IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ CKD株式会社の特許一覧

特許7565670検査装置、PTP包装機、及び、検査方法
<>
  • 特許-検査装置、PTP包装機、及び、検査方法 図1
  • 特許-検査装置、PTP包装機、及び、検査方法 図2
  • 特許-検査装置、PTP包装機、及び、検査方法 図3
  • 特許-検査装置、PTP包装機、及び、検査方法 図4
  • 特許-検査装置、PTP包装機、及び、検査方法 図5
  • 特許-検査装置、PTP包装機、及び、検査方法 図6
  • 特許-検査装置、PTP包装機、及び、検査方法 図7
  • 特許-検査装置、PTP包装機、及び、検査方法 図8
  • 特許-検査装置、PTP包装機、及び、検査方法 図9
  • 特許-検査装置、PTP包装機、及び、検査方法 図10
  • 特許-検査装置、PTP包装機、及び、検査方法 図11
  • 特許-検査装置、PTP包装機、及び、検査方法 図12
  • 特許-検査装置、PTP包装機、及び、検査方法 図13
  • 特許-検査装置、PTP包装機、及び、検査方法 図14
  • 特許-検査装置、PTP包装機、及び、検査方法 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】検査装置、PTP包装機、及び、検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/90 20060101AFI20241004BHJP
   G01N 21/85 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
G01N21/90 D
G01N21/85 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018063870
(22)【出願日】2018-03-29
(65)【公開番号】P2019174328
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2021-03-01
【審判番号】
【審判請求日】2023-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000106760
【氏名又は名称】CKD株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111095
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 光男
(72)【発明者】
【氏名】田口 幸弘
【合議体】
【審判長】榎本 吉孝
【審判官】渡▲辺▼ 純也
【審判官】松本 隆彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-112887(JP,A)
【文献】特開2012-37488(JP,A)
【文献】特開2003-17393(JP,A)
【文献】国際公開第2013/002291(WO,A1)
【文献】特開昭62-295199(JP,A)
【文献】特開平4-328449(JP,A)
【文献】特開2005-291939(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N21/84-21/958
A61J 3/06
B65B 9/04
B65B57/00-57/20
B65G43/00-43/10
G01B11/00-11/30
G01N21/00-21/01
G01N21/17-21/61
H04N5/222-5/257
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器フィルムに形成されたポケット部に所定の内容物が収容され、該ポケット部を塞ぐようにカバーフィルムが取着されてなるPTPシートの製造に際し用いられる検査装置であって、
前記内容物に対し近赤外光を照射可能な照射手段と、
前記近赤外光が照射された前記内容物から反射される反射光を分光可能な分光手段と、
前記分光手段にて分光された前記反射光の分光スペクトルを撮像可能な撮像手段と、
前記撮像手段により取得された分光画像データを基に、前記内容物のスペクトルデータを取得可能なスペクトルデータ取得手段と、
前記スペクトルデータ取得手段により取得された前記内容物のスペクトルデータを基に、前記内容物について所定の検査を実行可能な検査手段とを備え、
前記検査手段は、
前記スペクトルデータ取得手段により取得された前記内容物のスペクトルデータに含まれる複数の波長帯域のうちのN個(Nは1以上の自然数)の特定波長帯域におけるスペクトル強度がそれぞれ許容範囲内にあるか否かを判定することにより、前記内容物について良否判定可能な判定手段と、
前記判定手段により良品と判定された前記内容物のスペクトルデータを時系列で順次記憶可能なスペクトルデータ記憶手段と、
前記スペクトルデータ記憶手段に時系列で記憶された直近のM個(Mは2以上の自然数)の前記内容物のスペクトルデータを基に、前記N個の特定波長帯域ごとのスペクトル強度の平均値を算出する平均値算出手段と、
前記平均値算出手段により算出された前記N個の特定波長帯域ごとのスペクトル強度の平均値に基づいて、前記N個の特定波長帯域ごとに該特定波長帯域のスペクトル強度を判定するための閾値を算出する閾値算出手段と、
前記閾値算出手段により算出された前記N個の特定波長帯域ごとの各閾値に基づいて、前記N個の特定波長帯域ごとに前記許容範囲を変更可能な変更手段とを備えたことを特徴とする検査装置。
【請求項2】
前記検査手段は、
前記スペクトルデータ記憶手段に時系列で記憶された直近のM個の前記内容物のスペクトルデータを前記平均値算出手段による平均値算出処理において用いるにあたり、
前記M個の前記内容物のスペクトルデータのうち、所定のスペクトルデータ又は時系列的に連続した所定のスペクトルデータ群よりも、時系列的により直近のスペクトルデータ又は時系列的に連続しかつ時系列的により直近のスペクトルデータ群の反映される割合が大きくなるよう、所定の重み付け処理を実行可能な重み付け手段を備えていることを特徴とする請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記撮像手段は、複数位置に配置された前記内容物に係る反射光の分光スペクトルを同時に撮像可能に構成され、
前記検査手段が前記複数位置それぞれに対応して設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の検査装置。
【請求項4】
容器フィルムに形成されたポケット部に所定の内容物が収容され、該ポケット部を塞ぐようにカバーフィルムが取着されてなるPTPシートを製造するためのPTP包装機であって、
帯状の前記容器フィルムに対し前記ポケット部を形成するポケット部形成手段と、
前記ポケット部に前記内容物を充填する充填手段と、
前記ポケット部に前記内容物が収容された前記容器フィルムに対し、前記ポケット部を塞ぐようにして帯状の前記カバーフィルムを取着する取着手段と、
前記容器フィルムに前記カバーフィルムが取着された帯状体から前記PTPシートを切離す切離手段と、
前記内容物について検査を行う請求項1乃至3のいずれかに記載の検査装置とを備えたことを特徴とするPTP包装機。
【請求項5】
容器フィルムに形成されたポケット部に所定の内容物が収容され、該ポケット部を塞ぐようにカバーフィルムが取着されてなるPTPシートの製造に際し、分光分析を利用して所定の検査を行うための検査方法であって、
前記内容物に対し近赤外光を照射可能な照射工程と、
前記近赤外光が照射された前記内容物から反射される反射光を分光可能な分光工程と、
前記分光工程にて分光された前記反射光の分光スペクトルを撮像可能な撮像工程と、
前記撮像工程にて取得された分光画像データを基に、前記内容物のスペクトルデータを取得可能なスペクトルデータ取得工程と、
前記スペクトルデータ取得工程にて取得された前記内容物のスペクトルデータに含まれる複数の波長帯域のうちのN個(Nは1以上の自然数)の特定波長帯域におけるスペクトル強度がそれぞれ許容範囲内にあるか否かを判定することにより、前記内容物について良否判定を行う判定工程と、
前記判定工程にて良品と判定された前記内容物のスペクトルデータを時系列で順次記憶するスペクトルデータ記憶工程と、
前記スペクトルデータ記憶工程により時系列で記憶された直近のM個(Mは2以上の自然数)の前記内容物のスペクトルデータを基に、前記N個の特定波長帯域ごとのスペクトル強度の平均値を算出する平均値算出工程と、
前記平均値算出工程にて算出された前記N個の特定波長帯域ごとのスペクトル強度の平均値に基づいて、前記N個の特定波長帯域ごとに該特定波長帯域のスペクトル強度を判定するための閾値を算出する閾値算出工程と、
前記閾値算出工程にて算出された前記N個の特定波長帯域ごとの各閾値に基づいて、前記N個の特定波長帯域ごとに前記許容範囲を変更する変更工程とを備えたことを特徴とする検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分光分析を利用して異品種の混入検査等を行う検査装置、及び、これを備えたPTP包装機、並びに、検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に医薬品等の分野において用いられるブリスターパックシートとしてPTP(プレススルーパック)シートが知られている。
【0003】
PTPシートは、錠剤等の内容物が収容されるポケット部が形成された容器フィルムと、その容器フィルムに対しポケット部の開口側を密封するように取着されるカバーフィルムとから構成されている。
【0004】
PTPシートの製造に際しては、分光分析を利用して内容物の異品種混入検査が行われる場合がある。
【0005】
かかる検査を行う検査装置として、例えば搬送される容器フィルムのポケット部に充填された錠剤に対し近赤外光を照射し、その反射光を分光器により分光し、それを撮像して得られるスペクトルデータを基に、錠剤の種類を判別する検査装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
特許文献1に係る検査装置では、検査に係る錠剤のスペクトルデータにおける特定波長の強度等と、予め記憶部に記憶したデータとを照合して、錠剤の種類を判別する構成となっている。
【0007】
尚、分光分析を利用した検査分野においては、予め測定した複数の対象物に係るスペクトルデータの平均値及び標準偏差を基に、検査に係る対象物のスペクトルデータの許容範囲(許容範囲を定める閾値)を予め設定しておく方法なども知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第2013/002291号
【文献】国際公開第2017/094188号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、検査装置の照明や撮像素子は、温度等の環境的要因あるいは経時的要因により輝度や感度、波長特性などが徐々に変化するという問題がある。
【0010】
また、PTPシートに充填される内容物は、良品と言えども、生産ロット毎に分光分析結果が微妙に変化する。例えば錠剤は、打錠時の条件(材料の粒径や混ざり具合、打錠圧等の要因)や打錠後の条件(温度、湿度、経時等)により、良品に係る分光分析結果が微妙に変化する。
【0011】
ここで、上述したような検査装置の変化と、内容物自体の変化を考慮した上で、内容物に係る良品錯誤率(良品を不良品と誤る確率)の上昇を抑えようとした場合には、例えば良品の許容範囲を定める下記式(A1)の係数Kを比較的大きな値に設定するといったように、予め許容範囲の幅を比較的大きく設定しておく必要があり、不良品錯誤率(不良品を良品と誤る確率)が上昇するおそれがある。PTPシートの製造分野、特に医薬品等の分野において、不良品錯誤率は、限りなく「0」に近いことが望まれる。
【0012】
L=μ±K×σ ・・・(A1)
ここで、「L」は許容範囲(上限閾値及び下限閾値)、「K」は係数、「μ」は平均値、「σ」は標準偏差を示す。
【0013】
つまり、従来のように、検査に係る内容物のスペクトルデータの許容範囲(許容範囲を定める閾値)が予め設定された設置値のまま固定されている構成では、内容物に係る良品錯誤率の上昇を抑えつつ、不良品錯誤率の上昇を抑えることが難しく、検査精度が低下するおそれがある。
【0014】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、分光分析を利用した検査に係る検査精度の向上等を図ることのできる検査装置、PTP包装機及び検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
以下、上記課題を解決するのに適した各手段につき項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果を付記する。
【0016】
手段1.容器フィルムに形成されたポケット部に所定の内容物が収容され、該ポケット部を塞ぐようにカバーフィルムが取着されてなるPTPシートの製造に際し用いられる検査装置であって、
前記内容物に対し近赤外光を照射可能な照射手段と、
前記近赤外光が照射された前記内容物から反射される反射光を分光可能な分光手段と、
前記分光手段にて分光された前記反射光の分光スペクトルを撮像可能な撮像手段と、
前記撮像手段により取得された分光画像データを基に、前記内容物のスペクトルデータを取得可能なスペクトルデータ取得手段と、
前記スペクトルデータ取得手段により取得された前記内容物のスペクトルデータを基に、前記内容物について所定の検査(例えば異品種混入検査)を実行可能な検査手段とを備え、
前記検査手段は、
前記スペクトルデータ取得手段により取得された前記内容物のスペクトルデータに含まれる複数の波長帯域のうちのN個(Nは1以上の自然数)の特定波長帯域におけるスペクトル強度がそれぞれ許容範囲内にあるか否かを判定することにより、前記内容物について良否判定可能な判定手段と、
前記判定手段により良品と判定された前記内容物のスペクトルデータを時系列で順次記憶可能なスペクトルデータ記憶手段と、
前記スペクトルデータ記憶手段に時系列で記憶された直近のM個(Mは2以上の自然数)の前記内容物のスペクトルデータを基に、前記N個の特定波長帯域ごとのスペクトル強度の平均値を算出する平均値算出手段と、
前記平均値算出手段により算出された前記N個の特定波長帯域ごとのスペクトル強度の平均値に基づいて、前記N個の特定波長帯域ごとに該特定波長帯域のスペクトル強度を判定するための閾値(上限閾値及び/又は下限閾値)を算出する閾値算出手段と、
前記閾値算出手段により算出された前記N個の特定波長帯域ごとの各閾値に基づいて、前記N個の特定波長帯域ごとに前記許容範囲を変更可能な変更手段とを備えたことを特徴とする検査装置。
【0017】
上記手段1によれば、分光分析を利用した異品種混入検査等を連続して実行しつつ、直近の良品の内容物に係る分光分析結果をフィードバックして、内容物のスペクトルデータの許容範囲を随時変更していくことができる。
【0018】
これにより、検査装置や内容物の経時的変化等に対応して、検査時において、より適した許容範囲で、検査に係る内容物のスペクトルデータの良否判定を行うことができる。
【0019】
結果として、予め許容範囲の幅を比較的大きく設定しておく必要もなく、内容物に係る良品錯誤率の上昇を抑えつつ、不良品錯誤率の上昇を抑えることが可能となり、検査精度の向上を図ることができる。
【0020】
但し、照射手段から出射される近赤外光に含まれる各波長帯域のスペクトル強度は均一ではないため、分光スペクトルを撮像する撮像手段の感度(受光量)及びその経時的変化等も波長帯域ごとに異なる。
【0021】
これに対し、本手段1においては、N個の特定波長帯域ごとにスペクトル強度の許容範囲が設定されると共に、該許容範囲を各特定波長帯域ごとに変更可能な構成となっている。これにより、検査装置や内容物の経時的変化等に対し、各特定波長帯域ごとに、より細かく対応することが可能となり、さらなる検査精度の向上を図ることができる。
【0022】
尚、上記手段1において、例えば「前記スペクトルデータ記憶手段に時系列で記憶された直近のM個(Mは2以上の自然数)の前記内容物のスペクトルデータを基に、前記N個の特定波長帯域ごとのスペクトル強度の標準偏差を算出する標準偏差算出手段」を備え、
上記「閾値算出手段」が、「前記平均値算出手段により算出された前記N個の特定波長帯域ごとのスペクトル強度の平均値、及び、前記標準偏差算出手段により算出された前記N個の特定波長帯域ごとのスペクトル強度の標準偏差に基づいて、前記N個の特定波長帯域ごとに該特定波長帯域のスペクトル強度を判定するための閾値(上限閾値及び/又は下限閾値)を算出する」構成としてもよい。
【0023】
手段2.前記検査手段は、
前記スペクトルデータ記憶手段に時系列で記憶された直近のM個の前記内容物のスペクトルデータを前記平均値算出手段による平均値算出処理において用いるにあたり、
前記M個の前記内容物のスペクトルデータのうち、所定のスペクトルデータ又は時系列的に連続した所定のスペクトルデータ群よりも、時系列的により直近のスペクトルデータ又は時系列的に連続しかつ時系列的により直近のスペクトルデータ群の反映される割合が大きくなるよう、所定の重み付け処理を実行可能な重み付け手段を備えていることを特徴とする手段1に記載の検査装置。
【0024】
上記手段2によれば、例えば時系列的に古い第1のスペクトルデータよりも時系列的に新しい第2のスペクトルデータを2倍(内容物2つ分)に換算するなどの重み付け処理が実行可能となる。
【0025】
これにより、検査時の状況に、より適した許容範囲を設定することが可能となり、さらなる検査精度の向上を図ることができる。
【0026】
手段3.前記撮像手段は、複数位置(例えば内容物の搬送方向と直交する方向における複数位置)に配置された前記内容物に係る反射光の分光スペクトルを同時に撮像可能に構成され、
前記検査手段(前記判定手段、前記スペクトルデータ記憶手段、前記平均値算出手段、前記閾値算出手段、及び、前記変更手段)が前記複数位置それぞれに対応して設けられていることを特徴とする手段1又は2に記載の検査装置。
【0027】
照射手段から撮像領域に照射される近赤外光の輝度ムラや、撮像手段の撮像素子(CCDエリアセンサ等)を構成する複数の受光素子の特性に基づく感度のばらつき等によって、撮像素子における感度(受光量)及びその経時的変化等も座標位置ごとに異なる。
【0028】
これに対し、上記手段3によれば、複数位置の内容物に係る検査を個別に実行することができる。
【0029】
つまり、複数位置それぞれに対応して設定されたスペクトルデータの許容範囲を基に、各位置における内容物の良否判定が行われると共に、良品内容物のスペクトルデータを時系列で順次記憶するスペクトルデータ記憶手段を複数位置それぞれに対応して個別に備え、該スペクトルデータ記憶手段に記憶されたスペクトルデータを基に、上記スペクトル強度の平均値の算出、上記閾値の算出、上記許容範囲の変更などの処理を各位置ごとに個別に実行する構成となっている。
【0030】
結果として、検査装置や内容物の経時的変化等に対し、各位置ごとに、より細かく対応することが可能となり、さらなる検査精度の向上を図ることができる。
【0031】
手段4.容器フィルムに形成されたポケット部に所定の内容物が収容され、該ポケット部を塞ぐようにカバーフィルムが取着されてなるPTPシートを製造するためのPTP包装機であって、
帯状の前記容器フィルムに対し前記ポケット部を形成するポケット部形成手段と、
前記ポケット部に前記内容物を充填する充填手段と、
前記ポケット部に前記内容物が収容された前記容器フィルムに対し、前記ポケット部を塞ぐようにして帯状の前記カバーフィルムを取着する取着手段と、
前記容器フィルムに前記カバーフィルムが取着された帯状体(帯状のPTPフィルム)から前記PTPシートを切離す切離手段(シート単位に打抜く打抜手段を含む)と、
前記内容物について検査を行う上記手段1乃至3のいずれかに記載の検査装置とを備えたことを特徴とするPTP包装機。
【0032】
上記手段4のように、上記手段1等に係る検査装置をPTP包装機に備えることで、PTPシートの製造過程において異品種を含む不良品を精度よく除外できる等のメリットが生じる。また、PTP包装機は、上記検査装置によって不良と判定されたPTPシートを排出する排出手段を備える構成としてもよい。
【0033】
尚、上記手段4において、上記検査装置を「充填手段によりポケット部に内容物が充填される前工程」に配置した構成としてもよい。かかる場合、ポケット部に充填される前段階に異品種を排除することが可能となり、不良品となるPTPシートを低減することができる。
【0034】
また、上記検査装置を「充填手段によりポケット部に内容物が充填された後工程かつ取着手段によりカバーフィルムが取着される前工程」に配置した構成としてもよい。かかる場合、内容物を遮るものがない状態で検査を実行することができ、さらなる検査精度の向上を図ることができる。
【0035】
また、上記検査装置を「取着手段によりカバーフィルムが取着された後工程かつ切離手段によりPTPシートが切離される前工程」に配置した構成としてもよい。かかる場合、内容物が入れ替わることがない状態で検査を実行することができ、さらなる検査精度の向上を図ることができる。
【0036】
また、上記検査装置を「切離手段によりPTPシートが切離された後工程」に配置した構成としてもよい。かかる場合、不良品が混ざっていないかを最終段階で確認することができる。
【0037】
手段5.容器フィルムに形成されたポケット部に所定の内容物が収容され、該ポケット部を塞ぐようにカバーフィルムが取着されてなるPTPシートの製造に際し、分光分析を利用して所定の検査(例えば異品種混入検査)を行うための検査方法であって、
前記内容物に対し近赤外光を照射可能な照射工程と、
前記近赤外光が照射された前記内容物から反射される反射光を分光可能な分光工程と、
前記分光工程にて分光された前記反射光の分光スペクトルを撮像可能な撮像工程と、
前記撮像工程にて取得された分光画像データを基に、前記内容物のスペクトルデータを取得可能なスペクトルデータ取得工程と、
前記スペクトルデータ取得工程にて取得された前記内容物のスペクトルデータに含まれる複数の波長帯域のうちのN個(Nは1以上の自然数)の特定波長帯域におけるスペクトル強度がそれぞれ許容範囲内にあるか否かを判定することにより、前記内容物について良否判定を行う判定工程と、
前記判定工程にて良品と判定された前記内容物のスペクトルデータを時系列で順次記憶するスペクトルデータ記憶工程と、
前記スペクトルデータ記憶工程により時系列で記憶された直近のM個(Mは2以上の自然数)の前記内容物のスペクトルデータを基に、前記N個の特定波長帯域ごとのスペクトル強度の平均値を算出する平均値算出工程と、
前記平均値算出工程にて算出された前記N個の特定波長帯域ごとのスペクトル強度の平均値に基づいて、前記N個の特定波長帯域ごとに該特定波長帯域のスペクトル強度を判定するための閾値(上限閾値及び/又は下限閾値)を算出する閾値算出工程と、
前記閾値算出工程にて算出された前記N個の特定波長帯域ごとの各閾値に基づいて、前記N個の特定波長帯域ごとに前記許容範囲を変更する変更工程とを備えたことを特徴とする検査方法。
【0038】
上記手段5によれば、上記手段1と同様の作用効果が奏される。
【0039】
尚、上記手段5において、例えば「前記スペクトルデータ記憶工程により時系列で記憶された直近のM個(Mは2以上の自然数)の前記内容物のスペクトルデータを基に、前記N個の特定波長帯域ごとのスペクトル強度の標準偏差を算出する標準偏差算出工程」を備え、
上記「閾値算出工程」において、「前記平均値算出工程にて算出された前記N個の特定波長帯域ごとのスペクトル強度の平均値、及び、前記標準偏差算出工程にて算出された前記N個の特定波長帯域ごとのスペクトル強度の標準偏差に基づいて、前記N個の特定波長帯域ごとに該特定波長帯域のスペクトル強度を判定するための閾値(上限閾値及び/又は下限閾値)を算出する」構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】(a)はPTPシートを示す斜視図であり、(b)はPTPフィルムを示す斜視図である。
図2】PTPシートのポケット部の部分拡大断面図である。
図3】PTP包装機の概略構成を示す模式図である。
図4】検査装置の電気的構成を示すブロック図である。
図5】検査装置の配置構成を模式的に示す斜視図である。
図6】撮像装置の概略構成を示す模式図である。
図7】測定ルーチンを示すフローチャートである。
図8】撮像素子に投射された分光スペクトルを示す模式図である。
図9】搬送方向撮像範囲と錠剤等との関係を説明するための説明図である。
図10】スペクトル画像を示す模式図である。
図11】検査ルーチンを示すフローチャートである。
図12】搬送方向撮像範囲とスペクトル画像との関係を説明するための説明図である。
図13】分析処理を示すフローチャートである。
図14】テーブル変更処理を示すフローチャートである。
図15】一部の良品データにおける一部の波長帯域に係るスペクトル強度、平均スペクトル強度及び標準偏差を例示した表である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下に、一実施形態について図面を参照しつつ説明する。まずPTPシートの構成について詳しく説明する。
【0042】
図1,2に示すように、PTPシート1は、複数のポケット部2を備えた容器フィルム3と、ポケット部2を塞ぐようにして容器フィルム3に取着されたカバーフィルム4とを有している。
【0043】
本実施形態における容器フィルム3は、例えばPP(ポリプロピレン)やPVC(ポリ塩化ビニル)等の透明の熱可塑性樹脂材料により形成され、透光性を有している。一方、カバーフィルム4は、例えばポリプロピレン樹脂等からなるシーラントが表面に設けられた不透明材料(例えばアルミニウム箔等)により構成されている。
【0044】
PTPシート1は、平面視略矩形状に形成されている。PTPシート1には、その長手方向に沿って配列された5個のポケット部2からなるポケット列が、その短手方向に2列形成されている。つまり、計10個のポケット部2が形成されている。各ポケット部2には、内容物として錠剤5が1つずつ収容されている。
【0045】
PTPシート1〔図1(a)参照〕は、帯状の容器フィルム3及び帯状のカバーフィルム4から形成された帯状のPTPフィルム6〔図1(b)参照〕がシート状に打抜かれることにより製造される。
【0046】
次に、上記PTPシート1を製造するPTP包装機10の概略構成について図3を参照して説明する。
【0047】
図3に示すように、PTP包装機10の最上流側では、帯状の容器フィルム3の原反がロール状に巻回されている。ロール状に巻回された容器フィルム3の引出し端側は、ガイドロール13に案内されている。容器フィルム3は、ガイドロール13の下流側において間欠送りロール14に掛装されている。間欠送りロール14は、間欠的に回転するモータに連結されており、容器フィルム3を間欠的に搬送する。
【0048】
ガイドロール13と間欠送りロール14との間には、容器フィルム3の搬送経路に沿って、加熱装置15及びポケット部形成装置16が順に配設されている。そして、加熱装置15によって容器フィルム3が加熱されて該容器フィルム3が比較的柔軟になった状態において、ポケット部形成装置16によって容器フィルム3の所定位置に複数のポケット部2が成形される(ポケット部形成工程)。加熱装置15及びポケット部形成装置16によって、本実施形態におけるポケット部形成手段が構成される。ポケット部2の形成は、間欠送りロール14による容器フィルム3の搬送動作間のインターバルの際に行われる。
【0049】
間欠送りロール14から送り出された容器フィルム3は、テンションロール18、ガイドロール19及びフィルム受けロール20の順に掛装されている。フィルム受けロール20は、一定回転するモータに連結されているため、容器フィルム3を連続的に且つ一定速度で搬送する。テンションロール18は、容器フィルム3を弾性力によって緊張する側へ引っ張った状態とされており、前記間欠送りロール14とフィルム受けロール20との搬送動作の相違による容器フィルム3の撓みを防止して容器フィルム3を常時緊張状態に保持する。
【0050】
ガイドロール19とフィルム受けロール20との間には、容器フィルム3の搬送経路に沿って、錠剤充填装置21が配設されている。錠剤充填装置21は、ポケット部2に錠剤5を自動的に充填する充填手段としての機能を有する。錠剤充填装置21は、フィルム受けロール20による容器フィルム3の搬送動作と同期して、所定間隔毎にシャッタを開くことで錠剤5を落下させるものであり、このシャッタ開放動作に伴って各ポケット部2に錠剤5が充填される(充填工程)。
【0051】
錠剤充填装置21とフィルム受けロール20との間には、容器フィルム3の搬送経路に沿って検査装置22が配設されている。検査装置22は、分光分析を利用して検査を行う分光分析装置であって、異品種の混入を検査するためのものである。検査装置22の詳細については後述する。
【0052】
一方、帯状に形成されたカバーフィルム4の原反は、最上流側においてロール状に巻回されている。
【0053】
ロール状に巻回されたカバーフィルム4の引出し端は、ガイドロール24に案内され、加熱ロール25の方へと案内されている。加熱ロール25は、前記フィルム受けロール20に圧接可能となっており、両ロール20,25間に容器フィルム3及びカバーフィルム4が送り込まれるようになっている。
【0054】
そして、容器フィルム3及びカバーフィルム4が、両ロール20,25間を加熱圧接状態で通過することで、容器フィルム3にカバーフィルム4が貼着され、ポケット部2がカバーフィルム4で塞がれる(取着工程)。これにより、錠剤5が各ポケット部2に収容された帯状体としてのPTPフィルム6が製造されるようになっている。加熱ロール25の表面には、シール用の網目状の微細な凸条が形成されており、これが強く圧接することで、強固なシールが実現されるようになっている。フィルム受けロール20及び加熱ロール25により本実施形態における取着手段が構成される。
【0055】
フィルム受けロール20から送り出されたPTPフィルム6は、テンションロール27及び間欠送りロール28の順に掛装されている。間欠送りロール28は、間欠的に回転するモータに連結されているため、PTPフィルム6を間欠的に搬送する。テンションロール27は、PTPフィルム6を弾性力によって緊張する側へ引っ張った状態とされており、前記フィルム受けロール20と間欠送りロール28との搬送動作の相違によるPTPフィルム6の撓みを防止してPTPフィルム6を常時緊張状態に保持する。
【0056】
間欠送りロール28から送り出されたPTPフィルム6は、テンションロール31及び間欠送りロール32の順に掛装されている。間欠送りロール32は、間欠的に回転するモータに連結されているため、PTPフィルム6を間欠的に搬送する。テンションロール31は、PTPフィルム6を弾性力によって緊張する側へ引っ張った状態とされており、前記間欠送りロール28,32間でのPTPフィルム6の撓みを防止する。
【0057】
間欠送りロール28とテンションロール31との間には、PTPフィルム6の搬送経路に沿って、スリット形成装置33及び刻印装置34が順に配設されている。スリット形成装置33は、PTPフィルム6の所定位置に切離用スリットを形成する機能を有する。また、刻印装置34はPTPフィルム6の所定位置(例えばタグ部)に刻印を付す機能を有する。
【0058】
間欠送りロール32から送り出されたPTPフィルム6は、その下流側においてテンションロール35及び連続送りロール36の順に掛装されている。間欠送りロール32とテンションロール35との間には、PTPフィルム6の搬送経路に沿って、シート打抜装置37が配設されている。シート打抜装置37は、PTPフィルム6をPTPシート1単位にその外縁を打抜くシート打抜手段(切離手段)としての機能を有する。
【0059】
シート打抜装置37によって打抜かれたPTPシート1は、コンベア39によって搬送され、完成品用ホッパ40に一旦貯留される(切離工程)。但し、上記検査装置22によって不良品と判定された場合、その不良品と判定されたPTPシート1は、完成品用ホッパ40へ送られることなく、図示しない排出手段としての不良シート排出機構によって別途排出される。
【0060】
前記連続送りロール36の下流側には、裁断装置41が配設されている。そして、シート打抜装置37による打抜き後に帯状に残った残材部(スクラップ部)を構成する不要フィルム部42は、前記テンションロール35及び連続送りロール36に案内された後、裁断装置41に導かれる。なお、前記連続送りロール36は従動ロールが圧接されており、前記不要フィルム部42を挟持しながら搬送動作を行う。裁断装置41では、不要フィルム部42を所定寸法に裁断しスクラップ処理する機能を有する。このスクラップはスクラップ用ホッパ43に貯留された後、別途廃棄処理される。
【0061】
なお、上記各ロール14,20,28,31,32などは、そのロール表面とポケット部2とが対向する位置関係となっているが、間欠送りロール14等の表面には、ポケット部2が収容される凹部が形成されているため、ポケット部2が潰れてしまうことがない。また、ポケット部2が間欠送りロール14等の各凹部に収容されながら送り動作が行われることで、間欠送り動作や連続送り動作が確実に行われる。
【0062】
PTP包装機10の概略は以上のとおりであるが、以下に上記検査装置22の構成について図面を参照して詳しく説明する。図4は検査装置22の電気的構成を示すブロック図であり、図5は検査装置22の配置構成を模式的に示す斜視図である。
【0063】
図4,5に示すように、検査装置22は、照明装置52と、撮像装置53と、照明装置52や撮像装置53の駆動制御など検査装置22内における各種制御や画像処理、演算処理等を実施する制御処理装置54とを備えている。
【0064】
照明装置52及び撮像装置53は、容器フィルム3のポケット部2開口部側に配置されている。つまり、本実施形態では、カバーフィルム4が取着される前段階における容器フィルム3のポケット部2開口部側から異品種混入検査が行われる。
【0065】
照明装置52は、近赤外光を照射可能に構成された公知のものであり、本実施形態における照射手段を構成する。照明装置52は、連続搬送される容器フィルム3上の所定領域へ向け斜め上方から近赤外光を照射可能に配置されている。
【0066】
本実施形態に係る照明装置52では、連続スペクトルを持つ近赤外光(例えば波長700~2500nmの近赤外領域)を出射可能な光源としてハロゲンランプを採用している。この他、光源としては、重水素放電管、タングステンランプ、キセノンランプなどを用いることができる。
【0067】
図6に示すように、撮像装置53は、光学レンズ61と、分光手段としての二次元分光器62と、撮像手段としてのカメラ63とを備えている。
【0068】
光学レンズ61は、図示しない複数のレンズ等により構成され、入射光を平行光化可能に構成されている。光学レンズ61は、その光軸が鉛直方向(Z方向)に沿って設定されている。
【0069】
また、光学レンズ61は、入射光を後述する二次元分光器62のスリット62aの位置に結像可能なように設定されている。尚、ここでは便宜上、光学レンズ61として両側テレセントリックレンズを採用した例を示すが、当然、像側テレセントリックレンズであってもよい。
【0070】
二次元分光器62は、スリット62aと、入射側レンズ62bと、分光部62cと、出射側レンズ62dとから構成されている。分光部62cは、入射側プリズム62caと、透過型回折格子62cbと、出射側プリズム62ccとから構成されている。
【0071】
かかる構成の下、スリット62aを通過した光は、入射側レンズ62bにより平行光化された後、分光部62cにより分光され、出射側レンズ62dによって後述するカメラ63の撮像素子65に二次元分光画像(分光スペクトル像)として結像される。
【0072】
スリット62aは、細長い略矩形状(線状)に開口形成され、その開口幅方向(短手方向)が容器フィルム3のフィルム搬送方向(Y方向)に沿って配設され、その長手方向が前記搬送方向と直交する容器フィルム3のフィルム幅方向(X方向)に沿って配設されている。これにより、二次元分光器62は、スリット62aの開口幅方向すなわちフィルム搬送方向(Y方向)に入射光を分光することとなる。つまり、フィルム搬送方向(Y方向)が本実施形態における波長分散方向となる。
【0073】
カメラ63は、複数の受光素子(受光部)64が行列状に二次元配列された受光面65aを有する撮像素子65を備えている。本実施形態では、撮像素子65として、近赤外領域のうち例えば波長1300~2000nmの波長範囲に対して十分な感度を有した公知のCCDエリアセンサを採用している。
【0074】
CCDエリアセンサとしては、例えば行列状に2次元配置されかつ入射光をその光量に応じた電荷に変換して蓄積する光電変換素子(例えばフォトダイオード)からなる複数の受光素子と、該各受光素子に蓄積された電荷を垂直方向に順次転送する複数の垂直転送部と、該垂直転送部から転送される電荷を水平方向に順次転送する水平転送部と、該水平転送部から転送される電荷を電圧に変換し増幅して出力する出力アンプとを備えたものが一般に知られている。
【0075】
勿論、撮像素子は、これに限定されるものではなく、近赤外領域に感度を持つ他のセンサを採用してもよい。例えばCMOSセンサやMCT(HgCdTe)センサ等を採用してもよい。
【0076】
撮像装置53の視野領域(撮像領域)は、フィルム幅方向(X方向)に沿って延びる線状の領域であって、少なくとも容器フィルム3のフィルム幅方向全域を含む領域となる(図5の2点鎖線部参照)。一方、フィルム搬送方向(Y方向)における撮像装置53の視野領域は、スリット62aの開口幅に相当する領域となる。つまり、スリット62aを通過した光(スリット光)が撮像素子65の受光面65a上に像を結ぶ領域である。
【0077】
これにより、容器フィルム3のフィルム幅方向(X方向)の各位置で反射した反射光の分光スペクトルの各波長帯域(例えば10~20nm帯域幅毎)を撮像素子65の各受光素子64がそれぞれ受光することとなる。そして、各受光素子64が受光した光の強度に応じた信号が、デジタル信号に変換された上でカメラ63から制御処理装置54に対し出力される。つまり、撮像素子65の受光面65a全体で撮像された1画面分の画像信号(分光画像データ)が制御処理装置54へ出力されることとなる。
【0078】
制御処理装置54は、検査装置22全体の制御を司るCPU及び入出力インターフェース71(以下、「CPU等71」という)、キーボードやマウス、タッチパネル等で構成される「入力手段」としての入力装置72、CRTや液晶などの表示画面を有する「表示手段」としての表示装置73、各種画像データ等を記憶するための画像データ記憶装置74、各種演算結果等を記憶するための演算結果記憶装置75、各種情報を予め記憶しておくための設定データ記憶装置76などを備えている。尚、これら各装置72~76は、CPU等71に対し電気的に接続されている。
【0079】
CPU等71は、PTP包装機10と各種信号を送受信可能に接続されている。これにより、例えばPTP包装機10の不良シート排出機構などを制御することができる。
【0080】
画像データ記憶装置74は、撮像装置53により取得される分光画像データ、該分光画像データを基に取得されるスペクトル画像データ、二値化処理された後の二値化画像データなどを記憶するためのものである。
【0081】
演算結果記憶装置75は、検査結果データや、該検査結果データを確率統計的に処理した統計データなどを記憶するものである。これらの検査結果データや統計データは、適宜表示装置73に表示させることができる。
【0082】
設定データ記憶装置76は、例えばPTPシート1、ポケット部2及び錠剤5の形状及び寸法、錠剤5の良否判定を行うためのスペクトル許容範囲テーブルなどを記憶するものである。
【0083】
次に検査装置22によって行われる異品種混入検査(検査工程)の手順について説明する。
【0084】
まず、スペクトルデータを取得する測定ルーチンについて、図7のフローチャートを参照して説明する。尚、本ルーチンは、容器フィルム3が所定量搬送される毎に繰り返し実行される処理である。
【0085】
制御処理装置54は、まずステップS01において、連続搬送される容器フィルム3(錠剤5)に対し照明装置52から近赤外光を照射しつつ(照射工程)、撮像装置53による撮像処理(露光処理)を実行する。
【0086】
ここで、制御処理装置54は、PTP包装機10に設けられた図示しないエンコーダからの信号に基づいて撮像装置53を駆動制御し、該撮像装置53が撮像する分光画像データを画像データ記憶装置74に取り込む。
【0087】
これにより、照明装置52から容器フィルム3に向け照射された近赤外光のうち、ステップS01の撮像処理の実行期間(露光期間)中において、搬送方向撮像範囲W(図9参照)にて反射した反射光が撮像装置53に入射する。つまり、1回の撮像処理で搬送方向撮像範囲Wが撮像されることとなる。
【0088】
撮像装置53に入射した反射光は二次元分光器62により分光され(分光工程)、カメラ63の撮像素子65により分光画像(分光スペクトル)として撮像される(撮像工程)。尚、撮像処理の実行期間(露光期間)中、容器フィルム3(錠剤5)は連続搬送されているため、ここでは、搬送方向撮像範囲Wの平均化された分光スペクトルが撮像されることなる(図8参照)。
【0089】
図8は、錠剤5上の所定位置にて反射した反射光の分光スペクトルHが撮像素子65の受光面65aに投射された状態を示す模式図である。図8においては、便宜上、錠剤5に係る分光スペクトルHのみ図示し、その他の部位(容器フィルム3等)に係る分光スペクトルについては図示を省略している。
【0090】
撮像装置53により撮像された分光画像(分光スペクトル)データは、インターバル期間中に制御処理装置54へ出力され、画像データ記憶装置74に記憶される。尚、ここでいうインターバル期間とは、画像データの読出期間のことである。つまり、撮像装置53による撮像サイクルは、撮像処理の実行期間である露光期間と、インターバル期間の合計時間で表すことができる。
【0091】
制御処理装置54は、分光画像データが取得されると、ステップS02のデータ生成処理を開始する。
【0092】
データ生成処理では、ステップS01において取得した分光画像データを基にスペクトルデータを生成する。制御処理装置54は、スペクトルデータが生成されると、これを画像データ記憶装置74に記憶し、本ルーチンを一旦終了する。かかる工程が本実施形態におけるスペクトルデータ取得工程に相当し、これを実行する制御処理装置54の処理機能により、本実施形態におけるスペクトルデータ取得手段が構成されることとなる。
【0093】
そして、図9に示すように、容器フィルム3(錠剤5)が所定量搬送される毎に、搬送方向撮像範囲Wが断続的に相対移動していき、上記測定ルーチンが繰り返されることにより、画像データ記憶装置74には、各搬送方向撮像範囲Wに対応するスペクトルデータがフィルム搬送方向(Y方向)及びフィルム幅方向(X方向)の位置情報と共に時系列に順次記憶されていく。これにより、画素毎にスペクトルデータを有した二次元的なスペクトル画像Qが生成されていくこととなる(図10参照)。
【0094】
ここで、本実施形態におけるスペクトル画像Qについて説明する。図10に示すように、スペクトル画像Qは、複数の画素Qaが二次元配列された画像データである。各画素Qaには、それぞれスペクトルデータ〔所定数n個(例えばn=100バンド)の波長帯域におけるスペクトル強度(輝度値)を示すデータ〕が含まれている。
【0095】
そして、検査対象となる1つ分のPTPシート1に相当する所定の検査範囲(図10の二点鎖線部参照)のスペクトル画像Qが取得されると、制御処理装置54は検査ルーチンを実行する。
【0096】
ここで、検査ルーチンについて図11のフローチャートを参照して説明する。尚、本ルーチンは、上記検査範囲のスペクトル画像Qが取得される毎に繰り返し行われるものである。
【0097】
制御処理装置54は、まずステップS11において錠剤画素抽出処理を実行する。本処理においては、スペクトル画像Qの各画素Qaのうち、分析対象となる錠剤5に対応する画素(以下、「錠剤画素」という)Qbを抽出する。
【0098】
本実施形態では、例えば各画素Qaのスペクトルデータ中の所定波長のスペクトル強度(輝度値)が予め定めた閾値以上であるか否かを判定し、スペクトル画像Qに対し二値化処理を行う。そして、得られた二値化画像データを基に錠剤画素Qbを抽出する(図10,12参照)。
【0099】
図12に示すように、本実施形態では、背景の影響を受けることなく錠剤5の範囲のみを撮像したデータを含んだ画素Qaが錠剤画素Qbとして抽出される。図12は、搬送方向撮像範囲Wとスペクトル画像Qとの関係を説明するための説明図である。図10,12では、錠剤画素Qbとして抽出された画素を斜線で示している。
【0100】
尚、錠剤画素Qbの抽出方法は、これに限られるものではなく、他の方法を採用してもよい。例えば、各画素Qa毎にスペクトルデータ(各波長帯域のスペクトル強度)の積算値を算出し、かかる値が予め定めた閾値以上であるか否かを判定することにより、錠剤画素Qbを抽出する構成としてもよい。
【0101】
続いて、制御処理装置54は、ステップS12において錠剤領域特定処理を実行する。本処理によって、検査範囲内の各ポケット部2に収容された10個の錠剤5の領域を特定する。
【0102】
本実施形態では、例えば上記ステップS11で得られた錠剤画素Qbについてラベリング処理を行い、隣接する全ての錠剤画素Qbを同一の錠剤5に属する錠剤画素Qbの連結成分とみなす。
【0103】
これにより、1つの連結成分の範囲を所定のポケット部2内に収容された1つの錠剤5に係る錠剤領域として特定することができる(図10,12参照)。図10,12では、各錠剤5に属する複数の錠剤画素Qbの連結成分(錠剤領域)をそれぞれ太枠により囲んでいる。
【0104】
尚、錠剤5の領域特定方法は、これに限られるものではなく、他の方法を採用してもよい。例えば特定の画素を中心とした所定の範囲に含まれる画素を該特定の画素と同一の錠剤5に属する画素と判断するようにしてもよい。
【0105】
続いて、制御処理装置54は、ステップS13において平均スペクトル算出処理を実行する。本処理では、上記ステップS12において特定された各錠剤5の錠剤領域それぞれについて、そこに含まれる複数の錠剤画素Qbのスペクトルデータを用いて、該錠剤5に係る平均スペクトルデータを算出する。
【0106】
本実施形態では、1つの錠剤5の錠剤領域に属する複数の錠剤画素Qb全てのスペクトルデータを平均化し、これを該錠剤5に係る平均スペクトルデータとして算出する。これに限らず、1つの錠剤5の錠剤領域に属する複数の錠剤画素Qbのうちの一部を抽出し、該錠剤画素Qbのスペクトルデータを用いて、該錠剤5に係る平均スペクトルデータを算出する構成としてもよい。
【0107】
このように、検査範囲内の各ポケット部2に収容された10個の錠剤5それぞれに係る平均スペクトルデータ(以下、「スペクトル測定データ」という)が算出されると、制御処理装置54は、これらを1つの検査範囲に係る測定データとしてまとめて演算結果記憶装置75に記憶する。
【0108】
尚、本実施形態では、1つの錠剤5のスペクトル測定データとして、各波長帯域(バンド番号i=1~n)ごとのスペクトル強度V(i)が記憶される。
【0109】
ここで「バンド番号i(1≦i≦n、iは自然数)」は、スペクトル測定データに含まれる所定数n個(例えばn=100バンド)の波長帯域に付された通し番号である。
【0110】
続くステップS14において、制御処理装置54は、演算結果記憶装置75に設定されたポケット番号カウンタのカウンタ値Pに初期値である「1」を設定する。
【0111】
尚、「ポケット番号」とは、1つの検査範囲内の10個のポケット部2にそれぞれ対応して設定された通し番号であり、前記ポケット番号カウンタのカウンタ値P(以下、単に「ポケット番号カウンタ値P」という)によりポケット部2の位置を特定することができる(図10参照)。
【0112】
図10に示す例では、例えば左側列の最上部のポケット部2がポケット番号カウンタ値[1]に対応するポケット部2として設定され、右側列の最下部のポケット部2がポケット番号カウンタ値[10]に対応するポケット部2として設定されている。
【0113】
続いて、制御処理装置54は、ステップS15において錠剤データ抽出処理を実行する。本処理においては、上記ステップS13において取得した1つの検査範囲に係る測定データ(10個の錠剤5のスペクトル測定データ)から、現在のポケット番号カウンタ値P(例えばP=1)に対応するポケット部2に収容された錠剤5のスペクトル測定データを抽出する。
【0114】
次に、制御処理装置54は、ステップS15において抽出した錠剤5のスペクトル測定データについて分析処理を実行する(ステップS16)。ここで、分析処理の流れについて図13のフローチャートを参照して詳しく説明する。
【0115】
まず制御処理装置54は、ステップS31において、演算結果記憶装置75に設定されたバンド番号カウンタのカウンタ値I(以下、単に「バンド番号カウンタ値I」という)に初期値である「1」を設定する。
【0116】
尚、「バンド番号カウンタ値I」は、上記「バンド番号i」に対応したものであり、分析対象となる波長帯域を特定するためのものである。
【0117】
続くステップS32において、制御処理装置54は、スペクトル判定処理を実行する。本処理においては、上記ステップS15において抽出した錠剤5のスペクトル測定データに含まれるn個の波長帯域(バンド番号i=1~n)のスペクトル強度V(i)のうち、現在のバンド番号カウンタ値Iにより特定されるバンド番号iの波長帯域に係るスペクトル強度V(i)について、設定データ記憶装置76に設定されたスペクトル許容範囲テーブルを参照して良否判定を行う。
【0118】
スペクトル許容範囲テーブルは、n個の波長帯域(バンド番号i=1~n)ごとに、スペクトル強度V(i)の許容範囲D(i)を定めたものである。また、スペクトル許容範囲テーブルは、1つの検査範囲内の10個のポケット部2の位置(ポケット番号カウンタ値P)にそれぞれ対応して1つずつ設定されている。つまり、本実施形態では、1つの検査範囲に対し、10個のスペクトル許容範囲テーブルが設定されている。
【0119】
従って、本処理においては、現在のポケット番号カウンタ値Pに対応するスペクトル許容範囲テーブルを参照して、現在のバンド番号カウンタ値Iにより特定されるバンド番号iの波長帯域に係るスペクトル強度V(i)が、該バンド番号iの波長帯域に対応する許容範囲D(i)内であるか否かを判定することとなる。
【0120】
そして、制御処理装置54は、その判定結果(「良」又は「不良」)を演算結果記憶装置75に記憶する。
【0121】
尚、検査開始時のスペクトル許容範囲テーブルには、検査開始前に予め取得した所定個数(例えば200個)の良品のPTPシート1の錠剤5に係るスペクトル測定データを基に算出した各波長帯域ごとの許容範囲D(i)が設定されている。
【0122】
その後、制御処理装置54は、ステップS33において現在のバンド番号カウンタ値Iに「1」を加えた後、ステップS34へ移行し、新たに設定したバンド番号カウンタ値Iが最大値n(スペクトル測定データに含まれる波長帯域数n)を超えているか否かを判定する。
【0123】
ここで否定判定された場合には、再度、ステップS32へ戻り、上記一連の処理を実行する。一方、肯定判定された場合には、すべての波長帯域のスペクトル強度V(i)について良否判定が行われたとみなし、本処理を終了する。
【0124】
図11のフローチャートに示す検査ルーチンの説明に戻り、制御処理装置54は、ステップS17において錠剤良否判定処理を実行する。
【0125】
本処理においては、上記ステップS16の分析処理における分析結果を基に、現在のポケット番号カウンタ値P(例えばP=1)に対応するポケット部2に収容された錠剤5が良品(同品種)であるか、不良(異品種)であるか判定する。
【0126】
具体的には、錠剤5のスペクトル測定データに含まれるn個の波長帯域(バンド番号i=1~n)のスペクトル強度V(i)のうち、「不良」判定されたものが1つも存在しない場合には、該錠剤5を「良」と判定する。一方、「不良」判定されたものが1つでも存在する場合には、該錠剤5を「不良」と判定する。
【0127】
そして、制御処理装置54は、該錠剤5に係る判定結果(「良」又は「不良」)を演算結果記憶装置75に記憶する。従って、上記ステップS16の分析処理、及び、上記ステップS17の錠剤良否判定処理により、本実施形態における判定工程が構成され、これらを実行する制御処理装置54の処理機能により、本実施形態における判定手段が構成されることとなる。
【0128】
その後、制御処理装置54は、ステップS18において現在のポケット番号カウンタ値Pに「1」を加えた後、ステップS19へ移行し、新たに設定したポケット番号カウンタ値Pが最大値Pmaxを超えているか否かを判定する。尚、最大値Pmaxは、1つの検査範囲におけるポケット部2の個数の最大値(本実施形態では「10」)である。
【0129】
ここで否定判定された場合には、再度、ステップS15へ戻り、上記一連の処理を実行する。一方、肯定判定された場合には、すべてのポケット部2に係る錠剤5の良否判定が終了したとみなし、ステップS20へ移行する。
【0130】
続くステップS20において、制御処理装置54は、シート良否判定処理を実行する。本処理においては、上記ステップS17の錠剤良否判定処理における判定結果を基に、検査範囲に対応するPTPシート1が良品であるか、不良品であるか判定する。
【0131】
具体的には、検査範囲内に「不良」判定された錠剤5が1つでも存在する場合には、該検査範囲に対応するPTPシート1を「不良品」と判定し、ステップS21へ移行する。
【0132】
一方、検査範囲内に「不良」判定された錠剤5が1つも存在しない場合には、該検査範囲に対応するPTPシート1を「良品」と判定し、ステップS22へ移行する。
【0133】
そして、制御処理装置54は、ステップS21の不良品処理において、該PTPシート1に係る「不良品」判定結果を演算結果記憶装置75に記憶すると共に、その旨をPTP包装機10の不良シート排出機構等へ出力し、検査ルーチンを終了する。
【0134】
一方、制御処理装置54は、ステップS22の良品処理において、まず該PTPシート1(検査範囲)に係る「良品」判定結果を演算結果記憶装置に記憶する。同時に、制御処理装置54は、該PTPシート1に係る測定データ(10個の錠剤5のスペクトル測定データ)を、演算結果記憶装置75に設定された良品データ記憶部に記憶する。
【0135】
尚、「良品データ記憶部」は、検査が行われる毎に、「良品」と判定されたPTPシート1に係る測定データを時系列で順次記憶可能に構成された記憶手段であり、本実施形態における「スペクトルデータ記憶手段」に相当する。従って、良品データ記憶部に対し、PTPシート1に係る測定データを記憶する処理により、本実施形態におけるスペクトルデータ記憶工程が構成されることとなる。
【0136】
続いて、制御処理装置54は、テーブル変更処理を実行する。尚、かかるテーブル変更処理は、設定データ記憶装置76に設定された上記スペクトル許容範囲テーブルの内容を変更するための処理である。ここで、テーブル変更処理の流れについて図14のフローチャートを参照して詳しく説明する。
【0137】
制御処理装置54は、まずステップS41において良品データ抽出処理を実行する。本処理においては、演算結果記憶装置75の良品データ記憶部に時系列に記憶された直近の所定数m個(例えばm=200個)の良品のPTPシート1に係る測定データ(以下、「良品データ」という)を抽出する。
【0138】
つまり、今回の良品処理(ステップS22)において、最新の良品データが記憶された良品データ記憶部の所定アドレス位置を基準に、過去m個分の良品データが記憶されているm個のアドレス位置の内容が読み出される。
【0139】
続くステップS42において、制御処理装置54は、ポケット番号カウンタ値Pに初期値である「1」を設定する。
【0140】
次に、制御処理装置54は、ステップS43においてテーブル再設定処理を実行する。本処理においては、まず上記ステップS41において抽出したm個の良品データそれぞれから、現在のポケット番号カウンタ値P(例えばP=1)に対応するポケット部2に収容された錠剤5のスペクトル測定データを抽出する。
【0141】
続いて、制御処理装置54は、抽出されたm個の錠剤5のスペクトル測定データ(良品番号j=1~m)を基に、各波長帯域(バンド番号i=1~n)ごとのスペクトル強度V(i,j)の平均値である平均スペクトル強度μ(i)を算出すると共に、各波長帯域ごとのスペクトル強度V(i,j)の標準偏差σ(i)を算出する(図15参照)。
【0142】
ここで、良品番号j(1≦j≦m、jは自然数)は、上記ステップS41において抽出したm個の良品データに付された通し番号である。
【0143】
尚、図15では、良品番号[1]~[5]の良品データにおける、バンド番号[1]~[3]の波長帯域に係るスペクトル強度V(i,j)を抜粋して例示すると共に、これらを用いて算出した平均スペクトル強度μ(i)及び標準偏差σ(i)を例示している。
【0144】
ここで、平均スペクトル強度μ(i)を算出する処理が本実施形態における平均値算出工程に相当し、これを実行する制御処理装置54の処理機能により、本実施形態における平均値算出手段が構成されることとなる。
【0145】
また、標準偏差σ(i)を算出する処理が本実施形態における標準偏差算出工程に相当し、これを実行する制御処理装置54の処理機能により、本実施形態における標準偏差算出手段が構成されることとなる。
【0146】
そして、制御処理装置54は、上記のように算出した各波長帯域ごとの平均スペクトル強度μ(i)及び標準偏差σ(i)を基に、波長帯域(バンド番号i=1~n)ごとに、該波長帯域のスペクトル強度V(i)を判定するための閾値L(i)〔上限閾値La(i)及び下限閾値Lb(i)〕を算出する。本実施形態では、下記式(1)を基に閾値L(i)を算出する。
【0147】
L(i)=μ(i)±K×σ(i) ・・・(1)
但し、
L(i):バンド番号iの波長帯域に係る閾値、
K :係数、
μ(i):バンド番号iの波長帯域に係る平均スペクトル強度、
σ(i):バンド番号iの波長帯域に係るスペクトル強度の標準偏差。
【0148】
つまり、上限閾値La(i)及び下限閾値Lb(i)は、それぞれ下記式(2),(3)で表すことができる。
【0149】
La(i)=μ(i)+K×σ(i) ・・・(2)
Lb(i)=μ(i)-K×σ(i) ・・・(3)
従って、上記閾値L(i)を算出する処理が本実施形態における閾値算出工程に相当し、これを実行する制御処理装置54の処理機能により、本実施形態における閾値算出手段が構成されることとなる。
【0150】
続いて、制御処理装置54は、波長帯域(バンド番号i=1~n)ごとに、上記のように算出した上限閾値La(i)が最大許容値Dmaxよりも小さいか否かを判定する。尚、最大許容値Dmaxは、製品として許容できる限界値、すなわち上記許容範囲D(i)として設定できる最大値であり、設定データ記憶装置76に予め設定されている。
【0151】
ここで、上限閾値La(i)が最大許容値Dmaxよりも小さい場合には、設定データ記憶装置76に現在設定されている現在のポケット番号カウンタ値Pに対応するスペクトル許容範囲テーブルにおける、バンド番号iの波長帯域に係る許容範囲D(i)の上限値として上限閾値La(i)を設定する。
【0152】
一方、上限閾値La(i)が最大許容値Dmax以上である場合には、上記許容範囲D(i)の上限値として最大許容値Dmaxを設定する。
【0153】
同様に、制御処理装置54は、波長帯域(バンド番号i=1~n)ごとに、上記のように算出した下限閾値Lb(i)が最小許容値Dminよりも大きいか否かを判定する。尚、最小許容値Dminは、製品として許容できる限界値、すなわち上記許容範囲D(i)として設定できる最小値であり、設定データ記憶装置76に予め設定されている。
【0154】
ここで、下限閾値Lb(i)が最小許容値Dminよりも大きい場合には、設定データ記憶装置76に現在設定されている現在のポケット番号カウンタ値Pに対応するスペクトル許容範囲テーブルにおける、バンド番号iの波長帯域に係る許容範囲D(i)の下限値として下限閾値Lb(i)を設定する。
【0155】
一方、下限閾値Lb(i)が最小許容値Dmin以下である場合には、上記許容範囲D(i)の下限値として最小許容値Dminを設定する。
【0156】
このように、現在のポケット番号カウンタ値Pに対応するスペクトル許容範囲テーブルにおける各波長帯域の許容範囲D(i)の上限値及び下限値の再設定が終了すると、制御処理装置54は、ステップS44へ移行する。
【0157】
ここで、各波長帯域の許容範囲D(i)の上限値及び下限値を再設定する一連の処理が本実施形態における変更工程に相当し、これを実行する制御処理装置54の処理機能により、本実施形態における変更手段が構成されることとなる。
【0158】
その後、制御処理装置54は、ステップS44において現在のポケット番号カウンタ値Pに「1」を加えた後、ステップS45へ移行し、新たに設定したポケット番号カウンタ値Pが最大値Pmaxを超えているか否かを判定する。
【0159】
ここで否定判定された場合には、再度、ステップS43へ戻り、上記一連の処理を実行する。一方、肯定判定された場合には、ポケット番号[1]~[10]すべてのポケット部2に係るスペクトル許容範囲テーブルが再設定されたとみなし、本テーブル変更処理を終了する。
【0160】
そして、制御処理装置54は、テーブル変更処理の終了後、ステップS22の良品処理を終了し、検査ルーチンを終了する。
【0161】
以上詳述したように、本実施形態によれば、分光分析を利用した異品種混入検査等を連続して実行しつつ、直近の所定数m個の良品のPTPシート1に係る分光分析結果をフィードバックして、錠剤5のスペクトル測定データの良否判定を行うためのスペクトル許容範囲テーブル〔波長帯域ごとのスペクトル強度V(i)の許容範囲D(i)〕を随時変更していくことができる。
【0162】
これにより、検査装置22や錠剤5の経時的変化等に対応して、検査時において、より適したスペクトル許容範囲テーブルで、検査に係る錠剤5のスペクトル測定データの良否判定を行うことができる。
【0163】
結果として、予め許容範囲D(i)の幅を比較的大きく設定しておく必要もなく、錠剤5に係る良品錯誤率の上昇を抑えつつ、不良品錯誤率の上昇を抑えることが可能となり、検査精度の向上を図ることができる。
【0164】
さらに、本実施形態では、各波長帯域ごとにスペクトル強度V(i)の許容範囲D(i)が設定されると共に、該許容範囲D(i)を各波長帯域ごとに変更可能な構成となっている。これにより、検査装置22や錠剤5の経時的変化等に対し、各波長帯域ごとに、より細かく対応することが可能となり、さらなる検査精度の向上を図ることができる。
【0165】
また、本実施形態では、1つのPTPシート1(検査範囲)内の10個のポケット部2の位置にそれぞれ対応して1つずつスペクトル許容範囲テーブルが設定され、これらを基に、各ポケット部2に係る錠剤5の良否判定が行われる構成となっている。
【0166】
加えて、良品データ記憶部においては、各ポケット部2に係る錠剤5のスペクトル測定データが個別に記憶され、上記テーブル変更処理においては、平均スペクトル強度μ(i)の算出処理、標準偏差σ(i)の算出処理、閾値L(i)の算出処理、許容範囲D(i)の再設定処理などが、各ポケット部2ごとに個別に実行される構成となっている。
【0167】
結果として、照明装置52から照射される近赤外光の輝度ムラや、撮像素子65を構成する複数の受光素子64の特性に基づく感度のばらつき等の影響を低減することができると共に、検査装置22や錠剤5の経時的変化等に対し、各ポケット部2ごとに、より細かく対応することが可能となり、さらなる検査精度の向上を図ることができる。
【0168】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0169】
(a)上記実施形態では、内容物が錠剤5である場合について具体化しているが、内容物の種別、形状等については特に限定されるものではなく、例えばカプセル剤やサプリメント、食品等であってもよい。また、錠剤には素錠や糖衣錠などの固形製剤が含まれる。
【0170】
(b)容器フィルム3やカバーフィルム4の材料は、上記実施形態に限定されるものではなく、他の材質のものを採用してもよい。例えば容器フィルム3がアルミラミネートフィルムなど、アルミニウムを主材料とした金属材料により形成された構成としてもよい。
【0171】
(c)PTPシート1におけるポケット部2の配列や個数に関しては、上記実施形態に何ら限定されるものではない。例えば3列12個のポケット部を有するタイプをはじめ、様々な配列、個数からなるPTPシートを採用することができる。
【0172】
(d)上記実施形態では、ポケット部2に錠剤5が充填された後工程かつ容器フィルム3に対しカバーフィルム4が取着される前工程において、検査装置22による異品種混入検査が行われる構成となっている。
【0173】
これに限らず、例えば容器フィルム3に対しカバーフィルム4が取着された後工程かつPTPフィルム6からPTPシート1が打抜かれる前工程において、PTPフィルム6の容器フィルム3側からポケット部2越しに、検査装置22による異品種混入検査が行われる構成としてもよい。
【0174】
また、PTPフィルム6からPTPシート1が打抜かれた後工程において、コンベア39によって搬送されているPTPシート1の容器フィルム3側からポケット部2越しに、検査装置22による異品種混入検査が行われる構成としてもよい。
【0175】
この際、検査装置22がPTP包装機10内に設けられた構成(インライン)に代えて、PTP包装機10とは別に、オフラインでPTPシート1を検査する装置として検査装置22を備えた構成としてもよい。また、かかる場合に、PTPシート1を搬送可能な搬送手段を検査装置22に備えた構成としてもよい。
【0176】
また、ポケット部2に錠剤5が充填される前工程において、検査装置22による異品種混入検査が行われる構成としてもよい。例えば錠剤充填装置21に錠剤5を投入する前段階に検査を行う構成としてもよい。つまり、PTP包装機10とは別に、オフラインで錠剤5を検査する装置として検査装置22を備えた構成としてもよい。
【0177】
尚、オフラインで検査を行う場合には、PTPシート1や錠剤5を連続搬送せず、停止した状態で検査を行う構成としてもよい。但し、PTPシート1、又は、PTPフィルム6若しくは容器フィルム3を連続搬送しつつ、インラインで検査を実行した方が生産性の向上を図る上では好ましい。
【0178】
近年、PTPシート1の製造分野などにおいては、生産速度の高速化に伴い、異品種混入検査など各種検査の高速化が求められている。例えばPTP包装機10上で検査を行う場合には、1秒当たり100個以上の錠剤5を検査することが求められる場合もある。
【0179】
(e)照明装置52及び撮像装置53の構成は上記実施形態に限定されるものではない。例えば二次元分光器62に代えて、分光手段として反射型回折格子やプリズム等を採用した構成としてもよい。
【0180】
(f)上記実施形態では、ステップS32のスペクトル判定処理において、錠剤5のスペクトル測定データに含まれるn個(例えばn=100バンド)すべての波長帯域のスペクトル強度V(i)がそれぞれ許容範囲D(i)内にあるか否かを判定することにより、該錠剤5について良否判定を行う構成となっている。
【0181】
これに限らず、錠剤5のスペクトル測定データに含まれるn個(例えばn=100バンド)の波長帯域のうちのN個(Nは1以上の自然数。例えばN=30バンド)の特定波長帯域におけるスペクトル強度がそれぞれ許容範囲内にあるか否かを判定することにより、該錠剤5について良否判定を行う構成としてもよい。
【0182】
(g)上記実施形態では、ステップS43のテーブル再設定処理において、m個の良品の錠剤5に係るスペクトル測定データ(良品番号j=1~m)を基に、各波長帯域(バンド番号i=1~n)ごとのスペクトル強度V(i,j)の平均値である平均スペクトル強度μ(i)を算出すると共に、各波長帯域ごとのスペクトル強度V(i,j)の標準偏差σ(i)を算出し、各波長帯域ごとの平均スペクトル強度μ(i)及び標準偏差σ(i)を基に、各波長帯域ごとに、該波長帯域のスペクトル強度V(i)を判定するための閾値L(i)〔上限閾値La(i)及び下限閾値Lb(i)〕を算出する構成となっている。
【0183】
閾値L(i)を算出する方法は、これに限定されるものではない。少なくとも各波長帯域ごとの平均スペクトル強度μ(i)に基づいて算出する構成となっていればよい。
【0184】
例えば平均スペクトル強度μ(i)より所定値だけ大きな値を上限閾値La(i)として算出し、平均スペクトル強度μ(i)より所定値だけ小さい値を下限閾値Lb(i)として算出する構成としてもよい。
【0185】
(h)上記実施形態では、ステップS43のテーブル再設定処理において、閾値L(i)として、上限閾値La(i)及び下限閾値Lb(i)を算出し、各波長帯域の許容範囲D(i)の上限値及び下限値の再設定を行う構成となっている。
【0186】
これに限らず、上限閾値La(i)又は下限閾値Lb(i)の一方を算出し、各波長帯域の許容範囲D(i)の上限値又は下限値の再設定のみを行う構成としてもよい。また、許容範囲D(i)が1つの閾値により定まる構成としてもよい。
【0187】
(i)上記実施形態では、許容範囲D(i)の上限値がとり得る限界値として最大許容値Dmaxが設定されると共に、許容範囲D(i)の下限値がとり得る限界値として最小許容値Dminが設定され、ステップS43のテーブル再設定処理を実行するにあたり、最大許容値Dmaxを超える上限値や、最小許容値Dmin未満の下限値が設定されない構成となっている。
【0188】
これに限らず、限界値を設けず、平均スペクトル強度μ(i)及び標準偏差σ(i)を基に算出した閾値L(i)〔上限閾値La(i)及び下限閾値Lb(i)〕がそのまま許容範囲D(i)の上限値及び下限値として設定される構成としてもよい。
【0189】
(j)ステップS43のテーブル再設定処理を実行するにあたり、演算結果記憶装置75の良品データ記憶部に時系列に記憶された直近のm個の良品の錠剤5に係るスペクトル測定データのうち、所定のスペクトル測定データ又は時系列的に連続した所定のスペクトル測定データ群よりも、時系列的により直近のスペクトル測定データ又は時系列的に連続しかつ時系列的により直近のスペクトル測定データ群の反映される割合が大きくなるよう、所定の重み付け処理を実行する構成としてもよい。かかる処理を実行する機能により本実施形態における重み付け手段が構成されることとなる。
【0190】
(k)上記実施形態では、1つのPTPシート1(検査範囲)内の10個のポケット部2の位置にそれぞれ対応して1つずつスペクトル許容範囲テーブルが設定され、これらを基に各ポケット部2に係る錠剤5の良否判定が個別に行われる構成となっている。
【0191】
これに限らず、1つのPTPシート1(検査範囲)内の10個のポケット部2すべての位置に共通するスペクトル許容範囲テーブルが1つだけ設定され、これを基に各ポケット部2に係る錠剤5の良否判定が行われる構成としてもよい。
【0192】
そして、上記テーブル変更処理においては、10個のポケット部2すべての錠剤5のスペクトル測定データを用いて、平均スペクトル強度μ(i)、標準偏差σ(i)、閾値L(i)を算出し、許容範囲D(i)の再設定処理を行う構成としてもよい。
【0193】
(l)上記実施形態では、特に言及しなかったが、検査開始当初において、演算結果記憶装置75の良品データ記憶部に未だ所定数m個の良品データが記憶されていない場合には、上記テーブル変更処理を実行するにあたり、不足分として、検査開始前に取得した良品データを代用する構成としてもよい。
【0194】
また、演算結果記憶装置75の良品データ記憶部に所定数m個の良品データが記憶されるまでは、上記テーブル変更処理を実行せず、検査開始前に設定したスペクトル許容範囲テーブルを基に良否判定を行う構成としてもよい。
【符号の説明】
【0195】
1…PTPシート、2…ポケット部、3…容器フィルム、4…カバーフィルム、5…錠剤、10…PTP包装機、22…検査装置、52…照明装置、53…撮像装置、54…制御処理装置、62…二次元分光器、63…カメラ、64…受光素子、65…撮像素子、74…画像データ記憶装置、76…設定データ記憶装置、H…分光スペクトル。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15