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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】ポリマーコート紙および板紙
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/10 20060101AFI20241004BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20241004BHJP
   D21H 27/30 20060101ALI20241004BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20241004BHJP
   B65D 3/06 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
B32B27/10
B32B27/32 E
D21H27/30 C
B65D65/40 F
B65D3/06 B
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021517763
(86)(22)【出願日】2019-10-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-06
(86)【国際出願番号】 IB2019058322
(87)【国際公開番号】W WO2020070631
(87)【国際公開日】2020-04-09
【審査請求日】2022-09-02
(31)【優先権主張番号】1851188-1
(32)【優先日】2018-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】501239516
【氏名又は名称】ストラ エンソ オーワイジェイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リブ、ビレ
(72)【発明者】
【氏名】ネヴァライネン、キンモ
(72)【発明者】
【氏名】トリセヴァ、ユーソ
(72)【発明者】
【氏名】スオカス、エーサ
(72)【発明者】
【氏名】クーシパロ、ユルッカ
【審査官】長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-337829(JP,A)
【文献】特開2017-196778(JP,A)
【文献】実開昭59-149944(JP,U)
【文献】特開平06-190983(JP,A)
【文献】特開2012-081615(JP,A)
【文献】特開平05-138829(JP,A)
【文献】特開2009-073007(JP,A)
【文献】特開2007-185891(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0008264(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第01836232(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00
B65D3/00-3/30
65/00-65/46
D21B1/00-1/38
D21C1/00-11/14
D21D1/00-99/00
D21F1/00-13/12
D21G1/00-9/00
D21H11/00-27/42
D21J1/00-7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーコーティングを含む紙または板紙であって、前記ポリマーコーティングは、以下を含み:
紙または板紙の表面に取り付けられた第1のコーティング層であって、以下のブレンドを含む前記第1のコーティング層:
高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)または線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、またはそれらの混合物、および
低密度ポリエチレン(LDPE);及び
第1のコーティング層に取り付けられた第2のコーティング層であって、低密度ポリエチレン(LDPE)から本質的になる前記第2のコーティング層、
ここで、第1のコーティング層および第2のコーティング層は、12g/m未満の合計坪量を有する、しかも、第1のコーティング層および第2のコーティング層は、5.5g/m以上の合計坪量を有する、
しかも、前記第1のコーティング層は、以下のブレンドから本質的になる:
1~49重量%の、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、またはそれらの混合物、および
51~99重量%の低密度ポリエチレン(LDPE)、
しかも、HDPEが0.930~0.970g/cmの範囲の密度を有し、MDPEが0.926~0.940g/cmの範囲の密度を有し、LLDPEが0.918~0.940g/cmの範囲の密度を有し、および/またはLDPEが0.910~0.940g/cmの範囲の密度を有する、
しかも、HDPEの密度は、MDPE、LLDPE及びLDPEのそれぞれの密度よりも高く、そして、MDPEの密度は、LLDPE及びLDPEのそれぞれの密度よりも高い、
しかも、LDPEは、いくつかの長いブランチ(分岐)と多くの短いブランチがあるホモポリエチレンであり、
HDPEは、分岐はほとんどまたはまったくない線形構造のホモポリエチレンであり、
MDPEは、1-ブテン、1-ヘキセン及び1-オクテンから選択される1-アルケンとの共重合によって導入されるいくつかの短い分岐を有し、そして、
LLDPEは、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン及び4-メチル-1-ペンテンから選択される1-アルケンとエチレンとの共重合体であり、2~7重量%の1-アルケンを含んでいる、
前記の紙または板紙。
【請求項2】
前記第1のコーティング層は、紙または板紙の表面上への押出コーティングによって形成される、請求項1に記載の紙または板紙。
【請求項3】
前記第2のコーティング層は、前記第1のコーティング層上への押出コーティングによって形成される、請求項1から2のいずれか一項に記載の紙または板紙。
【請求項4】
前記第1のコーティング層および第2のコーティング層が、10g/m未満の合計坪量を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の紙または板紙。
【請求項5】
前記第1のコーティング層が5g/m未満の坪量を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の紙または板紙。
【請求項6】
前記第2のコーティング層が、10g/m未満の坪量を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の紙または板紙。
【請求項7】
前記第1のコーティング層が、MDPEとLDPEのブレンドを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の紙または板紙。
【請求項8】
前記第2のコーティング層は、前記第1のコーティング層よりも低い密度を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の紙または板紙。
【請求項9】
前記第2のコーティング層がポリマーコーティングの最上層である、請求項1から8のいずれか一項に記載の紙または板紙。
【請求項10】
前記ポリマーコーティングが、同じ総坪量を有するLDPEコーティングよりも、紙または板紙の表面に対してより良好な接着性を有する、請求項1から9のいずれか一項に記載の紙または板紙。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の紙または板紙を含むヒートシールされた紙または板紙製品。
【請求項12】
前記製品が紙コップである、請求項11に記載のヒートシールされた紙または板紙製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本開示は、ポリエチレンコーティングを含むコート紙および板紙に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
紙および板紙をプラスチックでコーティングすることは、板紙の機械的特性をプラスチックフィルムのバリアおよびシーリング特性と組み合わせるために、よく使用される。比較的少量の適切なプラスチック材料を備えた板紙は、板紙を多くの要求の厳しい用途に適したものにするために必要な特性を提供することができる。
【0003】
紙または板紙自体は、乾燥製品の包装に一般に適している。ただし、未処理の板紙は、湿気が包装の機械的特性に影響を与え、吸収されたグリースが紙の汚れを引き起こすため、湿った製品や脂っこい製品と直接接触する場合の使用は制限される。これらの影響により、保護機能と包装の外観が損なわれる。紙や板紙のポリエチレン(PE)コーティングは、防湿性が重要な包装用途に適していることがよくある。例としては、野菜、肉、魚、アイスクリームなどの生鮮食品や冷凍食品の包装がある。PEコーティングされた(PEコート)板紙の重要な用途の1つは、防水紙コップの製造である。
【0004】
押出コーティングは、溶融プラスチック材料を紙や板紙などの基材に塗布して、非常に薄く、滑らかで均一な層を形成するプロセスである。当該コーティングは、押し出されたプラスチック自体によって形成することができ、または溶融プラスチックを接着剤として使用して、固体プラスチックフィルムを基材上にラミネートすることができる。押出コーティングに使用される一般的なプラスチック樹脂には、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、およびポリエチレンテレフタレート(PET)が含まれる。
【0005】
押出コーティングは、例えば、湿気保護、水蒸気、酸素、芳香などに対するバリア特性、汚れまたはグリース耐性、ヒートシール性を達成するために、および/または基材表面に所望の仕上げまたはテクスチャーを与えるために、使用され得る。
【0006】
押出コーティングは、紙や板紙の用途の範囲を大幅に拡大する。薄いプラスチック層は、グリースや湿気に対する耐性を与え、場合によっては耐熱性も与える。プラスチックコーティングは、ヒートシールにも使用できる。用途に応じて、紙または板紙の片面または両面上を押出コーティングすることができる。
【0007】
環境的および経済的理由から、バリアおよび保護特性が許容可能なレベルに維持されている限り、プラスチックコーティングを可能な限り薄く保つことが一般的に望ましい。しかしながら、多くの場合、プラスチックコーティングの厚さ(または坪量)のさらなる減少は、押出プロセスにおけるフィルム形成の接着性および安定性の障害、ならびにピンホールの形成によって制限される。たとえば、PEは通常、15~25g/mの坪量に押出コーティングされる。紙コップの製造に従来使用されているPE樹脂は、接着性の低下、ヒートシール性の低下、ピンホール形成の増加なしに、紙または板紙上に12g/m未満の坪量まで押出コーティングすることはできず、コーティングされた製品に欠陥が生じる。
【0008】
プラスチックを使用した紙および板紙の押出コーティングおよびラミネート加工では、プラスチックの基材への十分な接着が得られることが非常に重要である。プラスチックの接着力は、主に基材の表面特性と板紙に塗布したときのプラスチック溶融物の熱容量に依存する。プラスチックコーティングと紙または板紙の間の不十分な接着は、一般的で常に問題である。
【0009】
ピンホールは、コーティングプロセス中にプラスチックフィルム中に形成される可能性のある微細な穴である。ピンホールが発生する主な理由には、基材表面の不規則性(表面粗さが大きい、繊維が緩いなど)、コーティングの分布が不均一である、コーティングの坪量が低すぎるなどがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
接着性は、例えばコロナ放電やオゾンでの基材の表面処理によって改善できるが、押出プロセス中で良好な接着性、ヒートシール性、および膜形成の安定性を維持しながら、PEの押出コーティングにおけるプラスチックコーティングの坪量を減らすための改善された解決の必要性が残っている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の説明
本開示の目的は、押出コーティングにおけるフィルム形成の十分な接着性、ヒートシール性、および/または安定性を達成するために必要なPE樹脂の最小坪量を減らすことである。
【0012】
本開示のさらなる目的は、紙または板紙へのPE樹脂の良好な接着性を維持しながら、及び、ピンホールの形成を回避しながら、12g/m未満の坪量など、PE樹脂の総坪量を減らすことを可能にするPE樹脂コート(PE樹脂でコーティングされた)紙または板紙を提供することである。
【0013】
本開示のさらなる目的は、PE樹脂でコーティングされた紙または板紙を製造する方法を提供することであり、これは、押出プロセスでのフィルム形成の良好な安定性を維持しながら、12g/m未満の坪量などのPE樹脂の減少した坪量を可能にする。
【0014】
本開示のさらなる目的は、PE樹脂でコーティングされた紙または板紙を製造する方法を提供することであり、これは、PE樹脂の低坪量での押出プロセスにおけるフィルム形成の改善された安定性を可能にする。
【0015】
上記の目的、ならびに本開示に照らして当業者によって実現される他の目的は、本開示の様々な態様によって達成される。
【0016】
本明細書に示される第1の態様によれば、下記の紙または板紙が提供される:
ポリマーコーティングを含む紙または板紙であって、前記ポリマーコーティングは、以下を含み:
紙または板紙の表面に取り付けられた第1のコーティング層であって、以下のブレンドを含む前記第1のコーティング層:
高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)または線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、またはそれらの混合物、および
低密度ポリエチレン(LDPE);及び
第1のコーティング層に取り付けられた第2のコーティング層であって、低密度ポリエチレン(LDPE)から本質的になる前記第2のコーティング層、
ここで、第1のコーティング層および第2のコーティング層は、12g/m未満の合計坪量を有する。

本発明に関連して、以下の内容を更に開示する。
[1]
ポリマーコーティングを含む紙または板紙であって、前記ポリマーコーティングは、以下を含み:
紙または板紙の表面に取り付けられた第1のコーティング層であって、以下のブレンドを含む前記第1のコーティング層:
高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)または線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、またはそれらの混合物、および
低密度ポリエチレン(LDPE);及び
第1のコーティング層に取り付けられた第2のコーティング層であって、低密度ポリエチレン(LDPE)から本質的になる前記第2のコーティング層、
ここで、第1のコーティング層および第2のコーティング層は、12g/m 未満の合計坪量を有する。
[2]
前記第1のコーティング層は、以下のブレンドから本質的になる、[1]に記載の紙または板紙:
1~49重量%の、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、またはそれらの混合物、および
51~99重量%の低密度ポリエチレン(LDPE)。
[3]
前記第1のコーティング層は、紙または板紙の表面上への押出コーティングによって形成される、[1]から[2]のいずれかに記載の紙または板紙。
[4]
前記第2のコーティング層は、前記第1のコーティング層上への押出コーティングによって形成される、[1]から[3]のいずれかに記載の紙または板紙。
[5]
前記第1のコーティング層および第2のコーティング層が、10g/m 未満、好ましくは8g/m 未満の合計坪量を有する、[1]から[4]のいずれかに記載の紙または板紙。
[6]
前記第1のコーティング層が5g/m 未満、好ましくは4g/m 未満、より好ましくは3g/m 未満の坪量を有する、[1]から[5]のいずれかに記載の紙または板紙。
[7]
前記第2のコーティング層が、10g/m 未満、好ましくは8g/m 未満、より好ましくは6g/m 未満の坪量を有する、[1]から[6]のいずれかに記載の紙または板紙。
[8]
HDPEが0.930~0.970g/cm の範囲の密度を有し、MDPEが0.926~0.940g/cm の範囲の密度を有し、LLDPEが0.918~0.940g/cm の範囲の密度を有し、および/またはLDPEが0.910~0.940g/cm の範囲の密度を有する、[1]から[7]のいずれかに記載の紙または板紙。
[9]
前記第1のコーティング層が、MDPEとLDPEのブレンドを含む、[1]から[8]のいずれかに記載の紙または板紙。
[10]
前記第2のコーティング層は、前記第1のコーティング層よりも低い密度を有する、[1]から[9]のいずれかに記載の紙または板紙。
[11]
前記第2のコーティング層がポリマーコーティングの最上層である、[1]から[10]のいずれかに記載の紙または板紙。
[12]
前記ポリマーコーティングが、同じ総坪量を有するLDPEコーティングよりも、紙または板紙の表面に対してより良好な接着性を有する、[1]から[11]のいずれかに記載の紙または板紙。
[13]
[1]から[12]のいずれかに記載の紙または板紙を含むヒートシールされた紙または板紙製品。
[14]
前記製品が紙コップである、[13]に記載のヒートシールされた紙または板紙製品。
[15]
ポリエチレン(PE)コート紙または板紙基材を製造する方法であって、以下を含む方法:
a)紙または板紙の基材を提供する、
b)溶融された第1のポリマー樹脂の少なくとも1つの層を、押出コーティングによって前記基材の表面に塗布して、第1のポリマーコーティング層を形成し、前記第1のポリマー樹脂は、以下のブレンドを含む:
高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)または線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、またはそれらの混合物、および
低密度ポリエチレン(LDPE)、
c)溶融された第2のポリマー樹脂の少なくとも1つの層を、押出コーティングによって前記第1のポリマーコーティング層の表面に塗布して、第2のポリマーコーティング層を形成し、前記第2のポリマー樹脂は、低密度ポリエチレン(LDPE)から本質的になる、
d)第1のコーティング層および第2のコーティング層を冷却して固化させる、及び
e)PEコート紙または板紙基材を回収する。
[16]
前記第1のコーティング層および第2のコーティング層は、[2~12のいずれか一項に記載されているようにさらに定義される、[15]に記載の方法。
[17]
前記第1のコーティング層および第2のコーティング層は、共押出コーティングによって同時に形成される、[15]~[16]のいずれかに記載の方法。
【0017】
紙とは、一般に、木材のパルプまたはセルロース繊維を含む他の繊維状物質から薄いシート状で製造され、書き込み、描画、または印刷に使用される、または包装材料として使用される材料を指す。
【0018】
板紙とは、一般に、箱やその他の種類の包装に使用されるセルロース繊維を含む、丈夫で厚い紙または段ボールを指す。板紙は、最終用途の要件に応じて、漂白または無漂白、コーティングまたは非コーティングのいずれかで、さまざまな厚さで製造できる。
【0019】
本明細書で使用されるコーティングという用語は、基材の表面が組成物で覆われて、基材に所望の特性、仕上げまたはテクスチャーを付与する操作を指す。コーティングは、PEコーティング樹脂が1つまたは複数の層で使用され得る多層コーティングであり得る。コーティングは、紙または板紙の片面または両面に適用できる。
【0020】
低坪量のPEコーティングにおける接着不良とピンホール形成の問題は、紙と板紙のコーティングで特に顕著である。ここでは、繊維ベースの基材とその自然なボイドおよび表面粗さが重要な役割を果たしている可能性がある。現在の防水紙コップは、0.910~0.940g/cmの範囲の密度の低密度ポリエチレン(LDPE)などのポリオレフィン層を有するポリオレフィンコーティングされた板紙構造から調製されている。コーティング坪量は通常12g/m以上である。この従来のLDPEは、コーティングされた製品の欠陥につながる接着性およびフィルム形成の安定性を失うことなく、12g/m未満のコーティング坪量まで紙または板紙上に押出コーティングすることはできない。
【0021】
本発明者らは、異なるPEタイプの特定の組み合わせ、具体的には、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)または線状低密度ポリエチレン(LLDPE)のブレンドまたはそれらの混合物を含む第1のコーティング層、および低密度ポリエチレン(LDPE)を使用して、紙および板紙の押出コーティングにおけるフィルム形成の十分な接着および安定性を達成するために必要とされるPEの最小坪量を、大幅に減らすことができる。印刷やヒートシールなどの多くの変換操作では、適切な接着が重要である。
【0022】
本発明者らは、驚くべきことに、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)または線状低密度ポリエチレン(LLDPE)のブレンド、またはそれらの混合物を含む第1のコーティング層、および接着層としての低密度ポリエチレン(LDPE)、および上層として低密度ポリエチレン(LDPE)から本質的になる第2のコーティング層を有する本発明のコーティング構造により、コーティングの合計坪量は、当該ブレンドのみを含むコーティング構造で可能なものよりもさらに減らすことができ、および、層の順序が逆になっている、すなわち、ブレンドを最上層として、LDPEを接着層として持つ、同様の構造で可能なものよりもさらに減らすこともできる。これは、ブレンド組成だけでなく、層の順序もコーティング方法及び得られるコーティングに影響を与えることを示している。
【0023】
第1のコーティング層は、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)または線状低密度ポリエチレン(LLDPE)のブレンド、またはそれらの混合物、および低密度ポリエチレン(LDPE)を含む。
【0024】
低密度ポリエチレン(LDPE)は、押出成形によるフィルムの製造に適したレオロジー特性を備えている。LDPEには、いくつかの長いブランチ(分岐)と多くの短いブランチがある。典型的には、分子ごとに3つの長い分岐と30の短い分岐が存在することがある。分子量は比較的低く、分子量分布が広い。LDPEの溶融強度とずり流動化の性質により、処理が強化される。LDPEフィルムの引張強度は比較的低いが、衝撃強度は良好である。LDPEフィルムは優れた透明度と光沢を示す。良好な透明度と光沢は、比較的低い結晶化度に起因する。LDPEは、高圧ラジカル重合プロセスによって、通常はオートクレーブまたは管状反応器中で得られる。オートクレーブは一般に、より多くの分岐とより広い分子量分布をもたらす。LDPEの融解範囲は広く、ピーク融解温度は110°Cである。LDPEの密度は、典型的に、0.910~0.940g/cmの範囲である。
【0025】
高密度ポリエチレン(HDPE)は線形構造であり、分岐はほとんどまたはまったくない。HDPEは通常、チーグラー・ナッタ、フィリップス、またはユニポールのプロセスで製造される。これらのプロセスは比較的低圧であり、遷移金属との有機金属錯体によって触媒される。重合は通常、ヘプタンなどの液体とのスラリーで、または流動床形態で触媒との気相で行われる。HDPEの密度は、通常0.930~0.970g/cmの範囲である。
【0026】
中密度ポリエチレン(MDPE)は、HDPEのバリエーションであり、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテンなどの1-アルケンとの共重合によっていくつかの短い分岐が導入される。MDPEの密度は、通常0.926~0.940g/cmの範囲である。
【0027】
HDPEとMDPEは、LDPEよりもニュートンレオロジーを示すため、押出加工にはあまり適していない。HDPEとMDPEは、LDPEよりも結晶性が高いため、引張強度が高くなるが、多くの用途では衝撃強度が不足する可能性がある。
【0028】
線状低密度ポリエチレン(LLDPE)は、エチレンと1-アルケン、典型的に1-ブテン、1-ヘキセン、または1-オクテンの共重合体であるが、4-メチル-1-ペンテンなどの分岐アルケンも使用される。これらのポリマーは、0.918~0.940g/cmの範囲の密度を持ち、2~7重量%の1-アルケンを含んでいる。HDPEと同様に、これらは、気相またはスラリープロセスのいずれかでチーグラー・ナッタなどのマルチサイト触媒を使用して重合される。コモノマー組成は通常広い分布を持っているため、一部の分子には分岐がほとんどなく、他の分子には多くの分岐がある。この分布は、LLDPEの広い溶融温度範囲に反映されている。LLDPEの特性は、LDPEとHDPEの特性の間にある傾向がある。それらは短い分岐を持っているが、長い分岐を持っていないので、結晶化に依存する機械的特性は改善されるが、処理レオロジー特性はLDPEのものより劣る。
【0029】
当業者は、LDPEが、押出コーティングプロセス中のそのひずみ硬化挙動のために、最も低いピンホール感度を示すことを期待するであろう。この挙動は、フィルムの欠陥によるピンホール形成からコーティングを保護するだけでなく、繊維(ファイバー)ベースの基材の不均一性によるコーティングを保護することが期待される。驚くべきことに、本発明者は、HDPE、MDPEまたはLLDPEをLDPE中に導入することにより、ピンホール形成を大幅に低減でき、したがって、紙または板紙の第1の押出コーティング層に必要な最小コーティング量を低減できることを発見した。
【0030】
いくつかの実施形態では、ポリマーコーティングは、第1のコーティング層および第2のコーティング層以外のさらなるコーティング層を含まない、すなわち、ポリマーコーティングは、第1のコーティング層および第2のコーティング層からなる。いくつかの実施形態では、ポリマーコーティングは、第1のコーティング層および第2のコーティング層に加えて、1つまたは複数のさらなるコーティング層を含む。
【0031】
いくつかの実施形態では、第1のコーティング層は、以下のブレンドから本質的になる:
1~49重量%の、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)または線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、またはそれらの混合物、および
51~99重量%の低密度ポリエチレン(LDPE)。
【0032】
いくつかの実施形態では、第1のコーティング層は、以下のブレンドから本質的になる:
1~39重量%、例えば1~29重量%、例えば1~19重量%の、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、または線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、またはそれらの混合物、および
61~99重量%、例えば71~99重量%、例えば81~99重量%の、低密度ポリエチレン(LDPE)。
【0033】
本明細書で使用される場合、「本質的になる」という表現は、コーティング層が、少なくとも95重量%、好ましくは少なくとも98重量%の問題の成分からなることを意味する。残りの部分は、他のポリマーまたは添加剤であり得る。
【0034】
コーティング樹脂の配合は、コーティングの使用目的およびコート紙または板紙によって大きく異なる場合がある。コーティング組成物は、製品の最終性能またはコーティングの処理を改善するために、様々な量の広範囲の成分を含み得る。いくつかの実施形態では、PEコーティングは、PE以外のポリマー、顔料(例えば、TiOまたはカーボンブラック)、染料、および充填剤(例えば、CaCO、タルク)からなる群から選択される少なくとも1つの追加の成分を含む。
【0035】
いくつかの実施形態では、第1のコーティング層は、紙または板紙の表面上への押出コーティングによって形成される。押出コーティングされたPEブレンドコーティング層は、その後に塗布または共押出されたポリマーコーティング層の接着を促進するのに役立つ可能性がある。押出コーティングされたPEブレンド層は、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)から本質的になる、その後に塗布または共押出された第2のコーティング層の接着を促進するのに役立つ可能性がある。
【0036】
いくつかの実施形態では、第2のコーティング層は、第1のコーティング層上への押出コーティングによって形成される。好ましくは、第1のコーティング層および第2のコーティング層は、共押出コーティングによって同時に形成される。
【0037】
本発明の第1のコーティング層で使用されるPEブレンドは、フィルム形成の改善された安定性を持ち、12g/m未満の坪量などのPEの低い総坪量での紙または板紙へのPEコーティングの接着を持つ、コート紙または板紙の製造を可能にする。
【0038】
第1のコーティング層および第2のコーティング層は、12g/m未満の合計坪量を有する。好ましくは、第1のコーティング層および第2のコーティング層は、5~12g/mの範囲の合計坪量を有する。いくつかの実施形態では、第1のコーティング層および第2のコーティング層は、10g/m未満、例えば5~10g/mの範囲、好ましくは8g/m未満、例えば5~8g/mの範囲の合計坪量を有する。
【0039】
いくつかの実施形態では、第1のコーティング層は、5g/m未満、例えば1~5g/mの範囲、好ましくは4g/m未満、例えば1~4g/mの範囲、より好ましくは3g/m未満、例えば1~3g/mの範囲の坪量を有する。
【0040】
いくつかの実施形態では、第2のコーティング層は、10g/m未満、例えば4~10g/mの範囲、好ましくは8g/m未満、例えば4~8g/mの範囲、より好ましくは6g/m未満、例えば4~6g/mの範囲の坪量を有する。
【0041】
第1のコーティング層は、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)または線状低密度ポリエチレン(LLDPE)のブレンド、またはそれらの混合物、および低密度ポリエチレン(LDPE)を含む。HDPEの密度は0.930~0.940g/cmの範囲、MDPEの密度は0.926~0.940g/cmの範囲、LLDPEの密度は0.918~0.940g/cmの範囲である。LDPEの密度は0.910~0.940g/cmの範囲である。
【0042】
いくつかの実施形態では、第1のコーティング層は、MDPEとLDPEのブレンドを含む。MDPEは、好ましくは、より高次のアルファオレフィン分岐、好ましくはオクテンを含む。
【0043】
いくつかの実施形態では、第2のコーティング層は、第1のコーティング層よりも低い密度を有する。
【0044】
いくつかの実施形態では、第2のコーティング層は、ポリマーコーティングの最上層である。
【0045】
いくつかの実施形態では、ポリマーコーティングは、同じ総坪量を有するLDPEコーティングよりも、紙または板紙の表面に対してより良好な接着性を有する。
【0046】
本発明の紙または板紙は、密封された紙または板紙製品、例えば防水紙コップの製造において特に有用である。本明細書に示される第2の態様によれば、本明細書に記載される第1の態様による紙または板紙を含む密封された紙または板紙製品が提供される。好ましい実施形態では、製品は紙コップである。
【0047】
本明細書に示される第3の態様によれば、下記の方法が提供される:
ポリエチレン(PE)コート紙または板紙基材を製造する方法であって、以下を含む方法:
a)紙または板紙の基材を提供する、
b)溶融された第1のポリマー樹脂の少なくとも1つの層を、押出コーティングによって前記基材の表面に塗布して、第1のポリマーコーティング層を形成し、前記第1のポリマー樹脂は、以下のブレンドを含む:
高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)または線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、またはそれらの混合物、および
低密度ポリエチレン(LDPE)、
c)溶融された第2のポリマー樹脂の少なくとも1つの層を、押出コーティングによって前記第1のポリマーコーティング層の表面に塗布して、第2のポリマーコーティング層を形成し、前記第2のポリマー樹脂は、低密度ポリエチレン(LDPE)から本質的になる、
d)第1のコーティング層および第2のコーティング層を冷却して固化させる、及び
e)PEコート紙または板紙基材を回収する。
【0048】
第3の態様の第1のコーティング層および第2のコーティング層は、第1の態様を参照して上記のようにさらに定義することができる。
【0049】
いくつかの実施形態では、第1のコーティング層および第2のコーティング層は、共押出コーティングによって同時に形成される。
【0050】
いくつかの実施形態では、この方法は、第1のコーティング層および第2のコーティング層以外にさらなるコーティング層を適用することを含まない、すなわち、ポリマーコーティング、形成されたPEコート基材は、第1のコーティング層および第2のコーティング層からなる。他の実施形態では、この方法は、第1のコーティング層および第2のコーティング層に加えて、1つまたは複数のさらなるコーティング層を適用することを含む。
【0051】
本発明は様々な例示的な実施形態を参照して説明されてきたが、当業者は、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更を加え、その要素を同等物に置き換えることができることを理解する。さらに、その本質的な範囲から逸脱することなく、特定の状況または材料を本発明の教示に適合させるために多くの修正を行うことができる。したがって、本発明は、本発明を実施するために企図される最良の様式として開示される特定の実施形態に限定されないが、本発明は、添付の特許請求の範囲に含まれるすべての実施形態を含むことが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図面の簡単な記述
図1図1は、約11g/mのピンホール限界でのコーティング構造1のコーティング層の厚さを示す光学顕微鏡写真である。光学顕微鏡写真の倍率は400倍である。
図2図2は、減少するコーティング重量の関数としてのコーティング構造1の接着特性を示す図である。
図3図3は、減少するコーティング重量の関数としてのコーティング構造1のピンホール特性を示す図である。
図4図4は、コーティング重量約10g/mのピンホール限界でのコーティング構造2のコーティング層の厚さを示す光学顕微鏡写真(400倍)である。
図5図5は、減少するコーティング重量の関数としてのコーティング構造2の接着特性を示す図である。
図6図6は、減少するコーティング重量の関数としてのコーティング構造2のピンホール特性を示す図である。
図7図7は、コーティング重量約5.5g/mのピンホール限界でのコーティング構造3のコーティング層の厚さを示す光学顕微鏡写真(400倍)である。
図8図8は、減少するコーティング重量の関数としてのコーティング構造3の接着特性を示す図である。
図9図9は、減少するコーティング重量の関数としてのコーティング構造3のピンホール特性を示す図である。
図10図10は、コーティング重量約9g/mのピンホール限界でのコーティング構造4のコーティング層の厚さを示す光学顕微鏡写真(400倍)である。
図11図11は、減少するコーティング重量の関数としてのコーティング構造4の接着特性を示す図である。
図12図12は、減少するコーティング重量の関数としてのコーティング構造4のピンホール特性を示す図である。
図13図13は、コーティング重量約12g/mのピンホール限界でのコーティング構造5のコーティング層の厚さを示す光学顕微鏡写真(400倍)である。
図14図14は、減少するコーティング重量の関数としてのコーティング構造5の接着特性を示す図である。
図15図15は、減少するコーティング重量の関数としてのコーティング構造5のピンホール特性を示す図である。
【0053】

次に、同じタイプの板紙(Cupforma Natura 195 gsm, Stora Enso Oy)上に、同じ押出コーティング装置及び同じ最適化された処理パラメータの設定を使用して押出コーティングした、5つの異なる低密度ポリエチレン(LDPE)ベースのコーティング構造を使用して本発明を説明する。MDPE / DOWLEX 2062GC(密度939kg/m)の添加が、分岐LDPEグレード(Borealis CA7230、密度923kg/m)のコーティング特性に及ぼす影響を、混合実験によって検討した。PEベースのコーティング構造のドローダウン特性は、ポリマーカーテンが崩壊するまでライン速度を上げながら押出コーティングを評価した。コーティング特性は、層の厚さ(コーティング重量、すなわち坪量)の関数として測定された。
【0054】
以下の実施例1~5の押出コーティング手順では、2つの一軸スクリュー押出機(1および2)を有し、典型的なチルおよびニップロール配置を有するパイロットライン構成が使用された。リップヒーター、インナーデッキル、カプセル化システムを備えた従来のワイドテーパーランドダイが使用された。押出コーティングされた構造のコーティング重量(坪量)は、標準EN ISO536に従って測定された。各ライン速度で5つの並列測定が行われた。コーティングされた板紙サンプル上の実際の膜厚は、Axioskop 40偏光顕微鏡(Carl Zeiss Light Microscopy、ドイツ)で測定された。
【0055】
板紙基材へのコーティングされたポリマー層の接着は、手動コーティング剥離評価法を使用して評価された。基材上のコーティングされたフィルム層中にX字がカットされ、次にコーティングフィルムが機械および横方向に剥離される。繊維が基材から引き裂かれた場合、引き裂かれた繊維の量を決定することによって接着性を評価することができる。引き裂かれた繊維で覆われた剥離フィルムのコーティング表面積のサイズは、接着値の視覚的尺度である。剥離したコーティング上に繊維が付着していない場合、コーティングは基材上に接着していない、つまり、接着値は1である。剥離したコーティング表面を覆っている基材繊維が少ない場合、接着値は2である。剥離したコーティング領域の50%未満が破れた基材繊維で覆われている場合、接着値は3である。剥離したコーティング領域の50%超が破れた基材繊維で覆われている場合、接着値は4である。剥離したコーティングが破れた繊維で完全に(100%)覆われている場合、接着力は5である。コーティングがすべて基材に付着していない場合、つまりコーティングが緩んでいる場合、接着値はゼロ(0)である。
【0056】
コーティング構造のピンホールの量は、次のように着色テレビン油溶液浸透法を使用して測定された:
-ピンホール溶液の成分:1)溶媒としてのテレビン油(L-テレビン油)、2)赤色着色剤としてのスーダンIII(スーダンG)(1%)、3)無水塩化カルシウム(5%)。
-着色されたテレビン油溶液は、ポリマーでコーティングされたボール紙上にブラシで塗布された。
-溶液を表面に10分間保持し、コーティング中の可能なピンホールを貫通して乾燥させた。
-コーティングされた構造の反対側の表面積100cm上のピンホールの数が計算され、結果としてマークされた。
-3つの並行測定が行われ、そのすべてで、ピンホールがないことを証明するために、問題の坪量でピンホールがないことを示す必要があった。
【0057】
例1-最上層および接着層としてのLDPE(比較例)
第1のコーティング層(1)として低密度ポリエチレン(LDPE、Borealis CA7230)と、第2のコーティング層(2)として同じ低密度ポリエチレン(LDPE)とからなるコーティング構造1を、固定処理パラメータ設定を使用して、板紙(Cupforma Natura 195 gsm, Stora Enso Oy)上に、共押出コーティングした。第2のコーティング層(2)は、コーティング構造の最上層であった。
【0058】
コーティング構造1で得られる最小のコーティング重量は7g/mであった(図2を参照)。
【0059】
接着強度は、最低コーティング重量である7g/mまで完全であった(値5)。
【0060】
コーティング重量が約11g/mを下回ると、コーティング構造1にピンホールが現れ始めた(図3を参照)。その場合、第1のコーティング層および第2のコーティング層の厚さはそれぞれ6.2および4.1μmであった(図1を参照)。ピンホール限界でのドローダウン比(DDR)は54であった。
【0061】
例2-最上層としてのMDPE/LDPEブレンド、および接着層としてのLDPE
第1のコーティング層(1)として低密度ポリエチレン(LDPE、Borealis CA7230)と、第2のコーティング層(2)として同じ低密度ポリエチレン(LDPE)と中密度ポリエチレン(MDPE、DOWLEX 2062GC)のブレンドとで構成されるコーティング構造2は、固定処理パラメーター設定を使用して、板紙(Cupforma Natura 195 gsm, Stora Enso Oy)上に、共押出コーティングされた。ブレンドは、80重量%のLDPEと20重量%のMDPEで構成されていた。第2のコーティング層(2)は、コーティング構造の最上層であった。
【0062】
コーティング構造2で得られる最小のコーティング重量は6.5g/mであった(図5を参照)。
【0063】
接着強度は、最小コーティング重量6.5g/mまで完全であった(値5)。
【0064】
コーティング重量が約10g/mを下回ると、コーティング構造2にピンホールが現れ始めた(図6を参照)。その場合、第1のコーティング層および第2のコーティング層の厚さはそれぞれ6.0および4.3μmであった(図4を参照)。ピンホール限界でのドローダウン比(DDR)は57であった。
【0065】
例3-最上層としてのLDPEおよび接着層としてのMDPE/LDPEブレンド
第1のコーティング層(1)として中密度ポリエチレン(MDPE、DOWLEX 2062GC)と低密度ポリエチレン(LDPE、Borealis CA7230)のブレンドと、第2のコーティング層(2)として同じ低密度ポリエチレン(LDPE)とで構成されているコーティング構造3は、固定処理パラメーター設定を使用して、板紙(Cupforma Natura 195 gsm, Stora Enso Oy)上に、共押出コーティングされた。ブレンドは、80重量%のLDPEと20重量%のMDPEで構成されていた。第2のコーティング層(2)は、コーティング構造中の最上層であった。
【0066】
コーティング構造2で得られる最小のコーティング重量は3.8g/mであった(図8を参照)。
【0067】
接着強度は、最小コーティング重量3.8g/mまで完全であった(値5)。
【0068】
コーティング重量が約5.5g/mを下回ると、コーティング構造3にピンホールが現れ始めた(図9を参照)。その場合、第1のコーティング層および第2のコーティング層の厚さはそれぞれ3.4および2.8μmであった(図7を参照)。ピンホール限界でのドローダウン比(DDR)は103であった。
【0069】
例4-最上層および接着層としてのMDPE/LDPEブレンド
第1のコーティング層(1)として中密度ポリエチレン(MDPE、DOWLEX 2062GC)と低密度ポリエチレン(LDPE、Borealis CA7230)のブレンドと、第2のコーティング層(2)として中密度ポリエチレン(MDPE)と低密度ポリエチレン(LDPE)の同じブレンドとからなるコーティング構造4は、固定処理パラメーター設定を使用して、板紙(Cupforma Natura 195 gsm, Stora Enso Oy)上に、共押出コーティングされた。ブレンドは、80重量%のLDPEと20重量%のMDPEで構成されていた。第2のコーティング層(2)は、コーティング構造の最上層であった。
【0070】
コーティング構造2で得られる最小のコーティング重量は4.8g/mであった(図11を参照)。
【0071】
接着強度は、最小コーティング重量4.8g/mまで完全であった(値5)。
【0072】
コーティング重量が約9.0g/mを下回ると、コーティング構造4にピンホールが現れ始めた(図12を参照)。その場合、第1のコーティング層および第2のコーティング層の厚さはそれぞれ5.2および4.7μmであった(図10を参照)。ピンホール限界でのドローダウン比(DDR)は65であった。
【0073】
例5-LDPE単層(比較例)
単一のコーティング層として低密度ポリエチレン(LDPE、Borealis CA7230)のみからなるコーティング構造5を、固定処理パラメーター設定を使用して板紙(Cupforma Natura 195 gsm, Stora Enso Oy)上に、押出コーティングした。
【0074】
コーティング構造1で得られる最小のコーティング重量は3.6g/mであった(図14を参照)。
【0075】
接着強度は、最小コーティング重量3.6g/mまで完全であった(値5)。
【0076】
コーティング重量が約12g/mを下回ると、コーティング構造1にピンホールが現れ始めた(図15を参照)。その場合、第1のコーティング層および第2のコーティング層の厚さは11.9μmであった(図13を参照)。ピンホール限界でのドローダウン比(DDR)は49であった。
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15