(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】固体高分子形燃料電池の発電セル、及びガスケット
(51)【国際特許分類】
F16J 15/10 20060101AFI20241004BHJP
H01M 8/0276 20160101ALI20241004BHJP
H01M 8/10 20160101ALI20241004BHJP
【FI】
F16J15/10 T
H01M8/0276
H01M8/10 101
(21)【出願番号】P 2020179339
(22)【出願日】2020-10-27
【審査請求日】2023-08-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179970
【氏名又は名称】桐山 大
(74)【代理人】
【識別番号】100071205
【氏名又は名称】野本 陽一
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 頼
【審査官】羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】実開昭55-050362(JP,U)
【文献】実開平02-088060(JP,U)
【文献】特開2005-240988(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0265523(US,A1)
【文献】実開昭59-025744(JP,U)
【文献】特開平01-150073(JP,A)
【文献】特開2005-174862(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0089808(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/00-15/14
H01M 8/00-8/0297
H01M 8/08-8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜電極接合体と、
前記膜電極接合体を挟み込む一対のセパレータと、
個々の前記セパレータに設けられた装着溝に嵌め込まれ、前記膜電極接合体と前記個々のセパレータとの間に配置されるガスケットと、
を備え、
前記ガスケットは、前記装着溝に嵌め込まれ、
前記膜電極接合体に先端面を接触させる矩形の断面形状を含む弾性体であるガスケット本体と、
前記ガスケット本体の両側面から突出し、前記装着溝に直交する方向の充填率を100パーセント未満にする形態で前記装着溝の側壁に接触するサイド突起と、
を備え
、
前記装着溝の底面と前記ガスケットの底部とは平坦面で面接触する、
固体高分子形燃料電池の発電セル。
【請求項2】
前記サイド突起は、前記ガスケット本体と同じ全高を有している、
請求項1に記載の
固体高分子形燃料電池の発電セル。
【請求項3】
前記サイド突起は、前記ガスケット本体の長さ方向に均等な間隔で左右互い違いに配置されている、
請求項1又は2に記載の
固体高分子形燃料電池の発電セル。
【請求項4】
左右の前記サイド突起は、同一の形状である、
請求項3に記載の
固体高分子形燃料電池の発電セル。
【請求項5】
前記サイド突起は、前記ガスケット本体の長さ方向に直交する方向に突出している、
請求項3に記載の
固体高分子形燃料電池の発電セル。
【請求項6】
前記サイド突起は、前記ガスケット本体の長さ方向に対して傾斜する方向に突出している、
請求項3に記載の
固体高分子形燃料電池の発電セル。
【請求項7】
互いに対面する二部材のうちの一方の部材に設けられた装着溝に嵌め込まれ、前記二部材のうちの別の一方の部材に先端面を接触させる矩形の断面形状を含む弾性体であるガスケット本体と、
前記ガスケット本体の両側面から突出し、前記装着溝に直交する方向の充填率を100パーセント未満にする形態で前記装着溝の側壁に接触するサイド突起と、
を備え、
前記サイド突起は、前記ガスケット本体の高さ方向に貫通する貫通孔を有している、
ガスケット。
【請求項8】
前記サイド突起は、前記ガスケット本体と同じ全高を有している、
請求項7に記載のガスケット。
【請求項9】
前記サイド突起は、前記ガスケット本体の長さ方向に直交する線上に配置されている、
請求項7
又は8に記載のガスケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体高分子形燃料電池の発電セル、及びこれに用いられるガスケットに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、電解質膜の両面に一対の電極層を設けた膜電極接合体(MEA)を備え、その厚み方向両側にセパレータを積層して燃料電池セルとし、この燃料電池セルを複数個積層したスタック構造をなしている。そして膜電極接合体のカソード側には酸化ガス(空気)を供給し、アノード側には燃料ガス(水素)を供給することで、水の電気分解の逆反応である電気化学反応によって電力を発生する。
【0003】
積層された燃料電池セル内には酸化ガス(空気)、燃料ガス(水素)、冷却水などの媒体のための流路が形成されており、各流路をシールするためのシール構造が設けられている。このようなシール構造のために用いられるのがガスケットである。ガスケットは、セパレータとセパレータとの間や、MEA又は電解質膜とセパレータとの間に配置され、それらの二つの部材の間をシールする。
【0004】
特許文献1は、セパレータとMEAとの間にゴム材料のガスケットを設けたシール構造を開示している(文献1の段落[0014][0017][
図1]参照)。このシール構造は、セパレータ(4)にガスケット溝(5)を形成しており、このガスケット溝にガスケット(6)を嵌め込んでいる。ガスケットの両側面にはリブ(6d)を形成し、ガスケット溝からのガスケットの脱落防止を図っている(文献1の段落[0016]参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-174862号公報
【文献】特開2006-029364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されているガスケットは、断面が矩形のいわゆるフラットガスケットと呼ばれる種類のもので(文献1の段落[0014]参照)、ガスケットの両面に突起状の側面突起を設けた特許文献2に記載されているようなガスケットと比較して、製造コストが安価である。
【0007】
ゴム材料のガスケットは、押し潰された際に生ずるゴムの反力によって面圧を生じ、二つの部材の間のシールを実現している。このときの面圧は、シール面に変形を生じさせないように調整される。ところがフラットガスケットの場合、脱落防止用のサイド突起(リブ)も矩形形状になるため、この位置で応力が大きくなり、シール面を変形させてしまう可能性が生ずる。改善が求められる。
【0008】
本件の課題は、サイド突起の位置での応力の増大を抑えることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
固体高分子形燃料電池の発電セルの一態様は、膜電極接合体と、前記膜電極接合体を挟み込む一対のセパレータと、個々の前記セパレータに設けられた装着溝に嵌め込まれ、前記膜電極接合体と前記個々のセパレータとの間に配置されるガスケットと、を備え、前記ガスケットは、前記装着溝に嵌め込まれ、前記膜電極接合体に先端面を接触させる矩形の断面形状を含む弾性体であるガスケット本体と、前記ガスケット本体の両側面から突出し、前記装着溝に直交する方向の充填率を100パーセント未満にする形態で前記装着溝の側壁に接触するサイド突起と、を備え、前記装着溝の底面と前記ガスケットの底部とは平坦面で面接触する。
ガスケットの一態様は、互いに対面する二部材のうちの一方の部材に設けられた装着溝に嵌め込まれ、前記二部材のうちの別の一方の部材に先端面を接触させる矩形の断面形状を含む弾性体であるガスケット本体と、前記ガスケット本体の両側面から突出し、前記装着溝に直交する方向の充填率を100パーセント未満にする形態で前記装着溝の側壁に接触するサイド突起と、を備え、前記サイド突起は、前記ガスケット本体の高さ方向に貫通する貫通孔を有している。
【発明の効果】
【0010】
サイド突起の位置でのシール面の変形を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】アノード側のセパレータを取り去った発電セルを平面視で示す模式図。
【
図3】参考例として、装着溝に嵌め込まれたガスケットを平面視で示す模式図。
【
図4】(A)は
図3中のA-A線断面図、(B)は
図3中のB-B線断面図。
【
図5】(A)は
図4(A)に示すガスケットの領域に発生する反力、(B)は
図4(B)に示すガスケットの領域に発生する反力をそれぞれ示す模式図。
【
図6】第1の実施の形態として、(A)は装着溝に嵌め込まれたガスケットを平面視で示す模式図、(B)は
図6(A)中のA-A線断面図、(C)は
図6(B)に示すガスケットの領域に発生する反力を示す模式図。
【
図7】第2の実施の形態として、(A)は装着溝に嵌め込まれたガスケットを平面視で示す模式図、(B)は
図7(A)中のA-A線断面図、(C)は
図7(B)に示すガスケットの領域に発生する反力を示す模式図。
【
図8】第3の実施の形態として、(A)は装着溝に嵌め込まれたガスケットを平面視で示す模式図、(B)は
図8(A)中のA-A線断面図、(C)は
図8(B)に示すガスケットの領域に発生する反力を示す模式図。
【
図9】第4の実施の形態として、(A)は装着溝に嵌め込まれたガスケットを平面視で示す模式図、(B)は
図9(A)中のA-A線断面図、(C)は
図9(B)に示すガスケットの領域に発生する反力を示す模式図。
【
図10】第5の実施の形態として、(A)は装着溝に嵌め込まれたガスケットを平面視で示す模式図、(B)は
図10(A)中のA-A線断面図、(C)は
図10(B)に示すガスケットの領域に発生する反力を示す模式図。
【
図11】第6の実施の形態として、(A)は装着溝に嵌め込まれたガスケットを平面視で示す模式図、(B)は
図11(A)中のA-A線断面図、(C)は
図11(B)に示すガスケットの領域に発生する反力を示す模式図。
【
図12】第7の実施の形態として、(A)は装着溝に嵌め込まれたガスケットを平面視で示す模式図、(B)は
図12(A)中のA-A線断面図、(C)は
図12(B)に示すガスケットの領域に発生する反力を示す模式図。
【
図13】第8の実施の形態として、(A)は装着溝に嵌め込まれたガスケットを平面視で示す模式図、(B)は
図13(A)中のA-A線断面図、(C)は
図13(B)に示すガスケットの領域に発生する反力を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態を図面に基づいて説明する。本実施の形態は、固体高分子形燃料電池の燃料電池スタックを構成する発電セル11に用いられるガスケット101である。
【0013】
(基本構造)
図1は、発電セル11の側断面を模式的に示している。発電セル11は、水素と酸素とから電気エネルギーを取り出す構造物である。そのための構造として発電セル11は、MEA(Membrane Electrode Assembly)と呼ばれる膜電極接合体31を一対のセパレータ51で挟み込み、膜電極接合体31と個々のセパレータ51との間をガスケット101でシールしている。
【0014】
膜電極接合体31は、固体高分子から構成された樹脂フィルムからなる電解質膜32の両面に、アノード33aとカソード33bとの一対の電極層を設け、この電極層を一対のガス拡散層34で挟んでいる。
【0015】
セパレータ51は、一つの発電セル11に対して一対用意されており、膜電極接合体31を挟み込んでいる。一方のセパレータ51とアノード33aとの間、及び別の一方のセパレータ51とカソード33bとの間には、パターン化されたチャネル(図示せず)が設けられている。これらのチャネルは、個々のセパレータ51に形成された溝によって構築されている。
【0016】
発電セル11は、膜電極接合体31のアノード33a側に酸化ガス(空気)を供給し、カソード33b側に燃料ガス(水素)を供給することで、水の電気分解の逆反応である電気化学反応によって電力を発生する。そこで発電セル11は、一対のセパレータ51と膜電極接合体31との間に設けたチャネルを流路(図示せず)として、アノード33a側に酸化ガス(空気)を、カソード33b側に燃料ガス(水素)をそれぞれ導く。流路には、冷却水を流通させる経路も用意されている。
【0017】
図2は、アノード33a側のセパレータ51を取り去った発電セル11を平面視で模式的に示している。膜電極接合体31の周囲を取り囲んでいるのは、カソード33b側のセパレータ51に装着されたガスケット101である。ガスケット101は、複数個のマニフォールド35の周辺をも取り囲んでいる。マニフォールド35は、アノード33a側の流路に酸化ガス(空気)を、カソード33b側の流路に燃料ガス(水素)を、そして冷却水用の流路に冷却水を導くための構造物である。
【0018】
図2では、カソード33b側のセパレータ51に装着されているガスケット101を示しているが、アノード33a側のセパレータ51にも同一パターンで別のガスケット101が装着されている(
図1参照)。
【0019】
図1に示すように、ガスケット101は、アノード33a側のセパレータ51(二部材のうちの一方の部材)とアノード33a(別の一方の部材)との間をシールする。別のガスケット101は、カソード33b側のセパレータ51(二部材のうちの一方の部材)とカソード33b(別の一方の部材)との間をシールする。
【0020】
一対のセパレータ51にはそれぞれ装着溝52が設けられ、ガスケット101はそれぞれ装着溝52に嵌め込まれている。ガスケット101は、装着溝52に嵌め込まれてアノード33a又はカソード33bに先端面を接触させるガスケット本体102を主体とし、ガスケット本体102の両側面に複数個のサイド突起103を設けている。これらのサイド突起103は、装着溝52の側壁52aに所定の面圧で接触し、装着溝52からのガスケット101の脱落を防止する。
【0021】
本実施の形態のガスケット101は、ゴムなどの弾性材料によって成形され、ガスケット本体102の断面を矩形にするいわゆるフラットガスケットである。圧縮前の初期状態のガスケット101は、セパレータ51の表面よりも突出するように高さが定められている。ガスケット101の高さは、膜電極接合体31に対してシールのために十分な面圧を発生させることを第一義として、サイド突起103の位置で応力を増大させすぎないという側面を加味して設定されている。
【0022】
これから紹介するガスケット101の各種の実施の形態及び参考例は、サイド突起103についての各種のバリエーションである。参考例とその課題とを説明し、第1~第8の実施の形態について説明していく。
【0023】
(参考例)
図3~
図5(A)(B)に基づいて、ガスケット101の参考例について説明する。
【0024】
図3に示すように、参考例のガスケット101は、ガスケット本体102に対して、左右対称形にサイド突起103を設けている。
図4(A)(B)に示すように、サイド突起103が設けられていない位置(
図3中のA-A線断面の領域)は、サイド突起103の位置(
図3中のB-B線断面の領域)よりも相対的に幅が狭い。サイド突起103の位置は、装着溝52の溝幅よりも幅が広く、装着溝52の側壁52aに面圧を発生する。
【0025】
図5(A)(B)は、発電セル11を構成するように装着されて押し潰されたガスケット101の形状を面圧(白抜き矢印)とともに模式的に示している。これらの図面からも明らかなように、
図5(B)に示すサイド突起103の位置では、
図5(A)に示すサイド突起103が設けられていない位置に対して、シール対象であるセパレータ51及び膜電極接合体31に対する面圧が大きくなる。ガスケット101は、サイド突起103の両端を装着溝52の側壁52aに接触させているため、圧縮された際に幅方向の逃げ場を失い、その分応力が高まるからである。
【0026】
こうしてサイド突起103の位置で応力が大きくなる結果、セパレータ51又は膜電極接合体31のシール面を変形させてしまう可能性が生ずる。本実施の形態の発明者は、装着溝52に直交する方向のガスケット101の充填率を100パーセント未満にするようにサイド突起103の形態を定めることで、サイド突起103の位置での応力の上昇を抑制するようにした。以下、第1~第8の実施の形態を紹介する。
【0027】
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態を
図6(A)(B)(C)に基づいて説明する。
図1~
図5(A)(B)に示した部分と同一部分は同一符合で示し、説明も省略する(以下の各実施の形態においても同様)。
【0028】
第1の実施の形態、及び後述する第2~第4の実施の形態のサイド突起103は、ガスケット本体102の長さ方向に均等な間隔で左右互い違いに配置され、これによって装着溝52に直交する方向のガスケット101の充填率を100パーセント未満にしている。
【0029】
図6(A)に示すように、本実施の形態のサイド突起103は、半円形の水平断面形状を有している。個々のサイド突起103は、ガスケット本体102と同じ全高をもち、それぞれが同一の形状を有しており、ガスケット本体102の長さ方向に直交する方向に突出している。このような形状のサイド突起103は、ガスケット本体102の長さ方向に向けて、ガスケット本体102の倒れや蛇行が生じない間隔で左右互い違いに配列されている。
【0030】
図6(B)に示すように、
図6(A)中のA-A線の位置では、ガスケット本体102の右半分にのみサイド突起103が位置づけられる。これに隣接するサイド突起103は、ガスケット本体102の左半分にのみ位置づけられる(図示せず)。したがって装着溝52に直交する方向のガスケット101の充填率は、100パーセント未満になる。
【0031】
図6(C)は、発電セル11を構成するように装着されて押し潰されたガスケット101の
図6(B)に示す領域の形状を面圧(白抜き矢印)とともに模式的に示している。
図6(C)より明らかなように、装着溝52に直交する方向の充填率が100パーセントである
図5(B)に示すガスケット101と比較して、本実施の形態のガスケット101は、シール対象に対する面圧が小さい。その結果、サイド突起103の位置での面圧の増大に伴う変形からセパレータ51及び膜電極接合体31を守ることができ、そのシール面の変形を防止することができる。
【0032】
本実施の形態では、サイド突起103を左右互い違いに配列しているため、ガスケット本体102に回転モーメントが作用する。この回転モーメントは、回転による倒れや蛇行をガスケット本体102に生じさせる原因になる。そこで本実施の形態では、ガスケット本体102に作用する回転モーメントを抑制する工夫を凝らしている。
【0033】
回転モーメントを抑制するための工夫の一つは、ガスケット本体102の長さ方向に直交する方向、つまりシールラインに対して垂直に突出するというサイド突起103の形状である。これによってガスケット本体102に作用する回転モーメントが抑制される。
【0034】
回転モーメントを抑制する別の工夫は、互い違いに隣接するサイド突起103の間の間隔の設定である。例えばサイド突起103の間の間隔を極力狭めるなどの工夫で、ガスケット本体102に作用する回転モーメントが抑制される。
【0035】
回転モーメントを抑制するさらに別の工夫は、サイド突起103の幅の設定である。例えば装着溝52の側壁52aに対して必要最小限の面圧を確保し得る範囲でサイド突起103の幅を細くすることで、ガスケット101に生ずる回転モーメントが抑制される。
【0036】
以上のようにガスケット本体102に作用する回転モーメントが抑制される結果、ガスケット本体102の倒れや蛇行を防止することができる。
【0037】
本実施の形態のサイド突起103は、半円形の水平断面形状という単純な形状であり、ガスケット本体102と同じ全高で、それぞれが同一の形状を有しており、ガスケット本体102の長さ方向に直交する方向に突出している。このためサイド突起103の製造の容易化を図ることができる。
【0038】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態を
図7(A)(B)(C)に基づいて説明する。
【0039】
図7(A)に示すように、本実施の形態のサイド突起103は、ガスケット本体102の長さ方向に対して傾斜する方向に突出するリップ形態の水平断面形状を有している。個々のサイド突起103は、ガスケット本体102と同じ全高で、それぞれが同一の形状及び傾斜角度を有している。このような形状のサイド突起103は、ガスケット本体102の長さ方向に向けて、ガスケット本体102の倒れや蛇行が生じない間隔で左右互い違いに配列されている。
【0040】
図7(B)に示すように、
図7(A)中のA-A線の位置では、ガスケット本体102の左半分には左側のサイド突起103の先端部のみが、右半分には右側のサイド突起103の根元のみそれぞれ位置づけられる。したがって装着溝52に直交する方向のガスケット101の充填率は、100パーセント未満になる。
【0041】
図7(C)は、発電セル11を構成するように装着されて押し潰されたガスケット101の
図7(B)に示す領域の形状を面圧(白抜き矢印)とともに模式的に示している。
図7(C)より明らかなように、装着溝52に直交する方向の充填率を100パーセントにしている
図5(B)に示すガスケット101と比較して、本実施の形態のガスケット101は、シール対象に対する面圧が小さい。その結果、サイド突起103の位置での面圧の増大に伴う変形からセパレータ51及び膜電極接合体31を守ることができ、そのシール面の変形を防止することができる。
【0042】
本実施の形態では、サイド突起103を左右互い違いに配列しているため、ガスケット本体102に回転モーメントが作用する。この回転モーメントは、回転による倒れや蛇行をガスケット本体102に生じさせる原因になる。そこで本実施の形態では、ガスケット本体102に作用する回転モーメントを抑制する工夫を凝らしている。
【0043】
回転モーメントを抑制するための工夫の一つは、互い違いに隣接するサイド突起103の間の間隔の設定である。例えばサイド突起103の間の間隔を極力狭めるなどの工夫で、ガスケット本体102に作用する回転モーメントが抑制される。
【0044】
回転モーメントを抑制する別の工夫は、サイド突起103の幅の設定である。例えば装着溝52の側壁52aに対して必要最小限の面圧を確保し得る範囲でサイド突起103の幅を細くすることで、ガスケット101に生ずる回転モーメントが抑制される。
【0045】
以上のようにガスケット本体102に作用する回転モーメントが抑制される結果、ガスケット本体102の倒れや蛇行を防止することができる。
【0046】
本実施の形態のサイド突起103は、ガスケット本体102の長さ方向に対して傾斜する方向に突出するリップ形態の水平断面形状という単純な形状であり、ガスケット本体102と同じ全高で、それぞれが同一の形状を有している。このためサイド突起103の製造の容易化を図ることができる。
【0047】
本実施の形態のサイド突起103は、ガスケット本体102の長さ方向に対して傾斜する方向に突出するリップ形態を有している。このためサイド突起103を撓ませやすく、装着溝52へのガスケット101の装着性を良好にすることができる。
【0048】
(第3の実施の形態)
第3の実施の形態を
図8(A)(B)(C)に基づいて説明する。
【0049】
図8(A)に示すように、本実施の形態のサイド突起103は、二等辺三角形の水平断面形状を有している。個々のサイド突起103は、ガスケット本体102と同じ全高で、それぞれが同一の形状を有しており、ガスケット本体102の長さ方向に直交する方向に突出している。このような形状のサイド突起103は、ガスケット本体102の長さ方向に向けて、ガスケット本体102の倒れや蛇行が生じない間隔で左右互い違いに配列されている。
【0050】
図8(B)に示すように、
図8(A)中のA-A線の位置では、ガスケット本体102の左半分にのみサイド突起103が位置づけられる。これに隣接するサイド突起103は、ガスケット本体102の右半分にのみ位置づけられる(図示せず)。したがって装着溝52に直交する方向のガスケット101の充填率は、100パーセント未満になる。
【0051】
図8(C)は、発電セル11を構成するように装着されて押し潰されたガスケット101の
図8(B)に示す領域の形状を面圧(白抜き矢印)とともに模式的に示している。
図8(C)より明らかなように、装着溝52に直交する方向の充填率を100パーセントにしている
図5(B)に示すガスケット101と比較して、本実施の形態のガスケット101は、シール対象に対する面圧が小さい。その結果、サイド突起103の位置での面圧の増大に伴う変形からセパレータ51及び膜電極接合体31を守ることができ、そのシール面の変形を防止することができる。
【0052】
本実施の形態では、サイド突起103を左右互い違いに配列しているため、ガスケット本体102に回転モーメントが作用する。この回転モーメントは、回転による倒れや蛇行をガスケット本体102に生じさせる原因になる。そこで本実施の形態では、ガスケット本体102に作用する回転モーメントを抑制する工夫を凝らしている。
【0053】
回転モーメントを抑制するための工夫の一つは、ガスケット本体102の長さ方向に直交する方向、つまりシールラインに対して垂直に突出するというサイド突起103の形状である。これによってガスケット本体102に作用する回転モーメントが抑制される。
【0054】
回転モーメントを抑制する別の工夫は、互い違いに隣接するサイド突起103の間の間隔の設定である。例えばサイド突起103の間の間隔を極力狭めるなどの工夫で、ガスケット本体102に作用する回転モーメントが抑制される。
【0055】
回転モーメントを抑制するさらに別の工夫は、サイド突起103の幅の設定である。例えば装着溝52の側壁52aに対して必要最小限の面圧を確保し得る範囲でサイド突起103の幅を細くすることで、ガスケット101に生ずる回転モーメントが抑制される。
【0056】
以上のようにガスケット本体102に作用する回転モーメントが抑制される結果、ガスケット本体102の倒れや蛇行を防止することができる。
【0057】
本実施の形態のサイド突起103は、二等辺三角形の水平断面形状という単純な形状であり、ガスケット本体102と同じ全高で、それぞれが同一の形状を有しており、ガスケット本体102の長さ方向に直交する方向に突出している。このためサイド突起103の製造の容易化を図ることができる。
【0058】
(第4の実施の形態)
第4の実施の形態を
図9(A)(B)(C)に基づいて説明する。
【0059】
図9(A)に示すように、本実施の形態のサイド突起103は、左側に矩形の水平断面形状を有し、右側に半円形の水平断面形状を有している。個々のサイド突起103は、ガスケット本体102と同じ全高を有しており、ガスケット本体102の長さ方向に直交する方向に突出している。このような形状のサイド突起103は、ガスケット本体102の長さ方向に向けて、ガスケット本体102の倒れや蛇行が生じない間隔で左右互い違いに配列されている。
【0060】
図9(B)に示すように、
図9(A)中のA-A線の位置では、ガスケット本体102の右半分にのみサイド突起103が位置づけられる。これに隣接するサイド突起103は、ガスケット本体102の左半分にのみ位置づけられる(図示せず)。したがって装着溝52に直交する方向のガスケット101の充填率は、100パーセント未満になる。
【0061】
図9(C)は、発電セル11を構成するように装着されて押し潰されたガスケット101の
図9(B)に示す領域の形状を面圧(白抜き矢印)とともに模式的に示している。
図9(C)より明らかなように、装着溝52に直交する方向の充填率を100パーセントにしている
図5(B)に示すガスケット101と比較して、本実施の形態のガスケット101は、シール対象に対する面圧が小さい。その結果、サイド突起103の位置での面圧の増大に伴う変形からセパレータ51及び膜電極接合体31を守ることができ、そのシール面の変形を防止することができる。
【0062】
本実施の形態では、サイド突起103を左右互い違いに配列しているため、ガスケット本体102に回転モーメントが作用する。この回転モーメントは、回転による倒れや蛇行をガスケット本体102に生じさせる原因になる。そこで本実施の形態では、ガスケット本体102に作用する回転モーメントを抑制する工夫を凝らしている。
【0063】
回転モーメントを抑制するための工夫の一つは、ガスケット本体102の長さ方向に直交する方向、つまりシールラインに対して垂直に突出するというサイド突起103の形状である。これによってガスケット本体102に作用する回転モーメントが抑制される。
【0064】
回転モーメントを抑制する別の工夫は、互い違いに隣接するサイド突起103の間の間隔の設定である。例えばサイド突起103の間の間隔を極力狭めるなどの工夫で、ガスケット本体102に作用する回転モーメントが抑制される。
【0065】
回転モーメントを抑制するさらに別の工夫は、サイド突起103の幅の設定である。例えば装着溝52の側壁52aに対して必要最小限の面圧を確保し得る範囲でサイド突起103の幅を細くすることで、ガスケット101に生ずる回転モーメントが抑制される。
【0066】
以上のようにガスケット本体102に作用する回転モーメントが抑制される結果、ガスケット本体102の倒れや蛇行を防止することができる。
【0067】
本実施の形態のサイド突起103は、
図9(A)中の左側が矩形の水平断面形状、右側が半円形の水平断面形状という単純な形状であり、ガスケット本体102と同じ全高で、それぞれが同一の形状を有しており、ガスケット本体102の長さ方向に直交する方向に突出している。このためサイド突起103の製造の容易化を図ることができる。
【0068】
(第5の実施の形態)
第5の実施の形態を
図10(A)(B)(C)に基づいて説明する。
【0069】
第5の実施の形態、及び後述する第6~第8の実施の形態のサイド突起103は、ガスケット本体102の長さ方向に直交する線上に配置されており、ガスケット本体102の高さ方向に貫通する貫通孔104を有している。サイド突起103は、装着溝52に直交する方向のガスケット101の充填率を100パーセント未満にしている。
【0070】
図10(A)に示すように、本実施の形態のサイド突起103は、楕円リング形の水平断面形状をもつ筒形形状を有している。このためサイド突起103の位置では、ガスケット本体102の連続性が断たれ、分断されたガスケット本体102がサイド突起103によって連結された形状を呈している。サイド突起103は、ガスケット本体102と同じ全高を有している。
【0071】
図10(B)に示すように、
図10(A)中のA-A線の位置では、貫通孔104を挟んでサイド突起103の両端部分のみが位置づけられる。したがって装着溝52に直交する方向のガスケット101の充填率は、100パーセント未満になる。
【0072】
図10(C)は、発電セル11を構成するように装着されて押し潰されたガスケット101の
図10(B)に示す領域の形状を面圧(白抜き矢印)とともに模式的に示している。
図10(C)より明らかなように、装着溝52に直交する方向の充填率を100パーセントにしている
図5(B)に示すガスケット101と比較して、本実施の形態のガスケット101は、シール対象に対する面圧が小さい。その結果、サイド突起103の位置での面圧の増大に伴う変形からセパレータ51及び膜電極接合体31を守ることができ、そのシール面の変形を防止することができる。
【0073】
本実施の形態のサイド突起103は、ガスケット本体102の長さ方向に直交する線上に対称形で配置されている。このため左右のバランスに優れ、ガスケット本体102の倒れや蛇行に対して強い規制力を発揮する。その結果サイド突起103の幅を狭めてシールラインを細くすることができる。シールラインが細くなればシール面に対する反力をより一層低減することができ、シール面の変形防止効果をより一層向上させることができる。
【0074】
本実施の形態のサイド突起103は、ガスケット本体102と同じ全高であり、その分サイド突起103の製造の容易化を図ることができる。
【0075】
(第6の実施の形態)
第6の実施の形態を
図11(A)(B)(C)に基づいて説明する。
【0076】
図11(A)に示すように、本実施の形態のサイド突起103は、左右対称である半円形の水平断面形状を有しており、ガスケット本体102の両側に左右対称に貫通孔104を設けている。貫通孔104も、サイド突起103に沿う半円形の水平断面形状を有している。サイド突起103は、ガスケット本体102と同じ全高を有している。
【0077】
図11(B)に示すように、
図11(A)中のA-A線の位置では、ガスケット本体102の両側に貫通孔104が位置づけられる。したがって装着溝52に直交する方向のガスケット101の充填率は、100パーセント未満になる。
【0078】
図11(C)は、発電セル11を構成するように装着されて押し潰されたガスケット101の
図11(B)に示す領域の形状を面圧(白抜き矢印)とともに模式的に示している。
図11(C)より明らかなように、装着溝52に直交する方向の充填率を100パーセントにしている
図5(B)に示すガスケット101と比較して、本実施の形態のガスケット101は、シール対象に対する面圧が小さい。その結果、サイド突起103の位置での面圧の増大に伴う変形からセパレータ51及び膜電極接合体31を守ることができ、そのシール面の変形を防止することができる。
【0079】
本実施の形態のサイド突起103は、ガスケット本体102の長さ方向に直交する線上に対称形で配置されている。このため左右のバランスに優れ、ガスケット本体102の倒れや蛇行に対して強い規制力を発揮する。その結果サイド突起103の幅を狭めてシールラインを細くすることができる。シールラインが細くなればシール面に対する反力をより一層低減することができ、シール面の変形防止効果をより一層向上させることができる。
【0080】
本実施の形態のサイド突起103は、ガスケット本体102と同じ全高であり、その分サイド突起103の製造の容易化を図ることができる。
【0081】
(第7の実施の形態)
第7の実施の形態を
図12(A)(B)(C)に基づいて説明する。
【0082】
図12(A)に示すように、本実施の形態のサイド突起103は、左右対称である二等辺三角形の水平断面形状を有しており、ガスケット本体102の両側に左右対称に貫通孔104を設けている。貫通孔104も、サイド突起103に沿う二等辺三角形の水平断面形状を有している。サイド突起103は、ガスケット本体102と同じ全高を有している。
【0083】
図12(B)に示すように、
図12(A)中のA-A線の位置では、ガスケット本体102の両側に貫通孔104が位置づけられる。したがって装着溝52に直交する方向のガスケット101の充填率は、100パーセント未満になる。
【0084】
図12(C)は、発電セル11を構成するように装着されて押し潰されたガスケット101の
図12(B)に示す領域の形状を面圧(白抜き矢印)とともに模式的に示している。
図12(C)より明らかなように、装着溝52に直交する方向の充填率を100パーセントにしている
図5(B)に示すガスケット101と比較して、本実施の形態のガスケット101は、シール対象に対する面圧が小さい。その結果、サイド突起103の位置での面圧の増大に伴う変形からセパレータ51及び膜電極接合体31を守ることができ、そのシール面の変形を防止することができる。
【0085】
本実施の形態のサイド突起103は、ガスケット本体102の長さ方向に直交する線上に対称形で配置されている。このため左右のバランスに優れ、ガスケット本体102の倒れや蛇行に対して強い規制力を発揮する。その結果サイド突起103の幅を狭めてシールラインを細くすることができる。シールラインが細くなればシール面に対する反力をより一層低減することができ、シール面の変形防止効果をより一層向上させることができる。
【0086】
本実施の形態のサイド突起103は、ガスケット本体102と同じ全高であり、その分サイド突起103の製造の容易化を図ることができる。
【0087】
(第8の実施の形態)
第8の実施の形態を
図13(A)(B)(C)に基づいて説明する。
【0088】
図13(A)に示すように、本実施の形態のサイド突起103は、左右対称である台形の水平断面形状を有しており、ガスケット本体102の両側に左右対称に貫通孔104を設けている。貫通孔104も、サイド突起103に沿う台形の水平断面形状を有している。サイド突起103は、ガスケット本体102と同じ全高を有している。
【0089】
図13(B)に示すように、
図13(A)中のA-A線の位置では、ガスケット本体102の両側に貫通孔104が位置づけられる。したがって装着溝52に直交する方向のガスケット101の充填率は、100パーセント未満になる。
【0090】
図13(C)は、発電セル11を構成するように装着されて押し潰されたガスケット101の
図13(B)に示す領域の形状を面圧(白抜き矢印)とともに模式的に示している。
図13(C)より明らかなように、装着溝52に直交する方向の充填率を100パーセントにしている
図5(B)に示すガスケット101と比較して、本実施の形態のガスケット101は、シール対象に対する面圧が小さい。その結果、サイド突起103の位置での面圧の増大に伴う変形からセパレータ51及び膜電極接合体31を守ることができ、そのシール面の変形を防止することができる。
【0091】
本実施の形態のサイド突起103は、ガスケット本体102の長さ方向に直交する線上に対称形で配置されている。このため左右のバランスに優れ、ガスケット本体102の倒れや蛇行に対して強い規制力を発揮する。その結果サイド突起103の幅を狭めてシールラインを細くすることができる。シールラインが細くなればシール面に対する反力をより一層低減することができ、シール面の変形防止効果をより一層向上させることができる。
【0092】
本実施の形態のサイド突起103は、ガスケット本体102と同じ全高であり、その分サイド突起103の製造の容易化を図ることができる。
【0093】
(変形例)
実施に際しては、各種の変更や変形が許容される。
【0094】
例えばガスケット本体102は、必ずしも矩形の断面形状を有するものに限る必要はなく、矩形の断面形状を含むものであってもよい。矩形の断面形状を含むガスケット本体102は、例えば先端面に山形のリップを有するものを含む。
【0095】
ガスケット101のシール対象も、必ずしも燃料電池セルの膜電極接合体31やセパレータ51などの部品である必要はなく、他のいかなるシール対象にも適用が可能である。
【0096】
上記実施の形態では、ガスケット本体102と同じ全高をもつサイド突起103を紹介したが、実施に際してはこれに限る必要はなく、ガスケット本体102よりも高さの低いサイド突起103にも適用可能である。
【0097】
その他あらゆる変形や変更が許容される。
【符号の説明】
【0098】
11 発電セル
31 膜電極接合体
32 電解質膜
33a アノード
33b カソード
34 ガス拡散層
35 マニフォールド
51 セパレータ
52 装着溝
52a 側壁
101 ガスケット
102 ガスケット本体
103 サイド突起
104 貫通孔