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特許7565838車椅子装置、車椅子、取付ユニットおよび連結装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】車椅子装置、車椅子、取付ユニットおよび連結装置
(51)【国際特許分類】
   A61G 5/02 20060101AFI20241004BHJP
   A61G 5/10 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
A61G5/02 701
A61G5/10
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021046976
(22)【出願日】2021-03-22
(65)【公開番号】P2022146154
(43)【公開日】2022-10-05
【審査請求日】2023-10-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000243803
【氏名又は名称】未来工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保田 悠揮
(72)【発明者】
【氏名】山田 隆司
(72)【発明者】
【氏名】加藤 佳志
(72)【発明者】
【氏名】川村 裕一
【審査官】望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06269992(US,B1)
【文献】特開2000-262562(JP,A)
【文献】特開2004-305784(JP,A)
【文献】米国特許第06276704(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 5/02
A61G 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の駆動輪を有する車椅子、および、前記車椅子に装着される取付体を備える車椅子装置であって、
前記取付体に設けられた掛け部と、
前記車椅子の側方で前記駆動輪の車軸の延長線上に設けられ、前記掛け部が着脱可能に掛けられる受け部と、を備え、
前記掛け部および前記受け部は、前記掛け部の前記駆動輪に対する相対的な回転が許容された状態で掛合するように構成されており、
前記車椅子は、前記受け部を有する受け具を備え、
前記受け具は、前記駆動輪のスポークを車幅方向の内外に挟み込んで前記駆動輪に固定される一対の挟持体を備え、前記一対の挟持体は、第1挟持体および前記第1挟持体の車幅方向内側に配置される第2挟持体からなり、前記第1挟持体に前記受け部が形成され、
前記掛け部は、前記駆動輪の回転に追従して回転する前記受け部に対して、相対的に回転可能に前記受け部に掛けられていることを特徴とする車椅子装置。
【請求項2】
前記受け部および前記掛け部の一方は、前記車軸の延長線上に沿って延びる掛合軸部と、前記掛合軸部の先端で径方向外側に張り出す拡張部とを有し、
前記受け部および前記掛け部の他方は、前記掛合軸部を内部に挿通して掛合するように形成された掛合溝部を有し、
前記受け部および前記掛け部は、前記掛合溝部内に前記掛合軸部が配置された吊り持ち状態で、互いに軸方向に離脱することなく、かつ、回転方向に摺動するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の車椅子装置。
【請求項3】
前記取付体は、取付体本体と、前記取付体本体に組み付け手段を介して組み付けられた前記掛け部を有する掛け具とを備え、
前記取付体本体および前記掛け具の組み付け状態は、前記取付体を前記車椅子から離脱させた場合にのみ解除可能であることを特徴とする請求項1または2に記載の車椅子装置。
【請求項4】
前記取付体の前記受け部よりも上方の部位には、前記取付体の前記車椅子への着脱操作を可能とする把持部が設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の車椅子装置。
【請求項5】
前記掛け部は、前記受け部に対して下降スライドすることにより掛合状態を形成可能であり、かつ、前記受け部に対して上昇スライドすることにより掛合状態を解除可能に構成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の車椅子装置。
【請求項6】
前記取付体は、前記車椅子に装着された状態で、前記駆動輪の外側に設けられたハンドリムと接触することなく、前記ハンドリムの径方向内側に収まる寸法形状を有し、かつ、前記取付体の少なくとも一部が前記ハンドリムの径方向内側に入り込むように構成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の車椅子装置。
【請求項7】
前記第1挟持体は、前記受け部から離間した部位に形成され、前記第2挟持体に結合するための複数の第1結合部を有し、
前記第2挟持体は、前記車軸を回避するための回避部と、前記回避部から離間した部位に形成され、前記複数の第1結合部にそれぞれ結合される複数の第2結合部とを有することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の車椅子装置。
【請求項8】
前記複数の第1結合部および前記複数の第2結合部のうちの全部または一部が前記スポークの隙間で結合されることを特徴とする請求項に記載の車椅子装置。
【請求項9】
前記一対の挟持体は、車幅方向に貫通する棒状の結合部材によって互いに結合され、
前記結合部材の外周に形成された凹溝に前記挟持体が係合することにより、前記結合部材が前記挟持体に結合され、
前記一対の挟持体は、前記結合部材から強制的に引き抜く方向に負荷をかけることで分離可能であることを特徴とする請求項からのいずれか一項に記載の車椅子装置。
【請求項10】
前記第1挟持体は、前記車軸の端面に磁着される磁着部を有することを特徴とする請求項からのいずれか一項に記載の車椅子装置。
【請求項11】
一対の駆動輪を有し、前記一対の駆動輪の少なくとも一方の外側で、掛け部を有する取付体が装着される車椅子であって、
前記車椅子の側方で前記駆動輪の車軸の延長線上に設けられ、前記掛け部が着脱可能に掛けられる受け部を備え、
前記受け部は、前記掛け部の前記駆動輪に対する相対的な回転が許容された状態で前記掛け部に掛合するように構成され、
前記車椅子のユーザーの着座姿勢での操作により、前記取付体の着脱を可能とする位置で前記取付体を装着可能であり、
前記車椅子は、前記受け部を有する受け具をさらに備え、
前記受け具は、前記駆動輪のスポークを車幅方向の内外に挟み込んで前記駆動輪に固定される一対の挟持体を備え、前記一対の挟持体は、第1挟持体および前記第1挟持体の車幅方向内側に配置される第2挟持体からなり、前記第1挟持体に前記受け部が形成され、
前記掛け部は、前記駆動輪の回転に追従して回転する前記受け部に対して、相対的に回転可能に前記受け部に掛けられていることを特徴とする車椅子。
【請求項12】
一対の駆動輪を有する車椅子の側方に装着される取付ユニットであって、
取付体本体と、
前記取付体本体に固定される掛け具と、
前記車椅子の少なくとも一方の駆動輪に固定される受け具と、を備え、
前記受け具には、前記車椅子の側方で前記駆動輪の車軸の延長線上に設けられ、前記掛け具の掛け部を着脱可能に掛けるための受け部が設けられ、
前記掛け部および前記受け部は、前記掛け部の前記駆動輪に対する相対的な回転が許容された状態で掛合するように構成され、
前記掛け部は、前記受け部に対して上昇スライドすることにより掛合状態を解除可能に構成されており、
前記受け具は、前記駆動輪のスポークを車幅方向の内外に挟み込んで前記駆動輪に固定される一対の挟持体を備え、前記一対の挟持体は、第1挟持体および前記第1挟持体の車幅方向内側に配置される第2挟持体からなり、前記第1挟持体に前記受け部が形成され、
前記掛け部は、前記駆動輪の回転に追従して回転する前記受け部に対して、相対的に回転可能に前記受け部に掛けられていることを特徴とする取付ユニット。
【請求項13】
一対の駆動輪を有する車椅子の側方に装着される取付ユニットであって、
取付体本体と、
前記取付体本体に固定される掛け具と、
前記車椅子の少なくとも一方の駆動輪に固定される受け具と、を備え、
前記受け具には、前記車椅子の側方で前記駆動輪の車軸の延長線上に設けられ、前記掛け具の掛け部を着脱可能に掛けるための受け部が設けられ、
前記掛け部および前記受け部は、前記掛け部の前記駆動輪に対する相対的な回転が許容された状態で掛合するように構成され、
前記掛け部は、前記受け部に対して上昇スライドすることにより掛合状態を解除可能に構成されており、
前記受け具または前記掛け具の少なくとも一方は、前記車軸を中心に径方向外方に広がるフランジを有し、前記フランジにおける前記受け具および前記掛け具の対向面には、前記車軸を囲むように膨出した環状凸部が設けられ、前記環状凸部は、周方向に連続する円弧形状の断面を有することを特徴とす取付ユニット。
【請求項14】
一対の駆動輪を有する車椅子の側方に装着される取付ユニットであって、
取付体本体と、
前記取付体本体に固定される掛け具と、
前記車椅子の少なくとも一方の駆動輪に固定される受け具と、を備え、
前記受け具には、前記車椅子の側方で前記駆動輪の車軸の延長線上に設けられ、前記掛け具の掛け部を着脱可能に掛けるための受け部が設けられ、
前記掛け部および前記受け部は、前記掛け部の前記駆動輪に対する相対的な回転が許容された状態で掛合するように構成され、
前記掛け部は、前記受け部に対して上昇スライドすることにより掛合状態を解除可能に構成されており、
前記取付体本体は、底部、および、前記底部から立設して前記底部の反対側に開口部を有する環状の胴部を備え、前記開口部を介して物品を収容する収容空間を内部に形成し、
前記開口部は、自然状態の第1の開口形状を有し、
前記胴部内面の対向する部位同士を着脱自在に接合する接合部が、前記胴部の開口縁に沿って複数箇所に形成され、
前記複数の接合部のうちの選択した接合部を接合させることで、前記開口部を部分的に閉塞するとともに、前記開口縁の一部を弛ませた第2の開口形状を維持可能であることを特徴とする取付ユニット。
【請求項15】
前記取付体本体は、開口を介して内部に物品を収容可能な収納具であり、
前記収納具の前記駆動輪側を向く背面に沿って保持される背板をさらに備え、前記背板は、前記収納具の前記駆動輪の回転領域内への撓み変形を規制する形状寸法を有することを特徴とする請求項12から14のいずれか一項に記載の取付ユニット。
【請求項16】
前記弛ませた開口縁は、車幅方向の外側にのみ膨らんでいることを特徴とする請求項14に記載の取付ユニット。
【請求項17】
車軸を有する駆動輪の側方に取付体本体を装着するための連結装置であって、
前記取付体本体に組み付けられる掛け具と、
前記駆動輪に固定される受け具と、を備え、
前記受け具には、前記駆動輪の車軸の延長線上に設けられ、前記掛け具の掛け部を着脱可能に掛けるための受け部が設けられ、
前記掛け具および前記受け具は、前記取付体本体の前記駆動輪に対する相対的な回転が許容された状態で掛合するように構成されており、
前記受け具または前記掛け具の少なくとも一方は、前記車軸を中心に径方向外方に広がるフランジを有し、前記フランジにおける前記受け具および前記掛け具の対向面には、前記車軸を囲むように膨出した環状凸部が設けられ、前記環状凸部は、周方向に連続する円弧形状の断面を有することを特徴とする連結装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車椅子装置、車椅子、取付ユニットおよび連結装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車椅子のユーザーの利便性の向上を目的として、車椅子に対して鞄、篭、収納袋、テーブルなどの様々な種類の取付体が車椅子に装着されることが行われている。
【0003】
例えば、特許文献1は、車椅子に取付けられる車椅子用バッグおよびバッグ付車椅子を開示する。以下、当該段落において、()内に特許文献1の符号を示す。特許文献1の車椅子用バッグ(1)は、車椅子の肘掛け(21)の下方に装着されるものである。車椅子用バッグ(1)は、直方体形状で長手方向に沿った開口部(31)を有すると共に、一端部が固定されたカバー(5)を有する袋状に形成された本体部(3)と、本体部(3)に一端部が固着されると共に他端部に固着具が設けられた一対の装着部材(4)と、本体部(3)の上端部に設けられる本体部(3)の他の部分よりも高い剛性を有する補強部と、本体部(3)の上部内周に、装着部材(4)の他端部の固着具と結合し得る一対の固着具とを有する。補強部が、車椅子の肘掛け(21)が上部に取り付けられたフレーム(22)に押し当てられ、一対の装着部材(4)のそれぞれの他端部が肘掛け(21)の両端側のフレーム(22)を巻回して本体部(3)の内周に設けられる固着具に固着し得る。
【0004】
特許文献2は、スーパーマーケット等で買物をする時に使用する車椅子用買物籠を開示する。以下、当該段落において、()内に特許文献2の符号を示す。特許文献2の車椅子用買物籠は、籠本体(1)に、車椅子(5)との接続ベルト(6)を取り付けた籠ホルダー(2)を装着したものとしている。そして、籠ホルダー(2)は、籠本体(1)の底部(1e)から前側部(1a)、後側部(1b)にかけての覆面(3)を備えると共に、後側部(1b)に位置する覆面(3)にクッション材(4)を取り付けたものとしたり、接続ベルト(6)の長さ調節を自在なものとすると共に、長さ調節により弛んだ接続ベルト(6)端部の止着部材(12)を設けたものとしている。車椅子用買物籠をスーパーマーケット等で車椅子(5)に設置するには、利用者が車椅子(5)に座っている状態で、スーパーマーケット等の従業員が、利用者に便利のいいように、籠本体(1)の底部(1e)に位置する籠ホルダー(2)の覆面(3)を車椅子(5)の足載せ台(15)から浮かせるか、この足載せ台(15)に接触するようにして接続ベルト(6)の長さを調節して、接続ベルト(6)を車椅子(5)の肘かけアーム(11)に接続する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-77342号公報
【文献】特開平9-108272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の取付体を装着する車椅子装置は、車椅子に着座したユーザー(着座者)の安全性や利便性が十分でないことが問題であった。特許文献1の車椅子用バッグは、車椅子の肘掛けが取り付けられたフレームに装着されたものであることから、車椅子の座面側に圧迫し、車椅子の着座者の邪魔になる。また、車椅子の着座者の肘の真下でバッグの開口部が位置していることから、着座者がバッグの反対側に身体を傾ける必要がある。そのため、ユーザーが着座姿勢のままで、バッグから物品の出し入れがしにくいだけでなく、バランスを崩して転倒する危険があることが問題であった。また、特許文献2の車椅子用買物篭は、車椅子の着座者の足元にあることから、着座者の邪魔になるとともに、着座者が篭から物品を出し入れする際、前のめりになって転倒する危険性があった。すなわち、車椅子のユーザーが着座姿勢のまま、より便利かつより安全に取付体を扱うことを可能とする車椅子装置が求められている。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、車椅子に装着される取付体に関し、車椅子のユーザーの安全性および利便性を改善した車椅子装置を提供することにある。さらには、本発明の目的はまた、該車椅子装置に用いられる車椅子、取付ユニットおよび連結装置をも提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一形態の車椅子装置は、一対の駆動輪を有する車椅子、および、前記車椅子に装着される取付体を備える車椅子装置であって、
前記取付体に設けられた掛け部と、
前記車椅子の側方で前記駆動輪の車軸の延長線上に設けられ、前記掛け部が着脱可能に掛けられる受け部と、を備え、
前記掛け部および前記受け部は、前記掛け部の前記駆動輪に対する相対的な回転が許容された状態で掛合するように構成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明のさらなる形態の車椅子装置は、上記形態の車椅子装置において、前記受け部および前記掛け部の一方は、前記車軸の延長線上に沿って延びる掛合軸部と、前記掛合軸部の先端で径方向外側に張り出す拡張部とを有し、
前記受け部および前記掛け部の他方は、前記掛合軸部を内部に挿通して掛合するように形成された掛合溝部を有し、
前記受け部および前記掛け部は、前記掛合溝部内に前記掛合軸部が配置された吊り持ち状態で、互いに軸方向に離脱することなく、かつ、回転方向に摺動するように構成されていることを特徴とする。
【0010】
本発明のさらなる形態の車椅子装置は、上記形態の車椅子装置において、前記取付体は、取付体本体と、前記取付体本体に組み付け手段を介して組み付けられた前記掛け部を有する掛け具とを備え、
前記取付体本体および前記掛け具の組み付け状態は、前記取付体を前記車椅子から離脱させた場合にのみ解除可能であることを特徴とする。
【0011】
本発明のさらなる形態の車椅子装置は、上記形態の車椅子装置において、前記取付体の前記受け部よりも上方の部位には、前記取付体の前記車椅子への着脱操作を可能とする把持部が設けられていることを特徴とする。
【0012】
本発明のさらなる形態の車椅子装置は、上記形態の車椅子装置において、前記掛け部は、前記受け部に対して下降スライドすることにより掛合状態を形成可能であり、かつ、前記受け部に対して上昇スライドすることにより掛合状態を解除可能に構成されていることを特徴とする。
【0013】
本発明のさらなる形態の車椅子装置は、上記形態の車椅子装置において、前記取付体は、前記車椅子に装着された状態で、前記駆動輪の外側に設けられたハンドリムと接触することなく、前記ハンドリムの径方向内側に収まる寸法形状を有し、かつ、前記取付体の少なくとも一部が前記ハンドリムの径方向内側に入り込むように構成されていることを特徴とする。
【0014】
本発明のさらなる形態の車椅子装置は、上記形態の車椅子装置において、前記車椅子は、前記受け部を有する受け具を備え、
前記受け具は、前記駆動輪のスポークを車幅方向の内外に挟み込んで前記駆動輪に固定される一対の挟持体を備え、前記一対の挟持体は、第1挟持体および前記第1挟持体の車幅方向内側に配置される第2挟持体からなり、前記第1挟持体に前記受け部が形成され、
前記掛け部は、前記駆動輪の回転に追従して回転する前記受け部に対して、相対的に回転可能に前記受け部に掛けられていることを特徴とする。
【0015】
本発明のさらなる形態の車椅子装置は、上記形態の車椅子装置において、前記第1挟持体は、前記受け部から離間した部位に形成され、前記第2挟持体に結合するための複数の第1結合部を有し、
前記第2挟持体は、前記車軸を回避するための回避部と、前記回避部から離間した部位に形成され、前記複数の第1結合部にそれぞれ結合される複数の第2結合部とを有することを特徴とする。
【0016】
本発明のさらなる形態の車椅子装置は、上記形態の車椅子装置において、前記複数の第1結合部および前記複数の第2結合部のうちの全部または一部が前記スポークの隙間で結合されることを特徴とする。
【0017】
本発明のさらなる形態の車椅子装置は、上記形態の車椅子装置において、前記一対の挟持体は、車幅方向に貫通する棒状の結合部材によって互いに結合され、
前記結合部材の外周に形成された凹溝に前記挟持体が係合することにより、前記結合部材が前記挟持体に結合され、
前記一対の挟持体は、前記結合部材から強制的に引き抜く方向に負荷をかけることで分離可能であることを特徴とする。
【0018】
本発明のさらなる形態の車椅子装置は、上記形態の車椅子装置において、前記第1挟持体は、前記車軸の端面に磁着される磁着部を有することを特徴とする。
【0019】
本発明の一形態の車椅子は、一対の駆動輪を有し、前記一対の駆動輪の少なくとも一方の外側で、掛け部を有する取付体が装着される車椅子であって、
前記車椅子の側方で前記駆動輪の車軸の延長線上に設けられ、前記掛け部が着脱可能に掛けられる受け部を備え、
前記受け部は、前記掛け部の前記駆動輪に対する相対的な回転が許容された状態で前記掛け部に掛合するように構成され、
前記車椅子のユーザーの着座姿勢での操作により、前記取付体の着脱を可能とする位置で前記取付体を装着可能であることを特徴とする。
【0020】
本発明の一形態の取付ユニットは、一対の駆動輪を有する車椅子の側方に装着される取付ユニットであって、
取付体本体と、
前記取付体本体に固定される掛け具と、
前記車椅子の少なくとも一方の駆動輪に固定される受け具と、を備え、
前記受け具には、前記車椅子の側方で前記駆動輪の車軸の延長線上に設けられ、前記掛け具の掛け部を着脱可能に掛けるための受け部が設けられ、
前記掛け部および前記受け部は、前記掛け部の前記駆動輪に対する相対的な回転が許容された状態で掛合するように構成され、
前記掛け部は、前記受け部に対して上昇スライドすることにより掛合状態を解除可能に構成されていることを特徴とする。
【0021】
本発明のさらなる形態の取付ユニットは、上記形態の取付ユニットにおいて、前記受け具または前記掛け具の少なくとも一方は、前記車軸を中心に径方向外方に広がるフランジを有し、前記フランジにおける前記受け具および前記掛け具の対向面には、前記車軸を囲むように膨出した環状凸部が設けられ、前記環状凸部は、周方向に連続する円弧形状の断面を有することを特徴とする。
【0022】
本発明のさらなる形態の取付ユニットは、上記形態の取付ユニットにおいて、前記取付体本体は、開口を介して内部に物品を収容可能な収納具であり、
前記収納具の前記駆動輪側を向く背面に沿って保持される背板をさらに備え、前記背板は、前記収納具の前記駆動輪の回転領域内への撓み変形を規制する形状寸法を有することを特徴とする。
【0023】
本発明のさらなる形態の取付ユニットは、上記形態の取付ユニットにおいて、前記取付体本体は、底部、および、前記底部から立設して前記底部の反対側に開口部を有する環状の胴部を備え、前記開口部を介して物品を収容する収容空間を内部に形成し、
前記開口部は、自然状態の第1の開口形状を有し、
前記胴部内面の対向する部位同士を着脱自在に接合する接合部が、前記胴部の開口縁に沿って複数箇所に形成され、
前記複数の接合部のうちの選択した接合部を接合させることで、前記開口部を部分的に閉塞するとともに、前記開口縁の一部を弛ませた第2の開口形状を維持可能であることを特徴とする。
【0024】
本発明のさらなる形態の取付ユニットは、上記形態の取付ユニットにおいて、前記弛ませた開口縁は、車幅方向の外側にのみ膨らんでいることを特徴とする。
【0025】
本発明の一形態の連結装置は、車軸を有する駆動輪の側方に取付体本体を装着するための連結装置であって、
前記取付体本体に組み付けられる掛け具と、
前記駆動輪に固定される受け具と、を備え、
前記受け具には、前記駆動輪の車軸の延長線上に設けられ、前記掛け具の掛け部を着脱可能に掛けるための受け部が設けられ、
前記掛け具および前記受け具は、前記取付体本体の前記駆動輪に対する相対的な回転が許容された状態で掛合するように構成されている。
【発明の効果】
【0026】
本発明の一形態(段落0008)の車椅子装置によれば、車椅子の側方で駆動輪の車軸の延長線上に設けられた受け部に対して、取付体に設けられた掛け部が掛けられることにより、取付体を駆動輪の外側に装着することができる。掛け部および受け部が掛合した状態で、掛け部の駆動輪に対する相対的な回転が許容されることから、駆動輪の回転に対して、取付体を回転させることなく車軸の延長線上に保持することが可能である。すなわち、本発明の車椅子装置は、取付体を駆動輪の外側に装着するので、車椅子の着座者の着座空間を狭めることがない。また、本発明の車椅子装置は、着座者が着座姿勢を崩すことなく取付体に手が届き、その操作を安全かつ容易に行うことを可能とする。さらに、本発明の車椅子装置は、受け部および掛け部の掛合関係を利用して、取付体および車椅子の装着(取り付け)操作および離脱(取り外し)操作を容易に行うことを可能とする。したがって、本発明の車椅子装置は、ユーザーの安全性および利便性をより一層改善したものである。
【0027】
本発明のさらなる形態(段落0009)の車椅子装置によれば、上記発明の効果に加えて、受け部および掛け部が、掛合溝部内に掛合軸部が配置された吊り持ち状態で軸方向に離脱することなく、かつ、回転方向に摺動し得る。これにより、簡易な構造で取付体および車椅子を連結することができる。
【0028】
本発明のさらなる形態(段落0010)の車椅子装置によれば、上記発明の効果に加えて、取付体本体および掛け具の組み付け状態は、取付体を車椅子から離脱させた場合にのみ解除可能であることにより、車椅子の走行中に取付体が不意に脱落することを防止することができる。
【0029】
本発明のさらなる形態(段落0011)の車椅子装置によれば、上記発明の効果に加えて、車椅子の着座者が、着座姿勢を崩すことなく、車軸の上方に位置する把持部を把持しながら、取付体を移動させることで、受け部に掛け部を掛けた状態と、分離させた状態とに容易に変更可能である。
【0030】
本発明のさらなる形態(段落0012)の車椅子装置によれば、上記発明の効果に加えて、車椅子の着座者が、着座姿勢を崩すことなく、取付体を下方スライドおよび上方スライドするという簡単な操作で、取付体の車椅子への着脱が可能である。
【0031】
本発明のさらなる形態(段落0013)の車椅子装置によれば、上記発明の効果に加えて、取付体が車椅子に装着された状態で、取付体がハンドリムの径方向内側に収まるとともに、取付体の少なくとも一部がハンドリムの径方向内側に入り込むことにより、取付体が車椅子の着座者のハンドリムの操作を邪魔することなく、かつ、取付体の車椅子の車幅方向外側への突出量を減らすことができる。
【0032】
本発明のさらなる形態(段落0014)の車椅子装置によれば、上記発明の効果に加えて、一対の挟持体が駆動輪に固定されるで受け部を駆動輪の回転に追従して回転させる一方で、掛け部が、受け部に対して相対的に回転可能であるように受け部に掛けられることにより、簡易な構造で、駆動輪の回転に追従しないように取付体を装着することができる。
【0033】
本発明のさらなる形態(段落0015)の車椅子装置によれば、上記発明の効果に加えて、回避部により車軸を回避しつつ、第1結合部および第2結合部を用いて、第1挟持体および第2挟持体でスポークを挟み込んで受け具を駆動輪に固定することができる。
【0034】
本発明のさらなる形態(段落0016)の車椅子装置によれば、上記発明の効果に加えて、スポークの隙間を介して、複数の第1および第2結合部の組から一部または全部が選択されて結合部材により固定されることにより、スポークの間隔や太さ、施されたデザイン等に関わらず、受け具を駆動輪に固定することが可能である。また、車軸の端部の形状や太さが違う場合でも同様である。
【0035】
本発明のさらなる形態(段落0017)の車椅子装置によれば、上記発明の効果に加えて、凹溝を有する棒状の結合部材を用いたことにより、一体の挟持体を駆動輪に対して容易に着脱することが可能である。
【0036】
本発明のさらなる形態(段落0018)の車椅子装置によれば、上記発明の効果に加えて、第1挟持体の磁着部を車軸の端面に磁着することにより、挟持させる作業の際、第1挟持体を車軸に対して仮固定および位置合わせすることが可能である。
【0037】
本発明の一形態(段落0019)の車椅子によれば、車椅子の側方で駆動輪の車軸の延長線上に設けられた受け部に対して、取付体に設けられた掛け部が掛けられることにより、取付体を駆動輪の外側に装着することができる。掛け部および受け部が掛合した状態で、掛け部の駆動輪に対する相対的な回転が許容されることから、駆動輪の回転に対して、取付体を回転させることなく車軸の延長線上に保持することが可能である。そして、車椅子のユーザーの着座姿勢での操作によって取付体の着脱を可能とする位置において、取付体を装着可能である。すなわち、本発明の車椅子は、取付体を駆動輪の外側に装着するので、車椅子の着座者の着座空間を狭めることがない。また、本発明の車椅子は、着座者が着座姿勢を崩すことなく取付体に手が届き、その操作を安全かつ容易に行うことを可能とする。さらに、本発明の車椅子は、受け部および掛け部の掛合関係を利用して、取付体および車椅子の装着(取り付け)操作および離脱(取り外し)操作を容易に行うことを可能とする。したがって、本発明の車椅子は、ユーザーの安全性および利便性をより一層改善したものである。
【0038】
本発明の一形態(段落0020)の取付ユニットによれば、車椅子の側方で駆動輪の車軸の延長線上に設けられた受け部に対して、取付体本体に固定される掛け部が掛けられることにより、取付体本体を駆動輪の外側に装着することができる。掛け部および受け部が掛合した状態で、掛け部の駆動輪に対する相対的な回転が許容されることから、駆動輪の回転に対して、取付体本体を回転させることなく車軸の延長線上に保持することが可能である。さらに、掛け部は、受け部に対して上昇スライドすることにより掛合状態を解除可能に構成されている。すなわち、本発明の取付ユニットは、取付体本体を駆動輪の外側に装着するので、車椅子の着座者の着座空間を狭めることがない。また、本発明の取付ユニットは、着座者が着座姿勢を崩すことなく取付体本体に手が届き、その操作を安全かつ容易に行うことを可能とする。さらに、本発明の取付ユニットは、受け部および掛け部の掛合関係を利用して、取付体本体および車椅子の装着(取り付け)操作および離脱(取り外し)操作を容易に行うことを可能とする。特に、車椅子の着座者が、姿勢を崩すことなく、取付体本体を上方スライドするという簡単な操作で、取付体本体の車椅子からの取り外しが可能である。したがって、本発明の取付ユニットは、車椅子のユーザーの安全性および利便性をより一層改善したものである。
【0039】
本発明のさらなる形態(段落0021)の取付ユニットによれば、上記発明の効果に加えて、フランジにおける受け具および掛け具の対向面には、車軸を囲むように膨出した環状凸部が設けられ、環状凸部は、周方向に連続する円弧形状の断面を有する。すなわち、受け具および掛け具が接する箇所における接触面積を円弧断面の頂部のみに限定し、受け具および掛け具の間の摩擦力を軽減することができる。
【0040】
本発明のさらなる形態(段落0022)の取付ユニットによれば、上記発明の効果に加えて、背板が収納具の背面に沿って保持されることにより、収納具の一部が撓み変形等によって駆動輪の回転領域に入り込んで、回転する駆動輪に巻き込まれることを防止することができる。
【0041】
本発明のさらなる形態(段落0023)の取付ユニットによれば、上記発明の効果に加えて、複数の接合部のうちの選択した接合部を接合させることで、開口部を部分的に閉塞するとともに、開口縁の一部を弛ませて、自然状態の第1の開口形状と異なる第2の開口形状を維持可能である。このような開口縁の一部を弛ませて形成した第2の開口形状を用いることで、ペットボトルなどの縦長の物品を倒すことなく、取付体本体に収容することが可能になる。これにより、特定形状の物品のための追加の専用収納スペースを取付体本体に設ける必要がなくなり、取付体本体を多機能かつコンパクトな形態に保つことができる。
【0042】
本発明のさらなる形態(段落0024)の取付ユニットによれば、上記発明の効果に加えて、弛ませた開口縁が車幅方向の外側に膨らんでいることにより、物品を収容した取付体本体がバランスよく車椅子に吊り持ちされる。また、開口縁の一部を弛ませて形成した開口を介して物品が収容された際、物品とハンドリムとの間をできるだけ離隔させ、車椅子操作の邪魔になることを防ぐことができる。
【0043】
本発明の一形態(段落0025)の連結装置によれば、駆動輪の車軸の延長線上に設けられた受け部に対して、取付体本体に固定される掛け部が掛けられることにより、取付体本体を駆動輪の外側に装着することができる。掛け部および受け部が掛合した状態で、取付体本体の駆動輪に対する相対的な回転が許容されることから、駆動輪の回転に対して、取付体本体を回転させることなく車軸の延長線上に保持することが可能である。すなわち、本発明の連結装置は、取付体本体を駆動輪の外側に装着するので、駆動輪の内側の空間を狭めることがない。また、本発明の連結装置は、受け部および掛け部の掛合関係を利用して、取付体本体の駆動輪側方への装着(取り付け)操作および離脱(取り外し)操作を容易に行うことを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】本発明に係る一実施形態の車椅子装置の概略斜視図。
図2図1の車椅子装置の概略正面図。
図3図1の車椅子装置の概略側面図。
図4図1の車椅子装置の概略平面図。
図5図1の車椅子装置の分解斜視図。
図6図1の車椅子装置の車椅子の受け具近傍を示す部分拡大斜視図。
図7図1の車椅子装置の取付体を示す部分拡大斜視図。
図8】本発明に係る一実施形態の取付ユニットの分解斜視図。
図9図8の取付ユニットの受け具の概略斜視図。(結合した状態)
図10図9の受け具の(a)正面図、(b)左側面図および(c)右側面図。
図11図10の受け具のA-A断面図。
図12図8の取付ユニットの掛け具の概略斜視図。(結合した状態)
図13図12の掛け具の(a)正面図、(b)左側面図、(c)右側面図および(d)平面図。
図14図13の掛け具の(a)B-B断面図、および(b)C-C断面図
図15図8の取付ユニットの取付体本体(背板を含む)の概略斜視図。
図16図15の取付体本体の(a)正面図、(b)左側面図、(c)右側面図および(d)平面図。
図17図16の取付体本体の(a)D-D断面図、および(b)E-E断面図。(a1)および(a2)は、D-D断面図の要部拡大図である。
図18】本発明の一実施形態の取付体の概略断面図。(掛け具を本体に結合した図)
図19】本発明の一実施形態の車椅子装置の概略断面図。
図20図19の車椅子装置の受け部および掛け部の掛合状態を示す部分拡大縦断面図。
図21図19の車椅子装置の受け部および掛け部の掛合状態を示す部分拡大横断面図。
図22】本発明の一実施形態の車椅子装置において、取付体を車椅子に対して取り付けおよび取り外しする工程を示す模式図。
図23】本発明の取付体の応用例を示す模式図。
図24】本発明の取付体の応用例を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において参照する各図の形状は、好適な形状寸法を説明する上での概念図又は概略図であり、寸法比率等は実際の寸法比率とは必ずしも一致しない。つまり、本発明は、図面における寸法比率に限定されるものではない。
【0046】
本発明の一実施形態の車椅子装置100は、一対の駆動輪111,111を有する車椅子110、および、該車椅子110に装着される取付体130を備えてなる。ここで、本明細書において、車椅子110は、一般的な車椅子の形態を有する車椅子本体、および、該車椅子本体に固定された受け具120を含む構成を示す。取付体130は、鞄、バッグなどの収容機能を有する取付体本体131、任意で取付体本体131の背面に追加される背板135,および、取付体本体131に固定された掛け具140を含む構成を示す。取付ユニットは、受け具120、取付体本体131、(任意の)背板135、および掛け具140を含む構成を示し、一般的な車椅子本体に後付け可能である。連結装置は、受け具120および掛け具140を含む構成を示し、取付体本体131を一般的な車両(実施形態では、車椅子本体)に装着するための装置または機構である。なお、本実施形態では、取付体130は、上方に開口した鞄またはバッグとして例示されるが、本発明の取付体はこれに限定されない。
【0047】
図1は、本実施形態の車椅子装置100の概略斜視図である。図2は、車椅子装置100の概略側面図である。図3は、車椅子装置100の概略正面図である。図4は、車椅子装置100の概略正面図である。図5は、車椅子装置100の分解斜視図である。
【0048】
図1乃至図5に示すとおり、車椅子装置100を構成する車椅子110(または車椅子本体)は、一対の駆動輪111,111、および、各駆動輪111の回転中心となる車軸112,112を備える。各駆動輪111は、中心から放射状に複数延びるスポーク113を有する。また、各駆動輪111の外方には、円環状のハンドリム114が取着されている。ハンドリム114の径は、駆動輪111の径よりも小さい。車椅子110の着座者は、ハンドリム114を手で把持して回転操作することにより、車軸112を中心に駆動輪111を回転駆動し、車椅子110を前進または後退させることができる。
【0049】
本実施形態の車椅子装置100では、図1乃至図5に示すように、車椅子110の車幅方向の外側において、一対の駆動輪111,111のうちの一方の駆動輪111の車軸112の延長線上に取付体130が支持されている。特に、取付体130の取付体本体131は、上方に開口した収納具であり、その開口が車軸112の上側かつハンドリム114の径方向内側に位置する。収納具がこの位置で支持されていることにより、ユーザーが着座姿勢で収納具への物品の出し入れをすることが容易である。なお、本実施形態の車椅子装置100は、一方の駆動輪111にのみ取付体130を装着可能に構成されているが、両方の駆動輪111,111に取付体130を装着可能に構成されてもよい。
【0050】
また、取付体130が、車椅子110の車幅方向の外側に配置されることから、車椅子110の着座空間を圧迫したり、狭めたりすることがない。また、取付体130は、車椅子110に装着された状態で、駆動輪111の外側に設けられたハンドリム114と接触することなく、ハンドリム114外周の径方向内側に収まる寸法形状を有し、かつ、取付体130の厚み方向の一部がハンドリム114の径方向内側に入り込むように構成されている。ここでは、取付体130の一部である掛け具140がハンドリム114の径方向内側に入り込んでいる。なお、取付体130が薄い場合には、取付体130の全体がハンドリム114の径方向内側に入り込んでもよい。すなわち、車椅子装置100において、取付体130の車椅子110の車幅方向への突出量が抑えられており、かつ、装着された取付体130がハンドリム114の操作を邪魔することがない。
【0051】
図5に示すように、本実施形態の車椅子装置100では、車椅子110および取付体130は、連結装置(受け具120および掛け具140の装置)によって着脱可能に連結される。図6は、車椅子110の受け具120を示す車椅子110の外側から見た概略斜視図である。図6に示すように、受け具120は、車椅子110の駆動輪111の回転に追従して回転するように駆動輪111に一体的に固定されている。受け具120は、取付体130の掛け部141が掛けられる受け部123を有する。この受け部123は、車椅子110の車幅方向の外側に向けて車軸112の延長線上に配置されている。他方、図7は、取付体130の掛け具140を示す車椅子110の内側から見た概略斜視図である。掛け具140は、車椅子110の受け部123に掛けられる掛け部141を有している。掛け部141および受け部123は、掛け部141の駆動輪111に対する相対的な回転が許容された状態で掛合するように構成されている。これにより、駆動輪111の回転に追従して取付体130が回転しないように、取付体130を車椅子110の車軸112の延長線上に支持することができる。
【0052】
また、掛け部141は、受け部123に対して上昇スライドすることにより掛合状態を解除可能に構成されている。ユーザーは、取付体130を把持して、掛け部141を車軸112の延長線に沿って受け部123に近接移動させて、下方にスライドさせることにより、取付体130を車椅子110に対して掛けて取り付けることが可能である。取付体130が車椅子110に装着した状態では、その反対の軌道を描くように、ユーザーは、取付体130を把持して、上方にスライドさせ、掛け部141を受け部123から離間移動させることにより、取付体130を車椅子110から取り外すことが可能である。特には、取付体130の車軸112よりも上方に把持部133が配置されていることから、着座姿勢のユーザーでも把持部133に手が届き易く、取付体130の車椅子110への着脱操作が容易である。すなわち、車椅子装置100は、車椅子110のユーザーの着座姿勢での取付体130の操作によって取付体130の車椅子110への着脱を可能とする位置において、取付体130を装着している。
【0053】
本実施形態の車椅子装置100は、上述したような、車椅子110および取付体130の間の取り付けおよび取り外し操作を容易とすべく、一般的な車椅子本体に対して、取付ユニット(または連結装置)を導入したものである。以下、本実施形態の取付ユニットについて説明する。
【0054】
図8は、一実施形態の取付ユニットの分解斜視図である。取付ユニットは、車椅子110の一対の駆動輪111,111の(少なくとも)一方に装着されるように構成されている。図8に示すとおり、取付ユニットは、鞄やバッグなどの収納具である取付体本体131と、取付体本体131の背面に保持される背板135と、該取付体本体131に(背板135とともに)固定される掛け具140と、車椅子110の一方の駆動輪111に固定される受け具120と、を備えてなる。以下、取付ユニットの各構成要素について詳細に説明する。
【0055】
図8乃至図11を参照して、受け具120について説明する。本実施形態の受け具120は金属材料または硬質な合成樹脂材料から形成され得る。図9は、受け具120の概略斜視図である。図10(a)~(c)は、受け具120の正面図、左側面図および右側面図である。図11は、受け具120のA-A断面図である。
【0056】
受け具120は、円盤状のフランジ126を有する円筒体と、フランジ126の中心に突出形成された受け部123と、該円筒体の外周から径方向に延びる複数の延出片128とを備える。また、受け具120は、駆動輪111のスポーク113を車幅方向の内外に挟み込んで駆動輪111に固定される一対の挟持体121,122を組み合わせてなる。換言すれば、一対の挟持体121,122は、受け部123を車軸112先端に固定するための固定手段である。一対の挟持体121,122は、車軸112先端面およびスポーク113の車幅方向外側に配置される第1挟持体121、および、該第1挟持体121の車幅方向内側に配置される第2挟持体122からなる。なお、図9乃至図11では、第1挟持体121および第2挟持体122が、車椅子110の駆動輪111を省略した状態で組み付けられている。
【0057】
第1挟持体121のフランジ126の中心には、受け部123が形成されている。受け部123は、フランジ126中心から車軸方向(または車幅方向)の外側に向けて突出した掛合軸部124と、該掛合軸部124の先端で径方向外側に張り出す拡張部125とを有する。掛合軸部124は、円筒形状を有し、車軸112の延長線上に沿って直線的に延伸するように配置される。拡張部125は、掛合軸部124よりも大径の円筒状の張り出しとして形成された。
【0058】
第1挟持体121には、円盤状のフランジ126と、車幅方向外側を向くフランジ126外面から後退した位置で径方向外方に延びる複数(本実施形態では3つ)の延出片128とが設けられている。このフランジ126の外面は、受け具120および掛け具140の対向面をなしている。フランジ126の内面には、その中心に第1挟持体121を車軸112の先端面に磁着するための磁着部126aが設けられている。磁着部126aは、フランジ126の内面の環状のリブ内に嵌め込まれた永久磁石であり、第1挟持体121の車軸112への仮固定や位置合わせに用いられる。また、延出片128には、第2挟持体122に結合するための第1結合部121aが形成されている。第1結合部121aは、受け部123から離隔した部位に形成され、棒状の結合部材129(リベット)が結合される貫通孔である。
【0059】
また、フランジ126の掛合軸部124の周囲に切り欠きが形成されているとともに、フランジ126の外周近傍には、受け部123(車軸112)を囲むように外面から膨出した環状凸部127が設けられている。環状凸部127は、周方向に連続する円弧形状の断面を有する。後述するように、フランジ126外面のかわりに、環状凸部127が掛け具140の対向面に優先的に当接することになる。環状凸部127の頂部を掛け具140の対向面に当接させることにより、接触面積を線接触と同等となるように減少させ、受け具120および掛け具140間の摩擦力を軽減することができる。
【0060】
第2挟持体122は、第1挟持体121と対応する形状を有する平板からなる。第2挟持体122は、中央の円形部位と、円形部位から径方向外方に延びる複数(本実施形態では3つ)の延出片128とからなる。第2挟持体122側の複数の延出片128には、第1結合部121aに対応する位置に第2結合部122aが設けられている。第2結合部122aは、受け部123から離隔した部位に形成され、棒状の結合部材129(リベット)が結合される貫通孔である。すなわち、複数の第2結合部122aは、複数の第1結合部121aにそれぞれ合致するように配置されている。また、第2挟持体122の中央には、車軸112の通過を許容する回避部122bが切り欠き形成されている。回避部122bは、車軸112の外径に対応する中央の円形の切り欠きと、該円形部分から外周縁まで延びる直状の切り欠きとからなる。ここで、直状の切り欠きの幅は、円形の切り欠きの直径よりも小さい。
【0061】
図11に示すように、第1結合部121aおよび第2結合部122aの全ての組が合わさって、複数の結合部材129がこれらを貫通することによって、第1挟持体121および第2挟持体122が固定される。第1挟持体121と第2挟持体122との間には、フランジ126内面側に隙間が形成され、スポーク113から車幅方向外側に延び出る車軸112の先端部位を収容可能である。そして、延出片128において、第1挟持体121および第2挟持体122の内外面によってスポーク113が挟み込まれる一方で、結合部材129がスポーク113の隙間を介して、複数の結合部材129によって固定される。ここで、結合部材129は、軸方向に凹凸を有する弾性材料のリベットからなり、貫通孔である結合部121a,122aに押し込まれることによって結合されている。結合部材129の先端部129aが第1結合部121a内で圧縮変形し、凹溝129bに第2挟持体122の端縁が入り込んでいる。このため、結合部材129は、第1結合部121aから強い力で引き抜くことが可能である。すなわち、一対の挟持体121,122は、結合部材129から強制的に引き抜く方向に負荷をかけることで分離可能である。なお、スポーク113が一部の結合部121a,122aの組に干渉する場合には、全ての結合部121a,122aの組を用いる必要はなく、残りの結合部121a,122aの組だけを用いて結合部材129によって結合されてもよい。すなわち、本実施形態では、スポーク113の間隔や太さ、施されたデザイン等に関わらず、受け具120を駆動輪111に固定することが可能である。また、車軸112の端部の形状や太さが違う場合でも同様である。
【0062】
図8および図12乃至図14を参照して、掛け具140について説明する。本実施形態の掛け具140は金属材料または硬質な合成樹脂材料から形成され得る。図12(a)、(b)は、掛け具140の概略斜視図である。図13(a)~(d)は、掛け具140の正面図、左側面図、右側面図および平面図である。図14(a)、(b)は、掛け具140のB-B、C-C断面図である。
【0063】
掛け具140は、受け部123に掛けられる掛け部141と、取付体本体131に組み付けるための組み付け部143とを備える。掛け部141は、中空の筐体として形成され、車幅方向に対向する一対の側壁と、該一対の側壁を連結する周壁とを有し、該周壁の下面が開放されている。掛け部141は、下方から受け部123の拡張部125を内部空間に収容し、掛け部141内部での拡張部125の回転を許容する寸法形状を有する。
【0064】
また、掛け部141の受け部123側の側壁には、掛合溝部142が設けられている。掛合溝部142は、一方向(下方)に開放された上下方向に延びる切り欠きからなる。また、掛合溝部142は、その中央部から上端にかけて、受け部123の掛合軸部124を挿通可能であり、かつ、拡張部125を軸方向に係止可能な溝幅を有する。つまり、掛合溝部142の溝幅は、受け部123の掛合軸部124の径よりも大きく、拡張部125の径よりも小さい。また、掛合溝部142の上側の端面は、円弧状に湾曲している。掛合溝部142の円弧状端面は、掛合軸部124の円断面を有する外周面に摺接可能であり、これによって、掛け部141および受け部123が相対的な回転が許容された状態で掛合可能となる。他方、掛合溝部142は、下端近傍ではより幅広になるようにカーブしている。この掛合溝部142の裾広がりの湾曲形状は、掛合溝部142の開放端から受け部123を掛け部141内に導入する際、受け部123を掛合溝部142内の上側に滑らかにガイドするように作用する。すなわち、掛け部141および受け部123は、掛合溝部142内に掛合軸部124が配置された吊り持ち状態で、拡張部125の抜け止め作用により互いに軸方向に離脱することなく、かつ、回転方向に摺動するように構成されている。
【0065】
さらに、掛け部141の受け部123側の側壁には、シート材145が着設されている。シート材145は、U字形状の薄板からなり、掛け部141の側平表面に一体化されている。シート材145は、受け部123のフランジ126と、掛け部141の側壁との間に介在し、当接時の摩擦力を軽減したり、受け部123および掛け部141の衝突による衝撃から部材を保護したりするように機能する。シート材145は、例えば、高密度ポリエチレン(PE-HD)などの軽く衝撃に強い材質からなることが好ましい。
【0066】
掛け部141の取付体本体131側の側壁には、取付体本体131に組み付けられる円筒状の組み付け部143が突出形成されている。組み付け部143には、ビス148を挿通するためのビス孔が設けられている。そして、円板状の組み付け板147が、ビス148により組み付け部143に固定される。後述するとおり、取付体本体131の外装部134および背板135を、掛け部141の側壁と組み付け板147とで挟み込むことにより、掛け部141が取付体本体131に組み付けられる。
【0067】
図8および図15乃至図17を参照して、取付体本体131について説明する。図15(a)、(b)は、取付体本体131の概略斜視図である。図16(a)~(d)は、取付体本体131の正面図、左側面図、右側面図および平面図である。図17(a)、(b)は、取付体本体131のD-D、E-E断面図である。
【0068】
取付体本体131は、矩形状の鞄またはバッグとして、開口を介して内部に物品を収容可能な収納具である。取付体本体131は、内部に物品の収容空間を画定する、底部および該底部から立ち上がる環状の胴部からなり、自然状態で上方に完全に開口した開口部132を有する。開口部132は、矩形状の開口であり、自然状態でその開口形状が維持されている。また、取付体本体131の上部には、ユーザーが把持するための把手状の把持部133が設けられている。さらに、開口部132を形成する胴部の開口縁には、開口縁を綴じるための留め具136が設けられている。本実施形態では、取付体130は、布などの柔らかい可撓材料から選択されたが、自然状態で開口形状を維持可能とする張りのある材質であることが好ましい。しかしながら、取付体本体131は、合成樹脂、木材、金属等の硬質な板から構成されてもよい。
【0069】
取付体本体131は、車椅子110に装着される部位として胴部の背面を覆う外装部134を備える。外装部134は、掛け具140を組み付け可能であるとともに、背板135を一体的に保持するように構成されている。外装部134は、取付体本体131の胴部背面の外側に一体的に形成された外装体である。外装部134は、胴部背面の上縁および左右の側縁に接続され、下方に開放するスリットを開閉可能に形成する。つまり、外装部134は、胴部背面に下方に開閉可能な袋を形成するものである。また、外装部134には、掛け具140の筒状の組み付け部143を挿通可能な貫通部134aが形成されている。図17(a1)に示すように、貫通部134aは、補強のために孔周縁にかしめられたハトメを有している。そして、外装部134と胴部背面との間には、背板135を収容するための下方に開放され得る隙間が形成される。また、外装部134には、取付体本体131の底部位置から所定長さで延設された延設部位134bが形成されている。延設部位134bは、撓み変形可能であり、外装部134の基部(延設部位134b以外の部位)と胴部背面との間の隙間に自由に折り込まれるように構成されている。垂れ下がった状態の延設部位134bは、図8の取付体本体131に示されているとともに、図15乃至17では仮想線で示されている。つまり、延設部位134bが取付体本体131の底部から垂れ下がった状態では、隙間が下方に開放され、背板135を内挿するための挿通スリットが形成される。一方、延設部位134bの垂れ下がった状態での背面側には、面ファスナー134cが形成されている。図17(a2)に示すように、当該垂れ下がった延設部位134bが隙間内に折り込まれて、面ファスナー134cが胴部の背面に設けられた面ファスナー131bに接合されることにより、当該隙間の開口を閉塞することができる。車椅子110の走行操作などの通常使用時には、背板135下方の挿通スリットが延設部位134bにより閉塞され、メンテナンス等のため、背板135を取付体本体131に対して着脱する際に、延設部位134bが外部に引き出されて背板135下方のスリットが開放される。
【0070】
取付体130(または取付ユニット)は、図8および図17に示すように、取付体本体131の胴部の駆動輪111側を向く背面に沿って保持される背板135をさらに備える。背板135は、合成樹脂板や金属板などの硬質な矩形状の板材からなり、取付体本体131の胴部を補強し、また、その収納物を保護する補強板として機能し得る。背板135は、胴部背面と外装部134との間の隙間に収容されて保持されている。背板135の外形状(縦横寸法)は、胴部背面の外形状とほぼ一致する。つまり、背板135は、胴部背面の大部分を覆うのに十分な大きさの寸法形状を有し、収納具の駆動輪111の回転領域内への撓み変形を規制し得る。また、背板135には、掛け具140の筒状の組み付け部143を挿通可能な貫通部135aが形成されている。背板135が胴部背面に宛がわれて保持されたとき、背板135の貫通部135aと外装部134の貫通部134aとが連通する。
【0071】
図18は、取付体本体131および背板135に対して掛け具140が組み付けられた態様を示す取付体130の部分断面図である。図18に示すとおり、取付体130では、掛け部141の掛合溝部142が(取付体本体131の開口部132とは反対側の)下方向に開放されるように、掛け具140が位置合わせて取付体本体131に固定されている。より詳細には、図18に示すように、外装部134および背板135の貫通部134a、135aを掛け具140の組み付け部143が貫通し、組み付け部143の筒先端に組み付け板147がビス148で取着されている。つまり、組み付け板147および掛け部141によって、外装部134および背板135が挟み込まれることで、取付体本体131に掛け具140が組み付けられている。このように、取付体本体131の一部(外装部134)に対して掛け具140が一体化されているので、取付体本体131および掛け具140の組み付け状態は、取付体130を車椅子110から離脱させた場合にのみ解除可能である。
【0072】
以上の各構成要素の説明を踏まえて、図19乃至図21を参照して、車椅子装置100における車椅子110に取付体130が装着された形態について説明する。図19は、車椅子装置100を示す概略断面図である。図20および図21は、車椅子装置100における受け部123および掛け部141の掛合形態を示す概略断面図である。
【0073】
図19に示すように、取付体130の掛け部141が車軸112の延長線上に突出する受け部123に掛けられることにより、取付体130が車椅子110に吊り持ち状態で支持されている。つまり、受け具120が掛け具140を吊り持ち状態で支承することで、取付体130が車椅子110の駆動輪111(または車軸112)に対して連結されている。また、受け具120が駆動輪111に固定され、車軸112の延長線上(同軸上)に受け部123が位置決めされて固定されている。受け部123(掛合軸部124および拡張部125)は、駆動輪111の回転に追従して車軸112を中心に回転するように構成されている。そして、掛け部141および受け部123が、掛け部141の駆動輪111に対する相対的な回転が許容された状態で掛合することで、車椅子110の走行により駆動輪111が回転したときに、支持された取付体130(または取付体本体131)が追従して回転することが抑えられている。つまり、車椅子110の走行時においても、取付体130の姿勢が維持される。
【0074】
より詳細には、図20および図21に示すとおり、受け部123の掛合軸部124が掛け部141の掛合溝部142を貫通し、掛合軸部124先端の拡張部125が掛け部141の筐体内部に配置されている。そして、受け部123の掛合軸部124の上に掛け部141が載置されている。このとき、掛合軸部124の上方を向く外周面と、掛け部141の掛合溝部142の下方を向く上部端面とが当接している。つまり、内部に物品を任意に収納する取付体130の荷重を、受け部123の掛合軸部124が支えている。取付体130の支持高さが車軸112と同じ高さであるので、重心が下がり、重量物を支持したとしてもバランスが悪くなりにくい。掛合軸部124の外周面および掛合溝部142の上部端面は、ともに円弧形状を有するので、互いに摺動可能に当接(摺接)し、相対的な回転が許容される。すなわち、受け部123および掛け部141は、掛合溝部142内に掛合軸部124が配置された吊り持ち状態で、拡張部125が抜け止めとして作用して互いに軸方向に離脱することなく、かつ、回転方向に摺動するように掛合している。また、受け部123および掛け部141が掛合した状態で、掛け具140のシート材145が、受け具120のフランジ126外面に対面している。車椅子110の走行時に取付体130が傾動して、受け具120および掛け具140が当接したときに、受け具120のフランジ126から突出した環状凸部127の円弧頂面をシート材145に優先的に当接させることができる。これにより、受け具120および掛け具140間の接触面積を出来るだけ減らし、受け部123および掛け部141間の滑らかな相対回転を阻害し得る摩擦力の発生を軽減している。
【0075】
続いて、図22を参照して、車椅子装置100において、取付体130を車椅子110に対して取り付けおよび取り外しする工程を説明する。
【0076】
まず、取付体130を車椅子110に装着するには、まず、ユーザーが取付体130の把持部133を掴み、取付体130背面の掛け具140が車軸112の上方に位置するように取付体130を持ち上げて、車椅子110の駆動輪111に近付ける。そして、取付体130の背面がスポーク113に十分に近接した位置から、取付体130を下方にスライドさせることにより(図22の装着方向の矢印参照)、受け部123および掛け部141の間に掛合状態を形成し、取付体130を車椅子110に掛けることができる。このように、取付体130を車椅子110の車軸112先端の突起に掛けるという簡単な操作により、取付体130を車椅子110に装着することができる。そして、取付体130を車椅子110に取り付ける際の最終的な把持部133の位置が、ハンドリム114直下の着座者の手が比較的届きやすいところにあることから、取り付け操作は、ユーザーが車椅子110に着座したまま、その着座姿勢をほとんど崩さずに行うことができる。
【0077】
次に、取付体130を車椅子110から離脱させるには、ユーザーが車椅子110に掛けられた取付体130の把持部133を掴んで、取付体130背面の掛け具140が車軸112の上方に位置するまで取付体130を上方にスライドさせるように持ち上げる。これにより、受け部123および掛け部141の間の掛合状態を解除することができる。そして、取付体130を上方向または車軸方向外側に移動させることにより(図22の離脱方向の矢印参照)、受け部123が掛け部141から離脱し、取付体130を車椅子110から取り外すことができる。このように、取付体130を車椅子110の車軸112先端の突起に対して持ち上げるという簡単な操作により、取付体130を車椅子110から取り外すことができる。そして、取付体130が車椅子110に装着された状態で、取付体130の把持部133の位置が、ハンドリム114直下の着座者の手が比較的届きやすいところにあることから、取り外し操作は、ユーザーが車椅子110に着座したまま、その着座姿勢をほとんど崩さずに行うことができる。
【0078】
以下、本発明に係る一実施形態の車椅子装置100における作用効果について説明する。
【0079】
本実施形態の車椅子装置100によれば、車椅子110の側方で駆動輪111の車軸112の延長線上に設けられた受け部123に対して、取付体130に設けられた掛け部141が掛けられることにより、取付体130を駆動輪111の外側に装着することができる。掛け部141および受け部123が掛合した状態で、駆動輪111の回転に追従して回転する受け部123に対する掛け部141の相対的な回転が許容されることから、駆動輪111の回転に対して、取付体130を回転させることなく車軸112の延長線上に保持することが可能である。すなわち、本実施形態の車椅子装置100は、取付体130を駆動輪111の外側に装着するので、車椅子110の着座者の着座空間を狭めることがない。また、車椅子装置100は、着座者が着座姿勢を崩すことなく取付体130に手が届き、その操作を安全かつ容易に行うことを可能とする。さらに、車椅子装置100は、受け部123および掛け部141の掛合関係を利用して、取付体130および車椅子110の装着(取り付け)操作および離脱(取り外し)操作を容易に行うことを可能とする。
【0080】
図23および図24は、本実施形態の取付体本体131の応用例として収納具231、331を示している。すなわち、上述の取付体本体131の収納具部分に代えて、収納具231、331が採用されてもよい。
【0081】
図23に示す収納具(取付体本体)231は、底部および該底部から立設し、底部の反対側に開口部232を有する環状の胴部を備える。そして、開口部232を介して物品を収容する収容空間を内部に形成する。開口部232は、完全に開口した自然状態の第1の開口形状を有する。そして、胴部内面の対向する部位同士を着脱自在に接合する接合部237が、胴部の開口縁に沿って複数箇所に形成されている。接合部237は、磁石、スナップボタン、スナップリング、面ファスナーなどの任意の接合手段から選択され得る。
【0082】
当該収納具231において、胴部の開口縁の5箇所に接合部237a~eが設けられている。図23(a)、(b)に示す自然状態の第1の開口形状を有する開口部232では、対向する接合部231c,231dが対をなし、接合部231c,231d同士を接合することで、開口部232を閉鎖することができる。一方で、図23(c)~(d)に示すように、複数の接合部237a~eのうちの任意に選択した接合部237を接合させることで、開口部232を部分的に閉塞するとともに、開口縁の一部を弛ませて、自然状態の第1の開口形状と異なる弛んだ第2の開口形状238を維持可能である。換言すると、自然状態における開口部232の対向部位を開口縁周りにずらし、開口縁をずらした状態で対向する接合部231b,231eの対(ずれ状態接合部の対という)、および、接合部231c,231dの対を結合することにより、当該ずれ状態を維持することができる。本実施形態では、接合部231c,231dの対が、自然状態接合部およびずれ状態接合部で兼用される。また、図23(e)に示すように、胴部の下側を変形させた形状が維持されてもよい。
【0083】
このように収納具231の形状を自在に変形させて、開口縁の一部を弛ませて形成した第2の開口形状238を用いることで、ペットボトルなどの縦長の物品を倒すことなく、収納具に収容することが可能であり、便利である。また、ペットボトル専用の追加の収納スペースを収納具に設ける必要がなくなり、収納具を多機能かつコンパクトな形態に保つことができる。
【0084】
図24に示す収納具331は、図23の収納具231の一部変形例を示している。図24の収納具331は、胴部の一部にマチが形成されたものである。すなわち、収納具331では、胴部は、対面する前胴部および後胴部が胴マチによって接続されて環状をなしている。図24(a)、(b)に示すように、自然状態の第1の開口形状を有する開口部332では、対向する接合部337a,337e、および、接合部337d,337fが対をなし、これら接合部対を接合することで、開口部332を閉鎖することができる。そして、図24(c)、(d)に示すように、自然状態における開口部332の対向部位を開口縁周りにずらし、開口縁をずらした状態で対向する接合部337b,337eの対、および、接合部337c,337fの対を結合することにより、当該ずれ状態を維持することができる。すなわち、選択した一部の接合部337を接合することにより、同様に、自然状態の第1の開口形状とは異なる弛んだ第2の開口形状338を維持可能である。さらに、胴マチの一部を前胴部内面および後胴部内面に対向させて、選択した接合部337同士を接合したことにより、自然状態の開口部332の実質有効開口面積の周長よりも拡張した状態を、接合部337で維持可能である。
【0085】
また、ずれ状態接合部の対の選択は、図23および図24に示すように、弛ませた開口縁が車幅方向の外側に膨らむようになされることが好ましい。弛ませた開口縁が車幅方向の外側に膨らんでいることにより、物品を収容した収納具231,331がバランスよく車椅子に吊り持ちされる。また、開口縁の一部を弛ませて形成した開口を介して縦長物品が収容された際、縦長物品の上部(例えば、ペットボトルの飲み口)とハンドリムとの間をできるだけ離隔させ、車椅子操作の邪魔になることを防ぐことができる。
【0086】
また、図示しないが、胴部の対向する両側面に、両端が連結された持ち手が設けられ、接合部のうちの少なくとも1つが持ち手の両端連結箇所に設けられてもよい。このように形成された収納具は丈夫であるという利点を有する。
【0087】
本発明は、上記実施形態に限定されず、種々の実施形態や変形例を取り得る。以下、本発明の複数の変形例を説明する。
【0088】
(1)本発明の車椅子装置は、上記実施形態に限定されず、種々の形態を取り得る。上記実施形態では、車椅子側の受け部に掛合軸部および拡張部が設けられ、取付体側の掛け部に掛合溝部が設けられたが、受け部および掛け部の構造が入れ替わってもよい。
【0089】
(2)本発明の車椅子装置は、上記実施形態に限定されず、種々の形態を取り得る。上記実施形態では、取付体本体および背板に対して、掛け具が組み付けられたが、組み付け形態は変更されてもよい。例えば、背板のみに掛け具が組み付けられ、取付体背面に背板が種々の組み付け手段(磁石、面ファスナー、リベット、接着剤等)により接合されてもよい。また、背板を省略し、取付体背面に掛け具が一体的に組み付けられてもよい。そして、組み付け手段は、磁石、面ファスナー、リベット、スナップボタン、スナップリング、接着剤等の任意の接続手段から選択されてもよい。
【0090】
(3)本発明の車椅子装置は、上記実施形態に限定されず、種々の形態を取り得る。上記実施形態では、掛合溝は、下方に開放された溝からなるが、掛合軸部と掛合可能な任意な形状に変更されてもよい。例えば、掛合溝部は、上記実施形態とは反対に、車椅子側の受け具に形成された場合、上方に開放された溝であってもよい。また、掛合溝部は、いずれか一方向に開放された、U字やL字形状の溝であってもよい。また、掛合溝部は、拡張部よりも幅広の溝部分を有し、掛合軸部を内部に導入可能であれば、開放されていなくてもよい。
【0091】
(4)本発明の車椅子装置は、上記実施形態に限定されず、種々の形態を取り得る。上記実施形態の連結装置では、受け具(受け部)および掛け具(掛け部)が相対的に回転可能に掛合したが、本発明の連結装置はこれに限定されない。連結装置は、取付体本体が駆動輪に対して相対的に回転可能な他の形態を取り得る。例えば、受け部が駆動輪に対して相対的に回転可能であってもよい。一例として、受け部の掛合軸部がフランジに対して回転可能に保持される構造をとってもよい。また、取付体本体が掛け部に対して相対的に回転可能であってもよい。掛け部および受け部が駆動輪の回転に追従して同時に回転した場合であっても、取付体本体が回転することが防止される。
【0092】
(5)本発明の車椅子装置は、上記実施形態に限定されず、種々の形態を取り得る。上記実施形態では、取付体本体は、鞄やバッグのような収納具であったが、他の部材から選択されてもよい。例えば、着座者の膝の上に架け渡される車椅子用のテーブルなどであってもよい。
【0093】
(6)本発明の連結装置は、車椅子以外の他の車両に導入されてもよい。
【0094】
本発明は上述した実施形態や変形例に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限りにおいて種々の態様で実施しうるものである。
【符号の説明】
【0095】
100 車椅子装置
110 車椅子
111 駆動輪
112 車軸
113 スポーク
114 ハンドリム
120 受け具
121 第1挟持体
121a 第1結合部
122 第2挟持体
122a 第2結合部
122b 回避部
123 受け部
124 掛合軸部
125 拡張部
126 フランジ
126a 磁着部
127 環状凸部
128 延出片
129 結合部材
129a 先端部
129b 凹溝
130 取付体
131 取付体本体
131a 面ファスナー
132 開口部
133 把持部
134 外装部
134a 貫通部
134b 延設部位
134c 面ファスナー
135 背板
135a 貫通部
136 留め具
140 掛け具
141 掛け部
142 掛合溝部
143 組み付け部(組み付け手段)
145 シート材
147 組み付け板(組み付け手段)
148 ビス(組み付け手段)
237 接合部
238 第2の開口形状
図1
図2
図3
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図5
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図10
図11
図12
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図17
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図20
図21
図22
図23
図24