(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】製造用治具、製造用治具システム及び、製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 70/54 20060101AFI20241004BHJP
B29C 70/06 20060101ALI20241004BHJP
B29C 43/18 20060101ALI20241004BHJP
B29C 43/32 20060101ALI20241004BHJP
B29C 65/48 20060101ALI20241004BHJP
B29K 105/08 20060101ALN20241004BHJP
【FI】
B29C70/54
B29C70/06
B29C43/18
B29C43/32
B29C65/48
B29K105:08
(21)【出願番号】P 2020188160
(22)【出願日】2020-11-11
【審査請求日】2023-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西室 譲
(72)【発明者】
【氏名】松本 憲典
(72)【発明者】
【氏名】坂本 清明
(72)【発明者】
【氏名】村木 俊宣
(72)【発明者】
【氏名】太刀掛 真
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 清嘉
【審査官】岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/110509(WO,A1)
【文献】特開平04-135720(JP,A)
【文献】特許第4344397(JP,B1)
【文献】特開2019-005966(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 70/54
B29C 70/06
B29C 43/18
B29C 43/32
B29C 65/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合材料製の複数の接着対象物同士を接合するための製造用治具であって、
一方の表面に前記接着対象物との接触面が形成され、前記一方の表面から他方の表面である開放面までを貫通する開口が形成されて、前記接触面で前記接着対象物と接触することで複数の前記接着対象物を保持する
一対の対象物保持部材と、
前記対象物保持部材の前記開口に挿通される軸部材部と、
前記軸部材部に取り付けられて、前記対象物保持部材に保持された複数の前記接着対象物を加圧する加圧部材と、
前記接着対象物を加熱する加熱部と、
を有
し、
前記一対の対象物保持部材は、前記複数の接着対象物の内の一つの側面に、一方の前記対象物保持部材が接触し、その他の前記複数の接着対象物の内の一つの側面に、他方の前記対象物保持部材が接触し、その一対の前記対象物保持部材のそれぞれに前記加熱部を備える、
製造用治具。
【請求項2】
前記加熱部は、前記対象物保持部材の前記開放面に取り付けられる発熱体を備える、請求項1に記載の製造用治具。
【請求項3】
前記加熱部は、複数の前記発熱体を備える、請求項2に記載の製造用治具。
【請求項4】
前記発熱体は、電熱線であり、前記対象物保持部材の前記他方の表面である開放面に形成される溝部内に配置される、
請求項2又は請求項3に記載の製造用治具。
【請求項5】
前記軸部材部は、前記対象物保持部材の前記開口内から、前記対象物保持部材の前記開放面側に突出しており、前記加圧部材は、前記軸部材部の突出している部分に取り付けられるスプリングである、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の製造用治具。
【請求項6】
前記接着対象物は、繊維強化樹脂製であり、
前記接着対象物の接着に使用される接着剤は、熱硬化性樹脂である
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の製造用治具。
【請求項7】
前記接着対象物は、航空機構造に用いられる構造部材である
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の製造用治具。
【請求項8】
前記軸部材部は、前記接着対象物及び前記接着対象物の接着に使用される接着剤に貫通される
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の製造用治具。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の製造用治具と、
前記接着対象物の接合箇所の位置情報を取得する対象物情報取得部と、
前記対象物情報取得部が取得した位置情報に基づいて前記加熱部の制御を行う制御部と、
を備える製造用治具システム。
【請求項10】
前記制御部は、前記接着対象物の接合箇所の位置情報に基づいて、前記接着対象物の接合箇所の目標値に対する誤差を算出し、前記誤差が前記目標値に対して所定の範囲の値となった接合箇所に設けられた前記加熱部の加熱を停止する
請求項9に記載の製造用治具システム。
【請求項11】
一対の接着対象物の接合面に接着剤を塗布するステップと、
一対の接着対象物の接合面を重ね合わせるステップと、
一対の接着対象物の接合面の反対側の面に請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の製造用治具を取り付けるステップと、
前記製造用治具の加熱部を発熱させて前記一対の接着対象物を接合するステップと、
を含む、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、製造用治具、製造用治具システム及び、製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
航空機用の部材として、複合材料が用いられることがある。例えば特許文献1には、オートクレーブで複合材料の積層体を成形する旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、航空機の部材に限られず、複合材料同士を接合して部材を形成する場合がある。このような場合に、複合材料同士を高品質、高精度、高効率に接合することが求められている。本開示は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、複合材料同士を高品質、高精度、高効率に接合可能な製造用治具、製造用治具システム及び、製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決し、目的を達成する為に、本開示に係る製造用治具は、複合材料製の複数の接着対象物同士を接合するための製造用治具であって、一方の表面に前記接着対象物との接触面が形成され、前記一方の表面から他方の表面である開放面までを貫通する開口が形成されて、前記接触面で前記接着対象物と接触することで複数の前記接着対象物を保持する対象物保持部材と、前記対象物保持部材の前記開口に挿通される軸部材部と、前記軸部材部に取り付けられて、前記対象物保持部材に保持された複数の前記接着対象物を加圧する加圧部材と、前記接着対象物を加熱する加熱部と、を有する。
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成する為に、本開示に係る製造用治具システムは、前記製造用治具と、前記接着対象物の接合箇所の位置情報を取得する対象物情報取得部と、前記対象物情報取得部が取得した位置情報に基づいて前記加熱部の制御を行う制御部と、を備える。
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成する為に、本開示に係る製造方法は、一対の接着対象物の接合面に接着剤を塗布するステップと、一対の接着対象物の接合面を重ね合わせるステップと、一対の接着対象物の接合面の反対側の面に前記製造用治具を取り付けるステップと、前記製造用治具の加熱部を発熱させて前記一対の接着対象物を接合するステップと、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、複合材料同士を高品質、高精度、高効率に接合できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、航空機の主翼の構造を示す模式図である。
【
図2】
図2は、スパーとリブの接合箇所を示す模式図である。
【
図3】
図3は、本開示に係る製造用治具の使用例を説明する説明図である。
【
図4】
図4は、対象物保持部材が一対の場合の製造用治具の模式図である。
【
図5】
図5は、対象物保持部材が一つの場合の製造用治具の模式図である。
【
図6】
図6は、本開示に係る製造用治具の加熱部を示す模式図である。
【
図7】
図7は、本開示に係る製造用治具を用いた製造工程を説明する説明図である。
【
図8】
図8は、本開示に係る製造用治具システムの機能図である。
【
図9】
図9は、本開示に係る製造用治具システムを用いた製造工程を説明する説明図である。
【
図10】
図10は、本開示に係る製造用治具システムの接合箇所の近傍の位置情報に基づいた製造用治具の加熱部の制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本開示の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例により、この開示が限定されるものではない。
【0011】
図1は、航空機の主翼の構造を示す模式図である。
図1に示すように、主翼100は、スパー110と、リブ120と、スキン130と、ストリンガー(図示せず)と、を含む。本実施形態に係る製造用治具200は、スパー110と、リブ120とを接合することに用いることができるものである。ただし、製造用治具200は、複数の複合材料同士を接着剤で接合することに用いることができ、接合対象はスパー110やリブ120に限られず任意である。また、製造用治具200は、航空機用の部材である複数の複合材料同士を接着剤で接合することに用いることができるが、航空機用の部材に限られず、任意の用途の複合材料同士を接合するものであってよい。
【0012】
スパー110と、リブ120と、スキン130と、ストリンガーには、複合材が用いられる。複合材は、樹脂と強化繊維とを含む繊維強化複合材である。強化繊維としては、炭素繊維、ガラス繊維、金属繊維などを用いることができる。樹脂は、熱硬化性樹脂が好ましく、熱可塑性樹脂であっても良い。熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂などが挙げられる。熱可塑性樹脂としては、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)などが挙げられる。ただし、強化繊維が含浸される樹脂は、これに限定されず、その他の樹脂であってもよい。
【0013】
スパー110は、翼長方向に延在して設けられる桁であり、主翼の前縁及び後縁に設けられる。スパー110は、上側スキン132の前縁から下側スキン134の前縁との間にわたって設けられる前側スパー112と、上側スキン132の後縁から下側スキン134の後縁との間にわたって設けられる後側スパー114と、を備える。
【0014】
リブ120は、主翼100の翼幅方向に前縁から後縁にわたって設けられ、翼長方向に所定の間隔を空けて複数並べて設けられる。すなわち、上側スキン132と下側スキン134との間にわたって配置される構造部材である。言い換えると、前側スパー112と、後側スパー114と、に略直交する方向に延びる構造部材であって、主翼の断面形状に形成される板状の部材である。
【0015】
スキン130は、主翼100の外板であり、翼長方向に延在して形成されている。スキン130は、主翼100の鉛直方向の上側に設けられる上側スキン132と、鉛直方向の下側に設けられる下側スキン134と、を備える。スキン130は、上側スキン132と下側スキン134とにより主翼100の外形の一部を構成し、主翼100に揚力が生じるように空力特性を備えた形状に形成される。また、スキン130は、スパー110、ストリンガーとともに、主翼100に働く引っ張り荷重や、圧縮荷重の一部を受け持つ。
【0016】
スキン130の内面には、図示しないストリンガーが設けられている。ストリンガーは、T字状に形成されると共に、主翼100の翼長方向に延在して、スキン130の内面に沿って設けられることで、スキン130を補強する補強部材である。
【0017】
図2は、スパーとリブの接合箇所を示す模式図である。
図2に示すように、スパー内面117にリブ120の端部に形成されたリブ接合部140が接着剤を介して接合される。
図1に示すように、スパー内面117には、所定の間隔を空けて複数のリブ120が接合される。
【0018】
(製造用治具)
図3は、本開示に係る製造用治具の使用例を説明する説明図である。
図3に示すように、製造用治具200は、一方の接着対象物としてのスパー110のスパー外面116と、他方の接着対象物としてのリブ120のリブ接合部内面142に取り付けられて、両側からスパー110とリブ120を保持する。なお、スパー110と、リブ120とには開口として、それぞれスパー開口118、リブ接合部開口144が形成される。スパー開口118と、リブ接合部開口144とは、製造用治具200の対象物保持部材210に形成される開口部216と同じ間隔を空けて、同じ大きさ、同じ断面形状に形成される。
【0019】
図4は、対象物保持部材が一対の場合の製造用治具の模式図である。
図4は、製造用治具200がスパー110とリブ120に取り付けられた状態を示している。なお、
図4は
図3に示した矢視A-Aから、スパー110とリブ120の接合箇所を見た図である。
図4に示すように、本開示に係る製造用治具200は、一対の対象物保持部材210と、加熱部220と、軸部材部230と、加圧部材234と、を備える。なお、一対の接着対象物の保持の方法は
図4に示すように、一対の対象物保持部材210によって、一対の接着対象物の内の一つの側面に、対象物保持部材210を接触させ、一対の接着対象物の内のもう一つの側面に、もう一つの対象物保持部材210を接触させる方法を用いてもよいし、一つの対象物保持部材210を一対の接着対象物の内の一つの側面に接触させて、他方の接着対象物から突出した後述する軸部材232に留め具236などを取り付けて保持してもよい。
図5に一つの対象物保持部材210によって、一対の接着対象物を保持した状態を示す図を示す。
図5の説明は後述する。
【0020】
対象物保持部材210は、接着対象物に接触して接着対象物を保持する部材である。対象物保持部材210は、一方側の表面である接触面212で、接着対象物に接触して接着対象物を保持する。なお、
図4の例では、一対の平板状の対象物保持部材210で接着対象物を挟持するが、対象物を挟持する一対の対象物保持部材は、平板状の部材に限定されるものではなく、接着対象物を保持する部材であればよい。例えば、一対の対象物保持部材の内の一方が後述する留め具236と座面部材238との少なくとも一方であってもよい。ここでは、一対の対象物保持部材の両方が
図4に示す平板形状の対象物保持部材210である場合について説明する。対象物保持部材210に形成される開放面214は、接触面212の反対側の表面である。なお、接触面212と、開放面214とは、互いに平行に形成される。開口部216は、対象物保持部材210の一方の表面である接触面212から、他方の表面である開放面214までを、接触面212と、開放面214と、に対して垂直に貫通する開口である。本実施形態では、開口部216は円形の形状に形成され等間隔に配置される。本実施形態では、開口部216は、3つ形成されているが、3つに限定されるものではなく、その他の任意の数であって良い。また、開口部216の断面形状は、円形に限定されるものではなく、その他の任意の形状であって良い。さらに、開口部216は、接触面212と、開放面214と、に対して垂直に形成されることに限定されるものではなく、その他の任意の形状に形成されて良い。
【0021】
図4に示すように、一対の対象物保持部材210によって接着対象物であるスパー110とリブ120とが保持される。さらに詳細に説明すると、一対の対象物保持部材210の内の一方の対象物保持部材210の接触面212がスパー外面116に接触し、他方の対象物保持部材210の接触面212が、リブ120のリブ接合部内面142に接触する。すなわち、スパー外面116と、リブ接合部内面142の両側から対象物保持部材210の接触面212が接触することで、接着対象物を保持する。
【0022】
(加熱部)
加熱部220は、対象物保持部材210に取り付けられ、対象物保持部材210の接触面212に接触する接着対象物を加熱する。加熱部220には、発熱体が備えられ、発熱体としては、例えば、電熱線、セラミックヒーターを用いることができる。電熱線は、電圧を印加すると発熱する抵抗体である。電熱線としては、ニッケル(Ni)とクロム(Cr)を主成分とする電気抵抗が大きいニクロム線を用いることができる。セラミックヒーターは、発熱体部をベースとなるアルミナ、ジルコニア、コージェライト、ムライト、窒化ケイ素などのセラミックに内蔵し、同時焼結することで一体化した構造である。内蔵された発熱体部に電圧をかけることで、特殊加工されたセラミックが発熱する仕組みである。発熱体部には、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、チタン(Ti)、レニウム(Re)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)等の高融点金属を用いることができる。本実施形態では、加熱部220には電熱線を用いる。本実施形態の加熱部220の構造については、後述する
図6の説明の箇所において説明する。なお、本実施形態では、加熱部220は、対象物保持部材210に取り付けられるが、取付位置は任意であってよい。
【0023】
(軸部材部)
軸部材部230は、軸部材232と、加圧部材234と、留め具236と、座面部材238と、を備える。軸部材232は、軸形状の部材であって、対象物保持部材210、スパー110、リブ120に形成される開口に挿通されて、接着対象物を保持する部材である。軸部材232は、一方の端部が対象物保持部材210の開放面214から突出し、他方の端部が対象物保持部材210の開放面214から突出する。本実施形態では、軸部材232にボルトを用いるが、軸形状の部材であれば、これに限定されるものではない。より詳しくは、軸部材232は、対象物保持部材210に形成された開口部216に挿通されて、接着対象物を保持する。軸部材部230が備える軸部材232は、対象物保持部材210に形成された開口である開口部216と、スパー110に形成された開口であるスパー開口118と、リブ接合部140に形成された開口であるリブ接合部開口144と、が重なった部分に挿通される。すなわち、軸部材部230が備える軸部材232が、スパー110の側に設けられる対象物保持部材210の開口部216から挿通された場合、スパー110の側に設けられる対象物保持部材210に形成される開口部216、スパー110に形成されるスパー開口118、リブ接合部140に形成されるリブ接合部開口144、リブ120の側に設けられる対象物保持部材210の開口部216、の順番にそれぞれの開口に挿通される。
【0024】
留め具236は、軸部材232に取り付けられて、接着対象物を両側から挟み対象物保持部材210の軸方向の移動を制限する部材である。留め具236は、軸部材232の軸方向において、軸部材232に対して位置が固定される。留め具236は、軸部材232の一方の端部に設けられる第1留め具2361と、他方の端部に設けられる第2留め具2362と、がある。
【0025】
本実施形態では、第1留め具2361は、座面部材238を介して一方の対象物保持部材210の開放面214に接触して、一方の対象物保持部材210の第1留め具2361の方向への移動を制限する。第2留め具2362は、他方の対象物保持部材210の開放面214の側に配置される。なお、第1留め具2361と、対象物保持部材210との間に設けられる部材は、座面部材238に限定されるものではなく、その他の部材が介在してもよい。また、第2留め具2362と、対象物保持部材210との間に部材が介在してもよい。本実施形態では、留め具236には、ナットを用いるが、これに限定されるものではない。
【0026】
座面部材238は、後述する加圧部材234により印加される加圧力を受け止めて、対象物保持部材210の損傷を防ぐ部材である。座面部材238は、軸部材232の軸方向において、軸部材232に対して位置が固定されず、移動可能である。座面部材238は、軸部材232の一方の端部に設けられて、一方の対象物保持部材210の開放面214に接触する第1座面部材2381と、軸部材232の他方の端部に設けられて、他方の対象物保持部材210の開放面214に接触する第2座面部材2382とがある。本実施形態では、座面部材238には、ワッシャを用いるが、これに限定されるものではない。
【0027】
加圧部材234は、軸部材232の一方の端部側に設けられて、対象物保持部材210を加圧する部材である。加圧部材234としては、例えば、スプリング、油圧アクチュエータ、電動アクチュエータを用いることができる。本実施形態では、加圧部材234は、スプリングである。
【0028】
本実施形態では、第1留め具2361が、ボルトである軸部材232の頭部(ボルトヘッド)であり、第2留め具2362が、ナットである。加圧部材234としてのスプリングは、軸部材232としてのボルトの頭部とは反対側の軸部分に設けられる第2留め具2362としてのナットと、第2座面部材2382としてのワッシャの間に設けられるが、加圧部材234が設けられる箇所はこれに限定されるものではない。本実施形態では、対象物保持部材210の開放面214に接触した第2座面部材2382としてのワッシャと、第2留め具2362としてのナットとによって、加圧部材234としてのスプリングを両側から保持する。本実施形態では、加圧部材234としてのスプリングは、軸部材232としてのボルトのボルト頭部とは反対側の軸部分に取り付けられて、第2留め具2362としてのナットと、スパー110の側に設けられる対象物保持部材210の開放面214及び第2座面部材2382としてのワッシャに挟まれることによって、弾性力が発生し、第2座面部材2382としてのワッシャを介して、スパー110の側に設けられる対象物保持部材210を加圧し、最終的に接着層を加圧する。
【0029】
本実施形態では、軸部材232としてのボルトのボルト頭部側の軸部分に、第1座面部材2381としてのワッシャを備えた状態で、リブ120の側に設けられる対象物保持部材210の開口部216から挿通して、スパー110の側に設けられる対象物保持部材210から突出したボルトのボルト頭部と反対側の軸部分に、第2座面部材2382としてのワッシャと、加圧部材234としてのスプリングと、第2留め具2362としてのナットをこの順番に取り付けて、ナットを締めることで接着対象物を保持する。なお、本実施形態では接着対象物及び接着剤に予め開口が形成されており、軸部材部はその開口に挿通されるが、接着対象物及び接着剤には予め開口が形成されていなくてもよい。その場合、軸部材部を接着対象物に挿通していくことで、開口が形成されて、結果として軸部材部が開口に挿通される。
【0030】
(接着対象物)
図4に示した一対の接着対象物は、スパー110とリブ120であるが、本発明が適用される接着対象物は、スパー110とリブ120に限定されるものではなく、例えば、その他の繊維強化樹脂製の部材であってもよい。また、接着対象物は、航空機構造に用いられる構造部材であってもよい。接着対象物となる繊維強化樹脂製の部材に用いられる強化繊維としては、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、などが挙げられるがこれに限定されるものではない。
【0031】
図5は、対象物保持部材が一つの場合の製造用治具の模式図である。
図5に示すように、対象物保持部材210が一つの場合には、一対の接着対象物の内の一つの側面に、一つの対象物保持部材210の接触面212が接触して、当該の対象物保持部材210の開放面214の側から開口部216に挿通された軸部材232が、他方の接着対象物から突出した部分に、第1留め具2361と、第1座面部材2381が取り付けられて、一対の接着対象物を保持する。
【0032】
(加熱部の詳細)
図6は、加熱部を示す模式図である。なお、
図6は
図4に示す矢視B-Bからリブ120の側に設けられる対象物保持部材210の開放面214を見た図である。
図6に示すように、対象物保持部材210の開放面214には、溝部224が形成されている。加熱部220は、溝部224の内部に配置される発熱体である。本実施形態では、溝部224は、対象物保持部材210の開放面214に形成される開口部216を取り囲むように形成される。ただし、溝部224の形状はこれに限定されるものではなく、その他の任意の形状に形成されて良い。
【0033】
本実施形態では、対象物保持部材210の開放面214に設けられる3つの開口部216を取り囲むように1つの連続した溝部224が形成されるが、溝部224の数は1つに限定されるものではなく、その他の任意の数であっても良い。例えば、対象物保持部材210の開放面214に形成される3つの開口部216のそれぞれを取り囲むように溝部224が形成され、結果として対象物保持部材210の開放面214に3つの連続した溝部224が形成されても良い。
【0034】
溝部224内には、加熱部220として前述の発熱体が配置される。対象物保持部材210の開放面214の溝部224が、1つの連続した溝部224である場合は、1つの発熱体が溝部224に配置される。3つの連続した溝部224である場合は、3つの発熱体が1つずつ溝部224内に配置される。溝部224内からはみ出た発熱体の端部には、端子部が形成され交流電源に接続される。交流電源は、後述する制御部410に接続されて、制御部410によって、交流電源の電圧、および、起動・停止が制御される。
【0035】
(製造用治具を用いた製造工程)
図7は、本開示に係る製造用治具を用いた製造工程を説明する説明図である。
図7を用いて、本開示に係る製造用治具を用いた製造工程を説明する。リブ120の端部に形成されるリブ接合部140に接着剤300を塗布する(ステップS100)。ここで、接着対象物の接合に用いる接着剤300は、熱硬化性樹脂、又は、熱可塑性樹脂の接着剤を用いることができる。リブ120の端部に形成された接着剤が塗布されたリブ接合部140を、スパー内面117に接触させた後に、スパー外面116と、リブ120のリブ接合部内面142に対象物保持部材210の接触面212を接触させて、それぞれに形成される開口を重ね合わせる。その後、軸部材232としてのボルトの第1留め具2361としてのボルト頭部が備えられた一方の端部側に、第1座面部材2381としてのワッシャを備えた状態で、対象物保持部材210の開口部216から挿通して、反対側の対象物保持部材210から突出した軸部材232としてのボルトの軸部分に、第2座面部材2382としてのワッシャと、加圧部材234としてのスプリングと、第2留め具2362としてのナットとを、この順番に取り付けて、ナットを締めることで、製造用治具200を取り付ける(ステップS110)。製造用治具200の加熱部220を発熱させて、接着剤300を所定時間加熱し接着剤300を硬化させる(ステップS120)。
【0036】
なお、加熱部220で発熱した熱は、対象物保持部材210を介して、スパー110とリブ120に熱伝導して、スパー110とリブ120に塗布された接着剤300に熱伝導する。また、スパー110とリブ120とを対象物保持部材210で両側から挟み込み、軸部材部230に備えられたスプリングによってスパー110とリブ120とを両側から加圧することによって、接着剤300が加圧された状態で加熱されるため、接着剤300の内部の空孔を押し潰すことが可能となり、接着剤300が塗布された部分の強度を向上させることができる。
【0037】
所定の時間の加熱(例えば、接着剤300の硬化時間以上の加熱)が完了したら、加熱部220の発熱を停止して製造用治具200をスパー110と、リブ120と、から取り外す(ステップS130)。このように、本開示に係る製造用治具を用いることによって、複合材料同士を高品質、高精度、高効率に接合することが可能となる。なお、これらの工程は、クリーンルーム内で行われることが好ましい。
【0038】
従来、接着対象物同士を接合する場合には、対象物相互の位置の固定と接着面への不純物混入防止のため、クリーンルーム内で、接着対象物同士の接合箇所をフィルムで覆って真空引きするバギング工程を行った上で、クリーンルームから搬出しオートクレーブ装置に収納して、加圧及び加熱して、接合を行っていた。しかし、例えば接着対象物の形状が、スパー110とリブ120などのように複雑である場合などにおいて、接合箇所をフィルムで覆うことが難しく、接合工程が煩雑となるおそれがある。それに対し、本実施形態に係る製造用治具200を用いると、接合箇所を加熱及び加圧して接着剤300を遮蔽が不要になる程度まで硬化させることができるため、接着対象物の接着剤300が塗布された箇所を真空引きフィルムで覆う遮蔽工程が不要となる。そのため、生産効率を向上させることができる。また、仕様によっては、製造用治具200によって接着剤300を完全に硬化させることも可能なため、その後のオートクレーブでの硬化工程を省略できる場合もある。接合工程をクリーンルーム内で完結させることで煩雑なバギングや、オートクレーブへの移動作業を省略することが可能となる。また加圧と加熱を局所的に調整することも可能であり接合工程をより高精度に制御することが可能となる。なお、遮蔽が不要になる程度とは界面において化学的に結合された状態を意味する。また、オートクレーブで硬化させる場合であっても治具によって遮蔽が不要な程度まで硬化させることで、組付け具合を微調整でき、構造部材の位置ずれ等を生じることなく完全に硬化させることが可能になる。また、製造用治具200においては、対象物保持部材210の開放面214に溝部224を設けた上で、加熱部220を溝部224内に配置するため、接着剤300の塗布箇所に均等に加熱部220から熱が接着剤300に伝わりやすくなる。
【0039】
(製造用治具システム)
以上説明した製造用治具200は、製造用治具システム400に適用可能である。
図8は、本開示に係る製造用治具システムの機能図である。
図8に示すように、本開示に係る製造用治具システム400は、製造用治具200と、対象物情報取得部420と、制御部410とを備える。
【0040】
製造用治具200は、前述の通り、接着対象物の接合箇所を両側から把持して、接着剤を加熱することによって接着剤を硬化させる治具である。製造用治具200の詳細は前述の通りであるため詳細な説明は省略する。
【0041】
対象物情報取得部420は、接着対象物の接合箇所の近傍の位置情報を取得する。接着対象物の接合箇所とは、接着剤が塗布されている箇所を指す。対象物情報取得部420は、接着対象物の接合箇所の近傍に設けられて、接合箇所の近傍の位置情報を取得しても良いし、接着対象物から離れた場所に設けられて遠方から接着対象物の接合箇所の近傍の位置情報を取得してもよい。なお、ここで接着対象物の接合箇所の近傍の位置情報とは、本実施形態では、スパー110の位置情報であって、スパー内面117の内、リブ120のリブ接合部140が接触する箇所の近傍(例えば、スパー内面117の内、リブ接合部140が接触する箇所から所定距離範囲内の箇所)のスパー内面117に垂直な方向に沿った位置情報を意味する。以降の説明において「接着対象物の接合箇所の近傍の位置情報」という言葉を用いる場合、前述のようにスパー内面117の内、リブ120のリブ接合部140が接触する箇所の近傍のスパー内面117に垂直な方向に沿った位置情報という意味で用いる。位置情報を取得する対象物情報取得部420としては、レーザー変位計、時間計測式レーザーセンサを用いることができる。
【0042】
接合箇所が複数ある場合、対象物情報取得部420は、接合箇所毎に設けられて、接合箇所毎の位置情報を取得する。ただし、対象物情報取得部420は、接合箇所毎の位置情報を取得するものであれば、接合箇所毎に設けられることに限られない。
【0043】
レーザー変位計は、投光素子(例えば、半導体レーザー)から照射されたレーザー光を測定対象物に投射し、測定対象物から反射した反射光を受光素子(例えば、リニアイメージセンサ、位置検出素子(Position Sensitive Device)など)で受光し、測定対象物の変位に起因する反射光の変位を測定することで、測定対象物の変位を検出する。
【0044】
時間計測式レーザーセンサは、投光素子が発光したレーザー光が測定対象物に当たって受光素子に戻ってくるまでの時間を計測することで、測定対象物までの距離を計測する。本実施形態では、対象物情報取得部420に時間計測式レーザーセンサを用いる。
【0045】
制御部410は、対象物情報取得部420が取得した接着対象物の接合箇所の近傍の位置情報を解析し、解析結果に基づいて製造用治具200の加熱部220を制御する。接着対象物の接合箇所の近傍の位置情報の解析に基づく製造用治具200の加熱部220の制御については後述する。制御部410は、CPU412(Central Processing Unit)と、記憶部414を備える。制御部410は、記憶部414からプログラムを読み出して、CPU412で演算処理を実行することで、制御部410の機能を実行する。
【0046】
CPU412は、演算処理装置であって、プログラムと呼ばれる命令列を順番に読み込んで解釈・実行することで情報処理を行う。
【0047】
記憶部414は、制御部410の演算内容やプログラムなどの各種情報の記憶装置であり、例えば、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)のような主記憶装置と、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)などの外部記憶装置とのうち、少なくとも1つ含む。
【0048】
(製造治具システムを用いた製造工程)
図9は、本開示に係る製造用治具システムを用いた製造工程を説明する説明図である。
図9を用いて、本開示に係る製造用治具システム400を用いた製造工程を説明する。リブ120の端部に形成されたリブ接合部140に接着剤300を塗布し、リブ接合部140をスパー内面117に接触させ、スパー外面116と、リブ120のリブ接合部内面142に製造用治具200を取り付ける(ステップS200)。製造用治具200の加熱部220の発熱を開始する(ステップS210)。対象物情報取得部420を用いて接着対象物の複数の接合箇所の近傍の位置情報を取得し、それぞれの接着対象物の接合箇所の位置が、記憶部414に記憶された目標値に対して所定の範囲に含まれるか(例えば、接着対象物の接合箇所の近傍の位置が目標値に対して所定の範囲に含まれるか)判定する。そして、接着対象物の複数の接合箇所の近傍の位置の内、接合箇所の近傍の位置が目標値に対して所定の範囲に含まれる接合箇所に配置された製造用治具200の加熱部220の発熱を停止する(ステップS220)。接着対象物の接合箇所の近傍の位置が目標値に対して所定の範囲に含まれない接合箇所に配置された製造用治具200の加熱部220の発熱を継続する。当該接着対象物の接合箇所の近傍の位置が目標値に対して所定の範囲に含まれる位置に到達したら、当該接着対象物の接合箇所に配置される製造用治具200の加熱部220の発熱を停止し、製造用治具200をスパー110とリブ120から取り外す(ステップS230)。
【0049】
このように、本開示に係る製造用治具システム400によれば、部品の製造誤差や製造用治具200の加熱部220から接着剤300への入熱量のばらつきに起因する接着対象物の接合箇所の組付け誤差を小さくすることができる。
【0050】
(位置情報に基づく製造用治具の加熱部の制御フロー)
図10は、本開示に係る製造用治具システムの接合箇所の近傍の位置情報に基づいた製造用治具の加熱部の制御を示すフローチャートである。
図10を用いて、本開示に係る製造用治具システム400の位置情報に基づいた加熱部220の制御フローを説明する。製造用治具200の加熱部220の加熱が開始されたら、対象物情報取得部420が接着対象物の接合箇所ごとに接着対象物の接合箇所の近傍の位置情報を取得する(ステップS300)。そして、記憶部414に記憶された接着対象物の接合箇所ごとの位置の目標値と、接着対象物の接合箇所ごとの位置情報から、接着対象物の接合箇所ごとに目標値に対する誤差を算出する(ステップS310)。接着対象物の接合箇所ごとに誤差が算出されたら、接着対象物の接合箇所ごとの誤差が所定の範囲に含まれる接合箇所があるか判定する(ステップS320)。誤差が所定の範囲に含まれる接合箇所がある場合(ステップS320:YES)、誤差が所定の範囲に含まれる接着対象物の接合箇所に取り付けられた製造用治具200の加熱部220の発熱を停止する(ステップS330)。一方、誤差が所定の範囲に含まれない接着対象物の接合箇所に取り付けられた製造用治具200の加熱部220については、発熱を継続する(ステップS340)。また、全ての接合箇所の誤差が所定の範囲に含まれるか判定し(ステップS350)、全ての接合箇所の誤差が所定の範囲に含まれる場合(ステップS350:YES)、制御フローは終了する。誤差が所定の範囲に含まれない接合箇所がある場合(ステップS350:NO)、ステップS300に戻り、接着対象物の接合箇所ごとに接合箇所の近傍の位置情報を取得して、全ての接合箇所の近傍の位置の誤差が所定の範囲に含まれるまで、ステップS300からステップS350を繰り返す。
【0051】
接着対象物の接合箇所の位置の誤差が所定の範囲に含まる接合箇所がない場合(ステップS320:NO)、接着対象物の接合箇所に取り付けられた全ての製造用治具200の加熱部220の発熱を継続する(ステップS360)。ステップS300に戻り、接着対象物の接合箇所ごとに接合箇所の近傍の位置情報を取得して、全ての接合箇所の近傍の位置の誤差が所定の範囲に含まれるまで、ステップS300からステップS320、ステップS360、または、ステップS300からステップS350を繰り返す。
【0052】
このように、本開示に係る製造用治具システム400によれば、部品の製造誤差や製造用治具200の加熱部220から接着剤300への入熱量のばらつきに起因する接着対象物の接合箇所の組付け誤差を小さくすることができる。従来のオートクレーブによる均一な加熱に比して、局所的に加熱を調整することができるため、より部品の位置精度の良い接着構造品を製造することができる。
【0053】
(製造用治具、製造用治具システム、製造方法の構成と効果)
本開示に係る製造用治具200は、複合材料製の複数の接着対象物同士を接合するための製造用治具200であって、一方の表面に接着対象物との接触面212が形成され、一方の表面から他方の表面である開放面214までを貫通する開口が形成されて、接触面212で接着対象物と接触することで複数の接着対象物を保持する対象物保持部材210と、対象物保持部材210の開口に挿通される軸部材部230と、軸部材部230に取り付けられて、対象物保持部材210に保持された複数の接着対象物を加圧する加圧部材234と、接着対象物を加熱する加熱部220と、を有する。
【0054】
この構成によれば、複合材料同士を高品質、高精度、高効率に接合することが可能となる。
【0055】
加熱部220は、対象物保持部材210の他方の表面である開放面214に取り付けられる発熱体を備える。
【0056】
この構成によれば、複合材料同士を高品質、高精度、高効率に接合することが可能となる。
【0057】
加熱部220は、対象物保持部材210の他方の表面である開放面214に取り付けられる複数の発熱体を備える。
【0058】
この構成によれば、複合材料同士を高品質、高精度、高効率に接合することが可能となる。
【0059】
発熱体は、電熱線であり、対象物保持部材210の他方の表面である開放面214に形成される溝部224内に配置される。
【0060】
この構成によれば、複合材料同士を高品質、高精度、高効率に接合することが可能となる。
【0061】
軸部材部230は、対象物保持部材210の開口内から、対象物保持部材210の他方の表面である開放面214側に突出しており、加圧部材234は、軸部材部230の突出している部分に取り付けられるスプリングである。
【0062】
この構成によれば、複合材料同士を高品質、高精度、高効率に接合することが可能となる。
【0063】
接着対象物は、繊維強化樹脂製であり、接着対象物の接着に使用される接着剤300は、熱硬化性樹脂である。
【0064】
この構成によれば、複合材料同士を高品質、高精度、高効率に接合することが可能となる。
【0065】
接着対象物は、航空機構造に用いられる構造部材である。
【0066】
この構成によれば、複合材料同士を高品質、高精度、高効率に接合することが可能となる。
【0067】
軸部材部は、接着対象物及び接着対象物の接着に使用される接着剤に貫通される。
【0068】
この構成によれば、複合材料同士を高品質、高精度、高効率に接合することが可能となる。
【0069】
本開示に係る製造用治具システム400は、製造用治具200と、接着対象物の接合箇所の位置情報を取得する対象物情報取得部420と、対象物情報取得部420が取得した位置情報に基づいて加熱部220の制御を行う制御部410と、を備える。
【0070】
この構成によれば、複合材料同士を高品質、高精度、高効率に接合することが可能となる。
【0071】
制御部410は、接着対象物の接合箇所の位置情報に基づいて、接着対象物の接合箇所の目標値に対する誤差を算出し、誤差が目標値に対して所定の範囲の値となった接合箇所に設けられた加熱部220の加熱を停止する。
【0072】
この構成によれば、部品の製造誤差や製造用治具の加熱部から接着剤への入熱量のばらつきに起因する接合部の組付け誤差を小さくすることができる。
【0073】
本開示に係る製造方法は、一対の接着対象物の接合面に接着剤300を塗布するステップと、一対の接着対象物の接合面を重ね合わせるステップと、一対の接着対象物の接合面の反対側の面に製造用治具200を取り付けるステップと、製造用治具200の加熱部220を発熱させて前記一対の接着対象物を接合するステップと、を含む。
【0074】
この構成によれば、複合材料同士を高品質、高精度、高効率に接合することが可能となる。
【0075】
また、本開示に係る製造用治具200は、互いに構造的に独立する一対の対象物保持部材と、一対の対象物保持部材と、一対の対象物保持部材の間に挟まれる対象物とを貫通して配置される軸部材232と、一方の対象物保持部材に取り付けられて、軸部材232を介して、他方の対象物保持部材に、一方の対象物保持部材側への力を印加する加圧部材234と、を有する。ここでの一対の対象物保持部材は、本実施形態で説明した一対の対象物保持部材210でもよい。また、一対の対象物保持部材のうちの一方が、本実施形態で説明した対象物保持部材210で、一対の対象物保持部材のうちの他方が、留め具236と座面部材238との少なくとも一方であってもよい。本実施形態に係る製造用治具200によると、周囲と干渉する対象物の局所的な加圧を、容易に、コンパクトな装置で実現することができる。なお、製造用治具200は、上述で説明したように複数の対象物を接着することに用いられることに限られず、1つまたは複数の対象物を加圧するために用いてよい。
【符号の説明】
【0076】
110 スパー
120 リブ
200 製造用治具
210 対象物保持部材
212 接触面
214 開放面
216 開口部
220 加熱部
230 軸部材部
232 軸部材
234 加圧部材
236 留め具
238 座面部材
300 接着剤