IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日立オートモティブシステムズ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-車載用電子制御装置 図1
  • 特許-車載用電子制御装置 図2
  • 特許-車載用電子制御装置 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】車載用電子制御装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 8/65 20180101AFI20241004BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20241004BHJP
   G06F 11/30 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
G06F8/65
B60R16/02 660U
G06F11/30 140D
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021045524
(22)【出願日】2021-03-19
(65)【公開番号】P2022144485
(43)【公開日】2022-10-03
【審査請求日】2023-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中山 浩太朗
【審査官】円子 英紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-042850(JP,A)
【文献】特開2004-295587(JP,A)
【文献】特開2000-322894(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 8/65-8/658
G06F 11/30
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記憶部に記憶された制御プログラムを通信部が受信した更新プログラムに書き換える中央演算装置を備える車載用電子制御装置であって、
前記記憶部は、前記制御プログラムの更新時に並行して実行する特定プログラムが記憶される特定プログラム領域と、前記特定プログラム以外の通常プログラムが記憶される通常プログラム領域とを個別に備え、
前記中央演算装置は、前記通信部から前記制御プログラムの更新指示が入力されると、前記通常プログラム領域を書き換え対象領域として前記制御プログラムを前記更新プログラムに書き換え
前記更新指示には、無線で外部から受信した更新指示に基づく無線更新指示と有線で外部から受信した更新指示に基づく有線更新指示とがあり、
前記中央演算装置は、前記無線更新指示が入力されると、前記通常プログラム領域を書き換え対象領域として前記制御プログラムを前記更新プログラムに書き換え、前記有線更新指示が入力されると、前記特定プログラム領域及び前記通常プログラム領域を書き換え対象領域として前記制御プログラムを前記更新プログラムに書き換えることを特徴とする車載用電子制御装置。
【請求項2】
前記中央演算装置は、前記通信部から前記制御プログラムの更新指示が入力されると、前記特定プログラム領域をアクティブ領域に設定することにより前記特定プログラムの実行を開始し、前記通常プログラム領域を非アクティブ領域に設定することにより前記通常プログラムの前記更新プログラムへの書き換えを開始することを特徴とする請求項1に記載の車載用電子制御装置。
【請求項3】
前記特定プログラムは、高圧電力から低圧電力を生成する電力変換器の動作を監視する監視プログラムであることを特徴とする請求項1または2に記載の車載用電子制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用電子制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、車載プログラムのアップデート装置が開示されている。このアップデート装置は、車両に搭載された少なくとも一つの制御ユニットと、更新プログラムが格納された更新プログラム格納部とがデータ通信部によって通信を行い、更新プログラム格納部から更新プログラムをダウンロードして車両に設置されたプログラム記憶部に記憶すると共に、プログラム書換部が制御ユニットに書き込まれた更新前プログラムを読み出してプログラム記憶部に記憶した後、制御ユニットに書き込まれていた更新前プログラムをプログラム記憶部に記憶された更新プログラムに書き換えるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-232815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記背景技術は、車両を所定の整備場所に持ち込むことなく、ユーザー主導で車載プログラムを更新する技術である。リチウムイオン電池等の高電圧バッテリの出力(高圧電力)を降圧して電子制御装置(ECU)等を駆動する低圧電力を生成している電動車両では、安全性の観点から車載プログラムを更新する際に上記高圧電力から低圧電力を生成する電力変換器(DC-DCコンバータ)の動作を別途監視する必要がある。
【0005】
しかし、更新前プログラムを更新プログラムに書き換えようとした場合、電力変換器の動作を監視するプログラムも書き換え対象となるために、電力変換器の動作監視を実行することができない。すなわち、上述した背景技術では、必要な処理を実行しつつ更新前プログラムを更新プログラムに書き換えることができない。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、車載プログラムの更新と並行して必要な処理を実行することが可能な車載用電子制御装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明では、車載用電子制御装置に係る第1の解決手段として、記憶部に記憶された制御プログラムを通信部が受信した更新プログラムに書き換える中央演算装置を備える車載用電子制御装置であって、前記記憶部は、前記制御プログラムの更新時に並行して実行する特定プログラムが記憶される特定プログラム領域と、前記特定プログラム以外の通常プログラムが記憶される通常プログラム領域とを個別に備え、前記中央演算装置は、前記通信部から前記制御プログラムの更新指示が入力されると、前記通常プログラム領域を書き換え対象領域として前記制御プログラムを前記更新プログラムに書き換える、という手段を採用する。
【0008】
本発明では、車載用電子制御装置に係る第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、前記中央演算装置は、前記通信部から前記制御プログラムの更新指示が入力されると、前記特定プログラム領域をアクティブ領域に設定することにより前記特定プログラムの実行を開始し、前記通常プログラム領域を非アクティブ領域に設定することにより前記通常プログラムの前記更新プログラムへの書き換えを開始する、という手段を採用する。
【0009】
本発明では、車載用電子制御装置に係る第3の解決手段として、上記第1または第2の解決手段において、前記更新指示には、無線で外部から受信した更新指示に基づく無線更新指示と有線で外部から受信した更新指示に基づく有線更新指示とがあり、
前記中央演算装置は、前記無線更新指示が入力されると、前記通常プログラム領域を書き換え対象領域として前記制御プログラムを前記更新プログラムに書き換える、という手段を採用する。
【0010】
本発明では、車載用電子制御装置に係る第4の解決手段として、上記第3の解決手段において、前記中央演算装置は、前記有線更新指示が入力されると、前記特定プログラム領域及び前記通常プログラム領域を書き換え対象領域として前記制御プログラムを前記更新プログラムに書き換える、という手段を採用する。
【0011】
本発明では、車載用電子制御装置に係る第5の解決手段として、上記第1~第4のいずれかの解決手段において、前記特定プログラムは、高圧電力から低圧電力を生成する電力変換器の動作を監視する監視プログラムである、という手段を採用する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、車載プログラムの更新と並行して必要な処理を実行することが可能な車載用電子制御装置を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る車載用電子制御装置Aの構成を示すブロック図である。
図2】本発明の一実施形態に係る車載用電子制御装置Aのメモリマップである。
図3】本発明の一実施形態に係る車載用電子制御装置Aの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
本実施形態に係る車載用電子制御装置Aは、図1に示すように、電力変換回路Bを介してモータMを制御するモータECU(Electronic Control Unit)である。この車載用電子制御装置Aは、電気自動車やハイブリッド自動車等の電動車両に備えられており、モータMが発生する電動車両の走行動力が発生する回生電力の高圧二次電池(図示略)への充電を制御する。
【0015】
本実施形態に係る車載用電子制御装置Aは、電動車両に予め搭載された制御プログラムに基づいて電力変換回路Bを直接制御することにより、モータMの動作を間接的に制御するソフトウエア制御装置である。すなわち、この車載用電子制御装置Aは、モータMを最終的な制御対象とする制御装置である。
【0016】
このような車載用電子制御装置Aは、図示するようにCPU(Central Processing Unit)1、メモリ2(記憶部)、入力回路4、CAN通信回路5(通信部)、ゲート駆動回路6を構成要素として備えている。
【0017】
ここで、電力変換回路Bは、電動車両における所謂PCU(パワーコントロールユニット)であり、複数のスイッチングトランジスタを構成部品として含んでいる。この電力変換回路Bは、高圧電源D1とモータMとの間で直流電力の交流電力への変換と交流電力の直流電力への変換を択一的に行う。このような電力変換回路Bは、例えば双方向昇降圧回路とインバータ回路から構成されている。
【0018】
双方向昇降圧回路は、車載用電子制御装置Aによる制御の下で、高圧電源D1から入力された直流電力を高圧してインバータ回路に出力する昇圧処理と、インバータ回路から入力される直流電力を降圧して高圧電源D1に出力する降圧処理とを択一的に行う電力変換器である。
【0019】
インバータ回路は、車載用電子制御装置Aによる制御の下で、双方向昇降圧回路から入力された直流電力を三相交流電力に変換してモータMに出力する力行処理と、モータMから入力された三相交流電力を直流電力に変換して双方向昇降圧回路に出力する回生処理とを択一的に行う電力変換器である。
【0020】
モータMは、一方のインバータ回路から入力される三相交流電力によって回転動力を発生する回転電機である。このモータMは、例えば電動車両の駆動輪に連結されており、回転動力を走行動力として発生させる。また、このモータMは、電動車両の減速時に回生電力を発生する。モータMは、この回生電力をインバータ回路に出力する。
【0021】
上記高圧電源D1は、例えばリチウムイオン電池や燃料電池等の組電池であり、直列接続される複数の電池セルのセル数に応じた高圧(例えば数百ボルト)の高圧電力を電力変換回路Bに出力する。また、この高圧電源D1は、電力変換回路Bとは別にDC-DCコンバータHにも高圧電力を出力する。
【0022】
このDC-DCコンバータHは、高圧電源D1から入力される高圧電力を降圧することにより低圧電力を生成して低圧電源D2に出力する。すなわち、DC-DCコンバータHは、高圧電力から低圧電力を生成する電力変換器である。低圧電源D2は、電動車両に備えられた鉛蓄電池(12ボルト電源)であり、DC-DCコンバータHを介して高圧電源D1から入力される低圧電力によって補助的に充電される。
【0023】
本実施形態に係る車載用電子制御装置Aにおいて、CPU1は、中央演算装置として周知の半導体集積回路である。このCPU1は、メモリ2に予め記憶された制御プログラムを実行することにより、上述した電力変換回路Bを制御するための各種制御指令を生成してゲート駆動回路6に出力する。
【0024】
メモリ2は、上記制御プログラムが予め記憶された半導体記憶装置であり、図2(a)のメモリマップに示すように特定プログラム領域と通常プログラム領域とリプログラミング領域を個別に備える。特定プログラム領域は、制御プログラムの更新時に並行して実行する特定プログラムが記憶される記憶領域である。この特定プログラムは、例えばDC-DCコンバータHの動作を監視することにより、当該DC-DCコンバータHの故障を検知する監視プログラムである。
【0025】
通常プログラム領域は、特定プログラム以外の通常プログラムが記憶される記憶領域である。すなわち、制御プログラムは、通常プログラムと特定プログラムとから構成されている。このような制御プログラムのうち、通常プログラムは、第1の記憶領域である通常プログラム領域に記憶され、特定プログラムは、第2の記憶領域である特定プログラム領域に記憶されている。
【0026】
また、リプログラミング領域は、制御プログラムの更新時に更新プログラムが記憶される記憶領域である。この更新プログラムは、メモリ2に予め記憶された制御プログラムの一部を改変した新制御プログラムであり、CPU1によってリプログラミング領域に適宜記憶される。
【0027】
ここで、詳細については後述するが、CPU1は、動作中にメモリ2に予め記憶された制御プログラムの更新指示として、無線更新指示がCAN通信回路5から入力されると、通常プログラム領域を書き換え対象領域として制御プログラムを更新プログラムに書き換え、有線更新指示がCAN通信回路5から入力されると、特定プログラム領域及び通常プログラム領域を書き換え対象領域として制御プログラムを更新プログラムに書き換える。
【0028】
入力回路4は、外部から入力されるモータECUの上位制御装置からの上位制御指令や各種センサの検出信号を受け付けてCPU1に出力するインタフェース回路である。すなわち、この入力回路4は、上位制御指令や検出信号をCPU1の仕様に即したデジタル信号に変換してCPU1に出力する。
【0029】
CAN通信回路5は、電動車両に備えられ、CAN通信回線を介して相互に接続された無線通信器や有線通信装置等と通信を行う通信回路である。すなわち、このCAN通信回路5は、車載通信プロトコルとして周知のCAN(Controller Area Network)に準拠した通信回路であり、無線通信器や有線通信装置等から信号を受信すると、受信信号をCPU1の仕様に即したデジタル信号に変換してCPU1に出力する。
【0030】
上記受信信号には、電動車両の外部から制御プログラムの更新プログラムへの書き換えを指示する更新指示(制御プログラム更新指示)が含まれる。この制御プログラム更新指示には、外部通信器の1つとして電動車両に無線接続された無線通信器から受信された無線更新指示と、同じく外部通信器の1つとして電動車両に有線接続された有線通信器から受信された有線更新指示とがある。
【0031】
上記無線更新指示は、電動車両に装備された無線通信器が例えばOTA(Over the Air)センタから受信した制御プログラムの更新指示(OTA指示)である。このような無線更新指示は、電動車両の走行中のも無線通信器によって受信され、CAN通信回路5に入力される。すなわち、無線更新指示に基づく制御プログラムの更新処理は、電動車両の走行中に実行され得るものである。
【0032】
一方、有線更新指示は、電動車両の整備時に専用装置から有線通信器が受信した制御プログラムの更新指示である。この有線更新指示は、電動車両の停車中(整備中)のみに有線通信器によって受信され、CAN通信回路5に入力される。すなわち、有線更新指示に基づく制御プログラムの更新処理は、電動車両の停車中(整備中)のみに実行されるものである。
【0033】
ゲート駆動回路6は、CPU1から入力される各種制御指令に基づいて、電力変換回路Bを構成する各スイッチングトランジスタのON/OFFを設定する複数のゲート信号を生成する。すなわち、このゲート駆動回路6は、双方向昇降圧回路を構成する複数のスイッチングトランジスタ用のゲート信号、インバータ回路用のゲート信号をそれぞれ生成し、双方向昇降圧回路及びインバータ回路にそれぞれ出力する。
【0034】
次に、本実施形態に係る車載用電子制御装置Aの動作について、図3に示すフローチャートに沿って詳しく説明する。
【0035】
この車載用電子制御装置Aにおいて、CPU1は、通常、入力回路4から入力される上位制御指令や検出信号に基づいて各種制御指令を生成してゲート駆動回路6に出力する。そして、ゲート駆動回路6が各種制御指令に基づいて複数のゲート信号を生成して電力変換回路Bに出力することにより、電力変換回路BによってモータMが適切に作動し、以って電動車両が正常に走行する。
【0036】
すなわち、上述した無線更新指示及び有線更新指示がCAN通信回路5から入力されない通常状態において、CPU1は、図2(a)に示す通常プログラム領域、特定プログラム領域及びリプログラミング領域のうち、通常プログラム領域及び特定プログラム領域をアクティブ領域(実行許可領域)に設定し、通常プログラム及び特定プログラムを実行することにより電力変換回路Bを通常制御する。
【0037】
なお、図2では、メモリ2の各記憶領域のうちアクティブ領域(実行許可領域)を「グレー」に表示し、非アクティブ領域(実行不許可領域)を「白」に表示している。すなわち、車載用電子制御装置Aの通常動作時には、リプログラミング領域は、図2(a)に示すように非アクティブ領域(実行不許可領域)に設定される。
【0038】
CPU1は、図3(a)に示すように、このような通常制御の間に所定のタイムインターバルで無線更新指示(OTA指示)あるいは有線更新指示の何れかがCAN通信回路5から入力されたかを判断する(ステップS1)。そして、CPU1は、無線更新指示(OTA指示)が入力されると、特定プログラムを実行するための処理(特定プログラムジャンプ処理)を行う(ステップS2)。
【0039】
そして、CPU1は、上記特定プログラムジャンプ処理が終了すると、引き続いてプログラムの更新処理を実行する(ステップS3)。すなわち、CPU1は、プログラムの更新処理において、図2(b)に示すように通常プログラム領域を非アクティブ領域(実行不許可領域)に設定し、特定プログラム領域及びリプログラミング領域をアクティブ領域(実行許可領域)に設定する。
【0040】
そして、CPU1は、無線更新指示(OTA指示)に続いてCAN通信回路5から入力された更新プログラムをメモリ2のリプログラミング領域に書き込み、この後に図2(c)に示すようにメモリ2における通常プログラム領域の制御プログラムを消去する。すなわち、CPU1は、通常プログラム領域をブランク状態に設定する。
【0041】
そして、CPU1は、この上で通常プログラム領域にリプログラミング領域の更新プログラムをコピー(複写)することにより、図2(d)に示すように通常プログラム領域に更新プログラムを記憶させる。そして、CPU1は、ステップS3における最後の処理として、図2(e)に示すように通常プログラム領域をアクティブ領域(実行許可領域)に設定し、リプログラミング領域を非アクティブ領域(実行不許可領域)に設定する。
【0042】
一方、CPU1は、CAN通信回路5から有線更新指示が入力されると、特定プログラムジャンプ処理(ステップS2)を実行することなく、上述したプログラムの更新処理(ステップS3)を実行する。すなわち、CPU1は、通常プログラム領域及び特定プログラム領域を非アクティブ領域(実行不許可領域)に設定し、特定プログラムを実行することなく通常プログラム領域の制御プログラムを更新プログラムに書き換える。
【0043】
続いて、上述した特定プログラムジャンプ処理(ステップS2)の詳細について、図3(b)を参照して説明する。CPU1は、特定プログラムジャンプ処理において、最初に図3(a)に示す本処理に復帰するために必要なレジスタの退避処理を行う(ステップS21)。そして、CPU1は、上記レジスタの退避処理が終了すると、本処理への復帰用タイマを設定し、当該復帰用タイマのカウントアップを開始させる(ステップS22)。
【0044】
そして、CPU1は、特定プログラムの実行、例えばDC-DCコンバータHの故障検知処理を実行する(ステップS23)。そして、CPU1は、このDC-DCコンバータHの故障検知処理が終了すると、復帰用タイマをリセットし(ステップS24)、ステップS21で退避処理したレジスタの値を用いて本処理に復帰する。
【0045】
上述したDC-DCコンバータHの故障検知処理(ステップS23)の詳細は、図3(c)に示す通りである。すなわち、CPU1は、DC-DCコンバータHの故障検知処理において、最初に故障情報をDC-DCコンバータHから取得する(ステップS231)。
【0046】
そして、CPU1は、上記故障情報をCAN通信回路5に出力することにより電動車両の上位制御装置に送信させる(ステップS232)。この故障情報の上位制御装置への送信が完了すると、CPU1は、上述したレジスタの値を元の値に復帰させる(ステップS233)。
【0047】
このように、本実施形態に係る車載用電子制御装置Aでは、特定プログラム領域と通常プログラム領域とが異なる記憶領域としてメモリ2に設定されるので、通常プログラム(車載プログラム)の更新処理と並行して必要な処理、例えば監視プログラムに基づくDC-DCコンバータHの故障検知処理を実行することができる。したがって、本実施形態によれば、車載プログラムの更新と並行して必要な処理を実行することが可能な車載用電子制御装置Aを提供することが可能である。
【0048】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のような変形例が考えられる。
(1)上記実施形態では、DC-DCコンバータHの故障を検知する監視プログラムを特定プログラムとしたが、本発明はこれに限定されない。また、特定プログラムは、上記監視プログラムのような1つのプログラムに限定されない。
【0049】
(2)上記実施形態では、無線更新指示の一例としてOTA(Over the Air)センタから受信した制御プログラムの更新指示つまりOTA指示について説明したが、無線更新指示はOTA指示に限定されない。本発明の無線更新指示は、車両の走行中に受信し得る更新指示です。
【符号の説明】
【0050】
A 車載用電子制御装置
B 電力変換回路(パワーコントロールユニット)
D1 高圧電源
D2 低圧電源
H DC-DCコンバータ
M モータ
1 CPU(中央演算装置)
2 メモリ(記憶部)
4 入力回路
5 CAN通信回路(通信部)
6 ゲート駆動回路


図1
図2
図3