(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】蛍光模倣明視野イメージング
(51)【国際特許分類】
G01N 21/64 20060101AFI20241004BHJP
G02B 21/00 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
G01N21/64 F
G02B21/00
(21)【出願番号】P 2022520687
(86)(22)【出願日】2020-10-02
(86)【国際出願番号】 US2020053976
(87)【国際公開番号】W WO2021067726
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2023-05-10
(32)【優先日】2019-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506115514
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
【氏名又は名称原語表記】The Regents of the University of California
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フェレイドウニ,ファルザド
(72)【発明者】
【氏名】レベンソン,リチャード・エム
【審査官】横尾 雅一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/147909(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/029752(WO,A1)
【文献】特開2016-223931(JP,A)
【文献】特開2016-161417(JP,A)
【文献】特表2017-524913(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0118622(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - G01N 21/74
G02B 19/00 - G02B 21/00
G02B 21/06 - G02B 21/36
G01N 33/48 - G01N 33/98
G01N 1/00 - G01N 1/44
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織試料をイメージングするための方法であって、
前記組織試料を、吸光し蛍光を発する染色剤を使用して染色するステップと、
前記組織試料に、蛍光を発しかつ吸光する染色剤の吸収スペクトルの一部を包含する範囲内の1つまたは複数の波長を有する励起光を照射するステップであって、
それによって、前記励起光が前記組織試料の内部に位置する染色された組織と相互作用して、侵入深さが限定され、かつ前記組織試料の表面上またはその付近に位置する染色された組織の特徴によって吸収され得る、発した色素蛍光および組織の自家蛍光が生じる、ステップと、
イメージングデバイスを使用して、組織試料から放射される、発した蛍光の画像を捕捉するステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記励起光が、320nmから800nmの間の範囲内に入る1つまたは複数の波長を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記画像が、前記励起光をカットする吸収フィルターを通じて捕捉される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記吸収フィルターが、以下:
ロングパス吸収フィルター;
マルチバンドパスフィルター;および
ノッチフィルター
のうちの1つを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記吸光し蛍光を発する染色剤が、ヘマトキシリン・エオシンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
アクリジンオレンジ、トルイジンブルー、ローダミン、およびヨウ化プロピジウムのうちの1つまたは複数を含む追加的な色素または染色剤を使用して、追加的な組織成分を標識する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記励起光が、同時にまたは逐次的に適用される複数の周波数範囲からの光を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記励起光が、マルチライン吸収フィルターを通過する複数のレーザー線からの光を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記組織試料を染色するステップが、免疫蛍光染色を同時にまたは逐次的に実施して、特定の分子種の位置および存在量に関する情報をもたらすことを伴う、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記組織試料
を、前記組織試料が押し付けられる透明な窓を含む改変組織学的検査カセット、または他の試料保持器に
配置する
ステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記イメージングデバイスが、以下:
モノクロカメラ;
カラーカメラ;および
マルチスペクトル画像捕捉デバイス
のうちの1つまたは複数を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記画像が、イメージング対物レンズによって捕捉され、接眼レンズまたはデジタル画像捕捉デバイスに方向付けられる、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記捕捉された画像を、以下の操作:鮮明化、拡大、コンピュータによる超解像、ノイズ除去、およびカラーモード変換のうちの1つまたは複数を行う捕捉後画像処理ツールを使用して操作するステップをさらに含み、
前記捕捉後画像処理ツールが、AIに基づく処理用構成要素を含み得る、
請求項1に記載の方法。
【請求項14】
類似したH&E呈色へのほぼリアルタイムでのカラー変換をもたらすために、カラーモード変換のために処理された画像を使用して高速非線形カラー変換システムを訓練する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記捕捉された画像がマルチスペクトルである場合、前記捕捉された画像をスペクトル分離、凸包エンドメンバー検出、およびフェーザーツールのうちの1つまたは複数を使用して解析して、組織成分シグナルをもたらす、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
組織試料をイメージングするためのシステムであって、
前記組織試料が、吸光し蛍光を発する染色剤を使用して染色された後、前記組織試料を保持するように構成されたステージと、
前記組織試料に、蛍光を発しかつ吸光する染色剤の吸収スペクトルの一部を包含する範囲内の1つまたは複数の波長を有する励起光を照射するように構成された照射機構であって、
それによって、前記励起光が前記組織試料の内部に位置する染色された組織と相互作用して、侵入深さが限定され、かつ前記組織試料の表面上またはその付近に位置する染色された組織の特徴によって吸収され得る、発した色素蛍光および組織の自家蛍光が生じる、照射機構と、
組織試料から放射される、発した蛍光の画像を捕捉するように構成されたイメージングデバイスと
を含むシステム。
【請求項17】
前記励起光が、320nmから800nmの間の範囲内に入る1つまたは複数の波長を有する、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記組織試料と前記イメージングデバイスの間に位置する、前記励起光をカットする吸収フィルターをさらに含む、請求項16に記載のシステム。
【請求項19】
前記吸収フィルターが、以下:
ロングパス吸収フィルター;
マルチバンドパスフィルター;および
ノッチフィルター
のうちの1つを含む、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記吸光し蛍光を発する染色剤が、ヘマトキシリン・エオシンを含む、請求項16に記載のシステム。
【請求項21】
アクリジンオレンジ、トルイジンブルー、ローダミン、およびヨウ化プロピジウムのうちの1つまたは複数を含む追加的な色素または染色剤を前記組織試料に適用して、追加的な組織成分を標識する、請求項16に記載のシステム。
【請求項22】
前記照射機構が、同時にまたは逐次的に適用される複数の周波数範囲からの励起光をもたらすように構成されている、請求項16に記載のシステム。
【請求項23】
前記励起光が、マルチライン吸収フィルターを通過する複数のレーザー線からの光を含む、請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
前記組織試料を染色するための染色システムをさらに含み、前記染色システムが、免疫蛍光染色を同時にまたは逐次的に実施して、特定の分子種の位置および存在量に関する情報をもたらすことを容易にする、請求項16に記載のシステム。
【請求項25】
前記組織試料が押し付けられる透明な窓を含む改変組織学的検査カセット、または他の試料保持器
を更に含む、請求項16に記載のシステム。
【請求項26】
前記イメージングデバイスが、以下:
モノクロカメラ;
カラーカメラ;および
マルチスペクトル画像捕捉デバイス
のうちの1つまたは複数を含む、請求項16に記載のシステム。
【請求項27】
前記画像が、イメージング対物レンズによって捕捉され、接眼レンズまたはデジタル画像捕捉デバイスに方向付けられる、請求項16に記載のシステム。
【請求項28】
前記捕捉された画像を、以下の操作:鮮明化、拡大、コンピュータによる超解像、ノイズ除去、およびカラーモード変換のうちの1つまたは複数を行う捕捉後画像処理ツールを使用して操作する画像処理機構をさらに含み、
前記捕捉後画像処理ツールが、AIに基づく処理用構成要素を含み得る、請求項16に記載のシステム。
【請求項29】
前記画像処理機構が、類似したH&E呈色へのほぼリアルタイムでのカラー変換をもたらすために、カラーモード変換のために処理された画像を使用して高速非線形カラー変換システムを訓練する、請求項28に記載のシステム。
【請求項30】
前記捕捉された画像がマルチスペクトルである場合、前記画像処理機構が、前記捕捉された画像をスペクトル分離、凸包エンドメンバー検出、およびフェーザーツールのうちの1つまたは複数を使用してさらに解析して組織成分シグナルをもたらす、請求項28に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
関連出願
[001]
本出願は、35U.S.C.§119の下、その内容が参照により本明細書に組み込まれる、2019年10月3日出願の発明者Richard M.LevensonおよびFarzad Fereidouniによる「Fluorescence Imitating Brightfield Imaging」という表題の米国仮出願第62/910,197号に対する優先権を主張するものである。
【0002】
背景
分野
[002]
本開示の実施形態は、一般に、組織試料をイメージングするための技法に関する。より具体的には、本開示の実施形態は、組織試料の内部の染色された組織に照射して、組織試料の表面上に位置する染色された組織の特徴によって吸収される背面光として機能する蛍光放出を生じさせることによって動作する、組織試料をイメージングするための技法に関する。
【0003】
[003]
従来の病理組織検査は、現在、腫瘍の取扱い、保存、および評価のための最も実用的かつロジスティックに実行可能な技法をもたらすものであり、また、何年にもわたってがん診断の頼みの綱であり、ゴールドスタンダードになっている。これらの従来の病理組織検査技法は、一般には、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織のミクロトーム切片作製および染色を用いた処理を伴う。
【0004】
[004]
1970年代の免疫組織化学的検査(IHC)の出現、1980年代初めの蛍光in-situハイブリダイゼーション(FISH)の出現、ならびに2010年代のFFPE組織からDNA配列およびmRNA発現を評価するための方法の出現を含め、長年をかけてFFPE組織の評価の重要な進歩がなされてきた。それにもかかわらず、FFPEに基づく処理がこれらの分子アッセイに関しては最適以下であり、固定液、熱および溶媒によって誘導される核酸の断片化および分解に起因して、ある特定の適用には使用することができないことが周知である。その間、予測バイオマーカー解析を含めた診断は2つの深刻な難題に直面している:(1)補助的な分子診断検査の数および複雑さが増していること;および(2)それらを実施する組織生検材料がいっそう少なくなること。同様に、極めて重要な研究に関する問題、特に、早期検出およびその後の初期段階の病変を進行が遅いものと潜在的に致死的なものとに区別する必要に関連する問題により、細胞または組織破壊を招くことなく微小解剖(組織学的)構造を的確に認識することも必要になる。
【0005】
[005]
また、FFPEに基づく処理技法は相当遅く、最低でも数時間を要する。したがって、一般には、診断を得るために一晩待つ必要があり、輸送が伴う場合には何日も待つ必要がある。外科的指導の状況では、外科医に腫瘍が首尾よく除去されたかどうか、および/または腫瘍の型が同定されるかどうかに関して知らせるために結果をすぐに得ることが有利であることに留意されたい。また、生検の状況では、結果を同日に得ることができれば、緊急を要するケアを劇的に加速することができる。
【0006】
[006]
したがって、従来の病理組織検査技法に関する上記の不都合を被らない、組織試料をイメージングするための新しい技法が必要である。
【0007】
概要
[007]
本開示の実施形態は、組織試料をイメージングするシステムを提供する。動作中、システムは、吸光し蛍光を発する染色剤を使用して染色された組織試料を受け入れる。次に、システムは、組織試料に、蛍光を発しかつ吸光する染色剤の吸収スペクトルの一部を包含する範囲内の1つまたは複数の波長を有する励起光を照射し、それによって、励起光が組織試料の内部に位置する染色された組織と相互作用して、侵入深さが限定され、かつ組織試料の表面上またはその付近に位置する染色された組織の特徴によって吸収される背面光をもたらす、発した色素蛍光および組織の自家蛍光が生じる。次に、システムは、イメージングデバイスを使用して、組織試料の表面から放射される、発した蛍光の画像を捕捉する。
【0008】
[008]
一部の実施形態では、励起光は、320nmから800nmの間の範囲内に入る1つまたは複数の波長を有する。
【0009】
[009]
一部の実施形態では、画像は、励起光をカットする吸収フィルターを通じて捕捉される。
【0010】
[0010]
一部の実施形態では、吸収フィルターは、以下:ロングパス吸収フィルター;マルチバンドパスフィルター;およびノッチフィルターのうちの1つを含む。
【0011】
[0011]
一部の実施形態では、吸光し蛍光を発する染色剤は、ヘマトキシリン・エオシンを含む。
【0012】
[0012]
一部の実施形態では、アクリジンオレンジ、トルイジンブルー、ローダミン、およびヨウ化プロピジウムのうちの1つまたは複数を含む追加的な色素または染色剤を使用して、追加的な組織成分を標識する。
【0013】
[0013]
一部の実施形態では、励起光は、同時にまたは逐次的に適用される複数の周波数範囲からの光を含む。
【0014】
[0014]
一部の実施形態では、励起光は、マルチライン吸収フィルターを通過する複数のレーザー線からの光を含む。
【0015】
[0015]
一部の実施形態では、組織試料を染色するステップは、免疫蛍光染色を同時にまたは逐次的に実施して、特定の分子種の位置および存在量に関する情報をもたらすことを伴う。
【0016】
[0016]
一部の実施形態では、イメージングプロセス中、組織試料は、組織試料が押し付けられる透明な窓を含む改変組織学的検査カセット、または他の試料保持器に位置する。この組織学的検査カセットはいくつかのやり方で実装することができることに留意されたい。例えば、組織学的検査カセットは、サイズが大きくてよく、また、大きな窓を含んでよい。さらに、組織学的検査カセットは、例えば、Gorilla Glass(商標)またはプラスチックなど、異なる窓材料で作られたものであってよい。組織学的検査カセットはまた、再利用可能なものであっても使い捨てのものであってもよい。
【0017】
[0017]
一部の実施形態では、イメージングデバイスは、以下:モノクロカメラ;カラーカメラ;およびマルチスペクトル画像捕捉デバイスのうちの1つまたは複数を含む。
【0018】
[0018]
一部の実施形態では、画像は、イメージング対物レンズによって捕捉され、接眼レンズまたはデジタル画像捕捉デバイスに方向付けられる。
【0019】
[0019]
本特許または出願のファイルは、カラーで製作された少なくとも1つの図面を含有する。カラーの図面(複数可)を伴う本特許または特許出願公開のコピーは、要請し、必要な料金を支払えば、特許庁により提供されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
[0020]
【
図1】本開示の実施形態によるイメージングシステムを例示する図である。[0021]
【
図2】本開示の実施形態による組織試料をイメージングするプロセスを例示するフローチャートである。[0022]
【
図3】本開示の実施形態による、腎臓の血管と付随する糸球体および細管の画像である。[0023]
【
図4】本開示の実施形態による、肝細胞癌と付随する線維化の画像である。[0024]
【
図5】本開示の実施形態による、マウス小腸の画像である。[0025]
【
図6】本開示の実施形態による、ヒト肝臓の画像である。[0026]
【
図7】本開示の実施形態による、ヒト膵臓の画像である。
【0021】
詳細な説明
[0027]
以下の説明は、すべての当業者が本実施形態を行い、使用することを可能にするために提示され、特定の適用およびその要件に関して提供される。本開示の実施形態に対する種々の改変が当業者には容易に明らかになり、また、本明細書において定義されている一般原則を、本実施形態の主旨および範囲から逸脱することなく、他の実施形態および適用に適用することができる。したがって、本実施形態は、示されている実施形態に限定されず、本明細書に開示される原理および特徴と一致する最も広い範囲で調和する。
【0022】
[0028]
この詳細な説明に記載のデータ構造およびコードは、一般には、コンピュータ可読記憶媒体に記憶され、コンピュータ可読記憶媒体はコンピュータシステムによって使用するためのコードおよび/またはデータを記憶させることができる任意のデバイスまたは媒体であってよい。コンピュータ可読記憶媒体としては、これだけに限定されないが、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、磁気および光学ストレージデバイス、例えば、ディスクドライブ、磁気テープ、CD(コンパクトディスク)、DVD(デジタル多用途ディスクもしくはデジタルビデオディスク)など、または現在公知であるもしくは後に開発されるコンピュータ可読媒体を記憶させることができる他の媒体が挙げられる。
【0023】
[0029]
詳細な説明の節に記載されている方法およびプロセスは、上記のコンピュータ可読記憶媒体に記憶させることができるコードおよび/またはデータとして具体化することができる。コンピュータ可読記憶媒体に記憶されているコードおよび/またはデータがコンピュータシステムにより読み取られ、実行されると、コンピュータシステムにより、データ構造およびコードとして具体化され、コンピュータ可読記憶媒体内に記憶された方法およびプロセスが実施される。さらに、下記の方法およびプロセスをハードウェアモジュールに含めることができる。例えば、ハードウェアモジュールとしては、これだけに限定されないが、特定用途向け集積回路(ASIC)チップ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、および現在公知であるまたは後に開発される他のプログラム可能な論理デバイスを挙げることができる。ハードウェアモジュールがアクティブ化されたら、ハードウェアモジュールにより、ハードウェアモジュール内に含まれる方法およびプロセスが実施される。
【0024】
概要
[0030]
我々は、FFPEの必要性を排除する、「FIBI」(蛍光模倣明視野イメージング(Fluorescence Imitating Brightfield Imaging))と称される、薄片化されていない組織をイメージングするための新しい技法を開発した。FIBIは、迅速な非破壊的微細形態診断を可能にするものである。パラフィンに基づくステップを省くことができるので、検体をすぐにRNA配列決定または多数の他の方法のいずれかなどの分子アッセイに進めることができる。FIBIはまた、厚い組織に適合する迅速な免疫蛍光法技法にも適合する。腫瘍をイメージングするための1つの戦略は、新規の有機光放出ダイオード(OLED)からインスピレーションを得た、腫瘍バイオマーカーの非常に迅速な(数分)免疫蛍光法アッセイを可能にする、明るく、無毒性であり、かつ光安定性の多色蛍光および磁気ナノ粒子の採用を伴う。この新しい技法によって可能になったスライドを用いない形態と分子イメージングの組合せにより、意義のある新しい能力がもたらされる。
【0025】
[0031]
FIBIでは標準の組織学的処理技法を回避することができるので、FIBIを用いてイメージングされる検体は、標準のFFPE処理組織に劣らない、改善された品質および非常に小さな生検材料からの半自動化診断の潜在性を示す。典型的なFIBIワークフローは、ニアポイントオブケアで生成された小さな生検材料のデジタル画像を、おそらく遠隔動作で数分以内に、病理学専門家によって、リアルタイム免疫蛍光法アッセイを伴って、その後、必要であれば、新鮮な検体から迅速に抽出された核酸に対する迅速なRNA配列決定または組織学的にガイドされたパネルを使用した他の分子アッセイによって評価するために捕捉することを伴う。これにより、複数の別々のバイオマーカー評価を伴い得る精巧な診断ワークアップを、装備が最低限の状況であっても慣例化し、有効に利用することができる2~3ステップに圧縮することが可能になる。最終結果は、小さな生検材料を用いて、費用、遅延、および患者の不安を低減して実現される迅速な決定的かつ精密な診断および治療ガイダンスである。FIBIはまた、今後の研究を活発にし得る、生体試料バンクの品質および収率を改善するために使用することもできる。
【0026】
[0032]
FIBIは、光の侵入の深さに影響を及ぼす化学的色素の吸光特性による、スライドを用いない厚い組織検体の迅速な組織形態学的検査を容易にする。これに関連して、周知の組織学的色素であるヘマトキシリンの適用を記載するが、追加的な吸光性色素も同様に有用であることが証明され得る。
【0027】
[0033]
ヘマトキシリンは、広範なスペクトルの光を吸収する;この現象により、励起光の組織への侵入の減少が引き起こされ、それにより、イメージング体積が従来の組織学的検査スライドよりもわずかに厚いものに限定される。エオシンの使用により、2つのやり方で追加的な価値がもたらされる。エオシンが寄与する拡散蛍光シグナルは検体表面の「後ろから」照射され、それにより、通常の明視野顕微鏡における透過照明光が模倣される。さらに、エオシンからの蛍光シグナルは、それがより高い濃度で蓄積する場所で、従来のヘマトキシリン・エオシン(H&E)において見られる、よく知られている淡紅色~赤色の染色を生じさせる。エオシン蛍光および吸収スペクトルの濃度への依存が以前に報告されていることに留意されたい。これらの現象が合わさって、標準の組織学的検査技法を使用して見られるものに極めて近い画像が創出され、これらの画像を、任意選択で、カラーバランスのためのカスタム吸収フィルターで補助し、かつ種々の技術的能力を有するデジタルカメラを使用し、顕微鏡によって容易に見ることができる。
【0028】
詳細
[0034]
ヘマトキシリンは、組織学的検査に広く使用されている色素であり、この挙動を観察した最初の色素である。組織をヘマトキシリンで染色すると、種々の励起波長(405nm、440nm、500nm)により、励起波長は同じであるがヘマトキシリンを用いずに生成した画像よりもイメージング体積に関して著しく「薄い」画像が生じる。理論的に、以下の特性を有するあらゆる色素が、イメージング体積を低減するためにFIBIに有用であり得る:(1)色素は、蛍光性ではってはならない;(2)色素は、試料を励起させるために使用する波長を吸収するものでなければならない;および(3)色素は、大多数の組織成分をいくらかの程度まで染色するものでなければならない。
【0029】
[0035]
ヘマトキシリンは、それ自体では非核組織成分のコントラストをほとんどもたらさない。従来の組織学的検査では、色のコントラストおよび改善された空間的関係を観察者にもたらすために第2の染色剤を使用する。これは、伝統的に、エオシン染色剤(多くの場合エオシンY)であり、明視野で検体の染色された部分の淡紅色に寄与する吸収性色素として見られる。しかし、エオシン染色剤は蛍光性でもある。エオシンをヘマトキシリンと組み合わせて使用し、厚い検体を励起光で励起した場合、潜在的に、種々の波長において、内容およびコントラストの両方に関して従来の薄片組織学的検査に著しく近い画像が生成される。
【0030】
[0036]
エオシンは、FIBIに対して他の従来の蛍光対比染色を超える利点を与える普通でない特性をいくつか有する。これらの特性の1つは、エオシンの組織成分に対する結合性が比較的弱いことである;試料をエオシンで染色し、水性媒体に封入した場合、この染色剤は組織から大小の周囲の空間中に浸出し続ける傾向がある。これは慣習的に厄介なことであったが、FIBIに関しては、拡散する背面照明蛍光への寄与に役立つ。蛍光画像は通常、白色の背景を有する明視野イメージング技法とは対照的に、暗い背景を有する。病理医は明視野画像を解釈することに十分に精通しているが、特殊な状況を除いて、一般に、比較的不慣れな蛍光形式の画像を解釈することをためらう。FIBI画像は両方のいいとこ取りである;背景および染色パターンは従来のH&E染色された薄片と同様であり、それにより短い順化期間が可能になる。しかし、FIBIは厚く新鮮なまたは固定されているが薄片にされていない組織で機能するので、組織検体の取得を数分以内に実現することができる。脱水、パラフィン包埋、切片作製、およびスライドに載せることなどのステップは必要なく、高品質の画像を取得するために必要な時間が数時間短縮される。これらの画像は、直接見ることもでき、種々のツール(アルゴリズムに基づくものかまたは機械学習に基づくもの)を使用して迅速に処理して、従来のH&Eスライドで可視化することができるものと同様に良好であるかまたはそれよりも良好な画像をもたらすこともできる。
【0031】
[0037]
同様の画像が実現される他の従来の技法は、光干渉断層撮影法(OCT)、共焦点、多光子、ライトシート、構造化照明、およびUV表面励起(MUSE)顕微鏡を伴う顕微鏡である。これらの技法にはそれ自体の長所と短所があるが、全て、病理医による解釈のために従来の明視野形式に変換する必要がある。さらに、上記の顕微鏡の費用は、一般には、病理学的状況で慣習的に採用されている顕微鏡の費用を軽く超え、それにより、幅広い採用が妨げられる。他の技法では3次元イメージングのためにヘマトキシリン・エオシン染色を使用するが、これは、光学的な切片化の実施を多光子イメージング設定に頼るものである。
【0032】
[0038]
MUSEはFIBIと密接に関連する技術である(Farzad Fereidouni、Ananya Datta Mitra、Stavros Demos、Richard Levenson、”Microscopy with UV Surface Excitation(MUSE)for slide-free histology and pathology imaging,”Proc. SPIE 9318、Optical Biopsy XIII: Toward Real-Time Spectroscopic Imaging and Diagnosis、93180F、2015年3月11日)。MUSEの背後の機構は、2つの原理に基づいて動作する:(1)約280nmのUV光は一様に厚い組織検体に、標準の組織学的検査スライドよりもほんのわずかだけ厚い約10ミクロン以下の深さまでしか侵入しないこと;および(2)この波長のUV光は多種多様な蛍光染色剤を励起させ、次いで、それらのよく知られている可視域で発光させることができ、これは、蛍光顕微鏡に十分に精通している者にさえ十分に理解されていなかった特性である。色変換ソフトウェアを用いて処理した後、得られた蛍光画像を従来の病理学で見られるものと類似した画像に迅速に変換することができる。
【0033】
[0039]
FIBIではMUSEを超えるいくつかの利点がもたらされ、それを下に記載する。
【0034】
FIBIのMUSEを超える利点
[0040]
(1)FIBIでは、より明るく、費用が少ない励起源を使用する。FIBIでは、MUSEで必要なUV LEDよりも明るく、かつ安価な、可視域内の都合のよいLED源を使用することができる。より明るい発光を伴うより明るい励起は、より速いイメージングを意味する。FIBIでは複数の励起波長を採用することができ、これにより、追加的なスペクトルのコントラストがもたらされる。これはMUSE光学ではこのように都合よくは実現されない。MUSEでは、輝度の増大または他の励起特性が必要な場合にLED以外の他のUV源を採用することができるが、これらにはかなり多くの費用がかかる。
【0035】
[0041]
(2)FIBIは免疫蛍光法の試薬にすぐに適合する。ヘマトキシリン・エオシンなどの組織学的検査用染色剤で染色された検体のイメージングに加えて、免疫蛍光染色を同時にまたは逐次的に実施して、特定の分子種の位置および存在量に関する情報をもたらすことが可能である。プローブを標準の抗体を超えて拡張して、定義された標的に結合することができるナノボディ、ペプチド、核酸、および他の実体を含めることができる。これらが十分な存在量および輝度の蛍光プローブで標識されている場合、FIBIバックグラウンド染色の存在下であっても、標識された一次試薬のみを使用して可視化することができる。必要であれば、一次抗体および二次抗体または他の可視化技法を採用することができる。
【0036】
[0042]
(3)FIBIでは、より大きなレンズの開口数およびイメージング柔軟性のために、斜め照明に代わるものとして落射蛍光光路がもたらされる。この配置では、作動距離に基づく制約が存在しない。励起の幾何学的性質はレンズの選択には依存しないので、所望であればレンズを切り換えること、およびNAがより大きなレンズを使用することも容易である。FIBIではMUSEよりも、より大きな拡大レンズを採用することが容易である。現在までに記載されている最も高い分解能は、開口数(NA)の大きな10×レンズを使用することによって可能になる。より良好な分解能にはNAがより大きなレンズが必要であり、そしてそれにはレンズと検体の間の作動距離がより短いことが必要である。しかし、これには、標準の落射蛍光光路ではなく斜めの軸外励起が採用される現行のMUSE設計では問題があり得る。斜め照明の利点は、励起光を、ほとんどの場合280nmのUV域内の光を透過させることができない対物レンズを通して移動させる必要がないことである。しかし、十分な作動距離がない場合に光を斜めに得ることは難しく、これが、MUSEイメージングが通常、現在まで使用されている比較的長い作動距離の高品質の10×レンズによってもたらされるものに限定される理由であるが、我々はNAが大きな(0.45)10×対物レンズを使用することができるので現在では優れたものである。
【0037】
[0043]
(4)FIBIでは、潜在的に費用のかかるUVを通す試料支持体または表示ウィンドウは必要ない;安価なガラスプラットフォームまたはカバーガラスを使用することができる。
【0038】
[0044]
(5)FIBIは、接眼レンズを通じて迅速に見ること、または電動式ステージを用いたシングルフレームもしくは広視野イメージングに関して既存の蛍光顕微鏡に適合する。画像は、ネイティブにH&Eと同様であり、したがって、直接見ることが可能である。色を整えるカスタム吸収フィルターを含めて、直接認識される画像を従来のH&Eスライドとよりよく類似させることができる。また、潜在的にDNAに損傷を与えるまたはタンパク質を架橋結合させるUV光はFIBIでは使用されない。
【0039】
染色レシピ
[0045]
ここで、FIBIで使用することができる染色のいくつかのレシピを記載する。
(1)マイヤーヘマトキシリンストック溶液(1mg/ml):
I.硫酸アルミニウムカリウム(アラム)50gをdiH2O 1000mlに溶解させる。
II.アラムが完全に溶解したら、ヘマトキシリン1gを添加する。
III.ヘマトキシリンが完全に溶解したら、ヨウ素酸ナトリウム0.2gおよび氷酢酸20mlを添加する。
IV.沸騰させ、冷ます。必要な場合には濾過する。
(2)エールリッヒヘマトキシリンストック溶液(1mg/ml):
I.組み合わせ、混合する:diH2O 100ml、95%エタノール100ml、グリセロール100ml、氷酢酸10ml、ヘマトキシリン2g、およびアラム(過剰に)。この溶液は暗赤色になったらすぐに使用できることに留意されたい。
(3)デラフィールドヘマトキシリンストック溶液(1mg/ml):
I.ヘマトキシリン8gを95%エタノール50mlに溶解させる。
II.次いで、アラム飽和水溶液(15gm/100ml)を作製する。
III.アルコールに溶解させたヘマトキシリンをミョウバン水に添加し、栓を抜いたビン中、3~5日間にわたって光および空気に曝露させる。
IV.次に、濾過し、グリセリン200mlおよび95%エタノール200mlを添加する。
V.溶液を光の中で約3日間静置し、濾過し、密封したビン中で保持する。
(4)アルコール性エオシンストック溶液/希釈標準溶液(1mg/ml):
A.ストック溶液。
I.水溶性エオシンY2gをdiH2O 40mlに添加し、溶解するまで混合する。
II.次いで、95%エタノール160mlを添加し、混合する。
III.室温で保管する。
B.希釈標準溶液。
I.エオシンYストック溶液200mlを80%エタノール600mlに添加し、十分に混合する。
II.ドラフト内での作業中に、氷酢酸4mlを添加し、十分に混合する。
III.蓋をして室温で保管する。
(5)水性エオシン2%ストック溶液:
I.エオシンy二ナトリウム塩2gを量り分ける。
II.diH2O 100mlに添加し、完全に溶解するまで混合する。
III.氷酢酸400μlを添加し、十分に混合する。
(6)水性エオシンy(American MasterTech):
I.水性エオシンy100mlを量り分ける。
II.氷酢酸400μlを添加し、十分に混合する。
(7)アクリジンオレンジ(0.3mg/ml):
I.PBS 330μlを調製し、それをpH4.4(または所望のpH)まで緩衝させる。
II.アクリジンオレンジ10μlを添加し、十分に混合する。
(8)酸アルコール:
I.38%HCL 1mlを70%エタノール50mlに添加し、十分に混合する。
(9)酸性diH2O:
II.38%HCL 1mlをdiH2O 50mlに添加し、十分に混合する。
【0040】
染色プロトコール
[0046]
新鮮な組織調製は以下のステップを伴う。染色の前に、1cm×1cm×0.5cmの寸法を有する試料を調製する(検体の長さおよび幅および深さは任意の寸法が0.1cm~10cm以上にわたり得る。任意選択で:検体をおよそ40mlのエタノールまたはPBSのいずれかにマイクロ波(600W)中、30秒間、急速に固定する。
【0041】
[0047]
いくつかの染色プロトコールが存在し、それらとして、段階的な染色(すなわち、組織をいくつかの色素に次から次へと暴露させ、追加的な洗浄ステップを伴う)、または、すべての色素を単一溶液中に合わせた、合わせた溶液が挙げられる。後者がより効率的であり、記載の単一染色の後に、より情報価値のある色のコントラストのために、追加的な色素を添加することによって改変することができる。
【0042】
[0048]
段階的な染色の例:
(1)diH2O中で30秒間のすすぎ、diH2O中に希釈したマイヤーヘマトキシリン(0.5mg/ml)で20秒間、スコット青み剤で30秒間、アルコール性エオシン(1mg/ml)で30秒間、diH2O中で2×30秒間のすすぎ。
(2)diH2O中で30秒間のすすぎ、diH2O中に希釈したマイヤーヘマトキシリン(0.5mg/ml)で30秒間、スコット青み剤で30秒間、アルコール性エオシン(1mg/ml)で30秒間、diH2O中で2×30秒間のすすぎ。
(3)diH2O中で30秒間のすすぎ、マイヤーヘマトキシリン(1mg/ml)で20秒間、スコット青み剤で30秒間、アルコール性エオシン(1mg/ml)で30秒間、diH2O中で2×30秒間のすすぎ。
(4)diH2O中で30秒間のすすぎ、diH2O中に希釈したマイヤーヘマトキシリン(0.5mg/ml)で20秒間、スコット青み剤で30秒間、アルコール性エオシン(1mg/ml)で30秒間、diH2O中で30秒間のすすぎ、アクリジンオレンジpH4.4で10秒間、diH2O中で2×30秒間のすすぎ。
いくつかの単一-または単一+手順:
(1)diH2O中で30秒間のすすぎ、組合せ混合物(95%エタノール中に希釈したマイヤーヘマトキシリン(0.5mg/ml)2ml、アルコール性エオシン(1mg/ml)2ml、スコット青み剤1ml)で30秒間、diH2O中で2×30秒間のすすぎ。
(2)diH2O中で30秒間のすすぎ、組合せ混合物(95%エタノール中に希釈したマイヤーヘマトキシリン(0.5mg/ml)2ml、アルコール性エオシン(1mg/ml)2ml、スコット青み剤1ml)で20秒間、diH2O中で2×30秒間のすすぎ。
(3)diH2O中で30秒間のすすぎ、組合せ混合物(diH2O中に希釈したマイヤーヘマトキシリン(0.5mg/ml)10ml、アルコール性エオシン(1mg/ml)10ml、スコット青み剤10ml)で30秒間、diH2O中で2×30秒間のすすぎ。
(4)diH2O中で30秒間のすすぎ、組合せ混合物(diH2O中に希釈したマイヤーヘマトキシリン(0.5mg/ml)10ml、水性エオシン(2%)10ml、スコット青み剤10ml)で1分間、diH2O中で2×30秒間のすすぎ。
【0043】
光学的実装および検体イメージング
[0049]
光学設計:
図1に例示されている通り、試料をガラスの(または可視光を通す他の)薄い支持体に種々の穏やかな押付け方法および取付け具を使用して穏やかにプレスし、405nmに集中する励起光(単一波長または単一波長帯源)を標準の落射蛍光光路を使用して照射する。この光路はダイクロイックミラーを含み、これにより、励起光がイメージング用対物レンズに方向付けられ、次いで、イメージング用対物レンズで捕捉された、発した蛍光シグナルがロングパス吸収フィルターを通ってカメラ(画像センサー)に送られる。
【0044】
[0050]
試料の位置付け:試料を大きなイメージングステージに置くこともでき、あるいは、蓋を閉めると、例えば発泡プラスチックによって検体が穏やかに押し付けられる透明な窓を含有するように変更した、取り外し可能な蓋または底部支持体を有する改変組織学的検査カセットに導入することもできる。この配置の利点は、カセットおよび封入された検体をバーコード付けし、追跡することが容易であることであり、これは、透明な蓋(使用する場合)を従来の穴のあいた蓋に単に置き換えることにより、従来のFFPE処理に流用することもできる。他の型の試料保持器も使用されることに留意されたい。例えば、試料保持器は10×10cmの大きさであってよく、また、異なる試料押付け技法を使用するものであってよい。
【0045】
[0051]
追加的な励起およびイメージング技法:定常波照射を用いた側面からの発出、斜め照明、およびさらには携帯電話のレンズおよびカメラを用いる携帯電話対応光学構成を含めた代替光路を使用することができる。
【0046】
[0052]
405以外の他の波長を単独でまたは組み合わせて使用することができ、励起源はLED、ハロゲンまたは他の従来の蛍光励起ランプ、レーザーダイオード、または他の供給源を含み得ることに留意されたい。
【0047】
[0053]
また、検体から放出される光を、マルチスペクトル画像データ収集のための一連のフィルターを伴うまたは伴わないモノクロセンサー、スナップショット収集のためのバイエルパターンを有するRGBカラーセンサー、マルチスペクトルデータ捕捉のための3つ、または4つ以上の非標準のカラーフィルターを伴う改良スナップショットカメラに方向付けることができる。試料に異なる励起波長を逐次的に照射することもでき、あるいは、単一の画像捕捉を伴ういくつかの供給源での同時励起を可能にするためダイクロイックおよび他のフィルタリング光学構成が複数の帯域を有するようにすることもできる。
【0048】
[0054]
直接見るために、試料を従来のまたは適度に適合させた蛍光顕微鏡の接眼レンズを通じて直接観察することができる。H&E染色を使用して生成された画像はいくらか緑色に見えるので、画像加工の前に、色を整える吸収フィルターを含めて、認識される色組成が、例えば、緑色が少なく、より淡紅色になるように調整することが望ましい場合がある。
【0049】
イメージングシステム
[0055]
図1は、本開示の実施形態によるFIBI技法のための例示的なイメージングシステム100を例示する。イメージングシステム100は、蛍光のための励起光を生じさせる照射源120(例えば、405nmのUV LED)を含む。励起光は任意選択の視準光学構成122および広帯域ダイクロイックビームスプリッター112を通じてガイドされ、次いで、Nikon対物レンズ10×NA=0.45などの対物レンズ110を使用して染色された組織試料102に焦点が合わせられる。染色された組織試料102はXYZステージ108に付着しており、XYZステージ108は、例えば、x方向およびy方向に50mmおよび25mmのトラベルレンジを有し得、また、焦点を合わせるためにz方向にも限定されたトラベルレンジを有し得る。いくつかの使用事例では、染色された組織試料102は、組織試料が押し付けられる透明な窓を含む組織学的検査カセット内に位置する。
【0050】
[0056]
得られた染色された組織試料102から発した蛍光は逆戻りに方向付けられ、対物レン
ズ110およびダイクロイックビームスプリッター112を通って、次いで任意選択のチ
ューブレンズ114および励起光をカットする吸収フィルター116を通って、イメージ
ング機構118に捕捉される。一実施形態では、イメージング機構118は、200mm
のチューブレンズ114(Thorlab ILT 200)を使用する科学グレードの
カラーカメラ(Ximea 9MP)を含む。
【0051】
画像の取得
[0057]
図2は、本開示の実施形態によるFIBI技法を使用して組織試料をイメージングするための例示的なプロセスを例示するフローチャートを示す。動作中、システムは、吸光し蛍光を発する染色剤を使用して染色された組織試料を受け入れる(ステップ202)。次に、システムは、組織試料に、蛍光を発しかつ吸光する染色剤の吸収スペクトルの一部を包含する範囲内の1つまたは複数の波長を有する励起光を照射し、それによって、励起光が組織試料の内部に位置する染色された組織と相互作用して、侵入深さが限定され、かつ組織試料の表面上またはその極めて近くに位置する染色された組織要素によって吸収される拡散する背面照明をもたらす、発した蛍光が生じる(ステップ204)。さらに、ある特定の組織成分はそれら自体の蛍光シグナルを発出し、追加的な空間的内容をもたらし得る。次に、システムは、組織試料の表面から放射される、発した蛍光を、励起光をカットする吸収フィルターを通して方向付ける(ステップ206)。次いで、システムは、接眼レンズを通じて画像を見ることを可能にするか、またはイメージングデバイスを使用して、フィルターにかけられた、発した蛍光の画像を捕捉する(ステップ208)。
【0052】
画像処理操作
[0058]
画像がメモリに取得され、かつ/またはディスクに保存されたら、ある特定の画像処理操作を画像に適用して、品質およびユーザー受容性を向上させることができる。これらの画像処理操作としては、これだけに限定されないが、鮮明化、拡大、コンピュータによる超解像、ノイズ除去などを挙げることができ、従来の画像処理機能を使用してか、または、所望の画像結果を生じるように訓練することができるAIに基づくツールによって実装することができる。FIBI画像において見られるネイティブな呈色を従来のH&Eの外観が忠実に模倣されるように変換するカラーモード変換機能性がそのような一連の操作の重要な成分を構成する。
【0053】
[0059]
しかし、AIツールは、大きな画像の適用がいくらか遅い場合があり、また、都合のよいリアルタイム変換をもたらすことができない。我々が開発した1つの戦略は、AIシステムを、FIBIからH&Eへの変換を行い、次いで、得られた変換された画像を使用して、ほぼリアルタイムで適用することができる非線形行列カラー変換オペレーターを訓練するための元のカラーFIBI画像と画素が一致するカラーデータをもたらすように訓練することである。
【0054】
[0060]
カラー(RGB)またはマルチスペクトル(4つ以上の波長帯)のいずれかの画像を解析するかまたは複数のシグナル層に分離することができ、それにより、多種多様なマルチスペクトル解析技法を使用して、例えばエラスチン、コラーゲンなどの組織成分の存在および外観を強調することができる。マルチスペクトル解析技法としては、これだけに限定されないが、エンドメンバー線形分離法、フェーザー解析、凸包解析およびノンパラメトリックAI対応方法を挙げることができる。
【0055】
例示的な画像
[002]
図3~7は、FIBI技法を使用して生成した組織試料のいくつかの画像を示す。組織試料は全てヘマトキシリン(×30秒間)およびエオシン(×30秒間)で染色し、10×レンズを用い、405nmまたは440nmの励起光、および420nmまたは450nmのロングパス吸収フィルターを使用してイメージングを行った。画像をカラーカメラで捕捉し、画像管理ソフトウェアを使用して自動ホワイトバランスを取った。詳細には、
図3は腎臓の血管と付随する糸球体および細管の画像を示し、
図4は肝細胞癌と付随する線維化の画像を示し、
図5はマウス小腸の画像を示し、
図6はヒト肝臓の画像を示し、
図7はヒト膵臓の画像を示す。
【0056】
[003]
本開示の実施形態に対する種々の改変が当業者には容易に明らかになり、また、本明細書において定義されている一般原則を本発明の主旨および範囲から逸脱することなく他の実施形態および適用に適用することができる。したがって、本発明は示されている実施形態に限定されず、本明細書に開示される原理および特徴と一致する最も広い範囲に調和する。
【0057】
[004]
前述の実施形態の説明は、単に例示および説明する目的で提示されている。それらの説明は、網羅的なものではなく、また本記載を開示された形態に限定するものでもない。したがって、当業者には多くの改変および変形が明らかになろう。さらに、上記の開示は、本記載を限定するものではない。本記載の範囲は添付の特許請求の範囲によって定義される。