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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】液体吐出装置及び廃液タンク
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/17 20060101AFI20241004BHJP
【FI】
B41J2/17 203
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020171416
(22)【出願日】2020-10-09
(65)【公開番号】P2022063076
(43)【公開日】2022-04-21
【審査請求日】2023-10-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武永 健
(72)【発明者】
【氏名】岩倉 広弥
(72)【発明者】
【氏名】松村 英明
(72)【発明者】
【氏名】濱野 徹
(72)【発明者】
【氏名】土岐 宣浩
(72)【発明者】
【氏名】武田 大樹
(72)【発明者】
【氏名】亀山 文恵
(72)【発明者】
【氏名】島田 皓樹
(72)【発明者】
【氏名】麻田 翔太
(72)【発明者】
【氏名】田中 佑典
(72)【発明者】
【氏名】荒木 裕太
(72)【発明者】
【氏名】丸山 泰司
(72)【発明者】
【氏名】松山 淳志
(72)【発明者】
【氏名】楢谷 友輔
(72)【発明者】
【氏名】田中 耕輔
【審査官】長田 守夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-88324(JP,A)
【文献】特開2009-234224(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0020782(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2007-0099202(KR,A)
【文献】特開2008-1083(JP,A)
【文献】特開2005-161750(JP,A)
【文献】特開2005-7603(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体に複数種類の液体を吐出可能な吐出手段と、
前記液体の廃液を収容する収容空間を有する廃液タンクと、を備え
前記廃液タンクは、
前記廃液が前記収容空間に流入する第一の流入部及び第二の流入部と、
前記第一の流入部及び前記第二の流入部との間に位置し、前記収容空間での前記廃液の移動を規制する壁部と、
前記収容空間を仕切って前記廃液の流路を形成する仕切り壁と、を備え、
前記流路には前記廃液の流れを拡散させる拡散壁が設けられている、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体吐出装置であって、
前記廃液タンクは、前記液体吐出装置に着脱自在に装着され、
前記第一の流入部と前記第二の流入部とは、前記廃液タンクの着脱方向と交差する方向に離間している、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項3】
請求項に記載の液体吐出装置であって、
前記第一の流入部は前記流路の第一の端部に位置し、前記第二の流入部は前記流路の第二の端部に位置している、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の液体吐出装置であって、
前記流路は途中で屈曲した流路である、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の液体吐出装置であって、
前記廃液タンクは、
前記廃液が前記収容空間に流入する第三の流入部を備え、
前記流路における前記第三の流入部の位置は、前記第一の流入部よりも前記第二の流入部に近い位置である、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項6】
請求項に記載の液体吐出装置であって、
前記廃液タンクは、
前記収容空間に設けられ、前記廃液を吸収する吸収体を有し、
前記第二の流入部と前記第三の流入部との間の前記流路には、前記吸収体の厚み方向に前記吸収体に挿入され、前記吸収体の厚さよりも短い低壁部が設けられている、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項7】
請求項に記載の液体吐出装置であって、
前記第三の流入部の位置は、前記廃液が前記吸収体の側部に浸透する位置である、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項8】
請求項1乃至請求項のいずれか一項に記載の液体吐出装置であって、
前記媒体は、シートであり、
前記吐出手段は、前記シートに顔料インク及び染料インクを吐出して記録を行う記録手段であり、
前記液体吐出装置は、前記記録手段の吐出性能の回復動作を行う回復手段を備え、
前記第一の流入部には、前記回復手段から前記顔料インクの廃液が流入し、
前記第二の流入部には、前記回復手段から前記染料インクの廃液が流入する、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項9】
請求項を引用する請求項に記載の液体吐出装置であって、
前記第三の流入部には、前記記録手段から前記シート外へ吐出された前記染料インクの廃液が流入する、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項10】
請求項に記載の液体吐出装置であって、
前記廃液タンクは、前記液体吐出装置に着脱自在に装着され、
前記第一の流入部と、前記第二の流入部及び前記第三の流入部とは、前記廃液タンクの着脱方向と交差する方向に離間している、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項11】
媒体に複数種類の液体を吐出可能な吐出手段を備えた液体吐出装置に着脱自在に装着され、前記液体の廃液を収容する収容空間を有する廃液タンクであって、
前記廃液が前記収容空間に流入する第一の流入部及び第二の流入部と、
前記第一の流入部及び前記第二の流入部との間に位置し、前記収容空間での前記廃液の移動を規制する壁部と、
前記収容空間を仕切って前記廃液の流路を形成する仕切り壁と、を備え、
前記流路には前記廃液の流れを拡散させる拡散壁が設けられている、
ことを特徴とする廃液タンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体吐出装置及び廃液タンクに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置等の液体吐出装置として、廃液を収容する廃液タンクを備えた液体吐出装置が知られている。インクジェット記録装置の場合、記録ヘッドの回復動作等で生じた廃インクが廃液タンクに収容される(特許文献1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-196803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一部の種類の顔料インクと染料インクは、互いに混ざり合うと固着して堆積する性質がある。このような複数種類の廃インクが廃液タンク内で混ざり合うと廃液タンク内で固着や堆積を生じる。廃液の流入部付近で固着や堆積が生じると、廃インクが廃液タンク内に広く拡散せず、廃インクの収容量が低下して廃液タンクの寿命を低下させる。
【0005】
本発明は、種類の異なる液体が廃液タンクの流入部付近で混ざり合うことを抑制する技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、
媒体に複数種類の液体を吐出可能な吐出手段と、
前記液体の廃液を収容する収容空間を有する廃液タンクと、を備え
前記廃液タンクは、
前記廃液が前記収容空間に流入する第一の流入部及び第二の流入部と、
前記第一の流入部及び前記第二の流入部との間に位置し、前記収容空間での前記廃液の移動を規制する壁部と、
前記収容空間を仕切って前記廃液の流路を形成する仕切り壁と、を備え、
前記流路には前記廃液の流れを拡散させる拡散壁が設けられている、
ことを特徴とする液体吐出装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、種類の異なる液体が廃液タンクの流入部付近で混ざり合うことを抑制する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る液体吐出装置の概略図。
図2】装着状態における廃液タンクとその周囲の構成の斜視図。
図3】(A)は廃液タンクの斜視図、(B)は廃液タンクの分解斜視図。
図4】廃液タンクの内部構造の説明図。
図5】(A)は別の例の廃液タンクの内部構造の説明図、(B)は図5(A)のA-A線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
<第一実施形態>
<液体吐出装置の概要>
図1は本発明の一実施形態に係る液体吐出装置1の概略図である。本実施形態の液体吐出装置1は、液体としてインクを吐出して記録媒体に記録を行うインクジェット記録装置であるが、本発明はインクジェット記録装置以外の各種の液体吐出装置にも適用可能である。図中、矢印X及びYは互いに直交する水平方向を示し、矢印Zは上下方向(重力方向)を示している。X方向は液体吐出装置1の幅方向(左右方向)である。Y方向は液体吐出装置1の奥行方向である。
【0011】
なお、「記録」には、文字、図形等有意の情報を形成する場合のみならず、有意無意を問わず、広く記録媒体上に画像、模様、パターン等を形成する、又は媒体の加工を行う場合も含まれ、人間が視覚で知覚し得るように顕在化したものであるか否かを問わない。また、本実施形態では「記録媒体」としてシート状の紙を想定するが、布、プラスチック・フィルム等であってもよい。
【0012】
液体吐出装置1は、インクを吐出可能な記録ヘッド2A及び2Bを備える。記録ヘッド2A及び2Bは、それぞれ、シートSにインクを吐出し、これによりシートSに画像を記録する。記録ヘッド2A及び2Bは、それぞれ、インクを吐出する複数のノズルが形成されたインク吐出面を有しており、インク吐出面はシートSを支持するプラテン6に対向している。各ノズルには、例えば、電気熱変換素子(ヒータ)が設けられており、電気熱変換素子は通電によって加熱してインクを発泡させ、その発泡エネルギーでインクを吐出させる。記録ヘッド2A及び2Bは、種類の異なるインクを吐出する。本実施形態の場合、記録ヘッド2Aは顔料インクを吐出し、記録ヘッド2Bは染料インクを吐出する。また、記録ヘッド2Bは複数種類(例えば複数色)のインクを吐出する。記録ヘッド2A及び2Bには不図示のインクタンクからインクが供給される。なお、記録ヘッド2A及び2Bは、ピエゾ素子を用いたものも採用可能である。また、記録ヘッド2A及び2Bは、インクを収容するインクタンクが一体となったヘッドカートリッジであってもよい。さらに、記録ヘッド2A及び2Bは、シートSの幅に相当する領域に吐出口が配置されたラインヘッドであってもよい。
【0013】
記録ヘッド2A及び2Bはキャリッジ3に搭載されている。キャリッジ3は、駆動ユニット4によってX方向(主走査方向)に往復する。駆動ユニット4はX方向に離間して配置されたプーリ4a、4bと、これらのプーリ4a、4bに巻き回された無端ベルト4cと、プーリ4aを回転させる駆動源であるキャリッジモータ4dとを備える。キャリッジ3は無端ベルト4cに連結されており、無端ベルト4cを走行させることで、X方向に移動する。キャリッジ3の移動の過程で記録ヘッド2A、2BからインクをシートSに吐出することで画像が記録される。この動作を記録走査と呼ぶ。
【0014】
搬送ユニット5はシートSをY方向(副走査方向)に搬送する機構である。搬送ユニット5は搬送ローラ5aと、搬送ローラ5aに圧接されるピンチローラ5bと、搬送ローラ5aを回転させる駆動源である搬送モータ(不図示)を備える。搬送ローラ5aとピンチローラ5bのニップ部でシートSを挟持しつつ、搬送ローラaの回転によってシートSを破線矢印の方向に搬送する。搬送ユニット5は、プラテンと記録ヘッド2A及び2Bとの間を通過するようにシートSを間欠的に搬送する。搬送ユニット5によるシートSの搬送動作と、記録走査とを交互に繰り返すことでシートSに頁単位の画像を記録することができる。
【0015】
キャリッジ3の移動範囲の一端には、回復ユニット7が設けられている。回復ユニット7は、記録ヘッド2A、2Bのインク吐出性能の回復動作を行う機構である。回復ユニット7は、記録ヘッド2Aのインク吐出面を覆うキャップ7aと、記録ヘッド2Bのインク吐出面を覆うキャップ7bとを備える。キャップ7a、7bは、対応する記録ヘッド2A、2Bのインク吐出面の乾燥を防ぐことができる。回復ユニット7は、また、吸引ポンプ7cを備える。吸引ポンプ7cは、キャップ7a、7bを介して記録ヘッド2A、2Bからインクを吸引する回復動作を行うことができる。インクの吐出を繰り返すことで発生する熱により、記録ヘッド2A、2B内のインクには吐出不良の原因となる気泡が発生する。回復動作により、こうした気泡を取り除くことや、インク吐出面に存在する増粘インク等を除去することができる。
【0016】
記録ヘッド2A、2Bから吸引したインクは、その後の記録に使用しない廃液(廃インク)となる。吸引ポンプ7cは、記録ヘッド2A、2Bから吸引したインクを廃液タンク20へ排出する。吸引ポンプ7cからの廃インクは、チューブ7d、7e及び導入部材10、11を介して、廃液タンク20内へ導入される。チューブ7d及び導入部材10は、記録ヘッド2Aに対応しており、顔料インクが流通する。チューブ7e及び導入部材11は、記録ヘッド2Bに対応しており、染料インクが流通する。
【0017】
廃液タンク20は、廃インクを収容して保持する容器である。液体吐出装置1は、廃液タンク20が着脱自在に装着される装着部(不図示)を有している。本実施形態の場合、廃液タンク20はY方向にこれを移動することで、液体吐出装置1に装着及び取り外しが可能であり、矢印Y1は装着方向を、矢印Y2は取り外し方向を示している。
【0018】
図1に加えて図2を参照する。図2は装着状態における廃液タンク20とその周囲の構成の斜視図である。廃液タンク20には、回収ユニット8からも廃インクが排出される。回収ユニット8は、記録ヘッド2Bからプラテン6に向けて吐出され、シート外へ吐出された廃インクを回収して廃液タンク20に排出するユニットである。
【0019】
より詳しく述べると、シートSの縁に余白を残さない、いわゆる縁無し記録の場合、シートSの縁をはみだした範囲においても記録ヘッド2Bからインクが吐出される。プラテン6には、シートSに着弾しない、こうしたインクを受容する溝が形成されており、回収ユニット8はこの溝に受容された廃インクを廃液タンク20に導入する。また、プラテン6の溝には、記録ヘッド2Bの吐出性能を維持するために、記録に関係しないインクが吐出される場合もある。
【0020】
回収ユニット8はプラテン6の溝から廃液タンク20までの廃インクの流路を形成する部材であってもよいし、当該流路に加えて廃インクを圧送するポンプ等の駆動機構を有していてもよい。なお、本実施形態の場合、縁無し記録においては、顔料インクを用いず染料インクを吐出する記録ヘッド2Bのみを用いて画像を記録する。また、吐出性能の維持のためにプラテン6の溝に吐出されるインクも染料インクのみである。
【0021】
導入部材10及び11は、液体吐出装置1のフレーム(不図示)に支持された不動の部材である。導入部材10及び11は、ユーザによる液体吐出装置1に対する廃液タンク20の装着操作に伴って廃液タンク20に装着され、また、廃液タンク20の取り外し操作に伴って廃液タンク20から分離する。導入部材10及び11は、それぞれ、チューブ7d、7eから流れてくる廃インクを下方へ排出して廃液タンク20に導入する導入口を形成する。
【0022】
液体吐出装置1には、接続端子9が設けられている。接続端子9は、液体吐出装置1の制御部(不図示)を廃液タンク20と電気的に接続する電気接点を有する。廃液タンク20には電気回路25が設けられている。電気回路25は接続端子9と接続される接続端子と、ROM等の記憶デバイスとを含む。液体吐出装置1の制御部(不図示)は、廃液タンク20に排出される廃インク量を演算し、記憶デバイスに書き込み、更新することで、廃液タンク20に保持されている廃インク量を管理することができる。廃液タンク20に保持されている廃インク量が所定量を超えると、廃液タンク20の交換がユーザに報知される。ユーザは、廃インクで満杯となった廃液タンク20を取り外し、新品の廃液タンク20を装着することになる。
【0023】
<廃液タンク>
図3(A)及び図3(B)を参照して廃液タンク20の構造を説明する。図3(A)は廃液タンク20の斜視図であり、図3(B)は廃液タンク20の分解斜視図である。廃液タンク20は、上部が開放した箱型の本体21と、本体21の上部を覆うカバー22と、を備えた中空体であり、その内部の収容空間に廃インクを吸収する吸収体23が収容されている。吸収体23で流動性のある廃インクを吸収することにより、廃液タンク20や液体吐出装置1が傾けられた場合においても、廃インクが漏れ出ることを防止できる。
【0024】
本体21には、電気回路25が設けられている。本体21のY1方向で前側の端部には開口部21bが形成されている。この開口部21bは、回収ユニット8から廃インクが導入される流入部F3を構成する。本体21には、また、廃液タンク20の内部の収容空間を仕切って廃インクの流路を形成する仕切り壁26が形成されている。仕切り壁26は、本実施形態の場合、本体21の板状の底部21aに立設された板状の壁部であり、本体21と一体に成形されている。
【0025】
吸収体23は、その厚み方向に貫通した開口空間である受容部23a、23bを有する。本実施形態の受容部23a、23bは、直方体形状の空間である。受容部23aは、導入部材10の真下に位置し、導入部材10の導入口から流下する廃インク(顔料インク)は、まず、受容部23aに流入し、吸収体23に吸収されていく。受容部23bは、導入部材11の真下に位置し、導入部材11の導入口から流下する廃インク(染料インク)は、まず、受容部23bに流入し、吸収体23に吸収されていく。吸収体23のY1方向で前側の側部23cは、開口部21bに位置しており、回収ユニット8からの廃インク(染料インク)が流入、浸透する。吸収体23には、また、その厚み方向に貫通する複数のスリット23dが形成されている。スリット23dには仕切り壁26が挿入され、吸収体23が本体21により確実に保持される。
【0026】
カバー22は、Y1方向の前側に開口したスロット22a、22bを備える。スロット22a、22bの内部は、下方に開放されており、受容部23a、23bと連通している。スロット22aには導入部材10が装着され、スロット22bには導入部材11が装着される。
【0027】
以上の構成により、廃液タンク20は、廃インクが流入する流入部F1~F3が形成される。流入部F1はスロット22aにより形成され、流入部F2はスロット22bにより形成される。また、流入部F3は開口部21bにより形成される。
【0028】
ここで、一部の種類の顔料インクと染料インクは、互いに混ざり合うと固着して堆積する性質がある。このような複数種類の廃液が廃液タンク20内で混ざり合うと廃液タンク20内で固着や堆積を生じ、廃インクの収容量が低下して廃液タンク20の寿命を低下させる。
【0029】
本実施形態の場合、流入部F1には顔料インクが流入し、流入部F2及びF3には染料インクが流入する。顔料インクと染料インクとで、流入部を区別することで、これらが早期に混ざり合うことを防止できる。また、廃液タンク20の内部は、顔料インクと染料インクとが早期に混ざり合わないように仕切り壁26による流路構造を有している。図4は廃液タンク20の内部構造の説明図であり、本体21の平面図である。
【0030】
仕切り壁26は、Y方向に延びる壁部26aを含む。壁部26aは流入部F1と流入部F2との間に位置している。より具体的に述べると、流入部F1と流入部F2とを結ぶ仮想線上において、当該仮想線と交差する方向に壁部26aが延設されている。このため、流入部F1から流入した顔料インクが流入部F2へ直線的に、最短距離で移動することが規制される。同様に、流入部F2から流入した染料インクが流入部F1へ直線的に、最短距離で移動することが規制される。したがって、顔料インクと染料インクとが流入部F1、F2付近で混ざり合うことを抑制することができる。
【0031】
仕切り壁26は、また、X方向に延びる壁部26dを有する。壁部26dは流入部F1と流入部F3との間に位置している。より具体的に述べると、流入部F1と流入部F3とを結ぶ仮想線上において、当該仮想線と交差する方向に壁部26dが延設されている。このため、流入部F1から流入した顔料インクが流入部F3へ直線的に、最短距離で移動することが規制される。同様に、流入部F3から流入した染料インクが流入部F1へ直線的に、最短距離で移動することが規制される。したがって、顔料インクと染料インクとが流入部F1、F3付近で混ざり合うことも抑制することができる。
【0032】
仕切り壁26によって、廃液タンク20の内部には、廃インクの流路RTが形成されている。流路RTは、流入部F1~F3を互いに連通させるが、途中で複数回屈曲しており、廃インクの流れを迂回させる迷路形状を有している。このため、顔料インクと染料インクとが早期に混ざり合うことを抑制できる。
【0033】
流路RTは、分岐点BRにおいて各流入部F1~F3へ三つに分岐している。流入部F1-分岐点BR-流入部F2と繋がる流路を流路RT1と呼ぶ。流路RT1は、壁部26aと本体21の外周壁との間、壁部26b及び26cと壁部26d及び26eとの間、に形成された通路である。流入部F1、流入部F2は流路RT1の一方端部、他方端部に位置しており、流路RT1の中間地点は地点Mである。流入部F1に流入した顔料インクと、流入部F2に流入した染料インクとは、その流入総量に左右されるが、概ね、地点M付近で混ざり合うことになる。地点M付近であれば、各流入部F1、F2から遠いので、廃インクの固着等が生じても廃インクの流入を阻害することがないため、廃液タンク20の収容量を低下させることはない。
【0034】
流入部F1-分岐点BR-流入部F3と繋がる流路を流路RT2と呼ぶ。流路RT2は、壁部26aと本体21の外周壁との間、壁部26b及び26cと壁部26d及び26eとの間、壁部26fと本体21の外周壁との間、及び、壁部26d及び壁部26eと本体21の外周壁との間、に形成された通路である。すなわち、流路RT2の一部は流路RT1の一部と共通の流路となっている。流入部F1、流入部F3は流路RT2の一方端部、他方端部に位置している。流路RT2においても、やはり、流入部F1と流入部F3とが離れているので、流入部F1からの顔料インクと流入部F3からの染料インクとが早期に混ざり合うことが防止される。
【0035】
本実施形態の場合、流路RTの距離でみると、流入部F3は、流入部F1よりも流入部F2に近い位置にある。流入部F2、F3にはいずれも染料インクが流入する。これらが近い位置にあっても染料インク同士が混ざり合うだけであり、インクの固着や堆積は発生しないため、このような配置により顔料インクと染料インクが早期に混ざり合ってインクの固着や堆積が発生することを回避できる。
【0036】
なお、仕切り壁26と同様の壁体によって、廃液タンク20の内部を顔料インクの収容空間と染料インクの収容空間とに二分してもよい。但し、顔料インクと染料インクの各消費量はユーザの使い方によって変動する。顔料インクの収容空間と染料インクの収容空間とに二分すると、例えば、顔料インクの消費量が少ない場合、顔料インクの収容空間が余った状態で廃液タンク20の交換時期を迎えることになる。これに対して、本実施形態の構成によれば、顔料インクと染料インクの各消費量の割合にかかわらず、廃液タンク20に廃インクを満杯に収めて交換時期を迎えることが可能である。
【0037】
次に、流路RTの途中には、拡散壁27a、27bが設けられている。これらは廃インクの流れを拡散させ、廃液タンク20の収容空間に廃インクが偏って収容されることを防止する。拡散壁27a、27bは、仕切り壁26と同様に本体21の底部21aから立設された板状の壁部であり、本体21に一体に形成されている。拡散壁27aは、流入部F1に隣接して配置され、流路RTと交差する方向(ここではX方向)に延設されており、流入直後の廃インクがY方向に移動するのを規制してX方向に拡散させる。拡散壁27bは、流入部F2に隣接して配置され、流入直後の廃インクをX方向に拡散させるよう、X方向に延設されている。
【0038】
流入部F1と、流入部F2及びF3は、廃液タンク20の着脱方向(Y方向)と交差する方向(ここではX方向)に離間している。具体的には、流入部F1と流入部F2は、X方向に距離X1だけ離間している。また、流入部F1と流入部F3とは、X方向に距離X2だけ離間している。こうした構成により、廃液タンク20の着脱操作の際、流入部F1や導入部材10の付近の顔料インクと、流入部F2及びF3や導入部材11、回収ユニット8の出口付近の染料インクとが、混ざり合うことを回避できる。
【0039】
<第二実施形態>
回復ユニット7により強力な回復動作を行った場合、流入部F2に大量の染料インクが流入する場合がある。こうした場合、染料インクが吸収体23に十分に浸透、拡散する前に開口部21bに到達して漏出する場合がある。そこで、流入部F2から流入部F3に至る流路RTの途中に、流路RTを横断する壁部を設けてもよい。図5(A)は本実施形態における本体21の平面図であり、図5(B)は図5(A)のA-A線断面図である。
【0040】
壁部28は、流路RTをX方向に横断する壁部であり、仕切り壁26と同様に本体21の底部21aから立設された板状の壁部である。吸収体23のスリット23dは、壁部28が挿入される部分を有し、壁部28は吸収体23に厚み方向(ここではZ方向)に挿入される。壁部28は、その底部21aからの高さh2が吸収体23の厚さtよりも短い低壁部である。高さh2は、開口部21bの高さh1よりも高い。
【0041】
壁部28により、流路RTの低い位置(底部21aに近い位置)を流れるY方向の廃インクの移動が規制される。このため、廃インクが流路RTにおいて拡散することを促進する。一方、流路RTの高い位置(カバー22に近い位置)を流れるY方向の廃インクの移動は規制されない。したがって、壁部28は部分的な堰き止めとして機能し、流入部F2から流入した染料インクが吸収体23に十分に浸透、拡散する前に開口部21bに到達して漏出することを防止することができる。
【0042】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0043】
1 液体吐出装置、2A 記録ヘッド、2B 記録ヘッド、20 廃液タンク、F1~F3 流入部
図1
図2
図3
図4
図5