(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】未臨界性評価方法、未臨界監視方法、未臨界性評価装置及び未臨界監視装置
(51)【国際特許分類】
G21C 17/06 20060101AFI20241004BHJP
G21C 19/40 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
G21C17/06 070
G21C19/40 100
(21)【出願番号】P 2021113608
(22)【出願日】2021-07-08
【審査請求日】2023-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小池 啓基
(72)【発明者】
【氏名】浅野 耕司
(72)【発明者】
【氏名】左藤 大介
【審査官】坂上 大貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-210613(JP,A)
【文献】特開2018-112526(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 17/00-17/14
G21C 19/00-19/50
23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
核燃料を含む未知の体系が未臨界であることを評価するための推定臨界制限値を定量化する未臨界性評価方法であって、
臨界実験体系を複数選定し、選定した複数の前記臨界実験体系の体系情報を取得するステップと、
取得した前記体系情報に基づいて、評価用計算モデルを用いて、前記臨界実験体系の即発中性子減衰定数を算出するステップと、
算出された複数の前記即発中性子減衰定数を統計処理して、前記即発中性子減衰定数の前記推定臨界制限値を算出するステップと、を実行
しており、
前記推定臨界制限値を算出するステップでは、(1)式に基づく統計処理によって前記推定臨界制限値が算出される未臨界性評価方法。
【数1】
【請求項2】
前記体系情報を取得するステップでは、前記臨界実験体系を選定しており、前記臨界実験体系を選定するためのパラメータとして、前記体系情報を特徴づける少なくとも一つのパラメータを用いる請求項
1に記載の未臨界性評価方法。
【請求項3】
前記即発中性子減衰定数を算出するステップでは、前記評価用計算モデルとして、(2)式が用いられる請求項1
または2に記載の未臨界性評価方法。
【数2】
【請求項4】
請求項1から
3のいずれか1項に記載の未臨界性評価方法によって定量化された前記推定臨界制限値を用いて、前記未知の体系が未臨界であることを監視する未臨界監視方法であって、
前記未知の体系における中性子計数データを取得するステップと、
前記中性子計数データに基づいて、計測用計算モデルを用いて、前記即発中性子減衰定数を測定値として算出するステップと、
算出した前記測定値が、前記推定臨界制限値よりも大きいことを監視するステップと、を実行する未臨界監視方法。
【請求項5】
前記測定値を算出するステップでは、前記計測用計算モデルとして、ファインマンα法に基づく計算モデルが用いられる請求項
4に記載の未臨界監視方法。
【請求項6】
前記測定値を算出するステップでは、算出された前記測定値に対して、前記中性子計数データに基づく中性子の計数率の時間変化を考慮して、時間変化する前記測定値を算出しており、
前記監視するステップでは、前記未知の体系が未臨界であることを常時監視する請求項
4または
5に記載の未臨界監視方法。
【請求項7】
核燃料を含む未知の体系が未臨界であることを評価するための推定臨界制限値を定量化する未臨界性評価装置であって、
前記推定臨界制限値を算出する制御部を備え、
前記制御部は、
臨界実験体系を複数選定し、選定した複数の前記臨界実験体系の体系情報を取得するステップと、
取得した前記体系情報に基づいて、評価用計算モデルを用いて、前記臨界実験体系の即発中性子減衰定数を算出するステップと、
算出された複数の前記即発中性子減衰定数を統計処理して、前記即発中性子減衰定数の前記推定臨界制限値を算出するステップと、を実行
しており、
前記推定臨界制限値を算出するステップでは、(3)式に基づく統計処理によって前記推定臨界制限値が算出される未臨界性評価装置。
【数3】
【請求項8】
請求項
7に記載の未臨界性評価装置によって評価された前記推定臨界制限値を用いて、前記未知の体系が未臨界であることを監視する未臨界監視装置であって、
前記未知の体系からの中性子を計測する中性子検出器と、
前記中性子検出器の検出結果である中性子計数データを取得して、前記未知の体系を監視する監視制御部と、を備え、
前記監視制御部は、
前記中性子計数データを取得するステップと、
前記中性子計数データに基づいて、計測用計算モデルを用いて、前記即発中性子減衰定数を測定値として算出するステップと、
算出した前記測定値が、前記推定臨界制限値よりも大きいことを監視するステップと、を実行する未臨界監視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、未臨界性評価方法、未臨界監視方法、未臨界性評価装置及び未臨界監視装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、核燃料を含む体系の未臨界度を測定する未臨界度測定装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。未臨界度測定装置は、体系からの中性子を検出する放射線検出器を備え、放射線検出器の出力に基づいて、実効増倍率(keff)や未臨界度(-ρ)を算出している。そして、未臨界度測定装置により算出された実効増倍率や未臨界度に基づいて、体系の未臨界性が評価されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のように、実効増倍率(や未臨界度)を直接測定することは一般に困難である。実効増倍率(や未臨界度)の測定では、中性子検出器を用いて体系からの中性子を検出し、中性子検出器の検出により取得された中性子計数データと、動特性パラメータ(遅発中性子割合、中性子生成時間等)の計算値を組み合わせることで、実効増倍率(や未臨界度)の測定値が評価されている。
【0005】
実効増倍率の測定値を評価する場合、中性子計数データに基づく測定値となる即発中性子減衰定数αを評価し、即発中性子減衰定数αを実効増倍率に換算する。この場合、即発中性子減衰定数αの不確かさだけでなく、実効増倍率への換算係数の不確かさを考慮しなければならず、不確かさを大きく見積もる必要がある。また、測定対象体系の諸元データ(幾何形状、組成、温度等)が既知の場合には、動特性パラメータ等の換算係数を精度よく予測できるが、諸元データが未知の体系においては、動特性パラメータ等の換算係数を算出する際の入力条件の不確かさを大きく見込む必要がある。
【0006】
このように、即発中性子減衰定数αを実効増倍率に換算して未臨界性を評価する場合、大きな不確かさを見込む必要がある。このため、核燃料を含む未知の体系が未臨界であることを合理的に評価することが困難であった。
【0007】
そこで、本開示は、核燃料を含む未知の体系が未臨界であることを定量的に評価することができる未臨界性評価方法、未臨界監視方法、未臨界性評価装置及び未臨界監視装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の未臨界性評価方法は、核燃料を含む未知の体系が未臨界であることを評価するための推定臨界制限値を定量化する未臨界性評価方法であって、臨界実験体系を複数選定し、選定した複数の前記臨界実験体系の体系情報を取得するステップと、取得した前記体系情報に基づいて、評価用計算モデルを用いて、前記臨界実験体系の即発中性子減衰定数を算出するステップと、算出された複数の前記即発中性子減衰定数を統計処理して、前記即発中性子減衰定数の前記推定臨界制限値を算出するステップと、を実行する。
【0009】
本開示の未臨界監視方法は、上記の未臨界性評価方法によって定量化された前記推定臨界制限値を用いて、前記未知の体系が未臨界であることを監視する未臨界監視方法であって、前記未知の体系における中性子計数データを取得するステップと、前記中性子計数データに基づいて、計測用計算モデルを用いて、前記即発中性子減衰定数を測定値として算出するステップと、算出した前記測定値が、前記推定臨界制限値よりも大きいことを監視するステップと、を実行する。
【0010】
本開示の未臨界性評価装置は、核燃料を含む未知の体系が未臨界であることを評価するための推定臨界制限値を定量化する未臨界性評価装置であって、前記推定臨界制限値を算出する制御部を備え、前記制御部は、臨界実験体系を複数選定し、選定した複数の前記臨界実験体系の体系情報を取得するステップと、取得した前記体系情報に基づいて、評価用計算モデルを用いて、前記臨界実験体系の即発中性子減衰定数を算出するステップと、算出された複数の前記即発中性子減衰定数を統計処理して、前記即発中性子減衰定数の前記推定臨界制限値を算出するステップと、を実行する。
【0011】
本開示の未臨界監視装置は、上記の未臨界性評価装置によって評価された前記推定臨界制限値を用いて、前記未知の体系が未臨界であることを監視する未臨界監視装置であって、前記未知の体系からの中性子を計測する中性子検出器と、前記中性子検出器の検出結果である中性子計数データを取得して、前記未知の体系を監視する監視制御部と、を備え、前記監視制御部は、前記中性子計数データを取得するステップと、前記中性子計数データに基づいて、計測用計算モデルを用いて、前記即発中性子減衰定数を測定値として算出するステップと、算出した前記測定値が、前記推定臨界制限値よりも大きいことを監視するステップと、を実行する。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、核燃料を含む未知の体系が未臨界であることを定量的に評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る未臨界性評価装置を模式的に表したブロック図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係る未臨界性評価方法に関するフローチャートである。
【
図3】
図3は、選定される臨界実験を示す説明図である。
【
図4】
図4は、臨界実験を選定するためのパラメータを示す図である。
【
図5】
図5は、評価用計算モデルに関する説明図である。
【
図6】
図6は、即発中性子減衰定数の分布図である。
【
図7】
図7は、本実施形態に係る未臨界監視装置を模式的に表したブロック図である。
【
図8】
図8は、本実施形態に係る未臨界監視方法に関するフローチャートである。
【
図9】
図9は、測定値となる即発中性子減衰定数の時間変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能であり、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせることも可能である。
【0015】
[実施形態]
本実施形態に係る未臨界評価方法及び未臨界評価装置10は、核燃料の幾何形状や組成条件が未知となる体系において、未知の体系が未臨界であることを評価するための推定臨界制限値を定量化する方法及び装置となっている。推定臨界制限値としては、即発中性子減衰定数αが用いられ、着目体系が臨界状態であると推定される即発中性子減衰定数αの上限値を表す値となっている。即発中性子減衰定数αは、未臨界体系において、仮に中性子をパルス状に体系に打ち込んだ場合、中性子数が指数関数的に減衰する際の時定数となっている。即発中性子減衰定数αは、遅発中性子の寄与を無視できる場合、α>0のとき、体系が未臨界であることを意味し、α=0のとき、体系が臨界であることを意味し、α<0のとき、体系が超臨界であることを意味する。つまり、α>0の場合、体系における中性子数が指数関数的に減衰する。また、α=0の場合、体系における中性子数が一定になる。さらに、α<0の場合、体系における中性子数が指数関数的に増幅する。
【0016】
(未臨界性評価装置)
図1を参照して、未臨界性評価装置10について説明する。
図1は、本実施形態に係る未臨界性評価装置を模式的に表したブロック図である。未臨界性評価装置10は、制御部11と、記憶部12と、出力部13と、入力部14とを有している。
【0017】
制御部11は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等の集積回路を含んでいる。制御部11は、入力情報に基づいて、評価用計算モデルを用いて、未知の体系の未臨界性を評価する推定臨界制限値を算出する処理等を実行している。記憶部12は、半導体記憶デバイス及び磁気記憶デバイス等の任意の記憶デバイスである。この記憶部12には、各種処理を実行するための各種プログラム、及び処理に用いられる各種データが記憶されている。各種プログラムとしては、推定臨界制限値を算出するための評価用計算モデルであり、また、各種データとしては、評価用計算モデルに入力される入力情報等である。出力部13は、例えば、液晶ディスプレイ等の表示デバイスである。入力部14は、例えば、キーボード及びマウス等の入力デバイスである。
【0018】
(未臨界性評価方法)
次に、
図2から
図6を参照して、未臨界性評価装置10により実行される未臨界性評価方法について説明する。
図2は、本実施形態に係る未臨界性評価方法に関するフローチャートである。
図3は、選定される臨界実験を示す説明図である。
図4は、臨界実験を選定するためのパラメータを示す図である。
図5は、評価用計算モデルに関する説明図である。
図6は、即発中性子減衰定数の分布図である。
【0019】
未臨界性評価方法では、定量化された推定臨界制限値となる即発中性子減衰定数αを算出する方法となっている。
図2に示すように、未臨界性評価方法では、臨界実験体系を複数選定し、複数の臨界実験体系の体系情報を取得する(ステップS1)。ステップS1では、入力部14が、複数の体系情報を入力情報として取得し、取得した複数の体系情報は、記憶部12に記憶される。
【0020】
ここで、選定される複数の臨界実験について説明する。未臨界性評価に用いられる臨界実験は、臨界実験が集積されたデータベースから選定される。
図3に示すように、選定される臨界実験の範囲は、未知の体系の想定範囲よりも広い範囲となっており、未知の体系を包含する範囲となっている。臨界実験の範囲は、5つのパラメータを指標とした範囲となっており、このパラメータが臨界実験を選定するための指標となっている。
【0021】
図4に示すように、臨界実験を選定するためのパラメータとして、具体的に、核燃料の濃縮度、核燃料のPu含有率、核燃料の大きさ、燃料対減速材体積比、構造材核種の種類等が挙げられる。なお、体系情報を特徴づけるパラメータを少なくとも一つ含んでいればよく、また、パラメータの候補はこの具体例で挙げたものに限定されない。
【0022】
ステップS1において、複数の臨界実験が選定されて、複数の臨界実験の体系情報を取得すると、制御部11は、各臨界実験の体系情報に基づいて、評価用計算モデルを用いて、即発中性子減衰定数αをそれぞれ算出する(ステップS2)。
【0023】
次に、
図5を参照して、評価用計算モデルについて説明する。
図5に示すように、評価用計算モデルは、
図5の右側に示す(2)式である。評価用計算モデルは、
図5の左側に示す実効増倍率を算出する計算モデルである(1)式を利用して、
図5の右側に示す即発中性子減衰定数αを算出する計算モデルである(2)式を導出したものである。(1)式は、中性子の消滅(左辺)と生成(右辺)とがバランスするよう、実効増倍率(keff)と中性子束ψとを算出するモデルとなっている。(2)式は、(1)式における消滅演算子Aをα/vだけ減じた際に、中性子の消滅と生成とがバランスするよう、即発中性子減衰定数αと中性子束ψとを算出するモデルとなっている。算出される即発中性子減衰定数αは、不確かさを含むものとなる。
【0024】
ステップS2において、(2)式を用いて算出された複数の即発中性子減衰定数αは、不確かさを含むことから、
図6に示すような分布を持つこととなる。このため、制御部11は、ステップS2の実行後、算出された複数の即発中性子減衰定数αを統計処理して、即発中性子減衰定数αの推定臨界制限値を算出する(ステップS3)。
【0025】
図6は、その縦軸がサンプル数となっており、その横軸が即発中性子減衰定数α[1/sec]となっている。
図6に示すように、算出された複数の即発中性子減衰定数αは、その平均値近傍におけるサンプル数が多くなり、平均値近傍から離れるにつれてサンプル数が少なくなる分布となっている。
【0026】
ステップS3では、下記する(3)式に基づく統計処理によって推定臨界制限値が算出される。
【0027】
【0028】
(3)式に示すように、推定臨界制限値α
limitは、即発中性子減衰定数αの平均値からの差異の標準偏差と信頼係数とを乗算した値を、算出された複数の即発中性子減衰定数αの平均値に加算することで算出される。これにより、推定臨界制限値α
limitは、
図5に示す計算モデルにより算出される即発中性子減衰定数αの不確かさを考慮した値となる。
【0029】
(未臨界監視装置)
次に、
図7から
図9を参照して、未臨界監視装置20について説明する。
図7は、本実施形態に係る未臨界監視装置を模式的に表したブロック図である。未臨界監視装置20は、制御部(監視制御部)21と、記憶部22と、出力部23と、入力部24と、中性子検出器25とを有している。
【0030】
制御部21は、制御部11と同様に、例えば、CPU(Central Processing Unit)等の集積回路を含んでいる。制御部21は、入力情報に基づいて、計測用計算モデルを用いて、未知の体系の未臨界監視を実行するための測定値を算出する処理等を実行している。記憶部22は、記憶部12と同様に、半導体記憶デバイス及び磁気記憶デバイス等の任意の記憶デバイスである。この記憶部22には、各種処理を実行するための各種プログラム、及び処理に用いられる各種データが記憶されている。各種プログラムとしては、測定値を算出するための計測用計算モデルであり、また、各種データとしては、未臨界監視装置20により算出された推定臨界制限値、計測用計算モデルに入力される入力情報等である。出力部23は、例えば、液晶ディスプレイ等の表示デバイスである。入力部24は、例えば、キーボード及びマウス等の入力デバイスである。
【0031】
中性子検出器25は、未知の体系から発生する中性子を検出する。中性子検出器25は、入力部24と接続されており、入力部24は、中性子検出器25からの情報を中性子計数データとして取得する。
【0032】
(未臨界監視方法)
次に、
図8及び
図9を参照して、未臨界監視装置20により実行される未臨界監視方法について説明する。
図8は、本実施形態に係る未臨界監視方法に関するフローチャートである。
図9は、測定値となる即発中性子減衰定数の時間変化を示すグラフである。
【0033】
未臨界監視方法では、未臨界監視装置20により算出された推定臨界制限値α
limitをしきい値として、計測により取得した測定値に基づいて、未知の体系が未臨界であることを監視する方法となっている。
図8に示すように、未臨界監視方法では、制御部21が、中性子検出器25により計測された未知の体系からの中性子に基づいて、中性子計数データを取得する(ステップS11)。
【0034】
続いて、制御部21は、取得した中性子計数データに基づいて、計測用計算モデルを用いて、即発中性子減衰定数αを測定値として算出する(ステップS12)。ここで、ステップS12につき、
図9を参照して、具体的に説明する。
図9は、その縦軸が即発中性子減衰定数αとなっており、その横軸が時刻となっている。ステップS12では、計測用計算モデルとして、ファインマンα法に基づく計算モデルが用いられる。
図9に示すように、ステップS12では、先ず、ファインマンα法に基づく計算モデルを用いて、初期の測定値α
meas(0)を算出する。また、ステップS12では、初期の測定値α
meas(0)に対して、中性子計数データに基づく中性子の計数率(CR(0)/CR(t))の時間変化を考慮して、時間変化する測定値α
meas(t)を算出している。なお、CR(0)は、初期の中性子の数であり、CR(t)は、所定時間経過後の中性子の数である。
【0035】
そして、制御部21は、算出した測定値αmeas(t)が、推定臨界制限値αlimitよりも大きいことを監視する(ステップS13)。このように、ステップS13では、定量化された即発中性子減衰定数αを用いて、未知の体系が未臨界であることを監視することができる。そして、未臨界監視方法では、ステップS13を実行後、未知の体系に対する監視の継続を停止することで、未臨界監視方法に関する処理が終了となる。
【0036】
以上のように、本実施形態に記載の未臨界性評価方法、未臨界監視方法、未臨界性評価装置10及び未臨界監視装置20は、例えば、以下のように把握される。
【0037】
第1の態様に係る未臨界性評価方法は、核燃料を含む未知の体系が未臨界であることを評価するための推定臨界制限値αlimitを定量化する未臨界性評価方法であって、臨界実験体系を複数選定し、選定した複数の前記臨界実験体系の体系情報を取得するステップS1と、取得した前記体系情報に基づいて、評価用計算モデルを用いて、前記臨界実験体系の即発中性子減衰定数αを算出するステップS2と、算出された複数の前記即発中性子減衰定数αを統計処理して、前記即発中性子減衰定数αの前記推定臨界制限値αlimitを算出するステップS3と、を実行する。
【0038】
この構成によれば、未臨界であることを評価可能な定量化された推定臨界制限値αlimitを得ることができる。このため、即発中性子減衰定数αを用いて、未知の体系が未臨界であることを評価することが可能となる。
【0039】
第2の態様として、前記推定臨界制限値αlimitを算出するステップS2では、(3)式に基づく統計処理によって前記推定臨界制限値αlimitが算出される。
【0040】
この構成によれば、評価用計算モデルを用いて算出される即発中性子減衰定数αの不確かさを統計処理によって考慮することができるため、適切な推定臨界制限値αlimitを算出することができる。
【0041】
第3の態様として、前記体系情報を取得するステップS1では、前記臨界実験体系を選定しており、前記臨界実験体系を選定するためのパラメータとして、前記体系情報を特徴づける少なくとも一つのパラメータを用いる。
【0042】
この構成によれば、適切なパラメータにより臨界実験体系を選定することができるため、即発中性子減衰定数αの定量的な評価を好適に行うことができる。
【0043】
第4の態様として、前記即発中性子減衰定数を算出するステップS2では、前記評価用計算モデルとして、(2)式が用いられる。
【0044】
この構成によれば、実効増倍率の計算モデルを利用して、即発中性子減衰定数αを算出する計算モデルを簡易的に導出することができる。
【0045】
第5の態様に係る未臨界監視方法は、上記の未臨界性評価方法によって定量化された前記推定臨界制限値αlimitを用いて、前記未知の体系が未臨界であることを監視する未臨界監視方法であって、前記未知の体系における中性子計数データを取得するステップS11と、前記中性子計数データに基づいて、計測用計算モデルを用いて、前記即発中性子減衰定数αを測定値αmeasとして算出するステップS12と、算出した前記測定値αmeasが、前記推定臨界制限値αlimitよりも大きいことを監視するステップS13と、を実行する。
【0046】
この構成によれば、定量化された推定臨界制限値αlimitを用いて、計測した測定値αmeasに基づき、未知の体系の未臨界を監視することができる。このため、実効増倍率への換算時における不確かさ等を考慮する必要がない分、未臨界監視における推定臨界制限値αlimitの余裕を確保することができる。これにより、未知の体系に対する状態変化時の運用の自由度を向上させることが可能となる。
【0047】
第6の態様として、前記測定値を算出するステップS12では、前記計測用計算モデルとして、ファインマンα法に基づく計算モデルが用いられる。
【0048】
この構成によれば、中性子計数データを用いた即発中性子減衰定数αの算出を高精度に行うことができる。
【0049】
第7の態様として、前記測定値を算出するステップS12では、算出された前記測定値αmeas(0)に対して、前記中性子計数データに基づく中性子の計数率(CR(0)/CR(t))の時間変化を考慮して、時間変化する前記測定値αmeas(t)を算出しており、前記監視するステップS13では、前記未知の体系が未臨界であることを常時監視する。
【0050】
この構成によれば、未知の体系が未臨界であることを、常時監視することができる。
【0051】
第8の態様に係る未臨界性評価装置10は、核燃料を含む未知の体系が未臨界であることを評価するための推定臨界制限値αlimitを定量化する未臨界性評価装置10であって、前記推定臨界制限値αlimitを算出する制御部11を備え、前記制御部11は、臨界実験体系を複数選定し、選定した複数の前記臨界実験体系の体系情報を取得するステップS1と、取得した前記体系情報に基づいて、評価用計算モデルを用いて、前記臨界実験体系の即発中性子減衰定数αを算出するステップS2と、算出された複数の前記即発中性子減衰定数αを統計処理して、前記即発中性子減衰定数αの前記推定臨界制限値αlimitを算出するステップS3と、を実行する。
【0052】
この構成によれば、未臨界であることを評価可能な定量化された推定臨界制限値αlimitを得ることができる。このため、即発中性子減衰定数αを用いて、未知の体系が未臨界であることを評価することが可能となる。
【0053】
第9の態様に係る未臨界監視装置20は、上記の未臨界性評価装置10によって評価された前記推定臨界制限値αlimitを用いて、前記未知の体系が未臨界であることを監視する未臨界監視装置20であって、前記未知の体系からの中性子を計測する中性子検出器25と、前記中性子検出器25の検出結果である中性子計数データを取得して、前記未知の体系を監視する監視制御部21と、を備え、前記監視制御部21は、前記中性子計数データを取得するステップS11と、前記中性子計数データに基づいて、計測用計算モデルを用いて、前記即発中性子減衰定数αを測定値αmeasとして算出するステップS12と、算出した前記測定値αmeasが、前記推定臨界制限値αlimitよりも大きいことを監視するステップS13と、を実行する。
【0054】
この構成によれば、定量化された推定臨界制限値αlimitを用いて、計測した測定値αmeasに基づき、未知の体系の未臨界を監視することができる。このため、実効増倍率への換算時における不確かさ等を考慮する必要がない分、未臨界監視における推定臨界制限値αlimitの余裕を確保することができる。これにより、未知の体系に対する状態変化時の運用の自由度を向上させることが可能となる。
【符号の説明】
【0055】
10 未臨界性評価装置
11 制御部
12 記憶部
13 出力部
14 入力部
20 未臨界監視装置
21 制御部
22 記憶部
23 出力部
24 入力部
25 中性子検出器