(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド、又は含フッ素ビニルスルホン酸塩の製造方法、及び分離方法。
(51)【国際特許分類】
C07C 303/02 20060101AFI20241004BHJP
C07C 309/82 20060101ALI20241004BHJP
C07C 309/10 20060101ALI20241004BHJP
C07C 303/32 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
C07C303/02
C07C309/82
C07C309/10
C07C303/32
(21)【出願番号】P 2021008949
(22)【出願日】2021-01-22
【審査請求日】2023-10-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100181272
【氏名又は名称】神 紘一郎
(72)【発明者】
【氏名】伊達 英城
(72)【発明者】
【氏名】中村 光武
【審査官】増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-102294(JP,A)
【文献】国際公開第2007/142266(WO,A1)
【文献】米国特許第03560568(US,A)
【文献】特開2008-127317(JP,A)
【文献】特開2004-107313(JP,A)
【文献】国際公開第2020/012913(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 303/02
C07C 309/82
C07C 309/10
C07C 303/32
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(3):
【化1】
(式中、mは0~3の整数、nは1~6の整数)
で表される含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(3)、又は
下記一般式(4):
【化2】
(式中、mは0~3の整数、nは1~6の整数、MはK、Rb、又はCsである。)
で表される含フッ素ビニルスルホン酸塩(4)の製造方法であり、
下記一般式(1):
【化3】
(式中、mは0~3の整数、nは1~6の整数)
で表される含フッ素ビニルスルホン酸無水物(1)と、
下記一般式(2):
MF (2)
(式中、Mは、K、Rb、又はCsである。)
で表されるアルカリ金属フッ化物(2)とを、
反応温度60~100℃で反応させて前記含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(3)と前記含フッ素ビニルスルホン酸塩(4)とを生成する工程と、
前記生成した含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(3)を分離する工程と、
前記分離された含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(3)と抽出化合物とを混合する工程と
を含み、
前記抽出化合物が、無機塩含有水溶液、アルコール化合物、アミド化合物、及びスルホ化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である
ことを特徴とする、製造方法。
【請求項2】
前記含フッ素ビニルスルホン酸無水物(1)の物質量(α)と前記アルカリ金属フッ化物(2)の物質量(β)の比率(β/α)が、1~100、である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
下記一般式(3):
【化4】
(式中、mは0~3の整数、nは1~6の整数)
で表される含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(3)の製造方法である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
下記一般式(4):
【化5】
(式中、mは0~3の整数、nは1~6の整数、MはK、Rb、又はCsである。)
で表される含フッ素ビニルスルホン酸塩(4)の製造方法である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記無機塩含有水溶液が、炭酸塩類、硫酸塩類、チオ硫酸塩類、酢酸塩類、リン酸塩類、クエン酸塩類、酒石酸塩類、及び四ホウ酸塩類からなる群より選ばれる少なくとも1種の無機塩化合物を含む水溶液である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
前記含フッ素
ビニルスルホン酸フルオリド(3)の質量(ε)に対する前記抽出化合物の質量(ζ)の比率(ζ/ε)が、0.1~100、である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
前記含フッ素
ビニルスルホン酸フルオリド(3)と、抽出化合物とを混合する工程により得られた混合溶液を、静置し、前記含フッ素
ビニルスルホン酸フルオリド(3)を含む相と、前記抽出化合物を含む相とに分離する工程を含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項8】
前記抽出化合物を含む相を、前記含フッ素
ビニルスルホン酸フルオリド(3)と、抽出化合物とを混合する工程に再利用する、請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記含フッ素
ビニルスルホン酸フルオリド(3)を含む相から、含フッ素
ビニルスルホン酸フルオリド(3)を、蒸留により分離する工程を含む、請求項7に記載の製造方法。
【請求項10】
反応残渣を分離する工程を含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項11】
前記反応残渣と、溶解化合物とを混合し、含フッ素スルホン酸塩溶解液を調整する工程を含む、請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
前記溶解化合物が、エーテル化合物、ケトン化合物、エステル化合物、カーボネート化合物、及びニトリル化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である、請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
前記反応残渣の質量(γ)に対する前記溶解化合物の質量(δ)の比率(δ/γ)が、0.01~100である、請求項11に記載の製造方法。
【請求項14】
前記含フッ素スルホン酸塩溶解液をろ過し、含フッ素スルホン酸塩含有ろ液を得る工程を含む、請求項11記載の製造方法。
【請求項15】
前記含フッ素スルホン酸塩溶解液をろ過し、アルカリ金属フッ化物(2)を含むろ物を得る工程を含む、請求項11に記載の製造方法。
【請求項16】
前記アルカリ金属フッ化物(2)を含むろ物を、前記含フッ素ビニルスルホン酸無水物(1)と反応温度60~100℃で反応させる際に再利用する、請求項15に記載の製造方法。
【請求項17】
前記含フッ素スルホン酸塩含有ろ液から、前記溶解化合物を含む揮発成分を分離し、前記含フッ素
ビニルスルホン酸塩(4)を得る工程を含む
ことを特徴とする、請求項14に記載の製造方法。
【請求項18】
前記溶解化合物を含む揮発成分を、前記反応残渣と、溶解化合物とを混合し、含フッ素スルホン酸塩溶解液を調整する工程に再利用する、請求項17に記載の製造方法。
【請求項19】
前記含フッ素スルホン酸塩含有ろ液に、水を添加し、混合する工程を含む、請求項14に記載の製造方法。
【請求項20】
前記含フッ素スルホン酸塩含有ろ液の質量(ι)と水の総質量(κ)の比率(κ/ι)が、0.1~100である、請求項19に記載の製造方法。
【請求項21】
前記含フッ素スルホン酸塩含有ろ液に、水を添加し、混合する工程により得られた溶液から、前記溶解化合物を含む揮発成分を分離し、含フッ素スルホン酸塩含有水溶液を調整する工程を含む、請求項19に記載の製造方法。
【請求項22】
前記含フッ素スルホン酸塩含有ろ液に、水を添加し、混合する工程により得られた溶液から、前記溶解化合物を含む揮発成分を分離し、含フッ素スルホン酸塩含有水溶液を調整する工程において分離した前記溶解化合物を含む揮発成分から、水を分離する工程を含む、請求項21に記載の製造方法。
【請求項23】
前記溶解化合物
を含む揮発成分を、前記反応残渣と、溶解化合物とを混合し、含フッ素スルホン酸塩溶解液を調整する工程に再利用する、請求項21又は22に記載の製造方法。
【請求項24】
前記含フッ素スルホン酸塩含有ろ液に、水を添加し、混合する工程により得られた溶液から、前記溶解化合物を含む揮発成分を分離し、含フッ素スルホン酸塩含有水溶液を調整する工程において分離した前記溶解化合物を含む揮発成分から、水を分離する工程において分離した水を、前記含フッ素スルホン酸塩含有ろ液に、水を添加し、混合する工程に再利用する、請求項19に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド、又は含フッ素ビニルスルホン酸塩の製造方法、及び分離方法に関するものである。また、分離方法に用いた化合物等の再利用方法に関するものでもある。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料電池用隔膜、燃料電池用触媒バインダーポリマー、食塩電解用隔膜等の主要成分として、下記一般式(5)で表されるフッ素系高分子電解質(5)が主に採用されている。
【化1】
(pは0~6の整数、qは1~6の整数)
一般式(5)で表されるフッ素系高分子電解質は、下記一般式(6)で表される含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(6)とテトラフルオロエチレン(TFE)との共重合体をケン化反応及び酸処理を施すことによって製造できることが知られている。
【化2】
(pは0~6の整数、qは1~6の整数)
上記一般式(6)で表される含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(6)の製造方法として、下記一般式(1):
【化3】
(式中、mは0~3の整数、nは1~6の整数)
で表される含フッ素ビニルスルホン酸無水物(1)と、
フッ化水素、金属フッ化物、4級アンモニウムフルオリド、及び4級ホスホニウムフルオリドからなる群より選択される1種以上であるフッ素化剤とを、
接触・混合させることにより、下記一般式(3):
【化4】
(式中、mは0~3の整数、nは1~6の整数)
で表される含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(3)を製造方法が開示されている(特許文献1)。また、該特許文献では、前記含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(3)を製造する際、同時に下記一般式(4):
【化5】
(式中、mは0~3の整数、nは1~6の整数、M
2はLi、Na、K、Rb、又はCsである。)
で表される含フッ素ビニルスルホン酸塩(4)を製造できることが開示されている。さらに、前記含フッ素ビニルスルホン酸塩(4)を再利用し、前記含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(3)を製造する方法も開示されている。また、含フッ素ビニルスルホン酸塩(4)は、別法によっても含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(3)に変換できることが開示されており、有用な化合物であることが知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2020/012913号
【文献】米国特許第3560568号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、m=0、n=2である含フッ素ビニルスルホン酸無水物(1)と、フッ化ナトリウム、又はフッ化カリウムとを反応させることで、m=0、n=2である含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(3)、及び含フッ素ビニルスルホン酸塩(4)を製造する方法が開示されているものの、前記フッ素系高分子電解質(5)の原料である含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(3)をより高い収率で得られる製造方法が求められている。また、含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(3)、及び含フッ素ビニルスルホン酸塩(4)を分離する方法も求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上述の課題を解決するべく鋭意検討を重ねた結果、含フッ素ビニルスルホン酸無水物(1)(以下、「化合物(1)」ともいう。)と、アルカリ金属フッ化物(2)(以下、「化合物(2)」ともいう。)とを、反応温度60~100℃で反応させることで、上記目的を達成し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。また、含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(3)、及び含フッ素ビニルスルホン酸塩(4)を分離できる方法、及び分離する際に用いた化合物等を再利用できる方法も見出した。
【0006】
即ち、本発明は以下のとおりである。
[1]
下記一般式(3):
【化6】
(式中、mは0~3の整数、nは1~6の整数)
で表される含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(3)、又は
下記一般式(4):
【化7】
(式中、mは0~3の整数、nは1~6の整数、MはK、Rb、又はCsである。)
で表される含フッ素ビニルスルホン酸塩(4)の製造方法であり、
下記一般式(1):
【化8】
(式中、mは0~3の整数、nは1~6の整数)
で表される含フッ素ビニルスルホン酸無水物(1)と、
下記一般式(2):
MF (2)
(式中、Mは、K、Rb、又はCsである。)
で表されるアルカリ金属フッ化物(2)とを、
反応温度60~100℃で反応させて前記含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(3)と前記含フッ素ビニルスルホン酸塩(4)とを生成する工程と、
前記生成した含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(3)を分離する工程と、
前記分離された含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(3)と抽出化合物とを混合する工程と
を含み、
前記抽出化合物が、無機塩含有水溶液、アルコール化合物、アミド化合物、及びスルホ化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である
ことを特徴とする、製造方法。
[2]
前記含フッ素ビニルスルホン酸無水物(1)の物質量(α)と前記アルカリ金属フッ化物(2)の物質量(β)の比率(β/α)が、1~100、である、[1]に記載の製造方法。
[3]
下記一般式(3):
【化9】
(式中、mは0~3の整数、nは1~6の整数)
で表される含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(3)の製造方法である、[1]に記載の製造方法。
[4]
下記一般式(4):
【化10】
(式中、mは0~3の整数、nは1~6の整数、MはK、Rb、又はCsである。)
で表される含フッ素ビニルスルホン酸塩(4)の製造方法である、[1]に記載の製造方法。
[5]
前記無機塩含有水溶液が、炭酸塩類、硫酸塩類、チオ硫酸塩類、酢酸塩類、リン酸塩類、クエン酸塩類、酒石酸塩類、及び四ホウ酸塩類からなる群より選ばれる少なくとも1種の無機塩化合物を含む水溶液である、[1]に記載の製造方法。
[6]
前記含フッ素
ビニルスルホン酸フルオリド(3)の質量(ε)に対する前記抽出化合物の質量(ζ)の比率(ζ/ε)が、0.1~100、である
、[1]に記載の製造方法。
[7]
前記含フッ素
ビニルスルホン酸フルオリド(3)と、抽出化合物とを混合する工程により得られた混合溶液を、静置し、前記含フッ素
ビニルスルホン酸フルオリド(3)を含む相と、前記抽出化合物を含む相とに分離する工程を含む
、[1]に記載の製造方法。
[8]
前記抽出化合物を含む相を、前記含フッ素
ビニルスルホン酸フルオリド(3)と、抽出化合物とを混合する工程に再利用する、[7]に記載の製造方法。
[9]
前記含フッ素
ビニルスルホン酸フルオリド(3)を含む相から、含フッ素
ビニルスルホン酸フルオリド(3)を、蒸留により分離する工程を含む、[7]に記載の製造方法。
[10]
反応残渣を分離する工程を含む、[1]に記載の製造方法。
[11]
前記反応残渣と、溶解化合物とを混合し、含フッ素スルホン酸塩溶解液を調整する工程を含む、[10]に記載の製造方法。
[12]
前記溶解化合物が、エーテル化合物、ケトン化合物、エステル化合物、カーボネート化合物、及びニトリル化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である、[11]に記載の製造方法。
[13]
前記反応残渣の質量(γ)に対する前記溶解化合物の質量(δ)の比率(δ/γ)が、0.01~100である、[11]に記載の製造方法。
[14]
前記含フッ素スルホン酸塩溶解液をろ過し、含フッ素スルホン酸塩含有ろ液を得る工程を含む、[11]に記載の製造方法。
[15]
前記含フッ素スルホン酸塩溶解液をろ過し、アルカリ金属フッ化物(2)を含むろ物を得る工程を含む、[11]に記載の製造方法。
[16]
前記アルカリ金属フッ化物(2)を含むろ物を、前記含フッ素ビニルスルホン酸無水物(1)と反応温度60~100℃で反応させる際に再利用する、[15]に記載の製造方法。
[17]
前記含フッ素スルホン酸塩含有ろ液から、前記溶解化合物を含む揮発成分を分離し、前記含フッ素
ビニルスルホン酸塩(4)を得る工程を含む
ことを特徴とする、[14]に記載の製造方法。
[18]
前記溶解化合物を含む揮発成分を、前記反応残渣と、溶解化合物とを混合し、含フッ素スルホン酸塩溶解液を調整する工程に再利用する、[17]に記載の製造方法。
[19]
前記含フッ素スルホン酸塩含有ろ液に、水を添加し、混合する工程を含む、[14]に記載の製造方法。
[20]
前記含フッ素スルホン酸塩含有ろ液の質量(ι)と水の総質量(κ)の比率(κ/ι)が、0.1~100である、[19]に記載の製造方法。
[21]
前記含フッ素スルホン酸塩含有ろ液に、水を添加し、混合する工程により得られた溶液から、溶解化合物を含む揮発成分を分離し、含フッ素スルホン酸塩含有水溶液を調整する工程を含む、[19]に記載の製造方法。
[22]
前記含フッ素スルホン酸塩含有ろ液に、水を添加し、混合する工程により得られた溶液から、前記溶解化合物を含む揮発成分を分離し、含フッ素スルホン酸塩含有水溶液を調整する工程において分離した前記溶解化合物を含む揮発成分から、水を分離する工程を含む、[21]に記載の製造方法。
[23]
前記溶解化合物
を含む揮発成分を、前記反応残渣と、溶解化合物とを混合し、含フッ素スルホン酸塩溶解液を調整する工程に再利用する、[21]又は[22]に記載の製造方法。
[24]
前記含フッ素スルホン酸塩含有ろ液に、水を添加し、混合する工程により得られた溶液から、前記溶解化合物を含む揮発成分を分離し、含フッ素スルホン酸塩含有水溶液を調整する工程において分離した前記溶解化合物を含む揮発成分から、水を分離する工程において分離した水を、前記含フッ素スルホン酸塩含有ろ液に、水を添加し、混合する工程に再利用する、[19]に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(3)を高い収率で製造することができる。また、含フッ素ビニルスルホン酸塩(4)を製造することができる。さらに、含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(3)、及び含フッ素ビニルスルホン酸塩(4)を分離することができ、分離する際に用いた化合物等を再利用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の本実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0009】
本実施形態の製造方法は、
下記一般式(3):
【化11】
(式中、mは0~3の整数、nは1~6の整数)
で表される含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(3)、又は
下記一般式(4):
【化12】
(式中、mは0~3の整数、nは1~6の整数、MはK、Rb、又はCsである。)
で表される含フッ素ビニルスルホン酸塩(4)の製造方法であり、
下記一般式(1):
【化13】
(式中、mは0~3の整数、nは1~6の整数)
で表される含フッ素ビニルスルホン酸無水物(1)と、
下記一般式(2):
MF (2)
(式中、Mは、K、Rb、又はCsである。)
で表されるアルカリ金属フッ化物(2)とを、
反応温度60~100℃で反応させる、
ことを特徴とする。
【0010】
以下、化合物(1)、及び(2)、化合物(3)、又は(4)を製造する際の反応条件等の詳細について説明する。
【0011】
<含フッ素ビニルスルホン酸無水物(1)(化合物(1))>
含フッ素ビニルスルホン酸無水物(1)は、下記一般式(1):
【化14】
(式中、mは0~3の整数、nは1~6の整数)
で表される。
含フッ素ビニルスルホン酸無水物(1)は、1種単独であっても、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0012】
mとしては、入手又は製造が容易であり、経済性に優れる傾向にあることから、0~1であることが好ましく、0であることがより好ましい。
nとしては、入手又は製造が容易であり、経済性に優れる傾向にあることから、1~4であることが好ましく、2~4であることがより好ましく、2であることがさらに好ましい。
mとnの組み合わせとしては、m=0、n=2であることが、特に好ましい。
【0013】
含フッ素ビニルスルホン酸無水物(1)の製造方法としては、特に限定されず、従来公知の方法で製造することができる。例えば、国際公開第2020/012913号に記載の方法により、製造することができる。
【0014】
<アルカリ金属フッ化物(2)(化合物2)>
アルカリ金属フッ化物(2)は、下記一般式(2):
MF (2)
(式中、Mは、K、Rb、又はCsである。)
で表される。
アルカリ金属フッ化物(2)は、1種単独であっても、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0015】
Mとしては、入手が容易であり、経済性に優れる傾向にあることから、K、又はCsがより好ましく、同様の観点からKがさらに好ましい。
【0016】
化合物(2)は、必要に応じて、含水量を低減させたものを用いることもできる。
化合物(2)の含水量を低減させる方法としては、一般的に利用できる方法であれば特に限定されないが、加熱する方法、真空下で加熱する方法、乾燥ガス流通下で加熱する方法などが挙げられる。
加熱する温度は、化合物(2)の含水量を低減できる温度であれば特に限定されないが、化合物(2)の分解を抑制できる傾向にあることから、600℃以下であることが好ましい。過剰な加熱を抑制し、より経済性に優れる傾向にあることから、300℃以下であることがより好ましく、同様の観点から250℃以下であることがさらに好ましく、200℃以下であることが特に好ましい。また、含水量の低減が促進する傾向にあることから、100℃以上であることが好ましく、120℃以上であることがより好ましく、150℃以上であることがさらに好ましい。
乾燥ガスとしては、一般的に用いられる乾燥ガスであれば特に限定されず、乾燥空気、乾燥窒素などが挙げられる。
【0017】
含フッ素ビニルスルホン酸無水物(1)と、アルカリ金属フッ化物(2)とを反応させる際、必要に応じて、例えば、エーテル化合物、ニトリル化合物、アミド化合物、スルホ化合物、飽和炭化水素化合物、芳香族炭化水素化合物、ハロゲン化炭化水素化合物、アルコール化合物、ケトン化合物、エステル化合物、及び水等を添加剤として用いることができる。
【0018】
前記添加物は、一般的に用いられる化合物であれば特に限定されないが、具体的に例示するならば、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、4-メチルテトラヒドロピラン、シクロペンチルメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジペンチルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジヘプチルエーテル、ジオクチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、1,4-ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、エチレングリコールジブチルエーテル、1,2-ジメトキシプロパン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、及びジプロピレングリコールジメチルエーテル等のエーテル化合物、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、2-メチルブチロニトリル、シクロヘキサンカルボニトリル、ベンゾニトリル、アジポニトリル、m-フルオロベンゾニトリル、2,3-ジフルオロベンゾニトリル、2,3,4-トリフルオロベンゾニトリル、2,3,6-トリフルオロベンゾニトリル、2-フルオロ-3-(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル、2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル、2-フルオロ-5-(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル、3-フルオロ-5-(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル、2,3,4,5-テトラフルオロベンゾニトリル、フルオロアセトニトリル、ジフルオロアセトニトリル、2-フルオロベンゾニトリル、2,4,5-トリフルオロベンゾニトリル、o-(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル、及びペンタフルオロベンゾニトリル等のニトリル化合物、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、テトラメチルウレア、及び1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等のアミド化合物、ジメチルスルホキシド、ジブチルスルホキシド、エチルメチルスルホン、エチルイソプロピルスルホン、スルホラン、及び3-メチルスルホラン等のスルホ化合物、n-ペンタン、n-ヘキサン、イソヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、イソオクタン、n-ノナン、n-デカン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、及びシクロオクタン等の飽和炭化水素化合物、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、ナフタリン、テトラリン、及びビフェニル等の芳香族炭化水素化合物、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、塩化エチレン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、ペンタクロロエタン、ヘキサクロロエタン、ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、ジクロロプロパン、トリクロロプロパン、塩化イソプロピル、塩化ブチル、塩化ヘキシル、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、クロロトルエン、及びクロロナフタリン等のハロゲン化炭化水素化合物、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、シクロヘキサノール、及びベンジルアルコール等のアルコール化合物、アセトン、メチルアセトン、エチルメチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルヘキシルケトン、ジエチルケトン、エチルブチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、及びシクロヘキサノン等のケトン化合物、及び酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸ペンチル、酢酸ヘキシル、酢酸オクチル、酢酸シクロヘキシル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル、及び安息香酸ベンジル等のエステル化合物が挙げられる。
【0019】
前記添加剤は、必要に応じて、含水量を低減させたものを用いることもできる。
含水量が少ない添加剤は、購入することもできるし、添加剤の含水量を減少させる方法を利用することもできる。添加剤の含水量を減少させる方法としては、一般的に利用できる方法であれば特に限定されないが、例えば、脱水剤を利用する方法、蒸留する方法などが挙げられる。
脱水剤としては、一般的に用いられる脱水剤であれば特に限定されないが、水素化ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、塩化カルシウム、塩化亜鉛、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、五酸化二リン、活性アルミナ、シリカゲル、及びモレキュラーシーブなどが挙げられる。脱水剤を用いた場合、化合物(1)と化合物(2)との反応に影響がなければ脱水剤を含んだ添加剤を利用してもよいし、ろ過などにより脱水剤を含まない添加剤を利用してもよい。
【0020】
<化合物(1)の物質量(α)に対する化合物(2)の物質量(β)の比率(β/α)>
化合物(1)の物質量(α)に対する化合物(2)の物質量(β)の比率(β/α)は、化合物(3)の収量が増える傾向にあり、化合物(3)を製造する方法の経済性が優れる傾向にあることから、0.5以上であることが好ましく、0.8以上であることがより好ましい。未反応の化合物(1)が残ることを抑制できる傾向にあることから、1以上であることがさらに好ましい。
【0021】
化合物(1)の物質量(α)に対する化合物(2)の物質量(β)の比率(β/α)の上限は、特に限定されないが、化合物(2)の使用量が低減され、化合物(3)を製造する方法の経済性が優れる傾向にあることから、β/αが100以下であることが好ましく、同様の観点から、β/αが50以下であることがより好ましく、β/αが10以下であることがさらに好ましい。
【0022】
<化合物(1)と化合物(2)との反応>
本実施形態の明細書において、反応温度とは、化合物(1)と化合物(2)とを含む反応混合物を内包する容器を、外部より加熱する際の温度のことである。反応温度は、60~100℃であることが好ましい。
化合物(1)と化合物(2)の反応温度は、上記範囲であれば一定である必要はなく、途中で変化させてもよい。
【0023】
化合物(1)と化合物(2)との反応時間は、一般的に用いられる範囲であれば特に限定されないが、化合物(3)の収率の安定性がより高まることから、0.5時間以上であることが好ましく、1時間以上であることがより好ましい。過剰な反応時間としないことで、経済性により優れる製造方法となる傾向にあることから、100時間以下であることが好ましく、同様の観点から50時間以下であることがより好ましく、20時間以下であることがさらに好ましい。
【0024】
化合物(1)と化合物(2)との反応圧力は、通常用いられる範囲であれば特に限定されず、加圧、大気圧、減圧のいずれでもよく、反応中に途中で変化させてもよい。化合物(1)の種類によっては、反応温度において、揮発する場合があり、化合物(1)を液化させ、再利用できない場合には、大気圧以上の加圧を行うことが有効な手段である。生成する化合物(3)を、化合物(1)と化合物(2)との反応中に分離する場合には、大気圧、減圧のいずれかが好ましい。化合物(3)の分離を促進する観点からは、減圧であることがより好ましい。
【0025】
化合物(1)と化合物(2)との反応の雰囲気は、通常用いられる雰囲気であれば特に限定されず、通常は大気雰囲気、窒素雰囲気、及びアルゴン雰囲気等が用いられる。これらの中でも、より安全に化合物(3)を製造できる傾向にあることから、窒素雰囲気及びアルゴン雰囲気が好ましい。また、より経済性に優れる製造方法となる傾向にあることから、窒素雰囲気がより好ましい。化合物(3)の分離を促進できる傾向にあることから、流通した雰囲気とすることが好ましい方法として用いられる場合がある。
反応雰囲気は、1種単独で用いてもよいし、複数種の反応雰囲気を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
化合物(1)と化合物(2)とを反応させる際、反応温度未満の温度で化合物(1)に化合物(2)を添加し、反応温度として反応させる方法、反応温度未満の温度で化合物(2)に化合物(1)を添加し、反応温度として反応させる方法、反応温度で化合物(1)に化合物(2)を添加し、反応させる方法、反応温度で化合物(2)に化合物(1)を添加し、反応させる方法等が例示できる。
【0027】
化合物(1)と化合物(2)とを反応させることで、化合物(3)と共に化合物(4)も生成する。化合物(3)と化合物(4)は、燃料電池用隔膜、燃料電池用触媒バインダーポリマー、食塩電解用隔膜等の主要成分であるフッ素系高分子電解質の原料や、各種のフッ素化合物に変換することができる原料として有用な化合物であることが知られているが、利用する際には、化合物(3)と化合物(4)とを分離し、それぞれの化合物として利用できることが、一般的には求められる。
【0028】
化合物(3)を分離する方法としては、一般的に用いられる方法であれば特に限定されないが、化合物(1)と化合物(2)とを反応させながら、化合物(3)を留去し、分離する方法や、化合物(1)と化合物(2)との反応が終了した後、化合物(3)を留去し、分離する方法や、化合物(3)は溶解できるが、化合物(4)は溶解できない化合物により、化合物(3)を含む溶液とし、溶解に用いた化合物を除去し、化合物(3)を分離する方法等が例示できる。これらの中でも、煩雑な操作が必要なく、化合物(3)を分離できることから、化合物(1)と化合物(2)とを反応させながら、化合物(3)を留去し、分離する方法が好ましい。化合物(1)と化合物(2)とを反応させながら、化合物(3)を留去する際、反応温度が化合物(3)を留去できる温度である場合には、常圧で行ってもよいし、常圧で化合物(3)に不活性な気体(例えば、窒素)を流通させてもよいし、減圧で行ってもよい。また、反応温度が化合物(3)を留去するには不十分な温度である場合には、常圧で化合物(3)に不活性な気体(例えば、窒素)を流通させてもよいし、減圧で行ってもよい。
【0029】
前記の化合物(3)は溶解できるが、化合物(4)は溶解できない化合物としては、一般艇に用いられる化合物であれば特に限定されないが、n-ペンタン、n-ヘキサン、イソヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、イソオクタン、n-ノナン、n-デカン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、ナフタリン、テトラリン、ビフェニル、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、塩化エチレン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、ペンタクロロエタン、ヘキサクロロエタン、ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、ジクロロプロパン、トリクロロプロパン、塩化イソプロピル、塩化ブチル、塩化ヘキシル、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、クロロトルエン、クロロナフタリン等の炭化水素化合物、ハイドロフルオロエーテル類、ハイドロフルオロカーボン類、ハイドロフルオロオレフィン類、ハイドロクロロフルオロカーボン類、ハイドロクロロフルオロオレフィン類等のフッ素系化合物(より具体的には、3M社製Novec(登録商標)シリーズ、及びフロリナート(登録商標)シリーズ、ケマーズ社製バートレル(登録商標)シリーズ、ソルベイ社製ソルカン(登録商標)、AGC株式会社製アサヒクリン(登録商標)シリーズ、及びアモレア(登録商標)シリーズ、セントラル硝子株式会社製セレフィン(登録商標))が例示できる。
【0030】
分離した化合物(3)は、必要に応じて、純度を高めることができる。純度を高める方法としては、一般的に用いられる方法であれば特に限定されないが、蒸留により純度を高める方法、純度を低下させている化合物に対して大きな溶解度を有し、化合物(3)と分離するような化合物(以下、「抽出化合物」ともいう。)により、化合物(3)に含まれている純度を低下せている化合物の含有量を低減させる方法、これらを組み合わせた方法等が例示できる。
【0031】
化合物(3)を蒸留する場合には、一般的に用いられる条件であれば特に限定されず、常圧蒸留、加圧蒸留、減圧蒸留のいずれであってもよい。蒸留装置としては、棚段塔、充填塔、それぞれを組み合わせた塔のいずれであってもよい。棚段塔のトレイデッキとしては、バブルキャップ、シーブトレイ、可動式バルブ、固定式バルブいずれのトレイデッキを用いてもよい。充填塔の充填物としては、規則充填物、不規則充填物のいずれの充填物を用いてもよい。蒸留する化合物(3)の量が少ない場合には、オルダーショウ型蒸留装置、ビグリューカラムを備えた蒸留装置、回転バンドカラムを備えた蒸留装置、充填式蒸留装置を用いることができる。充填剤としては、一般的に用いられる充填剤であれば特に限定されないが、ラシヒリング、レッシングリング、ポールリング、クロスリング、メダルパック、トールパック、オムニパック、ベルルサドル、インタロックスサドル、ディクソンパッキング、マクマホンパッキング、ヘリパック、メラパック、ジェムパック、テクノパック、フレキシパック、スルザーパッキン、グッドロールパッキング、グッドロールパッキング等が例示できる。還流比、及び理論段数は、所望の化合物(3)の純度を達成できる還流比、及び理論段数であれば、一般的に用いられる範囲とすることができる。還流比としては、理論段数にもよるが、蒸留に要するエネルギーを抑制できる観点から、100以下であることが好ましく、50以下であることがより好ましく、25いかであることがさらに好ましい。化合物(3)の純度が向上する傾向にあることから、還流比は1以上であることが好ましく、3以上であることがより好ましく、5以上であることがさらに好ましい。理論段数としては、蒸留装置の費用が抑制でき、経済性に優れる傾向にあることから、300以下であることが好ましく、200以下であることがより好ましく、100以下であることがさらに好ましい。化合物(3)の純度が向上する傾向にあることから、理論段数は1以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましく、10以上であることがさらに好ましい。
【0032】
抽出化合物としては、一般的に用いられる化合物であれば特に限定されないが、水、無機塩含有水溶液、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール等のアルコール化合物、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、テトラメチルウレア、及び1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等のアミド化合物、ジメチルスルホキシド、ジブチルスルホキシド、エチルメチルスルホン、エチルイソプロピルスルホン、スルホラン、及び3-メチルスルホラン等のスルホ化合物が例示できる。これらの中でも化合物(3)への混入が抑制できる傾向になることから、水、及び無機塩含有水溶液が好ましい。
【0033】
本実施形態の明細書において、前記無機塩含有水溶液とは、炭酸塩類、硫酸塩類、チオ硫酸塩類、酢酸塩類、リン酸塩類、クエン酸塩類、酒石酸塩類、及び四ホウ酸塩類からなる群より選ばれる少なくとも1種の無機塩化合物を含む水溶液のことである。
【0034】
無機塩化合物は、一般的に用いられる化合物であれば特に限定されないが、具体的に例示するならば、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ルビジウム、炭酸水素セシウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、炭酸セシウム、炭酸アンモニウム等の炭酸塩類、硫酸水素リチウム、硫酸水素ナトリウム、硫酸水素カリウム、硫酸水素ルビジウム、硫酸水素セシウム、硫酸水素アンモニウム、硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸ルビジウム、硫酸セシウム、硫酸アンモニウム等の硫酸塩類、チオ硫酸リチウム、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸カリウム、チオ硫酸ルビジウム、チオ硫酸セシウム、チオ硫酸アンモニウム、チオ硫酸マグネシウム等のチオ硫酸塩類、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸ルビジウム、酢酸セシウム、酢酸アンモニウム等の酢酸塩類、リン酸三リチウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸三ルビジウム、リン酸三セシウム、リン酸三アンモニウム、リン酸水素二リチウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸水素二ルビジウム、リン酸水素二セシウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素リチウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素ルビジウム、リン酸二水素セシウム、リン酸二水素アンモニウム等のリン酸塩類、クエン酸三リチウム、クエン酸三ナトリウム、クエン酸三カリウム、クエン酸三ルビジウム、クエン酸三セシウム、クエン酸三アンモニウム、クエン酸水素二リチウム、クエン酸水素二ナトリウム、クエン酸水素二カリウム、クエン酸水素二ルビジウム、クエン酸水素二セシウム、クエン酸水素二アンモニウム、クエン酸二水素リチウム、クエン酸二水素ナトリウム、クエン酸二水素カリウム、クエン酸二水素ルビジウム、クエン酸二水素セシウム、クエン酸二水素アンモニウム等のクエン酸塩類、酒石酸リチウム、酒石酸ナトリウム、酒石酸カリウム、酒石酸ルビジウム、酒石酸セシウム、酒石酸アンモニウム、酒石酸リチウムナトリウム、酒石酸ナトリウムカリウム、酒石酸ナトリウムカリウム、酒石酸ナトリウムアンモニウム、酒石酸カリウムアンモニウム等の酒石酸塩類、四ホウ酸リチウム、四ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸カリウム、四ホウ酸ルビジウム、四ホウ酸セシウム、四ホウ酸アンモニウム等の四ホウ酸塩類等が挙げられる。
【0035】
これらの中でも、入手が容易であり、経済性に優れる傾向にあることから、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素セシウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、炭酸セシウム、炭酸アンモニウム、硫酸水素ナトリウム、硫酸水素カリウム、硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸ルビジウム、硫酸セシウム、硫酸アンモニウム、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸アンモニウム、チオ硫酸マグネシウム、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸ルビジウム、酢酸セシウム、酢酸アンモニウム、リン酸三リチウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素アンモニウム、クエン酸三リチウム、クエン酸三ナトリウム、クエン酸三カリウム、クエン酸三アンモニウム、クエン酸水素二ナトリウム、クエン酸水素二アンモニウム、酒石酸ナトリウム、四ホウ酸リチウム、四ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸カリウム、四ホウ酸アンモニウムが好ましく、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、硫酸水素ナトリウム、硫酸水素カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸アンモニウム、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸アンモニウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸アンモニウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素アンモニウム、クエン酸三ナトリウム、クエン酸三カリウム、クエン酸三アンモニウム、クエン酸水素二ナトリウム、クエン酸水素二アンモニウム、酒石酸ナトリウム、四ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸カリウム、四ホウ酸アンモニウムがより好ましく、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、硫酸水素ナトリウム、硫酸水素カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、チオ硫酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウムがさらに好ましく、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、硫酸水素ナトリウム、硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウムが特に好ましい。
【0036】
無機塩含有水溶液の濃度は、無機塩化合物の溶解度を上限として、特に限定されない。無機塩含有水溶液を1回の利用で廃棄する場合には、過剰な無機塩化合物の使用が抑制され、化合物(3)を製造する際の経済性に優れる傾向にあることから、無機塩化合物の溶解度の0.5倍以下の濃度であることが好ましく、0.2倍以下の濃度であることがより好ましく、0.1倍以下の濃度であることがさらに好ましく、0.05倍以下の濃度であることが特に好ましい。無機塩含有水溶液を複数回利用する場合には、化合物(3)に含まれている純度を低下せている化合物の含有量を低減させる特性が維持できる傾向に優れることから、無機塩化合物の溶解度の0.5倍以上の濃度であることが好ましく、0.7倍以上の濃度であることがより好ましく、0.9倍以上であることがさらに好ましい。
【0037】
<化合物(1)と化合物(2)との反応後分離した化合物(3)の質量(ε)に対する抽出化合物の質量(ζ)の比率(ζ/ε)>
化合物(1)と化合物(2)との反応後分離した化合物(3)の質量(ε)に対する抽出化合物の質量(ζ)の比率(ζ/ε)は、化合物(3)に含まれている純度を低下せている化合物の含有量がより低減する傾向にあることから、0.1以上であることが好ましく、0.3以上であることがより好ましく、0.5以上であることがさらに好ましい。
【0038】
化合物(1)と化合物(2)との反応後分離した化合物(3)の質量(ε)に対する抽出化合物の質量(ζ)の比率(ζ/ε)の上限は、特に限定されないが、化合物(3)の抽出化合物への溶解量が低減する傾向にあること、及び化合物(3)の抽出化合物への分散量が低減する傾向にあることから、ζ/εが100以下であることが好ましく、20以下であることがより好ましく、10以下であることがさらに好ましく、5以下であることが特に好ましい。
【0039】
化合物(1)と化合物(2)との反応後、分離した化合物(3)と、抽出化合物とを攪拌・混合することで、純度を低下させている化合物の抽出化合物へ溶解する速度が向上する傾向にある。攪拌する方法としては、一般的に用いられる攪拌方法であれば、特に限定されないが、具体的には、攪拌方式(攪拌翼形式、ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、ポリトロンホモジナイザー等)、攪拌翼形状(例えば、ファン、プロペラ、十字、バタフライ、とんぼ、タービン、ディスクタービン、ディスパ、パドル、傾斜パドル等)、反応槽へのバッフルの設置、ホモジナイザーのシャフト形状(万能型、攪拌型、多重超音波型、オープン型、密閉型等)等が挙げられる。
【0040】
攪拌・混合する時間は、一般的に用いられる範囲であれば特に限定されないが、化合物(3)の純度を低下させている化合物が抽出化合物へ溶解する量が増加する傾向にあることから、0.01時間以上であることが好ましく、0.1時間以上であることがより好ましく、0.5時間以上であることがさらに好ましく、1時間以上であることが特に好ましい。過剰な攪拌・混合する時間としないことで、経済性により優れる製造方法となる傾向にあることから、100時間以下であることが好ましく、同様の観点から50時間以下であることがより好ましく、10時間以下であることがさらに好ましく、5時間以下であることが特に好ましい。
【0041】
化合物(3)と、抽出化合物とを、攪拌・混合した後、静置することで、化合物(3)を含む相と、抽出化合物を含む相とに相分離する。
相分離するため静置する時間は、一般的に用いられる範囲であれば特に限定されないが、化合物(3)を含む相が、抽出化合物を含む相に分散されている量が低減され、化合物(3)の得られる量が増加する傾向にあることから、0.01時間以上であることが好ましく、0.1時間以上であることがより好ましく、0.5時間以上であることがさらに好ましい。過剰な静置する時間としないことで、経済性により優れる製造方法となる傾向にあることから、100時間以下であることが好ましく、同様の観点から50時間以下であることがより好ましく、10時間以下であることがさらに好ましく、5時間以下であることが特に好ましい。
【0042】
含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(3)と、抽出化合物とを攪拌・混合する温度、及び静置し相分離する温度は、一般的に用いられる温度であれば特に限定されないが、
化合物(3)の純度を低下させている化合物が抽出化合物へ溶解する量が増加する傾向にあること、及び化合物(3)を含む相が、抽出化合物を含む相に分散されている量が低減され、化合物(3)の得られる量が増加する傾向にあることから、-40℃以上であることが好ましく、-20℃以上であることがより好ましい。同様の観点、及び工業的に温度調整する際の経済性に優れる傾向にあることから、0℃以上であることがさらに好ましく、10℃以上であることが特に好ましい。
【0043】
含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(3)と、抽出化合物とを攪拌・混合する温度、及び静置し相分離する温度の上限は、特に限定されないが、化合物(3)の抽出化合物への溶解が抑制される傾向にあることから、120℃以下であることが好ましく、100℃以下がより好ましく、80℃以下であることがさらに好ましく、60℃以下であることが特に好ましい。
含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(3)と、抽出化合物とを攪拌・混合する温度、及び静置し相分離する温度は、上記範囲であれば一定である必要はなく、途中で変化させてもよい。
【0044】
含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(3)と、抽出化合物とを攪拌・混合する圧力、及び静置し相分離する圧力は、通常用いられる範囲であれば特に限定されず、通常は大気圧下で反応が行われる。ただし、化合物(3)、抽出化合物の種類によっては揮発する場合があることから、揮発を抑制するため、大気圧以上の加圧を行うことが有効な手段である。揮発する化合物を液化させ、再利用する場合には、大気圧以下の減圧であってもよい。
含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(3)と、抽出化合物とを攪拌・混合する温度、及び静置し相分離する圧力は、上記範囲であれば一定である必要はなく、途中で変化させてもよい。
【0045】
含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(3)と、抽出化合物とを攪拌・混合する雰囲気、及び静置し相分離する雰囲気は、通常用いられる雰囲気であれば特に限定されず、通常は大気雰囲気、窒素雰囲気、及びアルゴン雰囲気等が用いられる。これらの中でも、より安全に化合物(3)を製造できる傾向にあることから、窒素雰囲気及びアルゴン雰囲気が好ましい。また、より経済性に優れる製造方法となる傾向にあることから、窒素雰囲気がより好ましい。
含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(3)と、抽出化合物とを攪拌・混合する温度、及び静置し相分離する雰囲気は、1種単独で用いてもよいし、複数種の雰囲気を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(3)と、抽出化合物とを攪拌・混合し、静置することで相分離し、得られた抽出化合物を含む相は、化合物(1)と化合物(2)との反応後、分離した化合物(3)の純度を高めるために再利用してもよい。
【0047】
化合物(1)と化合物(2)との反応において、化合物(1)の物質量よりも化合物(2)の物質量を少なく用い、未反応の化合物(1)を残留させ、生成する化合物(3)を分離後、化合物(1)と生成する化合物(4)を分離することで化合物(1)を回収する方法や生成する化合物(3)と化合物(1)とを化合物(4)から分離し、化合物(3)と化合物(1)とを分離することで化合物(1)を回収する方法が考えられる。分離後の化合物(1)を再利用することで、化合物(1)の廃棄を抑制し、化合物(3)を製造する際の経済性を向上させることが考えられるものの、回収するための工程が必要となる。前記観点、及び化合物(1)と化合物(2)とでは、化合物(2)の方が入手が容易であり、化合物(3)を製造するための経済性に優れる傾向にあることから、化合物(1)の物質量よりも化合物(2)の物質量を多く用い、未反応の化合物(1)を低減させ、化合物(2)と、化合物(3)と、化合物(4)を含む混合物とし、化合物(3)を分離した後、化合物(2)と、化合物(4)とを含む混合物から化合物(4)を分離する方法の方が、化合物(3)を製造する際の経済性に優れる傾向にあると考えられる。
【0048】
化合物(1)と、化合物(2)とを反応させ、化合物(3)を生成し、化合物(3)を分離した後得られる化合物(2)と化合物(4)とを含む混合物(以下、「反応残渣」という。)から、化合物(4)を分離する方法としては、一般的に用いられる方法であれば特に限定されないが、例えば、化合物(4)に対して大きな溶解度を有し、化合物(2)に対して小さな溶解度を有する化合物(以下、「溶解化合物」という。)を加え、化合物(4)が溶解化合物に溶解した溶液(以下、「含フッ素スルホン酸塩溶解液」という)とした後、化合物(2)をろ過により除去した後、化合物(4)に対して大きな溶解度を有する化合物を留去する、若しくは化合物(4)を晶析することで、化合物(4)を得る方法が挙げられる。
【0049】
溶解化合物としては、一般的に用いられる化合物であれば特に限定されないが、エーテル化合物、ケトン化合物、エステル化合物、カーボネート化合物、ニトリル化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
【0050】
溶解化合物を具体的に例示するならば、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、4-メチルテトラヒドロピラン、シクロペンチルメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジペンチルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジヘプチルエーテル、ジオクチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、1,4-ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、エチレングリコールジブチルエーテル、1,2-ジメトキシプロパン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、及びジプロピレングリコールジメチルエーテル等のエーテル化合物、アセトン、メチルアセトン、エチルメチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルヘキシルケトン、ジエチルケトン、エチルブチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、及びシクロヘキサノン等のケトン化合物、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸ペンチル、酢酸ヘキシル、酢酸オクチル、酢酸シクロヘキシル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル、及び安息香酸ベンジル等のエステル化合物、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、フルオロメチルメチルカ一ボネ一卜、ジフルオロメチルメチルカーボネート、卜リフルオロメチルメチルカーボネート、ビス(フルオロメチル)カーボネート、ビス(ジフルオロメチル)カーボネート、ビス(卜リフルオロメチル)カーボネート、フルオロメチルジフルオロメチルカーボネート、2,2,2-トリフルオロエチルメチルカーボネート、ペンタフルオロエチルメチルカーボネート、エチル卜リフルオロメチルカーボネート、ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)カーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、4-(卜リフルオロメチル)-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,4-ジフルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン、4-フルオロ-4-メチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4-(フルオロメチル)-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,5-ジフルオロ-1,3-ジオキソラン-2-オン、4-フルオロ-5-メチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,5-ジフルオロ-4,5-ジメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、ビニレン力一ボネ一卜、ビニルエチレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、エチルビニレンカーボネート等のカーボネート化合物、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、2-メチルブチロニトリル、シクロヘキサンカルボニトリル、ベンゾニトリル、アジポニトリル、フルオロアセトニトリル、ジフルオロアセトニトリル、2-フルオロベンゾニトリル、2,4,5-トリフルオロベンゾニトリル、o-(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル、ペンタフルオロベンゾニトリルがより好ましく、2-フルオロベンゾニトリル、2,4,5-トリフルオロベンゾニトリル、o-(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル、及びペンタフルオロベンゾニトリル等のニトリル化合物が挙げられる。
【0051】
前記エーテル化合物の内、エーテル化合物を留去しやすい傾向にあることから、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、4-メチルテトラヒドロピラン、シクロペンチルメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジペンチルエーテル、ジヘキシルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、1,4-ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、エチレングリコールジブチルエーテル、1,2-ジメトキシプロパン、ジエチレングリコールジメチルエーテルが好ましい。化合物(4)の溶解性が高い傾向にあることから、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、1,4-ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、1,2-ジメトキシプロパンがより好ましい。入手又は製造が容易であり、経済性に優れる傾向にあることから、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、メチルtert-ブチルエーテル、1,4-ジオキサン、1,2-ジメトキシエタンがさらに好ましい。
【0052】
前記ケトン化合物の内、化合物(4)の溶解性が高い傾向にあることから、アセトン、エチルメチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンが好ましく、アセトン、エチルメチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトンがより好ましい。入手が容易であり、経済性に優れる傾向にあることから、アセトン、エチルメチルケトン、メチルイソブチルケトンがさらに好ましい。
【0053】
前記エステル化合物の内、エステル化合物を留去しやすい傾向にあることから、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸ペンチル、酢酸ヘキシル、酢酸シクロヘキシル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチルが好ましく、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチルがより好ましい。入手が容易であり、経済性に優れる傾向にあることから、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルがさらに好ましい。
【0054】
前記カーボネート化合物の内、入手が容易であり、経済性に優れる傾向にあることから、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ビニレン力一ボネ一卜、ビニルエチレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、エチルビニレンカーボネートが好ましく、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートがより好ましい。化合物(4)の溶解性が高い傾向にあることから、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートがさらに好ましく、ジメチルカーボネート、エチレンカーボネートが特に好ましい。
【0055】
前記ニトリル化合物の内、入手が容易であり、経済性に優れる傾向にあることから、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、2-メチルブチロニトリル、シクロヘキサンカルボニトリル、ベンゾニトリル、アジポニトリルが好ましく、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、ベンゾニトリル、アジポニトリルがより好ましい。化合物(4)の溶解性が高い傾向にあることから、アセトニトリル、プロピオニトリル、アジポニトリルがさらに好ましい。
【0056】
<反応残渣の質量(γ)に対する溶解化合物の質量(δ)の比率(δ/γ)>
反応残渣の質量(γ)に対する溶解化合物の質量(δ)の比率(δ/γ)は、化合物(4)が溶解化合物に含有される量が増加する傾向にあることから、0.1以上であることが好ましく、0.5以上であることがより好ましく、0.7以上であることがさらに好ましく、1.0以上であることが特に好ましい。反応残渣の質量(γ)に対する溶解化合物の質量(δ)の比率(δ/γ)の上限は、特に限定されないが、過剰な溶解化合物の使用が抑制され、化合物(4)を製造する際の経済性に優れる傾向にあることから、100以下であることが好ましく、50以下であることがより好ましく、25以下であることがさらに好ましく、10以下であることが特に好ましい。
【0057】
反応残渣と溶解化合物とを攪拌する方法としては、一般的に用いられる攪拌方法であれば、特に限定されないが、具体的には、攪拌方式(攪拌翼形式、ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、ポリトロンホモジナイザー等)、攪拌翼形状(例えば、ファン、プロペラ、十字、バタフライ、とんぼ、タービン、ディスクタービン、ディスパ、パドル、傾斜パドル等)、反応槽へのバッフルの設置、ホモジナイザーのシャフト形状(万能型、攪拌型、多重超音波型、オープン型、密閉型等)等が挙げられる。
【0058】
反応残渣と溶解化合物とを攪拌する時間は、一般的に用いられる範囲であれば特に限定されないが、化合物(4)が溶解化合物に溶解する量が増加する傾向にあることから、0.01時間以上であることが好ましく、0.1時間以上であることがより好ましく、0.5時間以上であることがさらに好ましく、1時間以上であることが特に好ましい。過剰な攪拌・混合する時間としないことで、経済性により優れる製造方法となる傾向にあることから、100時間以下であることが好ましく、同様の観点から50時間以下であることがより好ましく、10時間以下であることがさらに好ましく、5時間以下であることが特に好ましい。
【0059】
反応残渣と溶解化合物とを攪拌する温度は、一般的に用いられる温度であれば特に限定されないが、化合物(4)の溶解化合物への溶解する速度が向上する傾向にあることから、-40℃以上であることが好ましく、-20℃以上であることがより好ましい。同様の観点、及び工業的に温度調整する際の経済性に優れる傾向にあることから、0℃以上であることがさらに好ましく、10℃以上であることが特に好ましい。反応残渣と溶解化合物とを攪拌する温度の上限は、特に限定されないが、溶解化合物の種類によっては揮発する場合があることから、揮発を抑制でき、化合物(4)の析出を抑制できる傾向にあることから、120℃以下であることが好ましく、100℃以下がより好ましく、80℃以下であることがさらに好ましく、60℃以下であることが特に好ましい。
反応残渣と溶解化合物とを攪拌する温度は、上記範囲であれば一定である必要はなく、途中で変化させてもよい。
【0060】
反応残渣と溶解化合物とを攪拌する圧力は、通常用いられる範囲であれば特に限定されず、通常は大気圧下で攪拌する。ただし、溶解化合物の種類によっては揮発する場合があることから、揮発を抑制するため、大気圧以上の加圧を行うことが有効な手段である。揮発する化合物を液化させ、再利用する場合には、大気圧以下の減圧であってもよい。
反応残渣と溶解化合物とを攪拌する圧力は、上記範囲であれば一定である必要はなく、途中で変化させてもよい。
【0061】
反応残渣と溶解化合物とを攪拌する雰囲気は、通常用いられる雰囲気であれば特に限定されず、通常は大気雰囲気、窒素雰囲気、及びアルゴン雰囲気等が用いられる。これらの中でも、より安全に化合物(4)を製造できる傾向にあることから、窒素雰囲気及びアルゴン雰囲気が好ましい。また、より経済性に優れる製造方法となる傾向にあることから、窒素雰囲気がより好ましい。
反応残渣と溶解化合物とを攪拌する雰囲気は、1種単独で用いてもよいし、複数種の雰囲気を組み合わせて用いてもよい。
【0062】
含フッ素スルホン酸塩溶解液に溶解していない化合物(2)を分離する方法としては、一般的に用いられる方法であれば特に限定されないが、例えば、ろ過分離する方法、遠心分離又は静置により化合物(2)を沈降させ固液分離して上澄みを採取する方法等が挙げられる。中でも、化合物(4)の回収量が多くなり、化合物(4)を製造する際の経済性に優れる傾向にあることから、ろ過分離が好ましい。
【0063】
ろ過分離の方法としては、一般的に用いられる方法であれば特に限定されないが、例えば、重力式ろ過、遠心式ろ過、加圧式ろ過、減圧式ろ過、圧搾式ろ過、磁気式ろ過、静電式ろ過等の方法が挙げられる。これらはバッチ方式でも、連続方式でもよい。
ろ過装置は、ろ過方式により一般的に用いられる装置であれば、特に限定されないが、大別するならば、例えば、水平ろ板型装置、多室水平ろ板型装置、セラミック膜型装置、円筒多室型装置、円筒単室型装置、水平走行型装置、サイホン型装置、バスケット型装置、分離板型装置、デカンタ型装置等が挙げられる。
【0064】
ろ過装置をより具体的に例示するならば、ストレーナ、砂ろ過機、コークスフィルタろ過機、焼結ろ材ろ過機、ヌッチェフィルタ、振動スクリーン、ロータリースクリーン、ベルトストレーナ、キャンドルプレートディスク、ロータリードラムフィルタ、ロータリーディスクフィルタ、ベルトフィルタ、テーブルフィルタ、パンフィルタ、内部フィード型ドラムフィルタ等の重力式ろ過装置;バッチフィルタ、クオータフィルタ、スクロールフィルタ、プッシャ、バイブレータ、遠心ろ過機等の遠心式ろ過装置;加圧ヌッチェ、フィルタプレス、エッジフィルタ、コンパートメントフィルタ、ペーパーロールフィルタ、遠心排出リーフ、リパルブリーフ、ピストンプレス、プレートプレス、スクリュープレス、シュナイダフィルタ、加圧型スクレーパーディスチャージフィルタ、バグフィルタ、キャンドルフィルタ、ドルックフィルター、焼結ろ材ろ過機等の加圧式ろ過装置;真空ヌッチェ、ドラムフィルタ、ヤングフィルタ、ディクスフィルタ、ホリゾンタルフィルタ、水平ベルトフィルタ、ヌッチェフィルタ、リーフフィルタ、キャンドルプレートディスク、ロータリーディスクフィルタ、ロータリードラムフィルタ、ベルトフィルタ、テーブルフィルタ、パンフィルタ、内部フィード型ドラムフィルタ、焼結ろ材ろ過機等の減圧式ろ過装置;ベルトプレス、スクリュープレス、チューブプレス、マルスプレス等の圧搾式ろ過装置;リング形磁気セパレータ、シリンダ形磁気セパレータ等の磁気式ろ過装置;回転式静電セパレータ等の静電式ろ過装置等が挙げられる。
なお、ろ過分離する際に利用するろ過装置には、固体を捕集し、液体を透過させるろ過層が具備されているが、本願においては、該ろ過層のことをろ材、という。
【0065】
化合物(2)を沈降させ固液分離して上澄みを採取する方法に利用できる装置としては、一般的に用いられる装置であれば特に限定されないが、例えば、デカンター、静止スクリーンジング機、運動スクリーンジング機、テーブル機、連続沈降タンク、バッチ沈降タンク、プレート付タンク、沈降浮上タンク、傾斜分級機、スパイラル分級機、沈降コーン、フィルター、シックナー、スクロール、スクロールディスク、グラビトロール、ディスクバッチ、円筒型ボウル、同心円形ボウル、ドラム沈降機、ハイドロサイクロン、セントル等が挙げられる。
【0066】
ろ過分離においては、必要に応じてろ過助剤を用いることができる。ろ過助剤を用いることで、化合物(2)の除去効率の向上(残留量の低減及びろ過時間の短縮)を図ることができる。
【0067】
ろ過助剤としては、一般的に利用されるろ過助剤であれば特に限定されないが、例示するならば、珪藻土(例えば、昭和化学工業株式会社製ラヂオライト、イメリス社製セライト等)、パーライト(例えば、昭和化学工業株式会社製トプコ、三井金属鉱業株式会社製ロカヘルプ等)、粉末セルロース(例えば、日本製紙株式会社製KCフロック、株式会社武蔵野化学研究所製ロカエース・シルキーエイド等)等が挙げられる。また、乾燥品、焼成品、融剤焼成品いずれのものであっても利用できる。これらの中でも化合物(2)の除去効率に優れていることに加え、入手が容易であり、スルホン酸基含有モノマーを精製する工程の経済性が向上する傾向にあることから、珪藻土、及び/又はパーライトが好ましく、珪藻土がより好ましい。
ろ過助剤は、単独でも複数種組み合わせて用いてもよい。
【0068】
ろ過助剤の透過率(Darcy)は、一般的に利用される透過率(Darcy)の範囲内であれば特に限定されないが、0.01~30であることが好ましい。化合物(2)の残留量が少なく、且つろ過時間が短くなる傾向にあることから、0.03以上であることが好ましく、0.05以上であることがより好ましい。化合物(2)のろ過時間が短く、且つ残留量が少なくなる傾向にあることから、22以下であることが好ましく、2以下であることがより好ましく、0.25以下であることがさらに好ましい。
【0069】
ろ過助剤の使用量は、一般的に利用される使用量であれば特に限定されないが、化合物(2)の質量(η)とろ過助剤の質量(θ)との比率(θ/η)が、0.1~100、であることが好ましい。化合物(2)の残留量がより少なくなる傾向にあり、ろ過時間が短くなる傾向になることから、β/αは0.5以上であることが好ましく、0.8以上であることがより好ましく、1以上であることがさらに好ましい。化合物(2)のろ過時間が短くなる傾向にあることから、β/αは50以下であることが好ましく、30以下であることがより好ましい。同様の観点、及びろ過助剤の使用量が低減し、化合物(4)を製造する際の経済性が向上する傾向にあることから、20以下であることがさらに好ましく、10以下であることが特に好ましい。
【0070】
なお、ここでいうろ過助剤の使用量とは、ろ過分離に用いられるろ過助剤の総量である。例えば、プリコート法とボディーフィード法を併用した場合には、2つの方法で使用したろ過助剤の総量である。また、ろ過分離で形成されたろ過助剤層を部分的に除去し、残ったろ過助剤層を再利用する場合には、供給するろ過助剤と残ったろ過助剤層との総量である。
【0071】
ろ過助剤の使用方法は、一般的に利用される使用方法であれば特に限定されないが、例えば、ろ材にろ過助剤を張り付けてろ過助剤の層を形成させ、ろ過を行うプリコート法、ろ過したい液にろ過助剤を添加してろ過するボディーフィード法等が挙げられる。これらは単独でも、複数種組み合わせて用いてもよい。ろ材の目詰まりが抑制できる傾向にあり、ろ過助剤の層の表面の目詰まりが抑制できる傾向にあり、工業的な規模で運転できる期間が延びる傾向にあることから、プリコート法とボディーフィード法を併用する方法が好ましい。
【0072】
ろ過分離する際に用いるろ材は、一般的に用いられるろ材であれば特に限定されないが、例えば、ろ布、金属フィルター、金属焼結フィルター、金属繊維/粉末積層タイプ等が挙げられる。これらは単独でも、複数種組み合わせて用いてもよい。ろ布を用いる場合には、ろ布の強度を向上させるため、金属フィルター等のろ布を支持するろ材と組み合わせて用いることもできる。
【0073】
ろ布の材質は、一般的に用いられるものであれば特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリテトラフルオロエチレン、モダアクリル、綿等が挙げられる。入手容易であり、スルホン酸基含有モノマーを精製する工程の経済性が向上する傾向にあることから、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミドが好ましく、ポリプロピレン、ポリエステルであることがより好ましい。ろ過したい液の性状により、ろ布の耐久性が求められる場合には、塩化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレンが好ましく、ポリテトラフルオロエチレンがより好ましい。
【0074】
金属製のろ材の材質は、一般的に用いられるものであれば特に限定されないが、鉄、炭素鋼、ステンレススチール、ニッケルにモリブデン・クロム・鉄等を加えた合金(例えば、ハステロイ(商品名)、インコネル(商品名)等)、ニッケル、チタン等が挙げられる。入手容易であり、スルホン酸基含有モノマーを精製する工程の経済性が向上する傾向にあることから、鉄、炭素鋼、ステンレススチールが好ましく、同時に金属製ろ材の耐久性が求められる場合には、ステンレススチールがより好ましい。ろ過したい液の性状により、金属製ろ材の耐久性が求められる場合には、ニッケルにモリブデン・クロム・鉄等を加えた合金、ニッケルが好ましく、同時に入手容易であることが求められる場合には、ニッケルにモリブデン・クロム・鉄等を加えた合金がより好ましい。
【0075】
ろ材の通気度は、一般的な範囲であれば特に限定されないが、0.01~200cm3/cm2・sであることが好ましい。化合物(2)のろ過時間が短くなる傾向にあることから、0.05cm3/cm2・s以上であることが好ましく、0.1cm3/cm2・s以上であることがより好ましい。化合物(2)の残留量がより少なくなる傾向にあり、ろ過助剤を使用した場合にはろ過助剤の透過量が少なくなる傾向にあることから、100cm3/cm2・s以下であることが50cm3/cm2・s以下であることがより好ましく、20cm3/cm2・s以下であることがさらに好ましい。
【0076】
ろ過分離する際の温度は、一般的な温度範囲であれば特に限定されないが、0~120℃であることが好ましい。ろ液の粘性が低下し、ろ過時間が短くなる傾向にあることや、化合物(2)以外の析出を抑制できる場合があることから、ろ過分離する温度は、10℃以上であることが好ましく、20℃以上であることがより好ましい。ろ過したい液から生じる揮発成分の量が低減する傾向にあり、析出物の状態の変化が抑制できる傾向にあることから、100℃以下であることが好ましく、80℃以下であることがより好ましい。化合物(2)が溶解化合物に溶解する量が低減し、化合物(2)の残留量がより少なくなる傾向にあることから、70℃以下であることがさらに好ましく、60℃以下であることが特に好ましい。
ろ過分離する際の温度は、一定であっても、変化させてもよい。
【0077】
ろ材を挟んでろ過する液を供給する側の圧力(以下、「上流側圧力」という)よりも、ろ材を挟んでろ過する液が透過する側の圧力(以下、「下流圧力」という)の方が低いことで、ろ材を挟んでろ過する液を供給する側に化合物(2)が捕集され、ろ材を挟んでろ過する液が透過する側にろ液が回収できる。
【0078】
ろ過する際の上流側圧力、及び下流側圧力は、前記圧力の状態であって、一般的に用いられる圧力であれば特に限定されず、一定であっても、変化させてもよい。
【0079】
ろ過の方法が重力式ろ過では、上流側圧力は常圧であり、ろ過する液の重量によって生じる圧力によって、ろ過分離することができる。
【0080】
ろ過の方法が加圧式ろ過では、上流側圧力を加圧することで、ろ過分離することができる。加圧式ろ過での上流側圧力は、一般的に用いられる圧力であれば特に限定されないが、0.01~2.0MPaGであることが好ましい。化合物(2)のろ過時間が短くなる傾向にあることから、0.05MPaG以上であることがより好ましく、0.1MPaG以上であることがさらに好ましい。ろ過装置の圧力耐性が低くても、工業的にろ過することが可能となり、ろ過装置の一般的な入手が容易となる傾向にあることから、1.0MPaG以下であることがより好ましく、0.6MPaG以下であることがさらに好ましく、0.4MPaG以下であることが特に好ましい。加圧式ろ過での下流側圧力は、通常常圧だが、化合物(2)のろ過時間をより短くしたい場合には、減圧することもできる。
加圧式ろ過での上流側圧力、下流側圧力は、一定でも変化させてもよい。
【0081】
減圧式ろ過での下流側圧力は、一般的に用いられる圧力であれば特に限定されないが、常圧以下である。化合物(2)のろ過時間が短くなる傾向にあることから、0.08MPaA以下であることが好ましく、0.06MPaA以下であることがより好ましく、0.04MPaA以下であることがさらに好ましい。減圧式ろ過での下流側圧力の下限は特に限定されず、減圧するためのポンプ等の能力やろ過装置の気密度等により変化するが、減圧するためのポンプの大きさが低減される傾向にあることや、ろ過装置の気密度を高くするためにろ過装置の構造が複雑になることが抑制される傾向にあることから、0.1kPaA以上であることが好ましく、1kPaA以上であることがより好ましく、2kPaA以上であることがより好ましい。
減圧式ろ過での下流側圧力は、一定でも変化させてもよい。
【0082】
遠心ろ過する際の遠心力は、一般的に用いられる遠心力の範囲であれば特に限定されないが、100~10000Gであることが好ましい。化合物(2)のろ過時間が短くなる傾向にあることから、500G以上であることがより好ましく、1000G以上であることがさらに好ましい。遠心ろ過装置の構造が複雑になることが抑制される傾向にあることから、8000G以下であることがより好ましく、7000G以下であることがさらに好ましい。
遠心ろ過する際の遠心力は、一定でも変化させもよい。
【0083】
ろ過する液の供給量は、一般的な供給量の範囲であれば特に限定されないが、10~10000kg/m2・hrであることが好ましい。化合物(5)の時間当たりの回収量が向上し、化合物(5)を精製する際の経済性が向上する傾向にあることから、50kg/m2・hr以上であることがより好ましく、80kg/m2・hr以上であることがさらに好ましい。ろ過する液の供給量が多い場合、ろ材を透過する液の量を多くする必要がある。そのため、ろ材やろ過助剤での抵抗を下げる必要があり、ろ材の通気度やろ過助剤の透気度を大きくする必要がある。結果として、化合物(2)の残留量が多くなることになる。以上のことより、化合物(2)の残留量を少なくする傾向にあることから、5000kg/m2・hr以下であることがより好ましく、1000kg/m2・hr以下であることがさらに好ましい。
【0084】
ろ過する際の雰囲気は、通常用いられる雰囲気であれば特に限定されず、通常は大気雰囲気、窒素雰囲気、及びアルゴン雰囲気等が用いられる。これらの中でも、より安全に化合物(4)を製造できる傾向にあることから、窒素雰囲気及びアルゴン雰囲気が好ましい。また、より経済性に優れる製造方法となる傾向にあることから、窒素雰囲気がより好ましい。
ろ過する雰囲気は、1種単独で用いてもよいし、複数種の雰囲気を組み合わせて用いてもよい。
【0085】
含フッ素スルホン酸塩溶解液をろ過し、回収した化合物(2)を含む混合物(以下、「ろ物」という)は、化合物(1)から化合物(3)を製造する方法に再利用することができる。ろ物はそのまま用いてもよいし、溶解化合物を真空乾燥等により乾燥した後、用いてもよい。また、化合物(1)から化合物(3)を製造する方法に再利用する際には、化合物(1)から化合物(3)を製造する方法に、未利用の化合物(2)とろ物、又は乾燥したろ物を混合し、利用してもよい。
【0086】
含フッ素スルホン酸塩溶解液をろ過し、回収した化合物(4)を含む溶液(以下、「含フッ素スルホン酸塩含有ろ液」という。)から溶解化合物を分離し、化合物(4)を得る方法としては、一般的に用いられる方法であれば特に限定されず、例えば、常圧、又は減圧の圧力状態にて、常温、又は加熱条件にて、溶解化合物を留去し、化合物(4)を分離する方法が挙げられる。常温を越える温度に加熱する際の温度としては、一般的に用いられる範囲であれば特に限定されないが、化合物(4)の変質が抑制できる傾向にあることから、250℃以下であることが好ましく、200℃以下であることがより好ましく、150℃以下であることがさらに好ましく、120℃以下であることが特に好ましい。
【0087】
溶解化合物を留去し、化合物(4)を分離する際、常圧より低い圧力に減圧する時の圧力下限は特に限定されず、減圧するためのポンプ等の能力や用いられる装置の気密度等により変化するが、減圧するためのポンプの大きさが低減される傾向にあることや、用いられる装置の気密度を高くするためにろ過装置の構造が複雑になることが抑制される傾向にあることから、0.1kPaA以上であることが好ましく、1kPaA以上であることがより好ましく、2kPaA以上であることがより好ましい。
減圧の圧力は、一定でも変化させてもよい。
【0088】
溶解化合物を留去し、化合物(4)を分離する際の雰囲気は、通常用いられる雰囲気であれば特に限定されず、通常は大気雰囲気、窒素雰囲気、及びアルゴン雰囲気等が用いられる。これらの中でも、より安全に化合物(4)を製造できる傾向にあることから、窒素雰囲気及びアルゴン雰囲気が好ましい。また、より経済性に優れる製造方法となる傾向にあることから、窒素雰囲気がより好ましい。溶解化合物を留去する際には、雰囲気を流通させることで、溶解化合物の留去を促進できる傾向にあるため、好ましい方法として用いられる場合がある。
反応残渣と溶解化合物とを攪拌する雰囲気は、1種単独で用いてもよいし、複数種の雰囲気を組み合わせて用いてもよい。
【0089】
含フッ素スルホン酸塩含有ろ液から溶解化合物を分離する際に用いられる装置としては、一般的に用いられる装置であれば特に限定されないが、例えば、竪型混合乾燥機、横型混合乾燥機、噴霧乾燥機、振動乾燥機、棚段乾燥機、ダブルコーンドライヤー、ベルト式乾燥機、ロータリーエバポレータ等が挙げられる。より具体的に例示するならば、リボコーン、インナーチューブロータリー、スラッジ・ドライヤー、スーパーロータリードライヤー、FVドライヤー、横型流動層乾燥装置、スリットフロー、コンダクションフロー、スラリードライヤー、ロートスルー、カスタムドライヤー、エコドライヤー、グルーヴィードライヤー、及びH-VCDドライヤー(株式会社大川原製作所製)、PV Mixer、SV Mixer、コニカルドライヤ、及び回転型ろ過乾燥機(株式会社神鋼環境ソリューション製)、真空攪拌ドライヤー、振動流動層装置、振動乾燥機、ドラムドライヤー、棚式真空ドライヤー、ダブルコーンドライヤー(中央化工機株式会社製)、パドルドライヤー、ブーノクーラー、シングルパドルドライヤー、マルチフィンプロセッサー、連続式流動層乾燥機、バッチ式流動乾燥機、トルネッシュドライヤー、媒体流動乾燥機、タワードライヤー、及び瞬間気流乾燥機(株式会社奈良機械製作所製)、CDドライヤ、M-CDドライヤ、KIDドライヤ、スチームチューブドライヤ、気流乾燥システム、流動層乾燥装置、バンドドライヤ、ロートルーバドライヤ、ロータリードライヤ、気流乾燥装置、SCプロセッサ、及びロータリーキルン(株式会社栗本鐵工所製)、バンド乾燥機、熱風箱型乾燥機、流動乾燥機、振動流動乾燥機、気流乾燥機、ロータリクラッシャドライヤ、コニカルブレンダドライヤ、ドラムドライヤ、ジャケットロータリドライヤ、真空棚段乾燥機、真空振動乾燥機、及び攪拌乾燥機(日本乾燥機株式会社製)、ドラムドライヤ、真空式ドラムドライヤ、真空式攪拌乾燥機、及びダブルコーンドライヤ(カツラギ工業株式会社製)、ハイエバオレーター(株式会社櫻製作所製)、竪型攪拌乾燥機(サリエント工業株式会社製)が挙げられる。
【0090】
上記のようにして、化合物(2)から分離した化合物(4)は、国際公開第2020/012913号に記載の方法に従い、化合物(1)の原料として再利用することができる。
【0091】
溶解化合物を留去し、化合物(4)を分離する際に得られる溶解化合物は、反応残渣から化合物(4)を分離する方法に再利用することができる。再利用する際は、溶解化合物を留去し、化合物(4)を分離する際に得られる溶解化合物と、未利用の溶解化合物を混合して用いてもよい。
【0092】
含フッ素スルホン酸塩含有ろ液へ水を添加する、又は含フッ素スルホン酸塩含有ろ液を水へ添加し、溶解化合物を留去することによって、化合物(4)を析出させることなく、化合物(4)を含む水溶液(以下、「含フッ素スルホン酸塩含有水溶液」という。)を調整することができる。含フッ素スルホン酸塩含有ろ液へ水を添加する場合、水の添加を1回として溶解化合物を留去し、含フッ素スルホン酸塩含有水溶液を調整してもよいし、水の添加、及び留去を複数回繰り返して、含フッ素スルホン酸塩含有水溶液を調整してもよい。含フッ素スルホン酸塩含有水溶液に含まれる溶解化合物を低減する際に用いられる水の総質量を低減できる傾向にあることから、水の添加、及び留去を複数回繰返し行う方法がより好ましい。含フッ素スルホン酸塩含有ろ液を水へ添加する場合、含フッ素スルホン酸塩含有ろ液を一回で水へ添加した後、溶解化合物を留去し、その後必要に応じて、水をさらに添加し、留去することで、用いる水の総質量を低減できる傾向にあることから、好ましい方法である。
【0093】
含フッ素スルホン酸水溶液を調整する際に用いる、含フッ素スルホン酸塩含有ろ液の質量(ι)と用いる水の総質量(κ)との比率(κ/ι)は、一般的に用いられる範囲であれば特に限定されないが、含フッ素スルホン酸水溶液に含まれる溶解化合物の量が低減できる傾向にあることから、0.1以上であることが好ましく、0.5以上であることがより好ましく、1.0以上であることがさらに好ましく、1.2以上であることが特に好ましい。所望の含フッ素スルホン酸水溶液中の化合物(4)の濃度により、κ/ιの上限は特に限定されないが、含フッ素スルホン酸塩含有ろ液と水との総質量が小さくなり、溶解化合物を留去するための時間が短くなる傾向にあることから、100以下であることが好ましく、50以下であることがより好ましく、25以下であることがさらに好ましく、10以下であることが特に好ましい。所望の含フッ素スルホン酸水溶液中の化合物(4)の濃度が低い場合には、κ/ιが小さい比率で溶解化合物の留去を行い、その後水を加えて、所望の含フッ素スルホン酸水溶液中の化合物(4)の濃度に調整する方が、留去する際に用いる装置の容積が小さくなる傾向にあり、また利用する熱源や減圧する場合には減圧ポンプを駆動するために必要となるエネルギーが低減する傾向にあることからより好ましい。
【0094】
含フッ素スルホン酸塩含有ろ液に水を添加する、含フッ素スルホン酸塩含有ろ液を水に添加する温度、及び溶解化合物の留去を行った後、さらに水を添加する温度は、一般的に用いられる温度であれば特に限定されないが、化合物(4)の析出を抑制できる傾向にあることから、-40℃以上であることが好ましく、-20℃以上であることがより好ましい。同様の観点、及び工業的に温度調整する際の経済性に優れる傾向にあることから、0℃以上であることがさらに好ましく、10℃以上であることが特に好ましい。含フッ素スルホン酸塩含有ろ液に水を添加する、含フッ素スルホン酸塩含有ろ液を水に添加する温度、及び溶解化合物の留去を行った後、さらに水を添加する温度の上限は、特に限定されないが、水、及び溶解化合物の種類によっては揮発する場合があることから、揮発を抑制でき、化合物(4)の析出を抑制できる傾向にあることから、120℃以下であることが好ましく、100℃以下がより好ましく、80℃以下であることがさらに好ましく、60℃以下であることが特に好ましい。
【0095】
含フッ素スルホン酸塩含有ろ液に水を添加する、含フッ素スルホン酸塩含有ろ液を水に添加する際の圧力、及び溶解化合物の留去を行った後、さらに水を添加する際の圧力は、通常用いられる範囲であれば特に限定されず、通常は大気圧下で行われる。ただし、溶解化合物の種類によっては揮発する場合があることから、揮発を抑制するため、大気圧以上の加圧を行うことが有効な手段である。揮発する化合物を液化させ、再利用する場合には、大気圧以下の減圧であってもよい。
含フッ素スルホン酸塩含有ろ液に水を添加する、含フッ素スルホン酸塩含有ろ液を水に添加する際の圧力、及び溶解化合物の留去を行った後、さらに水を添加する際の圧力は、上記範囲であれば一定である必要はなく、途中で変化させてもよい。
【0096】
含フッ素スルホン酸塩含有ろ液に水を添加する、含フッ素スルホン酸塩含有ろ液を水に添加する際の雰囲気、及び溶解化合物の留去を行った後、さらに水を添加する際の雰囲気は、通常用いられる雰囲気であれば特に限定されず、通常は大気雰囲気、窒素雰囲気、及びアルゴン雰囲気等が用いられる。これらの中でも、より安全に化合物(4)を製造できる傾向にあることから、窒素雰囲気及びアルゴン雰囲気が好ましい。また、より経済性に優れる製造方法となる傾向にあることから、窒素雰囲気がより好ましい。
含フッ素スルホン酸塩含有ろ液に水を添加する、含フッ素スルホン酸塩含有ろ液を水に添加する際の雰囲気、及び溶解化合物の留去を行った後、さらに水を添加する際の雰囲気は、1種単独で用いてもよいし、複数種の雰囲気を組み合わせて用いてもよい。
【0097】
含フッ素スルホン酸塩含有ろ液と水との混合物から、溶解化合物を留去する際の温度は、一般的に用いられる温度であれば特に限定されないが、溶解化合物を留去する際の効率(溶解化合物の残留量の低減及び留去時間の短縮)が向上する傾向にあることから、0℃以上であることが好ましく、20℃以上であることがより好ましく、30℃以上であることがさらに好ましく、40℃以上であることが特に好ましい。含フッ素スルホン酸塩含有ろ液と水との混合物から、溶解化合物を留去する際の温度の上限は特に限定されないが、化合物(4)の変質を抑制できる傾向にあることから、250℃以下であることが好ましく、200℃以下であることがより好ましく、150℃以下であることがさらに好ましく、120℃以下であることが特に好ましい。
【0098】
含フッ素スルホン酸塩含有ろ液と水との混合物から、溶解化合物を留去する際の圧力は、通常用いられる範囲であれば特に限定されず、加圧、常圧、減圧いずれであってもよいが、通常は常圧、減圧で行われる。溶解化合物の留去を減圧で行う場合、留去する際の温度は、常圧で留去する場合よりも低くでき、化合物(4)の種類によっては化合物(4)の変質を抑制できる傾向にあることから、好ましい方法である。常圧で溶解化合物を留去する場合、所望の圧力とするために用いられる装置を駆動させるために必要となるエネルギーが不要となることから、好ましい方法である。
含フッ素スルホン酸塩含有ろ液と水との混合物から、溶解化合物を留去する際の圧力は、上記範囲であれば一定である必要はなく、途中で変化させてもよい。
【0099】
含フッ素スルホン酸塩含有ろ液と水との混合物から、溶解化合物を留去する際の雰囲気は、通常用いられる雰囲気であれば特に限定されず、通常は大気雰囲気、窒素雰囲気、及びアルゴン雰囲気等が用いられる。これらの中でも、より安全に化合物(4)を製造できる傾向にあることから、窒素雰囲気及びアルゴン雰囲気が好ましい。また、より経済性に優れる製造方法となる傾向にあることから、窒素雰囲気がより好ましい。
含フッ素スルホン酸塩含有ろ液と水との混合物から、溶解化合物を留去する際の雰囲気は、1種単独で用いてもよいし、複数種の雰囲気を組み合わせて用いてもよい。
【0100】
上記のようにして得られた含フッ素スルホン酸水溶液は、国際公開第2020/012913号に記載の方法に従い、化合物(1)の原料として再利用することができる。
【0101】
含フッ素スルホン酸塩含有ろ液と水との混合物から、溶解化合物を留去し得られる溶解化合物は、全部、又はその一部を反応残渣と溶解化合物とから含フッ素スルホン酸塩溶解液を調整する際に再利用することができる。
【0102】
含フッ素スルホン酸塩含有ろ液と水との混合物から、溶解化合物を留去し得られる溶解化合物に含まれる水が多く、反応残渣に含まれる化合物(2)の含フッ素スルホン酸塩溶解液への溶解量が多い場合には、溶解化合物と水とを留去により分離する方法や、溶解化合物の種類によっては、溶解化合物と水とが相分離するため、溶解化合物の相と水の相を分離する方法や、溶解化合物の相を留去し、含有量を高めた溶解化合物を分離する方法や、水の相を留去し、含有量を高めた水を分離する方法を用いることにより、溶解化合物、及び水を得ることができる。前記の方法により得られる溶解化合物は、全部、又はその一部を反応残渣と溶解化合物とから含フッ素スルホン酸塩溶解液を調整する際に再利用することができる。また、前記方法により得られる水は、全部、又はその一部を含フッ素塩含有水溶液を調整する際に再利用することができる。
【0103】
以上のように、本発明は、燃料電池用隔膜、燃料電池用触媒バインダーポリマー、食塩電解用隔膜等の主要成分であるフッ素系高分子電解質の原料として有用である含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(3)を、高い収率で製造することができる。また、各種のフッ素化合物に変換することができる含フッ素ビニルスルホン酸塩(4)を製造することができる。さらに、含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(3)、及び含フッ素ビニルスルホン酸塩(4)を分離でき、分離する際に用いた化合物を再利用することもできる。
【実施例】
【0104】
以下に本実施形態を具体的に説明した実施例を例示する。本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0105】
実施例、参考例及び比較例において使用された分析方法は、以下のとおりである。
【0106】
<核磁気共鳴分析(NMR):19F-NMRによる分子構造解析>
実施例、参考例及び比較例で得られた生成物について、19F-NMRを用いて、下記測定条件にて分子構造解析を行った。
[測定条件]
測定装置:JNM-ECZ400S型核磁気共鳴装置(日本電子株式会社製)
観測核:19F
溶媒:重クロロホルム
基準物質:テトラメチルシラン(0.00ppm)
観測周波数:400MHz(1H)
パルス幅:6.5μ秒
待ち時間:2秒
積算回数:16回
【0107】
<核磁気共鳴分析(NMR):1H-NMRによる分子構造解析>
実施例、参考例及び比較例で得られた生成物について、1H-NMRを用いて、下記測定条件にて分子構造解析を行った。
[測定条件]
測定装置:JNM-ECZ400S型核磁気共鳴装置(日本電子株式会社製)
観測核:1H
溶媒:重クロロホルム
基準物質:テトラメチルシラン(0.00ppm)
観測周波数:400MHz(1H)
パルス幅:7.3μ秒
待ち時間:5秒
積算回数:8回
【0108】
<ガスクロマトグラフィー(GC)>
実施例及び参考例で得られた生成物について、GCを用いて、下記測定条件にて分子構造解析を行った。
[測定条件]
測定装置:GC-2010Plus
カラム:米国RESTEK社製 キャピラリーカラム RTX-200(内径0.25mm、長さ60m、膜厚1μm)
キャリアガス:ヘリウム
キャリアガス流量:30mL/min
注入量:1μL
スプリット比:30
気化室温度:200℃
カラム温度プログラム:40℃で10min保持後、20℃/minで昇温した後、280℃で10min保持
検出:FID、200℃
【0109】
実施例、参考例及び比較例で使用した原材料を以下に示す。
【0110】
[製造例1]
(含フッ素ビニルスルホン酸無水物(1)(化合物(1))
特開2019/156782号公報に従い、下記式(7)で表される化合物(7)を製造した。
CF2=CFOCF2CF2SO3Na (7)
得られた上記式(7)の化合物を用い、国際公開第2020/012913号に従い、下記式(8)で表される化合物(8)を製造した。
(CF2=CFOCF2CF2SO2)2O (8)
得られた化合物(8)を蒸留することで、精製した化合物(8)を得た。得られた化合物(8)は純度が98重量%であり、下記式(9)で表される化合物(9)を2重量%含んでいた。
CF2=CFOCF2CF2SO3H (9)
【0111】
(アルカリ金属フッ化物(2)(化合物(2))
・フッ化カリウム(富士フィルム和光純薬株式会社製、試薬特級)
・フッ化ルビジウム(Aldrich社製、純度99.8%)
・フッ化セシウム(富士フィルム和光純薬株式会社製、試薬特級)
【0112】
(その他)
・エタノール(富士フィルム和光純薬株式会社製、試薬特級)
・ヘキサフルオロベンゼン(東京化成工業株式会社製)
・ベンゾトリフルオリド(東京化成工業株式会社製)
・精製水(富士フィルム和光純薬株式会社製)
・2,2,2-トリフルオロエタノール(東京化成工業株式会社製)
・アセトニトリル(富士フィルム和光純薬株式会社製、試薬特級)
・酢酸ブチル(富士フィルム和光純薬株式会社製、試薬特級)
・4-メチル-2-ペンタノン(富士フィルム和光純薬株式会社製、試薬特級)
・炭酸ジメチル(富士フィルム和光純薬株式会社製、試薬特級)
・1,2-ジメトキシエタン(富士フィルム和光純薬株式会社製、和光特級)
・炭酸水素ナトリウム水溶液:炭酸水素ナトリウム(富士フィルム和光純薬株式会社製、試薬特級)18.0gと精製水182.0gを混合し、調整した。
【0113】
[参考例1]
スリーワンモータ(新東科学株式会社製、BLW300)、半月型攪拌棒、受器を付けたリービッヒ冷却管を備えたフラスコに、フッ化カリウム(57.7g、0.993mol)を入れ、オイルバス(東京理化器械株式会社製、OHB-3100S)に設置し、真空下150℃で5時間乾燥させ、室温に戻し、窒素雰囲気とした。製造例1で製造した化合物(8)(348.0g、化合物(8)が341.0g(0.634mol)と化合物(9)が6.96g(0.025mol)からなる)を添加した。リービッヒ冷却管に-5℃の冷媒を流通させ、リービッヒ冷却管に付属された受器をドライアイスで冷却したエタノールで冷却した。フラスコ内を80kPaAに減圧し、スリーワンモータを120rpmで回転させ、フラスコを90℃に設定したオイルバスに設置した。液体の留去が始まり、受器へ留去される液体の速度が2滴/分となった段階で、徐々に圧力を下げ、最終的に2kPaAとした。受器へ留去される液体が2分以上なくなった段階で反応終了と判断し、フラスコをオイルバスから外し、窒素雰囲気とした後、スリーワンモータの回転を止めた。リービッヒ冷却管に流通した冷媒を止め、受器を常温に戻し、受器に入っている留分の質量を測定したところ、175.6g、であった。分析のため、留分(0.30g)、ヘキサフルオロベンゼン(1.30g)、ベンゾトリフルオリド(0.10g)を混合し、19F-NMRにて分析した。分析の結果、下記一般式(10)で表される含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)が生成していた(生成量:168.8g、生成物質量:0.602mol、生成率:95.1%)。なお、分析においては、ベンゾトリフルオリドの質量、ベンゾトリフルオリドのCF3及び含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)のCF2の積分値より、含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)の生成量等を算出した。また、含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)の生成率は、下記式(1)により算出した。
含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)の生成率(%)=含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)の物質量/化合物(8)の物質量×100 (1)
例えば、本参考例における含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)の生成率(%)=0.602(mol)/0.634(mol)×100=95.1、である。
本参考例では、β/αは、1.6、であった。
CF2=CFOCF2CF2SO2F (10)
19F-NMR:δ(ppm)42.43(1F)、-86.34(2F)、-114.21(2F)、-116.58(1F)、-123.87(1F)、-138.96(1F)
また、フラスコに残った残渣を回収し、質量を測定したところ、221.8g、であった。分析のため、残渣(0.20g)、精製水(1.00g)、2,2,2-トリフルオロエタノール(0.10g)を混合し、19F-NMRにて分析した。分析の結果、下記一般式(11)で表される含フッ素ビニルスルホン酸塩(11)が生成していることも確認された(生成量:202.2g、生成物質量:0.640mmol)。なお、分析においては、2,2,2-トリフルオロエタノールの質量、2,2,2-トリフルオロエタノールのCF3及び含フッ素ビニルスルホン酸塩(11)のCF2の積分値より、含フッ素ビニルスルホン酸塩(11)の生成量等を算出した。
CF2=CFOCF2CF2SO3K (11)
19F-NMR:δ(ppm)-84.83(2F)、-113.83(1F)、-118.30(2F)、-122.05(1F)、-135.70(1F)
【0114】
[参考例2]
スリーワンモータ(新東科学株式会社製、BLW300)、半月型攪拌棒、受器を付けたリービッヒ冷却管を備えたフラスコに、フッ化カリウム(57.7g、0.993mol)を入れ、オイルバス(東京理化器械株式会社製、OHB-3100S)に設置し、真空下150℃で5時間乾燥させ、室温に戻し、窒素雰囲気とした。製造例1で製造した化合物(8)(349.2g、化合物(8)が342.2g(0.636mol)と化合物(9)が6.98g(0.025mol)からなる)を添加した。リービッヒ冷却管に-5℃の冷媒を流通させ、リービッヒ冷却管に付属された受器をドライアイスで冷却したエタノールで冷却した。フラスコ内を90kPaAに減圧し、スリーワンモータを120rpmで回転させ、フラスコを100℃に設定したオイルバスに設置した。液体の留去が始まり、受器へ留去される液体の速度が2滴/分となった段階で、徐々に圧力を下げ、最終的に2kPaAとした。受器へ留去される液体が2分以上なくなった段階で反応終了と判断し、フラスコをオイルバスから外し、窒素雰囲気とした後、スリーワンモータの回転を止めた。リービッヒ冷却管に流通した冷媒を止め、受器を常温に戻し、受器に入っている留分の質量を測定したところ、173.6g、であった。分析のため、留分(0.30g)、ヘキサフルオロベンゼン(1.30g)、ベンゾトリフルオリド(0.10g)を混合し、19F-NMRにて分析した。分析の結果、含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)が生成していた(生成量:163.3g、生成物質量:0.583mol、生成率:91.7%)。
本参考例では、β/αは、1.6、であった。
また、フラスコに残った残渣を回収し、質量を測定したところ、229.2g、であった。分析のため、残渣(0.20g)、精製水(1.00g)、2,2,2-トリフルオロエタノール(0.10g)を混合し、19F-NMRにて分析した。分析の結果、含フッ素ビニルスルホン酸塩(11)が生成していることも確認された(生成量:209.9g、生成物質量:0.664mmol)。
【0115】
[参考例3]
スリーワンモータ(新東科学株式会社製、BLW300)、半月型攪拌棒、受器を付けたリービッヒ冷却管を備えたフラスコに、フッ化カリウム(57.7g、0.993mol)を入れ、オイルバス(東京理化器械株式会社製、OHB-3100S)に設置し、真空下150℃で5時間乾燥させ、室温に戻し、窒素雰囲気とした。製造例1で製造した化合物(8)(347.7g、化合物(8)が340.7g(0.633mol)と化合物(9)が6.95g(0.025mol)からなる)を添加した。リービッヒ冷却管に-5℃の冷媒を流通させ、リービッヒ冷却管に付属された受器をドライアイスで冷却したエタノールで冷却した。フラスコ内を70kPaAに減圧し、スリーワンモータを120rpmで回転させ、フラスコを80℃に設定したオイルバスに設置した。液体の留去が始まり、受器へ留去される液体の速度が2滴/分となった段階で、徐々に圧力を下げ、最終的に2kPaAとした。受器へ留去される液体が2分以上なくなった段階で反応終了と判断し、フラスコをオイルバスから外し、窒素雰囲気とした後、スリーワンモータの回転を止めた。リービッヒ冷却管に流通した冷媒を止め、受器を常温に戻し、受器に入っている留分の質量を測定したところ、178.8g、であった。分析のため、留分(0.30g)、ヘキサフルオロベンゼン(1.30g)、ベンゾトリフルオリド(0.10g)を混合し、19F-NMRにて分析した。分析の結果、含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)が生成していた(生成量:163.5g、生成物質量:0.584mol、生成率:92.2%)。
本参考例では、β/αは、1.6、であった。
また、フラスコに残った残渣を回収し、質量を測定したところ、215.0g、であった。分析のため、残渣(0.20g)、精製水(1.00g)、2,2,2-トリフルオロエタノール(0.10g)を混合し、19F-NMRにて分析した。分析の結果、含フッ素ビニルスルホン酸塩(11)が生成していることも確認された(生成量:194.3g、生成物質量:0.614mmol)。
【0116】
[参考例4]
スリーワンモータ(新東科学株式会社製、BLW300)、半月型攪拌棒、受器を付けたリービッヒ冷却管を備えたフラスコに、フッ化カリウム(37.8g、0.650mol)を入れ、オイルバス(東京理化器械株式会社製、OHB-3100S)に設置し、真空下150℃で5時間乾燥させ、室温に戻し、窒素雰囲気とした。製造例1で製造した化合物(8)(312.3g、化合物(8)が306.1g(0.569mol)と化合物(9)が6.25g(0.022mol)からなる)を添加した。リービッヒ冷却管に-5℃の冷媒を流通させ、リービッヒ冷却管に付属された受器をドライアイスで冷却したエタノールで冷却した。フラスコ内を80kPaAに減圧し、スリーワンモータを120rpmで回転させ、フラスコを90℃に設定したオイルバスに設置した。液体の留去が始まり、受器へ留去される液体の速度が2滴/分となった段階で、徐々に圧力を下げ、最終的に2kPaAとした。受器へ留去される液体が2分以上なくなった段階で反応終了と判断し、フラスコをオイルバスから外し、窒素雰囲気とした後、スリーワンモータの回転を止めた。リービッヒ冷却管に流通した冷媒を止め、受器を常温に戻し、受器に入っている留分の質量を測定したところ、159.0g、であった。分析のため、留分(0.30g)、ヘキサフルオロベンゼン(1.30g)、ベンゾトリフルオリド(0.10g)を混合し、19F-NMRにて分析した。分析の結果、含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)が生成していた(生成量:146.9g、生成物質量:0.524mol、生成率:92.2%)。
本参考例では、β/αは、1.1、であった。
また、フラスコに残った残渣を回収し、質量を測定したところ、182.4g、であった。分析のため、残渣(0.20g)、精製水(1.00g)、2,2,2-トリフルオロエタノール(0.10g)を混合し、19F-NMRにて分析した。分析の結果、含フッ素ビニルスルホン酸塩(11)が生成していることも確認された(生成量:178.0g、生成物質量:0.563mmol)。
【0117】
[参考例5]
スリーワンモータ(新東科学株式会社製、BLW300)、半月型攪拌棒、受器を付けたリービッヒ冷却管を備えたフラスコに、フッ化カリウム(101.3g、1.74mol)を入れ、オイルバス(東京理化器械株式会社製、OHB-3100S)に設置し、真空下150℃で5時間乾燥させ、室温に戻し、窒素雰囲気とした。製造例1で製造した化合物(8)(102.3g、化合物(8)が100.3g(0.186mol)と化合物(9)が2.05g(0.007mol)からなる)を添加した。リービッヒ冷却管に-5℃の冷媒を流通させ、リービッヒ冷却管に付属された受器をドライアイスで冷却したエタノールで冷却した。フラスコ内を80kPaAに減圧し、スリーワンモータを120rpmで回転させ、フラスコを90℃に設定したオイルバスに設置した。液体の留去が始まり、受器へ留去される液体の速度が2滴/分となった段階で、徐々に圧力を下げ、最終的に2kPaAとした。受器へ留去される液体が2分以上なくなった段階で反応終了と判断し、フラスコをオイルバスから外し、窒素雰囲気とした後、スリーワンモータの回転を止めた。リービッヒ冷却管に流通した冷媒を止め、受器を常温に戻し、受器に入っている留分の質量を測定したところ、49.6g、であった。分析のため、留分(0.30g)、ヘキサフルオロベンゼン(1.30g)、ベンゾトリフルオリド(0.10g)を混合し、19F-NMRにて分析した。分析の結果、含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)が生成していた(生成量:48.5g、生成物質量:0.173mol、生成率:93.0%)。
本参考例では、β/αは、9.4、であった。
また、フラスコに残った残渣を回収し、質量を測定したところ、149.1g、であった。分析のため、残渣(0.20g)、精製水(1.00g)、2,2,2-トリフルオロエタノール(0.10g)を混合し、19F-NMRにて分析した。分析の結果、含フッ素ビニルスルホン酸塩(11)が生成していることも確認された(生成量:60.0g、生成物質量:0.190mmol)。
【0118】
[参考例6]
スリーワンモータ(新東科学株式会社製、BLW300)、半月型攪拌棒、受器を付けたリービッヒ冷却管を備えたフラスコに、フッ化ルビジウム(57.7g、0.552mol)を入れ、オイルバス(東京理化器械株式会社製、OHB-3100S)に設置し、真空下150℃で5時間乾燥させ、室温に戻し、窒素雰囲気とした。製造例1で製造した化合物(8)(174.3g、化合物(8)が170.8g(0.317mol)と化合物(9)が3.49g(0.013mol)からなる)を添加した。リービッヒ冷却管に-5℃の冷媒を流通させ、リービッヒ冷却管に付属された受器をドライアイスで冷却したエタノールで冷却した。フラスコ内を70kPaAに減圧し、スリーワンモータを120rpmで回転させ、フラスコを70℃に設定したオイルバスに設置した。液体の留去が始まり、受器へ留去される液体の速度が2滴/分となった段階で、徐々に圧力を下げ、最終的に2kPaAとした。受器へ留去される液体が2分以上なくなった段階で反応終了と判断し、フラスコをオイルバスから外し、窒素雰囲気とした後、スリーワンモータの回転を止めた。リービッヒ冷却管に流通した冷媒を止め、受器を常温に戻し、受器に入っている留分の質量を測定したところ、84.5g、であった。分析のため、留分(0.30g)、ヘキサフルオロベンゼン(1.30g)、ベンゾトリフルオリド(0.10g)を混合し、19F-NMRにて分析した。分析の結果、含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)が生成していた(生成量:83.5g、生成物質量:0.298mol、生成率:94.0%)。
本参考例では、β/αは、1.7、であった。
また、フラスコに残った残渣を回収し、質量を測定したところ、149.1g、であった。分析のため、残渣(0.20g)、精製水(1.00g)、2,2,2-トリフルオロエタノール(0.10)を混合し、19F-NMRにて分析した。分析の結果、含フッ素ビニルスルホン酸塩(4)が生成していることも確認された(生成量:116.0g、生成物質量:0.320mmol)。
【0119】
[参考例7]
スリーワンモータ(新東科学株式会社製、BLW300)、半月型攪拌棒、受器を付けたリービッヒ冷却管を備えたフラスコに、フッ化セシウム(57.7g、0.380mol)を入れ、オイルバス(東京理化器械株式会社製、OHB-3100S)に設置し、真空下150℃で5時間乾燥させ、室温に戻し、窒素雰囲気とした。製造例1で製造した化合物(8)(123.7g、化合物(8)が121.2g(0.225mol)と化合物(9)が2.47g(0.009mol)からなる)を添加した。リービッヒ冷却管に-5℃の冷媒を流通させ、リービッヒ冷却管に付属された受器をドライアイスで冷却したエタノールで冷却した。フラスコ内を70kPaAに減圧し、スリーワンモータを120rpmで回転させ、フラスコを60℃に設定したオイルバスに設置した。液体の留去が始まり、受器へ留去される液体の速度が2滴/分となった段階で、徐々に圧力を下げ、最終的に2kPaAとした。受器へ留去される液体が2分以上なくなった段階で反応終了と判断し、フラスコをオイルバスから外し、窒素雰囲気とした後、スリーワンモータの回転を止めた。リービッヒ冷却管に流通した冷媒を止め、受器を常温に戻し、受器に入っている留分の質量を測定したところ、60.0g、であった。分析のため、留分(0.30g)、ヘキサフルオロベンゼン(1.30g)、ベンゾトリフルオリド(0.10g)を混合し、19F-NMRにて分析した。分析の結果、含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)が生成していた(生成量:59.3g、生成物質量:0.212mol、生成率:94.0%)。
本参考例では、β/αは、1.7、であった。
また、フラスコに残った残渣を回収し、質量を測定したところ、115.1g、であった。分析のため、残渣(0.20g)、精製水(1.00g)、2,2,2-トリフルオロエタノール(0.10g)を混合し、19F-NMRにて分析した。分析の結果、含フッ素ビニルスルホン酸塩(4)が生成していることも確認された(生成量:93.1g、生成物質量:0.227mmol)。
【0120】
[比較例1]
スリーワンモータ(新東科学株式会社製、BLW300)、半月型攪拌棒、受器を付けたリービッヒ冷却管を備えたフラスコに、フッ化カリウム(54.7g、0.941mol)を入れ、オイルバス(東京理化器械株式会社製、OHB-3100S)に設置し、真空下150℃で5時間乾燥させ、室温に戻し、窒素雰囲気とした。製造例1で製造した化合物(8)(324.8g、化合物(8)が318.3g(0.591mol)と化合物(9)が6.50g(0.023mol)からなる)を添加した。リービッヒ冷却管に-5℃の冷媒を流通させ、リービッヒ冷却管に付属された受器をドライアイスで冷却したエタノールで冷却した。フラスコ内を50kPaAに減圧し、スリーワンモータを120rpmで回転させ、フラスコを50℃に設定したオイルバスに設置した。1時間経過しても液体の留去が始まらなかったことから、徐々に圧力を下げたところ、液体の留去が始まり、最終的に2kPaAとした。受器へ留去される液体が2分以上なくなった段階で反応終了と判断し、フラスコをオイルバスから外し、窒素雰囲気とした後、スリーワンモータの回転を止めた。リービッヒ冷却管に流通した冷媒を止め、受器を常温に戻し、受器に入っている留分の質量を測定したところ、279.3g、であった。分析のため、留分(0.30g)、ヘキサフルオロベンゼン(1.30g)、ベンゾトリフルオリド(0.10g)を混合し、19F-NMRにて分析した。分析の結果、含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)が生成していた(生成量:40.2g、生成物質量:0.143mol、生成率:24.3%)。
本実施例では、β/αは、1.6、であった。
【0121】
[比較例2]
スリーワンモータ(新東科学株式会社製、BLW300)、半月型攪拌棒、受器を付けたリービッヒ冷却管を備えたフラスコに、フッ化カリウム(27.8g、0.479mol)を入れ、オイルバス(東京理化器械株式会社製、OHB-3100S)に設置し、真空下150℃で5時間乾燥させ、室温に戻し、窒素雰囲気とした。製造例1で製造した化合物(8)(168.4g、化合物(8)が165.0g(0.307mol)と化合物(9)が3.37g(0.012mol)からなる)を添加した。リービッヒ冷却管に-5℃の冷媒を流通させ、リービッヒ冷却管に付属された受器をドライアイスで冷却したエタノールで冷却した。フラスコ内を95kPaAに減圧し、スリーワンモータを120rpmで回転させ、フラスコを130℃に設定したオイルバスに設置した。液体の留去が始まり、受器へ留去される液体の速度が2滴/分となった段階で、徐々に圧力を下げ、最終的に2kPaAとした。受器へ留去される液体が2分以上なくなった段階で反応終了と判断し、フラスコをオイルバスから外し、窒素雰囲気とした後、スリーワンモータの回転を止めた。リービッヒ冷却管に流通した冷媒を止め、受器を常温に戻し、受器に入っている留分の質量を測定したところ、100.3g、であった。分析のため、留分(0.30g)、ヘキサフルオロベンゼン(1.30g)、ベンゾトリフルオリド(0.10g)を混合し、19F-NMRにて分析した。分析の結果、含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)が生成していた(生成量:53.9g、生成物質量:0.192mol、生成率:62.7%)。
本実施例では、β/αは、1.6、であった。
【0122】
参考例1~7に示すように、反応温度60~100℃において、含フッ素ビニルスルホン酸無水物(1)と、アルカリ金属フッ化物(2)とを、反応させることにより、高い収率で含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(3)が得られることが示された。また、含フッ素ビニルスルホン酸塩(4)を得られることが示された。
【0123】
[参考例8]
参考例1で得られた含フッ素ビニルスルホン酸塩(11)を含む残渣10.0gを、攪拌子の入ったフラスコに入れ、アセトニトリル36.5gを添加し、30分攪拌した。得られた溶液を、出口にフラスコを備えたタンク付ステンレスホルダー(アドバンテック東洋株式会社製、KST-47。ろ紙として、中尾フィルター工業株式会社製TR G940B2K、を用いた。)に入れ、窒素で0.2MPaGに加圧し、ろ過した。フラスコに得たろ液を、ロータリーエバポレータ(東京理化機器株式会社製、N-1300V)を用いて、揮発成分を留去し、さらに真空乾燥機(アズワン株式会社製、AVO-250V)で真空乾燥することで、固体を得た。分析のため、得られた固体(0.20g)、精製水(1.00g)、2,2,2-トリフルオロエタノール(0.10g)を混合し、19F-NMRにて分析した。分析の結果、含フッ素ビニルスルホン酸塩(11)を9.03g(28.5mmol)得られたことが確認された。
本参考例では、γ/δは、3.6、であった。
【0124】
[参考例9]
参考例1で得られた含フッ素ビニルスルホン酸塩(11)を含む残渣10.0gを、攪拌子の入ったフラスコに入れ、酢酸ブチル94.5gを添加し、30分攪拌した。得られた溶液を、出口にフラスコを備えたタンク付ステンレスホルダー(アドバンテック東洋株式会社製、KST-47。ろ紙として、中尾フィルター工業株式会社製TR G940B2K、を用いた。)に入れ、窒素で0.2MPaGに加圧し、ろ過した。フラスコに得たろ液を、ロータリーエバポレータ(東京理化機器株式会社製、N-1300V)を用いて、揮発成分を留去し、さらに真空乾燥機(アズワン株式会社製、AVO-250V)で真空乾燥することで、固体を得た。分析のため、得られた固体(0.20g)、精製水(1.00g)、2,2,2-トリフルオロエタノール(0.10g)を混合し、19F-NMRにて分析した。分析の結果、含フッ素ビニルスルホン酸塩(11)を9.01g(28.5mmol)得られたことが確認された。
本参考例では、γ/δは、9.4、であった。
【0125】
[参考例10]
参考例1で得られた含フッ素ビニルスルホン酸塩(11)を含む残渣10.0gを、攪拌子の入ったフラスコに入れ、4-メチル-2-ペンタノン82.0gを添加し、30分攪拌した。得られた溶液を、出口にフラスコを備えたタンク付ステンレスホルダー(アドバンテック東洋株式会社製、KST-47。ろ紙として、中尾フィルター工業株式会社製TR G940B2K、を用いた。)に入れ、窒素で0.2MPaGに加圧し、ろ過した。フラスコに得たろ液を、ロータリーエバポレータ(東京理化機器株式会社製、N-1300V)を用いて、揮発成分を留去し、さらに真空乾燥機(アズワン株式会社製、AVO-250V)で真空乾燥することで、固体を得た。分析のため、得られた固体(0.20g)、精製水(1.00g)、2,2,2-トリフルオロエタノール(0.10g)を混合し、19F-NMRにて分析した。分析の結果、含フッ素ビニルスルホン酸塩(11)を8.98g(28.4mmol)得られたことが確認された。
本参考例では、γ/δは、8.2、であった。
【0126】
[参考例11]
参考例1で得られた含フッ素ビニルスルホン酸塩(11)を含む残渣50.0gを、攪拌子の入ったフラスコに入れ、炭酸ジメチル106.4gを添加し、1時間攪拌した。得られた溶液を、出口にフラスコを備えたタンク付ステンレスホルダー(アドバンテック東洋株式会社製、KST-47。ろ紙として、中尾フィルター工業株式会社製TR G940B2K、を用いた。)に入れ、窒素で0.2MPaGに加圧し、ろ過した。フラスコに得たろ液を、ロータリーエバポレータ(東京理化機器株式会社製、N-1300V)を用いて、揮発成分を留去し、さらに真空乾燥機(アズワン株式会社製、AVO-250V)で真空乾燥することで、固体を得た。分析のため、得られた固体(0.20g)、精製水(1.00g)、2,2,2-トリフルオロエタノール(0.10g)を混合し、19F-NMRにて分析した。分析の結果、含フッ素ビニルスルホン酸塩(11)を44.9g(0.142mol)得られたことが確認された。
本参考例では、γ/δは、2.1、であった。
ロータリーエバポレータにより留去した揮発成分を1H-NMRにより分析した結果、炭酸ジメチルが主成分であることが確認できた。炭酸ジメチルが主成分である揮発成分30.0gと、参考例1で得られた含フッ素ビニルスルホン酸塩(11)を含む残渣10.0gとを混合し、本参考例記載と同様に、ろ過し、ろ液から揮発成分を留去し、真空乾燥することで固体を得た。得られた固体を19F-NMRにて分析した結果、含フッ素ビニルスルホン酸塩(11)を得られたことが確認された。
ろ過によりろ紙上に得たろ物を、真空乾燥機(アズワン株式会社製、AVO-250V)で真空乾燥し、乾燥したろ物を4.99g得た。乾燥したろ物を、スリーワンモータ(新東科学株式会社製、BLW300)、半月型攪拌棒、受器を付けたリービッヒ冷却管を備えたフラスコに入れ、オイルバス(東京理化器械株式会社製、OHB-3100S)に設置し、真空下150℃で5時間乾燥させ、室温に戻し、窒素雰囲気とした。製造例1で製造した化合物(8)(24.4g、化合物(8)が23.9g(44.4mmol)と化合物(9)が0.49g(1.75mmol)からなる)を添加した。リービッヒ冷却管に-5℃の冷媒を流通させ、リービッヒ冷却管に付属された受器をドライアイスで冷却したエタノールで冷却した。フラスコ内を80kPaAに減圧し、スリーワンモータを120rpmで回転させ、フラスコを90℃に設定したオイルバスに設置した。液体の留去が始まり、受器へ留去される液体の速度が2滴/分となった段階で、徐々に圧力を下げ、最終的に2kPaAとした。受器へ留去される液体が2分以上なくなった段階で反応終了と判断し、フラスコをオイルバスから外し、窒素雰囲気とした後、スリーワンモータの回転を止めた。リービッヒ冷却管に流通した冷媒を止め、受器を常温に戻し、受器に入っている留分の質量を測定したところ、12.3g、であった。分析のため、留分(0.30g)、ヘキサフルオロベンゼン(1.30g)、ベンゾトリフルオリド(0.10g)を混合し、19F-NMRにて分析した。分析の結果、含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)が生成していた(生成量:11.5g、生成物質量:40.9mmol、生成率:92.2%)。
【0127】
[参考例12]
参考例1で得られた含フッ素ビニルスルホン酸塩(11)を含む残渣10.0gを、攪拌子の入ったフラスコに入れ、1,2-ジメトキシエタン13.7gを添加し、1時間攪拌した。得られた溶液を、出口にフラスコを備えたタンク付ステンレスホルダー(アドバンテック東洋株式会社製、KST-47。ろ紙として、中尾フィルター工業株式会社製TR G940B2K、を用いた。)に入れ、窒素で0.2MPaGに加圧し、ろ過した。フラスコに得たろ液を、ロータリーエバポレータ(東京理化機器株式会社製、N-1300V)を用いて、揮発成分を留去し、さらに真空乾燥機(アズワン株式会社製、AVO-250V)で真空乾燥することで、固体を得た。分析のため、得られた固体(0.20g)、精製水(1.00g)、2,2,2-トリフルオロエタノール(0.10g)を混合し、19F-NMRにて分析した。分析の結果、含フッ素ビニルスルホン酸塩(11)を8.93g(28.3mmol)得られたことが確認された。
本参考例では、γ/δは、1.4、であった。
【0128】
[参考例13]
参考例1で得られた含フッ素ビニルスルホン酸塩(11)を含む残渣50.0gを、攪拌子の入ったフラスコに入れ、炭酸ジメチル106.4gを添加し、1時間攪拌した。得られた溶液を、出口にフラスコを備えたタンク付ステンレスホルダー(アドバンテック東洋株式会社製、KST-47。ろ紙として、中尾フィルター工業株式会社製TR G940B2K、を用いた。)に入れ、窒素で0.2MPaGに加圧し、ろ過した。フラスコに得たろ液100gを別のフラスコに移し、水を55.7g添加し、ロータリーエバポレータ(東京理化機器株式会社製、N-1300V)を用いて、揮発成分を留去した(フラスコ内容物の量は、83.3gであった)。フラスコに水を55.7g添加し、ロータリーエバポレータ(東京理化機器株式会社製、N-1300V)を用いて、揮発成分を留去した(フラスコ内容物の量は、80.3gであった)。フラスコに水を55.7g添加し、ロータリーエバポレータ(東京理化機器株式会社製、N-1300V)を用いて、揮発成分を留去した(フラスコ内容物の量は、85.7gであった)。分析のため、得られたフラスコ内容物(1.00g)に2,2,2-トリフルオロエタノール(0.10g)を混合し、19F-NMR、及び1H-NMRにて分析した。19F-NMRでの分析の結果、フラスコ内容物には、含フッ素ビニルスルホン酸塩(11)が30.0g含まれていることが確認された。また、1H-NMRでの分析の結果、炭酸ジメチルは観測されなかった。このことから、フラスコ内容物は、含フッ素ビニルスルホン酸塩(11)の水溶液であることが確認された。
エバポレータにより留去した揮発成分を全て回収したところ、2相に分離していた。それぞれの相を1H-NMRにより分析した結果、下相は炭酸ジメチルが主成分の相であり、上相は水が主成分の層であることが確認できた。分液ロートを用い、炭酸ジメチルが主成分の相(92.9g)と、水が主成分の相(124.9g)に分離した。炭酸ジメチルが主成分の相の水分量を、カールフィッシャー水分計(京都電子工業株式会社製、MKC-710D)にて分析した結果、水分量は3.0質量%であった。
得られた炭酸ジメチルが主成分の相10.6gと、参考例1で得られた含フッ素ビニルスルホン酸塩(11)を含む残渣5.00gとを混合し、本参考例記載と同様に、ろ過し、ろ液から揮発成分を留去し、真空乾燥することで固体を得た。得られた固体を19F-NMRにて分析した結果、含フッ素ビニルスルホン酸塩(11)を得られたことが確認された。
得られた炭酸ジメチルが主成分の相(82.3g)を蒸留装置のフラスコに入れ、揮発成分を留去した(フラスコ内容物の量は、61.2gであった)。得られたフラスコ内容物の水分量を、カールフィッシャー水分計(京都電子工業株式会社製、MKC-710D)にて分析した結果、水分量は1.0質量%であり、水分量が低減された炭酸ジメチルが主成分の相を調整できた。水分量が低減された炭酸ジメチルが主成分の相21.3gと、参考例1で得られた含フッ素ビニルスルホン酸塩(11)を含む残渣10.0gとを混合し、本参考例記載と同様に、ろ過し、ろ液から揮発成分を留去し、真空乾燥することで固体を得た。得られた固体を19F-NMRにて分析した結果、含フッ素ビニルスルホン酸塩(11)を得られたことが確認された。
含フッ素ビニルスルホン酸塩(11)の水溶液50.0g(含フッ素ビニルスルホン酸塩(11)を17.5g(55.3mmol)含む)をセパラブルフラスコに入れ、攪拌しながら硫酸(富士フィルム和光純薬株式会社製、試薬特級)(10.9g)を徐々に加えた。続いて、シクロペンチルメチルエーテル(富士フィルム和光純薬株式会社製、和光特級)(35.0g)を加え、1時間攪拌した後、2時間静置した。上相のシクロペンチルメチルエーテル相(1.0g)を取出し、19F-NMRにて分析した結果、化合物(9)を得られたことが確認された。
【0129】
[参考例14]
参考例1で得られた含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)40.0gを蒸留装置(充填剤として、スルザー社製スルザーEXラボラトリーパッキンを使用)のフラスコに入れ、蒸留した。初流として1.92gを分け、その後34.6gの留分を得た。得られた留分(0.30g)、ヘキサフルオロベンゼン(3.00g)、ベンゾトリフルオリド(0.10g)を混合し、GCにより分析した結果、含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)の純度は、99.9%、であった。
【0130】
[参考例15]
参考例1で得られた含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)40.0gと、精製水20.0gとを、攪拌子の入ったフラスコに入れ、30分間撹拌し、分液ロートに入れ、30分間静置し、上相(20.5g)と下相(39.0g)を得た。分析のため、得られた下相(0.30g)、1,2-ジメトキシエタン(1.00g)、ベンゾトリフルオリド(0.10g)を混合し、19F-NMRにて分析した。19F-NMRでの分析の結果、拐取した下相には、含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)が38.0g含まれていることが確認された。
本参考例における、ζ/εは、0.50、であった。
前記下相を蒸留装置(充填剤として、スルザー社製スルザーEXラボラトリーパッキンを使用)のフラスコに入れ、蒸留した。初流として3.12gを分け、その後32.7gの留分を得た。得られた留分(0.30g)、ヘキサフルオロベンゼン(3.00g)、ベンゾトリフルオリド(0.10g)を混合し、GCにより分析した結果、含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)の純度は、99.9%、であった。
得られた上相(10.0g)と、参考例1で得られた含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)10.0gとを、攪拌子の入ったフラスコに入れ、30分間撹拌し、分液ロートに入れ、30分間静置し、下相(9.50g)を得た。得られた下相(0.30g)、1,2-ジメトキシエタン(1.00g)、ベンゾトリフルオリド(0.10g)を混合し、19F-NMRにて分析した。19F-NMRでの分析の結果、拐取した下相には、含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)が9.21g含まれていることが確認された。
【0131】
[実施例16]
参考例1で得られた含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)40.0gと、炭酸水素ナトリウム水溶液40.0gとを、攪拌子の入ったフラスコに入れ、30分間撹拌し、分液ロートに入れ、30分間静置し、上相(40.0g)と下相(38.7g)を得た。分析のため、得られた下相(0.30g)、1,2-ジメトキシエタン(1.00g)、ベンゾトリフルオリド(0.10g)を混合し、19F-NMRにて分析した。19F-NMRでの分析の結果、拐取した下相には、含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)が38.0g含まれていることが確認された。
本実施例における、ζ/εは、1.0、であった。
前記下相を蒸留装置(充填剤として、スルザー社製スルザーEXラボラトリーパッキンを使用)のフラスコに入れ、蒸留した。初流として2.52gを分け、その後33.0gの留分を得た。得られた留分(0.30g)、ヘキサフルオロベンゼン(3.00g)、ベンゾトリフルオリド(0.10g)を混合し、GCにより分析した結果、含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)の純度は、99.9%、であった。
得られた上相(20.0g)と、参考例1で得られた含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)10.0gとを、攪拌子の入ったフラスコに入れ、30分間撹拌し、分液ロートに入れ、30分間静置し、下相(9.33g)を得た。得られた下相(0.30g)、1,2-ジメトキシエタン(1.00g)、ベンゾトリフルオリド(0.10g)を混合し、19F-NMRにて分析した。19F-NMRでの分析の結果、拐取した下相には、含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)が9.11g含まれていることが確認された。
【0132】
[実施例17]
参考例1で得られた含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)10.0gと、炭酸水素ナトリウム水溶液50.0gとを、攪拌子の入ったフラスコに入れ、30分間撹拌し、分液ロートに入れ、30分間静置し、上相(49.6g)、下相(9.64g)を得た。分析のため、得られた下相(0.30g)、1,2-ジメトキシエタン(1.00g)、ベンゾトリフルオリド(0.10g)を混合し、19F-NMRにて分析した。19F-NMRでの分析の結果、拐取した下相には、含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(10)が9.49g含まれていることが確認された。
本実施例における、ζ/εは、5.0、であった。
【0133】
参考例8~15、実施例16、17で示したように、含フッ素ビニルスルホン酸無水物(1)と、アルカリ金属フッ化物(2)とを、反応させることにより得られる含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(3)、又は含フッ素ビニルスルホン酸塩(4)を分離できることが示された。また、分離する際に用いた化合物等が再利用できることも示された。
【産業上の利用可能性】
【0134】
本発明の製造方法によれば、従来よりも収率よく含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(3)を製造することができるため、各種フッ素含有化合物、イオン交換樹脂、イオン交換膜、食塩電解膜、燃料電池膜、レドックスフロー電池用膜、水電解用膜等の原料の製造において好適に用いることができる。また、各種のフッ素化合物に変換することができる含フッ素ビニルスルホン酸塩(4)を製造することができる。さらに、含フッ素ビニルスルホン酸フルオリド(3)、及び/又は含フッ素ビニルスルホン酸塩(4)を分離でき、分離する際に用いた化合物等を再利用することができる。