IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社フジタの特許一覧

<>
  • 特許-車両の旋回制御装置 図1
  • 特許-車両の旋回制御装置 図2
  • 特許-車両の旋回制御装置 図3
  • 特許-車両の旋回制御装置 図4
  • 特許-車両の旋回制御装置 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】車両の旋回制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/12 20200101AFI20241004BHJP
   B60W 10/00 20060101ALI20241004BHJP
   B60W 30/045 20120101ALI20241004BHJP
【FI】
B60W30/12
B60W10/00 148
B60W30/045
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020202861
(22)【出願日】2020-12-07
(65)【公開番号】P2022090452
(43)【公開日】2022-06-17
【審査請求日】2023-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】石坂 仁
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 光男
【審査官】戸田 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/145555(WO,A1)
【文献】特開2016-107968(JP,A)
【文献】特開2005-165915(JP,A)
【文献】特開平10-297521(JP,A)
【文献】特開2020-059304(JP,A)
【文献】特開2020-011562(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/12
B60W 10/00
B60W 30/045
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の運転を行う際に運転者によって操作される操作部材を操作するアクチュエータと、
前記車両の走行状態および前記運転者による前記操作部材の操作状態に関する情報を取得する車両情報取得部と、
前記車両情報取得部で取得された情報に基づいて前記車両の進行方向に位置する旋回箇所を検出する旋回箇所検出部と、
前記車両情報取得部で取得された情報に基づいて前記旋回箇所で前記車両が旋回可能か否かを判定する旋回可否判定部と、
前記車両の旋回が不可能と判定された場合、前記運転者による前記操作部材の操作とは無関係に、前記旋回箇所での旋回が可能な操作状態となるように前記アクチュエータによって前記操作部材を操作する操作部材制御部とを備え、
前記アクチュエータは、前記車両の制動を行うためのブレーキペダルを操作する第1アクチュエータと、前記車両を加減速させるためのアクセルペダルを操作する第2アクチュエータと、前記車両の操舵を行うためのステアリングホイールを操作する第3アクチュエータとを備え、
前記旋回可否判定部は、前記旋回箇所の曲率、前記車両の走行速度および前記ステアリングホイールの回転操作量に基づいて、前記車両が前記旋回箇所で旋回可能か否かを判断し、
前記操作部材制御部は、前記車両の走行速度が原因で前記旋回箇所での旋回が不可能と判定された場合、前記運転者による前記ブレーキペダルまたは前記アクセルペダルの踏み込み操作とは無関係に、前記第1アクチュエータまたは前記第2アクチュエータにより前記ブレーキペダルまたは前記アクセルペダルの踏み込み操作または踏み戻し操作を行うことで前記車両の走行速度を調整して前記車両を前記旋回箇所で旋回させ、
前記操作部材制御部は、さらに、前記ステアリングホイールの旋回操作量が原因で前記旋回箇所での旋回が不可能と判定された場合、前記運転者による前記ステアリングホイールの回転操作とは無関係に、前記第3アクチュエータにより前記ステアリングホイールの回転操作を行うことで前記車両の旋回量を調整して前記車両を前記旋回箇所で旋回させ、
前記第1アクチュエータ、前記第2アクチュエータ、および前記第3アクチュエータは、前記運転者による前記操作部材の操作を妨げない箇所に着脱可能に設けられている、
ことを特徴とする車両の旋回制御装置。
【請求項2】
前記車両の現在位置を測位する測位部と、
前記車両の現在位置周辺の地図情報を取得する地図情報取得部と、を更に備え、
前記旋回箇所検出部は、前記地図情報を参照し前記車両の進行方向に位置する前記旋回箇所を検出する、
ことを特徴とする請求項記載の車両の旋回制御装置。
【請求項3】
前記車両の周辺を撮像して画像情報を生成するカメラをさらに備え、
前記旋回箇所検出部は、前記画像情報を参照し前記車両の進行方向に位置する前記旋回箇所を検出する、
ことを特徴とする請求項記載の車両の旋回制御装置。
【請求項4】
前記旋回箇所での旋回が不可能と判定された場合、前記運転者に対してその旨を警告し、前記アクチュエータによる操作介入を実行する旨を報知する報知部をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の車両の旋回制御装置。
【請求項5】
前記運転者による前記操作部材の操作とは無関係に前記アクチュエータにより前記操作部材を操作して旋回を行う操作介入モードと、前記運転者による前記操作部材の手動操作のみを可能とする手動操作モードとの設定を切り替えるモード切替部をさらに備え、
前記操作部材制御部は、前記操作介入モードに設定されている場合に前記アクチュエータにより前記操作部材を操作する、
ことを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の車両の旋回制御装置。
【請求項6】
前記車両情報取得部は、前記アクチュエータによる前記操作部材の操作量を更に検出し、
前記操作部材制御部は、前記操作介入モードに設定されている場合、前記車両情報取得部で検出された前記操作量に基づいて前記アクチュエータのサーボ制御を行って前記操作部材を操作し、前記手動操作モードに設定されている場合、前記アクチュエータをサーボフリーとすることにより前記操作部材の操作を行わない、
ことを特徴とする請求項に記載の車両の旋回制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の旋回制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両走行中の安全性を向上させるため、運転者による車両の運転を補助する技術が開発されている。
例えば、下記特許文献1には、運転者の操作を将来の走行環境に応じて適切にアシストすることを目的とした車両用運転操作補助装置が開示されている。車両用運転操作補助装置は、レーザレーダ,前方カメラ,後側方カメラおよび車速センサによって、車両状態および車両周囲の走行環境を検出する。コントローラは、検出された車両状態、走行環境から、車両もしくは車両周囲の走行環境の将来を予測し、将来において必要な運転操作量、例えば操舵反力を推定する。操舵反力制御装置は、必要な操舵反力となるようにサーボモータを制御し、運転者の操作を補助する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許4173292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した車両用運転操作補助装置は、あくまで運転の主体は運転者であり、例えば運転者の注意が運転以外に向いている場合などには、車両用運転操作補助装置によるアシストを行っても所望の操作が行われない場合がある。
特に、車両の旋回時には、車両の走行速度や旋回箇所の曲率などの要因により、適切なステアリング操作量が異なり、通常の走行時(例えば直線走行時)よりも複雑な操作が要求される。
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、車両の旋回時における安全性を向上させる車両の旋回制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した目的を達成するため本発明の一実施形態は、車両の運転を行う際に運転者によって操作される操作部材を操作するアクチュエータと、前記車両の走行状態および前記運転者による前記操作部材の操作状態に関する情報を取得する車両情報取得部と、前記車両情報取得部で取得された情報に基づいて前記車両の進行方向に位置する旋回箇所を検出する旋回箇所検出部と、前記車両情報取得部で取得された情報に基づいて前記旋回箇所で前記車両が旋回可能か否かを判定する旋回可否判定部と、前記車両の旋回が不可能と判定された場合、前記運転者による前記操作部材の操作とは無関係に、前記旋回箇所での旋回が可能な操作状態となるように前記アクチュエータによって前記操作部材を操作する操作部材制御部とを備え、前記アクチュエータは、前記運転者による前記操作部材の操作を妨げない箇所に設けられている、ことを特徴とする。
本発明の一実施形態は、前記アクチュエータは、前記車両の制動を行うためのブレーキペダルを操作する第1アクチュエータまたは前記車両を加減速させるためのアクセルペダルを操作する第2アクチュエータの少なくともいずれかを更に備え、前記旋回可否判定部は、前記旋回箇所の曲率および前記車両の走行速度に基づいて前記車両が前記旋回箇所で旋回可能か否かを判断し、前記操作部材制御部は、前記車両が前記旋回箇所で旋回が不可能と判定された場合、前記運転者による前記ブレーキペダルまたは前記アクセルペダルの踏み込み操作とは無関係に、前記第1アクチュエータまたは前記第2アクチュエータにより前記ブレーキペダルまたは前記アクセルペダルの踏み込み操作または踏み戻し操作を行うことで前記車両を前記旋回箇所で旋回させる、ことを特徴とする。
本発明の一実施形態は、前記アクチュエータは、前記車両の操舵を行うためのステアリングホイールを操作する第3アクチュエータを更に備え、前記旋回可否判定部は、前記旋回箇所の曲率および前記ステアリングホイールの回転操作量に基づいて前記車両が前記旋回箇所で旋回可能か否かを判断し、前記操作部材制御部は、前記車両が前記旋回箇所で旋回が不可能と判定された場合、前記運転者による前記ステアリングホイールの回転操作とは無関係に、前記第3アクチュエータにより前記ステアリングホイールの回転操作を行うことで前記車両を前記旋回箇所で旋回させる、ことを特徴とする。
本発明の一実施形態は、前記車両の現在位置を測位する測位部と、前記車両の現在位置周辺の地図情報を取得する地図情報取得部と、を更に備え、前記旋回箇所検出部は、前記地図情報を参照し前記車両の進行方向に位置する前記旋回箇所を検出する、ことを特徴とする。
本発明の一実施形態は、前記車両の周辺を撮像して画像情報を生成するカメラをさらに備え、前記旋回箇所検出部は、前記画像情報を参照し前記車両の進行方向に位置する前記旋回箇所を検出する、ことを特徴とする。
本発明の一実施形態は、前記旋回箇所での旋回が不可能と判定された場合、前記運転者に対してその旨を警告し、前記アクチュエータによる操作介入を実行する旨を報知する報知部をさらに備える、ことを特徴とする。
本発明の一実施形態は、前記運転者による前記操作部材の操作とは無関係に前記アクチュエータにより前記操作部材を操作して旋回を行う操作介入モードと、前記運転者による前記操作部材の手動操作のみを可能とする手動操作モードとの設定を切り替えるモード切替部をさらに備え、前記操作部材制御部は、前記操作介入モードに設定されている場合に前記アクチュエータにより前記操作部材を操作する、ことを特徴とする。
本発明の一実施形態は、前記車両情報取得部は、前記アクチュエータによる前記操作部材の操作量を更に検出し、前記操作部材制御部は、前記操作介入モードに設定されている場合、前記車両情報取得部で検出された前記操作量に基づいて前記アクチュエータのサーボ制御を行って前記操作部材を操作し、前記手動操作モードに設定されている場合、前記アクチュエータをサーボフリーとすることにより前記操作部材の操作を行わない、ことを特徴とする。
本発明の一実施形態は、前記アクチュエータは、前記運転者による前記操作部材の操作を妨げない箇所に着脱可能に設けられている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一実施形態によれば、車両の運転を行う際に運転者によって操作される操作部材を操作するアクチュエータを運転者による操作部材の操作を妨げない箇所に設け、車両の走行状態および運転者による操作部材の操作状態を監視し、車両の進行方向に位置する旋回箇所における旋回の可否を判定し、旋回が不可能と判定された場合には、運転者による操作部材の操作とは無関係に旋回箇所での旋回が可能な操作状態となるようにアクチュエータによって操作部材を操作する。
これにより、車両の走行状態および運転者による操作部材の操作状態を踏まえて旋回箇所における旋回の可否を判定し、旋回が不可能な場合には運転者による操作部材の操作とは無関係にアクチュエータにより操作部材を操作して旋回箇所を旋回することができ、旋回時における車両走行の安全性を向上させるとともに、運転者の利便性の向上を図る上で有利となる。
【0007】
本発明の一実施形態によれば、車両の制動を行うためのブレーキペダルを操作する第1アクチュエータまたは車両を加減速させるためのアクセルペダルを操作する第2アクチュエータの少なくともいずれかを更に備え、車両の走行速度が原因で旋回箇所での旋回が不可能と判定された場合、運転者によるブレーキペダルまたはアクセルペダルの踏み込み操作とは無関係に、第1アクチュエータまたは第2アクチュエータによりブレーキペダルまたはアクセルペダルの踏み込み操作または踏み戻し操作を行うことで車両を旋回箇所で旋回させるものとした。これにより、運転者による操作とは無関係に車両の走行速度を調整して旋回箇所を旋回可能とすることができる。
【0008】
本発明の一実施形態によれば、車両の操舵を行うためのステアリングホイールを操作する第3アクチュエータを更に備え、ステアリングホイールの回転操作量が原因で旋回箇所での旋回が不可能と判定された場合に運転者によるステアリングホイールの回転操作とは無関係に、第3アクチュエータによりステアリングホイールの回転操作を行うことで車両を旋回箇所で旋回させるものとした。これにより、運転者による操作とは無関係に車両の旋回量を調整して旋回箇所を旋回可能とすることができる。
【0009】
本発明の一実施形態によれば、車両の現在位置を測位するとともに、車両の現在位置周辺の地図情報を参照して車両の進行方向に位置する旋回箇所を検出するものとした。これにより、旋回箇所の位置や曲率などの情報を確実に得ることができ、旋回制御の精度を向上させることができる。
【0010】
本発明の一実施形態によれば、車両の周辺をカメラで撮像するとともに、カメラで撮影した画像情報を参照して車両の進行方向に位置する旋回箇所を検出するものとした。これにより、実際の道路の状況に即した情報を得ることができ、旋回制御の精度を向上させることができる。
【0011】
本発明の一実施形態によれば、旋回箇所での旋回が不可能と判定された場合、運転者に対してその旨を警告し、アクチュエータによる操作介入を実行する旨を報知する報知部を設けるものとした。これにより、事前に操作介入が行われる旨を運転者が事前に知ることができ、運転者の利便性を向上させることができる。
【0012】
本発明の一実施形態によれば、運転者による操作部材の操作とは無関係にアクチュエータにより操作部材を操作して旋回を行う操作介入モードと、運転者による操作部材の手動操作のみを可能とする手動操作モードとの設定を切り替えるモード切替部を設けるものとした。これにより、アクチュエータによる運転介入の可否を運転者が決定することができ、運転者の利便性を向上させることができる。
【0013】
本発明の一実施形態によれば、アクチュエータによる操作部材の操作量を検出することにより、操作介入モード設定時にはアクチュエータのサーボ制御を行うとともに、手動操作モード設定時にはアクチュエータをサーボフリーとすることにより操作部材への操作介入を解除するものとした。これにより、操作介入モードと手動操作モードとの切り替えを容易に行うことができ、運転者の利便性を向上させることができる。
【0014】
本発明の一実施形態によれば、アクチュエータを運転者による操作部材の操作を妨げない箇所に着脱可能に設けるものとした。これにより、アクチュエータの着脱を容易に行なうことができ、アクチュエータのメンテンナンス作業を効率的に行なう上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施の形態にかかる車両の旋回制御装置の機能構成を示すブロック図である。
図2】(A)は車両のブレーキペダルの操作を行なう第1アクチュエータを車幅方向から見た側面図、(B)は車両のアクセルペダルの操作を行なう第2アクチュエータを車幅方向から見た側面図である。
図3】車両のステアリングホイールの操作を行なう第3アクチュエータを運転席から見た正面図である。
図4】車両の旋回態様を模式的に示す図である。
図5】車両旋回制御装置による旋回制御処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
本実施の形態の車両の旋回制御装置は、車両10に搭載されている。
本実施の形態の車両10は、乗用車である場合について説明するが、乗用車に限定されるものではなく、トラック、バン、ワゴン車など従来公知の様々な車両に適用可能である。また、本実施の形態の車両10は、利用者が一般の道路を走行するAT車である。
【0017】
図1に示すように、車両10は、複数の操作部材12(12A~12G)と、旋回制御装置14とを含んで構成されている。
複数の操作部材12は、車両10の運転を行う際に運転者によって操作される部材であって、イグニッションスイッチ12Aと、ステアリングホイール12Bと、シフトレバー12Cと、ブレーキペダル12Dと、アクセルペダル12Eと、パーキングペダル12Fと、ウインカーレバー12Gとを含んで構成されている。
また、旋回制御装置14は、第1アクチュエータ16と、第2アクチュエータ18と、第3アクチュエータ19と、画像情報生成部を構成する4つのカメラ20(前方カメラ20A、後方カメラ20B、左方カメラ20C、右方カメラ20D)と、モード切替スイッチ22と、操作入力部24と、表示部26と、車速センサ27と、測位部28と、地図データベース29と、制御部30とを含んで構成されている。
なお、以下の図面では、符号FRは車両前方、符号UPは車両上方を示している。
【0018】
イグニッションスイッチ12Aは、車両10に搭載されているエンジンの始動、停止を操作する部材であって、例えばダッシュパネル1002(図2参照)の上方に設けられている。
イグニッションスイッチ12Aは、常時突出した突出位置に付勢された押しボタンを備えており、押しボタンが押圧操作されることで突出位置から没入位置に移動し、これによりエンジンの始動、停止が操作される。
【0019】
ステアリングホイール12Bは、車両10の操舵を行なうために回転操作する部材である。
図3(A)、(B)に示すように、ステアリングホイール12Bは、断面が円形状で円環状に延在するホイール本体1222と、車体から立設するステアリングシャフト1224と、ステアリングシャフト1224とホイール本体1222とを接続するスポーク1226とを備えている。ステアリングシャフト1224は図示しないステアリングコラムによって覆われている。
【0020】
シフトレバー12Cは、車両10のトランスミッションを変速させるために揺動操作する部材である。
シフトレバー12Cは、センターコンソールから車両前後方向に揺動可能に設けられた揺動軸と、揺動軸の先端に設けられ手により把持される被把持部(シフトノブ)とを備えている。
シフトレバー12Cのシフト位置は、例えば、P(パーキング)レンジ、R(リバース)レンジ、N(ニュートラル)レンジ、D(ドライブ)レンジである。
Pレンジは駐車時に選択され、Pレンジが選択されることでトランスミッションのギアがロックされる。
Rレンジは、車両の後進時に選択される。
Nレンジは、故障時に牽引される場合などに選択され、Nレンジが選択されることでエンジンの動力が駆動輪に伝達されない。
Dレンジは、車両の前進時に選択される。
【0021】
ブレーキペダル12Dは、運転者により車両10の制動を行なうための踏み込み操作を行う部材である。
図2(A)に示すように、ブレーキペダル12Dは、車室空間とエンジンルームとを仕切るダッシュパネル1002の下部に取り付けられた不図示のブラケットに支軸1202を介して揺動可能に設けられたペダルアーム1204と、ペダルアーム1204の下端に設けられ運転者の足裏が当接するペダル踏面部1206とを備えている。
運転者によりブレーキペダル12Dの踏み込み操作が行われることで、図示しないブレーキ機構が作動し、車両10を減速させる。
【0022】
アクセルペダル12Eは、運転者により車両10の加減速(エンジンの回転数の増減)を行うための踏み込み操作を行う部材である。
図2(B)に示すように、アクセルペダル12Eは、ブレーキペダル12Dと同様に、ダッシュパネル1002の下部に取り付けられた不図示のブラケットに支軸1212を介して揺動可能に設けられたペダルアーム1214と、ペダルアーム1214の下端に設けられ運転者の足裏が当接するペダル踏面部1216とを備えている。
運転者によりアクセルペダル12Eの踏み込み操作が行われることで、エンジンの回転数が上昇し、車両10の走行速度が上昇する。また、アクセルペダル12Eが踏み戻しされると、エンジンの回転数が減少し、車両10の走行速度が下降する。
【0023】
パーキングペダル12Fは、車両10の駐車時の制動を行なうために踏み込み操作を行う部材である。
パーキングペダル12Fは、ブレーキペダル12 Dと同様に、ダッシュパネル1002の下部に取り付けられた不図示のブラケットに支軸を介して揺動可能に設けられたペダルアームと、ペダルアームの下端に設けられ運転者の足裏が当接するペダル踏面部とを備えている。
【0024】
ウインカーレバー12Gは、車両10が右左折を行う旨を周囲の車両や歩行者等に報知するウインカー(方向指示器)を点灯させる際に操作を行う部材である。ウインカーレバー12Gは、ステアリングコラムから水平方向に伸びており、ウインカーレバー12Gを上方に引き上げると左側のウインカーが、下方に引き上げると右側のウインカーが、それぞれ点灯(点滅)する。
ウインカーの点灯状態は、ステアリングホイール12Bの操作状態とも連動している。例えば左側のウインカーが点灯した状態でステアリングホイール12Bを所定量以上左側に(反時計回りに)操作すると、ステアリングホイール12Bを中立位置に戻す過程でウインカーの点灯が解除され、ウインカーレバー12Gは自動的に中立位置に戻される。
【0025】
第1アクチュエータ16、第2アクチュエータ18、第3アクチュエータ19は、車両10の運転を行う際に運転者によって操作される操作部材12を操作する。
第1アクチュエータ16は、ブレーキペダル12Dを操作するアクチュエータである。
図2(A)に示すように、第1アクチュエータ16は、直動式シリンダ40A(直動式電気シリンダ)で構成され、シリンダ本体4002と、シリンダ本体4002に組み込まれたモータ(不図示)と、シリンダ本体4002に組み込まれたピストンロッド4004とを備えている。
直動式シリンダ40Aは、運転席に着座した運転者によるブレーキペダル12Dの手動操作(踏み込み操作)を妨げない箇所(ダッシュパネル1002)にブラケットB1を介して着脱可能に設けられている。
シリンダ本体4002は、ピストンロッド4004の出没方向を車両前後方向に合致させて配置されている。
ピストンロッド4004の先端は、ペダルアーム1204の長手方向の中間部に連結部4006の不図示の球面軸受を介して連結されている。
したがって、制御部30(より詳細には操作部材制御部30D)によってモータに駆動信号が供給されることで、シリンダ本体4002に対してピストンロッド4004が出没し、ペダルアーム1204が揺動され、これにより、車両10の制動がなされる。
また、制御部30によってモータに供給される駆動信号がオフとされることでモータはサーボフリーとなり、運転席に着座した運転者は、ブレーキペダル12Dの手動操作が可能となっている。
【0026】
第2アクチュエータ18は、アクセルペダル12Eを操作するアクチュエータである。
図2(B)に示すように、第2アクチュエータ18は、直動式シリンダ42A(直動式電気シリンダ)で構成され、シリンダ本体4202と、シリンダ本体4202に組み込まれたモータ(不図示)と、シリンダ本体4202に組み込まれたピストンロッド4204とを備えている。
直動式シリンダ42Aは、運転席に着座した運転者によるアクセルペダル12Eの手動操作(踏み込み操作)を妨げない箇所(ダッシュパネル1002)にブラケットB2を介して着脱可能に設けられている。
シリンダ本体4202は、ピストンロッド4204の出没方向を車両前後方向に合致させて配置されている。
ピストンロッド4204の先端は、ペダルアーム1214の長手方向の中間部に連結部4206の不図示の球面軸受を介して連結されている。
したがって、制御部30によってモータに駆動信号が供給されることで、シリンダ本体4202に対してピストンロッド4204が出没し、ペダルアーム1214が揺動され、これにより、車両10のエンジンの回転制御がなされる。
また、制御部30によってモータに供給される駆動信号がオフとされることでモータはサーボフリーとなり、運転席に着座した運転者は、アクセルペダル12Eの手動操作が可能となっている。
【0027】
第3アクチュエータ19は、ステアリングホイール12Bを操作するアクチュエータである。
図3(A)、(B)に示すように、第3アクチュエータ19は、モータ1902と駆動ローラ1904とを含んで構成されている。
モータ1902と駆動ローラ1904は、運転席に着座した運転者によるステアリングホイール12Bの手動操作を妨げない箇所(例えばインストルメントパネル)に不図示のブラケットを介して着脱可能に設けられている。
モータ1902は、インストルメントパネルに取着された状態でその駆動軸1906をステアリングシャフト1224とほぼ直交させるように配置されている。
駆動ローラ1904は、駆動軸1906の先端に取着されている。
駆動ローラ1904は、ホイール本体1222の周方向の一部の車両前方で斜め下方に配置され、ホイール本体1222に係合し、駆動ローラ1904が回転されることによりホイール本体1222の回動を可能とする。
駆動ローラ1904は、ホイール本体1222のうち車体の前方で斜め下方に向いた面に係合する凹溝1908を備え、モータ1902の回転駆動力が駆動ローラ1904の凹溝1908を介してホイール本体1222に効率よく伝達されるように図られている。
【0028】
モータ1902は、制御部30によって駆動信号が供給されることにより駆動軸1906、駆動ローラ1904を介してステアリングホイール12Bを正逆回転させる。
したがって、モータ1902が正逆回転することにより駆動ローラ1904によりホイール本体1222が正逆方向に回転され、車両10の転舵角の調整がなされる。
また、制御部30によってモータ1902に供給される駆動信号がオフとされることでモータ1902はサーボフリーとなり、運転席に着座した運転者は、ステアリングホイール12Bの手動操作が可能となっている。
【0029】
前方カメラ20A、後方カメラ20B、左方カメラ20C、右方カメラ20Dの4つのカメラ20は、車両10の周辺を撮像して画像情報を生成するものである。
すなわち、前方カメラ20Aは、車両10の前方を撮像して画像情報を生成する。
後方カメラ20Bは、車両10の後方を撮像して画像情報を生成する。
左方カメラ20Cは、車両10の左方を撮像して画像情報を生成する。
右方カメラ20Dは、車両10の右方を撮像して画像情報を生成する。
それら4つの画像情報は、制御部30の車両情報取得部30Aに送信される。
なお、画像情報は、動画であっても一定の時間間隔で生成された静止画であってもよい。
【0030】
モード切替スイッチ22は、後述する操作介入モードと、手動操作モードとを切り替える際に切り替え操作されるものであって、操作位置に対応する操作を示す操作信号を制御部30に出力する。
【0031】
操作入力部24は、運転者の操作を受け付けるものであり、例えば、表示部26の表示面に設けられたタッチパネルや表示部26とは独立して設けられたキースイッチで構成されている。
操作入力部24は、例えば、後述する報知部30Fにより表示部26に表示されたメッセージなどに対して確認した旨の操作を受け付ける。
【0032】
表示部26は、後述する報知部30Fの制御に基づいて、車両10の操作に関する警告やメッセージなどを表示する。本実施の形態では、表示部26は、車両10の進行方向に位置する旋回箇所での旋回が不可能と判断された場合に、その旨およびアクチュエータ16、18、19による操作介入が行われる旨を表示する。また、表示部26は、カメラ20で撮影された車両10の周辺の画像情報を表示してもよい。
また、表示部26は、後述する測位部28で生成された車両10の位置情報に基づいて地図データベース29から読み出された地図情報上に車両10の位置を表示してもよい。具体的には、表示部26は、測位部28で生成された位置情報に基づいて地図データベース29から車両10周辺の地図情報を読み出し、その地図情報上に車両10の現在位置を示すアイコンを重ね合わせて表示する。
【0033】
車速センサ27は、車両10の走行速度を検出する。車速センサ27は、例えば車両10の各車輪の回転速度を検出し、各車輪の回転速度とタイヤサイズ(外周)とを掛け合わせた単位時間当たりの移動距離を平均して車両10の走行速度とする。
【0034】
測位部28は、測位衛星から受信した測位信号に基づいて車両10の現在位置を測位し、車両10の位置情報(緯度経度等)を生成するものである。
このような測位衛星は、GPS、GLONASS、Galileo、準天頂衛星(QZSS)等のGNSS(Global Navigation Satellite System:全球測位衛星システム)で用いられるものであり、それら測位システムで使用される測位衛星の1つを用いてもよく、あるいは、2つ以上の測位衛星を組み合わせて用いても良い。
【0035】
地図データベース29は、車両10が走行する場所を含む地図情報を格納しており、地図情報は地球上の位置情報(緯度経度等)と関連付けられている。
地図情報は、道路、交差点、信号機などの車両が走行するために必要な情報、および、車両10が出発地あるいは目的地とする店鋪や施設、集合住宅などの情報、山や河川、港などの地形を示す情報などを含んでいる。
本実施の形態では、制御部30が地図データベース29内の地図情報を読み出すことで、車両10の現在位置周辺の地図情報を取得する地図情報取得部として機能するものとするが、例えばインターネット等の広域ネットワークとのインターフェースとなる通信装置を設け、上記広域ネットワークを介して地図データベースサーバ等から車両10の現在位置周辺の地図情報を取得するようにしてもよい。
【0036】
制御部30は、CPU、制御プログラムなどを格納・記憶するROM、制御プログラムの作動領域としてのRAM、各種データを書き換え可能に保持するEEPROM、周辺回路等とのインターフェースをとるインターフェース部などを含んで構成される。
制御部30は、上記制御プログラムを実行することにより、車両情報取得部30A、旋回箇所検出部30B、旋回可否判定部30C、操作部材制御部30D、モード切替部30E、報知部30Fとして機能する。
【0037】
車両情報取得部30Aは、車両10の走行状態および運転者による操作部材12の操作状態に関する情報を取得する。
車両情報取得部30Aは、例えば車速センサ27から車両10の走行速度を取得する。また、車両情報取得部30Aは、例えば前方カメラ20A、後方カメラ20B、左方カメラ20C、および右方カメラ20Dにより生成された画像情報を取得する。また、車両情報取得部30Aは、例えば測位部28で生成された位置情報を取得する。
これら走行速度や画像情報、位置情報は、車両10の走行状態に関する情報の一例である。
【0038】
また、車両情報取得部30Aは、運転者による操作部材12(イグニッションスイッチ12Aと、ステアリングホイール12Bと、シフトレバー12Cと、ブレーキペダル12Dと、アクセルペダル12Eと、パーキングペダル12F、ウインカーレバー12G)の操作状態に関する情報を取得する。
具体的には、車両情報取得部30Aは、イグニッションスイッチ12Aの押圧操作、ステアリングホイール12Bの回転操作、シフトレバー12Cの揺動操作、ブレーキペダル12D、アクセルペダル12E、パーキングペダル12Fの踏み込み操作、ウインカーレバー12Gの揺動操作の有無をそれぞれ取得するとともに、レバー類やペダル類の操作量を取得する。
【0039】
旋回箇所検出部30Bは、車両情報取得部30Aで取得された情報に基づいて車両10の進行方向に位置する旋回箇所を検出する。
旋回箇所とは、交差点やT字路などの右左折地点、道路上のカーブ(道路の曲率が所定値以上の箇所)などが挙げられる。
本実施の形態では、旋回箇所検出部30Bは、以下の2つの方法で旋回箇所を検出する。
【0040】
<方法1:地図情報から旋回箇所を検出する>
上述したように、車両10の現在位置は測位部28により測位されており、また現在位置を連続的に追跡することにより車両10の進行方向を特定可能である。旋回箇所検出部30Bは、地図データベース29から車両10の現在位置周辺の地図情報を抽出し、進行方向の所定距離以内に十字路やT字路などの右左折地点(交差点)、道路上のカーブなどがあるかを判定する。上記所定距離は、例えば車両10の走行速度によって変更してもよい(例えば現在の車両10の走行速度で30秒で到達できる距離、など)。
すなわち方法1では、旋回箇所検出部30Bは、地図情報を参照し車両10の進行方向に位置する旋回箇所を検出する。
【0041】
なお、例えば進行方向に交差点であっても車両10が直進する場合には当該箇所は旋回箇所とならない。この場合、旋回箇所検出部30Bは、地図情報とともに操作部材12の操作状態に基づいて旋回箇所を検出してもよい。
例えば、旋回箇所検出部30Bは、例えば地図情報上において車両10の進行方向に交差点などの旋回箇所の候補がある時、ウインカーレバー12Gの操作状態を取得し、ウインカーレバー12Gが操作されている場合には当該箇所で車両10が旋回すると判断してもよい。
また例えば、旋回箇所検出部30Bは、地図情報上において車両10の進行方向に交差点などの旋回箇所の候補がある時、ステアリングホイール12Bの操作状態を取得し、ステアリングホイール12Bが操作されている場合(旋回操作が開始されている場合)には当該箇所で車両10が旋回すると判断してもよい。
【0042】
またこの他、例えば車両10にカーナビゲーションシステムが搭載されており、車両10の走行経路が設定されている場合、旋回箇所検出部30Bは、当該走行経路に基づいて旋回箇所を検出してもよい。すなわち、旋回箇所検出部30Bは、地図情報上において車両10の進行方向に交差点などの旋回箇所の候補がある時、予め設定された走行経路において当該旋回箇所の候補で旋回すると設定されている場合には当該箇所で車両10が旋回すると判断する。
【0043】
<方法2:カメラの撮影画像から旋回箇所を検出する>
上述したように、車両10にはその周辺を撮影するカメラ20(前方カメラ20A、後方カメラ20B、左方カメラ20C、右方カメラ20D)が設けられている。旋回箇所検出部30Bは、カメラ20で撮影された画像情報を画像解析して、車両10の進行方向における道路形状や周囲の物体の配置を抽出し、進行方向に十字路やT字路などの右左折地点(交差点)、道路上のカーブなどの旋回箇所があるかを判定する。なお、旋回箇所までの距離は、画像情報に映った物体の大きさやカメラ20の焦点距離等から推定することができる。
すなわち方法2では、旋回箇所検出部30Bは、カメラ20で撮影された画像情報を参照し、車両10の進行方向に位置する旋回箇所を検出する。
【0044】
方法2の場合も方法1と同様に、旋回箇所検出部30Bは、画像情報とともに操作部材12の操作状態に基づいて旋回箇所を検出してもよい。
例えば、旋回箇所検出部30Bは、例えば車両10の進行方向の画像情報から交差点などの旋回箇所の候補が抽出された時、ウインカーレバー12Gの操作状態を取得し、ウインカーレバー12Gが操作されている場合には当該箇所で車両10が旋回すると判断してもよい。
また例えば、旋回箇所検出部30Bは、車両10の進行方向の画像情報から交差点などの旋回箇所の候補が抽出された時、ステアリングホイール12Bの操作状態を取得し、ステアリングホイール12Bが操作されている場合(旋回操作が開始されている場合)には当該箇所で車両10が旋回すると判断してもよい。
【0045】
またこの他、例えば車両10にカーナビゲーションシステムが搭載されており、車両10の走行経路が設定されている場合、旋回箇所検出部30Bは、当該走行経路に基づいて旋回箇所を検出してもよい。すなわち、旋回箇所検出部30Bは、車両10の進行方向の画像情報から交差点などの旋回箇所の候補が抽出された時、予め設定された走行経路において当該旋回箇所の候補で旋回すると設定されている場合には当該箇所で車両10が旋回すると判断するようにしてもよい。
【0046】
旋回可否判定部30Cは、車両情報取得部30Aで取得された情報に基づいて、旋回箇所検出部30Bで検出された旋回箇所で車両10が旋回可能か否かを判定する。具体的には、旋回可否判定部30Cは、旋回箇所の曲率および車両10の走行速度に基づいて車両10が旋回箇所で旋回可能か否かを判断する。また、旋回可否判定部30Cは、旋回箇所の曲率およびステアリングホイール12Bの回転操作量に基づいて車両10が旋回箇所で旋回可能か否かを判断する。
【0047】
図4は、車両の旋回可否判定を模式的に示す図である。
図4では、車両10は旋回箇所(急な左カーブ)Tを有する道路Lを走行している。車両10が位置P0にある時、車両10の進行方向には旋回箇所Tが位置する。車両10が道なりにカーブして位置P1に到達するには、一般に運転者による旋回箇所Tの手前での減速操作および操舵操作が必要である。
例えば、運転者が一切操舵操作をしなかった場合、車両10は位置P0から直進し、道路Lを逸脱してしまう(位置P2)。
また、例えば運転者による減速操作が不十分だった場合または/および運転者による操舵操作量が不十分だった場合、車両10は旋回箇所Tにおける道路Lの曲率に追従しきれず、道路Lを逸脱してしまう(位置P3)。
また、例えば運転者による運転者による操舵操作のタイミングが早すぎた場合や操舵操作量が過剰だった場合、車両10は旋回箇所Tにおける道路Lの曲率を超えて旋回し、道路Lを逸脱してしまう(位置P4)。
【0048】
よって、旋回可否判定部30Cは、車両10の走行速度および操舵操作量(ステアリングホイール12Bの回転操作量)を参照し、旋回箇所Tにおける曲率に沿って車両10が走行可能(旋回可能)か否かを判断する。
なお、車両10の走行速度や操舵操作量、旋回箇所との距離は刻々と変化するため、旋回可否判定部30Cは、車両10の現在位置が旋回箇所から所定距離以内(例えば上記方法1における所定距離と同一であってもよい)となってから旋回箇所を通過するまでの間、継続して旋回可否の判定を継続するのが好ましい。
【0049】
図1の説明に戻り、操作部材制御部30Dは、旋回可否判定部30Cにより旋回箇所での車両10の旋回が不可能と判定された場合、運転者による操作部材12の操作とは無関係に、旋回箇所での旋回が可能な操作状態となるようにアクチュエータによって操作部材12を操作する。
【0050】
具体的には、操作部材制御部30Dは、車両10の走行速度が原因で旋回箇所での旋回が不可能と判定された場合、運転者によるブレーキペダル12Dまたはアクセルペダル12Eの踏み込み操作とは無関係に、第1アクチュエータ16または第2アクチュエータ18によりブレーキペダル12Dまたはアクセルペダルの踏み込み操作または踏み戻し操作を行うことで車両10を旋回箇所で旋回させる。
より詳細には、操作部材制御部30Dは、車両10の走行速度が速すぎる場合、運転者がアクセルペダル12Eを踏み込んでいる場合には第2アクチュエータ18によりアクセルペダル12Eの踏み戻し操作を行って、車両10の加速を停止させる。また、操作部材制御部30Dは、アクセルペダル12Eの踏み戻し操作を行っても走行速度が速すぎる場合や運転者がアクセルペダル12Eを踏み込んでいない場合には、第1アクチュエータ16によりブレーキペダル12Dの踏み込み操作を行って、車両10を減速させる。
また、操作部材制御部30Dは、車両10の走行速度が遅すぎる場合、運転者がブレーキペダル12Dを踏み込んでいる場合には第1アクチュエータ16によりブレーキペダル12Dの踏み戻し操作を行って、車両10の減速を停止させる。また、操作部材制御部30Dは、ブレーキペダル12Dの踏み戻し操作を行っても走行速度が遅すぎる場合や運転者がブレーキペダル12Dを踏み込んでいない場合には、第2アクチュエータ18によりアクセルペダル12Eの踏み込み操作を行って車両10を加速させる。
【0051】
また、操作部材制御部30Dは、車両10の旋回操作量が原因で旋回箇所での旋回が不可能と判定された場合、運転者によるステアリングホイール12Bの回転操作とは無関係に、第3アクチュエータ19によりステアリングホイール12Bの回転操作を行うことで車両10を旋回箇所で旋回させる。
より詳細には、操作部材制御部30Dは、ステアリングホイール12Bの旋回方向への回転操作量が不足している場合には、第3アクチュエータ19によりステアリングホイール12Bを旋回方向に回転操作させて、車両10の旋回方向への旋回量を増加させる。
また、操作部材制御部30Dは、ステアリングホイール12Bの旋回方向への回転操作量が過剰な場合には、第3アクチュエータ19によりステアリングホイール12Bを旋回方向と反対方向に回転操作させて、車両10の旋回方向への旋回量を減少させる。
【0052】
なお、実際には車両10の走行速度または旋回操作量のどちらかのみが原因で旋回箇所での旋回が不可となる場合は少ないと考えられる。よって、操作部材制御部30Dは、上記第1アクチュエータ16、第2アクチュエータ18、第3アクチュエータ19による操作を適宜組み合わせて車両10の旋回を補助することになる。
【0053】
モード切替部30Eは、モード切替スイッチ22から出力された操作信号に基づいて、操作介入モードと手動操作モードとの設定を切り替える。
操作介入モードとは、旋回可否判定部30Cにより旋回箇所での旋回が不可と判定された場合、運転者による操作部材12の操作とは無関係にアクチュエータにより操作部材12を操作して旋回を行うモードである。また、手動操作モードとは、アクチュエータによる操作部材12の操作を行わず、運転者による操作部材12の手動操作のみを可能とするモードである。
【0054】
モード切替部30Eにより操作介入モードに設定されている場合、上記操作部材制御部30Dは、車両情報取得部30Aで検出された操作部材12の操作量に基づいてアクチュエータのサーボ制御を行って操作部材12を操作する。また、モード切替部30Eにより手動操作モードに設定されている場合、操作部材制御部30Dは、アクチュエータをサーボフリーとすることにより前記操作部材の操作を行わない、
【0055】
報知部30Fは、旋回可否判定部30Cにより旋回箇所での旋回が不可能と判定された場合、運転者に対してその旨を警告し、アクチュエータによる操作介入を実行する旨を報知する。
本実施の形態では、報知部30Fは、「オーバーステア(またはアンダーステア)気味です」などの警告、および「アクチュエータによりブレーキペダル(またはアクセルペダル、ステアリングホイール)を操作します」などの操作介入を実行する旨のメッセージを表示部26に表示させる。
本実施の形態では、上述の警告やメッセージを表示部26に表示させるものとするが、例えばスピーカを設けて音声により報知してもよい。
【0056】
次に、図5を参照して、本実施の形態の車両の旋回制御装置14を用いた旋回制御処理の流れを説明する。
車両10の走行中は、図5に示す処理が繰り返し実行される。
車両10の走行中、車両情報取得部30Aは、車両10の走行状態に関する情報(車両10の走行速度、カメラ20で撮影された画像情報、車両10の位置情報など)を取得する(ステップS10)。
また、車両情報取得部30Aは、運転者による操作部材12(イグニッションスイッチ12A、ステアリングホイール12B、シフトレバー12C、ブレーキペダル12D、アクセルペダル12E、パーキングペダル12F、ウインカーレバー12G)の操作状態に関する情報を取得する(ステップS12)。
【0057】
旋回箇所検出部30Bは、車両10の現在位置周辺の地図情報やカメラ20で撮影された画像情報を参照し、車両10の進行方向に位置する旋回箇所を随時検出する(ステップS14)。
車両10の進行方向に旋回箇所が検出された場合(ステップS14:Yes)、旋回可否判定部30Cは、現在の車両10の走行状態および運転者による操作部材12の操作状態に基づいて、旋回箇所での旋回が可能であるか否かを判断する(ステップS16)。
旋回が可能な場合は(ステップS16:Yes)、操作部材12への操作介入は行わず、ステップS10に戻り以降の処理を繰り返す。
【0058】
一方、旋回が可能でない場合(ステップS16:No)、操作部材制御部30Dはモード切替部30Eによるモードの設定状態を確認する(ステップS18)。
手動操作モードに設定されている場合(操作介入モードに設定されてない場合)(ステップS18:No)、操作部材制御部30Dは、操作部材12への操作介入は行わず、ステップS10に戻り以降の処理を繰り返す。
操作介入モードに設定されている場合(ステップS18:Yes)、操作部材制御部30Dは、アクチュエータを作動させ、操作部材12(ブレーキペダル12D、アクセルペダル12E、ステアリングホイール12B)の操作を行う(ステップS20)。
車両10が旋回箇所を通過するまでは(ステップS22:No)、ステップS20に戻りアクチュエータによる操作部材12の操作を継続する。車両10が旋回箇所を通過すると(ステップS22:Yes)、アクチュエータによる操作部材12の操作を解除し、ステップS10に戻り以降の処理を繰り返す。
なお、アクチュエータを作動前および作動中には、報知部30Fにより操作介入が行われる旨を報知するのが好ましい。
【0059】
以上説明したように、実施の形態にかかる車両10の旋回制御装置14は、車両10の運転を行う際に運転者によって操作される操作部材12(ブレーキペダル12D、アクセルペダル12E、ステアリングホイール12B)を操作するアクチュエータ16、18、19を運転者による操作部材12の操作を妨げない箇所に設け、車両10の走行状態および運転者による操作部材の操作状態を監視し、車両10の進行方向に位置する旋回箇所における旋回の可否を判定し、旋回が不可能と判定された場合には、運転者による操作部材12の操作とは無関係に旋回箇所での旋回が可能な操作状態となるようにアクチュエータ16、18、19によって操作部材12を操作する。
これにより、車両10の走行状態および運転者による操作部材12の操作状態を踏まえて旋回箇所における旋回の可否を判定し、旋回が不可能な場合には運転者による操作部材12の操作とは無関係にアクチュエータにより操作部材12を操作して旋回箇所を旋回することができ、旋回時における車両走行の安全性を向上させるとともに、運転者の利便性の向上を図る上で有利となる。
【0060】
また、実施の形態にかかる車両10の旋回制御装置14は、車両10の制動を行うためのブレーキペダル12Dを操作する第1アクチュエータ16または車両10を加減速させるためのアクセルペダル12Eを操作する第2アクチュエータ18の少なくともいずれかを更に備え、車両10の走行速度が原因で旋回箇所での旋回が不可能と判定された場合、運転者によるブレーキペダル12Dまたはアクセルペダル12Eの踏み込み操作とは無関係に、第1アクチュエータ16または第2アクチュエータ18によりブレーキペダル12Dまたはアクセルペダル12Eの踏み込み操作または踏み戻し操作を行うことで車両10を旋回箇所で旋回させるものとした。これにより、運転者による操作とは無関係に車両10の走行速度を調整して旋回箇所を旋回可能とすることができる。
【0061】
また、実施の形態にかかる車両10の旋回制御装置14は、車両10の操舵を行うためのステアリングホイール12Bを操作する第3アクチュエータ19を更に備え、ステアリングホイール12Bの回転操作量が原因で旋回箇所での旋回が不可能と判定された場合に運転者によるステアリングホイール12Bの回転操作とは無関係に、第3アクチュエータ19によりステアリングホイール12Bの回転操作を行うことで車両10を旋回箇所で旋回させるものとした。これにより、運転者による操作とは無関係に車両10の旋回量を調整して旋回箇所を旋回可能とすることができる。
【0062】
また、実施の形態にかかる車両10の旋回制御装置14は、車両10の現在位置を測位するとともに、車両10の現在位置周辺の地図情報を参照して車両の進行方向に位置する旋回箇所を検出するものとした。これにより、旋回箇所の位置や曲率などの情報を確実に得ることができ、旋回制御の精度を向上させることができる。
【0063】
また、実施の形態にかかる車両10の旋回制御装置14は、車両10の周辺をカメラ20で撮像するとともに、カメラ20で撮影した画像情報を参照して車両10の進行方向に位置する旋回箇所を検出するものとした。これにより、実際の道路の状況に即した情報を得ることができ、旋回制御の精度を向上させることができる。
【0064】
また、実施の形態にかかる車両10の旋回制御装置14は、旋回箇所での旋回が不可能と判定された場合、運転者に対してその旨を警告し、アクチュエータ16、18、19による操作介入を実行する旨を報知する報知部30Fを設けるものとした。これにより、事前に操作介入が行われる旨を運転者が事前に知ることができ、運転者の利便性を向上させることができる。
【0065】
また、実施の形態にかかる車両10の旋回制御装置14は、運転者による操作部材12の操作とは無関係にアクチュエータ16、18、19により操作部材12を操作して旋回を行う操作介入モードと、運転者による操作部材12の手動操作のみを可能とする手動操作モードとの設定を切り替えるモード切替部30Eを設けるものとした。これにより、アクチュエータ16、18、19による運転介入の可否を運転者が決定することができ、運転者の利便性を向上させることができる。
【0066】
また、実施の形態にかかる車両10の旋回制御装置14は、アクチュエータ16、18、19による操作部材12の操作量を検出することにより、操作介入モード設定時にはアクチュエータ16、18、19のサーボ制御を行うとともに、手動操作モード設定時にはアクチュエータ16、18、19をサーボフリーとすることにより操作部材12への操作介入を解除するものとした。これにより、操作介入モードと手動操作モードとの切り替えを容易に行うことができ、運転者の利便性を向上させることができる。
【0067】
また、実施の形態にかかる車両10の旋回制御装置14は、アクチュエータ16、18、19を運転者による操作部材の操作を妨げない箇所に着脱可能に設けるものとした。これにより、アクチュエータ16、18、19の着脱を容易に行なうことができ、アクチュエータ16、18、19のメンテンナンス作業を効率的に行なう上で有利となる。
【符号の説明】
【0068】
10 車両
12 操作部材
12A イグニッションスイッチ
12B ステアリングホイール
12C シフトレバー
12D ブレーキペダル
12E アクセルペダル
12F パーキングペダル
12G ウインカーレバー
14 旋回制御装置
16 第1アクチュエータ
18 第2アクチュエータ
19 第2アクチュエータ
20(20A~20D) カメラ
22 モード切替スイッチ
24 操作入力部
26 表示部
27 車速センサ
28 測位部
29 地図データベース
30 制御部
30A 車両情報取得部
30B 旋回箇所検出部
30C 旋回可否判定部
30D 操作部材制御部
30E モード切替部
30F 報知部
図1
図2
図3
図4
図5