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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】マイクロ電極アレイおよびその使用方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20241004BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
C12M1/00 A
C12Q1/02
【請求項の数】 34
(21)【出願番号】P 2021512791
(86)(22)【出願日】2019-09-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-04
(86)【国際出願番号】 US2019049802
(87)【国際公開番号】W WO2020051366
(87)【国際公開日】2020-03-12
【審査請求日】2022-08-18
(31)【優先権主張番号】62/727,494
(32)【優先日】2018-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520195970
【氏名又は名称】アクソシム, インコーポレイテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】510170730
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ セントラル フロリダ リサーチ ファウンデーション,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】カーリー ジェイ. ローリー
(72)【発明者】
【氏名】ムーア マイケル ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】ラウントリー コーリー マイケル
(72)【発明者】
【氏名】グエン ヒュー トゥルン
(72)【発明者】
【氏名】ラジャラマン スワミナサン
(72)【発明者】
【氏名】クンドゥ アヴラ
【審査官】上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-526377(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0125001(US,A1)
【文献】日本神経回路学会誌,2004年,Vol.11,No.3,p.125-132
【文献】Sensors,Vol.16, 1533,2016年,p.1-15,doi:10.3390/s16091533
【文献】APPLIED PHYSICS LETTERS,Vol.103, 193701,2013年,doi.org/10.1063/1.4827302
【文献】SU‐8絶縁被覆三次元微小電極アレイとその応用,日本機械学会ロボティクス・メカトロニクス講演会講演論文集(CD-ROM) ,No.15-2, 2A2-C05 ,2015年
【文献】FABRICATION OF 3-DIMENSIONAL SILICON MICROELECTRODE ARRAYS USING MICRO ELECTRO DISCHARGE MACHINING FOR NEURAL APPLICATIONS,Transducers 2009, Denver, CO, USA,T3P.082,2009年,p.1206-1209
【文献】Japanese Journal of Applied Physics,Vol. 42,2003年,pp. 2473-2477
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00
C12Q 1/02
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ電極アレイであって、
第1の複数の電極および第2の複数の電極を含むチップを含み、
マイクロエンジニアリング生理学的システム内の1つ以上の生体電気信号についてのリアルタイムで信頼性の高い検出を提供するように構成されており、前記マイクロエンジニアリング生理学的システムがニューラルアーキテクチャを含み、
前記第1の複数の電極が前記ニューラルアーキテクチャの神経節領域若しくはスフェロイド領域に位置決めされ、
前記第2の複数の電極が前記ニューラルアーキテクチャの軸索成長領域の下手に規定間隔で位置決めされる、
前記マイクロ電極アレイ。
【請求項2】
前記1つ以上の生体電気信号が、単一活動電位、複合活動電位、高周波、低周波、またはそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載のマイクロ電極アレイ。
【請求項3】
前記マイクロエンジニアリング生理学的システムが、マイクロパターン化プラットフォーム上で培養された神経細胞、またはマイクロパターン化プラットフォーム上に播種された組織移植片を含み、前記マイクロパターン化プラットフォームが、前記ニューラルアーキテクチャの形成を可能にし、かつ
前記マイクロ電極アレイが、前記ニューラルアーキテクチャの構成と相補的な構成を有する領域を含む、
請求項1に記載のマイクロ電極アレイ。
【請求項4】
前記チップが少なくとも1つの三次元電極を含み、前記第1の複数の電極が、少なくとも1つの二次元電極を含み、前記第2の複数の電極が、前記少なくとも1つの三次元電極を含み、またはその逆もまた同様である、請求項1に記載のマイクロ電極アレイ。
【請求項5】
前記規定間隔が、最大5mmの間隔を含む、請求項1に記載のマイクロ電極アレイ。
【請求項6】
少なくとも10μVの1つ以上の生体電気信号を検出するように構成されている、請求項1に記載のマイクロ電極アレイ。
【請求項7】
前記マイクロエンジニアリング生理学的システム内の1つ以上の生体電気信号を最大1年間検出するように構成されている、請求項1に記載のマイクロ電極アレイ。
【請求項8】
生体適合性導電性インク、生体適合性導電性ペースト、生体適合性導電性複合材料、またはそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載のマイクロ電極アレイ。
【請求項9】
1つ以上のビアをさらに含む、請求項1に記載のマイクロ電極アレイ。
【請求項10】
絶縁層をさらに含み、該絶縁層が、生体適合性である材料を含む、請求項1に記載のマイクロ電極アレイ。
【請求項11】
前記絶縁層が、パリレン、ポリ-ジ-メチル-シロキサン(PDMS)、SU-8、二酸化ケイ素、ポリイミド、ポリウレタン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸グリコール酸、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリエチレングリコール、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートグリコール、ポリエチレンナフタレート、またはそれらの組み合わせを含む、請求項10に記載のマイクロ電極アレイ。
【請求項12】
前記マイクロエンジニアリング生理学的システムを刺激するように構成された体積刺激装置をさらに含む、請求項1に記載のマイクロ電極アレイ。
【請求項13】
前記少なくとも1つの三次元電極が、50μm以下の直径を含むか、前記少なくとも1つの三次元電極が、最大1000μmの直径を含むか、前記少なくとも1つの三次元電極が、30μm以下の直径を含むか、前記少なくとも1つの三次元電極が、30~50μmの直径を含むか、またはそれらの組み合わせを含む、請求項に記載のマイクロ電極アレイ。
【請求項14】
前記少なくとも1つの三次元電極が、1μm~1mm(両端の値を含む)の曲率半径(ROC)をさらに含む先端を含む、請求項に記載のマイクロ電極アレイ。
【請求項15】
ニューロン細胞の生存率を維持するように構成されている、請求項1に記載のマイクロ電極アレイ。
【請求項16】
前記マイクロエンジニアリング生理学的システムが、末梢神経解剖学的構造に類似した構造を有する少なくとも1つのニューロン細胞を含む、請求項1に記載のマイクロ電極アレイ。
【請求項17】
前記少なくとも1つの三次元電極が、最大1000μmの高さを含むか、前記少なくとも1つの三次元電極が、300μm~1000μmの高さを含むか、前記少なくとも1つの三次元電極が、最大150μmの高さを含むか、前記少なくとも1つの三次元電極が、50μm~150μmの高さを含むか、またはそれらの組み合わせを含む、請求項に記載のマイクロ電極アレイ。
【請求項18】
伝導速度、振幅、積分、化合物投与後の興奮度、閾値、感度、CAP時間幅、CAP波形形状、またはそれらの組み合わせについての推測のための複合活動電位を測定するように構成されている、請求項1に記載のマイクロ電極アレイ。
【請求項19】
導電性トレース層、ポリエチレンテレフタレート絶縁層、マイクロタワー、またはそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載のマイクロ電極アレイ。
【請求項20】
前記少なくとも1つのマイクロタワーが、マイクロ多孔質白金、ナノ多孔質白金、ナノ金、またはそれらの組み合わせでコーティングされている、請求項19に記載のマイクロ電極アレイ。
【請求項21】
チタン/金の金属トレースを含むか、
チタン/アルミニウムのトレース層および二酸化ケイ素絶縁層を含むか、
またはそれらの組み合わせを含む、
請求項1に記載のマイクロ電極アレイ。
【請求項22】
マイクロ電極アレイと、
1つ以上のニューロン細胞を含む生体模倣システムと
を含む、マイクロエンジニアリング生理学的システム内の複合活動電位を再現可能に検出するためのシステムであって、
前記マイクロ電極アレイが、請求項1に記載のマイクロ電極アレイを含む、
前記システム。
【請求項23】
前記1つ以上の神経細胞が、末梢神経系ニューロン、中枢神経系ニューロン、シュワン細胞、乏突起膠細胞、ミクログリア細胞、グリア細胞、他の末梢もしくは中枢神経支持細胞、またはそれらの組み合わせを含む、請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
前記1つ以上のニューロン細胞が、感覚ニューロン、介在ニューロン、または運動ニューロンを含む、請求項22に記載のシステム。
【請求項25】
前記末梢神経系ニューロンが、少なくとも1つの背根神経節ニューロンを含む、請求項23に記載のシステム。
【請求項26】
試料神経組織を、請求項1に記載のマイクロ電極アレイ上で成長させるか、または前記マイクロ電極アレイに移すことであって、前記試料神経組織が、軸索成長領域および神経節領域を含む、前記成長させるかまたは移すことと、
前記試料神経組織の神経伝導速度を決定するために電気生理学的試験を行うことであって、前記電気生理学的試験が、前記軸索成長領域、前記神経節領域、またはそれらの組み合わせに沿った少なくとも1つの場所を電気的に刺激すること、および前記神経節領域内、前記軸索成長領域内、またはそれらの組み合わせ内の少なくとも1つの場所から記録することを含む、前記行うことと、
試料神経組織から得られた神経伝導速度を、健常な神経組織であることが分かっている神経組織の神経伝導速度と比較することと
を含む、神経病理の種類および重症度を予測する方法であって、
前記健常な神経組織と比較した、前記試料神経組織における低下した神経伝導が、神経病理を示す、
前記方法。
【請求項27】
前記神経組織の組織学的分析をさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
組織学的分析が、軸索直径、軸索密度、髄鞘形成、細胞形態、細胞型、神経構造、またはそれらの組み合わせについての評価を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記電気生理学的試験が、前記軸索成長領域、前記神経節領域、またはそれらの組み合わせに沿った複数の場所を刺激することと、前記神経節領域、前記軸索成長領域、またはそれらの組み合わせからの、結果として生じる電気応答を記録することとをさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記電気生理学的試験が、神経変性を長期的に測定するために複数週間にわたって実行される、請求項26に記載の方法。
【請求項31】
神経組織を、請求項1に記載のマイクロ電極アレイ上で成長させるか、または前記マイクロ電極アレイに移すことと、
前記神経組織に1つ以上の刺激を導入することと、
前記1つ以上の刺激に対する前記神経組織からの1つ以上の応答を測定することと
を含む、神経組織からの応答を評価する方法であって、
前記1つ以上の応答が、複合活動電位振幅、伝導速度、波形形状、組織形態パラメータ、またはそれらの組み合わせを含む、
前記方法。
【請求項32】
前記1つ以上の刺激を導入することが、前記神経組織を、少なくとも1つの薬理活性化合物、電気刺激、化学刺激、光学刺激、物理刺激、またはそれらの組み合わせと接触させることを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
神経組織を、請求項1に記載のマイクロ電極アレイ上で成長させるか、または前記マイクロ電極アレイに移すことと、
少なくとも1つの薬剤を前記神経組織に曝露することと、
複合活動電位振幅、伝導速度、波形形状、組織形態パラメータ、またはそれらの組み合わせにおける変化を測定または観察することと、
前記神経組織の測定または観察されたいずれかの変化を前記薬剤の毒性と相関させることであって、これにより、
前記測定または観察された変化が細胞生存率の低下を示す場合、前記薬剤が毒性であると特徴付けられ、
前記測定または観察された変化が細胞生存率の不変または増加を示す場合、前記薬剤が無毒であると特徴付けられる、前記相関させることと
を含む、薬剤の毒性を評価する方法。
【請求項34】
少なくとも1つの軸索を成長させるのに十分な条件下で、神経組織を、請求項1に記載のマイクロ電極アレイ上で成長させるか、または前記マイクロ電極アレイに移すことと、
前記神経組織内の複合活動電位を誘発することと、
前記複合活動電位を測定することと、
前記複合活動電位に基づいて前記神経組織の髄鞘形成のレベルを定量化することと
を含む、1つ以上のニューロン細胞の1つ以上の軸索の髄鞘形成または脱髄を測定する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で引用される全ての特許、特許出願、および刊行物は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。これらの刊行物の全体の開示は、本明細書に記載および請求された発明の日付の時点で当業者に知られている最新技術をより完全に説明するために、参照により本出願に組み込まれる。
【0002】
本特許開示には、著作権保護の対象となる資料が包含されている。本著作権所有者は、米国特許商標庁の特許ファイルまたは記録に記載されている特許文書または特許開示のファクシミリ複製に異議はないが、それ以外の場合、全ての著作権を留保する。
【0003】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年9月5日に出願された米国特許仮出願第62/727,494号の利益を主張し、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0004】
連邦政府資金による研究開発の記載
本発明は、国立衛生研究所によって付与された助成金R43ES029886-01の下で政府の支援を受けて行われた。政府は、本発明において特定の権利を有する。
【0005】
発明の分野
本発明は、マイクロエンジニアリング生理学的システムで使用するためのマイクロ電極アレイおよびその使用方法を対象とする。
【背景技術】
【0006】
発明の背景
平均的な新薬は、市場の承認を得るために約26億ドルかつ最大15年を必要とし、承認を維持するための承認後の研究開発にはさらに3億1,200万ドルを必要とする。残念ながら、従来の前臨床モデルでの医薬品開発が、臨床治療の成功につながったという実績は少ない。特に神経学的用途では、許容できない毒性またはヒトにおける有効性の欠如のいずれかに起因して、第I相臨床試験に入る神経学的薬物の92%が消費者に販売されることはないと推定されている。動物モデルおよびインビトロモデルの両方を含む現在の前臨床モデルは、前臨床試験の成功を臨床試験につなげるという点では、非常に限られた予測性しかないことが明らかである。動物モデルは、関連するインビボ情報を提供し得るが、それらは労力を要するものである(低スループット)。一方で、より高いスループットのインビトロシステムは、典型的には、二次元でランダムに成長する分離された細胞からなる基本的な神経培養物に限定され、関連するインビボ情報を提供することができない。したがって、関連するインビボ測定基準を提供し得るより高いスループットのシステムが強く望まれている。
【発明の概要】
【0007】
本発明の一態様は、三次元マイクロ電極アレイを対象とする。一実施形態では、マイクロ電極アレイは、少なくとも1つの二次元電極、少なくとも1つの三次元電極、またはそれらの組み合わせをさらに含むチップを含む。一実施形態では、マイクロ電極アレイは、少なくとも1つの二次元電極を含む。一実施形態では、マイクロ電極アレイは、少なくとも1つの三次元電極を含む。マイクロ電極アレイは、マイクロエンジニアリング生理学的システム内の1つ以上の生体電気信号についてのリアルタイムで信頼性の高い検出を提供するように構成することができる。特定の実施形態では、1つ以上の生体電気信号は、単一活動電位、複合活動電位、高周波、低周波、またはそれらの組み合わせを含む。一実施形態では、生体電気信号は、複合活動電位を含む。実施形態では、マイクロエンジニアリング生理学的システムは、組織移植片、細胞の懸濁液、またはそれらの組み合わせを含む。マイクロエンジニアリング生理学的システムは、スフェロイド塊に凝集した様々な神経細胞型のいずれかを含み得る。マイクロエンジニアリング生理学的システムは、マイクロパターン化されたプラットフォーム上で培養された神経細胞を含み得る。実施形態では、マイクロエンジニアリング生理学的システムは、マイクロパターンプラットフォーム上に播種された組織移植片を含む。マイクロパターンプラットフォームは、ニューラルアーキテクチャの形成を可能にするように構成することができる。実施形態では、マイクロ電極アレイは、ニューラルアーキテクチャの構成と相補的な構成を有する領域を含む。
【0008】
特定の実施形態では、ニューラルアーキテクチャは、軸索成長領域、神経節領域、樹状突起領域、シナプス領域、スフェロイド領域、またはそれらの組み合わせを含む。マイクロ電極アレイは、神経節領域またはスフェロイド領域に位置決めされた第1の複数の電極と、軸索成長領域、樹状突起領域、シナプス領域、またはそれらの組み合わせの下手に規定間隔で位置決めされた第2の複数の電極と、を含み得る。マイクロ電極アレイは、当業者に既知の様々な電極のいずれかを含み得る。実施形態では、第1の複数の電極、第2の複数の電極、またはその両方は、記録電極、刺激電極、またはそれらの組み合わせを含む。特定の実施形態では、第1の複数の電極、第2の複数の電極、またはその両方は、少なくとも1つのマイクロニードル電極、少なくとも1つの平面電極、またはそれらの組み合わせを含む。一実施形態では、第1の複数の電極、第2の複数の電極、または両方は、少なくとも1つのマイクロニードル電極を含む。一実施形態では、第1の複数の電極、第2の複数の電極、またはその両方は、少なくとも1つの平面電極を含む。
【0009】
実施形態では、電極は、マイクロエンジニアリング生理学的システムを記録または刺激するのに適切な任意のサイズを含み得る。少なくとも1つの平面電極を含む実施形態では、少なくとも1つの平面電極は、最大約100μmの長さを含み得る。平面電極は、最大約5mmの長さを含み得る。平面電極は、最大約5mm、4mm、3mm、2mm、または1mmの長さを含み得る。実施形態では、平面電極の長さは、約1mm未満である。平面電極は、500μm未満の長さを含み得る。実施形態では、平面電極は、約10μmの短い長さを含む。平面電極は、最大約100μmの長さを含み得る。一実施形態では、少なくとも1つの平面電極は、20μm~約80μm(両端の値を含む)の長さを含む。平面電極は、約50μmの長さを含み得る。一部の実施形態では、平面電極は、約50μm、約40μm、約30μm、約20μm、または約10μmの長さを含む。実施形態では、電極の少なくとも1つは、実質的に正方形の平面電極を含む。
【0010】
電極のうちの少なくとも1つは、三次元電極を含み得る。一実施形態では、少なくとも1つの三次元電極は、最大約1000μmの直径を有するベースを含む。三次元電極は、最大約500μmの直径を有するベースを含み得る。実施形態では、三次元電極のベースは、約75μm~約350μm(両端の値を含む)の直径を含む。三次元電極のベースは、約100μm~約300μmの直径を含み得る。三次元電極は、約500μm、400μm、300μm、200μm、または100μmの直径を有するベースを含み得る。特定の実施形態では、ベースは、約250μmの直径を含む。ベースの直径は、100μm未満であり得る。実施形態では、ベースの直径は、約100μm、約90μm、約80μm、約70μm、約60μm、約50μm、約40μm、約30μm、約20μm、または約10μmである。実施形態では、三次元電極の高さは、1μm~約1000μmであり得る。三次元電極は、最大約1000μmの高さを含み得る。三次元電極は、約30μm~約1000μmの高さを含み得る。三次元電極は、最大約800μmの高さを含み得る。実施形態では、三次元電極の高さは、約100μm~約500μm(両端の値を含む)である。三次元電極の高さは、約250μm~約450μm(両端の値を含む)であり得る。特定の実施形態では、三次元電極の高さは、約350μm~450μm(両端の値を含む)であり得る。実施形態では、三次元電極は、最大約150μmの高さを含む。特定の実施形態では、三次元電極は、約50μm~約150μmの高さを含む。三次元電極は、約800、700μm、600μm、500μm、400μm、300μm、200μm、または100μmの高さを含み得る。特定の実施形態では、三次元電極の高さは約450μmである。三次元電極の高さは、100μm未満であり得る。実施形態では、三次元電極の高さは、約100μm、約90μm、約80μm、約70μm、約60μm、約50μm、約40μm、約30μm、約20μm、または約10μmである。特定の実施形態では、少なくとも1つの三次元電極は、1μm~1mm(両端の値を含む)である曲率半径(ROC)を有する先端を含む。特定の実施形態では、ROCは約50μm未満である。ROCは、約5μm~約30μmであり得る。一実施形態では、ROCは、約15μmである。
【0011】
実施形態では、マイクロ電極アレイは、最大約5mmの直径を有する少なくとも1つの電極を含む。少なくとも1つの電極の直径は、最大約5mm、4mm、3mm、2mm、または1mmであり得る。実施形態では、少なくとも1つの電極の直径は、約1mm未満である。実施形態では、少なくとも1つの電極は、最大約500μmの直径を含む。少なくとも1つの電極は、500μm未満の直径を含み得る。マイクロ電極アレイは、最大約400μmの直径を有する少なくとも1つの電極を含む。実施形態では、少なくとも1つの電極の直径は、約75μm~約350μm(両端の値を含む)である。少なくとも1つの電極の直径は、約100μm~約300μmである。マイクロ電極アレイは、約500μm、400μm、300μm、200μm、または100μmの直径を有する少なくとも1つの電極を含む。特定の実施形態では、少なくとも1つの電極は、約250μmの直径を含む。少なくとも1つの電極の直径は、50μm以下であり得る。少なくとも1つの電極の直径は、約30μm以下であり得る。特定の実施形態では、マイクロ電極アレイは、直径約30~50μmの少なくとも1つの電極を含む。
【0012】
実施形態では、軸索成長領域の下手の第2の複数の電極の規定間隔は、最大約5mmの間隔を含む。実施形態では、規定間隔は少なくとも10μmである。特定の実施形態では、規定間隔は、約10μm~約5mmの距離を含む。規定間隔は、約100μm~約1mmであり得る。実施形態では、規定間隔は、約1mmである。
【0013】
マイクロ電極アレイは、最大約300個の電極を含み得る。実施形態では、マイクロ電極アレイは、最大約200個の電極を含む。マイクロ電極アレイは、最大約100個の電極を含み得る。特定の実施形態では、マイクロ電極アレイは、約300、約250、約200、約150、約100、または約50個の電極を含む。特定の実施形態では、マイクロ電極アレイは、最大約70個の電極を含む。実施形態では、第1の複数の電極および第2の複数の電極は、組み合わせると最大で64個の電極を含む。一部の実施形態では、第1の複数の電極または第2の複数の電極は、最大約64個の電極を含む。第1の複数の電極または第2の複数の電極は、約10~約64個の電極を含み得る。第1の複数の電極または第2の複数の電極は、約20~約60個の電極を含み得る。特定の実施形態では、第1の複数の電極または第2の複数の電極は、20、30、40、50、または60個の電極を含む。実施形態では、第1の複数の電極または第2の複数の電極は、約20個未満の電極を含む。特定の実施形態では、第1の複数の電極は、最大10個の電極を含み、第2の複数の電極は、最大10個の電極、またはそれらの組み合わせを含む。第1の複数の電極、第2の複数の電極、または第1の複数の電極および第2の複数の電極の両方は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20個の電極を含み得る。一実施形態では、第1の複数の電極は、3つの電極を含み、第2の複数の電極は、7つの電極を含む。代替の実施形態では、第1の複数の電極は、6つの電極を含み、第2の複数の電極は、9つの電極を含み得る。実施形態では、マイクロ電極アレイは、ニューラルアーキテクチャの領域と相補的な領域内に、少なくとも16個のマイクロニードルタイプの電極、少なくとも16個の平面電極、またはそれらの組み合わせを収容するように構成されている。
【0014】
マイクロ電極アレイは、少なくとも約10μVの生体電気信号を検出するように構成することができる。実施形態では、マイクロ電極アレイは、約10μV~約100μV(両端の値を含む)の生体電気信号を検出するように構成されている。マイクロ電極アレイは、約10μV、20μV、30μV、40μV、50μV、60μV、70μV、80μV、90μV、または100μVの生体電気信号を検出するように構成することができる。マイクロ電極アレイは、少なくとも約40μVの生体電気信号を検出するように構成することができる。
【0015】
実施形態では、マイクロ電極アレイは、長期間、マイクロエンジニアリング生理学的システム内の生体電気信号を検出するように構成され得る。実施形態では、マイクロ電極アレイは、マイクロエンジニアリング生理学的システム内で最大1年間、生体電気信号を検出するように構成されている。マイクロ電極アレイは、マイクロエンジニアリング生理学的システムにおいて、最大約12ヶ月、11ヶ月、10ヶ月、9ヶ月、8ヶ月、7ヶ月、6ヶ月、5ヶ月、4ヶ月、3ヶ月、2ヶ月、または1ヶ月間、生体電気信号を検出するように構成することができる。特定の実施形態では、マイクロ電極アレイは、最大20週間、生体電気信号を検出するように構成され得る。マイクロ電極アレイは、最大10週間、生体電気信号を検出するように構成することができる。マイクロ電極アレイは、マイクロエンジニアリング生理学的システムにおいて、少なくとも1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、または10週間、生体電気信号を検出するように構成され得る。実施形態では、マイクロ電極アレイは、少なくとも8週間、生体電気信号を検出するように構成されている。マイクロ電極アレイは、マイクロエンジニアリング生理学的システム内で約4週間~約8週間、生体電気信号を検出するように構成することができる。
【0016】
一実施形態では、マイクロ電極アレイは、生体適合性導電性インク、生体適合性導電性ペースト、生体適合性導電性複合材料、またはそれらの組み合わせを含む。マイクロ電極アレイは、1つ以上のビアを含み得る。
【0017】
実施形態では、マイクロ電極アレイは、絶縁層を含む。絶縁層は、生体適合性である材料を含み得る。一実施形態では、絶縁層は、室温でコンフォーマルコーティングされ得る。特定の実施形態では、絶縁層は、パリレン、ポリ-ジ-メチル-シロキサン(PDMS)、SU-8、二酸化ケイ素、ポリイミド、ポリウレタン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸グリコール酸、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリエチレングリコール、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートグリコール、ポリエチレンナフタレート、またはそれらの組み合わせを含む。
【0018】
マイクロ電極アレイは、マイクロエンジニアリング生理学的システムを刺激するように構成された体積刺激装置をさらに含み得る。
【0019】
様々な例示的な実施形態では、マイクロ電極アレイは、生体適合性材料で構成されている。マイクロ電極アレイは、ニューロン細胞の生存率を維持するように構成することができる。
【0020】
実施形態では、マイクロエンジニアリングされた生理学的システムは、中枢神経系内、末梢神経系内、またはそれらの組み合わせ内の細胞の構造的特徴を有する少なくとも1つの細胞を含む。特定の実施形態では、マイクロエンジニアリング生理学的システムは、脳内、脊髄内、またはそれらの組み合わせ内に配置された神経ネットワーク内の細胞の構造的特徴を有する少なくとも1つのニューロン細胞を含む。マイクロエンジニアリング生理学的システムは、末梢神経解剖学的構造に類似した構造を有する少なくとも1つのニューロン細胞を含み得る。特定の実施形態では、マイクロエンジニアリング生理学的システムは、1つ以上のシナプスを含む。実施形態では、マイクロエンジニアリング生理学的システムは、少なくとも1つの神経内分泌シナプス、少なくとも1つの神経筋肉シナプス、またはそれらの組み合わせを含む。
【0021】
特定の実施形態では、三次元電極は、マイクロニードル型電極を含む。
【0022】
実施形態では、マイクロ電極アレイチップは、標準商用マルチチャネル記録増幅器を含む標準商用マルチチャネルシステムとのインターフェースを有するように構成されている。実施形態では、例示的な商用システムおよび記録増幅器には、MCS、Axion、Plexon、Intan、NeuroNexus、ならびに他の既知のシステムおよび増幅器が含まれる。マイクロ電極アレイは、伝導速度、振幅、積分、化合物投与後の興奮度、閾値、感度、CAP時間幅、CAP波形形状、またはそれらの組み合わせについての推測のための活動電位を測定するように構成され得る。
【0023】
特定の実施形態では、マイクロ電極アレイは、導電性トレース層を含む。実施形態では、導電性トレース層は、導電性材料を含む。導電性材料は、チタン、窒化チタン、酸化イリジウム、白金、金、アルミニウム、ステンレス鋼、酸化インジウムスズ、またはそれらの組み合わせを含み得る。特定の実施形態では、導電性材料は、導電性ポリマーを含む。例示的な導電性ポリマーとしては、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)、ポリピロール、ポリアニリン、またはそれらの組み合わせが挙げられる。実施形態では、チタン/アルミニウムのトレース層、ポリエチレンテレフタレート絶縁層、マイクロタワー、またはそれらの組み合わせである。実施形態では、マイクロタワーは、マイクロ多孔質白金、ナノ多孔質白金、ナノ金、またはそれらの組み合わせでコーティングされている。マイクロタワーは、絶縁される場合があり、または絶縁されない場合がある。実施形態では、マイクロ電極アレイは、チタン/金の金属トレースを含む。マイクロ電極アレイは、チタン/アルミニウムのトレース層を含み得る。
【0024】
本発明の別の態様は、マイクロエンジニアリング生理学的システムにおける複合活動電位を再現可能に検出するためのシステムを対象とする。実施形態では、システムは、本明細書で言及される様々なマイクロ電極アレイのいずれかを含む。本システムは、1つ以上の神経細胞をさらに含む生体模倣システムを含み得る。特定の実施形態では、マイクロエンジニアリング生理学的システムは、マイクロ電極アレイ上で成長する。実施形態では、マイクロエンジニアリング生理学的システムは、マイクロ電極アレイに移される。実施形態では、1つ以上の神経細胞は、末梢神経系ニューロン、中枢神経系ニューロン、シュワン細胞、乏突起膠細胞、ミクログリア細胞、グリア細胞、またはそれらの組み合わせを含む。一部の実施形態では、1つ以上のニューロン細胞は、感覚ニューロン、介在ニューロン、または運動ニューロンを含む。末梢神経系ニューロンは、少なくとも1つの背根神経節ニューロンを含み得る。
【0025】
本発明の一態様は、神経病理の種類および重症度を予測する方法を対象とする。実施形態では、本方法は、本明細書に開示される様々なマイクロ電極アレイシステムのいずれかの上で神経組織を成長させること、本明細書に開示されるマイクロ電極アレイシステムに神経組織を追加すること、マイクロ電極アレイシステムを神経組織に追加すること、またはそれらの組み合わせを含む。神経組織は、軸索成長領域および神経節領域を含み得る。電気生理学的試験を実施して、神経組織の神経伝導速度を決定することができる。特定の実施形態では、電気生理学的試験は、軸索成長領域、神経節領域、またはそれらの組み合わせに沿った少なくとも1つの場所を刺激することと、軸索成長領域、神経節領域、またはそれらの組み合わせに沿った少なくとも1つの場所から記録することと、を含む。実施形態では、電気生理学的試験は、軸索成長領域に沿った少なくとも1つの場所を電気的に刺激することと、神経節領域内の少なくとも1つの場所から記録することと、を含む。代替の実施形態は、神経節領域を電気的に刺激し、軸索成長領域に沿った少なくとも1つの場所から記録することを含む。特定の実施形態では、低下した神経伝導は、神経病理を示す。本方法は、神経組織の組織学的分析をさらに含み得る。実施形態では、組織学的分析は、軸索直径、軸索密度、髄鞘形成、細胞形態、細胞型、神経構造、またはそれらの組み合わせについての評価を含む。特定の実施形態では、電気生理学的試験は、軸索成長領域、神経節領域、またはそれらの組み合わせに沿った複数の場所を刺激することと、神経節領域、軸索成長領域、またはそれらの組み合わせからの、結果として生じる電気応答を記録することと、を含み得る。実施形態では、組織学的分析から得られたデータは、電気生理学的試験から得られたデータと相関する。神経病理学の特定の推測は、組織学的データと電気生理学的データとの間の相関に基づいて引き出され得る。特定の実施形態は、試料神経組織から得られた神経伝導速度を、健常な神経組織であることが分かっている神経組織の神経伝導速度と比較することをさらに含み、健常な神経組織と比較した、試料神経組織における低下した神経伝導は、神経病理を示す。実施形態では、形態、表現型、遺伝子型、構造、電気生理学、またはそれらの組み合わせにおける相対的な変化は、試料神経組織と健常な神経組織との間、または試料神経組織と少なくとも1つの薬剤に供された神経組織との間で比較することができる。特定の実施形態では、電気生理学的試験は、神経変性を長期的に測定するために複数週間にわたって実行される。
【0026】
本発明の別の態様は、神経組織からの応答を評価する方法を対象とする。実施形態では、本方法は、本明細書に開示される様々なマイクロ電極アレイのいずれかの上で神経組織を成長させること、本明細書に開示されるマイクロ電極アレイシステムに神経組織を追加すること、マイクロ電極アレイシステムを神経組織に追加すること、またはそれらの組み合わせを含む。本方法は、1つ以上の刺激を神経組織に導入することと、1つ以上の刺激に対する神経組織からの1つ以上の応答を測定することと、をさらに含み得る。実施形態では、1つ以上の応答は、複合活動電位振幅、伝導速度、波形形状、組織形態パラメータ、またはそれらの組み合わせを含む。実施形態では、1つ以上の刺激を導入することは、神経組織を、少なくとも1つの薬理活性化合物、電気刺激、化学刺激、光学刺激、物理的刺激、またはそれらの組み合わせと接触させることを含む。実施形態では、光学刺激は、光遺伝学による操作された光学感度、または光受容ニューロンの刺激を通じた自然に発現された光学感度を含む。物理的刺激には、ニューロンの機械的刺激が含まれ得る。実施形態では、機械的刺激は、一過性受容体電位バニロイド(TRPV)チャネル基などの機械感受性チャネルの活性化によって実現され得るが、これらに限定されない。
【0027】
本発明のさらに別の態様は、薬剤の毒性を評価する方法に関する。実施形態では、本方法は、本明細書に開示される様々なマイクロ電極アレイのいずれかの上で神経組織を成長させること、本明細書に開示されるマイクロ電極アレイシステムに神経組織を追加すること、マイクロ電極アレイシステムを神経組織に追加すること、またはそれらの組み合わせを含む。本方法は、少なくとも1つの薬剤を神経組織に曝露することと、複合活動電位振幅、伝導速度、波形形状、組織形態パラメータ、またはそれらの組み合わせにおける変化を測定または観察することと、神経組織の任意の測定または観察された変化を薬剤の毒性と相関させることであって、これにより、測定または観察された変化が細胞生存率の低下を示す場合、薬剤が毒性であると特徴付けられ、測定または観察された変化が細胞生存率の不変または増加を示す場合、薬剤が無毒であると特徴付けられる、相関させることと、をさらに含み得る。
【0028】
本発明の一態様は、1つ以上のニューロン細胞の1つ以上の軸索の髄鞘形成または脱髄を測定する方法を対象とする。実施形態では、本方法は、少なくとも1つの軸索を成長させるのに十分な条件下で、本明細書に開示される様々なマイクロ電極アレイの実施形態のいずれかの上で神経組織を成長させること、本明細書に開示されるマイクロ電極アレイシステムに神経組織を追加すること、マイクロ電極アレイシステムを神経組織に追加すること、またはそれらの組み合わせを含む。本方法は、かかる神経組織において複合活動電位を誘発することと、複合活動電位を測定することと、複合活動電位に基づいて、かかる神経組織の髄鞘形成のレベルを定量化することと、をさらに含み得る。
【0029】
別の態様では、本発明は、三次元マイクロ電極アレイを作製する方法を対象とする。実施形態では、本方法は、複数の電極、複数のビア、またはそれらの組み合わせを収容するようにチップを加工することを含む。方法は、シャドウマスクを使用して複数の電極をメタライゼーションすることをさらに含み得る。実施形態では、本方法は、導電性インクのスクリーン印刷を含む。本方法は、オーブン中で導電性インクを硬化させることをさらに含み得る。特定の実施形態では、方法は、導電性インクおよびメタライゼーションされた電極に絶縁体を堆積させるステップを含む。絶縁体は、加工チップの全体にわたって堆積することもできる。方法は、複数の電極の記録部位を画定するステップを含み得る。実施形態では、プリント回路基板は、チップと組み合わされる。特定の実施形態では、方法は、上下信号伝達のために導電性ビアを作製することをさらに含む。
【0030】
本発明の他の目的および利点は、後続の説明から容易に明らかになるであろう。
[本発明1001]
三次元マイクロ電極アレイであって、
少なくとも1つの二次元電極、少なくとも1つの三次元電極、またはそれらの組み合わせをさらに含むチップを含み、
マイクロエンジニアリング生理学的システム内の1つ以上の生体電気信号についてのリアルタイムで信頼性の高い検出を提供するように構成されている、
前記三次元マイクロ電極アレイ。
[本発明1002]
前記1つ以上の生体電気信号が、単一活動電位、複合活動電位、高周波、低周波、またはそれらの組み合わせを含む、本発明1001のマイクロ電極アレイ。
[本発明1003]
前記マイクロエンジニアリング生理学的システムが、組織移植片、細胞の懸濁液、またはそれらの組み合わせを含む、本発明1001のマイクロ電極アレイ。
[本発明1004]
前記マイクロエンジニアリング生理学的システムが、マイクロパターン化プラットフォーム上で培養された神経細胞、またはマイクロパターン化プラットフォーム上に播種された組織移植片を含み、前記マイクロパターン化プラットフォームが、ニューラルアーキテクチャの形成を可能にし、かつ
前記マイクロ電極アレイが、前記ニューラルアーキテクチャの構成と相補的な構成を有する領域を含む、
本発明1001のマイクロ電極アレイ。
[本発明1005]
前記ニューラルアーキテクチャが、軸索成長領域、神経節領域、樹状突起領域、シナプス領域、スフェロイド領域、またはそれらの組み合わせを含む、本発明1004のマイクロ電極アレイ。
[本発明1006]
前記神経節領域またはスフェロイド領域に位置決めされた第1の複数の電極と、前記軸索成長領域の下に規定間隔で位置決めされた第2の複数の電極とを含む、本発明1005のマイクロ電極アレイ。
[本発明1007]
前記第1の複数の電極、前記第2の複数の電極、またはその両方が、記録電極、刺激電極、またはそれらの組み合わせを含む、本発明1006のマイクロ電極アレイ。
[本発明1008]
前記第1の複数の電極が、少なくとも1つの平面電極を含み、前記第2の複数の電極が、少なくとも1つの三次元電極を含み、またはその逆もまた同様である、本発明1006のマイクロ電極アレイ。
[本発明1009]
前記規定間隔が、最大約5mmの間隔を含む、本発明1006のマイクロ電極アレイ。
[本発明1010]
前記マイクロ電極アレイが、最大約64個の電極を含む、本発明1006のマイクロ電極アレイ。
[本発明1011]
前記第1の複数の電極が、最大10個の電極を含み、前記第2の複数の電極が、最大10個の電極を含み、またはそれらの組み合わせである、本発明1006のマイクロ電極アレイ。
[本発明1012]
前記ニューラルアーキテクチャの領域と相補的な領域内に、少なくとも16個の三次元電極、少なくとも16個の平面電極、またはそれらの組み合わせを収容するように構成されている、本発明1004のマイクロ電極アレイ。
[本発明1013]
少なくとも10μVの1つ以上の生体電気信号を検出するように構成されている、本発明1001のマイクロ電極アレイ。
[本発明1014]
マイクロエンジニアリング生理学的システム内の1つ以上の生体電気信号を最大1年間検出するように構成されている、本発明1001のマイクロ電極アレイ。
[本発明1015]
マイクロエンジニアリング生理学的システム内の1つ以上の生体電気信号を最大約8週間検出するように構成されている、本発明1014のマイクロ電極アレイ。
[本発明1016]
生体適合性導電性インク、生体適合性導電性ペースト、生体適合性導電性複合材料、またはそれらの組み合わせを含む、本発明のマイクロ電極アレイ。
[本発明1017]
1つ以上のビアをさらに含む、本発明1001のマイクロ電極アレイ。
[本発明1018]
絶縁層をさらに含む、本発明1001のマイクロ電極アレイ。
[本発明1019]
前記絶縁層が、生体適合性である材料を含む、本発明1018のマイクロ電極アレイ。
[本発明1020]
前記絶縁層が、パリレン、ポリ-ジ-メチル-シロキサン(PDMS)、SU-8、二酸化ケイ素、ポリイミド、ポリウレタン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸グリコール酸、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリエチレングリコール、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートグリコール、ポリエチレンナフタレート、またはそれらの組み合わせを含む、本発明1018のマイクロ電極アレイ。
[本発明1021]
前記マイクロエンジニアリング生理学的システムを刺激するように構成された体積刺激装置をさらに含む、本発明1001のマイクロ電極アレイ。
[本発明1022]
前記電極が、約50μm以下の直径を含む、本発明1001のマイクロ電極アレイ。
[本発明1023]
前記電極が、約1000μmまでの直径を含む、本発明1001のマイクロ電極アレイ。
[本発明1024]
前記電極が、約30μm以下の直径を含む、本発明1001のマイクロ電極アレイ。
[本発明1025]
前記電極が、約30~50μmの直径を含む、本発明1001のマイクロ電極アレイ。
[本発明1026]
前記少なくとも1つの三次元電極が、1μm~1mm(両端の値を含む)の曲率半径(ROC)をさらに含む先端を含む、本発明1001のマイクロ電極アレイ。
[本発明1027]
前記少なくとも1つの三次元電極が、約15μmの曲率半径(ROC)をさらに含む先端を含む、本発明1001のマイクロ電極アレイ。
[本発明1028]
生体適合性材料で構成されている、本発明1001のマイクロ電極アレイ。
[本発明1029]
ニューロン細胞の生存率を維持するように構成されている、本発明1028のマイクロ電極アレイ。
[本発明1030]
前記マイクロエンジニアリング生理学的システムが、末梢神経解剖学的構造に類似した構造を有する少なくとも1つのニューロン細胞を含む、本発明1001のマイクロ電極アレイ。
[本発明1031]
前記三次元マイクロ電極が、マイクロニードル型電極を含む、本発明1001のマイクロ電極アレイ。
[本発明1032]
前記少なくとも1つの三次元電極が、最大約1000μmの高さを含む、本発明1001のマイクロ電極アレイ。
[本発明1033]
前記少なくとも1つの三次元電極が、約300μm~約1000μmの高さを含む、本発明1001のマイクロ電極アレイ。
[本発明1034]
前記少なくとも1つの三次元電極が、最大約150μmの高さを含む、本発明1001のマイクロ電極アレイ。
[本発明1035]
前記少なくとも1つの三次元電極が、約50μm~約150μmの高さを含む、本発明1001のマイクロ電極アレイ。
[本発明1036]
前記チップが、標準商用マルチチャネルシステムおよび標準商用記録増幅器とのインターフェースを有するように構成されている、本発明1001のマイクロ電極アレイ。
[本発明1037]
伝導速度、振幅、積分、化合物投与後の興奮度、閾値、感度、CAP時間幅、CAP波形形状、またはそれらの組み合わせについての推測のための複合活動電位を測定するように構成されている、本発明1001のマイクロ電極アレイ。
[本発明1038]
導電性トレース層を含む、本発明1001のマイクロ電極アレイ。
[本発明1039]
前記導電性トレース層が、チタン、窒化チタン、酸化イリジウム、白金、金、アルミニウム、ステンレス鋼、酸化インジウムスズ、またはそれらの組み合わせを含む、本発明1038のマイクロ電極アレイ。
[本発明1040]
前記導電性トレース層が、導電性ポリマーを含む、本発明1038のマイクロ電極アレイ。
[本発明1041]
導電性トレース層、ポリエチレンテレフタレート絶縁層、マイクロタワー、またはそれらの組み合わせを含む、本発明1001のマイクロ電極アレイ。
[本発明1042]
前記少なくとも1つのマイクロタワーが、マイクロ多孔質白金、ナノ多孔質白金、ナノ金、またはそれらの組み合わせでコーティングされている、本発明1041のマイクロ電極アレイ。
[本発明1043]
チタン/金の金属トレースを含む、本発明1001のマイクロ電極アレイ。
[本発明1044]
チタン/アルミニウムのトレース層および二酸化ケイ素絶縁層を含む、本発明1001のマイクロ電極アレイ。
[本発明1045]
マイクロ電極アレイと、
1つ以上のニューロン細胞を含む生体模倣システムと
を含む、マイクロエンジニアリング生理学的システム内の複合活動電位を再現可能に検出するためのシステムであって、
前記マイクロ電極アレイが、本発明1001のマイクロ電極アレイを含む、
前記システム。
[本発明1046]
前記マイクロエンジニアリング生理学的システムが、前記マイクロ電極アレイ上で成長しているか、または前記マイクロ電極アレイに移されている、本発明1045のシステム。
[本発明1047]
前記1つ以上の神経細胞が、末梢神経系ニューロン、中枢神経系ニューロン、シュワン細胞、乏突起膠細胞、ミクログリア細胞、グリア細胞、他の末梢もしくは中枢神経支持細胞、またはそれらの組み合わせを含む、本発明1045のシステム。
[本発明1048]
前記1つ以上のニューロン細胞が、感覚ニューロン、介在ニューロン、または運動ニューロンを含む、本発明1045のシステム。
[本発明1049]
前記末梢神経系ニューロンが、少なくとも1つの背根神経節ニューロンを含む、本発明1047のシステム。
[本発明1050]
試料神経組織を、本発明1001のマイクロ電極アレイ上で成長させるか、または前記マイクロ電極アレイに移すことであって、前記試料神経組織が、軸索成長領域および神経節領域を含む、前記成長させるかまたは移すことと、
前記試料神経組織の神経伝導速度を決定するために電気生理学的試験を行うことであって、前記電気生理学的試験が、前記軸索成長領域、前記神経節領域、またはそれらの組み合わせに沿った少なくとも1つの場所を電気的に刺激すること、および前記神経節領域内、前記軸索成長領域内、またはそれらの組み合わせ内の少なくとも1つの場所から記録することを含む、前記行うことと、
試料神経組織から得られた神経伝導速度を、健常な神経組織であることが分かっている神経組織の神経伝導速度と比較することと
を含む、神経病理の種類および重症度を予測する方法であって、
前記健常な神経組織と比較した、前記試料神経組織における低下した神経伝導が、神経病理を示す、
前記方法。
[本発明1051]
前記神経組織の組織学的分析をさらに含む、本発明1050の方法。
[本発明1052]
組織学的分析が、軸索直径、軸索密度、髄鞘形成、細胞形態、細胞型、神経構造、またはそれらの組み合わせについての評価を含む、本発明1051の方法。
[本発明1053]
前記電気生理学的試験が、前記軸索成長領域、前記神経節領域、またはそれらの組み合わせに沿った複数の場所を刺激することと、前記神経節領域、前記軸索成長領域、またはそれらの組み合わせからの、結果として生じる電気応答を記録することとをさらに含む、本発明1050の方法。
[本発明1054]
前記電気生理学的試験が、神経変性を長期的に測定するために複数週間にわたって実行される、本発明1050の方法。
[本発明1055]
神経組織を、本発明1001のマイクロ電極アレイ上で成長させるか、または前記マイクロ電極アレイに移すことと、
前記神経組織に1つ以上の刺激を導入することと、
前記1つ以上の刺激に対する前記神経組織からの1つ以上の応答を測定することと
を含む、神経組織からの応答を評価する方法であって、
前記1つ以上の応答が、複合活動電位振幅、伝導速度、波形形状、組織形態パラメータ、またはそれらの組み合わせを含む、
前記方法。
[本発明1056]
前記1つ以上の刺激を導入することが、前記神経組織を、少なくとも1つの薬理活性化合物、電気刺激、化学刺激、光学刺激、物理刺激、またはそれらの組み合わせと接触させることを含む、本発明1055の方法。
[本発明1057]
神経組織を、本発明1001のマイクロ電極アレイ上で成長させるか、または前記マイクロ電極アレイに移すことと、
少なくとも1つの薬剤を前記神経組織に曝露することと、
複合活動電位振幅、伝導速度、波形形状、組織形態パラメータ、またはそれらの組み合わせにおける変化を測定または観察することと、
前記神経組織の測定または観察されたいずれかの変化を前記薬剤の毒性と相関させることであって、これにより、
前記測定または観察された変化が細胞生存率の低下を示す場合、前記薬剤が毒性であると特徴付けられ、
前記測定または観察された変化が細胞生存率の不変または増加を示す場合、前記薬剤が無毒であると特徴付けられる、前記相関させることと
を含む、薬剤の毒性を評価する方法。
[本発明1058]
少なくとも1つの軸索を成長させるのに十分な条件下で、神経組織を、本発明1001のマイクロ電極アレイ上で成長させるか、または前記マイクロ電極アレイに移すことと、
前記神経組織内の複合活動電位を誘発することと、
前記複合活動電位を測定することと、
前記複合活動電位に基づいて前記神経組織の髄鞘形成のレベルを定量化することと
を含む、1つ以上のニューロン細胞の1つ以上の軸索の髄鞘形成または脱髄を測定する方法。
[本発明1059]
複数の電極、複数のビア、またはそれらの組み合わせを収容するようにチップを加工することと、
シャドウマスクを使用して前記複数の電極をメタライゼーションすることと、
導電性インクをスクリーン印刷することと、
前記導電性インクをオーブン内で硬化させることと、
前記導電性インクおよびメタライゼーションされた電極上に絶縁体を堆積させることと、
前記複数の電極の記録部位を画定することと、
プリント基板を前記チップと組み合わせることと
を含む、三次元マイクロ電極アレイを作製する方法。
[本発明1060]
加工チップの全体にわたって絶縁体が堆積されている、請求項[0029]に記載の方法。
[本発明1061]
上下信号伝達のために導電性ビアを作製することをさらに含む、請求項[0029]に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】一実施形態における末梢神経チップ(nerve-on-a-chip)(登録商標)(AxoSim Technologies,LLC、ニューオーリンズ、ルイジアナ州)を示す。A)DAPI(青色)染色核およびβ3-チューブリン(緑色)神経突起を有する構築物の蛍光画像。B)記録および刺激電極の配置を示す明視野画像。C)深度カラーマップを備えた3D神経突起成長の共焦点画像スタック。D)構築物の遠位端付近にMBP染色された髄鞘線維を示す共焦点画像スタックの3D直交図。E)髄鞘形成軸索および裸軸索ならびにシュワン細胞を示すTEM断面;挿入図は螺旋状のコンパクトミエリン構造の拡大図。F)健常な髄鞘形成軸索(左上)ならびにFsk誘発性髄鞘形成不全(赤い矢印)の代表的な画像。G)Fsk投与前および投与後のCAPの例のトレース(10個の連続記録のオーバーレイであり、平均トレースを赤で示す)。H)対照の有髄(M+)、デキサメタゾンのみ(ODex)、フォースコリン加工(Fsk)、およびデキサメタゾン(DexM)共投与によるフォースコリンの平均CAP振幅および伝導速度;n=6、*p<0.05、***p<0.001、****p<0.0001。
図2】一実施形態における「神経チップ(登録商標)」3D MEAデバイスを提供する。概略図(左)は、製造プロセス(左)を示す。操作された神経組織アーキテクチャに整合するように設計された3D電極(中央)の光学像およびSEM画像である。3D MEAの全スペクトル平均インピーダンスにより、無電解白金メッキ後のインピーダンス低減(N=3、右上)、マイクロ多孔質白金を使用した3D電極の10倍の充電容量増加(N=3、右下)が実証される。
図3】軸索成長領域に沿った異なる位置を刺激する3つの電極および神経節領域内に示される記録電極を備えた一実施形態の下での実験装置の概略図を示す。
図4】一実施形態下での実験的な設計を示す。この実施形態では、ベースラインの生理学的記録は、培養物中の成長および髄鞘形成の後に行われる。実験には、各薬物の急性(48時間)適用、続いて、生理学的記録(Rec)およびイメージング(CFMおよびTEM)による即時または遅延(7日間)評価が含まれる。対照群は、薬物を含まない溶媒投与から構成される。
図5】一実施形態におけるカスタム固体基板MEA設計のために使用されるマスクの概略図を示す。ボックス化された領域が右図でより詳細に示されている。応答を記録するための細胞スフェロイドの領域に配置された9個の50×50μmの電極が示され、6個の100×500μmの電極がチャネルの長さまで1mm間隔で示される(右側の拡大図では3個のみ視認される)。
図6】3D MEAの製造のための例示的なプロセスフローを示しており、(a)ベース構造の3D印刷、(b)マイクロミルステンシルマスクを介したメタライゼーション、(c)生体適合性ラミネート「グロス」絶縁層の適用、および(d)作製したデバイス上の3D印刷培養ウェルの組み立てが示される。プロセスステップごとに、10個の3D電極を包含する記録/刺激パッチのうちの1つの拡大図が与えられており、(e)白金の無電解メッキ後のパッチのうちの1つの拡大図、(f)メタライゼーションステップ後の「微細」SiO2絶縁層の堆積を示すデバイスの分解図である。(g)SiO2の堆積後の単一の3Dマイクロタワー、(h)SiO2絶縁体のレーザ微細加工(これによりその下の金属が露出する)後の単一の3Dマイクロタワー、(i)白金の無電解メッキ後のより小さいマイクロ電極を有する単一の3Dマイクロタワーである。
図7】(a)10個の3Dマイクロタワーを包含する記録/刺激パッチのうちの1つ、(b)SLA印刷の層別加工による3D印刷後の固有のストライプを示すパッチの環状領域内の3つのマイクロタワー、(c)ストライプの削減をもたらすマイクロタワーのアセトン蒸気研磨後のマイクロタワー表面の平滑化、(d)約15μmの曲率半径を示す単一の3Dマイクロタワーの先端の拡大図のSEM画像を提供する。
図8】一実施形態における作製したデバイスの顕微鏡写真を示しており、(a)メタライゼーション済みのデバイス、(b)3Dマイクロタワーの拡大図、(c)点線状の円で示される生体適合性ラミネート「グロス」絶縁層の適用、および(d)増幅器セットアップとの互換性のために49mm×49mm×1mmのフォームファクターで組み立てられた3D MEAデバイスを示す。
図9】3DマイクロタワーMEAの(a)インピーダンスおよび(b)位相特性のフルスペクトルを提供する。線は、グラフの右側の電気生理学的に有意な1kHzの値を示している。(c)マイクロ多孔質白金の無電解メッキ前(c)および後(d)の単一の3DマイクロタワーMEAの光学顕微鏡写真である。顕微鏡写真から、マイクロタワーの先端にマイクロ多孔質白金が堆積していることが明らかである。
図10図10(a)および(b)は、一実施形態の(a)無電解白金メッキ前および(b)後の3DマイクロタワーMEAの循環電圧測定の走査速度変化を示す。(c)マイクロ多孔質白金メッキ前後の二重層キャパシタンス値を推定するために(a)および(b)から抽出された電流対走査速度、(d)マイクロ多孔質白金の無電解メッキ前後の3Dマイクロタワー上の30μm×30μmの「微細」マイクロ電極のフルスペクトルインピーダンスおよび位相応答を示す。
図11】(a)SiO2層の紫色の色相を示すSiO2堆積後の一実施形態における3Dマイクロタワーの先端の拡大図顕微鏡写真、(b)SiO2のレーザ微細加工後の白金の無電解メッキ後の「微細」マイクロ電極上の特徴的なマイクロ多孔質白金、(c)「微細」レーザーアブレーションされたマイクロ多孔質白金メッキSiO2電極のSEM画像、(d)形成されたマイクロ多孔質材料の島に白金を無電解メッキした後の「微細」マイクロ電極のEDS分析を提供する。
図12】(a)一実施形態におけるMEAの3Dマイクロタワー上のDRG(青色でマーク)を、(b)マトリゲル(登録商標)マトリックス鍵穴(青色でマーク)の拡大図とともに示す。PEG層の輪郭は赤色でマークされている。(c)神経チップ(登録商標)の環状領域におけるMEAの3Dマイクロタワー上のDRGの蛍光顕微鏡像である。(d)マトリゲルを使用して、MEA(1)上に配置されたDRGを示すステッチされた複合画像である。DRGをカルセインAM染色(緑色)およびヨウ化プロピジウム染色(赤色)で染色し、4倍で倒立顕微鏡を使用して撮影した。(2)は3Dマイクロタワーに巻かれた神経細胞であり、細胞の生体適合性を決定する。(e)対照試料のための神経チップ(登録商標)の環状領域の拡大図である。
図13】一実施形態では、MEA上で10日間培養した後に神経細胞生存率を測定することによって得られる神経チップ(登録商標)の生体適合性からのデータを示す。(a)棒グラフにより、対照(組織培養プラスチック上の神経細胞生存率)と絶縁デバイスおよびプレーン樹脂上で成長した細胞とが比較される。エラーバーはSDを示し、***はANOVAに対するp<0.0001の有意性を示す。(b)(c)フィンガープリント領域の分解プロットを用いた3D印刷クリア樹脂のFTIR分析である。(d)一実施形態による神経チップ(登録商標)設計に従って、131個の記録部位/刺激部位を有する、加工された3D MEAの吸水特性、および(e)3D印刷された高密度3D MEA(ベース直径約100μm、高さ約150μm)のSEM画像である。
図14】(a)一実施形態の下のシャドウマスクの概略図、(b)一実施形態の下のマイクロミルラミネートの概略図、および(c)一実施形態の下のマイクロミルステンレスステンシルマスクを提供する。
図15】ベース直径(左)および高さ(右)の変動を示すN=20個の電極のボックスプロットを示す。
図16】(a)一実施形態の単一パッチの10個のマイクロ多孔質白金電極の顕微鏡写真および(b)マイクロ多孔質白金電極の拡大図を提供する。(c)一実施形態による無電解メッキ前の3DマイクロタワーMEAの顕微鏡写真および(d)無電解メッキ前のMEAの拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
略語および定義
本明細書において1つ以上の好ましい実施形態の詳細な説明を提供する。ただし、本発明が様々な形態で実施され得ることを理解されたい。したがって、本明細書に開示される特定の詳細事項は、限定的ではなく、特許請求の範囲の基礎として、かつ本発明を任意の適切な方法で使用するように当業者に教示するための代表的な基礎として解釈されるべきである。
【0033】
単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈が明示的に別様に示さない限り、複数の参照を含む。特許請求の範囲および/または明細書中の用語「含む」と併用される場合、用語「1つの(a)」または「1つの(an)」の使用は、「1つ」を指し得るが、「1つ以上」、「少なくとも1つ」、および「1つ以上」も指し得る。
【0034】
本明細書で「例えば」、「など」、「含む」などの語句のいずれかが使用される場合、別途明示的に記載されない限り、「かつ限定されない」という語句が続くと理解される。同様に、「一例」、「例示的」などは、非限定的であると理解される。
【0035】
「実質的に」という用語は、意図される目的に悪影響を与えない記述からの逸脱を許容するものである。説明的な用語は、「実質的に」という用語が明示的に列挙されなくても、「実質的に」という用語によって修飾されると理解される。したがって、例えば、語句「レバーは垂直に延在する」は、正確な垂直配置が、レバーがその機能を実行するために必要でない限り、「レバーは実質的に垂直に延在する」ことを意味する。
【0036】
用語「含む(comprising)」および「含む(incluing)」および「有する(having)」および「伴う(involving)」(ならびに同様に「含む(comprises)」、「含む(includes)」、「有する(has)」、および「伴う(involves)」)などは、互換的に使用され、同じ意味を有する。具体的には、用語の各々は、「含む」という米国特許法の一般的な定義と一致して定義され、したがって、「少なくとも以下の」を意味するオープンな用語であると解釈され、追加の特徴、制限、態様などを除外しないようにも解釈される。したがって、例えば、「ステップa、b、およびcを伴うプロセス」は、プロセスが少なくともステップa、b、およびcを含むことを意味する。用語「1つの(a)」または「1つの(an)」が使用される場合は、かかる解釈が文脈において無意味でない限り、「1つ以上」が理解される。
【0037】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、「おおよそ」、「ほぼ」、「周囲」、または「その領域内」を指し得る。「約」という用語が数値範囲と併せて使用される場合、それは、記載される数値の上下の境界を拡張することによってその範囲を修正する。一般に、「約」という用語は、本明細書において、記載される値を上方または下方(より高いまたはより低い)20パーセントの分散で修正するために使用される。
【0038】
本明細書で使用される「マイクロエンジニアリング生理学的システム」、「器官型調製物」、「3D細胞ネットワーク」、「3D器官モデル」、「生体機能チップ」などの用語は、任意の生体模倣インビトロシステムを指し得る。実施形態では、マイクロエンジニアリング生理学的システムは、特定の生物学的システムの構造的特徴および機能的特徴を発現するように構成されている。マイクロエンジニアリングされたシステムの一例には、三次元細胞培養システムが含まれる。一実施形態では、マイクロエンジニアリング生理学的システムは、神経細胞のための三次元細胞培養システムを含み、これは、インビボ神経線維のものを模倣する構造的特徴および機能的特徴の両方を促進する。特定のマイクロエンジニアリング生理学的システムは、単離された細胞、組織移植片、組織移植片断片、またはそれらの組み合わせの成長を促進するように構成され得る。実施形態では、マイクロエンジニアリング生理学的システムは、ニューロン細胞、神経細胞、神経組織移植片、またはそれらの組み合わせを含む。実施形態では、マイクロエンジニアリング生理学的システムは、米国特許出願第15/510,977号に開示されている様々なシステムのいずれかを含み、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。マイクロエンジニアリング生理学的システムは、米国特許出願第16/077,411号に開示される様々なシステムのいずれかを含むことができ、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0039】
本明細書で使用される場合、「組織移植片」は、生物または対象から得られる、単離されるか、または別様で分離される任意の組織を含み得る。例示的な組織移植片としては、単離された神経移植片が挙げられる。組織移植片は、任意の電気的に活性または電気的に応答性のある組織の移植片を含み得る。実施形態では、組織移植片は、末梢神経組織の移植片、および中心神経組織の移植片、またはそれらの組み合わせを含む。移植片は、脳由来組織移植片、脊髄由来組織移植片、腸由来組織移植片、末梢由来組織移植片、またはそれらの組み合わせであり得る。実施形態では、組織移植片は、背根神経節(DRG)移植片、網膜移植片、皮質移植片、またはそれらの組み合わせを含む。組織移植片は、複数の1つ以上のニューロン細胞を含み得る。
【0040】
本明細書で使用される場合、「ニューロン細胞」、「神経細胞」などの用語は、樹状突起、軸索、および体細胞の少なくとも1つもしくは組み合わせを含む細胞、または代替的に、神経系組織から単離された、もしくは神経系組織内で見出された任意の細胞もしくは細胞群を指し得る。実施形態では、ニューロン細胞は、軸索を含むか、または軸索を形成し得る任意の細胞である。ニューロン細胞は、単離された一次神経節組織を含み得る。一部の実施形態では、神経細胞は、シュワン細胞、グリア細胞、神経膠細胞、皮質ニューロン、神経細胞から単離されたもしくは神経細胞に由来するか、または神経細胞の表現型に実質的に類似した神経細胞表現型もしくは表現型を有する細胞に分化した胚性細胞、神経細胞表現型に分化した誘導多能性幹細胞(iPS)、あるいは神経組織に由来するか、または神経表現型に分化した間葉系幹細胞である。特定の実施形態では、ニューロン細胞は、背根神経節(DRG)組織、網膜組織、脊髄組織、腸組織、または脳組織由来のニューロンであり、各場合において、成人、青年、子供、または胎児の対象に由来する。一部の実施形態では、神経細胞は、対象の神経組織から単離された任意の1つ以上の細胞である。実施形態では、神経細胞は、対象の末梢神経系に由来する一次細胞、対象の中枢神経系に由来する一次細胞、またはそれらの組み合わせを含む。一部の実施形態では、神経細胞は、哺乳類細胞である。実施形態では、細胞は、ヒト細胞である。特定の実施形態では、神経細胞は、初代ヒト組織またはヒト幹細胞に由来する。一部の実施形態では、細胞は、非ヒト哺乳類細胞であるか、または非ヒト哺乳類から単離された細胞に由来する。細胞が由来する元の動物から単離されるか、または分離された場合、ニューロン細胞は、2つ以上の種から単離されたニューロンを含み得る。
【0041】
実施形態では、ニューロン細胞は、交感神経ニューロン、脊髄運動ニューロン、中枢神経系ニューロン、運動ニューロン、感覚ニューロン、コリン作動性ニューロン、GABA作動性ニューロン、グルタミン作動性ニューロン、ドーパミン作動性ニューロン、血清作動性ニューロン、介在ニューロン、アドレナリン作動性ニューロン、および三叉神経節ニューロンのうちの1つ以上のニューロンである。一部の実施形態では、神経細胞は、星状細胞、乏突起膠細胞、シュワン細胞、ミクログリア、上衣細胞、放射状グリア、衛星細胞、腸グリア細胞、および下垂体細胞のうちの1つ以上のグリア細胞である。一部の実施形態では、神経細胞は、マクロファージ、T細胞、B細胞、白血球、リンパ球、単球、肥満細胞、好中球、ナチュラルキラー細胞、および好塩基球のうちの1つ以上の免疫細胞である。一部の実施形態では、神経細胞は、造血幹細胞、神経幹細胞、脂肪由来幹細胞、骨髄由来幹細胞、誘導多能性幹細胞、星状細胞由来誘導多能性幹細胞、線維芽細胞由来誘導多能性幹細胞、腎上皮由来誘導多能性幹細胞、角質細胞由来誘導多能性幹細胞、末梢血由来誘導多能性幹細胞、肝細胞由来誘導多能性幹細胞、間葉細胞由来誘導多能性幹細胞、神経幹細胞由来誘導多能性幹細胞、脂肪細胞由来誘導多能性幹細胞、前脂肪細胞由来誘導多能性幹細胞、軟骨細胞由来誘導多能性幹細胞、および骨格筋由来誘導多能性幹細胞のうちの1つ以上の幹細胞である。一部の実施形態では、神経細胞は、角質細胞である。一部の実施形態では、神経細胞は、内皮細胞である。
【0042】
「単離されたニューロン」、「単離されたニューロン細胞」、「単離された神経細胞」などは、それらが元々成長する生物または培養物から除去または分離された神経細胞を指し得る。一部の実施形態では、単離されたニューロンは、懸濁液中のニューロンである。一部の実施形態では、単離されたニューロンは、組織試料または非ニューロン細胞もしくは非神経細胞を有する懸濁液を含む細胞のより大きな混合物の成分である。一部の実施形態では、神経細胞は、組織移植片の場合のように、それらが由来する動物から除去されるときに単離されたものである。一部の実施形態では、単離されたニューロンは、動物から切除されたDRG中のニューロンである。一部の実施形態では、単離されたニューロンは、ヒツジ細胞、ヤギ細胞、ウマ細胞、ウシ細胞、ヒト細胞、サル細胞、マウス細胞、ラット細胞、ウサギ細胞、イヌ細胞、ネコ細胞、ブタ細胞、または他の非ヒト哺乳動物から選択される1つの種、または種の組み合わせに由来する少なくとも1つ以上の細胞を含む。一部の実施形態では、単離されたニューロンは、ヒト細胞である。一部の実施形態では、単離されたニューロンは、ヒトニューロン細胞に類似または実質的に類似した分化表現型を有するように予め条件付けされた幹細胞である。一部の実施形態では、単離されたニューロンは、ヒト細胞である。一部の実施形態では、単離されたニューロンは、非ヒトニューロン細胞に類似または実質的に類似した分化表現型を有するように予め条件付けされた幹細胞である。一部の実施形態では、幹細胞は、間葉系幹細胞、誘導多能性幹細胞、胚性幹細胞、造血幹細胞、表皮幹細胞、哺乳動物の臍帯から単離された幹細胞、または内皮幹細胞から選択される。
【0043】
本明細書で使用される場合、「ニューロン細胞培養培地」または単に「培養培地」という用語は、細胞の成長、培養(culture)、培養(cultivating)、増殖、伝搬、または別様で操作をサポートするのに好適な任意の栄養物質を指し得る。一部の実施形態では、培地は、神経成長因子(NGF)を補充した神経バサル培地を含む。一部の実施形態では、培地は、ウシ胎児血清(FBS)を含む。実施形態では、培地は、L-グルタミンを含む。培養培地は、環状アデノシン一リン酸(cAMP)を含み得る。特定の実施形態では、培地は、約0.001体積%~約0.01体積%の範囲の濃度のアスコルビン酸を含む。実施形態では、培地は、約0.001体積%~約0.008体積%の範囲の濃度のアスコルビン酸を含む。一部の実施形態では、培地は、約0.001体積%~約0.006体積%の範囲の濃度のアスコルビン酸を含む。培地は、約0.001体積%~約0.004体積%の範囲の濃度のアスコルビン酸を含み得る。一部の実施形態では、培地は、約0.002体積%~約0.01体積%の範囲の濃度のアスコルビン酸を含む。実施形態では、培地は、約0.003体積%~約0.01体積%の範囲の濃度のアスコルビン酸を含む。特定の実施形態では、培地は、約0.004体積%~約0.01体積%の範囲の濃度のアスコルビン酸を含む。実施形態では、培地は、約0.006体積%~約0.01体積%の範囲の濃度のアスコルビン酸を含む。培地は、約0.008体積%~約0.01体積%の範囲の濃度のアスコルビン酸を含み得る。一部の実施形態では、培地は、約0.002体積%~約0.006体積%の範囲の濃度のアスコルビン酸を含む。一部の実施形態では、培地は、約0.003体積%~約0.005体積%の範囲の濃度のアスコルビン酸を含む。シュワン細胞分化を組み込む実施形態では、培養培地は、吸収性酸、FBS、cAMP、またはそれらの組み合わせを含み得る。
【0044】
本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、哺乳類、爬虫類、動物(例えば、ネコ、イヌ、ウマ、ブタ、霊長類、ラット、マウス、ウサギなど)およびヒトを含むがこれらに限定されない、動物界の全てのメンバーを含む。
【0045】
「電気刺激」という用語は、細胞が交流(AC)または直流(DC)のいずれかの電流に曝露されているプロセスを指し得る。電流は、固体基板に導入されるか、または細胞培養培地または細胞培養システムの他の好適な構成要素を介して印加され得る。一部の実施形態では、電気刺激は、1つ以上の電極をデバイスまたはシステム内の異なる位置に位置決めして、細胞培養容器にわたって電圧電位を生成することによってデバイスまたはシステムに提供される。電極は、1つ以上のワイヤによって、1つ以上の増幅器、電圧計、電流計、および/または電気化学システム(電池または発電機など)と動作可能に接続している。かかるデバイスおよびワイヤにより、電流が生成され、組織培養システム全体で電位が生成される回路が形成される。
【0046】
本明細書で使用される場合、「固体基板」という用語は、細胞毒素を含まないか、または実質的に含まない固体支持体である任意の物質を指し得る。一部の実施形態では、固体基板は、シリカ、プラスチック、および金属の1つまたは組み合わせを含む。実施形態では、固体基板は、細胞培養培地の存在下で、固体基板を通るタンパク質、栄養素、およびガスの拡散または非活性輸送を可能にするのに十分なサイズおよび形状の孔を含む。特定の実施形態では、孔径は、直径が約10、9、8、7、6、5、4、3、2、1ミクロン以下である。当業者は、細胞培養培地の内容物および特定の微小環境中の固体基板上で成長する細胞の曝露に基づいて、必要または適切な孔径を決定することができる。例えば、当業者は、システムまたはデバイス内の任意の培養細胞が、固体基板が様々な直径の孔を含む条件下で生存可能であるかどうかを観察することができる。一部の実施形態では、固体基板は、外面および内面の形状を画定する所定の形状を有するベースを含む。実施形態では、ベースは、シリカ、プラスチック、セラミック、もしくは金属のうちの1つまたは組み合わせを含み、ベースは、シリンダの形状であるか、またはシリンダに実質的に類似した形状であり、これにより、第1の細胞貫通不能ポリマーおよび第1の細胞貫通可能ポリマーは、ベースの内面を被覆し、円筒形または実質的に円筒形の内部チャンバを画定し、開口部は、シリンダの一端に位置決めされる。一部の実施形態では、ベースは、細胞培養培地の存在下で固体基板を通してタンパク質、栄養素、および酸素の拡散を可能にするのに十分なサイズおよび形状の1つ以上の孔を含む。実施形態では、固体基板は、直径が1ミクロン以下の孔径を有するプラスチック基板を含み、少なくとも1層のヒドロゲルマトリックスを含み、ヒドロゲルマトリックスは、少なくとも第1の細胞貫通不能ポリマーおよび少なくとも第1の細胞貫通可能ポリマーを含み、ベースは、第1の細胞貫通不能ポリマーおよび少なくとも第1の細胞貫通可能ポリマーが物理的に接着または化学結合する所定の形状を含み、固体基板は、固体基板の内面の形状によって少なくとも部分的に画定され、開口部によって固体基板の外側からアクセス可能であり、任意選択的に固体基板の一端に位置決めされる少なくとも1つの区画を含む。固体基板が少なくとも1つの内面によって画定された中空の内側部分を含む実施形態では、懸濁液または組織移植片中の細胞は、細胞が成長の前に固体基板の内側表面の少なくとも一部分に付着し得るように、開口部にまたはその近くに細胞を配置することによって播種することができる。固体基板の少なくとも1つの区画または中空内部は、内面固体基板の形状によって画定された特定の三次元形状の細胞の格納を可能にし、開口部から離れた細胞の方向性成長を促進する。ニューロン細胞の場合、少なくとも1つの区画の格納の程度および形状は、少なくとも1つの区画内に、開口部に、または開口部に近接して位置決めされた体細胞からの軸索成長に有利である。特定の実施形態では、固体基板は、内部区画が円筒形または部分的に円筒形となるように、管状または実質的に管状である。実施形態では、固体基板は、1つ以上の分岐管状内部区画を含む。実施形態では、固体の中空内部部分の分岐または多重分岐形状は、軸索が複数の分岐パターンで成長するように構成されるか、またはそれを可能にする。電極が軸索の遠位端付近に配置され、ニューロン細胞体に配置されるか、またはニューロン細胞体に近接して配置される場合、細胞内活動電位などの電気生理学的測定基準をデバイスまたはシステム内で測定することができる。
【0047】
特定の実施形態では、1つ以上の電極は、1つ以上の開口部に配置されるか、または1つ以上の開口部に近接して配置され得、その結果、軸索長に沿った1つ以上の位置にわたって記録を行うことができる。これはまた、軸索の長さに沿った1つ以上の位置を調べるために使用され得る。
【0048】
本明細書で使用される場合、「記録」という用語は、1つ以上のニューロン細胞の応答を測定することを指し得る。かかる応答は、電気生理学的応答、例えば、パッチクランプ電気生理学的記録または電界電位記録であり得る。
【0049】
マイクロエンジニアリング生理学的システム
電気生理学的および組織学的評価が神経障害を評価するためのゴールドスタンダード測定である神経系について、神経伝導速度および神経線維密度などの臨床的に関連する測定基準を提供し得る生体模倣インビトロシステムにより、臨床予測性を向上させることができる。好適な生体模倣インビトロ神経チップ(nerve-on-a-chip)(登録商標)(NOaC)システムは、米国特許出願第15/510,977号に記載されており、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。簡潔に述べると、実施形態は、動物細胞、ヒト細胞、またはそれらの組み合わせを使用することができ、軸索を、3D偏光構造で細胞外刺激することで、シグナルの一方向伝搬をもたらし、その結果、複合活動電位(CAP)を評価することができる。
【0050】
三次元(3D)マイクロ電極アレイ(MEA)
これらの革新的なシステムおよび器官型調製物は、インビトロ環境におけるインビボ情報を提供するが、電気生理学的試験には、マイクロマニピュレータを使用した刺激電極および記録電極の労力を要する手動配置が含まれており、マイクロマニピュレータは、他のより高いスループットの2D多電極アレイ(MEA)システムと比較して、試験速度が低下する。
【0051】
この課題を克服するために、マイクロエンジニアリング生理学的システムを3Dマイクロ電極と統合して、刺激、記録、またはその両方のプロセスを自動化することができる。かかる自動化により、システムのスループットを増加させることができ、治療用化合物を大規模にスクリーニングするのに適している。3D電極は、他の2D MEAプラットフォームと比較して、より多くの多様な軸索線維を調べることができ、よりインビボ神経組織に類似した集団ベースの電気生理学的応答を実現する。
【0052】
さらに、従来のMEAの平面構成は、培養物が成熟して3D形態になったときに一定の高さで発生するシグナルを捕捉するのに不十分である。チップ上の神経学的モデルでは、より厚く、かつ成熟した組織に由来するシグナルの捕捉および分析が特に重要である。
【0053】
本発明の実施形態は、迅速な電気生理学的試験を可能にするために、3Dヒドロゲル環境などの生体模倣システムに統合され得るマイクロ電極設計を提供する。
【0054】
従来の2D MEA加工は、シリコンまたはガラス基板上のリソグラフィ、メタライゼーション、およびエッチング技術を伴い得る。特に、非平面表面上のリソグラフィ技術が困難であるため、モノリシック3D MEA加工技術は稀少な技術である。最近、様々な3D細胞培養システムの開発に多大な努力が投資されており、その結果、インビトロMEAを三次元まで拡張する必要性が高まっている。3D MEAは、中枢または末梢神経系用途を含む生物学的システムのための3Dマイクロエンジニアリングシステムの研究に向けたネットワークダイナミクスの単純で迅速なスクリーニングおよび測定を可能にし得る。
【0055】
3D MEAは、既存の基板上で製造することができる。実施形態では、かかる既存の基板には、マイクロ電極アレイの構築に一般的に使用されていることが当該技術分野で既知の任意の材料が含まれる。既存の基板の非限定的な例としては、シリコンおよびガラスが挙げられる。代替の実施形態では、非既存基板が、3D MEAの製造で使用される。非既存基板には、MEAの製造に使用するのに適切であることが当該技術分野で既知の任意の基板であって、従来はそのように使用されていなかった基板が含まれる。例示的な非既存基板としては、パリレン、SU-8、各種金属、ポリイミド、各種樹脂、各種エポキシ、他の非既存基板、またはそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、シリコンベースの3D MEAは、インビボ用途に使用される。加えて、金属、ガラス、およびポリマープローブは、3D MEAと共に使用され得、これには、放電機械加工(EDM)、ポリイミドまたはカプトン微細加工、パリレンベースの技術、マイクロ電極およびマイクロ流体機能を有するSU-8ベースの活性3Dマイクロスキャフォールド技術、ならびに金属トランスファマイクロ成形(MTM)などの技術から製造された3D MEAが含まれる。前述のタイプの3D MEAの多くを製造するには、クリーンルームでの広範にわたる加工が必要となる場合があり、または複雑な製造/組み立て方法を伴う場合がある。このため、それらは高価なものとなり、広範な設備を有するエンドユーザのみが利用できる。さらに、これらの技術は、コンセプトから最終デバイスに進歩させるために相当な時間の投資を必要とする場合がある[表S1]。
【0056】
3D MEA製造の費用対効果の高い「オンデマンド」加工プロセスでは、堅牢でベンチトップベースの設計からデバイスへのストラテジを利用した迅速なプロトタイピング技術の導入が、次の論理的なステップである。ほとんどの生理学的デバイスが高度なクリーンルーム環境を必要としないため、ナノバイオセンサ、バイオメディカルマイクロエレクトロメカニカルシステム(BioMEMS)、およびマイクロ総合分析システム(MicroTAS)用途のための微細製造技術は、リソグラフィ技術から非既存のベンチトップベースの製造プロセスに移行しつつある。メーカースペースは、アプリケーション開発者に脅威のない環境で様々なツールに簡単にアクセスできる一方で、様々な素材に非常に柔軟に対応するものであり、拡張性のある製造および組み立てにより迅速な設計変更を可能にする。発明者らは、最近、2Dマイクロ電極アレイ(MEA)、マイクロニードル(MN)、マイクロ流体チャネル(MFC)などの生理学的マイクロデバイスの実現に使用される「メーカースペース微細製造」の概念を導入している。発明者らの「メーカースペース微細製造」は、必要に応じて既存技術を利用し、3Dスピンキャスト絶縁およびエレクトロスピニングなどの新規のツールボックス技術を含むように拡張されている。実施形態では、本明細書に開示されるマイクロ電極アレイは、少なくとも部分的に、3D印刷、レーザエッチングもしくは微細加工、導電性インクのレーザジェットもしくはインクジェット印刷、スクリーン印刷、従来のCNCマイクロミリング、エレクトロメッキ、ラミネート、またはそれらの任意の組み合わせを使用して製造することができる。
【0057】
実施形態では、「メーカースペース微細製造」は、3Dマイクロエンジニアリングシステムの電気生理学的評価のための3D MEAを実現するために使用され得る。デバイスのプロセスフローは、マイクロタワーの物理構造を実現する3D印刷から開始し得る。実施形態では、3DマイクロタワーMEAは、250μmのベース直径および400μmの高さを有する。様々な実施形態では、3Dマイクロエンジニアリングシステムは、1つ以上のパッチを含み得、それぞれが3Dマイクロタワーの形態で10個の記録部位を包含する。特定の実施形態は、2つのパッチを含む。10個のマイクロタワーは、それらを、直線チャネル(神経管)に通じる環状領域(神経節)を含み得る3Dマイクロエンジニアリングされた神経チップ(登録商標)の幾何学形状と一致させるように配置することができる。マイクロタワーは、環状神経節および神経管の両方と重複して、記録電極/刺激電極として機能し得る。ステンシルマスク蒸着技術によって実現され得るメタライゼーション層により、メタライゼーションされたタワーおよび導電性トレースが画定され得る。生体適合性ラミネート層は、トレースを絶縁するために使用され得、それにより、背根神経節(DRG)移植片を組み込むための3Dデュアルヒドロゲル構築物が画定または移植され得る3DマイクロタワーMEAの実現が可能となる。追加の電子ビーム蒸着SiO2層により、3D MEAの「微細」絶縁が画定され得る。適用可能な実施形態では、3D印刷基板の上のメタライゼーションおよびSiO2蒸着は、非既存加工技術と半導体加工技術との間のコラボレーションを実証するものである。これは、「メーカースペース微細製造」の特徴的な品質である。プロセスの階層的性質はまた、絶縁層を画定するためのマイクロミリングおよびレーザ微細加工などの除去加工技術を可能にし得る。かかる積層により、あらゆるプロセスによって機能を追加し、複雑な設計を実現することが可能になる。光学イメージングおよびSEMイメージングは、様々な構成プロセスを特徴付けるために実施されている。加工された電極のフルスペクトルのインピーダンス分析により、白金の無電解堆積によってその容量挙動をさらに向上させ得るマイクロ電極の性質が確認される。マイクロタワー電極および小さい30μm×30μmの電極の両方を、MEA材料の化学的および生理学的特性とともに、さらに実証することができる。
【0058】
実施形態では、電極は、マイクロエンジニアリング生理学的システムを記録または刺激するのに適切な任意のサイズを含み得る。実施形態では、電極の少なくとも1つは、任意の想定される形状または形態の平面電極を含む。電極の形状は、楕円形、円形、または多角形であり得る。実施形態では、平面電極の形状は、三角形、正方形、長方形、菱形、平行四辺形、台形、五角形、六角形、七角形、八角形、九角形、十角形、円、楕円形、半円、または四分円を含む。平面電極の形状には、曲線が含まれ得る。
【0059】
実施形態では、電極の少なくとも1つは、任意の想定される形状、形態、または幾何学形状の三次元電極を含む。実施形態では、三次元電極は、実質的に円筒形または多面体形状を含む。一部の実施形態では、三次元電極は、円筒形ピラー、テーパピラー、またはそれらの組み合わせを含む。三次元電極は、実質的にピラミッド形状であり得る。三次元電極は、実質的に円錐形を含み得る。
【0060】
本開示は、マイクロエンジニアリング生理学的システムの生理学的測定値を得るための方法およびデバイスを開示するものであり、臨床神経伝導および神経線維密度(NFD)試験を模倣するインビトロ神経組織のマイクロスケール器官型モデルを含む。これらの方法およびデバイスの使用から得られる結果は、臨床転帰のより良好な予測であり、後期での成功の可能性が高い有望なリード化合物を選択するためのより費用対効果の高いアプローチを可能にする。本開示は、固有に密度が高く、高度に平行した神経線維管の成長を可能にする、マイクロエンジニアリングされたシステムにおける三次元マイクロ電極アレイの製造および利用を含む。管の制限された性質のため、このインビトロモデルにより、CAPおよび細胞内パッチクランプ記録の両方を測定することができる。さらに、その後の共焦点および透過型電子顕微鏡(TEM)分析により、NFDを含む定量的構造分析が可能となる。これらを総合すると、インビトロモデル系は、臨床組織病理学および神経伝導試験と同様に、組織形態測定および集団電気生理学を評価する新規な能力を有する。
【0061】
使用方法
様々な例示的な方法において、本明細書に開示されるマイクロ電極アレイは、マイクロエンジニアリング生理学的システムに使用することができ、電気生理学的刺激および電気的に活性な細胞集団の記録に役立つ。
【0062】
様々な実施形態において、かつ本明細書に開示されるマイクロ電極アレイの使用を通じて、本開示は、天然の解剖学的および生理学的特徴を模倣するマイクロエンジニアリング神経組織の生体測定特性を評価するための高スループットの電気生理学的刺激および記録方法を提供する。本開示のマイクロ電極アレイを使用する方法は、複合活動電位(CAP)を臨床的に類似した測定基準として使用して、インビトロで神経生理学を評価するための新規なアプローチを提供するものであり、過去に利用可能な方法よりもヒト生理学的に感度が高く予測可能な結果が得られる。
【0063】
本開示の一態様は、微小管、イオンチャネル、ミエリン、ミトコンドリア、および小神経線維を含むが、これらに限定されない様々な細胞標的の機能を測定するための方法を提供する。特定の実施形態では、本発明は、本明細書に記載のマイクロ電極アレイおよびインビトロモデルを使用して軸索の髄鞘形成を測定する方法を含む。ヒト求心末梢神経の構造と同様に、これらのインビトロ構築物中の背根神経節(DRG)ニューロンは、末梢に長く平行な筋循環軸索を投射する。天然組織において、様々な直径および髄鞘度の軸索は、異なる速度で感覚情報を中枢神経系に戻す。シュワン細胞は、軸索を髄鞘化し、より迅速な伝導のための絶縁を提供することによって感覚リレーをサポートする。同様に、このインビトロ構築物によって誘発される三次元成長は、最大10mmの距離にわたる密度の高い平行配向の様々な直径の軸索を含む。シュワン細胞の存在および被覆は、共焦点およびTEMイメージングにおいて観察することができる。
【0064】
ニューロンの形態は、表現型の成熟度の有用な指標であるが、健常なニューロンのより決定的な徴候は、それらの活動電位を伝導する能力である。アポトーシスだけでは、ニューロンの健常の完全な尺度とはならない。細胞死が現れる前に多くの病理学的変化が生じる可能性があるためである。活動電位生成の電気生理学的研究により、観察された構造が予測機能をサポートするかどうか、かつ臨床的に関連するエンドポイントを測定する能力がより予測的な結果を生成するかどうかを判定することができる。同様に、イメージングから収集された情報により、髄鞘形成の程度の定量的測定基準が決定され得る。一方で、CAP測定は、ミエリンの全体的な健常性を実証し、様々な薬剤または目的の化合物の毒性および神経保護機序をさらに深く理解するのに役立ち得る。
【0065】
本明細書で使用される場合、「少なくとも1つの薬剤」は、小化学化合物を指し得る。一部の実施形態では、少なくとも1つの薬剤は、少なくとも1つの環境汚染物質または工業汚染物質/化合物を含む。特定の実施形態では、少なくとも1つの薬剤は、化学療法剤、鎮痛剤、心血管調節剤、コレステロール、神経保護剤、神経調節剤、免疫調節剤、抗炎症薬、および抗微生物薬物から選択される小化学化合物の1つまたは組み合わせを含む。
【0066】
少なくとも1つの薬剤は、化学療法剤の1つまたは組み合わせを含み得る。例示的な化学療法剤としては、アクチノマイシン、アリトレチノイン、オールトランスレチノイン酸、アザシチジン、アザチオプリン、ベキサロテン、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、カペシタビン、カルボプラチン、クロラムブシル、シスプラチン、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン(DTIC)、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキシフルリジン、ドキソルビシン、エピリピシン、エポチロン、エロチニブ、エトポシド、フルオロウラシル、ゲフィチニブ、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、イダルビシン、イマチニブ、イリノテカン、メクロレタミン、メルファラン、メルカプトプリン、メトトレキサート、ミトキサントロン、ニトロスーレ、オキサリプラチン、パクリタキセル、ペメトレキセド、ロミデプシン、タフルオシド、テモゾロミド(オルダカルバジン)、テニポシド、チオグアニン(旧チオグアニン)、トポテカン、トレチノイン、バルビシン、ベムラフェニブ、ビンブラスチンビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、ビスモデギブ、およびボリノスタットのうちのいずれか1つ以上が挙げられる。
【0067】
実施形態では、少なくとも1つの薬剤は、鎮痛剤の1つまたは組み合わせを含む。例示的な鎮痛剤としては、パラセトアモール、非ステロイド性抗炎症薬物(NSAID)、COX-2阻害剤、オピオイド、フルピルチン、三環式抗うつ剤、カルバマキセピン、ガバペンチン、およびプレガバリンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0068】
一部の実施形態では、少なくとも1つの薬剤は、心血管調節剤の1つまたは組み合わせを含む。心血管調節剤としては、ネピカスタット、コレステロール、ナイアシン、スキュテラリア、プレニルアミン、デヒドロエピアンドロステロン、モナテピル、エスケタミン、ニグルジピン、アセナピン、アトモキセチン、フルナリジン、ミルナシプラン、メキシレチン、アンフェタミン、チオペンタルナトリウム、フラボノイド、ブレチリウム、オキサゼパム、およびホノキオールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0069】
一部の実施形態では、少なくとも1つの薬剤は、神経保護剤および/または神経調節剤の1つまたは組み合わせを含む。例示的な神経保護剤および/または神経調節剤としては、トリプタミン、ガラニン受容体2、フェニルアラニン、フェネチルアミン、N-メチルフェネチルアミン、アデノシン、キプトルフィン、サブスタンスP、3-メトキシチラミン、カテコールアミン、ドーパミン、GABA、カルシウム、アセチルコリン、エピネフリン、ノルエピネフリン、およびセロトニンが挙げられる。
【0070】
少なくとも1つの薬剤は、免疫調節剤の1つまたは組み合わせを含み得る。例示的な免疫調節剤としては、クレノリジマブ、エノチクマブ、リゲリズマブ、シンツズマブ、バテリズマブ、パルサツズマブ、イムガツズマブ、トレガリザウムブ、パテクリズマブ、ナムルマブ、ペラキズマブ、ファラリモマブ、パトリツマブ、アチヌマブ、ウブリツキシマブ、フツキシマブ、およびデュリゴツマブが挙げられる。
【0071】
一部の実施形態では、少なくとも1つの薬剤は、抗炎症剤の1つまたは組み合わせを含む。例示的な抗炎症剤としては、イブプロフェン、アスピリン、ケトプロフェン、スリンダク、ナプロキセン、エトドラク、フェノプロフェン、ジクロフェナク、フルルビプロフェン、ケトロラック、ピロキシカム、インドメタシン、メフェナム酸、メロキシカム、ナブメトン、オキサプロジン、ケトプロフェン、ファモチジン、メクロフェナメート、トルメチン、およびサラレートが挙げられる。
【0072】
特定の実施形態では、少なくとも1つの薬剤は、抗微生物薬の1つまたは組み合わせを含む。抗微生物薬としては、抗菌剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、抗寄生虫剤、熱、放射線、およびオゾンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0073】
少なくとも1つの薬剤は、生理学的薬剤または「生理学的製剤」を含み得る。生理学的製剤は、生体から産生されるか、または生体内に見出される成分を含有する任意の薬剤または治療薬を指し得る。実施形態では、「少なくとも1つの薬剤」は、免疫コンジュゲート、低分子薬物コンジュゲート、アンチセンスオリゴヌクレオチド、核酸療法、ウイルスベクター、低分子干渉RNA、またはそれらの組み合わせを含む。
【0074】
一部の実施形態では、免疫複合体は、少なくとも1つのエフェクター分子または少なくとも1つの化学化合物にコンジュゲートされた抗体を指し得る。実施形態では、かかるコンジュゲーションは、診断剤または治療剤として使用するための抗体分子の有効性を増加させるように機能し得る。抗体と化学化合物とのカップリングは、抗体またはそれにコンジュゲートされた化学化合物のそれぞれの活性に影響を与えることなく、2つの分子を一緒に結合する任意の機序または化学反応によって実現され得る。好適な結合機序としては、共有結合、親和性結合、インターカレーション、座標結合、複合体化、またはそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、エフェクター分子は、所望の活性、例えば細胞毒性活性を有する分子を含む。抗体に結合し得るエフェクター分子の非限定的な例としては、毒素、抗腫瘍剤、治療酵素、放射性核種、抗ウイルス剤、キレート剤、サイトカイン、成長因子、およびオリゴまたはポリヌクレオチドが挙げられる。
【0075】
ベクターは、標的部分(例えば、細胞表面受容体へのリガンド)、および核酸結合部分(例えば、ポリリジン)、ウイルスベクター(例えば、DNAまたはRNAウイルスベクター)を有する国際公開第WO93/64701号(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるものなどの化学コンジュゲート、標的部分(例えば、標的細胞に特異的な抗体)、および核酸結合部分(例えば、プロタミン)、プラスミド、ファージなどを含有する融合タンパク質である、PCT/US95/02140号(国際公開第WO95/22618号;参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるような融合タンパク質を含み得る。ベクターは、染色体、非染色体、または合成であり得る。
【0076】
ベクターとしては、ウイルスベクター、融合タンパク質、および化学コンジュゲートが挙げられる。レトロウイルスベクターとしては、モロニーマウス白血病ウイルスが挙げられる。ベクターには、オルトポックスまたはアビポックスベクターなどのポックスベクター、単純ヘルペスウイルスI(HSV)ベクターなどのヘルペスウイルスベクター、アデノウイルスベクター、およびアデノ関連ウイルスベクターが含まれ得る。
【0077】
ポックスウイルスベクターにより、遺伝子が細胞質に導入され得る。アビポックスウイルスベクターは、核酸の短期発現のみをもたらし得る。アデノウイルスベクター、アデノ関連ウイルスベクター、および単純ヘルペスウイルス(HSV)ベクターにより、核酸を神経細胞に導入することができる。アデノウイルスベクターは、アデノ関連ウイルス(約4ヶ月)よりも短期の発現(約2ヶ月)をもたらし得、これは、HSVベクターよりも短い。選択される特定のベクターは、標的細胞および治療される状態に依存する。導入は、標準的な技法、例えば、感染、トランスフェクション、形質導入または形質転換によって行うことができる。遺伝子移入のモードの例としては、例えば、裸のDNA、CaP04沈殿、DEAEデキストラン、エレクトロポレーション、プロトプラスト融合、リポフェクション、細胞マイクロインジェクション、およびウイルスベクターが挙げられる。ベクターを用いて、本質的に任意の所望の標的細胞を標的とすることができる。
【0078】
本開示の別の態様は、三次元培養プラットフォームにおける生体模倣神経組織の細胞内および細胞外記録の両方を測定する方法を含む。過去、電気生理学的実験は、分離表面メッキ培養または器官型スライス調製のいずれかで行われており、各方法に固有の制限があった。分離細胞培養における調査は、典型的には、本明細書に開示されるマイクロエンジニアリング生理学的システムのような器官型調製物に見られるように、組織化された多細胞神経学的アーキテクチャの欠如に起因して、単一細胞の記録に限定される。器官型調製物は、無傷の神経回路を有しており、細胞内および細胞外の両方の研究を可能にする。しかしながら、急性脳スライスは、個々の因子を制御する手段のない複雑な同時変数の配列を提示するため、スループットの可能性が本質的に制限される。
【0079】
本開示は、集団レベルの電気生理学的行動の検査を可能にする生体模倣三次元神経培養物を提供する。本明細書に開示されるシステムおよび方法は、三次元幾何学形状における制限された神経突起の成長から生じる細胞外フィールド記録における全細胞パッチクランプ技術および同期集団レベルの事象をサポートするものである。
【0080】
本明細書に開示される方法およびデバイスを使用して、フィールド記録を使用して、全ての動員線維におけるシグナル伝導によって引き起こされる電位の組み合わせた細胞外変化を測定することができる。電気刺激によって引き出される集団応答は、CAPである。電気的に誘発された母集団スパイクは、本質的に等級付けされ、遅い線維および速い線維における活動電位の組み合わせ効果を含む。スパイクは、迅速な発症と短い持続時間を有する単一の凝集イベントであり、CAPまたは応答の特徴は、シナプス入力がない場合に迅速なシグナル伝導を伴う単一の活動電位で構成されている。本開示によって開示される三次元神経構築物はまた、神経突起部またはチャネルに沿ってより遠い距離から刺激されるCAPをサポートし、求心性末梢神経のように遠い刺激からのシグナルを迅速に運ぶ神経培養物の能力を実証するものである。本開示の三次元神経培養物は、伝導特性の測定に有用な近位および遠位刺激技術をサポートする。様々な実施形態では、本明細書に開示されるマイクロ電極アレイは、マイクロエンジニアリング生理学的システムの刺激、CAPの記録、またはその両方のために使用される。
【0081】
本明細書に開示されるシステムおよび方法は、神経線維管で典型的であるように、多数の線維型の動員を誘発する1つ以上の成長因子と共に使用され得る。特に、神経成長因子(NGF)は、本明細書に提示されるデータに示されるように、痛みシグナル伝達にしばしば関連する小径線維を優先的に動員する。脳由来の神経栄養因子(BDNF)および神経栄養因子3(NT-3)は、より大きな直径の自己受容性線維の成長を優先的にサポートすることが示されている。生体活性分子および薬理学的薬剤のような成長影響因子は、電気生理学的調査と共に組み込まれ、機械的研究のための系統的な条件の操作を可能にし得る。追加の好適な因子としては、フォースコリン、TGFB-1、GDNF、グルタマックス、N2、B27、FBS、ロック阻害剤、アスコルビン酸、BSA、およびcAMPが挙げられるが、これらに限定されない。
【0082】
様々な例示的な方法において、本明細書に開示されるマイクロ電極アレイは、様々な神経障害の根底にある機序を研究するために、マイクロエンジニアリング生理学的システムと共に使用され得る。例として、神経培養物に対する既知の髄鞘形成不全剤、神経障害を誘発する培養条件、および毒性神経障害を誘発する化合物の効果を調査することによって、ミエリン障害性疾患および末梢神経障害を研究する方法が本明細書に開示される。本開示により、伝導速度が、毒性および治療条件下でミエリンおよび神経線維の完全性の機能的尺度として使用され、薬物の安全性および有効性に関する研究を容易にし得る。本明細書に開示される技術を使用して産生された神経培養物中に遺伝子変異および薬物を組み込むことにより、制御された方法で疾患現象の再現を可能にし得、神経変性および可能な治療療法のより良好な理解につながる。
【0083】
マイクロ電極アレイは、毒性、疾患、または任意の細胞集団内の任意の薬剤の病態生理学的機序を研究するため、または細胞の任意の態様もしくは成分に対する毒性、疾患、または任意の薬剤の効果を研究するために使用され得る。例として、本明細書に開示される様々な実施形態を適用して、細胞、細胞膜、または細胞膜の成分の任意の内容物を研究することができる。実施形態は、細胞器官、細胞下器官、細胞質、細胞膜内の構造、またはそれらの組み合わせに適用することができる。特定の実施形態を適用して、微小管、染色体、DNA、RNA、ミトコンドリア、リボソーム、ゴルジ装置、リソソーム、細網、液胞、前述のいずれかの断片、または細胞の他の内容物もしくは断片的内容物を調査することができる。細胞膜内の構造は、任意の膜タンパク質、膜チャネル、膜受容体、またはそれらの組み合わせを含み得る。実施形態は、環境との細胞相互作用の研究に適用することができる。
【0084】
本発明の別の態様は、化学薬剤および生体薬剤の薬理学的および/または毒性特性のスクリーニングのための神経機能の高スループットのアッセイに対する培地を含む。実施形態では、薬剤は、細胞、例えば、本明細書に開示される任意の種類の細胞、または抗体、例えば、臨床疾患を治療するために使用される抗体である。実施形態では、毒性、効果、または神経調節が、提案される哺乳類治療である新規の薬剤とヒト疾患からの既存の治療との間で比較され得るように、薬剤は、ヒト疾患を治療するために使用される任意の薬物または薬剤である。一部の実施形態では、ヒト疾患の治療のための新規の薬剤は、神経変性疾患の治療であり、神経変性疾患の既存の治療と比較される。非限定的な例として、多発性硬化症の場合、新規の薬剤(修飾細胞、抗体、または小化学化合物)の効果を比較し、コパキソン、レビフ、他のインターフェロン療法、タイサブリ、フマル酸ジメチル、フィンゴリモド、テリフルオノマイド、ミトキサントロン、プレドニゾン、チザニジン、バクロフェン、またはそれらの組み合わせなどの既存の多発性硬化症の治療の同じ効果と対比することができる。
【0085】
一態様では、本発明は、ミエリンを損なう疾患および末梢神経障害の根底にある機序を複製、操作、改変、および評価する方法を提供する。
【0086】
別の態様では、本開示は、化学薬剤および生体薬剤の薬理活性および/または毒性活性のスクリーニングのためのヒト神経細胞における神経調節の高スループットのアッセイに対する培地を含む。
【0087】
様々な態様において、現在開示されているマイクロ電極アレイは、ヒト神経細胞集団の記録を可能にするために、光学的および電気化学的刺激と組み合わせて、2Dおよび3Dマイクロエンジニアリングされたニューラルバンドルなどのユニークなマイクロエンジニアリング生理学的システムと組み合わせて用いられる。
【0088】
末梢神経回路、中枢神経回路、またはそれらの組み合わせを特異的に模倣する生体模倣、マイクロエンジニアリング生理学的システムにおける誘発されたシナプス後電位を定量化する方法も本明細書に提供される。実施形態では、マイクロ電極アレイは、複合活動電位およびシナプス後電位の伝導などの集団レベルの生理学を研究するために使用される。特定の実施形態では、本明細書に開示される様々なマイクロ電極アレイのいずれかは、別々のマイクロエンジニアリング生理学的システム間の相互作用を研究するために使用され得る。例として、マイクロ電極アレイは、少なくとも2つの独立したオルガノイドシステム間、少なくとも2つの独立した生体機能チップシステム間、少なくとも1つのオルガノイドシステムと少なくとも1つの生体機能チップシステムとの間、またはそれらの組み合わせの相互作用を検出することができる。
【0089】
別の態様では、照明および蛍光イメージングの光学的方法、ハードウェアおよびソフトウェア制御は、神経回路内で誘発された電位に対する多単位生理学的応答の非侵襲的刺激および記録を可能にするために、本明細書に開示されるマイクロ電極アレイと関連して使用される。
【0090】
追加の方法としては、選択的5-HT再取り込み阻害剤(SSRI)および第2世代抗精神病薬を試験する際にマイクロ電極アレイを使用して、それらが発達成熟を変化させるかどうかを調べる研究が挙げられる。
【0091】
別の様々な例示的な実施形態では、本明細書に開示されるマイクロ電極アレイは、毒性および治療条件下での神経組織状態の機能的尺度として伝導速度を推定するために使用される。髄鞘形成の程度、ミエリンの健常状態、軸索輸送、mRNA転写、神経細胞損傷、またはそれらの組み合わせに関する情報は、電気生理学的分析から決定することができる。神経密度、髄鞘形成率、および神経線維型などの形態測定分析と組み合わせて、目的の化合物について作用機序を決定することができる。一部の実施形態では、本明細書に開示されているデバイス、方法、およびシステムは、制御された様式で疾患現象を再現するための遺伝子変異および薬物を組み込むことができ、神経障害および可能な治療療法のより良い理解をもたらす。
【実施例
【0092】
本発明のより完全な理解を容易にするために、以下に実施例を提供する。以下の実施例は、本発明を作製し、実施する例示的なモードを示している。しかしながら、本発明の範囲は、これらの実施例で開示される特定の実施形態に限定されず、これらの実施例は、同様の結果を得るために代替の方法を利用できるので、例示のみを目的とする。
【0093】
実施例1
背景:人間の環境に侵入する可能性のある工業汚染物質およびその他の毒素は、人間に神経毒性を引き起こすことがよく知られている。末梢神経障害は、化学毒性に対する神経系の最も一般的な応答の1つである[1]。これは、末梢神経軸索が、血液脳関門の外側にある細胞体から長い距離を延在するためであり得る。様々な毒素は、細胞体の細胞毒性、脱髄、または遠位軸索変性を生じ得る。人間では、手足の感覚喪失の症状が、通常、顕著な運動衰弱の前に起こる[1]。これらの病理現象を要約する実験モデルは、化学物質の毒性のスクリーニング、毒性機序の特定、および治療的対策の評価に最も有用である。
【0094】
2008年のTox21プログラムの開始以来、比較的短い期間で何千もの化合物をスクリーニングするために、様々なインビトロ定量的高スループットスクリーニング(qHTS)アッセイが開発された[2,3]。動物試験は、化学曝露後により具体的な解剖学的パラメータおよび生理学的パラメータを提供するが、このような実験を行うためのコストと時間は、何千もの化合物のスクリーニングに使用することができない[4,5]。一方、qHTSアッセイは、本質的に迅速で安価であるが、典型的には、一度に1つまたは2つの生理学的出力のみを提供し[3]、インビボ測定基準に密接に関連するパラメータを提供するものではない。この不整合は、神経系に特に当てはまり、神経伝導速度および組織学的分析などの臨床的に関連する指標がゴールドスタンダードと見なされている[6][7]。定量的HTSアッセイ[8]および2D多電極アレイ(MEA)の開発[9]は、このギャップをわずかに埋めるものであるが、それでもインビボ系と同等の測定基準を提供することができない。
【0095】
生体模倣システム(MPS)または「オルガノイドチップ(organoid-on-a-chip)」モデル(OCM)は、それらが生物の生理学または病理学を予測する情報を提供することを条件として、毒素スクリーニングに有用な中スループットおよび高含有量データを提供し得る高度な細胞モデルとして非常に有望である。NIH組織チッププログラム(ncats.nih.gov/tissuechip)は、薬物安全性および有効性試験のためのMPSの開発ペースを向上させている。しかしながら、未試験の化学毒素の大部分について臨床データが欠如しているため、このプログラムの主な焦点は検証が困難なヒト組織チップのみの開発にある。したがって、動物細胞を利用する3D器官型細胞モデルを開発することが、動物データとの直接比較によるこれらのシステムの検証のために重要である。これは、ヒト組織チップが臨床薬物の安全性および有効性を予測すると仮定する前に実施されるべきである。
【0096】
複数の受託研究組織が、様々な器官システムのためのかかるアッセイを提供して、商業的成功を収めている。しかしながら、末梢神経チップ(登録商標)アッセイの開発は遅れている。一般的に使用される末梢神経培養調製は、典型的には、臨床毒性を予測するものではない。これは、成人末梢ニューロンは完全に成長し、アポトーシスに抵抗することが知られているのに対し、測定可能なエンドポイントとしてアポトーシスまたは神経突起伸長を利用するためである。神経伝導試験および組織生検の組織形態測定は、神経障害の最も臨床的に関連する尺度である。しかしながら、かかる測定基準を提供する培養モデルは現在存在しない。神経毒性を評価するために、3D神経構築物[10]、脳オルガノイド[11]、またはニューロスフェア[12]などの様々な脳MPSシステムが長年にわたって準備されてきたが、それらのいずれも神経系、特に末梢神経系の生体模倣学的複雑性を再現していなかった。MPSは、単純なモデルで最も関連性の高い解剖学的および生理学的毒性病理を要約しようとするモデルであり、システムアーキテクチャにより強い焦点を当てる必要がある[13,14]。
【0097】
エクスビボ動物毒性スクリーニングとインビボ動物毒性スクリーニングとの間のギャップを埋めることが期待される、複合活動電位を検出し得る3Dアッセイ
発明者らは、末梢神経解剖学的構造に類似した3D配置で軸索成長を制限するために、マイクロパターンヒドロゲル構築物中で背根神経節を培養することによって、感覚神経チップ(sensory-nerve-on-a-chip)(登録商標)モデルを開発した。さらに、複合活動電位(CAP)から生じる電気的に誘発される集団電界電位により、これらのモデル系において再現可能に記録することができる。これらの初期の結果は、動物(および臨床)試験のものと類似した形態学的および生理学的測定に適したマイクロエンジニアリング神経組織を使用する可能性を示している。単一のインビトロ調製から、CAP振幅および伝導速度を測定し、その後、組織を切断して、軸索直径、軸索密度、および髄鞘形成等の組織形態パラメータを測定することができる。この3D器官型システムは、臨床神経病理学を模倣する方法で神経毒性パラメータを検出することができると想定される。この汎用性の高いシステムは、「オーミクス」研究を実行するためにさらに使用することができるため、最終的には、作用機序の理解ならびに生理学的プロセスの理解の向上をもたらす大きなスペクトルの毒性パラメータを決定するために使用される。
【0098】
発明者らは、従来の細胞培養材料に直接1つ以上のヒドロゲルを迅速にマイクロパターン化するための、単純でありながらユニークなデジタル投影リソグラフィの方法を開発した[15]。発明者らの単純かつ迅速なアプローチでは、制限型としてポリエチレングリコール(PEG)、および許容マトリックスとして架橋メタクリル化ゼラチン(Me-Gel)の2つのゲルを使用する。これらの二重ゲルは、特定の3D幾何学形状内の胚性背根神経節(DRG)移植片からの神経突起成長を制限し、高密度で、かつ線維束性収縮を伴う軸索成長をもたらす(図1CおよびD)。ミエリン誘導培地で培養した場合、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)に対してミエリン染色が陽性であり(図1D)、その特徴的なスパイラル構造がTEM画像から明らかであることが示される(図1E)。高度に平行な生体模倣3D神経線維管を有するこの独自の培養モデルは、末梢神経アーキテクチャに対応し、神経形態測定を使用して評価され得、既存の細胞アッセイでは利用できない臨床的類似評価を可能にする。発明者らの神経チップ(登録商標)モデルに最もユニークなのは、複合活動電位(CAP)を記録する能力である。トレースは、高周波(100Hz)の刺激でも一貫性を保ち、テトロドトキシンによって可逆的に廃止され得る特徴的な一様な短時間集団応答を示しており、その応答は神経伝達遮断薬に感受性がなく、シナプス電位ではなくCAPを示す[16]。
【0099】
このモデル系で化合物の神経学的効果がどのように評価され得るかの一例として、インビトロでの髄鞘形成不全を引き起こすことが示されている40μMのフォースコリン(Fsk)を48時間投与した[17]。発明者らのモデル系において、組織学的に髄鞘形成不全の強力な証拠が示され(図1F)、髄鞘形成軸索率の70%の低下を示し、かつミエリン鞘の薄化を示すG比が50%増加した(データ図示せず)。電気生理学試験では、CAP振幅および伝導速度の両方の約50%の減少を示した(図1G)。共投与デキサメタゾン(DexM)は、これらの効果を部分的に回復させた(図1H)。これらの形態学的および生理学的測定は、末梢神経病理学の動物モデルで利用可能な最も強力な測定基準に類似している[18]。
【0100】
胚性DRG培養物は、数十年にわたって末梢神経生理学のモデルとして効果的に使用されてきた[19]。従来のDRG培養物は、モデル系として有用であるものの、既存の細胞死アッセイで評価した場合、臨床毒性の予測が不十分であることが知られている。DRGから単一細胞の記録を取得する可能性があるが、組織アーキテクチャが欠如しているため、CAPの記録に関する報告はない。従来のモデル系とは異なり、本開示のシステムは、臨床組織病理学および神経伝導試験と同様に、組織形態測定および集団電気生理学を評価する能力を含む。
【0101】
理論に束縛されることなく、ラットにおいて神経毒性を引き起こすことで知られている化学毒素は、これが臨床測定基準に類似した形態学的および生理学的尺度を使用して定量化されているように、マイクロエンジニアリング神経組織において毒性を誘発する。この目的にアプローチするために、モデル系の電気生理学的特性を試験するための3Dマイクロ電極を設計することによって、まずシステムのスループットを向上させる。次に、ベースライン変動性を決定し、3Dマイクロ電極を使用して構造と機能関係を特徴付ける。次いで、化学毒素の急性適用によって誘発される変化を定量化し、神経毒性の前臨床アッセイとして複合活動電位(CAP)波形を使用する技術的メリットを実証する。
【0102】
3Dマイクロエンジニアリングされたラット末梢神経組織における進行性神経変性の定量化のためのカスタム3Dマイクロ電極アレイの開発
サブタスク1.1-末梢神経チップ(登録商標)用に構成された3Dマイクロ電極を開発し、試験する。
三次元マイクロ電極アレイ(3D MEA)は、様々な細胞培養物、バイオ材料、および他の生理学的薬剤をエクスビボで調べるための次世代のツールを表す。これらのツールは、動物試験を減らすための必要な複雑性を与え、標的化された神経チップ(登録商標)を含む様々な用途のための細胞ベースのバイオセンサの有効性を改善する。典型的には、3D MEAは、平面内で加工され、平面外[20、21]で組み立てられるか、またはガラスもしくはシリコンウェハから一元的に画定される[22~24]。アセンブリは、典型的には、チップオンボード技術を使用して実施される。しかしながら、これらのアレイの費用対効果の高い製造を実施し、かつシステムレベルで組み立てを行うには、大きな課題があり、新たなイノベーションの可能性がある。3D用途では、金属「バルブ」[25]およびカーボンナノチューブ[26]またはナノピラー[27]が組織の3D体積で潜在的に記録されることが実証されているが、高SNR記録の繰り返し可能な実証が依然として課題となっている。発明者らは、少なくとも2つのイノベーション、すなわち(1)マイクロ技術を利用して加工されたマイクロ電極の制御可能な3D位置を有する3D MEAのオールポリマー、パッケージ、およびデバイス共加工である「メーカースペース」、ならびに(2)体積刺激で使用し得る、MEA上で任意に定義された3D電極のための3Dナノテクスチャ体積材料を開発する。
【0103】
方法:図2は、3D MEAのために開発された微細製造プロセスフローの概略図を示す。チップは、チッププラットフォーム上の5mm×500/800μmの面積で16個のマイクロニードルタイプの電極(300~1000μmの様々な高さの3D)と16個の平面電極を収容することができる。チップの全体的なサイズは、49mm×1mmとなり、市販のマルチチャネルシステムズの記録増幅器とのインターフェースに対応している。かかるデバイスの構造的特徴を一工程で開発するために、3D印刷を利用する。発明者らは、最近、バイオメディカルデバイスの開発に3D印刷技術を利用することで大きな進歩を遂げている[28]。この技術は、設計から最終デバイスへの迅速な移行、マイクロ流体ポートなどの複雑な構造を定義する能力、および異なる寸法を有する様々なアレイの開発など、全てを単一のプロセスステップで行う利点を表している。デバイスおよびパッケージの共同設計および共同製造、ならびに最後に、様々な生体適合性樹脂材料の選択は、印刷プロセスにおいて利用され得る。シャドウ/ステンシルマスクは、CNCマイクロミリング(T-Tech QC J-5)および/またはレーザ微細加工を使用して、適切な金属またはポリマー(例えば、ステンレス鋼またはカプトン)から製造される。CNCマイクロフライスは、ナノフライス盤で約7μmまでのパターンを画定するために使用され得る。あるいは、これらのステンシルマスクは、マルチモーダル(それぞれ波長1064nm、355nm、および532nmを有する)であるレーザ微細加工ツール(EzLaze3)で製造され得、約1μmまでのポリマー、金属、および樹脂などの様々な材料上でシャドウマスクのためのパターンを画定するために使用され得る。その後、チタン/金の層でメタライゼーションして、電極、高密度金属トラック、パッケージボンドパッド上の金属を画定する。シャドウマスクと3D印刷樹脂の熱特性と機械特性を一致させることは、アライメント機能の重要な必要性と同様に、シャドウマスクのメタライゼーションにとって非常に重要である。相互接続性のために3D印刷によって画定されるビア内の導電性インクのスクリーン印刷(ASYS XMマニュアルプリンタ)に続く、例えば、3D印刷樹脂上での上側および下側のメタライゼーションなどの多層加工を、3Dおよび2D電極の密度を増加させるためにさらに利用することができる。
【0104】
インクは、オーブンで硬化され、最終的な特性が実現される。かかる目的のために、複数の生体適合性インクが利用可能であり、これらは、抵抗性、表面多孔性、および製造の容易さのために意図される用途に合わせて調整される。SEMおよびAFMなどのツールを使用して、プロセス開発中にこれらの特性を確認する。プロセス開発へのかかるフィードバックは、金属トレースおよび導電性ビアの所望の特性を実現するために重要である。画定された導電性インクおよび金属電極上に最終絶縁体を堆積し、電極を作製するために、平面および第3の寸法で記録部位を画定する必要がある。パリレンは生体適合性があり、室温でコンフォーマルコーティングが可能で、レーザ微細加工が可能であるため、理想的な絶縁層である[29]。パリレンは、アレイ上に堆積され(SCSラボコーター)、UVモードでレーザ微細加工を使用して任意の3D位置に記録部位が画定される。
【0105】
発明者らはすでに、神経チップ(登録商標)組織アーキテクチャおよび既製のMEA記録装置の両方に適合する構成の試験デバイスを製造している(図2)。試験およびフィードバックのために試料が提供された。マイクロ電極ノイズは、電極が2Dおよび3D神経培養物から微小な電流または電圧信号を拾うか、または送達する能力を決定する特性である。加えて、体積刺激装置として定義される3Dナノ材料は、全ての三次元で神経チップ(登録商標)内の組織の刺激を実行し、興味深い応答を生み出し得る。発明者らは、電極部位にナノ多孔質白金または電気メッキ/ナノテクスチャ金などの低インピーダンスおよび生体適合性ナノ材料の開発に豊富な経験を有している[29,30]。最適化された金電気メッキおよびナノテクスチャ(EzLaze3)レシピは、電極の2D表面調節と、オーバーメッキ技術を使用した3D体積刺激装置の画定の両方のために開発される。これらの方法は、SEM、AFMを使用して直接評価され、マルチチャネルシステムズ増幅器を使用してノイズの測定と間接的に評価される。かかる技術は、直径が30~50μm以下の低ノイズ電極を実現するように適合され得る。
【0106】
3D MEAは、電子的、電気化学的、および電気生理学的性能について評価される。3Dマイクロ電極の電子的特性評価と2Dマイクロ電極を比較するために、デバイスのフルスペクトルインピーダンス性能は、主要なアプリケーション関連電極特性を確立し、さらに、マイクロ/ナノ加工へのフィードバックを提供する。生理食塩水および基準白金線電極を用いて、MEAのインピーダンス特性を試験する。BODEインピーダンスアナライザーを使用して1Hzから10MHzまでのフルスペクトルインピーダンス測定を実行し、この手法を使用して2D電極と3D電極を比較し、製造プロセスの歩留まりを推定する。さらに、発明者らの電極ナノ材料からのインピーダンスデータは、文献と比較され得、電極形状は、神経チップ(登録商標)用途に合わせて調整される。2つのタイプの電極の電気化学的特性のために、個々のマイクロ電極材料の電荷担持容量を定量化する循環ボルタモグラム(CV)は、eDAQポテンショスタットを使用して測定され、文献からの市販の薄膜金電極からのボルタモグラムと比較される。これらの測定基準は、長期にわたる使用のための電極の信頼性を可能にし、電極ナノ材料の刺激能力および寿命測定を保証する。
【0107】
サブタスク1.2:二重ヒドロゲル構築物および胚性ラットDRG組織を使用した3D MEAの生理学的性能を特徴付ける。
理論に束縛されることなく、3D電極設計は、神経チップ(登録商標)の独自の組織アーキテクチャに対処するものであり、NCV試験のための比較的大きな組織体積のサンプリングを可能にする。これは、症状が完全に現れる前でも、ヒトにおいて臨床神経病理の種類および重症度を予測することが示されている[31]。3D MEAの上で組織を成長させることにより、電気生理学的試験を自動化することで、チップ上の神経のスループットを増加させ、同じ構築物から数週間にわたって神経変性を長期的に測定することができる。これは現在、従来の電界電極では実用的ではないものである。
【0108】
方法:生理学的な特徴付けのために、3D MEAデバイスは、ヒドロゲル組織構築物および電気生理学的評価と共に組み込まれる。先駆的な投影リソグラフィ法により、多数の表面にハイドロゲル基板をパターン化することが可能となった[15,16]。髄鞘形成および非髄鞘形成神経組織構築物は、発明者らが発表した研究の改良物を使用して製造される[15,16]。二重ヒドロゲル構築物は、ラミニンで補充されたメタクリル化ゼラチン(Me-Gel)で充填されたPEGゲルマイクロモールドから製造される。神経突起成長構築物は、幅約400μm、長さ最大10mmになるように製造される(図1AおよびB)。背根神経節(DRG)は、胚の15日目(E15)ラット胚から解剖された脊髄の胸部レベルから採取され、二重ヒドロゲル構築物の球状領域内に組み込まれる。髄鞘形成された組織構築物を、ITSサプリメントおよび0.2%BSAと共に基礎イーグル培地で10日間培養し、シュワン細胞の遊走および神経突起成長を促進し、続いて、15%FBSおよび50μg/mlのアスコルビン酸をさらに補充した同じ培地で最大4週間培養して髄鞘形成を誘発する[32]。非髄鞘形成構築物は、同じ培地レジメンで培養することによって形成されるが、アスコルビン酸を欠く。コンパクトミエリンの実質的な形成には、アスコルビン酸を含むミエリン誘導培地中での少なくとも2週間の培養が必要とされる。
【0109】
MEAを市販の記録装置に挿入し、軸索成長領域に沿った7つの異なる場所で組織を刺激し、神経節領域に対応する3つの記録場所から同時に記録する(図3)。振幅が50μV以上に達した場合、複合活動電位(CAP)は測定可能と見なされる。様々な成熟段階での組織形態を評価するために、髄鞘形成および非髄鞘形成組織構築物のそれぞれの約12個を、髄鞘形成誘導培地で1、2、3、および4週間(またはインビトロ、DIVで合計17、24、31、および38日)4%パラホルムアルデヒドに固定し、核(Hoechst)、神経突起(βIII-チューブリン)、シュワン細胞(S-100)、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)、およびアポトーシス(アネキシン-VおよびTUNEL)について染色する。試料は、DRG内の領域、神経節の近位、線維管の中間点付近、および神経節の遠位の線維管で共焦点顕微鏡で撮像され、正確な距離は平均最大神経突起に比例する。
【0110】
(表1)形態学的および生理学的測定基準
【0111】
想定される代替案。神経チップ(登録商標)プラットフォームにおける3D MEAの開発は、決して簡単な問題ではない。最近の3D印刷技術の驚異的な進歩にもかかわらず、発明者らの3Dプリンタの解像度は約100μmで、単層硬化は25μmである。3Dおよび2Dマイクロ電極の密度を高めるために、または神経チップ(登録商標)デバイスの5mm×500/800μmエリアの一次製造プロセスで問題が発生した場合に、金属トランスファマイクロ成形とレーザ微細加工技術[29、30]の十分に特徴付けられた組み合わせを利用して、32個の電極を備えたMEAチップを加工し、密度を64個の電極に増加させる。これらのデバイスは、環状オレフィン共重合体(COC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)またはポリカーボネート(PC)などのポリマー上で開発される。MTM技術は、下請PI[30,33,34]によって過去に十分に特徴付けられ、研究されてきた。別途、イノベーティブサーキッツなどの商業ベンダーからPCBを設計および製造する。PCBおよびMEAチップは、アクリルスペーサとフォースコンタクトを伴う自己整列スキームを利用して組み合わされる。パリレンは、レーザ微細加工を利用して、画定されたMEAアセンブリおよび記録部位全体にさらに堆積することができる。
【0112】
期待される結果の解釈。理論に束縛されることなく、3D MEAは、発明者らの神経チップ(登録商標)システムのスループットを増加させる。CAP波形およびNCVの長期にわたる反復モニタリングにより、これらの構築物のベースライン生理学的パラメータが実証される。理論に束縛されることを望むものではないが、神経突起が電極を通過して伸長するにつれて遠位振幅が現れ、増加し、ミエリン形態として伝導速度が増加する。
【0113】
3D末梢神経チップ(登録商標)におけるNCVおよび組織形態測定による末梢神経毒性の定量化の実現可能性を実証する。
神経系の複雑な生理機能および独自の形態の変化を研究することは、神経毒性物質のスクリーニングに伴う重大な課題である[35]。発達毒性および成人毒性を引き起こす神経毒性化合物の数は増加しており[36,37]、既存のインビボスクリーニングならびにインビトロモデルは、依然として化学曝露をスクリーニングするのに不十分である。AxoSimの3D器官型ラットモデルは、過去のベンチマークを可能にしながら、インビボおよびインビトロモデルの予測性、複雑性、スループットを橋渡しすることができる。実験対象を管理しやすくするために、実験は、過去にラットにおけるNCV変化を実証した4つの既知の化学毒素アクリルアミド[38]、メチル水銀[39]、n-ヘキサン(代謝産物2,5ヘキサンジオンの形態)[40]、およびロテノン[41]に限定される(表2)。マイクロパターン培養物の準3D的性質は、従来の細胞および分子アッセイに適している。
【0114】
(表2)初期パイロット研究のための薬物投与量
【0115】
サブタスク2.1:環境および産業用神経毒性に関連する化合物の小さなライブラリを伴うパイロット研究における投薬量および培養時間を決定する。
効果的な投薬を確実にするために、まず、パイロット研究を実施する。発明者らは、インビトロ(48時間)でニューロン細胞死を誘発することが証明された急性(48時間)投与量から始め、これらの濃度で発明者らのモデルにおいて形態学的および生理学的変化が測定可能であることを検証する(図4)。
【0116】
方法:DRG移植片(n=20)は、髄鞘形成誘導レジメンに従って、マイクロパターンゲル(サブタスク1.2と同様)で培養される。完全に髄鞘化された構築物を産生するために、サブタスク1.2で決定された時点で、検体は、神経突起増殖(Cell Tracker Green)および髄鞘化(FluoroMyelin Red)についてチェックされる。この時点で十分な神経突起増殖および/または髄鞘化を有しない検体は除外される。健常な構築物の電気生理学的記録が行われ、翌日、表2に要約されるように、4つの化学物質の神経毒性濃度が48時間適用される。対照は溶媒のみを受容する。電気生理学試験は、48時間投与期間の終了時、および投与期間の残りの半分7日後に、半分(n=10)の移植片に対して行われる。全ての試料を最終記録後に固定し、染色し、表1に要約するように評価する。3Dシステムで得られたNCVデータは、表2に参照されるように、文献で入手可能なNCVデータと比較される。さらに、クロマチン凝縮、くすみ、および軸索セグメンテーションなどの体細胞および軸索損傷について定性的観察が行われる。
【0117】
サブタスク2.2:パイロット研究で決定した終点で、化合物投与後のCAP伝導速度、振幅、積分、興奮度を測定し、形態測定の変化と相関させる。
理論に束縛されることなく、各化学物質の急性投与により、ベースラインに対するCAPの変化を測定することによって検出可能な毒性が誘発される。機序に応じて、CAP振幅および/またはNCVの変化が期待される。その後の組織病理学的分析により、生理学との相関のための形態学的変動性の重要な定量的指標が提供される。組織病理学的分析は、より労力を要するものであるが、神経変性の機械的詳細を提供する[7]。したがって、両方の指標間の相関を理解することにより、神経障害の発現および進行を理解するために必要な時間および労力を削減することができる。理論に束縛されることなく、生理学的変化は、インビボおよび臨床病理学的に並行して記録される。
【0118】
方法:電気生理学的および組織学的方法は、サブタスク1.2および2.1と同一である。共焦点撮像後、試料を2%の四酸化オスミウム中に後固定し、脱水し、エポキシ樹脂中に埋め込む。各画定領域(すなわち、神経節、近位、中間点、遠位)で約10個の超薄断面を切断し、TEMイメージングのためにクエン酸リードおよび酢酸ウラニルで染色する。分析を、図3および表1に要約されるように評価する。統計的相互相関を行い、どの形態学的尺度がどの生理学的尺度と最も相関しているかを決定する[46]。加えて、これらの実験は、エイム(Aim)2の適切な試料サイズを決定するために統計力分析に使用される変動性の尺度を提供し、除外基準を定義するために使用される。例えば、神経突起の成長が平均から2以上/2未満の標準偏差を有する試料が除外される。
【0119】
想定される代替案。4つの毒素の神経毒性は、インビトロで観察されているが、生理学的効果は、3D調製によって予想以上に影響する可能性がある。予想される形態学的および生理学的病態がパイロット研究に現れない可能性があり、また細胞死が機能的尺度を圧倒する可能性がある。その場合、投与量を増減し、かつ/または長期的な適用に切り替えてもよい(7日)。神経障害は明らかになる可能性があるが、定量的なばらつきがあるため、10%の検出可能な差は現実的ではない。その場合、20~30%の検出可能な差を検出するように、より大規模な研究を設計する。
【0120】
期待される結果の解釈。理論に束縛されることなく、各化学物質の急性投与は、ベースラインに対するCAPの変化を測定することによって検出され得る毒性を誘発する。これらの変化のほとんどは、発明者らの形態測定分析によって定量化された形態学的損傷と相関すると予想される。
【0121】
マイルストーン。1)化学曝露の前後数週間、50μV以上のリアルタイムで信頼性の高い検出CAPが可能な3Dマイクロ電極の開発。2)AxoSimの神経チップ(登録商標)プラットフォームが、4つの化学毒素によって引き起こされる電気生理学的および組織学的神経毒性を評価する実現可能性の実証。これらの研究は、過去のインビボデータと比較するためのさらなる検証研究の基礎となるものである。
【0122】
本実施例で引用した参考文献
【0123】
実施例2
固体基板上で製造されたMEA設計
上記の活動と並行して、発明者らは、より一般的な固体基板上で製造されるカスタムMEA設計にも取り組んでいる。目的は、透過性基板が細胞の生存率だけでなく、細胞の電気生理学的応答にどの程度影響し得るかを特異的に決定することである。図5に示すように、これらのデバイスの設計を確定した。これらのデバイスは、より一般的な微細製造技術を利用しているため、加工が容易である。これらのデバイスを透過性基板MEAと並行して使用することで、過去に観察された電気生理学的転帰からの逸脱が平面マイクロ電極の使用に起因するか、または透過性基板に起因するかどうかを解析する。
【0124】
実施例3
末梢神経チップ(登録商標)用の3D印刷された3Dマイクロ電極アレイの製造および特性評価
要約:発明者らは、インビトロで3D細胞ネットワークから電気生理学的活性を刺激し記録し得る三次元(3D)マイクロ電極アレイ(MEA)を実現するための非既存の製造技術を提示する。この技術は、費用対効果の高いメーカースペース微細製造技術を使用して、3D印刷されたベース構造で3D MEAを製造し、ステンシルマスク蒸着技術によって実行されるマイクロタワーおよび導電性トレースのメタライゼーションを行うものである。生体適合性ラミネート層により、3DマイクロタワーMEAを実現するためのトレースが絶縁される。このプロセスを延長して、追加の二酸化ケイ素(SiO2)絶縁層および無電解メッキのレーザ微細加工を使用して、3Dマイクロタワーの上に400μmの高さでより小さなマイクロ多孔質白金電極(30μm×30μm)を実現した。背根神経節(DRG)細胞の電気活動を記録および刺激するための3Dマイクロエンジニアリングされた神経チップ(登録商標)インビトロモデルが、3D MEAとさらに統合されている。3D MEAは、電気、電気化学、化学、および生理学的性能測定基準について評価された。白金無電解メッキ時の1kHzの電気生理学的に適切な周波数の場合、マイクロタワー電極では1.8kΩから670Ω、30μm電極では55kΩから39kΩのインピーダンスの減少が観察される。さらに、キャパシタンスは、無電解メッキ後、0.3mFから3.0mFに増加しており、これは、性能の10倍の増加を表す。システムの構成要素に対する生体適合性アッセイにより、構成要素に応じて、広い範囲(約3~70%の生細胞)が得られた。樹脂のFTIR分析により、細胞毒性化合物の発見が得られている。TPO(ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド)およびニトロベンゼンは、この変動の一部を説明するものである。さらにインビトロ応力試験では、2.5mmを超えるチップ厚により、最大30DIVの反りのない性能が得られたという結論に至った。最後に、本研究では、マイクロLED DLP印刷による高密度3Dマイクロ電極への経路を検討した。製造された3D MEAは、クリーンルームの最小限の使用で迅速に作製され、統合された「神経チップ(登録商標)」モデルで完全に機能する。当該神経チップは、インビトロでの化合物の高スループット薬学的スクリーニングおよび毒性試験のための3D器官モデルの電気的イントロゲーションをサポートする。
【0125】
はじめに
製薬業界では、新薬を市場に投入するために必要なコストが膨大であることは周知の事実である。平均的な新薬は、市場の承認を得るために約26億ドルかつ最大15年を必要とし、承認を維持するための承認後の研究開発にはさらに3億1,200万ドルを必要とする[1]。残念ながら、従来の前臨床モデルでの医薬品開発が、臨床治療の成功につながったという実績は少ない。特に神経学的用途では、第I相臨床試験に入る神経学的薬物の92%は、許容できない毒性またはヒトにおける有効性の欠如のいずれかのために、消費者に販売されることはないと推定されている[2]。動物モデルとインビトロモデルの両方を含む現在の前臨床モデルは、明らかに、前臨床の成功を臨床試験に変換することに関して、予測が非常に限られている。動物モデルは、関連するインビボ情報を提供し得るが、それらは労力を要するものであり(低スループット)、一方で、より高いスループットのインビトロシステムは、典型的には、二次元でランダムに成長する分離された細胞からなる基本的な神経培養物に限定され、関連するインビボ情報を提供することができない。したがって、関連するインビボ測定基準を提供し得るより高いスループットシステムが非常に望ましく、高度な生体模倣システム(MPS)または「生体機能チップ」の開発につながる、[3,4]。
【0126】
電気生理学的および組織学的評価が神経障害を評価するためのゴールドスタンダード測定値である神経系について[5]、神経伝導速度および神経線維密度などの臨床的に関連する測定基準を提供し得る生体模倣インビトロシステムにより、臨床予測性を向上させることが期待される。過去、発明者らは、動物[6、もしくはHuval(46)]またはヒト細胞[7]のいずれかを使用して、新規の生体模倣インビトロ神経チップ(登録商標)(NOaC)システムを開発しており、軸索を3D偏光構造で細胞外刺激することで、信号が一方向伝搬し、複合活動電位(CAP)を評価することができる。これらの革新的なシステムは、インビトロ環境におけるインビボ情報を提供するが、電気生理学的試験には、マイクロマニピュレータを使用した刺激電極および記録電極の、労力を要する手動配置が含まれており、マイクロマニピュレータは、他のより高いスループットの2D多電極アレイ(MEA)システムと比較して、試験速度が低下する。
【0127】
この課題を克服するために、発明者らは、NOaCシステムを3Dマイクロ電極と統合して刺激と記録のプロセスを自動化し、システムのスループットを向上させて、治療用化合物を大規模にスクリーニングできるようにすることを計画している。3D電極は、神経伝導速度の評価のために過去に開発された他の2D MEAプラットフォーム[8,9]と比較して、より多くの多様な軸索線維を調査し、よりインビボ神経組織に類似した集団ベースの電気生理学的応答を実現することが期待されている。さらに、従来のMEAの平面構成は、培養物が成熟して3D形態になったときに一定の高さで発生する信号を捕捉するのに不十分である[10、11]。チップ上の神経学的モデルでは、より厚く、かつ成熟した組織からの信号の捕捉と分析が特に重要である[12]。本稿の目的は、より迅速な電気生理学的試験のために、ユニークな3Dハイドロゲル環境に統合されたマイクロ電極設計を定義することである。
【0128】
従来の2D MEA加工は、典型的には、シリコンまたはガラス基板上のリソグラフィ、メタライゼーション、およびエッチング技術を伴う[13,14]。非平面表面上のリソグラフィ技術は特に困難であるため、モノリシック3D MEA加工技術は稀少な技術である。最近、様々な3D細胞培養システムの開発に多大な努力が投資されており、その結果、インビトロMEAを三次元まで拡張する必要性が高まっている[15-21]。3D MEAは、中枢または末梢神経系用途のための3Dマイクロエンジニアリングシステムの研究のために、ネットワークダイナミクスの単純で迅速なスクリーニングおよび測定を可能にする。
【0129】
3D MEAは、シリコンおよびガラスなどの既存基板、ならびにパリレン、SU-8、各種金属、ポリイミドなどの非既存基板上で製造されている[22]。ミシガンプローブ(Michigan probe)[23~25]、ユタアレイ(Utah Array)[26~29]、ヨーロッパニューロプローブ(European NeuroProbes)[13,30~35]などが、インビボ用途のための3D MEA開発の最前線にあるシリコンベースの3D MEAである。さらに、金属[36]、ガラス[37]、および3D MEAとしてのポリマープローブも、放電機械加工(EDM)[38]、ポリイミドまたはカプトン[39,40]微細加工、パリレン[41,42]、マイクロ電極およびマイクロ流体機能を有するSU-8[10]ベースのアクティブ3Dマイクロスキャフォールド技術、ならびに金属トランスファマイクロ成形(MTM)[11]などの技術から製造された3D MEAを含めて調査されている。しかしながら、前述の大部分のタイプの3D MEAの製造には、クリーンルームでの広範な加工が必要であり、かつ/または複雑な製造/組み立て方法を伴うものであり、それらは高価で、コンセプトから最終デバイスに費やされた時間は言うまでもなく、広範な施設を有するエンドユーザのみが利用可能である[表S1]。
【0130】
3D MEA製造の費用対効果の高い「オンデマンド」加工プロセスでは、堅牢でベンチトップベースの設計からデバイスへのストラテジを利用した迅速なプロトタイピング技術の導入が、次の論理的なステップである。実際、ほとんどの生理学的デバイスが高度なクリーンルーム環境を必要としないため、ナノバイオセンサ、バイオメディカルマイクロエレクトロメカニカルシステム(BioMEMS)、およびマイクロ総合分析システム(MicroTAS)用途のための微細製造技術は、リソグラフィ技術から非既存のベンチトップベースの製造プロセスに移行しつつある[43]。メーカースペースは、アプリケーション開発者に脅威のない環境で様々なツールに簡単にアクセスできる一方で、様々な素材に非常に柔軟に対応するものであり、拡張性のある製造および組み立てにより迅速な設計変更を可能にする。発明者らは、最近、2Dマイクロ電極アレイ(MEA)、マイクロニードル(MN)、マイクロ流体チャネル(MFC)などの生理学的マイクロデバイスの実現に使用される「メーカースペース微細製造」[44]の概念を導入している。発明者らの「メーカースペース微細製造」は、必要に応じて既存の技術を利用し、3Dスピンキャスト絶縁およびエレクトロスピニングなどの新規のツールボックス技術を含むように拡張されている[45]。
【0131】
本稿では、3Dマイクロエンジニアリングシステムの電気生理学的評価のための3D MEAを実現するための「メーカースペース微細製造」の最初の応用を報告する。デバイスのプロセスフローは、マイクロタワーの物理構造を実現する3D印刷から開始する。3DマイクロタワーMEAは、ベース直径250μmおよび高さ400μmを有する。3Dマイクロタワーの形態で10個の記録部位をそれぞれ含有する2つのパッチが設計された。10個のマイクロタワーは、それらを、直線チャネル(神経管)に通じる環状領域(神経節)を含む3Dマイクロエンジニアリングされた神経チップ(登録商標)[46]の幾何学形状と一致するように配置した。マイクロタワーは、環状神経節および神経管の両方と重複して、記録/刺激電極として機能する。ステンシルマスク蒸着技術によって実現されるメタライゼーション層により、メタライゼーションされたタワーおよび導電性トレースが画定される。生体適合性ラミネート層は、トレースを絶縁するために使用され、それにより、背根神経節(DRG)移植片を組み込むための3Dデュアルヒドロゲル構築物が画定された3DマイクロタワーMEAの実現が可能となる。追加の電子ビーム蒸着SiO2層により、3D MEAの「微細」絶縁が画定される。3D印刷基板の上のメタライゼーションおよびSiO2蒸着は、「メーカースペース微細製造」の基盤である非既存および半導体加工技術のコラボレーションを実証している。プロセスの階層的性質はまた、絶縁層を画定するためのマイクロミリングおよびレーザ微細加工などの除去加工技術を可能にする。かかる積層により、あらゆるプロセスによって機能を追加し、複雑な設計を実現することが可能になる。光学イメージングおよびSEMイメージングは、様々な構成プロセスを特徴付けるために実施されている。加工された電極のフルスペクトルのインピーダンス分析により、白金の無電解堆積によってその容量挙動をさらに向上させ得るマイクロ電極の性質が確認される。マイクロタワー電極およびより小さい30μmの両方は、MEA材料の化学的および生理学的特徴付けとともに、さらに実証される。
【0132】
材料および方法
デバイスの製造、特徴付け、およびアッセイ方法論は、このセクションで詳細に記載される。
【0133】
3D印刷
3D MEAはSolidworks(2016x64bit edition、Dassault Systems Inc.、ウォルサム、マサチューセッツ州、米国)で設計された。MEAチップのサイズは49mm×49mm×2.5mmで、Multi-Channel Systems(ロイトリンゲン、アスペンハウシュトラーセ、独国)記録増幅器との接続を確保する。3Dタワーの形態で10個の記録部位をそれぞれ包含する2つのパッチが設計された。マイクロタワーは、ベース直径250μmおよび高さ400μmを有した。ピッチが600μmの7つのマイクロタワーを直線に沿って配置し、3つのマイクロタワーを、直線的に配置された電極から750μmの距離で、同じ直線に沿って中心対称に配置した。図6(a)は、10個の記録部位/刺激部位を包含するマイクロタワーパッチの1つの分解図を伴う3D印刷された幾何学形状の概略図を示す。設計されたCADファイルは、フォトポリマークリア樹脂(FLGPCL 04、Formlabs、サマービル、マサチューセッツ州、米国)を使用して、レーザ波長405nmの3D SLAプリンタ(Form Labs Form2、サマービル、マサチューセッツ州、米国)に直接印刷した。このデバイスは、水平方向で45°の角度で印刷されており、当該角度は、かかる3Dジオメトリに最適であることが判明している。[44]3D印刷が完了すると、デバイスをビルドプラットフォームから除去し、穏やかな撹拌で10分間、イソプロピルアルコール(IPA)浴中で洗浄した。洗浄サイクルを、新鮮なIPA浴中で2回繰り返した。その後、デバイスを窒素中で乾燥させ、続いて支持構造を除去した。アセトン蒸気研磨のために、作製したデバイスを、1リットルのガラスビーカー内に置かれたアルミホイルの上に置いた。キムワイプ(Kimtech、ロズウェル、ジョージア州、米国)をアセトンに浸し、ビーカーの内縁部から吊るした。ビーカーをParafilm(登録商標)、(Sigma-Aldrich)で密封し、3D印刷デバイスをアセトン蒸気中で4分間研磨した。
【0134】
メタライゼーション
Ti/Auの電子ビーム蒸着を、3Dマイクロタワーのメタライゼーションのためのマイクロミルステンレスステンシルマスクを通じて行い、パッケージランディングパッド(2.2mm×2.2mm)によって終端する導電トレース(200μm幅)の画定を行った。ステンレス鋼マスクの製造のために、90度T-8ミルツール(直径150μm~250μm、T-Tech、ピーチツリーコーナーズ、ジョージア州、米国)を、T-Tech J5クイック回路プロトタイピングシステム中で2mm/秒の送り速度で55,000rpmで回転させ、ステンレス鋼板(80μm厚、Trinity Brand Industries、カントリーサイド、イリノイ州、米国)をマイクロミリングした。3D印刷デバイスおよびマイクロミルマスクを立体鏡下で整列させ、チタンおよび金(Ti,4N5純度ペレットおよびAu,5N純度ペレット(Kurt J.Lesker、ジェファーソンヒルズ、ペンシルベニア州、米国))を含むメタライゼーション層を電子ビーム(Eビーム)蒸着(Thermionics Laboratory Inc.、ヘイワード、カリフォルニア州、米国)によって堆積させた。Ti層およびAu層を、3.1×10-6Torrの真空中で、それぞれ、1.0nm/sの堆積速度および1.0nm/sの100nmで10nmの厚さまで堆積させた。図6(b)は、記録/刺激パッチのうちの1つの分解図を伴うメタライゼーションパターンの概略図を示す。シャドウマスクの概略図を補足情報に示す[図14(a)]。
【0135】
ラミネート
生体適合性ラミネート層(Medco(登録商標)RTS3851-17接着剤~50μm厚、ポリエチレンテレフタレート(PET)~20μm厚;Medcoコーティング製品、クリーブランド、オハイオ州、米国)は、その後、トレースを絶縁するために3D印刷チップに接合され、それによって、3D印刷構造全体のサイズを有する電極を用いた3DマイクロタワーMEAの実現を可能にする。生体適合性ラミネートは、そのアライメントおよび取り付けの前にマイクロミリングされ、それぞれが10個の記録部位を包含する3Dタワーアレイの2つのパッチのサイズに対応する開口部を有する。生体適合性ラミネート層の開口部は、直線チャネル(長さ4.2mm、幅500μm)につながる環状領域(直径約800μm)を含む神経チップ(登録商標)寸法に対応する。バイオラミネート層の直径は32mmであり、これは、後でデバイスに貼付される培養ウェルの直径よりもわずかに大きかった。T-8ミルツールを使用して、45,000rpmで5mm/秒の送り速度で回転させて、マイクロミリングを行った。図6(c)は、記録/刺激パッチの1つの分解図を有するラミネーションプロセスの概略図を示す。マイクロミルラミネートの概略図とその幾何学形状が、補足情報に示されている[図14(b)]。
【0136】
パッケージ
外径30mm、厚さ2.1mmの培養ウェルを3D印刷し、PDMSでコーティングして生体適合性を向上させ、生体適合性エポキシ(Epo-tek(登録商標)353ND)を使用して結合して最終デバイスが実現される。培養ウェルの高さは3mmである。図6(d)に示されるように、エポキシの部分AおよびBを10:1(重量)の比率で混合し、3Dマイクロタワーデバイス上に固定した。パッケージ化デバイスを40℃で4時間硬化させた。デバイスを、無電解白金メッキ、ならびに電気、電気化学、および生理学的特徴付けの前に、IPAおよびDI水の滴下で漏れについて試験した。
【0137】
無電解白金メッキ
金コーティングされた3DマイクロタワーMEA上のマイクロ多孔質白金(一般に白金黒として知られる)の無電解堆積のために、3.75mL(Sigma-Aldrich由来の約8%クロロプラチン酸)、0.005重量%酢酸リード(Sigma-Aldrich)0.2mL、1.23M HCl(Sigma-Aldrich)4.065mL、およびDI水2.085mLを使用して、0.01重量%の白金溶液を調製した。この溶液の約5mLをMEA培養ウェルに移し、マイクロタワー電極上で白金被覆を得るために受動無電解メッキを6時間行った。次いで、完了したデバイスをDI水で洗浄し、窒素で乾燥させた。図6(e)は、マイクロ多孔質白金の無電解メッキ後の異なるサイズの個々の電極の概略図を示す。
【0138】
マイクロ電極の絶縁およびレーザ微細加工
より小さな電極を実現するために、セクション2.2で説明したTi/Auメタライゼーション後、SiO2の絶縁層が3Dマイクロ電極タワーの上部に画定される。SiO2ペレット(4N5純度(Kurt J.Lesker、ジェファーソンヒルズ、ペンシルベニア州、米国))の手動回転電子ビーム蒸着を行った。補足情報に示されるように、マイクロミリングされたステンレス鋼製のステンシルマスクを通して堆積を行った[図14(c)]。堆積速度は、標的SiO2厚さ400nmで10nm/sであった。続いて、デバイスのラミネート(セクション2.3)およびパッケージ(セクション2.4)が行われた。ここで、生体適合性ラミネート層がSiO2絶縁3D MEAに必要ではない場合があることに留意されたい。しかしながら、ラミネート層の切り出し[図14(b)]は、神経チップ(登録商標)設計[46]と同様であるため、マイクロエンジニアリングされた3D神経培養物を含有する役割を果たし得る。図6(f)は、SiO2の蒸着層を伴う、作製したデバイスの分解図を示す。図6(g)は、SiO2絶縁体を有する単一のマイクロタワーの拡大図を示す。均一なSiO2絶縁層は、その後、図6(h)の概略図に示されるように、市販のMEAに類似するサイズのマイクロ電極を画定するために選択的にレーザ微細加工され得る。これらの3Dマイクロ電極のサイズは30μmであり、QuickLaze50 ST2(Eolite Laser、ポートランド、オレゴン州、米国)を利用したレーザ微細加工(エネルギーレベルが1.2mJの532nmの4nsレーザパルス)を用いて実現した。レーザ微細加工された電極の白金無電解メッキは、その後、セクション2.5に概説されるように実施することができ、図6(i)に概略的に示される。
【0139】
イメージング、化学測定、電気測定、応力測定
BX51M顕微鏡(Olympus、センターバレー、ペンシルベニア州、米国)およびJSM6480(JEOL、ピーボディ、マサチューセッツ州、米国)をそれぞれ使用して、微細製造開発の全ての段階で光学画像および走査電子顕微鏡(SEM)画像を取得した。
【0140】
3D印刷樹脂(FLGPCL04、Formlabs、サマービル、マサチューセッツ州、米国)に対してフーリエ変換赤外線分光法を実施して、化学組成物に、材料に存在する様々な官能基と共にアクセスした。これは、長期のインビトロ培養への適合性に影響を与えるものである。FTIR測定は、PerkinElmer Spectrum100FT-IR分光計(ウォルサム、マサチューセッツ州、米国)を使用して実施し、1~5mgの試料を各FTIR試験に使用した。
【0141】
培養類似条件下でのデバイスの応力試験のために、試験デバイス(N=5)を0.5mm、1mm~3mmの厚さ間隔で製造した。デバイスを、0.025倍のダルベッコのリン酸緩衝液(Thermo Fisher Scientific、ウォルサム、マサチューセッツ州、米国)を含有するペトリ皿に浸して、水和および細胞培養培地の両方を模倣し、培養条件をシミュレートした。デバイスを、細胞培養インキュベーター(NUAIRE、NU-5100シリーズ2、ミネソタ州、米国)に、37℃、90%RH、および12%CO2で30日間インビトロ(DIV)で入れた。デバイスのベースからの歪みを平面上で測定することを可能にしたフィーラーゲージ(0.02~1mm厚さギャップ測定基準フィラーフィーラーゲージ、中国京華社)を利用して、30日間にわたって1日2回の歪みデータを得た。培養ウェルの上に小さなカウンター重量(例えば、ガラススライド)を配置して、それを所定の位置に保持し、フィーラーゲージをベースの下に挿入して、直近の曲率の厚さを識別した。この値は、デバイスの4つの側面全てに記録され、続いて、毎日の測定中にデバイス間のデータの平均が記録された。蒸発を考慮して、リン酸塩緩衝生理食塩水(PBS)を毎日の開始時に添加した。
【0142】
Dulbeccoのリン酸緩衝液を電解質として用いたBode100インピーダンスアナライザー(Omicron Labs、ヒューストン、テキサス州、米国)を用いて、マイクロタワーおよびマイクロ電極3D MEAの両方でMEAのインピーダンス測定を行った。インピーダンススキャンは、白金線(eDAQ、Denistone East、オーストラリア)を対極として10Hz~1MHzで実施した。循環電圧測定(CV)は、ポテンショスタット466システム(eDAQ由来)および基準電極として作用する銀/塩化銀(Ag/AgCl)ワイヤおよび対電極として使用される白金線を用いた3電極セットアップを使用して実施した。PBSを電解質として使用した。電極CVスキャンのキャパシタンスを推定するために、20mV/s、40mV/s、60mV/s、160mV/s、および250mV/sの走査速度で-1Vから1Vまで実行した。
【0143】
神経チップ(登録商標)の製造および3D MEAとの統合
デュアルヒドロゲルスキャフォールドを、フォトリソグラフィを使用して半透過性膜(Transwell(登録商標)インサート0.4μmポア/PES、Corning)上で製造した。開口鍵穴中心を有する細胞不透過性の外側ヒドロゲルモールドは、ポリエチレングリコールジメタクリレート(PEG1000、Polysciences)の溶液を使用して作製し、フェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィナート(LAP、Sigma Aldrich)と光架橋させた。外側のヒドロゲルは、図14(b)に示されるように、3D電極が中央の鍵穴領域内に露出するように製造される。10%w/vのPEGおよび1.1mMのLAP溶液を1:1溶液として混合し、次いで0.22μmのフィルタで滅菌濾過した。0.6mlの溶液をTranswell(登録商標)挿入物に添加し、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD、PRO4500、Wintech Digital Systems Technology Corp)のレンズの下に配置した。マスクおよび重合パラメータをDMDソフトウェア内で作成した。溶液を、波長385nmの紫外線を使用して30秒間照射した。加工後、過剰なPEGDMA/LAPを、インサートの上部および下部に2%抗生物質-抗真菌性PBS溶液を使用して10分間、3回洗浄した。洗浄緩衝液をインサートおよび内部鍵穴状チャネルから除去した。
【0144】
細胞培養フード下で最初にUVで20分間滅菌することによって、細胞培養のためにMEAを調製した。試料を3回洗浄し、それぞれ8分間、カルシウムおよびマグネシウムを含まず、1%抗生物質-抗真菌剤(100倍、Gibco、ThermoFisher)を含むリン酸塩緩衝生理食塩水(PBS)pH7.4で洗浄した。次いで、試料を細胞培養フード下で乾燥させた。3Dマイクロ電極を含有する鍵穴ボイドを、10μlの8%マトリゲル基底膜マトリックス(Corning)ヒドロゲルに封入し、次いで15分間インキュベーターに入れて固化した。
【0145】
実験に使用された一次神経組織は、一部、チューレーン大学の動物実験委員会(IACUC)による動物の取り扱いおよび組織採取の手順に従って抽出された。末梢感覚ニューロンおよびグリアルシュワン細胞からなるDRGを、Long-Evansラット、15日目の子犬の胚(Charles River、ウィルミントン、マサチューセッツ州)から単離した。次いで、DRGをMEA上のマトリゲルに直接配置した。細胞を、Basal Eagles Medium(Thermofisher)、15%ウシ胎児血清(HyClone)、インスリン転移セレニウム(ITS、Thermofisher)、Glutamax(Thermofisher)、抗生物質-抗真菌剤、4g/LのD-グルコース(Sigma)、10ng/mlの神経成長因子(NGF)(R&Dsystems)、および50μg/mlのL-アスコルビン酸(Sigma)からなる20mlの培地中で培養した。5%CO2インキュベーターで培養物を37℃に維持した。
【0146】
神経チップ(登録商標)の測定
DRGは、10日間のインキュベーション後の生体適合性および生存率について分析された。MEAをPBSで3回洗浄し、次に37℃で3μMのヨウ化プロピジウム(PI)(死細胞染色)(Invitrogen)および4mMのカルセインAM(生細胞染色)(Biotium)と共に30分間インキュベートした。次いで、試料をPBSでさらに3回洗浄し、蛍光顕微鏡を使用して撮像した。ImageJ(NIH)Fijiソフトウェアパッケージを使用して、染色細胞の総数を数えることによって、画像を分析した。簡潔に述べると、各画像について、背景蛍光をソフトウェア閾値化を通じて除去し、染色細胞の最大強度を点選択性を使用してカウントした。各試料について発見された細胞数を平均した(試料当たりn=4DRG)。分散の一方向分析(ANOVA)を、生細胞数のみについて計算した(p>0.05)。特に指定されない限り、データは平均(±)標準偏差として提示される。
【0147】
結果および議論
このセクションでは、3D MEAの微細製造プロセス開発の結果について詳しく説明する。3DマイクロタワーMEAならびに30μm3D MEAの電気的および電気化学的結果について論じた。さらに、デバイスを神経チップ(登録商標)モデルとカップリングする際の統合、生体適合性、インビトロ応力試験、および化学分析について説明する[46]。
【0148】
デバイス微細製造
図7(a)は、記録/刺激MEAの1つのパッチにおける3D印刷された3DマイクロタワーのSEM画像を示す。マイクロタワーの寸法は、250μmのベース幅と400μmの高さの設計寸法と密接に一致することが観察される。ベース直径および高さの変動を示すN=20個の電極のボックスプロットを図15に示す。かかるマイクロタワーMEAの配置により、記録部位および刺激部位は、3Dマイクロエンジニアリングされた神経チップ(登録商標)[46]の幾何学形状と十分に一致することが可能になる。3つのマイクロタワーは、神経チップ(登録商標)の神経節の球状バルブと接触するように設計され、個々の記録部位/刺激部位として機能する一方で、7つのマイクロタワーは神経軸索管と重複し、記録/刺激電極として機能するように配置される。図7(b)は、環状領域内の3Dマイクロタワーの拡大図を示しており、マイクロタワー形状がSLAベースの3D印刷に固有のストライプを有することが観察される。かかるストライプは、3D印刷層の各々が後続の層に共有結合でステッチされるときに生じる。図7(c)に見られるように、アセトン蒸気研磨を用いて、3Dマイクロタワーの外面を等方的にエッチングして、縞を減少させることができる。ただし、ストライプは、電極の表面積を増加させるための有用な方法であり得る。等方性エッチングプロセスにより、図7(d)に示すように、約15μmの曲率半径(ROC)を有するマイクロタワーチップが得られる。
【0149】
図8(a)は、メタライゼーションされた3Dマイクロタワーおよび導電トレースを得るためのTi/Auの堆積後のデバイスの顕微鏡写真を示す。図8(b)は、単一の記録/刺激パッチに対応する10個のメタライゼーションマイクロタワーの拡大図を示す。図8(c)は、トレースを絶縁するためのデバイスの選択的ラミネートを示している。これにより、図8(d)に示すように、3D印刷培養物を取り付けた後に3DマイクロタワーMEAが実現される。この時点で、デバイスは無電解白金メッキ、電気、化学、電気化学測定、および3Dマイクロエンジニアリング神経チップ(登録商標)との統合の準備がなされる。
【0150】
3D MEAの電気的および電気化学的特性評価
マイクロ多孔質白金の無電解メッキは、化学腐食に非常に強く、生体適合性があり、記録のための電気インピーダンスを低減するコーティングが得られる[18]。さらに、この層の低閾値電位は、電気刺激における応用にとって興味深いものとなる[47]。図9(a)および9(b)は、マイクロ多孔質白金の無電解メッキの前後の3DマイクロタワーMEAのフルスペクトルインピーダンスおよび位相応答を示す(各電極タイプのN=10の平均)。インピーダンスの大きさは、電極の表面積の増加をもたらす3D MEAの表面積の増加に起因し得る多孔質白金の無電解堆積時に減少することが観察される。電気生理学的に適切な1kHzの周波数では、1.8kΩから670Ωへのインピーダンスの減少が観察される。位相スペクトルは-60°からほぼ0°にシフトすることが観察される。これは、他のMEAで観察されているように、電解質の溶液抵抗が電極-電解質界面インピーダンスを支配し始めるにつれて、電極-電解質界面インピーダンスの全体的な特性が低周波数で二重層キャパシタンス(CDL)によって支配され、より高い周波数でより抵抗性になることを意味する[48]。1kHzでは、無電解メッキの前後にそれぞれ-13.9°および-12.8°の位相が3DマイクロタワーMEAで観察される。興味深いことに、10Hz以下の周波数での位相応答からの3DタワーMEAの容量挙動は、大きなCDL値を意味している。しかしながら、非常に低い周波数(<10Hz)では、二重層キャパシタンスに関するインピーダンスは省略できるほど大きく、オープン回路に置き換えることができ、無電解メッキ前の3DマイクロタワーMEAの位相応答からより抵抗挙動の傾向が見られる[48]。
【0151】
図9(c)および9(d)から明らかなように、金の表面が黒くなっていることから、光学的にマイクロ多孔質白金が観察されている。補足情報には、単一パッチの10個のマイクロ多孔質白金電極の顕微鏡写真が提供されている[図16(a)、(b)]。視覚的に容易に参照するために、無電解メッキ前の3DマイクロタワーMEAの顕微鏡写真も提供される[図16(c)および(d)]。3DタワーMEAの循環電圧測定中の走査速度の変動は、無電解白金メッキ後の二重層キャパシタンスの変化を推定するために実行されている。図10(a)および10(b)は、無電解メッキの前後の3DタワーMEAの走査速度の変動を示す。電流対走査速度プロットの線形フィットは、走査速度の変動データを用いて実行され、キャパシタンス値は、グラフの傾きから抽出された[44,49]。図10(c)に示すグラフの傾きから明らかなように、キャパシタンスは無電解めっき後、0.3mFから3.0mFに増加しており、これはキャパシタンスの1桁(10倍)の増加である。MEAの表面テクスチャの制御におけるマイクロ多孔質白金の能力を実証するものであり、小さな神経学的シグナルを捕捉する能力の向上を実証するものである。より小さい電極(30μmのサイズ)では、電極サイズの減少はインピーダンスの著しい増加をもたらすため、信号対ノイズ比(SNR)を減少させる[18]。結果として、SNRを改善するために、これらの電極にマイクロ多孔質白金を堆積させた。図10(d)は、白金の無電解メッキの前後の30μmマイクロ電極のフルスペクトルインピーダンスおよび位相応答を示す。電気生理学的に適切な1kHzの周波数では、55kΩ~39kΩへのインピーダンスの有意な減少(N=2)が観察される。この値は、商用されている類似のサイズのナノ多孔質白金2D電極に関して非常に広い範囲である[50]。より小さい電極の位相シグネチャも同じ図に示され、電極のサイズが小さいほど、CDLの値が低くなることが観察され、これは、最大100Hzの周波数に対するMEAの抵抗挙動として現れる。周波数が大きくなるにつれて、CDLの影響が顕著になり、電極-電解質界面インピーダンスがより容量性になる[49]。
【0152】
図11(a)は、SiO2堆積後の3Dマイクロタワーの先端の拡大図マイクロ写真を示す。SiO2の透明性による光の干渉により、マイクロ電極に明確な青紫色が付与される。図11(b)は、レーザ微細加工された記録部位に無電解メッキを施した後のマイクロタワー上部のマイクロ多孔質白金の特徴的な黒色を示す。図11(c)は、無電解メッキ時の白金のマイクロアイランドによる著しい粗化を伴うマイクロ多孔質白金電極の先端のSEM画像を示す。この現象の影響は、表面積が大きくなり、インピーダンス値が低くなることである。白金の存在を検証するために、MEAの電子分散分光法(EDS)分析を行った。図11(d)は、白金に起因するピークにより、3Dマイクロタワーの先端に形成されたマイクロ多孔質島上に、無電解堆積後、白金の存在をほぼ90重量%確認するものである[51]。
【0153】
3D MEAの生理学的および化学的特性評価
生体適合性試験の目的は、3D MEA試料内の細胞生存率を評価するための単純かつ迅速な方法を考案することであった。カルセインAMは、インキュベーションを介して細胞に導入される広く使用される染色である。細胞内に入ると、カルセインAMは、内因性エステラーゼによって加水分解され、細胞質に保持される緑色の蛍光分子になる。ヨウ化プロピジウム(PI)は、赤色蛍光核酸対染色として知られており、これは、生細胞の無傷膜に対して不透過性である。図12(a)は、3DマイクロタワーMEA上のDRGを示す。10個の記録部位/刺激部位を包含する1つの記録パッチが青色でマークされている。10個の記録部位/刺激部位を包含するパッチのうちの1つの拡大図を図12(b)に示す。マトリゲル(登録商標)マトリックスで充填された鍵穴は青色でマークされ、PEG構造は赤色でマークされている。神経チップ(登録商標)の円形部分のMEA表面の上部に増殖したDRGの生細胞(緑色)および死細胞(赤色)の複合画像を図12(c)に示す。図12(d)は、10個の記録部位/刺激部位を包含するパッチのためにMEA上に配置されたDRGを示すステッチされた複合画像を示す。神経細胞が3Dマイクロタワーの周囲に巻かれていることが明らかに観察されており、これは、構築物の固定を示唆している。図12(e)は、対照試料についての神経チップ(登録商標)の環状領域の拡大図を示す。
【0154】
試料および対照の生体適合性の定量化は、生細胞の割合として示される[図13(a)]。対照試料は、3D MEAの基板を3D印刷するために使用されるフォトポリマークリア樹脂(約3%)とは対照的に、最も高い割合の生細胞(約96%)を示すことが観察される。3D MEA材料セットの他の試験ベッドは、この2つの極端な値の間(約55~70%)にあり、3D印刷樹脂材料からの潜在的な細胞毒性浸出液の可能性を示唆している。この潜在的な細胞毒性を調査するために、3D印刷物のFTIR分析を行った。図8(b)は、未硬化および硬化樹脂のFTIR結果を示す。FTIRのフィンガープリント領域(2000cm-1~650cm-1)の分解図を図8(c)にさらに示す。分析により、未硬化ベースモノマー/オリゴマーが、1700cm-1のC=O伸長、1250cm-1のC-O-C(メタクリレート)非対称伸長、および1050cm-1のC-O-C(メタクリレート)非対称伸長によって検証されたメタクリル酸エステルであることが明らかである。この結論は、1168cm-1におけるエステル基(O=C-O-R)の振動によって裏付けられる。1638cm-1および816cm-1のC=Cアクリレート部分に対応するシグナルは、硬化後に有意に減少し、重合上のネットワーク形成による二重結合の消費を示すことに留意することが重要である。同じ理由で、エステル基の振動を表すシグナルが1168cm-1から1137cm-1にシフトし、772cm-1でH-C=Rに対応するシグナルが弱まってシフトし、メチレンによるC-Hベンディングによる1453cm-1でのシグナルが減少した。これらのシグナルは、モノマー/オリゴマー/ポリマー中で3364cm-1で現れるC=O伸長からのオーバートーンとともに、ポリマーがメタクリル酸エステルであり、グローバル調和システム(GHS)分類による危険な化合物ではないことを確認するものである[52]。したがって、材料の細胞毒性は、ベースポリマーによるものではなく、光開始剤および/または熱重合阻害剤などの他の化合物の存在によるものである。光開始剤は光重合の触媒として作用するが、熱重合阻害剤は、時間の経過とともに熱重合または重合を防止して、樹脂の保存期間を増加させるために使用される[53]。市販の樹脂中に存在する典型的な光開始剤は、ホスフィンオキシド化合物、ヒドロキシル-アセトフェノン、ベンゾフェノン化合物、カンフォルキノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、トリアリールスルホニウム塩などが挙げられる[54]、[55]。しかしながら、FTIR分析からは、1320cm-1でのP=O伸長は、光開始剤が実際にホスフィンオキシドに基づくことが確認される。さらに、フェニル-P結合から生じる1406cm-1および945cm-1で生じるシグナルは、光開始剤がTPO(ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド)またはBAPO(ホスフィンオキシド、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)のいずれかであることを裏付ける。BAPOは、典型的には硬化後に観察される著しい黄色変色をもたらす[56]。同じ効果は、TPOでは観察されず、樹脂が光重合時に本質的に「透明」であるため、光開始剤は、TPOであると結論付けることができる。
【0155】
フィンガープリント領域からさらに2つの他の重要なシグナルが出現しており、これは、芳香族環に結合したNO基から生じる1530cm-1(非対称伸長)および1365cm-1(対称伸長)での吸収ピークである。これは、経時的な熱重合を防止するために一般的に使用される化合物であるニトロベンゼン[57]の存在を示唆する。TPOおよびニトロベンゼンの両方は、GHS[58]、[59]によって分類される有害化合物であり、これが、ほとんどの場合、基板について観察されたDRG細胞適合性が著しく低下した理由である(約3%)。ただし、30μmの電極を実現するためのメタライゼーション(生体適合性Ti/Au)、粗断熱(PETベースのバイオラミネート層)および生体適合性SiO2断熱などの機能性をデバイスに追加すると、生細胞の割合は約70%まで増加することが観察される[図13(a)]。より小さい電極を実現するためのSiO2の蒸着は、フォトポリマーに曝露された電極間領域を必然的にカバーする(金のメタライゼーションは3Dマイクロタワーのみをカバーする)。これにより、デバイスが約30μmの小さな記録部位を実現できるようにすることに加えて、デバイスの生体適合性が向上する。
【0156】
化学分析により明らかとなるように、ベースポリマーは、メタクリル酸エステルであり、細胞培養実験中に水/培地吸着を起こしやすく、歪みにつながる可能性がある。考察したように、水の吸着特性を評価するために、異なる厚さの試験樹脂試料をピーク生理学的条件に置き、細胞培養条件を最良に模倣した。実験のための水和定数が常に可能な限り100%に近いことを確実にし、合理的な時間スケールで結果を得るために、デバイスを完全に水没させた。図13(d)に見られるように、樹脂系デバイスの歪みは、厚さ範囲(1~3mm)にわたって一定ではなかったが、3D MEAの厚さの増加とともに減少傾向を示した。ピークは、デバイスの完全な飽和を示しており、一方、データのわずかな減少は、変動する平衡状態を示す。これらの低減は、蒸発量が最も多く、より多くの水をデバイスから拡散させたときに生じた。厚いデバイス(2mm以上のデバイス)は、著しく低い歪みを示し、2.5mmおよび3mmのデバイスは実験期間(30DIV)にわたって全く歪みを示さなかった。デバイスの歪みは、樹脂のポリマー構造上の圧縮応力をもたらすデバイスの水和、および永久的な歪みに起因し得る。
【0157】
このように、3D印刷されたポリマー化学物質は、3Dプリンタの解像度に依存する最適な設計-デバイス変換を実現するだけでなく、長期のインビトロ培養のための生体適合性にも非常に重要な役割を果たすことが見出された。3D印刷技術の向上に伴い、オープンプラットフォーム3Dプリンタで印刷できる多種多様な生体適合性ポリマーを使用することで、3Dマイクロ電極の充填密度が著しく高い設計を実現することができる。かかる概念実証用デバイスは、27μm/27μmのX/Y分解能および1μmのZ分解能を提供するAsiga MAX X27UV(Alexandria、オーストラリア)Digital Light Processing(DLP)3Dプリンタを使用して3D印刷された。図8(e)は、神経チップ(登録商標)[46]プラットフォームと互換性のある131個の記録部位/刺激部位を有する高密度3D MEAのSEM画像を示す。電極のベース直径は約100μmであり、高さは約150μmである。生体適合性ビルド材料(Pro3dure GR-1 CLEAR、Protoproducts、ニューヨーク州、米国)をポリマー材料として使用して、3Dプリンタのオープンプラットフォームを使用して印刷した。
【0158】
結論
本研究では、3D印刷ベースの微細製造技術を用いて、新規の3DマイクロタワーMEAと、高さ400μmで30μmのサイズを有する小さなカスタマイズ可能な電極を迅速に作製し、マイクロエンジニアリングされた神経チップ(登録商標)モデルに統合することを実証した。これらのMEAは、技術的に堅牢であり、インビトロ用途において完全に機能している。製造方法は、マイクロ/ナノ加工の新規のコンセプトである「メーカースペース微細製造」技術の適用を伴うものであり、これは、従来の半導体技術と非既存ベンチトップ微細加工アプローチとの間の緊密な相乗効果を実証するものである。3D MEAの電気的および電気化学的特性は、高度かつ精緻でコストを要する技術を使用して実現された3D MEAと同等の性能を示している。生体適合性試験は、デバイスの構成要素を使用したMEA上で良好な細胞生存率を示し、ベース樹脂およびその可能性のある細胞毒性成分の詳細な化学的理解をもたらす。樹脂材料の応力試験により、MEAを用いた長期アッセイのための設計フレームワークを確立した。3D印刷と、3D MEAと、3Dマイクロエンジニアリングされた神経チップ(登録商標)モデルとの間のかかる統合により、迅速な薬学的、化学的、および環境スクリーニングに向けた、「ディッシュ内疾患(disease in a dish)」および「生体機能チップ」のように、細胞/組織の成長、増殖、および長期培養をインビトロで適用に対応したシステムが提供される。
【0159】
本実施例で引用した参考文献
【0160】
実施例4
【0161】
(表S1)インビトロ3D MEAの比較表
【0162】
本実施例で引用した参考文献
【0163】
等価物
当業者は、通常の実験のみを使用して、本明細書に記載の特定の物質および手順に多数の等価物を認識するか、または確認することができるであろう。かかる等価物は、本発明の範囲内であると考えられ、以下の特許請求の範囲によって包含される。
図1
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