(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】積層型貼付剤
(51)【国際特許分類】
A61K 9/70 20060101AFI20241004BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20241004BHJP
A61K 47/06 20060101ALI20241004BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20241004BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20241004BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20241004BHJP
A61K 31/433 20060101ALI20241004BHJP
A61P 21/02 20060101ALI20241004BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20241004BHJP
A61K 31/19 20060101ALI20241004BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20241004BHJP
B32B 27/12 20060101ALI20241004BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
A61K9/70 401
A61K47/32
A61K47/06
A61K47/10
A61K47/14
A61K47/34
A61K31/433
A61P21/02
A61K45/00
A61K31/19
B32B27/00 M
B32B27/12
B32B27/18 F
(21)【出願番号】P 2021554314
(86)(22)【出願日】2020-10-14
(86)【国際出願番号】 JP2020038707
(87)【国際公開番号】W WO2021079795
(87)【国際公開日】2021-04-29
【審査請求日】2023-05-22
(31)【優先権主張番号】P 2019191677
(32)【優先日】2019-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】302005628
【氏名又は名称】株式会社 メドレックス
(74)【代理人】
【識別番号】110004233
【氏名又は名称】弁理士法人NSI国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100104802
【氏名又は名称】清水 尚人
(72)【発明者】
【氏名】三輪 泰司
(72)【発明者】
【氏名】濱本 英利
【審査官】榎本 佳予子
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-010727(JP,U)
【文献】国際公開第2004/089347(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/133329(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/151423(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00-9/72
A61K 47/00-47/69
A61K 31/00-33/44
A61P 1/00-43/00
A61K 45/00
B32B 27/00-27/42
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
剥離層、薬剤層、伸縮性を有する薬剤支持層、粘着剤層、及び粘着剤支持層がこの順で積層されている貼付剤であって、
薬剤層及び薬剤支持層のいずれの外縁よりも剥離層、粘着剤層及び粘着剤支持層の外縁が外側であり、
薬剤層及び薬剤支持層の外縁と剥離層及び粘着剤層の内側とで囲まれた部分に空間を有し、
薬剤層及び薬剤支持層平面において、少なくとも長手方向中心線及び短手方向中心線に沿って切断した場合の当該空間の断面積が0.3mm
2以上
であり、かつ
薬剤支持層の平均厚みが0.4mm以上2.0mm以下であることを特徴とする、積層型貼付剤。
【請求項2】
薬剤層及び薬剤支持層平面において、長手方向中心線及び短手方向中心線を含め長手方向及び短手方向に切断した場合の当該空間の断面積が平均して0.3mm
2以上である、請求項1に記載の積層型貼付剤。
【請求項3】
薬剤支持層が、不織布、織布、及びエラストマーフィルムからなる群から選ばれる1種以上で構成される、請求項1
又は2に記載の積層型貼付剤。
【請求項4】
薬剤支持層が不織布からなる、請求項
3に記載の積層型貼付剤。
【請求項5】
不織布の目付が、50~160g/m
2の範囲内である、請求項
4に記載の積層型貼付剤。
【請求項6】
不織布がポリエステル樹脂からなる、請求項
4又は
5に記載の積層型貼付剤。
【請求項7】
粘着剤支持層が伸縮性を有する、請求項1~
6のいずれか一項に記載の積層型貼付剤。
【請求項8】
薬剤層に有色の薬剤を含有する、請求項1~
7のいずれか一項に記載の積層型貼付剤。
【請求項9】
薬剤層に炭化水素、多価アルコール、及びエステルからなる群から選ばれる1つ以上の溶媒を含有する、請求項1~
8のいずれか一項に記載の積層型貼付剤。
【請求項10】
粘着剤層にアクリル系ポリマー、ゴム系ポリマー、及びシリコーン系ポリマーからなる群から選ばれる1つ以上のポリマーを含有する、請求項1~
9のいずれか一項に記載の積層型貼付剤。
【請求項11】
剥離層がシリコーン処理されている、請求項1~
10のいずれか一項に記載の積層型貼付剤。
【請求項12】
薬剤層の平面の面積が薬剤支持層の平面の面積の90~100%の範囲内である、請求項1~
11のいずれか一項に記載の積層型貼付剤。
【請求項13】
薬剤層の平面の面積が粘着剤層の平面の面積の20~90%の範囲内である、請求項1~
12のいずれか一項に記載の積層型貼付剤。
【請求項14】
薬剤支持層の平面の面積が粘着剤層の平面の面積の20~90%の範囲内である、請求項1~
13のいずれか一項に記載の積層型貼付剤。
【請求項15】
薬剤支持層の端部から粘着剤層の端部までの距離の平均値が、0.5~3cmの範囲内である、請求項1~
14のいずれか一項に記載の積層型貼付剤。
【請求項16】
粘着剤層の平面の面積が粘着剤支持層の平面の面積の90~100%の範囲内である、請求項1~
15のいずれか一項に記載の積層型貼付剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2019年10月21日に日本国特許庁に出願された日本国出願番号第2019-191677号の利益を主張するものである。当該日本国出願は、その出願書類(明細書、特許請求の範囲、図面、要約書)の全体が本明細書に明示されているかのように全ての目的で参照により本明細書に援用される。
本発明は、積層型貼付剤に関するものである。本発明は、特に、薬剤保持性と皮膚への接着性に優れた、間隙を有する積層型貼付剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、薬物を経皮から効率的かつ長時間持続的に投与する製剤形態として、貼付剤が知られている。その貼付性を向上させる試みの1つとして、薬物を含む膏体部分を取り囲むように粘着層を含むカバーを設けることが行われている。たとえば、特定の溶解パラメータを有する薬物と基剤を含む、カバー材付き貼付剤(特許文献1)や貼付剤層とカバー層との間に緩衝材を有する積層構造の貼付製剤(特許文献2)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2015/087927号
【文献】国際公開第2015/133329号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記先行発明のように貼付剤にカバー層を設けたとしても、薬剤層内成分(膏体成分)が薬剤層内からカバー層へ漏出し薬効が減少してしまうおそれがある。そのため、薬剤を薬剤膏体部分に長期間保持し、薬剤層内成分が漏出せずに、皮膚への接着性の高い貼付剤の開発が望まれていた。
本発明の主な課題は、薬剤保持性、皮膚への接着性に優れた新たな貼付剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明者らは、例えば、特許文献2に記載されているような、いわゆるカバー層を有する貼付剤の製品において剥離層とカバー層を含む構造と支持体部分の材質について検討を行った。
その結果、剥離層とカバー層の接着部分にわずかに空間を設けることで、薬剤がカバー層へ移行することを抑えることができ、皮膚への接着性も向上することができ、また薬剤層の支持体部分に伸縮性を有する材料を用いることで、薬剤層を効率よく皮膚に密着させることができることを本発明者らは見出し、本発明を完成するに到った。
【0006】
本発明として、例えば、以下のものを挙げることができる。
[1]剥離層、薬剤層、伸縮性を有する薬剤支持層、粘着剤層、及び粘着剤支持層がこの順で積層されている貼付剤であって、
薬剤層及び薬剤支持層のいずれの外縁よりも剥離層、粘着剤層及び粘着剤支持層の外縁が外側であり、
薬剤層及び薬剤支持層の外縁と剥離層及び粘着剤層の内側とで囲まれた部分に空間を有し、
薬剤層及び薬剤支持層平面において、少なくとも長手方向中心線及び短手方向中心線に沿って切断した場合の当該空間の断面積が0.3mm2以上であることを特徴とする、積層型貼付剤。
[2]薬剤層及び薬剤支持層平面において、長手方向中心線及び短手方向中心線を含め長手方向及び短手方向に切断した場合の当該空間の断面積が平均して0.3mm2以上である、上記[1]に記載の積層型貼付剤。
[3]薬剤支持層の平均厚みが0.4mm以上である、上記[1]又は[2]に記載の積層型貼付剤。
[4]薬剤支持層が、不織布、織布、及びエラストマーフィルムからなる群から選ばれる1種以上で構成される、上記[1]~[3]のいずれか一項に記載の積層型貼付剤。
[5]薬剤支持層が不織布からなる、上記[4]に記載の積層型貼付剤。
[6]不織布の目付が、50~160g/m2の範囲内である、上記[5]に記載の積層型貼付剤。
[7]不織布がポリエステル樹脂からなる、上記[5]又は[6]に記載の積層型貼付剤。
[8]粘着剤支持層が伸縮性を有する、上記[1]~[7]のいずれか一項に記載の積層型貼付剤。
[9]薬剤層に有色の薬剤を含有する、上記[1]~[8]のいずれか一項に記載の積層型貼付剤。
[10]薬剤層に炭化水素、多価アルコール、及びエステルからなる群から選ばれる1つ以上の溶媒を含有する、上記[1]~[9]のいずれか一項に記載の積層型貼付剤。
[11]粘着剤層にアクリル系ポリマー、ゴム系ポリマー、及びシリコーン系ポリマーからなる群から選ばれる1つ以上のポリマーを含有する、上記[1]~[10]のいずれか一項に記載の積層型貼付剤。
[12]剥離層がシリコーン処理されている、上記[1]~[11]のいずれか一項に記載の積層型貼付剤。
[13]薬剤層の平面の面積が薬剤支持層の平面の面積の90~100%の範囲内である、上記[1]~[12]のいずれか一項に記載の積層型貼付剤。
[14]薬剤層の平面の面積が粘着剤層の平面の面積の20~90%の範囲内である、上記[1]~[13]のいずれか一項に記載の積層型貼付剤。
[15]薬剤支持層の平面の面積が粘着剤層の平面の面積の20~90%の範囲内である、上記[1]~[14]のいずれか一項に記載の積層型貼付剤。
[16]薬剤支持層の端部から粘着剤層の端部までの距離の平均値が、0.5~3cmの範囲内である、上記[1]~[15]のいずれか一項に記載の積層型貼付剤。
[17]粘着剤層の平面の面積が粘着剤支持層の平面の面積の90~100%の範囲内である、上記[1]~[16]のいずれか一項に記載の積層型貼付剤。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る積層型貼付剤は、薬剤の保持性と皮膚への接着性に優れている。
貼付剤の課題として、必要な薬剤量を皮膚から持続的に吸収させることが必要であり、そのためには、必要量の薬剤を必要な時間接触させておく必要がある。しかし、貼付剤中の薬剤の拡散や貼付剤そのもののずれによって、その吸収量に変動が生じる。本発明によれば、薬剤を所定面積の薬剤膏体中に長期的に保持することができ、皮膚への接着性も優れるため、定量的な薬剤投与が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明に係る積層型貼付剤のX-X線断面図を表す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1 本発明に係る貼付剤について
本発明に係る積層型貼付剤(以下、「本発明貼付剤」という。)は、剥離層、薬剤層、伸縮性を有する薬剤支持層、粘着剤層、及び粘着剤支持層がこの順で積層されている貼付剤であって、薬剤層及び薬剤支持層のいずれの外縁よりも剥離層、粘着剤層及び粘着剤支持層の外縁が外側であり、薬剤層及び薬剤支持層の外縁と剥離層及び粘着剤層の内側とで囲まれた部分に空間を有し、貼付剤平面において、少なくとも長手方向中心線及び短手方向中心線に沿って切断した場合の当該空間の断面積が0.3mm2以上であることを特徴とする。以下、本発明貼付剤について詳述する。
【0010】
1.1 剥離層
本発明に係る剥離層は、主に、使用前まで後述する薬剤層や粘着面を保護する層である。当該剥離層は、通常、紙、プラスチック製のフィルム、プラスチック製のシートや積層フィルムである。具体的には、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂からなるものが挙げられ、これらとアルミ等の金属やその他の樹脂を貼り合わせた積層フィルムであってもよい。紙を剥離層に用いる場合には、通常、何らかの剥離剤による処理が必要である。かかる剥離剤としては、例えば、シリコーンが挙げられ、紙がシリコーン剥離剤で処理されたシリコーン処理紙等が好ましく用いられる。
上記の中ではポリエステル樹脂からなる剥離層が好ましく、PETからなる剥離層がより好ましい。また、剥離しやすくするために、シリコーン処理がされていることが好ましい。
【0011】
当該剥離層は、1枚であってもよいし、複数枚を通常ずらして重ね合わせたものでもよい。また、使用時に剥がしやすいようにスリットが入っていることが好ましい。
【0012】
当該剥離層の平面の面積は、本発明貼付剤の粘着剤支持層(後述)と同じか、それより大きいが、粘着剤支持層の平面の面積と同じであることが好ましい。面積が同じ場合、形状も粘着剤支持層と同じであることが好ましい。当該剥離層の平面の面積は、粘着剤層(後述)の平面の面積とも同じか、それより大きいが、粘着剤層の平面の面積とも同じであることが好ましい。
【0013】
ただし、ここでいう剥離層の平面の面積(大きさ)とは、切れ目が入っている場合や複数枚をずらしている場合には、剥離層面に対して垂直方向から見た場合の最外縁の内側の面積をいう。
【0014】
1.2 薬剤層
本発明に係る薬剤層は、薬剤を保有する層である。通常、粘着力を有し、使用時に前述の剥離層を剥がし皮膚に密着させて、保有する薬剤を浸透させるものである。
【0015】
当該薬剤層に保有しうる薬剤としては、薬理活性成分であり、局所適用ないし全身適用できるものであれば特に制限されないが、例えば塩基性薬物や酸性薬物が挙げられ、塩基性薬物が好ましい。特にアミノ基を有する薬物が好ましい。
【0016】
塩基性薬物の具体例としては、チザニジン等の骨格筋弛緩剤、オキシコドン、ヒドロモルフォン、フェンタニル等のオピオイド系鎮痛剤、リドカイン等の局所麻酔剤、ドネペジル等の抗アルツハイマー剤等が挙げられる。いずれの薬剤においても本発明の効果は発揮しうるが、特に骨格筋弛緩剤、オピオイド系鎮痛剤が好ましく、中でも骨格筋弛緩剤がより好ましい。
骨格筋弛緩剤としては、例えばチザニジン、エペリゾン等が挙げられ、チザニジンがより好ましい。
【0017】
また、薬剤層に有色の薬剤を含有した場合、従来の貼付剤では、薬剤が粘着剤層等に拡散してしまい、使用時の外観が損なわれることが懸念される。一方、本発明貼付剤では、薬剤が薬剤層に均一に広がり、かつ粘着剤層等に拡散することなく薬剤層に留まることができ、製造時の外観が使用時においても保たれ、美観も良好でありうる。
【0018】
当該薬剤層には、薬剤以外の成分を含有してもよく、例えば、溶媒、ポリマー、経皮吸収促進剤、抗酸化剤、充填剤を含有することができる。
【0019】
溶媒は、主として他の材料の混和性を増すために用いられ、親水性溶媒、疎水性溶媒を両方用いることができる。好ましい親水性溶媒としては、例えば多価アルコール及び水が挙げられ、好ましい疎水性溶媒としては、例えば炭化水素及びエステルが挙げられる。
好ましい多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオールが挙げられる。
好ましい炭化水素としては、例えば、ヘプタン、トルエン、流動パラフィンが挙げられる。好ましいエステルとしては、例えば、酢酸エチル、セバシン酸ジエチル、ミリスチン酸イソプロピルが挙げられる。
【0020】
当該溶媒の含有量は適宜設定されるが、薬剤層における全体量に対して、通常、5~60重量%の範囲内である。なかでも親水性溶媒については、薬剤層における全体量に対して、通常、5~20重量%の範囲内である。疎水性溶媒については、薬剤層における全体量に対して、通常、5~40重量%の範囲内である。また、当該溶媒の含有量は、ポリマー100重量部に対して、通常、30~200重量部の範囲内である。
【0021】
ポリマーは、主として粘着性を付与するために用いられ、通常、基剤と粘着付与剤とからなる。基剤のみを用いてもよいが、粘着付与剤と併用することが好ましい。
【0022】
基剤としては、例えば、ゴム系ポリマー、アクリル系ポリマー、シリコーン系ポリマーを挙げることができる。
ゴム系ポリマーとしては、例えば、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体等が挙げられる。中でも、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体が好ましい。
粘着付与樹脂として、例えば、テルペン樹脂、ロジン、脂環族飽和炭化水素樹脂を挙げることができる。中でも、テルペン樹脂が好ましい。
【0023】
当該ポリマーの含有量は適宜設定されるが、薬剤層における全体量に対して、通常、30~70重量%の範囲内である。なかでも基剤については、薬剤層における全体量に対して、通常、10~20重量%の範囲内である。粘着付与樹脂については、薬剤層における全体量に対して、通常、20~40重量%の範囲内である。
【0024】
経皮吸収促進剤としては、例えば、脂肪酸、高級アルコール、エステル、有機アミン、有機酸塩が挙げられる。脂肪酸としては、例えばオレイン酸が挙げられ、オレイン酸が好ましい。高級アルコールとしては、例えばオレイルアルコールが挙げられ、オレイルアルコールが好ましい。有機酸塩としては、例えばソルビン酸塩が挙げられ、ソルビン酸塩が好ましい。これらを一種又は二種以上併用することができる。好ましい有機アミンとしてはジイソプロパノールアミン、トリエタノールアミンとそれらの塩が挙げられる。
当該経皮吸収促進剤の含有量は適宜設定されるが、薬剤層における全体量に対して、通常、5~20重量%の範囲内である。
【0025】
抗酸化剤としては、例えば、水溶性抗酸化剤、疎水性抗酸化剤が挙げられる。水溶性抗酸化剤としては、例えば亜硫酸塩が挙げられ、中でも亜硫酸ナトリウムが好ましい。疎水性抗酸化剤としては、例えば没食子酸エステルが挙げられ、没食子酸プロピルが好ましい。これらを一種又は二種以上併用することができる。
抗酸化剤の含有量は適宜設定されるが、薬剤層における全体量に対して、通常、0.01~1重量%の範囲内である。
【0026】
充填剤としては、例えば、軽質無水ケイ酸が挙げられ、軽質無水ケイ酸が好ましい。充填剤を一種又は二種以上併用することができる。
当該充填剤の含有量は適宜設定されるが、薬剤層における全体量に対して、通常、0.5~5重量%の範囲内である。
【0027】
薬剤層の平面の面積は適宜設定されるが、後述する薬剤支持層の平面の面積の90~100%の範囲内であることが適当であり、同一面積であることが好ましい。同一面積の場合、同一形状であることがより好ましい。また、薬剤層の平面の面積は、後述の粘着剤層の平面の面積の20~90%の範囲内であることが適当である。薬剤層は粘着剤層からはみ出ないことが好ましい。
薬剤層の形状は、特に制限されないが、例えば、正方形、長方形などの四角形、多角形、丸形、楕円形を挙げることができる。この中では、四角形が好ましく、長方形がより好ましい。四角形のなかでも、角丸四角形が好ましく、角丸長方形がより好ましい。
【0028】
1.3 薬剤支持層
本発明に係る薬剤支持層は、薬剤層を支持し、薬剤層の上面を覆い、薬剤層と粘着剤層を分離する層である。当該薬剤支持層は伸縮性を有する。本発明において、「伸縮性を有する」とは、薬剤支持層に用いる材料を5cm×30cmに切り取ったシートの角から1cm内部を固定し、対角線上のシートの角から1cm内部を固定し、14.7N(ニュートン)で引っ張ったとき、固定部と固定部の距離が110%以上になるように伸び、引っ張り力を開放すると、105%以下に縮むことをいう。すなわち、10%以上伸び、縮むものをいう。
【0029】
当該薬剤支持層は、伸縮性を有するものであるから、通常、伸縮性を有する材料からなる。かかる伸縮性を有する材料としては、例えば、不織布、織布、エラストマーフィルムを挙げることができる。またこれらの組み合わせたものでもよい。
【0030】
薬剤支持層は、1種類の材質からなっても2種類以上の材質からなってもよい。この中、例えば、不織布や、PETフィルム/不織布ラミネートなど2種類の材質からなるものが適当である。
【0031】
不織布の場合、目付が50~160g/m2の範囲内であること適当であり、70~120g/m2の範囲内であることが好ましく、80~110g/m2の範囲内であることがより好ましい。
当該不織布としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、綿のいずれか、またはこれらの組み合わせからなることが好ましく、ポリエステル樹脂からなることがより好ましく、PETからなることがさらに好ましい。
【0032】
当該薬剤支持層の厚みは適宜設定されるが、平均厚みが0.4mm以上であることが好ましい。0.4mm以上であると、薬剤層の周囲に十分な空間が得られ、薬剤保持性がより高まり、皮膚方向への粘着剤層の応力も高まるため、接着性も向上すると考えられる。0.5mm以上の平均厚みであることがより好ましく、0.6mm以上であることがさらに好ましい。また、上限は、通常、2.0mmないし1.5mmである。
【0033】
また、薬剤支持層は複数枚のシートを重ねてもよいが、2枚以下のシートから構成されることが好ましく、1枚のシートから構成されることがより好ましい。
【0034】
薬剤支持層の平面の面積は適宜設定されるが、後述する粘着剤層の平面の面積の20~90%の範囲内であることが適当である。薬剤支持層は、粘着剤層からはみ出ないことが好ましい。薬剤支持層の形状は、特に制限されず、薬剤層と同様の形状を挙げることができるが、薬剤層の形状と同じであることが好ましい。
【0035】
また、薬剤支持層の端部から粘着剤層の端部までの距離は適宜設定されるが、当該距離の平均値が0.5~3cmの範囲内であることが好ましい。
【0036】
1.4 粘着剤層
本発明に係る粘着剤層は、本発明貼付剤の皮膚への固定保持を可能にするための層である。当該粘着剤層は、粘着力を有し、薬剤層中の薬剤を皮膚に浸透させ、好ましくは使用時に皮膚に密着して、ずれを防ぐものである。
【0037】
当該粘着剤層には、粘着力を付与するためのポリマーが含有される。当該ポリマーとしては、例えば、前記の「1.2 薬剤層」の項で挙げたものと同様のものを挙げることができる。
当該ポリマーは、通常、基剤と粘着付与剤とからなる。基剤のみを用いてもよく、粘着付与剤のみを用いてもよく、これらを併用してもよい。
【0038】
基剤としては、例えば、ゴム系ポリマー、アクリル系ポリマー、シリコーン系ポリマーを挙げることができ、アクリル系ポリマーが好ましい。
ゴム系ポリマーとしては、例えば、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体が挙げられる。中でも、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体が好ましい。
粘着付与樹脂としては、例えば、テルペン樹脂、ロジン、脂環族飽和炭化水素樹脂を挙げることができる。中でもテルペン樹脂が好ましい。
【0039】
当該ポリマーの含有量は適宜設定されるが、粘着剤層における全体量に対して、通常、70~100重量%の範囲内である。
【0040】
当該粘着剤層には、ポリマー以外の成分を含有してもよく、例えば、溶媒、経皮吸収促進剤、抗酸化剤、充填剤を含有することができる。それぞれの具体例等については前記薬剤層の項で述べたものと同じである。
【0041】
粘着剤層の平面の面積は適宜設定されるが、後述する粘着剤支持層の平面の面積の90~100%の範囲内であることが適当であり、同一面積であることが好ましい。この場合同一形状であることがさらに好ましい。
【0042】
粘着剤層の形状は、特に制限されないが、例えば、正方形、長方形などの四角形、多角形、丸形、楕円形を挙げることができる。この中、四角形、丸形が好ましい。また、後述する粘着剤支持層と同一形状であることが好ましい。
【0043】
1.5 粘着剤支持層
粘着剤支持層は、粘着剤層を支持し、粘着剤層、薬剤支持層及び薬剤層を覆う層である。
粘着剤支持層は、伸縮性を有することが好ましい。粘着剤支持層が伸縮性を有することによって、薬剤支持層の伸縮性をより有効に引き出すことができ、皮膚への接着性を高め、薬剤の効率的な投与が可能となる。
【0044】
粘着剤支持層は、伸縮性を有する材料からなることが好ましく、かかる伸縮性を有する材料としては、例えば、不織布、織布、エラストマーフィルムを挙げることができる。またこれらの組み合わせたものでもよい。粘着剤支持層は、好ましい伸縮挙動を発現させるために、薬剤支持層と同一の材質からなることが好ましい。中でも、不織布が好ましい。
【0045】
不織布の場合、目付が50~160g/m2の範囲内であることが適当であり、70~120g/m2の範囲内であることが好ましく、80~110g/m2の範囲内であることがより好ましい。
当該不織布としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、綿のいずれか、またはこれらの組み合わせからなることが好ましく、ポリエステル樹脂がより好ましく、PETがさらに好ましい。
【0046】
また、粘着剤支持層は複数枚のシートを重ねてもよいが、2枚以下のシートから構成されることが好ましく、1枚のシートから構成されることがより好ましい。
【0047】
当該粘着剤支持層の厚みは適宜設定されるが、0.4mm以上の平均厚みであることがより好ましく、0.5mm以上であることがさらに好ましい。また、上限は、通常、2mmないし1.5mmである。
【0048】
1.6 剥離層、薬剤層、薬剤支持層、及び粘着剤層によって形成される空間
剥離層、薬剤層、薬剤支持層、及び粘着剤層によって形成される空間(以下、「本発明の空間」ともいう。)は、薬剤層及び薬剤支持層の外縁と剥離層及び粘着剤層の内側とで囲まれた部分に形成され、薬剤層及び薬剤支持層平面において、少なくとも長手方向中心線(
図2におけるX-X線)及び短手方向中心線(
図2におけるY-Y線)に沿って切断した場合の当該空間の断面積が0.3mm
2以上である。本発明の当該空間は、本発明の重要な特徴部分の一つである。
【0049】
本発明の当該空間の断面積は、0.3mm2以上であるが、0.4mm2以上が好ましく、0.5mm2以上がより好ましい。好ましい上限は、例えば、4mm2ないし3mm2である。
【0050】
薬剤層及び薬剤支持層平面において、長手方向及び短手方向に切断した場合、当該空間の断面積は部位毎に異なるが、長手方向中心線及び短手方向中心線における当該空間の断面積を含め、平均して0.3mm2以上であり、0.4mm2以上が好ましく、0.5mm2以上がより好ましい。好ましい上限は、例えば、平均して4mm2ないし3mm2である。
最も小さい当該空間の断面積についても0mm2より大きいことが好ましいが、僅かであれば0mm2の部分があってもよい。そのような部分として、例えば、薬剤層及び薬剤支持層が四角形であって、その各コーナー部分、すなわち、剥離層、薬剤層、薬剤支持層、及び粘着剤層がすべて1点で接する部分が挙げられる。
【0051】
本発明の空間を所定の大きさに調整する方法としては、例えば、薬剤支持層の厚みを調節する方法、薬剤層の厚みを調節する方法、粘着剤層と剥離層の接着部を薬剤支持層よりなるべく遠くなるように設定する方法を挙げることができる。中でも、薬剤支持層の厚みを調節する方法が簡便かつ効率的に空間の大きさと形状を調整できるため、好ましい。
【0052】
2 本発明貼付剤の製造方法
本発明貼付剤の製造は、常法により行うことができ、特に制限はないが、好適な製造方法としては例えば以下を挙げることができる。
まず、前記薬剤層に含まれる成分及び揮発性溶媒を混合し、剥離シートの表面に塗工する。ここで、揮発性溶媒としては、酢酸エチル等のエステル溶媒、トルエン、ヘプタン等の炭化水素溶媒が挙げられ、この中、エステル溶媒が好ましく、酢酸エチルがより好ましい。また、剥離シートとしては、前記剥離層の項で掲げた材料を挙げることができるが、その厚み等は製造機等に適したものが適宜選択される。
【0053】
次に前記揮発性溶媒を除去する。当該除去は加熱、減圧等の方法により行うことができる。
続いて薬剤支持層をその上にラミネートする。
【0054】
一方、粘着剤層及び粘着剤支持層についても薬剤層及び薬剤支持層と同様の方法で製造する。すなわち、まず、前記粘着剤層に含まれる成分及び揮発性溶媒を混合し、剥離シートの表面に塗工し、揮発性溶媒を除去し、粘着剤支持層をラミネートする。
【0055】
揮発性溶媒は、用いるポリマーの種類によって、好適なものが適宜選択されるが、酢酸エチル等のエステル溶媒、トルエン、ヘプタン等の炭化水素溶媒が挙げられ、この中、エステル溶媒が好ましく、酢酸エチルがより好ましい。
【0056】
次に薬剤層及び薬剤支持層を所定の大きさに裁断し、粘着剤層上の剥離シートを剥がした上に圧着する。ここで、薬剤層の剥離シートを剥がし、剥離層を交換してもよく、剥離層を交換することが好ましい。
【0057】
続いて粘着剤層及び粘着剤支持層を所定の大きさに裁断する。剥離層が粘着剤支持層と同一の大きさの場合、同時に裁断してもよく、同時に裁断することが好ましい。
以上のようにして、本発明貼付剤を製造することができる。
【実施例】
【0058】
以下、実施例を示して本発明をより具体的に説明する。本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0059】
[実施例1及び比較例1]貼付剤の製造
(1)薬剤層及び薬剤支持層の製造
表1又は表2に示す薬剤層成分(数値は重量%)と揮発性溶媒とを順次ステンレス製の容器に入れ、十分攪拌して薬剤層塗工液を得た。次にかかる薬剤層塗工液をPET製剥離シート上に塗工した。揮発性溶媒を除去した後、表1又は2に示す薬剤支持層を薬剤層側にラミネートした。その後、5.5cm×7.3cmの矩形に裁断した。
【0060】
【0061】
【0062】
(2)粘着剤層及び粘着剤支持層の製造
塗工機にPET製剥離シートを装着し、表3に示す揮発性溶媒を含む粘着剤層塗工液を剥離シート上に塗工した。揮発性溶媒を除去した後、表3に示す粘着剤支持層を粘着剤層側にラミネートした。
【0063】
【0064】
(3)貼付剤の製造
上記(2)で得られた粘着剤層及び粘着剤支持層の剥離シートを剥がし、上記(1)で得られた薬剤層及び薬剤層支持層の薬剤層支持層側を圧着し、薬剤層側の剥離シートを剥がし、剥離層を薬剤層側に圧着した後、7.0cm×8.8cmの角にわずかに丸みを持った矩形に裁断した。
【0065】
[試験例1]薬剤の薬剤層から粘着層への移行量
薬剤支持層がフィルムのみで構成させ、薬剤層及び薬剤支持層の外縁と剥離層及び粘着剤層の内側とで囲まれた部分に空間がほとんどない(比較例3)、薬剤支持層が不織布のみで構成され、前記空間を有する実施例1、薬剤支持層がフィルム/不織布で構成され、前記空間を有する実施例6について、40℃で3ヵ月保存後、粘着層を剥がし、薬剤成分を抽出して、液体クロマトグラフィーによって、粘着層への移行量を測定した。
【0066】
【0067】
薬剤支持層にフィルムを用いると揮発性のソルビン酸を薬剤層に保持させる効果が認められたものの、空間が無い場合、不揮発性のチザニジンは粘着層に移行した。PETフィルム/不織布ラミネートは、ソルビン酸、チザニジンを薬剤層に保持させ、粘着層への移行は少なかった。
【0068】
[試験例2]接着性
肘部の皮膚に装着し、曲げる動作を30回行った後のずれを観察した。ずれの状態を示す、各符号は以下の通りである。++:ずれは認められなかった(使用上問題ない)。+:ズレはほとんど認められなかった。(使用上問題ない)、±:ずれが認められたが、貼付剤の剥がれはみられなかった(使用上問題ない)、-:ずれが認められ、貼付剤の一部が剥がれた。
【0069】
[試験例3]外観
40℃条件で保存後、剥離層方向から、貼付剤を観察した。薬液が染み出すと、薬剤層外周部から外側の粘着層側に着色がみられる。着色の状態を示す符号は以下の通りである。++:外側の粘着層側に着色は認められない、+:外側の粘着層側にわずかに着色が認められた、-:外側の粘着層側に着色が認められた。
なお、表5中における空間切断面積は、薬剤層及び薬剤支持層平面において、長手方向中心線(
図2におけるX-X線)及び短手方向中心線(
図2におけるY-Y線)に沿って切断した場合の当該空間の断面積であり、長手方向中心線及び短手方向中心線以外で、長手方向及び短手方向に切断した場合の当該空間の断面積も、記載の空間切断面積とほぼ同じであった。
【0070】
【0071】
表4及び表5の結果から明らかな通り、本発明貼付剤は、保存後の薬剤残存量、外観にも優れ、皮膚への接着性にも優れるものである。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明貼付剤は、保存後にも薬剤を残存させることができ、皮膚への接着性にも優れるので、医薬品等として有用である。
【符号の説明】
【0073】
A 本発明貼付剤
1 剥離層
2 薬剤層
3 薬剤支持層
4 粘着剤層
5 粘着剤支持層
6 剥離層、薬剤層、薬剤支持層、及び粘着剤層によって形成される空間