている。抗体又はTCPPで染色する前の、処理された喀痰細胞のライトギムザ染色サイトスピンスライドを
図1Aに示す。
図1Aには、頬上皮細胞(BEC)が多すぎる(そのうちのいくつかは*記号で示されている)。マクロファージは矢印で、デブリは矢印で示されている。
図1Bは、スライド上のBEC及びマクロファージのより容易な同定を可能にする(矢尻で示される)より少ないデブリの存在を示す。
【0081】
フローサイトメトリーでは、各細胞又は粒子が流体力学的にフォトセルに集束される。細胞/粒子がフォトセルを通過するときに、各細胞又は粒子は1つ以上の光線を通過する。光散乱又は蛍光(FL)発光(細胞又は粒子がフルオロフォアで標識されている場合)は、細胞/粒子の特性に関する情報を提供する。レーザは、現代のフローサイトメトリーで最も一般的に使用される光源である。レーザは、離散周波数(コヒーレント光)で単一波長の光(レーザ線)を生成する。これらは、紫外から遠赤色までのさまざまな波長で利用可能であり、さまざまな範囲の電力レベル(光子出力/時間)を有する。前方方向に散乱された光(通常はレーザ光線軸から最大20°ずれる)は、前方散乱(FSC)チャネルと呼ばれる光電子増倍管(PMT)又はフォトダイオードによって収集される。FSCは、細胞/粒子のサイズにほぼ等しい。通常、より大きい細胞はより小さい細胞よりも多くの光を屈折させる。励起線に対しておよそ90°の角度で測定される光は、側方散乱(SSC)と呼ばれる。SSCチャネルは、細胞又は粒子の相対的な複雑さ(例えば、粒度及び内部構造)に関する情報を提供する。FSC及びSSCは両方ともすべての細胞又は粒子に固有であり、この2つの組み合わせを使用して、例えば、これに限定されないが、血液、喀痰などの異種サンプルにおいて、細胞タイプを大まかに区別することができる。細胞又は粒子がレーザ光線を通過し、時間の関数として信号が生成されると、イベントが同定される。FSC及びSSCの場合、細胞又は粒子がレーザ中で費やす時間はイベントの幅「W」として測定され、一方、光電子増倍管によって測定される電流出力の最大高さは高さ「H」であり、面積「A」は、細胞又は粒子がサイトメータのレーザ光線の照合点を通過することによって生成されるパルスの積分を表す。本明細書で使用されるように、細胞及び粒子はそれぞれ、フォトセル内の光線を通過するときのイベントとして記録され得る。
【0082】
ここで
図1Cを参照すると、光散乱プロファイル(前方散乱(FSC)は細胞サイズを表し、側方散乱(SSC)は粒度を表す)が示されており、「A」は、細胞又は粒子がサイトメータの照合点を通過することによって生成されるパルスの積分を表す。
図1Dは、得られたヒストグラムであり、y(軸)上にレーザパルス強度(H)、及びx(軸)上に時間(W)を有し、曲線の下の面積が(A)として示されている。
図1Eは、異なる粒度及びサイズを有する細胞のSSC-A対FSC-Aプロットをプロット上に示す。光散乱プロファイル(前方散乱(FSC)は細胞サイズを表し、側方散乱(SSC)は粒度を表す)であって、「A」は、細胞又は粒子がサイトメータの照合点を通過することによって生成されるパルスの積分を表す。
RFCを強化するために光散乱をゲートする。
【0083】
気管支を裏打ちする特殊な気道上皮細胞及び腺細胞が粘液を分泌する。肺の深部で生成される粘液には、上皮細胞、肺胞細胞、マクロファージ、及びその他の造血(血液)細胞など、肺組織から再利用される多種多様な細胞が含まれ得る(17)。粘液には非細胞性物質も含まれており、これらは、喫煙者、高度に汚染された地域に住んでいる人、又はその他の気道アレルゲン(花粉など)にさらされている人の肺で特に顕著である。肺の中から発生する粘液が吐き出されると、それは喀痰と呼ばれる。喀痰は、多くのBEC(又は頬細胞)を含む口腔内で生成される唾液と混合されることが多く、これにより、すでに複雑な組織サンプルに別の細胞成分が追加される(
図1を参照)。
【0084】
顕微鏡検査とは対照的に、フローサイトメトリーは、サイズ、粒度、及び/又は蛍光マーカに基づいて関係のないデブリ及び細胞を除去することによって、対象の細胞のサンプルを濃縮することを可能にするため、喀痰の細胞集団に関する多次元情報及び/又はより正確な情報を提供することができる。喀痰細胞分析において赤色蛍光細胞(RFC)を濃縮するための第1のステップは、RFCのサイズ(直径)を近づけることであり、より小さい又はより大きいものはすべて除外される。RFCは、TCPPの取り込みが最も高い細胞、すなわち、癌細胞及び癌関連マクロファージであり、これは、どちらの細胞タイプも、他のどの細胞タイプよりも多くのTCPPを取り込むためである(18~22)。肺癌細胞のサイズは、癌の種類によって異なるが、培養された肺癌細胞と大きく異なることはあまりない。文献検索(表1)は、例えば、HCC15肺癌細胞の直径は20~30μmであるのに対し、肺胞マクロファージの直径は21μmと測定されることを明らかにしている。特に興味深いのは、マクロファージ及びリンパ球であり、なぜなら、これらの細胞タイプの各々の特定の亜集団は、癌に関連する場合にそれらの機能を変化させることが知られているからである(23~26)。しかしながら、RBC(6~8μm)及びそれより小さいもの(デブリ)、並びにBEC(65μm)及びそれより大きいものは、以降の分析から除外することができる。
【表1】
【0085】
ここで
図2A~
図2Iを参照すると、SSC及びFSCシグネチャを有する細胞を示すフローサイトメトリープロファイルが示されている。ビーズ(
図2A及び
図2G)及び細胞(
図2B~
図2F、
図2H、及び
図2I)のフローサイトメトリードットプロット
図2A~
図2F及び等高線プロット
図2G~Iが示されている。
図2Aは、左から右へ5、10、20、30及び50μmのビーズを示す光散乱プロットである。個々のビーズのサイズは、水平FSC軸上に手動で描画され、
図2B~
図2Fに引き継がれる。SSCは当初は低く保たれていたため、予想よりも高いSSCを有する細胞を視覚化することができた。
図2Bは、CellMask(商標)Orangeで染色された赤血球(RBC)の光散乱プロットである。
図2Cは、CellMask(商標)Far Redで染色された白血球(WBC)の光散乱プロットである。
図2Dは、CellMask(商標)Orangeで染色された扁平上皮肺癌細胞(HCC15)細胞の光散乱プロットである。
図2Eは、CellMask(商標)Greenで染色された頬上皮細胞(BEC)の光散乱プロットである。
図2Fは、分析のために1つのチューブにまとめられたWBC(
図2Cのように配置される)、HCC15細胞(
図2Dのように配置される)及びBEC(
図2Eのように配置される)の光散乱プロファイルである。
図2Fの縞模様のボックスは、対象の細胞を含む光散乱ゲートを示し、サイズが5~30μmのすべてが含まれる。
図2Gは、FSC-W×SSC-W光散乱等高線プロットの5μm(下)及び30μm(上)のビーズを示す。
図2Hは、(
図2Eのように)CellMask(商標)Greenで染色されたBECのFSC-W×SSC-W光散乱等高線プロットである。
図2Iは、組み合わされた細胞集団(FSC-W×SSC-W光散乱等高線プロットに表示されたWBC、BEC及びHCC15)を示す。BEC(30μmより大きい、破線のボックスの外側に位置する細胞)と、対象の細胞(30μmより小さい、破線のボックスの内側に位置する細胞)との間の分離がはっきりと見える。破線のボックスは、W×Wゲートを示し、ほとんどのBECを簡単に除外できる対象の集団を同定する。
【0086】
一実施形態では、デブリ及びBECは、さらに分析される細胞の集団から除外される。標準サイズのビーズ(5、10、20、及び50μm)が、光散乱プロファイルで使用される(前方散乱(FSC)は細胞サイズを表し、側方散乱(SSC)は粒度を表す;
図2A)。これらのビーズが実際に表1に示す情報に従って細胞サイズを予測することを確認するために、ビーズを健康なボランティアから分離されたRBC、WBC及びBEC、並びに培養HCC15肺癌細胞と比較する。異なる細胞タイプは、異なる色のCellMask(商標)色素で標識されているため、別々に(
図2B~E)及び組み合わせて(
図2F)分析することができる。
図2Bに示され、文献(表1)から予測されるように、RBCは最小のビーズと一致する。同様に、WBCのサイズはおよそ10~20μmの範囲であるが(
図2C)、HCC15細胞の大部分は直径が30μm未満である(
図2D)。唾液をフローサイトメータ(主にBECで構成)で分析した場合、予想に反して、文献に記載されているように、BECの大部分は30μm以下の細胞として投影され(
図2E)、50μmを超える細胞としては投影されない。これらの結果は、サイズを使用して(5μmビーズ以下のサイズをすべて除去することによって)デブリを除外することができることを示すが、サイズを使用してBECを除外することはできない。
【0087】
BECは、BECをWBC及びHCC15細胞と区別する非常に高いSSC特性を示す(
図2F)。SSC及びFSCは、フローサイトメータによって、高さ(H)、幅(W)、及び曲線下面積(A)の値を有する電子信号として変換される。SSC及びFSCパラメータのさまざまな組み合わせを調べることにより、SSC-W及びFSC-Wは、30μmビーズよりも低いSSC-Wを示す細胞の周囲にゲートを設定することにより、ほとんどのBECの除去を可能にするプロファイルをもたらした(
図2G~
図2I)。
造血細胞の個別集団への細分画
【0088】
フローサイトメトリーによる喀痰分析の別の態様は、さまざまな造血(血液)細胞集団の特性評価である。共通のWBCマーカCD45は、すべてのWBCの細胞表面に発現している。CD45抗原に対して向けられた抗体などのプローブを使用すると、造血細胞(CD45
陽性細胞)を、正常な肺上皮細胞及び潜在的な肺癌細胞(CD45
陰性細胞)などの他の細胞と区別することができる。喀痰中の特定の造血亜集団を同定するために、追加のプローブ、例えば、顆粒球(CD66b)、マクロファージ(HLA-DR、CD11b、CD11c、CD206)及びリンパ球(CD3及びCD19)に向けられた抗体を使用した。表2に、プローブ及びフルオロフォアの例を示す。
【表2】
【0089】
ここで
図3A~
図3Kを参照すると、喀痰中の造血細胞の同定及び特性評価が示されている。
図3Aは、FCS-A対SSC-Aの光散乱プロットで提示された喀痰細胞を示す。x軸上の数字が付いた黒球は、光散乱ゲートを設定するために使用されるビーズのサイズを表し、これは、デブリ及びBEC、すなわち、5μmビーズよりも小さいものすべて(左側の垂直線)及び30μmを超えるものすべて(右側の垂直線)を除外する。
図3Bは、
図3Aの光散乱ゲート内の細胞のFSC-W×SSC-W等高線プロットを示す(「W」は、信号の幅を表す)。30μmのサイズ除外ゲートは、上側のボックスで検出される細胞がいずれも30μmより大きくなるような水平線として同定される。
図3Cは、
図3Bに示すW×Wゲートによって選択された細胞を有するFSC-A対FSC-Hドットプロットを示し、「H」は、サイトメータのレーザからの光を検出する光電子増倍管によって出力される電流の最大量を表す。示されたゲート長方形にはすべての単一細胞が含まれるが、細胞ダブレットは除外される。
図3Dは、CD45特異性のゲートを決定するためにPEアイソタイプコントロールで染色された、
図3A~Cに示される光散乱ゲートから以前に選択された喀痰細胞のドットプロットを示す(上側のボックスによって示される)。
図3Eは、
図3A~
図3Cに示される光散乱ゲートから以前に選択された喀痰細胞のドットプロットを示し、細胞は抗CD45-PE抗体で染色されている。CD45抗原を発現するすべての細胞(CD45
陽性細胞)は上側のボックスに捕捉される。次に、CD45
陽性の上側ボックス/ゲート内の細胞をCD66bの発現についてさらに分析した。抗CD66抗体のバックグラウンド蛍光は、FITC-アイソタイプコントロールでの染色に基づいて
図3Fに示されている。
図3Gは、抗CD66bで染色されたCD45
陽性細胞を示す。CD45
陽性CD66b
陽性細胞は、上側のボックスで示されている。
図3Hは、
図3Gの上側のボックスから選別された細胞のライトギムザ染色である。
図3Iは、BSEゲートを通してのみ選択された、未染色の喀痰細胞を示すドットプロットを示す。この特定のサンプルは、CD45発現の検出に使用されるチャネルであるPEチャネルの中間染色を示すボックス内にある細胞の大きな亜集団を示す。この亜集団の存在は、サンプルをCD45
陰性細胞とCD45
陽性細胞に分離するカットオフをどこに設定するかを決定することを困難にする。
図3Jは、
図3Iと同じサンプルのW×Wゲートを示すドットプロットを示す。下側のボックス(W×Wゲート)の細胞は対象の細胞であり、一方、上側のボックスで捕捉された細胞はSECであり、対象の真の未染色の喀痰集団を明らかにするために除外する必要がある。
図3Kは、BSEゲート及びW×Wゲートを介して選択された未染色の喀痰細胞を示し、陰性集団は明確に同定可能であり、CD45
陰性ゲートは、水平線「ゲート」を下回る平均蛍光強度を有する。
【0090】
図3は、肺癌を発症するリスクが高い患者から得られた代表的なサンプルを示す。上側のパネルの最初の2つのプロファイル(
図3A及び
図3B)は、それぞれ、デブリ及びBECを除外するための光散乱ゲートを示す。細胞ダブレットを除外する追加のダブレット識別ゲート(
図3C)も同様に適用された。対角上のボックス内にある細胞は単一細胞(SC)である。上側の最も右のプロファイル(
図3D)は、PE標識CD45抗体のバックグラウンド染色を決定するためにPE標識アイソタイプコントロール抗体で染色された、前の3つの光散乱ゲート(デブリ、BEC、及び細胞ダブレットの除去)を通じて選択された細胞を示す。このサンプルの特定のCD45-PE染色を
図3Eに示し、CD45
陽性細胞は上側のボックスで同定される。FITC標識アイソタイプコントロール抗体で共染色された喀痰細胞のCD45
陽性集団を
図3Fに示し、FITC標識CD66b抗体で共染色された喀痰細胞のCD45
陽性集団を
図3Gに示す。CD66b
陽性細胞は
図3Gの上側のボックスで示される。これらの細胞が顆粒球であることを確認するために、CD45
陽性CD66b
陽性細胞をFACSAria機器を使用して選別し、細胞遠心分離によってスライドに移し、ライトギムザで染色した。
図3Hに示すように、CD66b
陽性抗体で同定された血液細胞は確かに顆粒球であった。
【0091】
残りのCD45
陽性CD66b
陰性細胞には、他のすべてのタイプの造血細胞が含まれ得るが、喀痰中の他の造血細胞は比較的まれであるため、マクロファージ及び単球、又はリンパ球である可能性が最も高い(17、27)。マクロファージの特異的マーカは、
図4Aの細胞集団の大部分は、HLA-DR及び/又はCD11bを発現したので、CD45
陽性CD66b
陰性マクロファージ/単球であることを確認した。
【0092】
ここで
図4A~
図4Gを参照すると、CD66bプローブ又はCD206プローブのいずれかに曝露されたCD45
陽性喀痰細胞が示されている。
図4A~
図4Eは、さまざまなマクロファージ集団を含むCD66b
陰性集団を示す。
図4AのCD45
陽性CD66b
陰性喀痰細胞は、HLA-DRを、場合によってCD11bを発現する。
図4Aは、抗HLA抗体のバックグラウンド染色を決定するためにアイソタイプコントロールで染色されたCD45
陽性CD66b
陰性喀痰細胞を示すドットプロットを示す。同じアイソタイプコントロール染色はまた、
図4Bのヒストグラムにおいて、薄い灰色の曲線(I)によって表されている。
図4Bの濃い灰色の曲線(C)は、同じ細胞のHLA-DR染色を表す。薄い灰色の曲線と比較した濃い灰色の曲線の右側へのシフトは、細胞がHLA-DRに対して陽性に染色されることを示す。抗CD11b抗体のバックグラウンド染色を決定するためのアイソタイプコントロールを
図4Cに示す。CD45
陽性CD66b
陰性細胞集団は、CD11b染色が
図4D及び
図4Eそれぞれの蛍光ヒストグラムでよりよく視覚化できるように、小さい(S)細胞と大きい(L)細胞とに分割された。アイソタイプコントロール(I)は、「S」及び「L」ヒストグラムの薄い灰色の曲線で表され、一方、抗CD11b抗体染色(C)は、「S」及び「L」ヒストグラムの濃い灰色の曲線で表される。小さい細胞のみがCD11bに対して陽性に染色される。
図4F~
図4Gは、CD45
陽性喀痰細胞のアイソタイプコントロール染色(左側のドットプロット)及びCD206染色(右側のドットプロット)を示す。
図4A~
図4Bは、さまざまなマクロファージ集団を含むD45
陽性CD66b
陰性喀痰細胞を示す。
図4AのCD45
陽性CD66b
陰性喀痰細胞は、HLA-DRエピトープを、場合によってCD11bを発現する。CD11bマーカは、骨髄細胞に見られる。
【0093】
別の実施形態では、CD3/CD19マーカをCD66bマーカと組み合わせると、識別可能なリンパ球集団を図らずも収容するサンプル中のマクロファージ/単球集団(細胞のCD66b陰性/CD3陰性/CD19陰性サブセット)における潜在的なリンパ球汚染の同定が可能になる(28~30)。TCPP信号について分析されたCD45陽性細胞集団からCD3陽性/CD19陽性/CD66b陽性細胞集団をゲーティングすることは、TCPP標識に関連する信号を改善するさらに別の方法である。
【0094】
ここで
図5を参照すると、喀痰スミア上の多数のマクロファージの存在と一致するCD206
陽性細胞集団の存在が示されている。15個の喀痰サンプルを、ライトギムザ染色した喀痰スミアとフローサイトメータでのCD206染色とにより、マクロファージの存在について個別に分析した。喀痰スミアのライトギムザ染色は、PAP染色で置き換え可能であることに留意されたい。プロットされているのは、スライドごとにカウントされたマクロファージの数(×の付いた実線のドット)、及び分析された15個のサンプルごとのCD45
陽性CD206
陽性細胞の%(実線のドット)である。黒い点線は、データが同じサンプルを表すことを示すために付されている。スライド上にマクロファージがないことは白抜きのドットで表され、決定的でないCD206プロファイルは×の付いた白抜きのドットで表される。
図5に示すように、喀痰スミアで大量のマクロファージが同定された場合、フローサイトメトリーによってCD45
陽性CD206
陽性細胞の明確な集団も観察される。スライド上にマクロファージがないか、ほとんどない場合、CD45
陽性CD206
陽性プロファイルは信頼できない。喀痰中のCD45
陽性CD206
陽性細胞の明確な集団の存在(サイズに関係なく)は、スライド上で観察された多数のマクロファージ(>13)と一致し、高品質(すなわち、肺深部)の喀痰サンプルを示す。CD45
陽性CD206
陽性細胞集団が存在しない場合(サンプル2、10、及び11)、又は認識が困難な場合(サンプル3及び4)、喀痰スミアは0~少数のマクロファージ(≦13)を示し、この喀痰サンプルの質が低いことを示す。15個の喀痰サンプルを、ライトギムザ染色した喀痰スミアとフローサイトメータでのCD206染色とにより、マクロファージの存在について個別に分析した。プロットされているのは、スライドごとにカウントされたマクロファージの数(×の付いた実線のドット)、及び分析された15個のサンプルごとのCD45
陽性CD206
陽性細胞の割合(%)(実線のドット)である。黒い点線は、データが同じサンプルを表すことを示すために付されている。スライド上にマクロファージがないことは白抜きのドットで表され、決定的でないCD206プロファイルは×の付いた白抜きのドットで表される。
CyPath(登録商標)アッセイによる喀痰中の癌細胞の同定
【0095】
癌の早期発見のためのフローサイトメトリーに基づく喀痰分析の別の要素は、癌細胞のCyPath(登録商標)標識である。高リスク患者(おそらく肺癌がない)から得られた喀痰サンプルを分析し、サンプルにおよそ3%のHCC15癌細胞をスパイクした。
図6に概説されているこの実験では、HCC15肺癌細胞をCellMask(商標)Greenで標識し、この緑色で混合物中のすべての癌細胞を同定できるようにした。喀痰細胞を抗CD45-PE抗体で染色したため、CD45
陰性のHCC15細胞を含む非造血細胞から造血細胞を区別することができた(データ記載なし)。細胞固定後、細胞混合物をTCPPで標識し、フローサイトメトリーで細胞を分析した。
【0096】
図6を参照すると、肺癌細胞がスパイクされた喀痰分析の実験装置が示されている。HCC15癌細胞をCellMask(商標)Greenで標識し(ステップ1)、別のチューブで、解離した喀痰細胞をPE標識抗CD45抗体で染色した(ステップ2)。それぞれのチューブの過剰なCellMask(商標)Green及び抗CD45抗体を洗い流した後、2つの細胞懸濁液を混合した(ステップ3)。次に、混合細胞懸濁液を固定し、蛍光成分としてTCPPを含むCyPath(登録商標)溶液とインキュベートした(ステップ4)。
図6には、分析のための喀痰サンプル調製のフローチャートが示されている。HCC15癌細胞をCellMask(商標)Greenで標識し(ステップ1)、別のチューブで、解離した喀痰細胞をPE標識抗CD45抗体で染色した(ステップ2)。それぞれのチューブの過剰なCellMask(商標)Green及び抗CD45抗体を洗い流した後、2つの細胞懸濁液を混合した(ステップ3)。次に、混合細胞懸濁液を固定し、蛍光成分としてTCPPを含むCyPath(登録商標)アッセイ溶液とインキュベートした(ステップ4)。
【0097】
ここで
図7A~
図7Cを参照すると、CD45-PEマーカ、cell mask green及びTCPPで処理された喀痰細胞のドットプロットが示されており、サンプルは肺癌細胞(HCC15)でスパイクした。
図7Aは、約4%のHCC15肺癌細胞がスパイクされた喀痰細胞におけるCD45発現の代表的なドットプロットである。HCC15細胞(CD45
陰性)は、以前に緑色蛍光色素CellMask(商標)Greenで標識されていた(
図6を参照)。CD45
陽性細胞を示す上側のゲートは、適切なアイソタイプコントロールに基づいている(
図7Dを参照)。下側のゲートは、非造血性のCD45
陰性細胞を示す。
図7Bは、TCPP(y軸)及びCellMask(商標)Green染色(x軸)に対するCD45
陽性細胞のドットプロット分析を示す。CD45
陽性細胞の明確に同定可能な集団、おそらくマクロファージはTCPPに対して陽性に染色され、左上のボックス内にある。
図7Cは、TCPP(y軸)及びCellMask(商標)Green染色(x軸)に対するCD45
陰性細胞のドットプロット分析を示す。CellMask(商標)Green
陽性細胞は、喀痰サンプルに追加されたHCC15細胞であり、すべてTCPPに対して陽性に染色される(右上の象限)。CellMask(商標)Green
陰性細胞は喀痰細胞であり、1.2%のバックグラウンド染色を示す(左下の象限)。
図7A~
図7Cに示す3つの光散乱ゲートを、喀痰細胞とHCC15細胞との混合物に適用した後、CD45発現について細胞を分析した(
図7A)。次に、TCPPの取り込みを、CD45
陽性(上側のボックスで概説された集団)とCD45
陰性細胞集団(下側のボックスで概説された集団)との両方で決定した。CD45
陽性細胞の少数のみがTCPPの取り込みを示す(
図7B)。対照的に、CD45
陰性細胞はTCPP
陽性細胞の非常に個別的な集団を示し、CellMask(商標)Greenに対しても陽性に染色される(
図7Cの右上の象限)。CellMask(商標)Greenで処理された唯一の細胞はHCC15肺癌細胞であるため、TCPP
陽性CellMask(商標)Green
陽性細胞は、スパイクされたHCC15肺癌細胞である。TCPPで染色されなかったCellMask(商標)Green
陽性細胞はなく(
図7C、右下の象限)、CyPath(登録商標)が喀痰サンプルにスパイクされたすべての癌細胞を染色したことを示す。
【0098】
小規模なパイロット実験で5つの喀痰サンプルを分析した。1つは健康なボランティアから、3つは癌のない高リスク患者から、1つは肺癌患者からであった。分析は、
図7に記載のように実施した。つまり、各サンプルにCellMask(商標)Green標識HCC15細胞をスパイクし、
図7に記載のように分析した。サンプルにHCC15細胞をスパイクする理由は、これらの細胞がCyPath(登録商標)染色の陽性コントロールとして機能するからである。分析した5つのサンプルのうちCサンプルは1つのみであったが、データは、肺癌患者の喀痰サンプルが、疾患のない別の患者から得られたものとは異なることを示唆しており、C喀痰サンプルには、癌のない個人から採取されたサンプルよりもCD45
陰性細胞が多く、CD45
陽性細胞が少ない(
図8A)。最も重要なのは、CサンプルがCD45
陰性(上皮)細胞集団の中で最も多くのTCPP
陽性細胞を示したことである。CD45
陽性集団におけるTCPP標識は、他の非癌サンプルからCサンプルを一意に同定しなかった(
図8B)。
【0099】
ここで
図8A~
図8Bを参照すると、健康なボランティア及び癌の有無にかかわらず高リスクの患者から得られた喀痰サンプルの予備的な比較分析が示されている。
図6及び
図7に詳述された実験と同様に、異なるドナーからの5つのサンプルが分析された。白抜きのドットは健康なボランティアからのサンプル(H)を表し、黒のドットのサンプルは癌のない高リスク患者からのサンプル(HR)を表し、×の付いたドットは肺癌が認められた患者からのサンプル(C)を表す。
図8Aは、分析された各サンプル内のCD45
陰性細胞(左)及びCD45
陽性細胞(右)の総数を示す。
図8Bは、分析された各サンプル内のCD45
陰性細胞(左)及びCD45
陽性細胞(右)内のTCPP
陽性細胞の割合を示す。
【0100】
ここで
図9A~
図9Fを参照すると、本発明の一実施形態によれば、TCPP
陽性細胞の存在について喀痰細胞を分析する1つの戦略が示されている。
図9Aは、喀痰細胞とその中に混合されたHCC15細胞との混合物が抗CD45-PE抗体で処理されたドットプロットを示す。上側のゲートにはCD45
陽性細胞が含まれており、適切なアイソタイプコントロールに基づいている(図示せず)。下側のゲートは、非造血性のCD45
陰性細胞を示す。
図9Bは、TCPP及びFITC標識プローブのカクテルで処理された細胞を示す。FITC標識プローブには、CD66b(顆粒球)、CD3、及びCD19(リンパ球)に対して向けられた抗体が含まれる。
図9Bには4つの象限がある。水平線より上の細胞はTCPPに対して陽性に染色された細胞であり、垂直線より右の細胞はFITCに対して陽性に染色された細胞である。円は、このサンプルに存在するさまざまな細胞集団を示すために描画されている。
図9Cは、FITC強度(y軸)対FSC-A(x軸;細胞サイズを表す)を示すドットプロットに描かれた、
図9Bと同じ細胞の分析を表す。細胞集団は、
図9Bと
図9Cとの間で同定される。右下の象限からの細胞は顆粒球と一致するプロファイルを示し、
図9Bの右上の象限からの細胞は肺胞マクロファージのプロファイルと一致するプロファイルを示す。
図9Dは、サンプルにスパイクされたHCC15細胞を含むCD45
陰性喀痰細胞のTCPP標識(y軸)対FITC蛍光強度(x軸)を示す。喀痰細胞のCD45
陰性画分にはHCC15細胞が含まれているため、このパネルにはTCPP
陽性細胞の大集団が見られると予想される。このサンプルには、左上の象限の円と中央及び右上の象限の円とで示されるように、2つのTCPP
陽性集団がある。
図9Eは、
図9Dと同様のCD45
陰性細胞のプロファイルを示すが、サンプルにスパイクされたHCC15細胞を含まないコントロールサンプルに由来する。
図9Dの左上の象限の細胞集団は、
図9Eの左上の象限(空の円)のドットプロットプロファイルには存在しない。この空の円から欠落している細胞はHCC15細胞である。
図9Fは、
図9Dと同じ細胞集団を表し、ドットプロットは、CD45-PE強度(y軸)対FSC-A(x軸)を示す。
図9D及び
図9Eの左上の細胞集団並びに右上及び中央の細胞集団は、
図9Fで同定される。
【0101】
図9は、CD45
陽性細胞におけるTCPP染色が肺胞マクロファージ集団に関連することを示唆している。CD45
陽性(造血)細胞コンパートメント(
図9A)は、FITCチャネル及びTCPPの蛍光強度に基づいて、細胞の3つの亜集団に細分された(
図9B)。CD66b/CD3/CD19対FSCプロファイルでバックゲートした場合、TCPPで染色されなかった
図9Bの右下の丸で囲んだ細胞集団によって示される集団は、CD66b/CD3/CD19カクテルで陽性に染色された比較的小さな細胞であるように見え(
図9C)、これらの細胞はおそらく顆粒球である。
図9Bの他のFITC陽性集団(右上の丸で囲まれた細胞集団及びTCPPに対して陽性に染色される)は、比較的大きな細胞であることが判明した。それらの緑色の蛍光は、自家蛍光によるものである可能性が最も高く、
図3Fのアイソタイプコントロールプロファイルによって以前に示されたCD66/CD3/CD19染色によるものではない。大きなサイズ及び高い自家蛍光は、右上の細胞集団が肺胞マクロファージである可能性が高いことを示唆している(35、36)。
図9Bの左下の細胞集団は、比較的小さな細胞からなり、この亜集団もCD66/CD3/CD19
陰性であるため、マクロファージ及び/又は単球の異なるサブセットの細胞集団である可能性が高い。CD45
陰性細胞を同様に分析した(
図9C~E)。ここで、サンプルに追加されたHCC15細胞を、追加されたスパイクされたHCC15細胞を含まないが、他の点では同様に処理されたアリコートと比較した(
図9Cと
図9Dとを比較)。スパイクされたHCC15肺癌細胞のないサンプルに存在しない集団は丸で囲まれている。TCPPに対して陽性に染色される細胞は、CD45を発現しない中型の細胞であり、左上の空の円で表されるように、
図9Eには存在しない。HCC15を含まないサンプルについて左上の円に細胞集団がないことによって、HCC15細胞集団のTCPP染色プロファイルが確認される(
図9E)。CD45
陰性喀痰細胞(中央/右上に丸で囲まれている)の中の他のTCPP
陽性細胞集団は、HCC15細胞と同様のサイズの細胞を含む(
図9F)。これらの細胞もCD45
陰性であるが、FITCチャネルでの低レベルの自家蛍光によってHCC15細胞と区別することができる(
図9D及び
図9E)。
【0102】
ここで
図10A~
図10Bを参照すると、品質管理(QC)ビーズを使用して、
図10Bのドットプロットにおいてビーズサイズ除外(BSE)ゲートを確立する。
図10Bの喀痰サンプルは、約5μmのビーズサイズ付近に配置されたゲートの左側及び約30μmのビーズサイズ付近に配置されたゲートの右側にある細胞を分析から除去するようにゲートされている。喀痰サンプル、コントロール、アイソタイプコントロール、及びビーズは、以下の実験プロトコルで説明されているように調製される。
【0103】
ここで
図11A~
図11Fを参照すると、処理された及び処理されていない喀痰サンプルがフローサイトメトリーによって分析され、結果として得られるドットプロットが示されている。未処理の喀痰細胞は、まず、BSEゲートを使用してサイズをゲートし、さらに分析するために約5umより大きく約30umより小さいサイズの細胞を選択する。
図11Aは、サイズ範囲内にある喀痰細胞のドットプロットを示す。サイズゲートはBSEゲートと呼ばれる。BSEゲートは、デブリ及び赤血球を除外するが、扁平上皮細胞(SEC)は除外しない。SECは死細胞であるため、生存率色素FVS510を使用した喀痰サンプル分析から排除される。
図11B~
図11Cは、処理されていない(
図11B)及び処理された(
図11C)喀痰細胞の、BV510蛍光対前方側方散乱のドットプロットを示す。色素を取り込まない喀痰細胞は生細胞(LC)であり、
図11Cの線の下側に位置している。生細胞ゲートはLCゲートと呼ばれる。色素は死細胞を染色し、生細胞はFVS510で染色されない細胞である。本実施例では色素FVS520を使用したが、他の生存率染色/色素もLC集団を区別するために機能する。それを超えると細胞がFVS510に対して陽性である(したがって死細胞である)と見なされる閾値は、未染色のコントロールに基づく(
図11B)。未染色のコントロールの大部分の細胞(95%以上)はLCゲート内にあり、5%未満の細胞(「バックグラウンド染色」)はLCゲートの外側にある。次に、このLCゲートをFVS510で染色された喀痰サンプルに適用すると、生細胞はLCゲート内の細胞であり、死細胞はゲート外にある。
【0104】
図11Dは、単一細胞対ダブレット細胞を同定するための未染色の喀痰サンプルのドットプロットである。細胞ダブレットは、フローサイトメータによって1つのイベントと見なされ、1つのイベントには2つ以上の細胞を表すTCPPの量が含まれ得る。したがって、ダブレットは、人工的に高いTCPP含有量のイベントを作成し、TCPPが癌細胞のマーカとして使用されるため、癌細胞又は癌関連細胞であるという誤った示唆を与える可能性がある。ダブレットを排除するために、単一細胞(SC)集団を同定するためのゲートが描画される。FSC-A対FSC-Hのドットプロットの喀痰細胞プロファイルが取得データから作成され、BSE/LCゲートがSC集団の分析に適用される。2つの対角線が主な集団の軸に沿って、1つは上部に沿って(
図11Dでは「上側の対角線」として示され、もう1つは下部に(「下側の対角線」))描画される。下側の対角線は上側の対角線とやや平行に走り、そこから細胞が主な集団から離れて広がっているように見える集団の「ノッチ」から開始して右に延びるのが最適である(図示せず)。広がっている細胞(すなわち、対角上の集団に従わない細胞又はドットはダブレットであり、分析から除外する必要がある。SCゲートには、対角線方向の集団を形成する細胞のみが含まれる。SC細胞は、
図11Dの対角ゲート内に示されている。SCゲートは、2つの対角線、すなわち1つは主な集団の上部に沿って走る(「上側の対角線」で示される)、もう1つは下部の主な集団に従う(「下側の対角線」)対角線を接続することによって作成される。下側の対角線を配置するには、ドットプロットに「ノッチ」を見つける必要があり、これは、主な対角線方向の細胞集団に従わない細胞の開始を示す。下側の対角線(薄い灰色の領域)の下側及び右側には、SCゲートから除外される細胞ダブレットが含まれる。下側の対角線は、主な対角線の集団に上下に従いながら、ノッチを横切る必要がある。
【0105】
図11E~
図11Fは、PEコントロール又はPEフルオロフォアに結合されたCD45プローブのいずれかで処理された喀痰細胞のドットプロットを示す。
図11Eは、アイソタイプコントロールである。
図11Fは、細胞をCD45
陽性(血液細胞)又はCD45
陰性(非血液細胞)のいずれかとして同定し、CD45ゲートと呼ばれる。
【0106】
被験者からの最初の喀痰サンプルは、フルオロフォアに結合されたCD45プローブ、フルオロフォアに結合されたCD66b、CD3、CD19のカクテル、フルオロフォアに結合したCD206、及びTCPPで処理する(チューブ#6)。
図12A~
図12Cは、CD66b/CD3/CD19-FITC-Alexa488及びCD206-PE-CF594マーカで処理されたCD45
陽性喀痰細胞を選択するためのBSE、LC、SC及びCD45ゲートの適用によって選択された喀痰細胞のドットプロットを示す。適用されたゲートの基準を満たした細胞のみがさらに分析される。細胞の集団は、CD206抗体(x軸)及びCD66b/CD3/CD19(y軸)に沿ったフルオロフォア強度に基づいて同定された。各サンプルで、5~6個の集団を同定することができる。各集団の相対的なサイズは、サンプルごとに異なる。
図12Aは、集団1が優勢であるプロファイル1を示す。
図12Bは、集団2が優勢であるプロファイル2を示す。
図12Cは、CD206
陽性(CD206
+)細胞が優勢である、すなわち、集団3~6のプロファイル3を示す。各タイプのプロファイルの優勢な集団は、太線のボックスで示されている。CD45
陽性喀痰細胞の3つの異なるシグネチャが示されている。以下の図でさらに同定されるように、アイソタイプコントロール及びコントロール喀痰サンプルに照らして、5~6個の細胞集団が確立される。マクロファージの存在は、サンプルが肺深部からのものであることを示す。表3は、各集団に存在する細胞タイプを示す。
【表3】
【0107】
図13A~
図13Bを参照せずに、FITC/ALEXA-488のアイソタイプコントロール、及びFITC/ALEXA-488に結合されたCD66b/CD3/CD19プローブで処理された喀痰細胞のドットプロットが示されている。
図13Aは、FITC/Alexa488アイソタイプコントロールで染色されたCD45
陽性細胞のドットプロットが、x軸上のFSC対y軸上のFITC/Alexa488として表示されることを示す。
図13Bは、CD66b/CD3/CD19-(FITC/Alexa488)及びCD206-(PE-CF594)に対して向けられた抗体のカクテルで染色されたCD45
陽性細胞のドットプロット(
図11Aと同様)を示す。水平のFITC/Alexa488ゲートは、バックグラウンド染色を超える細胞に基づいて設定される。アイソタイプコントロールの陰性ゲートは、アイソタイプコントロールの細胞の約95%を含むように設定され、陽性ゲートは、約5%以下のバックグラウンドを含むように設定される。ほとんどのサンプルのCD45
-細胞におけるFITC/Alexa488陰性ゲートの最高値は、平均で450であり、100~1000の範囲である。
【0108】
ここで
図14A~
図14Bを参照すると、PE-CF594のアイソタイプコントロール、及びPE-CF594で標識されたマーカで処理された喀痰細胞のドットプロットが示されている。
図14Aは、アイソタイプコントロールで染色されたCD45
陽性細胞のドットプロットを示しており、x軸上のFSC対y軸上のPE-CF594として表示されている。
図14Bは、PEに結合され、CD206細胞マーカに対して向けられたプローブ/抗体で染色されたCD45
陽性細胞のドットプロット(
図14Aと同様)である。
図14Bは、それを超えてCD206標識に陽性の細胞集団が見出されるゲートを同定する。ほとんどのサンプルのCD45
-細胞のPE-CF594陰性ゲートの最高値は、平均で250であり、90~500の範囲である。
【0109】
ここで
図15A~
図15Bを参照すると、二重陰性ゲート又は集団1を設定するドットプロットが示されている。
図15Aは、FITC/Alexa488及びPE-CF594(Texas-Red)チャネルのアイソタイプコントロールで染色されたCD45
陽性喀痰細胞を表示するドットプロットであり、y軸上のFITC/Alexa488対x軸上のPE-CF594(Texas-Red)として表示される。
図15Bは、
図15Aに示されているものと同じドットプロットであり、アイソタイプコントロールからの疑似カラープロットとして示されており、BSE、LC、及びCD45
陽性細胞ゲートを介してゲートされている。水平の点線は、
図13で決定されたFITC/Alexa488の陽性/陰性のカットオフを表し、垂直の点線は、
図14で決定されたPE-CF594の陽性/陰性のカットオフから導出される。
図15で決定された集団1のゲートは、それぞれ
図16A及び
図16Bに示されるCD66b/CD3/CD19(FITC/Alexa488-y軸)及びCD206(PE-CF594-x軸)に対して向けられた抗体で染色されたCD45
陽性喀痰細胞のフルドットプロット及び疑似カラープロットに転送される。ほとんどのサンプルにおけるCD45
陽性細胞のFITC/Alexa488陰性ゲートの最高値は、平均で600であり、200~1050の範囲である。ほとんどのサンプルにおけるCD45
陽性細胞のPE-CF594陰性ゲートの最高値は、平均で500であり、200~750の範囲である。
【0110】
ここで
図16A~
図16Bを参照すると、
図15のような喀痰サンプルのドットプロットであり、CD45
陽性細胞は、FITC/Alexa488に結合されたCD66b/CD3/CD19抗体とPE-CF594と結合したCD206とのカクテルで染色され、細胞の異なる集団の存在について分析された。1~5として同定された細胞集団は、BSE、LC SC、及びCD45
陽性ゲートを適用した後も残る。
図16Aの同じ集団1(ボックス)及びカットオフ(点線)は、
図15に描画されたものと同様であり、
図16A~
図16Bに示されるプロファイルに適用される。
【0111】
図16Bは、確立された集団2~6のゲートを示す。集団3、5、及び6はFITC自家蛍光であり、
図16Aに示すように水平の点線より上にあるはずである。FITCにおける自家蛍光ではない集団4は、
図16Aに示すように点線を下回るはずである。集団2は、(集団1と同様に)CD206に対して陰性だが、CD66b/CD3/CD19に対して陽性の細胞として特徴付けられるため、集団2のゲートは集団1の上に描画され、
図16Aの垂直の点線であるPE-CF594カットオフの右側にある。実線及び点線で形成された集団1の上のボックスは、集団2として
図16Bに示される。集団5は、PE-CF594
陽性及びFITC
陽性の両方であるプロファイルの右側にある完全に隔離された集団として同定できる(
図16B、集団5ゲート)。場合によって、集団5は中間FITC/Alexa455
陽性であり、その場合、集団5を隔離するためのゲートは、水平の赤い点線と交差する(
図17Aを参照)。
【0112】
ここで
図17A~
図17Cを参照すると、CD45
陽性であり、2つのサンプルからのCD66b/CD3/CD19-FITC/Alexa488のプローブで処理された喀痰サンプルからの疑似カラードットプロットである(
図17A~
図17Bは同じサンプルであるが、異なるゲートを示す。すべてのプロットは、BSE、LC、及びSCゲートを介してゲートされたCD45
陽性喀痰細胞を示す。水平及び垂直の点線は、アイソタイプコントロール上に設定された(図示せず)。
図17A~
図17Bは、集団5のFITC平均蛍光強度が中間であり、カットオフラインを横切るときのゲート4及びゲート5の描画を示す。
図17Cは、集団6の右上のボックスを示す。
【0113】
ここで
図18を参照すると、x軸上の各()は、
図12A~
図12Cからのプロファイルを反映している。プロファイル1の場合、すべてのCD45
陽性細胞の割合(%)としての各集団(集団1、集団2、集団1+2、集団3+4+5+6)の中央値が、高リスク(HR)喀痰サンプルに対してプロットされる。プロファイルグループの各集団の中央値は、直線で結ばれる。プロファイル1のシグネチャは、プロファイル1の
図18で同定された各集団の中央値間に線を引くことによって作成される。プロファイル2及び3のシグネチャは、肺癌を発症するリスクが高い被験者及び肺癌を有すると同定された被験者からの喀痰サンプルに対して同様に生成される。
【0114】
ここで
図19A~
図19Cを参照すると、肺癌を発症するリスクが高い(HR)被験者と癌(C)を有すると同定された被験者とから収集された喀痰からの血液細胞シグネチャの比較が示されている。
図19Aは、
図18からのプロファイル1のシグネチャ(シグネチャ1)を示す。
図19Bは、プロファイル2のシグネチャ(シグネチャ2)を示す。
図19Cは、プロファイル3のシグネチャ(シグネチャ3)を示す。集団6の細胞の割合(%)が、HR及びC喀痰サンプルの各シグネチャについて決定及び同定された。
【0115】
図20A~
図20Dは、チューブ#7のようにCD45並びにpanCytokeratin-Alexa488及びEpCAM-PE-CF594データのカクテル並びにTCPPで処理された喀痰細胞のドットプロットを示す。ドットプロットに示される細胞は、BSE、LC、SC、CD45ゲートが適用された後に残っている細胞である。(CD45
陰性)プロファイル1~4の細胞のドットプロットと、各集団が表す相対TCPP蛍光強度に加えて、各プロファイル1~4が表す各集団のすべてのCD45
陰性細胞の割合とをさらに分析する。
【0116】
各サンプルにおいて、
図20Aに示されるように、9つの集団を同定することができる。各プロファイル2~4について、同じ9つの集団が同定される。各亜集団の相対的なサイズはサンプルごとに異なり、それぞれが異なるプロファイルを示す(プロファイル1~4)。
図20Aは、集団1が優勢であり、すべてのCD45
陰性細胞の80%超を含むタイプのプロファイルを示す。
図20Bは、集団1も同様に優勢であるが、すべてのCD45
陰性細胞の80%未満を含むタイプのプロファイルを示し、多くの場合、他のゲートの1つに明確な細胞集団がある。
図20Cは、依然として大きな集団1(ただし、80%未満)が存在するが、2番目に大きい集団が集団2であるタイプのプロファイルを示す。
図20Dは、集団5が最も優勢な集団又は集団1に次いで2番目に優勢な集団であるプロファイルを示す。プロファイルごとに異なるシグネチャが存在する。シグネチャのタイプを決定するために最も重要な集団は、太線のボックスである。
【0117】
図21A~
図21Bは、FITC/Alexa488で処理されたか、又はpanCytokeratin/Alexas488で処理されたCD45
陰性喀痰細胞のアイソタイプコントロールのドットプロットを示す。分析の前に、BSE、LC、SC、及びCD45
陰性のゲートを分析のために集団に適用した。2つのプロファイルが生成され、1つはx軸に前方側方散乱A(FSC-A)、y軸にFITC/Alexa488を有するCD45
陰性細胞を表示し(
図21A)、もう1つはx軸にFSC-A、及びy軸にpanCytokeratin/Alexa488を有するCD45
陰性細胞を表示する(
図21B)。各プロファイルの陰性ゲートは、アイソタイプコントロールの細胞のおよそ95%を含むように設定されている。各プロファイルの陽性ゲートには、陰性ゲートの上の残りのスペースが含まれ、バックグラウンド染色の5%以下を含むはずである。
【0118】
図22A~
図22Bは、PE-CF594のアイソタイプコントロール、並びにBSE、LC、SC及びCD45
陰性細胞ゲートを介してゲートされたCD45
陰性喀痰細胞のドットプロットを示す。分析の前に、BSE、LC、SC、及びCD45
陰性のゲートを分析のために集団に適用した。2つのプロファイルが生成され、1つはx軸に前方側方散乱A(FSC-A)、y軸にPE-CF594を有するCD45
陰性細胞を表示し(
図22A)、もう1つはx軸にFSC-A、y軸にEpCAM-PE-CF594を有するCD45
陰性細胞を表示する(
図22B)。各プロファイルの陰性ゲートは、アイソタイプコントロールの細胞のおよそ95%を含むように設定されている。各プロファイルの陽性ゲートには、陰性ゲートの上の残りのスペースが含まれ、バックグラウンド染色の5%以下を含むはずである。
【0119】
ここで
図23A~
図23Bを参照すると、CD45
陰性細胞の二重陰性ゲート又は集団1を有するドットプロットが示されている。
図23Aはドットプロットであり、
図23Bはアイソタイプコントロールからの疑似カラープロットであり、処理された喀痰サンプルはフローサイトメータを介して分析され、細胞を表すイベントはBSE、LC、SC及びCD45
陰性細胞ゲートを介してゲートされる。
図23Aの水平の点線は、
図21で決定されたFITC/Alexa488の陽性/陰性のカットオフを表し、垂直の点線は、
図22で決定されたPE-CF594の陽性/陰性のカットオフから導出される。
図23で決定された集団1のカットオフラインは、すべてのサイトケラチン(Alexa488-y軸)及びEpCAM(PE-CF594-x軸)に対して向けられた抗体で染色されたCD45
陰性細胞のフルドットプロット及び疑似カラープロットに組み込まれる。
【0120】
ここで
図24A~
図24Bを参照すると、チューブ#7のCD45
陰性喀痰細胞の集団2~9のゲートが、図示のように設定されている。
図24Aは喀痰細胞のドットプロットであり、
図24Bは
図23と同じ喀痰サンプルからの疑似カラープロットであるが、今回は、すべてのサイトケラチンに対して向けられたAlexa488標識抗体(y軸)、及びEpCAMに対して向けられたPE-CF594標識抗体(x軸)で細胞を染色する。BSE、LC、及びSCゲートを介しても選択されたCD45
陰性細胞が示されている。
図23に描画されているのと同じ集団1(実線のボックス内の細胞)及びカットオフ(そこから延びる点線)が、これらのプロファイルに適用される。Cytokeratin
++細胞は、panCytokeratin抗体で高度に染色される細胞を示し、EpCAM
++細胞はEpCAM抗体で高度に染色される細胞を示す。集団1、2、及び3はEpCAM陰性であるため、集団1の上に、集団1と6との間に存在する垂直の縞模様の線の左側にあるはずである。最初の3つの集団間の違いは、それらが異なるレベルのpanCytokeratinを発現することである。集団2と3との間のカットオフは、panCytokeratin-Alexa488で高度に染色された細胞を同定することによって決定される。高度にAlexa488で染色されたCD45
陰性細胞のカットオフは10,000~20,000の蛍光強度(平均14,000)の範囲であり、このカットオフは集団3、並びに集団4及び9の下側の線を決定する。
図24Aは、集団2と集団3とを分離する水平の縞模様の線を示し、この線より上の細胞は、この特定のサンプルにおいて、抗panCytokeratin抗体で高度に染色されたと見なされる。カットオフは、10,000蛍光強度マークより上で明確な細胞集団が同定できる疑似カラープロットで決定された。集団1、6、及び7はpanCytokeratin陰性であり、集団6及び7は、水平の縞模様の線より下に、集団1の右側にある。集団1、6、及び7の間の違いは、これらの細胞で発現するEpCAMのレベルである。集団7は、集団8及び9と同様に、EpCAMを高度に発現する細胞の集団として同定される。EpCAMを高度に発現する細胞のカットオフは、平均で3000であり、1000~6000の範囲である。
図16Aの垂直の縞模様の線は、高度にEpCAMを発現する細胞のカットオフを示しており、それによって集団7、8、及び9の左側を同定する。特定の実施形態において、FITC高発現細胞は、PE-CF594高発現細胞のカットオフ値として10,000を使用し、PE-CF594陰性ゲート(又は垂直、実線、縞模様の線)の最高値を同定する値の10~15倍を使用する。
【0121】
図25は、BSE、LC、SC、及びCD45
陰性のゲートが適用された後に残っている高リスク被験者からのチューブ#7の喀痰細胞のドットプロットを示す。ドットプロットは、
図20に示され、
図26でさらに分析されるように、肺癌を発症するリスクが高い被験者からのプロファイル1~4を示す。
【0122】
図26は、プロファイル1の非血液細胞シグネチャ(非血液細胞シグネチャ1)を示し、各パネルに示されている同じプロファイルの各集団(集団1、集団2、集団5、及びPanCK++(CD45
陰性)の中央値が同定され、プロファイル内の各集団の中央値から線を引くことによってシグネチャが生成される。各プロファイル1~4についてシグネチャが生成される。
【0123】
図27は、疾患のない肺癌を発症するリスクが高い(HR)被験者からの喀痰サンプルの非血液細胞シグネチャを示す(ldctは、追跡C及び肺癌を有する被験者(C)を示さない)。シグネチャ4では、Cサンプルのシグネチャの場合、集団5の矢印は平均EpCAM細胞発現の減少を示し、集団pCKの矢印はHRシグネチャ4と比較して平均panCytokeratin発現が増加したことを示す。
【0124】
図28A~
図28Bは、肺癌を発症するリスクが高い被験者及び肺癌を有すると同定された被験者からの喀痰サンプルについて分析されたすべてのCD45
陰性細胞の割合としての集団3+4+9のPanCK++細胞の存在に対する感度及び特異性を示す。PanCK++バイオマーカを喀痰サンプルに適用することにより、癌細胞を同定するための感度80%、及び特異性85%を得た。
【0125】
図29A~
図29Cは、喀痰サンプル中のCD45
陰性/CD45
陽性細胞の比率(バイオマーカ1)を分析した後の、癌を発症するリスクが高い被験者及び癌を有する被験者から得られた喀痰サンプル中の細胞の分析を示す。
図29Aは、高リスクの個体からの喀痰サンプル中のCD45
陰性/CD45
陽性細胞の比率を示す。
図29Bは、癌を有することが知られている被験者からの喀痰サンプル中のCD45
陰性/CD45
陽性細胞の比率を示す。
図29Cは、2人の被験者からの喀痰サンプル中のCD45
陰性/CD45
陽性細胞の比率の分析である。
【0126】
図30A~
図30Bは、HR及びCサンプルからの喀痰サンプルをバイオマーカ1(喀痰サンプル中のCD45
陰性/CD45
陽性細胞の比率)について分析するときの特異性が54%及び感度が90%であることを示す。
【0127】
図31A~
図31Cは、チューブ#7のCD45
陰性喀痰細胞のドットプロットを示す。喀痰サンプルは、癌を発症するリスクが高い被験者と癌のある被験者とから採取し、BSE、LC、SC、及びCD45
陰性ゲートを適用した後に分析した。y軸はTCPP蛍光であり、x軸はpanCytokeratin-Alexa488である。バイオマーカ2のCD45陰性細胞のpanCytokeratin-Alexa488に対して染色される細胞におけるTCPPの存在である。
図31Aは、高リスクの個人からの喀痰サンプル中のTCPP標識細胞のドットプロットを示す。
図31Bは、癌を有することが知られている被験者からの喀痰サンプル中のTCPP標識細胞のドットプロットを示す。集団Bは、細胞のTCPP集団を示す。
図31Cは、各被験者からの集団BにおいてTCPP
陽性である喀痰サンプル中のCD45
陰性細胞の割合の分析である。
【0128】
図32A~
図32Bは、
図31のバイオマーカ2を適用して、肺癌(C)喀痰サンプルを高リスク(HR)(非肺癌)喀痰サンプルから区別する方法の一実施形態について、特異性が63%及び感度が100%であることを示す。
【0129】
図33A~
図33Cは、本発明の一実施形態に従って、肺癌を発症するリスクが高い被験者及び肺癌を有すると同定された被験者から得られた喀痰サンプルを分析するために、
図31及び
図32で同定されるように収集された喀痰サンプルに適用されるバイオマーカ1とバイオマーカ2との組み合わせを示す。
図33Cは、サンプルを癌を有する被験者又は癌を有さない被験者からのものとして同定するときの感度が90%及び特異性が90%であることを示す。
【0130】
図34A~
図34Cは、集団6中のCD66b/CD3/CD19++及びCD206++細胞の量を決定するために、CD66b/CD3/CD19及びCD206で標識された喀痰サンプル中の細胞の癌リスク分析を示す。集団6の水平ゲートは、10,000~30,000(例えば、10,000~15,000、又は15,000~20,000、又は20,000~25,000、又は25,000~30,000)の平均蛍光強度に設定される。肺癌を発症するリスクが高い被験者(
図34A)及び肺癌を有すると同定された被験者(
図34B)から得られた喀痰サンプルに存在するすべてのCD45
陽性細胞と比較した集団6の細胞の総数(バイオマーカ3)が
図34Cに示されている。
【0131】
図35A~
図35Bは、
図34のバイオマーカを適用して、肺癌(C)喀痰サンプルを高リスク(HR)(非肺癌)喀痰サンプルから区別する方法の一実施形態について、特異性が88%及び感度が60%であることを示す。
図36A~
図36Bは、肺癌を発症するリスクが高い被験者及び肺癌を有すると同定された2人の被験者から収集された喀痰サンプルからのCD45
陰性細胞の癌リスク分析を示す。集団3+4+9でpancytokeratin
陽性(又は高発現)であるCD45
陰性細胞の割合は、バイオマーカ4として同定される。
【0132】
図37A~
図37Bは、
図36のバイオマーカを適用して、肺癌(C)喀痰サンプルを高リスク(HR)(非肺癌)喀痰サンプルから区別する方法の一実施形態について、特異性が83%及び感度が80%であることを示す。
【0133】
図38A~
図38Eは、バイオマーカ1、2、3、及び4の組み合わせを適用した、癌及び高リスク被験者からの喀痰サンプルからの細胞の癌リスク分析を示す。バイオマーカ1、2、3、及び4の組み合わせを喀痰サンプルに適用して、癌のないサンプルから癌サンプルを同定する場合、98%の特異性及び78%の感度が達成される。
【0134】
図39は、本明細書に記載の肺から細胞集団を分画するシステム及び方法を含む、被験者の肺の健康のためのスクリーニングフローチャートを示す。この標識方法(CyPath(登録商標)アッセイと呼ばれる)を使用した概念実証臨床研究では、TCPP標識肺喀痰中のRFCの蛍光強度パラメータを、患者の喫煙歴に関するデータと組み合わせて、81%の精度で研究参加者を癌対高リスクコホートに分類することができた(12)。CyPath(登録商標)強化喀痰細胞診の感度は従来の喀痰細胞診よりも高い(77.9%)ことが示されたが、染色されたスライド(12スライド/患者)からカウントされた細胞数(約600,000)がアッセイ感度の制限要因であった。癌サンプルのRFCのポアソン分布を使用すると、検査する細胞の数を100万を超えるように単純に倍増させると、RFC検出が95%に増加する可能性があると予測される(12)。さらに、サンプルの妥当性を検証するためにマクロファージ定量化のための別個の喀痰スミアステップを含める必要性は、自動化又は拡張性の可能性が低いアッセイ設計に貢献した。したがって、ハイスループットフローサイトメトリーは、臨床的に適切な時間枠内で数百万の細胞イベントの検査をサポートするスライドベースの検査の代替手段である。
実験プロトコル
ヒト喀痰サンプル
【0135】
3日間の喀痰サンプルを提供するためにボランティアを募集した。3つの異なる研究コホート:1)肺癌を発症するリスクが高いが、おそらく癌はない、2)肺癌と診断されるリスクの高い個人、3)癌と診断されておらず、肺癌を発症するリスクが高くない健康な個人(22歳以上)が含まれていた。高リスクコホートと分類される被験者は、55~75歳で、30パック年以上と定義される大量喫煙者とされた(13)。(30パック年の喫煙の例は、30年間にわたって1年につき1日1箱、15年間にわたって1年につき1日2箱などである。) 健康なコホートの場合、被験者は、喫煙が5パック年以内であった、及び/又は15年以上前に禁煙しており、22歳以上である者とされた。その他の除外基準(すべてのコホートに適用可能)は、重度の閉塞性肺疾患、制御不能な喘息、最小労作の狭心症、妊娠、又は鉱業での勤務の存在であった。
喀痰の収集
【0136】
すべての研究参加者は、製造元の指示に従って、acapella(登録商標)補助デバイス(Smiths Medical社、ミネソタ州セントポール)の使用について訓練を受けた。acapella(登録商標)装置は、肺の深部から粘液分泌物を薄くして移動させるのに役立つ、FDA承認のハンドヘルドデバイスである。被験者は、デバイスを使用して、喀痰サンプルを滅菌収集カップに排出するように指示された。被験者は自宅でこの手順を繰り返し、2日目及び3日目の喀痰サンプルを収集した。被験者は、標本カップを冷暗所又は冷蔵庫に保管し、収集が完了してから1日以内に最初に収集した場所に戻すように指示された。完了した標本カップは冷凍輸送用アイスパックで梱包され、分析のために一晩で送られた。受領した3日間の収集サンプル(n=38)の細胞生存率は、平均64.3%(SD:25.6%、範囲:23.6~100%)で、すべて死細胞である頬上皮細胞(BEC又は頬細胞)は含まれない(14)。
喀痰の解離
【0137】
喀痰栓は、綿棒を使用して汚染唾液から分離した(15、16)。栓の選択が不可能な場合は、サンプル全体を処理した。喀痰は、喀痰栓重量(w/w)で、予熱した0.1%ジチオスレイトール(DTT)と1:4の比率で、及び0.5%N-アセチル-L-システイン(NAC)と1:1の比率で混合した。次に、混合物を室温で15分間揺り動かした。GIBCO(登録商標)ハンクス平衡塩溶液(HBSS、ThermoFisher Scientific社、マサチューセッツ州ウォルサム)を添加し(喀痰/DTT/NAC混合物の4倍量)、得られた細胞懸濁液を室温でさらに5分間揺り動かし、40~110μmのナイロン細胞ストレーナ(Falcon、Corning Inc社)に通してろ過してデブリを除去し、800xgで10分間遠心分離した。上澄みをデカントした後、細胞ペレットを1mLのHBSSに再懸濁させた。総細胞数は、細胞生存率を決定するためにトリパンブルー除外法を使用してノイバウエル血球計算盤で決定した。
喀痰スミア
【0138】
処理のために喀痰栓を移すのに使用したのと同じ綿棒を使用して、喀痰細胞を1つのスライドに移した。追加のスライドを使用して、喀痰サンプルを2つのスライドの間に、両方のスライドの大部分を覆うように塗り付けた(16)。スライドを風乾し、ライトギムザで染色した。片方又は両方のスライドを読み取り、病理学者がマクロファージの数をカウントした。
その他のヒトサンプル
血液
【0139】
2つの7mLバイアルの末梢血を、健康なボランティアから入手した。血液の大部分は、BD PharmLyse(商標)(BD Biosciences社、カリフォルニア州サンノゼ)で赤血球(RBC)を溶解することにより、白血球(WBC)を得るために使用した。残りはRBCのソースに使用した。
唾液
【0140】
BECは、健康なボランティアの口腔粘膜から、細胞スクレーパで頬の内側をこすることによって採取した。BECを含む唾液は、喀痰細胞の解離と同じプロトコルを使用して処理した。
肺癌細胞
【0141】
HCC15肺癌細胞(ATCC社、バージニア州マナッサス)は、37℃に設定された5%CO2インキュベータ内で、10%ウシ胎児血清と1%ペニシリン/ストレプトマイシンを添加したRPMI1640で増殖させた。
フローサイトメトリー用の抗体及び試薬
【0142】
喀痰細胞を染色するために使用できる抗体の例は、汎白血球細胞表面マーカCD45(抗CD45-PE)に対して向けられたPE標識抗体、顆粒球を同定するための抗CD66b-FITC、マクロファージを標識するための抗CD206-FITC、抗HLA-DR-BV421、抗CD11b-BV650、抗CD11b-APC及び抗CD11c-BV650であり、抗CD3-Alexa Fluor488及び抗CD19-AlexaFluor488はそれぞれTリンパ球及びBリンパ球を標識するために使用できる。抗CD45、抗CD11b、抗CD3、及び抗CD19、並びにそれぞれのアイソタイプコントロールは、BioLegend社(カリフォルニア州サンディエゴ)から購入したが、抗CD11c、抗CD66b、抗CD206、抗HLA-DR及びそれぞれのアイソタイプコントロールはBD Biosciences社から購入した。追加の抗体を表2に示す。
【0143】
テトラ(4-カルボキシフェニル)ポルフィリン(TCPP)はFrontier Scientific社(ユタ州ローガン)から購入し、CellMask(商標)原形質膜染色はThermoFisher Scientificから購入した。Megabead NISTトレーサブル粒子サイズ標準(5、10、20、30、40、及び50μm)は、Polysciences,Inc社(ペンシルベニア州ワーリントン)から購入した。
【0144】
すべての抗体は、喀痰細胞、場合によっては血液細胞(CD3及びCD19)で滴定し、アイソタイプコントロールと比較した蛍光強度の最大差を反映する最適な染色濃度を決定した。TCPP及びEpCAMの最適濃度は、喀痰細胞及びHCC15細胞で滴定した。他の染色試薬及びビーズは、製造元の推奨に従って使用した。
フローサイトメトリー分析及び細胞選別
喀痰細胞集団の特性評価
【0145】
ここで
図1Cを参照すると、各細胞がレーザからの光線を通過し、レーザからの光の散乱が前方散乱(FSC)検出器及び側方散乱(SSC)検出器で検出されるときに、細胞をフローサイトメトリーによって分析した。細胞のサイズ及び粒度は、
図1Eに示すように特徴付けることができる。
【0146】
喀痰サンプル中の細胞は、生細胞(LC)及び死細胞(DC)の存在、並びに本明細書に記載のイベントとして捕捉された単一細胞(SC)又は二重細胞があるかどうかに基づいて分画することができる。
【0147】
図2~9の解離した喀痰サンプルの単一細胞懸濁液のサンプルを、以下のプローブ:約1μg/mLの抗CD45-PE、約3μg/mLの抗CD66b-FITC、並びに抗HLA-DR-BV421(5μg/mL)、抗CD11b-APC(4μg/mL)、抗CD11c-BV650(5μg/mL)、又は抗CD3-Alexa Fluor488(2μg/mL)と抗CD19-Alexa Fluor488(2μg/mL)との混合物のいずれかの1つ以上とともにインキュベートした。別のチューブで、解離した喀痰サンプルの単一細胞懸濁液を、喀痰の質を決定するために、約1μg/mLの抗CD45-PE及び4μg/mLの抗CD206-FITCとインキュベートした。すべてのインキュベーションは、光から保護して、氷上で35分間行った。細胞をHBSSで洗浄した後、細胞を1%パラホルムアルデヒド(Electron Microscopy Sciences社、ペンシルベニア州ハットフィールド)で4℃で30分間固定した。次に、細胞懸濁液を冷HBSSで洗浄し、分析まで氷上に置いた。
HCC15スパイク喀痰サンプルのTCPP/CyPath標識
【0148】
図1~
図9を参照すると、解離した喀痰細胞は、抗CD45抗体で標識され、上記のように固定されている。HCC15細胞をトリプシンで採取し、DPBS(ThermoFisher Scientific社)で洗浄し、CellMask(商標)Green原形質膜染色で標識した。得られたCellMask(商標)Green標識HCC15細胞(cmgHCC15)を1%パラホルムアルデヒドで4℃で30分間固定し、HBSSで洗浄した。特定の喀痰細胞懸濁液に3%cmgHCC15細胞をスパイクした。次に、固定した細胞の混合物を、冷却したTCPP(4μg/mL)とともに4℃で1時間インキュベートした。標識後、細胞を洗浄し、さらに分析するまで氷上に置いた。
【0149】
一実施形態では、サンプルは、4つのレーザ(404nm、488nm、561nm、及び633nm)を備えたBD LSR-IIフローサイトメータ(BD Biosciences社)を使用して分析した。喀痰全体、CD45陽性CD206陽性、CD45陽性CD66b陽性、又はCD45陽性CD66陰性の亜集団の細胞選別を、BD FACSAria細胞選別機(BD Biosciences社)で行った。収集後のデータ分析は、FlowJoソフトウェア(Tree Star,Inc社、オレゴン州アシュランド)を使用して行った。
細胞学
【0150】
全喀痰サンプルは、上記の喀痰解離法を使用して調製した。Cytopro7620(Wescor社、ユタ州ローガン)Hettich32A(Rotofix社、マサチューセッツ州ビバリー)細胞遠心分離機を使用して、スライドあたり1及び2.5×105個の細胞でサイトスピンを調製した。スライドは、製造元のプロトコルに従って、ライト又はライトギムザ染色のいずれかで染色した。画像は、Nikon社製Eclipse Ti又はOlympus社製BX40顕微鏡で室温で作成した。Nikon社製顕微鏡には、UPlanApo20X/0.7対物レンズ及びDS-Ri2カメラ、Olympus社製顕微鏡にはPLAPO60X/1.4対物レンズ及びSD100カメラが装備されている。NIS-Elements Advanced Research(Nikon社)及びCellSens Standard(Olympus社)を使用して画像を保護した。
【0151】
マクロファージは、喀痰サンプルの妥当性を検証するために伝統的に使用されてきた。細胞診によって喀痰サンプルを評価するためのパパニコロウ細胞病理学会のガイドラインは次のように述べている。「マクロファージの数の数値的なカットポイントは、一貫して文献中に報告されていないが、適切な標本には、このタイプの簡単に同定できる細胞が多数あるはずである」(31)。HLA-DR及びCD11b(又はCD11c)は、CD14及びCD206とともに、肺内のマクロファージ及び単球のさまざまなサブセットのフローサイトメトリーによる同定に有用なマーカであることが示されている(32、33)。CD206は、胚発生中に肺に存在する長寿命の細胞である肺胞マクロファージに特異的なマーカである(34)。CD206陽性マクロファージは、造血起源であるが、血液循環には見られない。このマクロファージの集団は肺組織に特異的であり(34)、したがって、サンプルの妥当性を検証する手段として役立つ良い候補である。
喀痰サンプルの調製
【0152】
サンプルは、
図10~
図39に記載の分析用に調製される。簡単に言えば、喀痰サンプルを受領、処理、抗体標識し、1日目に色素標識を行う。サンプルはTCPPで処理し、2日目にフローサイトメトリーで分析する。
図10~
図39で分析された喀痰サンプルは、以下のように処理する。サンプルは、少なくとも1つのレーザ、又は少なくとも2つのレーザ、又は少なくとも3つのレーザ及び複数のチャネル、例えば5チャネル又は少なくとも5チャネルを有するがこれらに限定されないフローサイトメータで分析する。
喀痰の解離
【0153】
喀痰サンプルを秤量し、その重量に基づいて、解離試薬を以下のように添加する。1容量の0.5%NAC溶液をサンプルに、4容量の0.10%DTT溶液をサンプルに添加する。サンプルをボルテックスし、室温で撹拌する。その後、現在の総量に基づいて4容量の1×ハンクス平衡塩溶液(HBSS)(喀痰+NAC+DTT溶液)を添加する。サンプルをろ過し、800xgで10分間遠心分離する。上澄みを吸引し、サンプルサイズに応じてペレットをHBSSで再懸濁する(例えば、小(3g以下)サンプルに250μl HBSSを添加、中(3g超8g以下)サンプルに760μl HBSSを添加、大(8g超)サンプルに1460μl HBSSを添加)。細胞収量の決定には1:10希釈液を使用する。
【0154】
0.5%N-アセチル-L-システイン(NAC)溶液:0.85gのクエン酸ナトリウム二水和物を45mLのddH2O、500μLの3M NaOH、0.25g NACに添加し、溶解するまで撹拌する。pH溶液を約7.0~8.0に調整し、ddH20で容量を50mLに調整する。
【0155】
0.10%ジチオスレイトール(DTT)溶液:0.10gのDTTを100mLのddH2Oに添加し、溶解するまで撹拌する。溶液を10mLのアリコートに分割し、使用するまで-20℃で凍結/保存する。
【0156】
1mg/mL CyPath TCPPストック溶液は次のとおりである。25mLのイソプロパノールと0.2gの重炭酸ナトリウムとを25mLのddH2Oに添加し、溶解するまで撹拌する。必要に応じて、溶液のpHを約9~10に調整する。0.05gのTCPPを添加し、溶液を光から保護し、溶解するまで撹拌する。
【0157】
表4は、カウント及び抗体標識のためにチューブに分注される細胞のμlを示す。
【表4】
【0158】
抗体/FVS標識
喀痰細胞は、表4に従って、表5で特定される試薬に分注され、この試薬は、解離した喀痰細胞を標識するための実験チューブ及びコントロールチューブを準備するために添加される。
【表5】
【0159】
表6、及び表7、表9:ビーズサイズ、フローサイトメータの補正、アイソタイプコントロール、喀痰バックグラウンド、及び処理された喀痰のサンプルは、記載のように調製される。
【表6】
【表7】
【0160】
チューブ#1~#7を暗所で35分間インキュベートする。抗体のインキュベーション後、各チューブに冷HBSSを充填し、上澄みを800xgで10分間4℃でスピンダウンする。上澄みを廃棄し、ペレットを以下のように再懸濁する。チューブ#1~#3に、0.5mLの冷HBSSをチューブに加え、フローサイトメトリーによるデータ取得まで4℃で氷上に保存する。 チューブ#4及び#5に、2mLの冷1%PFA固定液を添加する。チューブ#6及び#7に、10mLの冷1%PFA固定液を添加する。ホイルで覆った氷上でチューブを1時間インキュベートする。固定インキュベーション後、各チューブに冷HBSSを充填する。細胞を1600xgで10分間4℃でスピンダウンする。ペレットを乱さずに、できるだけ上澄みを吸引する。ペレットを残留液に再懸濁する。チューブ#4及び#5を0.2mLの冷HBSSに再懸濁し、チューブ#1~#3とともに、フローサイトメトリーによるデータ取得まで4℃で氷上に保存する。チューブ#6及び#7について、次式に従って氷冷HBSSを添加する。
各チューブの最終容量(mL)=0.15*[総細胞/106](式1)
【0161】
細胞#については、トリパンブルーで1:40に希釈した細胞懸濁液から細胞数を取得する。10μLの1:40希釈液を血球計算盤に加え、4つの大きな象限すべての細胞を数える。正確な細胞数は、象限ごとに25~60個の細胞を構成する。
【0162】
2日目にTCPP標識の準備ができるまで、チューブ#6及び#7は4℃で氷上に一晩置く。
【表8】
【0163】
CyPathアッセイTCPPワーキング溶液は、冷HBSSを使用して20μg/mL TCPP溶液(ストックの1:50)として作成され、光から保護されている。FVS及びTCPP標識の未染色コントロールとして使用されるA549細胞を含むチューブ1本を入手する(チューブ#8)。FVS標識の補正チューブとして使用されるA549細胞を含むチューブ1本を入手する(チューブ#9)。TCPP標識の補正チューブとして使用されるA549細胞を含むチューブ1本を入手する(チューブ#10)。panCK標識の補正チューブとして使用されるA549細胞を含むチューブ1本を入手する(チューブ#11)。
TCPP標識
【0164】
表10に従って、CyPathアッセイTCPPワーキング溶液の容量を添加する。
【表9】
【0165】
サンプルをTCPPで約1時間インキュベートし、チューブ#6、#7、及び#10に冷HBSSを充填し、1000xgで15分間4℃で遠心分離する。ペレットを乱さずに上澄みを吸引する。チューブ#6、#7、及び#10について、ペレットを冷HBSSで洗浄し、遠心分離ステップと洗浄ステップとを繰り返す。チューブ#6、#7、及び#10について、ペレットを残留液に再懸濁し、300μLの冷HBSSをチューブ#10に添加し、総細胞数が20×106個未満の場合、250μLの冷HBSSをチューブ#6及び#7に添加し、15mLコニカルチューブからフローサイトメトリーチューブ(それぞれ#6及び#7のラベルが付いた)に細胞を移す。
【0166】
フローサイトメトリーデータ取得
以下の設定では、10,000イベント/秒以下のフローサイトメトリー取得率が推奨される。
LSRIIで使用されるパラメータは次のとおりである。閾値、FSC電圧、SSC電圧、BV510電圧であって、この電圧は、BEC、PE電圧、FITC電圧、PE-TxRed電圧、及びAPC電圧を含むすべての細胞で確かめる必要がある。同等のフローサイトメータを使用してアッセイを最適化するために、当業者には、同じ又は同様の結果を達成するための好ましい設定が知られているであろう。
【0167】
集団ゲートを決定する蛍光強度値の概要:
【表10】
【0168】
参照される設定はLSRII機器に特有であり、他のフローサイトメータによって異なり得るが、さまざまな機器を補正して同等の範囲を生成する方法は、当業者には明らかであることに留意されたい。
【0169】
上記の例は肺癌検出の例示であるが、肺の他の疾患及び状態は、本明細書に開示されるシステム及び方法を用いて経時的に検出及び/又は監視することができる。例えば、被験者が喘息、COPD、インフルエンザ、慢性気管支炎、結核、嚢胞性線維症、肺炎、移植片対宿主病、喀痰などの肺疾患に関連する症状を発症又は悪化する傾向があると疑われる場合、コントロール(非疾患)及び疾患サンプルプロファイルのデータベースと比較して、細胞集団の分布の変化について分析してもよい。
【0170】
明細書及び特許請求の範囲において、「約」又は「およそ」は、引用された数値の20パーセント(20%)以内を意味することに留意されたい。本明細書に開示されるすべてのコンピュータソフトウェアは、CD-ROM、DVD-ROM、ハードドライブ(ローカル又はネットワークストレージデバイス)、USBキー、他のリムーバブルドライブ、ROM及びファームウェアを含むがこれらに限定されない任意のコンピュータ可読媒体(媒体の組み合わせを含む)上に具現化され得る。
【0171】
少なくとも1つの実施形態において、当技術分野における通常の技術の1つによって容易に理解されるように、本発明による装置は、上記のステップを実施するコンピュータソフトウェアでプログラムされた汎用又は特定目的のコンピュータ又は分散システムを含み、このコンピュータソフトウェアは、C++、FORTRAN、BASIC、Java(登録商標)、アセンブリ言語、マイクロコード、分散プログラミング言語など、適切なコンピュータ言語であり得る。本装置はまた、様々なハードウェア実装において、複数のそのようなコンピュータ/分散システム(例えば、インターネット及び/又は1つ以上のイントラネットを介して接続されている)を含み得る。例えば、データ処理は、適切にプログラムされたマイクロプロセッサ、コンピューティングクラウド、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)などによって、適切なメモリ、ネットワーク、及びバス要素と組み合わせて実行され得る。フローサイトメータを移動するときに分析された細胞及び粒子から記録された多次元データが記録され、多次元光学特性に基づいて細胞集団の分析及び分画が可能になる。
【0172】
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【0173】
本発明は、これらの実施形態を特に参照して詳細に説明されてきたが、他の実施形態は、同じ結果を達成することができる。本発明の変形及び改変は、当業者には明らかであり、添付の特許請求の範囲において、そのようなすべての改変及び同等物を網羅することを意図している。上記で引用されたすべての参考文献、出願、特許、及び刊行物の開示全体は、参照により本明細書に組み込まれる。