(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】車両制御装置、車両制御方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
B60W 30/16 20200101AFI20241004BHJP
B60W 30/095 20120101ALI20241004BHJP
B60W 40/04 20060101ALI20241004BHJP
B60W 60/00 20200101ALI20241004BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20241004BHJP
B60K 31/00 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
B60W30/16
B60W30/095
B60W40/04
B60W60/00
G08G1/16 C
B60K31/00 Z
(21)【出願番号】P 2020164441
(22)【出願日】2020-09-30
【審査請求日】2023-01-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】余 開江
【審査官】藤村 泰智
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-089366(JP,A)
【文献】特開平06-320987(JP,A)
【文献】特開2009-166537(JP,A)
【文献】特開2016-210365(JP,A)
【文献】特開2006-069443(JP,A)
【文献】特開2007-069728(JP,A)
【文献】特開平05-104993(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/00 ~ 60/00
G08G 1/00 ~ 1/16
B60K 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の周辺を認識する認識部と、
前記認識部により認識された他車両が前方車両として設定されている場合には前記前方車両の速度に基づいて前記自車両の速度を制御し、前記他車両が前方車両として設定されていない場合には前記自車両が所定速度となるように前記自車両の速度を制御する運転制御部と、を備え、
前記運転制御部は、前記前方車両として設定された他車両が前方車両として設定されなくなった場合に、前記所定速度への設定を所定時間保留して前記自車両の速度もしくは加速度を調整し、
前記所定時間中の前記自車両の速度もしくは加速度は、前記認識部により前記自車両の前方に割り込む割込車両が認識される場合に、前記割込車両に基づいて調整さ
れ、
前記運転制御部は、前記自車両が合流区間を走行している場合において、前記前方車両として設定された他車両が前方車両として設定されなくなった場合であって、且つ前記認識部により前記割込車両が認識される場合に、前記自車両の速度を前記所定速度に制御することを抑制する、
車両制御装置。
【請求項2】
前記運転制御部は、前記認識部により認識される前記割込車両の速度情報および位置情報に基づいて前記自車両の速度を制御する、
請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記運転制御部は、前記所定時間中に前記認識部により前記割込車両が認識されない場合は、前記加速度より相対的に大きい加速度で前記自車両の速度が前記所定速度となるように制御する、
請求項1または2に記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記運転制御部は、前記前方車両として設定された他車両が前方車両として設定されなくなった場合であって、且つ前記認識部により自車線に隣接する隣接車線から前記自車線に進入する一以上の他車両が認識された場合に、前記一以上の他車両の挙動に基づいて前記自車両の速度を制御する、
請求項1から3のうち何れか1項に記載の車両制御装置。
【請求項5】
前記前方車両として設定された他車両が前方車両として設定されなくなった場合に、前記他車両の過去の時系列データから前記認識部により認識されなくなった後の前記他車両の挙動を推定する推定部を、更に備え、
前記運転制御部は、前記推定部により推定された前記他車両の挙動に基づいて、前記自車両の挙動を制御する、
請求項1から
4のうち何れか1項に記載の車両制御装置。
【請求項6】
前記運転制御部は、前記前方車両として設定された他車両が前方車両として設定されなくなった場合であって、且つ前記認識部により前記割込車両が認識される場合に、前記割込車両と前記自車両との接触余裕時間および車頭時間との関係に基づいて前記自車両の速度を制御する、
請求項1から
5のうち何れか1項に記載の車両制御装置。
【請求項7】
コンピュータが、
自車両の周辺を認識し、
認識した他車両が前方車両として設定されている場合には前記前方車両の速度に基づいて前記自車両の速度を制御し、
前記他車両が前方車両として設定されていない場合には前記自車両が所定速度となるように前記自車両の速度を制御し、
前記前方車両として設定された他車両が前方車両として設定されなくなった場合に、前記所定速度への設定を所定時間保留して前記自車両の速度もしくは加速度を調整し、
前記所定時間中の前記自車両の速度もしくは加速度は、前記自車両の前方に割り込む割込車両を認識した場合に、前記割込車両に基づいて調整さ
れ、
前記自車両が合流区間を走行している場合において、前記前方車両として設定された他車両が前方車両として設定されなくなった場合であって、且つ前記割込車両が認識される場合に、前記自車両の速度を前記所定速度に制御することを抑制する、
車両制御方法。
【請求項8】
コンピュータに、
自車両の周辺を認識させ、
認識した他車両が前方車両として設定されている場合には前記前方車両の速度に基づいて前記自車両の速度を制御させ、
前記他車両が前方車両として設定されていない場合には前記自車両が所定速度となるように前記自車両の速度を制御させ、
前記前方車両として設定された他車両が前方車両として設定されなくなった場合に、前記所定速度への設定を所定時間保留して前記自車両の速度もしくは加速度を調整させ、
前記所定時間中の前記自車両の速度もしくは加速度は、前記自車両の前方に割り込む割込車両が認識される場合に、前記割込車両に基づいて調整さ
れ、
前記自車両が合流区間を走行している場合において、前記前方車両として設定された他車両が前方車両として設定されなくなった場合であって、且つ前記割込車両が認識される場合に、前記自車両の速度を前記所定速度に制御することを抑制させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御装置、車両制御方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の走行を自動的に制御することについて研究が進められている。これに関連して、自車両が定速走行状態で走行している場合に、前方車両が検出されると先行車両に対して設定車間距離を維持して自車両を走行させ、前方車両が検出されなくなると自車両を定速走行状態に復帰させる技術が存在する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術では、前方車両以外の他車両が周辺に存在する場合については考慮されていなかった。そのため、自車両の運転制御が適切に制御できない場合があった。
【0005】
本発明の態様は、このような事情を考慮してなされたものであり、周辺状況に応じて、より適切に自車両の運転制御を行うことができる車両制御装置、車両制御方法、およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る車両制御装置、車両制御方法、およびプログラムは、以下の構成を採用した。
(1):この発明の一態様に係る車両制御装置は、自車両の周辺を認識する認識部と、前記認識部により認識された他車両が前方車両として設定されている場合には前記前方車両の速度に基づいて前記自車両の速度を制御し、前記他車両が前方車両として設定されていない場合には前記自車両が所定速度となるように前記自車両の速度を制御する運転制御部と、を備え、前記運転制御部は、前記前方車両として設定された他車両が前方車両として設定されなくなった場合に、前記所定速度への設定を所定時間保留して前記自車両の速度もしくは加速度を調整し、前記所定時間中の前記自車両の速度もしくは加速度は、前記認識部により前記自車両の前方に割り込む割込車両が認識される場合に、前記割込車両に基づいて調整される、車両制御装置である。
【0007】
(2):上記(1)の態様において、前記運転制御部は、前記認識部により認識される前記割込車両の速度情報および位置情報に基づいて前記自車両の速度を制御するものである。
【0008】
(3):上記(1)または(2)の態様において、前記運転制御部は、前記所定時間中に前記認識部により前記割込車両が認識されない場合は、前記加速度より相対的に大きい加速度で前記自車両の速度が前記所定速度となるように制御するものである。
【0009】
(4):上記(1)~(3)のうち何れか一つの態様において、前記運転制御部は、前記前方車両として設定された他車両が前方車両として設定されなくなった場合であって、且つ前記認識部により自車線に隣接する隣接車線から前記自車線に進入する一以上の他車両が認識された場合に、前記一以上の他車両の挙動に基づいて前記自車両の速度を制御するものである。
【0010】
(5):上記(1)~(4)のうち何れか一つの態様において、前記運転制御部は、前記自車両が合流区間を走行している場合、または、自車両Mが車線変更を実行する場合において、前記前方車両として設定された他車両が前方車両として設定されなくなった場合であって、且つ前記認識部により前記割込車両が認識される場合に、前記自車両の速度を前記所定速度に制御することを抑制するものである。
【0011】
(6):上記(1)~(5)のうち何れか一つの態様において、前記前方車両として設定された他車両が前方車両として設定されなくなった場合に、前記他車両の過去の時系列データから前記認識部により認識されなくなった後の前記他車両の挙動を推定する推定部を、更に備え、前記運転制御部は、前記推定部により推定された前記他車両の挙動に基づいて、前記自車両の挙動を制御するものである。
【0012】
(7):上記(1)~(6)のうち何れか一つの態様において、前記運転制御部は、前記前方車両として設定された他車両が前方車両として設定されなくなった場合であって、且つ前記認識部により前記割込車両が認識される場合に、前記割込車両と前記自車両との接触余裕時間および車頭時間との関係に基づいて前記自車両の速度を制御するものである。
【0013】
(8):この発明の一態様に係る車両制御方法は、コンピュータが、自車両の周辺を認識し、認識した他車両が前方車両として設定されている場合には前記前方車両の速度に基づいて前記自車両の速度を制御し、前記他車両が前方車両として設定されていない場合には前記自車両が所定速度となるように前記自車両の速度を制御し、前記前方車両として設定された他車両が前方車両として設定されなくなった場合に、前記所定速度への設定を所定時間保留して前記自車両の速度もしくは加速度を調整し、前記所定時間中の前記自車両の速度もしくは加速度は、前記自車両の前方に割り込む割込車両を認識した場合に、前記割込車両に基づいて調整される、車両制御方法である。
【0014】
(9):この発明の一態様に係るプログラムは、コンピュータに、自車両の周辺を認識させ、認識した他車両が前方車両として設定されている場合には前記前方車両の速度に基づいて前記自車両の速度を制御させ、前記他車両が前方車両として設定されていない場合には前記自車両が所定速度となるように前記自車両の速度を制御させ、前記前方車両として設定された他車両が前方車両として設定されなくなった場合に、前記所定速度への設定を所定時間保留して前記自車両の速度もしくは加速度を調整させ、前記所定時間中の前記自車両の速度もしくは加速度は、前記自車両の前方に割り込む割込車両が認識される場合に、前記割込車両に基づいて調整される、プログラムである。
【発明の効果】
【0015】
上記(1)~(9)の態様によれば、周辺状況に応じて、より適切に自車両の運転制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施形態に係る車両制御装置を含む車両システム1の構成図である。
【
図2】第1制御部120および第2制御部160の機能構成図である。
【
図3】第1の場面における運転制御について説明するための図である。
【
図4】第2の場面における運転制御について説明するための図である。
【
図5】第3の場面における運転制御について説明するための図である。
【
図6】TTCとTHWとの相対関係を用いた接触リスクについて説明するための図である。
【
図7】第4の場面における運転制御について説明するための図である。
【
図8】第5の場面における運転制御について説明するための図である。
【
図9】自車両Mが車線変更を実行している状態を説明するための図である。
【
図10】第6の場面における運転制御について説明するための図である。
【
図11】実施形態の自動運転制御装置100により実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図12】運転支援装置110を含む車両システム2の機能構成の一例を示す図である。
【
図13】実施形態の自動運転制御装置100のハードウェア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照し、本発明の車両制御装置、車両制御方法、およびプログラムの実施形態について説明する。以下では、一例として、車両制御装置が自動運転車両に適用された実施形態について説明する。自動運転とは、例えば、自動的に車両の操舵または速度のうち、一方または双方を制御して運転制御を実行することである。上述した車両の運転制御には、例えば、ACC(Adaptive Cruise Control)や、ALC(Auto Lane Changing)、LKAS(Lane Keeping Assistance System)といった種々の運転制御が含まれてよい。自動運転車両は、乗員(運転者)の手動運転によって運転が制御されることがあってもよい。
【0018】
[全体構成]
図1は、実施形態に係る車両制御装置を含む車両システム1の構成図である。車両システム1が搭載される車両(以下、自車両Mと称する)は、例えば、二輪や三輪、四輪等の車両であり、その駆動源は、ディーゼルエンジンやガソリンエンジン等の内燃機関、電動機、或いはこれらの組み合わせである。電動機は、内燃機関に連結された発電機による発電電力、或いは二次電池や燃料電池等のバッテリ(蓄電池)の放電電力を使用して動作する。
【0019】
車両システム1は、例えば、カメラ10と、レーダ装置12と、LIDAR(Light Detection and Ranging)14と、物体認識装置16と、通信装置20と、HMI(Human Machine Interface)30と、車両センサ40と、ナビゲーション装置50と、MPU(Map Positioning Unit)60と、運転操作子80と、自動運転制御装置100と、走行駆動力出力装置200と、ブレーキ装置210と、ステアリング装置220とを備える。これらの装置や機器は、CAN(Controller Area Network)通信線等の多重通信線やシリアル通信線、無線通信網等によって互いに接続される。なお、
図1に示す構成はあくまで一例であり、構成の一部が省略されてもよいし、更に別の構成が追加されてもよい。自動運転制御装置100は、「車両制御装置」の一例である。カメラ10と、レーダ装置12と、LIDAR14と、物体認識装置16とを組み合わせたものが「外界センサ」の一例である。HMI30は、「出力部」の一例である。
【0020】
カメラ10は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の固体撮像素子を利用したデジタルカメラである。カメラ10は、車両システム1が搭載される自車両Mの任意の箇所に取り付けられる。前方を撮像する場合、カメラ10は、フロントウインドシールド上部やルームミラー裏面、車体の前頭部等に取り付けられる。後方を撮像する場合、カメラ10は、リアウインドシールド上部やバックドア等に取り付けられる。側方を撮像する場合、カメラ10は、ドアミラー等に取り付けられる。カメラ10は、例えば、周期的に繰り返し自車両Mの周辺を撮像する。カメラ10は、ステレオカメラであってもよい。
【0021】
レーダ装置12は、自車両Mの周辺にミリ波等の電波を放射すると共に、周辺の物体によって反射された電波(反射波)を検出して少なくとも物体の位置(距離および方位)を検出する。レーダ装置12は、自車両Mの任意の箇所に取り付けられる。レーダ装置12は、FM-CW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式によって物体の位置および速度を検出してもよい。
【0022】
LIDAR14は、自車両Mの周辺に光を照射し、散乱光を測定する。LIDAR14は、発光から受光までの時間に基づいて、対象までの距離を検出する。照射される光は、例えば、パルス状のレーザー光である。LIDAR14は、自車両Mの任意の箇所に取り付けられる。
【0023】
物体認識装置16は、カメラ10、レーダ装置12、およびLIDAR14のうち一部または全部による検出結果に対してセンサフュージョン処理を行って、自車両Mの周辺の物体の位置、種類、速度等を認識する。物体には、例えば、他車両(例えば、先行車両等の周辺車両)、歩行者、自転車、道路構造物等が含まれる。道路構造物には、例えば、道路標識や交通信号機、踏切、縁石、中央分離帯、ガードレール、フェンス等が含まれる。また、道路構造物には、例えば、路面に描画または貼付された道路区画線(以下、区画線と称する)や横断歩道、自転車横断帯、一時停止線等の路面標識が含まれてもよい。また、物体には、道路上の落下物(例えば、他車両の積み荷や道路周辺に設置されていた看板)等の障害物が含まれてよい。物体認識装置16は、認識結果を自動運転制御装置100に出力する。なお、物体認識装置16は、カメラ10、レーダ装置12、およびLIDAR14の検出結果をそのまま自動運転制御装置100に出力してよい。その場合、車両システム1または外界センサの構成から物体認識装置16が省略されてもよい。また、物体認識装置16は、自動運転制御装置100に含まれていてもよい。
【0024】
通信装置20は、例えば、セルラー網やWi-Fi網、Bluetooth(登録商標)、DSRC(Dedicated Short Range Communication)、LAN(Local Area Network)、WAN(WiDe Area Network)、インターネット等のネットワークを利用して、例えば、自車両Mの周辺に存在する他車両、自車両Mを利用する利用者の端末装置、或いは各種サーバ装置と通信する。
【0025】
HMI30は、自車両Mの乗員に対して各種情報を出力すると共に、乗員による入力操作を受け付ける。HMI30には、例えば、各種表示装置、スピーカ、ブザー、タッチパネル、スイッチ、キー、マイク等が含まれる。また、HMI30には、自動運転と乗員の手動運転とを相互に切り替える運転切替スイッチ等が含まれてもよい。
【0026】
車両センサ40は、自車両Mの速度を検出する車速センサ、加速度を検出する加速度センサ、ヨーレート(例えば、自車両Mの重心点を通る鉛直軸回りの回転角速度)を検出するヨーレートセンサ、自車両Mの向きを検出する方位センサ等を含む。また、車両センサ40は、自車両Mの位置を検出する位置センサが設けられていてもよい。位置センサは、例えば、GPS(Global Positioning System)装置から位置情報(経度・緯度情報)を取得するセンサである。また、位置センサは、ナビゲーション装置50のGNSS(Global Navigation Satellite System)受信機51を用いて位置情報を取得するセンサであってもよい。車両センサ40により検出した結果は、自動運転制御装置100に出力される。
【0027】
ナビゲーション装置50は、例えば、GNSS受信機51と、ナビHMI52と、経路決定部53とを備える。ナビゲーション装置50は、HDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリ等の記憶装置に第1地図情報54を保持している。GNSS受信機51は、GNSS衛星から受信した信号に基づいて、自車両Mの位置を特定する。自車両Mの位置は、車両センサ40の出力を利用したINS(Inertial Navigation System)によって特定または補完されてもよい。ナビHMI52は、表示装置、スピーカ、タッチパネル、キー等を含む。GNSS受信機51は、車両センサ40に設けられてもよい。ナビHMI52は、前述したHMI30と一部または全部が共通化されてもよい。経路決定部53は、例えば、GNSS受信機51により特定された自車両Mの位置(或いは入力された任意の位置)から、ナビHMI52を用いて乗員により入力された目的地までの経路(以下、地図上経路)を、第1地図情報54を参照して決定する。第1地図情報54は、例えば、所定区間の道路を示すリンクと、リンクによって接続されたノードとによって道路形状が表現された情報である。第1地図情報54は、POI(Point Of Interest)情報等を含んでもよい。地図上経路は、MPU60に出力される。ナビゲーション装置50は、地図上経路に基づいて、ナビHMI52を用いた経路案内を行ってもよい。ナビゲーション装置50は、通信装置20を介してナビゲーションサーバに現在位置と目的地を送信し、ナビゲーションサーバから地図上経路と同等の経路を取得してもよい。ナビゲーション装置50は、決定した地図上経路を、MPU60に出力する。
【0028】
MPU60は、例えば、推奨車線決定部61を含み、HDDやフラッシュメモリ等の記憶装置に第2地図情報62を保持している。推奨車線決定部61は、ナビゲーション装置50から提供された地図上経路を複数のブロックに分割し(例えば、車両進行方向に関して100[m]毎に分割し)、第2地図情報62を参照してブロックごとに推奨車線を決定する。推奨車線決定部61は、例えば、左から何番目の車線を走行するといった決定を行う。推奨車線決定部61は、地図上経路に分岐箇所が存在する場合、自車両Mが、分岐先に進行するための合理的な経路を走行できるように、推奨車線を決定する。
【0029】
第2地図情報62は、第1地図情報54よりも高精度な地図情報である。第2地図情報62は、例えば、道路形状や道路構造物に関する情報等を含んでいる。道路形状には、第1地図情報54よりも更に詳細な道路形状として、例えば、車線数、道路の曲率半径(或いは曲率)、幅員、勾配等が含まれる。上記情報は、第1地図情報54に格納されていてもよい。道路構造物に関する情報には、道路構造物の種別、位置、道路の延伸方向に対する向き、大きさ、形状、色等の情報が含まれてよい。道路構造物の種別において、例えば、区画線を1つの種別としてもよく、区画線に属するレーンマークや縁石、中央分離帯等のそれぞれを異なる種別としてもよい。また、区画線の種別には、例えば、車線変更が可能であることを示す区画線と、車線変更が不可能であることを示す区画線とが含まれてもよい。区画線の種別は、例えば、リンクを基準とした道路または車線の区間ごとに設定されてもよく、1つのリンク内に複数の種別が設定されてもよい。
【0030】
また、第2地図情報62には、道路や建物の位置情報(緯度経度)、住所情報(住所・郵便番号)、施設情報等が含まれてよい。第2地図情報62は、通信装置20が外部装置と通信することにより、随時、アップデートされてよい。第1地図情報54および第2地図情報62は、地図情報として一体に設けられていてもよい。また、地図情報(第1地図情報54および第2地図情報62)は、記憶部190に記憶されていてもよい。
【0031】
運転操作子80は、例えば、ステアリングホイールと、アクセルペダルと、ブレーキペダルとを備える。また、運転操作子80は、シフトレバー、異形ステア、ジョイスティックその他の操作子を含んでもよい。運転操作子80の各操作子には、例えば、乗員による操作子の操作量あるいは操作の有無を検出する操作検出部が取り付けられている。操作検出部は、例えば、ステアリングホイールの操舵角や操舵トルク、アクセルペダルやブレーキペダルの踏込量等を検出する。そして、操作検出部は、検出結果を自動運転制御装置100、もしくは、走行駆動力出力装置200、ブレーキ装置210、およびステアリング装置220のうち一方または双方に出力する。
【0032】
自動運転制御装置100は、例えば、第1制御部120と、第2制御部160と、HMI制御部180と、記憶部190とを備える。第1制御部120と、第2制御部160と、HMI制御部180とは、それぞれ、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。また、これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)等のハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。上述のプログラムは、予め自動運転制御装置100のHDDやフラッシュメモリ等の記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROM、メモリカード等の着脱可能な記憶媒体に格納されており、記憶媒体(非一過性の記憶媒体)がドライブ装置やカードスロット等に装着されることで自動運転制御装置100の記憶装置にインストールされてもよい。行動計画生成部140と第2制御部160とを合わせたものが「運転制御部」の一例である。HMI制御部180は、「出力制御部」の一例である。
【0033】
記憶部190は、上記の各種記憶装置、或いはEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、ROM(Read Only Memory)、またはRAM(Random Access Memory)等により実現されてもよい。記憶部190には、例えば、他車両挙動情報192、その他の各種情報、プログラム等が格納される。他車両挙動情報192は、例えば、認識部130により認識された自車両Mの周辺に存在する他車両の位置や速度の時系列データが含まれる。他車両挙動情報192に含まれる他車両には、前方車両や割込車両を識別情報が含まれていてもよい。他車両挙動情報192は、現在から所定時間分までの時系列データが含まれていればよく、それよりも過去の時系列データは削除されてよい。また、記憶部190には、地図情報(第1地図情報54、第2地図情報62)が格納されていてもよい。
【0034】
図2は、第1制御部120および第2制御部160の機能構成図である。第1制御部120は、例えば、認識部130と、行動計画生成部140とを備える。第1制御部120は、例えば、AI(Artificial Intelligence;人工知能)による機能と、予め与えられたモデルによる機能とを並行して実現する。例えば、「交差点を認識する」機能は、ディープラーニング等による交差点の認識と、予め与えられた条件(パターンマッチング可能な信号、道路標示等がある)に基づく認識とが並行して実行され、双方に対してスコア付けして総合的に評価することで実現されてよい。これによって、自動運転の信頼性が担保される。また、第1制御部120は、例えば、MPU60やHMI制御部180等からの指示に基づいて自車両Mの自動運転に関する制御を実行する。
【0035】
認識部130は、外界センサの認識の結果(カメラ10、レーダ装置12、およびLIDAR14から物体認識装置16を介して入力された情報)に基づいて、自車両Mの周辺状況を認識する。例えば、認識部130は、自車両Mの周辺に存在する物体の種別や位置、速度、加速度等の状態を認識する。物体の種別は、例えば、物体が車両であるか、歩行者であるか等の種別であってもよく、車両ごとに識別するための種別であってもよい。物体の位置は、例えば、自車両Mの代表点(重心や駆動軸中心など)を原点とした絶対座標系(以下、車両座標系)の位置として認識され、制御に使用される。物体の位置は、その物体の重心やコーナー、進行方向の先端部等の代表点で表されてもよいし、表現された領域で表されてもよい。物体の「状態」とは、例えば、物体が他車両等の移動体である場合には、物体の加速度やジャーク、あるいは「行動状態」(例えば車線変更をしている、またはしようとしているか否か)を含んでもよい。
【0036】
また、認識部130は、例えば、前方車両認識部132と、割込車両認識部134とを備える。これらの機能の詳細については後述する。
【0037】
行動計画生成部140は、認識部130の認識の結果に基づいて、自動運転等の走行制御により自車両Mを走行させる行動計画を生成する。例えば、行動計画生成部140は、原則的には推奨車線決定部61により決定された推奨車線を走行し、更に、認識部130による認識結果または地図情報から取得された自車両Mの現在位置に基づく周辺の道路形状等に基づいて、自車両Mの周辺状況に対応できるように、自車両Mが自動的に(運転者の操作に依らずに)将来走行する目標軌道を生成する。目標軌道は、例えば、速度要素を含んでいる。例えば、目標軌道は、自車両Mの到達すべき地点(軌道点)を順に並べたものとして表現される。軌道点は、道なり距離で所定の走行距離(例えば数[m]程度)ごとの自車両Mの到達すべき地点であり、それとは別に、所定のサンプリング時間(例えば0コンマ数[sec]程度)ごとの目標速度(および目標加速度)が、目標軌道の一部として生成される。また、軌道点は、所定のサンプリング時間ごとの、そのサンプリング時刻における自車両Mの到達すべき位置であってもよい。この場合、目標速度(および目標加速度)の情報は軌道点の間隔で表現される。
【0038】
行動計画生成部140は、目標軌道を生成するにあたり、自動運転のイベントを設定してよい。イベントには、例えば、自車両Mを一定の速度で同じ車線を走行させる定速走行イベント、自車両Mの前方の所定距離以内(例えば100[m]以内)に存在し、自車両Mに最も近い他車両(以下、前方車両と称する)に自車両Mを追従させる追従走行イベント、自車両Mを自車線から隣接車線へと車線変更させる車線変更イベント、道路の分岐地点で自車両Mを目的地側の車線に分岐させる分岐イベント、合流地点で自車両Mを本線に合流させる合流イベント、自動運転を終了して手動運転に切り替えるためのテイクオーバーイベント等が含まれる。また、イベントには、例えば、自車両Mを一旦隣接車線に車線変更させて前方車両を追い越してから再び元の車線へと車線変更させる追い越しイベントや、自車両Mの前方に存在する物体との接触を回避するために自車両Mに制動および操舵の少なくとも一方を行わせる回避イベント等が含まれてよい。
【0039】
また、行動計画生成部140は、例えば、自車両Mの走行時に認識された自車両Mの周辺状況に応じて、現在の区間に対して既に決定したイベントを他のイベントに変更したり、現在の区間に対して新たなイベントを設定したりしてよい。また、行動計画生成部140は、HMI30への乗員の操作に応じて、現在の区間に対して既に設定したイベントを他のイベントに変更したり、現在の区間に対して新たなイベントを設定したりしてよい。行動計画生成部140は、設定したイベントに応じた目標軌道を生成する。
【0040】
また、行動計画生成部140は、例えば、挙動制御部142と、推定部144とを備える。これらの機能の詳細については、後述する。
【0041】
第2制御部160は、行動計画生成部140によって生成された目標軌道を、予定の時刻通りに自車両Mが通過するように、走行駆動力出力装置200、ブレーキ装置210、およびステアリング装置220を制御する。
【0042】
第2制御部160は、例えば、目標軌道取得部162と、速度制御部164と、操舵制御部166とを備える。目標軌道取得部162は、行動計画生成部140により生成された目標軌道(軌道点)の情報を取得し、メモリ(不図示)に記憶させる。速度制御部164は、メモリに記憶された目標軌道に付随する速度要素に基づいて、走行駆動力出力装置200またはブレーキ装置210を制御する。操舵制御部166は、メモリに記憶された目標軌道の曲がり具合に応じて、ステアリング装置220を制御する。速度制御部164および操舵制御部166の処理は、例えば、フィードフォワード制御とフィードバック制御との組み合わせにより実現される。一例として、操舵制御部166は、自車両Mの前方の道路の曲率半径(或いは曲率)に応じたフィードフォワード制御と、目標軌道からの乖離に基づくフィードバック制御とを組み合わせて実行する。
【0043】
HMI制御部180は、HMI30により、乗員に所定の情報を通知する。所定の情報には、例えば、自車両Mの状態に関する情報や運転制御に関する情報等の自車両Mの走行に関連のある情報が含まれる。自車両Mの状態に関する情報には、例えば、自車両Mの速度、エンジン回転数、シフト位置等が含まれる。また、運転制御に関する情報には、例えば、自動運転による運転制御の実行の有無、自動運転を開始するか否かを問い合わせる情報、運転制御の変更に関する情報、自動運転による運転制御の状況(例えば、実行中のイベントの内容)に関する情報等が含まれる。運転制御の変更に関する情報には、例えば、自動化の度合の変更を示す情報や、変更される地点を示す情報、変更に伴って運転者に運転操作の一部または全部を要求する情報が含まれる。また、所定の情報には、テレビ番組、DVD等の記憶媒体に記憶されたコンテンツ(例えば、映画)等の自車両Mの走行制御に関連しない情報が含まれてもよい。また、所定の情報には、例えば、自車両Mの現在位置や目的地、燃料の残量に関する情報が含まれてよい。
【0044】
例えば、HMI制御部180は、上述した所定の情報を含む画像を生成し、生成した画像をHMI30の表示装置に表示させてもよく、所定の情報を示す音声を生成し、生成した音声をHMI30のスピーカから出力させてもよい。また、HMI制御部180は、HMI30により受け付けられた情報を通信装置20、ナビゲーション装置50、第1制御部120等に出力してもよい。また、HMI制御部180は、HMI30に出力させる各種情報を、通信装置20を介して自車両Mの利用者(乗員)が利用する端末装置に送信してもよい。端末装置は、例えば、スマートフォンやタブレット端末である。
【0045】
走行駆動力出力装置200は、自車両Mが走行するための走行駆動力(トルク)を駆動輪に出力する。走行駆動力出力装置200は、例えば、内燃機関、電動機、および変速機等の組み合わせと、これらを制御するECU(Electronic Control Unit)とを備える。ECUは、第2制御部160から入力される情報、或いは運転操作子80のアクセルペダルから入力される情報に従って、上記の構成を制御する。
【0046】
ブレーキ装置210は、例えば、ブレーキキャリパーと、ブレーキキャリパーに油圧を伝達するシリンダと、シリンダに油圧を発生させる電動モータと、ブレーキECUとを備える。ブレーキECUは、第2制御部160から入力される情報、或いは運転操作子80のブレーキペダルから入力される情報に従って電動モータを制御し、制動操作に応じたブレーキトルクが各車輪に出力されるようにする。ブレーキ装置210は、ブレーキペダルの操作によって発生させた油圧を、マスターシリンダを介してシリンダに伝達する機構をバックアップとして備えてよい。なお、ブレーキ装置210は、上記説明した構成に限らず、第2制御部160から入力される情報に従ってアクチュエータを制御して、マスターシリンダの油圧をシリンダに伝達する電子制御式油圧ブレーキ装置であってもよい。
【0047】
ステアリング装置220は、例えば、ステアリングECUと、電動モータとを備える。電動モータは、例えば、ラックアンドピニオン機構に力を作用させて転舵輪の向きを変更する。ステアリングECUは、第2制御部160から入力される情報、或いは運転操作子80のステアリングホイールから入力される情報に従って、電動モータを駆動し、転舵輪の向きを変更させる。
【0048】
[前方車両認識部、割込車両認識部、挙動制御部、および推定部の機能]
以下、実施形態に係る前方車両認識部132、割込車両認識部134、挙動制御部142、および推定部144の機能について詳細に説明する。前方車両認識部132、割込車両認識部134、挙動制御部142、および推定部144は、例えば、HMI30の運転切替スイッチにより自動運転の実行指示を受け付けた場合であって、且つ自動運転の実行条件を満たす場合に実行される機能である。以下では、実施形態における運転制御を幾つかの場面に分けて説明するものとする。また、以降の図面に示す時刻t1~t6は、それぞれが異なる時刻を表しているものとする。
【0049】
<第1の場面>
図3は、第1の場面における運転制御について説明するための図である。以下の説明では、道路における車両の進行方向(道路の延在方向)をX方向と称し、車両の幅方向(道路の幅方向)をY方向と称する場合がある。
【0050】
図3に示す道路RD1は、車線L1~L4を含む。車線L1は、車線L2に接続される車線である。車線L1は、地点P1で車線L2に接続された後、地点P1から所定距離D1だけX方向に進行した地点P2で再び車線L1から分離する。以下、地点P1から地点P2までの区間を「接続区間」と称する。接続区間は、車線L1を走行する車両が車線L2に進入することができ、車線L2を走行する車両が車線L1に進入することができる合流区間である。また、
図3の例において、接続区間には、ゼブラゾーン(導流帯)Z1、Z2が設けられている。車線L1を走行する車両および車線L2を走行する車両は、ゼブラゾーン(導流帯)Z1、Z2上を走行して一方の車線から他方の車線に進入することもできる。また、接続区間は、ゼブラゾーンZ1およびZ2と含まない区間であってもよい。
【0051】
また、車線L1と車線L2とが分離している区間(以下、「分離区間」と称する)には、第1車線L1と第2車線L2との間に区画体OB1~OB4が設けられている。区画体OB1~OB4は、例えば、壁や塀、中央分離帯等の車両が走行できないような道路構造物である。
図3の例において、区画体OB1およびOB4は、一方の車線(例えば、車線L2)に存在する車両から区画体OB1およびOB4を挟んだ先の他方の車線(例えば、車線L1)に存在する車両が認識部130によって認識できないような壁や塀等の道路構造物である。また、区画体OB2およびOB3は、一方の車線に存在する車両から区画体OB2およびOB3を挟んだ先の他方の車線に存在する車両が認識部130によって認識できる中央分離帯等である。
【0052】
また、
図3の例において、自車両M1は車線L2を速度VMで走行し、他車両m1は自車両M1の走行車線(以下、自車線と称する)と同一車線であって、且つ自車両Mの前方を速度Vm1で走行しているものとする。また、
図3の例において、時刻t1における自車両Mの位置および速度を、M(t1)およびVM(t1)と表し、時刻t1における他車両m1の位置および速度を、M(t1)およびVM(t1)と表すものとする。以降の図においても、同様の定義に基づき所定時刻における車両の位置および速度を表すものとする。
【0053】
認識部130は、自車両Mの周辺(例えば、自車両Mを中心として所定距離以内)に存在する物体を認識する。
図3の例において、認識される物体には、例えば、他車両m1、区画体OB1~OB4が含まれる。また、認識部130により認識される物体には、ゼブラゾーンZ1、Z2や、道路RD1の車線が含まれてよい。認識部130は、外界センサの認識の結果により上述した物体を認識してもよく、車両センサ40やGNSS受信機51から取得した自車両Mの位置情報に基づいて地図情報を参照し、道路RD1に関する情報を取得してもよい。また、認識部130は、カメラ10により撮像された画像等に基づいて周囲に存在する他車両のターンシグナル(ウインカー)の点灯状態を認識してもよい。ターンシグナルとは、例えば、車両の車線変更や右左折等、車両が横方向に移動することを車両の周囲に通知するための機器である。
【0054】
前方車両認識部132は、認識部130により認識された他車両のうち、自車両Mの前方を走行する前方車両を認識する。例えば、前方車両認識部132は、自車線L2と同一車線を走行し、且つ自車両Mの前方に存在し、車間距離D2が第1閾値以内の他車両を前方車両として設定する。
【0055】
割込車両認識部134は、自車両Mの前方に割り込む割込車両を認識する。例えば、割込車両認識部134は、認識部130により認識された他車両のうち、自車線に隣接する隣接車線に存在する他車両が存在するか否かを認識する。次に、割込車両認識部134は、隣接車線に他車両が存在することが認識された場合に、認識された他車両の位置情報や速度情報から他車両の挙動を認識し、他車両が自車両Mの前方に割り込むか否かを判定する。自車両Mの前方とは、例えば、自車両Mからの前方方向の距離が第2閾値以内の範囲である。割込車両認識部134は、上記の条件を満たす他車両を割込車両として設定し、上記の条件を満たさない場合に、割込車両として設定しない。
【0056】
図3の例において、前方車両認識部132は、車間距離D2が第1閾値以内の場合に他車両m1を前方車両として設定し、車間距離D2が第1閾値より大きい場合に前方車両として設定しない。
図3の例では、他車両m1が前方車両として認識されたものとする。また、
図3の例において、割込車両認識部134により割込車両として設定される他車両は存在していないものとする。認識部130、前方車両認識部132、および割込車両認識部134による認識結果は、時間情報に対応付けて他車両挙動情報192として記憶部190に格納される。
【0057】
この場合、挙動制御部142は、他車両m1の速度Vm1に基づいて、車間距離D2が所定距離範囲で他車両m1に追従して走行するように、速度を制御した行動計画を生成する。所定距離は、例えば、他車両m1の速度vm1や道路環境に応じて可変に設定される距離である。
図3の例では、時刻t1において、自車両Mを他車両m1に追従させる運転制御が実行されている。なお、第1の場面では、運転制御部は、接続区間内であっても自車両Mを他車両m1に追従させる運転制御が継続される。
【0058】
<第2の場面>
図4は、第2の場面における運転制御について説明するための図である。第2の場面は、自車両時刻t1より後の時刻t2において、他車両m1が前方車両認識部132により前方車両として設定されなくなった場面を示している。この場合、挙動制御部142は、前方車両認識部132により前方車両が設定されていないため、自車両Mを所定速度で走行させるように自車両Mの速度を制御する。所定速度とは、例えば、自車両Mが走行する道路の法定速度でもよく、予め決められた、或いは、乗員またはシステム側で設定された目標速度でもよい。また、挙動制御部142は、自車両Mが接続区間を走行する場合には、自車両Mの速度VMの所定速度への設定(調整)を所定時間保留して、その後に速度VMもしくは加速度を調整する。所定時間は、例えば、固定時間でもよく、自車両Mの速度Vmや加速度、周辺状況(例えば、道路形状、他車両の位置や挙動)に応じて可変に設定されてもよい。
【0059】
例えば、第1の場面のように、前方車両認識部132により他車両m1が前方車両として設定されている場合、運転制御部は、ACCの運転制御を実行し、他車両m1の速度Vm1(例えば、40[km/h])に基づく追従走行制御が実行される。また、第2の場面のように、他車両m1が前方車両として設定されなくなった場合、運転制御部は、自車両Mが接続区間を走行しているのであれば、自車両Mの速度VMの所定速度への変更を所定時間保留した後、CC(Cruise Control)を実行し、例えば目標速度(例えば、60[km/h])で走行するように、自車両Mの加速制御を行う。なお、挙動制御部142は、所定時間中に割込車両認識部134により割込車両が認識されない場合は、予め決められた加速度よりも相対的に大きい加速度で、自車両Mの速度が目標速度となるように制御されてもよい。また、保留中(所定時間中)の自車両Mの速度VMもしくは加速度は、任意に設定されてよい。また、保留中の加速度は、所定時間経過後(保留した後)に制御される加速度よりも小さい加速度に設定されてよい。
【0060】
<第3の場面>
図5は、第3の場面における運転制御について説明するための図である。第3の場面は、第2の場面と同様の時刻(例えば、他車両m1が前方車両認識部132により前方車両として設定されなくなった時刻)t2において、割込車両認識部134により割込車両が認識された場面を示している。他車両m2は、時刻t2において接続区間内を速度Vm2(t2)で走行する車両である。他車両m3は、時刻t2において接続区間に進入する直前の位置であって他車両m2の後方を速度Vm3(t2)で走行する車両である。他車両m4は、時刻t2において接続区間より前の分離区間であって、他車両m3の後方を速度Vm4(t2)で走行する車両である。
【0061】
第3の場面において、割込車両認識部134は、他車両m2~m4の速度情報や位置情報、ターンシグナルの点灯等に基づいて、他車両m2~m4が車線L1から車線L2に進入しようとしていることを認識する。例えば、挙動制御部142は、自車線L2に隣接する隣接車線L1から自車線L2に進入する(割り込む)一以上の他車両(例えば、他車両m2~m4)が認識された場合に、上記一以上の他車両の挙動に基づいて自車両Mの速度を制御する。例えば、挙動制御部142は、他車両m1が前方車両として認識されなくなった場合に、自車両Mの速度VMの所定速度への設定を所定時間保留するが、自車両Mの前方に割り込む割込車両が認識される場合には、割込車両に基づいて所定時間中の速度VMもしくは加速度を調整する。
【0062】
例えば、割込車両認識部134は、車両m2~m4の速度情報や位置情報に基づいて、自車両Mの前方に割り込む他車両を設定する。
図5の例では、他車両m2が割込車両として設定されたものとする。挙動制御部142は、他車両m1が前方車両認識部132により前方車両として設定されなくなった場合であっても、割込車両が認識された場合には、自車両Mの目標速度への速度制御を抑制する。この場合、挙動制御部142は、割込車両認識部134により認識される割込車両である他車両m2の速度情報および位置情報に基づいて自車両Mが割込車両に接触しないように速度を制御する。更に、挙動制御部142は、自車線L2に進入する他車両m2以外の車両(例えば、車両m3、m4)の位置情報や速度情報に基づいて、自車両Mが他車両を接触しないように速度VMもしくは加速度を調整して速度制御を行う。
【0063】
この場合、割込車両認識部134は、例えば、他車両m2~m4との相対速度や相対位置に基づいて、自車両Mと他車両m2~m4の接触リスク(または干渉リスク)を定量化するための指標値を導出する。指標値には、例えば、自車両Mと他車両m2~m4の速度、自車両Mおよび他車両m2~m4の接触余裕時間(Time to Collision;以下、TTC)、自車両Mと他車両m2~m4との車頭時間(Time Headway;以下、THW)のうち、少なくとも一つが含まれる。TTCは、例えば、車両Mが他車両の基準位置(例えば自車両Mに最も近い端部など)に接触するまでの時間である。また、THWは、例えば、他車両が所定の位置を通過してから自車両Mが所定の位置を通過するまでの時間である。所定の位置とは、道路RD1の進行方向の位置(例えば、地点P1、P2等)である。割込車両認識部134は、TTCまたはTHWのうち一方または双方を、例えば道路RD1の進行方向(縦方向)と、道路幅方向(横方向)とで区別して導出してもよい。
【0064】
また、挙動制御部142は、導出した指標値に基づいて自車両Mの速度を制御する。
図6は、TTCとTHWとの相対関係を用いた接触リスクについて説明するための図である。
図6の例では、横軸にTHW[s]を示し、縦軸にTTC[s]を示している。
図6の例では、自車両Mを基準(2軸の中心)とした場合における他車両m2~m4のTHWおよびTTCの位置がプロットされている。
図6の例において、THWが負の値となる場合は、他車両よりも先に自車両Mが所定の位置を通過した場合である。
【0065】
ここで、エリアAR1およびAR2は、他車両が自車線L2に合流した場合に、自車両Mと接触するリスクが高い(基準値以上である)と推定される領域である。
図6の例では、他車両m3のプロット位置がエリアAR1およびAR2に含まれているため、自車両Mと他車両m3は、接触するリスクが高い。そのため、挙動制御部142は、他車両m3と接触しないように、加速および減速による速度制御を行う。この場合、挙動制御部142は、上述の速度制御によって、他車両m2およびm4がエリアAR1およびAR2に含まれないように制御を行う。これにより、自車両Mは、自車線L2に合流する合流車両との接触リスクを抑制して、より適切な運転制御を実行することができる。また、前方車両認識部132により他車両m1が前方車両として設定されなくなった場合であっても、すぐに目標速度への速度制御が抑制されるため、より円滑な走行を実現することができる。
【0066】
なお、第3の場面において、挙動制御部142は、TTCおよびTHWの相対関係に基づいて、速度制御を行ったが、速度差とTHWの相対関係や、速度差とTTCとの相対関係に基づいて、自車両Mの速度制御を行ってもよい。
【0067】
なお、上述の例において、割込車両認識部134は、車両m2~m4のそれぞれにおいて、割込車両の判定や接触リスクの導出を行うことに代えて、所定距離以内の間隔で走行する車両を一群の車両とし、一群の車両としてまとめて割込車両の判定や接触リストの判定を行ってもよい。これにより、車両ごとに割込車両の判定や接触リスクの導出を行うよりも処理負荷を軽減することができる。
【0068】
<第4の場面>
図7は、第4の場面における運転制御について説明するための図である。第4の場面は、時刻t3における自車両Mの運転制御の様子を示すものである。
図7の例では、自車両Mが接続区間に進入する場面を示しており、自車両Mは車線L2を速度VM(t3)で走行し、他車両m5は車線L2を速度Vm5(t3)で走行し、他車両m6が自車線L2に隣接する車線L3を速度Vm6(t3)で走行し、他車両m7が自車線L2に隣接する車線L1を速度Vm7(t3)で走行しているものとする。他車両m5~m7は、自車両Mの前方を走行する車両である。また、
図7の例において、自車両Mおよび他車両m5~m7の速度の関係は、VM(t3)の速度が最も大きく、次にVm7(t3)、Vm6(t3)、Vm5(t3)の順に大きいものとする。
【0069】
図7の例において、仮に他車両m6およびm7が存在しない場合、挙動制御部142は、自車両Mと同一車線の前方を走行する他車両m5との車間距離D3が所定距離範囲で他車両m5に追従して走行するように、他車両m5の速度Vm5(t3)に基づいて自車両Mの速度制御を行う。しかしながら、他車両m6は、左側に車線変更するためのターンシグナルが点灯しており、自車両Mと他車両m5との位置関係や速度関係から自車両Mと他車両m5との間に割り込む可能性が高い。そのため、割込車両認識部134は、他車両m6を割込車両として設定する。また、この場合、挙動制御部142は、割込車両として設定された他車両m6の速度に基づいて自車両Mが他車両m6と接触しないように速度制御を行う。また、挙動制御部142は、自車両Mを車線L2から車線L3に車線変更させる制御を行ってもよい。これにより、他車両L6の走行を妨げることなく、接続区間における円滑な交通流を実現できる。
【0070】
また、
図7の例において、車両m7が存在する場合には、割込車両認識部134は、他車両m7を割込車両として設定する。また、他車両m7は他車両m5および他車両m6よりも高速で走行している。したがって、挙動制御部142は、自車線L2に合流してくる高速移動車両が存在する場合に、自車両Mを減速させる制御を行う。また、挙動制御部142は、他車両m7が円滑に車線L2に合流できるように、車線L2からL3へ車線変更してもよい。これにより、自車両Mは、接続区間(合流区間)において、他車両との接触を回避することができると共に、自車両Mの速度の変動(加速や減速)が頻繁に発生することを抑制して、より円滑な運転制御を実現することができる。
【0071】
<第5の場面>
図8は、第5の場面における運転制御について説明するための図である。第5の場面は、時刻t4における自車両Mの運転制御の様子を示すものである。
図8の例では、自車両Mと、他車両m10~m14とが存在する。自車両Mは、車線L2を速度VM(t4)で走行し、他車両m10、m11は、それぞれ車線L2を速度Vm10(t4)、Vm11(t4)で走行し、他車両m12は、車線L1を速度Vm12(t4)で走行し、他車両m13、m14が車線L3を速度Vm13(t4)、Vm14(t4)で走行しているものとする。他車両m10~m13は、自車両Mの前方を走行する車両であり、他車両m14は、自車両Mの後方を走行する車両である。
【0072】
第5の場面では、時刻t4の時点において、自車両Mは、他車両m11との車間距離D4が所定距離範囲で他車両m11に追従して走行していた状態から追従走行を解除して車線L3に車線変更するものとする。
図9は、自車両Mが車線変更を実行している状態を説明するための図である。
図9の例では、時刻t4より後の時刻t5において、自車両Mが目的地への進行方向に合わせて車線L2から車線L3へ車線変更を実行している状態を示している。例えば、時刻t5の時点では、自車両Mは、操舵制御部166による操舵制御により車線変更が行われる。この時点では、追従していた他車両m11が先行車両として設定されなくなるため、自車両Mが速度制御を行う対象の車両が存在しない状態となる。この場合、推定部144は、記憶部190に記憶された他車両挙動情報192を参照し、今まで前方車両として設定されていた他車両m11の挙動に基づいて、前方車両として認識されなくなった後の他車両m11の挙動を推定する。そして、挙動制御部142は、推定部144により推定された他車両m11の挙動に基づいて、自車両Mの速度を制御する。これにより、今まで追従していた他車両の挙動に基づいて、自車両Mの速度制御や操舵制御をより円滑に行うことができる。
【0073】
なお、推定部144は、前方車両認識部132により前方車両として認識されていた他車両m11に代えて(または加えて)、認識部130により認識された周辺車両(例えば、他車両m11、m13、m15)の挙動を推定し、推定した挙動に基づいて、自車両Mの速度制御や操舵制御を行ってもよい。この場合、挙動制御部142は、例えば、複数の他車両の速度を平均した平均速度等に基づいて、自車両Mの速度制御を行う。これにより、周辺車両の挙動や道路の交通流に応じて、より円滑な運転制御を実現することができる。
【0074】
<第6の場面>
図10は、第6の場面における運転制御について説明するための図である。
図10は、時刻t6における自車両Mと他車両m15~m18の様子を示している。
図10の例では、接続区間において、自車両Mが車線L1から車線L2に車線変更する場面を示している。また、
図10の例において、他車両m15は時速Vm15(t6)で車線L1から車線L2に車線変更を行い、他車両m16は時速Vm16(t6)で車線L2から車線L3に車線変更を行い、他車両m17は時速Vm17(t6)で車線L2を走行し、他車両m18は時速Vm18(t6)で車線L3を走行しているものとする。他車両m17、m18は、自車両Mの後方車両である。
【0075】
時刻t6の前の時点において、自車両Mは、他車両m15に追従して走行していたものとする。その後、時刻t6において、自車両Mが車線L1から車線L2に車線変更する場合、他車両m15が、前方車両認識部132により前方車両として設定されなくなる。この場合、推定部144は、記憶部190に記憶された他車両挙動情報192を参照し、今までの他車両m15~m18の挙動から、時点t6以降の挙動を推定する。そして、挙動制御部142は、推定部144により推定された他車両m15~m18の挙動に基づいて、自車両Mの速度制御や操舵制御を行う。
【0076】
つまり、本実施形態における運転制御は、自車両Mが合流区間に合流する場合にも適用でき、上述した制御を行うことで、より適切な運転制御を実行することができる。また、上述した制御を行うことで、合流区間における自車両Mの自動運転を継続させることができる。
【0077】
[処理フロー]
図11は、実施形態の自動運転制御装置100により実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。なお、
図11の例では、自動運転制御装置100により実行される処理のうち、主に合流区間(接続区間)等において速度制御を行う処理を中心として説明する。また、
図11に示す処理は、例えば、自動運転の実行中において、所定タイミングまたは所定周期で繰り返し実行されてよい。
【0078】
図11の例において、まず、認識部130は、自車両Mの周辺を認識する(ステップS100)。ステップS100の処理には、前方車両認識部132による前方車両の認識処理や割込車両認識部134による割込車両の認識処理が含まれる。次に、挙動制御部142は、認識部130により認識される他車両のうち、前方車両認識部132により前方車両として設定されている他車両が存在するか否かを判定する(ステップS102)。前方車両として設定されている他車両が存在すると判定した場合、挙動制御部142は、前方車両の速度に基づいて、前方車両に追従するように自車両の速度を制御する(ステップS104)。
【0079】
また、ステップS102の処理において、前方車両として設定されている他車両が存在しないと判定した場合、挙動制御部142は、前方車両認識部132により今まで前方車両として設定されていた他車両が前方車両として認識(設定)されなくなったか否かを判定する(ステップS106)。今まで前方車両として設定されていた他車両が前方車両として認識されなくなったと判定した場合、挙動制御部142は、自車両Mの速度を所定速度(例えば、目標速度や法定速度)に設定(調整)するのを所定時間保留する(ステップS108)。次に、挙動制御部142は、割込車両認識部134の認識結果に基づいて上記所定時間中に割込車両が存在するか否かを判定する(ステップS110)。割り込み車両が存在すると判定した場合、挙動制御部142は、割込車両の挙動に基づいて所定時間中の速度若しくは加速度を調整する(ステップS112)。
【0080】
また、ステップS106の処理において、今まで前方車両として設定された他車両が認識されなくなっていないと判定された場合、またはステップS110の処理において、所定時間中に自車両Mの前方に割込車両が存在しないと判定された場合、またはステップS112の処理後、挙動制御部142は、所定速度となるように自車両Mの速度を制御する(ステップS114)。
【0081】
ステップS104、またはステップS114の処理後、自動運転制御装置100は、運転制御を終了するか否かを判定する(ステップS116)。運転制御を終了しないと判定された場合に、ステップS100の処理に戻る。また、乗員の指示(例えば、運転切替スイッチによる手動運転への切り替え指示)等により運転制御を終了すると判定された場合に、本フローチャートの処理は終了する。
【0082】
[変形例]
上述した実施形態では、自動運転制御装置100が自車両Mを制御するものとして説明したが、これに代えて(または加えて)、自車両Mの乗員が行う運転を支援する運転支援装置に上述の運転制御に関する処理を適用してもよい。以下では、運転支援装置に上述した運転制御を適用した例について、自動運転制御装置100を用いた実施形態との相違点を中心に説明する。
【0083】
図12は、運転支援装置110を含む車両システム2の機能構成の一例を示す図である。
図12に示す車両システム2は、車両システム1と比較すると、自動運転制御装置100に代えて、運転支援装置110を備える。運転支援装置110は、「車両制御装置」の一例である。運転支援装置110は、例えば、認識部130と、支援制御部112と、HMI制御部180と、記憶部190とを備える。認識部130は、自動運転制御装置100の認識部130と同様に、前方車両認識部132と、割込車両認識部134とを備える。
【0084】
支援制御部112は、自車両Mの乗員が行う運転を支援する。支援とは、例えば、自車両Mの速度または操舵のうち少なくとも一方が運転支援装置110により制御される機能である。支援制御部112は、例えば、乗員の運転支援としてACCを実行したり、CCを実行したり、ALCを実行したり、LKASを実行したりする。また、支援制御部112は、例えば、挙動制御部113と、推定部114とを備える。挙動制御部113は、上述した挙動制御部142と同様に前方車両認識部132および割込車両認識部134の認識結果に基づいて、乗員の操作を支援して自車両Mの速度または操舵のうち一方または双方を制御する。また、推定部114は、上述した推定部144と同様に自車両Mの周辺に存在する他車両の挙動を推定する。挙動制御部113は、推定部114により推定した結果に基づいて、乗員の操作を支援して自車両Mの速度または操舵のうち一方または双方を制御する。なお、運転支援装置110により実行される処理は、上述した自動運転制御装置100により実行処理の流れと同様の処理(より具体的には、挙動制御部142を、挙動制御部113に置き換えた処理)が適用可能であるため、ここでの具体的な説明は省略する。
【0085】
上述した実施形態によれば、自動運転制御装置100または運転支援装置110(車両制御装置の一例)は、自車両Mの周辺を認識する認識部130と、認識部130により認識された他車両が前方車両として設定されている場合には前方車両の速度に基づいて自車両Mの速度を制御し、他車両が前方車両として設定されていない場合には自車両Mが所定速度となるように自車両Mの速度を制御する運転制御部(行動計画生成部140、第2制御部160)と、を備え、運転制御部は、前方車両として設定された他車両が前方車両として設定されなくなった場合に、所定速度への設定を所定時間保留して、自車両Mの速度もしくは加速度を調整し、所定時間中の自車両Mの速度もしくは加速度は、認識部130により自車両Mの前方に割り込む割込車両が認識される場合に、割込車両に基づいて調整されることにより、周辺状況に応じて、より適切に自車両Mの運転制御を行うことができる。
【0086】
具体的には、実施形態によれば、自車両Mまたは前方車両の挙動の変化等により、自車両Mが前方車両をロストした場合に、すぐに所定速度(例えば、法定速度)に加速するのではなく、周囲の状況変化を考慮して一旦は加速制御を行わないようにしたり、自車両Mに合流する他車両(割込車両)に基づいて自車の速度を制御することで、合流車線や車線変更区間等での自車両Mの急減速を抑制することができる。
【0087】
[ハードウェア構成]
図13は、実施形態の自動運転制御装置100のハードウェア構成の一例を示す図である。図示するように、自動運転制御装置100のコンピュータは、通信コントローラ100-1、CPU100-2、ワーキングメモリとして使用されるRAM100-3、ブートプログラム等を格納するROM100-4、フラッシュメモリやHDD等の記憶装置100-5、ドライブ装置100-6等が、内部バスあるいは専用通信線によって相互に接続された構成となっている。通信コントローラ100-1は、自動運転制御装置100以外の構成要素との通信を行う。ドライブ装置100-6には、光ディスク等の可搬型記憶媒体(例えば、コンピュータ読み込み可能な非一時的記憶媒体)が装着される。記憶装置100-5には、CPU100-2が実行するプログラム100-5aが格納されている。このプログラムは、DMA(Direct Memory Access)コントローラ(不図示)等によってRAM100-3に展開されて、CPU100-2によって実行される。CPU100-2が参照するプログラム100-5aは、ドライブ装置100-6に装着された可搬型記憶媒体に格納されていてもよいし、ネットワークを介して他の装置からダウンロードされてもよい。これによって、自動運転制御装置100の各構成要素のうち一部または全部が実現される。また、
図13に示すハードウェアは、自動運転制御装置100に代えて運転支援装置110にも同様に適用できる。
【0088】
上記説明した実施形態は、以下のように表現することができる。
プログラムを記憶した記憶装置と、
ハードウェアプロセッサと、を備え、
前記ハードウェアプロセッサが前記記憶装置に記憶されたプログラムを実行することにより、
自車両の周辺を認識し、
認識した他車両が前方車両として設定されている場合には前記前方車両の速度に基づいて前記自車両の速度を制御し、
前記他車両が前方車両として設定されていない場合には前記自車両が所定速度となるように前記自車両の速度を制御し、
前記前方車両として設定された他車両が前方車両として設定されなくなった場合に、前記所定速度への設定を所定時間保留して前記自車両の速度もしくは加速度を調整し、
前記所定時間中の前記自車両の速度もしくは加速度は、前記自車両の前方に割り込む割込車両を認識した場合に、前記割込車両に基づいて調整される、
ように構成されている、車両制御装置。
【0089】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0090】
1、2…車両システム、10…カメラ、12…レーダ装置、14…LIDAR、16…物体認識装置、20…通信装置、30…HMI、40…車両センサ、50…ナビゲーション装置、60…MPU、80…運転操作子、100…自動運転制御装置、110…運転支援装置、112…支援制御部、113、142…挙動制御部、114、144…推定部、120…第1制御部、130…認識部、132…前方車両認識部、134…割込車両認識部、140…行動計画生成部、160…第2制御部、162…目標軌道取得部、164…速度制御部、166…操舵制御部、180…HMI制御部、190…記憶部、200…走行駆動力出力装置、210…ブレーキ装置、220…ステアリング装置