(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】複合材料およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 5/04 20060101AFI20241004BHJP
B32B 5/28 20060101ALI20241004BHJP
B29C 70/16 20060101ALI20241004BHJP
B29C 70/40 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
C08J5/04 CEZ
C08J5/04 CFC
C08J5/04 CFG
B32B5/28 A
B29C70/16
B29C70/40
(21)【出願番号】P 2021535102
(86)(22)【出願日】2019-12-20
(86)【国際出願番号】 IB2019061196
(87)【国際公開番号】W WO2020129007
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-11-28
(31)【優先権主張番号】102018000020521
(32)【優先日】2018-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】518160436
【氏名又は名称】レオナルド・エッセ・ピ・ア
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ガッロ ニコラ
(72)【発明者】
【氏名】コルヴァグリア ステファノ ジュゼッペ
(72)【発明者】
【氏名】パッパダ シルビオ
【審査官】石塚 寛和
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-028510(JP,A)
【文献】特開2014-019076(JP,A)
【文献】国際公開第2016/129610(WO,A1)
【文献】特表平04-504386(JP,A)
【文献】特開2013-154625(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0091694(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/04-5/10、5/24
B29B 11/16、15/08-15/14
B32B 1/00-43/00
B29C 41/00-41/36、41/46-41/52、
70/00-70/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合材料であって、
予備含浸層である第1の層(2)であって、一方向繊維(4)で強化された熱可塑性樹脂系マトリクス(3)を有する、第1の層(2)と、
磁場増強材料の第2の層(6,6’)であって、前記第1の層(2)の面(5)に重ねられ、前記面(5)に沿って前記第1の層(2)に接合された、磁場増強材料の第2の層(6,6’)と
を含み、前記第2の層(6,6’)は、電磁誘導による局所加熱を容易にするために、異なる配向で少なくとも2つの方向に延びるように、前記第2の層(6,6’)に分散された
、炭素の導電性繊維(7)を含み、前記第1および第2の層(2;6,6’)は互いに接合されて加熱される複合材料の薄層(L,L’)を画定し、
前記面(5)に直交する方向に関して、前記第2の層(6,6’)が、前記第1の層(2)の厚さ(S1)の1/10から1/100の間に含まれる厚さ(S2)を有する
ことを特徴とする、複合材料。
【請求項2】
前記第2の層(6,6’)の前記導電性繊維(7)は、前記面(5)に平行に、600μΩm未満の等価電気抵抗率を有する、
請求項
1に記載の複合材料。
【請求項3】
前記導電性繊維(7)は、200μΩm未満の等価電気抵抗率を有する、
請求項
2に記載の複合材料。
【請求項4】
前記導電性繊維(7)は、100μΩm未満の等価電気抵抗率を有する、
請求項
3に記載の複合材料。
【請求項5】
前記導電性繊維(7)が前記第2の層(6,6’)に分散される方向の1つは、前記面(5)に対して横方向である、
請求項1から
4のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項6】
前記導電性繊維(7)は、相互に異なる配向で少なくとも3つの方向に延びるように、前記第2の層(6,6’)に分散され、前記少なくとも3つの方向のうちの少なくとも1つの方向が前記面(5)に対して横方向である、
請求項1から
5のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項7】
前記第2の層(6,6’)の前記導電性繊維(7)は、
-前記第1の層(2)の前記マトリクス(5)の前記樹脂と同一の樹脂系マトリクス(8)によって一緒に保持され、または
-接着剤または結合剤によってフィルムを形成するように一緒に保持される、
請求項1から
6のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項8】
前記第2の層(6,6’)の前記導電性繊維(7)は布地を形成する、
請求項
7に記載の複合材料。
【請求項9】
前記布地が不織布である、
請求項
8に記載の複合材料。
【請求項10】
1つの前記第1の層および1つの前記第2の層(2;6,6’)が互いに接合されて、少なくとも1対の熱間ローラの間に前記第1および第2の層(2;6,6’)を通過させることによる熱間圧縮成形によって、溶接可能な複合材料の1つの前記薄層(L,L’)を形成する、
請求項1から
9のいずれか一項に記載の複合材料の製造方法。
【請求項11】
前記熱間圧縮成形が、連続圧縮成形である、
請求項
10に記載の複合材料の製造方法。
【請求項12】
前記薄層(L,L’)のうちの第1の薄層を、支持体(12)上に位置する前記薄層(L,L’)のうちの第2の薄層上に徐々に広げるステップと、
前記第1の薄層(L,L’)の前記第2の層(6,6’)に隣接する前記第1および第2の薄層(L,L’)の領域の局所加熱をもたらすように、インダクタ(11)によって前記第1の薄層(L,L’)の少なくとも前記第2の層(6,6’)に寄生電流を誘起するステップと、
前記誘導ステップの後に、前記第1の薄層(L,L’)に圧力作用を加えて、薄層(L,L’)の冷却中に前記第1の薄層を前記第2の薄層(L,L’)に接着させるステップと
によって複合材料の少なくとも2つの前記薄層(L,L’)を互いに結合する動作を含む、
請求項
10または
11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本特許出願は、2018年12月20日に出願されたイタリア特許出願第102018000020521号に対する優先権を主張し、その全ての開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、以下の説明が明示的に参照されるが、一般性を失うことなく、特に航空用途のための複合材料に関する。
【0003】
また、本発明は、上記複合材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0004】
知られているように、複合材料は、航空産業を含む様々な産業分野で使用されている。特に、一般に「予備含浸」または「プリプレグ」と呼ばれる繊維強化複合材料が知られており、これらは一般に、樹脂マトリクスと、マトリクスに浸漬された強化繊維とを含む半製品によって構成される。繊維は、異なる構成に従って、例えば、単一の方向、2つ以上の互いに異なる方向に配置することができ、または布を形成するように配置することができる。マトリクスは、製造中に繊維を互いに、場合によっては他の部品に固定するために使用される。
【0005】
プリプレグは、一般にテープの形態で調製され、ロールに巻かれ、所望の機械的特性を達成するために、プリプレグは、熱によって、またしばしば加圧下で圧密化プロセスを受けなければならない。
【0006】
航空産業において主に使用されるプリプレグは、熱硬化性材料または熱可塑性材料のマトリクスを有することができる。
【0007】
第1の場合(熱硬化性材料)、マトリクスは、適切な温度条件および/または特定の物質の存在下で、剛性、不溶性および不融性材料に変換するポリマーによって構成される。この変換は、強い(共有またはイオン)結合の形成を伴うポリマー鎖間で起こる架橋反応(ポリマー鎖が反応性官能基レベルで異なる鎖間に結合を生成する反応を受ける硬化として知られるプロセス)後に起こる。
【0008】
重合前の熱硬化性材料は、粘着性の特性を有する。したがって、これらの材料を使用して、異なる層を適切な順序または異なる層の配向で重ねて配置することによって、成層を作成することができる。次いで、成層は、材料を重合し、分子量を上昇させ、巨大分子間の結合の形成を誘導し(架橋)、したがって、意図された用途に適した構造特性および機械的特性を有する材料に変換する温度および圧力サイクル(真空バッグ内およびオートクレーブ内で、オーブン、成形プレスなどを使用する)を受ける。
【0009】
いくつかの熱硬化性ポリマーは、単に熱によって、または圧力と熱の組み合わせによって架橋されるが、他の熱硬化性ポリマーは、室温での化学反応によって架橋され得る(冷架橋)。
【0010】
積層は、自動化された方法で達成することができ、コスト、生産性、および繰り返しの点で大きな利点を提供する。平坦または適度に湾曲した積層のために、自動テープ積層(ATL)装置が使用される。最近、幅がかなり小さいプリプレグテープ(スリットとして知られている)を使用して、湾曲したまたは閉じた(円筒形の)表面上に積層することを可能にする技術が普及しており、この技術は、繊維配置(FP)と呼ばれる。
【0011】
第2の場合(熱可塑性材料)では、マトリクス樹脂は高分子量を有するため、一方では重合サイクルを経る必要がなく、他方では粘着性の特性を有さない。
【0012】
第1の近似では、熱可塑性マトリクスプリプレグは、単一の薄層によって形成された最終状態の製造された製品と考えることができる。積層体を形成できるようにするためには、熱可塑性プリプレグの構成薄層または層の少なくとも接触面を溶融させ、それを加圧下で圧縮し、次いで冷却するように、積層体を加熱する必要がある。溶融のために到達すべき温度は、非晶質熱可塑性樹脂のガラス遷移温度Tgおよび半結晶性熱可塑性樹脂の溶融点温度Tfである。
【0013】
現在、自動テープ積層(ATL)および繊維配置(FP)の技術は、熱硬化性マトリクスを有する複合部品にのみ使用されている。これらはまた、熱可塑性マトリクスプリプレグの概念的に可能な技術であるが、いくつかの追加の技術的要件を有し、実際、この場合、熱可塑性プリプレグに基づく積層体を製造するための装置はまた、樹脂を溶融し、したがって積層体を構成する様々な層の間の接着を得るような温度(これは、材料に応じて、過度に高くなる可能性がある)に達するための熱を提供しなければならず、さらに、半結晶性熱可塑性樹脂の場合、冷却が速すぎると、部品のアモルファス化を引き起こし、その結果、性能特性が低下する可能性がある。その代わりに、これらの問題が解決された場合、ATLおよびFP技術は、さらなるオートクレーブプロセスなしで完成部品を達成することを可能にし、部品の製造コストを大幅に削減する。
【0014】
前述のように、プリプレグの圧密化および最終部品を形成する様々なプリプレグ層の結合のプロセスは、通常、オートクレーブ、オーブンまたは成形プレスで行われる。例えば、航空部門、海軍部門などの構造部品などの非常に大きな部品の場合、既知の圧密化および結合プロセスは過度に高価であり、多数の望ましくない制約をもたらす可能性がある。
【0015】
したがって、特に複合材料が非常に大きい場合に、複合材料中の部品のその場での圧密化および結合を達成することを可能にする技術を開発する必要性が感じられている。
【0016】
熱可塑性マトリクスを有する複合材料のための最も有望な技術の1つは、電磁誘導による圧密化および結合であり、これは、例えば接着などの他の技術とは異なり、充填材料を使用せず、結合される2つの部品(被着体としても知られる)の2つの縁部の重なりのみを使用し、少なくとも1つは導電性であり、互いに接触したままである。
【0017】
この技術によれば、インダクタ、例えばコイルは、可変電磁場を発生させ、これにより、被着体の結合される領域に寄生電流が誘導され、被着体のうちの少なくとも1つは導電性であり、ジュール効果によって、これらの寄生電流は、被着体のマトリクスを加熱し、溶融点または軟化点に至らせ、次いで、被着体が理想と考えられる温度にされると、被着体の接着を誘発するのに適した、圧密化圧力として知られる機械的圧力を加えることができる。
【0018】
従来の誘導結合システムでは、インダクタからの距離の二乗に関連する依存性を念頭に置いて、寄生電流による加熱作用は、インダクタに直接さらされる表面に集中する傾向がある。したがって、結果として急峻な温度勾配が生じ、これは、被着体の接着領域ではなくマトリクスの表面溶融を引き起こし、これは、結合の品質およびこのようにして得られた結合の機械的特性に悪影響を及ぼす。
【0019】
さらに、この温度勾配の方向は、厚さの方向において、インダクタに面する表面の最高温度および結合面の最低温度をもたらす。したがって、被着体の接着面上の理想的な温度に達するために、最外部領域の温度が過剰になり、これは複合材のマトリクスの劣化につながる可能性がある。その結果、この勾配の存在は、被着体の可能な厚さをかなり大幅に制限する。
【0020】
同様に、結合される部品の縁部には大きな電流集中があり、したがって、多くの場合許容できない温度勾配が形成され、これはやはり材料の劣化につながる可能性がある。
【0021】
いずれの場合も、接着面で到達する温度は、結合を形成するのに必要な温度(約350℃)に対して低すぎる(一般に60~70℃)。
【0022】
最終的に、電磁誘導による複合材料のその場での圧密化および結合技術の主な欠点は、結合の厚さを介して温度分布を最適化することが困難であることにある。
国際公開第90/08027号パンフレットは、請求項1のプリアンブルに定義されているような複合材料を開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
本発明の1つの目的は、上述の欠点を克服することを可能にする複合材料を製造することである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明によれば、請求項1およびその従属請求項に記載の、特に航空用途のための複合材料が提供される。
【0025】
本発明はまた、前述の複合材料を製造するための請求項10および11に記載の方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明による複合材料の薄層の第1の実施形態を形成するために接合される出発材料の2つの層の概略斜視図である。
【
図2】
図1の線II-IIに沿って高度に拡大された断面の概略図である。
【
図3】
図2と同様の概略断面図であり、
図1および
図2の出発材料の2つの層の接合によって得られた複合材料の薄層を表す。
【
図4】
図3に示すタイプの複合材料の2つの薄層の結合動作の可能な実施態様を示すレイアウトの斜視図である。
【
図5】
図4の線V-Vに沿って高度に拡大された断面の概略図である。
【
図6】顕微鏡を使用して得られた、
図4および
図5に示す、互いに結合された複合材料の2つの薄層の一部の写真である。
【
図7】
図6の非常に拡大された詳細を示す図である。
【
図8】
図4の結合動作中に
図4~
図7の複合材料の2つの薄層の間の結合界面で得られる温度-時間図を示す。
【
図9】既知のタイプの複合材料の2つの薄層の間の結合界面で得られる温度-時間図を示す。
【
図10】本発明による複合材料の薄層および異なるタイプの複合材料の薄層の弾性率を比較したヒストグラムを示す。
【
図11】本発明による複合材料の薄層および異なるタイプの複合材料の薄層について計算された引張強度を比較したヒストグラムを示す。
【
図12】複合材料の異なる薄層について計算された弾性率の1つが1に設定されている、
図10と同じヒストグラムを示す。
【
図13】複合材料の異なる薄層について計算された引張強度の1つが1に設定されている、
図11と同じヒストグラムを示す。
【
図14】
図10~
図13のヒストグラムにおいて弾性率および引張強度の値が計算された異なる薄層の厚さを比較するヒストグラムを示す。
【
図15】
図2と同様の図であり、本発明による複合材料の薄層の第2の実施形態を形成するために接合されるように定められた出発材料の2つの層の概略断面図を非常に拡大して示す。
【
図16】
図3と同様の概略断面図であり、
図15の出発材料の2つの層の接合から得られた複合材料の薄層を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下と共に、本発明について説明する。
【0028】
図1~
図3は、本発明に従って製造され、特に航空用途で使用されるように設計された複合材料の薄層Lの第1の実施形態を概略的に示す。
【0029】
複合材料の薄層Lは、層2に所定の機械的特性を与えるために繊維4または繊維材料で強化された樹脂系マトリクス3を有する第1の予備含浸層2を含む。
【0030】
「系」または「ベース」という表現は、マトリクス3が、樹脂に加えて、例えば充填剤、安定剤などの一般的に使用される添加剤も含むことができることを意味することに留意されたい。
【0031】
マトリクス3は、所定の溶融点Tfを有する半結晶性熱可塑性樹脂を主成分とすることが好ましい。この半結晶性熱可塑性樹脂は、例えば、溶融点温度Tfが約340℃のポリエーテルエーテルケトン、すなわちPEEKである。あるいは、この半結晶性熱可塑性樹脂は、例えば、約370℃の溶融点温度Tfを有するポリエーテルケトンケトン、すなわちPEKKであってもよい。
【0032】
マトリクス3は、所定のガラス遷移温度Tgを有する非晶質熱可塑性樹脂をベースとすることもできる。この非晶質熱可塑性樹脂は、例えば、ポリエーテルイミド、すなわちPEIであり、ガラス遷移温度が215℃程度である。
【0033】
図示されておらず、本発明の一部ではない可能な代替形態によれば、層2のマトリクスは、熱硬化性樹脂、例えばエポキシ、BMI(ビスマレイミド)またはフェノール樹脂に基づくこともできる。
【0034】
繊維4は、好ましくは炭素繊維であり、1つ以上の一方向性層に配置することができる。
【0035】
炭素繊維4は、好ましくは100~300g/m2の間に含まれる目付を有する。
【0036】
層2の繊維4は一方向性であり、特に、一方向繊維4は、薄層Lの応力を受けた部分を一方向に補強し、それらを荷重経路に沿って配置するために使用される。
【0037】
あるいは、例えばガラス繊維またはガラス繊維と炭素繊維との組み合わせなど、航空分野で知られている他の種類の繊維を層2に使用することができる。
【0038】
繊維4は、好ましくは連続的であるか、または1mm~40cmの間に含まれる長さを有することができる。
【0039】
図1および
図2に見られるように、層2は、互いに平行なそれぞれの対向面5によって画定されており、層2の面5に直交する方向の厚みS1は、面5の大きさ(長さおよび幅)に対して小さい。
【0040】
複合材料の薄層Lは、層2の面5のうちの1つに重ね合わされて接合された磁場増強材料の第2の層6をさらに備え、電磁誘導による局所加熱を容易にするために、等価電気抵抗率および600μΩm未満、好ましくは200μΩm未満、さらにより好ましくは100μΩm未満を有する導電性繊維7が、異なる配向で面5に平行な少なくとも2つの方向に層6に分散される。
【0041】
複合材料の等価電気抵抗率(等価電気伝導率の逆数)の有意性および計算については、例えば、以下の刊行物を参照することができる。
【0042】
「Calculation of an equivalent electrical conductivity tensor for multidirectional carbon fiber reinforced materials」、2012年8月19日、著者N.AthanasopoulosおよびV.Kostopoulos。
【0043】
図示の例では、層6は、層2のマトリクス3の樹脂と同一であるか、または層2のマトリクス3と適合する半結晶性熱可塑性樹脂に基づくマトリクス8を含み、その中に繊維7が分散されている。より具体的には、繊維7は炭素であり、複数の方向にランダムにマトリクス8内に配置され、そのうちのいくつかは面5に平行に延び、他のものは面5に対して横方向に延びる。
【0044】
面5に対して横方向に延びる繊維7は、2,000μΩmより大きい等価電気抵抗率を有する。
【0045】
炭素繊維7は、10~100g/m2の間に含まれる目付を有する。
【0046】
炭素繊維7は、好ましくは、ポリアクリロニトリル(PAN)の酸化および熱分解によって得られる。
【0047】
あるいは、炭素繊維7は、例えば、植物、原料油および炭素(PITCH)、この場合、芳香族炭化水素から構成される粘弾性材料などの炭素系材料の蒸留によって得ることができる。
【0048】
繊維7は、別の導電性材料、例えば金属材料で作ることもできる。
【0049】
繊維7は、好ましくは連続的であるか、または1mm~40cmの間に含まれる長さを有することができる。
【0050】
有利には、層6は、ベールまたはフィルムの形態であり、面5に直交する方向に、層2の厚さS1の1/10~1/100の間に含まれる厚さS2を有する。
【0051】
層2および6は、圧縮成形によって、好ましくは連続圧縮成形によって接合される。この接合は、ホットプレス(既知および図示せず)で既知の方法で、または連続積層様プロセスで接合される層2および6をそれぞれの対のホットローラ(既知および図示せず)の間に通過させることによって行うことができる。層2および6の接合プロセスが起こる温度は、使用される熱可塑性マトリクスの種類に依存し、半結晶性熱可塑性マトリクスの場合、溶融点Tfより高いが、非晶質熱可塑性マトリクスの場合、ガラス遷移温度Tgより高い。
【0052】
図4は、複合材料の2つの薄層Lの結合動作を実施する実質的な手段を概略的に示す。
【0053】
この動作中、インダクタ11(既知であり、概略的にのみ示されている)、例えば電気コイルに電流が供給されて、可変電磁場Eが生成される(その磁束線は
図4に破線で概略的に示されている)。
【0054】
同時に、新しい薄層Lは、支持面12上に配置された別の既に存在する薄層L上に、または代替的に、支持面12上に配置された一連の既に接合または結合された薄層Lの上側薄層L上に徐々に置かれる。
【0055】
新しい薄層Lを置くステップは、それらが動作する薄層Lに平行な軸線Aを有し、軸線Aの周りを回転し、支持面12に平行に前進する、1つまたは複数のローラ13(そのうちの一方のみが
図4に示されている)によって実行される。
【0056】
電磁場Eは、新しい薄層Lの層6に実質的に寄生電流を誘導し、次いで、これが支持面12上にある他の薄層(e)Lに接合される。
【0057】
層6の繊維7は導電性であり、マトリクス8内に少なくとも2つの異なる方向に分散されているため、実際の「電気回路」が生成され、少なくとも新しい薄層Lの内側の層6は、層6のマトリクス8および隣接する薄層Lをジュール効果によって加熱する。
【0058】
局所加熱は非常に効率的であり、局所的に、すなわち層6およびこの層に隣接するマトリクス3の領域において、溶融点温度Tfまたはガラス遷移温度Tgを超える温度に到達することを可能にする。
【0059】
代わりに、層6から最も離れたマトリクス3の領域では、温度は、これらのマトリクス3を形成する樹脂の溶融点温度Tfよりも明らかに低いままである。
【0060】
ローラ13(複数可)の通過は、支持面12の表面上に配置された他の薄層(e)Lに結合される新しい薄層Lに寄生電流が誘導された後に行われる。
【0061】
このようにして、電磁誘導後およびこれらの領域の冷却中にそれらの間の界面で得られる軟化後に、結合される薄層Lの領域に圧力が徐々に加えられる。
【0062】
好ましくは、ローラ13(複数可)は、結合ステップにおいて薄層Lから残留熱を徐々に除去するように低温に保たれる。
【0063】
結合動作の終わりに、結果は
図5に図式化されたものである。
【0064】
図6および
図7は、薄層Lの結合領域の顕微鏡画像を示し、各々は、
-200g/m
2の目付を有する一方向性炭素繊維4を有するPEKKの層2と、
-PEKK中のマトリクス8と、全方向にランダムに分散された8g/m
2の目付を有する炭素繊維7とを有するVEILの層6とによって形成される。
【0065】
図から分かるように、繊維7は、層6のマトリクス8内に実質的に等方性の分布を有し、繊維7の一部は、層2の面5に対して横方向に向けられている。これにより、結合材料の高抵抗化/靭性化を達成することができる。
【0066】
図8および
図9は、電磁誘導による結合動作中に、以下の挙動を比較する2つの温度/時間図を示し、
-本発明による複合材料の2つの薄層Lと、
-既知のタイプの複合材料の2つの薄層である。
特に、
図8の図は、2つの薄層Lを参照し、その各々は、
-200g/m
2の目付を有する一方向性炭素繊維を有するPEKKの層2と、
-PEKK中のマトリクス8と、全方向にランダムに分散された8g/m
2の目付を有する炭素繊維7とを有するVEILの層6とによって形成される。
【0067】
図9の図は、代わりに、PEKK中のマトリクスおよび200g/m
2の目付を有する一方向性炭素繊維を有する既知のタイプの複合材料の2つの薄層を参照する。
【0068】
観察され得るように、第1の場合(
図8)では、400℃に近い温度に数十秒間(25~30秒)達する。
【0069】
第2の場合(
図9)では、到達する最高温度は60℃未満である。
【0070】
本出願人は、層2の厚さの1/10~1/100に含まれる層6の厚さを採用することにより、一方では、層2によって決定される機械的特性の薄層Lにおける実質的な保存を達成することが可能であり、他方では、電磁誘導による材料の極めて容易なその場での圧密化および結合を達成することが可能であることを観察した。
【0071】
図10~
図14は、以下のタイプの薄層を比較した場合の、機械的特性および厚さに関して本出願人によって得られた実験結果を示し、
-一方向PEKK/炭素薄層(APC(PEKK-FC)_AS 4(Wm%=34%、目付またはグラム/平方メートル=145g/m
2)、以下UDと呼ばれ、本発明の一部を形成せず、層2のみで構成された薄層の例に対応し、
-前のUD薄層(層2)を4g/m
2の目付を有するベール層6(以下、UD/ベール_4と称する)と結合することによって得られる本発明による薄層、
-前のUD薄層(層2)を8g/m
2の目付を有するベール層6(以下、UD/ベール_8と称する)と結合することによって得られる本発明による薄層、
-本発明の一部を形成しない薄層であって、先のUD薄層(層2)を34g/m
2の目付を有するベール層6(以下、UD/ベール_34と称する)と結合することによって得られる薄層、および
-本発明の一部を形成しない薄層であって、前のUD薄層(層2)を145g/m
2の目付を有するマット層6(以下、UD/マット_145と呼ぶ)と結合することによって得られる薄層である。
【0072】
上記のベールおよびマットは、UD薄層のマトリクスの樹脂と同一の半結晶性熱可塑性樹脂系マトリクスを有する。
【0073】
上記のベールおよびマットの含浸レベルは、34重量%である。
【0074】
上に示したベールおよびマットに使用される繊維は、炭素であり、全ての方向においてランダムにそれぞれのマトリクスに配置される。
【0075】
上記の異なる種類の薄層の機械的特性は、弾性率Eおよび引張強度σに関して決定されており、両方の量は、層2またはUD薄層内の一方向繊維に平行な方向に計算されている。
【0076】
考慮される異なる薄層の厚さは、薄層に直交する方向で計算されており、以下の表に列挙されている。
【0077】
【0078】
代わりに、以下の表は、上記で定義された薄層について計算された弾性率Eおよび引張強度σの値を列挙する。
【0079】
【0080】
【0081】
特に、前の表と
図10および
図11の両方から観察できるように、機械的特性の劣化は、層2の厚さの23%に等しい層6の厚さで既に認識可能になり始め、2つの層2、6が同じ厚さを有する場合に非常に顕著になる。
【0082】
図12および
図13のヒストグラムは、
図10および
図11に示す同じ結果を指すが、UD薄層の弾性率Eおよび引張強度σが、他のタイプの薄層について計算された対応する量の値との比の分母として使用される。
【0083】
図14は、異なる種類の薄層の厚さと、基準としたUD薄層の厚さとの比を示す。
【0084】
図15および
図16は、本発明の異なる実施形態に従って製造され、全体としてL’によって示される複合材料の薄層を示し、以下では、薄層L’が薄層Lとどのように異なるかに関してのみ説明し、可能な場合には、同じ参照番号で既に説明した部分と同一、対応、または同等の部分を示す。
【0085】
特に、複合材料の薄層L’は、樹脂マトリクスなしの磁場増強層6’を備えるという点で、基本的に薄層Lとは異なる。
【0086】
より詳細には、層6’は、繊維7が異なる配向を有する少なくとも2つの方向に、好ましくは層2の面5に対して横方向である少なくとも3つの方向に延びる炭素ベールとすることができ、この場合、繊維7は、接着剤または結合剤、例えばPVA(ポリビニルアルコール)または層2のマトリクス3と化学的に適合する他の物質によってベールを形成するように一緒に保持される。
【0087】
あるいは、層6’は、繊維7が異なる配向で少なくとも2つの方向に延在する布であってもよい。
【0088】
さらなる代替形態によれば、層6’は、例えばOptiveil(登録商標)タイプの不織布であってもよい。
【0089】
本発明の原理に従って製造された複合材料の特性の検討から、それによって達成され得る利点は明らかである。
【0090】
特に、前述のように、層6,6’の繊維7は導電性であり、異なる配向で少なくとも2つの方向に配置されているため、少なくとも層6,6’の内部の電磁誘導によって実際の「電気回路」を生成することが可能であり、これらの回路の形成は、層6,6’および隣接する樹脂マトリクス3のジュール効果による効果的な加熱を達成することを可能にし、2つの異なる薄層L,L’の結合界面で正確に樹脂の溶融点温度Tfに達する。
【0091】
実際には、上述の界面で樹脂の溶融点温度Tfに達することは、複合材料のマトリクスが劣化する可能性がある、インダクタ11に最も近い樹脂の領域でさらに高い温度を生成することを必要としない。
【0092】
図8および
図9の図に示すように、本発明による2つの薄層L,L’間の結合界面で、その場での圧密化および電磁誘導による結合の動作中に到達する温度は、既知のタイプの複合材料の場合に到達する温度よりも少なくとも7倍高い。
【0093】
正確には上記の理由のために、本出願人はまた、従来のプリプレグの結合速度よりも10倍高い本発明による2つの薄層L,L’間の結合速度を測定した。
【0094】
層6,6’の厚さS2は層2の厚さS1の1/10~1/100の間に含まれるため、本発明による材料の容易なその場での圧密化および結合は、層2の炭素繊維の配向および配置によって薄層L,L’に与えられる機械的特性を損なうことなく実際に達成される。最後に、特許請求の範囲に定義された範囲から逸脱することなく、本明細書に記載の複合材料ならびにこの複合材料を製造するための方法に修正および変形を加えることができることは明らかである。