(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】三次元位置測定システム,測定方法,および測定プログラム
(51)【国際特許分類】
G01C 15/00 20060101AFI20241004BHJP
【FI】
G01C15/00 103Z
(21)【出願番号】P 2021031371
(22)【出願日】2021-03-01
【審査請求日】2024-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】110004060
【氏名又は名称】弁理士法人あお葉国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100139745
【氏名又は名称】丹波 真也
(74)【代理人】
【識別番号】100077986
【氏名又は名称】千葉 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100187182
【氏名又は名称】川野 由希
(74)【代理人】
【識別番号】100207642
【氏名又は名称】簾内 里子
(74)【代理人】
【識別番号】100168088
【氏名又は名称】太田 悠
(72)【発明者】
【氏名】菊池 武志
【審査官】國田 正久
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-21608(JP,A)
【文献】特開2020-60018(JP,A)
【文献】特開2020-204552(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定点に対して測距光によるノンプリズム測距ができる測距部,前記測距光の光軸方向を撮像する撮像部,前記測距部の向く鉛直角と水平角を測角する測角部,前記測距部の前記鉛直角および前記水平角を設定された角度に駆動する駆動部,および通信部を備える測量機と、
作業者によって携帯され、位置センサ,姿勢センサ,可視光のレーザ光を軸方向に出射するレーザ出射部,前記レーザ光の出射口,前記出射口から前記測定点までのレーザ距離を測る距離計,および通信部を備える計測マーカーと、
前記作業者の頭部に装着され、前記作業者の目を覆うディスプレイ,前記作業者の視線方向を撮像する撮像部,位置センサ,姿勢センサ,および通信部を備えるアイウェア装置と、
前記測量機,前記計測マーカー,および前記アイウェア装置と通信し、前記測量機,前記計測マーカー,および前記アイウェア装置の座標空間を同期させ、前記測量機の前記撮像部と前記アイウェア装置の前記撮像部が撮像した前記測定点を含む画像から画像解析で前記測定点の特定三次元位置を算出する演算器と、
を備える三次元位置測定システムで、
複数ある前記測定点に対して、前記作業者によって測定指示が出された順に、前記特定三次元位置を前記測量機で測定する
ことを特徴とする三次元位置測定システム。
【請求項2】
複数ある前記測定点のうちのある測定点に対し、前記作業者が前記アイウェア装置で前記測定点を視認しながら前記計測マーカーの前記レーザ光を照射して、前記測定指示が出されると、
前記計測マーカーは、前記計測マーカーの前記位置センサおよび前記姿勢センサから前記出射口の位置および姿勢を算出するとともに、前記距離計で前記レーザ距離を測り、前記アイウェア装置は、前記アイウェア装置の前記撮像部で前記レーザ光の像を含む画像を撮像し、前記測量機は、前記計測マーカーの前記出射口の位置と姿勢と前記レーザ距離からオフセット観測で算出された前記測定点の概略三次元位置を基に、前記測量機の前記撮像部で前記レーザ光の像を含む画像を撮像し、前記演算器は、前記画像解析として、前記測量機の前記撮像部と前記アイウェア装置の前記撮像部が撮像した前記レーザ光の像を含む画像を画像マッチングして、前記レーザ光の像の終点位置を前記測定点の位置とし前記特定三次元位置を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の三次元位置測定システム。
【請求項3】
前記三次元位置測定システムは、さらに、前記作業者の測量現場のCAD設計データを記憶する記憶装置を備え、前記演算器は、前記測量機,前記計測マーカー,前記アイウェア装置,および前記CAD設計データの座標空間を同期させ、前記アイウェア装置の前記ディスプレイに、前記アイウェア装置の位置・姿勢で見える前記CAD設計データのワイヤーフレームを、前記測量現場の実風景に重ねて表示する
ことを特徴とする請求項1に記載の三次元位置測定システム。
【請求項4】
前記三次元位置測定システムは、さらに、前記作業者が測量現場で確認できる表示部を備え、前記表示部には、複数ある前記測定点の、前記測量機が測定した三次元位置データが、測定順に、識別IDとともに一覧表示される
ことを特徴とする請求項1に記載の三次元位置測定システム。
【請求項5】
前記三次元位置測定システムは、前記測量機による測定が失敗した測定点が生じた場合、前記アイウェア装置を介して前記作業者に通知し、前記アイウェア装置を介して該測定点の処理をどうするか尋ねる選択を前記作業者にさせる
ことを特徴とする請求項1に記載の三次元位置測定システム。
【請求項6】
前記三次元位置測定システムは、前記画像解析の所要時間がかかるほど、前記測定の測定精度の指標を下げ、前記一覧表示において、前記測定精度の指標を併せて表示する
ことを特徴とする請求項4に記載の三次元位置測定システム。
【請求項7】
測量機と、計測マーカーと、アイウェア装置と、演算器と、を備え、
複数ある測定点に対して、作業者が測定指示した順に、以下の(a)~(e)を繰り返すことを特徴とする三次元位置測定方法。
(a)測定点に照射された前記計測マーカーのレーザ光の出射口の位置情報および姿勢情報と、前記出射口から前記測定点までのレーザ距離を前記演算器に送信するステップと、
(b)前記アイウェア装置の撮像部で前記(a)ステップの時の前記レーザ光の像を含む画像を取得するステップと、
(c)前記計測マーカーの前記出射口の位置と姿勢と前記レーザ距離から、オフセット観測で、前記測定点の概略三次元位置を算出し、前記測量機の撮像部で前記概略三次元位置を撮像し、前記レーザ光の像を含む画像を取得するステップと、
(d)前記(b)ステップの前記アイウェア装置の画像と、前記(c)ステップの前記測量機の画像を画像マッチングして、前記レーザ光の像の終点位置を前記(a)ステップの前記測定点の特定三次元位置とするステップと、
(e)前記特定三次元位置を前記測量機で測定するステップ。
【請求項8】
請求項7に記載の三次元位置測定方法を、コンピュータプログラムで記載し、それを実行可能にすることを特徴とする三次元位置測定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の測定点の三次元位置を正確迅速に測定するためのシステム,方法,およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
測量では、測定点を何らかの方法で指定して、測量機(トータルステーション)を使用して測定点を視準し、測定(測距・測角)する。近年の測量機は、測量機が概略測定点のほうを向けば、測定点を自動視準するので、作業者は一人で測量することも可能となっている。
【0003】
ここで、複数の測定点を測定する場合、測定は
図13のような手順で行われる。
図13おいて、作業者が行う作業は細枠、器械が行う作業は太枠で示されている。まずステップS1001で、作業者は一つ目の測定点に移動する。次にステップS1002で、測定点を指定した作業者は、測量機に測定指示を出す。次にステップS1003で、測量機は、測定指示を受信する。次にステップS1004で、測量機は、測定点を探索する。次にステップS1005で、測量機は測定点を視野内に捉えると、自動で測定する。このステップS1001~S1005の作業が、複数の測定点に対して繰り返される。
【0004】
このうち、ステップS1004の測定点の探索時間を短縮する技術は多々あり、例えば特許文献1では、測量機の視野で測定点を探索すると時間がかかることから、測量機に扇状レーザを備え、扇状レーザで測定点の概略位置を探索し、測定点の探索時間を早める技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のような技術によって、測定点の探索時間(ステップS1004)を早めることはできる。しかし、測定点がx1,x2,x3,…xn,…と複数ある場合、作業者は、測定点xnを指定して、測量機が測定点xnを測定(ステップS1003~S1005)するのを待ち、次の測定点xn+1に移動して、測量機が測定点xn+1を測定(ステップS1003~S1005)するのを待ち、次の測定点xn+2に移動して、測量機が測定点xn+2を測定(ステップS1003~S1005)するのを待ち、…と作業する。すなわち、作業者は、測量機による測定が完了しない限り、次の測定点に移動するのを待たなくてはならない。このため、作業者からは、測量機による測定を待たずに、測定点を次々と指定したいという要望がある。
【0007】
本発明は、前記の課題を解決するためになされたものであり、複数の測定点の三次元位置を正確迅速に測定するためのシステム,方法,およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の三次元位置測定システムは、測定点に対して測距光によるノンプリズム測距ができる測距部,前記測距光の光軸方向を撮像する撮像部,前記測距部の向く鉛直角と水平角を測角する測角部,前記測距部の前記鉛直角および前記水平角を設定された角度に駆動する駆動部,および通信部を備える測量機と、作業者によって携帯され、位置センサ,姿勢センサ,可視光のレーザ光を軸方向に出射するレーザ出射部,前記レーザ光の出射口,前記出射口から前記測定点までのレーザ距離を測る距離計,および通信部を備える計測マーカーと、前記作業者の頭部に装着され、前記作業者の目を覆うディスプレイ,前記作業者の視線方向を撮像する撮像部,位置センサ,姿勢センサ,および通信部を備えるアイウェア装置と、前記測量機,前記計測マーカー,および前記アイウェア装置と通信し、前記測量機,前記計測マーカー,および前記アイウェア装置の座標空間を同期させ、前記測量機の前記撮像部と前記アイウェア装置の前記撮像部が撮像した前記測定点を含む画像から画像解析で前記測定点の特定三次元位置を算出する演算器と、を備える三次元位置測定システムで、複数ある前記測定点に対して、前記作業者によって測定指示が出された順に、前記特定三次元位置を前記測量機で測定することを特徴とする。
【0009】
上記態様において、複数ある前記測定点のうちのある測定点に対し、前記作業者が前記アイウェア装置で前記測定点を視認しながら前記計測マーカーの前記レーザ光を照射して、前記測定指示が出されると、前記計測マーカーは、前記計測マーカーの前記位置センサおよび前記姿勢センサから前記出射口の位置および姿勢を算出するとともに、前記距離計で前記レーザ距離を測り、前記アイウェア装置は、前記アイウェア装置の前記撮像部で前記レーザ光の像を含む画像を撮像し、前記測量機は、前記計測マーカーの前記出射口の位置と姿勢と前記レーザ距離からオフセット観測で算出された前記測定点の概略三次元位置を基に、前記測量機の前記撮像部で前記レーザ光の像を含む画像を撮像し、前記演算器は、前記画像解析として、前記測量機の前記撮像部と前記アイウェア装置の前記撮像部が撮像した前記レーザ光の像を含む画像を画像マッチングして、前記レーザ光の像の終点位置を前記測定点の位置とし前記特定三次元位置を算出するのも好ましい。
【0010】
上記態様において、前記三次元位置測定システムは、さらに、前記作業者の測量現場のCAD設計データを記憶する記憶装置を備え、前記演算器は、前記測量機,前記計測マーカー,前記アイウェア装置,および前記CAD設計データの座標空間を同期させ、前記アイウェア装置の前記ディスプレイに、前記アイウェア装置の位置・姿勢で見える前記CAD設計データのワイヤーフレームを、前記測量現場の実風景に重ねて表示するのも好ましい。
【0011】
上記態様において、前記三次元位置測定システムは、さらに、前記作業者が測量現場で確認できる表示部を備え、前記表示部には、複数ある前記測定点の、前記測量機が測定した三次元位置データが、測定順に、識別IDとともに一覧表示されるのも好ましい。
【0012】
上記態様において、前記三次元位置測定システムは、前記測量機による測定が失敗した測定点が生じた場合、前記アイウェア装置を介して前記作業者に通知し、前記アイウェア装置を介して該測定点の処理をどうするか尋ねる選択を前記作業者にさせるのも好ましい。
【0013】
上記態様において、前記三次元位置測定システムは、前記画像解析の所要時間がかかるほど、前記測定の測定精度の指標を下げ、前記一覧表示において、前記測定精度の指標を併せて表示するのも好ましい。
【0014】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の三次元位置測定方法は、測量機と、計測マーカーと、アイウェア装置と、演算器と、を備え、複数ある測定点に対して、作業者が測定指示した順に、以下の(a)~(e)を繰り返すことを特徴とする。(a)測定点に照射された前記計測マーカーのレーザ光の出射口の位置情報および姿勢情報と、前記出射口から前記測定点までのレーザ距離を前記演算器に送信するステップと、(b)前記アイウェア装置の撮像部で前記(a)ステップの時の前記レーザ光の像を含む画像を取得するステップと、(c)前記計測マーカーの前記出射口の位置と姿勢と前記レーザ距離から、オフセット観測で、前記測定点の概略三次元位置を算出し、前記測量機の撮像部で前記概略三次元位置を撮像し、前記レーザ光の像を含む画像を取得するステップと、(d)前記(b)ステップの前記アイウェア装置の画像と、前記(c)ステップの前記測量機の画像を画像マッチングして、前記レーザ光の像の終点位置を前記(a)ステップの前記測定点の特定三次元位置とするステップと、(e)前記特定三次元位置を前記測量機で測定するステップ。
【0015】
上記態様の三次元位置測定方法を、コンピュータプログラムで記載し、それを実行可能にする三次元位置測定プログラムも好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、複数の測定点の三次元位置を正確迅速に測定する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施の形態に係る三次元位置測定システムの外観斜視図である。
【
図3】同測定システムに係る測量機の構成ブロック図である。
【
図4】同測定システムに係る計測マーカーであって、(A)計測マーカーの斜視図、(B)計測マーカーの構成ブロック図である。
【
図5】同測定システムに係るアイウェア装置であって、(A)アイウェア装置の斜視図、(B)アイウェア装置の構成ブロック図である。
【
図6】同測定システムに係る処理装置の構成ブロック図である。
【
図7】本発明の実施の形態に係る三次元位置測定方法のフローであって、(A)作業者による作業フロー、(B)測定システムの作業フローである。
【
図8A】同測定方法の作業イメージ図であって、作業者による作業イメージである。
【
図8B】同測定方法の作業イメージ図であって、測定システムの作業イメージである。
【
図10】変形例1に係るアイウェア装置の表示例である。
【
図12】変形例3に係る三次元位置測定システムの構成ブロック図であり、(A)測量機が備えた場合の構成ブロック図、(B)アイウェア装置が備えた場合の構成ブロック図、(C)計測マーカーが備えた場合の構成ブロック図である。
【
図13】測定点が複数ある場合の、従来的な作業フローである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0019】
1.第1の実施形態
1-1.測定システムの構成
図1は本発明の実施の形態に係る三次元位置測定システムの外観斜視図であり、測量現場での作業イメージを示している。
図2は同測定システムの構成ブロック図である。
図1に示すように、三次元位置測定システム1(以下、単に測定システム1と称する)は、測量機2と、処理装置3と、計測マーカー4と、アイウェア装置5を備える。
【0020】
測定システム1において、測量機2,処理装置3,計測マーカー4,およびアイウェア装置5は、相互に無線通信が可能である。
図2に示すように、処理装置3は、測量機2,計測マーカー4,およびアイウェア装置5を同期させ種々の処理を行う演算器32(後述する)と、測量現場の設計データを記憶している記憶装置33(後述する)を備えている。
【0021】
測量機2,処理装置3,計測マーカー4,およびアイウェア装置5の構成について詳しく説明する。
【0022】
1-2.測量機の構成
測量機2は、測量現場に三脚を用いて据え付けられる。測量機2は、下方から、整準部、整準部の上に設けられた基盤部、該基盤部上を水平回転する托架部2b、托架部2bの中央で鉛直回転する望遠鏡2aを備える。
図3は測定システム1に係る測量機2の構成ブロック図である。測量機2は、モータドライブトータルステーションであり、水平角検出器21、鉛直角検出器22、水平回転駆動部23、鉛直回転駆動部24、制御部25、記憶部26、撮像部27、測距部28、および通信部29を備える。要素21,22,23,24,25,26,および29は托架部2bに収容され、測距部28と撮像部27は望遠鏡2aに収容されている。また、測量機2は、従来的な測定を行うためのインターフェイスとしての表示部や操作部を備えている(図示略)。
【0023】
水平角検出器21と鉛直角検出器22は、エンコーダである。水平角検出器21は、托架部2bの回転軸に設けられ、托架部2bの水平角を検出する。鉛直角検出器22は、望遠鏡2aの回転軸に設けられ、望遠鏡2aの鉛直角を検出する(検出器21,22が請求項の「測角部」である)。水平回転駆動部23と鉛直回転駆動部24はモータである。水平回転駆動部23は、托架部2bの回転軸を動かし、鉛直回転駆動部24は、望遠鏡2aの回転軸を動かす(駆動部23,24が請求項の「駆動部」である)。駆動部23,24の協働により、望遠鏡2aの向きが変更される。
【0024】
測距部28は、送光部と受光部を備え、例えば赤外パルスレーザ等の測距光2´(
図1)を送光部から出射し、その反射光を受光部で受光し、測距光2´と内部参照光との位相差から測距する。測距部28は、測距光2´をプリズムに反射させてプリズムを測距する反射プリズム測距と、測距光2´をプリズム以外の対象に照射して対象を測距するノンプリズム測距の両方が可能である。撮像部27は、イメージセンサ(例えばCCDセンサやCMOSセンサ)である。撮像部27は、望遠鏡2a内で測距部28と一体に構成され、測距光2´の光軸方向を撮影する。撮像部27は、測距部28の測距光2´の光軸を原点として、原点の上下方向及び左右方向を広角度で撮像可能である。通信部29は、例えば処理装置3の通信部31(後述する)と同等の通信規格を備える。
【0025】
制御部25は、CPU(Central・Processing・Unit)を備え、制御として、通信部29を介した情報の送受信、駆動部23,24による各回転軸の駆動、測距部28による測距、検出器21,22による測角、撮像部27による撮像を行う。記憶部26は、ROM(Read・Only・Memory)およびRAM(Ramdam・Access・Memory)を備える。ROMには制御部25のためのプログラムが格納され、RAMに読み出されて各制御が実行される。測量機2が測定(測距・測角)した三次元位置データは、後述する記録場所に記録される。
【0026】
1-3.計測マーカーの構成
計測マーカー4は、作業者により携帯され、測定点X(
図1)の付近で使用される。
図4Aは測定システム1に係る計測マーカー4の斜視図、
図4Bは同計測マーカー4の構成ブロック図である。
図4Aに示すように、計測マーカー4は、作業者が手持ちで取り扱える程度の長さを有するスティック体40と、その先端にレーザ光4´(
図1)の出射口4bを備える。
図4Bに示すように、計測マーカー4は、通信部41、制御部42、記憶部43、加速度センサ44、ジャイロセンサ45、GPS装置46、レーザ出射部47、距離計48、および操作ボタン群49を備える。
【0027】
通信部41は、例えば処理装置3の通信部31(後述する)と同等の通信規格を備える。加速度センサ44は、計測マーカー4の3軸方向の加速度を検出する。ジャイロセンサ45は、計測マーカー4の3軸回りの回転を検出する。加速度センサ44とジャイロセンサ45が、請求項における計測マーカー4の「姿勢センサ」である。GPS装置46は、GPS(Global・Positioning・System)からの信号で計測マーカー4の位置を検出する。GPS装置46が、請求項における計測マーカー4の「位置センサ」である。GPS装置46は、GNSS、準天頂衛星システム、GALILEO、或いはGLONASによる測位情報を用いるものであってもよい。
【0028】
レーザ出射部47は、光源とその発光制御ICを備え、可視色のレーザ光4´を、計測マーカー4のスティック体40の軸方向(以降、方向を出射口4bに向かう方向に特定して、マーカー軸方向4rと称する。マーカー軸方向4rが請求項における「軸方向」である)に、直線的に発する。距離計48は、送光部と受光部を備え、例えば赤外パルスレーザ等の測距光(以降、測量機2の測距光2´と区別するためにマーカー測距光48´と称する。
図1)を送光部から出射し、受光するまでの時間と光速に基づいて測距する。距離計48は、マーカー測距光48´の光軸がレーザ光4´の光軸と一致するように収容されている。
【0029】
制御部42は、CPUを備え、制御として、レーザ光4´の発光、姿勢センサ44,45および位置センサ46からの情報検出、通信部41を介した情報送信、および出射口4bの姿勢情報と位置情報の算出を行う(後述する)。記憶部43は、ROMおよびRAMを備え、制御部42の各制御を可能にする。
【0030】
ここで、要素41,42,43,44,45,46,47,48は、集積回路技術を利用して構成された専用のモジュールやICを用いて構成される。計測マーカー4のスティック体40内で、要素44,45,46,48は、マーカー軸方向4r上に配置され、出射口4bとの位置関係(出射口4bとの乖離距離)が予め測定され、記憶部43に記憶されている。
【0031】
1-4.アイウェア装置の構成
アイウェア装置5は、作業者の頭部に装着される眼鏡型の画像表示装置である。
図5Aは測定システム1に係るアイウェア装置5の外観斜視図、
図5Bは同アイウェア装置5の構成ブロック図である。
図5Bに示すようにアイウェア装置5は、通信部51、制御部52、記憶部53、加速度センサ54、ジャイロセンサ55、GPS装置56、ディスプレイ57、撮像部58、および操作ボタン群59を備える。ここで、要素51,52,53,54,55,56は、集積回路技術を利用して構成された専用のモジュールやICを用いて構成され、任意の位置の処理BOX50(
図5A)に収容されている。
【0032】
通信部51は、例えば処理装置3の通信部31(後述する)と同等の通信規格を備える。ディスプレイ57は、液晶や有機EL画面であり、作業者の両目を覆うように配置されている(
図5A)。加速度センサ54、ジャイロセンサ55、およびGPS装置56は、計測マーカー4のものと同等のものを備える。撮像部58は、イメージセンサ(例えばCCDセンサやCMOSセンサ)であり、ディスプレイ57の上部中央位置に配置され、この中心位置を原点として、作業者の視線方向(
図5Aの符号5´)を、原点の上下方向及び左右方向を広角度で撮像可能である。
【0033】
制御部52は、CPUを備え、制御として、姿勢センサ54,55および位置センサ56からの情報検出、通信部51を介した情報の送受信、撮像部58による撮像、およびディスプレイ57へのワイヤーフレーム(後述する)の表示を行う。記憶部53は、ROMおよびRAMを備え、制御部52の各制御を可能にする。
【0034】
1-5.処理装置の構成
処理装置3は、測量現場の任意の場所にあればよい。処理装置3は、汎用パーソナルコンピュータ,PLD(Programmable Logic Device)等による専用ハードウェア,高性能タブレット端末等である。
図6は測定システム1に係る処理装置3の構成ブロック図である。
図6に示すように、処理装置3は、少なくとも、通信部31、演算器32、記憶装置33、表示部34を備える。
【0035】
通信部31は、測量機2の通信部29、計測マーカー4の通信部41、アイウェア装置5の通信部51と無線通信が可能である。通信は、ブルートゥース(登録商標)、各種の無線LAN規格、赤外線通信、携帯電話回線、その他無線回線等のいずれかまたは組み合わせを用いることができる。
【0036】
記憶装置33は、HDD等の大容量の記憶媒体を備え、測量現場に建設される構造物等のCAD設計データ37の3Dワイヤーフレームを記憶している。
【0037】
演算器32は、高性能CPUを備え、同期部35と画像解析部36がソフトウェア的に構成されている。同期部35は、測量機2の位置・姿勢の情報、計測マーカー4の(出射口4bの)位置・姿勢の情報、およびアイウェア装置5の位置・姿勢の情報、を受信して、測量機2の座標空間と、計測マーカー4の座標空間と、アイウェア装置5の座標空間と、CAD設計データ37の座標空間を同期させる(後述する)。また、同期したCAD設計データ37の情報をアイウェア装置5に送信する。画像解析部36は、アイウェア装置5から受信した画像と、測量機2から受信した画像について画像解析を行い、測定点Xの三次元位置を特定する(後述する)。
【0038】
表示部34は、液晶または有機ELのディスプレイであり、複数の測定点Xの測定結果(三次元位置データ)を、一覧で表示する(後述する)。
【0039】
1-6.測定システムの同期
測定を始める前に、測定システム1(測量機2、処理装置3、計測マーカー4、およびアイウェア装置5)の同期をとる。同期は、同一の座標空間でこれら4つの各器械の位置・姿勢が把握できるようにする作業である。以下に好適と考えられる一例を示すが、当業者の知識に基づく手法で同期がとられればよい。
【0040】
まず、測定システム1に対して、測量現場に、基準点と基準方向を設定し、測量機2と処理装置3を同期する。基準点は、既知座標点(座標が既知の点)または現場の任意の点を選択する。基準方向は、基準点とは別の特徴点を任意に選択し、基準点-特徴点の方向とする。そして、基準点と特徴点を含む後方交会等の観測により測量機2の三次元位置を把握し、その情報を処理装置3に送信する。処理装置3の同期部35は、基準点の絶対座標を(x,y,z)=(0,0,0)と認識し、基準方向を水平角0度と認識する。演算器32(同期部35)は、以後、測量機2からの情報に関して、基準点を原点とする座標系で、測量機2の位置・姿勢を把握する。
【0041】
次に、計測マーカー4と処理装置3、およびアイウェア装置5と処理装置3を同期する。計測マーカー4に関して、基準点に計測マーカー4を設置して基準点にGPS装置46のゼロ座標を合わせ、計測マーカー4を水平にした状態で計測マーカー4のレーザ光4´の出射方向を基準方向に向けて、基準方向に計測マーカー4の基準姿勢を合わせる。同様に、アイウェア装置5に関して、基準点にアイウェア装置5を設置して、基準点にGPS装置56のゼロ座標を合わせ、アイウェア装置5を水平にした状態で視線方向5´を基準方向に向けて、基準方向にアイウェア装置5の基準姿勢を合わせる。演算器32(同期部35)は、以後、計測マーカー4およびアイウェア装置5からの情報に関して、基準点を原点とする空間で、それぞれの位置・姿勢を把握する。
【0042】
または、計測マーカー4とアイウェア装置5の同期は、測量機2を利用してもよい。例えば、計測マーカー4とアイウェア装置5を測量機2に近接させて、測量機2の座標にGPS装置46,56のゼロ座標を合わせ、水平な状態で測量機2の測距光2´に計測マーカー4のレーザ光4´の出射方向とアイウェア装置5の視線方向5´を合わせてもよい。
【0043】
1-7.測定方法
次に、測定システム1を使用して、複数の測定点の三次元位置を測定する方法を説明する。
図7Aおよび
図7Bは本発明の実施の形態に係る測定方法のフロー図であり、
図7Aは作業者による作業フロー、
図7Bは測定システム1の作業フローである。
図8Aは作業者による作業イメージ、
図8Bは測定システム1の作業イメージである。なお、本明細書では、測定点の符号に関し、具体的な測定点についてはx1、x2、x3、…と小文字の「x」で表記し、不特定の測定点または具体的な測定点x1、x2、x3の総称として使用する測定点については大文字の「X」を付している。
【0044】
1-7-1.作業者の作業フロー
図7Aに示すように、測定が開始されると、まずステップS101で、作業者は、アイウェア装置5を頭部に装着し、計測マーカー4を携帯して、一つ目の測定点x1に移動する。次にステップS102で、作業者は、アイウェア装置5を介して測定点x1を視認しながら計測マーカー4のレーザ光4´を測定点x1に照射して、測定ボタン(測定ボタンは計測マーカー4にあってもアイウェア装置5にあってもよい)を押し、測定指示を出す。次に、作業者は、測定点x2に移動して、同様に測定指示を出す。次に、作業者は、測定点x3に移動して、同様に測定指示を出す。このように、作業者は、複数の測定点x1、x2、x3、…、xn、…について、次々に測定点を指定する(
図8Aも参照)。作業者は、測定点の指定が終了すると、終了ボタンを押し、指定作業を終了する。
【0045】
ここで、作業者の頭部にあるディスプレイ57では、CAD設計データ37のワイヤーフレームが、測量現場の実風景に重ねて表示される。アイウェア装置5は、アイウェア装置5の位置・姿勢を常に処理装置3に送信する。これを受信した処理装置3は、アイウェア装置5の位置・姿勢で見えるCAD設計データ37のワイヤーフレームをアイウェア装置5に送信する。これを受信したアイウェア装置5は、撮像部58で得た実風景にワイヤーフレームを重ねた画像を生成し、ディスプレイ57に表示する。作業者は、ワイヤーフレームを頼りに計測マーカー4のレーザ光4´の照射位置を定めて、測定点Xを指定する。
【0046】
1-7-2.測定システムの作業フロー
図7Bに示すように、測定が開始されると、測定システム1は作業者からの測定指示を待つ。そして、S101´で、測定点x1の測定指示を受けると、S102´に移行し、測定システム1は測定点x1の探索を行う。測定システム1が測定点x1を特定すると、ステップS103´に移行し、測量機2は測定点x1を視準し測定する。測定システム1は、この間も、測定点x2、x3…、の測定指示を受け付けている。測定点x1を測定し終えた測定システム1は、次の測定点x2の探索に移り(S102´)、測定点x2を測定する(S103´)。測定点x2を測定し終えた測定システム1は、次の測定点x3の探索に移り(S102´)、測定点x3を測定する(S103´)。このように、測定システム1は、複数の測定点x1、x2、x3、…、xn、…について、測定指示を受けた順に、測定点を探索し測定していく(
図8Bも参照)。
【0047】
ここで、測定システム1による測定点Xの探索(S102´)・測定(S103´)は次のように行われる。
【0048】
(1)作業者が、測定点Xを視認しながら測定ボタンを押すと、計測マーカー4は、加速度センサ44,ジャイロセンサ45から出射口4bの姿勢(マーカー軸方向4r)を算出し、GPS装置46の位置情報をマーカー軸方向4rへ既知の乖離距離だけオフセットさせて、出射口4bの位置情報を算出する。同時に、距離計48で測定点Xを測距し、出射口4bから測定点Xまでの距離L(以降、レーザ距離Lと称する。
図1)を測り、出射口4bの位置・姿勢とレーザ距離Lを処理装置3に送信する。
【0049】
(2)同時に、計測マーカー4はアイウェア装置5に測定指示を出す。アイウェア装置5は、撮像部58で、測定指示を受けた時の画像を撮像し、処理装置3に送信する。この撮像部58の画像には、測定点X(すなわち、測定点Xに照射されているレーザ光4´の像の終点)が含まれている。
【0050】
(3)処理装置3(演算器32)は、計測マーカー4の出射口4bの位置と姿勢(マーカー軸方向4r)とレーザ距離Lから、オフセット観測で、測定点Xのおおよその三次元位置(以降、概略三次元位置と称する)を、基準点を原点とする三次元座標で算出する。処理装置3は、測定点Xの概略三次元位置を測量機2に送信する。
【0051】
(4)測量機2は、測定点Xの概略三次元位置に水平角および鉛直角を設定し、駆動部23,24でこれらの設定された角度に望遠鏡2a(測距部28)を向け、撮像部27で、測定点X(すなわち、レーザ光4´の像の終点)を含む領域を撮像し、取得した画像を処理装置3に送信する。
【0052】
(5)処理装置3(画像解析部36)は、アイウェア装置5からの画像と測量機2からの画像を周知の画像マッチング技術によって比較し、レーザ光4´の像の終点位置を、基準点を原点とする三次元座標で特定する。処理装置3は、画像マッチングによって特定した測定点Xの三次元位置(以降、特定三次元位置と称する)を測量機2に送信する。
【0053】
(6)測量機2は、測定点Xの特定三次元位置に水平角および鉛直角を設定し、駆動部23,24でこれらの設定された角度に望遠鏡2a(測距部28)を向け、特定三次元位置を測距部28でノンプリズム測距し、測角部21,22で測角する。測量機2は、この測定点Xに対して識別IDを付し、三次元位置データ(緯度、経度、標高)を処理装置3に送信する。
【0054】
(7)処理装置3は、測定点Xの測定結果を、測定順に、表示部34に一覧で表示する(
図9参照)。処理装置3は、測定結果を記憶装置33にも記録する。但し、記録場所は処理装置3に限定されず、インターネット等を介して処理装置3と接続される管理するデバイス、またはサーバに記録されてもよい。また、三次元位置データに関連させて、指示データ(アイウェア装置5が撮像した画像、測量機2が撮像した画像、計測マーカー4の出射口4bの位置情報)も併せて記録されるのも好ましい。
【0055】
(8)処理装置3は、全ての測定点Xに対して測定が完了すると、測定完了を作業者に通知する。通知手段は周知の手段が採られてよいが、例えばアイウェア装置5に表示する、アイウェア装置5または計測マーカー4にスピーカーを備えて通知音を出す、または測定システム1に登録された作業者の携帯電話に通知する、などが挙げられる。
【0056】
(効果)
以上、本形態によれば、測定システム1は、測量機2、処理装置3、計測マーカー4、およびアイウェア装置5の連携により、指定された測定点を作業者とは独立した動きで測定する。このため、作業者は、測量機による測定を待たずに、測定点の指定に徹することができる。また、作業者は、指定が終われば、別の作業を行うこともできる。このように、本形態によれば、測定点Xが複数ある場合に、特に作業者の作業時間が大幅に短縮される。
【0057】
また、本形態では、作業者が指定した測定点Xの位置を、測定システム1が誤りなく把握することが重要である。これに関し、アイウェア装置5で見えるワイヤーフレームや計測マーカー4のレーザ光4´が、可視的に、作業者の指定制度を上げるガイドとなる。また、測定点Xの概略三次元位置の算出のために計測マーカー4の位置センサ46、姿勢センサ44,45、距離計48が使用されること、測定点Xの特定三次元位置の算出のために測量機2の画像とアイウェア装置5の画像でマッチングが行われること、これらはそれぞれ、位置精度の向上に寄与している。このように、本形態によれば、指定された測定点Xが複数あっても、測定点Xを正確に特定することができる。
【0058】
2.変形例
上記の実施の形態は以下のような変形を加えるのも好適である。
【0059】
2-1.変形例1
上記「1-7-2.測定システムの作業フロー」の(6)で、処理装置3から測定点Xの特定三次元位置を知らされた測量機2は、特定三次元位置を自動で測定する。但し、通行人など一時的な遮蔽物があったなどの理由で、自動測定が失敗する測定点が生じることが想定される。
【0060】
これに対し、変形例1では、例えば測定点xmにおいて測定失敗が生じた場合、測量機2は、測定点xmに関しては、識別IDとともに測定失敗の情報を処理装置3に送信し、次の測定点xm+1の測定に移る。
【0061】
測定失敗の情報を受けた処理装置3は、測定点xmの測定が失敗したという通知を、アイウェア装置5のディスプレイ57にメッセージで表示する。
【0062】
この時、アイウェア装置5が撮像した測定点xmの画像と合わせて表示するのも好ましい。さらに、失敗した測定点xmの処理をどうするか尋ねる選択を表示するのも好ましい。例えば、測定点xmについて、「あとで自動で測定する」「あとでマニュアルで測定する」などの処理の選択を表示する(
図10参照)。作業者は、アイウェア装置5を操作して、希望する処理を選択する。選択が終わると、ディスプレイ57から選択は消え、元の測定の画面が戻る。「あとで自動で測定する」が選択された場合は、処理装置3は、測定待機列の最後に、測定点xmを挿入する。測量機2は、指定された測定点を全て測定した後、もう一度測定点xmを測定する。
【0063】
このように、変形例1によれば、測定システム1は測定の失敗に備えることができ、作業者は、どの測定点で失敗したかを知り、それに対する処理を作業途中に指示することができる。なお、上記の通知や選択は、アイウェア装置5がスピーカーを備えていれば、音声で行われてもよい。
【0064】
2-2.変形例2
上記「1-7-2.測定システムの作業フロー」の(5)で、処理装置3は、画像マッチングによって測定点Xの特定三次元位置を算出する。ここで、画像マッチングに時間がかかるほど、その測定点(例えば測定点xkとする)の精度は下がると言える。このため、画像マッチングの所要時間に応じて、測定精度の指標を付ける。測定精度の指標は、例えば、優・良・可・不可、A・B・C・Dなどのランクであったり、または算出された誤差の数値であってもよい。なお、測定精度の指標については、画像マッチングの所要時間(マッチング開始から測定完了までにかかった時間)だけで決定されるのではなく、測定点までの距離がのびるほどマッチングに時間がかかる事実を考慮に入れた調整が行われてもよい。
【0065】
また、測定精度の指標は、上記「1-7-2.測定システムの作業フロー」の(7)における測定結果の一覧表示に反映させるのも好ましい(
図11参照)。測定システム1は、測定点x1、x2、x3、…、xk…に関して、三次元位置データとともに測定精度の指標を表示する。さらに、例えば、不可=赤、可=黄色、優・良=緑など、色分けした表示にして作業者の注意を喚起するのも好ましい。
【0066】
このように、変形例2によれば、作業者は、複数の測定点の各測定精度を知ることができ、精度の悪い測定点については、マニュアル測定する、測定点の指定方法を変えてもう一度測定する、などの対策を取ることが可能となる。さらに、変形例2を変形例1に組み合わせ、測定精度をアイウェア装置5に通知したり、測定精度と処理の選択を、例えば、不可=あとでマニュアルで測定する、可=あとで自動で測定する、など、事前に設定することもできる。
【0067】
2-3.変形例3
上記の実施の形態では、測定システム1は、測量機2と、処理装置3と、計測マーカー4と、アイウェア装置5の4つの要素を備え、処理装置3が、演算器32(同期部35、画像解析部36)と記憶装置33(CAD設計データ37)を備えている。しかしながら、測量機2,アイウェア装置5,または計測マーカー4に、演算器32(同期部35、画像解析部36)と記憶装置33(CAD設計データ37)を備えてもよい。
図12(A)は、測量機2の制御部25が演算器32を備え、記憶部26が記憶装置33を備えた場合の構成である。
図12(B)は、アイウェア装置5の制御部52が演算器32を備え、記憶部53が記憶装置33を備えた場合の構成である。
図12(C)は、計測マーカー4の制御部42が演算器32を備え、記憶部43が記憶装置33を備えた場合の構成である。または、図示は略するが、測量機2,アイウェア装置5,および計測マーカー4はいずれも通信可能であるため、アイウェア装置5が演算器32を備え、測量機2が記憶装置33を備えるような組み合わせがあってよい。このように、測定システム1は、測量機2と、計測マーカー4と、アイウェア装置5の3つの要素で構成されてもよい。この場合、処理装置3の表示部34に出力される測定結果の一覧表示は、測量機2またはアイウェア装置5に表示すればよい。
【0068】
また、実施の形態で、作業者が測定点Xをプリズムで指定した場合は、測量機2の測距部28はプリズム測距を行っても構わない。
【0069】
以上、測定システム1について、実施の形態および変形例を述べたが、これら以外にも、各形態および各変形を当業者の知識に基づいて組み合わせることが可能であり、そのような形態も本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0070】
1 三次元位置測定システム
2 測量機
2´ 測距光
21 水平角検出器(測角部)
22 鉛直角検出器(測角部)
23 水平回転駆動部(駆動部)
24 鉛直回転駆動部(駆動部)
27 撮像部
28 測距部
29 通信部
3 処理装置
31 通信部
32 演算器
33 記憶装置
34 表示部
4 計測マーカー
4r 軸方向
4b 出射口
4´ レーザ光
48´ レーザ測距光
41 通信部
44 加速度センサ(姿勢センサ)
45 ジャイロセンサ(姿勢センサ)
46 GPS装置(位置センサ)
47 レーザ出射部
48 距離計
5 アイウェア装置
51 通信部
54 加速度センサ(姿勢センサ)
55 ジャイロセンサ(姿勢センサ)
56 GPS装置(位置センサ)
57 ディスプレイ
58 撮像部