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特許7565920仮想境界の患者固有のモーフィングのための技術
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】仮想境界の患者固有のモーフィングのための技術
(51)【国際特許分類】
   A61B 34/30 20160101AFI20241004BHJP
   A61B 34/20 20160101ALI20241004BHJP
【FI】
A61B34/30
A61B34/20
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021533678
(86)(22)【出願日】2019-12-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-18
(86)【国際出願番号】 US2019065985
(87)【国際公開番号】W WO2020123808
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2022-12-07
(31)【優先権主張番号】62/779,191
(32)【優先日】2018-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】507280594
【氏名又は名称】マコ サージカル コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(72)【発明者】
【氏名】ベッカー,ハンス・ウルリッヒ
(72)【発明者】
【氏名】ロースラー,パトリック
(72)【発明者】
【氏名】モクテスマ・デラ・バレラ,ホセ・ルイス
【審査官】北村 龍平
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-510310(JP,A)
【文献】特表2016-505328(JP,A)
【文献】特開2018-108439(JP,A)
【文献】特表2017-500964(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 34/00 - 34/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科システムであって、
外科用器具と、
一般仮想境界を、仮想解剖学的構造モデルの患者固有の仮想境界であって、前記外科用器具の移動及び/又は動作を制約するために用いられる患者固有の仮想境界にモーフィングするように構成された1つまたは複数のコントローラと、
を含み、
前記1つまたは複数のコントローラは、
前記一般仮想境界が前記仮想解剖学的構造モデルと交差するように、前記仮想解剖学的構造モデルに対して前記一般仮想境界を配置することであって、前記一般仮想境界の形状がインプラントモデルに基づくものである、前記一般仮想境界を配置すること、
前記一般仮想境界と前記仮想解剖学的構造モデルとの交差を計算して前記仮想解剖学的構造モデルの断面輪郭を定めること、
前記断面輪郭からオフセット距離だけ第1のオフセット表面を拡張することであって、第1のオフセット表面は、前記断面輪郭からオフセット距離だけ離隔したオフセット輪郭を有する、第1のオフセット表面を拡張すること、
オフセット輪郭に沿って平面プロファイル形状を生成して前記のオフセット表面に直交する第のオフセット表面を生成すること、及び、
前記一般仮想境界の一部を前記第1のオフセット表面及び前記第2のオフセット表面とマージすることによって前記患者固有の仮想境界を生成すること、
を行うように構成されている、
外科システム。
【請求項2】
前記オフセット距離は、前記外科用器具の幾何学的特徴から導出され、
前記幾何学的特徴が球形のバーであり、前記オフセット距離が前記球形のバーの半径を含む、請求項に記載の外科システム。
【請求項3】
前記1つまたは複数のコントローラは、前記第2のオフセット表面にモーフィングされて前記第2のオフセット表面に一致するエッジと、対向する前記一般仮想境界のエッジとをそれぞれが有する複数の線織面を生成するように構成されている、請求項に記載の外科システム。
【請求項4】
前記外科用器具および身体的解剖学的構造を追跡するように構成されたローカライザをさらに含み、
前記1つまたは複数のコントローラは、
前記仮想解剖学的構造モデル及び前記患者固有の仮想境界を身体的解剖学的構造に登録すること、及び、
前記外科用器具が前記患者固有の仮想境界を逸脱しないように制約すること、
を行うように構成されている、請求項に記載の外科システム。
【請求項5】
1つまたは複数のプロセッサによって実行されると、一般仮想境界を、仮想解剖学的構造モデルの患者固有の仮想境界であって、外科用器具の移動及び/又は動作を制約するために用いられる患者固有の仮想境界にモーフィングするように構成されたソフトウェアプログラムを実行する命令を含む非一時的なコンピュータ可読媒体であって、
前記命令は、1つまたは複数のプロセッサによって実行されると、前記ソフトウェアプログラムを実行して、
前記一般仮想境界が前記仮想解剖学的構造モデルと交差するように、前記仮想解剖学的構造モデルに対して前記一般仮想境界を配置することであって、前記一般仮想境界の形状がインプラントモデルに基づくものである、前記一般仮想境界を配置すること、
前記一般仮想境界と前記仮想解剖学的構造モデルとの交差を計算して前記仮想解剖学的構造モデルの断面輪郭を定めること、
前記断面輪郭からオフセット距離だけ第1のオフセット表面を拡張することであって、第1のオフセット表面は、前記断面輪郭からオフセット距離だけ離隔したオフセット輪郭を有する、第1のオフセット表面を拡張すること、
オフセット輪郭に沿って平面プロファイル形状を生成して前記のオフセット表面に直交する第のオフセット表面を生成すること、及び、
前記一般仮想境界の一部を前記第1のオフセット表面及び前記第2のオフセット表面とマージすることによって前記患者固有の仮想境界を生成すること、
を行う、非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項6】
前記命令は、1つまたは複数のプロセッサによって実行されると、前記ソフトウェアプログラムを実行して、前記外科用器具の幾何学的特徴から導出される前記オフセット距離だけ前記断面輪郭から前記第1のオフセット表面を拡張する、請求項に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項7】
前記命令は、1つまたは複数のプロセッサによって実行されると、前記ソフトウェアプログラムを実行して、球形のバーの半径から導出される前記オフセット距離だけ前記断面輪郭から前記第1のオフセット表面を拡張する、請求項に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項8】
前記命令は、1つまたは複数のプロセッサによって実行されると、前記ソフトウェアプログラムを実行して、前記第2のオフセット表面にモーフィングされて前記第2のオフセット表面に一致するエッジと、対向する前記一般仮想境界のエッジとをそれぞれが有する複数の線織面を生成する、請求項に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項9】
前記命令は、1つまたは複数のプロセッサによって実行されると、前記ソフトウェアプログラムを実行して、前記仮想解剖学的構造モデル及び前記患者固有の仮想境界を身体的解剖学的構造に登録する、請求項に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2018年12月13日に出願された米国仮特許出願第62/779,191号の優先権及びすべての利益を主張するものであり、その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、外科システム用の患者固有の仮想境界を生成するための技術に関する。
【0003】
ロボットシステムは、外科的処置を実行するために一般的に使用され、通常、ロボットアームと、ロボットアームに結合されたエンドエフェクタとを含むロボットを含む。多くの場合、エンドエフェクタは、遠位端にミリングバーが結合されたシャフトを含む。
【0004】
手動の操作モードにおいて、ロボットシステムは、ユーザがエンドエフェクタに手動で加えた力/トルクを感知する。ロボットシステムは、感知された力/トルクの適用から予想される動きをエミュレートするように、エンドエフェクタの位置決めを命令する。自律モードにおいて、ロボットシステムは、ロボットアームに命令して、エンドエフェクタをコンピュータで定められたミリング経路に沿って、少なくとも部分的にユーザの補助なしに移動させる。どちらのモードにおいても、光学的位置特定などの補足的な追跡システムを利用して、ロボット及び手術部位の位置を追跡することができる。
【0005】
人工膝関節全置換術または部分膝関節形成術では、罹患した骨組織をミリングまたは切断し、罹患した骨を身体的インプラントに置換する。従来の技術では、処置を計画するために、仮想インプラントモデル(身体的インプラントに対応)が術前に選択されている。仮想インプラントモデルは、インプラント固有の(患者固有ではない)形状を定める。言い換えれば、仮想インプラントモデルは、一般的なものである。
【0006】
仮想インプラントモデルは、一般仮想境界または制約を定めるために使用される。インプラントモデルのそれぞれには、インプラントが計画されている患者に関係なく、すべてに適合する1つのサイズの「インプラント固有の」一般的な境界が存在する。このため、インプラント固有の仮想境界は、許容される最悪の場合の配置(つまり、可能性のある最大量で骨を除去する場合の配置)用に設計する必要がある。したがって、従来の仮想境界は患者固有のものではない。
【0007】
このことは、インプラントがアンレー/オーバーハングタイプであり、インプラントが骨の上部に配置され(骨のくぼみに配置されない)、部分的に骨の端にかかる状況において特に顕著な問題になる。このような状況では、隣接する軟組織がオーバーハング領域を取り囲み、ミリングが特に困難になる。一般仮想境界は、「最悪の場合」に合わせて設計されており、患者固有のものではないため、バーが、一般仮想境界を離れることなく、偶発的に軟組織領域に入り込む可能性がある。この問題を軽減するため、外科医は、従来、軟組織を切らないように目視のみで確認しており、したがって、手動によるエラーの可能性が生じている。
【0008】
脛骨が近い状態で大腿骨後部の膝の解剖学的構造を機械処理する場合など、アクセスが制限された領域で機械処理を行おうとする場合、最悪の場合を考慮した計画では、必要以上に大腿骨の骨が除去されてしまう可能性がある。また、エアカットは、エンドエフェクタのシャフトが近くの脛骨に衝突する可能性が高くなるおそれがある。
【0009】
また、従来の技術では、術前のインプラント計画及び仮想境界の術前の生成に限定されており、術中にそれらに対して修正を行うための柔軟性がほとんど提供されていない。また、従来の技術では、骨モデルを生成して仮想境界を計算するために、かなりの計算時間が必要である。外科手術中は、時間が重要であり、手術計画の更新の計算を待つためにワークフローを延長することはできない。このように、従来の技術は、計算のために大幅な遅延を必要とせずに計画を迅速に更新できる解決策を提供することができず、術中のワークフローにも適切に適応することができない。
【0010】
したがって、当技術分野では、少なくとも前述の問題に対処するためのシステム及び方法が求められている。
【発明の概要】
【0011】
本概要は、以下の発明を実施するための形態でさらに説明される概念の一部を簡略化した形で紹介する。本概要は、特許請求の範囲に記載された発明の主題の範囲を限定したり、特許請求の範囲に記載された発明の主題の重要な特徴または本質的な特徴を特定したりすることを意図するものではない。
【0012】
一般仮想境界を解剖学的構造モデルの患者固有の仮想境界にモーフィングするための方法の一例が開示されている。一般仮想境界は、1つまたは複数のモーフィング可能な面を含む。この方法は、一般仮想境界と解剖学的構造モデルとを交差させて、解剖学的構造モデルの断面輪郭を定めることを含む。一般仮想境界の1つまたは複数の面は、断面輪郭に一致するようにモーフィングされ、患者固有の仮想境界が生成される。
【0013】
一例として、非一時的なコンピュータ可読媒体が提供される。非一時的なコンピュータ可読媒体は、1つまたは複数のプロセッサによって実行可能な命令を含む。命令は、実行されると、解剖学的構造モデルの患者固有の仮想境界を生成するためのソフトウェアプログラムを実行する。ソフトウェアプログラムは、一般仮想境界と解剖学的構造モデルとの交差を計算して解剖学的構造モデルの断面輪郭を定め、断面輪郭に一致するように一般仮想境界の1つまたは複数の面をモーフィングして、患者固有の仮想境界を生成するように構成される。
【0014】
また、外科用システムも提供される。外科用システムは、外科用器具と、一般仮想境界を解剖学的構造モデルの患者固有の仮想境界にモーフィングするように構成された1つまたは複数のコントローラとを含む。一般仮想境界は、1つまたは複数のモーフィング可能な面を含む。1つまたは複数のコントローラは、一般仮想境界と解剖学的構造モデルとの交差を計算して解剖学的構造モデルの断面輪郭を定めるように構成されている。1つまたは複数のコントローラは、一般仮想境界の1つまたは複数の面を断面輪郭に一致するようにモーフィングして、患者固有の仮想境界を生成する。
【0015】
解剖学的構造モデルの仮想境界を生成する方法の一例が提供される。この方法は、解剖学的構造モデルの外周を特定すること、及び、前記外周の輪郭に沿うと共に外科用器具の幾何学的特徴を考慮したオフセット距離だけ前記外周から離隔したエッジを含む仮想境界を生成することを含む。
【0016】
本明細書に記載の例のいずれかの患者固有の仮想境界に対して外科システムの器具を操作するための方法がさらに提供される。
【0017】
前記システム、前記方法及び前記ソフトウェアプログラムは、従来のミリングの計画と実行に関連するいくつかの技術的な問題に対する技術的な解決策を提供する。
【0018】
本明細書に記載の技術は、解剖学的構造モデルの特徴に一致するように一般仮想境界をモーフィングすることを可能にする。よって、一般的な制約が患者固有の制約になる。
【0019】
さらに、本明細書に記載の技術は、術中またはオンザフライ(on-the-fly)での計画及び患者固有の仮想境界の生成を可能にする。このため、例えば、外科医が術前のインプラント計画に満足していない場合、または予期しない状況が生じた場合、外科医は、術中にインプラントの位置を自由に更新することができる。ソフトウェアを使用することで、システムは、前述のモーフィングをオンザフライで実行することができる。制約モーフィング技術は、手術室での使用に適しており、計算に大幅な遅延を必要とせずに計画を迅速に更新できる解決策を提供する。更新された仮想境界を含む、更新された患者固有の計画を術中に迅速に生成することができる。本明細書に記載の技術は、そのような利点を術前に提供することもできる。
【0020】
本明細書に記載の技術を用いることで、患者固有に定められた仮想境界に対するミリングは、周囲の組織に影響を与えることなく、硬組織(例えば、骨)に制約されるようになる。これらの理由により、前記システム、前記方法及び前記ソフトウェアプログラムは、真に「患者固有の」解決策を提供する。
【0021】
この改善されたアプローチにより、患者固有の仮想境界に基づいた様々なミリングの処置を高い精度で実行することができる。例えば、インレータイプのインプラント(すなわち、骨の切除されたポケットに挿入され、骨の縁に囲まれるインプラント)の挿入のためだけではなく、アンレー/オーバーハングタイプのインプラントの挿入のためのミリングが可能である。仮想境界は、周囲の軟組織を維持することができるように、オーバーハング領域を考慮してカスタマイズされる。患者固有の仮想境界は、器具の操作の手動モードと自律モードの両方でこれらの利点を提供できる。
【0022】
さらに、本明細書に記載の技術は、エンドエフェクタのシャフトと骨との間の衝突の可能性を低減する。例えば、ミリングが大腿骨で行われる場合、必要最小限の量の大腿骨のみが除去されるため、シャフトと脛骨との衝突が回避され、したがって、一般仮想境界で起こり得る近くの脛骨との相互作用を回避することができる。
【0023】
前記システム、前記方法及び前記ソフトウェアプログラムは、本明細書に記載されている利点以外の利点を示し、及び本明細書に記載されている技術的解決策以外の技術的解決策を提供し得る。
【0024】
本発明の他の態様、特徴及び利点は、詳細な説明、添付の特許請求の範囲及び同様の参照番号が類似または同一の要素を示す添付の図面から、より一層明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本明細書に記載の患者固有の制約モーフィング技術を採用するロボット外科システムの一例を示す図である。
図2】本明細書に記載の患者固有の制約モーフィング技術を実行するように構成されたソフトウェアプログラムを含む、ロボット外科システムの1つまたは複数のコントローラの例示的な構成を示す図である。
図3】一般仮想境界と関連付けられた遠位脛骨関節形成術のインプラントモデルの一例を示す図である。
図4】脛骨の解剖学的構造モデルに対して配置された一般仮想境界を示す図である。
図5】外科用器具を制約するためのより大きな許容体積部の構成要素としての一般仮想境界を示す図である。
図6】患者固有の仮想境界を定めるのを促進する、一般仮想境界に関する解剖学的構造モデルの断面輪郭の定義を示す図である。
図7】断面輪郭をさらに利用して、本明細書に記載の技術に従ってモーフィングされる一般仮想境界の面を定める、図6の図である。
図8】一般仮想境界及び図7の断面輪郭の一部を上から見た図である。
図9図4の一般仮想境界をモーフィングすることから導出される患者固有の仮想境界を示す図であり、患者固有の仮想境界の一部は、解剖学的構造モデルに適合するように設計されている。
図10】モーフィングされ、患者固有の仮想境界のオフセットバージョンの構成要素であるオフセット表面の一例を示す図である。
図11】一例による、患者固有の仮想境界のオフセットバージョンをさらに定めるために、追加の表面(線織面)と組み合わされた、図10のオフセット表面を示す図である。
図12】一例による、一般仮想境界からのモーフィングされていない部分、移行面、パッチ表面、及びオフセットされた患者固有の仮想境界を定めるためのより大きな許容体積部の一部などの他の仮想の制約的オブジェクトと組み合わされた、図11の表面を示している。
図13】オフセットされた患者固有の仮想境界の例の断面図である。
図14】オフセットされた患者固有の仮想境界の例の断面図であり。
図15】オフセットされた患者固有の仮想境界の例の断面図である。
図16】オフセットされた患者固有の仮想境界の例の断面図である。
図17】外科用器具を制約するためのより大きな許容体積部の構成要素としての患者固有の仮想境界またはオフセットされた患者固有の境界を示す図である。
図18図12または17のオフセットされた患者固有の仮想境界を利用する手術計画に従って、身体的解剖学的構造(脛骨)の一部をミリングした例示的な結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
I.ロボット外科システムの概要
図1及び図2を参照すると、ロボット外科システム10(以下、「システム」という)及びその構成要素が示されている。ここで、複数の図において、同じ数字は、同じまたは対応する部分を示している。さらに、命令を含む非一時的なコンピュータ可読媒体が提供されており、この命令は、1つまたは複数のプロセッサによって実行されると、ロボット外科システム10のためのソフトウェアプログラムを実行すると共にソフトウェアプログラムを使用するための方法を実行する。ソフトウェアプログラム及び方法の態様については、以下の後続のセクションで説明する。
【0027】
図1に示されるように、システム10は、骨または軟組織などの患者12の手術部位または解剖学的体積部(A)を処置(治療)するためのロボット外科システムである。図1において、患者12は外科的処置を受けている。図1における解剖学的構造は、患者12の大腿骨(F)及び脛骨(T)を含む。外科的処置には、組織の除去または治療が含まれる場合がある。治療は、組織の切断、凝固、損傷、組織の代替での処置などを含み得る。いくつかの例において、外科的処置は、部分的または全体的な膝関節置換術または股関節置換術を伴う。一例において、システム10は、ユニコンパートメント、バイコンパートメント、マルチコンパートメント、または全膝インプラントを含む、股関節インプラントや膝インプラントなどの外科用インプラントで置換される患部を切除するように設計されている。これらのタイプのインプラントのいくつかは、「Prosthetic Implant and Method of Implantation」と題された米国特許出願公開第2012/0030429号に示され、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。本明細書に開示されるシステム10及び技術は、他の外科的処置または非外科的処置を実行するために使用され得るか、またはロボットシステムが利用される産業用途または他の用途において使用され得る。
【0028】
システム10は、マニピュレータ14を含む。マニピュレータ14は、ベース16及び複数のリンク18を有する。マニピュレータカート17は、マニピュレータ14が固定されてマニピュレータ14を支持する。リンク18は、集合的にマニピュレータ14の1つまたは複数のアームを形成する。マニピュレータ14は、シリアルアーム構成(図1に示されるような)、パラレルアーム構成、または任意の他の適切なマニピュレータ構成を有し得る。他の例では、複数のアームの構成で複数のマニピュレータ14を利用することができる。
【0029】
図1に示す例において、マニピュレータ14は、複数の関節(J)と、関節(J)の位置データを特定するために関節(J)に配置された複数の関節エンコーダ19とを含む。ここでは簡略化のため、1つの関節エンコーダ19のみが図1に示されているが、他の関節エンコーダ19も同様に示され得る。一例によるマニピュレータ14は、マニピュレータ14のために少なくとも6自由度(DOF)を実現する6つの関節(J1~J6)を有している。しかし、マニピュレータ14は、任意の数の自由度を有することができ、任意の適切な数の関節(J)及び冗長関節(J)を有し得る。
【0030】
マニピュレータ14は、必ずしも「関節(joint)」エンコーダ19を必要とするものではなく、代替的または追加的にモータエンコーダを利用してもよい。また、マニピュレータ14は、必ずしも回転式の関節を必要とするものではなく、代替的または追加的に1つまたは複数のプリズム関節を利用してもよい。
【0031】
マニピュレータ14のベース16は、一般的に、使用中に動かない(静止している)マニピュレータ14の一部であり、それによって、マニピュレータ14の他の構成要素またはシステム10全体に対して、固定された基準座標系(すなわち、仮想のゼロポーズ)を提供する。一般に、マニピュレータ座標系MNPLの原点は、ベース16の固定された基準に定められる。ベース16は、1つまたは複数のリンク18など、マニピュレータ14の任意の適切な部分に対して定められてもよい。代替的または追加的に、ベース16は、マニピュレータ14がカート17に物理的に取り付けられている場合など、マニピュレータカート17に対して定められてもよい。一例において、ベース16は、関節J1及び関節J2の軸の交点で定められる。このようにすると、関節J1及び関節J2は、実際には動く構成要素であるが、それにもかかわらず、関節J1及び関節J2の軸の交点は、仮想的な固定基準ポーズであり、これは、固定位置及び方向基準の両方を提供し、且つマニピュレータ14及び/またはカート17に対して動かない。マニピュレータ14及び/またはマニピュレータカート17は、マニピュレータコンピュータ26、または他のタイプの制御ユニットを収容する。他の例において、マニピュレータ14は、ベース16が器具20の一部であり、器具の先端が経路をたどる間、器具が安定的に保持されるハンドヘルド式のものであり得る。
【0032】
外科用器具20(以下「器具」という)は、マニピュレータ14に結合し、ベース16に対して移動可能であり、解剖学的構造(A)と相互作用する。器具20は、特定の実施形態では、エンドエフェクタ22であるか、またはその一部を形成する。器具20は、操作者によって把持され得る。マニピュレータ14及び器具20の1つの例示的な構成は、「Surgical Manipulator Capable of Controlling a Surgical Tool in Multiple Modes」と題された米国特許第9,119,655号に記載されており、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。マニピュレータ14及び器具20は、代替の構成で配置され得る。器具20は、参照により本明細書に組み込まれ、2014年3月15日に出願され、「End Effector of a Surgical Robotic Manipulator」と題された米国特許出願公開第2014/0276949号に示されるものと同様であり得る。器具20の他の例は、ドリル、のこぎり、平面カットガイド、ドリルガイドなどを含む。
【0033】
器具20は、手術部位で患者12の組織に接触して除去するように設計されたエネルギーアプリケータ24を含む。一例において、エネルギーアプリケータ24は、バー25である。バー25は、実質的に球形であり得、球形の中心、半径(r)、及び直径を含み得る。あるいは、エネルギーアプリケータ24は、ドリルビット、鋸刃、超音波振動チップなどであり得る。器具20及び/またはエネルギーアプリケータ24は、任意の幾何学的特徴、例えば、外周、円周、半径、直径、幅、長さ、体積、面積、表面/平面、モーションエンベロープの範囲(任意の1つまたは複数の軸に沿った)などを含み得る。以下に説明するように、幾何学的特徴は、仮想制約などのためのオフセットに関連する特定の特徴において考慮され得る。
【0034】
器具20は、器具中心点(TCP)、一例においては、エネルギーアプリケータ24に定められる所定の基準点を含むことができる。TCPは、マニピュレータ14の他の座標系に対して既知の、または計算することができる(すなわち、必ずしも静的である必要はない)ポーズ(姿勢)を有する。エネルギーアプリケータ24の形状は、TCP座標系において既知であるか、またはTCP座標系に対して定められる。TCPは、1点のみが追跡されるように、器具20のバー25の球形の中心に配置され得る。TCPは、エネルギーアプリケータ24の構成に応じて、様々な方法に従って定めることができる。マニピュレータ14は、TCPのポーズを判定することができるようにするため、モータエンコーダ、または他の任意の非エンコーダ位置検出方法を有することができる。マニピュレータ14は、TCPのポーズを判定するために関節の測定値を使用してもよいし、及び/またはTCPのポーズを直接測定するための技術を採用してもよい。器具20の制御は、中心点に限定されない。例えば、任意の適切なプリミティブ、メッシュなどを使用して、器具20を表すことができる。
【0035】
図2を参照すると、システム10は、コントローラ30を含む。コントローラ30は、マニピュレータ14を制御するためのソフトウェア及び/またはハードウェアを含む。コントローラ30は、マニピュレータ14の動きを指示し、及び座標系に関して器具20の状態(位置及び/または向き)を制御する。コントローラ30は、(線形または角)速度、加速度、または器具20の運動の他の導関数を制御することができる。一例において、座標系は、図1に示されるように、マニピュレータ座標系MNPLである。マニピュレータ座標系MNPLの一例は、「Surgical Manipulator Capable of Controlling a Surgical Tool in Multiple Modes」と題された、米国特許第9,119,655号に記載されており、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。コントローラ30のさらなる態様及び機能を以下に説明する。
【0036】
システム10は、ナビゲーションシステム32をさらに含む。ナビゲーションシステム32の一例は、2013年9月24日に出願され、「Navigation System Including Optical and Non-Optical Sensors」と題された、米国特許第9,008,757号に記載されており、これは参照により本明細書に組み込まれている。ナビゲーションシステム32は、様々なオブジェクトの動きを追跡するように構成されている。そのようなオブジェクトには、例えば、マニピュレータ14、器具20、及び大腿骨Fや脛骨Tなどの解剖学的構造が含まれる。ナビゲーションシステム32は、これらのオブジェクトを追跡し、(ナビゲーション)ローカライザ座標系LCLZに関して各オブジェクトの状態情報を収集する。ローカライザ座標系LCLZの座標は、変換を用いてマニピュレータ座標系MNPLの座標に変換され、及び/またはその逆の変換の可能である。
【0037】
ナビゲーションシステム32は、ナビゲーションコントローラ36を収容するコンピュータカートアセンブリ34、及び/または他のタイプの制御ユニットを含む。ナビゲーションインターフェースは、ナビゲーションコントローラ36と操作可能に通信している。ナビゲーションインターフェースは、1つまたは複数のディスプレイ38を含む。ナビゲーションシステム32は、1つまたは複数のディスプレイ38を使用して、追跡されたオブジェクトの相対的な状態のグラフィック表現を操作者に表示することができる。1つまたは複数の入力デバイス40、42を使用して、ナビゲーションコントローラ36に情報を入力する、またはその他の方法により、ナビゲーションコントローラ36のある特定の態様を選択する/制御することができる。図1に示されるように、そのような入力デバイス40、42は、インタラクティブなタッチスクリーンディスプレイを含む。しかし、入力デバイス40、42は、キーボード、マウス、マイクロフォン(音声起動)、ジェスチャ制御デバイスなどのうちの任意の1つまたは複数を含み得る。コントローラ30は、システム10における任意の適切な1つまたは複数のデバイスに実装され得る。コントローラ30は、マニピュレータコンピュータ26、ナビゲーションコンピュータ36、及びそれらの任意の組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0038】
また、ナビゲーションシステム32は、ナビゲーションコンピュータ36に結合されたナビゲーションローカライザ44(以下、「ローカライザ」という)を含む。一例では、ローカライザ44は、光学的ローカライザであり、カメラユニット46を含む。カメラユニット46は、1つまたは複数の光学的センサ50を収容する外側筐体48を含む。
【0039】
ナビゲーションシステム32は、1つまたは複数のトラッカーを含む。一例において、トラッカーは、ポインタトラッカーPT、1つまたは複数のマニピュレータトラッカー52、第1の患者トラッカー54、及び第2の患者トラッカー56を含む。図1に示された例において、マニピュレータトラッカー52は、器具20(すなわち、トラッカー52A)にしっかりと取り付けられ、第1の患者トラッカー54は、患者12の大腿骨Fにしっかりと取り付けられ、第2の患者トラッカー56は、患者の12脛骨Tにしっかりと取り付けられている。この例において、患者トラッカー54、56は、骨のセクションにしっかりと固定されている。ポインタトラッカーPTは、解剖学的構造をローカライザ座標系LCLZに登録するために使用されるポインタPにしっかりと固定されている。マニピュレータトラッカー52は、マニピュレータ14の任意の適切な構成要素に取り付けることができ、器具20に加えて、または器具20以外の構成要素、例えば、ベース16(すなわち、トラッカー52B)やマニピュレータ14の任意の1つまたは複数のリンク18に取り付けることができる。トラッカー52、54、56、PTは、任意の適切な方法でそれらのそれぞれの構成要素に固定することができる。例えば、個々のトラッカーとそれに関連付けられているアイテムとの関係(測定)を判定する適切な(補足的な)方法があるならば、トラッカーは堅固に固定されていてもよいし、柔軟に接続されてもよいし(光ファイバー)、物理的にまったく接続されていなくてもよい(超音波)。
【0040】
トラッカーのいずれか1つまたは複数は、アクティブマーカー58を含み得る。アクティブマーカー58は、発光ダイオード(LED)を含み得る。あるいは、トラッカー52、54、56は、カメラユニット46から放出された光を反射する反射器などの受動的マーカーを有し得る。本明細書に具体的に記載されていない他の適切なマーカーを利用することも可能である。
【0041】
ローカライザ44は、トラッカー52、54、56を追跡して、それぞれが取り付けられたオブジェクトの状態にそれぞれ対応するトラッカー52、54、56のそれぞれの状態を判定する。ローカライザ44は、トラッカー52、54、56の状態をナビゲーションコンピュータ36に提供する。一例において、ナビゲーションコンピュータ36は、トラッカー52、54、56の状態を判定して、マニピュレータコンピュータ26に伝達する。本明細書において、オブジェクトの状態は、追跡されるオブジェクトの位置及び/または方向、あるいは位置及び/または方向の同等物/導関数を定めるデータを含むが、これらに限定されない。例えば、状態は、オブジェクトのポーズであり得るし、線形速度データ及び/または角速度データなどを含み得る。
【0042】
ナビゲーションシステム32の一例が図に示されているが、ナビゲーションシステム32は、マニピュレータ14及び患者12を追跡するための他の任意の適切な構成を有し得る。別の例において、ナビゲーションシステム32及び/またはローカライザ44は、超音波ベースものである。例えば、ナビゲーションシステム32は、ナビゲーションコンピュータ36に結合された超音波画像化デバイスを含み得る。超音波画像化デバイスは、前述のオブジェクト、例えば、マニピュレータ14及び患者12のいずれかを画像化し、超音波画像に基づいてコントローラ30への状態信号を生成する。超音波画像は、2D、3D、または両方の組み合わせである可能性がある。ナビゲーションコンピュータ36は、オブジェクトの状態を判定するため、ほぼリアルタイムで画像を処理することができる。超音波画像化デバイスは、任意の適切な構成を有し得ると共に、図1に示されるようなカメラユニット46とは異なるものであり得る。
【0043】
別の例において、ナビゲーションシステム32及び/またはローカライザ44は、無線周波数(RF)ベースのものである。例えば、ナビゲーションシステム32は、ナビゲーションコンピュータ36に結合されたRFトランシーバを含み得る。マニピュレータ14及び患者12には、RFエミッタまたはトランスポンダが取り付けられ得る。RFエミッタまたはトランスポンダは、受動的または能動的に通電され得る。RFトランシーバは、RF追跡信号を送信し、RFエミッタから受信したRF信号に基づいてコントローラ30に状態信号を生成する。ナビゲーションコンピュータ36及び/またはコントローラ30は、受信したRF信号を分析して、相対的な状態をそれに関連付けることができる。RF信号は、任意の適切な周波数のものであり得る。RFトランシーバは、RF信号を効果的に使用してオブジェクトを追跡するために、任意の適切な場所に配置することができる。さらに、RFエミッタまたはトランスポンダは、図1に示されるようなトラッカー52、54、56とは大きく異なる可能性がある任意の適切な構造上の構成を有し得る。
【0044】
さらに別の例において、ナビゲーションシステム32及び/またはローカライザ44は電磁力ベースものである。例えば、ナビゲーションシステム32は、ナビゲーションコンピュータ36に結合されたEMトランシーバを含み得る。マニピュレータ14及び患者12には、任意の適切な磁気トラッカー、電磁トラッカー、誘導トラッカーなどのEM構成要素が取り付けられ得る。トラッカーは、受動的または能動的に通電することができる。EMトランシーバは、EMフィールドを生成し、トラッカーから受信したEM信号に基づいて、コントローラ30への状態信号を生成する。ナビゲーションコンピュータ36及び/またはコントローラ30は、受信したEM信号を分析して、相対的な状態をそれに関連付けることができる。この場合も、そのようなナビゲーションシステム32の例は、図全体に示されているようなナビゲーションシステム32の構成とは異なる構造上の構成を有し得る。
【0045】
ナビゲーションシステム32及び/またはローカライザ44は、本明細書に具体的に記載されていない他の任意の適切な構成要素または構造を有し得る。さらに、図全体に示されるカメラベースのナビゲーションシステム32に関して上記で説明された技術、方法、及び/または構成要素のいずれかは、本明細書で説明されるナビゲーションシステム32の他の例のいずれかのために実装または提供され得る。例えば、ナビゲーションシステム32は、慣性追跡のみを利用することができるし、または追跡技術の任意の組み合わせを利用することができる。
【0046】
図2に示されるように、コントローラ30は、1つまたは複数のソフトウェアプログラム及び/またはソフトウェアモジュールをさらに含む。ソフトウェアモジュールは、データを処理してシステム10の制御を支援するために、マニピュレータコンピュータ26、ナビゲーションコンピュータ36、またはそれらの組み合わせで動作する1つまたは複数のプログラムの一部であり得る。ソフトウェアプログラム及び/またはモジュールは、マニピュレータコンピュータ26、ナビゲーションコンピュータ36、またはそれらの組み合わせ上の非一時的メモリ64に格納されたコンピュータ可読命令を含み、当該コンピュータ可読命令は、コンピュータ26、36の1つまたは複数のプロセッサ70a、70bによって実行される。メモリ64は、RAM、不揮発性メモリなどの任意の適切な構成のメモリであり得、また、ローカルに実装されていてもよいし、またはリモートデータベースから実装されてもよい。さらに、操作者にプロンプトを表示及び/または通信するためのソフトウェアモジュールは、プログラムの一部または複数のプログラムを形成し得、マニピュレータコンピュータ26、ナビゲーションコンピュータ36、またはそれらの組み合わせ上のメモリ64に格納された命令を含み得る。操作者は、入力デバイス40、42及びディスプレイ38のいずれかを介してソフトウェアモジュールと通信することができる。ユーザインターフェースソフトウェアは、マニピュレータコンピュータ26及びナビゲーションコンピュータ36とは別のデバイス上で実行することができる。
【0047】
コントローラ30は、マニピュレータ14の動きを指示するためにデータを処理するためのマニピュレータコントローラ60を含む。一例において、図1に示されるように、マニピュレータコントローラは、マニピュレータコンピュータ26に実装される。コントローラ30は、大腿骨F、脛骨T、及びマニピュレータ14に関連する状態データをマニピュレータコントローラ60に通信するためのナビゲーション(またはローカリゼーション)コントローラ62をさらに含む。また、ナビゲーションコントローラ62は、状態データを計算するためにカメラ及びトラッカーからの測定値を処理/分析するように構成される。この処理は、カメラ自体の内部など、システムの他の場所で実行され得る。マニピュレータコントローラ60は、ナビゲーションコントローラ62によって提供される状態データを受信して処理し、マニピュレータ14の動きを指示する。図1に示されるように、ナビゲーションコントローラ62は、ナビゲーションコンピュータ36に実装される。コントローラ60及び62は、リアルタイム制御及びアルゴリズムを処理する。
【0048】
図2に示されるように、コントローラ30は、境界発生部66を含む。境界発生部66は、器具20の移動及び/または動作を制約するための平面または非平面の仮想境界を生成するソフトウェアプログラムまたはモジュールである。このような仮想境界は、仮想メッシュ、仮想制約などと呼ばれることもある。仮想境界は、3D骨モデルなどの解剖学的構造モデルに関して定めることができる。解剖学的構造モデル(AM)は、仮想境界が解剖学的構造モデル(AM)に関連付けられるように、1つまたは複数の患者トラッカー54、56に登録される。マニピュレータコントローラ60は、仮想境界に対する器具20の状態を追跡することによって、仮想境界70を実行する。一例においては、物理的なシミュレーションを介して仮想モデルに適用される触覚力を判定する目的で、TCPの状態が仮想境界に対して測定される。シミュレーションの結果は、マニピュレータ14に命令される。コントローラ30は、物理的なハンドピースがユーザ及び仮想の触覚力に応答する経路をエミュレートする方法で、マニピュレータ14を制御し/位置決めする。境界発生部66は、マニピュレータコントローラ60に実装され得る。あるいは、境界発生部66は、ナビゲーションコントローラ62などの他の構成要素に実装され得る。
【0049】
次のセクションで説明するように、仮想境界は、患者固有のモーフィング技術を使用して生成される。ただし、システムで使用されるすべての仮想境界が患者固有のものである必要はない。一部の境界は、インプラント固有のものまたは一般的なものであり得る。また、患者固有の器具用経路の場合でも、患者固有の仮想境界を有する必要はない。本明細書に記載の技術で利用できる患者固有の器具用経路を生成するための例示的な技術は、2018年6月15日に出願された米国仮特許出願第62/685,476号に記載されており、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0050】
インプラント固有のシナリオの場合、境界発生部66は、システム10またはコントローラ30の一部である必要はなく、むしろ境界は、可能なインプラントのサイズごとにオフラインで手動により生成され、その結果得られた境界が、ソフトウェアとともに保存され得る。患者固有のシナリオの場合、境界発生部66は、コントローラ30またはマニピュレータコントローラ60の一部ではなく、ユーザとの相互作用(やりとり)を処理する臨床アプリケーション74(後述する)の一部であり得る。
【0051】
任意選択で、ミリング経路発生部68は、コントローラ30によって実行される別のソフトウェアプログラムまたはモジュールである。一例において、ミリング経路発生部68は、マニピュレータコントローラ60によって実行される。ミリング経路発生部68は、例えばインプラントを受け入れるために解剖学的構造のセクションを除去するために、器具20がトラバースするミリング経路を生成する。「ミリング経路」という用語は、一般に、解剖学的構造をミリングするための標的部位の近傍における器具20の経路を指し、器具20が経路にある全期間にわたって解剖学的構造をミリング可能であることを要求することを意図してはいない旨を理解されたい。例えば、ミリング経路は、器具20がミリングを実行せずにある場所から別の場所に移行するセクションまたはセグメントを含み得る。
【0052】
幾何学的エンジン72は、コントローラ30によって実行される別のソフトウェアプログラムまたはモジュールである。幾何学的エンジン72は、ミリング経路発生部68または境界発生部66のサブセットでもよいし、または、それらとは別の若しくはそれらを包含するプログラムまたはモジュールであってもよい。幾何学的エンジン72について以下に詳細に説明する。
【0053】
境界発生部66、ミリング経路発生部68及び幾何学的エンジン72は、ソフトウェアプログラム80のサブセットであってもよい。あるいは、それぞれが別々に及び/またはそれらの任意の組み合わせで独立して動作するソフトウェアプログラムであってもよい。「ソフトウェアプログラム」という用語は、本明細書では、説明された技術的解決策の様々な機能を実行するように構成されたコンピュータ実行可能な命令を説明するために使用される。簡単にするために、「ソフトウェアプログラム」という用語は、少なくとも、境界発生部66、ミリング経路発生部68及び/または幾何学的エンジン72のいずれか1つまたは複数を包含することを意図している。ソフトウェアプログラム80は、マニピュレータコントローラ60、ナビゲーションコントローラ62、またはそれらの組み合わせに実装することができる。
【0054】
いくつかの例において、仮想境界及び/またはミリング経路は、マニピュレータコンピュータ26またはナビゲーションコンピュータ36ではなくオフラインで生成されてもよい。その後、仮想境界及び/またはミリング経路は、実行時にマニピュレータコントローラ60によって利用されてもよい。
【0055】
ミリング経路を生成する例は、「Surgical Manipulator Capable of Controlling a Surgical Tool in Multiple Modes」と題された米国特許第9,119,655号や、2018年6月15日に出願された「Techniques For Patient-Specific Milling Path Generation」と題された米国特許出願公開第62/685,476号において説明されており、その開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0056】
臨床アプリケーション74は、ユーザとの相互作用を処理するために設けられている。臨床アプリケーション74は、ユーザとの相互作用の多くの側面を処理し、術中または術前の計画、インプラントの配置、登録、骨調製物の視覚化、及びインプラントの適合の術後評価などを含む、外科的ワークフローを調整する。臨床アプリケーション74は、ディスプレイ38に出力するよう構成される。臨床アプリケーション74は、独自の別個のプロセッサで動作してもよいし、またはナビゲーションコンピュータ36のコントローラ62と一緒に動作してもよい。一例において、臨床アプリケーション74は、インプラントの配置がユーザによって(術前または術中に)設定された後、境界発生部66、経路発生部68、及び/または幾何学的エンジン72とインターフェースし、次に経路発生部68によって返された器具用経路を実行のためにコントローラ60に送信する。マニピュレータコントローラ60は、器具用経路を実行する。臨床アプリケーション74、より具体的には、臨床アプリケーション74によって使用されるグラフィカルユーザインターフェース(GUI)96は、以下でさらに詳細に説明される。
【0057】
システム10は、自律モードで動作してもよい。自律モードにおいて、骨を切除するためのTCPの主要な動きの入力は、ミリング経路に基づいている。自律モードにおいて、マニピュレータ14は、ミリングの経路に沿って操作者の補助なしに器具20を動かすことができる。操作者の補助がないということは、操作者が器具20に物理的に接触して器具20を動かす力を加える必要がないことを意味する。代わりに、操作者は何らかの形の制御を使用して、動きの開始と停止をリモートで管理してもよい。例えば、操作者は、リモコンのボタンを押したままにして器具20の移動を開始させ、ボタンを離して器具20の移動を停止させることができる。あるいは、操作者は、ボタンを押して器具20の移動を開始させ、ボタンを押して器具20の移動を停止させることができる。一部の動作モードにおいて、ミリング経路は、自動的にTCPの位置を前進させるが、器具20の方向については、ユーザが物理的に力を加えることで調整することができる。自律モードの実行中、境界の制約は、器具用経路におけるあらゆる問題/エラーに対するリスクの軽減として、境界の制約は、アクティブ(有効)な状態を維持することができる。
【0058】
システム10は、手動モードでも動作することができる。手動モードにおいて、骨の切除のためのTCPの主要な動きの入力は、ユーザによって加えられた力/トルクに基づいている。ここでは、操作者が手動で方向付けを行い、マニピュレータ14が、器具20の動きを制御し、次いで手術部位でのエネルギーアプリケータ24を制御する。操作者は、器具20に物理的に接触して器具20の動きを引き起こす。マニピュレータ14は、操作者によって器具20に加えられる力及びトルクを監視して、器具20の位置決めを行う。力-トルク変換器などのマニピュレータ14の一部であるセンサは、これらの力及びトルクを測定する。加えられた力及びトルクに応答して、マニピュレータ14は、操作者によって加えられた力及びトルクに基づき発生したであろう動きをエミュレートする方法で、器具20を機械的に動かす。手動モードでの器具20の動きはまた、境界発生部66及び/または経路発生部68によって生成された仮想の制約に関連して制約される。
【0059】
II.患者固有の制約モーフィング
本明細書では、解剖学的構造モデル(AM)の患者固有の仮想境界(PS-VB)を生成するための高度な技術について説明する。これは、一般仮想境界(G-VB)を患者の解剖学的構造に合わせて調整することで実現される。より具体的には、患者固有の仮想境界(PS-VB)を生成するための技術は、解剖学的構造モデル(AM)の特徴に近接して一般仮想境界(G-VB)を配置すること、及び、一般仮想境界(G-VB)を解剖学的構造モデル(AM)の特徴に一致するようにモーフィングして、患者固有の仮想境界(PS-VB)を生成することを含む。解剖学的構造モデル(AM)の特徴は、解剖学的構造モデル(AM)と一般仮想境界(G-VB)との交差に基づく解剖学的構造モデル(AM)の断面の輪郭を含み得る。
【0060】
本明細書に記載の技術は、全体的に一般的な形状に基づいて設計されるのではなく、特定の患者の解剖学的構造に迅速かつ正確に調整されたアプローチを使用して、術中にオンザフライで手術計画を更新することを可能にするための技術的解決策を提供する。本技術は、主に術中の解決策に焦点を合わせているが、本技術は、初期の術前計画を作成するため、または初期の計画に対して術前の調整を行うためにも利用され得る。
【0061】
患者固有の仮想境界(PS-VB)の利点は、器具の操作の自律モードと手動モードで実現され得る。例えば、自律モードにおいて、システム10は、内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、2018年6月15日に出願された米国仮特許出願第62/685,476号に記載されているように、患者固有の仮想境界(PS-VB)に適合するように生成された患者固有の器具用経路に従って器具20を制約することができる。手動モードにおいて、ロボットシステムは、ユーザによって器具20に加えられて感知された力/トルクの適用から期待される動きをエミュレートするように、器具20の位置決めを命令する。力/トルクは、患者固有の仮想境界(PS-VB)を考慮してモデル化される。命令された器具20の位置決め、したがって、エミュレートされた動きは、患者固有の仮想境界(PS-VB)が器具20によって破られることがないように制限される。
【0062】
さらに、本明細書で使用される場合、「モーフィング」という用語及びそのバリエーションは、ユーザにとって可視である、段階的にコンピュータで実行されるステップによってある幾何学的形態から別の幾何学的形態に変化することに限定されない。患者固有の仮想境界(PS-VB)は、ユーザがそれを形成するために必要なステップを視覚化することなく、生成することができる。さらに、患者固有の仮想境界(PS-VB)を形成する手順は、一般仮想境界(G-VB)の実際の幾何学的形状に直接的に基づいて行う必要はない。代わりに、一般仮想境界(G-VB)は元の形のままでありながら、患者固有の仮想境界(PS-VB)が並行して生成され得る。患者固有の仮想境界(PS-VB)が生成された後に、一般仮想境界(G-VB)を同じものに置き換えることができる。あるいは、一般仮想境界(G-VB)を患者固有の仮想境界(PS-VB)に徐々にモーフィングして、一般仮想境界(G-VB)の形状を元の形から徐々に変更することもできる。
【0063】
患者固有の仮想境界(PS-VB)及び解剖学的構造モデル(AM)は、ポインタPで解剖学的構造に触れること、画像レジストレーション、マシンビジョンレジストレーション、またはその他いずれかのタイプの技術などのような、適切なレジストレーション技術のいずれかを使用して、身体的解剖学的構造(A)に登録することができる。ナビゲーションシステム32は、本明細書に記載の任意の追跡技術を使用して、または他の方法で、解剖学的構造(A)及び外科用器具20を追跡することができる。登録された患者固有の仮想境界(PS-VB)を用いて、システム10は、器具20を制御するための患者に合わせた操作を行うことができる。例えば、システム10は、器具20が患者固有の仮想境界(PS-VB)を超えることを制限することができる。
【0064】
説明の目的のため、脛骨遠位の症例の部分的膝関節形成術の特徴についても説明し、示している。もちろん、本明細書に記載の技術は、本明細書に示されているもの以外の解剖学的切除に利用することができる。
【0065】
本明細書に記載の技術のいずれも、外科システム10の構成要素またはコントローラ30によって、及び/または外科システム10によって実行されるソフトウェアプログラム80によって実施することができる。ソフトウェアプログラム80は、臨床アプリケーション74及び/またはコントローラ30、あるいはその任意の部分によって具現化され得る。これらの技術を実行するコンピュータ実装方法のステップは、以下の説明から理解することができる。
【0066】
A.幾何学的エンジン
幾何学的エンジン72は、患者固有の仮想境界(PS-VB)またはその任意の部分を生成するために必要とされる幾何学的操作を計算及び/または実行するように構成されている。幾何学的エンジン72への入力は、解剖学的体積部(A)の解剖学的構造モデル(AM)と一般仮想境界(G-VB)とを含む。以下で説明するように、一般仮想境界(G-VB)は、様々なソースから得ることができる。幾何学的エンジン72はさらに、一般仮想境界(G-VB)を患者固有の仮想境界(PS-VB)に幾何学的にモーフィングするように構成される。
【0067】
幾何学的エンジン72は、3Dソリッドモデリングソフトウェアコンポーネントである幾何学的モデリングカーネルを含む。このようなモデリングカーネルの一例は、Parasolidである。幾何学的エンジン72は、患者固有の仮想境界(PS-VB)を出力することができる。任意選択で、経路発生部68は、その後、患者固有の仮想境界(PS-VB)の生成に関連する幾何学的エンジン72の結果または出力に部分的に基づいて、ミリング経路を生成することができる。ミリング経路は必ずしも必要ではない。
【0068】
幾何学的エンジン72に入力される解剖学的構造モデル(AM)は、解剖学的体積部(A)、例えば、大腿骨、脛骨、股関節などの骨の3D仮想モデルであり得る。解剖学的構造モデル(AM)は、CADモデル、オープンメッシュ若しくはクローズドメッシュ、またはその他いずれかの体積測定画像表現として定められ得る。一例において、骨モデルは、CADソリッドボディモデルに変換されるメッシュである。解剖学的構造モデル(AM)は、STL(ステレオリソグラフィー)やVRML(仮想現実モデリング言語)など、任意のファイル形式で生成することができる。メッシュは、解剖学的体積部(A)の術前画像から得られる。イメージングモダリティは、CT、MRT、X線、透視、MRIなどのいずれか1つまたは複数であり得る。これらのイメージングモダリティは、セグメンテーションと呼ばれるプロセスを通じて解剖学的構造モデル(AM)に変換できるスライスを出力する。他の例において、解剖学的構造モデル(AM)はイメージングなしで生成することができる。代わりに、ナビゲーションシステム32によって追跡されるポインタを解剖学的体積部(V)の表面に接触させて、解剖学的構造モデル(AM)を導出することのできる点群を作成することができる。解剖学的構造モデル(AM)は、本明細書に記載されている技術以外の任意の技術を使用して生成されてもよい。解剖学的構造モデル(AM)は、1つまたは複数の表面であってもよく、完全な骨または組織モデルである必要はない。さらに、解剖学的構造モデル(AM)を生成するためにセグメンテーションは必要とされない。
【0069】
幾何学的エンジン72は、解剖学的構造モデル(AM)のローディング、記憶、操作、及び/または作成を可能にするように構成されている。幾何学的エンジン72は、ディスプレイ38上での視覚化の有無にかかわらずにそうすることができる。また、幾何学的エンジン72は、解剖学的構造モデル(AM)に利用されるすべての3D表現の間で変換することができ、それによって、マルチモーダルな3Dモデル表現を提供する。
【0070】
幾何学的エンジン72は、解剖学的構造モデル(AM)と、他のオブジェクト、例えば一般仮想境界(G-VB)、患者固有の仮想境界(PS-VB)、インプラントモデル(IM)、許容体積部(AV)などとの間の交差を計算することができる。
【0071】
幾何学的エンジン72のもう一つの特徴は、平面、非平面、または3Dオフセット操作を行うことができることである。例えば、オフセット操作では、ある表面から予め決められた距離だけ離れた別の表面を定めることができる。オフセット操作の1つの出力は、患者固有の仮想境界(PS-VB)を解剖学的構造モデル(AM)の特徴からオフセットすることである。これについては以下で説明する。以下でさらに理解されるように、幾何学的エンジン72はまた、オフセットされた幾何学形状を生成するために掃引(Sweep)操作または押し出し(Extrude)操作を実行することができる。
【0072】
さらに、幾何学的エンジン72は、ポリゴン及びスプライン曲線などの曲線を表現するように構成されている。そのような特徴の1つの例示的な出力は、本明細書で説明される交差輪郭の生成である。加えて、幾何学的エンジン72は、フリーフォーム曲線をポリゴン変換及び/または近似することができ、また、その逆も可能である。例えば、この特徴は、フリーフォームのインプラントや骨の除去体積部の形成を容易にするのに役立つ。
【0073】
これらの特徴及び機能により、幾何学的エンジン72は、外科医によって術中に定められるフリーフォームのインプラントに対しても、患者固有の仮想境界(PS-VB)を患者に応じてオンザフライ(術中及びほぼリアルタイム)で自律的に生成することを可能にする。幾何学的エンジン72の追加の機能は、以下の説明から理解されるであろう。幾何学的エンジン72は、本明細書に具体的に記載されているもの以外の特徴及び能力を含んでもよい。
【0074】
幾何学的エンジン72に起因する本明細書に記載の任意の機能は、一般に、境界発生部66及び/または経路発生部68及び/またはソフトウェアプログラム80にも起因し得る。例えば、境界発生部66は、一般仮想境界(G-VB)及び/または患者固有の仮想境界(PS-VB)の一部または全部を生成する責任を有し得る。経路発生部68は、ミリング経路を作成するプロセスに対して全体的な責任を有する可能性がある。境界及び経路発生部66、68は、処理の間に様々な幾何学的操作を実行するために、幾何学的エンジン72へのサブコールを行うことができる。
【0075】
B.一般仮想境界
一般仮想境界(G-VB)は、器具20に仮想制約を設けるように構成されたカスタマイズ可能な幾何学的なオブジェクトである。一般仮想境界(G-VB)は、器具20をワークスペース内に保持するように、または器具20をワークスペース外に保持するように設計されている。一例において、一般仮想境界(G-VB)は、器具20の移動が許可される領域と、器具20の移動が禁止される領域とを分離する。このため、一般仮想境界(G-VB)は、仮想境界の「壁」を定める1つまたは複数の表面で構成される。このようにして、一般仮想境界(G-VB)は、器具用経路の制約などの他のタイプの既知の制約と区別される。
【0076】
器具20、例えば、器具20のTCPが仮想境界と相互作用すると、システムは、減速させるための反力、または器具20を壁から押し戻すための反力をシミュレートするように設計されている。仮想境界を利用して器具を制約する方法の例は、2018年6月14日に出願された「Robotic Surgical System And Method For Producing Reactive Forces To Implement Virtual Boundaries」と題された米国特許出願第16/000,498号に記載されており、その開示は、参照によりその全体が組み込まれる。
【0077】
一般仮想境界(G-VB)は、患者固有ではなく、むしろ患者一般であり、最悪のシナリオのパラメータを使用して「理想的な患者」向けに設計され得る。
【0078】
一般仮想境界(G-VB)は、ソフトウェアプログラム80、より具体的には、幾何学的エンジン72及び境界発生部66に入力される。
【0079】
後で説明されるように、一般仮想境界(G-VB)は、本明細書で説明するモーフィング技術を使用してカスタマイズ可能である。すなわち、一般仮想境界(G-VB)は、患者固有の仮想境界(PS-VB)にカスタマイズ可能である。一般仮想境界(G-VB)は、モーフィング可能な特定の面とモーフィング不可能な他の面とで構成され得る。一例において、一般仮想境界(G-VB)は、特定の患者の解剖学的構造(骨)に基づいて患者固有の仮想境界(PS-VB)にモーフィングされ、その結果、患者固有の仮想境界(PS-VB)は、ミリング要件を満たすことができる。すなわち、結果として得られる患者固有の仮想境界(PS-VB)のサイズは、解剖学的構造に合わせて正確に(大きすぎず且つ小さすぎないように)調整されている。しかし、患者固有の仮想境界(PS-VB)は、例えば、器具20の動きを一般的に制約するなど、ミリングとは関係のない目的のためにも生成され得る。
【0080】
また、一般仮想境界(G-VB)は、骨全体の断面と交差するようなサイズであるかまたはそのようなサイズにし得る基準面(E)を含んでもよいし、またはそれに関連付けられてもよい。基準面(E)は、平面であっても非平面であってもよい。基準面(E)について以下に説明する。
【0081】
解剖学的構造モデル(AM)と一般仮想境界(G-VB)との体積交差に基づいて、図4に示されるように、フットプリント(FP)を定めることができる。フットプリント(FP)は、解剖学的構造モデル(AM)と一般仮想境界(G-VB)との間の1つまたは複数の接触面または嵌合面で構成される。これらの接触面は、インプラントモデル(IM)に関連付けられている場合と関連付けられていない場合がある。フットプリント(FP)は、一般仮想境界(G-VB)の幾何学的特徴から導出される。この例において、フットプリント(FP)は、ベースフットプリント面(FP-B)と隣接するサイドフットプリント面(FP-S)で構成されている。ただし、フットプリント(FP)は、下部、上部、または側部の接触面の任意の組み合わせで構成することができる。フットプリント(FP)は、平面であっても非平面であってもよく、一般仮想境界(G-VB)の簡素性に応じて、任意のプリミティブ(単純な)または複雑な形状をとることができる。フットプリント(FP)は、本明細書で説明される技術に従って、一般仮想境界(G-VB)をモーフィングする目的で、ソフトウェアプログラム80によって特定され得る。
【0082】
幾何学的エンジン72は、フットプリント(FP)を定めるためのアルゴリズムを含み得る。アルゴリズムは、補間、最小二乗近似、及び/またはインプラントモデル(IM)の幾何学形状から得られる形状近似を使用してフットプリント(FP)を生成し得る。したがって、フットプリント(FP)は、フリーフォームの面またはCADモデル化された面であり得る。一般仮想境界(G-VB)のさらなる例と使用法を以下に説明する。
【0083】
1.一般仮想境界の例
一般仮想境界(G-VB)は、様々なソースから様々な方法で生成でき、様々な機能を提供することができる。本明細書に具体的に記載されているかどうかにかかわらず、一般仮想境界(G-VB)の任意のバリエーションについて、本明細書に記載されている技術は、一般仮想境界(G-VB)を患者固有の仮想境界(PS-VB)にモーフィングすることができる。
【0084】
a.インプラントモデルに基づく一般仮想境界
一般仮想境界(G-VB)は、図3に示されるように、インプラントモデル(IM)に基づくものであり得る。インプラントモデル(IM)は、解剖学的体積部(A)へのインプラントを目的とした身体的インプラントの仮想3Dモデルである。これらのモデルは、3D CADのソリッドボディとして表現され得る。インプラントモデル(IM)は、ユニコンパートメント、バイコンパートメント、マルチコンパートメントを含む部分的な膝インプラント、全膝インプラント、脊椎インプラント、股関節インプラントなどの任意の外科的インプラントであり得る。
【0085】
インプラントモデル(IM)は、予め定められたインプラントモデル(IM)の電子カタログから選択されるか、そうでなければ、電子カタログから派生させることができる。一般仮想境界(G-VB)は、インプラントモデル(IM)に沿って定められ、インプラントモデル(IM)と一緒に配置することができる。あるいは、一般仮想境界(G-VB)は、インプラントモデル(IM)から生成され得る。一般仮想境界(G-VB)は、インプラント固有のものでもある対応する制約テンプレートを含み得る。
【0086】
インプラントの選択は、対応するインプラントモデル(IM)が、インプラント領域における対応する解剖学的構造モデル(AM)に一般的に適合するように行われる。インプラントの種類とサイズの選択は、処置を行う外科医によって、及び/または処置を行う外科医によって承認されることによって行われる。この選択は、術前に行われて処置の開始時にインポートされ、及び/またはディスプレイ38に示される臨床アプリケーション74を使用し、及び入力デバイス40、42の1つまたは複数を使用することによって術中に修正され得る。インプラントモデル(IM)は、手術計画の計画全体または要素を保持できる。
【0087】
追加的または代替的に、インプラントモデル(IM)は、「フリーフォーム」または「外科医によってオンザフライで描かれる」と定義され得る。インプラントモデル(IM)は、ナビゲーションシステム32の入力デバイス40、42を使用して、外科医によって描画され、モデル化され、または調整され得る。特にこれらの例において、インプラントモデル(IM)は、必ずしも骨に取り付けられる身体的構成要素を表すとは限らず、むしろ除去される必要のある骨/組織の「ネガ部分」を表す場合がある。このような非インプラントの例において、除去されるべき「非インプラント」の骨の体積/形状は、事前に定められたデータベースまたはカタログから取得されるか、ソフトウェアによってまたはベンダー提供の術前計画によって計算/提案されることも可能である。したがって、「非インプラント」の場合は、フリーフォームまたはオンザフライで描画された例に限定されない。
【0088】
他の適用例においては、骨/組織の切除が行われるが、必ずしもインプラントを受け入れることが主な目的であるとは限らない。この場合、インプラントモデル(IM)は、除去される骨/組織の「ネガ部分」を表すソリッドモデルに置き換えることができる。このソリッドモデルは、幾何学的エンジン72に入力することができる。したがって、一般仮想境界(G-VB)は、切除目標から生成することができる。
【0089】
幾何学的エンジン72は、インプラントモデル(AM)のローディング、記憶、操作、及び/または作成を可能にするように構成されている。幾何学的エンジン72は、ディスプレイ38での視覚化の有無にかかわらず、そうすることができる。
【0090】
ソフトウェアプログラム80は、幾何学的エンジン72の支援を受けて、解剖学的構造モデル(AM)とインプラントモデル(IM)との間の幾何学的相互作用を計算するように構成されている。
【0091】
b.手動及び/またはオンザフライで定められる一般仮想境界
別の例において、一般仮想境界(G-VB)は、外科医による入力から導出される。幾何学的エンジン72の機能のおかげで、術中にまたはオンザフライで一般仮想境界(G-VB)を生成することが可能である。例えば、外科医は、術前に選択された一般仮想境界(G-VB)を術中に変更することを決定することができる。また、外科医は、複数の異なる一般仮想境界(G-VB)のうちの1つを選択することができる。あるいは、外科医は、幾何学的なプリミティブ(基本形状)及び外形を仮想で定義し、及び配置することにより、一般仮想境界(G-VB)を部分的または全体的に手動で定めることができる。仮想境界を生成するためのさらなる技術は、2018年4月13日に出願された「Surgical Systems and Methods for Facilitating Ad-Hoc Intraoperative Planning of Surgical Procedures」と題された米国特許出願第15/952,810号に記載されているものと似たものであり得、その開示は、参照により、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0092】
いずれの例においても、外科医は、一般仮想境界(G-VB)を定めるために任意のソリッドボディを作成または変更することができる。例えば、外科医は、ナビゲーションシステム32の入力デバイス40、42を使用して、一般仮想境界(G-VB)を定めるためのパラメータまたはランドマークを定めることができる。例えば、外科医は、入力デバイス40、42を使用して、部分的または全体的に、フリーハンドで一般仮想境界(G-VB)を定めることができる。追加的または代替的に、ポインタPは、除去されるべき骨/組織の領域の境界を選択またはトレースするために利用され得る。ソフトウェアプログラム80は、ナビゲーションシステム32からのナビゲーションデータにアクセスすることができ、幾何学的エンジン72は、データを分析し、一般仮想境界(G-VB)を合成することができる。このような技術は、一般仮想境界(G-VB)がインプラントモデル(IM)に基づいているかどうかに関係なく利用され得る。
【0093】
追加的または代替的に、一般仮想境界(G-VB)は、任意の予め定められたソリッドボディ、プリミティブの体積、または本明細書に記載されていない任意の数学的に記述された面または体積を使用して定めることができる。
【0094】
一般仮想境界(G-VB)は、インプラントと調整面との間に特定の距離の干渉またはクリアランスを含むように、外科医の好みに基づいて定められ得る。
【0095】
他の例において、一般仮想境界(G-VB)は、自動的に定められ得る。例えば、干渉適合は、開示が参照によりその全体が組み込まれる、米国特許出願公開第20150080717 A1に記載されているように、一貫した有効な干渉適合のために骨密度及び/または弾性率などの患者の解剖学的パラメータに基づいて調整することができる。
【0096】
c.許容体積部で定められる一般仮想境界
一例によれば、一般仮想境界(G-VB)は、図5に示されるように、許容体積部(AV)から、許容体積部(AV)に基づいて、または許容体積部(AV)に関連付けられて、少なくとも部分的に導出される。許容体積部(AV)は、解剖学的体積部(A)と少なくとも部分的に交差する。通常、許容体積部(AV)は、一般的な体積部である。
【0097】
許容体積部(AV)は、ミリングが許可される潜在的可能性のある領域である。許容体積部(AV)は、器具20が移動することが許容される領域のサブセット(多くの場合、その領域より小さいが、最大の場合にはそれと体積が等しい)である。許容体積部(AV)は、器具20が移動することが許容される領域よりも潜在的に制限されている。ミリングするためには、器具20が動けなければならない。しかし、移動するために、器具20がミリングすることが可能である必要はない。器具20が移動することができる相対的に制限の少ない領域は、使用者が処置(手術)中に器具20を手術部位から出し入れすることを可能にするために、例えば、器具20を邪魔にならないようにして軟組織を洗浄し、吸引を行い、解剖学的構造を検査するなどのために、重要である。
【0098】
いくつかの例において、一般仮想境界(G-VB)または許容体積部(AV)は、ミリング中の器具20の動きに関して、「内部に留まる(キープイン)」体積部として理解され得る。多くの場合、仮想境界は「外部に留まる(キープアウト)」境界である。許容体積部(AV)は、自律的なミリング経路の生成に使用されるため、内部に留まる(キープイン)仮想境界及び/または外部に留まる(キープアウト)仮想境界の任意の組み合わせは、内部に留まる(キープイン)許容体積部(AV)と組み合わせることができる。
【0099】
許容体積部(AV)は、解剖学的体積部(A)に挿入するように設計されたインプラントモデル(IM)に関連付けられてもよい。いくつかの例において、電子カタログ内の各インプラントモデル(IM)は、対応するカスタマイズされた許容体積部(AV)を含むことができる。
【0100】
インプラント固有の仮想境界の場合、許容体積部(AV)は、各インプラントサイズのCADモデルの一部として(手動により)オフラインで定められ得る。許容体積部(AV)は、臨床アプリケーション74によって使用され、実行時に幾何学的エンジン72に渡されるシステム10の入力データであり得る。また、許容体積部(AV)は、術中にまたはオンザフライで生成することもできる。
【0101】
許容体積部(AV)は、図5に示されるように、器具アクセス体積部(TAV)をさらに含む。器具アクセス体積部(TAV)は、一般仮想境界(G-VB)とシームレスに統合されてもよく、器具20を解剖学的体積部(A)に導くように構成される。器具アクセス体積部(TAV)は、アクセスファンネル、コーン、バブル、半球、プリズムなどの任意の適切な幾何学形状であり得る。器具アクセス体積部(TAV)の入口は、ユーザを一般仮想境界(G-VB)のゾーンに導く。これが行われるのは、器具アクセス体積部(TAV)及び許容体積部(AV)が、器具20を手術部位に導くように、手動モードにおいてユーザが通過できない仮想境界を定めるために部分的に使用されるためである。ユーザが器具アクセス体積部(TAV)の入口に当たると、器具20は仮想境界から滑らかに逸らされ、器具20は手術部位に向かって導かれる。器具アクセス体積部(TAV)または許容体積部(AV)の内部に入ると、ユーザはエネルギーアプリケータを起動して自律的なミリングを可能にすることができる。
【0102】
本明細書に記載されているもの以外の一般仮想境界(G-VB)の例も十分に考慮されており、本明細書に記載されている患者固有のモーフィング技術の対象となり得る。
【0103】
C.患者固有の仮想境界
このセクションでは、図6~12を参照しながら、一般仮想境界(G-VB)を解剖学的構造モデル(AM)の表面の特徴にモーフィングして、患者固有の仮想境界(PS-VB)をさらに生成できるようにするための詳細について説明する。
【0104】
モーフィングは、本明細書に具体的に記載されているもの以外の技術に従って実行されてもよい。さらに、本明細書の例では、一般仮想境界(G-VB)を解剖学的体積部(A)としての脛骨に対してモーフィングすることに焦点を当てている。もちろん、一般仮想境界(G-VB)は、任意の解剖学的体積部(A)に対してモーフィングされ得る。
【0105】
システム10、コントローラ30、ソフトウェアプログラム80及び幾何学的エンジン72は、モーフィングを準備及び実行するための様々なコンピュータ実装の機能を、個別に、及び組み合わせて実行することができる。機能は、メッシュをCADボディに変換しまたはその逆の変換を行うこと;曲線、表面、シート、及びソリッドボディの交差及び除去;ポリゴンをスプライン曲線に変換するスプラインフィッティング;元のエッジや面とモーフィングされたエッジや面との間の関係を定めるためのマッピング;スプライン表面の作成;面の表面を置換すること;曲線に沿って掃引すること;オフセットを生成すること;線形押し出し;面の縫製またはマージ、などの機能を含むがこれらに限定されない。これらの様々な機能は、本明細書の説明の文脈で理解される。さらに、本明細書に記載のステップは、本明細書に記載の順序以外の任意の適切な順序で実行することができる。
【0106】
最初に、解剖学的構造モデル(AM)のメッシュを、モーフィング処理と互換性のあるCADソリッドボディモデルに変換する必要がある場合がある。このステップは、オフラインで実行することができ、解剖学的構造モデル(AM)の入力ソースによっては必要ではない場合がある。
【0107】
一般仮想境界(G-VB)は、説明された任意の方法に従って、システム10によって提供される。図4の例において、一般仮想境界(G-VB)は、インプラントモデル(IM)に関連付けられ、インプラントモデル(IM)に基づいて、またはそうでなければインプラントモデル(IM)から導出され、マルチコンパートメントの脛骨遠位端切除のために配置されている。図4を参照すると、この特定の脛骨用途の一般仮想境界(G-VB)は、ベース(B)及び隣接する側部の表面(S)を含む。この例では、ベース(B)は平面である。ベース(B)は、外周(P)を有し、側部の表面(S)は、横方向に配置され、より具体的には、ベース(B)に直交してベースの外周(P)に沿って配置されている。一般仮想境界(G-VB)は、ベース(B)に対向する上面(Ts)を含むこともできる。もちろん、シナリオに応じて、一般仮想境界(G-VB)は、図4に示されるもの以外の任意の形状を有することができる。一般仮想境界(G-VB)の表面は、平面または曲面であり得る。一般仮想境界(G-VB)は、任意の数のレイヤー(層)を含むこともでき、開いた幾何学形状でもよいし、閉じた幾何学形状でもよい。
【0108】
これらの表面、外周、またはエッジのいずれか、または一般仮想境界(G-VB)の他の幾何学的特徴は、モーフィングされるように構成されている。さらに、一般仮想境界(G-VB)には、モーフィングできない特徴が存在する場合がある。
【0109】
一般仮想境界(G-VB)は、解剖学的構造モデル(AM)の近くに配置される。一般仮想境界(G-VB)の位置決めは、システム10のディスプレイ38のいずれかに表示されるGUI96を使用して実行されまたは視覚化され得る。ユーザは、一般仮想境界(G-VB)を手動で解剖学的構造モデル(AM)の近くに配置することができる。そのような位置決めを容易にするため、入力デバイス40、42のいずれかからの入力が利用され得る。あるいは、ソフトウェアプログラム80が、一般仮想境界(G-VB)を解剖学的構造モデル(AM)の近くに自動的に配置してもよい。プログラム80は、プリセットされたパラメータまたは距離に基づいて、最適なアルゴリズムまたは一般仮想境界(G-VB)のデフォルトの配置を利用することができる。
【0110】
一例において、一般仮想境界(G-VB)の位置決めは、術前に、すなわち、術前計画に従って行われる。あるいは、また有利には、一般仮想境界(G-VB)の位置決めが術中に行われ得る。外科医が術前計画に満足していない場合や予期しない状況が発生した場合、外科医は、術中に一般仮想境界(G-VB)の位置を自由に更新することができる。本明細書に記載の技術を使用することにより、システムは、計算時間の大幅な遅延を必要とせずに、前述のモーフィングをオンザフライで実行することができる。更新された仮想境界、及び任意選択で切除体積部とミリング経路を含む、更新された患者固有の計画は、術中に迅速に生成され得る。
【0111】
図6を参照すると、患者固有の機能が実行され、解剖学的構造モデル(AM)は、解剖学的構造モデル(AM)の外周を部分的にまたは全体的に囲む断面と交差するサイズのまたはそれよりも大きい基準面(E)に交差する。基準面(E)のサイズは有限でも無限でもよい。この例において、基準面(E)は平面であるが、非平面であってもよいし、フリーフォームの表面であってもよいし、またはいくつかの平面ストリップで構成されてもよい。この例において、基準面(E)は、互いに同一平面上にある、一般仮想境界(G-VB)のベース(B)とベースフットプリント(FP)表面とを包含している。
【0112】
この例では、基準面(E)と解剖学的構造モデル(AM)との間のこの交差の結果は、閉じた幾何学形状である交差輪郭(IC)である。ただし、適用例、基準面(E)、及び解剖学的構造モデル(AM)によっては、交差輪郭(IC)が開いた幾何学形状になる場合がある。ここで、交差輪郭(IC)とは、基準面(E)の平面によってスライスされた解剖学的構造モデル(AM)の断面の外周のことである。交差輪郭(IC)は、その幾何学形状が患者の解剖学的構造モデル(AM)から特別に得られるものであるので、患者固有のものである。交差輪郭(IC)は、基準面(E)を使用する以外の技術を使用して定められ得る。例えば、交差輪郭(IC)は、1つまたは複数の表面の一般仮想境界(G-VB)と解剖学的構造モデル(AM)の交差に基づいて定められ得る。図4においては、例えば、一般仮想境界(G-VB)のベース表面(B)が、交差輪郭(IC)を特定するために利用され得る。
【0113】
交差輪郭(IC)は、患者固有の仮想境界(PS-VB)の基本的なパラメータを定めるために、全体的または部分的に使用される。本明細書で説明する例では、一般仮想境界(G-VB)と重なる交差輪郭(IC)の部分のみが考慮される。具体的には、交差輪郭(IC)は、器具20が解剖学的構造の隣接する軟組織領域に接触するのを防ぐために患者固有のモーフィングを必要とする交差輪郭(IC)の部分についてのみモーフィングするために考慮される。あるいは、交差輪郭(IC)全体が考慮されてもよい。幾何学的エンジン72は、交差輪郭(IC)をポリラインまたはスプライン曲線として定めることができる。一例において、交差輪郭(IC)は、平面(最小二乗)フィッティングスプラインによって近似される平面的なポリゴンである。
【0114】
交差輪郭(IC)は、基準面(E)と一致する。1つの技術によれば、交差輪郭(IC)は、基準面(E)を使用することによって作成される。一例において、交差輪郭(IC)は、交差によって基準面(E)から幾何学的にトリミングすることができる。例えば、幾何学的エンジン72は、交差輪郭(IC)内の領域を維持しながら、交差輪郭(IC)の外側にある基準面(E)の領域をトリミングすることができる。基準面(E)のトリミングは、基準面(E)に直交するトリミング(断面)平面(TP)に沿った方向にすることができる。幾何学的エンジン72は、交差輪郭(IC)の内側にある基準面(E)の部分(TS)を特定するために使用することができる。この部分は、被トリミング表面(TS)であり、交差輪郭(IC)で囲まれ、基準面(E)と一致する面としても理解され得る。以下に説明するように、システム10は、基準面(E)のトリミングされた領域を利用して、後で患者固有の仮想境界(PS-VB)のオフセットを仮想的に定めるための幾何学的基礎を提供することができる。
【0115】
上記では、トリミングが表面を定め及び拡張する1つの方法として説明されているが、システム10は、同じことを行うために他の任意のコンピュータ実装技術を利用してもよい。例えば、交差輪郭(IC)及び対応する表面は、幾何学的関数を使用して、元の幾何学形状から平面方向に変更することができる。さらに、上記では、基準面(E)について説明されているが、同様の結果をもたらすための様々な方法があり得る。
【0116】
ここでは、一般仮想境界(G-VB)の側部の表面(S)とベース(B)の表面がモーフィングするように構成されている。本明細書で使用される場合、側部の表面(S)は、1つの表面であってもよいし、多くの個々の側部の表面の集合である側部の表面領域であってもよい。表面は、同じタイプでも異なるタイプでもよい。そのため、側部の表面(S)は、代替的に側部の表面領域と呼ばれることもある。側部の表面(S)が配置されている一般仮想境界(G-VB)の外周(P)も、モーフィングするように構成されている。以降の説明では、側部の表面(S)に関連付けられた仮想境界が、アンレーインプラントのための脛骨のミリングに与える影響が重要であるため、側部の表面(S)に焦点を当てる。つまり、側部の表面(S)が実際には患者固有のものではない場合、脛骨の周縁にアンダーカットまたはオーバーカットがある可能性がある。特に、以下のこれらの技術は、一般仮想境界(G-VB)の他のいずれかの表面をモーフィングするために利用でき、説明は側部の表面だけに限定されない。
【0117】
次のセクションでは、上記の患者固有のモーフィング技術の導入の特徴に基づいて構築される患者固有の仮想境界(PS-VB)のバリエーションについて説明する。これらのバリエーションには、オフセットされていない患者固有の仮想境界(PS-VB)とオフセットされた患者固有の仮想境界(PS-VB’)とがある。
【0118】
1.患者固有の仮想境界のオフセットされていない版(非オフセットバージョン)
このセクションでは、解剖学的構造モデル(AM)にモーフィングされているが、オフセットされていない患者固有の仮想境界(PS-VB)の例について説明する。
【0119】
図7を参照すると、ソフトウェアプログラム80は、図6の交差輪郭(IC)を利用する。交差輪郭(IC)が与えられた場合に一般仮想境界(G-VB)をどのようにモーフィングするかを判定するため、ソフトウェアプログラム80は、候補となるモーフィング可能な面(F)を収集する。より具体的には、この例の場合、側部の表面(S)が、複数の候補となるモーフィング可能な側面(F)に分解される。あるいは、側部の表面(S)は、面ではなく、複数の候補となるモーフィング可能な側部の表面に分解される。本明細書で使用される場合、面は、表面の境界のある部分である。面は、ループで囲まれている場合があり、各ループは、閉じられ且つ並べられたエッジのセットである。通常、すべての面は、表面のサブセットである。ただし、面と表面という用語は、本明細書での任意の使用のために交換され得る。
【0120】
ソフトウェアプログラム80は、側部の表面(S)と解剖学的構造モデル(AM)との間の幾何学的関係を判定する。説明された例において、ソフトウェアプログラム80は、平面アプローチを利用して、側部の表面(S)のエッジに対する交差輪郭(IC)の分析を通じて、モーフィング可能なエッジ及びモーフィング不可能なエッジを判定する。しかし、ソフトウェアプログラム80は、3Dアプローチを利用することができ、ソフトウェアプログラム80は、側部の表面(S)に対する解剖学的構造モデル(AM)の体積部の分析を通じて、モーフィング可能な表面領域及びモーフィング不可能な表面領域を判定してもよい。
【0121】
脛骨の例の場合、ソフトウェアプログラム80は、モーフィング可能な側面(F)をどのように定めるかを判定するために、側部の表面(S)と被トリミング表面/面(TS)との間の幾何学的関係を特定することができる。
【0122】
この判定は、様々な方法で実行され得る。一例において、ソフトウェアプログラム80は、被トリミング表面/面(TS)から離隔しているか、または同一平面上にない側部の表面(S)のエッジを特定する。ソフトウェアプログラム80は、基準面(E)などの側部の表面(S)に直交する平面に関してこの判定を行うことができる。この例において、側部の表面(S)の上部エッジ(TE)は、被トリミング表面/面(TS)と同一平面上にない。また、ソフトウェアプログラム80は、エッジがモーフィングされるべきかどうかを判定するために、エッジの切除解剖学的構造モデル(AM)までの距離を評価することができる。
【0123】
各上部エッジ(TE)は、潜在的にモーフィング可能な面(F)の輪郭を描くために利用され得る。この例の上部エッジ(TE)は、解剖学的構造モデル(AM)の上方にあるため、モーフィングされない。したがって、それに関連付けられた仮想境界はミリングに影響しない。上部エッジ(TE)はいくつあってもよい。上部エッジ(TE)は、任意の数のサブエッジに分割され得る。
【0124】
各上部エッジ(TE)には、対応する下部エッジ(BE)がある。簡略化のため、この例において、各モーフィング可能面(F)は、1つの上部エッジ(TE)と対応する1つの下部エッジ(BE)しか有していないものとする。ただし、各モーフィング可能面(F)は、複数の上部エッジ(TE)及び下部エッジ(BE)を有してもよい。また、下部エッジ(BE)と対応する上部エッジ(TE)とは、同じ長さを有しているが、それらが異なる長さを有してもよい。
【0125】
幾何学的エンジン72は、側部の表面(S)を任意の数のモーフィング可能な側面(F)に分解することができる。この例においては、4つのモーフィング可能な側面(F1~F4)が定められており、それぞれが対応する上部エッジ(TE1~TE4)と下部エッジ(BE1~BE4)とを有している。側面(F5)はモーフィング可能ではなく、むしろ固定されているが、その理由は以下で明らかになる。
【0126】
ソフトウェアプログラム80は、任意の数のモーフィング可能な面(F)を定めることができる。ソフトウェアプログラム80は、任意の適切な方法で、そして、交差輪郭(IC)の幾何学形状、一般仮想境界(G-VB)の幾何学形状、計算時間と効率、コスト関数などの任意の適切な考慮事項に基づいて、そのようにすることができる。
【0127】
一例において、側部の表面(S)または任意のモーフィング可能な側面(F)は、被トリミング表面/面(TS)と側部の表面(S)との交点があるところで分割され得る。例えば、図6の頂点(V3)では、交差輪郭(IC)が側部の表面(S)と交差している。この交点を通り、及びこの点でのエッジの接線に直交する平面を生成することで、側面(F3)及び(F4)、並びにそれぞれのエッジを描くことができる。この例において、頂点(V3)は、患者固有の仮想境界(PS-VB)の最後のモーフィング可能な面(F4)の左下の頂点であり、患者固有の仮想の境界(PS-VB)のモーフィング可能な部分とモーフィング不可能な部分との間の移行部を提供する。しかし、モーフィング可能な部分とモーフィング不可能な部分との間の移行部は、他の幾何学的条件に基づいて描くことも可能である。このような移行部については、以下でさらに説明する。
【0128】
この例における下部エッジ(BE)は、交差輪郭(IC)にモーフィングされる。なぜなら、これらの下部エッジ(BE)は、骨の境界に近接しているか、又は衝突する可能性があり、したがって、それに関連付けられた仮想境界がミリングに影響を与えるからである。これらのエッジは、モーフィング可能なエッジと呼ばれる。モーフィング可能なエッジが定められると、各モーフィング可能なエッジの開始点と終了点に1つまたは複数の頂点(V)が定められる。ここで、モーフィング可能なエッジは、1つの曲線の境界部分を表す幾何学的特徴である。頂点(V)は、順番に並べて配置され得る。例えば、頂点(V0)と(V1)の間に下部エッジ(BE1)が定められ、頂点(V1)と(V2)の間に下部エッジ(BE2)が定められる、などである。モーフィング可能なエッジの数に基づいて任意の数の頂点(V)が定められ得る。さらに、この例においては、下部エッジ(BE)がモーフィング可能になっているが、それ以外のエッジもモーフィングすることが可能である。
【0129】
図8を参照すると、図7から得られる上から見た図が提供され、この図は、モーフィング可能な下部エッジ(BE1~BE4)と交差輪郭(IC)との間の平面的な幾何学的関係を示している。定められた頂点(V)を使用して、ソフトウェアプログラム80によって患者固有のマッピング機能が実行され、一般仮想境界(G-VB)と解剖学的構造モデル(AM)との間の関係を定める。より具体的には、脛骨の例の場合、ソフトウェアプログラム80は、患者固有の仮想の境界(PS-VB)のモーフィングされた面または表面を生成することを促進するため、対応する側面(F)の下部エッジ(BE)と交差輪郭(IC)との間の関係をマッピングする。
【0130】
一般仮想境界(G-VB)の頂点(V)は、交差輪郭(IC)にマッピングされる。各頂点(V)について、プログラム80は、(V)において、対応する/関連する下部エッジ(BE)の法平面を定める。法平面と交差輪郭(IC)との最も近い交点は、プログラム80によって特定される。これらの交点は、モーフィングされた頂点(MV)と呼ばれる。一例において、下部エッジ(BE)は、その頂点(V)がマッピングされたときに2つの対応するモーフィングされた頂点(MV)を生成する場合、完全にモーフィング可能である。例えば、(BE1)の頂点(V0とV1)は、2つのモーフィングされた頂点(MV0)と(MV1)を生成し、(BE2)の頂点(V1とV2)は、2つのモーフィングされた頂点(MV1)と(MV2)を生成する、などである。このように、下部エッジ(BE1~BE4)は、それぞれの頂点(V)が2つの対応するモーフィングされた頂点(MV)を生成するので、それぞれモーフィング可能である。しかし、図7及び図8において、下部エッジ(BE5)は、ソフトウェアプログラム80によってモーフィングできないか、または部分的にしかモーフィング可能でない。主に、頂点(V4)は、マッピングされたときに1つのモーフィングされた頂点(MV4)を生成するが、他のモーフィングされた頂点(MV5など)が存在しない。言い換えると、下部エッジ(BE5)のもう一方の端からの下部エッジ(BE5)に垂直な平面は、交差輪郭(IC)と交差しない。このようなエッジは、以下で説明するように、モーフィングされる面または表面と、モーフィングされない面または表面との間の移行部を提供することができる。
【0131】
この場合も、このマッピング機能は、2Dのコンテキスト(すなわち、側部の表面(S)の下部エッジ(BE)と交差輪郭(IC)との間)で説明されているが、ソフトウェアプログラム80は、側部の表面(S)の点、線、または領域を解剖学的構造モデル(AM)などの表面にマッピングするなど、任意の3Dマッピングを利用してもよい。
【0132】
また、上記の例は、一般仮想境界(G-VB)の幾何学形状をモーフィング可能にするべきかどうかを判定する1つの方法である。解剖学的構造モデル(AM)の輪郭または表面を一般仮想境界(G-VB)の輪郭または表面に投影するなど、同じことを行うための他の例も十分に企図されている。
【0133】
図8に戻り、モーフィングされた頂点(MV)は、交差輪郭(CV)と一致するモーフィング可能なセグメント(C)を定めるために利用される。各セグメント(C)は、2つの隣接するモーフィングされた頂点(MV)によって仕切られた交差輪郭(IC)に沿った曲線である。図8の例において、セグメント(C1)は、モーフィングされた頂点(MV0)と(MV1)によって仕切られており、セグメント(C2)は、モーフィングされた頂点(MV1)と(MV2)によって仕切られている、などである。図8では、この処理の結果が4つのモーフィング可能なセグメント(C1)~(C4)である。各セグメント(C1)~(C4)は、マッピング機能によって対応する下部エッジ(BE1)~(BE4)から導出される。これらのセグメント(C1)~(C4)は、交差輪郭に一致し、下部エッジ(BE1)~(BE4)を置き換える。
【0134】
特に、この例において、割り当てるモーフィングされた頂点(MV5)が存在しないためにモーフィング可能なセグメント(C5など)が存在しないことである。このようなセグメントは、一般仮想境界(G-VB)のモーフィング可能な部分とモーフィング不可能な部分の間の移行を可能とする。
【0135】
図9を参照すると、患者固有の仮想境界(PS-VB)がほぼ形成されている。モーフィング可能なセグメント(C1)~(C4)は、新しい下部エッジとして定められる。上部エッジ(TE)は、元の一般的な形のままである。つまり、新しい下部エッジは、モーフィングされているが、上部エッジ(TE)は、固定されている。
【0136】
この構成から、下部のモーフィング可能なセグメント(C)と上部の上部エッジ(TE)との間に線織面(RS)が定められる。線織面は、表面S(t,u)=(1-u)p(t)+uq(t)であり、式中0<=u<=1であり、p(t)及びq(t)は、同じパラメータ領域を持つ2つの3D曲線である。線織面は、パラメトリックな形式の移動線によって掃引される点のセットとして理解され得る。この例において、p(t)は、下部セグメント(C)であり、q(t)は、線織面の上部エッジ(TE)である。
【0137】
線織面(RS)は、解剖学的構造モデル(AM)の最も高い部分(AM-T)の上方に延びているため、線織面(RS)の上部エッジ(TE)は、一般的なものであり、したがって、これら上部エッジ(TE)をモーフィングする必要はない。線織面(RS)の下部エッジは、解剖学的構造モデル(AM)の最も高い部分(AM-T)よりも下側にあるため、下部セグメント(C)は、モーフィングされる。線織面作成機能は、これら2つのエッジの間に表面を作成する。
【0138】
一例において、線織面の作成は、解剖学的構造モデル(AM)の交差輪郭(IC)だけではなく、解剖学的構造モデル(AM)の3D形状を考慮に入れる。例えば、解剖学的構造モデル(AM)のセグメント(C)と最も高い部分(AM-T)の間の領域にある、線織面(RS)の部分は、解剖学的構造モデル(AM)の輪郭のある側部の表面に一致するように輪郭が描かれている。解剖学的構造モデル(AM)の最も高い部分(AM-T)と上部エッジ(TE)との間の領域では、線織面(RS)は一般的な形に移行できる。つまり、解剖学的構造モデル(AM)の輪郭のある側部の表面に一致するように輪郭が描かれていない。
【0139】
図9では、結果として得られた線織面(RS1)~(RS4)が示されており、(RS4)は、最後にモーフィングされた線織面であり、それは、現在の患者固有の仮想境界(PS-VB)のモーフィングされた部分とモーフィングされていない部分とを移行(遷移)させている。図9では、(RS4)の右側に隣接する表面は、モーフィングされていない領域(非モーフィング領域)への移行面になっている。このような移行面については、以下で説明する。
【0140】
線織面(RS1~RS4)にそれぞれ関連付けられた各上部エッジ(TE1~TE4)は、隣接するモーフィングされていない頂点(NVM)間に定められ得る。具体的には、図9において、(TE1)は、(NMV0)と(NVM1)の間で定められ、(TE2)は、(NMV1)と(NVM2)の間で定められる、などである。これらの頂点(NVM)は、この例ではモーフィングされていない元の上部エッジ(TE)上で定められているため、「モーフィングされていない(非モーフィング)」である。
【0141】
上記の線織面(RS)は、元のモーフィング可能な側面(F)を置換する。このような置換は、上記の動作の最後に行ってもよいし、段階的に行ってもよい。この置換を実行するために、幾何学的エンジン72は、パラソリッドのLOPS機能などの面を置換するための任意の適切な機能を使用することができる。線織面(RS)は、幾何学的エンジン72を使用して同等のスプライン面に変換することができる。
【0142】
線織面(RS)は、プログラム80を使用して1つにマージされ得る。これは、幾何学的エンジン72がすべてのセグメント(C1)~(C4)を接続することによって、なされ得る。これらのセグメント(C1)~(C4)の共通の基礎となる曲線は、交差輪郭(IC)またはその一部であり、これらのセグメント(C1)~(C4)の接続は滑らかなフリーフォームの線である。このセグメントの接続から、被トリミング交差輪郭(TIC)が特定される。被トリミング交差輪郭(TIC)は、元の交差輪郭(IC)のトリミングされた部分であるため、そのように名付けられている。このようなマージ操作では、以下で詳細に説明する任意の移行面(T)も考慮に入れることができる。
【0143】
特に、図9に示される患者固有の仮想境界(PS-VB)の一部は、一般仮想境界(G-VB)からの元の(モーフィングされていない)幾何学形状を含む。それにもかかわらず、仮想境界(PS-VB)は、依然として患者固有のものである。本明細書で説明する技術では、一般仮想境界(G-VB)のすべての幾何学形状をモーフィングする必要はない。代わりに、モーフィングされた幾何学形状は、外科用器具20によって切除された骨の実際の体積部に触知可能な影響を与えるものであり得る。一般仮想境界(G-VB)の重要でない部分は、元の形状のままであってもよい。また、線織面(RS)は、一般仮想境界(G-VB)からのこれらの元の部分とマージされ得る。患者固有の仮想境界(PS-VB)は、表面のすべてのマージが実行された後に定められ得る。
【0144】
図4に示される一般仮想境界(G-VB)と比較して、図9に示される患者固有の仮想境界(PS-VB)は、明らかに脛骨の外縁/外周に適合している。患者固有の仮想境界(PS-VB)を使用すると、その後のミリングは、周囲の軟組織を保存できるように適切に制限される。
【0145】
上記の例は、主に脛骨のケースを説明するためのモーフィングに焦点を当てている。脛骨の露出した上面に対して制約が望まれることが多いという脛骨のケースの実務上の現実のため、一般仮想境界(G-VB)は、脛骨の解剖学的構造モデル(AM)の最も高い部分(AM-T)に対して配置される。したがって、この関係に基づいて、上記の技術は、主に一般仮想境界(G-VB)の下部(例えば、下部エッジ(BE)やベース(B))のモーフィングに焦点を当てている。
【0146】
しかし、本明細書に記載されている技術は、特定の適用に応じて、この例よりも広範囲に適用され得る。したがって、一般仮想境界(G-VB)の任意の部分(複数可)をモーフィングすることが可能である。同様に、解剖学的構造モデル(AM)の断面輪郭(IC)を、解剖学的構造モデル(AM)をベース(B)以外の一般仮想境界(G-VB)の任意の部分と交差させることに基づいて計算することも可能である。
【0147】
例えば、一般仮想境界(G-VB)が解剖学的構造モデル(AM)の最下部の下側に、つまり、下方から配置される場合、解剖学的構造モデル(AM)の断面輪郭(IC)は、解剖学的構造モデル(AM)と、一般仮想境界(G-VB)の上面(Ts)との交差に基づいて計算される。そして、上部エッジ(TE)がモーフィングされ、下部エッジ(BE)が一般的なままとされ得る。別の例において、一般仮想境界(G-VB)は、解剖学的構造モデル(AM)の側部から突出する特徴に対して配置され、この突出する特徴は、下部エッジ(BE)と上部エッジ(TE)との間に(これらを超えないように)排他的に配置される。この例において、解剖学的構造モデル(AM)の断面輪郭(IC)は、解剖学的構造モデル(AM)と、一般仮想境界(G-VB)の側部の表面(S)との交差に基づいて計算され得る。そして、一般仮想境界(G-VB)の下部エッジ(BE)及び上部エッジ(TE)が一般的なままであり得る一方、側部の上面(S)の層(レイヤー)がモーフィングされる。さらに別の例において、一般仮想境界(G-VB)は、インプラントの位置合わせポストのミリングをガイドするために、ベース(B)の下に一体的に延びる体積部を含んでもよい。この体積部は、一般仮想境界(G-VB)の最下部にある可能性があり、一般的またはインプラント固有のままである。ただし、この場合、一般仮想境界(G-VB)の最下部ではないベース(B)は、解剖学的構造モデル(AM)の断面輪郭(IC)にモーフィングされる。他の例において、一般仮想境界(G-VB)は、一般仮想境界(G-VB)のベース(B)及び上面(Ts)の両方が解剖学的構造モデル(AM)と交差するように配置され得る。ここでは、2つの交差輪郭(IC)、すなわち、解剖学的構造モデル(AM)と上面(Ts)との交差に基づく1つの交差輪郭と、解剖学的構造モデル(AM)とベース(B)との交差に基づくもう1つの交差輪郭とが存在し得る。したがって、下部エッジ(BE)と上部エッジ(TE)の両方がモーフィングされ得る。
【0148】
upper(上)、lower(下)、top(上)、bottom,(下)、side(側部)などの本明細書に記載されている相対的な用語は、図に描かれている要素の向きに対して方向付けられている。このような相対的の用語は、説明を簡単にするために提供されているものであり、説明している能力、機能、または要素を制限することを意図したものではない。実際、本明細書に記載の技術は、任意の方法で方向付けられた幾何学的要素に利用可能である。
【0149】
2.患者固有の仮想境界のオフセットされた版(オフセットバージョン)
上記の例において、患者固有の仮想境界(PS-VB)は、交差輪郭(IC)によって部分的に定められた解剖学的構造モデル(A)の表面の特徴に一致するように、一般仮想境界(G-VB)の一部をモーフィングすることによって設計されている。
【0150】
図10~12を参照すると、患者固有の仮想境界(PS-VB)は、解剖学的構造モデル(AM)の表面の特徴からオフセット距離だけ離れた1つまたは複数の表面を用いてさらに設計することができ、それによってオフセットされた患者固有の仮想境界(PS-VB’)を生成する。
【0151】
患者固有の仮想境界(PS-VB)の非オフセットバージョンから得られる幾何学的形状オブジェクトの一部は、オフセットされた患者固有の仮想境界(PS-VB’)を生成するために使用される。したがって、このセクションで説明するように、患者固有の仮想境界(PS-VB)の任意の態様に関する上記の説明は、オフセットされた患者固有の仮想境界(PS-VB’)に完全かつ等しく適用され得る。
【0152】
一例において、オフセット距離は、外科用器具20の幾何学的特徴を考慮するか、またはそれに対応するように特別に設計されている。外科用器具20の幾何学的特徴は、器具20の切断部分の形状、器具20の可動範囲、またはシャフトやハンドルなどの切断を実行する器具20の他の部分を含み得る。例えば、器具20が球形のバー25を含む場合、オフセット距離は、球形のバー25の半径であり得る。このようなオフセットは、オフセットされた患者固有の仮想境界(PS-VB’)に従って解剖学的体積部(A)をミリングすることにより、器具20の実際のミリング特性を考慮に入れて、正確に適切な量の体積部が切除されることになる。他の例において、オフセット距離は、設定可能なデフォルト値、例えば、骨の縁から1mmなどに基づくものであり得る。
【0153】
オフセットされた患者固有の仮想境界(PS-VB’)を生成するために、システム10、ソフトウェアプログラム80、及び幾何学的エンジン72は、一例によれば、以下のステップを実行することができる。
【0154】
図9において、交差輪郭(IC)の一部であるセグメント(C1)~(C4)は、被トリミング表面/面(TS)の部分的な輪郭である被トリミング交差輪郭(TIC)を定めるために接続される。患者固有の仮想境界(PS-VB)は、まだオフセットされていない。
【0155】
図10において、(図9からの)被トリミング交差輪郭(TIC)がオフセットされてオフセットされた被トリミング交差輪郭(O-TIC)を生成する。このオフセットは、交差輪郭(IC)の対応する平面内の平面オフセットであり得る。被トリミング交差輪郭(TIC)は、被トリミング交差輪郭(TIC)を拡張するか、または被トリミング交差輪郭(TIC)を縮小することによってオフセットされ得る。さらに、被トリミング交差輪郭(TIC)は、任意の適切な方向に、平面オフセットなどの任意の適切な技術に従ってオフセットされ得る。
【0156】
上記のように、被トリミング表面/面(TS)は、基準面(E)から定められ得る。さらに、交差輪郭(IC)及び被トリミング交差輪郭(TIC)は、被トリミング表面/面(TS)の構成要素であり得る。したがって、システム10は、基準面(E)のトリミングされた領域を利用して、被トリミング交差輪郭(TIC)を仮想で拡張してオフセットされた被トリミング交差輪郭(O-TIC)を定める幾何学的基礎を提供することができる。言い換えると、交差輪郭(IC)は、基準面(E)の平面内で拡張され得る。あるいは、交差輪郭(IC)は、他の技術を使用して定められ得る。
【0157】
脛骨の適用例の場合、被トリミング交差輪郭(TIC)及びオフセットされた被トリミング交差輪郭(O-TIC)は、平面であり、フットプリント(FP)平面と一致する。主にこの例において、被トリミング交差輪郭(TIC)及びオフセットされた被トリミング交差輪郭(O-TIC)は、通常、同じ拡張可能な平面(E)から導出される。ただし、これらの輪郭は、多くの要因、例えば、解剖学的体積部(AV)の輪郭、基準面の形状(E)、オフセットの性質などに応じて同一平面上にはない場合がある。さらに、オフセットは、必ずしも基準面(E)が必要なわけではなく、他の幾何学的操作によって行うことができる。
【0158】
オフセットされた患者固有の仮想境界(PS-VB’)の幾何学形状を生成するため、この例では2つの線分(L1)、(L2)が定められている。線分(L1)は、被トリミング交差輪郭(TIC)とオフセットされた被トリミング交差輪郭(O-TIC)との間に定められる。線分(L1)は、フットプリント(FP)平面と一致し、線分の長さ(L1)は、オフセット距離(d)に等しい。この例において、オフセット距離(d)はバー25の半径に設定されている。したがって、オフセットされた被トリミング交差輪郭(O-TIC)は、バー25の半径分だけ被トリミング交差輪郭(TIC)からオフセットされている。オフセット距離(d)は、器具20に関連する他の値、またはそれ以外の値に設定することができる。
【0159】
線分(L2)は、オフセットされた被トリミング交差輪郭(O-TIC)に位置合わせされた表面の高さを定める。線分(L2)はフットプリント(FP)平面に直交し、(L1)の終点から始まり、それによって(L1)と(L2)の間にL字形を形成する。線分(L2)は、高さ(h)を定める。この例において、高さ(h)は、バー25の半径の2倍である。高さ(h)は、半径に関連するか、または関連しない他の値に設定することができる。
【0160】
上記の例は、オフセットされた患者固有の仮想境界(PS-VB’)を生成するために直交する線分を使用することについて説明している。ただし、オフセットの性質などによっては、オフセットされた患者固有の仮想境界(PS-VB’)を生成するために、直交する線分以外の幾何学形状が利用されてもよい。例えば、オフセットは、直交していない線分、平行なセグメント、曲線のセグメントなどで行われてもよい。さらに、オフセットは、上記の(d)及び(h)の方向に限定される必要はなく、任意の適切な方向であってもよい。
【0161】
線分(L1)及び(L2)から、対応する表面が生成され、オフセットされた患者固有の仮想境界(PS-VB’)が形成される。具体的には、オフセット表面(OS1)と(OS2)が、線分(L1)と(L2)からそれぞれ生成される。この例では、線分(L1)と(L2)とが直交しているため、表面(OS1)と(OS2)とは互いに直交している。線分(L1)は、オフセット表面(OS1)と一致し、線分(L2)は、オフセット表面(OS2)と一致する。これらのオフセット表面(OS)は両方とも、解剖学的構造モデル(AM)の幾何学形状から直接導出された、基礎となる交差輪郭(IC)から導出されるため、患者固有のものであり、及びモーフィングされている。あるいは、オフセット表面(OS)がオフセット面として定められてもよい。さらに、「オフセット表面」という用語は、必ずしも表面をオフセットすることを必要としない。代わりに、以下で説明するように、曲線をオフセットし、オフセット曲線に基づいてオフセット表面(OS)を生成することができる。
【0162】
ここで、オフセット表面(OS1)は、オフセットされた患者固有の仮想境界(PS-VB’)の底面(下面)の一部を形成する。オフセット表面(OS1)は、被トリミング交差輪郭(TIC)とオフセットされた被トリミング交差輪郭(O-TIC)との間に定められ、オフセット距離(d)の幅を有する。オフセット面(OS1)は、図9からの被トリミング面/面(TS)を置き換えるか、または延長する。
【0163】
オフセット表面(OS2)は、オフセットされた患者固有の仮想境界(PS-VB’)の側部の表面の一部を形成する。オフセット表面(OS2)は、オフセットされた被トリミング交差輪郭(O-TIC)と上部エッジ(O-TE)との間に定められ、高さ(h)を有する。オフセット表面(OS2)は、図9で1つにマージされた線織面(RS1)~(RS4)を置き換えることになる。
【0164】
これらのオフセット表面(OS)を作成するために、幾何学的エンジン72は、曲線に沿って平面プロファイルを掃引するように構成されている。より具体的には、この例において、セグメント(L1)及び(L2)によって形成される、図10に示される平面プロファイルのL字形は、被トリミング交差輪郭(TIC)に沿って掃引される。交差輪郭(TIC)に対する平面プロファイルのL字形と方向は、掃引中に変化しない。
【0165】
幾何学的エンジン72は、任意の経路に沿って任意の形状のプロファイルを掃引してオフセット面(OS)を形成することができる。掃引は、並進的または回転的であり得ると共に、1つまたは複数の掃引表面を含むことができる。プロファイルは、掃引中に形状が変化し得る。さらに、掃引は、長いオフセットされた被トリミング交差輪郭(O-TIC)に沿ってなどのように、被トリミング交差輪郭(TIC)以外の曲線に沿って行われてもよい。
【0166】
掃引に代えて、幾何学的エンジン72は、オフセットされた被トリミング交差輪郭(O-TIC)を前記半径の2倍などの任意の適切な長さで押し出すなど、幾何学形状を押し出すことによって、オフセット表面(OS)を生成してもよい。
【0167】
上記のプロセスの結果は、オフセットされた患者固有の仮想境界(PS-VB’)の一部であり、患者固有及びオフセット表面(OS1)と(OS2)で構成される。
【0168】
この段階で、オフセット面(OS)は、図9の患者固有の仮想境界(PS-VB)の非オフセットバージョンからの幾何学的オブジェクトと統合することができる。この例において、オフセット面(OS2)の上部エッジ(O-TE)は、図9の患者固有の仮想境界(PS-VB)の側部の表面の上部エッジ(TE)(複数可)に達していない。さらに、オフセットされた被トリミング交差輪郭(O-TIC)は、モーフィングされているが、上部エッジ(TE)は固定されており、一般的な形のままである。
【0169】
これより図11を参照すると、システム10は、幾何学的エンジン72を活用して、オフセット表面(OS2)を(図9からの)元の上部エッジ(TE)に接続するための追加の表面を生成するように構成され、それによってオフセットされた患者固有の仮想境界(PS-VB’)をさらに定める。
【0170】
一例において、図9の元の上部エッジ(TE)上のモーフィングされていない頂点(NMV)は、第2のオフセット表面(OS2)の上部エッジ(O-TE)にマッピングされる。このようなマッピングは、例えば、モーフィングされていない各頂点(NMV)を第2の表面(OS2)の上部エッジ(O-TE)に正射影することによって行うことができる。このマッピングの結果により、オフセット表面(OS2)の上部エッジ(O-TE)にオフセット頂点(OV’)を定めることができる。隣接するオフセット頂点(OV’)の間で、オフセット表面(OS2)の上部エッジ(O-TE)にオフセットセグメントのセット(C’’)を定めることができる。ここから、幾何学的エンジン72によって、元の上部エッジ(TE)とオフセット表面(OS2)の上部エッジ(O-TE)との間を遷移(移行)するように、線織面(RS’)が構築される。より具体的には、この例では、(RS1’)が(TE1)と(C1’’)の間に定められ、(RS2’)が(TE2)と(C2’’)の間に定められる、などである。
【0171】
別の例では、図9の被トリミング交差輪郭(TIC)からのセグメント(C)を利用することができる。各曲線セグメント(C1)~(C4)について、幾何学的エンジン72は、オフセット表面(OS2)上の対応するオフセットセグメント(C’)を決定する。図示されているように、オフセットセグメントの第1のセット(C’)は、オフセットされた被トリミング交差輪郭(O-TIC)上に定められ、オフセットセグメントの第2のセット(C’’)は、オフセット表面(OS2)の上部エッジ(O-TE)上に定められる。オフセットセグメント(C’)は、曲線セグメント(C)と平面をなし、オフセットセグメント(C’’)は、(C)と(C’)の両方に対してオーソゴナル(orthogonal)であるか、またはより具体的には(C)と(C’)の両方に対して平行である。セグメント(C)、(C’)、及び(C’’)は、被トリミング交差輪郭(TIC)の幾何学形状に基づいてモーフィングされているため、すべて患者固有である。
【0172】
特に、これらのセグメントはすべてオフセット表面(OS2)上に存在し、したがってある程度の冗長性があるため、幾何学的エンジン72がオフセットセグメント(C’)及び(C’’)の両方を決定する必要がない場合がある。それでもなお、例示の目的で、オフセットセグメント(C’)と(C’’)の両方を以下に説明する。
【0173】
オフセットセグメント(C’)及び(C’’)は、図8を参照して説明したマッピング機能など、幾何学的エンジン72によって採用される任意の適切な技術を使用して決定することができる。例えば、オフセットされた被トリミング交差輪郭(O-TIC)上のオフセット頂点(OV)のセットは、被トリミング交差輪郭(TIC)上にあるモーフィング頂点(MV)にマッピングすることができる。同様に、オフセット表面(OS2)の上部エッジ(O-TE)上のオフセット頂点(OV’)は、オフセットされた被トリミング交差輪郭(O-TIC)上のオフセット頂点(OV)にマッピングすることができる。この例において、オフセット頂点(OV0~OV4)及び(OV0’~OV4’)は、モーフィングされた頂点(MV0~MV4)からマッピングされている。このマッピングを実行する1つの例には、被トリミング交差輪郭に直交し、頂点(MV)に一致する平面を定め、オフセット頂点(OV)をその平面とオフセット曲線(O-TIC)の交点として決定することにより、オフセットされた被トリミング交差輪郭(O-TIC)の対応する点/頂点(OV)に各点(MV)を割り当てる(またはマッピングする)ことが含まれる。同様に、上部エッジ(O-TE)上のオフセット頂点(OV’)は、(OV)から(OV’)にマッピングすることによって生成することができる。
【0174】
隣接するオフセット頂点(OV0~OV4)の間で、幾何学的エンジン72は、オフセットされた被トリミング交差輪郭(O-TIC)に沿ってオフセットセグメント(C1’~C4’)を生成する。隣接するオフセット頂点(OV0’~OV4’)の間で、幾何学的エンジン72は、オフセット表面(OS2)の上部エッジ(O-TE)に沿って、オフセットセグメント(C1’’~C4’’)を生成する。
【0175】
オフセットセグメント(C1’’~C4’’)から、別のマッピングを実行して、元の上部エッジ(TE)において、対応するセグメントを得ることができる。ここで、元の上部エッジ(TE)上のモーフィングされていない頂点(NMV)は、元の上部エッジ(TE)上のオフセット頂点(OV’)から最も近い点に、例えば本明細書に記載されているマッピング技術のいずれかを使用して、マッピングすることができる。このマッピングの結果は、対応するモーフィングされていない頂点(NMV0’~NVM4’)であり、これらは、その間に定められた上部エッジセグメント(TE1’~TE4’)を有する。上部エッジセグメント(TE1’~TE4’)は元の上部エッジ(TE)上にあるが、それらは必ずしも図9の上部エッジセグメント(TE1~TE4)に対応する必要はない。同様に、モーフィングされていない頂点(NMV0’~NVM4’)は、図9から得られるモーフィングされていない頂点(NMV0~NVM4)に対応してもよいし、対応しなくてもよい。この例において、すべての元の上部エッジセグメント(TE1~TE4)または(TE1’~TE4’)は、1つの滑らかな曲線、つまり上部エッジ(TE)または上部エッジ(TE’)にモーフィングすることができる。
【0176】
幾何学的エンジン72は、他の適切な幾何学的手法を使用して、上部エッジセグメント(TE1’~TE4’)を定めることができる。例えば、幾何学的エンジン72は、代替的に、曲線セグメント(C)からオフセットセグメント(C’)、オフセットセグメント(C’’)へのマッピングを行う中間ステップなしに、曲線セグメント(C)から元の上部エッジ(TE)に直接マッピングすることができる。また、幾何学的エンジン72は、オフセットセグメント(C’)またはオフセットセグメント(C’’)から元の上部エッジ(TE)に直接マッピングすることができる。さらに、上部エッジセグメント(TE’)は、近似法などのマッピング以外の幾何学的機能に従って定めることができる。
【0177】
ここから、幾何学的エンジン72によって、オフセット表面(OS2)の上部エッジ(O-TE)と元の上部エッジ(TE)との間で遷移(移行)するように、線織面(RS’)が構築される。線織面(RS’)は、任意の上記の「患者固有の」セグメント(C)、(C’)、または(C’’)と、上部エッジセグメント(TEまたはTE’)との間で定められる。図11では、線織面(RS’)がオフセットセグメント(C’’)と上部エッジセグメント(TEまたはTE’)との間に形成され、その結果、線織面(RS1’~RS4’)が得られる(簡略化のため図11においてRS1’は表示されていない)。一例において、線織面(RS’)は、オフセット表面(OS2)の上部エッジ(O-TE)と元の上部エッジ(TE)との間の可能な限り短い経路を用いて形成される。あるいは、または加えて、これらの線織面(RS’)のいずれかを、解剖学的構造モデル(AM)の輪郭のある側部の表面と一致するように輪郭を描くことも可能である。
【0178】
図13は、図12で特定された視点から取得された、オフセットされた患者固有の仮想境界(PS-VB’)の断面図である。この例において、図9からの先行する線織面(RS)は、(RS’)及び(OS2)に置き換えられているが、比較のため、先行する線織面(RS)を参照してオフセット断面領域が可視化されている。ここで、オフセット断面領域は、(RS)、(RS’)、(OS1)、(OS2)で囲まれた領域のことである。
【0179】
ここでは、線織面(RS’)の生成に関連する例を説明するため、セグメント(C)、(C’)、または(C’’)が参照されているが、線織面(RS’)を生成するために被トリミング交差輪郭(IC)、オフセットされた被トリミング交差輪郭(O-TIC)、またはオフセット表面(OS2)の上部エッジ(O-TE)をセグメント化することは必須ではない。代わりに、連続した線織面(RS’)が存在するように、(セグメント化されていない)元の上部エッジ(OE)と、被トリミング交差輪郭(IC)の非セグメントバージョン、オフセットされた被トリミング交差輪郭(O-TIC)、または上部エッジ(O-TE)との間で線織面を生成することを定めることができる。
【0180】
図12を参照すると、幾何学的エンジン72は、オフセットされた患者固有の仮想境界(PS-VB’)と、他の制約との間に1つまたは複数の移行面(T)を生成することができる。他の制約は、例えば、許容体積部(AV)の一部、またはモーフィングが不要ないずれかの対応する元の一般的な幾何学形状(例えば、一般仮想境界(G-VB)のベース(B)または側部の表面(S))である。図12において、これらの移行面(T)は、線織面(RS’)またはオフセット表面(OS2)に隣接して定められている。具体的には、図12において、移行面(T1)は、オフセットされた患者固有の仮想境界(PS-VB’)を仮想境界の裏側表面(OS2及び線織面RS’の反対側)に移行させる。移行面(T2)は、オフセットされた患者固有の仮想境界(PS-VB’)をより大きな許容体積部(AV)に移行させる。移行面(T)は、患者固有のものでもよいし、一般的なものでもよい。
【0181】
本明細書に記載の様々な幾何学形状の相互作用に応じて、任意の形状及び数の移行面(T)を利用することができる。また、移行面(T)は、本明細書に記載されている表面間以外の表面間の移行を提供してもよい。さらに、移行面(T)は、患者固有の仮想境界(PS-VB)の非オフセットバージョンに利用されてもよい。
【0182】
さらに、オフセットされた患者固有の仮想境界(PS-VB’)の表面には、境界が完全に「塞がれた」ことを確実にするために閉じる必要のある開口部が残る場合がある。このケースにおいては、移行(T2)領域におけるベース(B)表面に隣接して1つの開口部が示されている。幾何学的エンジン72は、パッチ表面(P)を隣接する表面にマージすることによって開口部を閉じる。パッチ表面(P)は、患者固有のものでもよいし、一般的なものであってもよく、患者固有の仮想境界(PS-VB)の非オフセットバージョンに利用されてもよい。
【0183】
図12において、幾何学的エンジン72は、線織面(RS’)、オフセット面(OS1)及び(OS2)、元の上部エッジ(TE)、被トリミング表面/面(TS)、移行面(T)、パッチ表面(P)、及びモーフィングが不要ないずれかの対応する元の一般的な幾何学形状(例えば、一般仮想境界(G-VB)のベース(B)や側部の表面(S)の一部)をマージする。オフセットされた患者固有の仮想境界(PS-VB’)の一例の最終バージョンが作成される。
【0184】
図9に示される(オフセットされていない)患者固有の仮想境界(PS-VB)と比較して、図12に示されるオフセットされた患者固有の仮想境界(PS-VB’)は、オフセット表面(OS)を用いて、脛骨の外周の外縁からオフセットされている。バー25の半径を考慮することにより、オフセットされた患者固有の仮想境界(PS-VB’)は、隣接する軟組織を維持しながら十分な骨を除去できることを確実にする。
【0185】
上記の方法に加えて、または代えて、オフセットされた患者固有の仮想境界(PS-VB’)を生成する方法がある。例えば、図14~16は、図12で特定される視点により得られた、オフセットされた患者固有の仮想境界(PS-VB’)の異なる例の断面図を示す。この場合も、オフセット断面領域は、比較のために、先行する線織面(RS)を参照して視覚化されている。
【0186】
図14の例において、オフセットされた患者固有の仮想境界(PS-VB’)は、例えば、図9に示されるように、被トリミング交差輪郭(TIC)及び上部エッジ(TE)の両方をオフセットすることによって形成され得る。被トリミング交差輪郭(TIC)は、オフセットされた被トリミング交差輪郭(O-TIC)にオフセットされ、上部エッジ(TE)は、オフセットされた上部エッジ(TE-O)にオフセットされる。あるいは、図13~16の例のいずれかの場合、図11からの上部エッジ(TE’)とオフセット上部エッジ(TE-O’)を利用することができる。これらのオフセットは両方とも、同じオフセット距離(d)で実行される。第2のオフセット表面の代替バージョン(OS2’)は、オフセットされた被トリミング交差輪郭(O-TIC)とオフセット上部エッジ(TE-O、TE-O’)の間に直接定めることができる。したがって、第2のオフセット表面(OS2’)は、この断面において、オフセットされた患者固有の仮想境界(PS-VB’)の(外側)側部表面の全体を形成する。第2のオフセット表面(OS2’)は、押し出し、掃引、線織面操作などの任意の適切な技術を使用して、または可能な限り短い経路によって形成することができる。この例の第2のオフセット表面(OS2’)の高さ(h)は、オフセットされた被トリミング交差輪郭(O-TIC)と対応するオフセット上部エッジ(TE-O、TE-O’)との間の最短距離であるか、または被トリミング交差輪郭(TIC)と上部エッジ(TE、TE’)との間の最短距離である。ここで、第2のオフセット面(OS2’)は(OS1)に垂直になる。その理由は、(O-TIC)とオフセット上部エッジ(TE-O、TE-O’)の両方が同じ距離(d)だけオフセットされているためである。ただし、オフセット距離は、(O-TIC)とオフセット上部エッジ(TE-O、TE-O’)とで異なる場合があり、その結果、第2のオフセット面(OS2’)と(OS1)との間の角度は、90度未満または90度超になることがある。
【0187】
図15の例において、オフセットされた患者固有の仮想境界(PS-VB’)は、上部エッジ(TE、TE’)を元のオフセットされていない形で維持しつつ、被トリミング交差輪郭(TIC)を距離(d)だけオフセットすることによって形成することができる。第2のオフセット表面の別のバージョン(OS2’’)は、(オフセットされていない)上部エッジ(TE、TE’)とオフセットされた被トリミング交差輪郭(O-TIC)のと間に直接定められる。したがって、第2のオフセット表面(OS2’ ’)は、この断面において、オフセットされた患者固有の仮想境界(PS-VB’)の(外側)側部表面の全体を形成する。この場合も、(OS2’’)は、任意の適切な操作によって形成することができる。ここで、第1のオフセット表面(OS1)と第2のオフセット表面(OS2’’)との間の角度は、90度未満になる。その理由は、(O-TIC)が(d)だけオフセットされているのに対し、上部エッジ(TE、TE’)は、オフセットされていないためである。
【0188】
さらに別の例において、図16に示されるように、オフセットされた患者固有の仮想境界(PS-VB’)は、オフセットの基礎となる図9の元の線織面(複数の場合もある)(RS)の一部を指定することによって形成することができる。この部分は、指定された高さ(h’)で線織面(RS)に沿って延びる曲線(C)を使用して描くことができる。高さ(h’)は、被トリミング交差輪郭(TIC)と元の上部エッジ(TE、TE’)との間で定めることができる。ここで、高さ(h’)は、(TIC)と(TE、TE’)の間の距離よりも短い。高さ(h’)は、例えば図10を参照し、オフセット高さ(h)について本明細書に記載されている要因に基づいて、及び/または線織面(RS)の領域に隣接または交差する解剖学的構造モデル(AM)の上部の表面(AM-T)の高さなどの他の要因に基づいて、指定することができる。他の例と同様、被トリミング交差輪郭(TIC)は、オフセットされた被トリミング交差輪郭(O-TIC)にオフセットされる。第2のオフセット表面のさらに別のバージョン(OS2’’’)は、任意の適切な方法を用いて、オフセットされた被トリミング交差輪郭(O-TIC)と曲線(C)との間に直接定められる。高さ(h’)は、(TIC)と(TE、TE’)との間の距離よりも短いため、元の線織面(RS)は、そのまま残る。第2のオフセット面(OS2’’’)は、元の線織面(RS)と組み合わせて、この断面におけるオフセットされた患者固有の仮想境界(PS-VB’)の(外側)側部の表面を定めることができる。この場合も、第1のオフセット表面(OS1)と第2のオフセット表面(OS2’’’)との間の角度は、曲線(C)が元の(オフセットされていない)線織面(RS)上に定められるのに対し、(O-TIC)は(d)だけオフセットされているので、90度未満になる。
【0189】
本明細書では、図9に示される(オフセットされていない)患者固有の仮想境界(PS-VB)と、図12に示されるオフセットされた患者固有の仮想境界(PS-VB’)とを区別して記載されているが、(オフセットされていない)患者固有の仮想境界(PS-VB)に関連して説明される任意の特徴、特性または結果は、オフセットされた患者固有の仮想境界(PS-VB’)に完全に適用することができ、その逆も可能である。実際、両方の仮想境界は患者固有のものであり、従来技術の構成を超える技術的解決策を提供する。ただし、オフセットされた患者固有の仮想境界(PS-VB’)は、上記のように、オフセットに関連する追加特徴を含んでいる。
【0190】
図17は、本明細書に記載の技術に従って、図5の一般仮想境界(G-VB)が患者固有の仮想境界(PS-VB)またはオフセットされた患者固有の仮想境界(PS-VB’)のいずれかに置き換えられる様子を示している。患者固有の仮想境界(PS-VB、PS-VB’)は、許容体積部(AV)及び器具アクセス体積部(TAV)と統合され、解剖学的構造モデル(AM)に対する器具20の動き、解剖学的構造モデル(AM)が解剖学的構造(A)に登録されている場合には解剖学的構造(A)に対する器具20の動きに対する仮想制約の一例を定める。
【0191】
図18は、外科的計画に従って器具20を用いて切除された身体的解剖学的構造(A)の一例を示しており、図12または図17のオフセットされた患者固有の仮想境界(PS-VB’)が、解剖学的構造モデル(AM)に関して定められている。脛骨遠位端の症例のアンレーインプラントを収容するために、切除体積部が除去されている。図に示されるように、オフセットされた患者固有の仮想境界(PS-VB’)に従ったミリングによって切除表面100及び102が生じる。切除表面100は、オフセットされた患者固有の仮想境界(PS-VB’)の後壁(図示せず)に沿ったミリングの結果として定められる垂直壁部分である。より重要なのは、切除表面102は、オフセット表面(OS1)、(OS2)によって境界付けられた、被トリミング表面/面(TS)に沿ってバー25を用いてミリングした結果として定められる水平部分であることである。水平な切除表面102は、外縁104まで平らにミリングされている。脛骨インプラントを収容するために必要な体積部が完全かつ正確にミリングされている。同時に、オフセット表面(OS1)、(OS)がバー25の半径に対応しているため、外縁104に隣接する敏感なオーバーハング領域の軟組織を維持しながら、患者固有のままのミリングが行われる。
【0192】
D.グラフィカルユーザインターフェース
ソフトウェアプログラム80は、任意選択に命令で構成されており、1つまたは複数のプロセッサ70によって実行されると、任意選択でグラフィカルユーザインターフェース(GUI)96を実現する。一例において、GUI96は、臨床アプリケーション74によって実現される。GUI96は、システム10のディスプレイ38のいずれかに表示することができ、入力デバイス40、42のいずれかから入力を受け取ることができる。
【0193】
GUI96は、モーフィング技術の前述の特徴のいずれかを表示または設計するための視覚化を提供してもよい。様々な仮想境界及び幾何学形状を示す本明細書に示された図の任意のバージョンが、GUI96を用いて表示されてもよい。しかし、図の多くは、制約的なモーフィング技術の理解を可能にするため提供されており、視覚化することなくソフトウェアプログラム80によって実行することができる。
【0194】
GUI96は、外科医からの臨床的または高レベルの入力を受け取り、この情報を使用して、患者固有の仮想境界(PS-VB)を生成するために使用される低レベルの設定を計算してもよい。言い換えれば、設定は、ユーザの入力に基づいて間接的に指定されてもよい。
【0195】
GUI96は、ユーザが本明細書に記載の境界またはモーフィングプロセスのいずれかに関連する制御パラメータを選択的に設計及び/または入力することを可能にするインターフェースを提供してもよい。しかし、他の例において、外科医は、そのようなパラメータを直接設計または指定しないであろう。むしろ、外科医は、主に解剖学的構造モデル(AM)に対するインプラントモデル(IM)の位置決めを行うためにGUI96を使用するであろう。
【0196】
GUI96を使用して、様々な制御パラメータを調整することができる。制御パラメータは、オフラインで設計してインプラント計画の一部として含めることができ、ユーザ(外科医)は、実行前に計画を表示/承認する。
【0197】
制御パラメータの一例は、許容値パラメータである。許容値パラメータの1つが適合(はめあい)許容値であり、これにより、ユーザは、ポリゴンをスプライン曲線で近似するために使用される許容値を定めることができる。適合許容値パラメータは、交差輪郭(IC)またはそこから派生した任意のモーフィングされた面または表面のスプライン曲線近似を操作することができる。別の許容値パラメータは、モデリングの許容値であり、これにより、ユーザは、3Dモデリング操作に使用される許容値を選択することができる。このようなモデリング操作には、交差操作、表面作成などが含まれ得る。別の許容差パラメータは、ミリングの許容値である。このパラメータは、オフセット表面(OS)を作成するための掃引(スイープ)操作の許容差を定めるために使用され、上記のように、器具20の幾何学的特徴を考慮した患者固有のミリングを可能にするために提供される。これらの許容値パラメータは、ミリメートルなどの任意の測定単位を用いて調整することができる。
【0198】
また、GUI96は、任意の表面、エッジ、移行(遷移)、パッチなどの生成パラメータを定義するなど、患者固有の仮想境界(PS-VB)の計画または生成に関連する設定を提供することができる。
【0199】
他のパラメータとしては、器具パラメータがある。器具パラメータは、器具20の幾何学的特徴の設定など、器具20に関連する任意の設定を含む。幾何学的特徴は、エネルギーアプリケータ24などのタイプであり得る。例えば、エネルギーアプリケータ24がバー25である場合、GUI96は、バー25の半径(r)の入力を可能にする。このパラメータを使用して、ソフトウェアプログラム80は、オフセット距離(d)、高さ(h)など、上記の様々な特徴を自動生成することができる。あるいは、ユーザがこれらのパラメータをGUI96に直接入力しなくてもよく、むしろ、システムが、設定ファイルを介してソフトウェアでパラメータを設定したり、エネルギーアプリケータ、器具、またはバーなどの内蔵メモリから自動的に読み込んだりすることができるであろう。
【0200】
GUI96によって設定することができる他のパラメータは、仮想境界に従って定められたミリング経路に関連することができ、例えば、その内容の全体が参照により本明細書に組み込まれる、2018年6月15日に出願された米国仮特許出願公開第62/685,476号に記載されているパラメータが挙げられる。
【0201】
GUI96は任意選択であり、本明細書で説明される経路生成技術は、ユーザの介在なしで実行することができる。このような場合、器具またはインプラントのパラメータは、メモリに格納され、メモリから取得されてもよい。GUI96は、本明細書に記載されているもの以外の特徴を有してもよい。
【0202】
以上では、いくつかの実施形態について説明してきた。しかし、本明細書で説明された実施形態は、網羅的であること、または本発明をいずれかの特定の形態に限定することを意図するものではない。使用されている用語は、限定するものではなく、説明の言葉という性質のものであることが意図されている。上記の教示に照らして、多くの修正及び変形が可能であり、本発明は、具体的に説明されたもの以外でも実施することができる。
【0203】
本発明の多くの特徴及び利点は、詳細な明細書から明らかであり、したがって、添付の特許請求の範囲によって、本発明の真の精神及び範囲内にある本発明のそのようなすべての特徴及び利点をカバーすることが意図されている。さらに、多くの修正及び変形が当業者には容易であるので、本発明を、図示及び説明された正確な構造及び動作に限定することは望ましくなく、したがって、すべての適切な修正及び均等物は、本発明の範囲に含まれ得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18