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特許7565716冷却装置、半導体製造装置および半導体製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】冷却装置、半導体製造装置および半導体製造方法
(51)【国際特許分類】
   F25B 1/00 20060101AFI20241004BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20241004BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20241004BHJP
   F28D 15/02 20060101ALI20241004BHJP
   F28D 15/06 20060101ALI20241004BHJP
   H01L 21/02 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
F25B1/00 381H
G03F7/20 521
H01L21/30 541L
H01L21/30 502D
F28D15/02 101K
F28D15/02 L
F28D15/02 102A
F28D15/06 D
F25B1/00 321L
F25B1/00 399Y
H01L21/02 Z
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2020110821
(22)【出願日】2020-06-26
(65)【公開番号】P2022020088
(43)【公開日】2022-02-01
【審査請求日】2023-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野元 誠
【審査官】寺川 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-196607(JP,A)
【文献】特表2018-513421(JP,A)
【文献】実開昭59-080663(JP,U)
【文献】特開平03-211392(JP,A)
【文献】特開平07-127935(JP,A)
【文献】特開平04-068263(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00
G03F 7/20
H01L 21/027
F28D 15/02
F28D 15/06
H01L 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凝縮器の中の第1冷媒を気化器を介して前記凝縮器に戻すように前記第1冷媒を循環させる循環系と、
前記凝縮器の中に配置された熱交換器と前記熱交換器を通して第2冷媒を循環させる第2循環系とを含む冷却系と、
前記凝縮器の中で前記第1冷媒が気体状態で存在する部分の圧力または温度に基づいて前記第2冷媒を制御する制御部と、を備え、
記熱交換器の少なくとも一部は、前記分に配置されている、
ことを特徴とする冷却装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記分の圧力または温度を所定値に維持するように前記第2冷媒を制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の冷却装置。
【請求項3】
前記凝縮器の中に、前記第1冷媒より沸点が低い気体が封入されている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の冷却装置。
【請求項4】
前記気体は、前記第1冷媒と化学反応を起こさない、
ことを特徴とする請求項3に記載の冷却装置。
【請求項5】
前記気体は、空気又は不性気体である、
ことを特徴とする請求項3又は4に記載の冷却装置。
【請求項6】
前記循環系は、前記第1冷媒をポンプ、加熱器、絞り弁、前記気化器を介して前記凝縮器に戻すように前記第1冷媒を循環させる
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の冷却装置。
【請求項7】
前記分の圧力または温度を検出するセンサを更に備え、
前記制御部は、前記センサの出力に基づいて前記第2冷媒を制御す
ことを特徴とする請求項6に記載の冷却装置。
【請求項8】
前記第2循環系は、第2ポンプと、第2加熱器と、流量調整弁と、排熱器と、タンクとを更に含み、
前記タンクから前記第2ポンプおよび前記第2加熱器を介して前記熱交換器に前記第2冷媒が送られ、前記熱交換器から前記排熱器を介して前記タンクに前記第2冷媒が戻される、
ことを特徴とする請求項7に記載の冷却装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記センサの出力に基づいて前記第2冷媒の温度、流量および圧力の少なくともつを制御する、
ことを特徴とする請求項8に記載の冷却装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記センサの出力に基づいて前記第2ポンプおよび前記流量調整弁の少なくとも一方を制御する、
ことを特徴とする請求項8に記載の冷却装置。
【請求項11】
前記第2循環系は、圧縮機と、第2凝縮器と、膨張弁とを更に含み、
前記圧縮機から前記第2凝縮器および前記膨張弁を介して前記熱交換器に前記第2冷媒が送られ、前記熱交換器から前記圧縮機に前記第2冷媒が戻される、
ことを特徴とする請求項7に記載の冷却装置。
【請求項12】
前記制御部は、前記熱交換器における前記第2冷媒の気化潜熱を制御する、
ことを特徴とする請求項11に記載の冷却装置。
【請求項13】
前記制御部は、前記センサの出力に基づいて前記第2冷媒の温度、流量および圧力の少なくとも1つを制御する、
ことを特徴とする請求項11又は12に記載の冷却装置。
【請求項14】
前記制御部は、前記センサの出力に基づいて前記圧縮機および前記膨張弁の少なくとも一方を制御する、
ことを特徴とする請求項11又は12に記載の冷却装置。
【請求項15】
前記第2循環系は、前記圧縮機から第2凝縮器および前記膨張弁を介して前記熱交換器に至る主経路をバイパスするバイパス経路を更に含み、
前記バイパス経路に調整弁が設けられている、
ことを特徴とする請求項11乃至13のいずれか1項に記載の冷却装置。
【請求項16】
前記制御部は、前記センサの出力に基づいて前記圧縮機、前記膨張弁および前記調整弁の少なくとも一方を制御する、
ことを特徴とする請求項15に記載の冷却装置。
【請求項17】
前記加熱器は、第2熱交換器を含み、
前記圧縮機と前記第2凝縮器との間の経路から分岐され、前記第2熱交換器を介して前記圧縮機に戻る第3循環経路が構成され、
前記第3循環経路に第2調整弁が設けられている、
ことを特徴とする請求項15又は16に記載の冷却装置。
【請求項18】
凝縮器の中の第1冷媒をポンプ、加熱器、絞り弁、気化器を介して前記凝縮器に戻すように前記第1冷媒を循環させる循環系と、
前記凝縮器の中に配置された熱交換器と前記熱交換器を通して第2冷媒を循環させる第2循環系とを含む冷却系と、を備え、
前記凝縮器は、前記第1冷媒が液体状態で存在する第1部分と、前記熱交換器の少なくとも一部が配置され前記第1冷媒が気体状態で存在する第2部分とを有し、
前記第2部分の圧力または温度を検出するセンサと、
前記センサの出力に基づいて前記第2冷媒を制御する制御部と、を更に備える、
ことを特徴とする冷却装置。
【請求項19】
発熱部を有する半導体製造装置であって、
請求項1乃至1のいずれか1項に記載の冷却装置を備え、
前記冷却装置は、前記発熱部からの熱によって前記気化器の中の前記第1冷媒を気化させることによって前記発熱部を冷却するように構成されている、
ことを特徴とする半導体製造装置。
【請求項20】
パターンを形成するパターン形成装置として構成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体製造装置。
【請求項21】
請求項19又は20に記載の半導体製造装置によって基板を処理する工程と、
前記工程で処理された基板を加工する工程と、
を含むことを特徴とする半導体製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却装置、半導体製造装置および半導体製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
露光装置、インプリント装置、電子線描画装置等のパターン形成装置、または、CVD装置、エッチング装置、スパッタリング装置等のプラズマ処理装置等のような半導体製造装置は、駆動機構、あるいはプラズマによって加熱される部材等の発熱部を有する。このような発熱部を冷却するために、半導体製造装置には冷却装置が備えられる。冷却装置は、発熱部から熱を奪い、その熱を装置外に排熱させることによって発熱部を冷却する。
【0003】
特許文献1には、部品から熱を抽出する蒸発器、凝縮器、ポンプ、アキュムレータ、熱交換器および温度センサを備える冷却システムが記載されている。ここで、ポンプから出た流体が蒸発器、凝縮器を介してポンプに戻る回路が構成され、アキュムレータは回路と流体連通している。熱交換器は、アキュムレータ内の流体からの熱の伝達およびアキュムレータ内の流体への熱の伝達を行う。この量は、温度センサの出力に基づいて制御される。
【0004】
特許文献1に記載された冷却システムでは、ポンプから出た流体が蒸発器、凝縮器を介してポンプに戻る回路において流体を安定して循環させるためには、ポンプ吸い込み部でキャビテーションを回避する必要がある。このために、凝縮器、又はその下流もしくは上流に冷却系を追加し、ポンプの吸い込み部の流体温度を下げるか圧力を上げなければならない。ポンプの出口では、流体が加圧されるため、流体は気化しにくい状態で発熱部に送られる。発熱部では、流体が発熱部の流体圧力下の沸点まで温度上昇するまでは気化冷却は行われないため、この間で発熱部の温度変動を許すことになり、発熱部周辺の部材が熱膨張により変形しうる。そこで、温度変動を抑えるために、流体の気液2相のアキュムレータを用いて発熱部の下流が所定温度になる様にアキュムレータへの熱量制御で流体の気液バランスを変化させ、系全体の圧力を変えることで沸点が制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5313384号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された構成では、発熱部の発熱時は、アキュムレータから熱を回収し凝縮させ循環系の圧力を降下させるが、ポンプ吸い込み部の圧力も下がるので、キャビテーションの発生のリスクがある。逆に発熱部が発熱しない時は、アキュムレータに熱を供給して気化させ循環系を昇圧させる。しかし、循環系の熱収支を合わせるためには凝縮器あるいは冷却系による流体の冷却熱量制御、あるいは加熱手段を別途設けて発熱量を制御する必要が生じ、構成および制御方法が複雑化しうる。
【0007】
更に、凝縮制御系は温度センサによる1つの入力に対し、凝縮器とアキュムレータの2つの出力が制御系に存在するため、操作量と制御量との間に相互干渉が生じ制御が不安定となりうる。これを避けるためには、干渉を打ち消す機能を追加する必要があり、これが更なる複雑化と制御遅れとを生じさせうる。これにより、発熱部の発熱状態の変動に対して素早く追従できなくなり、圧力が変動し、結果として沸点が変動することで温度安定性が悪化しうる。
【0008】
本発明は、単純な構成で安定した制御に有利な冷却装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の1つの側面は、冷却装置に係り、前記冷却装置は、凝縮器の中の第1冷媒をポンプ、加熱器、絞り弁、気化器を介して前記凝縮器に戻すように前記第1冷媒を循環させる循環系と、前記凝縮器の中に配置された熱交換器と前記熱交換器を通して第2冷媒を循環させる第2循環系とを含む冷却系と、前記凝縮器の中で前記第1冷媒が気体状態で存在する部分の圧力または温度に基づいて前記第2冷媒を制御する制御部と、を備え、前記凝縮器は、前記冷媒が液体状態で存在する第1部分と、前記冷媒が気体状態で存在する第2部分とを有し、前記熱交換器の少なくとも一部は、前記第2部分に配置されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、単純な構成で安定した制御に有利な冷却装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態の冷却装置の構成を示す図。
図2】第2実施形態の冷却装置の構成を示す図。
図3】第3実施形態の冷却装置の構成を示す図。
図4】第4実施形態の冷却装置の構成を示す図。
図5】理想冷凍サイクルのモリエル線図。
図6】半導体製造装置の構成例を示す図。
図7】半導体製造装置の構成例を示す図。
図8】半導体製造装置の構成例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0013】
図1には、第1実施形態の冷却装置の構成が示されている。冷却装置CAによる冷却対象は、特別な対象に限定されるものではないが、例えば半導体製造装置、特に半導体製造装置の発熱部である。半導体製造装置は、例えば、露光装置、インプリント装置、荷電粒子線描画装置等のパターン形成装置、あるいは、CVD装置、エッチング装置、スパッタリング装置等のプラズマ処理装置である。パターン形成装置は、基板および/または原版等の部品を高速で移動させる駆動機構を有し、該駆動機構は物品の駆動に伴って発熱し、発熱部となる。プラズマ処理装置では、プラズマによって電極等の部品が加熱され、該部品が発熱部となる。
【0014】
冷却装置CAは、凝縮器2の中の第1冷媒10をポンプ3、加熱器4、絞り弁6、気化器7を介して凝縮器2に戻すように第1冷媒10を循環させる第1循環系1と、凝縮器2の中に配置された熱交換器8を含む冷却系CDとを備えうる。凝縮器2は、第1冷媒10が液体状態で存在する第1部分201と、第1冷媒10が気体状態で存在する第2部分202とを有し、熱交換器8の少なくとも一部(好ましくは、熱交換器8の全体)は、第2部分202に配置されうる。発熱部等の冷却対象物80は、気化器7によって冷却されうる。
【0015】
第1循環系1は、第1冷媒10の相変化を利用して冷却対象物80を冷却するように構成されうる。第1循環系1は、ポンプ3、加熱器4、絞り弁6および気化器7の他に、例えば、温度センサ5を含んでもよい。図1において温度センサ5は加熱器4と絞り弁6との間に配置されているが、絞り弁6と気化器7の間に配置されてもよい。第1循環系1は、密閉循環系でありうる。凝縮器2の第1部分201に貯留された液相(液体状態)の第1冷媒10は、ポンプ3で加熱器4に送られうる。加熱器4は、その下流側に配置された温度センサ5で検出される第1冷媒10の温度が所定温度になるように第1冷媒10を加熱あるいは温調しうる。加熱器4は、例えば、電熱ヒーターまたは熱交換器を含みうるが、これに限定されるものではない。
【0016】
所定温度に加熱あるいは温調された第1冷媒10は、絞り弁6で所定温度の第1冷媒10の飽和蒸気圧近傍まで減圧され気化器7に送られうる。気化器7は、冷却対象物80と熱接触するか、あるいは、冷却対象物80を内蔵し、冷却対象物80が発熱すると、気化器7内の第1冷媒10が沸騰した気化潜熱によって冷却対象物80を冷却しうる。気化器7を通過した第1冷媒10は、冷却対象物80の発熱状態に応じて液相状態または気液混相状態(液体と気体とを含む状態)で凝縮器2に戻されうる。
【0017】
凝縮器2の内部の第2部分202に少なくとも一部が配置された熱交換器8は、第1冷媒10を冷却し、これにより気相状態の第1冷媒10が凝縮され液相状態の第1冷媒10となる。熱交換器8を含む冷却系CDは、例えば、熱交換器8を通して第2冷媒18を循環させる第2循環系11によって構成されうる。第2循環系11は、第1循環系1における第1冷媒10の循環とは独立して、第2冷媒18を循環させる。冷却装置CAは、凝縮器2の内部(第2部分202)の圧力または温度を検出するセンサ9を備えうる。凝縮器2の内部には、所定量の気体50が封入されうる。気体50は、第1冷媒10よりも沸点が低く、第1冷媒10と化学反応を起こさない気体でありうる。気体50は、例えば、空気であってもよいし、窒素等の不活性気体であってもよい。
【0018】
第2循環系11は、凝縮器2の内部(第2部分202)の圧力または温度が所定圧力または所定温度になるようにセンサ9の出力に基づいて制御されうる。ここで、気化器7における第1冷媒10の圧力が所定温度の飽和蒸気圧となるように制御すれば、第1冷媒10の沸点が制御されることになる。熱伝達流体冷却の場合には、回収熱量に応じて、流体の熱容量で回収熱量を除した値の分だけ冷媒の温度が上昇するが、沸騰冷却の場合には、気化潜熱で熱を回収するため、沸点の一定温度で熱を回収できる。
【0019】
第1循環系1が密閉系であると、第1冷媒10が沸騰(気化)すると、気化器7および凝縮器2の内部の圧力が上昇する。これは、第1冷媒10の飽和蒸気圧が上昇することを意味し、以下のClausius-Clapeyronの式で示されるdT分の沸点の変化をもたらす。
【0020】
dT=TΔV・dP/L
ここで、dTは温度変化、Tは状態温度、ΔVは蒸発に伴う体積変化、dPは圧力変化、Lは潜熱を示す。
【0021】
凝縮器2への気体50の封入は、気化器7の内部の第1冷媒10を所定温度かつ所定飽和蒸気圧に維持するためになされる。凝縮器2への気体50の封入量は、気化器7の第1冷媒10の飽和蒸気圧と凝縮器2の第1冷媒10の飽和蒸気圧との差圧が気体50の分圧と等しくなる量である。気化器7と凝縮器2との間に高低差がある場合は、第1冷媒10の密度をρ、重力加速度をg、凝縮器2を基準とする気化器7の高さをhとすると、高さ水頭ρgh分だけ減圧される(hが負の場合は増圧)。
【0022】
第2循環系11における制御について説明する。第2循環系11で使用される第2冷媒18は、例えば水等の流体でありうる。第2循環系11は、第2ポンプ12、第2加熱器13、第2温度センサ14、流量調整弁15、熱交換器8、排熱器16およびタンク17を含みうる。タンク17の中の第2冷媒18は、第2ポンプ12で第2加熱器13へ送られうる。第2加熱器13は、第2加熱器13の下流に配置された第2温度センサ14で検出される第2冷媒18の温度が所定温度になるように第2冷媒18を加熱あるいは温調しうる。所定温度に加熱あるいは温調された第2冷媒18は、流量調整弁15で所定の流量に調整されて熱交換器8に送られ第1冷媒10と熱交換する。第2冷媒18との熱交換によって、第1冷媒10は冷却され凝縮される。第1冷媒10の凝縮潜熱で加熱された第2冷媒18の熱は、排熱器16で系外へ排熱出され、タンク17に戻されうる。
【0023】
冷却装置CAは、制御部90を備えうる。制御部90は、第1循環系1の凝縮器2の内部(第2部分202)の圧力または温度が一定になるように制御信号C1、C2、C3を発生し、制御信号C1、C2、C3により第2冷媒18を制御しうる。制御部90による第2冷媒18の制御は、熱交換器8に供給される第2冷媒18の温度、流量および圧力の少なくとも1つの制御を含みうる。制御部90による第2冷媒18の制御は、熱交換器8における第1冷媒10の凝縮量の制御として理解されてもよい。制御部90による第2冷媒18の制御は、例えば、センサ9の出力に応じた制御信号C1を第2加熱器13に与え、第2加熱器13よる第2冷媒18の加熱量を制御することを含みうる。制御部90による第2冷媒18の制御は、センサ9の出力に応じた制御信号C2を第2ポンプ12に与え、第2ポンプ12の出力を制御することによって第2冷媒18の流量および/または圧力を制御することを含みうる。制御部90による第2冷媒18の制御は、センサ9の出力に応じた制御信号C3を流量調整弁15に与え、流量調整弁15の開度を制御することによって第2冷媒18の流量および/または圧力を制御することを含みうる。即ち、制御部90は、センサ9の出力に基づいて第2ポンプ12および流量調整弁15の少なくとも一方を制御しうる。
【0024】
第1実施形態によれば、第1循環系1の凝縮器2の内部の圧力または温度を単一の入力とし、凝縮器2を単一の出力とする単純な制御系が実現され、安定した制御が提供される。また、第1実施形態では、冷却対象物80の発熱状態に追従しながら凝縮器2の内部の圧力または温度が所定値になるように第2循環系11による第1冷媒10の冷却が制御される。これより、気化器7における第1冷媒10の沸点が固定され一定の温度で冷却対象物80から熱を回収することができる。また、第1実施形態によれば、圧力制御と排熱制御が同時に凝縮器2で行われるので、制御遅れが低減し温度制御の安定性が向上する。
【0025】
図2には、第2実施形態の冷却装置CAの構成が示されている。第2実施形態の冷却装置CAは、冷却系CDの構成が第1実施形態の冷却系CDと異なる。第2実施形態で言及しない事項は、第1実施形態に従いうる。第2実施形態における冷却系CDは、第2循環系21で構成されうる。第2循環系21は、第1循環系1における第1冷媒10の循環とは独立して、第2冷媒18を循環させる。第2循環系21は、例えば、圧縮機22、第2凝縮器23、膨張弁24、熱交換器(気化器)8を含む密閉循環系でありうる。
【0026】
気相状態の第2冷媒20は、圧縮機22で圧縮され第2凝縮器23に送られ、第2凝縮器23で排熱され凝縮し液相状態になる。液相の第2冷媒20は、膨張弁24で飽和蒸気圧近傍まで減圧され熱交換器8に送られる。熱交換器8は、気化器として構成される。熱交換器8は、第1冷媒10と熱交換し、第2冷媒20が蒸発した気化潜熱で第1冷媒10を凝縮させる。熱交換器8において気相状態となった第2冷媒20は、圧縮機22に戻される。
【0027】
ここで、気化器7における第1冷媒10の蒸発量と凝縮器2における第1冷媒10の凝縮量を釣り合わせれば、第1冷媒10の圧力が維持され沸点が一定になる。したがって、制御部90は、第1循環系1のセンサ9の出力に基づいて、凝縮器2の内部(第2部分202)の圧力または温度が所定値になるように第2循環系21よる第1冷媒10の冷却を制御する。そのために、制御部90は、第1循環系1のセンサ9の出力に基づいて、第1循環系1の凝縮器2の内部(第2部分202)の圧力または温度が一定になるように制御信号C1、C2を発生し、制御信号C1、C2により第2冷媒20を制御しうる。制御部90による第2冷媒20の制御は、熱交換器8に供給される第2冷媒20の温度、流量および圧力の少なくとも1つの制御を含みうる。制御部90による第2冷媒20の制御は、熱交換器8における第2冷媒20の気化潜熱の制御として理解されてもよい。
【0028】
制御部90による第2冷媒20の制御は、センサ9の出力に応じた制御信号C1を膨張弁24に与え、膨張弁24の開度を制御することを含みうる。これに代えて、又は、これに加えて、制御部90による第2冷媒20の制御は、センサ9の出力に応じた制御信号C2を圧縮機22に与え、圧縮機22による第2冷媒20の圧縮を制御することを含みうる。即ち、制御部90は、センサ9の出力に基づいて圧縮機22および膨張弁24の少なくとも一方を制御しうる。
【0029】
第2実施形態では、第1冷媒10の凝縮器2の内部で第1冷媒10の凝縮と第2冷媒20の気化とが同時に行われる。これにより、第2循環系21では、少ない流量で大きな熱量を移動させることができる。また、第2実施形態によれば、伝熱効率が良い沸騰および凝縮熱伝達で熱を移動させるので、制御遅れが改善される。
【0030】
図3には、第3実施形態の冷却装置CAの構成が示されている。第3実施形態の冷却装置CAは、第2実施形態の冷却装置CAを改良したものであり、冷却系CDの構成が第2実施形態の冷却系CDと異なる。第3実施形態で言及しない事項は、第2実施形態に従いうる。
【0031】
第3実施形態では、第2循環系21に対して、ホットバイパス経路(バイパス経路)27が追加されている。ホットバイパス経路27は、圧縮機22から第2凝縮器23および膨張弁24を介して熱交換器8に至る主経路をバイパスするように設けられている。ホットバイパス経路27は、圧縮機22と第2凝縮器23との間の流路から分岐し、膨張弁24と熱交換器8との間の流路に合流する。ホットバイパス経路27には、調整弁28が設けられうる。
【0032】
ホットガスバイパス経路27を通過する第2冷媒20は、第2凝縮器23を通らないので凝縮(液化)されず、そのため気化潜熱による冷却能力を持たない。制御部90は、第1循環系1のセンサ9の出力に基づいて、熱交換器8の内部の第1冷媒10の圧力または温度を所定値に制御するように、膨張弁24、圧縮機22、調整弁28をそれぞれ制御する制御信号C1、C2、C3を発生しうる。ここで、制御部90は、制御信号C1、C3により冷却能力を有する液相の第2冷媒20と冷却能力を有しない高温気相の第2冷媒20との混合量を制御しうる。
【0033】
第3実施形態によれば、第2冷媒20による冷却能力を液相の第2冷媒20と気相の第2冷媒20との混合比で調整することで、第2循環系21の冷却能力レンジを拡大することができる。したがって、第3実施形態の冷却装置CAは、例えば半導体製造装置のような大きな排熱量を有する装置における大きな熱変動にも追従することができ、高い温度安定性を提供することができる。
【0034】
図4には、第4実施形態の冷却装置CAの構成が示されている。第4実施形態の冷却装置CAは、第3実施形態の冷却装置CAを改良したものであり、冷却系CDの構成が第3実施形態の冷却系CDと異なる。第4実施形態で言及しない事項は、第3実施形態に従いうる。
【0035】
第4実施形態では、加熱器4が熱交換器(第2熱交換器)で構成され、冷却装置CAは、圧縮機22と第2凝縮器23との間の流路から分岐され、加熱器4(第2熱交換器)を介して圧縮機22に戻る第3循環経路31が構成されている。第3循環経路31に第2調整弁30が設けられうる。
【0036】
制御部90は、第1循環系1のセンサ9の出力に基づいて、熱交換器8の内部の第1冷媒10の圧力または温度を所定値に制御するように、膨張弁24、圧縮機C2、調整弁28をそれぞれ制御する制御信号C1、C2、C3を発生しうる。また、制御部90は、温度センサ5の出力に基づいて、温度センサ5で検出される第1冷媒10の温度が所定温度になるように第2調整弁30を制御する制御信号C4を発生しうる。
【0037】
図5には、理想冷凍サイクルのモリエル線図が示されている。図5において、横軸はエンタルピーH、縦軸は圧力Pを示す。飽和蒸気線32より右側は気相であり、飽和液線33より左側は液相であり、飽和蒸気線32と飽和液線33で囲まれた部分は、気液2相の湿り状態である。第2冷媒20は、圧縮機22で等エントロピー線34に沿って圧縮され、第2凝縮器23で等高圧線35に沿って冷却され凝縮され、膨張弁24で等エンタルピー36線に沿って減圧され、熱交換器8で等低圧線37に沿って気化膨張するサイクルを行う。
【0038】
冷凍サイクルにおける冷媒の最大加熱量は、等高圧線35両端点のエンタルピー差であり、これが加熱器4(熱交換器)での第2冷媒20による単位質量当たりの加熱量である。また、等エントロピー線34の両端点のエンタルピー差が圧縮機22の動力であり、通常は、最大加熱量の1/4~1/5ぐらいになる。したがって、第1冷媒10の加熱にかかる電力は、加熱器4が電熱ヒーターで構成される場合と比較して、第4実施形態では、例えば、約1/4に低減することができる。よって、第4実施形態によれば、第1冷媒10の加熱に必要なエネルギーを低減できるため、エネルギー消費を低減できる。
【0039】
以下、図6図7および図8を参照しながら上記の冷却装置CAが適用された半導体製造装置について例示的に説明する。図6には、半導体製造装置、より詳しくはパターン形成装置の一例としての露光装置100の構成が模式的に示されている。露光装置100は、原版101のパターンを、感光材層を有する基板102の該感光材層に対して投影光学系140によって転写するように構成されうる。露光装置100は、原版101を照明する照明光学系150と、投影光学系140と、基板位置決め機構SPMとを備えうる。また、露光装置100は、原版101を位置決めする原版位置決め機構(不図示)を備えうる。基板位置決め機構SPMは、基板102を保持する基板チャックを有する基板ステージ110と、基板ステージ110を駆動する駆動機構120と、駆動機構120を支持するベース部材130とを含みうる。駆動機構120は、基板ステージ110とともに移動する可動子12と、ベース部材130に固定された固定子124とを含むアクチュエータを有しうる。固定子124は、冷却対象物80としてのコイル列を含みうる。冷却装置CAは、冷却対象物80としてのコイル列を冷却するように構成されうる。
【0040】
図7には、半導体製造装置、より詳しくはパターン形成装置の一例としてのインプリント装置200の構成が模式的に示されている。インプリント装置200は、基板102の上のインプリント材に原版101のパターンを転写するように構成されうる。インプリント装置200は、原版101を駆動する原版駆動機構160と、基板102を駆動する基板駆動機構SPMと、基板102の上に配置されたインプリント材を硬化させる硬化部170とを備えうる。
【0041】
原版駆動機構160および基板駆動機構SPMの少なくとも一方によって基板102のショット領域と原版101のパターン領域とのアライメントを行うことができる。原版駆動機構160および基板駆動機構SPMの少なくとも一方によって、基板102の上に配置されたインプリント材と原版101のパターン領域との接触、および、インプリント材とパターン領域との分離を行うことができる。基板102の上に配置されたインプリント材と原版101のパターン領域とを接触させた状態で、硬化部170によってインプリント材が硬化される。その後、硬化したインプリント材と原版101のパターン領域とが分離される。これにより、基板102の上にインプリント材の硬化物からなるパターンが形成される。つまり、基板102の上のインプリント材には、原版101のパターン領域が転写される。
【0042】
基板位置決め機構SPMは、基板102を保持する基板チャックを有する基板ステージ110と、基板ステージ110を駆動する駆動機構120と、駆動機構120を支持するベース部材130とを含みうる。駆動機構120は、基板ステージ110とともに移動する可動子12と、ベース部材130に固定された固定子124とを含むアクチュエータを有しうる。固定子124は、冷却対象物80としてのコイル列を含みうる。冷却装置CAは、冷却対象物80としてのコイル列を冷却するように構成されうる。
【0043】
図8には、半導体製造装置の一例としてのプラズマ処理装置300の構成が模式的に示されている。プラズマ処理装置300は、例えば、CVD装置、エッチング装置またはスパッタリング装置でありうる。プラズマ処理装置300は、チャンバ330と、チャンバ330の中に配置された1または複数の冷却対象物80a、80bとしての電極構造を備えうる。図8の例では、基板302は、冷却対象物80aによって支持されうる。チャンバ330の中には、プラズマを発生させるためのガスが供給されうる。プラズマ処理装置300がCVD装置として構成される場合、チャンバ330の中には、成膜用のガスが供給されうる。プラズマ処理装置300がエッチング装置として構成される場合、チャンバ330の中には、エッチング用のガスが供給されうる。プラズマ処理装置300がスパッタリング装置として構成される場合、チャンバ330の中には、プラズマを発生させるためのガスが供給され、また、冷却対象物80bとしての電極構造には、ターゲットが取り付けられうる。冷却装置CAは、冷却対象物80a、80bを冷却するように構成されうる。
【0044】
本発明の1つの側面としての半導体製造方法は、上記の露光装置100、インプリント装置200およびプラズマ処理装置300に代表される半導体製造装置によって基板を処理する工程と、該工程によって処理された基板を加工する工程と、を含みうる。半導体製造装置によって基板を処理する工程は、例えば、基板にパターンを形成する工程、基板に膜を形成する工程、または、基板またはその上に形成された膜をエッチングする工程でありうる。基板を加工する工程は、例えば、基板にパターンを形成する工程、基板に膜を形成する工程、または、基板またはその上に形成された膜をエッチングする工程でありうる。あるいは、基板を加工する工程は、基板を分割(ダイシング)する工程、または、基板を封止する工程でありうる。
【0045】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0046】
CA:冷却装置、1:第1循環系(循環系)、2:凝縮器、201:第1部分、202:第2部分、3:ポンプ、4:加熱器、5:温度センサ、6:絞り弁、7:気化器、8:熱交換器、9:センサ、10:冷媒(第1冷媒)、11:第2循環系、12:第2ポンプ、13:第2加熱器、14:第2温度センサ、15:流量調整弁、16:排熱器、17:タンク、18:第2冷媒、20:第2冷媒、22:圧縮機、23:第2凝縮器、24:膨張弁、27:ホットガスバイパス経路、28:調整弁、30:第2調整弁、31:第3循環経路、80:冷却対象物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8