(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】組立型減圧式濾過装置
(51)【国際特許分類】
B01D 24/00 20060101AFI20241004BHJP
B01D 29/00 20060101ALI20241004BHJP
B01D 29/50 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
B01D29/00 Z
B01D29/24 A
B01D29/26 Z
(21)【出願番号】P 2020097407
(22)【出願日】2020-06-04
【審査請求日】2023-05-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000232885
【氏名又は名称】株式会社ロキテクノ
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100120064
【氏名又は名称】松井 孝夫
(72)【発明者】
【氏名】金城 隆司
【審査官】伊藤 真明
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-161411(JP,A)
【文献】特開昭58-084010(JP,A)
【文献】特開2000-237553(JP,A)
【文献】特開2013-103420(JP,A)
【文献】実公昭47-009393(JP,Y1)
【文献】中国実用新案第210186526(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 24/00-35/05
B01D 35/10-37/04
C02F 9/00- 9/20
B01D 53/22、61/00-71/82
C02F 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に脱気ポンプが配置され、前記脱気ポンプの吸気孔が配置される接合部を有するポンプユニットと、
一端に第1開口と、他端に第2開口と、を有する中空筒形形状の第1ケースユニット
および第2ケースユニットであって、流体と接しない第1ケースユニットおよび第2ケースユニットと、
一端に流体入口を有し、流体を保持する保持部を有する
第1インナー容器であって、前記第1インナー容器の内外を貫通する通気孔を有する第1インナー容器と、
一端に流体入口と、他端に前記流体入口よりも大きさの小さい流体出口と、を有し、前記流体入口と前記流体出口との間に流体を保持する保持部を有する第2インナー容器と、を備える組立型減圧式濾過装置であって、
前記第1ケースユニットは、前記第1ケースユニットの第1開口と前記ポンプユニットの前記吸気孔とが流体的に連通するように前記ポンプユニットと接合可能であって、
前記通気孔は前記第1インナー容器の前記保持部の前記流体が保持される予定高さより上側に配置されており、
前記第2ケースユニットの前記第1開口は、前記第1ケースユニットの第2開口と第1シール部材を挟持し、かつ前記第1ケースユニットの第2開口が前記第1インナー容器の前記流体入口となるように前記第1シール部材と前記第1インナー容器の前記流体入口の縁部を挟持して、前記第1ケースユニットの前記第2開口と接合可能であって、
前記第2インナー容器は、前記第2ケースユニットの前記第2開口が前記第2インナー容器の前記流体入口となるように前記第2インナー容器の前記流体入口の縁部と前記第2ケースユニットの前記第2開口とで第2シール部材を挟持するように接合可能であ
って、
前記第2インナー容器は、前記第2インナー容器の前記流体入口と前記流体出口との間に、フィルタ、吸着剤または整流構造のうちのいずれかを有する組立型減圧式濾過装置。
【請求項2】
請求項1に記載の組立型減圧式濾過装置であって
、
前記第1インナー容器は前記第2インナー容器の前記フィルタを通過した流体を保持する濾過流体容器である組立型減圧式濾過装置。
【請求項3】
請求項1に記載の組立型減圧式濾過装置であって、
一端に第1開口と、他端に第2開口と、を有する中空筒形形状であって、流体と接しない第3ケースユニットと、
一端に流体入口と、他端に前記流体入口よりも大きさの小さい流体出口と、を有し、前記流体入口と前記流体出口との間に流体を保持する保持部を有する第3インナー容器と、を備え、
前記第3ケースユニットの前記第1開口は
、前記第2ケースユニットの第2開口と第2シール部材を挟持し、
かつ前記第2ケースユニットの第2開口が前記第2インナー容器の前記流体入口となるように前記第2シール部材と前記第2インナー容器の前記流体入口の縁部を挟持し
て前記第2ケースユニットの前記第2開口と接合可能であって、
前記第3インナー容器は、前記第3ケースユニットの前記第2開口が前記第3インナー容器の前記流体入口となるように前記第3インナー容器の前記流体入口の縁部と前記第3ケースユニットの前記第2開口とで第3シール部材を挟持するように接合可能であ
って、
前記第3インナー容器は、前記第3インナー容器の前記流体入口と前記流体出口との間に、フィルタ、吸着剤または整流構造のうちのいずれかを有する組立型減圧式濾過装置。
【請求項4】
請求項3に記載の組立型減圧式濾過装置であって、
前記第3インナー容器は、前記第3インナー容器の前記流体入口と前記流体出口との間に第1フィルタを有する第1フィルタ容器であって、
前記第2インナー容器は、前記第2インナー容器の前記流体入口と前記流体出口との間に前記第1フィルタまたは前記第1フィルタと異なる第2フィルタを有する第2フィルタ容器であって、
前記第1インナー容器は前記第2インナー容器の前記第2フィルタを通過した流体を保持する濾過流体容器である組立型減圧式濾過装置。
【請求項5】
請求項3に記載の組立型減圧式濾過装置であって、
前記第3インナー容器は、前記第3インナー容器の前記流体入口と前記流体出口との間に吸着剤を有する吸着剤容器であって、
前記第2インナー容器は、前記第2インナー容器の前記流体入口と前記流体出口との間にフィルタを有するフィルタ容器であって、
前記第1インナー容器は前記第2インナー容器の前記フィルタを通過した流体を保持する濾過流体容器である組立型減圧式濾過装置。
【請求項6】
請求項3に記載の組立型減圧式濾過装置であって、
一端に第1開口と、他端に第2開口と、を有する中空筒形形状であって、流体と接しない第4ケースユニットと、
一端に流体入口と、他端に前記流体入口よりも大きさの小さい流体出口と、を有し、前記流体入口と前記流体出口との間に流体を保持する保持部を有する第4インナー容器と、を備え、
前記第4ケースユニットの前記第1開口は
、前記第3ケースユニットの第2開口と第3シール部材を挟持し、
かつ前記第3ケースユニットの第2開口が前記第3インナー容器の前記流体入口となるように前記第3シール部材と前記第3インナー容器の前記流体入口の縁部を挟持して、前記第3ケースユニットの前記第2開口と接合可能であって、
前記第4インナー容器は、前記第4ケースユニットの前記第2開口が前記第4インナー容器の前記流体入口となるように前記第4インナー容器の前記流体入口の縁部と前記第4ケースユニットの前記第2開口とで第4シール部材を挟持するように接合可能であ
って、
前記第4インナー容器は、前記第4インナー容器の前記流体入口と前記流体出口との間に、フィルタ、吸着剤または整流構造のうちのいずれかを有する組立型減圧式濾過装置。
【請求項7】
請求項6に記載の組立型減圧式濾過装置であって、
前記第4インナー容器は、底部に環状で等間隔に配置される複数の孔を有する整流容器であって、
前記第3インナー容器は、前記第3インナー容器の前記流体入口と前記流体出口との間に吸着剤を有する吸着剤容器であって、
前記第2インナー容器は前記第3インナー容器の前記吸着剤を通過した流体の濾過を行うフィルタを備えるフィルタ容器であり、
前記第1インナー容器は、前記第2インナー容器の前記フィルタを通過した流体を保持する濾過流体容器である組立型減圧式濾過装置。
【請求項8】
請求項6に記載の組立型減圧式濾過装置であって、
前記第4インナー容器は、前記第4インナー容器の前記流体入口と前記流体出口との間に第1吸着剤を有する吸着剤容器であって、
前記第3インナー容器は、前記第3インナー容器の前記流体入口と前記流体出口との間に前記第1吸着剤と異なる第2吸着剤を有する吸着剤容器であって、
前記第2インナー容器は前記第3インナー容器の前記第2吸着剤を通過した流体の濾過を行うフィルタを備えるフィルタ容器であり、
前記第1インナー容器は、前記第2インナー容器の前記フィルタを通過した流体を保持する濾過流体容器である組立型減圧式濾過装置。
【請求項9】
請求項6に記載の組立型減圧式濾過装置であって、
前記第4インナー容器は、前記第4インナー容器の前記流体入口と前記流体出口との間にフィルタを有するフィルタ容器であって、
前記第3インナー容器は、前記フィルタを通過した流体の流れを前記第3インナー容器の前記流体出口において整えるように底部に環状で等間隔に配置される複数の孔を有する整流容器であって、
前記第2インナー容器は、前記第2インナー容器の前記流体入口と前記流体出口との間に吸着剤を有する吸着剤容器であって、
前記第1インナー容器は、前記第2インナー容器の前記吸着剤を通過した流体を保持する濾過流体容器である組立型減圧式濾過装置。
【請求項10】
請求項6に記載の組立型減圧式濾過装置であって、
一端に第1開口と、他端に第2開口と、を有する中空筒形形状であって、流体と接しない第nケースユニット(n=5以上の自然数、以下同じ)と、
一端に流体入口と、他端に前記流体入口よりも大きさの小さい流体出口と、を有し、前記流体入口と前記流体出口との間に流体を保持する保持部を有する第nインナー容器と、を、さらに備え、
前記第nケースユニットの前記第1開口は、前記第(n-1)ケースユニットの第2開口と第(n-1)シール部材を挟持し、かつ前記第(n-1)ケースユニットの第2開口が前記第(n-1)インナー容器の前記流体入口となるように前記第(n-1)シール部材と前記第(n-1)インナー容器の前記流体入口の縁部を挟持して、前記第(n-1)ケースユニットの前記第2開口と接合可能であって、
前記第nインナー容器は、前記第nケースユニットの前記第2開口が前記第nインナー容器の前記流体入口となるように、前記第nインナー容器の前記流体入口の縁部と前記第nケースユニットの前記第2開口とで第nシール部材を挟持するように接合可能であって、
前記第nインナー容器は、前記第nインナー容器の前記流体入口と前記流体出口との間に、フィルタ、吸着剤または整流構造のうちのいずれかを有する組立型減圧式濾過装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、濾過装置に関し、特には組立型減圧式濾過装置に関する。
【背景技術】
【0002】
流体の濾過では、濾過すべき原流体が流れる流れ回路を管路で構成し、加圧手段により、その流れ回路内の上流側の圧力である原流体の背圧を高めて流動させ、フィルタを通過させて濾過を行う加圧式の濾過装置が一般的である。これに対し、たとえば特許文献1に開示されるように、濾過された後の濾過流体を貯蔵する下流側である濾過流体容器の内圧を減圧して、濾過流体容器内に流体を吸引する際にフィルタを通過させて濾過を行う減圧式の濾過装置がある。このような装置では、一般に、濾過すべき原流体を入れる原流体容器と、濾過した後の濾過流体を貯蔵する濾過流体容器と、濾過流体容器を減圧する手段とを備えている。
【0003】
特許文献1には、原流体容器である試料容器と濾過流体を貯蔵する濾過液貯蔵瓶との間に配置される試料フィルタを介して原流体の濾過を行い、濾過された濾過流体は濾過液貯蔵瓶の中に導入される濾過システムが開示されている。一般に、減圧式濾過装置では、大気圧以下の低い差圧で濾過を実行するコンパクトな構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第WO2008/52642号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
減圧式濾過装置では、高い密閉度を保証しながら簡易に組立または構成変更ができる組立型減圧式濾過装置が望まれる。
さらに、組立型減圧式濾過装置において、流体に接する接流体部材を洗浄する手間をも省くことができれば、作業効率の高い濾過装置とすることができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
内部に脱気ポンプが配置され、前記脱気ポンプの吸気孔が配置される接合部を有するポンプユニットと、一端に第1開口と、他端に第2開口と、を有する中空筒形形状の第1ケースユニットであって、流体と接しない第1ケースユニットおよび第2ケースユニットと、一端に流体入口を有し、流体を保持する保持部を有する第1インナー容器と、一端に流体入口と、他端に前記流体入口よりも大きさの小さい流体出口と、を有し、前記流体入口と前記流体出口との間に流体を保持する保持部を有する第2インナー容器と、を備える組立型減圧式濾過装置であって、前記第1ケースユニットは、前記第1ケースユニットの第1開口と前記ポンプユニットの前記吸気孔とが流体的に連通するように前記ポンプユニットと接合可能であって、前記第2ケースユニットの前記第1開口は、前記第1ケースユニットの第2開口と第1シール部材を挟持し、かつ前記第1ケースユニットの第2開口が前記第1インナー容器の前記流体入口となるように前記第1シール部材と前記第1インナー容器の前記流体入口の縁部を挟持して、前記第1ケースユニットの前記第2開口と接合可能であって、前記第2インナー容器は、前記第2ケースユニットの前記第2開口が前記第2インナー容器の前記流体入口となるように前記第2インナー容器の前記流体入口の縁部と前記第2ケースユニットの前記第2開口とで第2シール部材を挟持するように接合可能である組立型減圧式濾過装置により解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、簡易な構造で組立または構成変更ができ、接流体部材を容易に交換可能な組立型減圧式濾過装置が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】本発明の実施の形態である組立型減圧式濾過装置の斜視図を示している。
【
図1B】本発明の一の実施の形態である組立型減圧式濾過装置であって、
図1Aの断面A-Aを示した断面図を示している。
【
図1C】本発明の他の実施の形態である組立型減圧式濾過装置の断面図を示している。
【
図1D】本発明の更なる実施の形態である組立型減圧式濾過装置の断面図を示している。
【
図2A】本発明の実施例1である組立型減圧式濾過装置の全体(結合状態)を示した斜視図を示している。
【
図2B】本発明の実施例1である組立型減圧式濾過装置の全体(分離状態)を示した斜視図を示している。
【
図3】
図2Aの断面B-Bを示した図であって、本発明の実施例1である組立型減圧式濾過装置の結合状態の断面図である。
【
図4】本発明の実施例3である組立型減圧式濾過装置の結合状態の断面図である。
【
図5】本発明の実施例4である組立型減圧式濾過装置の結合状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1Aから
図1Dを参照して、本発明の実施の形態としての組立型減圧式濾過装置(以下、単に濾過装置)1について説明する。
図1Aは基本的な実施の形態である濾過装置1の結合状態を示した斜視図である。
図1Bは、
図1Aの断面A-Aを示した図である。
図1Cは他の実施の形態の濾過装置1であって、ユニット間の結合方法が異なる濾過装置1の図である。
図1Dは、濾過装置1として、多数のユニットを重ねる態様の濾過装置1を示した図である。
【0010】
(濾過装置の概略構成)
濾過装置1は、内部に脱気ポンプ2aが配置され、脱気ポンプの吸気孔2bが配置される接合部を有するポンプユニット2と、複数のケースユニット3と、複数のインナー容器4と、複数のシール部材5と、を備えている。濾過する対象は、液体、気体のいずれをも含む流体である。
【0011】
複数のケースユニット3は、それぞれ、一端に第1開口と、他端に第2開口と、を有する中空の筒形形状を有している。複数のケースユニット3は、それぞれを重ねて使用する構造となっている。代表的には中空の円筒形状であるが、断面は四角である中空の四角柱など多角形を断面とする角柱であってもよい。複数のケースユニット3のそれぞれの形状は、代表的には、同じ形状とすることができる。同じ形状とすることで形状の標準化が可能となる。ここでは、複数のケースユニット3は、それぞれ、中空部の断面が円である円筒形状であって、その断面の中心軸をCLと仮定して説明する。円筒形状でない場合においても、複数のケースユニット3はそれぞれにおいて、第1開口と第2開口とは互いに中心が画定され、その中心軸を結ぶ中心軸CLが定義できる形状であることが望ましい。
【0012】
複数のケースユニット3は、第1ケースユニット3a,第2ケースユニット3bを少なくとも有している。複数のケースユニット3の個数は、必要に応じて、2以上個数で設定することができる。たとえば、ケースユニット3の個数を3個で構成させる場合には、第1ケースユニット3a、第2ケースユニット3bに加えて、第3ケースユニット3cで構成させることができる。複数のケースユニット3の個数が、それぞれ、4個の場合にはさらに第4ケースユニット3dを、5個の場合にはさらに第5ケースユニット3eを、6個の場合にはさらに第6ケースユニット3fをそれぞれ加えるように構成させることができる。また、さらに必要に応じて、ケースユニット3の個数を増やすこともできる。ケースユニット3は、それぞれ、その内面が流体と接しないように構成される。
【0013】
複数のインナー容器4は、それぞれ、一端に流体入口を有する容器であって、他端に流体を保持する保持部を有している容器である。インナー容器4は、流体を保持する保持部を、複数のケースユニット3の第2開口から複数のケースユニット3の中空部に挿入し、インナー容器4の流体入口がケースユニット3の第1開口となるように、インナー容器4の流体入口の縁部が複数のケースユニット3の第2開口で支持されるように接合して使用される。複数のケースユニット3のそれぞれを重ねる多段式構造とすることで、複数のインナー容器4のそれぞれも重ねられた多段式構造となっている。複数のケースユニット3のそれぞれが重ねられた際において、中心軸CLが鉛直方向に指向するようになっている。
【0014】
インナー容器4は多段式構造であっても、その剛性はケースユニット3が担っているため、インナー容器4はケースユニット3の剛性より低く剛性を設定することができる。また、インナー容器4は接流体部材であるため、一般に使い捨て部材とすることが好ましい。そのため、低廉であること、および流体に対して耐食性、耐薬品性を有することが望ましい。低廉および耐食性、耐薬品性の観点からは、たとえば、熱可塑性樹脂(結晶性)であるところのオレフィン系(ポリプロピレン(PP)・ポリエチレン(HDPE・LDPE・HMPE)),ポリアミド(PA66・PA6・PA12),フッ素系(PFA・PTFE・ETFE・ECTFE)や,熱可塑性樹脂(非晶性)であるところのポリエチレンテレフタレート(PET)・ポリスチレン(PS),ポリカーボネート(PC),サルフォン系(ポリサルフォン・ポリエーテルサルフォン・ポリフェニルサルフォン)その他ステンレス(SUS316L・SUS316・SUS304)などの金属やガラスなどが選択可能である。これにより、ケースユニット3は繰り返し使用を目的にし、インナー容器4は濾過処理の実行の完了の度に、交換して廃棄可能とする使い捨て使用を目的に構成することができる。
【0015】
複数のインナー容器4は、第1インナー容器4a,第2インナー容器4bを少なくとも有している。インナー容器4の個数は、ケースユニット3の個数と同じ個数で設定される。ケースユニット3の個数が2個の場合には、インナー容器4は、第1インナー容器4a、第2インナー容器4bで構成される。ケースユニット3の個数が3個の場合には、インナー容器4は、それに加えて、第3インナー容器4cで構成させることができる。ケースユニット3の個数が、それぞれ、4個の場合にはさらに第4インナー容器4dを、5個の場合には第5インナー容器4eを、6個の場合には第6インナー容器4fを、それぞれ加えるように構成させることができる。また、さらに必要に応じて、ケースユニット3の数と同じ数の範囲で増やすこともできる。インナー容器4のそれぞれは、その内面に流体が保持されるように、または流れるように構成される。
【0016】
複数のインナー容器4が重ねられたときに、一番下に位置するインナー容器4が第1インナー容器4aである。第1インナー容器4aは、濾過が完了した流体を保持する保持部を有する濾過流体容器として機能する。濾過流体容器の流体を保持する保持部には孔が配置されていない。一方、複数のインナー容器4が重ねられたときに、第1インナー容器4aの上に重ねられるインナー容器4である第2インナー容器4b、第3インナー容器4c、第4インナー容器4d、第5インナー容器4e、第6インナー容器4fには、流体入口が配置される端部と反対側の端部たる他端に流体入口よりも大きさの小さい流体出口を保持部に有している。第2インナー容器4b、第3インナー容器4c、第4インナー容器4d、第5インナー容器4e、第6インナー容器4fは、それぞれの保持部に、フィルタ、活性炭などの吸着剤、整流構造のいずれかを、選択して配置して、それぞれをフィルタユニット、吸着剤ユニット、整流ユニットとして機能するように構成する。それぞれのインナー容器4の保持部の形状は、ケースユニット3の内部に収納できる限り、保持部の内部に配置するフィルタおよび吸着剤の形状特性や、整流構造に応じて、最適な形状が選択可能であって、自由に変更することができる。すなわち、
図1Bから
図1Dに示される形状に拘束されない。インナー容器4の流体入口が配置される一端とその反対側の他端との距離は、ケースユニット3の第1開口と第2開口との間の距離よりも短くなるように設定される。
【0017】
複数のケースユニット3と複数のインナー容器4とは、シール部材5で結合される。複数のケースユニット3と複数のインナー容器4とを、シール部材5で結合し、ポンプユニット2の上に配置して組み合わせると、濾過装置1が構成される。そのとき、複数のインナー容器4をフィルタ容器、吸着剤容器、整流容器として機能を変更させることで、濾過装置1を構成させることができる。ポンプユニット2を稼働させることにより、インナー容器4の中の気体が排気され、濾過装置1は、流体に含まれる異物を濾過して除去し目的の流体を得るために必要な様々な種類の濾過形態に容易に組み換え可能な組立型減圧式濾過装置として機能する。シール部材5は、ネオプレンゴムなどの可撓性樹脂であって、変形により密閉性が高い材料を選択することが好ましい。
【0018】
(濾過装置の詳細構成)
続いて、ポンプユニット2、ケースユニット3、インナー容器4、およびシール部材5を如何に組み合わせて濾過装置1を構成させるかについて説明する。
図1Aおよび
図1Bは、基本形態の濾過装置1を示している。
図1Aと
図1Bに示される濾過装置1の基本形態は、濾過する流体を濾過するフィルタが配置されるフィルタユニットと、濾過された濾過後の流体を保持する濾過流体ユニットと、の2段式のユニット構成が、ポンプユニット2の上に配置される形態である。ここで、本明細書においてユニット構成の段数は、ポンプユニット2の上に配置されるケースユニット3の個数に対応するものとして定義する。すなわち、ポンプユニット2の上に配置されるケースユニット3の個数が2個の場合に2段式とよび、N個の場合にN段式として定義する。また、段数の呼称「第N段」の意味するところは、最下段(ポンプユニット2の直上)を第1段とし、「第N段」はポンプユニット2の真上の第1段より上側にN段目を意味するものとして、下側より上側に向かって段数が上昇するように定義する。
【0019】
ポンプユニット2は、内部に脱気ポンプ2aが配置され、濾過装置1の最下段に配置されて、すべてのユニットを支持するハウジングを有するユニットである。ポンプユニット2の上面には脱気ポンプの内部へと吸引した気体を導入するための管路につながる吸気孔2bが配置される。
【0020】
基本形態の濾過装置1では、第1ケースユニット3aと第2ケースユニット3bとからなる2個のケースユニット3と、第1インナー容器4aと第2インナー容器4bとからなる2個のインナー容器4とを構成として有している。ポンプユニット2は、その上面に接合部2cを有している。第1ケースユニット3aと第2ケースユニット3bとは、それぞれ、一端に第1開口3a1,3b1と、その反対側の端部である他端に第2開口3a2,3b2とを有している。第1ケースユニット3aは、第1ケースユニット3aの第1開口3a1とポンプユニット2の吸気孔2bとが流体的に連通するようにポンプユニット2と接合可能である。接合の方法は問わないが、ポンプユニット2の吸気孔2bが流体的に連通し、第1ケースユニット3aで外部と隔絶される第1ケースユニット3aの内部の空間が外部から密閉可能なように接合される必要がある。たとえば、ケースユニット3同士の接合に使用するシール部材5を使用して接合してもよい。ポンプユニット2の吸気孔2bが流体的に連通し、第1ケースユニット3aで外部と隔絶される第1ケースユニット3aの内部の空間が外部から密閉可能なように接合される前提で様々な形態の接合方法をとることができる。この接合には、第1ケースユニット3aとポンプユニット2とを一体的に形成することも含む。第2ケースユニット3bの第1開口3b1の縁部は、第1ケースユニット3aの第2開口3a2の縁部と第1シール部材5aを挟持する状態で、第1ケースユニット3aの第2開口3a2の縁部と接合可能である。
【0021】
第2ケースユニット3bの第1開口3b1の縁部と第1ケースユニット3aの第2開口3a2の縁部との接合の際には、予め第1インナー容器4aの保持部4a3を第1ケースユニット3aの内部の中空部に第1ケースユニット3aの第2開口3a2の側から挿入し、第1インナー容器4aの流体入口4a1が第1ケースユニット3aの第2開口3a2と合致するように、第1インナー容器4aの流体入口4a1の縁部と第1ケースユニット3aの第2開口3a2の縁部とを合わせる。そして、この状態で、第1インナー容器4aの流体入口4a1の縁部を、第2ケースユニット3bの第1開口3b1の縁部と第1シール部材5aとで挟持する。たとえば、第1シール部材5aの外周側では第2ケースユニット3bの第1開口3b1の縁部と第1ケースユニット3aの第2開口3a2の縁部とで第1シール部材5aを挟持し、第1シール部材5aの内周側では第2ケースユニット3bの第1開口3b1と第1シール部材5aとで第1インナー容器4aの流体入口4a1の縁部を挟持する。上記で、「第1インナー容器4aの流体入口4a1が第1ケースユニット3aの第2開口3a2と合致する」とは、「第1ケースユニット3aの第2開口3a2が第1インナー容器4aで塞がれて第1ケースユニット3aの第2開口3a2が第1インナー容器4aの流体入口4a1となること」を技術的に意味する。本明細書では、以下、インナー容器の流体入口が対応するケースユニットの第2開口と合致するとの同義の表現を使用するが、これは上記と同様に、「ケースユニットの第2開口が対応するインナー容器で塞がれてそのケースユニットの第2開口が対応するインナー容器の流体入口となること」を共通的に意味するものである。
【0022】
第2インナー容器4bは、第2インナー容器4bの保持部4b3を第2ケースユニット3bの中に挿入し、第2ケースユニット3bの第2開口3b2が第2インナー容器4bの流体入口4b1となるように第2インナー容器4bの流体入口4b1の縁部と第2ケースユニット3bの第2開口3b2の縁部とを合わせる。そして、第2インナー容器4bの流体入口4b1の縁部と第2ケースユニット3bの第2開口3b2の縁部とで第2シール部材5bを挟持する。
【0023】
第1ケースユニット3aの第2開口3a2と第2ケースユニット3bの第1開口3a1との接合は、たとえば、
図1Bのように、第1ケースユニット3aの第2開口3a2と第2ケースユニット3bの第1開口3a1とのそれぞれに、第1ケースユニット3aと第2ケースユニット3bとの外面から外側に延出するフランジを配置して、そのフランジで第1シール部材5aを挟持する形状としてもよい。一方、
図1Cのように、第1ケースユニット3aの第2開口3a2の縁部と第2ケースユニット3bの第1開口3a1の縁部とのそれぞれに、第1ケースユニット3aと第2ケースユニット3bとのそれぞれの内面側の中心軸CLに沿った長さと外面側の中心軸CLに沿った長さを違えて、第1ケースユニット3aの第2開口3a2の縁部と第2ケースユニット3bの第1開口3a1の縁部とのそれぞれにおいて円周方向に連なる座を形成させる。その座にシール部材6を嵌め込んで、第1ケースユニット3aの第2開口3a2の縁部の座と第2ケースユニット3bの第1開口3a1の縁部の座とでシール部材6aを挟持する形態とすることもできる。本発明の濾過装置1では、フランジを配置して第1シール部材5aを挟持する形態と、座を形成してシール部材6aを挟持する形態との、いずれの態様をも採用することができる。
【0024】
第1インナー容器4aの保持部4a3は流体入口4a1を上側にした場合に底部側に設けられる内容物の支持部である。同様に、第2インナー容器4bの保持部4b3は流体入口4b1を上側にした場合に底部側に設けられる内容物の支持部である。上側に位置する第2インナー容器4bの保持部4b3には、保持部4b3の底部に流体出口4b2が配置される。基本形態の場合には、上側に位置する第2インナー容器4bの保持部4b3に、流体入口4b1と流体出口4b2との間にフィルタが配置されて、第2インナー容器4bはフィルタユニットとして機能する。ポンプユニット2より上側において最下部にあたる位置に配置される第1インナー容器4aは第2インナー容器4bのフィルタを通過した流体を保持部4a3で保持する濾過流体ユニットして機能する。第1インナー容器4aの保持部4a3では濾過した流体を保持するため、保持部4b3の底部には流体出口は配置されない。第1インナー容器4aは保持部4b3の流体が保持される予定高さより上側の側部に、第1インナー容器4aの内外を貫通する通気孔4a2を有している。
【0025】
(濾過装置の作用)
上記の構成に組み立てられた濾過装置1は以下のように作用する。ポンプユニット2の脱気ポンプ2aを動作させると、ポンプユニット2の吸気孔2bと連通し外部と密閉された第1ケースユニット3aの内部の気体が吸気孔2bから排気されて第1ケースユニット3aの内部の気圧が減少する。第1ケースユニット3aの内部の気圧の減少により、通気孔4a2を介して第1インナー容器4aの内部の気圧が減少する。第1インナー容器4aの上側の第2インナー容器4bには、流体入口4b1から濾過したい流体(たとえば、濾過したい原流体)を入れる。そうすると、第1インナー容器4aの内部の気圧の減少により、第2インナー容器4bの流体出口4b2と流体入口4b1との間に差圧が生じ、濾過したい流体は第2インナー容器4bの流体出口4b2から吸い出されるように第2インナー容器4bの保持部4b3のフィルタを通過して第1インナー容器4aの内部へと流れ出る。第2インナー容器4bの流体出口4b2から排出された濾過された流体は、第1インナー容器4aの保持部4a3で保持される。
【0026】
(濾過装置の応用構成)
基本形態の濾過装置1は、上記説明したとおりケースユニット3とインナー容器4の個数をそれぞれ2個としたケースユニットを2段式とした形態であるが、
図1Dに示すように、ケースユニット3およびインナー容器4の個数とシール部材5の個数とを増やして、さらに3段式以上の多段式の構成にすることができる。
図1DはN段式の構成とした図である。そして、インナー容器4の保持部において、フィルタ、吸着剤、整流構造を配置して、その組み合わせの構成を変えることで、流体の様々な濾過処理プロセスに適するように変更する応用形態として構成することが可能である。以下、3段式以上の応用形態について説明する。
【0027】
ここで、応用形態の説明において、第3ケースユニット3c,第4ケースユニット3d,第5ケースユニット3e,第6ケースユニット3fは、前記の基本形態のケースユニット3の第1ケースユニット3aおよび第2ケースユニット3bと同じ形態および構成である。第3インナー容器4c,第4インナー容器4d,第5インナー容器4e,第6インナー容器4fは、前記の基本形態のインナー容器4の第2インナー容器4bと同じ形態および構成である。第3シール部材5cから第6シール部材5fも第1シール部材5aと同じ構成である。また、ケースユニット3同士およびケースユニット3とインナー容器4との結合は前記のケースユニット3にフランジを配置してシール部材5を使用する例によって説明するが、基本形態と同様に、ケースユニット3にフランジを配置することなくシール部材6による前記の接合を適用することは可能である。したがって、接合については、フランジを配置することなくシール部材6による接合も含むものとして理解される。
【0028】
(3段式の応用構成)
3段式の応用形態では、前記の基本形態に加えて、さらに、第3ケースユニット3cと第3インナー容器4cと第3シール部材5cを有している。基本形態の状態では、すでに第2インナー容器4bの保持部4b3が第2ケースユニット3bの中に第2ケースユニット3bの第2開口3b2の側から挿入され、第2インナー容器4bの流体入口4b1の縁部は第2シール部材5bと第2ケースユニット3bの第2開口3b2の縁部とにより挟持されている。この状態で、第3ケースユニット3cの第1開口3c1は、第2インナー容器4bの流体入口4b1の縁部を第2シール部材5bとで挟持する状態で、かつ第2ケースユニット3bの第2開口3b2の縁部とで第2シール部材5bを挟持するように接合される。そして、その接合の際に、第3インナー容器4cの保持部4c3が第3ケースユニット3cの中に第3ケースユニット3cの第2開口3c2の側から挿入され、第3インナー容器4cの流体入口4c1の縁部は第3シール部材5cと第3ケースユニット3cの第2開口3c2の縁部とにより挟持される。これにより、基本形態の上に、第3ケースユニット3cと第3インナー容器4cとが重ねられた3段の応用形態が完成する。
【0029】
(N段式の応用形態の濾過装置の構成)
同様に4段式はもとより、N段式の応用形態を構成することができる。以下、
図1Dを参照してN段式の応用形態として説明する。
図1Dは3段式よりも多い段数において、一部を省略して、一般化して図である。一般的には、N=1から6(段)である。N=1~6に対して、符号n=a~fをそれぞれ割り振るものとする。N段式の応用形態について一般化して説明すると、(N-1)段式の形態に加えて、さらに、第Nケースユニット3nと第Nインナー容器4nと第Nシール部材5nを有している(n=dからf)。(N-1)段式の応用形態の状態では、すでに第(N-1)インナー容器4(n-1)の保持部4(n-1)3が第(N-1)ケースユニット3(n-1)の中に第(N-1)ケースユニット3(n-1)の第2開口3(n-1)2の側から挿入され、第(N-1)インナー容器4(n-1)の流体入口4(n-1)1の縁部は第(N-1)シール部材5(n-1)と第(N-1)ケースユニット3(n-1)の第2開口3(n-1)2の縁部とにより挟持されている。この状態で、第Nケースユニット3nの第1開口3n1は、第(N-1)インナー容器4(n-1)の流体入口4(n-1)1の縁部を第(N-1)シール部材5(n-1)とで挟持する状態で、かつ第(N-1)ケースユニット3(n-1)の第2開口3(n-1)2の縁部とで第(N-1)シール部材5(n-1)を挟持するように接合される。そして、その接合の際に、第Nインナー容器4nの保持部4n3が第Nケースユニット3nの中に第Nケースユニット3nの第2開口3n2の側から挿入され、第Nインナー容器4nの流体入口4n1の縁部は第Nシール部材5nと第Nケースユニット3nの第2開口3n2の縁部とにより挟持される。これにより、(N-1)段式の応用形態の上に、第Nケースユニット3nと第Nインナー容器4nが重ねられたN段式の応用形態が完成する。
【0030】
上記のN段式の応用構成の濾過装置1においては、第Nインナー容器4n(N=2~6、n=b~f)の保持部4n3に、フィルタ部材、吸着剤、または整流構造を任意に選択して配置することで、第Nインナー容器4n(N=2~6、n=b~f)をフィルタユニット、吸着剤ユニット、整流ユニットとすることができる。これにより、濾過装置1の機能を濾過すべき流体の濾過処理プロセスに応じて自由に変更することができる。
【0031】
たとえば、以下の表1から表3に示すように、第Nインナー容器4n(N=2~6、n=b~f)の保持部4n3に、フィルタ部材、吸着剤、または整流構造のいずれかを任意に選択した実施例を選択することができる。表1は2段式の基本形態のインナー容器の保持部の代表的構成例を示している。表2は3段式の応用形態のインナー容器の保持部の代表的構成例を、表3は4段式の応用形態のインナー容器の保持部の代表的構成例を、それぞれ示している。ここに示して例はあくまでも例示であって、それぞれの個数等を変更することにより、変更追加が可能である。たとえば、表1でいえば、最左カラムは下側から第N段のインナー容器の保持部を示している。そして、それぞれのカラムに対応する右側のカラムは、そのインナー容器の保持部に配置される部材を示している。表1から表3に示す実施例は、それぞれについて後述する実施例に対応する。
【0032】
【0033】
【0034】
【0035】
たとえば、表1から表3について、応用形態である3段式の例を示した表2を代表例として説明すると、実施例2では、最上段にあたる第3段の第3インナー容器4cの保持部4c3にはフィルタ部材Aが配置され、その直下の第2段の第2インナー容器4bの保持部4b3にはフィルタ部材Aまたはフィルタ部材Bが配置されることを意味している。フィルタ部材Aとフィルタ部材Bは異なる種類のフィルタ部材であって、たとえばフィルタ部材の孔径、空隙の大きさ、厚み、または材料等が異なるフィルタ部材である。すなわち、フィルタ部材Aとフィルタ部材Bとにおいて、濾過の際に除去する対象とする不純物の大きさが異なることから、フィルタ部材の種類を自由に設定することができる。吸着剤は、たとえば活性炭など、物質を付着させて吸収する部材一般である。フィルタおよび吸着剤はインナー容器の内部に配置されるものである。一方、整流構造は、たとえば、吸着剤に均等に原流体を流し込むために、容器の底部に配置される同心円状などの環状で等間隔に配置される複数の孔からなるインナー容器の底部の構造である。
【0036】
(N段式の応用形態の濾過装置の作用)
上記のN段式の応用構成の濾過装置1は以下のように作用する。ポンプユニット2の脱気ポンプ2aを動作させると、ポンプユニット2の吸気孔2bと連通し外部と密閉された最下段の第1ケースユニット3aの内部の気体が吸気孔2bから排気されて第1ケースユニット3aの内部の気圧が減少する。第1ケースユニット3aの内部の気圧の減少により、通気孔4a2を介して第1インナー容器4aの内部の気圧が減少する。第1インナー容器4aの内部の気圧の減少により、第2インナー容器4bの流体出口4b2と流体入口4b1との間に差圧が生じ、第2インナー容器4bの流体出口4b2に第1インナー容器4aの内部に向かっての吸引圧が生じる。そして、同様にその連鎖で、第Nインナー容器4nの流体出口4n2に第(N-1)インナー容器4(n-1)の内部に向かっての吸引圧が生じる。第Nインナー容器4nの流体入口4n1は代表的には大気開放とすれば、第Nインナー容器4nの流体入口4n1から第1インナー容器4aの内部に至るまで、途中のインナー容器において段階的に圧力勾配を生じる。この圧力差により、第Nインナー容器4nの流体入口4n1から導入された濾過すべき流体は第Nインナー容器4nの流体出口4n2に生じる第(N-1)インナー容器4(n-1)の内部への吸引力で第Nインナー容器4nの流体出口4n2から第(N-1)インナー容器4(n-1)の流体入口4(n-1)1へと排出される。すべてのインナー容器4を通過した流体は、最終的に第1インナー容器4aの保持部4a3へと吸引されて流れ出て、第1インナー容器4aの保持部4a3で保持される。
【0037】
たとえば、表2の実施例2を読み取ることにより、3段式の応用形態の濾過装置1では以下の作用がある。ポンプユニット2の脱気ポンプ2aを動作させると、ポンプユニット2の吸気孔2bと連通し外部と密閉された第1ケースユニット3aの内部の気体が吸気孔2bから排気されて第1ケースユニット3aの内部の気圧が減少する。第1ケースユニット3aの内部の気圧の減少により、通気孔4a2を介して第1インナー容器4aの内部の気圧が減少する。第1インナー容器4aの内部の気圧の減少により、第2インナー容器4bの流体出口4b2と流体入口4b1との間に差圧が生じ、第2インナー容器4bの流体出口4b2に第1インナー容器4aの内部に向かっての吸引圧が生じる。そして、その連鎖で、さらに第2インナー容器4bの内部の気圧が減少して、第3インナー容器4cの流体出口4c2と流体入口4c1との間に差圧が生じ、第3インナー容器4cの流体出口4c2に第2インナー容器4bの内部に向かっての吸引圧が生じる。最上段の第3インナー容器4cの保持部4c3には、流体入口4c1から濾過したい流体(たとえば、濾過したい原流体)を入れる。そうすると、第2インナー容器4bの内部の気圧の減少により、濾過したい流体は第3インナー容器4cの流体出口4c2から第2インナー容器4bの内部へと吸引されてフィルタ部材Aを通過して第2インナー容器4bの保持部4b3に落下し、さらに、第2インナー容器4bの流体出口4b2から吸引されて、第2インナー容器4bの保持部4b3のフィルタ部材Bを通過して流体出口4b2から第1インナー容器4aの保持部4a3へと吸引されて流れ出て、第1インナー容器4aの保持部4a3で保持される。続いて、本実施の形態の代表的な実施例として表1から表3に列挙した実施例のそれぞれについて、以下説明する。なお、以下の実施例はあくまでも代表例であって、ここに列挙する実施例には限られない。特に、実施例2の2つのフィルタを重ねた実施例のように、たとえば、異なるフィルタが配置される複数のインナー容器を重ねたり、異なる吸着剤がそれぞれ配置される複数のインナー容器を重ねるなど、複数の同一種類のインナー容器を重ねて配置することは当然に可能である。
【0038】
(実施例1)
まず、
図2Aから
図3を参照して、本発明の実施例1としての濾過装置1について説明する。実施例1は2段式の基本形態の濾過装置1の実施例である。
図2Aは実施例1の濾過装置1の結合状態を示した斜視図である。
図2Bは濾過装置1の分離状態を示した斜視図である。
図3は
図2Aの断面B-Bを示した図である。本明細書では、濾過すべき濾過を行う前の流体を「原流体」とよび、その濾過された後の流体を「濾過流体」とよぶ。また、以下の実施例の説明では、前記実施の形態のうち、フランジを配置する例で説明するが、前記の実施の形態のとおり、フランジを配置しない態様も適用可能である。
【0039】
濾過装置1は、ポンプユニット10と、第2ケースユニットとしての濾過流体ユニット31と、第1ケースユニットとしての原流体ユニット32とを備えている。ポンプユニット10は、内部に脱気ポンプ10aが配置され、排気対象の空間の気体を吸気する吸気孔10bを有している。
【0040】
濾過流体ユニット31は、中空部31aを有する筒状形状であって、代表的には円筒形である。濾過流体ユニット31は両端に開口端である濾過流体ユニット開口31b,31cを有している。濾過流体ユニット31の鉛直方向上方には、濾過流体ユニット31の一方の濾過流体ユニット開口31bが載置可能な形状、すなわち断面形状が濾過流体ユニット31と同じ形状を有している。代表的には、濾過流体ユニット31は円筒形であって、ポンプユニット10も同じ径の円筒形である。ポンプユニット10の上方は、濾過流体ユニット31の一方の濾過流体ユニット開口31bの縁部と嵌合可能な形状を有している。濾過流体ユニット31の一方の濾過流体ユニット開口31bはポンプユニット10の吸気孔10bと連通するようにポンプユニット10の上側に取付部材50で着脱可能に取付け可能である。
【0041】
原流体ユニット32は、中空部32aを有する筒状形状であって、代表的には円筒形である。濾過流体ユニット31と原流体ユニット32は相互互換が可能な完全同一形状にすることが好ましい。原流体ユニット32は両端に開口端である原流体ユニット開口32c,12cを有している。原流体ユニット32の原流体ユニット開口の一方の開口32cは濾過流体ユニット31の濾過流体ユニット開口の他方の開口31cと対応する形状を有していて、第1取付構造51により着脱可能に接合可能である。第1取付構造51により、濾過流体ユニット31の濾過流体ユニット開口の他方の開口31cと原流体ユニット32の原流体ユニット開口の一方の開口32cとが接合されると、濾過流体ユニット31の中空部31aと原流体ユニット32の中空部32aとが連通する。
【0042】
第1取付構造51は第1シール部材51aを有し、濾過流体ユニット31の濾過流体ユニット開口の他方の開口31cの開口周縁と原流体ユニット32の原流体ユニット開口の一方の開口32cの開口周縁とが第1シール部材51aに密着して、第1シール部材51aを挟持する構造となっている。
【0043】
濾過流体ユニット31には濾過流体が入り込む開口21aを有する接流体部材としての第1インナー容器たるインナー濾過流体容器41が取り付けられる。インナー濾過流体容器41は、開口41aが濾過流体ユニット開口の他方の開口31cとなるように第1取付構造51により濾過流体ユニット開口の他方の開口31cに着脱可能に支持される。具体的には、たとえば、インナー濾過流体容器41は、第1シール部材51aと原流体ユニット開口の他方の開口31cの開口周縁とが、インナー濾過流体容器41の開口41aの縁部41eを密着するように挟持して支持される。インナー濾過流体容器41の本体は、濾過流体ユニット31の中空部31a内に入り込む形で固定されていて、濾過流体ユニット31の中空部31a内の位置で、インナー濾過流体容器41の開口41aから入り込んだ濾過流体をインナー濾過流体容器41の本体で保持可能である。
【0044】
濾過流体ユニット31の濾過流体ユニット開口の他方の開口31cの開口周縁はフランジ31dを有し、原流体ユニット32の原流体ユニット開口の一方の開口32cの開口周縁はフランジ32dを有するように構成することもできる。このとき、第1シール部材51aは、濾過流体ユニット開口の他方の開口31cの開口周縁のフランジ31dの外形の形状に合致するように嵌合可能な濾過流体ユニット側窪み51bと、原流体ユニット開口の一方の開口32cの開口周縁のフランジ32dの外形の形状に合致するようにフランジ32dが嵌合可能な原流体ユニット側窪み51cと、を有する環状形状とするのが好ましい。
【0045】
第1シール部材51aは、濾過流体ユニット側窪み51bと原流体ユニット側窪み51cとの間に、第1シール部材51aの外側の側面から第1シール部材51aの内面に向かって延在する溝51dを有している。溝51dはフランジ31dとフランジ32dのそれぞれに平行に延在する。第1シール部材51aの径方向における溝51dの先端はインナー濾過流体容器41の開口41aの縁部41eに至っておらず、溝51dの先端と縁部41eとの間にある程度の距離が確保されている。
【0046】
原流体ユニット32には原流体が入り込む開口42aを有する接流体部材としてのインナーフィルタ容器42が取り付けられる。インナーフィルタ容器42は、開口42aが原流体ユニット開口の他方の開口32cとなるように第2取付構造52により原流体ユニット開口の他方の開口32cに着脱可能に支持される。第2取付構造52は第2シール部材52aを有し、第2シール部材52aが原流体ユニット32の原流体ユニット開口の他方の開口32cに取り付けられ、インナーフィルタ容器42の開口42aの縁部が第2シール部材52aによって原流体ユニット32の他方の開口32cに支持されるように取り付けられる。
【0047】
インナー濾過流体容器41の側部41bにはインナー濾過流体容器41の内部41cと濾過流体ユニット31の内部の中空部31aとを連通する連通孔41dを備えている。
【0048】
インナーフィルタ容器42の下部42bには濾過のためのフィルタ部材61を備えている。インナーフィルタ容器42は、インナーフィルタ容器42の内部42cがフィルタ部材61を介してインナー濾過流体容器41の内部41cと連通する濾過孔42dを備える。
【0049】
続いて、実施例1の濾過装置1が、組み立てられた状態において、どのように機能するかを説明する。まず、濾過すべき原流体をインナーフィルタ容器42の開口42aからインナーフィルタ容器42の内部に入れる。続いて、ポンプユニット10の脱気ポンプ10aを作動させると、吸気孔10bを介して、濾過流体ユニット31の中空部31aが脱気される。濾過流体ユニット31の中空部31aが脱気されて圧力が減じられると、濾過流体ユニット31の中空部31aと連通するインナー濾過流体容器41の側部41bの連通孔41dからインナー濾過流体容器41の内部41cが脱気されてインナー濾過流体容器41の内部41c圧力が減じられる。
【0050】
これにより、インナー濾過流体容器41の内部41cの圧力がインナーフィルタ容器42の内部42cの圧力より低下し、インナー濾過流体容器41の内部41cとインナーフィルタ容器42の内部42cとの間に差圧が生じる。この差圧により、インナーフィルタ容器42の内部42cに入れられている原流体がフィルタ部材61を通過して濾過され、インナー濾過流体容器41の内部41cへと導入され、インナー濾過流体容器41の内部41cで濾過流体として回収される。すべての量の原流体が濾過されたのちに、脱気ポンプ10aを停止させる。原流体ユニット32をインナーフィルタ容器42とともに濾過流体ユニット31と第1シール部材51aとから分離する。そして、インナーフィルタ容器42を原流体ユニット32から分離する。インナー濾過流体容器41の内部41cの濾過流体を回収した後には、濾過流体ユニット31とインナー濾過流体容器41と第1シール部材51aとを分離する。濾過流体ユニット31と第1シール部材51aとは原則、流体に接触しないので、洗浄することなく、再利用することが可能である。
【0051】
(実施例2および実施例3)
続いて、本発明の実施例2および実施例3の3段式の濾過装置1について説明する。ここでは、
図4を参照して、実施例3を代表例として説明する。
図4は実施例3の濾過装置1の結合状態の断面図である。実施例3は実施例1に加えて、第3インナー容器としての吸着剤ユニット33を重ねて、原流体の前に不純物を活性炭などの吸着剤62により吸着させるための実施例である。濾過流体ユニット31と、原流体ユニット32と、インナー濾過流体容器41と、インナーフィルタ容器42が組み立てられた実施例1の部分は同じである。以下、原流体ユニット32の上に、吸着剤ユニット33を組み合わせる部分から説明する。また、以下の実施例の説明では、前記実施例1と同様に、前記実施の形態のうち、フランジを配置する例で説明するが、前記の実施の形態のとおり、フランジを配置しない態様も適用可能であることは言うまでもない。
【0052】
吸着剤ユニット33は中空部13aを有する筒形形状であって、代表的には円筒形である。吸着剤ユニット33は原流体ユニット32と同じ形状とすることもできる。吸着剤ユニット33は、両端に開口端である吸着剤ユニット開口33b,33cを備える。吸着剤ユニット33は吸着剤ユニット開口の一方の開口33bと原流体ユニット開口の他方の開口32cとを連通するように吸着剤ユニット33の上側に取り付けられる。吸着剤ユニット33の一方の開口33bと原流体ユニット32の他方の開口32cとは、実施例1で説明した第2取付構造52により脱着可能に接合される。
【0053】
実施例1では第2取付構造52は、インナーフィルタ容器42を原流体ユニット32に支持させるための部材として構成したが、実施例3においては、実施例1における第1取付構造と同じ構造として、吸着剤ユニット33と原流体ユニット32との接合とともに、インナーフィルタ容器42を原流体ユニット32が支持する構造である。
【0054】
第2取付構造52は第2シール部材52aを有し、原流体ユニット32の原流体ユニット開口の他方の開口32cの開口周縁と吸着剤ユニット33の吸着剤ユニット開口の一方の開口33bの開口周縁とが第2シール部材52aに密着して、第2シール部材52aを挟持する構造となっている。そして、インナーフィルタ容器42は、その開口42aが原流体ユニット32の原流体ユニット開口の他方の開口32cとなるように第2取付構造52により原流体ユニット開口の他方の開口32cに着脱可能に支持される。具体的には、たとえば、インナーフィルタ容器42は、第2シール部材52aと原流体ユニット開口の他方の開口32cの開口周縁とが、インナーフィルタ容器42の開口42aの縁部42eを密着するように挟持して支持される。インナーフィルタ容器42の本体は、原流体ユニット32の中空部32a内に入り込む形で固定されていて、原流体ユニット32の中空部32a内の位置で、インナーフィルタ容器42の開口42aから導入した原流体をインナーフィルタ容器42の本体で保持可能である。
【0055】
原流体ユニット32の他方の開口32cの開口周縁はフランジ32eを有し、吸着剤ユニット33の原流体ユニット開口の一方の開口33bの開口周縁はフランジ33dを有するように構成することもできる。このとき、第2シール部材52aは、原流体ユニット開口の他方の開口32cの開口周縁のフランジ32eの外形の形状に合致するように嵌合可能な原流体ユニット側窪み52bと、吸着剤ユニット開口の一方の開口33bの開口周縁のフランジ33dの外形の形状に合致するようにフランジ33dが嵌合可能な吸着剤ユニット側窪み52cと、を有する環状形状とするのが好ましい。
【0056】
第2シール部材52aは、原流体ユニット側窪み52bと吸着剤ユニット側窪み52cとの間に、第2シール部材52aの外側の側面から第2シール部材52aの内面に向かって延在する溝52dを有している。溝52dはフランジ32eとフランジ33dのそれぞれに平行に延在する。第2シール部材52aの径方向における溝52dの先端はインナーフィルタ容器42の開口42aの縁部42eに至っておらず、溝52dの先端と縁部42eとの間にある程度の距離が確保されている。
【0057】
吸着剤ユニット33には不純物の吸着前の原流体が入り込む開口43aを有する接流体部材としての第3インナー容器たるインナー吸着剤容器43が取り付けられる。インナー吸着剤容器43は、その開口43aが吸着剤ユニット開口の他方の開口33cとなるように第3取付構造53により吸着剤ユニット開口の他方の開口33cに着脱可能に支持される。第3取付構造53は第3シール部材53aを有し、第3シール部材53aが吸着剤ユニット33の吸着剤ユニット開口の他方の開口33cに取り付けられ、インナー吸着剤容器43の開口43aの縁部が第3シール部材53aによって吸着剤ユニット開口の他方の開口33cに支持されるように取り付けられる。
【0058】
インナー吸着剤容器43は吸着剤ユニット33の剛性より低い材料でできている。たとえばインナー濾過流体容器41と同じ材料が選択できる。これにより、吸着剤ユニット33は繰り返し使用を目的にし、インナー吸着剤容器43は濾過処理プロセスの度に、交換して廃棄可能とする使い捨て使用を目的に構成することができる。インナー吸着剤容器43の下部43bには吸着剤62を保持してインナー吸着剤容器43の内部43cとインナーフィルタ容器42の内部42cと連通する連通孔43dとを備える。
【0059】
続いて、実施例3の濾過装置1が、組み立てられた状態において、どのように機能するかを説明する。まず、濾過すべき原流体であって吸着処理を行う前の原流体をインナー吸着剤容器43の開口43aからインナー吸着剤容器43の内部43cに入れる。ここから脱気ポンプ10aを作動させて、インナー濾過流体容器41の内部41cの圧力がインナーフィルタ容器42の内部42cの圧力より低下し、インナー濾過流体容器41の内部41cとインナーフィルタ容器42の内部42cとの間に差圧が生じる時点までは実施例1と同じである。ここから、実施例3では、インナーフィルタ容器42の内部42cの圧力が下がることにより、インナー吸着剤容器43の内部43cとインナーフィルタ容器42の内部42cとの間にさらに差圧が生じ、この差圧と、インナー吸着剤容器43の内部43cに入れられた原流体が重力とにより、インナー吸着剤容器43の内部43cから吸着剤62を通過した原流体が連通孔43dを通過して、インナーフィルタ容器42の内部42cへと導入される。インナーフィルタ容器42の内部42cへと導入された原流体は、実施例1と同様に濾過されてインナー濾過流体容器41の内部41cで濾過流体として回収される。すべての量の原流体が濾過されたのちに、脱気ポンプ10aを停止させ、実施例1で説明した分離に加えて、吸着剤ユニット33とインナー吸着剤容器43とを分離する。実施例1と同様に、吸着剤ユニット33は洗浄することなく再利用することができる。
【0060】
以上が実施例3の説明であるが、実施例2は、実施例3のインナー吸着剤容器43を、実施例1の下部42bに濾過のためのフィルタ部材61を備えたインナーフィルタ容器42と入れ替えた実施例である。すなわち、実施例2は、実施例2の吸着剤の代わりに、2つのフィルタを有している実施例である。異なる種類のフィルタ部材を備える複数のインナー容器を配置する、たとえばフィルタ部材の目付け量、または材料等が異なるフィルタ部材を有するインナー容器を配置する。これにより、濾過の際に除去する対象とする不純物の大きさが異なることから、フィルタ部材の種類を自由に設定することができる。実施例2は、実施例3のインナー吸着剤容器43をインナーフィルタ容器42に交換しただけの例であり、その他の違いはないので、詳細な説明は割愛する。
【0061】
(実施例4から実施例6)
続いて、本発明の実施例4から実施例6の濾過装置1について説明する。まず、
図5を参照して、実施例4について説明する。実施例5および実施例6は実施例4からの変形として後述する。
図5は実施例4の濾過装置1の結合状態の断面図である。実施例4は実施例2の構成に加えて、吸着剤ユニット33の上に、整流ユニット34を重ねて、濾過処理の初期工程として流れを整える工程を含める実施例である。濾過流体ユニット31と、原流体ユニット32と、吸着剤ユニット33と、インナー濾過流体容器41と、インナーフィルタ容器42と、インナー吸着剤容器43とが組み立てられた実施例3の部分は同じである。以下、実施例3の吸着剤ユニット33の上に、整流ユニット34を組み合わせる部分から説明する。また、以下の実施例の説明では、前記実施例1および2と同様に、前記実施の形態のうち、フランジを配置する例で説明するが、前記の実施の形態のとおり、フランジを配置しない態様も適用可能であることは言うまでもない。
【0062】
整流ユニット34は中空部34aを有する筒形形状であって、代表的には円筒形である。整流ユニット34は吸着剤ユニット33と同じ形状とすることもできる。整流ユニット34は、両端に開口端である整流ユニット開口34b,34cを備える。整流ユニット開口の一方の開口14bと吸着剤ユニット開口の他方の開口33cと連通するように吸着剤ユニット33の上側に取り付けられる。整流ユニット34の一方の開口34bと吸着剤ユニット33の他方の開口33cとは、実施例2で説明した第3取付構造53により脱着可能に接合される。
【0063】
実施例2では、第3取付構造53は、インナー吸着剤容器43を吸着剤ユニット33に支持させるための部材として構成したが、実施例4においては、実施例1の第1取付構造51および実施例2の第2取付構造52のそれぞれと同じ構造として、整流ユニット34と吸着剤ユニット33との接合とともに、インナー吸着剤容器43を吸着剤ユニット33に支持する構造でもある。
【0064】
第3取付構造53は第3シール部材53aを有し、吸着剤ユニット33の吸着剤ユニット開口の他方の開口33cの開口周縁と整流ユニット34の整流ユニット開口の開口34bの開口周縁とが第3シール部材53aに密着して、第3シール部材53aを挟持する構造となっている。そして、インナー吸着剤容器43は、その開口43aが吸着剤ユニット33の吸着剤ユニット開口の他方の開口33cとなるように第3取付構造53により吸着剤ユニット開口の他方の開口33cに着脱可能に支持される。具体的には、たとえば、インナー吸着剤容器43は、第3シール部材53aと吸着剤ユニット開口の他方の開口33cの開口周縁とが、インナー吸着剤容器43の開口43aの縁部43eを密着するように挟持して支持される。インナー吸着剤容器43の本体は、吸着剤ユニット33の中空部33a内に入り込む形で固定されていて、吸着剤ユニット33の中空部33a内の位置で、インナー吸着剤容器43の開口23aから導入した吸着処理前の原流体をインナー吸着剤容器43の本体で保持可能である。
【0065】
吸着剤ユニット33の吸着剤ユニット開口の他方の開口33cの開口周縁はフランジ33eを有し、整流ユニット34の整流ユニット開口の一方の開口34bの開口周縁はフランジ34dを有するように構成することもできる。このとき、第3シール部材53aは、吸着剤ユニット開口の他方の開口33cの開口周縁のフランジ33eの外形の形状に合致するように嵌合可能な吸着剤ユニット側窪み53bと、整流ユニット開口の一方の開口34bの開口周縁のフランジ34dの外形の形状に合致するようにフランジ34dが嵌合可能な整流ユニット側窪み53cと、を有する環状形状とするのが好ましい。
【0066】
第3シール部材53aは、吸着剤ユニット側窪み53bと整流ユニット側窪み53cとの間に、第3シール部材53aの外側の側面から第3シール部材53aの内面に向かって延在する溝53dを有している。溝53dはフランジ33eとフランジ34dのそれぞれに平行に延在する。第3シール部材53aの径方向における溝53dの先端はインナー吸着剤容器43の開口43aの縁部43eに至っておらず、溝53dの先端と縁部43eとの間にある程度の距離が確保されている。
【0067】
整流ユニット34には濾過処理の初期工程として吸着剤ユニット33に均一に原流体を流し込む開口44aを有する接流体部材としての第4インナー容器としてのインナー整流容器44が取り付けられる。インナー整流容器44は、開口44aが整流ユニット34の整流ユニット開口の他方の開口34cとなるように第4取付構造54により整流ユニット開口の他方の開口34cに着脱可能に支持される。第4取付構造54は第4シール部材54aを有し、第4シール部材54aが整流ユニット34の整流ユニット開口の他方の開口34cに取り付けられ、インナー整流容器44の開口44aの縁部が第4シール部材54aによって整流ユニット開口の他方の開口34cに支持されるように取り付けられる。
【0068】
インナー整流容器44は整流ユニット34の剛性より低い材料でできている。たとえばインナー濾過流体容器41と同じ材料が選択できる。これにより、整流ユニット34は繰り返し使用を目的にし、インナー整流容器44は濾過処理プロセスの度に、交換して廃棄可能とする使い捨て使用を目的に構成することができる。インナー整流容器44には、インナー整流容器44の内部44cとインナー吸着剤容器43の内部43cと連通する整流孔44dを備える。整流孔44dは、たとえば、同心円状などの環状で等間隔に配置される複数の孔で構成される。整流孔44dを構成する複数の孔は、インナー整流容器44の開口44aの上方からみたときに、インナー吸着剤容器43の中の吸着剤62の充填部分の投影部分において、単位面積あたりの孔密度が同じになるように配置される。整流孔44dの複数の孔のそれぞれの断面形状は、たとえば、丸や多角形など様々な形がとれる。インナー整流容器44の整流構造である整流孔44dは、インナー整流容器44の下側に配置されるインナー吸着剤容器43の内部に配置される吸着剤に満遍なく均等に原流体をゆっくり供給することができる限り、その孔の構造は限定されない。代表的には、整流孔44dの複数の孔は、すべて同じ径(大きさ)であって、インナー整流容器44の下側が減圧された時(原流体が流れる出るとき)に整流孔44dの複数の孔のすべての内部が流体で満たされる程度の大きさを有している。
【0069】
続いて、実施例4の濾過装置1が、組み立てられた状態において、どのように機能するかを説明する。まず、濾過処理の初期工程として流れを整えるための不純物の吸着前の原流体をインナー整流容器44の開口44aからインナー整流容器44の内部44cに入れる。ここから脱気ポンプ10aを作動させて、インナー濾過流体容器41の内部41cの圧力がインナーフィルタ容器42の内部42cの圧力より低下し、インナー濾過流体容器41の内部41cとインナーフィルタ容器42の内部42cとの間に差圧が、またインナー吸着剤容器43の内部43cとインナーフィルタ容器42の内部42cとの間にさらに差圧が生じる点は実施例2と同じである。
【0070】
実施例4では、さらに、インナーフィルタ容器42の内部42cの圧力の低下により、インナー吸着剤容器43の内部43cの圧力が低下して、インナーフィルタ容器42の内部42cの圧力とインナー吸着剤容器43の内部43cの圧力との間に差圧が生じる。この差圧と重力とにより、インナー整流容器44に入れられた原流体がインナー吸着剤容器43の内部43cへと導入される。インナー吸着剤容器43の内部43cへと導入された以降の原流体の挙動は実施例1と実施例2と同様である。インナーフィルタ容器42の内部42cへと導入された原流体は、実施例1と同様に濾過されてインナー濾過流体容器41の内部41cで濾過流体として回収される。すべての量の原流体が濾過されたのちに、脱気ポンプ10aを停止させ、実施例1から実施例3で説明した分離に加えて、整流ユニット34とインナー整流容器44とを分離する。実施例1および実施例2と同様に、整流ユニット34は洗浄することなく再利用することができる。
【0071】
以上が実施例4の説明であるが、実施例5は、実施例4のインナー整流容器44を実施例3のインナー吸着剤容器43と入れ替えた実施例である。すなわち、実施例5は、実施例3の整流を目的とする容器の代わりに、2つの種類の吸着剤を段階的に使用するように複数のインナー吸着剤容器を有している実施例である。異なる種類の吸着剤を備える複数のインナー容器を配置する、たとえば異なる種類の物質を段階的に除去するために、または吸着効率の低いものから吸着効率の高いものへと段階的に除去するためなど、吸着剤の種類を自由に設定することができる。実施例5は、実施例4のインナー整流容器44をインナー吸着剤容器43に交換しただけの例であり、その他の違いはないので、詳細な説明は割愛する。
【0072】
また、実施例6は、実施例4のインナーフィルタ容器42の位置を変更した実施例である。すなわち、実施例4では、インナー吸着剤容器43の下にインナーフィルタ容器42を配置していたが、実施例6ではインナー整流容器44の上にインナーフィルタ容器42を配置するように、インナーフィルタ容器42の位置を変更した実施例である。濾過する流体の特性により、吸着剤による吸着と、フィルタによる濾過の順序を逆転する必要がある場合には、このように自由に変更することが可能である。実施例6は、実施例4のインナー整流容器44とインナーフィルタ容器42の位置を交換しただけの例であり、その他の違いはないので、詳細な説明は割愛する。
【符号の説明】
【0073】
1 濾過装置
2,10 ポンプユニット
2a,10a 脱気ポンプ
2b,10b 吸気孔
3 ケースユニット
4 インナー容器
5,6 シール部材
31 濾過流体ユニット
32 原流体ユニット
33 吸着剤ユニット
34 整流ユニット
41 インナー濾過流体容器
42 インナー原流体容器
43 インナー吸着剤容器
44 インナー整流容器
51 第1取付構造
51a 第1シール部材
52 第2取付構造
52a 第2シール部材
53 第3取付構造
53a 第3シール部材
54 第4取付構造
54a 第4シール部材
61 フィルタ部材
62 吸着剤