(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】EUV薄膜を引っ張るための誘起応力
(51)【国際特許分類】
G03F 1/62 20120101AFI20241004BHJP
C23C 16/26 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
G03F1/62
C23C16/26
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019170478
(22)【出願日】2019-09-19
【審査請求日】2022-09-15
(32)【優先日】2018-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514156563
【氏名又は名称】アイメック・ヴェーゼットウェー
【氏名又は名称原語表記】IMEC VZW
(73)【特許権者】
【識別番号】599098493
【氏名又は名称】カトリーケ・ユニフェルシテイト・ルーヴァン
【氏名又は名称原語表記】Katholieke Universiteit Leuven
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100112911
【氏名又は名称】中野 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】マリナ・マリアノ・ジュスト
(72)【発明者】
【氏名】マリーナ・ティンメルマンス
(72)【発明者】
【氏名】イヴァン・ポランティエ
(72)【発明者】
【氏名】セドリック・ハイヘバールト
(72)【発明者】
【氏名】エミリー・ギャラガー
【審査官】右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-194838(JP,A)
【文献】特表2018-531426(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0118455(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0038676(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 1/62
C23C 16/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォトマスク(210)を保護するための方法(100)であって、この方法は、
フォトマスク(210)を提供する工程(110)と、
縁取り部(220)を提供する工程(120)と、
縁取り部(220)の上に少なくとも2つの電気コンタクト(230)を堆積する工程(130)と、
膜(240)が自立部分を含むように、カーボンナノチューブを含む膜(240)を縁取り部(220)の上に搭載する工程(140)と、を含み、
搭載する工程(140)および堆積する工程(130)の後に、電気コンタクト(230)が膜(240)と接触し、
さらに、少なくとも
2組の電気コンタクト(230)の間にバイアスを印加することにより、
膜の温度が30℃より低い温度に制限されるように、膜(240)の自立部分を通る電流を誘起して、電流供給方向に膜を引っ張る工程(150)と、
フォトマスク(210)の上で、膜の自立部分を備えたフォトマスク(210)の少なくとも片側の上に縁取り部(220)を搭載する工程(170)と、
を含む方法。
【請求項2】
フォトマスク(210)を保護するための方法(100)であって、この方法は、
フォトマスク(210)を提供する工程(110)と、
縁取り部(220)を提供する工程(120)と、
膜(240)が自立部分を含むように、カーボンナノチューブを含む膜(240)を縁取り部(220)の上に搭載する工程(140)と、
膜の自立部分の中で磁場を変化させることにより、
膜の温度が30℃より低い温度に制限されるように、膜(240)の自立部分を通る電流を誘起して、電流供給方向に膜を引っ張る工程(150)と、
フォトマスク(210)の上で、膜の自立部分を備えたフォトマスク(210)の少なくとも片側の上に縁取り部(220)を搭載する工程(170)と、
を含む方法。
【請求項3】
1つの電流パルスが、膜(240)の自立部分を通って誘起される(150)請求項1
または2に記載の方法(100)。
【請求項4】
予め決められた所定のサイクルを有する電流パルス列が、膜(240)の自立部分を通って誘起される請求項1
または2に記載の方法(100)。
【請求項5】
提供された(220)縁取り部(220)は、シリコンの縁取り部である請求項1~
4のいずれかに記載の方法(100)。
【請求項6】
シリコン系材料を提供し、そしてシリコン系材料を部分的に除去することにより、縁取り部(220)が提供される請求項
5に記載の方法(100)。
【請求項7】
電気コンタクト(230)は、チタンシード層を堆積し、続いてパラジウムを堆積することにより得られる請求項1に記載の方法(100)。
【請求項8】
膜(240)は、カーボンナノチューブの乾式転写により、または濾紙の上に真空濾過を用いて溶液から抽出することにより準備される請求項1~
7のいずれかに記載の方法(100)。
【請求項9】
膜の堆積後に、膜の上にイソプロピルアルコールを提供する工程を含む請求項1~
8のいずれかに記載の方法(100)。
【請求項10】
膜(240)の上にコーティングを提供する工程(160)を含む請求項1~
9のいずれかに記載の方法(100)。
【請求項11】
膜(240)の一部を覆う部分的なコーティングが、膜(240)の上に提供される請求項
10に記載の方法(100)。
【請求項12】
膜(240)の全体を覆う完全なコーティングが、膜(240)の上に提供される請求項
10に記載の方法(100)。
【請求項13】
カーボンナノチューブを含む搭載された膜により保護されたフォトマスクの上で、リソグラフィを適用する工程を含む請求項1~
12のいずれかに記載の方法(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトリソグラフィの分野に関する。特に、フォトマスクの上で自立(free-standing)した薄膜(pellicle)を提供することにより、フォトマスクを保護するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リソグラフィにおいて、パターニングされた表面マスクの上への粒子の落下を防止するために薄膜が必要となる。粒子は、貯蔵、取り扱い中、およびリソグラフィ露光中にフォトマスクの上に落下するかもしれない。リソグラフィの露光ツール中でフォトマスクが結像する場合、殆どの粒子がウエハパターンエラーを形成しないように、パターニングされたフォトマスク表面の上に搭載された薄膜は、商店の外に粒子を浮かせておく。薄膜は、好適には、光路を変更せず、撮像に影響する透明膜を含むことが好ましい。
【0003】
最先端のリソグラフィツールは、中心が13.5nmの極紫外(EUV)光を用いてフォトマスクを露光する。この波長は、全ての材料に容易に吸収されるため、自立するのに十分に強く、かつ薄膜応用のために十分に透明な薄い膜を開発するのは困難である。
【0004】
カーボンナノチューブ(CNT)は強力な候補と考えられている。粒子に対して保護すると共に、露光光に対して最低限の変化しかもたらさないからである。CNT膜は、13.5nmの露光波長で、約96%以上の透過率を繰り返し達成でき、他の計測波長(190~500nm)の波長においても透過率を維持でき、本質的に頑強である。薄膜についての懸念は、薄膜を破壊しない程度で、かつ撓みを避けるのに十分な張力となるような膜応力のバランスである。CNT系の膜では、CNT-CNT結合の緩和が、膜形成後および時間経過後の双方で観察され、膜の緩みとなる。この緩みは、薄膜の機械的完全性と光学的一貫性を含む。薄膜は、撓みの結果、スキャナ、取り扱いシステム、またはマスクキャリアの構成に接触するかも知れない。また、光と薄膜との間に相互関係が有るとすれ、光は所定の角度で薄膜を通過するため、相互関係は撓みのために変化するかも知れない。
【0005】
それゆえに、EUVに対して良好な透過性を有し、撓みが防止できる膜を含む薄膜、およびリソグラフィプロセスでそれらの膜を形成する方法が必要となる。
【発明の概要】
【0006】
本発明の具体例の目的は、フォトマスクを保護するための良好な薄膜を得る方法を提供することである。
【0007】
上記目的は、本発明にかかる方法および装置により達成される。
【0008】
本発明の具体例は、フォトマスクを保護するための方法に関する。この方法は、
フォトマスクを提供する工程、
縁取り部を提供する工程、
縁取り部の上に少なくとも2つの電気コンタクトを堆積する工程、
膜が自立部分を含むように、カーボンナノチューブを含む膜を縁取り部の上に搭載する工程、を含み、
搭載する工程および堆積する工程の後に、電気コンタクトが膜と接触し、
さらに、少なくとも1組の電気コンタクトにバイアスを印加することにより、膜の自立部分を通る電流を誘起する工程、
フォトマスクの上に、膜の自立部分を備えたフォトマスクの少なくとも片側の上に縁取り部を搭載する工程、
を含む。
【0009】
薄膜条件に応じることが、追加の材料、複雑なツール、または困難な手続き無しに達成できることは、本発明の具体例の優位点である(薄膜は、膜と縁取り部とを含む構造である)。本発明の具体例では、薄膜を形成する自立したCNTが、電流を流すことにより変化し、薄膜を形成する縁取り部の上に載置される引っ張りCNT膜を作製する。この手続きは、必要に応じて複数回繰り返しても良く、スキャナの外で行っても良く、レティクルの上にすでに載置された薄膜に適用しても良い。
【0010】
引っ張りは、必要に応じて、電流を通すことによりCNT系の膜の上に誘起される。これは、入手可能な機器を用いて達成しても良い。電流の適用は、粒子を加えるリスク無しに、クリーンルームの中で行える。
【0011】
電流発生器は、直接電流を誘起さするために1組の電気コンタクトを用いて接続しても良く、または電位差が、膜の自立部分を通る電流を誘起するために適用されても良い。
【0012】
電流は、また、磁場を変化させることにより誘起しても良い。本発明の具体例にかかる代わりの方法は、それゆえに以下の工程:
フォトマスクを提供する工程、
縁取り部を提供する工程、
膜が自立部分を含むように、カーボンナノチューブを含む膜を縁取り部の上に搭載する工程、
膜の自立部分の中で磁場を変化させることにより、膜の自立部分を通る電流を誘起する工程、
フォトマスクの上で、膜の自立部分を備えたフォトマスクの少なくとも片側の上に縁取り部を搭載する工程、
を含む。
【0013】
この方法は、同じ問題について代わりの解決を提供し、フォトマスクの上に、膜の自立部分を提供することによりフォトマスクを保護することを目的とする。
【0014】
引っ張りは、膜の自立部分を通る電流を誘起することにより、CNT系膜の上で誘起される。
【0015】
膜の撓みおよびしわは、膜の自立部分を通る電流を誘起することにより、低減または完全に除去できる。
【0016】
本発明の具体例では、少なくとも2組の電気コンタクトにバイアスを与えることで、電流が誘起される。
【0017】
少なくとも2つのコンタクトペアに電圧を与えた場合、電流のより良い分布が得られることは、本発明の具体例の優位点である。膜の自立部分に与えられる電場が均一なほど、膜の引っ張り強度はより均一になる。
【0018】
本発明の具体例では、1つの電流パルスが、膜の自立部分を通って誘起される。これは、少なくとも1組の電気コンタクトにバイアスを与えるために、少なくとも1組の電気コンタクトにバイアスのパルスを与えることにより、または膜の自立部分に磁場パルスを与えることにより、達成しても良い。
【0019】
本発明の具体例では、所定の決められたサイクルを伴う電流パルス列が、膜の自立部分を通って誘起される。これは、少なくとも1組の電気コンタクトにバイアスを与えるために、少なくとも1組のコンタクトにパルス列のバイアスを与えることにより、または膜の自立部分に磁場パルス列を与えることにより、達成されても良い。
【0020】
本発明の具体例では、与えられた縁取り部はシリコンの縁取り部である。
【0021】
本発明の具体例では、縁取り部は、シリコン系材料を提供し、シリコン系材料を部分的に除去することにより、提供される。
【0022】
本発明の具体例では、チタンシード層を堆積し、続いてパラジウムを堆積することにより、電気コンタクトが得られる。
【0023】
本発明の具体例では、膜は、好適には、カーボンナノチューブの乾式転写により準備される。
【0024】
カーボンナノチューブは、浮遊触媒化学気相堆積法により成長しても良く、または濾紙の上に真空濾過を用いて溶液から抽出しても良い。例えば濾紙の上に堆積する浮遊エアゾールCVDリアクタ、膜の中に引き出されるCVDフォレスト、CNT溶液の真空濾過、中間基板上へのスピンコーティングのような、当業者に知られた方法である。本発明の具体例では、膜を搭載する工程は、濾紙の上にカーボンナノチューブを配置する工程、またはカーボンナノチューブフォレストからシートを引き抜く工程を含み、膜は、縁取り部に濾紙を押しつけることによりまたはシートを引き抜くことにより搭載される。
【0025】
固定触媒CVDにより成長した垂直方向のCNTフォレストからCNTシートを引き抜く工程は、より整列した膜を形成することは、本発明の具体例の優位点である。
【0026】
本発明の具体例では、この方法は、膜の堆積後に、膜の上にイソプロピールアルコールを提供する工程を含む。
【0027】
増加した高密度化、および/または増加した接着が、膜の上にイソプロピールアルコール(蒸気、スプレイ、または湿式)を提供することにより得られることは、本発明の具体例の優位点である。
【0028】
本発明の具体例では、この方法は、膜の上にコーティングを提供する工程を含む。
【0029】
ハロゲンラジカルの雰囲気中でのCNT膜の寿命が延びることは、本発明の具体例の優位点である。ハロゲンラジカル中で有限のエッチング速度を有しても、CNTは形成するのが高価でないために有限の寿命を有する薄膜を有することができる。
【0030】
本発明の具体例では、1またはそれ以上の層が、CNT膜の上を被覆しても良い。本発明の具体例では、コーティングは、膜の両側に形成されても良い。
【0031】
コーティングは、電圧または電流を供給する前または後に提供しても良い。
【0032】
本発明の具体例では、部分的なコーティングを膜の上に提供しても良い。
【0033】
コーティング材料の量を減らすことにより、結果のCNT膜のEUV伝達が改良される。
【0034】
本発明の具体例では、部分的なコーティングが堆積により、またはナノカーボンを含む膜中の欠陥の飾りにより、部分的なコーティングが提供されても良い。
【0035】
本発明の具体例では、完全なコーティングが、膜の上に提供されても良い。
【0036】
本発明の具体例かかる制御された完全なコーティングのために、CNT膜の寿命が(部分的なコーティングに比較して)より延びることは、本発明の具体例の優位点である。
【0037】
本発明の具体例では、コンフォーマルなコーティングが提供される。本発明の具体例では、完全なコーティングが、物理気相堆積、または原子層堆積、または化学気相堆積、または電気化学堆積を用いて堆積させても良い。
【0038】
本発明の具体例では、この方法は、カーボンナノチューブを含む搭載された膜により保護されたフォトマスクの上で、リソグラフィを適用する工程を含む。
【0039】
特定の好ましい本発明の形態は、独立請求項および従属請求項と共に述べられる。従属請求項の特徴は、必要に応じて、単に請求項に述べられた通りではなく、独立請求項の特徴と組み合わせても良い。
【0040】
それらおよび本発明の他の形態は、以降に記載された具体例から明らかであり、この具体例を参照すると明瞭であろう。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】本発明の具体例にかかる例示の方法のフローチャートを示す。
【
図2】本発明の具体例にかかる方法を用いて得られたフォトマスクの上の薄膜の側面の模式図を示す。
【
図3】縁取り部の上に搭載されたCNT膜の模式的な平面図であり、CNT膜は縁取り部により輪郭が描かれた四角形の自立部分を有し、電気コンタクトは本発明の具体例にかかる縁取り部の上に存在する。
【
図4】本発明の具体例にかかる、縁取り部の上のコンタクトを備えた、縁取り部の上に搭載された矩形の自立部分を有するCNT膜の模式的な平面図を示す。
【
図5】本発明の具体例にかかる1組の電気コンタクトがバイアスされるバイアス手順を示す。
【
図6】本発明の具体例にかかる2組の電気コンタクトがバイアスされるバイアス手順を示す。
【
図7】膜の自立部分を通って電流が与えられる前の膜の走査電子顕微鏡(SEM)像を示す。
【
図8】本発明の具体例にかかる膜の自立部分を通って電流が与えられた後の膜の走査電子顕微鏡(SEM)像を示す。
【0042】
請求項の参照符号は、その範囲を限定するものと解釈すべきではない。異なる図面において、同一の参照符号は、同一または類似の要素を示す。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本発明は、特定の具体例および特定の図面を参照して記載されるが、本発明はそれらに限定されるものではなく、請求の範囲によってのみ限定されるべきである。記載された図面は、単に模式的であり、限定的ではない。図面において、記載の目的のために、要素の大きさは誇張されても良く、縮尺通りに描かれなくても良い。寸法と、相対寸法は、発明の実施について、実際の縮尺に対応しない。
【0044】
記載や請求の範囲中の、第1、第2等の用語は、類似の要素の間で区別するために使用され、時間的、空間的な、順位や他の方法による順序を表す必要はない。そのように使用される用語は、適当な状況下で入替え可能であり、ここに記載された発明の具体例は、ここに記載や図示されたものと異なる順序によっても操作できることを理解すべきである。
【0045】
また、記載や請求の範囲中の、上、下等の用語は、記載目的のために使用され、相対的な位置を示すものではない。そのように使用される用語は、適当な状況下で入替え可能であり、ここに記載された発明の具体例は、ここに記載や図示されたものと異なる位置でも操作できることを理解すべきである。
【0046】
請求の範囲で使用される「含む(comprising)」の用語は、それ以降に挙げられた手段に限定して解釈すべきではなく、他の要素や工程を排除しない。このように、言及された特徴、数字、工程、または成分は、その通りに解釈され、1またはそれ以上の他の特徴、数字、工程、または成分、またはこれらの組み合わせの存在または追加を排除してはならない。このように、「手段AおよびBを含むデバイス」の表現の範囲は、構成要素AとBのみを含むデバイスに限定されるべきではない。本発明では、単にデバイスに関連した構成要素がAとBであることを意味する。
【0047】
この明細書を通じて参照される「一の具体例(one embodiment)」または「ある具体例(an embodiment)」は、この具体例に関係して記載された特定の長所、構造、または特徴が本発明の少なくとも1つの具体例に含まれることを意味する。このように、この明細書を通して多くの場所の「一の具体例(one embodiment)」または「ある具体例(an embodiment)」の語句の表現は、同じ具体例を表す必要はなく、表しても構わない。更に、特定の長所、構造、または特徴は、この記載から当業者に明らかなように、1またはそれ以上の具体例中で適当な方法で組み合わせることができる。
【0048】
同様に、本発明の例示の記載中において、能率的に開示し、多くの発明の形態の1またはそれ以上の理解を助ける目的で、本発明の多くの長所は、時には1つの具体例、図面、またはその記載中にまとめられることを評価すべきである。しかしながら、この開示の方法は、請求される発明がそれぞれの請求項に記載されたものより多くの特徴を必要とすることを意図して表されていると解釈すべきではない。むしろ、以下の請求項が表すように、発明の態様は、1つの記載された具体例の全ての長所より少なくなる。このように詳細な説明に続く請求の範囲は、これにより詳細な説明中に明確に含まれ、それぞれの請求項は、この発明の別々の具体例としてそれ自身で成立する。
【0049】
更に、ここで記載された幾つかの具体例は幾つかの特徴で、他の具体例に含まれる以外の特徴を含み、異なった具体例の長所の組み合わせは、本発明の範囲に入ることを意味し、当業者に理解されるように異なった具体例を形成する。例えば、以下の請求の範囲では、請求された具体例のいくつかは、他の組み合わせにおいても使用することができる。
【0050】
ここで与えられる記載において、多くの特別な細部が示される。しかしながら、本発明の具体例はそれらの特別な細部無しに実施できることを理解すべきである。他の例では、公知の方法、構造、および技術は、この記載の理解をわかりにくくしないために、詳細には示されていない。
【0051】
本発明の具体例で膜を参照する場合、この参照はフォトマスクを保護するカバーについて行われる。この膜は、また、「ダストカバー」として参照されても良い。
【0052】
本発明の具体例で薄膜を参照する場合、参照は、露光用のスキャナで使用される、搭載された膜と縁取り部について行われてもよい。
【0053】
本発明の具体例は、フォトマスク210を保護するために方法100に関する。この方法は、
フォトマスク210を提供する工程110、
縁取り部220を提供する工程120、
縁取り部220の上に少なくとも2つの電気コンタクト230を堆積する工程130、
膜240が自立部分を含むように、カーボンナノチューブを含む膜240を縁取り部220の上に搭載する工程140、を含み、
搭載工程140および堆積工程130の後に、電気コンタクト230が膜240と接触し、
さらに、少なくとも1組の電気コンタクト230にバイアスを印加することにより、膜の自立部分を通る電流を得る工程150、
フォトマスク210の上に、膜の自立部分を備えたフォトマスク210の少なくとも片側の上に縁取り部220を搭載する工程170、
を含む。
【0054】
縁取り部220および膜240は、フォトマスク210に取り付けられる。これは、直接または追加のスペーサフレームの使用を介して行われる。縁取り部は、フォトマスクの両側の上に搭載されても良い。
【0055】
この工程は、上述の通りの順番である必要はない。少なくとも2つの電気コンタクト230を堆積する工程130は、例えば、カーボンナノチューブを含む膜240を搭載する工程140の前または後に行っても良い。フォトマスクは、例えば、縁取り部120をフォトマスク210の上に搭載する工程170の直後に提供しても良い。
【0056】
電流は、膜の自立部分の中で磁場を変化させることで誘起しても良い。この場合、電気コンタクトは厳密には必要とならない。磁場の変化は、膜中でエディ電流を誘起しても良い。膜中の磁場の変化は、例えば、交流電流の変圧器、または操作中に膜の自立部分で磁場の変化が形成されるように配置された電磁石により形成されても良い。
【0057】
膜の自立部分の中の引っ張りは、膜の自立部分を通って電流が得られるように、1つのコンタクトペアにバイアスを印加することにより増加する。これは、例えば、スキャナ条件、例えば、2Paの圧力差で、最大0.7mmの偏差、に適合した、引っ張られたCNTのメッシュとなる。本発明の具体例では、膨張テスト測定(bulge test measurement)が、膜の引っ張りを適格化するために行われても良い。膨張テスタは、例えば、膜の最大偏差の適格化のために使用できる。膜上の引っ張りは、異なる型の機器を使用してテストしても良い。
【0058】
本発明の具体例にかかる例示の方法のフローチャートが、
図1に示される。
図2は、本発明の具体例にかかる方法を用いて得られたカーボンナノチューブを含む膜を用いて保護されたフォトマスクの模式図である。
【0059】
例示の方法では、縁取り部が形成される120。この縁取り部220は、例えばSiウエハから得られても良い。
【0060】
縁取り部220は、例えば、基板の上に、例えばSiNをマスク材料として堆積した基板材料(例えば、シリコンウエハ)を提供し、基板材料を部分的に除去することにより形成しても良い。例えば、30nmと50nmの間マスク材料(例えば、SiN)を、基板の上に堆積しても良い。部分的な除去が、レーザカッティングまたはパターニング/エッチングプロセス(例えば、KOH20%、70℃、8時間のエッチング、およびDI水/IPAを用いた洗浄)により達成しても良い。他の縁取り部220を用いても良い。縁取り部は、例えば高温セラミックを含んでも良い。
【0061】
本発明の具体例では、少なくとも2つの電気コンタクト230(パッドともいう)が、縁取り部220の上に堆積される。これは、カーボンナノチューブを含む膜240の搭載工程140の前または後に行われても良い。パッド230は、異なった寸法を有しても良く、異なった導電性材料から構成されても良く、および所望の効果によりばらばらに形成しても良い。本発明の具体例では、電気コンタクト230は、例えば、チタン接着層の堆積工程130の後に、パラジウムの堆積工程を行うことにより、金属コンタクトを形成することにより得ても良い。例えば、50nmのパラジウムコンタクトを成長した上に、0.3~2nmのチタン層を堆積しても良い(Ti/Pd)。本発明の具体例では、電気コンタクトの材料は、好適には低抵抗が得られるような、多くの理由により選択される。例えば、パラジウム(Pd)、金(Au)、およびプラチナ(Pt)の全ては低抵抗である。
【0062】
カーボンナノチューブ(CNT)を含む膜は、そのモフォロジが作製プロセスに依存する自立膜240の中に組み立てられる。
【0063】
浮遊触媒化学気相堆積(CVD)法で成長したCNTの湿式転写、または溶液中に分散したCNTの真空濾過とその後のフィルタ膜の除去、のいずれかにより準備された場合に、膜240中のCNTは任意に配置される。
【0064】
固定触媒CVDにより成長させた垂直に配置されたCNTフォレストからCNTシートを引き出す工程は、1または多層に配置される膜中に、より整列したCNTを形成する。
【0065】
具体例では、CNT膜は、支持縁取り部220の上にそれらを配置することにより搭載される、自立膜240を形成する。例えば、濾紙(エアゾール収集法)または引抜かれたシート(垂直フォレスト成長)は、接着のために縁取り部に押しつけても良い。
【0066】
任意的に、IPA(気体、スプレイ、または湿式)が、高密度化および/または接着のために適用されても良い。縁取り部は、SiN、TiN、または、例えばCNTまたはパッドの化学的安定性の改良、応力のバランス、または接着性の改良のような、多くの理由のために堆積された他の材料の薄層(5~50nm)を有しても良い。
【0067】
自立膜は、さらに処理され、即ち、洗浄、コーティング、または引き延ばすことができる。
【0068】
ナノスケールで支配的なCNTの間のファンデワールス力のために、CNTは膜を形成する。時間と共に、2つの懸念がある、垂れ下がりが観察される。即ち、スキャナ中での圧力変動中の、印刷の品質と反射のリスクの間で妥協する多くの光学的な影響である。
【0069】
それゆえに、本発明の具体例では、電流は、縁取り部220で搭載された膜240を通るように強制される。この電流を与える工程は、巨視的な大きさ視覚に現れる変化となり、垂れ下がりおよびしわを大きく低減または除去さえする。
【0070】
本発明の具体例では、少なくとも2つ、通常は4つまたはそれ以上の電気コンタクト230(パッドともいう)は、縁取り部220の上に配置され、膜を通って電流を誘起するために、電流が直接与えられ、または電圧差が与えられる。本発明の具体例では、パッド230は、縁取り部に沿って異なる位置に分布させても良い。パッド230は、(例えば長さ/幅の比が、縁取り部の寸法と、1つのパッドを他のパッドから分離する必要性とによってのみ制限されるような)細長いコンタクトでも良い。パッド230は、少なくとも2つのパッド230にバイアスを印加することにより膜を通って電流を供給した場合に、膜を横切って所望の引っ張りを誘起するように形成される。
【0071】
縁取り部220は、フォトマスク210の上に搭載され170、膜240の自立部分がフォトマスクの上となる。
図2の例では、結果の積層の模式的な図面が示される。ここでは、パターンがその上に模式的に描かれたフォトマスク210が示される。フォトマスクの上には、フォトマスク210に取り付けられたその縁取り部220を有し、フォトマスク210の上に膜240を有する薄膜が存在する。この模式図には描かないが、薄膜は、フォトマスクの両側に存在しても良い。この模式図では、電気コンタクト230も示される。それらの電気コンタクト230は、縁取り部の上に描かれる。
【0072】
異なる大きさの縁取り部の上のパッド230の例が、
図3および
図4に、それぞれその形状が示される。
図3は、縁取り部220のエッジ上に堆積した4つのパッド230を有するテストサンプル用の、外寸が3×3cm
2の縁取り部220を示す。縁取り部220は、外側の四角形と内側の四角形との間に配置される。(パターンにより示される)CNT膜240は、中央250において自立し、縁取り部220の上で支持される。
図4は、より大きなサンプルの模式図であり、シリコン系縁取り部220のエッジ毎に2つずつ、8つの堆積されたパッドを有する、外寸が120×150cm
2のフルサイズ薄膜と、より互換性がある。縁取り部220は、外側の矩形と内側の矩形との間に配置される。CNT膜240は、中央250で自立し、エッジで縁取り部220の上に乗る。
【0073】
本発明の具体例では、縁取り部は、開いた容積を有する。この縁取り部の上に膜を提供することにより、この容積の上の膜は、自立した膜となる。膜の自立領域の形状は、この領域を取り囲む縁取り部により規定される。
図3および
図4の例では、四角形または矩形の膜の自立部分が示される。しかしながら、この発明は、これに限定されるものではない。例えば円形のような他の形状も可能である。それらは、縁取り部220で規定される。
【0074】
本発明の具体例では、1組またはそれ以上の組の電気コンタクト230の上にバイアスが印加される。
図3の例において、もしコンタクト2からコンタクト4に電流が供給された場合、電流供給処理は、2-4の方向で膜がより引っ張られるように膜を変形させるであろう。もし電流が2-1に供給された場合、コンタクト2とコンタクト1との間の限定された部分でのみ、電流を供給した結果としてより引っ張りとなるであろう。1つの経路に沿って1つの電流が誘起されても良く、または複数のコンタクトパッドの間で複数の電流が誘起されても良い。例えば、第1の電圧がコンタクト1とコンタクト3との上に供給され、同時に、第2の電圧がコンタクト2とコンタクト4との上に供給されても良い。そうすることにより、第1の電流がノード1とノード3との間で得られ、第2の電流がノード2とノード4との間で得られる。第1の電圧は、第2の電圧と異なっても良く、追加的に第1の電流は第2の電流と異なっても良い。
【0075】
本発明の具体例では、膜の変化を測定するために、膜240の電気抵抗がファンデアパウ(van der Pauw)法を用いて測定される。プロセスの量を定めるために、抵抗が引っ張り前、引っ張り中、および引っ張り後に測定される。サンプル手続きは、抵抗を測定する工程と、続いて2つのコンタクトの間(
図5のI24/V24)に電流または電圧を与える工程とを含んでも良い。そうする間、抵抗が測定され、膜は、まっすぐでしわのない外見のために視覚的に検査される。引っ張りは、(例えば、膜に圧力を与えながら、偏差の値を測定する膨張テストで間接的に)測定されても良い。もし追加の引っ張りが必要であれば、追加の1組のコンタクトが、電流または電圧を与えるために使用しても良い。例えば、I13/V13である。この手続きは、抵抗を測定し、膜の上の平坦でしわのない引っ張りをチェックしながら、異なるコンタクトの組(I12/V12、I34/V34、I41/V41、I23/V23、I24/V24またはI13/V13)の上で繰り返されても良い。異なる組の電気コンタクト230へのバイアスの印加が、均一な歪みが達成され、膜が平坦でしわがなく、抵抗が一定の値に飽和するまで繰り返されても良い。ゴールは、膜を横切って均一に引っ張り応力を戦略的に誘起するために電流を使用することである。
【0076】
上述のように、本発明の具体例では、膜の抵抗は、ファンデアパウ法を用いて変化が検出されても良い。これは参照抵抗である。電流または電圧は、複数の電気コンタクトの同時に与えられても良い。そのような形状の例は、コンタクトの組1と3(I13またはV13)およびコンタクトの組2と4(I24またはV24)の上の電圧源または電流源を示す
図6に模式的に示される。例えば、I24またはV24、およびI13またはV13は、同時に接触し、デュアルチャネル形状を形成する。本発明の具体例では、複数の組の電気コンタクトがバイアスされる、この複数チャネルアプローチは、
図6に示された形状のために、またはより多くのコンタクトパッドを有する形状のために、複雑なコンタクトおよび電流/電圧の組に拡大されても良い。
【0077】
本発明の具体例では、被覆されないCNT膜からなる薄膜のために、または異なる材料により被覆されたCNT膜から形成された薄膜のために、この方法はふさわしい。本発明の具体例では、CNT膜コーティング160が、コンタクトパッドを縁取り部の上に配置し130、被覆されていないCNT膜を搭載した後に行われる。
【0078】
本発明の具体例では、膜の自立部分を通って電流が得られるように、1組の電気コンタクトにバイアスを印加する時間の量は、例えば数ミリ秒から数分の範囲でも良い。与えられた電流は、例えば数ミリアンペアから200mAまたはそれ以上の範囲でも良く、与えられた電圧は、例えばゼロから40Vで変化しても良く、与えられた電圧は、例えば20Vより大きく、または40Vより大きくても良いが、これらはこの手続きに必要な制限ではない。
【0079】
本発明の具体例では、パルス列(電流または電圧)の印加は、そのような応力を誘起するために使用しても良い。そのようなパルス列のオン/オフ比は、例えば調整可能でも良い。オン/オフ比は、例えば20%より大きく、40%、60%、80%でも良い。しかしながら、これは厳格には要求されない。
【0080】
本発明の具体例では、膜の自立部分の加熱が制限されるように、電流が提供されても良い。印加中、膜の温度は例えば200℃より低く、または30℃より低くても良い。これは、例えば、対流するガス流と、与えられる電流または電圧のデューティー比とを制御することにより達成しても良い。それゆえに、電流は最大値に制限され、および/またはパルスの期間は最大値に制限され、および/またはパルス列の場合はオン/オフ比は最大値に制限されても良い。
【0081】
CNT膜の抵抗は与えられた電流と共に増加することが、発明者によって特に言及されている。特定の理論に縛られることを望むものではないが、抵抗と電流との間のこの関係は、膜自体のナノスケールの変化を提案すると思われる。
図7は、膜の自立部分を通って電流を与える前の膜の走査電子顕微鏡(SEM)画像を示す。
図8は、増加した引っ張りが得られるように電流を与えた後のSEM画像を示す。図から分かるように、SEMに違いはない。それゆえに、変化は、ナノモフォロジ(ヒーリングボンド)または揮発する汚染物をより処理しなければならないことであると発明者は推測する。
【0082】
本発明の具体例では、膜の上にコーティングが行われる160。これは、任意的な工程であり、例えば、少なくとも1組の電気コンタクトにバイアスを印加150する前に行われ、これにより膜の自立部分を通る電流を強制しても良い。しかしながら、本発明は、これに限定されるものではなく、コーティングはコンタクトペアにバイアスした後に行っても良い。
【0083】
CNT膜240は、部分的にまたは完全にコーティングしても良い。部分的なコーティングは、非常に薄い(例えば、3nmより薄い膜厚)堆積またはCNT欠陥の装飾で得られても良い。完全なコーティングは、例えば物理気相堆積(PVD)、即ち、電子ビームまたは熱蒸発、遠隔プラズマスパッタリング、原子層堆積(ALD)、化学気相堆積(CVD)、電気化学堆積(ECD)、およびゾルゲル技術、または複数の方法の組み合わせにより行われる。コーティングは、例えば以下の材料:Zr、Y、B、Ti、Ru、Mo、および関連する化合物、窒化物または酸化物を含む。しかしながら、このリストはそれらの材料に限定するものではない。
【0084】
図1に示されたプロセスフローは、本発明の具体例にかかる例示的なプロセスフローである。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。必要でなければ、工程は飛ばすことができる(例えば、コーティング工程)。工程の順序を変えることも可能である(例えば、電流を与えた後に膜をコーティングする)。
【0085】
コーティングは、自立したカーボンナノチューブ(CNT)膜の多層コーティングを含んでも良い(好適には2層であるが、多層でも良い)。このコーティングは、例えばEUV薄膜として用いた場合の水素ラジカルのような攻撃的な環境から膜を保護する。コーティングは、放射冷却のための放射率を大きくできる。
【0086】
EUV薄膜として使用した場合、自立CNT膜は、スキャナの内部のハロゲンラジカル(H*)雰囲気に導入する。膜(膜組織ともいう)中のCNT構造は、H*により攻撃されて、炭素が炭化水素分子に気化することによるCNTの除去により、薄膜が損傷する。膜の劣化を避けるために、CNT膜組織は、H*損傷を低減または除去するために保護されなければならない。これは、1層または多層からなる薄膜を備えたCNT膜組織のコーティング(例えば両側)により行われる。膜組織中のCNTチューブに沿った弱い部分の上を標的にした堆積により、保護を行っても良い。
【0087】
原子層堆積(ALD)は、複雑な構造の上にコンフォーマルな薄膜を堆積するのに使用しても良い。しかしながら、膜成長の初期においてALD核形成のための少数の活性サイトを有するCNT表面の不活性のために、コンフォーマルでピンホールの無い、CNT上のコーティングは困難である。
【0088】
本発明の具体例では、第1のコーティングは部分的なコーティング層でも良い。これは、原子層堆積(ALD)または化学気相堆積(CVD)による欠陥の選択的なコーティングにより達成しても良い。H*エッチングが、CNTの欠陥サイトで始まり、次にチューブ長さに沿って進行しても良い。ALD/CVDは、欠陥サイトの上で核形成が始まり、H*からCNT欠陥を選択的に保護できることが知られている。CNT欠陥の部分的なコーティングが、コーティングされない場合に比較して、コーティングされたCNT薄膜の寿命を長くする。
【0089】
任意的に、放射性を改良するために、部分的なALD/CVDコーティングの上に、第2のコーティング層が、CNT膜の片側または両側に加えられても良い。コーティングは、例えば熱または電子ビーム蒸発、スパッタ等の上で既に挙げた様々な薄膜堆積技術により提供しても良い。
【0090】
本発明の具体例では、完全なコーティングを、保護のためにCNT膜240の上に提供しても良い。この層は、コンフォーマルなコーティング工程により達成しても良い。
【0091】
コンフォーマルコーティングは、ALDコーティングの前に、熱または電子ビーム蒸発により堆積したシード(接着)層の提供により達成しても良い。このシード層の堆積アプローチは、CNT構造に優しく、初期のCNT特性を保持できる。シード層の均一性のために、例えば15°の角度で蒸発が行われるが、この角度は1°から89°でも良く、さらに堆積中に基板を回転させる。シードCNT構造の上のALDは、均一でコンフォーマルである。
【0092】
プロセス中にCNTにダメージを与えるとして知られている、厳しい反応条件(例えば、プラズマ系スパッタ)または強い酸化剤(例えば、所定のALDプロセス)へのCNTの露出を含む、その次に続く層の堆積中にCNT膜組織の保護として、上述のシード層が提供されることは、本発明の具体例の優位点である。
【0093】
本発明の具体例では、中間の変形しやすい薄膜コーティングは、多層コーティングの応力を低減するために、例えば炭素のような固いコーティング膜の間に加えることができる。
【0094】
具体例では、2層がコンフォーマルコーティングを用いて提供されても良い。全応力はそれぞれの層により誘起された圧縮または引っ張り応力の組み合わせであるため、2層を提供することにより、応力をバランスさせても良い。これは、均一なより引っ張り膜、およびしわの数を減らした膜またはしわのない膜となる。
【0095】
本発明の具体例では、コンフォーマルコーテイングに好ましい、CNT構造を提供しても良い。CNT薄膜の膜組織は、例えばNドープされたCNTを含んでも良い。他の原子を用いたCNT膜のドーピング工程は、反応表面種の導入により、CNT膜をALDまたはCVD核形成に対してより好ましいものにする。
【0096】
CNT膜は、コンフォーマルコーティングにより好ましくするために、多層のCNTを含んでも良い。その場合、壁の1つは、ALDシード化を可能にするように機能する犠牲CNT壁として使用しても良い。
【0097】
本発明の具体例では、連続したコンフォーマルなALDコーティングを得るのに必要なALDサイクルの数は、シード化されたCNTの上にコーティングすることにより減らしても良い。例えば、非常に薄い層(例えばルテニウムコーティング)が、ALDにより形成されても良い。
【0098】
具体例では、ドライアプローチをコンフォーマルコーティングに適用しても良い。この場合、コーティングを堆積するために溶液は用いない。
【0099】
内在的、構造的、機械的、そして電気的なCNT特性が、シード層成長中のCNTのダメージを避けることにより保持できることは、本発明の具体例の優位点である。
【0100】
例えばコーティングプロセス中のイオン衝突から、シード層によりCNTが保護されさえすれば、様々なコーティングアプローチができることは、本発明の具体例の優位点である。
【0101】
多層CNTに比べて欠陥が少ないことが知られている単層CNT(single-walled CNT)の透明度の高い自立膜に適用できることは、本発明の具体例の優位点である。
【0102】
自立CNT膜組織を保持しながらALDによる制御されたコーティングのためにCNT表面の欠陥エンジニアリングが可能になるため、CNT構造がコンフォーマルコーティングに好ましいことは、本発明の具体例の優位点である。
【0103】
本発明の具体例にかかる方法は、カーボンナノチューブを含む搭載された膜により保護されたフォトマスクの上でのリソグラフィ工程を含んでも良い。
【0104】
本発明の具体例では、CNT膜を立ち上がった縁取り部の間に搭載し、膜の自立部分に電流を提供することにより、CNT薄膜を形成しても良い。CNT薄膜は、リソグラフィのレティクル保護のための解決策である。
【0105】
本発明の具体例では、リソグラフィは、13.5nmの波長を用いた極紫外リソグラフィでも良い。しかしながら、本発明は、この波長に限定されるものではない。波長は、例えば3nmと248nmの間の範囲でも良い。カーボンナノチューブを使用した場合、膜が非常に薄いためにEUV光が膜を通るのに影響しないように膜を作製できる。さらに、本発明の具体例にかかる方法により、引っ張り応力が増加し、この引っ張り応力は、長時間維持されることも優位点である。引っ張り応力は、例えば永久に安定して維持される。