(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法および半導体製造装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/316 20060101AFI20241004BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20241004BHJP
H01L 29/78 20060101ALI20241004BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20241004BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
H01L21/316 S
H01L29/78 658F
H01L29/78 652T
H01L21/31 E
(21)【出願番号】P 2021122358
(22)【出願日】2021-07-27
【審査請求日】2023-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】秋好 恭兵
(72)【発明者】
【氏名】吉田 敦史
(72)【発明者】
【氏名】中西 洋介
(72)【発明者】
【氏名】香月 真一郎
【審査官】小▲高▼ 孔頌
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-015870(JP,A)
【文献】特開2015-023043(JP,A)
【文献】特開2012-015536(JP,A)
【文献】特開2006-303516(JP,A)
【文献】特開2013-185760(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/316
H01L 21/336
H01L 29/78
H01L 29/12
H01L 21/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の炭化珪素ウエハの下面に第1無機膜を形成し、
前記第1無機膜の前記形成の後に前記複数の炭化珪素ウエハのエッチングを行い、
前記エッチングは、前記エッチングの後に前記複数の炭化珪素ウエハの前記第1無機膜の厚さが750nm以上残るように行い、
前記エッチングの後に半導体製造装置を用いて熱酸化処理を行って前記複数の炭化珪素ウエハの上面に酸化膜を形成し、
前記熱酸化処理を、ダミーウエハまたはモニターウエハの少なくともいずれかを含む少なくとも1つのウエハであって前記複数の炭化珪素ウエハとは異なる少なくとも1つのウエハおよび前記複数の炭化珪素ウエハが一方向に沿ってかつ前記複数の炭化珪素ウエハの上面を前記一方向に向けて並べられた状態で行い、
前記熱酸化処理の前記状態において、前記複数の炭化珪素ウエハのうちの第1の炭化珪素ウエハは前記少なくとも1つのウエハのいずれかの直下に配置され、前記複数の炭化珪素ウエハのうちの第2の炭化珪素ウエハは前記複数の炭化珪素ウエハのうちの第3の炭化珪素ウエハの直下に配置されて
おり、
前記複数の炭化珪素ウエハそれぞれにおいて、前記上面はSi面であり、前記下面はC面であり、
前記エッチングをディップ方式のウェットエッチングにより行う、
半導体装置の製造方法。
【請求項2】
請求項
1に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記複数の炭化珪素ウエハの上面に第2無機膜を形成し、
前記エッチングにおいて前記複数の炭化珪素ウエハの上面の前記第2無機膜をエッチングする、
半導体装置の製造方法。
【請求項3】
請求項1
または2に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記酸化膜はゲート酸化膜である、
半導体装置の製造方法。
【請求項4】
請求項1から
3のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記熱酸化処理を酸素ガスまたはオゾンガスを用いて行う、
半導体装置の製造方法。
【請求項5】
複数の炭化珪素ウエハの下面に第1無機膜を形成し、
前記第1無機膜の前記形成の後に前記複数の炭化珪素ウエハのエッチングを行い、
前記エッチングは、前記エッチングの後に前記複数の炭化珪素ウエハの前記第1無機膜の厚さが750nm以上残るように行い、
前記エッチングの後に半導体製造装置を用いて熱酸化処理を行って前記複数の炭化珪素ウエハの上面に酸化膜を形成し、
前記熱酸化処理を、ダミーウエハまたはモニターウエハの少なくともいずれかを含む少なくとも1つのウエハであって前記複数の炭化珪素ウエハとは異なる少なくとも1つのウエハおよび前記複数の炭化珪素ウエハが一方向に沿ってかつ前記複数の炭化珪素ウエハの上面を前記一方向に向けて並べられた状態で行い、
前記熱酸化処理の前記状態において、前記複数の炭化珪素ウエハのうちの第1の炭化珪素ウエハは前記少なくとも1つのウエハのいずれかの直下に配置され、前記複数の炭化珪素ウエハのうちの第2の炭化珪素ウエハは前記複数の炭化珪素ウエハのうちの第3の炭化珪素ウエハの直下に配置されており、
前記複数の炭化珪素ウエハそれぞれにおいて、前記上面はSi面であり、前記下面はC面であり、
前記熱酸化処理において、前記少なくとも1つのウエハの前記いずれかと第1の炭化珪素ウエハとの間の領域に対し、前記第2の炭化珪素ウエハと前記第3の炭化珪素ウエハとの間の領域に対するよりも、多くの酸素ガスまたはオゾンガスを供給する、
半導体装置の製造方法。
【請求項6】
請求項
5に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記半導体製造装置は、前記熱酸化処理を行う容器と、前記容器内に酸素ガスまたはオゾンガスを導入する第1の導入ラインおよび第2の導入ラインと備え、
前記熱酸化処理において、前記第2の導入ラインは、前記少なくとも1つのウエハの前記いずれかと第1の炭化珪素ウエハとの間の領域に酸素ガスまたはオゾンガスを選択的に供給する、
半導体装置の製造方法。
【請求項7】
請求項
5に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記半導体製造装置は、前記熱酸化処理を行う容器と、前記容器内に酸素ガスまたはオゾンガスを導入する導入ラインを有し、
前記導入ラインは前記容器内において前記導入ラインの側面に開口を有し、
前記熱酸化処理において、前記開口は、前記一方向に関して、前記少なくとも1つのウエハの前記いずれかと第1の炭化珪素ウエハとの間に位置し、前記開口を通って前記容器内に酸素ガスまたはオゾンガスが供給される、
半導体装置の製造方法。
【請求項8】
複数の炭化珪素ウエハの下面に第1無機膜を形成し、
前記第1無機膜の前記形成の後に前記複数の炭化珪素ウエハのエッチングを行い、
前記エッチングは、前記エッチングの後に前記複数の炭化珪素ウエハの前記第1無機膜の厚さが750nm以上残るように行い、
前記エッチングの後に半導体製造装置を用いて熱酸化処理を行って前記複数の炭化珪素ウエハの上面に酸化膜を形成し、
前記熱酸化処理を、ダミーウエハまたはモニターウエハの少なくともいずれかを含む少なくとも1つのウエハであって前記複数の炭化珪素ウエハとは異なる少なくとも1つのウエハおよび前記複数の炭化珪素ウエハが一方向に沿ってかつ前記複数の炭化珪素ウエハの上面を前記一方向に向けて並べられた状態で行い、
前記熱酸化処理の前記状態において、前記複数の炭化珪素ウエハのうちの第1の炭化珪素ウエハは前記少なくとも1つのウエハのいずれかの直下に配置され、前記複数の炭化珪素ウエハのうちの第2の炭化珪素ウエハは前記複数の炭化珪素ウエハのうちの第3の炭化珪素ウエハの直下に配置されており、
前記複数の炭化珪素ウエハそれぞれにおいて、前記上面はSi面であり、前記下面はC面であり、
前記少なくとも1つのウエハは複数のウエハであり、
前記熱酸化処理における前記状態において、前記複数のウエハと前記複数の炭化珪素ウエハが前記一方向に交互に並んでいる、
半導体装置の製造方法。
【請求項9】
複数の炭化珪素ウエハの下面に第1無機膜を形成し、
前記第1無機膜の前記形成の後に前記複数の炭化珪素ウエハのエッチングを行い、
前記エッチングは、前記エッチングの後に前記複数の炭化珪素ウエハの前記第1無機膜の厚さが750nm以上残るように行い、
前記エッチングの後に半導体製造装置を用いて熱酸化処理を行って前記複数の炭化珪素ウエハの上面に酸化膜を形成し、
前記熱酸化処理を、ダミーウエハまたはモニターウエハの少なくともいずれかを含む少なくとも1つのウエハであって前記複数の炭化珪素ウエハとは異なる少なくとも1つのウエハおよび前記複数の炭化珪素ウエハが一方向に沿ってかつ前記複数の炭化珪素ウエハの上面を前記一方向に向けて並べられた状態で行い、
前記熱酸化処理の前記状態において、前記複数の炭化珪素ウエハのうちの第1の炭化珪素ウエハは前記少なくとも1つのウエハのいずれかの直下に配置され、前記複数の炭化珪素ウエハのうちの第2の炭化珪素ウエハは前記複数の炭化珪素ウエハのうちの第3の炭化珪素ウエハの直下に配置されており、
前記複数の炭化珪素ウエハそれぞれにおいて、前記上面はSi面であり、前記下面はC面であり、
前記熱酸化処理における前記状態において、前記第2の炭化珪素ウエハと前記第3の炭化珪素ウエハの間が、前記第2の炭化珪素ウエハの平面視での中央部と重なる仕切りにより仕切られている、
半導体装置の製造方法。
【請求項10】
請求項
9に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記仕切りは、前記第2の炭化珪素ウエハを支持する支持部である、
半導体装置の製造方法。
【請求項11】
請求項
9に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記仕切りは、前記第2の炭化珪素ウエハを支持する支持部とは異なるものである仕切りである、
半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置の製造方法および半導体製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1および特許文献2では、複数の炭化珪素(以下、SiCとも呼ぶ)ウエハに酸化膜を形成する際に、複数のSiCウエハの間での酸化膜の厚さのばらつきを抑制するための手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-165348号公報
【文献】特許第6141130号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術における手法は、複数のSiCウエハ間での熱酸化膜の厚さのばらつきを抑える手法として必ずしも十分ではなかった。
【0005】
本開示は上記の問題を解決するための物であり、複数のSiCウエハ間での酸化膜の厚さのばらつきを抑えることのできる半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の1つの半導体装置の製造方法は、複数の炭化珪素ウエハの下面に第1無機膜を形成し、第1無機膜の形成の後に複数の炭化珪素ウエハのエッチングを行い、エッチングは、エッチングの後に複数の炭化珪素ウエハの第1無機膜の厚さが750nm以上残るように行い、エッチングの後に半導体製造装置を用いて熱酸化処理を行って複数の炭化珪素ウエハの上面に酸化膜を形成し、熱酸化処理を、ダミーウエハまたはモニターウエハの少なくともいずれかを含む少なくとも1つのウエハであって複数の炭化珪素ウエハとは異なる少なくとも1つのウエハおよび複数の炭化珪素ウエハが一方向に沿ってかつ複数の炭化珪素ウエハの上面を一方向に向けて並べられた状態で行い、熱酸化処理の状態において、複数の炭化珪素ウエハのうちの第1の炭化珪素ウエハは少なくとも1つのウエハのいずれかの直下に配置され、複数の炭化珪素ウエハのうちの第2の炭化珪素ウエハは複数の炭化珪素ウエハのうちの第3の炭化珪素ウエハの直下に配置されており、複数の炭化珪素ウエハそれぞれにおいて、上面はSi面であり、下面はC面であり、エッチングをディップ方式のウェットエッチングにより行う、半導体装置の製造方法である。
【発明の効果】
【0007】
本開示により、複数のSiCウエハ間での酸化膜の厚さのばらつきを抑えることのできる半導体装置の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1の縦型バッチ式拡散炉を示す図である。
【
図2】熱酸化処理時のSiCウエハ付近の状態を示す断面図である。
【
図3】SiCウエハの結晶構造を模式的に示す図である。
【
図4】実施の形態1の半導体装置のセル内部を示す図である。
【
図5】実施の形態1の半導体装置のセル外周部を示す図である。
【
図6】実施の形態1の半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。
【
図7】実施の形態1の半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。
【
図8】実施の形態1の半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。
【
図9】実施の形態1の半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。
【
図10】実施の形態1の半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。
【
図11】実施の形態1の半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。
【
図12】実施の形態1の半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。
【
図13】実施の形態1の半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。
【
図14】実施の形態1の半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。
【
図15】実施の形態1の半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。
【
図16】実施の形態1の半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。
【
図17】実施の形態1の半導体装置の製造方法のフローチャートである。
【
図18】SiCウエハのC面に形成された層間絶縁膜の厚さと、SiCウエハ間でのゲート酸化膜の厚さのばらつきと、の関係を示す図である。
【
図19】実施の形態2におけるウエハの配置を示す図である。
【
図20】実施の形態3の縦型バッチ式拡散炉を示す図である。
【
図21】実施の形態4の縦型バッチ式拡散炉を示す図である。
【
図22】実施の形態5の縦型バッチ式拡散炉の一例を示す図である。
【
図23】実施の形態5の縦型バッチ式拡散炉の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<前提技術>
図1は各実施の形態で用いられる縦型バッチ式拡散炉の一例である縦型バッチ式拡散炉80の構成を示す図である。後述する各実施の形態においては、例えば
図1に示す縦型バッチ式拡散炉80を用いて、炭化珪素半導体装置となるSiCウエハ50上に酸化膜が形成される。
【0010】
縦型バッチ式拡散炉80はチューブ81とボート82とガス導入ライン83とを備える。ボート82はウエハを支持する支持部82aを複数備える。チューブ81は熱酸化処理を行う容器である。縦型バッチ式拡散炉80は、複数のウエハを、複数の支持部82aにより一方向に沿ってかつ当該複数のウエハの主面を一方向に向けて並べて支持する。
【0011】
図1に示されるように、熱酸化処理において、複数のSiCウエハ50は、支持部82aに支持され互いに間隔をあけた状態でチューブ81内に設置される。以下、縦型バッチ式拡散炉80で同時に処理される複数のSiCウエハ50のまとまりをバッチと呼ぶ。ガス導入ライン83はチューブ81内に酸化性ガスを導入するためのラインである。ガス導入ライン83には開口830が設けられており、開口830を通って、チューブ81内に酸化性ガスが導入される。酸化性ガスとは、熱酸化処理に用いられるガスであり、例えば酸素(O
2)ガスまたはオゾン(O
3)ガスである。
【0012】
SiCウエハ50において、例えば、一方の主面はカーボン(C)面であり他方の主面はシリコン(Si)面である。
【0013】
図1には、熱酸化処理が行われる際のSiCウエハ50の配置の一例が示されている。
【0014】
SiCウエハ50は、カーボン(C)面が下側、シリコン(Si)面が上側を向くように、ボート82に保持されている。SiCウエハ50は、SiCウエハ50の主面に交差する方向、例えばSiCウエハ50の主面に垂直な方向、に互いに隙間を空けて積層される。
【0015】
熱酸化処理を行う前に、各SiCウエハ50の下面であるC面12には無機膜90(
図2および
図3を参照)が形成されている。
【0016】
各SiCウエハ50のうち最上段のSiCウエハ50の上には、当該最上段のSiCウエハ50と間隔を空けてSiCダミーウエハ51が設置されている。当該SiCダミーウエハ51の上には、当該SiCダミーウエハ51と間隔を空けて、Siモニターウエハ52が設置されている。
【0017】
SiCダミーウエハ51の下面には、
図2のSiCウエハ50の下面と同様に、無機膜90が形成されている。SiCダミーウエハ51を設置する理由に関しては後述する。
【0018】
熱酸化処理が完了した後にSiモニターウエハ52の酸化膜の厚さを測定することで、各SiCウエハ50に形成された酸化膜に問題がないかどうか確認される。
【0019】
SiCウエハ50における熱酸化反応は、酸化性ガスとしてO2ガスを使用した場合、以下の式(1)に示すようになると推定される。以下に示す各式において、「(↑)」は、気体(ガス)が発生することを意味する。
【0020】
SiC+2O2=SiO2+CO2(↑) …(1)
式(1)に示すように、SiCウエハ50における熱酸化反応では、二酸化珪素(SiO2)膜が形成されるとともに二酸化炭素(CO2)ガスが発生する。発生したCO2ガスが、チューブ81内の高温環境下において可逆的に分解して、以下の式(2)に示す反応を起こすことにより、一酸化炭素(CO)ガスが排出されるとともに、再度、O2ガスが生成されると推定される。
【0021】
2CO
2=2CO(↑)+O
2(↑) …(2)
図2は、熱酸化処理時のSiCウエハ50付近の状態を示す断面図である。
図3は、SiCウエハ50の結晶構造を模式的に示す図である。
【0022】
図3に示すように、SiCウエハ50の結晶構造は、シリコン(Si)原子45とカーボン(C)原子46によって構成されている。SiCウエハ50の一方主面はC原子46が露出したC面12であり、他方主面はSi原子45が露出したSi面13である。
【0023】
図2に示すように、SiCウエハ50にO
2ガスを供給して酸化膜5aを形成するとき、式(1)の反応によってCO
2ガスが発生する。
図3に示すように、SiCウエハ50のC面12側の方が、Si面13側よりもC原子46が多い。従って、C面12の方がSi面13よりCO
2ガスを多く発生すると考えられる。
【0024】
前述のように、SiCウエハ50のC面12には、無機膜90が形成されている。SiCウエハ50のC面12に設けられた無機膜90は、SiCウエハ50のC面12における(1)の反応を抑制する効果がある。無機膜90が薄い場合、前述の式(1)の反応を抑制する効果が小さく、そのため式(2)の反応が抑制される程度が小さく、SiCウエハ50のC面12の直下において、式(2)の反応により酸素濃度が増加する効果が大きい。そのため、
図2に示すようにSiCウエハ50のC面12が隣のSiCウエハ50のSi面13に対面している場合、SiCウエハ50の直下に配置されたSiCウエハ50では、Si面13において、熱酸化処理により形成される酸化膜5aが厚くなると考えられる。また、(2)の反応によって生成される酸素による影響はウエハ面内の位置によって異なるため、酸化反応の起こる度合いが面内で不均一になり、SiCウエハ50の直下に配置されたSiCウエハ50では、熱酸化処理により形成される酸化膜5aの厚さが面内の位置によって異なるようになると考えられる。
【0025】
図1の配置において、SiCウエハ50のC面12に形成されている無機膜90が薄く、Siモニターウエハ52とSiCウエハ50の間にSiCダミーウエハ51が設置されていない場合を考える。つまり、
図1において、SiCダミーウエハ51の位置にもSiCウエハ50がおかれている場合を考える。Siモニターウエハ52では式(1)の反応が起こらないため、Siモニターウエハ52が存在することによって式(2)の反応が起こりO
2ガスが発生することもない。この場合、Siモニターウエハ52直下のSiCウエハ50においては、SiCウエハ50直下のSiCウエハ50における場合と比べて熱酸化処理により形成される酸化膜5aが薄くなる。このように、SiCウエハ50の上面上に形成される酸化膜5aの厚さはバッチ内のSiCウエハ50の間で不均一となる。
【0026】
図1に示すように、Siモニターウエハ52とSiCウエハ50の間に、C面12に無機膜90を形成したSiCダミーウエハ51を設置することで、熱酸化処理により形成される酸化膜5aの厚さがバッチ内のSiCウエハ50の間で不均一となることを抑制できる。
【0027】
SiCダミーウエハ51のC面12には、無機膜90が形成されている。SiCダミーウエハ51のC面12の無機膜90は例えばSiCウエハ50のC面12の無機膜90と同じ厚さである。この場合、SiCウエハ50のC面12から発生するのと同量のCO2ガスがSiCダミーウエハ51のC面12から発生するため、熱酸化処理により形成される酸化膜5aの厚さがバッチ内のSiCウエハ50の間で不均一となることを抑制できる。
【0028】
しかし、SiCダミーウエハ51を繰り返し使用することにより、SiCダミーウエハ51のC面12に厚い熱酸化膜が形成され、無機膜90が厚くなる。このため、SiCダミーウエハ51のC面12ではSiCウエハ50のC面12よりもO2ガスの発生量が少なくなる。SiCダミーウエハ51の直下のSiCウエハ50の上面に熱酸化処理により形成される酸化膜5aは、SiCウエハ50の直下のSiCウエハ50の上面に熱酸化処理により形成される酸化膜5aに比べて薄くなる。その結果、熱酸化処理により形成される酸化膜5aの厚さがバッチ内のSiCウエハ50の間で不均一となる。
【0029】
後述するように、実施の形態1から5の半導体装置の製造方法では、熱酸化処理を行う際、SiCウエハ50のC面12に厚い無機膜90が形成されているため、熱酸化処理により形成される酸化膜5aの厚さがバッチ内のSiCウエハ50の間で不均一となることが抑制される。
【0030】
上記の記述では式(1)および式(2)の反応が起こるという推定のもと説明を行ったが、実施の形態1から5の半導体装置の製造方法の効果は式(1)および式(2)の反応による影響を抑えることに限定されない。あるSiCウエハ50の上側の雰囲気は、当該SiCウエハ50の上側のウエハがSiモニターウエハ52かSiCダミーウエハ51かSiCウエハ50かによって変わりうる。実施の形態1から5の半導体装置の製造方法では、そのような雰囲気の変化によって、熱酸化処理により形成される酸化膜5aの厚さがバッチ内のSiCウエハ50の間で不均一となるということを、抑制できる。
【0031】
<A.実施の形態1>
<A-1.構成>
本実施の形態の炭化珪素半導体装置の製造方法により、例えばMOSFET、pnダイオード、SBD(Schottky Barrier diode)、BJT(Bipolar Junction Transistor)、JFET(Junction FET)、またはIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等が製造される。
【0032】
以下では、本実施の形態の炭化珪素半導体装置の製造方法により製造される半導体装置が
図4および
図5に示されるMOSFET100である場合を想定して説明する。
図4はMOSFET100のセル内部を示す。
図5はMOSFET100のセル外周部を示す。以下の説明において、半導体層の導電型は、入れ替えてもよい。
【0033】
図4および
図5に示されるように、MOSFET100は、SiC基板1、SiCドリフト層2、ベース領域3、ソース領域4、ゲート酸化膜5、ゲート配線6、ソース電極7、ドレイン電極8、層間絶縁膜9、およびゲート電極10を備える。
【0034】
SiC基板1の上面はSi面である。また、SiC基板1は4Hの結晶構造を有する単結晶のn型の基板である。
【0035】
SiCドリフト層2は、SiC基板1の上面上に形成されている。
【0036】
ベース領域3はSiCドリフト層2の上面の表層部分に選択的に形成されている。ベース領域3はp型の半導体層であり、p型の不純物として例えばアルミニウム(Al)を含む。
【0037】
ソース領域4はセル内部においてベース領域3の上面の表層部分に選択的に形成されている。ソース領域4はn型の半導体層である。ソース領域4はn型の不純物として例えば窒素(N)を含む。
【0038】
ゲート酸化膜5は、ソース領域4、ベース領域3、及びSiCドリフト層2のうち近接する二つのソース領域4に挟まれた領域2aの上に亘って形成されている。ゲート酸化膜5上にはゲート配線6が形成されている。また、SiC基板1の下面であるC面上にはドレイン電極8が形成されている。ゲート配線6とソース電極7は層間絶縁膜9で分離されている。ゲート配線6はセル内部からセル外周まで引き回され、セル外周でゲート電極10と接続されている。
【0039】
図4ではMOSFET100はプレーナーゲート構造として示されているが、MOSFET100はトレンチゲート型であってもよい。
【0040】
<A-2.製造方法>
図17は本実施の形態の半導体装置の製造方法のフローチャートである。
【0041】
図6~11は、MOSFET100の製造途中の状態を示す断面図である。以下、
図6~11に沿ってMOSFETの製造工程を説明する。
図6はセル内部およびセル外周部の両方に対応する図である。
図7~9、11、13、および15はセル内部に対応する図である。
図10、12、14、および16はセル外周部に対応する図である。
【0042】
まず、ステップS1では、炭化珪素基板1を準備する。
【0043】
次に、ステップS2では、炭化珪素基板1の上面上に、CVD法によりSiCドリフト層2をエピタキシャル成長させる(
図6を参照)。SiCドリフト層2のn型不純物濃度は1×10
15cm
-3~1×10
17cm
-3、厚みは5~50μmとする。
【0044】
次に、ステップS3では、SiCドリフト層2の上面上にマスク41を形成し、マスク41を用いてSiCドリフト層2にp型不純物であるAlをイオン注入する(
図7を参照)。このとき、Alのイオン注入の深さはSiCドリフト層2の厚さを超えない0.5~3μm程度である。また、イオン注入されたAlの不純物濃度は、1×10
17cm
-3~1×10
19cm
-3の範囲であり、SiCドリフト層2のn型不純物濃度より高い。SiCドリフト層2のうちAlがイオン注入された領域でかつp型になる領域がベース領域3となる。Alのイオン注入を行った後、マスク41を除去する。
【0045】
さらに、ステップS3では、マスク41を除去した後、SiCドリフト層2の上面上にマスク42を形成し、マスク42を用いて、SiCドリフト層2の表層部にn型不純物であるNをイオン注入する(
図8を参照)。ステップS3では、SiCドリフト層2のうち先にステップS3でAlイオンが注入された領域も含めてSiCドリフト層2と呼ぶ。Nをイオン注入する深さはベース領域3の厚さより浅くする。また、イオン注入するNの不純物濃度は、1×10
18cm
-3~1×10
21cm
-3の範囲でベース領域3のp型不純物濃度を超えるものとする。SiCドリフト層2内のNが注入された領域のうちn型を示す領域がソース領域4となる。Nのイオン注入を行った後、マスク42を除去する。
【0046】
次に、ステップS4では、熱処理装置によって、アルゴン(Ar)ガスなどの不活性ガス雰囲気中で1300~1900℃、30秒~1時間のアニールを行い、ステップS3においてイオン注入されたN、Alを活性化させる。
【0047】
次に、ステップS5では、層間絶縁膜9をCVD法により成膜する層間絶縁膜形成工程を行う(
図9および
図10を参照)。層間絶縁膜9により、後工程で形成するゲート配線6をセル外周部まで引き回してゲート電極10と接続する際に、SiCドリフト層2、ベース領域3、およびソース領域4とゲート配線6との間が絶縁される。層間絶縁膜9の厚さは、ゲート容量に影響を与えず、かつスイッチングおよびサージ等で層間絶縁膜9が破壊されにくい、1~3μmであることが望ましい。無機膜である層間絶縁膜9の材料はBPSG(Boro-Phospho Silicate Glass、ホウリンケイ酸塩ガラス)、PSG(Phospho Silicate Glass、リンケイ酸塩ガラス)、またはTEOS(Tetraethyl orthosilicate、テトラエトキシシラン)等である。
図8に示しされる、SiC基板1、SiCドリフト層2、ベース領域3、ソース領域4からなる構成が、
図1におけるSiCウエハ50に相当する。また、層間絶縁膜9は
図2の無機膜90に相当する。
【0048】
層間絶縁膜9は、SiCウエハ50の上面であるSi面13(つまり、ソース領域4側の主面)上と下面であるC面12(つまり、SiC基板1の下面側の主面)上に成膜される。C面12上の層間絶縁膜9は第1の無機膜の一例であり、Si面13上の層間絶縁膜9は第2の無機膜の一例である。
【0049】
次に、ステップS6では、エッチング工程を行う。ステップS6のエッチング工程では、パターニングとドライエッチング及びウェットエッチングによりセル内部においてSi面13側の層間絶縁膜9を除去し、セル外周部においてもSi面13側の所望の位置の層間絶縁膜9を除去する(
図9および
図10を参照)。
【0050】
ステップS6では、Si面13側の層間絶縁膜9がエッチングされるが、この際に、エッチングの行い方によっては、SiCウエハ50のC面12側の層間絶縁膜9もエッチングされ、SiCウエハ50のC面12側の層間絶縁膜9が薄くなる。後のステップにおいて、SiCウエハ50のC面側の層間絶縁膜9が厚さ0.75μm、つまり750nm以上あることが好ましい。そのため、本実施の形態では、ステップS6のエッチング工程は、ステップS6のエッチングが行われた後に、SiCウエハ50のC面12側の層間絶縁膜9が0.75μm以上残っているように行う。ステップS6のエッチングが行われた後に、SiCウエハ50のC面12側の層間絶縁膜9が0.75μm以上残っていることが好ましい理由については後述する。ステップS6のエッチングが行われた後にSiCウエハ50のC面12側に残っている層間絶縁膜9の厚さは1.2μm以上であってよく、1.6μm以上であってよい。
【0051】
ステップS6では、例えば、SiCウエハ50のC面側の層間絶縁膜9がSiCウエハ50の平面視における中央部で厚さ0.75μm以上残される。また、ステップS6では、例えば、SiCウエハ50のC面側の全体において層間絶縁膜9が0.75μm以上残される。また、ステップS6では、例えば、SiCウエハ50のC面側において層間絶縁膜9が平均で0.75μm以上残される。ここで、層間絶縁膜9の平均の厚さとは、SiCウエハ50の面内の多数、例えば100点以上、の均等に配置された点で測定した各厚さの平均とする。
【0052】
例えば、ステップS6のエッチングが行われた後に、SiCウエハ50のC面12側の層間絶縁膜9が0.75μm以上残っているようにするための方法としては、例えば、あらかじめSiCウエハ50のC面12側の層間絶縁膜9をより厚く形成しておく、または、ステップS6においてSiCウエハ50のC面12側の層間絶縁膜9がエッチングされにくいように、ステップS6の処理を行う際にSiCウエハ50のC面12側の層間絶縁膜9上に保護膜を形成しておく、等の方法が挙げられる。例えばステップS6において保護膜を形成せずにディップ方式のウェットエッチングを行った場合、Si面13側の層間絶縁膜9だけでなくC面12側の層間絶縁膜9もエッチングされてしまう。SiCウエハ50のC面12側の層間絶縁膜9上に保護膜を形成してからディップ方式のウェットエッチングを行うことで、コストを削減でき、かつ、SiCウエハ50のC面12側の層間絶縁膜9を例えば0.75μm以上残すことができる。
【0053】
次に、ステップS7では、熱酸化処理により、
図11および
図12に示されるように、SiCウエハ50の上面側のうち層間絶縁膜9が形成されていない領域に、熱酸化膜であるゲート酸化膜5を形成する。当該熱酸化処理では、上記のように、酸化性ガス、例えばO
2ガスまたはO
3ガス、を使用する。ゲート酸化膜5は
図2における酸化膜5aに相当する。
図2ではSiCウエハ50の下面に無機膜90が示されており、SiCウエハ50の上面に酸化膜5aが示されているが、本実施の形態のステップS7において、SiCウエハ50の上面の一部にも層間絶縁膜9が形成されていてよい。
【0054】
以下、ステップS7の詳細について説明する。ステップS7において、ゲート酸化膜5は、
図1に示す縦型バッチ式拡散炉80でSiCウエハ50に熱酸化処理を行うことにより、形成される。
【0055】
ステップS7においては、まず、C面12上に層間絶縁膜9が0.75μm以上残されたSiCウエハ50を
図1に示すように縦型バッチ式拡散炉80内に配置する。SiCウエハ50およびSiCダミーウエハ51は、C面12が下側を向くように配置される。なお、
図1において層間絶縁膜9の図示は省略されている。
【0056】
次に、1200℃以上1300℃以下でSiCウエハ50のSi面13を熱酸化させ、SiCウエハ50のSi面13に熱酸化膜を形成する。この際、SiCウエハ50のSi面13のうち層間絶縁膜9が形成されていない領域(つまり、ステップS6で層間絶縁膜9が除去された領域)に、熱酸化膜であるゲート酸化膜5が形成される。SiCウエハ50のC面12側に残された層間絶縁膜9が厚い程、O2ガスが層間絶縁膜9に阻まれてC面12に到達しづらくなる。このため、上記の式(1)および式(2)の反応によりC面12から発生するO2ガス量が少なくなり、SiCウエハ50直下のSiCウエハ50においては当該O2ガスによる酸化反応が生じにくくなる。
【0057】
ステップS7において形成されるゲート酸化膜5の厚さについて、
図18を用いて詳細に説明する。
図18は、SiCウエハ50のC面12に形成された層間絶縁膜9の厚さと、SiCウエハ50間でのゲート酸化膜5の厚さのばらつきと、の関係を示す図である。
図18の横軸は、あるSiCウエハ50のC面12に形成された層間絶縁膜9の平均厚さである。
図18の横軸は、代表的なSiCウエハ50のC面12に形成された層間絶縁膜9の厚さであるが、バッチ内の各SiCウエハ50のC面12にはほぼ同じ厚さの層間絶縁膜9が形成されている。
図18の縦軸は、ステップS7の熱酸化処理を行った際にバッチ内の各SiCウエハ50のSi面13上に形成されたゲート酸化膜5の厚さのうち最大のものと最小のものとの差である。
図18において、測定値と記されているものは、実際に熱酸化処理を行って測定を行った結果であり、計算値と記されているものは、数値シミュレーションを行って得られた結果である。バッチ内の各SiCウエハ50のうち、Si面13上に形成されたゲート酸化膜5が最も薄かったのは、SiCダミーウエハ51の直下のSiCウエハ50であった。
【0058】
図18に示される結果は
図1に示される縦型バッチ式拡散炉80を用いて熱酸化処理を行った際に得られた結果である。当該熱酸化処理では、口径が4インチのSiCウエハ50の上面に、45~50nm程度のゲート酸化膜5を形成した。当該熱酸化処理を行う前に、SiCダミーウエハ51のC面12上には、式(1)および式(2)により発生するO
2ガスが無いとみなせる程度の十分な厚さの層間絶縁膜9が形成されている。SiCダミーウエハ51のC面12上には、無機膜である層間絶縁膜9が、バッチ内の各SiCウエハ50のC面12に形成された層間絶縁膜9よりも厚く形成されている。
【0059】
図18に示すように、SiCウエハ50のC面12上に形成された層間絶縁膜9が厚い程、バッチ内のSiCウエハ50の間でのステップS7において形成されるゲート酸化膜5の厚さのばらつきが小さくなる。これは、SiCウエハ50のC面12上に形成された層間絶縁膜9が厚い程、式(1)および式(2)に示される反応によるSiCウエハ50のC面12からのO
2ガスの発生を抑制できるためと考えられる。
【0060】
ステップS7を行う際に、SiCダミーウエハ51に式(1)および式(2)により発生するO
2ガスが無いとみなせる程度の十分な厚さの層間絶縁膜9が形成されているため、SiCダミーウエハ51を設置せず、SiCウエハ50の直上がSiモニターウエハ52である場合でも、
図18と同様の結果が得られる。つまり、SiCウエハ50のC面12の層間絶縁膜9の厚さを0.75μm以上にすることで、SiCダミーウエハ51を無くした場合においても、バッチ内のSiCウエハ50の間でのゲート酸化膜5の厚さのばらつきは抑制される。そのため、SiCウエハ50のC面12の層間絶縁膜9の厚さを0.75μm以上にした場合、
図1においてSiCダミーウエハ51がおかれている位置にSiCウエハ50を置いてもよい。
【0061】
以上説明したように、ステップS6においてSiCウエハ50の下面に残す層間絶縁膜9の厚さを0.75μm以上にすると、バッチ内のSiCウエハ50間での、ステップS7において形成されるゲート酸化膜5の厚さの差を0.8nm以下に抑制できることが、鋭意研究の結果、新たに見出された。
【0062】
また、SiCウエハ50のC面12の層間絶縁膜9が薄いと、SiCウエハ50のC面12の層間絶縁膜9の厚さが面内で均一でないことによってO2発生量の面内位置による偏りが大きくなり、当該SiCウエハ50の直下のSiCウエハ50のゲート酸化膜5の面内均一性が悪くなる。SiCウエハ50の層間絶縁膜9が0.75μm以上残されていれば、O2ガスの発生を抑制できるため、当該SiCウエハ50の直下のSiCウエハ50のSi面13に形成されるゲート酸化膜5の面内均一性が向上する。
【0063】
SiCウエハ50のC面12の層間絶縁膜9の厚さを1.2μm以上にするとバッチ内のSiCウエハ50間でのゲート酸化膜5の厚さの差を0.3nm以下に抑制できる。SiCウエハ50のC面12の層間絶縁膜9の厚さを1.6μm以上にするとバッチ内のSiCウエハ50間でのゲート酸化膜5の厚さの差を0.1nm以下に抑制することができる。そのため、ステップS6で層間絶縁膜9を1.2μm残しておくことがより好ましく、ステップS6で層間絶縁膜9を1.6μm残しておくことがさらに好ましい。
【0064】
ステップS7では、熱酸化膜を形成した後、SiO
2とSiCの界面における界面準位を低減するためのポストアニールを、
図1と同様のウエハの配置で実施する。ポストアニールは、WET雰囲気、酸化窒素(NOまたはN
2O)雰囲気、POCl
3雰囲気などの酸化ガス雰囲気、もしくは、H
2ガスまたはNH
3ガスなどの還元ガス雰囲気で実施する。
【0065】
その後、ステップS8において、ゲート酸化膜5の上にゲート配線6を形成する。ゲート配線6は、導電性を有する多結晶珪素膜を減圧CVD法により形成した後、当該多結晶珪素膜をパターニングすることにより形成される。その後、CVD装置で1.0~3.0μm程度の厚さの層間絶縁膜9を追加的に形成してゲート配線6を覆う。
【0066】
その後、ステップS9において、SiCウエハ50の下面の層間絶縁膜9および多結晶珪素膜を、ウェットエッチングまたはドライエッチングにより除去する。これにより、
図13および
図14に示される状態が得られる。
【0067】
次に、ステップS10において、ソース電極7及びゲート電極10を形成する。
【0068】
ステップS10では、まず、パターニングおよびドライエッチングにより、ソース電極7を形成する領域の層間絶縁膜9を除去する。また、ソース電極7を形成する領域にシリサイド層を形成した後、パターニングおよびドライエッチングにより、ゲート配線6とコンタクトを取る領域の層間絶縁膜9を除去する(
図15および
図16を参照)。次に、ソース領域4と電気的に接続するソース電極7及びゲート配線6と電気的に接続するゲート電極10を形成する。ソース電極7およびゲート電極10は、Al合金などの膜をスパッタ法でSiCウエハ50の上面全体に成膜した後、当該膜をパターニングとウェットエッチングにより
整形することで形成される。
【0069】
次に、ステップS11において、SiCウエハ50の下面側にドレイン電極8を形成する。ドレイン電極8の材料は例えばAl合金である。
【0070】
以上の工程を経て、
図4および
図5に示される縦型のMOSFET100が完成する。
【0071】
以上説明した実施の形態1の炭化珪素半導体装置の製造方法をまとめると、以下のとおりである。複数のSiCウエハ50を準備し、複数のSiCウエハ50の下面に第1無機膜である層間絶縁膜9を形成し、当該第1無機膜の形成の後に複数のSiCウエハ50のエッチングを行う。当該エッチングは、当該エッチングの後に複数のSiCウエハ50の第1無機膜の厚さが0.75μm以上残るように行う。次に、ステップS7において、縦型バッチ式拡散炉80を用いて熱酸化処理を行って複数のSiCウエハ50の上面にゲート酸化膜5を形成する。熱酸化処理は、Siモニターウエハ52またはSiCダミーウエハ51の少なくともいずれかを含む少なくとも1つのウエハであって複数のSiCウエハ50とは異なる少なくとも1つのウエハ、および複数のSiCウエハ50が一方向に沿ってかつ複数のSiCウエハ50の上面を一方向に向けて並べられた状態で行われる。熱酸化処理の状態において、複数のSiCウエハ50のうちの第1のSiCウエハ50は、Siモニターウエハ52またはSiCダミーウエハ51の少なくともいずれかを含む少なくとも1つのウエハのいずれかの直下に配置され、複数のSiCウエハ50のうちの第2のSiCウエハ50は複数のSiCウエハ50のうちの第3のSiCウエハ50の直下に配置されている。
【0072】
ステップS7において、SiCウエハ50のC面12側の層間絶縁膜9の厚さが0.75μm以上であることにより、SiCウエハ50のC面12から発生するガスが抑制されるため、バッチ内のSiCウエハ50の間で、ゲート酸化膜5の厚さが均一化される。また、SiCウエハ50のC面12から発生するガスが抑制されるため、SiCダミーウエハ51を無くすこともできる。
【0073】
本実施の形態の製造方法のステップS7と同様の構成を、メタル電極の熱処理工程等、バッチ式装置での熱処理を行う他の工程に適用することも可能である。また、ステップS7と同様の構成を、ゲート酸化膜5以外の酸化膜を形成する工程に対して適用することも可能である。
【0074】
<B.実施の形態2>
図19は、実施の形態2の半導体装置の製造方法のステップS7(
図17を参照)における、縦型バッチ式拡散炉80へのウエハの配置され方を示す図である。本実施の形態のステップS7では、ボート82に、SiCウエハ50とSiダミーウエハ51aが交互に配置される。本実施の半導体装置の製造方法は、その他の点では実施の形態1の半導体装置の製造方法と同様である。
【0075】
ウエハが
図19のように配置されることで、SiCウエハ50のC面12から発生するO
2ガスの拡散はその直下に設置されているSiダミーウエハ51aに遮られる。拡散により他のSiCウエハ50に到達するO
2ガスの量が減少する。したがって、Siダミーウエハ51aの直下のSiCウエハ50では他のSiCウエハ50のC面12から発生するO
2ガスによる酸化は生じづらくなり、バッチ内のSiCウエハ50間におけるゲート酸化膜5の厚さのばらつきが抑えられる。
【0076】
さらに、O2ガスの発生を抑制できるため、ステップS7においてバッチ内の各SiCウエハ50のSi面13に形成されるゲート酸化膜5の厚さの面内均一性が、向上する。Siダミーウエハ51aの代わりに、下面においてO2ガスが発生しにくく、その直下のSiCウエハ50へ不均一な酸化反応を生じさせにくい他のダミーウエハを用いてもよい。当該他のダミーウエハは、例えば、厚さ0.75μm以上の無機膜が下面に形成されたSiCダミーウエハ51である。
【0077】
SiCウエハ50の下面に層間絶縁膜9が0.75μm以上残されていれば、ステップS7においてSiCウエハ50の下面から発生するO2ガスの量が減少するため、Siダミーウエハ51aを回り込み他のSiCウエハ50へと拡散するO2ガスの量も減少し、より高精度にバッチ内のSiCウエハ50の間のゲート酸化膜5の厚さのばらつきを抑えることができる。
【0078】
<C.実施の形態3>
図20は本実施の形態で用いられる縦型バッチ式拡散炉80cの構成を示す図である。本実施の形態の半導体装置の製造方法は、実施の形態1の半導体装置の製造方法と比べると、ステップS7(
図17を参照)において縦型バッチ式拡散炉80ではなく縦型バッチ式拡散炉80cを用いる点が異なる。
図20ではSiCダミーウエハ51を用いない場合が示されているが、本実施の形態においても実施の形態1の場合と同様にSiモニターウエハ52とSiCウエハ50の間にSiCダミーウエハ51を配置してもよい。本実施の形態の半導体装置の製造方法は、その他の点では実施の形態1の半導体装置の製造方法と同様である。
【0079】
実施の形態1及び2で用いられる縦型バッチ式拡散炉80と比べると、本実施の形態の縦型バッチ式拡散炉80cは、支持部82aの代わりに支持部82bを備える。縦型バッチ式拡散炉80cはその他の点では縦型バッチ式拡散炉80と同様である。
【0080】
実施の形態1の縦型バッチ式拡散炉80においては、ボート82の支持部82aは爪状であり、ウエハ端部のみが支持部82aと接触し、ウエハは中央部が支持部82aと平面視で重ならない状態で支持部82aに支持される。
【0081】
一方、本実施の形態の縦型バッチ式拡散炉80cでは支持部82bは板状である。SiCウエハ50は、C面12が下を向くような向きで、当該板状の支持部82bに載置される。SiCウエハ50は、例えば、平面視で全体が板状の支持部82bと重なるように、板状の支持部82bに載置される。SiCウエハ50は、例えば、当該SiCウエハ50の平面視における中央を含む一部または当該SiCウエハ50の平面視における全体において支持部82bと接する状態で、板状の支持部82bに載置される。
【0082】
縦型バッチ式拡散炉80cにおいては、板状の支持部82bにより、あるSiCウエハ50と、当該あるSiCウエハ50の直下のSiCウエハ50との間が仕切られる。そのため、当該あるSiCウエハ50のC面12から式(1)および式(2)の反応により発生するO2ガスのその直下のSiCウエハ50への拡散が抑制され、当該あるSiCウエハ50の直下のSiCウエハ50においてO2ガスによる酸化反応が過剰に起こることを抑制できる。縦型バッチ式拡散炉80cにおいては、例えば、互いに隣接するSiCウエハ50の間がそれぞれ、板状の支持部82bにより仕切られる。
【0083】
このように、縦型バッチ式拡散炉80cを用いることで、バッチ内のSiCウエハ50の間でのゲート酸化膜5の厚さのばらつきを抑えることができる。さらに、式(1)および式(2)の反応により発生するO2ガスの影響を抑制できるため、バッチ内の各SiCウエハ50のSi面13に形成されるゲート酸化膜5の厚さの面内均一性が向上する。
【0084】
ステップS6(
図17を参照)においてSiCウエハ50の下面に層間絶縁膜9が0.75μm以上残されていれば、ステップS7(
図17を参照)においてSiCウエハ50の下面から発生するO
2ガスの量が減少する。そのため、板状の支持部82bを回り込み拡散するO
2ガスが減少し、より高精度にバッチ内のSiCウエハ50の間でのゲート酸化膜5の厚さのばらつきを抑えることができる。
【0085】
<D.実施の形態4>
図21は本実施の形態で用いられる縦型バッチ式拡散炉80dの構成を示す図である。本実施の形態の半導体装置の製造方法は、実施の形態1の半導体装置の製造方法と比べると、ステップS7(
図17を参照)において縦型バッチ式拡散炉80ではなく縦型バッチ式拡散炉80dを用いる点が異なる。
図21ではSiCダミーウエハ51を用いない場合が示されているが、本実施の形態においても実施の形態1の場合と同様にSiモニターウエハ52とSiCウエハ50の間にSiCダミーウエハ51を配置してもよい。本実施の形態の半導体装置の製造方法は、その他の点では実施の形態1の半導体装置の製造方法と同様である。
【0086】
実施の形態1及び2で用いられる縦型バッチ式拡散炉80と比べると、本実施の形態の縦型バッチ式拡散炉80dは、仕切り84をさらに備える点が異なる。縦型バッチ式拡散炉80dはその他の点では縦型バッチ式拡散炉80と同様である。
【0087】
縦型バッチ式拡散炉80dでは、ある支持部82aに支持されるウエハと隣の段の支持部82aに支持されるウエハとは、仕切り84により仕切られる。縦型バッチ式拡散炉80dにおいては、例えば、互いに隣接するSiCウエハ50の間がそれぞれ、仕切り84により仕切られる。
【0088】
仕切り84により、ステップS7においてSiCウエハ50の下面から発生するO2ガスが当該SiCウエハ50の直下のSiCウエハ50に拡散することが抑制され、SiCウエハ50の直下のSiCウエハ50におけるO2ガスによる酸化反応が抑制される。これにより、バッチ内のSiCウエハ50の間でのゲート酸化膜5の厚さのばらつきを抑えることができる。さらに、O2ガスの拡散を抑制できるため、バッチ内の各SiCウエハ50におけるSi面13のゲート酸化膜5の厚さの面内均一性が向上する。
【0089】
ステップS6(
図17を参照)においてSiCウエハ50の下面に層間絶縁膜9が0.75μm以上残されていれば、ステップS7(
図17を参照)においてSiCウエハ50の下面から発生するO
2ガスの量が減少する。そのため、仕切り84を回り込み拡散するO
2ガスが減少し、より高精度にバッチ内のSiCウエハ50の間でのゲート酸化膜5の厚さのばらつきを抑えることができる。
【0090】
SiCウエハ50から発生するガスが仕切り84を回り込み拡散するのを防ぐため、仕切り84の大きさはウエハの大きさと同等かそれ以上が望ましい。例えば、ステップS7(
図17を参照)において、SiCウエハ50は、当該SiCウエハ50の全体が平面視で仕切り84と重なるような配置で、支持部82aに支持される。
【0091】
仕切り84はボート82と一体であっても良いし、ボート82から取り外すことができても良い。
【0092】
仕切り84をボート82から取り外すことができれば、ボート82の取り回しが良くなり、縦型バッチ式拡散炉80dの設置およびメンテナンスが容易になる。
【0093】
<E.実施の形態5>
図22は本実施の形態で用いられる縦型バッチ式拡散炉80eの構成およびステップS7(
図17を参照)におけるウエハの配置を示す図である。本実施の形態の半導体装置の製造方法は、実施の形態1の半導体装置の製造方法と比べると、ステップS7において縦型バッチ式拡散炉80ではなく縦型バッチ式拡散炉80eを用いる点が異なる。
図22ではSiCダミーウエハ51を用いない場合が示されている。本実施の形態の半導体装置の製造方法は、その他の点では実施の形態1の半導体装置の製造方法と同様である。
【0094】
実施の形態1及び2で用いられる縦型バッチ式拡散炉80と比べると、縦型バッチ式拡散炉80eは、ガス導入ライン83に加えてガス導入ライン83aを備える点が異なる。縦型バッチ式拡散炉80eは、ガス導入ライン83aにより、複数のウエハが積層されている方向に隣接するある一組の支持部82aの間の領域に対し、複数のウエハが積層されている方向に隣接する別の一組の支持部82aの間の領域に対するよりも、より多くのO2ガスまたはO3ガスを供給可能である。
【0095】
本実施の形態の半導体装置の製造方法では、ステップS7(
図17を参照)において、ガス導入ライン83を通して酸素が供給されるのに加え、Siモニターウエハ52とSiCウエハ50と、の間に、ガス導入ライン83aを通してO
2ガスまたはO
3ガスが選択的に供給される。これにより、Siモニターウエハ52とSiCウエハ50との間の領域に、SiCウエハ50同士の間の領域に対するよりも、より多くのO
2ガスまたはO
3ガスが供給される。ステップS7(
図17を参照)においてダミーウエハが用いられる場合には、当該ダミーウエハとSiCウエハ50と、の間の領域に、ガス導入ライン83aを通してO
2ガスまたはO
3ガスが供給される。これにより、当該ダミーウエハとSiCウエハ50との間の領域に、SiCウエハ50同士の間の領域に対するよりも、より多くのO
2ガスまたはO
3ガスが供給される。
【0096】
上述のように、実施の形態1の
図18に示される結果において、ステップS7(
図17を参照)においてモニターウエハまたはダミーウエハの直下に配置されたSiCウエハ50に形成されるゲート酸化膜5は、ステップS7(
図17を参照)においてSiCウエハ50の直下に配置されたSiCウエハ50に形成されるゲート酸化膜5と比べて薄かった。
【0097】
本実施の形態の半導体装置の製造方法においては、モニターウエハまたはダミーウエハの直下に配置されたSiCウエハ50の上面に、ガス導入ライン83aから優先的にO2ガスまたはO3ガスが供給され、モニターウエハまたはダミーウエハの直下に配置されたSiCウエハ50の上面において当該O2ガスまたはO3ガスによる酸化反応が生じやすくなる。したがって、バッチ内のSiCウエハ50の間でのゲート酸化膜5の厚さのばらつきを抑えられる。
【0098】
縦型バッチ式拡散炉80eは、ガス導入ライン83aを備えていなくてもよい。その場合、ガス導入ライン83には、
図23に示されるように、チューブ81内において、開口830に加えて、側面に開口831が設けられている。モニターウエハまたはダミーウエハと当該モニターウエハまたはダミーウエハの直下に配置されたSiCウエハ50との間の領域に、開口831から優先的にO
2ガスまたはO
3ガスが供給されることにより、バッチ内のSiCウエハ50の間でのゲート酸化膜5の厚さのばらつきを抑えられる。
【0099】
ステップS6(
図17を参照)においてSiCウエハ50の下面に層間絶縁膜9が0.75μm以上残されていれば、ステップS7においてバッチ内のSiCウエハ50の間でのゲート酸化膜5の厚さの差を0.8nm以下に抑制できることを実施の形態1で説明したが、実施の形態5を併用することでより高精度にバッチ内のSiCウエハ50間におけるゲート酸化膜5の厚さのばらつきを抑えることができる。その場合、ステップS7(
図17を参照)において、SiCウエハ50の下面に形成されている層間絶縁膜9の厚さに応じて、ガス導入ライン83aから供給される酸化性ガスの量を調整する。また、SiCウエハ50とSiモニターウエハ52の間にSiCダミーウエハ51を配置する場合には、ステップS7(
図17を参照)において、SiCウエハ50の下面に形成されている層間絶縁膜9の厚さおよびSiCダミーウエハ51の下面に形成されている層間絶縁膜9の厚さに応じて、ガス導入ライン83aから供給される酸化性ガスの量を調整する。
【0100】
なお、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0101】
1 SiC基板、2 SiCドリフト層、3 ベース領域、4 ソース領域、5 ゲート酸化膜、5a 酸化膜、6 ゲート配線、7 ソース電極、8 ドレイン電極、9 層間絶縁膜、10 ゲート電極、12 C面、13 Si面、41,42 マスク、45 Si原子、46 C原子、50 SiCウエハ、51 SiCダミーウエハ、51a Siダミーウエハ、52 Siモニターウエハ、80,80c,80d,80e 縦型バッチ式拡散炉、81 チューブ、82 ボート、82a,82b 支持部、83,83a ガス導入ライン、84 仕切り、90 無機膜、830,831 開口。