(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】フィルムコンデンサ、それを用いたインバータおよび電動車両
(51)【国際特許分類】
H01G 4/224 20060101AFI20241004BHJP
H01G 4/32 20060101ALI20241004BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20241004BHJP
B60L 9/18 20060101ALI20241004BHJP
H01G 2/10 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
H01G4/224 200
H01G4/32 540
H02M7/48 Z
B60L9/18 J
H01G2/10 M
(21)【出願番号】P 2021176791
(22)【出願日】2021-10-28
【審査請求日】2024-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075557
【氏名又は名称】西教 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 宥一郎
(72)【発明者】
【氏名】小林 信裕
(72)【発明者】
【氏名】今川 一輝
(72)【発明者】
【氏名】立石 立也
【審査官】上谷 奈那
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-22661(JP,A)
【文献】特開2013-222845(JP,A)
【文献】特開2005-142416(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/224
H01G 4/32
H02M 7/48
B60L 9/18
H01G 2/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極および第2電極を有するフィルムコンデンサ素子と、
前記第1電極に接続される第1接続部、および外部接続用の第1端子部を有する第1バスバーと、
前記第2電極に接続される第2接続部、および外部接続用の第2端子部を有する第2バスバーと、
前記フィルムコンデンサ素子を収容する、一面が開口した箱体と、
前記箱体の開口を塞ぐ蓋体であって、前記第1バスバーおよび前記第2バスバーを保持する蓋体と、を備え、
前記蓋体は、互いに気密に接続される第1蓋部材および第2蓋部材を有し、
前記フィルムコンデンサ素子は、前記箱体内に懸架された状態で固定されている、フィルムコンデンサ。
【請求項2】
前記第1蓋部材の前記第2蓋部材に対向する対向部には、前記第2蓋部材に向かって突出する突部が設けられ、
前記第2蓋部材の前記第1蓋部材に対向する対向部には、前記突部が嵌合する嵌合凹部が設けられる、請求項1に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項3】
前記第1蓋部材の対向部と前記第2蓋部材の対向部との間は、透湿度5g/m
2/day以下の低透湿樹脂によって封止されている、請求項2に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項4】
前記第1蓋部材および前記第2蓋部材のそれぞれは、前記第1端子部および前記第2端子部が挿通される挿通部を有し、前記挿通部のそれぞれは、透湿度5g/m
2/day以下の低透湿樹脂によって封止されている、請求項1~3のいずれか1項に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項5】
スイッチング素子により構成されたブリッジ回路と、該ブリッジ回路に接続された容量部と、を備え、
該容量部は、請求項1~4のいずれか1項に記載のフィルムコンデンサを含む、インバータ。
【請求項6】
電源と、該電源に接続されたインバータと、該インバータに接続されたモータと、該モータにより駆動する車輪と、を備え、
前記インバータが、請求項5に記載のインバータである、電動車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フィルムコンデンサ、それを用いたインバータおよび電動車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術のフィルムコンデンサとしては、一端が開放されたケースと、このケース内に収納される金属化フィルムを使用したコンデンサ素子と、ケース内に充填され、コンデンサ素子を埋設させる樹脂とを備え、金属箔にフィルムをラミネートした金属箔ラミネートシートが、樹脂中に埋没し、金属箔ラミネートシートがケースの開口面と一方の側面とからコンデンサ素子の周囲を覆う金属化フィルムコンデンサが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1に記載される従来技術では、ケースに収容されたコンデンサ素子の周囲は、充填された樹脂によって覆われている。この樹脂として、汎用の例えばエポキシ樹脂を用いた場合、エポキシ樹脂は硬化時に微量な水分を発生するので、コンデンサ素子の蒸着電極の陽極酸化が発生する場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示のフィルムコンデンサは、第1電極および第2電極を有するフィルムコンデンサ素子と、前記第1電極に接続される第1接続部、および外部接続用の第1端子部を有する第1バスバーと、前記第2電極に接続される第2接続部、および外部接続用の第2端子部を有する第2バスバーと、前記フィルムコンデンサ素子を収容する、一面が開口した箱体と、前記箱体の開口を塞ぐ蓋体であって、前記第1バスバーおよび前記第2バスバーを保持する蓋体と、を備え、前記蓋体は、互いに気密に接続される第1蓋部材および第2蓋部材を有し、前記フィルムコンデンサ素子は、前記箱体内に懸架された状態で固定されている第1電極および第2電極を有するフィルムコンデンサ素子と、前記第1電極に接続される第1接続部、および外部接続用の第1端子部を有する第1バスバーと、前記第2電極に接続される第2接続部、および外部接続用の第2端子部を有する第2バスバーと、前記フィルムコンデンサ素子を収容する、一面が開口した箱体と、前記箱体の開口を塞ぐ蓋体であって、前記第1バスバーおよび前記第2バスバーを保持する蓋体と、を備え、前記蓋体は、互いに気密に接続される第1蓋部材および第2蓋部材を有し、前記フィルムコンデンサ素子は、前記ケース内に懸架された状態で固定されている。
【0006】
本開示のインバータは、スイッチング素子により構成されたブリッジ回路と、該ブリッジ回路に接続された容量部と、を備え、該容量部は、前記フィルムコンデンサを含む。
【0007】
本開示の電動車両は、電源と、該電源に接続されたインバータと、該インバータに接続されたモータと、該モータにより駆動する車輪と、を備え、インバータが、前記インバータである。
【発明の効果】
【0008】
本開示のフィルムコンデンサによれば、水分による陽極酸化の発生を抑制し、静電容量の低下が抑制されたフィルムコンデンサ、それを備えるインバータおよび電動車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の一実施形態のフィルムコンデンサの一例を示す箱体11および蓋体1を省略した分解斜視図である。
【
図2】
図1のフィルムコンデンサの製造方法を説明するための斜視図である。
【
図3】第1バスバーおよび第2バスバーに第1蓋部材および第2蓋部材を装着する前の状態を示す箱体11を省略した斜視図である。
【
図4】第1バスバーおよび第2バスバーに第1蓋部材および第2蓋部材を装着途中の状態を示す斜視図である。
【
図5】複数のフィルムコンデンサ素子を第1バスバーおよび第2バスバーによって把持した状態で箱体に収納前の状態を示す斜視図である
【
図6】複数のフィルムコンデンサ素子を第1バスバーおよび第2バスバーによって把持された状態で箱体に収納した状態を示す斜視図である。
【
図7】
図6の切断面線VII-VIIから見た蓋体の断面図である。
【
図9】
図7のセクションVIIIの拡大斜視図である。
【
図10】インバータの構成を説明するための概略構成図である。
【
図11】電動車両の構成を説明するための概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ、本開示のフィルムコンデンサ、インバータおよび電動車両の実施形態について説明する。
【0011】
図1は、本開示の一実施形態のフィルムコンデンサの一例を示す箱体11および蓋体1を省略した分解斜視図である。
図2は、
図1のフィルムコンデンサ素子の製造手順を説明するための箱体11を省略した斜視図であり、
図3は、第1バスバー7および第2バスバー10に第1蓋部材13aおよび第2蓋部材13bを装着する前の状態を示す斜視図である。
図4は、第1バスバー7および第2バスバー10に第1蓋部材13aおよび第2蓋部材13bを装着途中の状態を示す斜視図である。なお、
図1および以下の各図において、各部位の寸法は図解を容易にするために誇張して示されており、各実製品の寸法を正確に再現したものではない。
【0012】
本実施形態のフィルムコンデンサ1は、第1電極2および第2電極3を有するフィルムコンデンサ素子4と、第1電極2に接続される第1接続部5、および外部接続用の第1端子部6を有する第1バスバー7と、第2電極3に接続される第2接続部8、および外部接続用の第2端子部9を有する第2バスバー10と、フィルムコンデンサ素子4を収容する、一面が開口した箱体11と、箱体11の開口12を塞ぐ蓋体13であって、第1バスバー7および第2バスバー10を保持する蓋体13と、を備える。
【0013】
蓋体13は、互いに気密に接続される第1蓋部材13aおよび第2蓋部材13bを有し、フィルムコンデンサ素子4は、第1バスバー7および第2バスバー10によって第1蓋部材13aおよび第2蓋部材13bに支持され、箱体10内に懸架された状態で固定されている。
【0014】
第1バスバー7は、複数(本実施形態では5)のフィルムコンデンサ素子4上に位置する平板状の前述の第1接続部5、第1接続部5の長手方向に垂直な幅方向一側部に第1接続部5に対して垂直に屈曲して連なる側壁部7a、および側壁部7aの上端部、すなわち側壁部7aの第1接続部5とは反対側の一側部に垂直に屈曲して連なる前述の第1端子部6を有する。
【0015】
第1接続部5には、複数対の端子部25が例えばプレス加工によって形成される。各対を成す端子部25の周囲には、円形の貫通孔26が形成される。各対を成す端子部25は、第1接続部5の各貫通孔26を除いた残余の領域の主面25aよりも僅かにフィルムコンデンサ素子4側に突出し、各フィルムコンデンサ素子4の第1電極2に弾発的に当接して、確実な導通状態が得られるように構成される。
【0016】
第1接続部5の幅方向の他側部には、第1接続部5に対して垂直に屈曲して連なる側壁部7bが形成され、この側壁部7bの上端部に前述の第1接続部5が形成される。第1接続部5は、側壁部7bに垂直に屈曲して連なる。
【0017】
第2接続部8には、複数対の端子部27が例えばプレス加工によって形成される、各対を成す端子部27の周囲には、円形の貫通孔28が形成される、各対を成す端子部27は、第2接続部8の各貫通孔28を除いた残余の領域の主面27aよりも僅かにフィルムコンデンサ素子4側に突出し、各フィルムコンデンサ素子4の第2電極3に弾発的に当接して、確実な導通状態が得られるように構成される。
【0018】
第2バスバー10は、複数のフィルムコンデンサ素子4を支持する平板状の素子受け部81、素子受け部81の長手方向に垂直な幅方向の一側部に素子受け部81に対して垂直に屈曲して連なる板側側壁部10a、下側側壁部10aの上端部から下側側壁部10aと平行に延びる上側側壁部10b、上側側壁部10bの上端部に素子受け部81とは反対側に垂直に屈曲して連なる屈曲部10c、屈曲部10cの幅方向一側部に連なり、屈曲部10cと平行に延びる前述の第2端子部9を有する。
【0019】
素子受け部81の幅方向の他側部には、素子受け部81に対して垂直に屈曲して連なる側壁部10dが形成され、この側壁部10dの上端部に前述の第2接続部8が形成される。第2接続部8は、側壁部10dに垂直に屈曲して設けられる。
【0020】
フィルムコンデンサ素子4は、
図2に示されるように、例えば、1つの金属化フィルム20の金属膜非形成部21と、該1つの金属化フィルム20に隣り合う金属化フィルム22の金属膜非形成部23とが、誘電体フィルム21a,22aの幅方向(
図2における左右方向)における異なる端部に交互に位置するように構成されてもよい。
【0021】
フィルムコンデンサ素子4は、
図2に示されるように、巻回型の素子を使用することができる。巻回型の場合、金属化フィルム21,22を巻回して円柱(または円筒)状のフィルム巻回体を構成し、フィルム巻回体の一対の両端面にメタリコン電極23a,23bを形成したもの、フィルム巻回体を直径方向にプレスして断面が小判形の扁平な柱状体を構成し、両端面にメタリコン電極23a,23bが形成されたもの等を用いることができる。
【0022】
フィルムコンデンサ素子4は、第1および第2金属化フィルム21,22を備えることにより、フィルムコンデンサ素子4を製造する際の歩留り、フィルムコンデンサ素子4の耐電圧性を向上することができる。また、フィルムコンデンサ素子4は、隣り合う金属化フィルム21,22が密着することを抑制し、絶縁欠陥部で短絡が生じた際のガス抜け性を確保し、自己回復性を向上することができる。
【0023】
第1金属化フィルム21は、第1誘電体膜21aの面21bに第1金属蒸着膜21cを備える。第2金属化フィルム22は、第2誘電体膜22aの面22bに第2金属蒸着膜22cを備える。第1金属化フィルム21および第2金属化フィルム22を積層状態で略円柱状に巻回し、その両端面にメタリコン電極23a,23bが形成される。
【0024】
第1および第2誘電体膜21a,22aに用いる絶縁性の有機樹脂材料としては、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリアリレート(PAR)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリエーテルイミド(PEI)、及びシクロオレフィンポリマー(COP)等が挙げられる。特に、シクロオレフィンポリマー(COP)は、絶縁破壊電圧が高い。
【0025】
第1および第2誘電体膜21a,22aは、例えば次のようにして得られる。絶縁性の有機樹脂を溶媒に溶解した樹脂溶液を、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)製の基材フィルムの表面にシート状に成形する。成形したシートを乾燥して、溶剤を揮発させることによって誘電体膜が得られる。成形方法としては、例えばメタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノプロピルエーテル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、キシレン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジメチルアセトアミド、シクロヘキサン、又はこれらから選択された2種以上の混合物を含んだ有機溶媒を用いてもよい。また、溶融押し出し法で作製した有機樹脂のフィルムを延伸加工してもよい。
【0026】
第1および第2誘電体膜21a,22aは、上述の絶縁性の有機樹脂のみにより構成されてもよいが、他の材料を含んでいてもよい。第1および第2誘電体膜21a,22aに含まれる有機樹脂以外の構成要素としては、例えば上述の有機溶剤、無機フィラー等が挙げられる。無機フィラーには、例えばアルミナ、酸化チタン、二酸化珪素等の無機酸化物、窒化珪素等の無機窒化物、ガラス等を用いることができる。特に無機フィラーとして、ペロプスカイト型構造を有する複合酸化物等の比誘電率の高い材料を用いると、誘電体フィルム全体の比誘電率が向上し、フィルムコンデンサの体積を小さくすることができる。また無機フィラーと有機樹脂との相溶性を高めるために、無機フィラーにシランカップリング処理、チタネートカップリング処理等の表面処理を行ってもよい。
【0027】
フィルムコンデンサ素子4は、例えば、前述のように巻回型のフィルムコンデンサであってもよい。フィルムコンデンサ素子4は、巻回型のフィルムコンデンサである場合であっても、金属化フィルム21,22を備えることによって、絶縁欠陥部で短絡が生じた際のガス抜け性を確保することができるため、自己回復性を向上することができる。
【0028】
箱体11は、中空の直方体形状であって、低透湿樹脂である例えばポニフェニレンサルファイド(PPS)が用いられてよい。第1蓋部材13aの対向部14aと第2蓋部材13bの対向部14bとの間は、透湿度5g/m2/day以下の低透湿樹脂によって封止されている。また第1蓋部材13aおよび第2蓋部材13bのそれぞれは、側壁部7a,7b,側壁部10cが挿通される挿通部である後述のスリット34a,34b,35a,35bを有し、スリット34a,34b,35a,35bとのそれぞれと側壁部7a,7b,側壁部10cとの間の隙間は、透湿度5g/m2/day以下の低透湿樹脂によって封止されている。低透湿度樹脂としては、例えばアクリレートやオレフィン系接着剤、アクリル樹脂等が用いられてよい。
【0029】
箱体11を構成する金属としては、ステンレス鋼を含む鉄、アルミニウム、マグネシウム、銅、チタン、アルミニウム合金、マグネシウム合金、銅合金、チタン合金等を用いることができる。
【0030】
また、箱体11を構成する樹脂としては、前述のポニフェニレンサルファイド(PPS)の他、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等の熱可塑性樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を使用することもできる。
【0031】
蓋体13を構成する第1蓋部材13aおよび第2蓋部材13bは、箱体11と同一材料によって形成することができる。
【0032】
このように箱体11がポニフェニレンサルファイドからなり、対向部14a,14b間およびスリット34a,34b,35a,35bのそれぞれと側壁部7a,7b,側壁部10cとの間の隙間が低透湿樹脂によって封止されるので、蓋体13によって開口12が塞がれた状態における箱体11内は、外部に対して5g/m2/day以下の透湿性が確保され、外部から箱体11内への水分の侵入を実質上、遮断することができる。また箱体11内へは、封止樹脂が充填されないので、樹脂の硬化時に樹脂から水分が発生することはなく、フィルムコンデンサ素子4の第1および第2金属蒸着膜21c,22cのうち正電圧が印加される一方が陽極酸化することが抑制され、静電容量の低下を防ぐことができる。
【0033】
図5は、複数のフィルムコンデンサ素子4を第1バスバー7および第2バスバー10によって把持した状態で箱体11に収納前の状態を示す斜視図である。
図6は複数のフィルムコンデンサ素子4を第1バスバー7および第2バスバー10によって把持された状態で箱体11に収納した状態を示す斜視図である。
図7は、
図6の切断面線VII-VIIから見た蓋体13の断面図である。
図8は、
図7のセクションVIIIの拡大図である。
図9は
図7のセクションVIIIの拡大斜視図である。
【0034】
第1蓋部材13aは、第2蓋部材13bに対向する対向部30aを有し、対向部30aには、第2蓋部材13bに向かって突出する突部31aが設けられる。第1蓋部材13aは、平面視で略U字状の枠部32aと、枠部32aの内側の開口を塞ぐように形成される板状部33aとを有する。突部31aは枠部32aの一対の端部のうちの一方の端面から突出している。また枠部32aの他方の端部には、嵌合凹部31bが形成される。板状部33aには、第1バスバー7の側壁部7aと第2バスバー10の上側壁部10cとが絶縁板を挟んで重なった状態で挿入される第1スリット34aが形成される。板状部33aには、第1バスバー7の側壁部7bが挿入される第2スリット35aが形成される。
【0035】
第2蓋部材13bは、第1蓋部材13aに対向する対向部30bを有し、対向部30bには、突部31aが嵌合する嵌合凹部31bが設けられる。第2蓋部材13bは、平面視で略U字状の枠部32bと、枠部32b内の開口を塞ぐように形成される面板部33bとを有する。嵌合凹部31bは、枠部32bの両端部の端面から退避している。面板部33bには、第1バスバー7の側壁部7aと第2バスバー10の上側壁部10cとが絶縁板を挟んで重なった状態で挿入される挿通部としての第1スリット34bが形成される。面板部33bには、第2バスバー10の側壁部10dが挿入される挿通部としての第2スリット35bが形成される。
【0036】
第1バスバー7の第1スリット34aおよび第2スリット35aは、透湿度が5g/m2/day以下となる低透湿性樹脂によって塞がれている。また第2バスバー10の第1スリット34bおよび第2バスバー10も、挿通部としての第1スリット34aおよび第2スリット35aと同様に、低透湿性樹脂によって塞がれている。第1スリット34aとこれに挿通された上側壁部10b、側壁部7aおよび絶縁板との間の隙間は、低透湿樹脂によって塞がれる。また第1スリット34bとこれに挿通された上側壁部10b、側壁部7aおよび絶縁板との間の隙間は、低透湿樹脂によって塞がれる。また第2スリット35aとこれに挿通された側壁部7bと間の隙間は、低透湿樹脂によって塞がれ、さらに第2スリット35bとこれに挿通された側壁部10dとの間の隙間は、低透湿樹脂によって塞がれる。
【0037】
このように複数のフィルムコンデンサ素子4が第1バスバー7および第2バスバー10によって、箱体11内に懸架された状態で固定されるので、内部で水分が発生することはなく、外部から箱体11内に水分が侵入することもないので、各フィルムコンデンサ素子4の第1および第2金属蒸着膜21c,22cが陽極酸化することが抑制され、これによる静電容量の低下を抑制することができる。
【0038】
また箱体11および箱体11内で蓋体13によって規定される空間には、樹脂が充填されていないので、樹脂の硬化時の水分の発生はなく、フィルムコンデンサ素子4の陽極酸化を抑制することができるとともに、樹脂使用量が削減され、材料コストを低減することができる。第1バスバー7と第2バスバー10とは、突部31aが嵌合凹部31bに嵌合させるインロー(印籠)結合されるので、公差を利用した嵌め合い構造とすることができ、これによって簡素な構造によって、フィルムコンデンサ素子4に対する優れた固定状態を実現することができる。
【0039】
図10は、インバータの構成を説明するための概略構成図である。
図10には、モータを駆動するための三相交流を作り出すインバータCの例を示している。本実施形態のインバータCは、10に示されるように、ブリッジ回路31と、容量部33とを備えている。ブリッジ回路31は、例えば、IGBT(Insulate Gate Bipolar Transistor)のようなスイッチング素子と、ダイオードとによって構成される。容量部33は、ブリッジ回路31の入力端子間に配置され、電圧を安定化する。インバータCは、容量部33として、上記のフィルムコンデンサ1が用いられる。
【0040】
なお、このインバータCの入力は、直流電源の電圧を昇圧する昇圧回路35に接続される場合と、直流電源に接続される場合とがある。一方、ブリッジ回路31は駆動源となるモータ駆動装置(モータM)に接続される。
【0041】
図11は、電動車両の構成を説明するための概略構成図である。
図11には、電動車両Dとしてハイブリッド自動車(HEV)の例を示している。
【0042】
図11における電動車両Dは、駆動用のモータ41、エンジン43、トランスミッション45、インバータ47、電源(電池)49、前輪51aおよび後輪51bを備えている。
【0043】
この電動車両Dは、駆動源としてモータ41またはエンジン43、もしくはその両方を備えている。駆動源の出力は、トランスミッション45を介して左右一対の前輪51aに伝達される。電源49は、インバータ47に接続され、インバータ47はモータ41に接続されている。
【0044】
また、
図11に示した電動車両Dは、車両ECU53およびエンジンECU57を備えている。車両ECU53は電動車両D全体の統括的な制御を行う。エンジンECU57は、エンジン43の回転数を制御し電動車両Dを駆動する。電動車両Dは、さらに運転者等に操作されるイグニッションキー55、図示しないアクセルペダル、及びブレーキ等の運転装置を備えている。車両ECUには、運転者等による運転装置の操作に応じた駆動信号が入力される。この車両ECU53は、その駆動信号に基づいて指示信号をエンジンECU57、電源49、および負荷としてのインバータ47に出力する。エンジンECU57は、指示信号に応答してエンジン43の回転数を制御し、電動車両Dを駆動する。本実施形態のフィルムコンデンサA,10または連結型コンデンサBを容量部33として適用したインバータCを、
図11に示すような電動車両Dに搭載することができる。
【0045】
なお、本実施形態のインバータCは、上記のハイブリッド自動車(HEV)のみならず、電気自動車(EV)や電動自転車、発電機、太陽電池など種々の電力変換応用製品に適用できる。
【0046】
本開示の他の実施形態として、蓋体13によって規定された箱体11内の空間に乾燥空気、不活性ガス等を封入するようにしてもよい。
【0047】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、また、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更、改良等が可能である。上記各実施形態をそれぞれ構成する全部または一部を、適宜、矛盾しない範囲で組み合わせ可能であることは、言うまでもない。
【符号の説明】
【0048】
1 フィルムコンデンサ
2 第1電極
3 第2電極
4 フィルムコンデンサ素子
5 第1接続部
6 第1端子部
7 第1バスバー
8 第2接続部
9 第2端子部
10 第2バスバー
11 箱体
12 開口
13 蓋体
13a 第1蓋部材
13b 第2蓋部材
20 金属化フィルム
21 金属膜非形成部
21a,22a 誘電体フィルム
22 金属化フィルム
23 金属膜非形成部
34a,34b,35a,35b スリット