(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】インターロイキン-1受容体アンタゴニスト及びそれを含む融合タンパク質
(51)【国際特許分類】
C07K 14/545 20060101AFI20241004BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20241004BHJP
C12N 15/25 20060101ALI20241004BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20241004BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20241004BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20241004BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20241004BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20241004BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20241004BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20241004BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20241004BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20241004BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20241004BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20241004BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20241004BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20241004BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20241004BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20241004BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20241004BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241004BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
C07K14/545 ZNA
C07K19/00
C12N15/25
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61P29/00
A61P19/02
A61P1/04
A61P11/06
A61P13/12
A61P11/00
A61P27/02
A61P17/00
A61P37/08
A61P29/00 101
A61P9/00
A61P35/00
A61K38/16
(21)【出願番号】P 2022572453
(86)(22)【出願日】2020-07-09
(86)【国際出願番号】 CN2020100985
(87)【国際公開番号】W WO2021237891
(87)【国際公開日】2021-12-02
【審査請求日】2023-01-20
(31)【優先権主張番号】202010450177.7
(32)【優先日】2020-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】518416300
【氏名又は名称】ベイジン ブイディージェイバイオ カンパニー, リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リー、ジーチァン
(72)【発明者】
【氏名】マー、ロン
(72)【発明者】
【氏名】チアン、シンシェン
(72)【発明者】
【氏名】スン、イーピィン
(72)【発明者】
【氏名】リュウ、イーレン
(72)【発明者】
【氏名】リー、シァオクイ
【審査官】鳥居 敬司
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第103509100(CN,A)
【文献】特表2010-539995(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101255197(CN,A)
【文献】特表2008-515970(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102277381(CN,A)
【文献】Journal of Immunotoxicology,2008年,Volume 5,pp. 189-199
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 14/00-14/825
C07K 19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
SEQ ID NO:1を有し、かつN末端から第5、14、74位の少なくとも一つの突然変異部位を含むことを特徴とするインターロイキン-1受容体アンタゴニスト(IL-1RN)タンパク質であって、
前記突然変異部位はR5T、R14T及びD74Nから選択される少なくとも一つであるタンパク質。
【請求項2】
請求項1に記載のタンパク質をコードするヌクレオチド。
【請求項3】
前記IL-1RNタンパク質の半減期を延長するためのドメインを含み、前記ドメインは請求項1に記載のIL-1RNタンパク質に接続され、前記ドメインはFcドメイン、血清アルブミン及びトランスフェリンから選択される一種又は複数種で
ある、融合タンパク
質。
【請求項4】
腫瘍壊死因子受容体2(TNFR2)又はその断
片をさらに含
む、請求項3に記載の融合タンパク
質。
【請求項5】
前記断片が腫瘍壊死因子受容体2(TNFR2)の細胞外ドメインである、請求項4に記載の融合タンパク質。
【請求項6】
前記FcドメインはIgG1Fc、IgG2Fc、IgG3Fc、IgG4Fc、IgMFc、IgAFc、IgDFcから選択される一種又は複数種である、請求項3に記載の融合タンパク質。
【請求項7】
前記IL-1RNタンパク質の半減期を延長するためのドメイン、前記IL-1RNタンパク質及び前記TNFR2はリンカーにより接続される、請求項
3~6のいずれか一項に記載の融合タンパク
質。
【請求項8】
前記リンカーは一般式(GnS)mを有し、ここで、nは0~6の整数であり
、mは1~4の整数で
ある、請求項
7に記載の融合タンパク
質。
【請求項9】
前記一般式は(GlyGlyGlyGlySer)mであり、ここで、mは1、2又は3である、請求項8に記載の融合タンパク質。
【請求項10】
請求項1に記載のIL-1RNタンパク質、請求項3~
9のいずれか一項に記載の融合タンパク
質を発現するベクター。
【請求項11】
請求項
10に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項12】
請求項1に記載のタンパク質
及び請求項3~
9のいずれか一項に記載の融合タンパク
質からなる群より選択される少なくとも2つを含むポリペプチド複合体。
【請求項13】
請求項1に記載のタンパク質、請求項3~
9のいずれか一項に記載の融合タンパク
質、請求項
10に記載のベクター、請求項
11に記載の細胞又は請求項
12に記載のポリペプチド複合体、及び薬学的に許容可能な担体又は添加剤を含む、医薬組成物。
【請求項14】
炎症性関連疾患用の医薬組成物であって、前記炎症性関連疾患は
、関節炎、腸炎、喘息、肺線維症、糸球体腎炎、移植片対宿主反応、急性肺損傷、重篤な角膜火傷、リウマチ様関節炎、クリオピリン関連周期性症候群(CAPS)、アトピー性皮膚炎、化膿性汗腺炎、心血管疾患及び非小細胞肺癌から選択される一種又は複数種である、請求項
13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
請求項1に記載のタンパク質、請求項3~
9のいずれか一項に記載の融合タンパク
質、請求項
10に記載のベクター、請求項
11に記載の細胞又は請求項
12に記載のポリペプチド複合体を含む炎症性関連疾患用医薬であって、前記炎症性関連疾患は
、関節炎、腸炎、喘息、肺線維症、糸球体腎炎、移植片対宿主反応、急性肺損傷、重篤な角膜火傷、リウマチ様関節炎、クリオピリン関連周期性症候群(CAPS)、アトピー性皮膚炎、化膿性汗腺炎、心血管疾患及び非小細胞肺癌から選択される一種又は複数種である、炎症性関連疾患用医薬。
【請求項16】
請求項1に記載のタンパク質、請求項3~
9のいずれか一項に記載の融合タンパク
質、請求項
10に記載のベクター、請求項
11に記載の細胞、請求項
12に記載のポリペプチド複合体、又は請求項
13に記載の医薬組成物を使用する炎症性関連疾患の治療又は予防方法(人間の治療又は予防方法を除く。)であって、前記炎症性関連疾患は
、関節炎、腸炎、喘息、肺線維症、糸球体腎炎、移植片対宿主反応、急性肺損傷、重篤な角膜火傷、リウマチ様関節炎、クリオピリン関連周期性症候群(CAPS)、アトピー性皮膚炎、化膿性汗腺炎、心血管疾患及び非小細胞肺癌から選択される一種又は複数種である、治療又は予防方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生物医薬の分野に属し、IL-1RN変異体及びそれを含むタンパク質の医療分野での応用に関する。
【背景技術】
【0002】
インターロイキン-1(IL-1)は主にIL-1α及びIL-1βの2種類のタンパク質で構成され、生体の炎症刺激に対する反応により生成され、様々な自己免疫性及び自己炎症性疾患(炎症性腸疾患、リウマチ様関節炎、クリオピリン関連周期性症候群等を含む)の発症メカニズムに関与する。IL-1α及びIL-1βは類似する生物学的活性を有し、IL-1受容体補助タンパク質(IL-1RAcP)の助けを借りてIL-1受容体(IL-1R1)と結合し、細胞内部にシグナルを伝達することができる。IL-1αの発現は一般的であり、主に上皮細胞、角化細胞及び内皮細胞において発現し、通常、局所的に作用する。IL-1βは主に単核細胞及びマクロファージにより生成され、全身にわたって分泌することができ、かつ循環作用を発揮する。正常な場合に、IL-1α及びIL-1βはいずれも低レベルで発現し、転写及び翻訳のレベルは誘導に依存し、加工及び分泌は調節に依存する。その調節ステップの喪失は、発熱、かぶれ及び関節炎を特徴とする症候群をもたらす。
【0003】
IL-1受容体アンタゴニスト(Interleukin 1 receptor antagonist,IL-1RN)はIL-1α及びIL-βの高親和性競合者である。IL-1RNは異なる細胞において異なるサイトカインにより誘導して生成され、人体内に存在するタンパク質系サイトカイン受容体拮抗薬である。IL-1RNはIL-1R1と緊密に結合することができ、それによりIL-1α及びIL-1βと対応する受容体との結合を遮断し、さらにIL-1の様々な生物学的効果を拮抗し、従って臨床的には、リウマチ様関節炎、CAPS、アトピー性皮膚炎、化膿性汗腺炎等を含む、IL-1が病理変化過程に関与する関連炎症性疾患を治療することに用いることができる。
【0004】
IL-1RNの分子量が小さいため、その血漿での半減期が非常に短く(2~3時間)、通常、毎日一回注射して体内の有効な血中濃度を維持する必要がある。そのほか、顕著な臨床効果を達成するために、IL-1RNの臨床用量が非常に高く、例えばリウマチ様関節炎を治療するために毎回75~150mg注射する必要がある。頻繁すぎる高用量注射は患者の苦痛を増加させ、かつ副作用が発生しやすい。本発明はIL-1RNを改造することにより、その生物学的活性を向上させ、半減期を延長し、さらに注射頻度及び投与量を低下させ、かつ良好な臨床効果を維持する。
【発明の概要】
【0005】
定義及び用語
特に説明しない限り、下記定義は本発明の全文に適用される。未定義の用語は本分野で約束された定義に基づいて理解することができる。
【0006】
明細書全体において、文脈上、他の要求がない限り、「含む(comprise)」という単語又はその変化形式、例えば「有する(comprises)」又は「含有する(comprising)」は、素子を含む各要素又は群又は全体を意味すると理解されるが、任意の他の素子の要素又は群又は他の全体を排除するものではない。
【0007】
本明細書及び特許請求の範囲に使用されるように、文脈上、別途に明確に説明されない限り、単数の形式「一種(a)」、「一つ(an)」及び「前記(the)」は複数の指示を含む。例えば、「細胞(a cell)」という用語は複数の細胞を含み、その混合物を含む。
【0008】
「約(about)」又は「おおよそ(approximately)」という用語は、当業者が決定した特定の値の許容可能な誤差範囲内で、該値がどのように測定されるか又は決定されるか、すなわち、測定システムの制限性に部分的に依存することを意味する。例えば、「約」という単語は本分野の実践に応じて1又は1より大きい標準偏差内にあることを意味することができる。又は、「約」は所定値の20%以下、10%以下、5%以下又は1%以下の範囲を意味することができる。又は、特に生物学的システム又はプロセスに対して、該用語は数値のオーダー内に、好ましくは5倍以内に、より好ましくは2倍以内にあることを意味することができる。本願及び特許請求の範囲において特定の値を説明する場合、特に説明しない限り、「約」という用語は該特定の値の許容可能な誤差範囲内にあることを意味すると仮定すべきである。
【0009】
本明細書で使用される「ポリヌクレオチド」及び「核酸分子」という用語は交換して使用することができ、任意の長さのヌクレオチドの重合形態を意味する。ポリヌクレオチドはデオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド及び/又はその類似体を含むことができる。ヌクレオチドは任意の3次元立体構造を有することができ、かつ任意の既知又は未知の機能を実行することができる。「ポリヌクレオチド」という用語は、例えば、一本鎖、二本鎖及び三重らせん分子、遺伝子又は遺伝子断片、エクソン、イントロン、mRNA、tRNA、rRNA、リボザイム、アンチセンス分子、cDNA、組換えポリヌクレオチド、分岐ポリヌクレオチド、アプタマー(aptamer)、プラスミド、ベクター、分離された任意の配列のDNA、分離された任意の配列のRNA、核酸プローブ、及びプライマーを含む。核酸分子は修飾された核酸分子を含んでもよく、例えば、糖類により修飾された塩基及び/又はヌクレオチド間のリンカーを含む。
【0010】
「アミノ酸」という用語は、20種の天然に存在するアミノ酸;ヒドロキシプロリン、リン酸セリン及びリン酸トレオニンを含むがそれらに限定されないインビボ翻訳後に修飾されたアミノ酸;及び2-アミノアジピン酸、ヒドロキシリジンイソドデカン、ノルバリン、ノルロイシン及びオルニチンを含むがそれらに限定されない他の希少(unusual)アミノ酸を含むと理解されるべきである。なお、「アミノ酸」という用語はD-及びL-アミノ酸を含む。以下、本発明に基づいて使用可能なアミノ酸のさらなる詳細な説明及び非天然アミノ酸の例を示す。
【0011】
「変異体」という用語は、リファレンスペプチド又はポリヌクレオチドが異なるが、主要な性質が保留されているペプチド又はポリヌクレオチドのことを意味する。典型的なペプチド変異体はアミノ酸配列において他のリファレンスペプチドと異なる。一般的に、差異は限られ、リファレンスペプチドと変異体の配列全体が近似しかつ多くの領域で同じである。一種又は複数種の修飾(例えば、置換、付加及び/又は欠失)により変異体とリファレンスペプチドとのアミノ酸配列を異ならせることができる。ペプチド変異体は保存的に修飾された変異体(例えば、保存的変異体は約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約98%、約99%の初期配列を有する)を含む。置換又は挿入されたアミノ酸残基は遺伝暗号によりコードされたアミノ酸残基であってもよく又はそうでなくてもよい。ペプチド変異体は天然に形成された、例えば対立遺伝子変異体であってもよく、又は未知の天然に存在する変異体であってもよい。
【0012】
「類似体」という用語は、メチル化、アセチル化、リン酸化、アデニル化、ユビキチン化、ADPリボシル化等を含むがそれらに限定されないタンパク質修飾;抗体コンジュゲート、ポリペプチドコンジュゲート等を含むがそれらに限定されないコンジュゲート;薬物-コンジュゲート、ポリマー-コンジュゲート等を含むがそれらに限定されないコンジュゲートを意味する。以上は列挙に過ぎず、全てのタンパク質の全体機能に近い類似体はいずれも保護範囲内にある。
【0013】
「ポリペプチド」という用語は、その大きさに関わらず、実質的に任意の20種の天然アミノ酸で構成された任意のポリマーを意味する。「タンパク質」という用語は一般的に比較的大きいタンパク質を指し、「ペプチド」は一般的に小さいポリペプチドを指し、本分野においてこれらの用語は常に部分的に重ねて使用される。別途明記しない限り、「ポリペプチド」という用語は一般的にタンパク質、ポリペプチド及びペプチドを指す。
【0014】
「ベクター」という用語は、宿主細胞内で自律的に複製可能であり、かつ外来DNAを受容可能な核酸分子である。ベクターはその自体の複製開始点、及び外来DNAを挿入するための一つ又は複数の制限酵素の独特な識別位置を有し、かつ通常、スクリーニング可能なマーカー(例えば、抗生物質耐性をコードする遺伝子)を有し、挿入されたDNA発現のための識別配列(例えば、プロモーター)を常に有する。一般的なベクターはプラスミドベクター及びファージベクターを含む。
【0015】
「細胞」という用語は、任意の原核細胞、真核細胞、初代細胞又は不死化細胞株、及び組織又は器官におけるこのような細胞の任意のクラスタを含むことを意図する。好ましくは、細胞は哺乳動物(特にヒト)に由来し、かつ一種又は複数種の病原体により感染されることができる。本発明に係る「宿主細胞」は任意由来のトランスフェクションされた、形質転換された、形質導入された又は感染された細胞であってもよく、原核細胞、真核細胞、哺乳動物細胞、鳥類細胞、昆虫細胞、植物細胞又は細菌細胞を含み、又はそれは本明細書に記載の核酸を増殖するための任意由来の細胞であってもよい。
【0016】
本発明のタンパク質又はその変異体及び類似体は、異なる細胞タイプに対して変更された生物学的効果を有する可能性があり、ヒト初代細胞、リンパ球、赤血球、網膜細胞、肝細胞、ニューロン、ケラチノサイト、内皮細胞、内胚葉細胞、外胚葉細胞、中胚葉細胞、上皮細胞、腎臓細胞、肝細胞、骨細胞、骨髄細胞、リンパ節細胞、真皮細胞、線維芽細胞、T細胞、B細胞、血漿細胞、ナチュラルキラー細胞、マクロファージ、顆粒球、好中球、ランゲルハンス細胞、樹状細胞、好酸球、好塩基球、乳腺細胞、小葉細胞、前立腺細胞、肺部細胞、食道細胞、膵臓細胞、β細胞(インスリン分泌細胞)、血管芽細胞、筋肉細胞、卵形細胞(肝細胞)、間葉系細胞、脳微小血管内皮細胞、星状膠細胞、様々な細胞群(成人幹細胞及び胚性幹細胞を含む)、様々な前駆細胞;及び他のヒト恒久的形質転換細胞系又は癌細胞系を含むがそれらに限定されない。
【0017】
同一性パーセントは本分野の既知のソフトウェアにより分析され、例えばGAP(Needleman及びWunsh、1970)分析(GCGプログラム)により決定され、ここでパラメータは;gap creation penalty=5、gap extension penalty=0.3である。分析される配列の長さが少なくとも15個のアミノ酸である場合、試験に関与する二つの配列の少なくとも15個のアミノ酸の領域に対してGAP分析を行う。より好ましくは、分析される配列の長さが少なくとも50個のアミノ酸である場合、試験に関与する二つの配列の少なくとも50個のアミノ酸の領域に対してGAP分析を行う。より好ましくは、分析される配列の長さが少なくとも100個のアミノ酸である場合、試験に関与する二つの配列の少なくとも100個のアミノ酸の領域に対してGAP分析を行う。より好ましくは、分析される配列の長さが少なくとも250個のアミノ酸である場合、試験に関与する二つの配列の少なくとも250個のアミノ酸の領域に対してGAP分析を行う。さらに好ましくは、分析される配列の長さが少なくとも500個のアミノ酸である場合、試験に関与する二つの配列の少なくとも500個のアミノ酸の領域に対してGAP分析を行う。
【0018】
本明細書で使用されるIL-1RNの「変異体」とは一つ又は複数のアミノ酸が変化されたアミノ酸配列を意味する。該変異体は「保存的な」変化を有することができ、ここで置換するアミノ酸は類似する構造又は化学的性質を有し、例えばイソロイシンでロイシンを置換する。又は、該変異体は「非保存的な」変化を有する可能性があり、例えばグリシンがトリプトファンで置換される。類似する微小な変化はアミノ酸の欠失又は挿入、又は両者の併有を含むこともできる。本分野で公知のコンピュータプログラム、例えばDNAstarソフトウェアを用いて、生物学的又は免疫学的活性を破壊せずにどのアミノ酸残基が置換、挿入又は削除可能かを決定することができる。
【0019】
本発明に用いられるベクターは、例えばファージ、プラスミド、コスミド、ミニ染色体、ウイルスベクター又はレトロウイルスベクターであってもよい。本発明のポリヌクレオチドをクローニング及び/又は発現するために用いることができるベクターは、ポリヌクレオチドを複製及び/又は発現する必要がある宿主細胞において、ポリヌクレオチドを複製及び/又は発現することができるベクターである。一般的には、ポリヌクレオチド及び/又はベクターは任意の真核又は原核細胞に用いることができ、哺乳動物細胞(例えばヒト細胞(例えばHeLa)、サル細胞(例えばCos)、ウサギ細胞(例えばウサギ網赤血球)、ラット細胞、ハムスター細胞(例えばCHO、NSO及び幼ハムスター腎臓細胞)又はマウス細胞(例えばL細胞))、植物細胞、酵母細胞、昆虫細胞又は細菌細胞(例えば大腸菌)を含む。様々な種類の宿主細胞に適用される適切なベクターの例は例えばF.Ausubel et al. Current Protocols in Molecular Biology. Greene Publishing Associates and Wiley-Interscience (1992)及びSambrook et al.(1989)を参照することができる。これらのポリヌクレオチドを含む宿主細胞を使用して、例えば薬物、診断試薬、ワクチン及び治療剤等に使用可能なタンパク質を大量に発現させることができる。相補的な粘着性末端を介してポリヌクレオチドとベクターを操作可能に接続する様々な方法が開発された。例えば、相補的なホモマー配列断片を、挿入されるベクター内のDNAセグメントに付加することができる。次に、ベクターとDNAセグメントは相補的なホモマー末端間の水素結合により接続され、組換えDNA分子を形成する。
【0020】
本発明はインターロイキン-1受容体アンタゴニスト(IL-1RN)タンパク質又はその変異体又は類似体に関し、その配列はSEQ ID NO:1とは少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%又は100%の配列同一性を有する。本発明は、さらに、上記タンパク質をコードするヌクレオチド配列を提供し、その配列はSEQ ID NO:2とは少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%又は100%の配列同一性を有し、又はストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、前記ヌクレオチド配列の一つの相補的な配列とハイブリダイズする配列を有する。SEQ ID NO:2に示す配列は野生型インターロイキン-1受容体アンタゴニストのヌクレオチド配列である。
【0021】
さらに、本発明は、インターロイキン-1受容体アンタゴニスト(IL-1RN)タンパク質又はその変異体又は類似体のタンパク質配列を提供し、それはSEQ ID NO:3、5、7、9、11、13又は15に示されたタンパク質配列の一つとは少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%又は100%の配列同一性を有し、ここで、前記タンパク質配列はR5T、R14T及びD74Nから選択された少なくとも一つの突然変異部位を含む。
【0022】
本発明は、インターロイキン-1受容体アンタゴニスト(IL-1RN)タンパク質又はその変異体又は類似体をコードするヌクレオチド配列をさらに提供し、その配列はSEQ ID NO:4、6、8、10、12、14又は16に示されたヌクレオチド配列の一つとは少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%又は100%の配列同一性を有し、又はストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、SEQ ID NO:4、6、8、10、12、14又は16に示されたヌクレオチド配列の一つの相補的な配列とハイブリダイズし、ここで、前記ヌクレオチド配列は一つ又は複数のヌクレオチド突然変異部位を含み、該一つ又は複数のヌクレオチド突然変異部位はコードされたタンパク質にR5T、R14T及びD74Nのうちの少なくとも一つの突然変異部位が存在することを引き起こす。
【0023】
さらに、本発明は融合タンパク質をさらに提供し、それはIL-1RNタンパク質の半減期を延長するためのドメインを含み、前記融合タンパク質は該ドメインが上記IL-1活性を抑制するIL-1RNタンパク質又はその変異体又は類似体と接続することによって生成される。さらに、二重標的設計として、前記融合タンパク質又はその変異体又は類似体は腫瘍壊死因子受容体2(TNFR2)又はその断片又は変異体を含んでもよく又は含まなくてもよい。好ましくは、前記腫瘍壊死因子受容体2(TNFR2)の断片は腫瘍壊死因子受容体2(TNFR2)の細胞外ドメインである。
【0024】
本発明のコンテキストにおいて、IL-1RNタンパク質半減期を延長するためのドメインは、IgG1Fc、IgG2Fc、IgG3Fc、IgG4Fc、IgMFc、IgAFc及びIgDFcから選択される一種又は複数種のFcドメイン;又は血清アルブミン;又はトランスフェリン(Tf)を含むがそれらに限定されない。本発明のコンテキストにおいて、Fc、骨格領域又は血清アルブミンは霊長類哺乳動物から誘導され、ヒト、オランウータン及びゴリラ、家畜(例えば牛、羊、豚、馬、ロバ)、室内試験動物(例えばマウス、ラット、モルモット、ハムスター、ウサギ)、パートナー動物(例えば猫、犬)及び捕捉された野生動物(例えばげっ歯類動物、狐、鹿、麒麟)から選択される。
【0025】
本発明のコンテキストにおいて、TNFR2フラグメントの配列はSEQ ID NO:17に示された配列とは少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%又は100%の配列同一性を有し、かつその全体的な機能に影響を与えない突然変異を含んでもよい。
【0026】
本発明のコンテキストにおいて、Fcドメインは突然変異部位を有してもよく、それはSEQ ID NO:18~21のいずれか一項に示された配列とは少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%又は100%の配列同一性を有する配列を含むがそれらに限定されない。
【0027】
本発明のコンテキストにおいて、血清アルブミンの配列はSEQ ID NO:22に示された配列とは少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%又は100%の配列同一性を有する配列を含むがそれらに限定されない。
【0028】
本発明のコンテキストにおいて、IL-1RNタンパク質の半減期を延長するためのドメインはIL-1活性を抑制するIL-1RNタンパク質とフレキシブルリンカーにより接続され、前記フレキシブルリンカーの一般式は(GnS)mであり、ここで、nは0~6の整数であり、好ましくは、nは0、1、2、3、4、5又は6であり、mは1~4の整数であり、好ましくは、mは1、2、3又は4であり;好ましくは、一般式は(GlyGlyGlyGlySer)mであり、ここで、mは1~3の整数であり、好ましくは、mは1、2又は3である。該一般式は例示に過ぎず、上記の二つの部分を接続できる全てのリンカーペプチドはいずれも本発明の保護範囲内にある。
【0029】
さらに、本発明は融合タンパク質又はその変異体又は類似体をさらに提供し、SEQ ID NO:23(IL-1RN D74N-hIgG4 Fc S228P)又はSEQ ID NO:24(hIgG4 Fc S228P-IL-1RN D74N)に示された配列とは少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%又は100%の配列同一性を有する配列を含むがそれらに限定されない。SEQ ID NO:23及びSEQ ID NO:24に示された配列は融合タンパク質の例示に過ぎない。前記のように、任意のリンカーを有するか又は有さず、任意選択的に半減期延長ドメインを有し、任意選択的に二重標的設計を有する融合タンパク質は、いずれも本発明の保護範囲内にある。本発明は上記融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列をさらに提供する。
【0030】
さらに、上記タンパク質又はその変異体又は類似体、融合タンパク質又はその変異体又は類似体は、タンパク質単位として、任意選択的にポリペプチド複合体に組み合わせてもよく、各単位は同じであっても異なってもよく、ここで、前記ポリペプチド複合体は少なくとも二つのタンパク質単位を有し、かつタンパク質単位同士はリンカーペプチド又は他の方式で接続されてもよい。
【0031】
上記タンパク質又はその変異体又は類似体、融合タンパク質又はその変異体又は類似体、ポリペプチド複合体は、任意選択的に本分野の既知のN末端シグナルペプチドを有し、本分野の既知のベクターにクローニングして発現させ、かつ任意選択的に宿主細胞に移植してもよい。
【0032】
またさらに、医薬組成物に製造することができ、ここで前記医薬組成物は任意選択的に一種又は複数種の薬学的に許容可能な担体又は賦形剤と混合して異なる投与経路に用いられる医薬剤形に調製され、例えば錠剤、カプセル、散剤、顆粒剤、シロップ剤、溶液剤、内服液、スピリット剤、チンキ剤、エアロゾル剤、DPI製剤、注射剤、無菌注射用粉末、坐剤等を含むがそれらに限定されない。本発明のタンパク質又はその変異体又は類似体、融合タンパク質又はその変異体又は類似体、又はポリペプチド複合体は経口、静脈、筋肉、皮下等の経路で投与することができる。「薬学的に許容可能な」成分はヒト及び/又は動物に適用され、かつ過度に有害な副反応(例えば毒性、刺激及びアレルギー反応)を発生せず、即ち合理的な利益/リスク比を有する物質である。「薬学的に許容可能な担体」は本発明のタンパク質又はその変異体又は類似体、融合タンパク質又はその変異体又は類似体、又はポリペプチド複合物を動物又はヒトに送達するための薬学的又は食品に許容可能な溶媒、懸濁剤又は賦形剤である。前記担体は液体又は固体であってもよい。
【0033】
本発明はインターロイキン-1受容体アンタゴニスト突然変異体及びそれを含む融合タンパク質の製造方法をさらに提供する。前記方法は融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列で宿主細胞を形質転換し、発現及び細胞培養物からタンパク質を回収することに適する条件で培養することを含み、形質転換された細胞で生成されたタンパク質は使用された配列及び/又はベクターに依存して細胞から分泌されるか又は細胞内に含まれる。3段階精製のプロセス条件により、CHO細胞により発現された組換え融合タンパク質を精製し、タンパク質の総収率が50%より大きく、かつHPLCにより測定された目的タンパク質の純度が98.5%より大きい。
【0034】
さらに、活性試験により、本発明の設計、構築及び精製により得られた目的タンパク質を特定する。結果によると、野生型に対して、突然変異体融合タンパク質の活性が3倍向上し、リンカーペプチドを添加することにより活性をさらに3倍向上させることができる。なお、突然変異体はマウスCIA疾患モデルにおいて炎症反応に対する完全抑制効果を示す。
【0035】
本発明の開示するIL-1RN突然変異体及び融合タンパク質は炎症性疾患を治療するための薬物を製造するために用いられ、前記炎症性疾患は関節炎、腸炎、喘息、肺線維症、糸球体腎炎、移植片対宿主反応、急性肺損傷、重篤な角膜火傷、リウマチ様関節炎、クリオピリン関連周期性症候群(CAPS)、アトピー性皮膚炎、化膿性汗腺炎、心血管疾患、非小細胞肺癌等のうちの一種又は複数種を含む。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本発明の実施形態におけるMabselect SuReクロマトグラムである。
【
図2】本発明の実施形態におけるSEC-HPLCにより測定されたMabselect SuReクロマトグラフィーにより溶出されたタンパク質の純度図である。
【
図3】本発明の実施形態におけるCapto Phenyl(HS)疎水クロマトグラムである。
【
図4】本発明の実施形態におけるSEC-HPLCにより測定されたCapto Phenyl(HS)疎水クロマトグラフィーにより溶出されたタンパク質の純度図である。
【
図5】本発明の実施形態におけるCapto adhere複合型イオン交換クロマトグラムである。
【
図6】本発明の実施形態におけるSEC-HPLCにより測定されたCapto adhere複合型イオン交換クロマトグラフィーによりフロースルーされたタンパク質の純度図である。
【
図7】本発明の実施形態における各精製ステップのサンプルの電気泳動(SDS-PAGE)結果図である。ここで、各レーンのサンプルは以下のとおりである;1.マーカー、2.細胞培養上清、3.アフィニティークロマトグラフィーにより溶出されたタンパク質液、4.疎水クロマトグラフィーにより溶出されたタンパク質液、5.複合クロマトグラフィーによりフロースルーされたタンパク質液
【
図8】IL-1RN-Fc融合タンパク質の細胞生物学的活性検出の結果図である。
【
図9】二重標的融合タンパク質の細胞生物学的活性検出の結果図である。
【
図10】DBA/1マウスにおけるCIA効能の結果図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
・TNFR2-Fc融合タンパク質の製造
中国特許出願公開第1829739号明細書に開示されたエタネルセプト(etanercept)(TNFR2-FC)のアミノ酸配列に基づいてそのヌクレオチド配列を設計すると共にコドン最適化を行う。人工的に合成されたTNFR2-FC遺伝子をベクターpEE12.4にクローニングする。構築された組換えプラスミドに配列決定を行い、挿入配列が設計配列と完全に一致することを確認する。PvuIで組換えプラスミドを線形化し、次にCHO-K1細胞をトランスフェクトし、MSX(L-メチオニンスルホキシミン(L-Methionine Sulfoximine))を用いて目的タンパク質を安定的に発現するCHO細胞株をスクリーニングする。スクリーニングされた細胞株を振とうフラスコで培養する。発酵が完了した後に遠心分離により発酵液中の細胞及び細胞断片を除去し、次に0.22μMの濾過膜で濾過し、清澄な発酵液が得られる。発酵液についてProteinAでアフィニティークロマトグラフィーを行い、MabSelect SuRe(商標)(GE Healthcare)を充填剤として抽出する。充填剤は結合緩衝液(20mM PB、0.15M NaCl、pH7.2)で平衡化する。サンプリングを完了した後、サンプルをベースラインまで洗浄する。最後に、溶出緩衝液(50mM クエン酸ナトリウム、pH3.3)で目的タンパク質を溶出する。アフィニティークロマトグラフィー溶出物を濃縮し、さらにゲル濾過クロマトグラフィー(充填剤がSuperdex 200(GE Healthcare)であり、緩衝液がPBSである)で精製する。ゲル濾過クロマトグラフィーの各溶出ピークを収集し、非還元SDS-PAGE分析を行い、電気泳動純度が高くかつ分子量がTNFR2-Fcと一致する溶出ピークを選択して生物学的活性分析に用い、それによりTNFR2-Fc融合タンパク質を製造して得る。
【0038】
・タンパク質の構築
まず、目的タンパク質のアミノ酸配列に基づいてヌクレオチド配列にコドン最適化を行い、遺伝子合成会社に送ってDNA合成を行い、次に合成された配列決定が正確な目的遺伝子をpEE12.4ベクターに挿入する。該ベクターは強力プロモーターhCMV-MIE、レプリコンpEE6 ori、ターミネーターSV40 poly(A)シグナル、複製開始点SV40(ori)、HindIII/EcoRI制限部位、及びグルタミン合成酵素遺伝子を含む。構築された組換えプラスミドに配列決定を行い、挿入配列が設計配列と完全に一致することを確認する。制限エンドヌクレアーゼPvuIで組換えプラスミドを線形化し、次にCHO-K1細胞をトランスフェクトし、MSX(L-メチオニンスルホキシミン)を用いて目的タンパク質を安定的に発現するCHO細胞株をスクリーニングする。
【0039】
・細胞株の構築
CHO-K1細胞を予め用意し、トランスフェクションの前日に、細胞密度を0.5×106個の細胞/mLに調整する。1.43×107個の細胞を取り、洗浄し、遠心分離し、培地中のGlutaMAXを除去する。0.7mLのCD CHO培地で細胞を懸濁し、40μgの酵素切断線形化されたプラスミドを添加し、均一に混合し、0.4cmの電気回転カップに移す。電気回転計を調整し、容量1000μF、電圧300Vで電撃を行う。電撃した後に細胞を37℃で予熱された150mLの培地に迅速に移し、50μL/ウェルで、96ウェルプレートに接種し、5%CO2、37℃で静置培養する。24時間トランスフェクションした後、各ウェルに150μLのCD CHO培地(66.6μMのMSXを含む)を追加し、MSXの最終濃度は50μMであり、5%CO2、37℃で培養し続ける。トランスフェクションした後に21~28日間培養し、成長したモノクローナルを選び出し、増幅培養した後、上清を収穫してSDS-PAGE還元電気泳動検出を行い、タンパク質バンドの染色の深さはタンパク質濃度と正相関する。
【0040】
・目的タンパク質の精製
本実施例におけるインターロイキン-1受容体アンタゴニスト融合タンパク質の精製方法は、以下のステップを含む。
1.深層濾過した後、得られたCHO細胞培養物をまずMabselect SuReアフィニティークロマトグラフィーで精製し、融合タンパク質液を捕捉する。
1.1 4つのカラム体積の平衡溶液(20mmol/LPB、0.15mol/L NaCl pH7.2)で平衡させ、pH及び導電率の監視値は平衡緩衝液と一致する。
1.2 サンプルをロードする前に、紫外線吸収値をゼロに設定する。深層濾過された培養上清を直接サンプリングし、サンプル保持時間は9分間であり、サンプリング量は15mg/mlである。
1.3 サンプリングした後、3つのカラム体積のアフィニティークロマトグラフィー平衡溶液で洗浄し、次に洗浄液1(20mmol/LPB、1.5mol/L NaCl、2.0mol/L尿素、pH7.2)で洗浄する。
1.4 洗浄液2(100mmol/Lのクエン酸、0.3mol/Lのグリシン、10%のソルビトール、pH5.5)でカラムを洗浄する。表示されたpH及び導電率の監視値は洗浄液2と一致する。
1.5 溶出液(100mmol/Lのクエン酸塩、0.3mol/Lのグリシン、15%のトレハロース、30%のソルビトール、pH3.7)はサンプルを溶出するために用いられ、280nmUVでタンパク質の主ピークを収集する。UVが120mAUに達したときに収集を開始し、UVが120mAUであるときに収集を停止する。
1.6 3つのカラム体積の水酸化ナトリウムで洗浄し、次に平衡溶液を使用してカラムのpHを中性に平衡させて安定させ、次に3つのカラム体積のエタノールを使用してカラムを保存する。
1.7
図1に示すように、黒い四角印は目的タンパク質のMabselect SuReクロマトグラムを示す;
図2に示すように、黒い四角印はHPLCにより測定された目的タンパク質の純度を示す。
【0041】
2.ステップ1で捕捉された融合タンパク質をCapto Phenyl(HS)疎水クロマトグラフィーにより精製することにより、大部分の不純物を除去する;
2.1 サンプル前処理:親和性溶出されたタンパク質溶液をサンプル希釈液(20mmol/L PB、3.0mol/L NaCl、pH7.1)で1:5の体積比で希釈することにより、pH7.1に調整し、導電率は165~175mS/cmである。
2.2 4つのカラム体積の平衡緩衝液(20mmol/L PB、2.2mol/LNaCl pH7.1)でカラムを平衡化する。pH及び導電率の監視値は平衡緩衝液と一致する。
2.3 サンプルをロードする前に、UV吸収値をゼロに設定する。サンプルはステップ1においてMabselect SuReアフィニティークロマトグラフィーにより溶出されたタンパク質液であり、サンプルの保持時間は9分間であり、サンプリング量は15mg/mlである。
2.4 サンプルのロードが完了した後、3つのカラム体積の平衡溶液でクロマトグラフィーカラムを洗浄することにより、未結合の成分を完全に洗浄する。
2.5 さらに2つのカラム体積の洗浄緩衝液(20mmol/L PB、1.8mol/L NaCl、pH7.1)で洗浄することにより、いくつかの弱い結合の不純物を除去する。
2.6 溶出緩衝液(20mmol/L PB、0.1mol/L NaCl pH7.1)でサンプルを溶出し、280nmのUVでタンパク質の主ピークを収集する。UVが100mAUに達したときに収集を開始し、次にUVが100mAUであるときに収集を停止する。
2.7 3つのカラム体積の再生緩衝液(0.1mol/L NaOH)で洗浄し、次に中性になるまで水で洗浄し、クロマトグラフィーカラムを3つのカラム体積の20%エタノールに保存する。
2.8
図3に示すように、目的タンパク質のCapto Phenyl(HS)クロマトグラムは黒い四角で示されている。
図4に示すように、黒い四角印はHPLCにより測定された目的タンパク質の純度図を示す。
【0042】
3.ステップ2でクロマトグラフィーされた融合タンパク質はCapto adhere複合イオン交換クロマトグラフィーにより精製することにより、微量の不純物を除去する。
3.1 平衡緩衝液(20mmol/L PB、0.5mol/L NaCl pH5.9)で5CVカラムを平衡化する。pH及び導電率の監視値は平衡緩衝液と一致する。
3.2 ステップ2で溶出されたタンパク質溶液サンプルをロードする。サンプルを平衡緩衝液と一致する条件に調整した後、サンプルをロードし始める。サンプリング時間は4.5分間であり、サンプリング量は115mg/mlである。サンプルをロードした後、サンプルが収集されるまで、平衡緩衝液でサンプルを平衡化する。
3.3 収集されたタンパク質の主ピークは280nmの紫外線吸収箇所にある。UVが80mAUに達したときに収集を開始し、UVが100mAUであるときに収集を停止する。
3.4 再生:5つのカラム体積の500mmol/L NaOH及び2.0mol/L NaClで洗浄し、次に中性になるまで水で洗浄し、カラムを3つのカラム体積の20%エタノールに保存する。
3.5
図5に示すように、黒い四角印は目的タンパク質のCapto adhereクロマトグラムを示す。
図6に示すように、黒い四角印はHPLCにより測定された目的タンパク質の純度図を示す。
【0043】
4.0 議論
上記Mabselect SuRe/Capto Phenyl(HS)/Capto adhereの3段階精製プロセス条件により、CHO細胞により発現された組換え形式のIL-1RNを含む融合タンパク質を精製する。タンパク質の総収率は50%より大きく、かつSEC-HPLCにより測定された目的タンパク質の純度は98.5%より大きい。
【0044】
・結合親和力測定
全てのSPR計測はいずれもBIAcore 3000装置(GE Biosciences,Piscataway,N.J.)で行われる。BIAcoreソフトウェア-BIAcore 3000制御ソフトウェアV3.2を使用してBIAcore 3000機器を操作し制御する。評価ソフトウェアV4.1を使用し、BIAcore 3000機器からのSPRデータを分析し、Graph Pad Prismソフトウェアバージョン5を使用してデータを描画する。親和性研究において、25℃で、HBS-EP緩衝液(10mM HEPES、15Mm NaCl、3.4nM EDTA、0.005%P20)を使用し、流速が30μL/分である。示された融合タンパク質はリガンドとして用いられ、チップの基準チャネルを構築するために用いられる。固定された受容体と結合する分析物IL-1RN-Fcを計測し、濃度が1.2~100nM(3倍希釈度)である。各サンプルを30μL/minの流速で3分間注入することにより、チップに結合された融合タンパク質と結合する。次に、分析物を含まない結合緩衝液を同じ流速でチップを通過させることにより、結合された分析物を解離させる。500s後、再生溶液(1Mギ酸)を注入することにより残留された結合分析物を除去する。Kinetics Guidelines及びBiaEvaluationソフトウェアV4.1付属の手動フィッティングプログラムを用いてデータを分析する。
【0045】
【0046】
・組換えヒトIL-1RN-Fc融合タンパク質の生物学的活性測定
IL-1RNタンパク質がIL-1βにより誘導されたA375.s2アポトーシス過程を抑制する原理に基づいて、前記融合タンパク質の生物学的活性を検出する。A375.s2細胞をMEMに10%FBS培地を加えて培養する。A375.s2細胞を1.5×105個の細胞/ml、80μl/ウェルで96ウェルプレートに敷いた。IL-1β(R&D systems)の濃度を10μg/mlに調整し、各ウェルに10μlを添加する。さらにIL-1RN-Fc融合タンパク質の濃度を100μg/mlに調整し、これを最高濃度とし、4倍勾配で8つの濃度に希釈し、各ウェルに10μlを添加する。37℃で96時間培養した後、各ウェルに20μlのMTS検出試薬(Promega)を添加し、37℃で0.5時間インキュベートした後、マイクロプレートリーダーで490nmの波長での読み取り値を読み取る。検出結果は以下のとおりである。
【0047】
【0048】
結果により、リンカーがない場合、突然変異体D74N(w/oリンカー)は野生型の生物学的活性の3倍であることが示されている。突然変異体D74N(w/リンカー)は、リンカーがない突然変異体D74N(w/oリンカー)の生物学的活性の3倍である。結果を
図8に示す。(例示的には、IL-1RN突然変異体として、IL-1RN(D74N)を選択する、例示的には、hIgG4 Fc S228Pを半減期延長ドメインの選択肢として選択し、及び例示的には、GGGGSGGGGSGGGGSをリンカーとして選択する。)
【0049】
【0050】
結果により、一部位突然変異体の生物学的活性はD74N>R14T>R5Tであること、三部位突然変異体の生物学的活性は二部位及び一部位突然変異体より高いことが示されている。(例示的には、hIgG4 Fc S228Pを半減期延長ドメインの選択肢として選択し、及び例示的には、GGGGSGGGGSGGGGSをリンカーとして選択する。)
【0051】
【0052】
結果により、二重標的融合タンパク質の生物学的活性は単一ターゲット融合タンパク質に相当することが示されている。結果は
図9に示す。(例示的には、二重標的タンパク質として、IL1-RN(D74N)及びTNFR2を選択し、例示的には、hIgG4 Fc S228Pを半減期延長ドメインの選択肢として選択し、及び例示的には、GGGGSGGGGSGGGGSをリンカーとして選択する。)
【0053】
・免疫モデル及び治療実験
1.マウスCIAモデルの調製
(1)初回免疫
3.3mlの完全フロイントアジュバントを3回に分けてコラーゲンに添加して乳化する。各マウスに0.4mlの麻酔剤を腹腔内注射する。マウスを麻酔した後、電気かみそりで尾部の被毛を除去し、尾部の皮内に100μlの乳化コラーゲンを注射する。
(2)強化免疫
初回免疫21日後に2回目の強化免疫を行い、免疫前日にマウスの二回目免疫の麻酔剤及びコラーゲンを準備する。抗原を乳化する過程において、3.3mlの不完全フロイントアジュバントを3回に分けてコラーゲンに添加して乳化する。各マウスに0.4mlの麻酔剤を腹腔内注射する。マウスを麻酔した後に電気かみそりで尾部の被毛を除去し、尾部の皮内に50μlの乳化コラーゲンを注射する。
【0054】
2.薬物治療
(1)マウスは2回免疫後の4~10日に発症し始める。モデル作成マウスを発症後の24時間以内にランダムにグループ分け、腹腔内注射投与を行い、21日間連続的に観察する。投薬治療期間に1日ごとに1回の関節採点及び体重秤量を行う。
(2)実験グループ
ブランク対照群のマウス以外に、全てのマウスはいずれもCIAモデル作成を行う。発症後の24時間内に、マウスを採点して治療群にランダムに分ける。薬物治療を21日間継続する。
【0055】
【0056】
結果により、マウスCIA動物モデルにおいて、同じ注射用量の野生型IL-1RN-Fcは既知の抗リウマチ薬物TNFR2-Fcに相当する効果を示し、突然変異体IL-1RN D74N-Fcは炎症反応を完全に抑制する効果を示すことが示されている。結果を
図10に示す。(例示的には、IL-RN(D74N)突然変異体を選択し、GGGGSGGGGSGGGGSをリンカーとして選択し、FcはhIgG4 Fc S228Pである。)
【0057】
本発明は具体的な実施形態により説明したが、当業者であれば、本発明の範囲から逸脱することなく、本発明に対して様々な変換及び同等置換を行うことができることを理解すべきである。また、特定の状況又は材料に対して、本発明の範囲から逸脱することなく、本発明に対して様々な変更を行うことができる。したがって、本発明は開示された具体的な実施形態に限定されるものではなく、本発明の請求項の範囲内にある全ての実施形態を含むべきである。
【配列表】