(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】冷蔵庫、除霜方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
F25D 21/08 20060101AFI20241004BHJP
F25D 11/00 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
F25D21/08 A
F25D11/00 101B
(21)【出願番号】P 2020215196
(22)【出願日】2020-12-24
【審査請求日】2023-09-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100131152
【氏名又は名称】八島 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【氏名又は名称】美恵 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100148149
【氏名又は名称】渡邉 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100181618
【氏名又は名称】宮脇 良平
(74)【代理人】
【識別番号】100174388
【氏名又は名称】龍竹 史朗
(72)【発明者】
【氏名】小林 史典
(72)【発明者】
【氏名】諏訪 孝典
(72)【発明者】
【氏名】荒木 正雄
【審査官】笹木 俊男
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-283378(JP,A)
【文献】特開平05-157440(JP,A)
【文献】特開2012-167871(JP,A)
【文献】特開2017-020745(JP,A)
【文献】特開2008-057863(JP,A)
【文献】特開平08-285425(JP,A)
【文献】特開2013-242057(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 11/00 ~ 16/00
F25D 21/08
F25D 27/00 ~ 31/00
F25B 47/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却器に付着した霜を除霜するためのヒータと、
前記霜の量を示す着霜量を取得する着霜量取得手段と、
貯蔵室に貯蔵されている食品の量を示す食品量を取得する食品量取得手段と、
前記取得された着霜量と、前記取得された食品量とに基づいて、前記ヒータによる除霜運転時における前記貯蔵室の単位時間当たりの空気温度の上昇量を取得する温度上昇量取得手段と、
前記取得された上昇量に基づいて前記ヒータの除霜運転を制御する運転制御手段と、を備え
、
前記運転制御手段は、前記上昇量が予め定めた閾値以上の場合、前記除霜運転を開始し、前記上昇量が前記閾値より小さい場合、予め定めた時間経過後に前記除霜運転を開始する、冷蔵庫。
【請求項2】
前記着霜量取得手段は、扉開回数、扉開時間、庫外温度及び庫外湿度の内の少なくとも1つを使用して前記着霜量を算出する、請求項1に記載の冷蔵庫。
【請求項3】
前記食品量取得手段は、圧縮機の運転状態と、ファンの運転状態と、前記貯蔵室の空気温度と、庫外温度と、予め生成された学習済モデルとに基づいて、前記食品量を推論する、請求項1又は2に記載の冷蔵庫。
【請求項4】
前記学習済モデルをサーバからダウンロードされたデータに基づいて更新する学習済モデル更新手段をさらに備える、請求項3に記載の冷蔵庫。
【請求項5】
冷蔵庫が、
冷却器に付着した霜の量を示す着霜量を取得し、
貯蔵室に貯蔵されている食品の量を示す食品量を取得し、
前記取得した着霜量と、前記取得した食品量とに基づいて、ヒータによる除霜運転時における前記貯蔵室の単位時間当たりの空気温度の上昇量を取得し、
前記取得した上昇量
が予め定めた閾値以上の場合、前記ヒータの除霜運転を開始し、前記上昇量が前記閾値より小さい場合、予め定めた時間経過後に前記除霜運転を開始する制御を行う、除霜方法。
【請求項6】
冷蔵庫が備えるコンピュータを、
冷却器に付着した霜の量を示す着霜量を取得する着霜量取得手段、
貯蔵室に貯蔵されている食品の量を示す食品量を取得する食品量取得手段、
前記取得された着霜量と、前記取得された食品量とに基づいて、ヒータによる除霜運転時における前記貯蔵室の単位時間当たりの空気温度の上昇量を取得する温度上昇量取得手段、
前記取得された上昇量に基づいて前記ヒータの除霜運転を制御する運転制御手段、として機能させ
、
前記運転制御手段は、前記上昇量が予め定めた閾値以上の場合、前記除霜運転を開始し、前記上昇量が前記閾値より小さい場合、予め定めた時間経過後に前記除霜運転を開始する、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、冷蔵庫、除霜方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
冷蔵庫の貯蔵室内を冷却するための冷却器には、冷却運転中に外気や庫内貯蔵物からの水蒸気が付着する。付着した水蒸気は、冷却器表面で霜となり、冷蔵庫の冷却能力の低下の要因となる。
【0003】
一般的な冷蔵庫では、定期的に除霜運転を行い、冷却器に付着した霜を溶かして除去することで冷却能力を保っている。
【0004】
これに対し、特許文献1には、貯蔵室内の大幅な温度上昇を抑制することに加え、不要な除霜運転を行うことによる消費エネルギーの増加を抑制するために、冷蔵庫の実使用状況に合わせた除霜運転を実行する冷蔵庫が記載されている。
【0005】
特許文献1に記載の冷蔵庫は、圧縮機の運転時間及び扉の開時間を積算した積算値を算出し、算出した積算値に応じて除霜運転を実行するタイミングを調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般に、冷蔵庫においては、貯蔵されている食品の量(以下、食品量という。)によって、貯蔵室内の熱容量が変動し、貯蔵室内の空気温度の上昇傾向が変動する。
【0008】
しかしながら、上記の特許文献1に開示される技術(他の従来技術も同様)では、食品量を考慮していないため、例えば、食品量が大きい場合、貯蔵室内の熱容量が大きく貯蔵室内の空気温度が上昇しにくいにもかかわらず、早期に除霜運転を行ってしまう可能性、換言すると、不要な除霜運転を行ってしまい、無用に消費エネルギーを増加させてしまう可能性がある。一方、食品量が小さい場合、貯蔵室内の熱容量が小さいため、冷却器に付着している霜の量が小さくても温度は上昇しやすくなり、早期に除霜運転を行わないと過大な温度上昇が生じてしまう可能性がある。このように、従来の技術では、不要な除霜運転を実行したり、貯蔵室内の空気温度の過大な上昇を招いてしまうという懸念がある。
【0009】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであり、貯蔵室内の食品量を考慮した適切なタイミングで除霜運転を実行することで、貯蔵室内の空気温度の上昇を抑制し、且つ、無用な消費エネルギーの増加を抑制することが可能な冷蔵庫、除霜方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本開示に係る冷蔵庫は、
冷却器に付着した霜を除霜するためのヒータと、
前記霜の量を示す着霜量を取得する着霜量取得手段と、
貯蔵室に貯蔵されている食品の量を示す食品量を取得する食品量取得手段と、
前記取得された着霜量と、前記取得された食品量とに基づいて、前記ヒータによる除霜運転時における前記貯蔵室の単位時間当たりの空気温度の上昇量を取得する温度上昇量取得手段と、
前記取得された上昇量に基づいて前記ヒータの除霜運転を制御する運転制御手段と、を備え、
前記運転制御手段は、前記上昇量が予め定めた閾値以上の場合、前記除霜運転を開始し、前記上昇量が前記閾値より小さい場合、予め定めた時間経過後に前記除霜運転を開始する。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、適切なタイミングで除霜運転を実行することができ、貯蔵室内の空気温度の上昇を抑制し、且つ、無用な消費エネルギーの増加を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図3】実施の形態1における冷蔵庫の制御システムの構成を示すブロック図
【
図4】実施の形態1における冷蔵庫が備える制御装置が実行する除霜運転制御処理の手順を示すフローチャート
【
図5】実施の形態2における冷蔵庫の制御システムの構成を示すブロック図
【
図6】実施の形態2における冷蔵庫が備える制御装置が実行する除霜運転制御処理の手順を示すフローチャート
【
図7】実施の形態3における冷蔵庫システムの全体構成を示す図
【
図8】実施の形態3における冷蔵庫の制御システムの構成を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1における冷蔵庫1の斜視図である。冷蔵庫1は、本開示に係る冷蔵庫の一例である。冷蔵庫1は、断熱箱体10と、断熱箱体10を開閉するための断熱扉11a,11b,11c,11d,11eとを備える。断熱箱体10は、外箱と、内箱と、外箱と内箱の間に封入された断熱材料により構成される。冷蔵庫1は、断熱箱体10の内部を仕切る仕切り部品によって複数の貯蔵室に分けられている。本実施の形態では、冷蔵庫1は、貯蔵室として、冷蔵室12と、製氷室13と、温度切替室14と、冷凍室15と、野菜室16とを有する。
【0015】
図2は、冷蔵庫1における
図1に示すA-A線の断面図である。
図2に示すように、冷蔵庫1は、内部に、上記の各貯蔵室(温度切替室14は図示しない)と、ファン20、冷却器30、除霜用のヒータ40等が配置された冷却器室17と、冷却器室17と各貯蔵室をつなぐ吹出風路ダクト18及び戻り風路ダクト(図示せず)とを有する。
【0016】
冷蔵庫1において、ファン20を駆動させることで冷却器室17で冷却された冷気が吹出風路ダクト18を通って各貯蔵室へ送られ、各貯蔵室に設けられた吹出口から冷気が吹き出し、各貯蔵室内が冷却される。冷気は各貯蔵室に設けられた戻り口から冷却器室17と各貯蔵室をつなぐ戻り風路ダクトを通り冷却器室17へ流れる。このようにして庫内を冷気が循環する。
【0017】
続いて、冷蔵庫1における冷却制御について説明する。
図3は、冷蔵庫1が備える、冷却制御を担う制御システム100の構成を示すブロック図である。制御システム100は、制御装置101と、扉開閉センサ102と、外気温度センサ103と、外気湿度センサ104と、食品量検知センサ105と、ファン20と、ヒータ40と、圧縮機50とで構成される。
【0018】
制御装置101は、冷蔵庫1が有する図示しない機械室に設置される。制御装置101は、何れも図示しないが、中枢部であるCPU(Central Processing Unit)と、ROM(Read Only Memory)と、RAM(Random Access Memory)と、通信インタフェースと、読み書き可能な不揮発性の半導体メモリで構成される補助記憶装置とを備え、制御システム100を統括的に制御する。読み書き可能な不揮発性の半導体メモリは、例えば、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)、フラッシュメモリ等である。
【0019】
上記のROMは、ファームウェア及び当該ファームウェアの実行時に使用されるデータ等を記憶する。上記のRAMは、CPUの作業領域として使用される。上記の通信インタフェースは、周辺機器(扉開閉センサ102、外気温度センサ103、外気湿度センサ104、食品量検知センサ105、ファン20、ヒータ40、圧縮機50等)と通信するためのハードウェアである。上記の補助記憶装置は、冷却制御に係る処理が記述されたプログラム(以下、冷却制御プログラムという。)を含む各種のプログラムと、これらのプログラムの実行時に使用されるデータとを記憶する。
【0020】
冷却制御プログラム及び冷却制御プログラムを更新するための更新プログラムは、何れも、図示しないサーバから冷蔵庫1にダウンロードすることができ、また、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disc)、光磁気ディスク、USB(Universal Serial Bus)メモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、メモリカード等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納して配布することも可能である。
【0021】
扉開閉センサ102は、扉、即ち、断熱扉11a,11b,11c,11d,11eの開閉を検知する。扉開閉センサ102は、検知した信号(開又は閉を示す信号)を通信線を介して制御装置101に出力する。
【0022】
外気温度センサ103は、外気温度(具体的には、庫外の空気温度)を計測し、計測した外気温度を示すデータを通信線を介して制御装置101に出力する。外気湿度センサ104は、外気湿度(具体的には、庫外の湿度)を計測し、計測した外気湿度を示すデータを通信線を介して制御装置101に出力する。
【0023】
食品量検知センサ105は、冷蔵庫1に貯蔵されている食品の量(以下、食品量という。)を検知する。食品量検知センサ105は、光センサ、重量センサ等で構成される。例えば、食品量検知センサ105が重量センサで構成される場合、食品量検知センサ105は、食品が置かれる棚に設置され、当該棚に置かれた食品の重量を直接計測する。食品量検知センサ105は、検知した食品量を示すデータを通信線を介して制御装置101に出力する。
【0024】
ファン20は、上述したように、冷却器室17に配置され、冷蔵庫1が備える図示しない冷凍サイクルによって冷却された冷却器30周辺の空気を、吹出風路ダクト18を介して各貯蔵室に供給する。ファン20は、通信線を介して制御装置101と通信可能に接続され、制御装置101からの指示に従って、運転を開始又は停止し、また、回転数、即ち、送風量を変更する。
【0025】
ヒータ40は、本開示に係るヒータの一例である。ヒータ40は、上述したように、冷却器室17に配置され、冷却器30に付着した霜を溶かすための除霜用のヒータである。ヒータ40は、通信線を介して制御装置101と通信可能に接続され、制御装置101からの指示に従って運転を開始又は停止する。
【0026】
圧縮機50は、冷蔵庫1が備える図示しない冷凍サイクルの構成部であり、図示しない機械室に配置され、冷媒を圧縮して温度及び圧力を上昇させる。圧縮機50は、通信線を介して制御装置101と通信可能に接続され、制御装置101からの指令に従って、運転を開始又は停止し、また、回転数を変更する。
【0027】
なお、制御システム100には、上記の他、貯蔵室内の空気温度を計測する貯蔵室温度センサ、吹出風路ダクト18に配置されるダンパ等、一般的な冷蔵庫が備える冷却制御に係る構成が含まれる。
【0028】
続いて、制御装置101の機能について説明する。
図3に示すように、制御装置101は、機能的には、着霜量算出部110と、食品量算出部111と、温度上昇量算出部112と、判定部113と、運転制御部114とを備える。これらの機能部は、制御装置101のCPUが、補助記憶装置に記憶される上述した冷却制御プログラムを実行することで実現される。
【0029】
なお、
図3に示す制御装置101の機能は、本実施の形態における冷蔵庫1の特徴的な機能である。この他にも、制御装置101は、一般的な冷蔵庫と同様、扉の開閉、食品の収納等によって庫内に熱負荷が生じると、冷却運転を開始して庫内温度が設定温度に保たれるようにするための機能部も備えるが、当該一般的な機能を実現するための構成については説明を省略する。
【0030】
着霜量算出部110は、本開示に係る着霜量取得手段の一例である。着霜量算出部110は、冷却器30に付着した霜の量(以下、着霜量Vfという。)を算出する。冷却器30への着霜は、庫内に存在する水蒸気が庫内の冷気の循環に伴い冷却器30に到達し、霜となることで生じる。水蒸気が庫内へ侵入する経路としては、主に扉の開閉での換気による外気侵入の影響が大きい。外気から庫内へ侵入する水蒸気量は、扉開回数、扉開時間、庫内容量、外気温度、外気湿度、扉開閉による庫内と外気の換気効率αに基づいて概算することができる。
【0031】
上記の扉開回数、扉開時間は、扉開閉センサ102の検知結果から導出できる。なお、扉開回数は、前回の除霜運転の完了から現在までに扉が開いた通算回数であり、扉開時間は、前回の除霜運転の完了から現在までの扉開時の時間を通算した時間である。
【0032】
また、外気温度及び外気湿度は、それぞれ外気温度センサ103及び外気湿度センサ104の計測結果から得られる。また、換気効率α及び庫内容積に関する情報は、制御装置101が備える補助記憶装置に予め記憶されている。
【0033】
食品量算出部111は、本開示に係る食品量取得手段の一例である。食品量算出部111は、食品量検知センサ105の検知結果に基づいて食品量Mfを算出する。
【0034】
温度上昇量算出部112は、本開示に係る温度上昇量取得手段の一例である。温度上昇量算出部112は、着霜量算出部110によって算出された着霜量Vfと、食品量算出部111によって算出された食品量Mfとに基づいて、除霜運転時の貯蔵室内の単位時間当たりの空気温度の上昇量(換言すると、温度上昇の速度)である温度上昇量ΔTdを算出する。
【0035】
以下、冷却器30の着霜量Vf及び貯蔵室内の食品量Mfが除霜運転時の貯蔵室内の温度上昇量ΔTdに与える影響について説明する。
【0036】
冷却器30の着霜量Vfが増加すると、除霜運転時の貯蔵室内の温度上昇量ΔTdは増加する。これは、冷却器30の着霜量Vfが増加すると、除霜に必要な熱量が増加して除霜用のヒータ40への通電時間が増加し、ヒータ40から放熱される熱量が増加するためである。ヒータ40からの熱は、霜の融解だけでなく、貯蔵室内の温度上昇に対しても作用するため、冷却器30の着霜量Vfが大きいと温度上昇量ΔTdが増加する。
【0037】
一方、貯蔵室内の食品量Mfが増加すると、除霜運転時の貯蔵室内の温度上昇量ΔTdは減少する。これは、貯蔵室内の食品量Mfが増加すると、貯蔵室内の熱容量が大きくなるためである。貯蔵室内の食品量Mfが大きい場合では、食品量Mfが小さい場合に比べ、除霜運転に伴い同一の熱量が加えられたときでも、貯蔵室内の温度への影響が小さくなり、貯蔵室内の温度上昇量ΔTdが低下する。
【0038】
以上の関係を示すデータは、予めデータベース115に登録されている。データベース115は、冷却器の着霜量Vfと、貯蔵室内の食品量Mfと、除霜運転時の貯蔵室内の温度上昇量ΔTdとの関係を示すデータが登録されたデータベースであり、制御装置101の補助記憶装置に記憶される。温度上昇量算出部112は、着霜量算出部110によって算出された着霜量Vfと、食品量算出部111によって算出された食品量Mfとに基づいて、データベース115から上記のデータを読み出すことで、除霜運転時の貯蔵室内の温度上昇量ΔTdを算出する。
【0039】
判定部113は、温度上昇量算出部112によって算出された温度上昇量ΔTdと、予め設定された除霜運転時における貯蔵室内の温度上昇量の閾値ΔTd0とを比較し、温度上昇量ΔTdが閾値ΔTd0以上であるか否かを判定する。温度上昇量ΔTdが閾値ΔTd0以上の場合、判定部113は、運転制御部114に対して除霜運転の開始を指示する。一方、温度上昇量ΔTdが閾値ΔTd0より小さい場合、判定部113は、予め定めた時間Δtwが経過した後、運転制御部114に対して除霜運転の開始を指示する。
【0040】
つまり、温度上昇量ΔTdが閾値ΔTd0以上の場合は、食品の保存性を優先して、温度上昇量ΔTdがこれ以上大きくならないように直ちに除霜運転を開始し、一方、温度上昇量ΔTdが閾値ΔTd0より小さい場合は、電力の抑制、即ち、省エネルギー性を優先して直ちに除霜運転を行わず、一定時間待機することで、不要な除霜運転を抑制し、時間平均の庫内温度の上昇量を抑制する。
【0041】
運転制御部114は、本開示に係る運転制御手段の一例である。運転制御部114は、判定部113から除霜運転の開始指示を受けると、除霜運転を開始する。具体的には、運転制御部114は、ファン20及び圧縮機50に対して運転の停止を指示するとともに、ヒータ40に対して運転の開始(即ち、除霜運転の開始)を指示する。
【0042】
図4は、制御装置101が実行する除霜運転制御処理の手順を示すフローチャートである。
(ステップS101)
制御装置101は、予め定めた時間Δtvが経過するまで処理の実行を待機する。時間Δtvが経過すると、制御装置101の処理は、ステップS102に遷移する。
【0043】
(ステップS102)
制御装置101は、扉開閉センサ102の検知結果と、外気温度センサ103によって計測された外気温度と、外気湿度センサ104によって計測された外気湿度と、補助記憶装置から読み出した換気効率α及び庫内容積に関する情報とに基づいて、冷却器30の着霜量Vfを算出する。その後、制御装置101の処理は、ステップS103に遷移する。
【0044】
(ステップS103)
制御装置101は、算出した着霜量Vfが、予め設定された着霜量の閾値V0以上であるか否かを判定する。着霜量Vfが閾値V0未満の場合(判定結果;NO)、制御装置101の処理はステップS101に戻る。一方、着霜量Vfが閾値V0以上の場合(判定結果;YES)、制御装置101の処理は、ステップS104に遷移する。
【0045】
(ステップS104)
制御装置101は、食品量検知センサ105の検知結果に基づいて食品量Mfを算出する。その後、制御装置101の処理は、ステップS105に遷移する。
【0046】
(ステップS105)
制御装置101は、算出した着霜量Vfと、算出した食品量Mfとに基づいて、除霜運転時の貯蔵室内の温度上昇量ΔTdを算出する。その後、制御装置101の処理は、ステップS106に遷移する。
【0047】
(ステップS106)
制御装置101は、算出した温度上昇量ΔTdが、予め設定された除霜運転時における貯蔵室内の温度上昇量の閾値ΔTd0以上であるか否かを判定する。温度上昇量ΔTdが閾値ΔTd0以上の場合(判定結果;YES)、制御装置101の処理は、ステップS107に遷移する。一方、温度上昇量ΔTdが閾値ΔTd0未満の場合(判定結果;NO)、制御装置101の処理は、ステップS108に遷移する。
【0048】
(ステップS107)
制御装置101は、ファン20及び圧縮機50に対して運転の停止を指示するとともに、ヒータ40に対して運転の開始を指示することで、除霜運転を開始する。その後、制御装置101の処理は、ステップS109に遷移する。
【0049】
(ステップS108)
制御装置101は、予め定めた時間ΔTwが経過するまで処理の実行を待機する。その後、制御装置101の処理は、ステップS107に遷移する。
【0050】
(ステップS109)
制御装置101は、除霜運転が完了したか否かを判定する。例えば、制御装置101は、除霜運転を開始してからの経過時間が予め定めた時間に到達した場合に除霜運転が完了したと判定してもよいし、冷却器30の表面の温度(以下、冷却器温度という。)が予め定めた温度に到達した場合に除霜運転が完了したと判定してもよい。後者の場合、制御システム100は、冷却器温度を計測する温度センサ(図示せず)をさらに備えるものとする。除霜運転が完了していない場合(判定結果;NO)、制御装置101は、引き続きステップS109の処理を実行する。一方、除霜運転が完了した場合(判定結果;YES)、制御装置101の処理は、ステップS101に戻る。
【0051】
以上説明したように、実施の形態1の冷蔵庫1によれば、貯蔵室内の食品量を考慮した適切なタイミングで除霜運転を実行するため、貯蔵室内の空気温度の上昇を抑制し、且つ、無用な消費エネルギーの増加を抑制することが可能となる。
【0052】
実施の形態2.
続いて、実施の形態2について説明する。なお、以下の説明において、実施の形態1と共通する構成要素等については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0053】
図5は、本実施の形態の冷蔵庫1が備える、冷却制御を担う制御システム100Aの構成を示すブロック図である。制御システム100Aは、制御装置101Aと、扉開閉センサ102と、外気温度センサ103と、外気湿度センサ104と、貯蔵室温度センサ106と、圧縮機運転状態検知部107と、ファン運転状態検知部108と、ファン20と、ヒータ40と、圧縮機50とで構成される。
【0054】
制御装置101Aは、冷蔵庫1が有する図示しない機械室に設置される。制御装置101Aは、何れも図示しないが、中枢部であるCPUと、ROMと、RAMと、通信インタフェースと、読み書き可能な不揮発性の半導体メモリで構成される補助記憶装置とを備え、制御システム100Aを統括的に制御する。読み書き可能な不揮発性の半導体メモリは、例えば、EEPROM、フラッシュメモリ等である。
【0055】
上記のROMは、ファームウェア及び当該ファームウェアの実行時に使用されるデータ等を記憶する。上記のRAMは、CPUの作業領域として使用される。上記の通信インタフェースは、周辺機器(扉開閉センサ102、外気温度センサ103、外気湿度センサ104、貯蔵室温度センサ106、圧縮機運転状態検知部107、ファン運転状態検知部108、ファン20、ヒータ40、圧縮機50等)と通信するためのハードウェアである。上記の補助記憶装置は、冷却制御に係る処理が記述されたプログラム(以下、冷却制御プログラムという。)を含む各種のプログラムと、これらのプログラムの実行時に使用されるデータとを記憶する。
【0056】
冷却制御プログラム及び冷却制御プログラムを更新するための更新プログラムは、何れも、図示しないサーバから冷蔵庫1にダウンロードすることができ、また、CD-ROM、DVD、光磁気ディスク、USBメモリ、HDD、SSD、メモリカード等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納して配布することも可能である。
【0057】
扉開閉センサ102、外気温度センサ103及び外気湿度センサ104は、実施の形態1と同様であり、説明を省略する。
【0058】
貯蔵室温度センサ106は、貯蔵室内の空気温度(以下、貯蔵室温度という。)を計測し、計測した貯蔵室温度を示すデータを通信線を介して制御装置101Aに出力する。
【0059】
圧縮機運転状態検知部107は、圧縮機50の運転状態を検知し、検知した圧縮機50の運転状態を示すデータを通信線を介して制御装置101Aに出力する。圧縮機運転状態検知部107は、例えば、圧縮機50の運転周波数、動作電流値等を計測するセンサで構成される。
【0060】
ファン運転状態検知部108は、ファン20の運転状態を検知し、検知したファン20の運転状態を示すデータを通信線を介して制御装置101Aに出力する。ファン運転状態検知部108は、例えば、ファンモータ(図示せず)の動作電流値を計測するセンサで構成される。
【0061】
ファン20、ヒータ40及び圧縮機50は、実施の形態1と同様であり、説明を省略する。なお、制御システム100Aには、上記の他、吹出風路ダクト18に配置されるダンパ等、一般的な冷蔵庫が備える冷却制御に係る構成が含まれる。
【0062】
続いて、制御装置101Aの機能について説明する。
図5に示すように、制御装置101Aは、機能的には、着霜量算出部110と、温度上昇量算出部112と、判定部113と、運転制御部114と、食品量推論部116とを備える。これらの機能部は、制御装置101AのCPUが、補助記憶装置に記憶される上述した冷却制御プログラムを実行することで実現される。
【0063】
なお、
図5に示す制御装置101Aの機能は、本実施の形態における冷蔵庫1の特徴的な機能である。この他にも、制御装置101Aは、一般的な冷蔵庫と同様、扉の開閉、食品の収納等によって庫内に熱負荷が生じると、冷却運転を開始して庫内温度が設定温度に保たれるようにするための機能部も備えるが、当該一般的な機能を実現するための構成については説明を省略する。
【0064】
着霜量算出部110は、本開示に係る着霜量取得手段の一例である。着霜量算出部110は、実施の形態1と同様、扉開閉センサ102の検知結果と、外気温度センサ103によって計測された外気温度と、外気湿度センサ104によって計測された外気湿度とに基づいて、冷却器30の着霜量Vfを算出する。
【0065】
食品量推論部116は、本開示に係る食品量取得手段の一例である。食品量推論部116は、学習済モデル117を用いて食品量Mfを推論する。具体的には、食品量推論部116は、外気温度センサ103によって計測された外気温度と、貯蔵室温度センサ106によって計測された貯蔵室温度と、圧縮機運転状態検知部107によって検知された圧縮機50の運転状態と、ファン運転状態検知部108によって検知されたファン20の運転状態とを学習済モデル117に入力することで、外気温度、貯蔵室温度、圧縮機50の運転状態及びファン20の運転状態から推論される食品量Mfを取得する。
【0066】
学習済モデル117は、当該冷蔵庫1の出荷前に生成され、予め制御装置101Aの補助記憶装置に保存されている。学習済モデル117は、圧縮機50及びファン20の運転が停止した状態、即ち、貯蔵室内を冷却していない状態での貯蔵室内の単位時間当たりの貯蔵室内の温度の上昇量(以下、温度上昇速度という。)を算出し、算出した温度上昇速度と、その際の貯蔵室内の食品量との関係から生成される。なお、貯蔵室内を冷却していない状態での温度上昇速度は、1区間(冷却運転の停止から次に冷却運転が開始されるまでの時間)で算出される値を用いてもよいし、複数区間で算出された値の平均値を用いてもよい。
【0067】
貯蔵室内を冷却していない状態では、外気によって断熱壁、扉を通過して、熱が貯蔵室内に侵入するため、徐々に温度が上昇する。このとき、外気による貯蔵室内への熱の侵入量は、外気温度と貯蔵室温度との差に比例して増加する。このため、外気温度と貯蔵室温度との差が小さければ、温度上昇速度は小さくなり、反対に、外気温度と貯蔵室温度との差が大きければ温度上昇速度は大きくなる。
【0068】
また、貯蔵室内の食品量が大きい場合は、貯蔵室内の熱容量が大きくなるため、温度上昇速度は小さくなる。反対に、貯蔵室内の食品量が小さい場合は、貯蔵室内の熱容量が小さくなるため、温度上昇速度は大きくなる。
【0069】
上記の現象を利用することで、外気温度、貯蔵室温度、圧縮機50の運転状態及びファン20の運転状態から、貯蔵室内を冷却していない状態での温度上昇速度を算出し、食品量Mfを推論し、出力することができる。
【0070】
温度上昇量算出部112は、本開示に係る温度上昇量取得手段の一例である。温度上昇量算出部112は、着霜量算出部110によって算出された着霜量Vfと、食品量推論部116によって出力された食品量Mfとに基づいて、除霜運転時の貯蔵室内の単位時間当たりの空気温度の上昇量(換言すると、温度上昇の速度)である温度上昇量ΔTdを算出する。
【0071】
判定部113は、実施の形態1と同様、温度上昇量算出部112によって算出された温度上昇量ΔTdと、予め設定された除霜運転時における貯蔵室内の温度上昇量の閾値ΔTd0とを比較し、温度上昇量ΔTdが閾値ΔTd0以上であるか否かを判定する。温度上昇量ΔTdが閾値ΔTd0以上の場合、判定部113は、運転制御部114に対して除霜運転の開始を指示する。一方、温度上昇量ΔTdが閾値ΔTd0より小さい場合、判定部113は、予め定めた時間Δtwが経過した後、運転制御部114に対して除霜運転の開始を指示する。
【0072】
運転制御部114は、本開示に係る運転制御手段の一例である。運転制御部114は、実施の形態1と同様、判定部113から除霜運転の開始指示を受けると、ファン20及び圧縮機50に対して運転の停止を指示するとともに、ヒータ40に対して運転の開始を指示する。
【0073】
図6は、制御装置101Aが実行する除霜運転制御処理の手順を示すフローチャートである。なお、以下に示す除霜運転制御処理は、貯蔵室内を冷却していない状態、即ち、冷却運転が停止していることを条件に実行される。
(ステップS201)
制御装置101Aは、予め定めた時間Δtvが経過するまで処理の実行を待機する。時間Δtvが経過すると、制御装置101Aの処理は、ステップS202に遷移する。
【0074】
(ステップS202)
制御装置101Aは、扉開閉センサ102の検知結果と、外気温度センサ103によって計測された外気温度と、外気湿度センサ104によって計測された外気湿度と、補助記憶装置から読み出した換気効率α及び庫内容積に関する情報とに基づいて、冷却器30の着霜量Vfを算出する。その後、制御装置101Aの処理は、ステップS203に遷移する。
【0075】
(ステップS203)
制御装置101Aは、算出した着霜量Vfが、予め設定された着霜量の閾値V0以上であるか否かを判定する。着霜量Vfが閾値V0未満の場合(判定結果;NO)、制御装置101Aの処理はステップS201に戻る。一方、着霜量Vfが閾値V0以上の場合(判定結果;YES)、制御装置101Aの処理は、ステップS204に遷移する。
【0076】
(ステップS204)
制御装置101Aは、外気温度センサ103によって計測された外気温度と、貯蔵室温度センサ106によって計測された貯蔵室温度と、圧縮機運転状態検知部107によって検知された圧縮機50の運転状態と、ファン運転状態検知部108によって検知されたファン20の運転状態と、学習済モデル117とに基づいて食品量Mfを推論する。その後、制御装置101Aの処理は、ステップS205に遷移する。
【0077】
(ステップS205)
制御装置101Aは、算出した着霜量Vfと、推論した食品量Mfとに基づいて、除霜運転時の貯蔵室内の温度上昇量ΔTdを算出する。その後、制御装置101Aの処理は、ステップS206に遷移する。
【0078】
(ステップS206)
制御装置101Aは、算出した温度上昇量ΔTdが、予め設定された除霜運転時における貯蔵室内の温度上昇量の閾値ΔTd0以上であるか否かを判定する。温度上昇量ΔTdが閾値ΔTd0以上の場合(判定結果;YES)、制御装置101Aの処理は、ステップS207に遷移する。一方、温度上昇量ΔTdが閾値ΔTd0未満の場合(判定結果;NO)、制御装置101Aの処理は、ステップS208に遷移する。
【0079】
(ステップS207)
制御装置101Aは、ファン20及び圧縮機50に対して運転の停止を指示するとともに、ヒータ40に対して運転の開始を指示することで、除霜運転を開始する。その後、制御装置101Aの処理は、ステップS209に遷移する。
【0080】
(ステップS208)
制御装置101Aは、予め定めた時間Δtwが経過するまで処理の実行を待機する。その後、制御装置101Aの処理は、ステップS207に遷移する。
【0081】
(ステップS209)
制御装置101Aは、除霜運転が完了したか否かを判定する。例えば、制御装置101Aは、除霜運転を開始してからの経過時間が予め定めた時間に到達した場合に除霜運転が完了したと判定してもよいし、冷却器30の表面の温度(以下、冷却器温度という。)が予め定めた温度に到達した場合に除霜運転が完了したと判定してもよい。後者の場合、制御システム100Aは、冷却器温度を計測する温度センサ(図示せず)をさらに備えるものとする。除霜運転が完了していない場合(判定結果;NO)、制御装置101Aは、引き続きステップS209の処理を実行する。一方、除霜運転が完了した場合(判定結果;YES)、制御装置101Aの処理は、ステップS201に戻る。
【0082】
以上説明したように、実施の形態2の冷蔵庫1によれば、貯蔵室内の食品量を考慮した適切なタイミングで除霜運転を実行するため、貯蔵室内の空気温度の上昇を抑制し、且つ、無用な消費エネルギーの増加を抑制することが可能となる。
【0083】
また、光センサ、重量センサ等を必要とせずに、貯蔵室内の食品量を取得するため、低コスト化が図れる。
【0084】
実施の形態3.
続いて、実施の形態3について説明する。なお、以下の説明において、実施の形態2と共通する構成要素等については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0085】
図7は、実施の形態3における冷蔵庫システム2の全体構成を示す図である。冷蔵庫システム2は、各住宅Hに設置される、冷蔵庫3及びルータ4と、サーバ5と、各ユーザに所持されるユーザ端末6とを備える。
【0086】
冷蔵庫3は、本開示に係る冷蔵庫の一例である。冷蔵庫3は、実施の形態2の冷蔵庫1で実現される機能を包含し、さらに、いわゆるIoT(Internet of Things)機能を実現するための図示しない構成を有する。冷蔵庫3は、無線LANルータであるルータ4と無線にて通信接続し、ルータ4を介してサーバ5と通信し、サーバ5から冷蔵庫3の使用に際して有意なデータを取得する。
【0087】
サーバ5は、冷蔵庫3のメーカ、販売会社等によって設置及び運用される、いわゆるクラウドサーバであり、インターネット等の広域ネットワークNに接続される。サーバ5は、各住宅Hの冷蔵庫3に関するデータ(機種毎の最新の学習済モデルを含む。)を集約して管理する。
【0088】
ユーザ端末6は、ユーザによって所持される電子機器であり、例えば、スマートフォン、タブレット端末等のスマートデバイスである。ユーザ端末6には、当該冷蔵庫システム2によって提供されるIoTサービスを受けるためのアプリケーションプログラム(以下、IoTアプリという。)がインストールされている。
【0089】
図8は、本実施の形態の冷蔵庫3が備える、冷却制御を担う制御システム100Bの構成を示すブロック図である。制御システム100Bは、制御装置101Bと、扉開閉センサ102と、外気温度センサ103と、外気湿度センサ104と、貯蔵室温度センサ106と、圧縮機運転状態検知部107と、ファン運転状態検知部108と、ファン20と、ヒータ40と、圧縮機50とで構成される。
【0090】
制御装置101Bは、冷蔵庫3が有する図示しない機械室に設置される。制御装置101Bは、何れも図示しないが、中枢部であるCPUと、ROMと、RAMと、通信インタフェースと、読み書き可能な不揮発性の半導体メモリで構成される補助記憶装置とを備え、制御システム100Bを統括的に制御する。読み書き可能な不揮発性の半導体メモリは、例えば、EEPROM、フラッシュメモリ等である。
【0091】
上記のROMは、ファームウェア及び当該ファームウェアの実行時に使用されるデータ等を記憶する。上記のRAMは、CPUの作業領域として使用される。上記の通信インタフェースは、周辺機器(扉開閉センサ102、外気温度センサ103、外気湿度センサ104、貯蔵室温度センサ106、圧縮機運転状態検知部107、ファン運転状態検知部108、ファン20、ヒータ40、圧縮機50等)と通信するためのハードウェアである。上記の補助記憶装置は、冷却制御に係る処理が記述されたプログラム(以下、冷却制御プログラムという。)を含む各種のプログラムと、これらのプログラムの実行時に使用されるデータとを記憶する。
【0092】
冷却制御プログラム及び冷却制御プログラムを更新するための更新プログラムは、何れも、サーバ5又は図示しない他のサーバから冷蔵庫3にダウンロードすることができ、また、CD-ROM、DVD、光磁気ディスク、USBメモリ、HDD、SSD、メモリカード等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納して配布することも可能である。
【0093】
扉開閉センサ102、外気温度センサ103、外気湿度センサ104、貯蔵室温度センサ106、圧縮機運転状態検知部107、ファン運転状態検知部108、ファン20、ヒータ40及び圧縮機50は、実施の形態2と同様であり、説明を省略する。なお、制御システム100Bには、上記の他、吹出風路ダクト18に配置されるダンパ等、一般的な冷蔵庫が備える冷却制御に係る構成が含まれる。
【0094】
続いて、制御装置101Bの機能について説明する。
図8に示すように、制御装置101Bは、機能的には、着霜量算出部110と、温度上昇量算出部112と、判定部113と、運転制御部114と、食品量推論部116と、学習済モデル更新部118とを備える。これらの機能部は、制御装置101BのCPUが、補助記憶装置に記憶される上述した冷却制御プログラムを実行することで実現される。
【0095】
なお、
図8に示す制御装置101Bの機能は、本実施の形態における冷蔵庫3の特徴的な機能である。この他にも、制御装置101Bは、一般的な冷蔵庫と同様、扉の開閉、食品の収納等によって庫内に熱負荷が生じると、冷却運転を開始して庫内温度が設定温度に保たれるようにするための機能部も備えるが、当該一般的な機能を実現するための構成については説明を省略する。
【0096】
制御装置101Bの機能は、学習済モデル更新部118を備える点が実施の形態2の制御装置101Aと相違する。学習済モデル更新部118は、本開示に係る学習済モデル更新手段の一例である。学習済モデル更新部118は、サーバ5からダウンロードされた学習済モデルを、補助記憶装置に記憶される学習済モデル117に上書きして更新する。
【0097】
ユーザは、IoTアプリを操作して、サーバ5に対して学習済モデルのダウンロードを要求することができる。その際、ユーザは、冷蔵庫3の機種を指定して、当該冷蔵庫3に適した最新の学習済モデルのダウンロードを要求することができる。なお、最新の学習済モデルが生成されると、サーバ5が自動的に対応する冷蔵庫3へ当該学習済モデルを送信する構成であってもよい。
【0098】
以上説明したように、実施の形態3の冷蔵庫3によれば、貯蔵室内の食品量を考慮した適切なタイミングで除霜運転を実行するため、貯蔵室内の空気温度の上昇を抑制し、且つ、無用な消費エネルギーの増加を抑制することが可能となる。
【0099】
また、光センサ、重量センサ等を必要とせずに、貯蔵室内の食品量を取得するため、低コスト化が図れる。
【0100】
また、冷蔵庫3は、最新の学習済モデル117を保持するため、食品量の推論精度が向上し、結果として、より適切なタイミングで除霜運転を実行することができる。
【0101】
本開示は、上記の各実施の形態に限定されず、本開示の要旨を逸脱しない範囲での種々の変更は勿論可能である。
【0102】
例えば、実施の形態2の冷蔵庫1において、学習済モデルを生成する学習済モデル生成部をさらに備える構成にしてもよい。同様に、実施の形態3の冷蔵庫3において、学習済モデル生成部をさらに備える構成にしてもよい。
【0103】
上記において、冷蔵庫3が学習済モデル生成部を備える場合、当該冷蔵庫3は、家庭環境が類似する他の家庭の冷蔵庫3によって生成された学習済モデルをサーバ5を介して取得できる構成であってもよい。この場合、冷蔵庫3のユーザは、サーバ5に対して、当該冷蔵庫3の機種に加え、当該家庭の家族構成等の情報を指定して学習済モデルのダウンロードを要求すればよい。
【0104】
また、冷蔵庫3が学習済モデル生成部を備える場合、学習済モデルの生成に必要な学習用データをサーバ5を介して他の1又は複数の冷蔵庫3から取得してもよい。
【0105】
また、実施の形態1,2の冷蔵庫1及び実施の形態3の冷蔵庫3において、温度上昇量算出部112に代えて温度上昇推論部を備えるようにして、着霜量と、食品量と、予め保持する、除霜運転時の貯蔵室内の温度上昇量ΔTdを推論するための学習済モデル(以下、温度上昇量推論用モデルという。)とに基づいて温度上昇量ΔTdを推論してもよい。
【0106】
上記において、冷蔵庫3が温度上昇推論部を備える場合、冷蔵庫3は、サーバ5を介して適宜最新の温度上昇量推論用モデルを取得できるようにしてもよい。
【0107】
また、実施の形態1,2の冷蔵庫1及び実施の形態3の冷蔵庫3が温度上昇推論部を備える場合、さらに、温度上昇量推論用モデルを生成する温度上昇量推論用モデル生成部を備える構成にしてもよい。
【0108】
上記において、冷蔵庫3が温度上昇量推論用モデル生成部を備える場合、当該冷蔵庫3は、家庭環境が類似する他の家庭の冷蔵庫3によって生成された温度上昇量推論用モデルをサーバ5を介して取得できるようにしてもよい。この場合、冷蔵庫3のユーザは、サーバ5に対して、当該冷蔵庫3の機種に加え、当該家庭の家族構成等の情報を指定して温度上昇量推論用モデルのダウンロードを要求すればよい。
【0109】
また、冷蔵庫3が温度上昇量推論用モデル生成部を備える場合、温度上昇量推論用モデルの生成に必要な学習用データをサーバ5を介して他の1又は複数の冷蔵庫3から取得してもよい。
【0110】
また、実施の形態3において、冷蔵庫3が、ユーザからの操作を受け付け可能なユーザインタフェースを備えている場合には、ユーザは、当該ユーザインタフェースを操作することで、サーバ5に対して学習済データのダウンロードを要求してもよい。
【0111】
また、学習済モデルを生成する際の学習アルゴリズムに限定はなく、教師あり学習以外にも、強化学習、教師なし学習、半教師あり学習、特徴量そのものの抽出を学習する、深層学習(Deep Learning)、又は、例えば、遺伝的プログラミング、機能論理プログラミング、サポートベクターマシン等に従った機械学習等を適用することも可能である。
【0112】
また、制御装置101の機能部(
図3参照)の全部又は一部が、専用のハードウェアで実現されるようにしてもよいし、制御装置101Aの機能部(
図5参照)の全部又は一部が、専用のハードウェアで実現されるようにしてもよいし、制御装置101Bの機能部(
図8参照)の全部又は一部が、専用のハードウェアで実現されるようにしてもよい。専用のハードウェアとは、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化されたプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)又はこれらの組み合わせである。
【0113】
本開示は、広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能である。また、上述した実施の形態は、本開示を説明するためのものであり、本開示の範囲を限定するものではない。つまり、本開示の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の開示の意義の範囲内で施される様々な変形が、本開示の範囲内とみなされる。
【符号の説明】
【0114】
1,3 冷蔵庫、2 冷蔵庫システム、4 ルータ、5 サーバ、6 ユーザ端末、10 断熱箱体、11a,11b,11c,11d,11e 断熱扉、12 冷蔵室、13 製氷室、14 温度切替室、15 冷凍室、16 野菜室、17 冷却器室、18 吹出風路ダクト、20 ファン、30 冷却器、40 ヒータ、50 圧縮機、100,100A,100B 制御システム、101,101A,101B 制御装置、102 扉開閉センサ、103 外気温度センサ、104 外気湿度センサ、105 食品量検知センサ、106 貯蔵室温度センサ、107 圧縮機運転状態検知部、108 ファン運転状態検知部、110 着霜量算出部、111 食品量算出部、112 温度上昇量算出部、113 判定部、114 運転制御部、115 データベース、116 食品量推論部、117 学習済モデル、118 学習済モデル更新部