(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】発達障害の特性分析システム、プログラム及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
A61B 3/113 20060101AFI20241004BHJP
A61B 10/00 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
A61B3/113
A61B10/00 H
(21)【出願番号】P 2024078398
(22)【出願日】2024-05-14
【審査請求日】2024-05-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516388425
【氏名又は名称】株式会社ユニコーン
(74)【代理人】
【識別番号】100146020
【氏名又は名称】田村 善光
(72)【発明者】
【氏名】中島 勝幸
(72)【発明者】
【氏名】長谷 真由美
(72)【発明者】
【氏名】小川 忍
(72)【発明者】
【氏名】岡部 幸江
(72)【発明者】
【氏名】川崎 裕子
【審査官】増渕 俊仁
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2023/181494(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/194849(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/146491(WO,A1)
【文献】特表2023-507853(JP,A)
【文献】特表2020-527099(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00-3/18
A61B 10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の発達障害の特性を分析する発達障害の特性分析システムであって、
表示画面と、前記被験者の視線を検出する視線検出手段と、分析用情報端末と、を備え、
前記分析用情報端末の制御部が、
画像表示部に、記憶部に記憶された目の使い方の分析をするための課題を設定した複数の分析用画像データの中から選択された分析用画像データを表示させ、
前記記憶部に、前記表示された分析用画像データで前記被験者に指示した前記課題で視線対象となる目標データ、及び、前記視線検出手段で取得した前記被験者の視線データを、所定の時間間隔ごとに記憶させ、
座標変換部に、記憶した前記目標データ及び前記視線データをXY軸座標に座標変換させて前記記憶部に記憶させ、
目の使い方分析部に、前記目標データのXY軸座標に対する前記視線データのXY軸座標の時系列での動き、及び/又は、前記目標データのXY軸座標と前記視線データのXY軸座標の時系列でのずれ量の変化の分析をさせ、
画像表示部に、前記目の使い方分析部の分析結果を表示させることを特徴とする発達障害の特性分析システム。
【請求項2】
前記分析用画像データが、追従性眼球運動の特性を分析するコンテンツ画像又は動画データ、跳躍性眼球運動の特性を分析するコンテンツ画像又は動画データ、協応動作の特性を分析するコンテンツ画像又は動画データ、注視能力の特性を分析するコンテンツ画像又は動画データ、又は、空間認知能力の特性を分析するコンテンツ画像又は動画データであることを特徴とする請求項1に記載の発達障害の特性分析システム。
【請求項3】
前記制御部が、さらに、
コマ画像生成部に、前記記憶部に記憶させた所定の時間間隔ごとの前記目標データ及び前記視線データを、所定の時間間隔ごとの複数のコマ画像に生成して前記コマ画像を時系列に並べさせ、
視線軌跡分析部に、任意に指示された前記コマ画像までの時系列の範囲で、前記被験者の視線の動きを追跡するトレース、前記被験者の視線が停留した順番を表示する注視パス、又は、前記被験者の視線停留時間を表示するヒートマップの視線軌跡分析画像を生成させ、
前記画像表示部に、時系列に並べられた前記コマ画像、前記コマ画像を時系列で前後にスクロールさせる右方向又は左方向へのスクロール機能、及び、前記視線軌跡分析画像の時系列での前記被験者への指示からの範囲を指定する前記コマ画像を選択できる選択機能を、前記表示画面にピクチャ・イン・ピクチャ表示させることを特徴とする
請求項1又は2に記載の発達障害の特性分析システム。
【請求項4】
前記表示画面をタッチパネル式とし、前記被験者を撮像する撮像手段と、前記被験者の音声を取得する音声取得手段と、前記被験者が手入力する手入力手段と、を備え、
前記制御部が、
前記画像表示部に、前記表示画面にタッチしたタッチ情報を、又は、前記手入力手段による手入力情報を前記分析用画像データの前記表示画面に反映させ、前記目の使い方分析部による分析結果を表示した前記表示画面に、又は、前記視線軌跡分析部による視線軌跡分析画像を表示した前記表示画面に前記撮像手段で取得した撮像画面をピクチャ・イン・ピクチャ表示させ、
音声出力部に前記音声取得手段で取得した前記音声を出力させることを特徴とする
請求項3に記載の発達障害の特性分析システム。
【請求項5】
前記分析用情報端末のコンピュータを、請求項4に記載の発達障害の特性分析システムが備える各部として機能させるためのプログラム。
【請求項6】
前記分析用情報端末のコンピュータを、請求項4に記載の発達障害の特性分析システムが備える各部として機能させるためのプログラムを格納した、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発達障害児の目の使い方の分析をすることによって発達障害の特性を分析する発達障害の特性分析システム、プログラム及び記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
発達障害には、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如・多動性)、LD(限局性学習症、学習障害)があります。これらの発達障害は目の使い方に何らかの課題があることが多いと言われております。そして、発達障害は複数の障害が重なって現れることが多く、発達障害児一人一人の発達障害の特性が異なります。よって、発達障害児一人一人の目の使い方の分析をすることが重要であります。
【0003】
特許文献1の発明は、表示部と、被験者を撮像する撮像部と、前記撮像部により撮像された撮像画像から、前記被験者の視線方向を検出する視線検出部と、前記視線方向に基づいて、前記表示部の表示領域における前記被験者の視点を検出する視点検出部と、所定の事象の原因と前記事象とを表す診断画像、および、前記原因と前記事象の因果関係を表す説明画像を前記表示部に表示させる出力制御部と、前記診断画像が表示されたときの前記視点検出部により検出された前記視点に基づいて前記被験者の評価値を算出する評価部と、を備えることを特徴とするトレーニング支援装置が開示されている。
【0004】
特許文献2の発明は、被験者が対象者を見る状態によって自閉症の特徴を検出する自閉症診断支援用装置であって、前記対象者を見る前記被験者の視線方向を検出する視線検出部と、前記対象者の画像を撮影するカメラと、前記対象者の瞳孔座標を計測する瞳孔位置検出部と、前記視線方向と前記瞳孔座標とを用いて前記被験者の視線方向と前記対象者の瞳孔位置との関係を演算して、前記対象者の画像と共に出力するデータ解析部と、を備えることを特徴とする自閉症診断支援用装置が開示されている。
【0005】
特許文献3の発明は、筐体と、被験者を撮像して第1画像を出力する第1撮像部と、前記筐体を挟んで前記被験者に対面する対象者を撮像して第2画像を出力する第2撮像部と、前記第1画像に基づいて、前記被験者の視線方向を第1座標系で表される第1視線方向として検出する方向検出部と、前記第2画像に基づいて、前記対象者の目の位置を第2座標系で表される第1位置として検出する位置検出部と、前記第1視線方向を前記第2座標系で表される第2視線方向に変換する処理、または、前記第1位置を前記第1座標系で表される第2位置に変換する処理を実行する変換部と、前記変換部によって変換された、前記第2視線方向と前記第1位置とに基づいて、または、前記第1視線方向と前記第2位置とに基づいて、前記被験者が前記対象者の目を注視しているか否かを判定する判定部と、を備える診断支援装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第6330638号公報
【文献】特開2013-183873号公報
【文献】特開2011-206542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の発明は発達障害者に対するトレーニング支援装置であり、特許文献2の発明は乳幼児の注視点座標と母親の瞳孔の座標とを利用して診断する技術であり、特許文献3の発明は発達障害のある人の特徴である対面する相手の目を見るか否かに焦点を当てた発明であるが、発達障害者の目の使い方の分析をすることができないという問題があった。
【0008】
本発明はこうした問題に鑑み創案されたもので、ASD、ADHD、LDのうちの複数の障害が重なって現れることが多い発達障害児の一人一人に対して目の使い方にどんな課題があるかを分析して、発達障害の特性を分析する発達障害の特性分析システム、プログラム及び記憶媒体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発達障害の特性分析システムは、被験者の発達障害の特性を分析する発達障害の特性分析システムであって、表示画面と、前記被験者の視線を検出する視線検出手段と、分析用情報端末と、を備え、前記分析用情報端末の制御部が、画像表示部に、記憶部に記憶された目の使い方の分析をするための課題を設定した複数の分析用画像データの中から選択された分析用画像データを表示させ、前記記憶部に、前記表示された分析用画像データで前記被験者に指示した前記課題で視線対象となる目標データ、及び、前記視線検出手段で取得した前記被験者の視線データを、所定の時間間隔ごとに記憶させ、座標変換部に、記憶した前記目標データ及び前記視線データをXY軸座標に座標変換させて前記記憶部に記憶させ、目の使い方分析部に、前記目標データのXY軸座標に対する前記視線データのXY軸座標の時系列での動き、及び/又は、前記目標データのXY軸座標と前記視線データのXY軸座標の時系列でのずれ量の変化の分析をさせ、画像表示部に、前記目の使い方分析部の分析結果を表示させることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発達障害の特性分析システムは、請求項1において、前記分析用画像データが、追従性眼球運動の特性を分析するコンテンツ画像又は動画データ、跳躍性眼球運動の特性を分析するコンテンツ画像又は動画データ、協応動作の特性を分析するコンテンツ画像又は動画データ、注視能力の特性を分析するコンテンツ画像又は動画データ、又は、空間認知能力の特性を分析するコンテンツ画像又は動画データであることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発達障害の特性分析システムは、請求項1又は2において、前記制御部が、さらに、コマ画像生成部に、前記記憶部に記憶させた所定の時間間隔ごとの前記目標データ及び前記視線データを、所定の時間間隔ごとの複数のコマ画像に生成して前記コマ画像を時系列に並べさせ、視線軌跡分析部に、任意に指示された前記コマ画像までの時系列の範囲で、前記被験者の視線の動きを追跡するトレース、前記被験者の視線が停留した順番を表示する注視パス、又は、前記被験者の視線停留時間を表示するヒートマップの視線軌跡分析画像を生成させ、前記画像表示部に、時系列に並べられた前記コマ画像、前記コマ画像を時系列で前後にスクロールさせる右方向又は左方向へのスクロール機能、及び、前記視線軌跡分析画像の時系列での前記被験者への指示からの範囲を指定する前記コマ画像を選択できる選択機能を、前記表示画面にピクチャ・イン・ピクチャ表示させることを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発達障害の特性分析システムは、請求項3において、前記表示画面をタッチパネル式とし、前記被験者を撮像する撮像手段と、前記被験者の音声を取得する音声取得手段と、前記被験者が手入力する手入力手段と、を備え、前記制御部が、前記画像表示部に、前記表示画面にタッチしたタッチ情報を、又は、前記手入力手段による手入力情報を前記分析用画像データの前記表示画面に反映させ、前記目の使い方分析部による分析結果を表示した前記表示画面に、又は、前記視線軌跡分析部による視線軌跡分析画像を表示した前記表示画面に前記撮像手段で取得した撮像画面をピクチャ・イン・ピクチャ表示させ、音声出力部に前記音声取得手段で取得した前記音声を出力させることを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載のプログラムは、前記分析用情報端末のコンピュータを、請求項4に記載の発達障害の特性分析システムが備える各部として機能させるためのプログラムである。
【0014】
請求項6に記載の記録媒体は、前記分析用情報端末のコンピュータを、請求項4に記載の発達障害の特性分析システムが備える各部として機能させるためのプログラムを格納した、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体である。
【発明の効果】
【0015】
請求項1、2、4、5又は6に記載の発明は、ASD、ADHD、LDのうちの複数の障害が重なって現れることが多い発達障害児の目の使い方としての追従性眼球運動、跳躍性眼球運動、協応動作、注視能力、空間認知能力について、被験者に指示した課題において被験者が視線を向けるべき目標データと、被験者の視線データとを、それぞれのX軸及びY軸の座標を所定の定めた時間間隔で取得して、前記目標データと前記視線データとの時系列の種々の目の使い方の分析をすることができ、目の使い方が影響を与えている発達障害の特性を分析することができるという効果を奏する。
【0016】
請求項3、4,5又は6に記載の発明は、被験者の視線の動きを追跡するトレース、被験者の視線が停留した順番を表示する注視パス、又は、被験者の視線停留時間を表示するヒートマップの視線軌跡分析画像を、目の使い方の分析をしているときに確認したい時系列のタイミングを呼び出して被験者の視線の軌跡を、目の使い方の分析に加えて確認することができるので、被験者の発する視線の情報を漏れなく捉えて、被験者一人一人の目の使い方の分析をすることができ、目の使い方が影響を与えている発達障害の特性を分析することができるという効果を奏する。
【0017】
請求項4、5又は6に記載の発明は、目の使い方分析と視線軌跡分析に加えてさらに、被験者の顔の表情の変化、被験者の声の状況、被験者の手指での反応の素早さ等の被験者の動作を加えることができ、被験者の視線と身体の動きとを総合的に捉えて、被験者一人一人の目の使い方の分析をすることができ、目の使い方が影響を与えている発達障害の特性を分析することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の発達障害の特性分析システムの構成の説明図である。
【
図2】本発明の発達障害の特性分析システムの分析用情報端末の構成の説明図である。
【
図3】本発明の発達障害の特性分析システムのフロー図である。
【
図4】追従性眼球運動についての分析用画像データのコンテンツ画像又は動画の説明図で、(a)は注視対象が車の場合のスタート位置の説明図で、(b)は注視対象の車が移動中の説明図である。
【
図5】
図4に示すような追従性眼球運動の場合、目標データのXY軸座標に対する視線データのXY軸座標の時系列での動きを読み取れるようにグラフ化した説明図である。
【
図6】跳躍性眼球運動についての分析用画像データのコンテンツ画像又は動画の説明図で、(a)はあらかじめ表示される順番を設定する説明図で、(b)は1番目の注視対象の目標データが表示されたときの説明図で、(c)は1番目とは離隔した位置に2番目の順番の注視対象の目標データが表示されたときの説明図である。
【
図7】
図6に示すような跳躍性眼球運動の場合、目標データのXY軸座標に対する視線データのXY軸座標の時系列での動きを読み取れるようにグラフ化した説明図で、(a)は
図6における中央に「1」のみの位置を表示した場合の説明図で、(b)は
図6における右上の「2」のみの位置を表示した場合の説明図である。
【
図8】目と手の協応動作についての分析用画像データのコンテンツ画像又は動画の説明図で、(a)はスロットの説明図で、(b)は左端の列の回転が止められたときの説明図で、(c)は指示通りに横一列に同一のアルファベットを並べたときの説明図である。
【
図9】
図8に示すような目と手の協応動作を分析する場合、目標データのXY軸座標に対する視線データのXY軸座標の時系列での動きを読み取れるようにグラフ化した説明図で、(a)は左端の上のマスを目標データとした場合の説明図で、(b)は真ん中の上のマスを目標データとした場合の説明図である。
【
図10】注視能力についての分析用画像データのコンテンツ画像又は動画の説明図で、(a)は顔を目標データにしたときの説明図で、(b)は目を目標データにしたときの説明図である。
【
図11】
図10に示すような注視能力の場合、目標データのXY軸座標に対する視線データのXY軸座標の時系列での動きを読み取れるようにグラフ化した説明図で、注視対象が顔の場合の説明図である。
【
図12】空間認知能力についての分析用画像データのコンテンツ画像又は動画の説明図で、円と四角との線をクロスさせた場合の説明図である。
【
図13】
図12に示すような空間認知能力の場合、目標データのXY軸座標に対する視線データ及び被験者が指でなぞった軌跡のXY軸座標の時系列での動きを読み取れるようにグラフ化した説明図である。
【
図14】注視能力についての分析用画像データのコンテンツ画像又は動画の説明図で、カラーパレットの場合の説明図である。
【
図15】
図14に示すような注視能力の場合、目標データのXY軸座標に対する視線データのXY軸座標の時系列での動きを読み取れるようにグラフ化した説明図である。
【
図16】コマ画像と視線軌跡分析画像の事例の説明図で、トレースの説明図である。
【
図17】コマ画像と視線軌跡分析画像の事例の説明図で、注視パスの説明図である。
【
図18】コマ画像と視線軌跡分析画像の事例の説明図で、ヒートマップの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
ASD、ADHD、LDのうちの複数の障害が重なって現れると、コミュニケーション能力や注意力等に偏りが生じ、この偏りが一人一人異なり、この偏りが一人一人の発達障害の特性であります。そして、これらの発達障害は目の使い方になんらかの課題がおきていることが多いと言われている。
【0020】
発達障害児の発達障害の現れ方には、例えば、第一に、注視対象を目で追っていくという眼球を動かす追従性眼球運動が十分に養われていないという目の使い方の課題がある。
【0021】
第二に、黒板に書かれた内容を読んで理解した後に、遠くの黒板から手元のノートへの視線の移動がスムーズにいかない等により手元のノートに書き写すことが苦手という、見ていた点から別の点へと跳躍するように素早く眼球を動かす跳躍性眼球運動(サッカード眼球運動ともいう)が十分に養われていないという目の使い方の課題がある。
【0022】
第三に、色塗りが苦手、又は、文字のバランスが悪く枠からはみ出る等の、ある目的に向かって目で見ることと手を動かすことの調和のとれた動きが苦手という目と手の協応動作が十分に養われていないという目の使い方の課題がある。
【0023】
第四に、相手と視線を合わせることが少なく、そのために視線を手掛かりにして相手とコミュニケーションをするのが困難などの視線回避があり、相手を注視するという注視能力が十分に養われていないという目の使い方の課題がある。
【0024】
第五に、目から入ってきた情報を処理して空間の全体的なイメージをつかむことが難しいので文字の形を正確に記憶・再生することが難しく、読み書きが苦手、算数で図形の問題を解くことが苦手、球技が苦手、片付け・整理が苦手等の、三次元空間における物体の位置・形状・大きさ・位置関係・方向・高さ・広さ・距離などを認識する能力である空間認知能力が十分に養われていないという目の使い方の課題がある。
【0025】
よって、本発明の発達障害の特性分析システム1は、発達障害児の前記の5つの目の使い方の分析をして発達障害の特性の分析をする発明である。また、子供の脳の神経系の発達は、4~5歳までに約80%、12歳までに100%に達すると言われていることから、本発明の発達障害の特性分析システム1は発達障害児を主たる対象にしている。
【0026】
本発明の発達障害の特性分析システム1は、
図1に示すように、被験者の目の使い方の分析をもとに発達障害の特性を分析する発達障害の特性分析システム1であって、表示画面3と、前記被験者の視線を検出する視線検出手段4と、分析用情報端末2と、を備えている。さらに、前記被験者を撮像する撮像手段5と、前記被験者の音声を取得する音声取得手段6と、被験者が手入力する手入力手段7と、を備えている。前記表示画面3、前記視線検出手段4、前記分析用情報端末2、前記撮像手段5、前記音声取得手段6、及び、前記手入力手段7は配線9で通信可能に接続されている。
【0027】
前記表示画面3は、例えば前記分析用情報端末2の端末画面であり、画像又は動画が表示できる画面であればいずれでもよい。そして、被験者に前記表示画面3を指でなぞらせたり、押し当てさせたりする場合には、前記表示画面3にタッチで入力することができるタッチパネル式の表示画面3を使用する。
【0028】
前記視線検出手段4は、近赤外線光源とカメラを備えかつ被験者の視線位置を検出可能な機器であり、例えばアイトラッカー(例えばTobii社製)がある。
【0029】
前記分析用情報端末2は、被験者、又は、発達障害の特性を分析をする者が使用する情報端末であり、本発明の発達障害の特性分析システムを制御する、例えばCPU(Central Processing Unit)を備えている。そして、CPUは、プログラムを読みだして実行することにより各部にそれぞれの機能を実行させる。
【0030】
前記撮像手段5は、例えばカメラであり、前記カメラの視野に被験者の顔を撮像可能とする位置に固定され、前記被験者の顔を撮像する。前記カメラは前記分析用情報端末2に備え付けのカメラでもよく、外付けのカメラでもよい。
【0031】
前記音声取得手段6は、例えばマイクがあり、前記マイクは例えばコンデンサマイクなどの一般的なマイクでもよい。前記マイクは前記分析用情報端末2に備え付けのマイクでもよく、外付けのマイクでもよい。
【0032】
前記手入力手段7は、例えば押釦スイッチがあり、被験者が手でON情報を入力できる手入力手段であればいずれでもよい。
【0033】
前記分析用情報端末2は、
図2に示すように、制御部10、目の使い方分析部11、座標変換部12、記憶部13、画像表示部14、送受信部15、コマ画像生成部16、及び、視線軌跡分析部17を備え、前記制御部10が、前記画像表示部14に、前記記憶部13に記憶された目の使い方の分析をするための課題を設定した複数の分析用画像データの中から選択された分析用画像データを表示させ、前記記憶部13に、前記表示された分析用画像データで前記被験者に指示した前記課題で視線対象となる目標データ、及び、前記視線検出手段4で取得した前記被験者の視線データを、所定の時間間隔ごとに記憶させ、前記座標変換部12に、記憶した前記目標データ及び前記視線データをXY軸座標に座標変換させて前記記憶部13に記憶させ、前記目の使い方分析部11に、前記目標データのXY軸座標に対する前記視線データのXY軸座標の時系列での動き、及び/又は、前記目標データのXY軸座標と前記視線データのXY軸座標の時系列でのずれ量の変化の分析をさせ、前記画像表示部14に、前記目の使い方分析部11の分析結果を表示させる。また、前記分析用情報端末2は、
図2に示すように、音声出力部18を備えており、前記制御部10が前記音声出力部18に音声を出力させる。
【0034】
前記分析用画像データとしては、例えば
図4に示すように追従性眼球運動の特性を分析するコンテンツ画像又は動画データ、例えば
図6に示すように跳躍性眼球運動の特性を分析するコンテンツ画像又は動画データ、例えば
図8に示すように協応動作の特性を分析するコンテンツ画像又は動画データ、例えば
図10又は
図14に示すように注視能力の特性を分析するコンテンツ画像又は動画データ、又は、例えば
図12に示すように空間認知能力の特性を分析するコンテンツ画像又は動画データがある。
【0035】
前記制御部10が、さらに、コマ画像生成部16に、前記記憶部13に記憶させた所定の時間間隔ごとの前記目標データ及び前記視線データをもとに、所定の時間間隔ごとの時系列に並べた複数のコマ画像に生成させ、視線軌跡分析部17に、前記被験者への指示からの任意に指示された前記コマ画像までの時系列の範囲で、前記被験者の視線の動きを追跡するトレース、前記被験者の視線が停留した順番を表示する注視パス、又は、前記被験者の視線停留時間を表示するヒートマップの視線軌跡分析画像81を生成させ、前記画像表示部14に、時系列に並べられた前記コマ画像、前記コマ画像を時系列で前後にスクロールさせる右方向又は左方向へのスクロール機能、及び、前記視線軌跡分析画像81の時系列での前記被験者への指示からの範囲を指定する前記コマ画像を選択できる選択機能を、前記表示画面3にピクチャ・イン・ピクチャ表示させる。
【0036】
前記表示画面3をタッチパネル式とし、前記被験者を撮像する撮像手段5と、前記被験者の音声を取得する音声取得手段6と、前記被験者が手入力する手入力手段7と、を備え、前記制御部10が、前記画像表示部14に、前記表示画面3にタッチしたタッチ情報を、又は、前記手入力手段7による手入力情報を前記分析用画像データの前記表示画面3に反映させ、前記目の使い方分析部11による分析結果を表示した前記表示画面3に、又は、前記視線軌跡分析部17による視線軌跡分析画像81を表示した前記表示画面3に前記撮像手段5で取得した撮像画面をピクチャ・イン・ピクチャ表示させ、音声出力部18に前記音声取得手段6で取得した前記音声を出力させる。
【0037】
次に、前記分析用画像データについて説明する。前記分析用画像データは、前記記憶部13に記憶され、前記表示画面3に表示され、前記分析用画像データには被験者に対応してもらう課題が表示される。前記分析用画像データは、追従性眼球運動、協応動作、跳躍性眼球運動、注視能力、又は、空間認知能力のそれぞれの目の使い方の分析をすることができるものである。なお、本発明の前記分析用画像データは、本発明で説明する事例に限定されず、追従性眼球運動、協応動作、跳躍性眼球運動、注視能力、又は、空間認知能力の目の使い方を分析できる前記分析用画像データであればいずれでもよい。
【0038】
次に、前記目標データについて説明する。前記目標データは、前記表示画面3に表示された前記分析用画像データで前記被験者に指示する課題、すなわち、被験者が視線を向けるべき対象の範囲を示すものであり、追従性眼球運動、協応動作、跳躍性眼球運動、注視能力、又は、空間認知能力についての目の使い方の分析の方法によってそれぞれ設定される。被験者の視線が、時系列で目標データの範囲をいつどのくらい見ているか、時系列で前記目標データの範囲からどのくらいずれているかを分析する。
【0039】
前記視線データについて説明する。前記視線データは、前記表示画面3に表示された前記分析用画像データにおいて前記被験者に指示される課題が出されてから、前記被験者が時系列で前記分析用画像データが表示された前記表示画面3の中の見ている緯線の位置を示すものであり、前記視線検出手段4により取得され、前記記憶部13に所定の時間間隔ごとに記憶される。
【0040】
次に、前記分析用情報端末2の前記制御部10による目の使い方の分析のフローを、
図3に示す発達障害の特性分析システムフロー
図100で説明する。まず、分析用画像データの記憶工程101である。前記分析用画像データの記憶工程101では、前記記憶部13に、追従性眼球運動、協応動作、跳躍性眼球運動、注視能力、又は、空間認知能力の目の使い方の分析をするための課題を設定した複数の分析用画像データを記憶する。
【0041】
次に、分析用画像データの選択工程102である。前記分析用画像データの選択工程102では、前記記憶部13に記憶された複数の前記分析用画像データの中から被験者に受けさせようとすると判断した前記分析用画像データを選択する。
【0042】
次に、分析用画像データの表示工程103である。前記分析用画像データの表示工程103では、前記制御部10が前記画像表示部14に選択された分析用画像データを前記表示画面3に表示させる。
【0043】
次に、被験者の課題取組工程104である。前記課題取組工程104では、まず、課題指示工程105があり、前記課題指示工程105では、前記画像表示部14が、前記表示画面3に表示した分析用画像データの画面に前記被験者に取り組んでもらう課題を表示する。前記被験者は前記課題を見て取り組む。そして、前記被験者が前記課題に取り組むときの状況を観察するために、前記課題取組工程104と同時に、目標データと視線データの取得工程106と、被験者動作情報の取得工程107が実行される。
【0044】
前記目標データと視線データの取得工程106では、前記制御部10が、送受信部16に前記視線検出手段4から前記被験者の視線データを所定の時間間隔ごとに受信させて前記記憶部13に記憶させ、同時に、前記目標データを所定の時間間隔ごとに前記記憶部13に記憶させる。同時に、前記被験者動作情報の取得工程107では、前記制御部10が、送受信部16に、被験者タッチ入力情報、被験者撮像画面、被験者の音声、及び、被験者手入力情報のうちの一つ以上の情報を所定の時間間隔ごとに受信させ、前記被験者撮像画面、及び、前記被験者の音声を前記記憶部13に記憶させ、前記被験者タッチ入力情報、及び、前記被験者手入力情報は、分析をする上での必要に応じて前記記憶部13に記憶させる。
【0045】
前記制御部10は、前記画像表示部14に、前記表示画面3にタッチしたタッチ情報、又は、前記手入力手段7による手入力情報を前記分析用画像データの前記表示画面3に反映させ、あるいは、前記目の使い方分析部11による分析結果を表示した前記表示画面3に、又は、前記視線軌跡分析部17による視線軌跡分析画像81を表示した前記表示画面3に前記撮像手段5で取得した撮像画面をピクチャ・イン・ピクチャ表示させ、前記音声出力部18に前記音声取得手段6で取得した音声を前記分析用情報端末2に備え付けのスピーカーから出力させる。
【0046】
次に、XY軸座標変換工程108である。前記XY軸座標変換工程108では、前記制御部10が、前記座標変換部12に、前記記憶部13の記憶させた前記目標データ及び前記視線データをXY軸座標に座標変換させて前記記憶部13に記憶させる。
【0047】
次に、目の使い方分析工程109と、視線軌跡分析工程110である。被験者の目の使い方の分析をもとにした発達障害の特性の分析は、前記目標データと視線データの取得工程106、及び、前記被験者動作情報の取得工程107から取得したインプット情報をもとに生成された、前記目の使い方分析工程109での分析結果、及び、前記視線軌跡分析工程110での分析結果というアウトプット情報をもとに分析される。
【0048】
前記目の使い方分析工程109では、前記制御部10は、前記目の使い方分析部11に、例えば
図5.
図7、
図9、
図11、
図13又は
図15に示すように、前記目標データのXY軸座標に対する前記視線データのXY軸座標の時系列での動き、及び/又は、図示はされていないが、前記目標データのXY軸座標と前記視線データのXY軸座標の時系列でのずれ量の変化の分析をさせる。前記ずれ量は、例えば前記目標データが点である場合は前記点の位置と前記視線データの位置との間隔をずれ量とし、例えば前記目標データが外郭を有する形状である場合は前記視線データの位置と最も近い外郭の位置との間隔をずれ量とする。
【0049】
前記視線軌跡分析工程110では、前記制御部10は、コマ画像生成部16に、前記記憶部13に記憶させた所定の時間間隔ごとの前記目標データ及び前記視線データを、所定の時間間隔ごとの複数のコマ画像80に生成して前記コマ画像80を時系列に並べさせ、視線軌跡分析部17に、前記表示画面3で被験者に指示を表示したタイミングから任意に指示された前記コマ画像80までの時系列の範囲で、例えば
図16に示すように前記被験者の視線の動きを所定の時間間隔ごとに時系列でプロットをして追跡するトレース、例えば
図17に示すように前記被験者の視線が所定の時間以上停留した順番を例えば「1」、「2」、「3」と番号を付して表示する注視パス、又は、例えば
図18に示すように前記被験者の視線停留時間を例えば図形の面積の大きさで表示するヒートマップという少なくとも3種類の視線軌跡分析画像81を生成させ、前記画像表示部14に、例えば
図16~
図18に示すように、時系列に並べられた前記コマ画像80、前記コマ画像80を時系列で前後にスクロールさせる右方向又は左方向へのスクロール機能(図示なし)、及び、前記視線軌跡分析画像81の時系列での前記被験者への指示からの範囲を指定する前記コマ画像を選択できる選択機能である例えばスライダー82を、前記表示画面3にピクチャ・イン・ピクチャ表示させる。
【0050】
前記制御部10は、前記スライダー82で任意のコマ画像80が指定されると、前記画像表示部14に、指定された前記コマ画像80と同じ画像を前記表示画面3に大きく表示させ、前記スクロール機能が使用されると前記コマ画像80及び前記表示画面3の画像を時系列で前後にスクロールさせる。
【0051】
次に、分析結果表示工程111である。前記分析結果表示工程111では、前記制御部10は、前記画像表示部14に、前記目の使い方分析工程109における前記目の使い方分析部11の分析結果、又は、前記視線軌跡分析工程110における前記視線軌跡分析部17の分析結果を表示させる。このときに、分析上で必要に応じて、前記制御部10は、前記画像表示部14に、前記被験者タッチ入力情報、被験者撮像画面、及び、被験者手入力情報を、前記目の使い方分析部11の分析結果が表示された前記表示画面3に、又は、前記視線軌跡分析部17の分析結果が表示された前記表示画面3に、時系列での同じタイミングでピクチャ・イン・ピクチャ表示させ、分析上で必要に応じて、前記制御部10は、前記音声出力部18に前記被験者の音声を時系列での同じタイミングで前記分析用情報端末2に備え付けのスピーカーから出力させる。
【0052】
次に、発達障害の特性分析工程112である。前記発達障害の特性分析工程112では、前記被験者タッチ入力情報、前記被験者撮像画面、前記被験者手入力情報、及び、前記被験者の音声を分析上で必要に応じて確認し、かつ、前記視線軌跡分析部17の分析結果を分析上で必要に応じて確認しながら、前記目の使い方分析部11の分析結果をもとに、被験者の目の使い方を分析し、被験者の発達障害の特性を分析する。前記発達障害の特性分析工程112は、目の使い方の分類と発達障害の特性との関連をパターン化したものを予め作成しておいて、これに基づいて発達障害の特性を分析する。
【0053】
また、前記発達障害の特性分析工程112では、前記目標データと視線データの取得工程106、及び、前記被験者動作情報の取得工程107から取得したインプット情報をAIに入力して、AIに被験者の目の使い方の分析をさせ、発達障害の特性を分析させることもできる。
【0054】
次に、本発明の発達障害の特性分析システム1の実施例について説明する。本発明の発達障害の特性分析システム1は、追従性眼球運動、協応動作、跳躍性眼球運動、注視能力、又は、空間認知能力の目の使い方を分析する前記分析用画像データに基づいて、発達障害の特性分析をする発明である。本発明の発達障害の特性分析システム1における前記分析用画像データは、実施例に限定されず、追従性眼球運動、協応動作、跳躍性眼球運動、注視能力、又は、空間認知能力の目の使い方を分析できる前記分析用画像データであればいずれでもよい。以下の実施例は、追従性眼球運動、協応動作、跳躍性眼球運動、注視能力、又は、空間認知能力についての前記分析用画像データが異なることにより、発達障害の特性分析システムフロー
図100における前記制御部10の情報処理が異なる工程を主に対象にして説明する。
【0055】
まず、追従性眼球運動の事例の説明である。前記分析用画像データの表示工程103で、ある任意に設定した注視対象が直線状や曲線状の軌跡を描きながら移動するコンテンツ画像又は動画の前記分析用画像データを表示する。前記注視対象としては、例えば、動物、乗り物、食べ物又はキャラクター等の発達障害児が知っている注視対象であればいずれでもよい。例えば、
図4に示すように、注視対象として車を表示する。そして、前記課題指示工程105では、前記表示画面3に現れた移動する車を目で追いかけなさいという指示を表示させる。そして、前記目標データと視線データの取得工程106では、目標データは車の外郭に囲まれた範囲となるので、例えば、
図4(a)の場合では車の目標データ21aと被験者の視線データ20aを記憶し、
図4(b)の場合では車が軌跡Tで移動した車の目標データ21bと被験者の視線データ20bを記憶する。
【0056】
前記目の使い方分析工程109では、前記制御部10は、前記目の使い方分析部11に、例えば
図5に示すように、追従対象の車の追従対象物移動軌跡X軸座標22と追従対象物移動軌跡Y軸座標23を生成し、所定の時間間隔ごとに時系列で視線X軸座標24及び視線Y軸座標25をプロットで生成する。そして、
図4(a)に示した視線データ20aを、
図5では黒四角(視線データ20a、視線X軸座標24)と黒丸(視線データ20a、視線Y軸座標25)で生成し、
図4(b)に示した視線データ20bを、
図5では黒四角(視線データ20b、視線X軸座標24)と黒丸(視線データ20b、視線Y軸座標25)で生成する。そして、例えば、同一時間における視線データ20aと前記車の目標データ21aとの座標でのずれ量が、X軸方向でずれ量26、Y軸方向でずれ量27であることを表示している。そして、図示はしていないが、ずれ量のみを時間経過とともに表示した図を生成させてもよい。前記分析結果表示工程111では、前記制御部10は、前記画像表示部14に、前記目の使い方分析工程109で生成させた図を、又は、視線軌跡分析工程110で生成させた図を前記表示画面3に表示させる。
【0057】
前記発達障害の特性分析工程112では、例えば
図5に示すような、前記目標データである車の目標データ21のXY軸座標に対する前記視線データ20のXY軸座標の時系列での動き、及び/又は、図示はしていないが、前記目標データ21のXY軸座標と前記視線データ20のXY軸座標の時系列でのずれ量の変化に基づいて、さらに分析上で必要に応じて、被験者撮像画面、及び、被験者音声情報を確認し、さらに分析上で必要に応じて、前記視線軌跡分析画像81を確認して、予め作成している、追従性眼球運動の目の使い方の分類と発達障害の特性との関連のパターンに基づいて発達障害の特性を分析する。
【0058】
次に、跳躍性眼球運動の事例の説明である。前記分析用画像データの表示工程103で、ある任意に設定した注視対象がある位置から離隔した位置に順番に突然現れるコンテンツ画像又は動画の前記分析用画像データを表示する。前記注視対象としては、例えば、数字、動物、乗り物、食べ物又はキャラクター等の発達障害児が知っている注視対象であればいずれでもよい。例えば、
図6に示すように、注視対象として数字を表示する。そして、前記課題指示工程105では、前記表示画面3に現れた数字をじっと見なさいという指示を表示させる。そして、前記目標データと視線データの取得工程106では、目標データは数字が丸の輪郭で囲まれた範囲となるので、例えば、
図6(b)の場合では「1」を囲んだ丸の範囲の目標データ31と被験者の視線データ35aを記憶し、
図6(c)の場合では前記「1」と離隔した位置に、前記「1」の消去とほぼ入れ替わりに現れる「2」を囲んだ丸の範囲の目標データ32と被験者の視線データ35bを記憶する。
【0059】
前記目の使い方分析工程109では、前記制御部10は、前記目の使い方分析部11に、例えば
図7(a)又は(b)に示すように、「1」又は「2」のそれぞれの目標データ31、32の範囲をXY軸の座標で生成し、被験者の視線データ35a、35bを所定の時間間隔ごとに時系列でXY軸の座標でプロットさせて生成する。そして、図示はしていないが、ずれ量のみを時間経過とともに表示した図を生成させてもよい。前記分析結果表示工程111では、前記制御部10は、前記画像表示部14に、前記目の使い方分析工程109で生成させた図を、又は、視線軌跡分析工程110で生成させた図を前記表示画面3に表示させる。
【0060】
前記発達障害の特性分析工程112では、例えば
図7(a)、(b)に示すように、XY軸上における、前記目標データ31に対する視線データ35aの時系列の軌跡やずれ量、及び、前記目標データ32に対する視線データ35bの時系列の軌跡やずれ量などのXY軸座標の時系列での動き、並びに/あるいは、図示はしていないが、前記目標データである注視対象の「1」又は「2」の目標データ31、32のXY軸座標と前記視線データ35a、35bのXY軸座標の時系列でのずれ量の変化に基づいて、さらに分析上で必要に応じて、被験者撮像画面、及び、被験者音声情報を確認し、さらに分析上で必要に応じて、前記視線軌跡分析画像81を確認して、予め作成している、跳躍性眼球運動における目の使い方の分類と発達障害の特性との関連のパターンに基づいて発達障害の特性を分析する。
【0061】
次に、目と手の協応動作の事例の説明である。前記分析用画像データの表示工程103では、ある任意に設定した注視対象が規則正しい動きをしており、その動いている注視対象をあらかじめ指示した所定の位置に前記手入力手段7を手で押して止めることができるコンテンツ画像又は動画の前記分析用画像データを表示する。例えば、
図8に示すように、スロットで遊ぶという分析用画像データがある。前記スロットは、例えば
図8(a)に示すように3列3段で各列がそれぞれ下方向41に回転する前記分析用画像データであるが、前記分析用画像データとしてのスロットは、前記列数又は前記段数はいずれでもよく、前記回転方向も上方向、下方向、左方向又は右方向のいずれでもよい。そして、前記課題指示工程105では、例えば、回転するスロットを左端から順に前記手入力手段7を手で押して止めて、前記表示画面3に現れたアルファベット「A」を真ん中の枠W1で横一線に並べなさいという指示を表示させる。全部並んだ姿は、例えば
図8(c)に示すように「A」が横一線に並ぶ。そして、前記目標データと視線データの取得工程106では、枠W1で横一線に並べるためにじっと注視すべき位置となるのは、枠W1の一つ上流側の枠W2をじっと見てここだと思った瞬間に手で前記手入力手段7を押すのがベストであるとすると、目標データは前記枠W2の各列の範囲が該当する。よって、例えば、
図8(a)の場合には目標データ43a、視線データ45aが記憶され、
図8(b)の場合には目標データ43b、視線データ45bが記憶される。そして、前記制御部10は、被験者がすべての列が回転中に前記手入力手段7を手で押すと、前記押した情報を送受信部15に受信させ、前記画像表示部14に前記表示画面3に表示中の前記スロットの左端の回転を止めさせる。そして、前記被験者が前記手入力手段7を手で押すたびに順番に右側の列の回転を止める。
【0062】
前記目の使い方分析工程109では、前記制御部10は、前記目の使い方分析部11に、例えば
図9(a)又は(b)に示すように、目標データ43a、43bの範囲をXY軸の座標で生成し、被験者の視線データ45a、45bを所定の時間間隔ごとに時系列でXY軸の座標でプロットさせて生成する。そして、視線がどの位置で、手で前記手入力手段7を押してスロットの各列の回転を停止させたかを、時系列で記憶させる。そして、図示はしていないが、前記目標データと前記視線データとのずれ量のみを時間経過とともに表示した図を生成させてもよい。前記分析結果表示工程111では、前記制御部10は、前記画像表示部14に、前記目の使い方分析工程109で生成させた図を、又は、視線軌跡分析工程110で生成させた図を前記表示画面3に表示させる。
【0063】
前記発達障害の特性分析工程112では、例えば
図9(a)、(b)に示すように、XY軸上における、前記目標データ43aに対する視線データ45aの時系列の軌跡やずれ量、及び、前記目標データ43bに対する視線データ45bの時系列の軌跡やずれ量などのXY軸座標の時系列での動き、並びに/あるいは、図示はしていないが、前記目標データ43a、43bのXY軸座標と前記視線データ45a、45bのXY軸座標の時系列でのずれ量の変化に基づいて、さらに被験者が手入力手段7をどのタイミングで押したかの被験者手入力情報に基づいて、さらに分析上で必要に応じて、被験者撮像画面、及び、被験者音声情報を確認し、さらに分析上で必要に応じて、前記視線軌跡分析画像81を確認して、予め作成している、目と手の協応動作における目の使い方の分類と発達障害の特性との関連のパターンに基づいて発達障害の特性を分析する。
【0064】
次に、注視能力の事例の説明である。前記分析用画像データの表示工程103で、例えば
図10(a)に示すように、相手と視線を合わせない視線回避の分析がしやすい人の顔のコンテンツ画像又は動画の前記分析用画像データを表示する。そして、前記課題指示工程105では、
図10(a)の場合では前記表示画面3に現れた顔をじっと見なさいという指示を表示させ、
図10(b)の場合では目をじっと見なさいという指示を表示する。そして、前記目標データと視線データの取得工程106では、
図10(a)の場合では目標データは人の顔の外郭に囲まれた範囲が該当し、前記目標データ50aと被験者の視線データ55aを記憶し、
図10(b)の場合では目標データは目を囲む範囲が該当し、前記目標データ50bと被験者の視線データ55bを記憶する。
【0065】
前記目の使い方分析工程109では、前記制御部10は、前記目の使い方分析部11に、例えば目標データが顔の外郭の場合は、
図11に示すように、X軸とY軸の図に目標データ50aの範囲、及び、被験者の視線データ55aの時系列がわかるように、例えば矢印を付して生成する。前記顔の目標データ50aの範囲が移動しないのに対して、被験者の視線データ55aは時系列で移動する。そして、前記制御部10は、前記目の使い方分析部11に、
図11に示すような、前記目標データ50aの範囲のXY軸座標に対する前記視線データ55aのXY軸座標の時系列での動き、及び/又は、図示はしていないが、前記目標データ50aの範囲のXY軸座標と前記視線データ55aのXY軸座標の時系列でのずれ量の変化の図を生成する。前記分析結果表示工程111では、前記制御部10は、前記画像表示部14に、前記目の使い方分析工程109で生成させた図を、又は、視線軌跡分析工程110で生成させた図を前記表示画面3に表示させる。
【0066】
前記発達障害の特性分析工程112では、前記目の使い方分析部11が生成した図に基づいて、さらに分析上で必要に応じて、前記視線軌跡分析画像81を確認し、さらに分析上で必要に応じて、被験者撮像画面、及び、被験者音声情報を確認しながら、予め作成している、注視能力における目の使い方の分類と発達障害の特性との関連のパターンに基づいて発達障害の特性を分析する。
【0067】
次に、空間認知能力の事例の説明である。前記分析用画像データの表示工程103で、目標データを見ながら手で作業させる前記分析用画像データを前記表示画面に表示する。例えば、
図12に示すように、円と四角を一部でクロスさせた図形を表示する。そして、前記課題指示工程105では、円を指で前記表示画面3をタッチしてなぞりなさいという指示を前記表示画面3に表示させる。そして、前記目標データと視線データの取得工程106では、目標データは円の線となるので、例えば、
図12の場合では円の線の目標データ73と被験者の視線データ75を所定の時間間隔ごとに時系列で記憶する。そして、
図13に示すように、前記制御部10は、前記画像表示部14に、被験者が前記表示画面3に指でタッチしてなぞった軌跡76を前記表示画面3に表示させ、必要に応じて前記記憶部13に記録させる。
【0068】
前記目の使い方分析工程109では、前記制御部10は、前記目の使い方分析部11に、例えば
図13に示すように、X軸とY軸の図に目標データ73の線、及び、被験者の視線データ75の時系列がわかるように、例えば矢印を付して生成し、被験者タッチ入力情報である被験者が指でなぞった軌跡76を生成する。前記分析結果表示工程111では、前記制御部10は、前記画像表示部14に、前記目の使い方分析工程109で生成させた図を、又は、視線軌跡分析工程110で生成させた図を前記表示画面3に表示させる。
【0069】
前記発達障害の特性分析工程112では、前記目の使い方分析部11が生成した図、及び、被験者が指でなぞった軌跡76である被験者タッチ入力情報に基づいて、さらに分析上で必要に応じて、前記視線軌跡分析画像81を確認し、さらに分析上で必要に応じて、被験者撮像画面、及び、被験者音声情報を確認しながら、予め作成している、空間認知能力における目の使い方の分類と発達障害の特性との関連のパターンに基づいて発達障害の特性を分析する。
【0070】
次に、注視能力の事例の説明である。前記分析用画像データの表示工程103では、複数種類のものを同時に、かつ、同一の種類のものを離隔させて表示した前記分析用画像データを前記表示画面3に表示する。例えば、
図14に示すように、例えば「黄」、「青」、「赤」、「水色」等の異なる色の区画を設けたカラーパレットの事例がある。そして、前記課題指示工程105では、左上の「さがすいろ」60と記載された「水色」と同じ水色すべてのところで1か所ずつ0.5秒以上視線をとどめて下さいという指示を前記表示画面3に表示させる。そして、前記目標データと視線データの取得工程106では、目標データは「水色」の区画の範囲となるので、例えば、
図14の場合では区画を示す目標データ63a、63b、63cとなる。前記目標データ63a、63b、63cと、被験者の視線データ65を所定の時間間隔ごとに時系列で記憶する。また、前記制御部10は、被験者が目標データ63aの区画に視線データ65が閾値である0.5秒を超える時間とどまっていることを検知すると、
図15(b)に示すように、目標データ63aの区画の枠線を消去するように制御させることもできる。
【0071】
前記目の使い方分析工程109では、前記制御部10は、前記目の使い方分析部11に、例えば
図15(a)、(b)に示すように、X軸とY軸の図に目標データ63a、63b、63cの区画、及び、被験者の視線データ65の時系列がわかるように、例えば矢印を付して生成する。そして、被験者が閾値として0.5秒以上視線をとどめたときには、前記目標データ63aの区画の枠がどのタイミングで消去されたことがわかるように生成される。前記分析結果表示工程111では、前記制御部10は、前記画像表示部14に、前記目の使い方分析工程109で生成させた図を、又は、視線軌跡分析工程110で生成させた図を前記表示画面3に表示させる。
【0072】
前記発達障害の特性分析工程112では、前記目の使い方分析部11が生成した図に基づいて、さらに分析上で必要に応じて、前記視線軌跡分析画像81を確認し、さらに分析上で必要に応じて、被験者撮像画面、及び、被験者音声情報を確認しながら、予め作成している、注視能力における目の使い方の分類と発達障害の特性との関連のパターンに基づいて発達障害の特性を分析する。
【0073】
次に、前記分析用情報端末2のコンピュータを、発達障害の特性分析システム1が備える各手段及び各部として機能させるためのプログラムを備えている。
【0074】
次に、前記分析用情報端末2のコンピュータを、発達障害の特性分析システム1が備える各手段及び各部として機能させるためのプログラムを格納した、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体を備えている。
【符号の説明】
【0075】
1 発達障害の特性分析システム
2 分析用情報端末
3 表示画面
4 視線検出手段
5 撮像手段
6 音声取得手段
7 手入力手段
9 配線
10 制御部
11 目の使い方分析部
12 座標変換部
13 記憶部
14 画像表示部
15 送受信部
16 コマ画像生成部
17 視線軌跡分析部
18 音声出力部
20 視線データ
21 目標データ
22 追従対象物移動軌跡X軸座標
23 追従対象物移動軌跡Y軸座標
24 視線X軸座標
25 視線Y軸座標
26 X軸ずれ量
27 Y軸ずれ量
31 目標データ
32 目標データ
35 視線データ
41 回転方向
45 視線データ
50 目標データ
55 視線データ
63 目標データ
65 視線データ
73 目標データ
75 視線データ
76 軌跡
80 コマ画像
81 視線軌跡分析画像
82 スライダー
100 発達障害の特性分析システムフロー図
101 記憶工程
102 選択工程
103 表示工程
104 課題取組工程
105 課題指示工程
106 取得工程
107 取得工程
108 変換工程
109 分析工程
110 分析工程
111 分析結果表示工程
112 発達障害の特性分析工程
【要約】
【課題】発達障害児の目の使い方を一人ひとり捉えることができる、発達障害の特性分析システム、プログラム及び記憶媒体を提供することを課題とする。
【解決手段】目の使い方の分析をする分析用画像データの中から選択された分析用画像データを表示させ、表示された目標データ、及び、視線検出手段で取得した被験者の視線データを、所定の時間間隔ごとに記憶させ、記憶した目標データ及び視線データをXY軸座標に座標変換させ、目標データのXY軸座標に対する視線データのXY軸座標の時系列での動き、及び/又は、目標データのXY軸座標と視線データのXY軸座標の時系列でのずれ量の変化に基づいて、目の使い方の分析をして被験者の発達障害の特性を分析する発達障害の特性分析システムにより解決ができた。
【選択図】
図3