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特許7565750リーダ装置、制御方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】リーダ装置、制御方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06K 7/10 20060101AFI20241004BHJP
   H04W 48/02 20090101ALI20241004BHJP
   H04W 52/02 20090101ALI20241004BHJP
   H04W 52/18 20090101ALI20241004BHJP
   H04W 84/10 20090101ALI20241004BHJP
【FI】
G06K7/10 180
G06K7/10 260
H04W48/02
H04W52/02 110
H04W52/18
H04W84/10 110
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020176923
(22)【出願日】2020-10-21
(65)【公開番号】P2022068013
(43)【公開日】2022-05-09
【審査請求日】2023-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】室伏 光英
【審査官】北村 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-252983(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0231449(US,A1)
【文献】特開2018-121504(JP,A)
【文献】特開2005-309813(JP,A)
【文献】特開2011-170710(JP,A)
【文献】特開2017-054175(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0079571(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G06K 7/00 - 7/14
H04W 4/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リーダ装置であって、
電波を放射して応答を受信することにより通信物体を検知する検知手段と、
前記リーダ装置の位置と傾きとの少なくともいずれかに基づく状態の変化を判定する判定手段と、
前記状態の変化に基づいて、前記検知手段で消費される電力の抑制を行わず前記検知手段によって前記通信物体を検知する期間である第1の期間の長さと、前記検知手段によって前記通信物体を検知せず前記電力の抑制を行う期間である第2の期間の長さとを設定することにより、前記リーダ装置における消費電力を制御する制御手段と、
を有し、
前記制御手段は、前記第1の期間と、前記第2の期間と、を繰り返し実行するように制御し、前記リーダ装置を起動した後において、起動後の最初の前記第2の期間の前に前記第1の期間が経過するように制御し、前記第1の期間中に、前記リーダ装置の前記状態の変化の変化量が所定値を超えない場合に前記第2の期間の長さの設定値を第1の値に設定し、前記リーダ装置の前記変化量が所定値を超える場合に前記第2の期間の長さの設定値を前記第1の値より短い第2の値に設定することを特徴とするリーダ装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記リーダ装置の位置の変化量が所定値を超えない場合に前記第2の期間の長さの設定値を第1の値に設定し、前記リーダ装置の位置の変化が所定値を超える場合に前記第2の期間の長さの設定値を前記第1の値より短い第2の値に設定することを特徴とする請求項1に記載のリーダ装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記リーダ装置の位置の変化量が所定値を超えない場合に前記第1の期間の長さの設定値を第3の値に設定し、前記リーダ装置の位置の変化が所定値を超える場合に前記第1の期間の長さの設定値を前記第3の値より長い第4の値に設定することを特徴とする請求項1又は2に記載のリーダ装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記リーダ装置の傾きの変化量が所定値を超えない場合に前記第2の期間の長さの設定値を第1の値に設定し、前記リーダ装置の傾きの変化量が所定値を超える場合に前記第2の期間の長さの設定値を前記第1の値より短い第2の値に設定することを特徴とする請求項1に記載のリーダ装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記リーダ装置の傾きの変化量が所定値を超えない場合に前記第1の期間の長さの設定値を第3の値に設定し、前記リーダ装置の傾きの変化量が所定値を超える場合に前記第1の期間の長さの設定値を前記第3の値より長い第4の値に設定することを特徴とする請求項1又は4に記載のリーダ装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記リーダ装置の位置と傾きとの少なくともいずれかに基づいて、前記検知手段が電波を放射する方向に対する所定の範囲に前記リーダ装置が移動する場合に、前記第2の期間の長さの設定値を第1の値に設定し、前記所定の範囲に前記リーダ装置が移動しない場合に前記第2の期間の長さの設定値を前記第1の値より短い第2の値に設定することを特徴とする請求項1に記載のリーダ装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記リーダ装置の位置と傾きとの少なくともいずれかに基づいて、前記検知手段が電波を放射する方向に対する所定の範囲に前記リーダ装置が移動する場合に、前記第1の期間の長さの設定値を第3の値に設定し、前記所定の範囲に前記リーダ装置が移動しない場合に前記第1の期間の長さの設定値を前記第3の値より長い第4の値に設定することを特徴とする請求項1又は6に記載のリーダ装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記第2の期間においては前記検知手段に電波を放射させないことを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載のリーダ装置。
【請求項9】
前記制御手段は、前記第1の期間において前記設定を行い、前記第2の期間において前記設定を行わないことを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載のリーダ装置。
【請求項10】
前記検知手段によって検知された前記通信物体に関する情報を前記リーダ装置と異なる他の装置へ送信する送信手段をさらに有し、
前記制御手段は、前記第2の期間において、前記送信手段の動作を停止させることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載のリーダ装置。
【請求項11】
前記リーダ装置はRFIDリーダであり、前記通信物体はRFIDタグであることを特徴とする請求項1から1のいずれか1項に記載のリーダ装置。
【請求項12】
電波を放射して応答を受信することにより通信物体を検知するリーダ装置によって実行される制御方法であって、
前記リーダ装置の位置と傾きとの少なくともいずれかに基づく状態の変化を判定する判定工程と、
前記状態の変化に基づいて、費される電力の抑制を行わずに前記通信物体を検知する期間である第1の期間の長さと、前記通信物体を検知せず前記電力の抑制を行う期間である第2の期間の長さとを設定することにより、前記リーダ装置における消費電力を制御する制御工程と、
を有し、
前記制御工程において、前記第1の期間と、前記第2の期間と、を繰り返し実行するように制御し、前記リーダ装置を起動した後において、起動後の最初の前記第2の期間の前に前記第1の期間が経過するように制御し、前記第1の期間中に、前記リーダ装置の前記状態の変化の変化量が所定値を超えない場合に前記第2の期間の長さの設定値を第1の値に設定し、前記リーダ装置の前記変化量が所定値を超える場合に前記第2の期間の長さの設定値を前記第1の値より短い第2の値に設定することを特徴とする制御方法。
【請求項13】
コンピュータを、請求項1から1のいずれか1項に記載のリーダ装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波を放射して通信物体を検知するリーダ装置の省電力技術に関する。
【背景技術】
【0002】
UHF帯のパッシブRFIDタグ(以降、RFIDタグと称する)を利用して、物流や棚卸における物品の管理や、動物の管理を行うシステムが広く用いられている。RFIDタグは、RFIDリーダのアンテナから放射された電波を電力の供給源として動作するため、内部にバッテリ等の電源を備える必要がない。このため、RFIDタグは、薄い形状で、かつ、安価に、製造することができる。一方で、RFIDタグとRFIDリーダとの通信可能な距離は短い。このため、広範囲にわたるRFIDタグの検知を固定されたRFIDリーダが行うことはできない。
【0003】
これに対して、特許文献1には、RFIDリーダを持ち運び、そのRFIDリーダが、移動先においてRFIDタグを検知して、情報の読み取りを行うことが記載されている。また、特許文献1には、RFIDリーダがRFIDタグを読み取った位置を検知して、位置情報とRFIDタグのID情報とを関連付けて記憶し、過去に情報を読み取っていない位置のRFIDタグに対する情報の読み取り処理を実行することが記載されている。これによれば、情報の読み取り処理の実行頻度が低減され、RFIDリーダの電力消費を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-266936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の方法は、例えば、RFIDタグの位置が固定されていない場合には、登録されていない位置において情報を読み取ったことのあるRFIDタグが検知されてしまう。この結果、RFIDリーダの消費電力を十分に低減することができない場合がありうる。
【0006】
本発明は、広範に利用可能なRFIDリーダの消費電力の低減技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によるリーダ装置は、電波を放射して応答を受信することにより通信物体を検知する検知手段と、前記リーダ装置の位置と傾きとの少なくともいずれかに基づく状態の変化を判定する判定手段と、前記状態の変化に基づいて、前記検知手段で消費される電力の抑制を行わず前記検知手段によって前記通信物体を検知する期間である第1の期間の長さと、前記検知手段によって前記通信物体を検知せず前記電力の抑制を行う期間である第2の期間の長さとを設定することにより、前記リーダ装置における消費電力を制御する制御手段と、を有し、前記制御手段は、前記第1の期間と、前記第2の期間と、を繰り返し実行するように制御し、前記リーダ装置を起動した後において、起動後の最初の前記第2の期間の前に前記第1の期間が経過するように制御し、前記第1の期間中に、前記リーダ装置の前記状態の変化の変化量が所定値を超えない場合に前記第2の期間の長さの設定値を第1の値に設定し、前記リーダ装置の前記変化量が所定値を超える場合に前記第2の期間の長さの設定値を前記第1の値より短い第2の値に設定する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、様々な状況においてRFIDリーダの消費電力を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】RFIDリーダの構成例を示す図である。
図2】RFIDリーダを運搬する移動体の例を説明する図である。
図3】RFIDリーダの外観説明図である。
図4】RFIDリーダの位置検知システムを説明する図である。
図5】RFIDリーダにおいて実行される処理の流れの例を示す図である。
図6】RFIDリーダにおいて実行される処理の流れの例を示す図である。
図7】RFIDリーダにおいて実行される処理の流れの例を示す図である。
図8】RFIDリーダにおいて実行される処理の流れの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0011】
本実施形態では、可搬型のRFIDリーダが広範囲に配置されているRFIDタグを検知するシステムについて説明する。このRFIDリーダは、状況に応じて消費電力を低減することによって電力消費を抑制する。特に、本実施形態では、RFIDリーダが、自装置の位置や姿勢の変化等の状況に応じて、低消費電力で動作すべき期間の長さを設定する。例えば、RFIDリーダの状況変化量が小さい状態においては不必要に電力を消費しないように低消費電力での動作期間を長くし、RFIDリーダの状況変化量が大きい状態では低消費電力での動作期間を短くする。以下では、このようなRFIDリーダの構成及び動作に着目して説明する。
【0012】
(装置構成)
図1に、RFIDリーダ100の構成例を示す。RFIDリーダ100は、例えば、人、動物、機械などの移動体によって運搬され、その移動体の移動に伴い、広範囲に存在するRFIDタグ150を検知するように構成される。なお、RFIDタグ150は、RFIDリーダ100のアンテナ115から放射された電波を電力の供給源として動作する。すなわち、RFIDリーダ100は、RFIDタグ150に対してUHF帯の電磁波を供給し、その電磁波によってRFIDタグ150の内部にある不図示のICチップを動作させて、RFIDタグ150の記憶部に保存されたID情報を読み出す。RFIDリーダ100は、RFIDタグ150に十分に(数メートルの範囲に)接近することによってRFIDタグ150を検知して、RFIDタグ150との間でこのような無線通信を行うことができる。RFIDリーダ100は、一例において、図2(A)に示すように人(動物)が身に着けることによって運搬されうる。また、RFIDリーダ100は、図2(B)及び図2(C)に示すようにドローン201や無人搬送車202などの移動可能な機械に取り付けられることによって運搬されてもよい。
【0013】
RFIDリーダ100は、例えば、演算部101、記憶部102、通信部103、移動傾き量検知センサ104、電源供給部105、およびバッテリ106を含んで構成される。
【0014】
演算部101は、RFIDリーダ100の全体の動作を制御する。演算部101は、例えば記憶部102に記憶されたコンピュータプログラムを実行することにより、RFIDリーダ100が後述の各動作や一般的なRFIDリーダとしての動作を実行するようにする。演算部101は、中央演算装置(CPU)、マイクロプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)等の1つ以上のプロセッサや処理回路を含んで構成される。記憶部102は、それらの動作を実行させるためのプログラムやデータを保持する。記憶部102は、例えば、ROM(Read Only Memory)や、一時的に情報を保持するRAM(Random Access Memory)などの1つ以上のメモリや、ハードディスク等の他の記憶媒体の少なくともいずれかを含んで構成される。なお、演算部101と記憶部102は一体化されてもよく、例えば、1チップマイコンが用いられてもよい。
【0015】
通信部103は、例えばRFIDとは異なる通信方式によってRFIDリーダ100と異なる外部の装置と通信する。例えば、通信部103は、セルラ通信システムや無線LAN通信システムを用いて通信可能に構成されうる。移動傾き量検知センサ104は、RFIDリーダ100の移動量と傾き量の少なくともいずれかを検知するセンサであり、例えば3軸の加速度センサやジャイロセンサや地磁気センサなどを含んで構成される。電源供給部105は、充電可能で再利用可能な二次電池等のバッテリ106と接続され、RFIDリーダ100の各機能部に対してバッテリ106によって与えられる電力を供給する。電源供給部105は、例えばDCDCコンバータ等を含む回路によって構成され、例えば演算部101の制御に基づく電力供給制御を実行することが可能に構成される。
【0016】
タグ検知部120は、演算部101によって制御され、RFIDタグ150の検知処理を行う。タグ検知部120は、例えば、RF制御部110、パワーアンプ111、Lowパスフィルタ112、第1カプラ113、第2カプラ114、アンテナ115、およびRF電力検知部116を有する。RF制御部110は、Tx端子からUHF帯のRF(無線周波数)波形を出力する。RF波形は、パワーアンプ111において増幅され、その後に、Lowパスフィルタ112によって、増幅後の波形から不要な周波数帯域の成分がカットされる。不要な周波数帯域の成分がカットされた波形は、第1カプラ113へ入力される。なお、RF波形の電力は可変であり、演算部101によって設定されうる。RF電力検知部116は、第1カプラ113を監視して、第1カプラ113にRF波形の電力を検知する。RF電力検知部116は、電力の検知結果をRF_Detect信号として演算部101に入力し、演算部101は、このRF_Detect信号によって、RF波形の電力が第1カプラ113に入力されたことを検知することができる。第2カプラ114は、アンテナ115へRF波形を出力する。また、第2カプラ114は、アンテナ115によって外部から受信したRF信号を受け付けて、その入力された信号をRF制御部110へ入力する。例えば、RF制御部110は、アンテナ115および第2カプラ114を介して、RFIDタグ150からID情報を取得しうる。アンテナ115は、UHF帯の電磁波を出力して、RFIDタグ150にその電磁波を照射することによって電力を供給する。そして、アンテナ115は、電磁波の照射先のRFIDタグ150との間で、電磁波によって信号を送受信する。なお、RFIDタグ150に電磁波を照射することを、以下では電波照射と呼ぶ場合がある。
【0017】
本実施形態では、RFIDリーダ100は、図4に関連して後述するように、RFIDタグのID情報を自動的に検知しながら、移動傾き量検知センサ104によってRFIDタグとの間の相対位置の情報を検知する。そして、RFIDリーダ100は、複数のRFIDタグのID情報と、複数のRFIDタグの間の相対位置の情報を関連付けて利用する。このために、演算部101は、RF制御部110が検知したRFIDタグ150のID情報と、移動傾き量検知センサ104によって検知された移動量の情報を、記憶部102に保存して、必要なデータ処理を行う。その後、演算部101は、通信部103を介して、図4に関連して後述する情報端末401との間で通信を行う。一例において、RFIDリーダ100は、記憶部102に上述の各情報を所定量だけ収集したのちに、通信部103を介して情報端末401と通信するように構成されうる。このような構成によれば、情報端末401との通信頻度を抑制し、RFIDリーダ100の消費電力を低減することができる。また、このような構成によれば、RFIDリーダ100が情報端末401と通信できない場合に、記憶部102に情報を一時的に保存しておくことができる。
【0018】
演算部101は、一例において、RFIDタグ150の読み取りと、図5に関連して後述する演算制御と、図6に関連して後述するRFIDリーダ100の電力低減動作への切り替え制御と、を実行する。演算部101は、RFIDリーダ100の動作期間を設定するタイマ121を有し、タイマ121によって、時刻用タイマや所定期間の経過を判定するためのタイマなど、複数の時間を並行してカウントすることができる。また、演算部101は、RFIDリーダ100の動作期間を設定するためのタイマ121の設定値や、RFIDリーダ100の位置情報や傾き(姿勢の状態)情報を記憶部102に保存する。
【0019】
図3(A)及び図3(B)は、RFIDリーダ100の外観例を説明する図である。図3(A)はRFIDリーダ100の正面の外観である。また、図3(B)は、RFIDリーダ100の背面の外観である。図3(A)において、RFIDリーダ100のアンテナ115の位置が破線によって示されている。RFIDリーダ100の移動及び傾き量は、X-Y-Z軸方向の移動量と、α-β-γの方向の回転角度によって示され、移動傾き量検知センサ104は、これらの量を検知する。なお、αはZ軸を中心とした回転角度であり、βはY軸を中心とした回転角度であり、γはX軸を中心とした回転角度である。
【0020】
一例において、RFIDリーダ100の移動方向は、図3(A)の視点から見た場合における、X軸の矢印方向に移動する場合を右方向への移動と定義し、X軸の矢印と逆方向に移動する場合を左方向への移動と定義する。また、図3(A)のY軸の矢印方向に移動する場合を正面方向への移動と定義し、Y軸の矢印と逆方向に移動する場合を背面方向への移動と定義する。また、図3(A)のZ軸の矢印方向に移動する場合を上方向への移動と定義し、Z軸の矢印と逆方向に移動する場合を下方向への移動と定義する。なお、RFIDリーダ100のアンテナ115は、一例において、図3(A)の正面方向に強い電波照射を行う特性を有しうる。この場合、正面方向を電波照射の方向と呼ぶ。
【0021】
また、一例において、RFIDリーダ100の傾き状態は、図3(A)の視点から見た場合において、回転角度αが矢印方向(又は反矢印方向)に180°に達した状態を、後ろを向いた状態と定義する。一例として、図3(B)は、回転角度αが180°に達して、RFIDリーダ100が背面を向いた状態を示している。また、図3(A)の状態から回転角度βが矢印方向に180°までの範囲の値となった状態を、左に傾いた状態と定義し、回転角度βの矢印と逆方向に180°までの範囲の値となった状態を、右に傾いた状態と定義する。また、図3(A)の状態から回転角度γが矢印方向に90°に達した状態を、上を向いた状態とし、回転角度γが矢印と逆方向に90°に達した状態を、下向きの状態と定義する。
【0022】
続いて、図4を用いて、本実施形態に係る物品の位置検知システムについて説明する。このシステムでは、一例として、RFIDタグ150が、基準位置を検知するために用いられる位置RFIDタグ430a、430b、430c…と、管理対象の物品に取り付けられる物品RFIDタグ440a、440b…とに分類される。RFIDリーダ100は、検知した物品RFIDタグ440および位置RFIDタグ430のID情報と、それらの物品RFIDタグ440と位置RFIDタグ430の相対位置(x、y、z)の情報とを関連付けた情報を情報端末401へ送信する。また、RFIDリーダ100は、RFIDタグ150を検知した時刻の情報を、情報端末401へ送信しうる。なお、例えば、情報端末401は、内部時計を用いて、RFIDリーダ100から情報を取得した時刻を計測し、その計測した時刻を保持するようにしてもよい。RFIDリーダ100は、例えば通信部103を用いて、情報端末401へ情報を送信する。
【0023】
情報端末401は、データベース411、データベース412、および、表示部413を含んで構成される。情報端末401は、例えば、スマートフォンやPCなどでありうる。データベース411には、位置RFID430のID情報と位置名称とが関連付けられたデータと、物品RFID440のID情報と物品名称とが関連付けられたデータとが保持される。ここで、RFIDタグのID情報は複雑な文字列でありうるためにユーザが認識しにくい。このため、情報端末401では、例えば、表示部413における情報の表示の際に、データベース411に基づいてID情報が位置や物品の名称へ変換され、それらの名称が表示される。なお、データベース411を利用せず、RFIDのID情報がそのまま表示部413に表示されるようにしてもよい。データベース412には、位置RFIDタグ430および物品RFIDタグ440のID情報と、その位置RFIDタグ430と物品RFIDタグ440の相対位置と、物品RFIDタグ440が検知された時刻とが関連付けられたデータが保存される。情報端末401は、上述のように、これらの情報をRFIDリーダ100から受信してデータベース412に格納する。表示部413には、情報端末401の不図示のインタフェースを介して受け付けられたユーザ指示に基づいてデータベース412が参照されることによって特定された物品の位置情報が表示される。
【0024】
なお、位置検知システムの構成は一例であり、例えばRFIDリーダ100は情報端末401に含まれていてもよい。この場合、情報端末401は、内蔵されているRFIDリーダ100を介して上述の情報を収集し、例えば物品の位置をユーザに通知する情報の提示などの各種処理を実行することができる。また、物品RFIDタグと位置RFIDタグとを用いるシステムは一例であり、例えば、RFIDリーダ100が自装置の位置を特定可能な装置であり、検知されたRFIDタグ150の情報を、自装置の位置と共に情報端末401へ通知するようにしてもよい。
【0025】
(処理の流れ)
続いて、RFIDリーダ100が実行する処理の流れの例について説明する。図5は、RFIDリーダ100がRFIDタグ150の検知処理を実行する期間と、そのような検知処理を実行せずに電力低減の期間を切り替える処理の流れの例を示している。本処理は、例えば、RFIDリーダ100の電源がON状態となったことに応じて、RFIDリーダ100の演算部101が記憶部102に記憶されたプログラムを実行することによって実現されうる。なお、以下では、演算部101がタイマ121を用いて処理を実行する場合について説明するが、これは一例であり、RFIDリーダ100が有する1つ以上の任意の機能部によって以下の処理が実行されてもよい。
【0026】
本処理において、演算部101は、まず、RFIDタグ150を(十分に大きい電力を消費して)検知する期間T1の計測のためにタイマ121を設定し、期間T1の計時を開始する(S501)。演算部101は、例えば、記憶部102から、期間T1のタイマ設定値を読み出し、タイマ121の設定を行う。タイマ121は、例えば、演算部101の内部で常時カウントしており、設定された時点から所定期間(ここでは期間T1)が満了するまでの計時を実行することができる。なお、これは一例であり、タイマ121は、期間T1が設定されたことに応じて計時を開始するようにしてもよく、設定された期間が満了したか否かの判定を可能とする任意の形式のタイマでありうる。なお、RFIDリーダ100の電源がONとされた直後には、例えば演算部101は、演算部101の内部に設けられた不図示のROM等に格納されている期間T1の初期値をタイマ121に設定してもよい。続いて、演算部101は、RFIDリーダ100がRFIDタグ150を検知するための設定を行い、その設定に基づいてRFIDタグ150の検知を実行する(S502)。そして、演算部101は、S501で計時が開始されたRFIDタグ150を検知する期間T1が経過したかを、タイマ121を確認することにより判定する(S503)。演算部101は、期間T1が経過していない間(S503でNO)はRFIDタグ150の検知処理を繰り返し実行し(S502)、期間T1が経過したと判定した場合(S503でYES)、処理をS504へ進める。
【0027】
S504において、演算部101は、電力消費を低減する期間T2(以下では、「電力低減期間」と呼ぶ。)の計測のためにタイマ121を設定し、期間T2の計時を開始する。演算部101は、例えば、記憶部102から、期間T2のタイマ設定値を読み出し、タイマ121の設定を行う。続いて、演算部101は、電力を低減する状態(以下では「電力低減状態」と呼ぶ。)に関する設定を行い、その設定に基づいて電力低減状態での動作を実行する(S505)。
【0028】
電力低減状態では、演算部101は、電源供給部105を制御してバッテリ106に蓄電されている電力の消耗を低減する。電力低減状態は、例えば、演算部101の制御に基づいて、RF制御部110がTx端子からのRF波形の振幅を低減し、又は、パワーアンプ111の増幅率を低減することにより、RFIDリーダ100から出力される電磁波の強度を低減させる状態である。なお、RFIDリーダ100は、電力低減状態において電波の出力を停止してもよい。また、例えばこれに加えて、電力低減状態では、演算部101及び記憶部102の動作クロックを低下または停止させ、これらの機能部をスリープモードにすることにより、さらに消費電力を低減させてもよい。さらに、通信部103やRF電力検知部116の動作を停止させることにより、消費電力をさらに低減することもできる。
【0029】
演算部101は、S504で計時が開始された期間T2が経過したかを、タイマ121を確認することにより判定する(S506)。演算部101は、期間T2が経過していない間(S506でNO)は電力低減状態を維持し(S505)、期間T2が経過したと判定した場合(S506でYES)は、処理を終了する。なお、演算部101は、図5の処理を繰り返し実行しうる。すなわち、演算部101は、期間T2の経過後に処理をS501に戻して、再度、期間T1および期間T2を設定し、RFIDタグ150を検知する状態と電力低減状態とを交互に切り替えながら動作しうる。
【0030】
本実施形態では、RFIDリーダ100は、自装置の移動量等に応じて、期間T1および期間T2の時間長を制御する。例えば、RFIDリーダ100は、自装置の位置等に変化がなく(または十分に小さく)、検知されるRFIDタグ150にも変化がないことが想定される場合には、期間T2を相対的に長くし、また、期間T1を相対的に短くして、消費電力を十分に抑制する。一方で、RFIDリーダ100は、自装置の位置等に変化があり、検知されるRFIDタグ150にも変化があることが想定される場合には、期間T1を相対的に長くし、また、期間T2を相対的に短くして、周囲のRFIDタグ150の検知漏れを防ぐ。これにより、RFIDリーダ100は、消費電力を低減しながらも、RFIDタグ150を確実に検知することができるようになる。
【0031】
演算部101は、以下で説明する手順によって、期間T1および期間T2の時間長を決定および設定する。演算部101は、例えば、自装置の移動量の増加や減少などの状況の変化が検知されたことに応じて、期間T1および期間T2を更新しうる。この更新は、期間T1の間にのみ行われてもよいし、期間T2の間にのみ行われてもよいし、期間を問わずに行われてもよい。
【0032】
期間T1の間にのみ更新が行われる場合、事前に設定された期間T1の長さに従ってタイマ121が期間T1を計測している間に、演算部101によって期間T1の長さが新たに設定されうる。この場合、タイマ121は、その更新後の長さで期間T1を測定するようにしてもよい。一例において、演算部101が期間T1の長さt10を新たに設定した時点で、期間T1の計時が開始されてから時間t11だけ経過していた場合、RFIDリーダ100は、長さt10-t11の期間の経過後に、期間T2へ移行しうる。また、t10よりt11の方が大きい場合、すなわち、期間T1の長さが更新された時点でその長さの期間が経過していた場合には、直ちに期間T2に移行してもよい。同様に、期間T2の間にのみ更新が行われる場合、事前に設定された期間T2の長さに従ってタイマ121が期間T2を計測している間に、演算部101によって期間T2の長さが新たに設定されうる。この場合、タイマ121は、その更新後の長さで期間T2を測定しうる。一例において、演算部101が期間T2の長さt20を新たに設定した時点で、期間T2の計時が開始されてから時間t21だけ経過していた場合、RFIDリーダ100は、長さt20-t21の期間の経過後に、期間T1へ移行しうる。また、t20よりt21の方が大きい場合、すなわち、期間T1の長さが更新された時点でその長さの期間が経過していた場合には、直ちに期間T2に移行してもよい。
【0033】
また、別の例では、期間T1において演算部101が決定した更新後の期間T1の長さは、その時点の期間T1には適用されず、次回の期間T1から適用されてもよい。同様に、期間T2において演算部101が決定した更新後の期間T2の長さは、その時点の期間T2には適用されず、次回の期間T2から適用されてもよい。なお、他方の期間については、演算部101が期間T1および期間T2の長さを決定した期間の間に設定が変更される。これにより、その他方の期間は、更新後の長さで計測されることとなる。
【0034】
期間によらずに更新が行われる場合には、期間T1の間に更新が行われる場合の上述の処理と、期間T2の間に更新が行われる場合の上述の処理が、更新が行われたタイミングに応じて選択的に実行されうる。
【0035】
なお、期間T2において演算部101をスリープモードに移行させて演算処理を停止する場合、演算部101は、移動量等の検知結果が得られた直後にその結果を処理すること(期間T1や期間T2を決定すること)ができない場合が想定される。この場合、例えば、移動傾き量検知センサ104内等に備えられた不図示のメモリに、検知された移動量等の情報を保存しておき、演算部101は、期間T1において、これらの情報に基づいて期間T1および期間T2の時間長の設定を行うようにしうる。
【0036】
続いて、期間T1および期間T2を設定する手順の例について説明する。なお、以下では、RFIDリーダ100の演算部101によって本処理が実行されるものとして説明するが、これは一例であり、以下の処理を実行するように構成された別の機能部によって本処理が実行されてもよい。
【0037】
<処理例1>
図6に、期間T1および期間T2を設定する手順の流れの第1の例を示す。図6は、RFIDリーダ100が位置の変化量(すなわち、移動量)に応じて、期間T1と期間T2の長さの設定を行う手順の例を示している。図6の手順において、演算部101は、まず、位置の測定を行うタイミングを特定するための計時を行うための時刻用タイマとして動作するように、タイマ121を設定し、計時を開始させる(S601)。演算部101は、時刻用タイマが時刻t1に達したことに応じてRFIDリーダ100の位置を移動傾き量検知センサ104に検知させ、その検知結果を取得する(S602)。演算部101は、その位置情報を記憶部102に保存する。その後、演算部101は、タイマ121によって時刻t1から所定時間経過して時刻用タイマが時刻t2に達した場合に(S603でYES)、再度、RFIDリーダ100の位置を移動傾き量検知センサ104に検知させ、その検知結果を取得する(S602)。演算部101はその位置情報を記憶部102に保存する。なお、RFIDリーダ100の検知の時点における位置は、例えば時刻t1で検知された位置RFIDタグ430との相対位置の位置情報によって表現されうる。例えば、時刻t1における位置情報が相対位置座標(x1、y1、z1)と表現され、時刻t2における位置情報が相対位置座標(x2、y2、z2)と表現されうる。なお、これらの位置座標は、位置RFIDタグ430との相対位置ではない形式で表現されてもよい。
【0038】
そして、演算部101は、時刻t1及び時刻t2の位置情報を記憶部102から読み出し、時刻t1から時刻t2までの間のRFIDリーダ100の位置変化量が所定量以上かを判定する(S605)。なお、時刻t1から時刻t2までの間のRFIDリーダ100の位置変化量は、
のように算出される。また、時刻t1から時刻t2までの間のRFIDリーダ100の位置変化量は、以下のように、各々の座標軸ごとの差分の絶対値として算出されてもよい。
【0039】
演算部101は、位置変化量が所定量以上の場合(S605でYES)、RFIDリーダ100の移動速度が速いと判定する。この場合、演算部101は、RFIDリーダ100の周囲に存在するRFIDタグ150の検知もれを回避するために、RFIDタグ150を検知する期間T1のタイマ設定値を長期間に設定し、設定値を記憶部102に保存する(S606)。また、演算部101は、RFIDリーダ100の電力を低減する期間T2のタイマ設定値を短期間に設定し、設定値を記憶部102に保存する(S607)。
【0040】
一方、演算部101は、位置変化量が所定量未満の場合(S605でNO)、RFIDリーダ100の移動速度が遅いと判定する。この場合、演算部101は、期間T2を長期化しても、RFIDタグ150の検知漏れが発生しにくいため、RFIDタグ150を検知する期間T1のタイマ設定値を短期間に設定し、設定値を記憶部102に保存する(S608)。また、演算部101は、RFIDリーダ100の電力を低減する期間T2のタイマ設定値を長期間に設定し、設定値を記憶部102に保存する(S609)。
【0041】
RFIDリーダ100は、位置の変化量(移動量)が小さい時にはほぼ停止していることが想定される。このため、この位置の変化量が少ない場合にはRFIDタグ150の検知漏れを起こす可能性が低いため、RFIDリーダ100は、例えば、出力する電磁波の強度を低減させる。これによれば、RFIDリーダ100は、RFIDタグ150の読み取り頻度を少なくすることができ、消費電力を十分に抑制することができる。一方、位置の変化量が大きい場合には、RFIDリーダ100は速く移動していることが想定されるため、RFIDタグの検知漏れを防ぐために、RFIDリーダ100は、例えば、出力する電磁波の強度を増加させる。これにより、RFIDリーダ100は、RFIDタグ150の読み取り頻度を多くすることができ、周囲に存在するRFIDタグ150を高精度に検知することができる。
【0042】
図6の制御手順によれば、過去に検知されたRFIDタグ150の位置が変更された場合であっても、それにはよらずに、RFIDリーダ100の状態に応じて消費電力を低減させることができる。また、図6の制御手順によれば、過去に検知したRFIDタグ150の位置情報を必要としないため、情報端末401にRFIDタグ150の過去の位置情報を問い合わせるために通信を行う必要がない。このため、RFIDリーダ100は、通信に必要な消費電力を低減することができる。
【0043】
<処理例2>
図7に、期間T1および期間T2を設定する手順の流れの第2の例を示す。図7は、RFIDリーダ100が傾きの変化量に応じて、期間T1と期間T2の長さの設定を行う手順の例を示している。図7の手順では、図6の処理におけるRFIDリーダ100の位置の変化量に代えて、RFIDリーダ100の傾きの変化量が用いられる。なお、S701およびS703はS601およびS603と同様であり、S706~S709もS606~S609と同様である。
【0044】
S702およびS704では、それぞれ、演算部101が、時刻t1及び時刻t2でのRFIDリーダ100の傾き量を移動傾き量検知センサ104に検知させ、その検知結果を傾き情報として記憶部102に保存する。なお、時刻t1での傾き情報が(α1、β1、γ1)と表現され、時刻t2での傾き情報が(α2、β2、γ2)と表現されるものとする。
【0045】
S705では、演算部101が、時刻t1及び時刻t2の傾き情報を記憶部102から読み出し、時刻t1から時刻t2までの間のRFIDリーダ100の傾き変化量が所定量以上か否かを判定する。なお、時刻t1から時刻t2までの間のRFIDリーダ100の傾き変化量は、
のように算出される。また、時刻t1から時刻t2までの間のRFIDリーダ100の傾き変化量は、以下のように各々の回転軸ごとの差分の絶対値として算出されてもよい。
【0046】
演算部101は、傾き変化量が所定量以上の場合(S705でYES)、RFIDリーダ100の姿勢が速く変化していると判定する。この場合、演算部101は、RFIDリーダ100の周囲に存在するRFIDタグ150の検知もれを回避するために、RFIDタグ150を検知する期間T1のタイマ設定値を長期間に設定する(S706)。また、演算部101は、RFIDリーダ100の電力を低減する期間T2のタイマ設定値を短期間に設定する(S707)。一方、演算部101は、傾き変化量が所定量未満の場合(S705でNO)、RFIDリーダ100の傾きが速く変化していないと判定する。この場合、演算部101は、期間T2を長期化してもRFIDタグ150の検知漏れが発生しにくいため、RFIDタグ150を検知する期間T1のタイマ設定値を短期間に設定する(S708)。また、演算部101は、RFIDリーダ100の電力を低減する期間T2のタイマ設定値を長期間に設定する(S709)。
【0047】
RFIDリーダ100は、傾きの変化量が小さい時にはほぼ停止していることが想定される。このため、この傾きの変化量が少ない場合にはRFIDタグ150の検知漏れを起こす可能性が低いため、RFIDリーダ100は、例えば、出力する電磁波の強度を低減させる。これによれば、RFIDリーダ100は、RFIDタグ150の読み取り頻度を少なくすることができ、消費電力を十分に抑制することができる。一方、傾きの変化量が大きい場合には、RFIDリーダ100は速く回転していることが想定されるため、RFIDタグの検知漏れを防ぐために、RFIDリーダ100は、例えば、出力する電磁波の強度を増加させる。これにより、RFIDリーダ100は、RFIDタグ150の読み取り頻度を多くすることができ、周囲に存在するRFIDタグ150を高精度に検知することができる。このようにして、RFIDリーダ100は、自装置の状況に応じて、周囲のRFIDタグ150をもれなく検知しながら、消費電力を低減することができる。
【0048】
<処理例3>
図8に、期間T1および期間T2を設定する手順の流れの第3の例を示す。図8は、RFIDリーダ100が位置及び傾きの変化量に応じて移動方向を判定し、その移動方向に基づいて期間T1と期間T2の長さの設定を行う手順の例を示している。なお、S801およびS803は、S601/S701およびS603/S703と同様である。
【0049】
S802およびS804では、それぞれ、演算部101が、時刻t1及び時刻t2でのRFIDリーダ100の移動量及び傾き量を移動傾き量検知センサ104に検知させ、その検知結果を記憶部102に保存する。ここで、時刻t1での位置情報が(x1、y1、z1)、時刻t1での傾き情報が(α1、β1、γ1)、時刻t2での位置情報が(x2、y2、z2)、時刻t2での傾き情報が(α2、β2、γ2)と表現されるものとする。
【0050】
S805では、演算部101が、時刻t1及び時刻t2の位置情報及び傾き情報を記憶部102から読み出す。そして、演算部101は、これらの情報の変化量に基づいて、時刻t1から時刻t2までの間に、RFIDリーダ100が電波照射方向と逆向き(又はほぼ逆向き)に移動したかを判定する。演算部101は、例えば、RFIDリーダ100からの電波照射方向と逆向き方向への移動となるY軸方向の移動量Δy=y2-y1が負の所定値以下である場合、逆向き方向への移動があったと判定しうる。なお、演算部101は、例えば、傾きの回転量にさらに基づいて、RFIDリーダ100の姿勢の変化を判定し、その姿勢の変化状態に応じて電波照射方向を判定しうる。例えば、演算部101は、時刻t1及び時刻t2における傾き情報の平均値((α1+α2)/2、(β1+β2)/2、(γ1+γ2)/2)を電波照射方向として決定しうる。例えば、RFIDリーダ100が時刻t1から時刻t2の期間で図3(A)に示したZ軸における回転角度αが90°変化した場合、α1に45°を加算した方向が時刻t1から時刻t2の期間の電波照射方向としうる。そして、演算部101は、例えばΔx=x2-x1が負の第1の所定値以下であり、かつ、Δy=y2-y1が負の第2の所定値以下である場合に、電波照射方向と逆方向への移動があったと判定しうる。なお、第1の所定値や第2の所定値は、傾きの変動量に応じてそれぞれ決定されうる。なお、同様に、演算部101は、回転角度βや回転角度γの変化に応じて電波照射方向を判定して、逆方向に対応するX軸、Y軸、およびZ軸に関する所定値を決定してもよい。
【0051】
演算部101は、RFIDリーダ100が時刻t1における電波照射方向と逆方向(又はほぼ逆方向)に移動したと判定した場合(S805でYES)、RFIDタグ150を検知する期間T1のタイマ設定値を短期間に設定する(S806)。また、演算部101は、RFIDリーダ100の電力を低減する期間T2のタイマ設定値を長期間に設定する(S807)。一方、演算部101は、RFIDリーダ100が時刻t1における電波照射方向と逆方向(又はほぼ逆方向)に移動していないと判定した場合(S805でNO)、RFIDタグ150を検知する期間T1のタイマ設定値を長期間に設定する(S808)。また、演算部101は、RFIDリーダ100の電力を低減する期間T2のタイマ設定値を短期間に設定する(S809)。
【0052】
図2(A)に示すように、人がRFIDリーダ100を身に着ける場合、RFIDリーダ100の電波照射方向と人の移動方向とが概ね一致することが想定されうる。これに対して、人の移動方向と電波照射方向とが逆方向である場合には、RFIDリーダ100の電波照射方向が人の方向を向いており、誤った装着状態になっていることが想定される。このようなRFIDリーダ100の電波の放射方向が適切でない場合には、RFIDリーダ100は、RFIDタグ150の検知能力を十分に発揮することができない。このため、図8のような制御により、検知能力を十分に発揮できないような状態での電波照射を抑制することができる。なお、演算部101は、RFIDリーダ100の電波の放射方向が適切でないと判定される状態が継続することを検知した場合、RFIDリーダ100の不図示のブザーを鳴らすなど、ユーザに誤装着を報知するようにしてもよい。
【0053】
なお、これは一例であり、例えば、RFIDリーダ100が移動体に装着される形式によっては、例えば移動体の進行方向に対してRFIDリーダ100の左右が覆われるように装着されるのが適切である場合がありうる。この場合、装着状態が不適切である場合に、電波照射方向の左右に移動体が移動することがありうる。このため、電波照射方向の逆方向への移動以外の所定の角度範囲への移動の際に、期間T2の長さが長期化されるような設定が行われてもよい。また、電波照射方向の逆方向へ移動体が移動するのが適切な状態となる場合もありうる。このため、移動体の形式等によって、期間T2の長さを長期化すると判定するための、電波照射方向に対する方向の範囲が設定されうる。
【0054】
なお、演算部101は、上述の図6図8の処理を並行して実行してもよい。このとき、各処理において異なる判定結果が得られた場合には、期間T1が各処理で得られた結果のうちで最も長いものとなるように設定されうる。また、演算部101は、処理を繰り返し実行する。これにより、RFIDリーダ100の状況に応じて、RFIDリーダ100によるRFIDタグ150の検知が漏れなく適切に実行されるようにすると共に、十分にRFIDリーダ100の消費電力を低減させることができる。なお、演算部101は、上述の各処理において、前回の処理における時刻t2で検知された位置情報や傾き情報を、次回の処理の時刻t1における位置情報や傾き情報として利用してもよい。これにより、t1における情報収集処理を省略することができ、継続的に各処理を実行し続けることができる。
【0055】
なお、上述の処理例では、期間T1と期間T2の設定値が2段階で設定される場合について説明したが、例えば移動量や傾きの変化量等に比例して、期間T1の期間T2に対する期間長の比率が高くなるような制御が行われてもよい。例えば、移動量や傾きの変化量等が大きいほど期間T1を長くすると共に期間T2を短くし、移動量や傾きの変化量等が小さいほど期間T1を短くすると共に期間T2を長くするような設定値が、例えば3つ以上の複数の段階にわたって設定されてもよい。また、移動量や傾きの変化量等の大きさを引数として期間T1および期間T2が都度計算されるようにし、期間T1の長さと期間T2の長さとを無段階で調整可能とする制御が行われてもよい。
【0056】
また、上述の処理例では、期間T1と期間T2のそれぞれにおいて出力する電磁波の強度が固定値であるものとして説明したが、例えば移動量や傾きの変化量に反比例して出力される電磁波の強度を弱くする制御を行ってもよい。すなわち、移動量や傾きの変化量が大きいほど出力される電磁波の強度を強くし、移動量や傾きの変化量が小さいほど出力される電磁波の強度を弱くするような設定値が、例えば3つ以上の複数の段階にわたって設定されてもよい。また、電磁波の強度についても、無段階で調整可能となるような制御が行われてもよい。
【0057】
以上のように、上述の各処理を行うことにより、RFIDリーダ100の状態の変化に応じて消費電力を抑制しながら、確実にRFIDタグ150を検知することが可能となる。
【0058】
なお、上述の実施形態では、RFIDが用いられる場合の例について説明したが、これに限られない。例えば、微小な電力を放射して周囲の通信物体からの応答を受信することによる、任意のリーダ装置において上述の処理を適用可能である。
【0059】
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0060】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0061】
100:RFIDリーダ、101:演算部、102:記憶部、105:電源供給部、120:タグ検知部、121:タイマ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8