(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】部品装着方法および部品装着装置
(51)【国際特許分類】
H01L 23/29 20060101AFI20241004BHJP
H01L 23/31 20060101ALI20241004BHJP
H01L 21/56 20060101ALI20241004BHJP
H01L 21/60 20060101ALI20241004BHJP
H05K 13/04 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
H01L23/30 B
H01L21/56 E
H01L21/60 311S
H05K13/04 B
(21)【出願番号】P 2020195930
(22)【出願日】2020-11-26
【審査請求日】2023-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 良崇
(72)【発明者】
【氏名】富永 亮二郎
(72)【発明者】
【氏名】塚田 謙磁
【審査官】秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-109246(JP,A)
【文献】特開2002-198384(JP,A)
【文献】特開平09-254575(JP,A)
【文献】特開2017-045998(JP,A)
【文献】特開平09-246300(JP,A)
【文献】特開2014-116409(JP,A)
【文献】国際公開第2015/194435(WO,A1)
【文献】特開2005-311321(JP,A)
【文献】特開2010-153434(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0084165(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/29
H01L 21/56
H01L 21/60
H05K 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品の底面に設けられた電極と、基板の樹脂層に形成された回路パターンに設けられた接合部とを接合させるとともに、前記部品の前記底面と前記基板の前記樹脂層との間に底部空間を形成する接合工程と、
前記接合工程の完了後に、前記底部空間にアンダーフィルを注入し、緩衝層を介して前記部品に下向きの圧力を加えながら前記アンダーフィルを加熱硬化させて底部補強材を形成する底部補強工程と、
前記底部補強工程の完了後に、前記部品の側面および上面の少なくとも一部を覆う外側補強材を形成する外側補強工程と、
を備える部品装着方法。
【請求項2】
前記電極が前記底面よりも下方に突起した条件、および、前記接合部が前記樹脂層よりも上方に突起した条件の少なくとも一方を満たす、請求項1に記載の部品装着方法。
【請求項3】
前記外側補強工程において、前記部品の前記側面および前記上面の全体を覆う前記外側補強材を形成する、請求項1または2に記載の部品装着方法。
【請求項4】
前記外側補強工程において、前記樹脂層よりも熱膨張率が低い前記外側補強材を形成する、請求項1~3のいずれか一項に記載の部品装着方法。
【請求項5】
前記外側補強工程において、熱硬化性樹脂を塗布して加熱硬化することにより前記外側補強材を形成する、請求項1~4のいずれか一項に記載の部品装着方法。
【請求項6】
前記底部補強工程において、前記アンダーフィルの注入量を前記部品からはみ出ない量に限定する、請求項1~5のいずれか一項に記載の部品装着方法。
【請求項7】
前記接合工程において、前記底部空間のうち前記電極および前記接合部から離隔した領域に導電性ペーストを塗布して加熱硬化することにより、前記電極と前記接合部とを接合させる、請求項1~6のいずれか一項に記載の部品装着方法。
【請求項8】
前記回路パターンに導電性ペーストを塗布して加熱硬化することにより前記接合部を形成する接合部形成工程をさらに備える、請求項1~7のいずれか一項に記載の部品装着方法。
【請求項9】
部品の底面に設けられた電極と、基板の樹脂層に形成された回路パターンに設けられた接合部とを接合させるとともに、前記部品の前記底面と前記基板の前記樹脂層との間に底部空間を形成する接合工程実施部と、
前記接合工程実施部の動作完了後に、前記底部空間にアンダーフィルを注入し、前記部品に下向きの圧力を加えながら前記アンダーフィルを加熱硬化させて底部補強材を形成する底部補強工程実施部と、
前記底部補強工程実施部の動作完了後に、前記部品の側面および上面の少なくとも一部を覆う外側補強材を形成する外側補強工程実施部と、
を備える部品装着装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、部品を基板に装着するときに、部品の電極と回路パターンの接合部とを接合させる部品装着方法、および部品装着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェット技術を応用した三次元プリンタ(三次元造形機)が実用化され、CADによって設計された三次元構造物などを積層造形することが行われている。さらに、三次元プリンタのインクジェット方式の造形部で紫外線照射により硬化する樹脂インク、および焼成により固化する導電性インクを用いて基板を形成し、基板に部品を装着して所望する電子デバイス(基板製品)を製造することが可能となっている。ここで、樹脂インクを硬化した基板は、ガラスエポキシ樹脂製などの従来型の基板と比較して耐熱性が低い。そのため、部品の装着において、電極をはんだ付けすることが温度の制約上難しく、電極を接合する方法が用いられる。この種の部品装着方法に関する一技術例が特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1には、基板上の電極形成面とチップ電極面(底面)の間に接着剤を介在させ、基板の電極(接合部)とこれに相対峙するチップ(部品)の電極を位置合わせした状態で、チップ背面(上面)に緩衝層を介在させて加熱加圧するマルチチップ実装法が開示されている。これによれば、チップ高さの異なる場合や基板の両面に実装する場合に有効な実装法を提供できる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1のマルチチップ実装法では、部品の装着において、電極同士を位置合わせした状態として、接着剤を用いて部品を接着する。そして、部品に圧力を加えながら接着剤を加熱硬化させることにより、基板の電極と部品の電極(接合部)とが接合する接合箇所の信頼性を或る程度高めることができる。この実装法は、はんだ付けを用いておらず、前述の樹脂インクを硬化した基板に適用することが可能な技術である。
【0006】
ここで、使用時の温度変化等によって基板、部品、電極、および接着剤などの各部位は熱変形するため、熱膨張率の違いに応じて接合箇所に応力が発生する。特許文献1における電極形成面とチップ電極面(底面)の間の接着剤は、硬化して補強材の役割を果たすが、前記した応力を緩和するのに十分であるとは言えない。このため、接合箇所の信頼性が低くて、剥離等の不具合が懸念される。接合箇所に発生する応力を緩和して接合箇所の信頼性を確保するためには、部品の底面だけでなく、部品の側面や上面なども覆うように補強材を形成することが好ましい。
【0007】
しかしながら、特許文献1のマルチチップ実装法において、多量の接着剤の塗布および加熱硬化を試みても、緩衝層からの圧力によって接着剤が硬化する以前に押し出されてしまう。このため、部品の側面や上面を覆う補強材を形成することが難しい。さらには、押し出された接着剤が本来露出させておくべき別の電極などを覆ってしまうおそれが生じるため、逆効果となる。
【0008】
それゆえ、本明細書では、部品の電極と基板側の回路パターンの接合部とを接合させる方法において、接合箇所の信頼性を従来よりも向上させることができる部品装着方法、および部品装着装置を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書は、部品の底面に設けられた電極と、基板の樹脂層に形成された回路パターンに設けられた接合部とを接合させるとともに、前記部品の前記底面と前記基板の前記樹脂層との間に底部空間を形成する接合工程と、前記底部空間にアンダーフィルを注入し、緩衝層を介して前記部品に下向きの圧力を加えながら前記アンダーフィルを加熱硬化させて底部補強材を形成する底部補強工程と、前記部品の側面および上面の少なくとも一部を覆う外側補強材を形成する外側補強工程と、を備える部品装着方法を開示する。
【0010】
また、本明細書は、部品の底面に設けられた電極と、基板の樹脂層に形成された回路パターンに設けられた接合部とを接合させるとともに、前記部品の前記底面と前記基板の前記樹脂層との間に底部空間を形成する接合工程実施部と、前記底部空間にアンダーフィルを注入し、前記部品に下向きの圧力を加えながら前記アンダーフィルを加熱硬化させて底部補強材を形成する底部補強工程実施部と、前記部品の側面および上面の少なくとも一部を覆う外側補強材を形成する外側補強工程実施部と、を備える部品装着装置を開示する。
【発明の効果】
【0011】
本明細書で開示する部品装着方法や部品装着装置では、底部補強材および外側補強材を別々の工程で形成する。結果として、各補強材と部品および基板との密着性を良好にすることができ、さらには各補強材の形状精度を高めて、電極と接合部との接合箇所を機械的に補強することができる。これにより、底部補強材および外側補強材は、相乗的に作用して、使用時の温度変化等で接合箇所に発生する応力を緩和する。したがって、接合箇所の信頼性を従来よりも向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態の部品装着装置の機能構成を示すブロック図であり、三次元造形機のブロック図を兼ねている。
【
図2】実施形態の部品装着方法の工程を説明する工程図であり、基板製品の生産工程図を兼ねている。
【
図3】接合工程の実施状況を説明する正面部分断面図である。
【
図4】接合工程の実施状況を説明する側面部分断面図である。
【
図5】底部補強工程において、アンダーフィルを注入する状況を説明する正面部分断面図である。
【
図6】底部補強工程において、緩衝層を介して部品に下向きの圧力を加えながらアンダーフィルを加熱硬化させて底部補強材を形成する状況を説明する正面部分断面図である。
【
図7】外側補強工程の実施状況を説明する正面部分断面図である。
【
図8】外側補強工程の別の実施状況を説明する正面部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1.三次元造形機10および部品装着装置1の構成
まず、実施形態の部品装着装置1の構成について、
図1、
図3、
図5、および
図7等を参考にして説明する。
図1に示されるように、部品装着装置1は、三次元造形機10に組み込まれて構成される。三次元造形機10は、単位層を積み重ねる積層造形法を用いて、三次元構造物を生産する。三次元構造物の形状は、複数の単位層の各々の形状を表す造形データによって規定される。三次元造形機10は、基板製品を生産する場合に、まず基板9を形成し、次に基板9に部品8を装着して基板製品とする。三次元造形機10は、搬送部21、樹脂層形成部22、回路形成部23、部品供給部24、第1ヘッド25、加熱部26、第2ヘッド27、加圧加熱部28、および第3ヘッド29などで構成される。
【0014】
搬送部21は、パレット31(
図3、
図7参照)の機内への搬入、機内での移送、および機外への搬出を行う。パレット31は、耐熱性に優れた材質、例えば鉄板や耐熱性硬質樹脂を用いて、矩形板状に形成される。基板製品は、生産の途中においてパレット31上に載置され、搬送部21によってパレット31とともに搬送される。
【0015】
樹脂層形成部22は、基板9の樹脂層91を形成する。樹脂層形成部22は、例えば、造形ノズル、造形ヘッド、ヘッド駆動部、および紫外線照射部などで構成される。造形ノズルは、紫外線の照射によって硬化する造形インクを吐出する。造形ヘッドは、造形ノズルを保持した状態でヘッド駆動部により水平二方向に駆動される。これにより、造形ノズルは、造形データに基づいて、薄い単位樹脂層をパレット31上や形成済みの樹脂層91の上側、あるいは形成済みの回路パターン94の上側に造形する。
【0016】
次に、パレット31が紫外線照射部に移送され、液状の単位樹脂層に紫外線が照射される。すると、液状の単位樹脂層は、硬化されて固体状の樹脂層91の一部となる。なお、樹脂層形成部22は、紫外線照射以外の方法で硬化する造形インクを用いてもよい。
【0017】
回路形成部23は、基板9の回路パターン94を形成する。回路形成部23は、例えば、描画ノズル、描画ヘッド、ヘッド駆動部、および焼成部などで構成される。描画ノズルは、焼成によって固化する導電性インクを吐出する。導電性インクとして、基剤に金属性の微細粒子を混入させたインクを例示することができる。描画ヘッドは、描画ノズルを保持した状態でヘッド駆動部により水平二方向に駆動される。これにより、描画ノズルは、造形データに基づいて、薄い単位回路層をパレット31上や形成済みの樹脂層91の上側、あるいは形成済みの回路パターン94の上側に描画する。
【0018】
次に、パレット31が焼成部に移送され、液状の単位回路層が焼成される。すると、液状の単位回路層は、基剤が蒸発して固化され、固体状の回路パターン94の一部となる。樹脂層形成部22および回路形成部23が造形データに基づいて複数回の動作を繰り返すことにより、
図3に示される基板9が形成される。
【0019】
例示された基板9の樹脂層91は、下面が平らで、部品8を装着する中央部分92の上面が低く、周辺部分93の上面が高く形成される。基板9の回路パターン94は、樹脂層91の下面から中央部分92の上面に連なって形成される。例示された基板9には1個の部品8が装着されるが、実際の基板には複数の部品が装着される。基板9の形状および装着される部品8の種類は、様々に変更可能である。
【0020】
部品供給部24は、複数の部品8を供給する。部品供給部24は、例えば、公知の部品装着機に装備されるトレイ式の部品供給装置と同様の構成をもつ。部品供給部24は、部品8の採取、移動、および載置を行う部品操作部を含む。
図3および
図4に例示された部品8は、底面82に6個の電極81が設けられている。
【0021】
第1ヘッド25は、第1ノズルを有し、第1ヘッド駆動部により水平二方向に駆動される。第1ノズルは、加熱によって固化する導電性ペーストを吐出する。導電性ペーストとして、例えば、基剤に銀の粒子を加えたペースト材を例示することができる。導電性ペーストは、回路形成部23で用いられる導電性インクと比較して粘度が大きい。加熱部26は、導電性ペーストを加熱して固化させる。このときの加熱温度は、はんだ付けの温度と比較して低く、樹脂層91からなる基板9に対して許容される。加熱部26として、槽内部を設定温度に保つ恒温槽を例示することができる。
【0022】
第2ヘッド27は、第2ノズルを有し、第2ヘッド駆動部により水平二方向に駆動される。第2ノズルは、アンダーフィルUF(
図5参照)を吐出する。アンダーフィルUFとして、絶縁性を有し、常温で液体であり、熱硬化性を有する樹脂材料が用いられる。アンダーフィルUFの狭隘な部分への注入を可能とするために、第2ノズルの先端部の傾斜角度は調整可能とされている。加圧加熱部28は、緩衝層41(
図6参照)を介して部品8に下向きの圧力を加えながらアンダーフィルUFを加熱硬化させる。加圧加熱部28の構成および機能については、後で詳述する。
【0023】
第3ヘッド29は、第3ノズルを有し、第3ヘッド駆動部により水平二方向に駆動される。第3ノズルは、加熱により硬化する液状ないしはペースト状の補強材を吐出する。液状ないしはペースト状の補強材として、熱硬化性樹脂の一種の熱硬化性エポキシ樹脂を例示することができ、これに限定されない。この補強材は、樹脂層91の原料となる造形インク、またはアンダーフィルUFと同一材料でもよい。この補強材は、前述の加熱部26によって加熱されると、硬化して固体化する。このときの加熱温度は、樹脂層91からなる基板9に対して許容される。
【0024】
部品装着装置1は、部品8の装着作業を担当する。部品装着装置1は、
図1に実線で示される接合工程実施部51、一点鎖線で示される底部補強工程実施部52、および破線で示される外側補強工程実施部53により構成される。接合工程実施部51は、前述した搬送部21、部品供給部24、第1ヘッド25、および加熱部26を含んで構成される。底部補強工程実施部52は、搬送部21、第2ヘッド27、および加圧加熱部28を含んで構成される。外側補強工程実施部53は、搬送部21、第3ヘッド29、および加熱部26を含んで構成される。
【0025】
2.部品装着装置1の動作(実施形態の部品装着方法)
次に、部品装着装置1の動作について、
図2の工程図および
図3~
図8の状況説明図を参考にして説明する。部品装着装置1の動作の内容は、実施形態の部品装着方法を含んだものとなる。
図2の基板形成工程P1において、前述した樹脂層形成部22および回路形成部23の複数回の動作により、基板9が形成される。
【0026】
次の接合部形成工程P2において、第1ヘッド25は、基板9の上方から見える回路パターン94の所定の部品装着位置に導電性ペーストを塗布する。この導電性ペーストは、加熱部26で固化され、部品8の電極81が接合する接合部95となる(
図3参照)。接合部95は、基板9側の電極と言い換えてもよい。なお、基板形成工程P1および接合部形成工程P2を省略し、別途形成された基板9をパレット31に載置して、搬送部21により機外から搬入することも可能である。
【0027】
図3および
図4に示されるように、回路パターン94上の接合部95は、樹脂層91の中央部分92よりも上方に突起している。一方、部品8の電極81の下面は、底面82のレベルに概ね一致している。したがって、電極81を接合部95に接合させた状況を想定すると、底面82と樹脂層91の間に底部空間96が形成される。上記と逆に、接合部95が樹脂層91の中央部分92のレベルに概ね一致し、電極81が底面82より下方に突起する構成でも、底部空間96が形成される。さらに、接合部95が樹脂層91の中央部分92よりも上方に突起し、かつ電極81が底面82より下方に突起する構成でも、当然ながら底部空間96が形成される。
【0028】
次の接合工程P3で、接合工程実施部51が動作する。詳述すると、第1ヘッド25は、想定された底部空間96のうち電極81および接合部95から離隔した領域に導電性ペーストCPを塗布する。塗布する領域は、例えば、
図4に示されるように、部品8の中央部が選択される。塗布する面は、部品8の底面82および樹脂層91の上面のどちらでもよいが、導電性ペーストCPが落滴するおそれのない樹脂層91の上面が選択される。塗布厚は、底部空間96の高さよりもわずかに大きく設定される。
【0029】
次に、部品供給部24は、部品8を採取し、電極81が接合部95に載るように部品8を移動させる。これにより、底部空間96が実際に形成される。このとき、部品供給部24は、部品8に下向きの荷重を加えて、電極81を接合部95に圧接させ、導電性ペーストCPが水平方向に多少拡がるようにする。基板9および部品8は、この状態を維持しつつ、搬送部21によって加熱部26に移送される。
【0030】
加熱部26では、部品8の中央部に位置する導電性ペーストCPが加熱されて、固化される。これにより、部品8は、底面82が樹脂層91に接着されるとともに、電極81が接合部95に接合されて、基板9に装着される。
【0031】
ここで、部品8の中央部に位置する導電性ペーストCPは、導電材料として使用されず、接着剤の代替として使用される。したがって、導電性ペーストCPに代えて、専用の接着剤を用いることが可能である。それでも、導電性ペーストCPを接着剤の代替とすることにより、作業用のヘッド、ノズル、およびヘッド駆動部の個数が削減されるので、部品装着装置1および三次元造形機10の構成が簡素化され、かつ低コスト化が推進される。
【0032】
次の底部補強工程P4で、底部補強工程実施部52が動作する。詳述すると、第2ヘッド27は、
図5に示されるように、底部空間96にアンダーフィルUFを注入する。実際には、第2ヘッド27は、底部空間96の側面の開口部分に第2ノズルの先端を当てて、アンダーフィルUFを吐出する。すると、アンダーフィルUFは、毛細管現象の作用により底部空間96内に自動的に流入してゆき、かつ表面張力の作用により流出することが抑制される。また、アンダーフィルUFの注入量は、部品8からはみ出ない量に限定される。この注入量は、部品8の大きさ、底部空間96の高さ、電極81や接合部95の大きさおよび個数、ならびに導電性ペーストCPの使用量等に基づいて、適正に求められる。
【0033】
基板9および部品8は、この状態を維持しつつ、搬送部21によって加圧加熱部28に移送される。加圧加熱部28は、
図6に示されるように、緩衝層41、加圧加熱板44、図略の加圧装置および加熱装置を含んで構成される。緩衝層41は、容易に弾性変形する材料、例えばゴムシートを用いて形成される、緩衝層41は、上面が平らで、中央部分42が薄く、周辺部分43が厚く形成される。緩衝層41は、基板9および部品8の上側に載置される。緩衝層41の中央部分42は、部品8の上面84に接触する。緩衝層41の周辺部分43は、樹脂層91の周辺部分93に接触し、または、わずかの離間距離を設けて配置される。
【0034】
加圧加熱板44は、堅牢な金属板、例えば鉄板で形成される。加圧加熱板44は、緩衝層41の上側に載置される。加圧装置は、液圧機構や空気圧機構などで構成されており、加圧加熱板44に下向きの荷重Fを加える。加熱装置は、電気ヒータなどで構成されており、加圧加熱板44を加熱する。
【0035】
加圧加熱部28は、緩衝層41を介して部品8に下向きの圧力を加えながらアンダーフィルUFを加熱硬化させる。加圧装置が加えた下向きの荷重Fは、加圧加熱板44および緩衝層41で分散され、部品8の上面84の全体に概ね均等に作用する圧力に変換される。また緩衝層41の中央部分42の圧縮により、周辺部分43で分担する圧力が増加し、または、離間距離が消失して周辺部分43で分担する圧力が発生する。これにより、部品8の上面84に作用する圧力の大きさを適正に維持することが容易になる。仮に周辺部分43が存在しないと、部品8の上面84に作用する圧力の均等化が難しく、加えて圧力の大きさが変動しやすい。
【0036】
また、加圧加熱板44に加えられた熱は、緩衝層41を介して部品8からアンダーフィルUFに伝わる。これにより、アンダーフィルUFは、硬化して底部補強材71となる。このときの加熱温度は、樹脂層91からなる基板9および部品8に対して許容される。
【0037】
上記した加圧加熱部28の作用により、電極81と接合部95とが接合する接合箇所に圧力を加えながら、その周りのアンダーフィルUFを硬化させることができる。これにより、接合箇所の信頼性を或る程度高めることができる。また、底部補強材71は、基板製品の使用時の温度変化等によって接合箇所に発生する応力、特にせん断力を緩和する作用を有するので、接合箇所の信頼性が高められる。
【0038】
なお、加圧加熱部28は、上述と異なる構成、例えば、緩衝層41、加圧板、加圧装置、および恒温槽などで構成してもよい。この構成において、恒温槽は、基板9および部品8を槽内に収容しつつ槽内温度を高めて、アンダーフィルUFを加熱硬化させる。一方、緩衝層41、加圧板、および加圧装置は、恒温槽内で部品8に下向きの圧力を加える作用を発揮する。
【0039】
次の外側補強工程P5で、外側補強工程実施部53が動作する。詳述すると、第3ヘッド29は、
図7に示されるように、部品8の側面83および上面84の全体を覆うように液状ないしはペースト状の補強材(符号72が相当する)を吐出する。補強材は、樹脂層91の中央部分92の上側で部品8を厚く覆いつつ、周辺部分93の側部にまで及んでいる。図示されるように部品8を厚く覆いつつ山形となるようにするために、補強材は、ある程度以上の粘度、具体的には1(Pa・s)程度以上の粘度を有することが好ましい。
【0040】
基板9および部品8は、この状態を維持しつつ、搬送部21によって加熱部26に移送される。液状ないしはペースト状の補強材は、加熱部26で加熱されて硬化し、外側補強材72となる。外側補強材72は、基板製品の使用時の温度変化等によって接合箇所に発生する応力、特に電極81が接合部95から離れる方向の力を緩和する作用を有する。なお
図8に示されるように、外側補強材73は、部品8の側面83の全体と上面84の周辺部を覆い、上面84の中央部を覆わない形状であってもよい。
【0041】
さらに、実施形態において、樹脂層91よりも熱膨張率が低い外側補強材(72、73)が形成されている。このため、使用時の温度上昇に伴って樹脂層91が膨張したときに、外側補強材(72,73)は、膨張の程度が相対的に少なく、部品8への密着性が維持される。したがって、外側補強材(72,73)は、接合箇所に発生する応力を緩和する作用が顕著となる。さらに、外側補強材(72、73)および底部補強材71は、相乗的に作用して、接合箇所に発生する様々な方向の応力を緩和することができるので、接合箇所の信頼性がさらに一層高められる。
【0042】
実施形態の部品装着方法や部品装着装置1では、底部補強材71および外側補強材(72、73)を別々の工程で形成する。結果として、各補強材(71、72、73)と部品8および基板9との密着性を良好にすることができ、さらには各補強材(71、72、73)の形状精度を高めて、電極81と接合部95との接合箇所を補強することができる。これにより、底部補強材71および外側補強材(72、73)は、相乗的に作用して、使用時の温度変化等で接合箇所に発生する応力を緩和する。したがって、接合箇所の信頼性を従来よりも向上させることができる。
【0043】
3.実施形態の応用および変形
なお、部品装着装置1および三次元造形機10の構成要素として、搬送部21およびパレット31以外に共通化および兼用化できるものがある。例えば、回路形成部23の焼成部と、加熱部26とを共通化することができる。また、加圧加熱部28の一部分を加熱部26に兼用化することができる。一方、基板9を形成する三次元造形機10と、基板9に部品8を装着する部品装着装置1とを別体に構成することが可能である。その他にも、実施形態は、様々な応用や変形が可能である。
【符号の説明】
【0044】
1:部品装着装置 21:搬送部 22:樹脂層形成部 23:回路形成部 24:部品供給部 25:第1ヘッド 26:加熱部 27:第2ヘッド 28:加圧加熱部 29:第3ヘッド 31:パレット 41:緩衝層 44:加圧加熱板 51:接合工程実施部 52:底部補強工程実施部 53:外側補強工程実施部 71:底部補強材 72、73:外側補強材 8:部品 81:電極 82:底面 83:側面 84:上面 9:基板 91:樹脂層 94:回路パターン 95:接合部 96:底部空間 10:三次元造形機 P1:基板形成工程 P2:接合部形成工程 P3:接合工程 P4:底部補強工程 P5:外側補強工程 CP:導電性ペースト UF:アンダーフィル