(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】軌道分岐器開通方向表示装置
(51)【国際特許分類】
E21D 11/40 20060101AFI20241004BHJP
B61L 5/10 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
E21D11/40 Z
B61L5/10 A
(21)【出願番号】P 2021136040
(22)【出願日】2021-08-24
【審査請求日】2023-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(72)【発明者】
【氏名】安藤 哲人
(72)【発明者】
【氏名】秦野 淳
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-215215(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0399836(US,A1)
【文献】特開2018-053480(JP,A)
【文献】特開2021-055916(JP,A)
【文献】特開2020-013329(JP,A)
【文献】特開2020-201918(JP,A)
【文献】登録実用新案第3201850(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 11/40
B61L 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌道は左右一対のレールからなり、該レールの間に、該レールに沿って配置された線状の発光表示部と
、
軌道分岐器の開通方向を検知し、該開通方向の前記レールに対応する前記発光表示部を作動させる制御部と、からな
り、
前記発光表示部によって発光される色を前記開通方向ごとに変えられることを特徴とする軌道分岐器の開通方向を表示する軌道分岐器開通方向表示装置。
【請求項2】
前記発光表示部はLED のチューブライトであることを特徴とする請求項
1に記載の軌道分岐器開通方向表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールドトンネル内に設けられた軌道分岐器の開通方向の軌道分岐器開通方向表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シールドトンネルの施工では、シールド掘削機による地山の掘削、シールド掘削機の後部におけるセグメントの組み立て、裏込め注入、坑口側における床版の施工等、複数の作業を並行あるいは連続して行う必要がある。一般に、シールドトンネル工事では、こうしたセグメント等の資材や各種機材の搬出入作業、あるいは作業員等、人員の搬送作業にバッテリーロコと台車等により編成された輸送手段を使用するが、昨今におけるトンネルの長距離化、大断面トンネルに対応するため、トンネル内では複数の軌道および複数の輸送手段が用いられる場合がある。この場合、工事の進捗状況に応じて資機材を所定の位置に輸送する必要があるため、輸送遅延を招かないよう輸送手段同士が軌道間を自由に行き来できる軌道分岐器が用いられる。トンネル内の照度や見通しの点から、軌道分岐器で異なる軌道への進路変更(分岐)する場合には、十分な減速が必要になるため、特に安全上十分な配慮が求められる。
特許文献1には、鉄道線路における分岐器(ポイント)の開通方向を表示する分岐器開通方向表示装置に関するもので、夜間に作業する保守用車の運行を安全に守り、作業の効率化を図るための分岐器開通方向表示装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の分岐器開通方向表示装置は、鉄道線路における分岐器の開通方向を表示する表示部と、この表示部を制御する磁気近接センサーと、前記分岐器を制御する転轍機の動作かんの動きにより移動して前記磁気近接センサーを制御(ON/OFF)するセンサー用磁石とからなり、非接触により動作かんの動きを利用して分岐器の開通方向を磁気近接スイッチで検出し、前記表示部に表示することを特徴としている。しかしながら、システムが複雑であり、表示部の情報から分岐の有無を読み取る必要があり、直観的でないため、誤認識等のヒューマンエラーによる人災リスクも考えられる。
本発明は、前記の問題を解決することを目的とするものであり、簡易な構成で、確実に、輸送手段の軌道分岐器の開通方向を直観的な手段で表示する軌道分岐器開通方向表示装置を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための本発明の軌道分岐器開通方向表示装置は、軌道は左右一対のレールからなり、該レールの間に、該レールに沿って配置された線状の発光表示部と、前記軌道分岐器の開通方向を検知し、該開通方向の前記レールに対応する前記発光表示部を作動させる制御部と、からなる軌道分岐器の開通方向を表示することを特徴としている。
係る構成によれば、左右一対のレールの間に、レールに沿って線状の発光表示部が配置されており、開通方向のレールに対応して表示させることができるので、照度や見通しが不十分なトンネル環境下にあっても、比較的遠方から、明確に、視覚的に開通方向の視認が可能となる。
【0006】
また、前記発光表示部によって発光される色を開通方向ごとに変えられることが好ましい。
開通方向ごとに異なる色を定めておけば、色と方向との関連性を習熟効果によって習熟でき、時間の経過とともに開通方向を見誤るリスクを低減することが可能となる。
【0007】
また、前記発光表示部はLEDのチューブライトであっても良い。
発光表示部を配線とともに透明で柔らかいチューブ内に多数のLED電球が等間隔で連ねたLEDのチューブライトとすることで、トンネル施工中に求められる高い耐久性を有し、様々な光の強さや色に対応できるだけでなく、多彩な発光パターンにも対応できる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の軌道分岐器開通方向表示装置によれば、簡易な構成で、確実に、輸送手段の軌道分岐器の開通方向を容易に表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態であるシールドトンネル内の輸送手段の配置断面図である。
【
図2】本発明の実施形態である軌道分岐器開通方向表示装置の平面図である((a)分岐せず、(b)分岐)。
【
図3】本発明の実施形態である軌道分岐器開通方向表示装置の共用中の写真である((a)分岐せず、(b)分岐)。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1に、本発明の実施形態であるシールドトンネル内の輸送手段の配置断面図を示す。また、
図2に、本発明の実施形態である軌道分岐器開通方向表示装置の平面図((a)分岐せず、(b)分岐)を示す。さらに、
図3に、本発明の実施形態である軌道分岐器開通方向表示装置の共用中の写真((a)分岐せず、(b)分岐)を示す。
図1より、本実施形態における複数の輸送手段3,3,3・・・は、地盤Gに構築されたシールドトンネルS内であって、底部付近に略水平に、所定の間隔で配設された鋼材から成る枕木1に輸送手段3,3,3・・・同士が接触しない間隔で4つの軌道2,2,2,2が固定され、その上を走行する。輸送手段3は、セグメント等の資材や各種機材の搬出入作業、あるいは作業員等、人員の搬送作業にバッテリーロコと台車等により編成されている。軌道2は、坑口(図示せず)からシールド機(図示せず)に至る区間を、後述する対向する左右1組のレール21,21でつないでいる。各レール21は、枕木1にモール、ペーシにて固定されている(図示せず)。本実施形態では、4つの軌道2,2,2,2が枕木1上に横並びに配置されているが、場所によって求められる工種の違いに応じて、各シールドトンネルSの断面当たりの軌道2の配置数は異なる。
【0011】
図2より、並行して配置されている2組のレール21,21間を輸送手段3の行き来(分岐)を可能にする軌道分岐器4が配置されている。ここで、本発明の実施形態である軌道分岐器開通方向表示装置5は、左右1組のレール21,21間に、レール21に沿って配置された線状の発光表示部51と、軌道分岐器4の開通方向を検知し、開通方向のレール21,21に対応する発光表示部51を作動させる制御部52(図示せず)とからなる。同図(a)では、2組のレール21,21は分岐の向きが直線時、同図(b)では、分岐の向きが交差時の状態を示している。
【0012】
図3(a),(b)は、それぞれ
図2(a),(b)に対応する軌道分岐器開通方向表示装置5の共用中の状況写真である。本実施形態では、分岐の向きが直線時(同図(a))の時に青色で表示し、分岐の向きが交差時(同図(b))の時に緑色で表示するように設定されている。また、発光表示部51には、配線とともに透明で柔らかいチューブ内に多数のLED電球が等間隔で連ねたLEDのチューブライトを採用している。
【0013】
以上より、本実施形態に係る軌道分岐器開通方向表示装置5によれば、左右一対のレール21,21の間に、レール21に沿って線状の発光表示部51が配置されており、開通方向のレール21,21に対応して表示させることができるので、照度や見通しが不十分なトンネル環境下にあっても、比較的遠方から、明確に、視覚的に開通方向の視認が可能となる。また、開通方向ごとに異なる色を定めておけば、色と方向との関連性を習熟効果によって習熟でき、時間の経過とともに開通方向を見誤るリスクを低減することが可能となる。さらに、発光表示部51を配線とともに透明で柔らかいチューブ内に多数のLED電球が等間隔で連ねたLEDのチューブライトとすることで、トンネル施工中に求められる高い耐久性を有し、様々な光の強さや色に対応できるだけでなく、多彩な発光パターンにも対応できる。
【0014】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記の実施形態に限られず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。例えば、本実施形態では、軌道分岐器4は、並走する2本の軌道2,2が交差するX型を例示したが、Y型、N型についても同様に本発明の軌道分岐器開通方向表示装置5を設置することが可能である。
【符号の説明】
【0015】
G 地盤
S シールドトンネル
1 枕木
2 軌道
21 レール
3 輸送手段
4 軌道分岐器
5 軌道分岐器開通方向表示装置
51 発光表示部
52 制御部