(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】レーザー周期加熱法による半導体ワイヤボンド接合部位の接合状態の良否評価方法及び装置
(51)【国際特許分類】
G01N 25/72 20060101AFI20241004BHJP
【FI】
G01N25/72 F
(21)【出願番号】P 2023195653
(22)【出願日】2023-11-17
【審査請求日】2023-12-13
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和5年9月12日に、アイエルテクノロジー株式会社本社内において、「レーザー周期加熱法による半導体ワイヤボンド接合部位の接合状態の良否評価方法及び装置」について、株式会社南陽及び株式会社カイジョーに向けてプレゼンテーションすることで公開。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和5年9月13日に、「レーザー周期加熱法による半導体ワイヤボンド接合部位の接合状態の良否評価方法及び装置」の内容について、株式会社南陽及び株式会社カイジョーに向けてメール送信することで公開。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和5年9月14日に、「レーザー周期加熱法による半導体ワイヤボンド接合部位の接合状態の良否評価方法及び装置」について、株式会社日立ハイテクに向けてプレゼンテーションすることで公開。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和5年9月15日に、「レーザー周期加熱法による半導体ワイヤボンド接合部位の接合状態の良否評価方法及び装置」の内容について記載したデータを、株式会社日立ハイテクに向けてメール送信することで公開。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和5年10月5日に、「レーザー周期加熱法による半導体ワイヤボンド接合部位の接合状態の良否評価方法及び装置」の内容について記載したデータを、ソニーセミコンダクタマニュファクチャリング株式会社に向けてメール送信することで公開。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和5年10月23日に、「レーザー周期加熱法による半導体ワイヤボンド接合部位の接合状態の良否評価方法及び装置」の内容について記載したデータを、キオクシア株式会社に向けてメール送信することで公開。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和5年11月1日に、「レーザー周期加熱法による半導体ワイヤボンド接合部位の接合状態の良否評価方法及び装置」の内容について記載した資料を、東芝デバイス&ストレージ株式会社に公開。
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520036134
【氏名又は名称】アイエルテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081558
【氏名又は名称】齋藤 晴男
(74)【代理人】
【識別番号】100154287
【氏名又は名称】齋藤 貴広
(72)【発明者】
【氏名】松本 順
(72)【発明者】
【氏名】渥美 普康
(72)【発明者】
【氏名】兼重 晋一
【審査官】黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-124261(JP,A)
【文献】特開2019-020383(JP,A)
【文献】特開2017-072475(JP,A)
【文献】特開2017-125728(JP,A)
【文献】国際公開第2018/212087(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 25/72
H01L 21/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リードフレームに担持されている半導体素子の各微小ボールボンドやウェッジボンドの接合状態の良否評価を、周期加熱レーザー照射により接合部上方から加熱し、正弦波状に変化する前記周期加熱レーザーと、被加熱部から放射される正弦波状に変化する放射赤外線の位相差に基づいて連続的に行うための方法であって、
前記位相差を
、半導体ワイヤボンド接合部位における熱抵抗と見做して評価することにより、当該接合部位における接合状態の良否を判断することを特徴とするレーザー周期加熱法による半導体ワイヤボンド接合部位の良否評価方法。
【請求項2】
リードフレームに担持されている半導体素子の各微小ボールボンドやウェッジボンドの接合部位の接合状態の良否評価を、周期加熱レーザー照射により接合部位上方から加熱し、正弦波状に変化する前記周期加熱レーザーと、被加熱部から放射される正弦波状に変化する放射赤外線の位相差に基づいて連続的に行うための装置であって、
前記被加熱部における強度が正弦波状に変化するように前記
周期加熱レーザーを出射するレーザー照射手段と、
前記被加熱部における前記
周期加熱レーザーの強度を検出するレーザー強度検出手段と、
前記被加熱部から放射される正弦波状に変化する前記放射赤外線の強度を検出する放射赤外線強度検出手段と、
前記レーザー強度検出手段からの検出信号と前記放射赤外線強度検出手段からの検出信号を取り込んで、正弦波状に変化する前記
周期加熱レーザーの強度と、正弦波状に変化する前記
放射赤外線の強度との位相差を検出する位相差検出手段と、
前記位相差検出手段により検出された前記位相差を
、半導体ワイヤボンド接合部位における熱抵抗と見做して評価することにより、当該接合部位における接合状態の良否を判断する良否評価手段とから成ることを特徴とするレーザー周期加熱法によるワイヤボンド接合部位の良否評価装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー周期加熱法による半導体ワイヤボンド接合部位の接合状態の良否評価方法及び装置に関するものであり、より詳細には、半導体製造工程における微細径ワイヤを用いたワイヤボンディング後に、その微小ボールボンド(主に半導体素子側)やウェッジボンド(主に外部接続端子であるリードフレーム側)の接合状態の良否を、非接触非破壊にて瞬時に検査するためのレーザー周期加熱法による半導体ワイヤボンド接合部位の接合状態の良否評価方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体ワイヤボンディングは、LSIやトランジスタ等の半導体素子上の接続電極と、外部接続端子であるリードフレームとを金や銅もしくはアルミのワイヤを介して接続する技術であり、言うまでもなく、ワイヤ両端部は、電気抵抗が小さく且つ機械的強度が強い状態にて接合されていることが重要である。そのため、ワイヤボンディング後に、ワイヤの接合状態の良否検査が行われる。その検査方法としては、検査を非接触非破壊にて迅速に行う検査方法が種々提案され、実用化されている。
【0003】
例えば、特許第6620499号公報には、接合した微小金属間のうちの一方を周期的に強弱(正弦波)加熱すると、その加熱された部分も加熱周期に同期した温度変化(温度応答)をし、その加熱周期と温度変化周期の位相差が、接合部の面積と相関するとの知見の基に、周期加熱をレーザーで行い、温度変化測定を放射赤外線量測定で実施する、金属接合部の非接触非破壊瞬時検査方法が開示されている。
【0004】
この発明に係る方法は、正弦波状に変化する加熱用レーザーと、正弦波状に変化する放射赤外線との位相差が、接合部の面積と相関する、即ち、位相差の近いものは接合面積も近いとの前提で、位相差を基に接合面積を算出するものであり、これまでは、この位相差が接合部の面積と相関するという考えが是認され、その考えに基づく検査が実施されてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のとおりこれまでは、正弦波状に変化する加熱用レーザーと、正弦波状に変化する放射赤外線との位相差に基づいて、接合部位の面積である接合面積を算出する方法が是認され、検査が実施されてきた。しかるに、本発明者らは、これまで是認されてきたこの方法が正しいものであるか否かを検証するために、種々試験研究を重ねてきた結果、上記位相差は、必ずしも接合面積に強く相関する訳ではなく、接合部位の熱抵抗に強く相関するとの知見を得て、本発明をなすに至ったものである。
【0007】
即ち、本発明は、従来主流をなしていた、位相差は接合面積に相関するとの考えに基づく金属接合部の非接触非破壊瞬時検査方法に代わり、上記位相差は接合部位の熱抵抗に相関するとの考えに基づく、レーザー周期加熱法による半導体ワイヤボンド接合部位の接合状態の良否評価方法及び装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための請求項1に係る発明は、リードフレームに担持されている半導体素子の各微小ボールボンドやウェッジボンドの接合状態の良否評価を、周期加熱レーザー照射により接合部上方から加熱し、正弦波状に変化する前記周期加熱レーザーと、被加熱部から放射される正弦波状に変化する放射赤外線の位相差に基づいて連続的に行うための方法であって、
前記位相差を、半導体ワイヤボンド接合部位における熱抵抗と見做して評価することにより、当該接合部位における接合状態の良否を判断することを特徴とするレーザー周期加熱法による半導体ワイヤボンド接合部位の良否評価方法である。
【0009】
上記課題を解決するための請求項2に係る発明は、リードフレームに担持されている半導体素子の各微小ボールボンドやウェッジボンドの接合部位の接合状態の良否評価を、周期加熱レーザー照射により接合部位上方から加熱し、正弦波状に変化する前記周期加熱レーザーと、被加熱部から放射される正弦波状に変化する放射赤外線の位相差に基づいて連続的に行うための装置であって、
前記被加熱部における強度が正弦波状に変化するように前記周期加熱レーザーを出射するレーザー照射手段と、
前記被加熱部における前記周期加熱レーザーの強度を検出するレーザー強度検出手段と、
前記被加熱部から放射される正弦波状に変化する前記放射赤外線の強度を検出する放射赤外線強度検出手段と、
前記レーザー強度検出手段からの検出信号と前記放射赤外線強度検出手段からの検出信号を取り込んで、正弦波状に変化する前記周期加熱レーザーの強度と、正弦波状に変化する前記放射赤外線の強度との位相差を検出する位相差検出手段と、
前記位相差検出手段により検出された前記位相差を、半導体ワイヤボンド接合部位における熱抵抗と見做して評価することにより、当該接合部位における接合状態の良否を判断する良否評価手段とから成ることを特徴とするレーザー周期加熱法によるワイヤボンド接合部位の良否評価装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るレーザー周期加熱法によるワイヤボンド接合部位の接合状態の良否評価方法及び装置は上記のとおりであって、位相差は半導体ワイヤボンド接合部位の熱抵抗に相関するとの考えに基づき位相差の測定値を、前記半導体ワイヤボンド接合部位における熱抵抗と見做して評価するものであるため、従来の方法に比較してより精確で信頼性に富んだ本来目的に合致した検査が可能となる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係るレーザー周期加熱法によるワイヤボンド接合部位の接合状態の良否評価装置の概略構成図である。
【
図2】本発明に係るレーザー周期加熱法によるワイヤボンド接合部位の接合状態の良否評価方法に関する検証試験における検査対象ボンドの選択方法を示す図である。
【
図3】本発明に係るレーザー周期加熱法によるワイヤボンド接合部位の接合状態の良否評価方法の評価対象となるボンドのイメージ図である。
【
図4】本発明に係るレーザー周期加熱法によるワイヤボンド接合部位の接合状態の良否評価方法に関する検証試験における接合部位の厚みの測定方法を示す図である。
【
図5】本発明に係るレーザー周期加熱法によるワイヤボンド接合部位の接合状態の良否評価方法に関する検証試験の結果得られた、接合面積と位相値の相関を示すグラフである。
【
図6】本発明に係るレーザー周期加熱法によるワイヤボンド接合部位の接合状態の良否評価方法に関する検証試験の結果得られた、熱抵抗と位相値の相関を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を実施するための形態につき、添付図面に依拠して説明する。本発明に係るレーザー周期加熱法によるワイヤボンド接合部位の接合状態の良否評価方法は、リードフレームに担持されている半導体素子の各微小ボールボンド部の接合部位の接合状態の良否を、周期加熱レーザー照射により接合部位上方から加熱し、正弦波状に変化する前記周期加熱レーザーの強度と、被加熱部から放射される正弦波状に変化する放射赤外線の強度の位相差に基づいて連続的に検査するに当たり、位相差を、接合面積ではなく、半導体ワイヤボンド接合部位における熱抵抗と見做して評価することを特徴とするものである。
【0013】
本発明に係るレーザー周期加熱法によるワイヤボンド接合部位の接合状態の良否評価装置は上記方法を実施するためのものであり、被加熱点(計測点)における強度が正弦波状に変化するように加熱レーザーを出射するレーザー照射手段1と、被加熱部における加熱レーザーの強度を検出するレーザー強度検出手段2と、被加熱部から放射される正弦波状に変化する放射赤外線の強度を検出する赤外線強度検出手段3と、レーザー強度検出手段2からの検出信号と赤外線強度検出手段3からの検出信号を取り込んで、正弦波状に変化する加熱レーザーの強度と、正弦波状に変化する放射赤外線の強度との位相差を検出する位相差検出手段(ロックインアンプ)4と、位相差検出手段4により検出された位相差を、半導体ワイヤボンド接合部位における熱抵抗と見做して評価する良否評価手段5とから成る(
図1)。
【0014】
上記レーザー照射手段1により微小ボールボンド部やウェッジボンド部に対して正弦波状に変化する周期加熱レーザーを照射する方法、レーザー強度検出手段2により、被加熱部における加熱レーザーの強度を検出する方法、放射赤外線強度検出手段3により被加熱部から放射される正弦波状に変化する赤外線の強度を測定する方法、並びに、位相差検出手段4により、正弦波状に変化する周期加熱レーザーの強度と、被加熱部から放射される正弦波状に変化する赤外線の強度の位相差を測定する方法自体は、従来の方法、例えば、上記特許文献1に記載の方法に準じて行うことができるので、詳細な説明は省略する。
【0015】
従来上記位相差は、接合面積に強く相関すると考えられていたが、本発明者らは、上記位相差は、接合面積よりも熱抵抗に強く相関するのではないかとの考えを持つに至り、そのことを実証するために、下記検証試験を行った。
【0016】
この検証試験は、以下の要領で行った。
1)対象ボンドの選択
ワイヤボンディング装置でワイヤボンドの接合水準を強/中/弱の3水準に調整し、最適熱拡散長解析を行った各10本のうち、分別が取れていた4本(ボンド番号1,2,6,10)と、中と弱の分別が取れていなかった3本(ボンド番号5,8,9)の計7本を対象とした(
図2参照)。
【0017】
ここにいう最適熱拡散長解析は、レーザー加熱点からワイヤボンド接合部位までの最短距離から最長距離+αまでの熱拡散長より、加熱部の材質の熱拡散率に基づいて周波数を求め、適正加熱パワーで任意の熱拡散長最適ピッチ(例えば10μmピッチ)で位相値を測定する方法で、この方法により、分別能が最適な変調周波数(最適熱拡散長)を確認することができる。最適熱拡散長は、ワイヤ径やアルミ電極構造により異なる。
【0018】
2)評価対象
対象ワイヤボンド部位のアルミ電極にエッチング処理を施したボンドの接合面積と合金層厚(接合界面の厚み)を測定し、最適熱拡散長解析で得られた熱拡散長(例えば、100μm)の測定値に対して、有効断面積と、合金層厚(接合界面の厚み)を考慮した値(熱抵抗)の関係を評価した。
【0019】
即ち、測定された位相値の適合性を評価するため、対象ワイヤボンド部位のアルミ電極にエッチング処理を施し、ボンド裏面の合金層有効接合面積をデジタルマイクロスコープで測定すると共に、3D撮影で合金層の平均厚さ(通常1~3μm程度)を測定し、その値から熱抵抗を求め、測定された位相値と熱抵抗の分布図から相関性(決定係数R2)と分別能(各水準)の適合性を評価した。
【0020】
位相差と接合面積の相関性の検証試験は、下記測定条件にて行った。
<測定条件>
・熱拡散長:100μm(周期加熱の変調周波数を意味する)
・レーザーパワー 最小:1W、最大:3W(正弦波の最小最大)
・測定時間:5ms(5~10周期程度)
【0021】
図5は、その結果得られた位相値と接合面積の相関グラフであり、相関係数(決定係数)は-0.88であって、適度な負の相関性が確認された。また、水準毎の分布も、概ね近い位置にまとまっていることが確認された。表中水準弱のボンドは三角で表示し、水準中のボンドは四角で表示し、水準強のボンドは丸で表示してある。
【0022】
水準弱のボンド番号5,8,9のボンドは、位相値が水準中の各ボンドの位相値と同程度であるため、接合面積も水準中の各ボンドの場合と同程度と推定されたが、測定した結果は、水準中の各ボンドの場合はおおよそ940~1150μm2の範囲内であるのに対し、700μm2以下と小さく、水準弱の他のボンドと同程度であった(太線点線枠参照)。また、水準強のボンド番号9のボンドは、位相値が水準中のボンドの位相値に近いため、接合面積も水準中の各ボンドの場合に近いと推定されたが、測定した結果は、それらよりも約500μm2大きく、水準強の他のボンドと同程度であった。以上の測定結果からして、位相値は接合面積に強く相関しておらず、それ以外の要素に関係していると推定された。
【0023】
次いで、位相値と熱抵抗の相関性の検証試験を、後述する方法で合金層の厚みを測定し、熱抵抗計算式1を用いて行った。測定条件は上記接合面積の場合と同じである。
R=d/Aλ・・・式1
R:熱抵抗 K/W
d:合金層の厚み m
A:合金層の接合面積 m2
λ:熱伝導率 W/(mK)
【0024】
接合部位の合金層厚の測定は、ワイヤボンド部位のアルミ電極をアルミエッチング処理した後、接合裏面をデジタルマイクロスコープにて3D撮影し、合金層の端と推定される点4箇所(上下左右の点ABCD)と、中心付近の点Oのそれぞれの高さを計測することにより行った(
図4参照)。そして、各ボンドの合金層厚は、A→O、B→O、C→O、D→Oの測定値の平均を採用した。
【0025】
図6は、その結果得られた位相値と熱抵抗値の相関グラフであり、相関係数(決定係数)は0.92であって、両者間に強い正の相関があることが確認された。
図6のグラフに示されるように、接合面積は小さいが位相値が高かった水準弱のボンド番号5,8,9のボンドは、熱抵抗が水準中の各ボンドと同程度であり、位相値も水準中の各ボンドと同程度であった。一方、接合面積は大きいが位相値が高かった水準強のボンド番号9のボンドは、熱抵抗が水準中の各ボンドに近く、位相値も水準中の各ボンドに近い結果となった。
【0026】
上記のようにして測定した合金層の接合面積と合金層厚から、上記式1により熱抵抗値を算出した。強、中、弱それぞれにつき測定した接合面積、合金層厚、熱抵抗を表1~3に示す。
<表1>
<表2>
<表3>
【0027】
これらの表1~3から明らかなように、接合面積が大で合金層厚が薄い場合は、熱伝導性が良くて熱抵抗が低くなり、合金層厚が厚い場合は、熱伝導性が悪くて熱抵抗が高くなる。即ち、接合面積が大で合金層厚が薄い場合は熱抵抗が小さい(電気抵抗も小さい)ので、本来目的の電気電導路として良好な接合状態にあると言える(熱伝導率と電気伝導率は強相関関係にある。)。
【0028】
上記
図6に示すグラフと、表1~3から、以下のことが言える(本発明の裏付けとなる。)。
1)熱抵抗が小さい場合には、接合面積が大で合金層厚が薄い良好な接合状態と推定されるので、熱抵抗に強い相関を持つ位相差を評価すれば、接合状態の良否を判断することができる。
2)位相差が小さい条件は、接合面積が相対的に大きく、合金層厚も相対的に薄い場合であり、理想状態は、有効接合面積が理想面積に対して比較的大きく、合金層厚が薄いことである。
3)位相差が小さくて(良品である)、相対面積が小さい(合金層厚が薄くても)ものはない。
【0029】
本発明に係る方法及び装置においては、位相差検出手段4により検出された位相差を、良否評価手段5において半導体ワイヤボンド接合部位における熱抵抗と見做して評価するが、その評価に必要な良否判定基準(位相差の範囲)は、半導体メーカー等が独自に規定し、良否評価手段5においてその規定値を基に、良否判定がなされることになる。
【0030】
言うまでもなくワイヤボンディングの目的は、半導体素子とリードフレームを電気的に接続することと、温度変化に対する周辺環境(半導体素子、リードフレーム、モールド材など)の熱膨張率差異に耐性のある接合強度にて接合することにある。従って、ワイヤボンディングには、優良な電気電導路と接合強度の確保が求められる。優良な電気電導路としては、低抵抗、低インピーダンス、余裕ある電流許容等が求められるが、ワイヤボンディング工程直後は、通常、総ての端子(リードフレーム)は繋がっているので、抵抗(インピーダンス)測定は不可能であったが、本発明に係る方法によればそれが可能となる。
【0031】
昨今の高信頼性要求(自動車、航空宇宙、産業機器、などの産業用途)の高まりで、全ボンドの良否測定が要求され、パワー半導体では高効率や高速スイッチング(半導体素子やリードだけでなく、ボンディング部の低抵抗や低インピーダンスの向上が必要)性能の向上が求められているが、本発明に係るレーザー周期加熱法によるワイヤボンド接合部位の良否評価方法は、上記要望に応え得るものとなる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明に係るレーザー周期加熱法によるワイヤボンド接合部位の良否評価方法及び装置は上記のとおりであって、上記位相差は接合部位の熱抵抗に相関するとの考えに基づき位相差の測定値を前記ワイヤボンド接合部位における熱抵抗と見做して評価するものであり、従来の方法に比較してより精確で信頼性に富んだ検査が可能となる効果があり、その産業上の利用可能性は極めて大である。
【符号の説明】
【0033】
1 レーザー照射手段
2 レーザー強度検出手段
3 赤外線強度検出手段
4 位相差検出手段
5 良否評価手段
【要約】
【課題】位相差は接合面積に相関するとの考えに基づく金属接合部の非接触非破壊瞬時検査方法に代わり、上記位相差は接合部位の熱抵抗に相関するとの考えに基づく、レーザー周期加熱法によるワイヤボンド接合部位の良否評価方法及び装置を提供することを課題とする。
【解決手段】リードフレームに担持されている半導体素子の各微小ボールボンドの接合状態の良否を、周期加熱レーザー照射により接合部上方から加熱し、正弦波状に変化する前記周期加熱レーザーの強度と、被加熱部から放射される正弦波状に変化する放射赤外線の強度の位相差に基づいて連続的に検査するに当たり、前記位相差を前記ワイヤボンド接合部位における熱抵抗を基に評価する。
【選択図】
図6