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  • 特許-研磨パッド及び研磨加工物の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】研磨パッド及び研磨加工物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 37/013 20120101AFI20241004BHJP
   B24B 37/24 20120101ALI20241004BHJP
   B24B 49/04 20060101ALI20241004BHJP
   B24B 49/16 20060101ALI20241004BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20241004BHJP
   C08G 18/10 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
B24B37/013
B24B37/24 Z
B24B49/04 Z
B24B49/16
H01L21/304 622F
H01L21/304 622S
C08G18/10
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019179667
(22)【出願日】2019-09-30
(65)【公開番号】P2021053754
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000005359
【氏名又は名称】富士紡ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】松岡 立馬
(72)【発明者】
【氏名】栗原 浩
(72)【発明者】
【氏名】鳴島 さつき
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼見沢 大和
【審査官】山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-345018(JP,A)
【文献】特開2012-223875(JP,A)
【文献】特開2005-277130(JP,A)
【文献】特表2005-517290(JP,A)
【文献】特表2017-519649(JP,A)
【文献】特許第5810802(JP,B2)
【文献】特許第6315246(JP,B2)
【文献】特許第5361299(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2004/0255521(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 37/013
B24B 37/24
B24B 49/04
B24B 49/16
H01L 21/304
C08G 18/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン窒化膜に対する動摩擦係数μNとシリコン酸化膜に対する動摩擦係数μOとの比(μN/μO)が1.2~7.0である研磨面を有する研磨層を備え
前記研磨層が、水溶性有機化合物を含む、
トルク式終点検出用の研磨パッド。
【請求項2】
前記動摩擦係数μOが、0.1~0.4である、
請求項1に記載の研磨パッド。
【請求項3】
前記動摩擦係数μNが、0.5~0.7である、
請求項1又は2に記載の研磨パッド。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の研磨パッドを用いて、シリコン酸化膜とシリコン窒化膜を有する被研磨物を研磨する研磨工程と、該研磨中にトルク方式で終点検出を行う終点検出工程と、を有する、
研磨加工物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨パッド及び研磨加工物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程においては、絶縁膜成膜後の平坦化や金属配線の形成過程で化学機械研磨(CMP)が使用される。化学機械研磨に要求される重要な技術の一つとして、研磨プロセスが完了したかどうかを検出する研磨終点検出がある。例えば、目標とする研磨終点に対する過研磨や研磨不足は製品不良に直結する。そのため、化学機械研磨では、研磨終点検出により研磨量を厳しく管理する必要がある。
【0003】
化学機械研磨は複雑なプロセスであり、研磨装置の運転状態や消耗品(スラリー、研磨パッド、ドレッサー等)の品質や研磨過程における経時的な状態のばらつきの影響によって、研磨速度(研磨レート)が変化する。さらに、近年半導体製造工程で求められる残膜厚の精度、面内均一性はますます厳しくなっている。このような事情から、十分な精度の研磨終点検出はより困難となってきている。
【0004】
研磨終点検出の主な方法としては、光学式終点検出方式、トルク終点検出方式、渦電流終点検出方式などが知られている。
【0005】
光学式終点検出方式では、研磨パッド上に設けた透明な窓部材を通してウエハに光を照射し、反射光をモニタすることで終点検出を行う。しかしながら、研磨中に窓部材周辺からスラリーが漏れることがあり、それによって検出精度が低下する可能性がある。また、研磨パッド上に材料・物性の異なる窓部材を設ける必要があるため、窓部材を設けた部分において研磨が不均一となるなどの問題がある。
【0006】
また、トルク終点検出方式では、材料間の摩擦係数の違いより生じる回転軸のトルクから間接的に研磨の終点検出を行う(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平06‐315850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
研磨対象膜とストッパー膜との研磨速度の差(以下、「選択比」ともいう。)は使用するスラリーに依存するため、トルク終点検出方式では、適切なスラリーを選択しないと精度良く終点検出できないという問題点がある。しかしながら、このような問題を研磨パッドの構成という観点から解決する技術は提案されていない。
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、選択比のスラリー依存性が低く、精度の高いトルク終点検出に用いることが可能な研磨パッド、及びそれを用いた研磨加工物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、シリコン酸化膜に対する動摩擦係数μOとシリコン窒化膜に対する動摩擦係数μNとの比を調整することにより、上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
〔1〕
シリコン窒化膜に対する動摩擦係数μNとシリコン酸化膜に対する動摩擦係数μOとの比(μN/μO)が1.2~7.0である研磨面を有する研磨層を備える、
研磨パッド。
〔2〕
前記動摩擦係数μOが、0.1~0.4である、
〔1〕に記載の研磨パッド。
〔3〕
前記動摩擦係数μNが、0.5~0.7である、
〔1〕又は〔2〕に記載の研磨パッド。
〔4〕
〔1〕~〔3〕のいずれか一項に記載の研磨パッドを用いて、シリコン酸化膜とシリコン窒化膜を有する被研磨物を研磨する研磨工程と、該研磨中にトルク方式で終点検出を行う終点検出工程と、を有する、
研磨加工物の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、選択比のスラリー依存性が低く、精度の高いトルク検出式終点検出に用いることが可能な研磨パッド、及びそれを用いた研磨加工物の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態の研磨パッドの概略断面図である。
図2】CMPに搭載する膜厚制御システムを示す概略図である。
図3】トルク方式の終点検出の測定原理を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0015】
〔研磨パッド〕
本実施形態の研磨パッドは、シリコン窒化膜に対する動摩擦係数μNとシリコン酸化膜に対する動摩擦係数μOとの比(μN/μO)が1.2~7.0である研磨面を有する研磨層を備える。
【0016】
図1に示すように、本実施形態の研磨パッド10は、所定の比(μN/μO)を有する研磨面を有する研磨層11を備え、必要に応じて基材層12を備える。比(μN/μO)を調整することにより、トルク終点検出方式において、材料間の摩擦係数の違いより生じる回転軸のトルクの違いをより高精度に検出することが可能となり、結果として終点検出の精度がより向上する。以下、詳細な構成について、説明する。
【0017】
〔研磨層〕
研磨層11は、所定の比(μN/μO)を有する研磨面11aを備える。比(μN/μO)は、1.2~7.0であり、好ましくは1.3~5.0であり、より好ましくは1.5~3.0である。比(μN/μO)が上記範囲内であることにより、トルク方式の終点検出の精度がより向上する。
【0018】
また、動摩擦係数μOは、好ましくは0.1~0.4であり、より好ましくは0.15~0.35であり、さらに好ましくは0.2~0.3である。動摩擦係数μOが上記範囲内であることにより、トルク方式の終点検出の精度がより向上する傾向にある。動摩擦係数μOが0.1以上であることにより、シリコン酸化膜との抵抗が大きくなり、研磨パッドとシリコン酸化膜との相互作用が大きくなるため研磨レートがより向上する傾向にある。また、動摩擦係数μOが0.4以下であることにより、シリコン酸化膜とシリコン窒化膜との抵抗差が大きくなり、トルク方式の終点検出の精度がさらに向上する傾向にある。
【0019】
さらに、動摩擦係数μNは、好ましくは0.3~0.9であり、より好ましくは0.4~0.8であり、さらに好ましくは0.5~0.7である。動摩擦係数μNが上記範囲内であることにより、トルク方式の終点検出の精度がより向上する傾向にある。特に、動摩擦係数μNが0.3以上であることにより、シリコン酸化膜とシリコン窒化膜との抵抗差が大きくなり、トルク方式の終点検出の精度がさらに向上する傾向にある。また、動摩擦係数μNが0.9以下であることにより、研磨中に研磨パッドとシリコン窒化膜との抵抗が小さくなり、いわゆるデチャックエラーの発生がより抑制される傾向にある。
【0020】
動摩擦係数μO及びμNは、往復摺動摩擦試験機により測定することができる。また、動摩擦係数μO及びμNは、研磨層の組成によって調整することができる。例えば、動摩擦係数μO及びμNを調整する方法として、シリコン酸化膜又はシリコン窒化膜に対して相互作用する化合物を研磨層に加えることが考えられる。このような化合物としては、例えば、後述するカルボン酸基及び/又はスルホン酸基を有する水溶性有機化合物(以下、単に「水溶性有機化合物」ともいう。)が挙げられる。当該水溶性有機化合物は、酸化ケイ素膜などの酸化物膜や、窒化ケイ素膜などの窒化物膜に対する摩擦係数を調整するために用いられる。水溶性である有機化合物を用いることにより、スラリー存在下での有機化合物の摩擦調整機能が発揮され、トルク終点検出方式において、材料間の摩擦係数の違いより生じる回転軸のトルクの違いをより高精度に検出することが可能となる。
【0021】
研磨層の構成は、比(μN/μO)が1.2~7.0であるものであれば特に制限されないが、例えば、樹脂の発泡成形体、樹脂の無発泡成形体、樹脂含侵基材などが挙げられる。なお、これら構成において、シリコン酸化膜又はシリコン窒化膜に対して相互作用する水溶性有機化合物は樹脂に混合して、あるいは、樹脂の一部または全部を構成するものとして用いることができる。
【0022】
ここで、樹脂の発泡成形体とは、繊維基材を有さず、所定の樹脂から構成される発泡体をいう。発泡形状は、特に制限されないが、例えば、球状気泡、略球状気泡、涙型気泡、あるいは、各気泡が部分的に連結した連続気泡などが挙げられる。
【0023】
また、樹脂の無発泡成形体とは、繊維基材を有さず、所定の樹脂から構成される無発泡体をいう。無発泡体とは、上記のような気泡を有しないものをいう。本実施形態においては、フィルムなどの基材の上に、硬化性組成物を付着させて硬化させたようなものも樹脂の無発泡成形体に含まれる。より具体的には、ラビアコーター法、小径グラビアコーター法、リバースロールコーター法、トランスファロールコーター法、キスコーター法、ダイコーター法、スクリーン印刷法、スプレー塗布法等により形成された樹脂硬化物も樹脂の無発泡成形体に含まれる。
【0024】
さらに、樹脂含侵基材とは、繊維基材に樹脂を含浸させて得られるものをいう。ここで、繊維基材としては、特に制限されないが、例えば、織布、不織布、編地などが挙げられる。
【0025】
(水溶性有機化合物)
シリコン酸化膜又はシリコン窒化膜に対して相互作用する水溶性有機化合物としては、特に制限されないが、例えば、カルボン酸基及び/又はスルホン酸基を有する水溶性有機化合物が挙げられる。
【0026】
カルボン酸基を有する水溶性有機化合物としては、特に制限されないが、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸、リンゴ酸、乳酸、酒石酸、グルコン酸、アジピン酸及びこれらの塩などが挙げられる。
【0027】
スルホン酸基を有する水溶性有機化合物としては、特に制限されないが、例えば、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ラウリルベンゼンスルホン酸及びこれらの塩などが挙げられる。
【0028】
このなかでも、ポリ(メタ)アクリル酸、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物およびこれらの塩がより好ましく、ポリアクリル酸アンモニウム、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物がさらに好ましい。このような水溶性有機化合物を用いることにより、トルク終点検出方式における検出精度がより向上する傾向にある。なお、水溶性有機化合物は、一種単独で用いても、二種以上を併用してもよい。
【0029】
また、水溶性有機化合物の分子量は、好ましくは90~15000であり、より好ましくは500~10000であり、さらに好ましくは500~2000である。分子量が上記範囲内であることにより、トルク終点検出方式における検出精度がより向上する傾向にある。なお、上記水溶性有機化合物が重合体である場合には、「水溶性有機化合物の分子量」はその重合体の数平均分子量を意味するものとする。
【0030】
水溶性有機化合物の含有量は、研磨層の総量に対して、好ましくは0.01~10重量%であり、より好ましくは0.05~5重量%であり、さらに好ましくは0.1~3重量%である。水溶性有機化合物の含有量が上記範囲内であることにより、トルク終点検出方式における終点検出精度がより向上する傾向にある。なお、「水溶性有機化合物の含有量」とは、水溶性有機化合物を複数用いる場合にはその総含有量を意味するものとする。
【0031】
(樹脂)
研磨層を構成する上記樹脂としては、湿式凝固可能な樹脂、乾式凝固可能な樹脂、その他硬化性樹脂などが挙げられる。これら樹脂は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0032】
ここで、「湿式凝固」とは、樹脂を溶解させた樹脂溶液を繊維基材に含浸し、これを凝固液(樹脂に対して貧溶媒である水等。)の槽に浸漬することにより、含浸した樹脂溶液中の樹脂を凝固再生させる方法をいう。また、樹脂を溶解させた樹脂溶液をフィルムなどに塗布し、これを凝固液の槽に浸漬することにより、繊維基材を含まない樹脂の成形体を得てもよい。この湿式凝固では、樹脂溶液中の溶媒と凝固液とが置換されることにより樹脂溶液中の樹脂が凝集して凝固される。なお、樹脂が凝集凝固した部分以外の箇所には、気泡が形成される。形成される気泡の形状は、特に制限されないが、主に涙形状のものとなりやすい。
【0033】
また、「乾式凝固」とは、プレポリマーと硬化剤とを含む液を繊維基材に含侵し、プレポリマーと硬化剤を反応させて樹脂を形成させる方法をいう。また、プレポリマーと硬化剤とを含む液をフィルムなどに塗布し、プレポリマーと硬化剤を反応させて繊維基材を含まない樹脂の成形体を得てもよい。この湿式凝固では、プレポリマーと硬化剤との反応によって気体が発生する場合や発泡剤等を用いる場合には発泡体が得られ、それ以外の場合には、無発泡体が得られる。なお、発泡形状は特に制限されないが、主に球状や略球状のものとなりやすい。
【0034】
以下、各樹脂の具体例について例示するが、本実施形態の研磨層を構成する樹脂は以下に限定されるものではない。
【0035】
湿式凝固可能な樹脂としては、特に制限されないが、例えば、ポリウレタン、ポリウレタンポリウレア等のポリウレタン系樹脂;ポリアクリレート、ポリアクリロニトリル等のアクリル系樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリフッ化ビニリデン等のビニル系樹脂;ポリサルホン、ポリエーテルサルホン等のポリサルホン系樹脂;アセチル化セルロース、ブチリル化セルロース等のアシル化セルロース系樹脂;ポリアミド系樹脂;及びポリスチレン系樹脂が挙げられる。
【0036】
このなかでも、ポリウレタン系樹脂を含むことが好ましい。ポリウレタン系樹脂としては、以下に限定されないが、例えば、ポリエステル系ポリウレタン樹脂、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂、及びポリカーボネート系ポリウレタン樹脂が挙げられる。このような樹脂を用いることにより、研磨レートがより向上する傾向にある。
【0037】
乾式凝固可能な樹脂を構成するプレポリマーとしては、特に限定されないが、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートとポリオキシテトラメチレングリコールとの付加物;2,4-トリレンジイソシアネートとプレンツカテコールとの付加物;トリレンジイソシアネートとヘキサントリオールとの付加物;トリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとの付加物;キシリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとの付加物;ヘキサメチレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとの付加物;及びイソシアヌル酸とヘキサメチレンジイソシアネートとの付加物が挙げられる。プレポリマーは1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0038】
乾式凝固可能な樹脂を構成する硬化剤としては、特に限定されないが、例えば、3,3'-ジクロロ-4,4'-ジアミノジフェニルメタン、4-メチル-2,6-ビス(メチルチオ)-1,3-ベンゼンジアミン、2-メチル-4,6-ビス(メチルチオ)-1,3-ベンゼンジアミン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス[3-(イソプロピルアミノ)-4-ヒドロキシフェニル]プロパン、2,2-ビス[3-(1-メチルプロピルアミノ)-4-ヒドロキシフェニル]プロパン、2,2-ビス[3-(1-メチルペンチルアミノ)-4-ヒドロキシフェニル]プロパン、2,2-ビス(3,5-ジアミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,6-ジアミノ-4-メチルフェノール、トリメチルエチレンビス-4-アミノベンゾネート、及びポリテトラメチレンオキサイド-ジ-p-アミノベンゾネート等のアミン化合物;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、3-メチル-1,2-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、2,3-ジメチルトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、3-メチル-4,3-ペンタンジオール、3-メチル-4,5-ペンタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,4-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、及びトリメチロールメタン等の多価アルコール化合物が挙げられる。硬化剤は1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0039】
その他硬化性樹脂を構成する組成物としては、特に制限されないが、例えば、光重合開始剤及び重合性化合物を含む光硬化性組成物、熱重合開始剤及び重合性化合物を含む熱硬化性組成物、熱硬化性樹脂、UV硬化樹脂、2液混合型の硬化樹脂を含む硬化性組成物であってもよい。また、硬化性組成物は、必要に応じて、重合性官能基を2以上有する架橋剤を含んでもよい。
【0040】
上記重合性化合物としては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0041】
上記光重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、ベンゾフェノン系化合物、アセトフェノン系化合物、チオチサントン系化合物が挙げられる。また、熱重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、2,2'-アゾビスブチロニトリルのようなアゾ化合物、過酸化ベンゾイル(BPO)などの過酸化物が挙げられる。
【0042】
上記熱硬化性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレア樹脂、ホルムアルデヒド樹脂等が挙げられる。
【0043】
上記UV硬化樹脂としては、特に限定されないが、例えば、数平均分子量1000~10000程度のプレポリマーが挙げられ、アクリル(メタクリル)系エステルやそのウレタン変性物、チオコール系化合物等が挙げられ、適宜用途に応じて反応性希釈剤や有機溶剤を用いることができる。
【0044】
また、2液混合型の硬化樹脂としては、特に限定されないが、例えば、異なる物性のプレポリマーを用いることができる。
【0045】
〔基材層〕
本実施形態の研磨パッドは、研磨層の研磨面とは反対側に基材層を有する。基材層を有することにより、被研磨物への追従性がより向上する他、被研磨物への研磨圧の均一性もより向上する傾向にある。
【0046】
基材層としては、特に制限されないが、例えば、樹脂を含浸してなる含浸不織布や樹脂発泡体などが挙げられる。含浸不織布としてはポリオレフィン系、ポリアミド系、ポリエステル系等の不織布に、ポリウレタン、ポリウレタンポリウレア等のポリウレタン系、ポリアクリレート、ポリアクリロニトリル等のアクリル系、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリフッ化ビニリデン等のビニル系、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン等のポリサルホン系、アセチル化セルロース、ブチリル化セルロース等のアシル化セルロース系、ポリアミド系及びポリスチレン系などの樹脂を含浸したものが挙げられる。樹脂発泡体としては、ポリオレフィン系発泡体、ポリウレタン系発泡体、ポリスチレン系発泡体、フェノール系発泡体、合成ゴム系発泡体、シリコーンゴム系発泡体などが挙げられる。
【0047】
〔研磨パッドの製造方法〕
本実施形態の研磨パッドの製造方法は、研磨層と基材層とを貼り合わせる方法や、基材層上に研磨層を形成する方など、公知の方法が挙げられる。
【0048】
研磨層を形成する方法としては、特に制限されないが、例えば、上記湿式凝固法、上記乾式凝固法、硬化性樹脂を硬化させる方法などが挙げられる。なお、本実施形態において研磨層にシリコン酸化膜又はシリコン窒化膜に対して相互作用する化合物を含ませる方法としては、硬化前の樹脂に当該化合物を混合し、その状態で硬化させる方法が挙げられる。
【0049】
基材層を形成する方法としては、特に制限されないが、例えば、上記各発泡体を公知の方法により形成する方法が挙げられる。
【0050】
〔研磨加工物の製造方法〕
本実施形態の研磨加工物の製造方法は、上記研磨パッドを用いて、被研磨物を研磨し研磨加工物を得る研磨工程と、該研磨中にトルク方式で終点検出を行う終点検出工程と、を有する。
【0051】
〔研磨工程〕
研磨工程は、一次ラッピング研磨(粗ラッピング)であってもよく、二次ラッピング(仕上げラッピング)であってもよく、一次ポリッシング(粗ポリッシング)であってもよく、二次ポリッシング(仕上げポリッシング)であってもよく、これら研磨を兼ねるものであってもよい。なお、ここで、「ラッピング」とは粗砥粒を用いて比較的に高いレートで研磨することを言い、「ポリッシング」とは微細砥粒を用いて比較的に低いレートで表面品位を高くするために研磨することを言う。
【0052】
このなかでも、本実施形態の研磨パッドは化学機械研磨に用いられることが好ましい。一方で、研削や切削等の機械加工工程において、被加工物の保持に用いることもできる。以下、化学機械研磨を例に本実施形態の研磨物の製造方法を説明するが、本実施形態の研磨物の製造方法は以下に限定されない。
【0053】
被研磨物としては、特に限定されないが、例えば、半導体デバイス、電子部品等の材料、特に、Si基板(シリコンウェハ)、SiC(炭化珪素)基板、GaAs(ガリウム砒素)基板、ガラス、ハードディスクやLCD(液晶ディスプレイ)用基板等の薄型基板(被研磨物)が挙げられる。
【0054】
研磨方法としては、従来公知の方法を用いることができ、特に限定されない。例えば、まず、研磨パッドと対向するように配置された保持定盤に保持させた被研磨物を研磨面側へ押し付けると共に、外部からスラリーを供給しながら、研磨パッド及び/又は保持定盤を回転させる。研磨パッドと保持定盤は、互いに異なる回転速度で同方向に回転しても、異方向に回転してもよい。また、被研磨物は、研磨加工中に、枠部の内側で移動(自転)しながら研磨加工されてもよい。
【0055】
スラリーは、被研磨物や研磨条件等に応じて、水、過酸化水素に代表される酸化剤などの化学成分、添加剤、砥粒(研磨粒子;例えば、SiC、SiO2、Al23、CeO2)等を含んでいてもよい。
【0056】
〔終点検出工程〕
本実施形態の研磨加工物の製造方法は、上記研磨工程において、トルク方式で終点検出を行う終点検出工程を有する。トルク方式による終点検出方法としては、具体的には従来公知の方法を用いることができる。図2に、トルク方式の終点検出方法の模式図を示す。この模式図は、トップリング21で保持したウエハWをテーブル22上に貼られた研磨パッド10上にスラリー(不図示)を流しながら押し付けてウエハW表面の対象膜を削り平坦化する化学機械研磨プロセスを示す。研磨装置20は終点検出して精度良くプロセスを終了させるため、トルク検出方式の膜厚検出センサ23をトップリング22周辺に搭載している。ウェハWは、研磨対象膜W1と、研磨対象膜の下地に配されたストッパー膜W2と、を有する。
【0057】
なお、研磨対象膜W1とストッパー膜W2としては、酸化ケイ素膜と窒化ケイ素膜が例示される。
【0058】
トルク方式では、ウエハWと研磨パッド10の間の摩擦係数変化をトップリング21やテーブル22の回転軸トルクの変化として検出する。トルク変化の検出は、例えば、トップリング21やテーブル22の回転軸の駆動モータ電流を測定することにより行うことができる。より具体的には、図3に示すように、研磨を行い、研磨対象膜W1が除去されると(STEP1)、下層のストッパー膜W2が露出し、トルク変化が検出される(STEP2)。トルク方式では、このトルク変化を検出することで終点検出を行う。なお、トルク方式では、そのトルク変化がスラリーの選択に依存しやすいため、正確な終点検出を行う観点から、予めスラリーの選定をしておくことが好ましい。
【実施例
【0059】
以下、本発明を実施例及び比較例を用いてより具体的に説明する。本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0060】
(実施例1)
2,4-トリレンジイソシアネートとポリオキシテトラメチレングリコールとの付加物を含むプレポリマーに、相互作用する化合物としてポリアクリル酸アンモニウム(数平均分子量1000)を樹脂の総量に対して0.5重量%となる様に添加したものに、硬化剤として3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタンを加え、硬化させ研磨層を形成した。また、基材層は、ポリエチレン繊維からなる不織布に、ポリウレタン樹脂溶液を含浸させた後に湿式凝固させ、乾燥させることで得た。研磨層に基材層をホットメルト型の接着層を有する両面テープにより接着させることで、実施例1の研磨パッドを得た。
【0061】
(実施例2~6)
相互作用する化合物の種類及び添加量を表1に示す様に変化させたこと以外は、実施例1と同様の製造方法により、実施例2~6の研磨パッドを得た。
【0062】
(比較例1)
相互作用する化合物であるポリアクリル酸アンモニウム(数平均分子量1000)を用いなかったこと以外は、実施例1と同様の製造方法により、比較例1の研磨パッドを得た。
【0063】
(比較例2)
従来公知の研磨パッドIC1000(ニッタ・ハース社製)を用いた。
【0064】
(動摩擦係数の測定)
実施例及び比較例の各研磨パッドを#160番手のダイヤモンド砥石をつけたドレッサーで30分間表面を荒らした。表面粗化後、20mm×10mmの短冊型にサンプルを切り出し、往復摺動摩擦試験機(HEIDON-14D)を用い、スライダをサンプル上に5gの一定荷重で押し付けた状態で往復運動させそのときの抵抗力を測定した。スライダは一辺が5mmのシリコン酸化物及びシリコン窒化物をそれぞれ用い、12mmの範囲を速度1mm/secで運動させた。測定は、各サンプル各荷重ごとに10回往復させて行い、10回目の荷重の平均を用いて動摩擦係数μO及びμN求めた。
【0065】
【表1】
【0066】
実施例1~6はいずれも、添加物であるポリアクリル酸アンモニウム又はナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物がシリコン窒化膜に特異的に吸着することにより、シリコン窒化膜の摩擦抵抗が上昇し、シリコン酸化膜に対するか擦抵抗が減少したため、シリコン酸化膜に対する動摩擦係数μOとシリコン窒化膜に対する動摩擦係数μNとの比μN/μOが1.2以上となり、精度良くトルク式終点検出を行うことができた。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の研磨パッドは、光学材料、半導体デバイス、ハードディスク用ガラス基板等の研磨に用いられ、特に半導体ウエハの上に酸化物層、金属層等が形成されたデバイスを研磨するのに好適に用いられるパッドとして、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0068】
10:研磨パッド、11:研磨層、11a:研磨面、12:基材層、20:研磨装置、21:トップリング、22:テーブル、23:膜厚検出センサ、W:ウエハ、W1:研磨対象膜、W2:ストッパー膜
図1
図2
図3