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特許7565792発電計画作成装置、入札支援システムおよび発電計画作成プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】発電計画作成装置、入札支援システムおよび発電計画作成プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/06 20240101AFI20241004BHJP
   H02J 3/00 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
G06Q50/06
H02J3/00 170
H02J3/00 180
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020219123
(22)【出願日】2020-12-28
(65)【公開番号】P2022104115
(43)【公開日】2022-07-08
【審査請求日】2023-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】亀田 真奈人
【審査官】田上 隆一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-134556(JP,A)
【文献】特開2020-067919(JP,A)
【文献】特開2007-065954(JP,A)
【文献】特開2019-040483(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
H02J 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電機ごとに、前記発電機の発電に要するコストを算出するための情報であり燃料単価、下限出力および上限出力を含む発電機情報を記憶する記憶部と、
電力市場における市場価格を模擬的な発電機の燃料単価とし、前記電力市場における取引量を前記模擬的な発電機の発電出力とし、前記電力市場における最低入札量を前記模擬的な発電機の下限出力とし、前記電力市場における入札量の上限を前記模擬的な発電機の上限出力とすることにより、前記電力市場における電力量の取引を前記模擬的な発電機による発電とみなし、前記電力市場における市場価格の予測値と前記電力市場における入札条件とを用いて、前記電力市場における取引に要するコストを算出するための情報を前記模擬的な発電機の発電機情報として生成して前記記憶部に格納する発電機情報生成部と、
前記記憶部に格納された前記発電機情報と、計画の作成対象期間の需要の予測値とを用いて、発電計画と前記電力市場における入札計画とを同時に作成する計画作成部と、
を備え
前記入札条件は、前記電力市場における、前記最低入札量、および前記入札量の上限を含むことを特徴とする発電計画作成装置。
【請求項2】
前記計画作成部は、前記記憶部に格納された前記発電機情報と前記需要の予測値とを用いて、前記発電機および前記模擬的な発電機の発電に要するコストを示す目的関数と制約条件を決定し、前記制約条件のもとで、決定した目的関数を最大化する前記発電機および前記模擬的な発電機の発電出力を求め、求めた発電出力を用いて前記発電計画および前記入札計画を作成することを特徴とする請求項1に記載の発電計画作成装置。
【請求項3】
前記電力市場はエネルギー市場であり、
前記目的関数は、電力需給調整市場における取引によるコストを含み、
前記計画作成部は、前記入札計画として前記エネルギー市場および前記電力需給調整市場のそれぞれにおける入札計画を作成することを特徴とする請求項2に記載の発電計画作成装置。
【請求項4】
前記入札条件は、前記市場価格の予測値の確率を示す情報を含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の発電計画作成装置。
【請求項5】
前記市場価格の予測値は、太陽光発電設備および風力発電設備のうち少なくとも1つを含む発電設備の発電量の予測値が反映された予測値であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の発電計画作成装置。
【請求項6】
前記発電計画および前記入札計画を表示する表示部、
を備えることを特徴とする請求項1から5のいずれか1つに記載の発電計画作成装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1つに記載の発電計画作成装置と、
前記発電計画作成装置により作成された入札計画を用いて入札処理を行う入札支援装置と、
を備えることを特徴とする入札支援システム。
【請求項8】
発電機ごとに、前記発電機の発電に要するコストを算出するための情報であり燃料単価、下限出力および上限出力を含む発電機情報を記憶部に記憶するステップと、
電力市場における市場価格を模擬的な発電機の燃料単価とし、前記電力市場における取引量を前記模擬的な発電機の発電出力とし、前記電力市場における最低入札量を前記模擬的な発電機の下限出力とし、前記電力市場における入札量の上限を前記模擬的な発電機の上限出力とすることにより、前記電力市場における電力量の取引を前記模擬的な発電機による発電とみなし、前記電力市場における市場価格の予測値と前記電力市場における入札条件とを用いて、前記電力市場における取引に要するコストを算出するための情報を前記模擬的な発電機の発電機情報として生成して前記記憶部に格納するステップと、
前記記憶部に格納された前記発電機情報と、計画の作成対象期間の需要の予測値とを用いて、発電計画と前記電力市場における入札計画とを同時に作成するステップと、
をコンピュータに実行させ
前記入札条件は、前記電力市場における、前記最低入札量、および前記入札量の上限を含むことを特徴とする発電計画作成プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、発電計画を作成する発電計画作成装置、入札支援システムおよび発電計画作成プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
発電設備を有し、発電設備によって発電した電力を供給する発電事業者は、一般に、市場取引とは別に、小売契約、相対契約などの契約により電力を供給している。発電事業者は、これらの契約により電力を供給するために、電力の需要量を予測して、需要量に応じて発電計画を作成している。
【0003】
一方、電力小売全面自由化が始まり、日本卸電力取引所(JEPX:Japan Electric Power Exchange)を通じた電力の取引が行われている。日本卸電力取引所における取引には、スポット市場とも呼ばれる一日前市場と、当日市場とも呼ばれる時間前市場と、の2種類がある。日本卸電力取引所における上記取引は、コンピュータにより行われており、取引に参加する各電力事業者はインターネットなどを介して入札を行う。発電事業者は、電力取引市場における取引に参加する場合、需要量、発電に要するコスト、発電機の最大出力および市場価格などを考慮して、発電計画と入札計画を策定することになる。
【0004】
特許文献1には、需要の予測値と発電に要するコストとに基づいて発電計画を作成するとともに、需要が増えた場合のコストの増分を示す限界コストを算出し、限界コストおよび市場取引価格を用いて市場取引計画を作成し、市場取引計画を用いて発電計画を修正する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-83601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の技術では、発電計画を作成した後に、市場取引計画を作成し、市場取引計画を用いて発電計画を修正しているため、市場取引計画は、先に作成された発電計画に依存する。このため、例えば、ある発電機を運転するという前提のもとで市場取引を考慮した計画を作成するため、考慮できる市場取引量に制約があり、十分に市場取引を生かすことができない可能性がある。したがって、発電計画を先に策定する特許文献1に記載の手順では、市場取引を考慮した適切な発電計画を作成できない可能性がある。
【0007】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、市場取引を考慮した適切な発電計画を作成することができる発電計画作成装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示にかかる発電計画作成装置は、発電機ごとに、発電機の発電に要するコストを算出するための情報であり燃料単価、下限出力および上限出力を含む発電機情報を記憶する記憶部と、電力市場における市場価格を模擬的な発電機の燃料単価とし、電力市場における取引量を模擬的な発電機の発電出力とし、電力市場における最低入札量を模擬的な発電機の下限出力とし、電力市場における入札量の上限を模擬的な発電機の上限出力とすることにより、電力市場における電力量の取引を模擬的な発電機による発電とみなし、電力市場における市場価格の予測値と電力市場における入札条件とを用いて、電力市場における取引に要するコストを算出するための情報を模擬的な発電機の発電機情報として生成して記憶部に格納する発電機情報生成部と、を備える。発電計画作成装置は、さらに、記憶部に格納された発電機情報と、計画の作成対象期間の需要の予測値とを用いて、発電計画と電力市場における入札計画とを同時に作成する計画作成部、を備え、入札条件は、電力市場における、最低入札量、および入札量の上限を含む
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、市場取引を考慮した適切な発電計画を作成することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1にかかる発電計画作成装置の構成例を示す図
図2】実施の形態1の発電計画作成装置を実現するコンピュータシステムの構成例を示す図
図3】実施の形態1の発電計画作成装置における発電計画作成処理手順の一例を示すフローチャート
図4】実施の形態1の発電機情報の一例を示す図
図5】実施の形態1の表示部により表示される発電計画および入札計画の一例を示す図
図6】実施の形態2の入札支援システムの構成例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、実施の形態にかかる発電計画作成装置、入札支援システムおよび発電計画作成プログラムを図面に基づいて詳細に説明する。
【0012】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1にかかる発電計画作成装置の構成例を示す図である。本実施の形態の発電計画作成装置1は、図1に示すように、市場価格予測値取得部11、入札条件取得部12、需要予測情報取得部13、発電機情報生成部14、記憶部15、計画作成部16、計画送信部17および表示部18を備える。本実施の形態の発電計画作成装置1は、発電事業者などの発電機を管理する事業者を支援するために発電計画および電力の取引市場における入札計画を作成する。発電計画作成装置1は、作成した入札計画を入札支援装置3へ送信し、作成した発電計画および入札計画を需給管理装置2へ送信する。発電計画作成装置1および入札支援装置3は、本実施の形態の入札支援システムを構成する。
【0013】
市場価格予測値取得部11は、電力の取引市場における市場価格の予測値を取得する。市場価格予測値取得部11は、例えば、オペレータからの入力を受け付けることで市場価格の予測値を取得してもよいし、図示しない他の装置から市場価格の予測値を受信することで市場価格の予測値を取得してもよい。市場価格予測値取得部11は、取得した市場価格の予測値を発電機情報生成部14へ出力する。なお、スポット市場と時間前市場のように、複数の取引市場を考慮する場合には、市場価格予測値取得部11は、取引市場ごとに市場価格の予測値を取得する。
【0014】
入札条件取得部12は、電力の取引市場における入札条件を取得する。入札条件取得部12は、例えば、オペレータからの入力を受け付けることで入札条件を取得してもよいし、図示しない他の装置から入札条件を受信することで入札条件を取得してもよい。入札条件は、例えば、最低入札量、入札量の刻み、最低入札価格、入札量の上限、などを含む。入札条件取得部12は、取得した入札条件を発電機情報生成部14へ出力する。複数の取引市場を考慮する場合には、入札条件取得部12は、取引条件ごとに入札条件を取得する。
【0015】
需要予測情報取得部13は、需給管理装置2から、発電計画作成装置1の支援対象の事業者が需要者へ供給する電力である需要の予測値を示す需要予測情報を取得し、取得した需要予測情報を記憶部15へ格納する。需給管理装置2は、発電計画作成装置1の支援対象の事業者における電力の需要と供給を管理する装置である。需給管理装置2は、例えば、過去の実績値および気温などを用いて需要量を予測する。なお、ここでは、発電計画作成装置1が、需給管理装置2とは別に設けられる例を説明するが、発電計画作成装置1は、需給管理装置2と一体化されていてもよい。すなわち、発電計画作成装置1は需給管理装置2の一部であってもよい。発電計画作成装置1が需給管理装置2の一部である場合、需要予測情報取得部13は、需給管理装置2内の需要量を予測する機能部から需要の予測値を取得する。なお、ここでは、需要予測情報が記憶部15に格納されてから計画作成部16へ入力される例を示しているが、これに限らず、需要予測情報は需要予測情報取得部13から計画作成部16へ直接入力されてもよい。
【0016】
発電機情報生成部14は、電力市場における取引を電力市場における取引量を発電出力とする模擬的な発電機とみなし、電力市場における市場価格の予測値と入札条件とを用いて、電力市場における取引に要するコストを算出するための情報を、模擬的な発電機の発電機情報として生成して記憶部15に格納する。発電機情報は、後述する発電計画および入札計画の作成に用いられる情報であり、発電に要するコストを算出するための情報である。発電機情報は、例えば、発電のための単価と運転制約とを定めるための情報である。発電機情報の詳細については後述する。
【0017】
記憶部15は、需要予測情報および発電機情報を記憶する。発電機情報は、発電機の発電に要するコストを算出するための情報であり、発電機ごとに記憶される。記憶部15が記憶する発電機情報は、上述した発電機情報生成部14により生成された発電機情報と、火力発電、水力発電など発電を行う真の発電機の発電機情報とを含む。真の発電機の発電機情報については、オペレータから入力されて記憶部15に記憶されてもよいし、図示しない他の装置から受信されて記憶部15に記憶されてもよい。
【0018】
計画作成部16は、記憶部15に格納されている需要予測情報および発電機情報を用いて、発電計画および入札計画を同時に作成し、作成した発電計画および入札計画を、計画送信部17および表示部18へ出力する。計画作成部16の動作については後述する。
【0019】
計画送信部17は、発電計画および入札計画を需給管理装置2へ送信し、入札計画を入札支援装置3へ出力する。需給管理装置2は、受信した発電計画および入札計画と、需要予測情報とを用いて需給計画を作成する。入札支援装置3は、発電計画作成装置1により作成された入札計画を用いて、日本卸電力取引所をはじめとした電力の取引システムへの入札処理を行う。表示部18は、発電計画および入札計画を表示する。
【0020】
本実施の形態の発電計画作成装置1は、電力の取引市場を模擬的に発電機として扱い、発電機と同様に模擬的な発電機の特性を示す発電機情報を生成し、模擬的な発電機および真の発電機の発電機情報を用いて、発電計画および入札計画を同時に作成する。このため、発電計画を先に作成して入札計画を後から作成する場合に比べて、電力市場の取引を最大限活用することができ、発電計画作成装置1の支援対象である事業者の利益の最大化を図るように、適切な発電計画を作成することができる。
【0021】
次に、本実施の形態の発電計画作成装置1のハードウェア構成について説明する。本実施の形態の発電計画作成装置1は、コンピュータシステム上で、発電計画作成装置1における処理が記述されたプログラムである発電計画作成プログラムが実行されることにより、コンピュータシステムが発電計画作成装置1として機能する。図2は、本実施の形態の発電計画作成装置1を実現するコンピュータシステムの構成例を示す図である。図2に示すように、このコンピュータシステムは、制御部101と入力部102と記憶部103と表示部104と通信部105と出力部106とを備え、これらはシステムバス107を介して接続されている。
【0022】
図2において、制御部101は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサであり、本実施の形態の発電計画作成装置1における処理が記述された発電計画作成プログラムを実行する。入力部102は、たとえばキーボード、マウスなどで構成され、コンピュータシステムの使用者が、各種情報の入力を行うために使用する。記憶部103は、RAM(Random Access Memory),ROM(Read Only Memory)などの各種メモリおよびハードディスクなどのストレージデバイスを含み、上記制御部101が実行すべきプログラム、処理の過程で得られた必要なデータ、などを記憶する。また、記憶部103は、プログラムの一時的な記憶領域としても使用される。表示部104は、ディスプレイ、LCD(液晶表示パネル)などで構成され、コンピュータシステムの使用者に対して各種画面を表示する。通信部105は、通信処理を実施する受信機および送信機である。出力部106は、プリンタなどである。なお、図2は、一例であり、コンピュータシステムの構成は図2の例に限定されない。
【0023】
ここで、本実施の形態の発電計画作成プログラムが実行可能な状態になるまでのコンピュータシステムの動作例について説明する。上述した構成をとるコンピュータシステムには、たとえば、図示しないCD(Compact Disc)-ROMドライブまたはDVD(Digital Versatile Disc)-ROMドライブにセットされたCD-ROMまたはDVD-ROMから、発電計画作成プログラムが記憶部103にインストールされる。そして、発電計画作成プログラムの実行時に、記憶部103から読み出された発電計画作成プログラムが記憶部103に格納される。この状態で、制御部101は、記憶部103に格納されたプログラムに従って、本実施の形態の発電計画作成装置1としての処理を実行する。
【0024】
なお、上記の説明においては、CD-ROMまたはDVD-ROMを記録媒体として、発電計画作成装置1における処理を記述したプログラムを提供しているが、これに限らず、コンピュータシステムの構成、提供するプログラムの容量などに応じて、たとえば、通信部105を経由してインターネットなどの伝送媒体により提供されたプログラムを用いることとしてもよい。
【0025】
図1に示した発電機情報生成部14および計画作成部16は、図2に示した記憶部103に記憶された発電計画作成プログラムが図2に示した制御部101により実行されることにより実現される。発電機情報生成部14および計画作成部16の実現には、図2に示した記憶部103も用いられる。図1に示した記憶部15は図2に示した記憶部103の一部である。図1に示した需要予測情報取得部13および計画送信部17は、図2に示した通信部105により実現される。図1に示した市場価格予測値取得部11および入札条件取得部12は、図2に示した入力部102または通信部105により実現される。図1に示した表示部18は、図2に示した表示部104により実現される。発電計画作成装置1は複数のコンピュータシステムにより実現されてもよい。また、複数のコンピュータシステムで構成されるクラウドシステムで発電計画作成プログラムが実行されることで発電計画作成装置1が実現されてもよい。
【0026】
例えば、本実施の形態の発電計画作成プログラムは、発電機ごとに、発電機の発電に要するコストを算出するための情報である発電機情報を記憶部15に記憶するステップと、電力市場における取引を電力市場における取引量を発電出力とする模擬的な発電機とみなし、電力市場における市場価格の予測値と電力市場における入札条件とを用いて、電力市場における取引に要するコストを算出するための情報を模擬的な発電機の発電機情報として生成して記憶部15に格納するステップと、をコンピュータに実行させる。また、本実施の形態の発電計画作成プログラムは、記憶部に格納された発電機情報と、計画の作成対象期間の需要の予測値とを用いて、発電計画と電力市場における入札計画とを同時に作成するステップと、をコンピュータに実行させる。
【0027】
需給管理装置2および入札支援装置3についても、同様にコンピュータシステムにより実現される。
【0028】
次に、本実施の形態の動作について説明する。図3は、本実施の形態の発電計画作成装置1における発電計画作成処理手順の一例を示すフローチャートである。図1に示すように、市場価格予測値取得部11が、市場価格の予測値を取得する(ステップS1)。市場価格予測値取得部11は、取得した市場価格の予測値を発電機情報生成部14へ出力する。入札条件取得部12は、入札条件を取得する(ステップS2)。入札条件取得部12は、取得した入札条件を発電機情報生成部14へ出力する。
【0029】
発電機情報生成部14は、市場取引量を発電量とみなした模擬的な発電機の発電機情報を生成する(ステップS3)。詳細には、発電機情報生成部14は、市場価格の予測値と、入札条件とを用いて、市場取引量を発電量とみなした模擬的な発電機の発電機情報を生成し、記憶部15へ格納する。
【0030】
図4は、本実施の形態の発電機情報の一例を示す図である。図4に示した例では、発電機情報は、発電機の識別情報である発電機ID(IDentifier)と、発電機種別と、起動停止コストと、燃料単価と、上限出力と、下限出力とを含む。なお、発電機情報は、発電計画を作成する際に制約条件として考慮されたりコストの算出に用いられたりする情報であり発電機の種類により項目が異なる。このため、発電機情報は発電機の種類により異なるが、ここでは、発電機の種類によらず、各項目を定義しておき、当該項目を考慮する必要のない発電機については、該当する値を0とするなどとしておく。なお、図4は一例であり、発電機情報の具体的な構成は図4に示した例に限定されない。
【0031】
起動停止コストは、発電機が停止から起動に変化する際に必要なコストであり、例えば、発電機が停止から起動に変化する際に、それまでの停止時間に応じたあらかじめ定められた関数により起動に要するコストが定義される。なお、起動停止コストは、関数により定義されるかわりに、起動1回あたりのコストとして固定値が定められてもよい。燃料単価は、発電に用いられる燃料の単価である。上限出力は、発電機の出力の上限値であり、下限出力は、発電機の出力の下限値である。図4では、省略しているが、発電機情報には、一般には、最小運転時間、発電機の出力の変化速度の上下限なども含まれる。また、発電機として揚水発電機などが含まれる場合には、池の水位の上下限が定められる。
【0032】
図4に示した例では、電力の取引市場としてスポット市場および時間前市場の2つの市場を考慮しており、スポット市場の買入札に対応する発電機IDは0であり、スポット市場の売入札に対応する発電機IDは1であり、時間前市場の買入札に対応する発電機IDは2であり、時間前市場の売入札に対応する発電機IDは3である。このように、模擬的な発電機の場合には、燃料単価には、買入札の場合、市場価格の予測値(単価)に手数料などが加えられた値が格納される。売入札の場合、市場価格の予測値(単価)に負の正負符号を付加することで負の値として燃料単価の項目に格納する。また、上限出力には、入条件として与えられた取引の上限値が格納され、下限出力には、入条件として与えられた最低入札量すなわち取引の下限値が格納される。このように、市場価格の予測値と入条件とを、発電機情報のうち対応する項目に格納しておくことで、各取引市場を発電機と同様に扱うことができる。発電機IDが4以降の発電機については、火力発電機など真の発電機に関する情報が格納される。真の発電機に関する発電機情報は、上述したように、あらかじめ入力されるかまたは他の装置から受信することで記憶部15に格納される。
【0033】
図3の説明に戻る。ステップS3の後、需要予測情報取得部13は、需要予測情報を取得する(ステップS4)。詳細には、需要予測情報取得部13は、需給管理装置2から、発電計画の作成対象の期間の需要の予測値を示す需要予測情報を取得して記憶部15に格納する。
【0034】
計画作成部16は、発電計画および入札計画を同時に作成する(ステップS5)。詳細には、計画作成部16は、記憶部15に格納されている発電機情報および需要予測情報を用いて、発電計画作成装置1の支援対象の事業者が得る利益を最大化するように、発電計画および入札計画を同時に作成する。すなわち、計画作成部16は、発電機情報と需要予測情報とを用いて、発電機および模擬的な発電機の発電に要するコストを示す目的関数と制約条件を決定し、制約条件のもとで、決定した目的関数を最大化する発電機および模擬的な発電機の発電出力を求め、求めた発電出力を用いて発電計画および入札計画を作成する。目的関数は、発電計画作成装置1の支援対象の事業者が得る利益を定式化したものに相当するため、目的関数を最大化することで、事業者が得る利益を最大化することができる。
【0035】
例えば、計画作成部16は、式(1)に示す目的関数F(p)と、以下の式(2)~式(6)に示す制約条件における各定数を、発電機情報を用いて設定する。なお、pは発電機が起動状態の時の出力である。なお、以下の式(2)~式(6)は、発電機が火力発電機であるとした場合の定式化の例であり、制約条件は発電機の種類により適宜変更される。
【0036】
【数1】
【0037】
【数2】
【0038】
tは、処理対象時間帯すなわち計画の作成対象の期間の開始時刻からの経過時間を示す整数であり、処理対象時間帯の開始時刻をt=0とする。Tは、処理対象時間帯の長さを示す整数である。なお、tは、定められた時間ステップΔを単位とするとき、Δ単位で何番目であるかを示す整数である。すなわち、Δ×tが処理対象時間帯の開始時刻からの経過時間を示す。Tの値はどのように設定してもよいが、例えば一週間程度の長さに相当する値である。
【0039】
式(1)の右辺の[]内の第1項は、小売契約、相対契約など、電力市場による取引以外の契約により得る利益を示す。Ds,tは、経過時間tに対応する時刻の、小売契約、相対契約などの契約の相手先に供給する需要電力である。需要電力は、需要予測情報に基づいて算出される。S(Ds,t)は、小売契約、相対契約など契約の相手先ごとの利益である。小売契約、相対契約などの契約は、約款により電力料金の計算方法は定められているので、S(Ds,t)は、約款にしたがって計算が行われる。sは、各契約に対応する数値である。
【0040】
式(1)の右辺の[]内の第2項は、発電機の燃料コストを示す。pg,tは、経過時間tに対応する時刻の、発電機の出力である。gは各発電機を示す数値であり、上述した発電機IDに相当する。f(pg,t)は、発電機ごとの燃料コストを示す。燃料コストは、発電機情報に含まれる燃料の単価と、pg,tとに基づいて算出される。上述したようにg=0からg=3までの発電機は、模擬的な発電機であり、市場取引に対応するものである。模擬的な発電機が売入札に対応する場合は、燃料単価が負の値になるため、上記式(1)の第2項には-が付されているが、負の値を減算することになり、結果的にはプラスの値となり、売入札量に応じた利益が得られることになる。
【0041】
式(1)の右辺の[]内の第3項は、発電機の起動停止コストを示す。ug,tは、発電機ごとの、経過時間tに対応する時刻の発電機の状態を示す。発電機が起動しているときはug,tは1であり、発電機が停止しているときはug,tは0である。U(ug,t)は、発電機ごとの起動停止コストを示す。起動停止コストは、ug,tが0から1に変化したときに、すなわち、ug,tが1であり、ug,t-1が0となるときに、それまでの停止時間に応じてあらかじめ定められた関数によって起動費が決定し、それ以外のときには0である。
【0042】
なお、式(1)では、目的関数に、発電計画、および入札計画に依存しない項である、小売契約、相対契約などの契約による利益も含めて記載しているが、小売契約、相対契約などの契約が無い場合にはこの項を含めなくてもよい。小売契約、相対契約などの契約による利益を含めない場合、目的関数の値は負になる可能性があるが、正負符号も考慮して、すなわち負の値の場合には、絶対値が小さい値の方が絶対値が大きい値より大きいとして、目的関数を最大化すれば、事業者の利益の最大化を図ることができる。
【0043】
式(2)は、電力需要と電力供給量を一致させる制約条件を示す。すなわち、発電機による発電量すなわち発電出力と、電力市場における売買量との合計が、需要量Dに一致するという条件である。
【0044】
式(3)は、各発電機の出力が、各発電機の出力の上下限の範囲内にあるという制約条件である。式(4)は、各発電機の出力の変化速度が、各発電機の出力の変化速度の上下限の範囲内にあるという制約条件である。-pchange,g,tは発電機の出力の変化速度の下限を示し、pchange,g,tは発電機の出力の変化速度の上限を示す。
【0045】
式(5)は、各発電機の連続時間が最小運転時間以上であるという制約条件である。なお、連続運転の期間、すなわちug,tが1になってからug,tが1から0となるまでの期間のそれぞれについて、連続運転時間が最小運転時間以上となるようにする必要があるので、式(5)は、それぞれの連続運転の期間に関して課される制約である。Umin_operation,gは、各発電機の最小運転時間をΔの単位で離散化した整数である。
【0046】
式(6)は、各発電機の連続停止時間が最小停止時間以上であるという制約条件である。なお、連続停止の期間、すなわちug,tが0になってからug,tが0から1となるまでの期間のそれぞれについて、連続停止時間が最小停止時間以上となるようにする必要があるので、式(6)は、それぞれの連続停止の期間に関して課される制約である。Umin_stop,gは、各発電機の最小停止時間をΔの単位で離散化した整数である。
【0047】
計画作成部16は、上記式(1)に示した目的関数と、式(2)~式(6)に示した制約条件とを用いて、目的関数を最大化する各発電機の発電量pg,tを計算する。目的関数を最大化するように最適化問題を解く方法は、例えば、混合整数二次計画問題の解法として知られる任意の方法を用いることができる。最適化問題を解くことにより、各発電機の発電量pg,tが決定される。決定された発電量pg,tのうちg=0からg=3までは、実際には市場取引における取引量であるため、計画作成部16は、これらを買入札量または売入札量として入札計画を作成する。gが4以上の発電機については、真の発電機であるため、計画作成部16は、gが4以上の発電機の最適化問題の解を発電計画に反映する。このようにして、本実施の形態では、発電計画と入札計画を同時に作成することができる。計画作成部16は、発電計画および入札計画を計画送信部17および表示部18へ出力する。
【0048】
ステップS5の後、表示部18は、発電計画および入札計画を表示する(ステップS6)。図5は、本実施の形態の表示部により表示される発電計画および入札計画の一例を示す図である。このように、表示部18は、同時に決定された発電計画および入札計画を重畳して表示することができる。なお、表示部18は、発電計画および入札計画をそれぞれ個別に表示可能であってもよい。
【0049】
計画送信部17は、発電計画および入札計画を送信する(ステップS7)。詳細には、計画送信部17は、発電計画および入札計画を需給管理装置2へ送信し、入札計画を入札支援装置3へ送信する。以上により発電計画作成処理が終了する。
【0050】
なお、入札条件として、市場価格の予測が外れる確率などの市場価格の予測値の確率を示す情報をパラメータとして設定しておき、計画作成部16は、このパラメータを考慮して発電計画および入札計画を作成してもよい。例えば、市場価格を確率密度関数または確率密度関数を離散化して段階的な値として定義しておき、上記発電機情報における燃料費として用いてもよい。または、市場価格を、確率密度関数を考慮した期待値として設定してもよい。
【0051】
以上述べたように、本実施の形態では、電力市場の取引を模擬的な発電機とみなして発電機情報を生成し、真の発電機と同様に発電機情報を考慮して、発電計画および入札計画を同時に作成するようにした。このため、市場取引を考慮した適切な発電計画を作成することができる。
【0052】
実施の形態2.
次に、本実施の形態2の入札支援システムについて説明する。図6は、本実施の形態の入札支援システムの構成例を示す図である。本実施の形態の入札支援システムは、実施の形態1と同様の発電計画作成装置1および入札支援装置3を備えるとともに、市場価格予測装置4を備える。実施の形態1と同様の機能を有する構成要素は、実施の形態1と同一の符号を付して重複する説明を省略する。以下、実施の形態1と異なる点を主に説明する。
【0053】
本実施の形態の市場価格予測装置4は、市場価格の予測値として、例えば、太陽光発電設備および風力発電設備のうち少なくとも1つを含む発電設備の発電量の予測値が反映された予測値を求める。詳細には、市場価格予測装置4は、過去の市場価格および入札量の実績値と、需要に影響する過去の関連情報とを用いて、高精度に市場価格を予測する。さらに、市場価格予測装置4は、例えば、太陽光発電設備、風力発電設備といった発電出力の変動の大きい変動発電設備による発電量を、市場価格の予測モデルに反映し、予測対象の期間の天候などの予報値を用いて変動発電設備の変動も考慮して市場価格を予測する。また、市場価格予測装置4は、市場分断を考慮した予測モデルを用いることで高精度に市場価格を予測してもよい。電力系統の制約上、エリア間をつなぐ連係線の容量以上に電力を送電することはできないため、卸電力市場では連係線容量を考慮した上で約定処理を行う。具体的には、卸電力市場では、連係線容量を考慮しない状態で約定処理を行った後に、連係線容量を超える送電が行われないかをチェックし、容量を超えてしまっている場合には当該連係線を分断した状態で固定した後に再度約定処理を実施する。これが市場分断であり、市場分断が発生すると約定価格が大きく変動する。市場分断を考慮した予測モデルを用いることで予測の高精度化を図ることができる。なお、市場価格予測装置4における市場価格の予測方法は、この例に限定されず、高精度に市場価格を予測できる方法であればよい。
【0054】
市場価格予測装置4は、実施の形態1の発電計画作成装置1と同様にコンピュータシステムにより実現される。
【0055】
なお、図6では、市場価格予測装置4を、発電計画作成装置1および入札支援装置3とは別に備えているが、市場価格予測装置4の機能を発電計画作成装置1または入札支援装置3が有してもよい。
【0056】
発電計画作成装置1の市場価格予測値取得部11は、市場価格予測装置4から予測精度の高い市場価格の予測値を取得し、発電機情報生成部14へ出力する。発電計画作成装置1の動作は実施の形態1と同様である。
【0057】
以上述べたように、本実施の形態では、予測精度の高い市場価格の予測値を取得し、取得した予測値を用いて、実施の形態1と同様に電力市場の取引を模擬的な発電機とみなして発電機情報を生成し、真の発電機と同様に発電機情報を考慮して、発電計画および入札計画を同時に作成するようにした。このため、実施の形態1と同様の効果を奏するとともに、予測精度の高い市場価格を用いることによって、実施の形態1に比べて、発電計画作成装置1の支援対象の事業者の計画時に予想された利益と実際の利益との差異を少なくすることができる。
【0058】
実施の形態3.
次に、本実施の形態3の発電計画作成装置1について説明する。本実施の形態の発電計画作成装置1の構成は実施の形態1と同様である。実施の形態1と同様の機能を有する構成要素は、実施の形態1と同一の符号を付して重複する説明を省略する。以下、実施の形態1と異なる点を主に説明する。
【0059】
実施の形態1では、電力取引市場として、エネルギー市場と呼ばれるスポット市場および時間前市場を例示した。エネルギー市場は、電力量を売買する市場である。一方、電力取引市場として、エネルギー市場に加えて、2021年には、調整力を売買する需給調整市場と呼ばれる調整力市場が開設される予定である。調整力は、計画値からの変動などが生じた場合に電力の同時同量を実現するための調整を行う能力である。この調整は送配電事業者により行われる。送配電事業者は、電力の不足と余剰のどちらが生じても調整できるように、不足が生じたときに調整できる能力である上げ調整力、余剰が生じたときに調整できる能力である下げ調整力との両方を確保する。今後、発電事業者は、需給調整市場における取引にも参加することが予想される。
【0060】
本実施の形態では、需給調整市場における取引についても考慮して発電計画および入札計画を作成する。例えば、本実施の形態では、図3に示したステップS5において、計画作成部16は、式(1)の代わりに下記式(7)に示す目的関数を最大化する最適化問題を解く。この際に、実施の形態1で述べた式(2)~式(6)の制約条件に加えて、以下の式(8)、式(9)に示す制約条件も考慮する。
【0061】
【数3】
【0062】
【数4】
【0063】
上記式(7)の右辺の[]内の第1項は需給調整市場により得る利益を示す。なお、第2項目はΣ内で2つの項が加算されており、Σ内の第1項は上げ調整力による利益を示し、Σ内の第2項は下げ調整力による利益を示す。Aup,am,tは、経過時間tに対応する時刻の電力を商品としたときの需給調整市場における上げ調整力の売買量を示す。Adown,am,tは、経過時間tに対応する時刻の電力を商品としたときの需給調整市場における下げ調整力の売買量を示す。AMup(Aup,am,t)は、経過時間tに対応する時刻の電力を商品としたときの、需給調整市場の取引による上げ調整力に関する利益である。
【0064】
需給調整市場の売買による利益は、調整力自体が約定したことにより得られる調整力の約定量すなわち販売量に応じた利益と、調整力発動時に得られる調整力発動量に応じた利益とがある。これら2つの利益の計算のための単価は、調整力市場の約定価格の予測値として算出される。したがって、例えば、AMup(Aup,am,t)は、需給調整市場の約定価格の予測値と、Aup,am,tと、調整力発動量の予測値とに基づいて算出される。AMdown(Adown,am,t)は、経過時間tに対応する時刻の電力を商品としたときの、需給調整市場の取引による下げ調整力に関する利益である。例えば、AMdown(Adown,am,t)は、需給調整市場の約定価格の予測値と、Adown,am,tと、調整力発動量の予測値とに基づいて算出される。amは、需給調整市場の種類に対応する数値である。需給調整市場の種類が複数存在するときには、各需給調整市場における利益が加算される。
【0065】
また、上記式(8)は、上げ調整力の販売量が、発電機の最大の上げ調整力の総和以下であるという制約条件である。pmax,g,tは、経過時間tの各発電機の出力上限を示し、出力上限値が時刻によらない場合には各発電機の出力上限はpmax,gと表すことができる。各発電機の最大の上げ調整力は、pmax,gから、経過時間tに対応する時刻の発電機の出力であるpg,tを減じたものである。式(9)は、下げ調整力の販売量が、発電機の最大の下げ調整力の総和以下であるという制約条件である。pmin,g,tは、経過時間tの各発電機の出力下限を示し、出力下限値が時刻によらない場合には各発電機の出力上限はpmin,gと表すことができる。各発電機の最大の下げ調整力は、pg,tからpmin,gを減じたものである。
【0066】
需給調整市場の約定価格の予測値は、市場価格予測値取得部11によって取得されて、発電機情報の一部として記憶部15に格納されてもよいし、発電機情報とは別に記憶部15に格納されてもよい。計画作成部16は、記憶部15に格納された約定価格の予測値を読み出して、上記最適化問題の解の算出に用いる。以上の処理により、本実施の形態の計画作成部16は、実施の形態1で述べた発電計画およびエネルギー市場における入札計画に加えて、需給調整市場における入札計画も作成する。計画作成部16は、需給調整市場における入札計画を表示部18および計画送信部17へ出力する。表示部18は、発電計画およびエネルギー市場における入札計画に加えて、需給調整市場における入札計画も表示することができる。計画送信部17は、発電計画と、エネルギー市場および需給調整市場の入札計画とを需給管理装置2へ送信し、エネルギー市場および需給調整市場の入札計画を入札支援装置3へ送信する。なお、エネルギー市場および需給調整市場の入札を支援する入札支援装置が個別に設けられていてもよく、この場合は、計画送信部17は、エネルギー市場に対応する入札支援装置へエネルギー市場の入札計画を送信し、需給調整市場に対応する入札支援装置へ需給調整市場の入札計画を送信する。以上述べた以外の本実施の形態の動作は実施の形態1と同様である。
【0067】
なお、実施の形態2で述べた高精度な市場価格の予測値を用いる場合に、本実施の形態の動作を適用してもよい。この場合、需給調整市場の約定価格の予測値は、市場価格予測装置4によって算出されてもよいし、他の装置によって算出されてもよいし、オペレータにより入力されてもよい。また、需給調整市場の取引についても、エネルギー市場の取引と同様に、模擬的な発電機とみなして、コストに関する情報を発電機情報として保持し、式(7)の右辺の[]内の第1項を第2項と統合してもよい。
【0068】
以上述べたように、本実施の形態では、エネルギー市場の取引を模擬的な発電機とみなして発電機情報を生成し、真の発電機と同様に発電機情報を考慮し、さらに需給調整市場における売買も考慮して、発電計画および入札計画を同時に作成するようにした。すなわち、本実施の形態では、目的関数は、需給調整市場における取引によるコストを含み、計画作成部16は、入札計画としてエネルギー市場および需給調整市場のそれぞれにおける入札計画を作成する。このため、実施の形態1と同様の効果を奏するとともに、需給調整市場も考慮することにより市場取引をより有効に活用することによって発電計画作成装置1の支援対象の事業者の利益の最大化を図ることができる。
【0069】
以上の実施の形態に示した構成は、一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、実施の形態同士を組み合わせることも可能であるし、要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
【符号の説明】
【0070】
1 発電計画作成装置、2 需給管理装置、3 入札支援装置、4 市場価格予測装置、11 市場価格予測値取得部、12 入札条件取得部、13 需要予測情報取得部、14 発電機情報生成部、15 記憶部、16 計画作成部、17 計画送信部、18 表示部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6