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<図1>
  • 特許-液体吐出装置及びインプリント装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】液体吐出装置及びインプリント装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20241004BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20241004BHJP
   B41J 2/165 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
B41J2/14 301
B41J2/01 451
B41J2/01 401
B41J2/165 401
B41J2/01 301
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020173536
(22)【出願日】2020-10-14
(65)【公開番号】P2022064733
(43)【公開日】2022-04-26
【審査請求日】2023-09-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】難波 永
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 敬恭
【審査官】高松 大治
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-171280(JP,A)
【文献】特開2008-188806(JP,A)
【文献】特開2015-128849(JP,A)
【文献】特開2015-120332(JP,A)
【文献】特開2002-361908(JP,A)
【文献】特開2021-037631(JP,A)
【文献】特開2017-013250(JP,A)
【文献】特開2001-001534(JP,A)
【文献】特開2021-044406(JP,A)
【文献】特開2004-299343(JP,A)
【文献】特開2006-212828(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0363953(US,A1)
【文献】国際公開第2006/106832(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/041745(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出する吐出口が設けられた吐出ヘッドと、
前記吐出ヘッドと、当該吐出ヘッドと対向して液体を保持する保持部との間に液体が保持された状態で、前記吐出口が液体で覆われていることを検出する検出手段と、を備え、
前記吐出ヘッドは圧電素子を有し、
前記検出手段は、前記圧電素子の逆起電力を検出する、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
請求項に記載の液体吐出装置であって、
前記検出手段の検出結果に基づいて、前記吐出口が液体で覆われているか否かを判断する判断手段をさらに備える、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項3】
請求項に記載の液体吐出装置であって、
前記判断手段は、前記検出手段により検出された前記逆起電力の波形の振幅、周期及び/又は周波数に基づいて前記吐出口が液体で覆われているか否かを判断する、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項4】
請求項に記載の液体吐出装置であって、
前記判断手段による判断の基準となる前記逆起電力の波形を記憶する記憶手段をさらに備え、
前記判断手段は、前記検出手段により検出された前記逆起電力の波形と、前記記憶手段に記憶された前記逆起電力の波形とを比較することにより、前記吐出口が液体で覆われているか否かを判断する、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項5】
請求項1~のいずれか1項に記載の液体吐出装置であって、
前記検出手段の検出結果が、前記吐出口が液体で覆われていることを示す場合に、前記吐出口の回復動作を実行する回復手段をさらに備える、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項6】
請求項のいずれか1項に記載の液体吐出装置であって、
前記圧電素子は、前記検出手段の検出結果が、前記吐出口が液体で覆われていることを示す場合に前記吐出口の回復動作を実行する回復手段として機能する、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項7】
請求項又はに記載の液体吐出装置であって、
前記吐出ヘッドには前記吐出口が複数設けられ、
前記回復手段は、前記検出結果が、複数設けられた前記吐出口のうち所定の前記吐出口が液体で覆われていることを示す場合に、前記回復動作を実行する、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項8】
請求項1~のいずれか1項に記載の液体吐出装置であって、
前記保持部と、
前記保持部が前記吐出ヘッドとの間に液体を保持可能な位置に、前記吐出ヘッド及び/又は前記保持部を移動させる移動手段と、をさらに備える、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項9】
液体を吐出する吐出口が設けられた吐出ヘッドと、
前記吐出ヘッドと、当該吐出ヘッドと対向して液体を保持する保持部との間に液体が保持された状態で、前記吐出口が液体で覆われていることを検出する検出手段と、を備えた液体吐出装置であって
前記検出手段の検出結果に基づいて、前記吐出口が液体で覆われているか否かを判断する判断手段と、
前記判断手段により前記吐出口が液体で覆われていると判断された場合に前記液体吐出装置の電源をオフにする電源制御手段と、をさらに備える、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項10】
請求項に記載の液体吐出装置であって、
前記保持部は、前記液体吐出装置の保管時に着脱自在に装着される、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項11】
液体を吐出する吐出口が設けられた吐出ヘッドと、
前記吐出ヘッドと、当該吐出ヘッドと対向して液体を保持する保持部との間に液体が保持された状態で、前記吐出口が液体で覆われていることを検出する検出手段と、を備え、
前記保持部は、透過部を有し、
前記検出手段は、前記透過部を介して前記吐出口を撮像する、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の液体吐出装置であって、
前記保持部は、前記吐出口から吐出された液体で前記吐出口が覆われるように液体を保持する、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項13】
請求項1~のいずれか1項に記載の液体吐出装置であって、
前記保持部に液体を供給する供給手段をさらに備え、
前記供給手段により供給される液体は、前記吐出口から吐出される液体に含まれる成分の少なくとも一部の成分を含む、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載の液体吐出装置から液体を吐出して基板にインプリント処理を行うインプリント装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置及びインプリント装置に関する。
【背景技術】
【0002】
吐出ヘッドから液体を吐出する液体吐出装置では、吐出性能を回復するための動作が行われることがある。特許文献1には、吐出口付近に付着した異物を取り除くために、吐出面上の液体を所定の回収位置に移動させることが開示されている。また、特許文献2には、吐出口及びインク流路の目詰まりを防止するために、吐出口及びインク流路をクリーニング液で満たして洗浄を行うことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-120332号公報
【文献】特開2001-1534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、吐出性能の回復動作としては、上記従来技術の他、吐出口面に液体を保持した状態で液体に振動を加えることにより流路内部及び吐出口をクリーニングすることがある。また、吐出ヘッドを保管する場合には、吐出口の乾燥を抑制するために、キャップ内に吐出液を溜めて吐出ヘッドの表面に吐出液が接した状態で保管を行うことがある。これらを効果的に実行するためには、吐出口が確実に液体で覆われていることが望ましい。
【0005】
本発明は、吐出口が液体で覆われていることを確認する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面によれば、
液体を吐出する吐出口が設けられた吐出ヘッドと、
前記吐出ヘッドと、当該吐出ヘッドと対向して液体を保持する保持部との間に液体が保持された状態で、前記吐出口が液体で覆われていることを検出する検出手段と、を備え、
前記吐出ヘッドは圧電素子を有し、
前記検出手段は、前記圧電素子の逆起電力を検出する、
ことを特徴とする液体吐出装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば吐出口が液体で覆われていることを確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態に係るインプリント装置の構成を示す概略図。
図2図1に示した液体吐出装置の要部の構成を示した図。
図3】吐出部を拡大して示した断面図。
図4】エネルギ発生素子に印加することで得られる逆起電力の波形を示す図。
図5】制御部の制御例を示すフローチャート。
図6】制御部の制御例を示すフローチャート。
図7】一実施形態に係る吐出部の拡大図。
図8】制御部の制御例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
なお、この明細書において、「ノズル」とは、特にことわらない限り吐出口ないしこれに連通する液路およびインク吐出に利用されるエネルギを発生する素子を総括して言うものとする。
【0011】
以下に用いる吐出ヘッド用基板(ヘッド基板又はチップ)とは、シリコン半導体からなる単なる基体を指し示すものではなく、各素子や配線等が設けられた構成を差し示すものである。
【0012】
さらに、基板上とは、単に素子基板の上を指し示すだけでなく、素子基板の表面、表面近傍の素子基板内部側をも示すものである。また、本発明でいう「作り込み(built-in)」とは、別体の各素子を単に基体表面上に別体として配置することを指し示している言葉ではなく、各素子を半導体回路の製造工程等によって素子板上に一体的に形成、製造することを示すものである。
【0013】
<第1実施形態>
<インプリント装置の概要>
図1は一実施形態に係るインプリント装置の構成を示す概略図である。
【0014】
図1に示したインプリント装置101は、半導体デバイスなどの各種デバイスの製造に用いられる。インプリント装置101は液体吐出装置10を備える。液体吐出装置10は吐出材(レジスト)114を基板111上に吐出する。吐出材114は、例えば、紫外線(UV)を受光することにより硬化する性質を有する光硬化性の樹脂である。吐出材114は、半導体デバイス製造工程などの各種条件により適宜選択される。光硬化性の他にも、例えば、熱硬化性のレジストである吐出材を用いてもよく、インプリント装置は熱でレジストを硬化させてインプリント処理を行う装置でもよい。吐出材114のことをインプリント材と呼んでもよい。
【0015】
インプリント装置101は、次の一連の処理を含むインプリント処理を行う。まず、インプリント装置101は、液体吐出装置10に吐出材114を基板111上に吐出させる。そして、基板上に吐出された吐出材114に、成型用のパターンを有するモールド107を押し付け、その状態において、光(紫外線)の照射によって吐出材114を硬化させる。その後、硬化後の吐出材114からモールド107を引き離すことによって、モールド107のパターンを基板111上に転写する。
【0016】
インプリント装置101は、光照射部102と、モールド保持機構103と、基板ステージ104と、液体吐出装置10と、制御部106と、計測部122と、筺体123と、を有する。
【0017】
光照射部102は、光源109と、光源109から照射された紫外線108を補正するための光学素子110とを有する。光源109は、例えばi線またはg線を発生するハロゲンランプである。紫外線108は、モールド(型)107を介して吐出材114に照射される。紫外線108の波長は、硬化させる吐出材114に応じた波長である。尚、レジストとして熱硬化性レジストを用いるインプリント装置の場合は、光照射部102に代えて、熱硬化性レジストを硬化させるための熱源部が設置される。
【0018】
モールド保持機構103は、モールドチャック115と、モールド駆動機構116とを有する。モールド保持機構103によって保持されるモールド107は、外周形状が矩形であり、基板111に対向する面には転写すべき回路パターンなどの凹凸パターンが3次元で形成されたパターン部107aを有する。本実施形態におけるモールド107の材質は、紫外線108が透過することができる材質であり、例えば石英が用いられる。
【0019】
モールドチャック115は、真空吸着または静電力によりモールド107を保持する。
【0020】
モールド駆動機構116は、モールドチャック115を保持して移動することによりモールド107を移動させる。モールド駆動機構116は、モールド107を-Z方向に移動させてモールド107を吐出材114に押し付けることができる。また、モールド駆動機構116は、モールド107を+Z方向に移動させてモールド107を吐出材114から引き離すことができる。モールド駆動機構116に採用可能なアクチュエータとしては、例えばリニアモータまたはエアシリンダが挙げられる。
【0021】
モールドチャック115およびモールド駆動機構116は、中心部に開口領域117を有する。また、モールド107は、紫外線108が照射される面に、凹型の形状をしているキャビティ107bを有する。モールド駆動機構116の開口領域117には、光透過部材113が設置されており、光透過部材113とキャビティ107bと開口領域117とで囲まれる密閉の空間112が形成されている。
【0022】
空間112内の圧力は圧力補正装置(不図示)によって制御される。圧力補正装置が空間112内の圧力を外部よりも高く設定することにより、パターン部107aは基板111に向けて凸形に撓む。これにより、パターン部107aの中心部が吐出材114に接触するようになる。よって、モールド107が吐出材114に押し付ける際に、パターン部107aと吐出材114との間に気体(空気)が閉じ込められることが抑制され、パターン部107aの凹凸部の隅々まで吐出材114を充填させることができる。空間112の大きさを決めるキャビティ107bの深さは、モールド107の大きさまたは材質に応じて適宜変更される。
【0023】
基板ステージ104は、基板チャック119と、基板ステージ筐体120と、ステージ基準マーク121とを有する。基板ステージに保持される基板111は、単結晶シリコン基板またはSOI(Silicon on Insulator)基板であり、基板111の被処理面には、吐出材114が吐出されパターンが成形される。
【0024】
基板チャック119は、基板111を真空吸着により保持する。基板ステージ筐体120は、基板チャック119を機械的手段により保持しながらX方向およびY方向に移動することで基板111を移動させる。ステージ基準マーク121は、基板111とモールド107とのアライメントにおいて、基板111の基準位置を設定するために使用される。 基板ステージ筐体120のアクチュエータには、例えばリニアモータが用いられる。他にも、基板ステージ筐体120のアクチュエータは、粗動駆動系または微動駆動系などの複数の駆動系を含む構成でもよい。
【0025】
液体吐出装置10は、未硬化の吐出材114を液体の状態でノズルから吐出して基板111上に塗布する。この実施形態では、ピエゾ素子の逆圧電効果を利用して吐出材114を吐出口から押し出す方式が採用されている。後述する制御部106が、ピエゾ素子を駆動させる駆動波形を生成してピエゾ素子に印加し、ピエゾ素子が吐出に適した形状に変形するように駆動させる。ノズルは複数設けられており、それぞれが独立に制御できるように構成されている。液体吐出装置10のノズルから吐出される吐出材114の量は、基板111上に形成される吐出材114の所望の厚さ、または、形成されるパターンの密度などにより適宜決定される。
【0026】
計測部122は、アライメント計測器127と、観察用計測器128と、を有する。アライメント計測器127は、基板111上に形成されたアライメントマークと、モールド107に形成されたアライメントマークとのX方向およびY方向の位置ずれを計測する。観察用計測器128は、例えばCCDカメラなどの撮像装置であり、基板111に吐出された吐出材114のパターンを撮像して、画像情報として制御部106に出力する。
【0027】
制御部106は、インプリント装置101の各構成要素の動作などを制御する。制御部106は、例えば、CPU、ROM、およびRAMを有するコンピュータで構成される。制御部106は、インプリント装置101の各構成要素に回線を介して接続され、CPUは、ROMに記憶された制御プログラムに従って各構成要素の制御をする。また、制御部106は、表示部を有し、各種の表示を行うことができる。
【0028】
制御部106は、計測部122の計測情報を基に、モールド保持機構103、基板ステージ104、および液体吐出装置10の動作を制御する。尚、制御部106は、インプリント装置101の他の部分と一体で構成してもよいし、インプリント装置とは別の他の装置として実現されてもよい。また、制御部106は、1台のコンピュータではなく複数台のコンピュータで構成されていてもよい。
【0029】
筺体123は、基板ステージ104を載置するベース定盤124と、モールド保持機構103を固定するブリッジ定盤125と、ベース定盤124から延設されブリッジ定盤125を支持する支柱126と、を備える。
【0030】
また、インプリント装置101は、モールド107を装置外部からモールド保持機構103へ搬送するモールド搬送機構(不図示)と、基板111を装置外部から基板ステージ104へ搬送する基板搬送機構(不図示)と、を備える。
【0031】
<液体吐出装置>
図2図1に示した液体吐出装置10の要部の構成を示した図である。図2に示すように、液体吐出装置10は、主に後述する吐出部11(吐出ヘッド)、液体収容容器12、圧力を制御するための圧力制御部13、吐出部11の内部の吐出材114(液体)を循環させる循環部40を備えている。
【0032】
液体収容容器12は、液体を収容する。液体収容容器12の内部には、収容部内部の空間を第1の液室15と第2の液室16とに分離する可撓性材料で形成された分離膜14が設けられている。分離膜14の厚みは、10μm以上200μm以下であってもよい。また、分離膜14は、液体及び気体の透過性が低い材料で形成されてもよい。例えば、分離膜14は、PFA等のフッ素樹脂材のフィルムやフッ素樹脂材とプラスチック材料を組み合わせた複合多層フィルムで形成される。
【0033】
第1の液室15は、分離膜14で仕切られた一方の液室であり、吐出材114が収容されている。第1の液室15は、吐出部11と接続されている。また、第2の液室16は、分離膜14で仕切られた他方の液室であり、充填液が収容されている。第2の液室16は、接続配管17によって圧力制御部13と接続されている。
【0034】
圧力制御部13は、充填液タンク、配管、圧力センサ、ポンプ、バルブ等を備え、第2の液室16内の圧力を制御する。圧力制御部13が第2の液室16内の充填液の圧力を制御することで、分離膜14を介して第1の液室15内の吐出材114の圧力が制御される。これにより、吐出部11における気液界面の形状を安定化させ、基板111に対して液滴114aとして再現性のよい吐出材114の吐出を行うことができる。
【0035】
循環部40は、液体収容容器12の外側に、両端で液体収容容器12に接続する通路45を設け、通路45の中にフィルタ41とポンプ44とを配置した構成となっている。循環部40は、液体収容容器12の第1の液室15と接続されており、通路45は第1の液室15に開口する第1の開口42と第2の開口43とで第1の液室15と連通している。
【0036】
第1の開口42は第1の液室15の内部の吐出材114を通路45の内部に供給する開口であり、第2の開口43は第1の開口42から通路45に供給された吐出材114を第1の液室15に再度供給する開口である。第1の開口42と第2の開口43とを結ぶ通路45には、ポンプ44と、吐出材114をろ過するフィルタ41とが配置されている。ポンプ44からの発塵による吐出材114への異物発生の可能性を考慮すると、ポンプ44に対して、第1の開口42から第2の開口43へと吐出材114を流す際に下流側となる位置にフィルタ41を配置することが好ましい。
【0037】
本実施形態では、ポンプ44は通路45の通路内に設けられるが、ポンプ44が通路45の外部に設けられてもよい。ポンプ44が駆動すると、第1の液室15内に収容された吐出材114が第1の開口42から通路45に供給される。第1の開口42から供給された吐出材114は、通路45の内部のフィルタ41を通過してろ過された後に、第2の開口43を経由して第1の液室15内に戻る。そして、第1の液室15内の吐出材114は再び第1の開口42から通路45に供給される。即ち、吐出材114は第1の液室15と通路45とを循環しながらフィルタ41でろ過される。
【0038】
なお、本実施形態では、液体吐出装置10は液体収容容器12の内部に分離膜14を有しているが、分離膜14が設けられない構成も採用可能である。この場合、液体収容容器12は吐出材を収容する。
【0039】
<吐出部>
図3は、吐出部11を拡大して示した断面図である。吐出部11は、共通液室56とモジュール基板57とを備えている。
【0040】
共通液室56は、モジュール基板57に設けられた複数のノズル54に対して吐出材114を供給する液室である。
【0041】
モジュール基板57には、吐出材をモジュール基板57に供給する供給口21及び吐出材を吐出可能な吐出口19を備えた複数のノズル54と、ノズル54の内部に設けられ、吐出材を吐出するためのエネルギを発生するエネルギ発生素子18とが設けられている。ここで、モジュール基板57の供給口21が設けられた表面を供給口側表面59、吐出口19が設けられた表面を吐出口側表面58或いは吐出口面58と表記する。吐出口19の開口面積は、供給口21の開口面積よりも小さく、ノズル54における流路で断面積が最小となっている。
【0042】
本実施形態では、エネルギ発生素子18として圧電素子が採用されている。しかしながら、エネルギ発生素子18としては、発熱抵抗体等も挙げられる。ただし、インプリント装置101では、吐出材として樹脂を多く含むものがよく用いられることから、エネルギ発生素子として圧電素子が用いられることがある。供給口21は、モジュール基板57の内部で吐出口19と連通している。エネルギ発生素子18を制御部106で制御することで、共通液室56から供給口21を通って供給された、エネルギ発生素子18と吐出口19との間のノズル内部(圧力室)20の吐出材114が、吐出口19から基板上に吐出される。吐出部11は、インクジェットヘッド等で用いられるような吐出ヘッドであってもよい。他にも、制御弁等を用いて吐出材の供給と停止を制御してもよい。なお、ノズル54の数は適宜設定可能である。
【0043】
また、吐出部11は、モータM1を駆動源とした不図示の移動機構によって往復移動可能に設けられる。例えば、吐出部11は、待機位置と、基板111に対して吐出材114を吐出する吐出領域と、後述する回復動作が行われる回復位置との間を移動する。また、吐出部11は、吐出領域において、例えばX方向に走査しながら基板111に対して吐出材114を吐出する。移動機構には、モータM1の回転駆動力を直線運動に変換するラックピニオン機構やボールねじ機構等、周知の技術を適宜採用可能である。また、モータM1としてリニアモータが採用されてもよい。
【0044】
<液体保持部>
本実施形態の液体吐出装置10は、液体保持部80(保持部)を備えている。液体保持部80は、ノズル54の吐出口19が液体で覆われるように液体を保持する。具体的には、液体保持部80は、吐出部11と液体保持部80との間を液体で満たすことにより、吐出口19が液体で覆われるように液体を保持する。本実施形態では、液体保持部80は、吐出部11が回復位置にある場合に吐出部11の下方に位置するように設けられる。また、回復位置において、液体保持部80の吐出口面58に対向する位置に平坦な対向面80aが形成される。回復位置において、対向面80aと吐出口面58とは所定の間隔、例えば数mmの間隔をおいて設けられ、これらの間に液体が供給されることにより、これらの間に液柱が形成される。これにより、複数のノズル54が液体で覆われる。また、本実施形態では、液体保持部80が対向面80aと吐出口面58との間で保持する液体は、吐出部11から吐出された吐出材114である。なお、液体保持部80には、保持した液体を回収する回収部が設けられてもよい。
【0045】
本実施形態では、液体保持部80は、モータM2を駆動源として上下方向に移動可能に移動可能に設けられている。また、液体保持部80の上下方向の位置は、モータM2の位相を検出可能なエンコーダ(不図示)の検出値等に基づいて取得されてもよい。
【0046】
<検出部>
液体吐出装置10は、検出部90を備えている。検出部90は、吐出口19が液体で覆われているか否かに関する情報を検出する。本実施形態では、検出部90は、この情報として、エネルギ発生素子18に駆動パルスを印加して振動させた際に発生する逆起電力を検出する。すなわち、検出部90は、エネルギ発生素子18ごとに対応して設けられた電圧センサ或いは電流センサ等であり得る。なお、図3では省略されているが、検出部90は各エネルギ発生素子18に対してそれぞれ設けられ得る。
【0047】
逆起電力の検出について具体的に説明する。エネルギ発生素子18(ピエゾ素子)は、電圧が印加されることで変形し、この変形によってノズル54内の吐出材114の圧力を変化させることで吐出材114を吐出させる。そして、吐出のためにエネルギ発生素子18を強制的に振動させると残留振動が発生し、圧電効果により逆起電力が発生する。検出部90は、この残留振動により生じた逆起電力を検出する。また逆起電力はエネルギ発生素子18ごと、換言すればノズル54ごとに発生するため、検出部90は逆起電力をノズル54ごとに検出する。
【0048】
図3及び図4を用いて、検出部90の検出結果に基づいて吐出口19が液体で覆われているか否かを判断する方法について説明する。図4は、エネルギ発生素子18(ピエゾ素子)に印加することで得られる逆起電力の波形を示している。
【0049】
吐出口19が液体で覆われているか否かを判断する際には、吐出口19から吐出材114が吐出されない程度の駆動パルスをエネルギ発生素子18に印加する。例えば、吐出口19から吐出材114を吐出する際に±10Vの駆動パルスをエネルギ発生素子18(ピエゾ素子)に印加する場合には、±6Vの駆動パルスをエネルギ発生素子18(ピエゾ素子)に印加する。図4は、吐出口19が液体で覆われているか否かを判断する際の逆起電力の波形を示しており、実線は吐出口19が液体で覆われている場合の波形を、破線は吐出口19が液体で覆われていない場合の波形をそれぞれ示している。図3に照らし合わせて言えば、実線は吐出口19が吐出材114で覆われたノズル54Bのエネルギ発生素子18の逆起電力の波形を示し、破線は吐出材114で覆われていないノズル54Aのエネルギ発生素子18の逆起電力の波形を示している。
【0050】
吐出口19が吐出材114で覆われると、メニスカス圧の影響がなくなるため、吐出口19が吐出材114で覆われていない場合と比べると、周期が長くなり、振幅も大きくなる。すなわち、実線で示すノズル54Bのエネルギ発生素子18の逆起電力波形は、破線で示すノズル54Aのエネルギ発生素子18の逆起電力波形よりも、周期が長く(周波数が小さく)なり、振幅が大きくなる。
【0051】
制御部106は、この違いに基づいて、すべての吐出口19が吐出材114で覆われているか否かを判断する。一例として、制御部106は、ROM等の不揮発性メモリに吐出口19が液体で覆われていない場合の逆起電力波形の情報を記憶しておく。そして、検出部90により検出された逆起電力波形と、不揮発性メモリに記憶された情報とを比較することにより、対象の吐出口19が液体で覆われているか否かを判断する。
【0052】
<回復動作の説明>
本実施形態の液体吐出装置10は、吐出性能を回復するための回復動作を実行可能である。回復動作の一例としては、吐出口19及びノズル内部(圧力室)20の洗浄が挙げられる。例えば、液体吐出装置10は、液体保持部80を用いて吐出口19付近を液体で満たした状態でエネルギ発生素子18を駆動させてノズル内部(圧力室)20及び吐出口19の吐出材114を振動させる。これにより、ノズル内部(圧力室)20及び吐出口19が洗浄される。
【0053】
ところで、吐出口19付近を液体で満たす際に、エネルギ発生素子18を駆動させて吐出口19から吐出材114を吐出することが考えられる。このとき、ノズル54内の流路への泡の混入や、チューブの膨張などでエネルギ発生素子18によりノズル内部(圧力室)20に圧力の応答性が変わることがある。また、ノズル54を構成する要素には個体差等があるため、ある一定の条件でノズル内部(圧力室)20を加圧しても、吐出材114の吐出量は一定にならないことがある。また、吐出口面58に保持された液体の広がりも個体差や、条件によって変わり得る。そのため、一定の量の液体が液体保持部80と吐出口面58との間に供給されても、洗浄の対象となっているノズルが液体に覆われないことがある。その状態で液体に振動を加えても、対象のノズルに対して洗浄の効果が十分に得られないことがある。
【0054】
そこで、本実施形態では、以下の処理により、吐出口19が液体で覆われているか否かを判断した上で、回復動作を実行する。
【0055】
図5は、制御部106の制御例を示すフローチャートである。図5は、回復動作としての吐出部11の洗浄動作時の制御例を示している。例えば、本フローチャートは、制御部106のCPUが、制御部106のROMに記憶されたプログラムを制御部106のRAMに読み出して実行することにより実現される。また例えば、本フローチャートは、ユーザからの洗浄動作の実行指示を受け付けると開始する。また例えば、本フローチャートは、所定の周期で定期的に実行される。
【0056】
ステップS1(以下、単にS1と表記する。他のステップも同様とする。)で、制御部106は、吐出部11及び/又は液体保持部80を回復位置に移動させる。回復位置は、回復動作が可能な位置であり、本実施形態では液体が吐出口19を覆うように液体保持部80が液体を保持可能な位置であり得る。すなわち、回復位置は液体保持部80による液体の保持位置ともいえる。本実施形態では、吐出部11が所定の回復位置に移動する。しかし、液体保持部80が移動してもよいし、吐出部11及び液体保持部80の両方が移動してもよい。
【0057】
S2で、制御部106は、吐出部11と液体保持部80との間に液体を供給する。例えば、制御部106は、圧力制御部13により第2の液室16内の充填液の圧力を制御し、吐出口19より吐出材114を吐出させることで、液体保持部80と吐出口面58との間を液体で満たす。このときの液体の供給量は、液体保持部80と吐出口面58の間にブリッジ114b(液柱)が形成されるように調整される。
【0058】
S3で、制御部106は、検出部90の検出結果を取得する。本実施形態では、制御部106は、吐出材114を吐出しない程度の電圧の駆動パルスを各ノズル54のエネルギ発生素子18に印加し、その際に発生した逆起電力の波形を検出結果として検出部90から取得する。
【0059】
S4で、制御部106は、吐出口19の状態判断を行う。本実施形態では、制御部106は、吐出口19が液体で覆われているか否かの判断を行う。具体的な処理例については後述する(図6参照)。
【0060】
S5で、制御部106は、吐出口19が液体で覆われているか否かを確認し、覆われている場合はS6に進み、覆われていない場合はSに進む。なお、本実施形態では、全ての吐出口19が液体で覆われている場合にS6に進み、いずれかの吐出口19が液体で覆われていない場合にはS9に進む。
【0061】
S6で、制御部106は、回復動作としてノズル54の洗浄を行う。制御部106は、エネルギ発生素子を駆動させることによりノズル内部(圧力室)20の吐出材114及び吐出口19を覆う吐出材114を振動させ、ノズル内部(圧力室)20及び吐出口19を洗浄する。
【0062】
S7で、制御部106は、吐出口面58の液体を回収する。具体的には、制御部106は、液体保持部80を下げて吐出口面58と液体保持部80の間隔を広げることにより、液体保持部80と吐出口面58の間に形成されたブリッジ114bを解消する。ブリッジ114bが解消されると、吐出口面58を覆っていた液体は重力により下方に移動し、液体保持部80側に保持される。なお、ブリッジを解消した後に不図示のワイパ等により吐出口面58に残存する液体を回収してもよい。
【0063】
S8で、制御部106は、液体保持部80の液体を回収する。例えば、制御部106は、不図示の液体回収部により液体保持部80に残っている液体を回収する。液体回収部は、対向面80aから液体を排水するための排水口と、排水口からの排水を行うか否かを切替可能なバルブ等により構成されてもよい。排水口からの排水された液体は、例えば、不図示の廃液タンク等に導入される。
【0064】
一方、S5からS9に進んだ場合、S9で、制御部106は、液体保持部80と吐出口面58の距離が下限値より大きいか否かを確認する。制御部106は、これらの距離が下限値よりも大きい場合はS10に進み、そうでない場合はS2の処理に戻る。本実施形態では、液体保持部80と吐出口面58との距離の下限値が設けられている。この距離の下限値は、液体保持部80と吐出口面58が接触すると吐出口面58が傷つけられてしまう可能性があるため、これらが近づきすぎないようにするために設けられる。制御部106は、例えば、液体保持部80と吐出口面58との距離を光学的に計測可能な測距センサの検出結果からこれらの距離を取得してもよい。また、制御部106は、液体保持部80を上下動させるモータM2の位相を検出するエンコーダの検出結果に基づいて液体保持部80の高さを取得し、それに基づいて液体保持部80と吐出口面58との距離を取得してもよい。
【0065】
S10で、制御部106は、液体保持部80を吐出口面58に近づける。制御部106は、液体保持部80及び吐出口面58の間の距離が下限値よりも小さくならない範囲で液体保持部80を吐出口面58に近づける。これらの距離が近づくことにより、これらの間の空間の体積が小さくなるため、吐出口19が液体で覆われやすくなる。その後S3に戻り対象の吐出口19が液体で覆われるまで処理を繰り返す。
【0066】
一方、S9での判断がNoである場合、これ以上液体保持部80と吐出口面58を近づけると接触の恐れがあるため、液体保持部80及び吐出口面58をこれ以上近づけることができない。そこで、制御部106は、S2に戻って再度液体を供給することにより、吐出口19を液体で覆う。
【0067】
図6は、図5のS4の処理の具体例を示すフローチャートである。
【0068】
S41で、制御部106は、判断基準となる波形の情報を読み出す。例えば、制御部106のCPUは、制御部106のROM等の不揮発性メモリに記憶された判断基準となる波形の情報を読み出す。本実施形態では、判断基準となる波形の情報は、吐出口19が液体で覆われていない場合のエネルギ発生素子18の逆起電力波形の情報である。しかしながら、吐出口19が液体で覆われている場合のエネルギ発生素子18の逆起電力波形の情報を判断基準となる波形の情報としてもよい。
【0069】
S42で、制御部106は、判断対象のノズル54を選択する。本実施形態では、全てのノズル54についてその吐出口19が液体で覆われているか否かを判断するため、制御部106はまだ判断がなされていないいずれかのノズル54を選択する。
【0070】
S43で、制御部106は、検出部90の検出結果と判断基準の波形を比較する。具体的には、制御部106は、検出部90によって検出された、S42で選択されたノズル54のエネルギ発生素子18の逆起電力波形の情報と、S41で読みだした判断基準となる波形の情報を比較する。比較内容としては、逆起電力波形の振幅、周期及び周波数等が挙げられる。例えば、制御部106は、比較結果として検出結果の波形と判断基準の波形との間の振幅及び/又は周期の差についての情報を取得する。
【0071】
S44で、S43の比較結果が、吐出口19が液体で覆われていない場合の条件を充足しているか否かを確認し、条件を充足している場合はS45に進み、条件を充足しない場合はS46に進む。例えば、吐出口19が液体で覆われていない場合の条件として、判断基準の波形と検出結果の波形の振幅及び/又は周期の差が閾値以上であることが挙げられる。
【0072】
S45に進んだ場合、制御部106は、吐出口19が液体で覆われていないと判断し、S47に進む。一方、S46に進んだ場合、制御部106は、吐出口19が液体で覆われていると判断し、S47に進む。
【0073】
S47で、制御部106は、吐出口19が液体で覆われているか否かを未判断のノズル54が無い場合は本フローチャートを終了し、吐出口19が液体で覆われているか否かを未判断のノズル54が残っている場合はS42に戻る。
【0074】
以上説明したように、本実施形態では、全ての吐出口19が液体で覆われていることを確認することができる。そして、全ての吐出口19が液体で覆われていることが確認された上で洗浄動作を行うため、全てのノズル54を確実に洗浄することができる。
【0075】
なお、S5の分岐でNoに進むことが所定の回数、例えば2~5回、繰り返された場合には、判断において、全てのノズル54が覆われない状態が複数回続いた場合には、本フローチャートを終了してユーザにエラーを通知してもよい。
【0076】
また、本実施形態では、全てのノズル54を洗浄するために全ての吐出口19が液体で覆われていることを確認している。しかしながら、1つ又は複数の特定のノズル54を洗浄する場合は、S4の処理で洗浄を行うノズル54についてのみ状態判断を行い、S5で洗浄を行うノズル54の吐出口19が液体で覆われているか否かを確認してもよい。
【0077】
また、制御部106は、全てのノズル54を洗浄する場合において、いずれかのノズル54の吐出口19が液体で覆われていないときであっても、S6に進むように条件を設定してもよい。例えば、制御部106は、S4で各ノズル54の吐出口19の状態判断を行い、吐出口19が液体で覆われているノズル54の割合が閾値以上であれば、大部分のノズル54の吐出口19は液体で覆われている判断してS6に進み、洗浄を行ってもよい。例えば、制御部106は、9割以上のノズル54の吐出口19が液体で覆われている場合にはS6に進んでもよい。
【0078】
また、本実施形態では、吐出口19が液体で覆われているか否かに関する情報を検出する検出部90は、エネルギ発生素子18(ピエゾ素子)の逆起電力を検出している。検出部90としては、液体保持部80に設けられた透過部を介して吐出口19を下側から撮像するカメラ等の撮像素子が採用されてもよい。液体保持部80の透過部は、液体保持部80の一部又は全部を構成し、例えば石英ガラス等で形成され得る。また、この場合、吐出材114に感度のない波長の照明系を設け、照明系から光を照射して、透明部材を介して、液体の満たされている状態を撮像素子により検出してもよい。
【0079】
また、本実施形態では、洗浄動作において、吐出材114の吐出を行うエネルギ発生素子18によりノズル54内部及び吐出口19表面の液体を振動させている。すなわち、エネルギ発生素子18が吐出口19の洗浄(回復動作)を実行するための構成要素として機能している。しかしながら、エネルギ発生素子18以外の構成要素により回復動作を実行してもよい。例えば、液体保持部80を振動可能な加振部(不図示)が設けられ、加振部が液体保持部80を振動させることによりノズル内部(圧力室)20及び吐出口19の液体を振動させてもよい。また、エネルギ発生素子18とは別に吐出部11を振動させる加振部を設けてもよい。
【0080】
また、本実施形態では、液体保持部80と吐出口面58の間に液体を供給する際に吐出口19から吐出材114を吐出させた。しかしながら、液体保持部80に、不図示の供給口とその供給口へ接続する流路を設けて、吐出材114又はその成分の一部を含む液体を供給するようにしてもよい。
また、液体保持部80は液体吐出装置10に備え付けられたものである必要はなく、回復動作時に装置内に設置してもよい。
【0081】
<第2実施形態>
第1実施形態では、ノズル54の回復動作を効果的に実行するために、吐出口19が液体で覆われているか否かを確認している。第2実施形態では、液体吐出装置10の保管時にノズル54の乾燥を抑制するために吐出口19が液体で覆われているか否かを確認している。以下、第1実施形態と同様の構成については同様の符号を付して説明を省略する。
【0082】
図7は、一実施形態に係る吐出部11の拡大図である。図7では、吐出部11に保管用のキャップとして用いられる液体保持部81が装着されている状態が示されている。
【0083】
液体保持部81は、液体吐出装置10を保管する場合又は輸送する場合等にノズル54の保護及び乾燥抑制のために吐出口面58を覆うように装着される。本実施形態では、液体保持部81は、液体吐出装置10の保管時等に着脱自在に装着される。すなわち、液体保持部81は、液体吐出装置10とは別体に設けられる。また、液体保持部81は、吐出口面58と対向する底壁部81aと、底壁部81aから上方に延びる側壁部81bとを含み、側壁部81bは吐出口面58の吐出口19が形成されない位置に当接する。これにより、液体保持部81と吐出口面58との間に液体を保持しつつ、輸送時等に液体吐出装置10に振動が生じた場合に保持された液体が溢れるのを抑制することができる。
【0084】
ここで、液体吐出装置10を保管又は輸送する際には、乾燥を防ぐために、キャップとして機能する液体保持部81に吐出材114を溜めて吐出口19が吐出材114で覆われた状態で保管又は輸送する。一方で、実際には液体保持部81に吐出材114を溜めた後の状態を見ることができないため、全てのノズルが吐出液で覆われているかを判断することができない。
【0085】
ノズル54Aのように吐出口19が吐出材114で覆われていない状態で長時間放置されると、吐出口19付近の吐出材114が乾燥し、吐出口19付近に残渣が付着する恐れがある。そのため、保管時又は輸送時のように長時間液体吐出装置10が作動しない場合には、すべてのノズル54の吐出口19が確実に吐出材114で覆われることが望ましい。そこで、本実施形態では、以下の処理により、保管時に吐出口19が液体で覆われていることを確認する。
【0086】
図8は、制御部106の制御例を示すフローチャートである。図8は、液体吐出装置10の保管時の確認動作の吐出口19の状態の制御例を示している。なお、図5のフローチャート同様のステップについては同様の符号を付して説明を省略する。
【0087】
S200で、制御部106は、保管モードの選択を受け付ける。例えば、制御部106は、ユーザによる指示受付可能な不図示の入力部等を介して、保管モードの選択を受け付ける。本実施形態では、保管モードは、液体吐出装置10が長期間使用されない場合に、吐出性能の維持等のために電源オフの前に所定の処理を行うモードである。
【0088】
S201で、制御部106は、液体保持部81の装着指示を行う。例えば、制御部106は、各種情報を表示可能な液晶ディスプレイ等の表示部(不図示)に「ノズルにキャップを装着して下さい」等のメッセージを表示させること等により、装着指示を行う。また、制御部106は、例えば、不図示の入力部等を介して液体保持部81の装着が完了した旨の入力を受け付けるとS2に進む。
【0089】
S2~S5は、図5のフローチャートと同様である。なお、本実施形態では、液体保持部81が上下方向に移動可能に構成されていないため、S5の分岐でNoに進んだ場合はそのままS2に戻る。
【0090】
S206で、制御部106は、液体吐出装置10の電源をオフにする。本実施形態では、制御部106は、液体吐出装置10の電源をオフにする電源制御を実行可能である。そして、S5の分岐でYesに進んだ場合、すなわち、全てのノズル54又は所定のノズル54が液体で覆われている場合に液体吐出装置10の電源をオフにする。
【0091】
本実施形態では、液体吐出装置10の保管時等には、吐出口19が液体で覆われていることを確認した上で液体吐出装置10の電源がオフにされる。したがって、保管時等のノズル54の乾燥を抑制することができる。
【0092】
なお、第1実施形態に係る構成及びその変形例として例示した構成と第2実施形態に係る構成及びその変形例として例示した構成とは適宜組み合わせ可能である。
【0093】
<他の実施形態>
上記実施形態では、液体吐出装置10としてインプリント装置が採用されているが、液体吐出装置10としてインクジェット式の記録装置等、他の装置が採用されてもよい。
【0094】
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0095】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0096】
10 液体吐出装置、11 吐出部、90 検出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8