(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】可動構造体および人形体
(51)【国際特許分類】
A63H 3/36 20060101AFI20241004BHJP
【FI】
A63H3/36 D
(21)【出願番号】P 2021130954
(22)【出願日】2021-08-10
(62)【分割の表示】P 2019215570の分割
【原出願日】2019-11-28
【審査請求日】2022-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000135748
【氏名又は名称】株式会社バンダイ
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福元 和正
(72)【発明者】
【氏名】奥野 彰文
【審査官】西村 民男
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-181277(JP,A)
【文献】特開2019-030684(JP,A)
【文献】特開2017-170113(JP,A)
【文献】特開2017-148670(JP,A)
【文献】特開2017-124235(JP,A)
【文献】特開2011-041855(JP,A)
【文献】実開昭61-045991(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2007/0281582(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63H 1/00-37/00
A47F 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人形体の所定部位を可動可能とするための可動構造体であって、
前記所定部位を形成する第1パーツおよび第2パーツ、並びに、それらを接続するための第1接続パーツを備え、
前記第1接続パーツは、
前記第1パーツと回動可能に係合する第1回動部と、
前記第2パーツと回動可能に係合する第2回動部と、
を含んでおり、
前記第1回動部と前記第2回動部とは、前記第1パーツの回動軸と前記第2パーツの回動軸とが前記第1パーツと前記第2パーツとの接続方向において互いに重ならないように設けられ、
前記第1回動部は前記第2回動部に対して前記人形体の正面側に位置して
おり、
前記可動構造体は、
前記第1パーツおよび前記第2パーツと共に前記所定部位を形成する第3パーツと、
前記第2パーツと前記第3パーツとを接続する第2接続パーツと、
を更に備え、
前記第2接続パーツは、
前記第2パーツと回動可能に係合する第3回動部と、
前記第3パーツと回動可能に係合する第4回動部と、
を含んでおり、
前記第3回動部と前記第4回動部とは、前記第2パーツの回動軸と前記第3パーツの回動軸とが前記第2パーツと前記第3パーツとの接続方向において互いに重ならないように設けられており、
前記所定部位は、前記人形体の胴体部であり、
前記第1接続パーツは前記胴体部における胸部および上腹部間に位置し、前記第2接続パーツは前記胴体部における上腹部および下腹部間に位置する、可動構造体。
【請求項2】
前記第3回動部は前記第4回動部に対して前記人形体の背面側に位置する
請求項
1に記載の可動構造体。
【請求項3】
前記第3回動部は、少なくとも部分的に前記第1回動部の直下に位置する
請求項
1または
2に記載の可動構造体。
【請求項4】
前記第1回動部および前記第2回動部間の人形体水平方向における距離は、前記第3回動部および前記第4回動部間の人形体水平方向における距離よりも大きい
請求項
1から請求項
3の何れか1項に記載の可動構造体。
【請求項5】
前記胴体部の上方において頭部を回動可能に支持する第1支持パーツを更に備え、
前記頭部の回動軸は、前記第1回動部による前記第1パーツの回動軸よりも前記人形体の背面側に位置する
請求項
1から請求項
4の何れか1項に記載の可動構造体。
【請求項6】
前記頭部の回動軸は、前記第2回動部による前記第2パーツの回動軸よりも前記人形体の正面側に位置する
請求項
5に記載の可動構造体。
【請求項7】
前記胴体部の下方において腰部を回動可能に支持する第2支持パーツを更に備え、
前記腰部の回動軸は、前記第4回動部による前記第3パーツの回動軸よりも前記人形体の背面側に位置する
請求項
1から請求項
6の何れか1項に記載の可動構造体。
【請求項8】
前記第1接続パーツは、略水平方向に延設された基部を含み、
前記第1回動部は、前記基部の長手方向の一方の面に設けられ、前記第2回動部は、前記基部の前記長手方向の他方の面に設けられる
請求項1から
7の何れか1項に記載の可動構造体。
【請求項9】
人形体の所定部位を可動可能とするための可動構造体であって、
前記所定部位を形成する第1パーツおよび第2パーツ、並びに、それらを接続するための第1接続パーツを備え、
前記第1接続パーツは、
前記第1パーツと回動可能に係合する第1回動部と、
前記第2パーツと回動可能に係合する第2回動部と、
を含んでおり、
前記第1回動部と前記第2回動部とは、前記第1パーツの回動軸と前記第2パーツの回動軸とが前記第1パーツと前記第2パーツとの接続方向において互いに重ならないように設けられ、
前記第1回動部は前記第2回動部に対して前記人形体の正面側に位置しており、
前記第1接続パーツは、略水平方向に延設された基部を含み、
前記第1回動部は、前記基部の長手方向の一方の面に設けられ、前記第2回動部は、前記基部の前記長手方向の他方の面に設けられる、可動構造体。
【請求項10】
前記基部は、前記長手方向において段差を有し、
前記一方の面における前記段差により、前記第1パーツの回動を規制し、
前記他方の面における前記段差により、前記第2パーツの回動を規制する、
請求項
9に記載の可動構造体。
【請求項11】
前記第1回動部および前記第2回動部は、球形である
請求項1から請求項
10の何れか1項に記載の可動構造体。
【請求項12】
人形体の所定部位を可動可能とするための可動構造体であって、
前記所定部位を形成する第1パーツおよび第2パーツ、並びに、それらを接続するための第1接続パーツを備え、
前記第1接続パーツは、
前記第1パーツと回動可能に係合する第1回動部と、
前記第2パーツと回動可能に係合する第2回動部と、
を含んでおり、
前記第1回動部と前記第2回動部とは、前記第1パーツの回動軸と前記第2パーツの回動軸とが前記第1パーツと前記第2パーツとの接続方向において互いに重ならないように設けられ、
前記第1回動部は前記第2回動部に対して前記人形体の正面側に位置しており、
前記第1回動部および前記第2回動部は、球形である、可動構造体。
【請求項13】
請求項1から請求項12の何れか1項に記載の可動構造体を有する人形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に人形体の可動構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
人形体の各部位(例えば、胴体部、腕部、脚部等)には、該部位を可動可能とするための可動構造が設けられる(特許文献1参照)。ユーザは、このような可動構造を用いて人形体を所望の姿勢(例えば、前屈姿勢、後屈姿勢等)にすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
人形体のなかには多様な姿勢を形成可能なものもあり、姿勢の変更の前、変更の後および変更の途中における何れにおいても、その姿勢が適切に(違和感のないように)実現されることが求められうる。
【0005】
本発明は、人形体が多様な姿勢を適切に形成可能とすることを例示的目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つの側面は可動構造体に係り、前記可動構造体は、人形体の所定部位を可動可能とするための可動構造体であって、前記所定部位を形成する第1パーツおよび第2パーツ、並びに、それらを接続するための第1接続パーツを備え、前記第1接続パーツは、前記第1パーツを回動可能に固定する第1回動部と、前記第2パーツを回動可能に固定する第2回動部と、を含んでおり、前記第1回動部と前記第2回動部とは、前記第1パーツの回動軸と前記第2パーツの回動軸とが前記第1パーツと前記第2パーツとの接続方向において互いに重ならないように設けられている。
本発明の他の側面は可動構造体に係り、前記可動構造体は、人形体の所定部位を可動可能とするための可動構造体であって、前記所定部位を形成する第1パーツおよび第2パーツ、並びに、それらを接続するための第1接続パーツを備え、前記第1接続パーツは、前記第1パーツと回動可能に係合する第1回動部と、前記第2パーツと回動可能に係合する第2回動部と、を含んでおり、前記第1回動部と前記第2回動部とは、前記第1パーツの回動軸と前記第2パーツの回動軸とが前記第1パーツと前記第2パーツとの接続方向において互いに重ならないように設けられ、前記第1回動部は前記第2回動部に対して前記人形体の正面側に位置しており、
前記可動構造体は、
前記第1パーツおよび前記第2パーツと共に前記所定部位を形成する第3パーツと、
前記第2パーツと前記第3パーツとを接続する第2接続パーツと、
を更に備え、
前記第2接続パーツは、
前記第2パーツと回動可能に係合する第3回動部と、
前記第3パーツと回動可能に係合する第4回動部と、
を含んでおり、
前記第3回動部と前記第4回動部とは、前記第2パーツの回動軸と前記第3パーツの回動軸とが前記第2パーツと前記第3パーツとの接続方向において互いに重ならないように設けられており、
前記所定部位は、前記人形体の胴体部であり、
前記第1接続パーツは前記胴体部における胸部および上腹部間に位置し、前記第2接続パーツは前記胴体部における上腹部および下腹部間に位置する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、人形体は多様な姿勢を適切に形成可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3A】人形体が胴体部で形成可能な姿勢の一つ(直立姿勢)を示す端面図。
【
図3B】人形体が胴体部で形成可能な姿勢の一つ(前屈姿勢)を示す端面図。
【
図3C】人形体が胴体部で形成可能な姿勢の一つ(後屈姿勢)を示す端面図。
【
図4】人形体の頭部、胴体部及び腰部の構造を示す端面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
図1は、実施形態に係る人形体1全体を示す正面図である。以下、各部位の位置関係を説明するのに際して、前(前方)、後(後方)、左(左側方)、右(右側方)、上(上方)、下(下方)等と記載する場合があるが、これらの表現は人形体1を基準とした相対的なものである。例えば、前(前方)は人形体1正面側に対応し、後(後方)は人形体1背面側に対応する。
【0011】
人形体1は、頭部11、胴体部12、腕部13、腰部14および脚部15を備える。頭部11は、胴体部12上方において回動可能に支持される。腕部13は、胴体部12上部側方において回動可能に支持される。腰部14は、胴体部12下方において回動可能に支持される。脚部15は、腰部14下方において回動可能に支持される。
【0012】
胴体部12は、胸部121および腹部122を含む部位であり、また、腹部122は、上腹部122Uおよび下腹部122Dに分けられる。詳細については後述とするが、胴体部12は、これら胸部121、上腹部122Uおよび下腹部122D間において可動可能に構成される。
【0013】
尚、本実施形態においては、人形体1は人型とするが、他の実施形態として、犬、猫等の他の動物の型が採用されてもよい。
【0014】
図2は、胴体部12についての分解図を示す(本実施形態の説明に実質的に関連しない一部の装飾パーツについては省略(不図示)とする。)。胴体部12は、胴体部パーツP11~P17と、それらの接続パーツP21~P26とを含む。これらパーツP11~P17及びP21~P26は、直接的/間接的に相互接続される。
【0015】
尚、理解の容易化のため、図中には、これらパーツP11等の間の接続関係を破線の矢印で示す。
【0016】
パーツP11及びP12は、直接的に相互接続され、また、部分的にパーツP21を介して接続される。パーツP17は、パーツP11に対して前方から接続される。パーツP13及びP14は、直接的に相互接続され、また、部分的にパーツP23を介して接続される。パーツP15及びP16は、直接的に相互接続され、また、部分的にパーツP25及びP26を介して接続される。
【0017】
パーツP22は、回動部B22U及びB22D、並びに、基部B22を含む。回動部B22Uは、基部B22上面において固定され、回動部B22Dは、基部B22下面において固定される。回動部B22U及びB22Dは、上下一対のボール軸であり、一方(上方側)の回動部B22UはパーツP21に回動可能に嵌合し、他方(下方側)の回動部B22DはパーツP23に回動可能に嵌合する。
【0018】
詳細については後述とするが、基部B22は略水平方向に延設され、回動部B22U及びB22Dは、上下方向において(上下方向の視線で見た場合に)少なくとも部分的に互いに重ならないように/一方が他方に対して水平方向にシフトするように、設けられる。本実施形態では、回動部B22Uが前方側に位置し且つ回動部B22Dが後方側に位置する。本実施形態では、回動部B22Uが基部B22の一端部に位置し、回動部B22Dが基部B22の他端部に位置する態様を示したが、この態様に限られない。本実施形態においては、回動部B22Uおよび回動部B22Dをそれらが互いに離間するように基部B22の両端部に配置したことにより、パーツP22が回動した際に基部B22の各端部が他のパーツと干渉することを防止可能となる。
【0019】
上記パーツP22同様、パーツP24は、回動部B24U及びB24D、並びに、基部B24を含む。回動部B24Uは、基部B24上面において固定され、回動部B24Dは、基部B24下面において固定される。回動部B24U及びB24Dは、上下一対のボール軸であり、一方(上方側)の回動部B24UはパーツP23に回動可能に嵌合し、他方(下方側)の回動部B24DはパーツP26に回動可能に嵌合する。
【0020】
詳細については後述とするが、基部B24は略水平方向に延設され、回動部B24U及びB24Dは、上下方向において少なくとも部分的に互いに重ならないように/一方が他方に対して水平方向にシフトするように、設けられる。本実施形態では、回動部B24Uが後方側に位置し且つ回動部B24Dが前方側に位置する。本実施形態では、回動部B24Uが基部B24の一端部に位置し、回動部B24Dが基部B24の他端部に位置する態様を示したが、この態様に限られない。本実施形態においては、回動部B24Uおよび回動部B24Dをそれらが互いに離間するように基部B24の両端部に配置したことにより、パーツP24が回動した際に基部B24の各端部が他のパーツと干渉することを防止可能となる。
【0021】
パーツP11、P12、P17及びP21は、相互に連結して胸部121を形成する。パーツP13、P14及びP23は、相互に連結して上腹部122Uを形成する。また、パーツP15、P16、P25及びP26は、相互に連結して下腹部122Dを形成する。
【0022】
パーツP22は、パーツP21及びP23をそれぞれ回動部B22U及びB22Dにより回動可能に接続し、これにより、胸部121及び上腹部122Uを相対的に回動可能に接続する。また、パーツP24は、パーツP23及びP26をそれぞれ回動部B24U及びB24Dにより回動可能に接続し、これにより、上腹部122U及び下腹部122Dを相対的に回動可能に接続する。
【0023】
ここで、胸部121、上腹部122U及び下腹部122D間の上記回動は、本実施形態では上述の回動部B22U等としてのボール軸により実現される。そのため、ここでいう回動とは、人形体1の前後方向および左右方向の回動(即ち、前屈、後屈および側屈)を含む他、上下方向に対する周方向の回動(即ち、回旋ないし捻り)をも含む。
【0024】
このような構成により、胴体部12は、胸部121、上腹部122Uおよび下腹部122D間において、前屈、後屈、側屈および回旋の何れも実現可能な可動構造(構造ST1とする。)を有している。可動構造ST1は、関節構造、変形構造、姿勢変更構造等と表現されてもよい。また、可動構造ST1を有する物体は可動構造体と表現可能であり、即ち、この可動構造体は人形体1の一部/全部であると云える。
【0025】
本実施形態では、パーツP22(P24)が回動部B22U及びB22D(B24U及びB24D)としてボール軸を含むものとするが、他の実施形態として、それらボール軸と、それらに回動可能に嵌合する嵌合部との関係は逆であってもよい。例えば、ボール軸がパーツP21に設けられ、かつ、そのボール軸に対応する嵌合部がパーツP22に設けられてもよい。よって、ボール軸と、該ボール軸が嵌合する嵌合部とは、何れも回動部と表現可能と云える。
【0026】
尚、パーツP22等による回動機構は、回動部B22U等に限られるものではなく、他の構造(例えば、棒状の軸体を用いた構造、該軸体を2以上組み合わせて成る構造等)が採用されてもよい。
【0027】
図3A~
図3Cは、
図2のパーツP11等を組み立てた状態の胴体部12の端面図を示す(胴体部12の中央部を通り且つ前後方向かつ上下方向に平行な面を切断面とする。また、パーツP17は不図示とする。)。
図3Aは、人形体1(或いは胴体部12)の直立姿勢における胴体部12の端面図を示す。
図3Bは、人形体1の前屈姿勢における胴体部12の端面図を示す。
図3Cは、人形体1の後屈姿勢における胴体部12の端面図を示す。
【0028】
ここで、
図3Aの直立姿勢は、パーツP22及びP24(或いは基部B22及びB24)が共に略水平姿勢となっており、胸部121、上腹部122U及び下腹部122Dが実質的に鉛直方向に並んだ状態に対応する。
図3Bの前屈姿勢は、パーツP22及び/又はP24の回動により胴体部12の少なくとも一部が前方に傾いた姿勢となっている状態に対応する。
図3Cの後屈姿勢は、パーツP22及び/又はP24の回動により胴体部12の少なくとも一部が後方に傾いた姿勢となっている状態に対応する。
【0029】
可動構造ST1によれば、
図3A(直立姿勢)及び
図3B(前屈姿勢)間の比較から分かるように、パーツP22の回動部B22UおよびパーツP24の回動部B24Dが、胴体部12の前屈に寄与する。より詳細には、回動部B22Uは、胸部121が上腹部122Uに対して前方に回動することを許容し、回動部B24Dは、上腹部122Uが下腹部122Dに対して前方に回動することを許容する。これにより、上記前屈に際して、胴体部12を構成する個々のパーツP11等間における干渉を防止可能となる。
【0030】
尚、上記前屈の際、上腹部122Uと回動部B22Dとの相対位置、及び、上腹部122Uと回動部B24Uとの相対位置は実質的に変わらない(或いは、相対位置の変動量は比較的小さい。)。
【0031】
同様に、
図3A(直立姿勢)及び
図3C(後屈姿勢)間の比較から分かるように、パーツP22の回動部B22DおよびパーツP24の回動部B24Uが、胴体部12の後屈に寄与する。より詳細には、回動部B22Dは、胸部121が上腹部122Uに対して後方に回動することを許容し、回動部B24Uは、上腹部122Uが下腹部122Dに対して後方に回動することを許容する。これにより、上記後屈に際して、胴体部12を構成する個々のパーツP11等間における干渉を防止可能となる。
【0032】
尚、上記後屈の際、胸部121と回動部B22Uとの相対位置、及び、下腹部122Dと回動部B24Dとの相対位置は実質的に変わらない(或いは、相対位置の変動量は比較的小さい。)。
【0033】
胴体部12の姿勢を前屈および後屈の何れにも変更可能とするため、パーツP22は、それぞれ回動部B22U及びB22DにおいてパーツP21及びP23に対する上下方向への所定量の揺動が許容されるように設置されるとよい。同様に、パーツP24は、それぞれ回動部B24U及びB24DにおいてパーツP23及びP26に対する上下方向への所定量の揺動が許容されるように設置されるとよい。
【0034】
また、人形体1の直立姿勢において、パーツP22の回動部B22Uと、パーツP24の回動部B24Uとは、上下方向において少なくとも部分的に互いに重なって位置するとよい。即ち、回動部B24Uは、少なくとも部分的に回動部B22Uの直下に位置するとよい。これにより、人形体1の姿勢を魅力的に(例えば、直立姿勢において凛々しく)することが可能となる。
【0035】
本実施形態においては、パーツP22の回動部B22U及びB22D間の水平方向(ここでは前後方向)における距離は、パーツP24の回動部B24U及びB24D間の水平方向における距離よりも大きい。これにより、胸部121及び上腹部122U間の相対的な可動領域を上腹部122U及び下腹部122D間の相対的な可動領域より大きくし、例えば人形体1の前屈姿勢および後屈姿勢をダイナミックに見せ、該姿勢を躍動感のあるものにすることが可能となる。また、体(上体)を捻る動作において、より自然な動き、違和感の少ない動きにすることも可能となる。
【0036】
また、前述のとおり、本実施形態では、パーツP22において回動部B22Uが前方側に位置し且つ回動部B22Dが後方側に位置し、また、パーツP24において回動部B24Uが後方側に位置し且つ回動部B24Dが前方側に位置する。このような構成において、パーツP22及びP24は、回動部B22U及びB24Uが上下方向で互いに重なって位置するように、設置される。これにより、パーツP22及びP24を近接して設置可能となり、胴体部12の内部構造を比較的簡素にすることもできる。
【0037】
ここでは、
図3A~
図3Cを参照しながら直立姿勢、前屈姿勢および後屈姿勢について述べたが、本実施形態によれば、上記パーツP22及びP24は、回動部B22U等としてのボール軸により、人形体1の側屈姿勢および回旋姿勢をも許容可能とする。
【0038】
図4は、人形体1の端面図を示す(胴体部12の中央部を通り且つ前後方向かつ上下方向に平行な面を切断面とする。)。人形体1は、胴体部12上方において頭部11を回動可能に支持するための支持パーツP91
11と、胴体部12下方において腰部14を回動可能に支持するための支持パーツP91
14と、を更に備える。このような構成により、頭部11は胴体部12に対して回動可能となっており、また、腰部14は胴体部12に対して回動可能となっている。
【0039】
ここで、頭部11の回動軸AX5は、パーツP22の回動部B22UによるパーツP21(胸部121)の回動軸AX1よりも後方側に位置する。これにより、人形体1の姿勢を魅力的に(例えば、直立姿勢や前屈姿勢において凛々しく)することが可能となる。
【0040】
この回動軸AX5は、パーツP22の回動部B22DによるパーツP23(上腹部122U)の回動軸AX2よりも前方側に位置するとよい。これにより、人形体1の姿勢を更に魅力的に(例えば、直立姿勢や後屈姿勢において更に凛々しく)することが可能となる。
【0041】
また、腰部14の回動軸AX6は、パーツP24の回動部B24DによるパーツP26(下腹部122D)の回動軸AX4よりも後方側に位置するとよい。これにより、人形体1の姿勢を更に魅力的に(例えば、直立姿勢や前屈姿勢において更に凛々しく)することが可能となる。
【0042】
また、パーツP24の回動部B24UによるパーツP23(上腹部122U)の回動軸を軸AX3としたとき、前後方向において、軸AX1は軸AX3及びAX4間に位置し、また、軸AX6は軸AX2及びAX3間に位置する。これにより、人形体1の姿勢を更に魅力的に(例えば、直立姿勢において更に凛々しく)することが可能となる。或いは、軸AX1、AX3及びAX6は実質的に鉛直方向に並んでもよい。
【0043】
本実施形態では、支持パーツP9111が、頭部11を回動可能に支持するボール軸を含むものとするが、他の実施形態として、ボール軸と、該ボール軸に回動可能に嵌合する嵌合部との関係は逆であってもよく、即ち、ボール軸は頭部11に設けられてもよい。このことは支持パーツP9114についても同様である。
【0044】
以上の実施形態によれば、人形体1は、可動可能な所定部位(ここでは胴体部12)を構成するための可動構造ST1を有しており、例えば、パーツP21及びP23(胸部121及び上腹部122U)を接続するための接続パーツP22を備える。パーツP22は、パーツP21を回動可能に固定する回動部B22Uと、パーツP23を回動可能に固定する回動部B22Dとを含む。これら回動部B22U及びB22Dは、それらの回動軸が、パーツP21及びP23の接続方向(本実施形態では人形体1の上下方向)において互いに重ならないように設けられている。このような構成によれば、人形体1の姿勢を、その変更前、変更後および変更の途中の何れにおいても、より自然なものにすることが可能となり、例えば、胴体部12は、直立姿勢、前屈姿勢、後屈姿勢、側屈姿勢および回旋姿勢の何れも適切に形成可能となる。よって、実施形態によれば、人形体1は多様な姿勢を適切に形成可能となる。
【0045】
また、人形体1は、パーツP23及びP26(上腹部122U及び下腹部122D)を接続するための接続パーツP24を更に備える。パーツP24は、上記パーツP22同様の構成を有しており、即ち、パーツP23を回動可能に固定する回動部B24Uと、パーツP26を回動可能に固定する回動部B24Dとを含む。これら回動部B24U及びB24Dは、それらの回動軸が、パーツP23及びP26の接続方向において互いに重ならないように設けられている。このような構成によれば、胴体部12は、胸部121、上腹部122U及び下腹部122Dの3つの部位の間で適切に可動可能となり、人形体1が適切に形成可能な姿勢を多様化することができる。
【0046】
実施形態では、胸部121がパーツP11、P12、P17及びP21により形成されるものとしたが、胸部121は単一のパーツで構成されてもよい。このことは、パーツP13、P14及びP23により形成される上腹部122U、並びに、パーツP15、P16、P25及びP26により形成される下腹部122Dについても同様である。よって、回動部B22U及びB22Dを含むパーツP22、及び/又は、回動部B24U及びB24Dを含むパーツP24が、胴体部12の一部を形成する2つのパーツ間に適用されることにより、実施形態は適切に実現可能である。
【0047】
また、実施形態で説明された上述の内容は、胴体部12に限られるものではなく、人形体1の何れの部位に適用されてもよい。
【0048】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0049】
1:人形体、P21:第1パーツ、P23:第2パーツ、P22:第1接続パーツ、B22U:第1回動部、B22D:第2回動部。