(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】散布機能付き袋
(51)【国際特許分類】
A01M 9/00 20060101AFI20241004BHJP
A01C 15/00 20060101ALI20241004BHJP
B65D 30/10 20060101ALI20241004BHJP
B65D 33/36 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
A01M9/00 Z
A01C15/00 S
B65D30/10 D
B65D33/36
(21)【出願番号】P 2020206888
(22)【出願日】2020-12-14
【審査請求日】2023-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】390033868
【氏名又は名称】株式会社メイワパックス
(73)【特許権者】
【識別番号】390026778
【氏名又は名称】レインボー薬品株式会社
(74)【復代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】長友 将洋
(72)【発明者】
【氏名】深井 智行
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 誠
【審査官】坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0164288(US,A1)
【文献】特開2017-178325(JP,A)
【文献】特開2006-89098(JP,A)
【文献】特表2018-537368(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 9/00
A01C 15/00
B65D 33/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1層以上の合成樹脂製フィルムの少なくとも底辺部をシールすることで袋が形成される散布機能付き袋であって、
前記袋の少なくとも底部に袋を開口させる
ためのノッチ部
を備え、
前記袋の底辺部のシールが凹凸状に形成され、
前記袋の底辺部
であって、前記凹凸状に形成されている前記シールと重なる位置に
前記ノッチ部
を始点と
する切り取り線
が設け
られ、
前記切り取り線上の任意箇所に曲線状の開封線が設けられて
いる、散布機能付き袋。
【請求項2】
前記袋の底辺部のシールと右辺部と左辺部との交点部分に角部が形成されてなる、請求項1に記載の散布機能付き袋。
【請求項3】
前記袋の開封線により形成される散布孔の
うち、両端に形成される
前記散布孔の孔径
は、両端以外に形成される前記散布孔の孔径より小さい、請求項1または2に記載の散布機能付き袋。
【請求項4】
前記袋の散布用の
前記ノッチ部以外に大きく開口するためのノッチ部を袋に設けた、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の散布機能付き袋。
【請求項5】
前記袋の上部に持ち手用開口部が設けられてなる、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の散布機能付き袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肥料や農薬等の内容物を広範囲に均一に散布可能な散布機能付き袋に関する。
【背景技術】
【0002】
家庭菜園の畑等の農業用地における農薬及び肥料の散布は、農作物の生育に直接関係し、農作物の収量に多大な影響を及ぼす。肥料、農薬等の散布では、袋や容器に収容された肥料や農薬等の内容物を柄杓等によって散布する方法がある。
しかしながら、該方法は内容物が収容された容器自体を持って移動する必要があり、特に容器内に多量の内容物が収容されている場合、広範囲にわたって内容物を散布することは困難である。また、柄杓で内容物を掬って撒く動作を頻繁に繰り返す必要があり、散布作業が煩雑となる。
【0003】
そこで、特許文献1では、内容物を収容する袋に矩形状の底面部を設け、該底面部に直径4~8mmの小孔を3~15個形成し、かつ該底面部の外側に底紙を貼り付けて前記小孔を閉塞した散布袋が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、散布用穴を所定数切り欠いて形成される切り取り線を設け、更に逆∨字状に切り取ることで散布孔が形成される肥料袋が開示されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示される袋は、予め包装紙の底部に孔を穿孔し、底面に被覆シールを覆う作業工程が多く、使用時に被覆シールを剥がす手間が必要であった。
【0006】
また、特許文献2に開示される袋では、予め包装紙の一端部を切り取り線が印刷され、この切り取り線に沿って、ハサミ等で一端部を切り抜き、散布用の孔を形成するものであり、作業手間が必要であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平7-264963号公報
【文献】実公平6-13634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記したような従来技術の問題点を解決すべくなされたものであって、ハサミ等の道具を使うことなく、またシールを後から剥がすことなく、作業性よく開封作業の工数も必要がなく、散布用の開口部を形成できる散布機能付き袋を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、
1層以上の合成樹脂製フィルムの少なくとも底辺部をシールすることで袋が形成される散布機能付き袋であって、
前記袋の少なくとも底部に袋を開口させるノッチ部と、
前記袋の底辺部にノッチ部を最短始点として切り取り線を設け、
前記切り取り線上の任意箇所に曲線状の開封線が設けられて形成されてなる、散布機能付き袋に関する。
【0010】
請求項2に係る発明は、前記袋の底辺部のシールと右辺部と左辺部との交点部分に角部が形成されてなる、請求項1に記載の散布機能付き袋に関する。
【0011】
請求項3に係る発明は、前記袋の開封線により形成される散布孔の孔径が、両端に形成される散布孔の孔径に比して、両端以外に形成される前記散布孔の孔径より小さい、請求項1または2に記載の散布機能付き袋に関する。
【0012】
請求項4に係る発明は、前記袋の散布用のノッチ部以外に大きく開口するためのノッチ部を袋に設けた、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の散布機能付き袋に関する。
【0013】
請求項5に係る発明は、前記袋の上辺部に持ち手用開口部が設けられてなる、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の散布機能付き袋に関する。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によれば、合成樹脂フィルムを使用してシールすることで袋を作ることができるので製造が容易であり、使用に際しては散布のための特別な器具、装置等を必要とせず、使用後は処分すべきものも少ないので、1回の使用で使い切る包装容器として使用することができる。
また、包装に際しては、1回の散布用や1回の育苗箱用等、目的に応じて包装量を定めることによって、過剰な散布や、残った内容物の処理などの問題も解消でき、散布作業効率も良好となる効果を奏する。
【0015】
請求項2に係る発明によれば、前記袋の底辺部のシールと右辺部と左辺部との交点部分に角部が形成されることで、内容物の排出が容易となり、袋内に内容物が残らず全量排出できる効果を奏する。
【0016】
請求項3に係る発明によれば、両端に形成される散布孔の孔径に比して、両端以外に形成される前記散布孔の孔径より小さいことで、内容物の排出量を調整でき、均一に且つ広範囲に渡って内容物を散布できる効果を奏する。
【0017】
請求項4に係る発明によれば、大きく開口するためのノッチ部を袋に設けることで、内容物を素早くこぼすことなく他の容器に移し替えや機械に投入できる効果を奏する。
【0018】
請求項5に係る発明によれば、袋の上部に持ち手用開口部が設けられることで、内容物の散布時に袋が持ちやすくなり、散布作業を軽減できる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明に係る散布機能付き袋の正面図である。
【
図2】本発明に係る散布機能付き袋の斜視図である。
【
図3】本発明に係る散布機能付き袋の底辺部を示す図であって、(a)は正面図、(b)は角部を示す図である。
【
図4】本発明に係る散布機能付き袋の開口後の散布図である。
【
図5】本発明に係る持ち手用開口部を備えた散布機能付き袋の斜視図である。
【
図6】本発明に係る散布機能付き袋を用いた散布作業を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る散布機能付き袋の好適な実施形態について、図面を参照しながら散布袋の一例を示して詳細に説明する。
本発明の散布機能付き袋は、例えば、肥料、農薬等の顆粒状の内容物を散布するための袋であり、袋の底部に形成される散布孔が開口するようにする。散布孔は使用時まで閉じられており、使用するときに開けることができるように袋の底部のシール部分に切り取り線を設け、シール部分を切り取り線に沿って切り離したときに、連続して形成される開封線により、農薬や肥料等の内容物の散布に適する大きさの散布孔が開口するもので、広範囲に内容物を散布する用途に好適である。
散布する内容物は、粉末状ないしは顆粒状が好ましいが、液体であってもよく特に限定はされない。
【0021】
本実施形態の散布機能付き袋1は、
図1~2及び
図5に示すように、表面用フィルム11aと、裏面用フィルム11bの左辺部12及び右辺部13が熱融着によりシールされ、更に表面用フィルム11a及び裏面用フィルム11bの下端同士とが、角部(
図3(b)を参照)14を形成するように熱融着により斜めにシールされて袋が形成され、顆粒状の内容物を封入することができる。
【0022】
前記袋1のシール箇所は、少なくとも底辺部15がシールされていればよく、本実施形態のように、表面用フィルム11aと裏面用フィルム11bの左辺部12と右辺部13をシールした後に底辺部15をシールする以外に、表面用フィルム11a乃至裏面用フィルム11bいずれか1つを折り曲げ、底辺部15をシールし、更に左辺部12または右辺部13のいずれか1つをシールして前記袋1を形成してもよい。
【0023】
袋1の上部は開口されており、上部より内容物を投入して袋1の内部に収容できるが、通常の袋と同様に内容物を充填したのちシールして密封しても良い。
【0024】
袋1の大きさは、収容しようとする内容物の重さや量に応じて適宜決定することができる。
例えば、畑や菜園等で肥料や農薬等を散布する場合、肥料や農薬等を散布したい幅と袋1の幅L(
図1参照)を同等にすることで、目的の散布範囲に内容物を均一に散布することがより容易になる。
【0025】
袋1を形成する表面用フィルム11a及び裏面用フィルム11bは、少なくとも1層以上からなる合成樹脂製積層フィルムであって、熱融着により収容部を形成でき、かつ溶着できるものであればよく、熱可塑性樹脂が好ましい。なお、特に積層数や積層方法については特に限定されない。
表面用フィルム11a及び裏面用フィルム11bは、熱溶着可能なものとして、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン樹脂等が例示され、2層以上の構成の場合には、袋の外面側に商品の見栄えに影響する印刷性等が求められることからも、二軸延伸ナイロン、二軸延伸ポリプロピレン、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート等が例示される。
また、袋の内面側には、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂が例示される。
【0026】
袋1の底辺部15には、底辺部15の端に設けたノッチ(切り欠き)部16を起点とする切り取り線17に沿って切断すると、切り取り線17上の任意箇所に設けられる開封線18により散布孔19が開口し、内容物が散布孔19を通じて放散される(
図2及び
図3(a)を参照)。
【0027】
袋1の底辺部15は、底辺部15を切り取り線17に沿って切断したとき、散布孔19が開口するようにシールされる。切り取り線17は、袋1の密封性を補助するために、切断開始点にノッチ部16を設け、それに連なる切り取り線をミシン目やハーフカット等で形成するのが好ましく、フィルムの材質や加工コスト等も鑑みるとレーザー加工によるハーフカットでの形成方法が望ましい(
図3(b)を参照)。
【0028】
開口する散布孔19は2箇所以上形成されることが望ましく、散布速度を調整して孔数を設定してもよい。なお、散布孔19の形状は、開封線18の形状に依存し、曲線状が好ましい。台形等の角形状では、開封時に脱線し、開封が困難となる。
また、散布量を多くする場合は、各散布孔19間のシール部分の形状を角部14と同様に斜めにシールすればよい。
【0029】
更に、
図4に参照されるように散布孔19の孔径は、両端に形成される散布孔19の孔径を、両端以外に形成される散布孔19の孔径より小さくすることで、放散を均一にできる。孔径が同一であると、散布量にばらつきが生じ、均一な散布が不可となる。
袋1の下端部に散布を要する薬剤、肥料等が集積し、両端部の散布孔19から、より落下しようとする傾向があるため、この両端部の散布孔19を他の散布孔19より小さくすることにより、全体の散布孔19から薬剤等の落下が均一となる。
【0030】
また、熱融着により斜めにシールされて形成される角部14を有することで、散布した際に最後まで袋内に内容物が残らず、内容物の全量を排出できる。角部の形状は、斜めにシールされていれば良く、更に曲線状にシールされても良い。
【0031】
なお、ノッチ部16は、袋1の底部の切断開始用以外に、袋1の上部を大きく開口する開封用として2カ所以上設けてもよい。
【実施例】
【0032】
本発明に係る散布機能付き袋に関する実施例を示すことにより、本発明の効果をより明確なものとする。但し、本発明はこの実施例に何ら限定されるものではない。
【0033】
<除草剤散布用袋の作製>
幅300mm、高さ450mmの
図1に示すような散布機能付き袋を作製した。シート体として表基材/裏材の組み合わせは、二軸延伸ナイロンとポリエチレンフィルムから構成されるものを使用した。左辺部12、右辺部13及び底辺部15がシールされ、底辺部15には、レーザー加工によりシール部と未シール部を交互に設け、切り取り後に残っているシール部のシール幅が3.5mm~4.5mmとなるように設定した。
【0034】
<散布速度>
内容物量が、5kg及び10kgの散布袋にそれぞれ散布孔19の開口箇所を5箇所とし、1平米あたり約10~15g/秒となるように散布速度を設定した。
【0035】
内容物を除草剤として上記の条件を設定し検討した結果、各散布孔から除草剤が均一に排出されることが確認され、更に、散布作業終了後に袋には、除草剤が残っていないことも判り、効率良く内容物を全量散布することが可能であることがわかった。
【0036】
本発明は、上記実施形態以外にも本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変形を行うことが可能である。
例えば、袋1の上部に手提げ用開口部20が設けられた散布袋1であってもよく(
図5を参照)、袋1の上部の内面に嵌合具を設けて、袋1の上部を開閉自在に封じることができるようにしてもよい。
【0037】
また、手提げ用開口部20を利用して内容物を袋1に収容する場合は、袋の上部に必ずしも開口部を形成しなくてもよく、袋の上部は予め封止された状態とし、袋の上部の一部を切り取ることで、手提げ用開口部20が形成されるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、ハサミ等の道具を使うことなく、またシールを後から剥がすことなく、作業性よく切り取り線を切り離すだけで、開封線により開口部が形成され、開封作業の工数も必要がなく、散布用の開口部を容易に形成できるので、散布機能付き袋として好適に利用される。
【符号の説明】
【0039】
1:散布機能付き袋
11a:表面用フィルム
11b:裏面用フィルム
12:左辺部
13:右辺部
14:角部
15:底辺部
16:ノッチ部
17:切り取り線
18:開封線
19:散布孔
20:持ち手用開口部