(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】記録装置、キャリッジ装置、制御方法、記憶媒体及びプログラム
(51)【国際特許分類】
B41J 19/18 20060101AFI20241004BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
B41J19/18 F
B41J2/01 303
B41J2/01 401
(21)【出願番号】P 2021081835
(22)【出願日】2021-05-13
【審査請求日】2023-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿部 智仁
(72)【発明者】
【氏名】飯村 研太
(72)【発明者】
【氏名】廣川 吉之介
(72)【発明者】
【氏名】藤掛 聴
(72)【発明者】
【氏名】山口 敏明
(72)【発明者】
【氏名】黒沼 大悟
(72)【発明者】
【氏名】長島 匡和
(72)【発明者】
【氏名】和田 直晃
(72)【発明者】
【氏名】丸山 遼平
(72)【発明者】
【氏名】野澤 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】米山 洋正
【審査官】牧島 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-270180(JP,A)
【文献】特開2005-186591(JP,A)
【文献】特開2005-224954(JP,A)
【文献】特開2011-176901(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0066750(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 19/18
B41J 2/01 - 2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に記録を行う記録手段を搭載するキャリッジと、
前記キャリッジを記録媒体の幅方向において往復移動させるためのベルトと、
前記幅方向の一方で前記ベルトを駆動するための第一のモータと、
前記幅方向の他方で前記ベルトを駆動するための第二のモータと、
前記第一のモータと前記第二のモータとを制御する制御手段と、
を備えた記録装置であって、
前記制御手段は、
前記キャリッジが停止した状態から、前記第一のモータを駆動して前記キャリッジを
前記幅方向における前記第一のモータの側から前記第二のモータの側へ移動する第一の制御を実行し、
前記キャリッジが停止した状態から、前記第二のモータを駆動して前記キャリッジを前記幅方向における前記第二のモータの側から前記第一のモータの側へ移動する第二の制御を実行し、
前記第一の制御において前記第二のモータの出力は、前記第一のモータよりも低い第一の状態から前記第一の状態よりも高い第二の状態に制御され
、
前記第二の制御において前記第一のモータの出力は、前記第二のモータよりも低い第三の状態から前記第三の状態よりも高い第四の状態に制御される、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項2】
請求項
1に記載の記録装置であって、
前記第一の状態とは、前記第二のモータを駆動しない状態である、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項3】
請求項
1又は請求項2に記載の記録装置であって、
前記第三の状態とは、前記第一のモータを駆動しない状態である、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項
3のいずれか一項に記載の記録装置であって、
前記第一の制御は、前記キャリッジを所定の速度まで加速して、該所定の速度で前記キャリッジを移動する制御であり、
前記第一の制御において前記第二のモータの出力は、前記キャリッジを前記所定の速度に加速するまでに、前記第一の状態から前記第二の状態に制御される、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項5】
請求項
1乃至請求項4のいずれか一項に記載の記録装置であって、
前記第二の制御は、前記キャリッジを所定の速度まで加速して、該所定の速度で前記キャリッジを移動する制御であり、
前記第二の制御において前記第一のモータの出力は、前記キャリッジを前記所定の速度に加速するまでに、前記第三の状態から前記第四の状態に制御される、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項6】
請求項
4に記載の記録装置であって、
前記第一の制御において前記第二のモータの出力は、前記キャリッジが前記所定の速度よりも低い閾値速度に達した場合に、前記第一の状態から前記第二の状態に制御される、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項7】
請求項
5に記載の記録装置であって、
前記第二の制御において前記第一のモータの出力は、前記キャリッジが前記所定の速度よりも低い閾値速度に達した場合に、前記第三の状態から前記第四の状態に制御される、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項8】
請求項
4に記載の記録装置であって、
前記第一の制御は、前記所定の速度で前記キャリッジを移動した後、減速して停止する制御であり、
前記第一の制御において前記キャリッジの減速を開始してから停止するまでに、前記第二のモータの出力は、前記第一のモータよりも低い状態に制御される、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項9】
請求項
5に記載の記録装置であって、
前記第二の制御は、前記所定の速度で前記キャリッジを移動した後、減速して停止する制御であり、
前記第二の制御において前記キャリッジの減速を開始してから停止するまでに、前記第一のモータの出力は、前記第二のモータよりも低い状態に制御される、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項10】
請求項
8に記載の記録装置であって、
前記低い状態とは、前記第二のモータを駆動しない状態である、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項11】
請求項
9に記載の記録装置であって、
前記低い状態とは、前記第一のモータを駆動しない状態である、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項12】
請求項1乃至請求項
11のいずれか一項に記載の記録装置であって、
前記第一のモータと前記第二のモータとは、
性能及び特性が同じ製品のモータである、
ことを特徴とする記録装置。
【請求項13】
記録媒体に記録を行う記録手段を搭載するキャリッジと、
前記キャリッジを記録媒体の幅方向において往復移動させるためのベルトと、
前記幅方向の一方で前記ベルトを駆動するための第一のモータと、
前記幅方向の他方で前記ベルトを駆動するための第二のモータと、
前記第一のモータと前記第二のモータとを制御する制御手段と、
を備えたキャリッジ装置であって、
前記制御手段は、
前記キャリッジが停止した状態から、前記第一のモータを駆動して前記キャリッジを
前記幅方向における前記第一のモータの側から前記第二のモータの側へ移動する第一の制御を実行し、
前記キャリッジが停止した状態から、前記第二のモータを駆動して前記キャリッジを前記幅方向における前記第二のモータの側から前記第一のモータの側へ移動する第二の制御を実行し、
前記第一の制御において前記第二のモータの出力は、前記第一のモータよりも低い第一の状態から前記第一の状態よりも高い第二の状態に制御さ
れ、
前記第二の制御において前記第一のモータの出力は、前記第二のモータよりも低い第三の状態から前記第三の状態よりも高い第四の状態に制御される、
ことを特徴とするキャリッジ装置。
【請求項14】
記録媒体に記録を行う記録手段を搭載するキャリッジと、
前記キャリッジを記録媒体の幅方向において往復移動させるためのベルトと、
前記幅方向の一方で前記ベルトを駆動するための第一のモータと、
前記幅方向の他方で前記ベルトを駆動するための第二のモータと、
を備えた記録装置の制御方法であって、
前記キャリッジが停止した状態から、前記第一のモータを駆動して前記キャリッジを
前記幅方向における前記第一のモータの側から前記第二のモータの側へ移動する第一の制御を実行し、
前記キャリッジが停止した状態から、前記第二のモータを駆動して前記キャリッジを前記幅方向における前記第二のモータの側から前記第一のモータの側へ移動する第二の制御を実行し、
前記第一の制御において前記第二のモータの出力は、前記第一のモータよりも低い第一の状態から前記第一の状態よりも高い第二の状態に制御さ
れ、
前記第二の制御において前記第一のモータの出力は、前記第二のモータよりも低い第三の状態から前記第三の状態よりも高い第四の状態に制御される、
ことを特徴とする制御方法。
【請求項15】
記録媒体に記録を行う記録手段を搭載するキャリッジと、
前記キャリッジを記録媒体の幅方向において往復移動させるためのベルトと、
前記幅方向の一方で前記ベルトを駆動するための第一のモータと、
前記幅方向の他方で前記ベルトを駆動するための第二のモータと、
を備えた記録装置の制御方法をコンピュータに実行させるプログラムを記憶した記憶媒体であって、
前記制御方法は、
前記キャリッジが停止した状態から、前記第一のモータを駆動して前記キャリッジを
前記幅方向における前記第一のモータの側から前記第二のモータの側へ移動する第一の制御を実行し、
前記キャリッジが停止した状態から、前記第二のモータを駆動して前記キャリッジを前記幅方向における前記第二のモータの側から前記第一のモータの側へ移動する第二の制御を実行し、
前記第一の制御において前記第二のモータの出力は、前記第一のモータよりも低い第一の状態から前記第一の状態よりも高い第二の状態に制御さ
れ、
前記第二の制御において前記第一のモータの出力は、前記第二のモータよりも低い第三の状態から前記第三の状態よりも高い第四の状態に制御される、
ことを特徴とする記憶媒体。
【請求項16】
記録媒体に記録を行う記録手段を搭載するキャリッジと、
前記キャリッジを記録媒体の幅方向において往復移動させるためのベルトと、
前記幅方向の一方で前記ベルトを駆動するための第一のモータと、
前記幅方向の他方で前記ベルトを駆動するための第二のモータと、
を備えた記録装置の制御方法をコンピュータに実行させるプログラムであって、
前記制御方法は、
前記キャリッジが停止した状態から、前記第一のモータを駆動して前記キャリッジを
前記幅方向における前記第一のモータの側から前記第二のモータの側へ移動する第一の制御を実行し、
前記キャリッジが停止した状態から、前記第二のモータを駆動して前記キャリッジを前記幅方向における前記第二のモータの側から前記第一のモータの側へ移動する第二の制御を実行し、
前記第一の制御において前記第二のモータの出力は、前記第一のモータよりも低い第一の状態から前記第一の状態よりも高い第二の状態に制御さ
れ、
前記第二の制御において前記第一のモータの出力は、前記第二のモータよりも低い第三の状態から前記第三の状態よりも高い第四の状態に制御される、
ことを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
記録ヘッドを搭載したキャリッジを移動しながら記録ヘッドからインクを吐出することにより、紙などの記録媒体に記録を行う記録装置が知られている。こうした記録装置では、記録の高生産性および高画質化の要求が年々高まっている。このため、記録ヘッドは長尺化や超密化の傾向によってヘッド重量が増加する一方、キャリッジの高速移動及び位置精度の向上が求められている。
【0003】
キャリッジの駆動方法としては、無端のベルト(タイミングベルト)にキャリッジを連結し、モータの駆動力によってベルトを走行させることでキャリッジを移動する方式が知られている。キャリッジの高速移動化のために、高出力の大型モータを採用することが考えられるが、高出力の大型モータは市場流通規模が小さく、コストが高い。特許文献1には、ベルトを走行させる2つのプーリの一方をステッピングモータで、他方を直流モータで回転させる装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
キャリッジの移動の際、ベルトに一時的に弛みが発生する場合がある。この弛みは、キャリッジの動作を不安定にする場合がある。
【0006】
本発明は、ベルトの弛みを解消してキャリッジの動作安定性を向上する技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、
記録媒体に記録を行う記録手段を搭載するキャリッジと、
前記キャリッジを記録媒体の幅方向において往復移動させるためのベルトと、
前記幅方向の一方で前記ベルトを駆動するための第一のモータと、
前記幅方向の他方で前記ベルトを駆動するための第二のモータと、
前記第一のモータと前記第二のモータとを制御する制御手段と、
を備えた記録装置であって、
前記制御手段は、
前記キャリッジが停止した状態から、前記第一のモータを駆動して前記キャリッジを前記幅方向における前記第一のモータの側から前記第二のモータの側へ移動する第一の制御を実行し、
前記キャリッジが停止した状態から、前記第二のモータを駆動して前記キャリッジを前記幅方向における前記第二のモータの側から前記第一のモータの側へ移動する第二の制御を実行し、
前記第一の制御において前記第二のモータの出力は、前記第一のモータよりも低い第一の状態から前記第一の状態よりも高い第二の状態に制御され、
前記第二の制御において前記第一のモータの出力は、前記第二のモータよりも低い第三の状態から前記第三の状態よりも高い第四の状態に制御される、
ことを特徴とする記録装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ベルトの弛みを解消してキャリッジの動作安定性を向上する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る記録装置の斜視図。
【
図3】(A)は
図1の記録装置の制御装置のブロック図、(B)はPWM制御の説明図。
【
図4】(A)及び(B)はキャリッジの往復移動態様の例を示す図。
【
図5】(A)はキャリッジの位置に対する目標速度を示す図、(B)はキャリッジモータの回転数-トルク特性を示す図。
【
図6】キャリッジの往路移動時の移動制御の例を示すフローチャート。
【
図7】(A)~(D)は往路移動時のキャリッジの動作説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0011】
<記録装置の概要>
図1は本実施形態における記録装置1の斜視図、
図2は記録装置1の平面図である。図中、矢印Yは記録装置1の幅方向(左右方向)を示し、Lは左側、Rは右側を示す。矢印Xは記録装置1の奥行き方向(前後方向)を示し、Fは前側、Bは後側を示す。矢印Zは上下方向を示す。本実施形態では、記録媒体にインクを吐出して記録を行うシリアル型のインクジェット記録装置に本発明を適用した場合について説明するが、本発明は他の形式の記録装置にも適用可能である。
【0012】
なお、「記録」には、文字、図形等有意の情報を形成する場合のみならず、有意無意を問わず、広く記録媒体上に画像、模様、パターン等を形成する、又は媒体の加工を行う場合も含まれ、人間が視覚で知覚し得るように顕在化したものであるか否かを問わない。また、本実施形態では記録対象である「記録媒体」としてシート状の紙を想定するが、シート状の布、プラスチック・フィルム等であってもよい。
【0013】
記録装置1は、給送ユニット4を備える。給送ユニット4は記録装置1の内部に給送される記録媒体を保持する。本実施形態では記録媒体としてロールシート100が用いられる。しかし、記録媒体はカットシートであってもよい。ロールシート100は、筒状の芯材にシートがロール状に巻かれたものである。ロールシート100は例えばX方向に10~60インチの幅を有する。
【0014】
記録装置1は、搬送ユニット7を備える。搬送ユニット7は搬送ローラ70と、搬送ローラ70に圧接されるピンチローラ71とを含む、シートの搬送機構である。ロールシート100から引き出されたシートは、X方向で後側に送り出され、その後前側に折り返されて搬送ユニット7に到達する。そして、搬送ユニット7の搬送ローラ70とピンチローラ71とに挟持されてプラテン10上をX方向で前側に搬送される。
【0015】
記録装置1は、搬送ユニット7によってプラテン10上に搬送されるシートにインクを吐出して画像を記録する記録ヘッド2を備える。記録ヘッド2はインクを吐出する複数のノズルを備える。各ノズルには、電力の供給によりインクを吐出するエネルギを発生するエネルギ素子が配置されている。エネルギ素子は例えばヒータ等の電気-熱変換素子やピエゾ素子等の電気-圧力変換素子である。記録ヘッド2は異なる種類のインク(例えば、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロ(Y)といった複数色のインク)を吐出可能であり、ノズルはインクの種類毎に複数形成される。
【0016】
記録ヘッド2には、インク収容部5からインクが供給される。インク収容部5はインクの種類毎にタンクを有し、タンクにはインクが貯留される。インク収容部5からインクは、チェーンリンク5aで支持される可撓性チューブ(不図示)を介して記録ヘッド2に供給される。
【0017】
記録ヘッド2はキャリッジ3に搭載されており、記録装置1は以下に説明するキャリッジ装置を備えている。キャリッジ3は駆動ユニット6によって記録媒体の幅方向(Y方向)に移動される。駆動ユニット6は、Y方向に平行に延設されたガイドレール63及び64を備える。キャリッジ3はガイドレール63、64と係合し、そのY方向の移動を案内される。駆動ユニット6は、複数の回転部材の例としてプーリ60R、60Lを含む。プーリ60R、60LはY方向に離間しており、同じ仕様(外径、重量等)を有している。プーリ60R、60Lには、無端ベルトの例であるタイミングベルト62が巻き回されている。キャリッジ3はタイミングベルト62に連結されている。
【0018】
駆動ユニット6は、キャリッジモータ61R、61Lを含む。キャリッジモータ61RはY方向の一方でタイミングベルト62を駆動するためのモータであり、プーリ60Rを回転させる駆動源である。キャリッジモータ61LはY方向の他方でタイミングベルト62を駆動するためのモータであり、プーリ60Lを回転させる駆動源である。本実施形態では、キャリッジモータ61Rはその出力軸にプーリ60Rが接続されてプーリ60Rを直接回転させる構成であるが、減速機を介して回転させる構成であってもよい。同様にキャリッジモータ61Lはその出力軸にプーリ60Lが接続されてプーリ60Lを直接回転させる構成であるが、減速機を介して回転させる構成であってもよい。キャリッジモータ61R、61Lは例えばブラシレスDCモータであり、本実施形態の場合、同じ製品が用いられる。したがって、キャリッジモータ61R、61Lの駆動時の性能や特性は同じである。
【0019】
キャリッジモータ61R、61Lの一方又は双方を駆動してタイミングベルト62を走行させることで、キャリッジ3を移動することができる。また、キャリッジモータ61R、61Lの回転方向を切り替えることで、キャリッジ3をY方向に往復させることができる。本実施形態の場合、2つのキャリッジモータ61R、61Lの出力でキャリッジ3を移動させることができ、1つのキャリッジモータで駆動させるよりも出力を大きくすることができる。したがって、キャリッジ3が高重量であっても、より高速で移動させることができる。
【0020】
キャリッジ3にはエンコーダセンサ9が搭載されている。エンコーダセンサ9は、Y方向に延設されたリニアスケール(エンコーダスケール)8を読み取ってキャリッジ3のY方向の位置を示す信号を出力する。リニアスケール8は、例えば、Y方向に予め定めた一定の間隔で繰り返し形成された透過部と遮光部とを有する。エンコーダセンサ9は、例えば発光部と受光部とを備えた光センサであり、透過部と遮光部とによって異なる受光部の受光結果を検知信号として出力する。
【0021】
キャリッジ3がY方向に移動すると、エンコーダセンサ9によってパルス状の信号を得られる。パルス数をカウントすることでキャリッジ3のY方向の位置を演算することができる。また、単位時間当たりのパルス数からキャリッジ3の移動速度を演算することができる。例えば、リニアスケール8の透過部と遮光部とが1インチあたり150周期で繰り返すスケールであると想定する。キャリッジが1/150インチ移動するたびに、エンコーダセンサ9によって1パルスの信号が得られる。500μsの時間で、パルス数を3つカウントしたとき、キャリッジ3の速度vは、v=(3/150 inch)/500μs=40ipsと演算することができる。
【0022】
記録動作においては、シートを搬送ユニット7によって間欠的に搬送する(ステップ搬送)。シートの搬送停止中にキャリッジ3を主走査方向(Y方向)に移動させつつ、記録ヘッド2からシート上にインクを吐出する(記録走査)。1走査分の記録が終わると、搬送ユニット7によってシートを所定量、副走査方向(主走査方向と直交する方向)に搬送する。そして記録走査を行う。記録走査とシートのステップ搬送とを繰り返すことでシート上に画像が記録される。画像の記録が完了したシートは、不図示のカッタ機構により切断される。
【0023】
<制御装置>
図3(A)を参照して記録装置1の制御装置11について説明する。制御装置11は、少なくとも一つのプロセッサと、少なくとも一つの記憶デバイスとを備え、プロセッサが記憶デバイスに記憶されたプログラムを実行する回路である。本実施形態の制御装置11は、主制御部20と、搬送制御部24と、記録制御部25とを備える。主制御部20は、ホスト装置200から画像データとその記録指示を受信し、記録動作を実行する。
【0024】
主制御部20は、処理部21、記憶部22、インタフェース部(I/F部)23を備え、記録装置1の全体を制御する。処理部21はCPUに代表されるプロセッサであり、記憶部22に記憶されたプログラムを実行する。記憶部22はRAMやROM等の記憶デバイスであり、プログラムやデータを記憶する。
【0025】
搬送制御部24、記録制御部25は主制御部20の指示のもと、搬送制御、記録制御をそれぞれ実行する。これら各制御部24及び25の構成は例えば主制御部20と同様に、処理部、記憶部、I/F部を含む。また、モータを駆動するドライブ回路等を含む。
【0026】
搬送制御部24は搬送ローラ70を回転する搬送モータ72を制御して、シートの搬送制御を行う。なお、搬送制御部24には、搬送モータ72の回転量を検出するセンサや、シートの搬送位置を検知するセンサ(いずれも不図示)の検知結果が入力され、これらの検知結果に基づき搬送モータ72を制御する。
【0027】
記録制御部25は、エンコーダセンサ9の検知結果に基づいて、キャリッジモータ61R、61Lの駆動制御(キャリッジ3の移動制御)や記録ヘッド2の駆動制御(インク吐出制御)を行う。
【0028】
<キャリッジの移動制御>
キャリッジモータ61R、61Lは、それぞれ独立して制御される。キャリッジモータ61R、61Lの駆動制御は、本実施形態の場合、PWM制御(Pulse Width Modulation)である。PWM制御では、単位時間あたりの通電時間(ON時間)の割り合い(デューティ比)により、出力電力を制御する。
図3(B)はその説明図である。
図3(B)は、単位時間TあたりのON時間tが、1/2Tの例を示しており、デューティ比が50%である。デューティ比が高くなるにつれてキャリッジモータ61R、61Lに供給される電力が大きくなり、キャリッジモータ61R、61Lの出力が大きくなる。デューティ比が100%でキャリッジモータ61R、61Lの出力は最大である。なお、本実施形態ではキャリッジモータ61R、61Lの駆動制御としてPWM制御を採用したが、他の制御方式でもよい。
【0029】
図4(A)及び
図4(B)はキャリッジ3の往復移動態様を示している。キャリッジ3の基本的な移動態様は、
図4(A)に示すようにその移動範囲の右端の停止位置から左端への往路移動と、
図4(B)に示すようにその移動範囲の左端の停止位置から右端への復路移動とを含む。往路移動は、キャリッジ3をY方向におけるキャリッジモータ61Rの側からキャリッジモータ61Lの側へ移動する制御である。復路移動は、キャリッジ3をY方向におけるキャリッジモータ61Lの側からキャリッジモータ61Rの側へ移動する制御である。
【0030】
キャリッジ3の往路移動時の移動方向を往路方向と呼び、復路移動時の移動方向を復路方向と呼ぶ場合がある。こうしたキャリッジ3の移動の際、本実施形態では、キャリッジモータ61Rの駆動力のみによる移動、キャリッジモータ61Lの駆動力のみによる移動、及び、キャリッジモータ61R及び61Lの双方の駆動力による移動を選択可能である。
【0031】
本実施形態におけるキャリッジ3の移動制御はフィードバック制御である。キャリッジ3のY方向の多数の位置には、その位置における目標速度が予め設定されている。
図5(A)はその一例(速度プロファイル)を示している。縦軸はキャリッジ3の目標速度であり、横軸はキャリッジ3のY方向の位置である。
【0032】
キャリッジ3の加速開始位置、停止目標位置及び減速開始位置はあらかじめ決められている。本実施形態の場合、キャリッジ3のY方向の位置は、加速域、定速域、減速域に大別され、キャリッジ3は所定速度V2まで加速し、速度V2の定速域中に記録走査を行い、その後、減速して停止する。位置ごとの目標速度はキャリッジ3の速度および動作が急峻に変化しないようになだらかに変化するように設定することができる。
【0033】
キャリッジ3の移動の際、記録制御部25は、エンコーダセンサ9の検知結果から、キャリッジ3の実位置と実速度とを演算する。そして、その実位置における目標速度と実速度との差分に応じてデューティ比を増減する。例えば、実速度が目標速度に達していない場合、デューティ比を増加する。逆に実速度が目標速度を超えている場合、デューティ比を減少する。
【0034】
図5(B)はキャリッジモータ61R及び61Lの回転数-トルク特性を示している。線L1はキャリッジモータ61R又は61Lを単独で駆動したときの回転数-トルク特性を示す。線L2はキャリッジモータ61R及び61Lの双方で駆動したときの回転数-トルク特性を示し、二つのキャリッジモータ61R及び61Lの回転数-トルク特性のトルクを足し合わせたものである。キャリッジモータ61R及び61Lの双方で駆動した場合、同じ回転数に対して合計のトルクは単独のトルクの2倍になる。
【0035】
図5(B)のキャリッジモータ61R及び61Lの回転数-トルク特性は、キャリッジ3の速度-加速度特性に置き換えることができる。キャリッジモータ61R又は61Lを単独で駆動した場合、縦軸、横軸及び線L1で囲まれる三角形の領域内の速度、加速度でキャリッジ3を移動できることになる。また、キャリッジモータ61R及び61Lの双方を駆動した場合、縦軸、横軸及び線L2で囲まれる三角形の領域内の速度、加速度でキャリッジ3を移動できることになる。
【0036】
線L3は、速度V2までキャリッジ3を加速する際、キャリッジモータ61R及び61Lの双方を駆動したときの加速度に相当する。キャリッジモータ61R又は61Lを単独で駆動した場合でも速度V1までは同じ加速度でキャリッジ3を加速することができる。減速時についても同様のことが言える。
【0037】
<ベルトの弛み解消>
キャリッジ3が停止した状態から移動させる際、タイミングベルト62に弛みが生じ得る。この弛みはキャリッジ3の動作を不安定にする場合がある。具体例を説明する。
図4(A)及び
図4(B)に示すように、タイミングベルト62は、プーリ60Rとプーリ60Lとの間に二つの走行領域62a、62bを有している。走行領域62aは、キャリッジ3が連結されていない側の領域であり、領域62bは、キャリッジ3が連結されている側の領域である。
【0038】
図4(A)に示すようにキャリッジ3を往路移動させる場合に、キャリッジ3が停止した状態から、キャリッジモータ61Lのみを駆動してタイミングベルト62を走行させる場合を想定する。キャリッジ3の移動には静止摩擦などの抵抗があるため、タイミングベルト62の走行開始に対してキャリッジ3の移動が僅かに遅延する場合がある。すると、走行領域62aに弛みが生じる場合がある。その後、キャリッジ3が動き出すと、走行領域62aは緊張した状態に戻ろうとする力が働く結果、走行領域62aに弦振動が生じてキャリッジ3の動作を不安定にする場合がある。この現象は、キャリッジモータ61R及び61Lの双方を駆動するが、キャリッジモータ61Lの方がトルクが高い(プーリ60Lの回転速度が速い)場合にも生じ得る。
【0039】
図4(B)に示すようにキャリッジ3を復路移動させる場合も同様である。キャリッジモータ61Rのみを駆動してタイミングベルト62を走行させる場合を想定する。タイミングベルト62の走行開始に対してキャリッジ3の移動が僅かに遅延すると、走行領域62aに弛みが生じる場合がある。その後、キャリッジ3が動き出すと、走行領域62aは緊張した状態に戻ろうとする力が働く結果、走行領域62aに弦振動が生じてキャリッジ3の動作を不安定にする場合がある。この現象は、キャリッジモータ61R及び61Lの双方を駆動するが、キャリッジモータ61Rの方がトルクが高い(プーリ60Rの回転速度が速い)場合にも生じ得る。
【0040】
そこで、
図4(A)に示す往路移動の開始時には、キャリッジモータ61Rの出力(ここではトルク)よりもキャリッジモータ61Lの出力が低くなるようにすることで弛みの発生を解消できる。同様に、
図4(B)に示す復路移動の開始時には、キャリッジモータ61Lの出力よりもキャリッジモータ61Rの出力が低くなるようにすることで弛みの発生を解消できる。
【0041】
<制御例>
図5(B)に例示したように、本実施形態ではキャリッジ3を速度V2まで加速する際、キャリッジ3を速度V1まで加速する期間においてはキャリッジモータ61R又は61Lのいずれか一つで加速することができる。そこで、速度V1を閾値速度として、速度V1まではキャリッジモータ61R又は61Lの一つのみを駆動する。そして、キャリッジ3が往路移動か復路移動かによって駆動するキャリッジモータを選択し、往路移動の場合はキャリッジモータ61Rを、復路移動の場合はキャリッジモータ61Lを駆動する。これによって、キャリッジ3の移動開始時におけるタイミングベルト62の弛みの発生を防止しつつ、必要な加速度でキャリッジ3を加速することができる。
【0042】
図6は記録制御部25が実行する処理例であって、キャリッジ3の往路移動時の移動制御の例を示すフローチャートであり、
図7(A)~
図7(D)はキャリッジ3の動作説明図である。
図6は特にキャリッジモータ61R、61Lの動作の切り替えに関わる処理例を示している。
図7(A)~
図7(D)において各プーリ60R、60Lの回転方向を示す矢印は実線が駆動回転、破線が従動回転を示す。
【0043】
図6のS1で、キャリッジモータ61Rの駆動が開始される。これにより
図7(A)に示すようにプーリ60Rが駆動回転されて、タイミングベルト62が走行し、プーリ60Lは従動回転する。走行領域62aに適度な張力が与えられ、弛みの発生を防止できる。
【0044】
図6のS2で、エンコーダセンサ9の検知結果に基づいてキャリッジ3の速度が閾値速度(速度V1)に達したか否かが判定される。キャリッジ3の速度が速度V1に達していた場合、S3へ進む。S3ではキャリッジモータ61
Lの駆動が開始される。これにより
図7(B)に示すようにプーリ60Rの駆動回転に加えてプーリ60Lも駆動回転する。
【0045】
S3でキャリッジモータ61Rの単独駆動から、キャリッジモータ61R及び61Lの双方駆動に切り替えた後、各キャリッジモータ61R及び61Lに対するPWM制御の各デューティ比はで同じであってもよい。切替の際には、例えば、それまでのキャリッジモータ61RのPWM制御のデューティ比がα%であるとすると、キャリッジモータ61R及び61Lの各デューティ比をα/2%としてもよい。そして、その後の目標速度とキャリッジ3の実速度に応じて、キャリッジモータ61R及び61Lの各デューティ比を同じように増減してもよい。
【0046】
このような制御によってキャリッジ3の速度はV2に達して定速移動され、記録走査が行われる。その後、キャリッジ3の位置が減速地点に達するとキャリッジ3の減速が開始される。そして
図6のS4で、エンコーダセンサ9の検知結果に基づいてキャリッジ3の速度が閾値速度(速度V1)まで減速されたか否かが判定される。キャリッジ3の速度が速度V1に減速された場合、S5へ進む。S5ではキャリッジモータ61Lの駆動が停止される。これにより
図7(C)に示すようにプーリ60Lは再び従動回転となる。
【0047】
S5でキャリッジモータ61R及び61Lの双方駆動からキャリッジモータ61Rの単独駆動に切り替える際、キャリッジモータ61Rに対するPWM制御のデューティ比は倍に増加してもよい。例えば、それまでのキャリッジモータ61R及び61Lの各デューティ比がβ%であるとすると、キャリッジモータ61Rのデューティ比を2×β%としてもよい。
【0048】
S6で、エンコーダセンサ9の検知結果に基づいてキャリッジ3が停止位置に到達したか否かが判定される。キャリッジ3が停止位置に到達した場合はS7へ進みキャリッジモータ61Rを停止する。キャリッジ3の減速開始後、速度V1から停止までの間、プーリ60Rが駆動回転され、プーリ60Lが従動回転とされるので、停止時に走行領域62aに適度な張力が与えられてタイミングベルト62が停止する。次の復路移動の際に、走行領域62aに弛みが発生することを抑制し、キャリッジ3の応答性を向上できる。
【0049】
次に、
図8は記録制御部25が実行する処理例であって、キャリッジ3の復路移動時の移動制御の例を示すフローチャートであり、
図9(A)~
図9(D)はキャリッジ3の動作説明図である。
図8は特にキャリッジモータ61R、61Lの動作の切り替えに関わる処理例を示している。
図9(A)~
図9(D)において各プーリ60R、60Lの回転方向を示す矢印は実線が駆動回転、破線が従動回転を示す。
【0050】
図8のS11で、キャリッジモータ61Lの駆動が開始される。往路移動の場合と異なり、復路移動ではキャリッジモータ61Lが先に駆動される。これにより
図9(A)に示すようにプーリ60Lが駆動回転されて、タイミングベルト62が走行し、プーリ60Rは従動回転する。走行領域62aに適度な張力が与えられ、弛みの発生を防止できる。
【0051】
図8のS12で、エンコーダセンサ9の検知結果に基づいてキャリッジ3の速度が閾値速度(速度V1)に達したか否かが判定される。キャリッジ3の速度が閾値速度(速度V1)に達していた場合、S13へ進む。S13ではキャリッジモータ61
Rの駆動が開始される。これにより
図9(B)に示すようにプーリ60Lの駆動回転に加えてプーリ60Rも駆動回転する。
【0052】
このような制御によってキャリッジ3の速度はV2に達して定速移動され、記録走査が行われる。その後、キャリッジ3の位置が減速地点に達するとキャリッジ3の減速が開始される。そして
図8のS14で、エンコーダセンサ9の検知結果に基づいてキャリッジ3の速度が閾値速度(速度V1)まで減速されたか否かが判定される。キャリッジ3の速度が速度V1に減速された場合、S15へ進む。S15ではキャリッジモータ61Rの駆動が停止される。これにより
図9(C)に示すようにプーリ60Rは再び従動回転となる。
【0053】
S16で、エンコーダセンサ9の検知結果に基づいてキャリッジ3が停止位置に到達したか否かが判定される。キャリッジ3が停止位置に到達した場合はS17へ進みキャリッジモータ61Lを停止する(
図9(D))。キャリッジ3の減速開始後、速度V1から停止までの間、プーリ60Lが駆動回転され、プーリ60Rが従動回転とされるので、停止時に走行領域62aに適度な張力が与えられてタイミングベルト62が停止する。次の往路移動の際に、走行領域62aに弛みが発生することを抑制し、キャリッジ3の応答性を向上できる。
【0054】
<他の実施形態>
上記実施形態ではキャリッジ3の加速の際、キャリッジ3の速度がV1に達したことを条件に一つのキャリッジモータの単独駆動から、二つのキャリッジモータの双方駆動に切り替えたが、閾値速度はV1に限られず、V1未満の速度であってもよい。同様に、キャリッジ3の減速の際、二つのキャリッジモータの双方駆動から、一つのキャリッジモータの単独駆動へ、切り替える閾値速度はV1に限られず、V1未満の速度であってもよい。加速時と減速時とで、閾値速度を変えてもよい。例えば、加速時のキャリッジ3の応答性が悪い場合、加速時の閾値速度が減速時の閾値速度よりも速い速度であってもよい。
【0055】
次に、上記実施形態ではキャリッジ3の加速の際、キャリッジ3の速度がV1に達するまで一つのキャリッジモータの単独駆動としたが、キャリッジ3の移動開始から二つのキャリッジモータの双方駆動であってもよい。往路移動の場合、キャリッジモータ61Lの出力(ここではトルク)は、キャリッジモータ61Rの出力よりも低い状態から、当該低い状態よりも出力が高い状態に制御してもよい。低い状態から高い状態への切り替えはキャリッジ3の速度を基準としてもよく、キャリッジ3の速度がV1に達した場合に切り替えてもよい。低い状態では、例えば、キャリッジモータ61LのPWM制御のデューティ比は、キャリッジモータ61Rのデューティ比の半分、又は、半分以下としてもよい。高い状態では、例えば、キャリッジモータ61LのPWM制御のデューティ比は、キャリッジモータ61Rのデューティ比と同じとしてもよい。同様に、復路移動の場合、キャリッジモータ61Rの出力は、キャリッジモータ61Lの出力よりも低い状態から、当該低い状態よりも出力が高い状態に制御してもよい。
【0056】
次に、上記実施形態ではキャリッジ3の減速の際、キャリッジ3の速度がV1に達するまで一つのキャリッジモータの単独駆動としたが、キャリッジ3の停止まで二つのキャリッジモータの双方駆動であってもよい。往路移動の場合、キャリッジ3の減速を開始してから停止するまでに、キャリッジモータ61Lの出力(ここではトルク)を、キャリッジモータ61Rの出力よりも低い状態に制御してもよい。キャリッジモータ61Lの出力を低い状態にするタイミングは上記の閾値速度まで減速されたか否かを基準としてもよい。また、低い状態とはキャリッジモータ61Lの回転方向を逆方向(キャリッジ3を復路方向に移動させる方向)にすることであってもよい。同様に、復路移動の場合、キャリッジ3の減速を開始してから停止するまでに、キャリッジモータ61Rの出力(ここではトルク)を、キャリッジモータ61Lの出力よりも低い状態に制御してもよい。キャリッジモータ61Rの出力を低い状態にするタイミングは上記の閾値速度まで減速されたか否かを基準としてもよい。また、低い状態とはキャリッジモータ61Rの回転方向を逆方向(キャリッジ3を往路方向に移動させる方向)にすることであってもよい。
【0057】
次に、上記実施形態では、往路移動としてキャリッジ3がその移動範囲の右端から左端まで移動する例を例示したが、移動範囲の途中から左端まで移動する場合や、移動範囲の右端から途中まで移動する場合にも同様の制御を採用できる。同様に、復路移動としてキャリッジ3がその移動範囲の左端から右端まで移動する例を例示したが、移動範囲の途中から右端まで移動する場合や、移動範囲の左端から途中まで移動する場合にも同様の制御を採用できる。
【0058】
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0059】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0060】
1 記録装置、2 記録ヘッド、3 キャリッジ、6 駆動ユニット、25 記録制御部、60R プーリ、60L プーリ、61R キャリッジモータ、61L キャリッジモータ、62 タイミングベルト