(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】植物栽培システム
(51)【国際特許分類】
A01G 7/02 20060101AFI20241004BHJP
A01G 9/18 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
A01G7/02
A01G9/18
(21)【出願番号】P 2019082902
(22)【出願日】2019-04-24
【審査請求日】2021-06-22
【審判番号】
【審判請求日】2022-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】北野 智一
(72)【発明者】
【氏名】増澤 佳浩
(72)【発明者】
【氏名】廣野 美佳
(72)【発明者】
【氏名】藤井 泰志
【合議体】
【審判長】居島 一仁
【審判官】古屋野 浩志
【審判官】西田 秀彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-10633(JP,A)
【文献】特開2005-34805(JP,A)
【文献】特公昭36-4565(JP,B1)
【文献】特公昭36-19968(JP,B1)
【文献】特開2016-73263(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 9/00- 9/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライアイスが、栽培植物の近傍で、かつ、平面視において前記栽培植物と重複する位置で、且つ、前記栽培植物の上部の近傍及び前記栽培植物の根本部の近傍に配置され、前記ドライアイスが昇華することにより生じた炭酸ガスが前記栽培植物の上部の近傍及び根本部の近傍に供給され、
前記ドライアイスの重量または体積から前記炭酸ガスの生成量を算出する植物栽培システム。
【請求項2】
前記ドライアイスを収容すると共にガス透過性を有する第1収容部を備える請求項1に記載の植物栽培システム。
【請求項3】
前記第1収容部を前記栽培植物の近傍まで移動させる収容部移動装置を備える請求項2に記載の植物栽培システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物栽培システムに関する。
【背景技術】
【0002】
植物栽培システムとして、例えば、特許文献1に記載のものが既に知られている。この植物栽培システムにおいては、植物体の葉の投影面積に基づいて、栽培植物に対して灌水が実行される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1においては、栽培植物への炭酸ガスの供給については記載されていない。尚、炭酸ガスとは、気体の二酸化炭素である。
【0005】
ここで、特許文献1に記載の植物栽培システムにおいて、園芸施設内に栽培植物を配置し、プロパンガスやメタンガス等の燃料を燃焼させることによって炭酸ガスを発生させると共に、発生した炭酸ガスを園芸施設内に供給する構成が考えられる。
【0006】
しかしながら、この構成では、燃料を燃焼させる際に熱が発生する。そのため、夏季等、園芸施設内を冷房する必要がある場合には、燃焼により発生した熱を排出する必要がある。これにより、ランニングコストが増大しがちである。
【0007】
さらに、この構成では、栽培植物への炭酸ガスの供給量を把握することが困難である。
【0008】
本発明の目的は、燃料の燃焼熱を発生させることなく、且つ、栽培植物を冷却しながら栽培植物へ炭酸ガスを供給できると共に、栽培植物への炭酸ガスの供給量を把握しやすい植物栽培システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の特徴は、ライアイスが、栽培植物の近傍で、かつ、平面視において前記栽培植物と重複する位置で、且つ、前記栽培植物の上部の近傍及び前記栽培植物の根本部の近傍に配置され、前記ドライアイスが昇華することにより生じた炭酸ガスが前記栽培植物の上部の近傍及び根本部の近傍に供給され、前記ドライアイスの重量または体積から前記炭酸ガスの生成量を算出する。
【0010】
本発明であれば、燃料を燃焼させることなく、炭酸ガスを栽培植物に供給できる。さらに、ドライアイスによって、栽培植物を冷却することができる。従って、燃料の燃焼熱を発生させることなく、且つ、栽培植物を冷却しながら栽培植物へ炭酸ガスを供給できる。
【0011】
しかも、本発明であれば、昇華する前のドライアイスの重量や体積等から、生じる炭酸ガスの量を容易に算出することができる。従って、栽培植物への炭酸ガスの供給量を把握しやすい。
【0012】
即ち、本発明であれば、燃料の燃焼熱を発生させることなく、且つ、栽培植物を冷却しながら栽培植物へ炭酸ガスを供給できると共に、栽培植物への炭酸ガスの供給量を把握しやすい植物栽培システムを実現できる。
【0013】
【0014】
また、ドライアイスによって、栽培植物を効果的に冷却することができる。しかも、ドライアイスが昇華することにより生じた炭酸ガスを、栽培植物へ効果的に供給できる。
【0015】
【0016】
また、ドライアイスが、確実に栽培植物の近傍に配置されやすい。従って、ドライアイスによって、栽培植物を確実に冷却しやすい。しかも、ドライアイスが昇華することにより生じた炭酸ガスを、栽培植物へ確実に供給しやすい。
さらに、本発明において、前記ドライアイスの重量または体積から前記炭酸ガスの生成量を算出すると好適である。
【0017】
さらに、本発明において、前記ドライアイスは、前記栽培植物の上部の近傍に配置されると好適である。
【0018】
炭酸ガスは、空気より重い。そのため、ドライアイスが昇華することにより生じた炭酸ガスは、下方へ移動しやすい。従って、ドライアイスが栽培植物の近傍に配置される場合、生じた炭酸ガスは、栽培植物のうち、ドライアイスよりも下側に位置する部分に触れやすい。
【0019】
ここで、上記の構成によれば、ドライアイスが栽培植物の下部の近傍に配置される場合に比べて、栽培植物のうち、ドライアイスよりも下側に位置する部分の割合が多くなる。
即ち、上記の構成によれば、ドライアイスが栽培植物の下部の近傍に配置される場合に比べて、栽培植物のうち、炭酸ガスの触れやすい部分の割合が多くなる。
【0020】
従って、上記の構成によれば、生じた炭酸ガスを栽培植物へ効果的に供給しやすい。
【0021】
さらに、本発明において、前記ドライアイスは、前記栽培植物の根本部の近傍に配置されると好適である。
【0022】
この構成によれば、ドライアイスによって、栽培植物の根本部を効果的に冷却しやすい。これにより、栽培植物の成長を促進しやすい。
【0023】
さらに、本発明において、前記ドライアイスを収容すると共にガス透過性を有する第1収容部を備えると好適である。
【0024】
ドライアイスは、徐々に昇華することに伴い、形状が変化していく。そのため、ドライアイスを地面等に直接配置する場合、形状の変化により、転がって移動する可能性がある。これにより、ドライアイスが適切な位置から移動してしまう可能性がある。
【0025】
ここで、上記の構成によれば、ドライアイスは第1収容部に収容される。これにより、ドライアイスが適切な位置から移動してしまう事態を回避できる。
【0026】
しかも、上記の構成によれば、第1収容部はガス透過性を有している。これにより、生じた炭酸ガスを栽培植物へ確実に供給しやすい。
【0027】
さらに、本発明において、前記第1収容部を前記栽培植物の近傍まで移動させる収容部移動装置を備えると好適である。
【0028】
この構成によれば、第1収容部へドライアイスを入れる作業を、栽培植物から遠く離れた位置において行うことが可能となる。
【0029】
さらに、本発明において、前記ドライアイスを収容する第2収容部と、前記第2収容部から延びる配管と、を備え、前記配管において、前記栽培植物の近傍部位に、開口が形成されていると好適である。
【0030】
この構成によれば、第2収容部の内部空間において、ドライアイスが昇華することにより炭酸ガスが生じる。この炭酸ガスは、配管を通って、開口から放出される。そして、開口は、栽培植物の近傍部位に形成されている。従って、開口から放出された炭酸ガスは、栽培植物へ確実に供給されやすい。
【0031】
即ち、この構成によれば、ドライアイスが昇華することにより生じた炭酸ガスを、栽培植物へ確実に供給しやすい。
【0032】
さらに、本発明において、前記第2収容部及び前記配管の内部空間は、前記開口のみにおいて、前記第2収容部及び前記配管の外部空間と連通していると好適である。
【0033】
この構成によれば、第2収容部及び配管の内部空間が炭酸ガスで満たされている場合、ドライアイスが昇華することにより生じた炭酸ガスの量と同じ量の炭酸ガスが、開口から押し出されることとなる。
【0034】
従って、この構成によれば、栽培植物への炭酸ガスの供給量を把握しやすい。
【0035】
さらに、本発明において、前記開口を開閉する開閉弁を備えると好適である。
【0036】
この構成によれば、開閉弁によって、栽培植物への炭酸ガスの供給量を調節することが可能となる。
さらに、本発明において、前記開口は、前記栽培植物の成長点の近傍に形成されていると好適である。
さらに、本発明において、前記開口は、前記栽培植物の葉の近傍に形成されていると好適である。
さらに、本発明において、前記開口は、前記栽培植物の果実の近傍に形成されていると好適である。
【0037】
さらに、本発明において、前記栽培植物は、複数の植物個体を含んでおり、前記複数の植物個体を所定の環状経路に沿って移動させる植物移動装置を備え、前記複数の植物個体は、前記環状経路に沿って並んでおり、前記環状経路における所定位置に位置する前記植物個体に前記ドライアイスが供給されると好適である。
【0038】
この構成によれば、一定の位置においてドライアイスを供給し続けることにより、全ての植物個体にドライアイスを供給することができる。従って、ドライアイスを供給する作業を効率的に行うことが可能となる。
【0039】
さらに、本発明において、前記栽培植物は、複数の植物個体を含んでおり、前記複数の植物個体を、所定の環状経路に沿って移動させる植物移動装置を備え、前記複数の植物個体は、前記環状経路に沿って並んでおり、前記環状経路における所定位置に位置する前記植物個体に前記炭酸ガスが供給されると好適である。
【0040】
この構成によれば、一定の位置において炭酸ガスを供給し続けることにより、全ての植物個体に炭酸ガスを供給することができる。従って、炭酸ガスを供給する作業を効率的に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図3】栽培植物とドライアイスとの位置関係を示す平面図である。
【
図4】第1別実施形態における植物栽培システムの平面図である。
【
図6】第1別実施形態における制御装置に関する構成を示すブロック図である。
【
図7】第1別実施形態における晴天時における各開閉弁の開閉制御の一例を示す図である。
【
図8】第2別実施形態における植物栽培システムの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明を実施するための形態について、図面に基づき説明する。尚、以下の説明においては、特に断りがない限り、
図1、
図3、
図4、
図8に示す矢印Nの方向を「北」、矢印Sの方向を「南」として、
図1から
図5、
図8に示す矢印Eの方向を「東」、矢印Wの方向を「西」とする。また、
図2及び
図5に示す矢印Uの方向を「上」、矢印Dの方向を「下」とする。
【0043】
〔植物栽培システムの全体構成〕
図1に示すように、植物栽培システムSYは、園芸施設1を備えている。園芸施設1には、栽培植物Pを植えるための複数の畝Aが設けられている。複数の畝Aは、それぞれ、南北方向に延びている。また、複数の畝Aは、東西方向に並んでいる。
【0044】
複数の畝Aの間は栽培植物Pの管理者が通行可能な通路となっている。園芸施設1は、例えばビニールハウスであったり、太陽光利用型の植物工場であったりする。
【0045】
複数の畝Aは、例えば無孔性親水性フィルムで構成される。そして、複数の畝Aに、栽培植物Pとして、例えばトマトが植えられる。本実施形態において、畝Aの個数は4つである。しかしながら、本発明はこれに限定されず、畝Aの個数は4つ以外のいかなる個数であっても良い。
【0046】
また、栽培植物Pは、複数の植物個体Qを含んでいる。本実施形態においては、各畝Aに、それぞれ、5つの植物個体Qが植えられている。しかしながら、本発明はこれに限定されず、各畝Aに植えられる植物個体Qの数は、5つ以外のいかなる数であっても良い。
【0047】
図1に示すように、園芸施設1の北部には、出入口1aが設けられている。
【0048】
〔ドライアイスの供給に関する構成〕
図1及び
図2に示すように、植物栽培システムSYは、収容部移動装置11、コンベア装置12、ドライアイス貯留部13、複数の第1収容部21を備えている。収容部移動装置11、コンベア装置12、ドライアイス貯留部13、複数の第1収容部21は、何れも、園芸施設1の内側に配置されている。
【0049】
〔第1収容部に関する構成〕
図1及び
図2に示すように、収容部移動装置11は、環状のレール状に構成されている。また、収容部移動装置11は、園芸施設1の天井部1bから吊り下げられている。そして、収容部移動装置11は、複数の第1収容部21を吊り下げている。尚、各第1収容部21は、ワイヤー14を介して吊り下げられている。また、各第1収容部21は、栽培植物Pよりも高い位置に配置される。
【0050】
本実施形態において、第1収容部21の設けられる個数は、植物個体Qの数と同数である。即ち、本実施形態においては、20個の第1収容部21が設けられている。しかしながら、本発明はこれに限定されず、第1収容部21の設けられる個数は20個以外のいかなる個数であっても良い。
【0051】
図2及び
図3に示すように、第1収容部21は、箱状に形成されており、ドライアイス10を収容可能である。また、第1収容部21は、多数の小さな通気孔21aを有している。これにより、第1収容部21は、ガス透過性を有している。即ち、第1収容部21に収容されているドライアイス10が昇華することにより生じた炭酸ガスは、通気孔21aを通過し、第1収容部21の外部に排出される。
【0052】
このように、植物栽培システムSYは、ドライアイス10を収容すると共にガス透過性を有する第1収容部21を備える。
【0053】
また、ドライアイス貯留部13は、ドライアイス10を貯留する。
図1に示すように、ドライアイス貯留部13は、第1供給部13aを有している。ドライアイス貯留部13は、第1供給部13aからドライアイス10を排出することができる。また、
図1に矢印で示すように、収容部移動装置11は、各第1収容部21を移動させることができる。
【0054】
収容部移動装置11が、第1収容部21を第1供給部13aの近傍位置に移動させると共に、第1供給部13aからドライアイス10が排出されることにより、第1収容部21にドライアイス10が投入されることとなる。これにより、第1収容部21にドライアイス10が収容される。尚、このときの第1収容部21の位置が、
図1において仮想線により示されている。
【0055】
そして、収容部移動装置11は、ドライアイス10の収容された第1収容部21を、栽培植物Pの近傍まで移動させるように構成されている。これにより、
図1から
図3に示すように、ドライアイス10が栽培植物Pの近傍に配置される。
【0056】
以上の構成により、第1収容部21に収容されているドライアイス10は、
図2に示すように、栽培植物Pの上部の近傍に配置されることとなる。また、第1収容部21に収容されているドライアイス10は、
図3に示すように、平面視において栽培植物Pと重複する位置に配置されることとなる。
【0057】
そして、第1収容部21に収容されているドライアイス10が昇華することにより生じた炭酸ガスが栽培植物Pに供給される。その結果、炭酸ガスが栽培植物Pの近傍に供給される。
【0058】
このように、植物栽培システムSYは、第1収容部21を栽培植物Pの近傍まで移動させる収容部移動装置11を備えている。
【0059】
〔コンベア装置に関する構成〕
図1に示すように、コンベア装置12は環状であり、各畝Aの近傍を通る状態で設けられている。また、コンベア装置12は、ドライアイス10を搬送可能に構成されている。
図1においては、コンベア装置12による搬送方向が、矢印で示されている。
【0060】
また、ドライアイス貯留部13は、第2供給部13bを有している。ドライアイス貯留部13は、第2供給部13bから、コンベア装置12上へドライアイス10を排出することができる。
【0061】
そして、第2供給部13bから排出されたドライアイス10は、コンベア装置12により搬送される。
【0062】
また、
図1及び
図2に示すように、コンベア装置12の近傍には、複数のガイド部15及び押し出し装置16が設けられている。
【0063】
各ガイド部15は、コンベア装置12と畝Aの上面とに亘って設けられた板状の部材である。また、各ガイド部15は、各ガイド部15におけるコンベア装置12に近い部位ほど高い位置に位置するように、傾斜した状態で配置されている。そして、各ガイド部15は、各植物個体Qに対応して設けられている。
【0064】
図2に示すように、押し出し装置16は、コンベア装置12の上方に設けられている。
そして、押し出し装置16は、コンベア装置12により搬送されているドライアイス10を、ガイド部15上へ押し出すことができるように構成されている。ガイド部15上へ押し出されたドライアイス10は、ガイド部15の傾斜に沿って転がり、植物個体Qの根本部の近傍へ移動する。これにより、ドライアイス10は、栽培植物Pの根本部の近傍に配置される。
【0065】
そして、栽培植物Pの根本部の近傍に配置されたドライアイス10が昇華することにより生じた炭酸ガスが、栽培植物Pに供給される。その結果、炭酸ガスが栽培植物Pの近傍に供給される。
【0066】
尚、
図3に示すように、栽培植物Pの根本部の近傍に配置されたドライアイス10は、平面視において栽培植物Pと重複している。
【0067】
以上で説明した構成によれば、燃料を燃焼させることなく、炭酸ガスを栽培植物Pに供給できる。さらに、ドライアイス10によって、栽培植物Pを冷却することができる。従って、燃料の燃焼熱を発生させることなく、且つ、栽培植物Pを冷却しながら栽培植物Pへ炭酸ガスを供給できる。
【0068】
しかも、以上で説明した構成であれば、昇華する前のドライアイス10の重量や体積等から、生じる炭酸ガスの量を容易に算出することができる。従って、栽培植物Pへの炭酸ガスの供給量を把握しやすい。
【0069】
即ち、以上で説明した構成であれば、燃料の燃焼熱を発生させることなく、且つ、栽培植物Pを冷却しながら栽培植物Pへ炭酸ガスを供給できると共に、栽培植物Pへの炭酸ガスの供給量を把握しやすい植物栽培システムSYを実現できる。
【0070】
〔第1別実施形態〕
上記実施形態においては、植物栽培システムSYは、収容部移動装置11、コンベア装置12、ドライアイス貯留部13、複数の第1収容部21を備えている。
【0071】
しかしながら、本発明はこれに限定されない。以下では、本発明に係る第1別実施形態について、上記実施形態とは異なる点を中心に説明する。以下で説明している部分以外の構成は、上記実施形態と同様である。また、上記実施形態と同様の構成については、同じ符号を付している。
【0072】
図4には、本発明に係る第1別実施形態における植物栽培システムSYが示されている。
図4に示すように、本発明に係る第1別実施形態においては、収容部移動装置11、コンベア装置12、ドライアイス貯留部13、複数の第1収容部21に代えて、第2収容部22及び配管3が設けられている。
【0073】
第2収容部22は、箱状に形成されており、複数のドライアイス10を収容する。
【0074】
配管3は、第2収容部22から延びている。また、配管3は、主配管31と、複数の分岐配管32と、を有している。
【0075】
主配管31の一端は、第2収容部22の西側端部に接続している。また、主配管31の他端は、第2収容部22の東側端部に接続している。そして、主配管31は、各畝Aの近傍を通る状態で設けられている。
【0076】
第2収容部22に収容されたドライアイス10が昇華することにより生じた炭酸ガスは、第2収容部22の内部空間から、配管3の内部空間へ排出される。即ち、第2収容部22は、炭酸ガスを排出する。
【0077】
図4及び
図5に示すように、各分岐配管32は、主配管31から分岐して延びる状態で設けられている。また、各分岐配管32は、各植物個体Qに対応して設けられている。
【0078】
また、
図5に示すように、各分岐配管32は、それぞれ、3つの開口32aを有している。各開口32aは、各分岐配管32における栽培植物Pの近傍部位に形成されている。
そして、配管3の内部空間における炭酸ガスは、各開口32aから放出される。これにより、炭酸ガスが栽培植物Pの近傍に供給されることとなる。
【0079】
詳述すると、各分岐配管32において、3つの開口32aのうちの最も上に位置する開口32aは、栽培植物Pの成長点Paの近傍に設けられている。従って、この開口32aから放出された炭酸ガスは、栽培植物Pの成長点Paの近傍に供給される。
【0080】
また、各分岐配管32において、3つの開口32aのうちの上から2つ目に位置する開口32aは、栽培植物Pの葉Pbの近傍に設けられている。従って、この開口32aから放出された炭酸ガスは、栽培植物Pの葉Pbの近傍に供給される。
【0081】
また、各分岐配管32において、3つの開口32aのうちの最も下に位置する開口32aは、栽培植物Pの果実Pcの近傍に設けられている。従って、この開口32aから放出された炭酸ガスは、栽培植物Pの果実Pcの近傍に供給される。
【0082】
このように、配管3において、栽培植物Pの近傍部位に、開口32aが形成されている。
【0083】
また、第2収容部22のうち、配管3との接続部位以外の部分は、密閉状態に形成されている。即ち、第2収容部22及び配管3の内部空間は、開口32aのみにおいて、第2収容部22及び配管3の外部空間と連通している。
【0084】
また、
図5及び
図6に示すように、この第1別実施形態において、植物栽培システムSYは、複数の開閉弁4、気温測定部51、湿度測定部52、カメラ53、照度測定部54、濃度測定部55、制御装置6を備えている。
【0085】
制御装置6は、飽差算出部61、指標値算出部62、供給判定部63、開閉弁制御部64を有している。
【0086】
各開閉弁4は、それぞれ、各開口32aに対応して設けられている。そして、各開閉弁4は、各開口32aを開閉する。
【0087】
各開閉弁4が開状態である場合、各開口32aから炭酸ガスが放出される。これにより、炭酸ガスが栽培植物Pの近傍に供給される。
【0088】
また、各開閉弁4が閉状態となると、各開口32aからの炭酸ガスの放出は停止する。
これにより、栽培植物Pの近傍への炭酸ガスの供給が停止する。
【0089】
気温測定部51は、園芸施設1内の気温を測定する。気温測定部51による測定結果は、飽差算出部61及び供給判定部63へ送られる。
【0090】
湿度測定部52は、園芸施設1内の湿度を測定する。尚、湿度測定部52により測定される湿度は、相対湿度である。湿度測定部52による測定結果は、飽差算出部61へ送られる。
【0091】
カメラ53は、栽培植物Pの葉Pbを撮像する。カメラ53により取得された撮像画像は、指標値算出部62へ送られる。
【0092】
照度測定部54は、園芸施設1内の照度を測定する。照度測定部54による測定結果は、供給判定部63へ送られる。
【0093】
濃度測定部55は、園芸施設1内の炭酸ガスの濃度を測定する。濃度測定部55による測定結果は、供給判定部63へ送られる。
【0094】
飽差算出部61は、気温測定部51により測定された気温と、湿度測定部52により測定された湿度と、に基づいて飽差を算出する。飽差算出部61による算出結果は、供給判定部63へ送られる。
【0095】
指標値算出部62は、カメラ53により取得された撮像画像に基づいて、水不足指標値を算出する。尚、水不足指標値とは、栽培植物Pにおける水分の不足度合いを示す値である。指標値算出部62による算出結果は、供給判定部63へ送られる。
【0096】
尚、カメラ53により取得された撮像画像における葉Pbのしおれ度合いが大きいほど、指標値算出部62により算出される水不足指標値は大きくなる。
【0097】
供給判定部63は、気温測定部51による測定結果と、照度測定部54による測定結果と、濃度測定部55による測定結果と、飽差算出部61による算出結果と、指標値算出部62による算出結果と、に基づいて、炭酸ガスを栽培植物Pの近傍に供給するべきであるか否かを判定する。
【0098】
より具体的には、供給判定部63は、以下の条件C1~C6が全て満たされている場合、炭酸ガスを栽培植物Pの近傍に供給するべきであると判定する。また、以下の条件C1~C6のうちの一部または全てが満たされていない場合、炭酸ガスを栽培植物Pの近傍に供給するべきでないと判定する。
【0099】
条件C1:照度測定部54により測定された照度が所定の第1閾値S1(
図7参照)以上である。
【0100】
条件C2:気温測定部51により測定された気温が所定の第2閾値以上である。
【0101】
条件C3:飽差算出部61により算出された飽差が所定範囲内の値である。
【0102】
条件C4:指標値算出部62により算出された水不足指標値が所定の第3閾値以下である。
【0103】
条件C5:濃度測定部55により算出された炭酸ガスの濃度が所定の第4閾値以下である。
【0104】
条件C6:時刻が午前6時から正午までの間である。
【0105】
供給判定部63は、炭酸ガスを栽培植物Pの近傍に供給するべきであると判定した場合、所定の信号を、開閉弁制御部64へ送る。開閉弁制御部64は、この信号を受け取ると、各開閉弁4を開状態に制御する。
【0106】
また、供給判定部63は、炭酸ガスを栽培植物Pの近傍に供給するべきでないと判定した場合、所定の信号を、開閉弁制御部64へ送る。開閉弁制御部64は、この信号を受け取ると、各開閉弁4を閉状態に制御する。
【0107】
以上の構成により、例えば、条件C2~C5が満たされている状態において、照度測定部54により測定された照度が所定の第1閾値S1に達した場合、炭酸ガスの供給が開始される。
【0108】
また、例えば、条件C1、C3~C6が満たされている状態において、気温測定部51により測定された気温が所定の第2閾値に達した場合、炭酸ガスの供給が開始される。
【0109】
また、例えば、条件C1、C2、C4~C6が満たされている状態において、飽差算出部61により算出された飽差が所定範囲内の値である場合、炭酸ガスが栽培植物Pの近傍に供給される。
【0110】
また、例えば、条件C1~C3、C5、C6が満たされている状態において、指標値算出部62により算出された水不足指標値が所定の第3閾値以下である場合、炭酸ガスが栽培植物Pの近傍に供給される。
【0111】
尚、この第1別実施形態において、第1閾値S1は、光補償点に等しい照度である。しかしながら、本発明はこれに限定されず、第1閾値S1は、光補償点より小さな照度であっても良いし、光補償点より大きな照度であっても良い。
【0112】
図7では、晴天時における各開閉弁4の開閉制御の一例が示されている。以下では、
図7に示す例について説明する。尚、
図7に示す例においては、条件C2~C4が常に満たされているものとする。また、日の出の時刻が午前6時であり、日の入りの時刻が午後6時(18時)であるものとする。
【0113】
まず、午前6時より、照度が0(ゼロ)から上昇し始める。そして、時刻t1に、照度が第1閾値S1に達する。これにより、条件C1が満たされる。
【0114】
また、時刻t1においては、炭酸ガスの濃度が第4閾値以下であるものとする。即ち、このとき、条件C5は満たされている。
【0115】
また、
図7に示すように、時刻t1は、午前6時から正午までの間である。即ち、このとき、条件C6は満たされている。
【0116】
従って、時刻t1において、条件C1~C6の全てが満たされることとなる。これにより、時刻t1において、各開閉弁4は開状態に制御される。
【0117】
次に、時刻t2において、炭酸ガスの濃度が第4閾値を超えるものとする。即ち、時刻t2において、条件C5が満たされない状態となる。これにより、時刻t2において、各開閉弁4は閉状態に制御される。
【0118】
次に、時刻t3において、炭酸ガスの濃度が第4閾値以下になるものとする。即ち、時刻t3において、条件C5が満たされた状態となる。また、このとき、条件C1~C4、C6は満たされている。これにより、時刻t3において、各開閉弁4は開状態に制御される。
【0119】
次に、時刻t4において、炭酸ガスの濃度が第4閾値を超えるものとする。即ち、時刻t4において、条件C5が満たされない状態となる。これにより、時刻t4において、各開閉弁4は閉状態に制御される。
【0120】
次に、時刻t5において、炭酸ガスの濃度が第4閾値以下になるものとする。即ち、時刻t5において、条件C5が満たされた状態となる。また、このとき、条件C1~C4、C6は満たされている。これにより、時刻t5において、各開閉弁4は開状態に制御される。
【0121】
そして、時刻が正午を過ぎると、条件C6が満たされない状態となる。そのため、正午を過ぎると、各開閉弁4は閉状態に制御される。
【0122】
以上で説明したように、
図7に示す例では、照度が第1閾値S1に達した時点から、正午までの間、各開閉弁4の開閉が繰り返される。そして、正午を過ぎると、各開閉弁4は閉状態に制御される。
【0123】
尚、
図7には、曇天時の照度の推移が、仮想線により示されている。
図7に示すように、曇天時には、午前6時から正午までの間、照度は第1閾値S1を下回っている。そのため、曇天時には、条件C1~C6が全て満たされることはない。従って、曇天時には、各開閉弁4は、一日を通して閉状態に制御される。
【0124】
〔第2別実施形態〕
上記実施形態において、各植物個体Qは、畝Aに植えられている。
【0125】
しかしながら、本発明はこれに限定されない。以下では、本発明に係る第2別実施形態について、上記実施形態とは異なる点を中心に説明する。以下で説明している部分以外の構成は、上記実施形態と同様である。また、上記実施形態と同様の構成については、同じ符号を付している。
【0126】
図8には、本発明に係る第2別実施形態における植物栽培システムSYが示されている。
図8に示すように、本発明に係る第2別実施形態において、植物栽培システムSYは、複数の栽培ベッド7、供給装置8、植物移動装置9を備えている。そして、各植物個体Qは、それぞれ、各栽培ベッド7に植えられている。
【0127】
各栽培ベッド7は、移動可能に構成されている。そして、植物移動装置9は、各栽培ベッド7を、所定の環状経路Tに沿って移動させる。これにより、植物移動装置9は、複数の植物個体Qを環状経路Tに沿って移動させる。
【0128】
尚、この第2別実施形態において、植物移動装置9は、各栽培ベッド7を、一定速度で継続的に移動させる。
【0129】
また、各栽培ベッド7は、環状経路Tに沿って並んでいる。即ち、複数の植物個体Qは、環状経路Tに沿って並んでいる。
【0130】
供給装置8は、環状経路Tにおける所定位置Bに位置する植物個体Qにドライアイス10を供給するように構成されている。
【0131】
即ち、この第2別実施形態においては、環状経路Tにおける所定位置Bに位置する植物個体Qにドライアイス10が供給される。また、各植物個体Qは、順番に、所定位置Bを通過する。そして、各植物個体Qは、環状経路Tを一周する毎に、所定位置Bを一度通過することとなる。これにより、各植物個体Qに、一定周期毎にドライアイス10を供給することができる。
【0132】
図8に示すように、ドライアイス10が供給された植物個体Qは、環状経路Tに沿って移動する。これに伴い、供給されたドライアイス10は、徐々に昇華する。そして、供給されたドライアイス10の昇華は、植物個体Qが所定位置Bに到達する直前に完了する。
これにより、所定位置Bに到達する直前の植物個体Qの近傍には、ドライアイス10が配置されていない。
【0133】
即ち、植物個体Qに供給されたドライアイス10の昇華に要する時間と、植物個体Qが環状経路Tに沿って一周するのに要する時間と、が略等しくなるように、供給装置8によるドライアイス10の供給量、及び、植物移動装置9による各栽培ベッド7の移動速度が設定されている。
【0134】
尚、本発明はこれに限定されず、供給装置8により、ドライアイス10に代えて、ドライアイス10が昇華することにより生じた炭酸ガスが供給されても良い。この場合、環状経路Tにおける所定位置Bに位置する植物個体Qに炭酸ガスが供給される。
【0135】
尚、以上に記載した各実施形態は一例に過ぎないのであり、本発明はこれに限定されるものではなく、適宜変更が可能である。
【0136】
〔その他の実施形態〕
(1)東西南北の方角については、上記実施形態に限定されず、適宜変更が可能である。例えば、各畝Aの延びる方向は東西方向でも良い。
【0137】
(2)条件C6において規定される期間は、上記第1別実施形態に限定されず、適宜変更が可能である。
【0138】
(3)供給判定部63は、条件C1~C6のうちの少なくとも一部が満たされている場合に、炭酸ガスを栽培植物Pの近傍に供給するべきであると判定するように構成されていても良い。
【0139】
(4)供給判定部63による判定基準は、適宜変更が可能である。例えば、供給判定部63は、条件C1のみに基づいて、炭酸ガスを栽培植物Pの近傍に供給するべきであるか否かを判定するように構成されていても良いし、条件C1~C6以外の条件に基づいて、炭酸ガスを栽培植物Pの近傍に供給するべきであるか否かを判定するように構成されていても良い。
【0140】
(5)栽培植物Pに含まれる植物個体Qは、一つのみであっても良い。
【0141】
(6)上記第1別実施形態において、開閉弁4が設けられていなくても良い。
【0142】
(7)上記第1別実施形態において、第2収容部22及び配管3の内部空間は、開口32a以外の部分において、第2収容部22及び配管3の外部空間と連通していても良い。
例えば、第2収容部22の上部が開放されていても良い。
【0143】
(8)上記第1別実施形態において、開口32aが、栽培植物Pから遠く離れた位置に設けられていても良い。
【0144】
(9)収容部移動装置11は設けられていなくても良い。
【0145】
(10)第1収容部21は設けられていなくても良い。
【0146】
(11)ドライアイス10が栽培植物Pの根本部の近傍に配置されていなくても良い。
【0147】
(12)ドライアイス10が栽培植物Pの上部の近傍に配置されていなくても良い。
【0148】
(13)ドライアイス10は、平面視において栽培植物Pと重複しない位置に配置されていても良い。
【0149】
(14)ドライアイス10が栽培植物Pから遠く離れた位置に配置されていても良い。
【0150】
(15)上記第1別実施形態において、気温測定部51は設けられていなくても良い。
【0151】
(16)上記第1別実施形態において、湿度測定部52は設けられていなくても良い。
【0152】
(17)上記第1別実施形態において、カメラ53は設けられていなくても良い。
【0153】
(18)上記第1別実施形態において、照度測定部54は設けられていなくても良い。
【0154】
(19)上記第1別実施形態において、濃度測定部55は設けられていなくても良い。
【0155】
(20)上記第1別実施形態において、飽差算出部61は設けられていなくても良い。
【0156】
(21)上記第1別実施形態において、指標値算出部62は設けられていなくても良い。
【0157】
(22)上記第1別実施形態において、供給判定部63は設けられていなくても良い。
【0158】
(23)上記第1別実施形態において、開閉弁制御部64は設けられていなくても良い。
【0159】
(24)上記第1別実施形態において、成長点Paの近傍の開口32aは設けられていなくても良い。即ち、炭酸ガスが、成長点Paの近傍に供給されない構成であっても良い。
【0160】
(25)上記第1別実施形態において、葉Pbの近傍の開口32aは設けられていなくても良い。即ち、炭酸ガスが、葉Pbの近傍に供給されない構成であっても良い。
【0161】
(26)上記第1別実施形態において、果実Pcの近傍の開口32aは設けられていなくても良い。即ち、炭酸ガスが、果実Pcの近傍に供給されない構成であっても良い。
【0162】
(27)炭酸ガスが、栽培植物Pから遠く離れた位置に供給される構成であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0163】
本発明は、植物栽培システムに利用可能である。
【符号の説明】
【0164】
3 配管
4 開閉弁
9 植物移動装置
10 ドライアイス
11 収容部移動装置
21 第1収容部
22 第2収容部
32a 開口
B 所定位置
P 栽培植物
Q 植物個体
SY 植物栽培システム
T 環状経路