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特許7565936光透過性導電膜および透明導電性フィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】光透過性導電膜および透明導電性フィルム
(51)【国際特許分類】
   H01B 5/14 20060101AFI20241004BHJP
   H01B 1/08 20060101ALI20241004BHJP
   B32B 7/025 20190101ALI20241004BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20241004BHJP
【FI】
H01B5/14 A
H01B1/08
H01B5/14 B
B32B7/025
B32B7/023
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021550146
(86)(22)【出願日】2021-03-18
(86)【国際出願番号】 JP2021011150
(87)【国際公開番号】W WO2021187575
(87)【国際公開日】2021-09-23
【審査請求日】2023-03-10
(31)【優先権主張番号】P 2020049864
(32)【優先日】2020-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020074854
(32)【優先日】2020-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020074853
(32)【優先日】2020-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020134832
(32)【優先日】2020-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020134833
(32)【優先日】2020-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020140239
(32)【優先日】2020-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020200421
(32)【優先日】2020-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020200422
(32)【優先日】2020-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【弁理士】
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】藤野 望
(72)【発明者】
【氏名】鴉田 泰介
【審査官】間宮 嘉誉
(56)【参考文献】
【文献】特開平5-334924(JP,A)
【文献】特開平8-77845(JP,A)
【文献】特開2000-38654(JP,A)
【文献】特開2002-371350(JP,A)
【文献】特開2002-371355(JP,A)
【文献】特開2020-21663(JP,A)
【文献】国際公開第2020/095814(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
C23C 14/00-14/58
G02F 1/133-1/1335
G02F 1/13363
G02F 1/1339-1/1341
G02F 1/1347
G06F 3/03
G06F 3/041-3/047
H01B 1/00- 1/24
H01B 5/00- 5/16
H01B 13/00-13/016
H01B 13/34
H01L 31/0224
H01Q 1/00- 1/10
H01Q 1/27- 1/52
H05K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非晶質の光透過性導電膜であって、
クリプトンを含有する導電性酸化物を含み、
4×10-4Ω・cm以上の比抵抗を有し、
165℃で1時間の加熱処理後の比抵抗が3×10 -4 Ω・cm未満である、光透過性導電膜。
【請求項2】
前記比抵抗が20×10-4Ω・cm以下である、請求項1に記載の光透過性導電膜。
【請求項3】
40nmを超える厚さを有する、請求項1または2に記載の光透過性導電膜。
【請求項4】
パターニングされている、請求項1から3のいずれか一つに記載の光透過性導電膜。
【請求項5】
透明基材と、
前記透明基材の厚さ方向一方面側に配置された、請求項1からのいずれか一つに記載の光透過性導電膜と、を備える透明導電性フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光透過性導電膜および透明導電性フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ、タッチパネル、および光センサなどの各種デバイスにおける透明電極は、光透過性と導電性とを兼ね備えた膜(光透過性導電膜)から形成される。光透過性導電膜は、デバイスが備える帯電防止層として用いられることもある。光透過性導電膜は、例えば、スパッタリング法で透明基材上に導電性酸化物を成膜することによって、形成される。スパッタリング法では、ターゲット(成膜材料供給材)に衝突してターゲット表面の原子を弾き出すためのスパッタリングガスとして、アルゴンなどの不活性ガスが用いられる。このような光透過性導電膜に関する技術については、例えば下記の特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平5-334924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光透過性導電膜には、低抵抗であることが要求される。特に透明電極用途の光透過性導電膜には、その要求が強い。また、光透過性導電膜には、膜内の内部応力が小さくて反りを生じにくいことが、求められる。
【0005】
本発明は、反りが抑制された低抵抗の結晶質光透過性導電膜を得るのに適した非晶質の光透過性導電膜、および、当該光透過性導電膜を備える透明導電性フィルムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明[1]は、非晶質の光透過性導電膜であって、クリプトンを含有する導電性酸化物を含み、4×10-4Ω・cm以上の比抵抗を有する、光透過性導電膜を含む。
【0007】
本発明[2]は、前記比抵抗が20×10-4Ω・cm以下である、上記[1]に記載の光透過性導電膜を含む。
【0008】
本発明[3]は、40nmを超える厚さを有する、上記[1]または[2]に記載の光透過性導電膜を含む。
【0009】
本発明[4]は、パターニングされている、上記[1]から[3]のいずれか一つに記載の光透過性導電膜を含む。
【0010】
本発明[5]は、165℃で1時間の加熱処理後の比抵抗が3×10-4Ω・cm未満である、上記[1]から[4]のいずれか一つに記載の光透過性導電膜を含む。
【0011】
本発明[6]は、透明基材と、前記透明基材の厚さ方向一方面側に配置された、上記[1]から[5]のいずれか一つに記載の光透過性導電膜と、を備える透明導電性フィルムを含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明の光透過性導電膜は、非晶質であり、クリプトンを含有する導電性酸化物を含み、4×10-4Ω・cm以上の比抵抗を有することから、反りが抑制された低抵抗の結晶質光透過性導電膜を得るのに適する。本発明の透明導電性フィルムは、そのような光透過性導電膜を備えるため、低抵抗の結晶質光透過性導電膜を備え且つ反りが抑制された、透明導電性フィルムを得るのに適する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の透明導電性フィルムの一実施形態の断面模式図である。
図2】本発明の透明導電性フィルムの変形例の断面模式図である。
図3図1に示す透明導電性フィルムの製造方法を表す。図3Aは、透明樹脂フィルムを用意する工程を表し、図3Bは、透明樹脂フィルム上に機能層を形成する工程を表し、図3Cは、機能層上に光透過性導電膜を形成する工程を表す。
図4図1に示す透明導電性フィルムにおいて、光透過性導電膜がパターニングされた場合を表す。
図5図1に示す透明導電性フィルムにおいて、非晶質の光透過性導電膜が結晶質の光透過性導電膜に転化された場合を表す。
図6】スパッタリング法により光透過性導電膜を形成する際の酸素導入量と、形成される光透過性導電膜の比抵抗との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明の透明導電性フィルムの一実施形態である透明導電性フィルムXの断面模式図である。透明導電性フィルムXは、透明基材10と、光透過性導電膜20とを、厚さ方向Dの一方側に向かってこの順で備える。透明導電性フィルムX、透明基材10、および光透過性導電膜20は、それぞれ、厚さ方向Dに直交する方向(面方向)に広がる形状を有する。透過性導電フィルムXおよびこれに含まれる光透過性導電膜20は、タッチセンサ、調光素子、光電変換素子、熱線制御部材、アンテナ部材、電磁波シールド部材、ヒーター部材、および画像表示装置などに備えられる一要素である。
【0015】
透明基材10は、透明樹脂フィルム11と、機能層12とを、厚さ方向Dの一方側に向かってこの順で備える。
【0016】
透明樹脂フィルム11は、可撓性を有する透明な樹脂フィルムである。透明樹脂フィルム11の材料としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリアリレート樹脂、メラミン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、セルロース樹脂、およびポリスチレン樹脂が挙げられる。ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、およびポリエチレンナフタレートが挙げられる。ポリオレフィン樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、およびシクロオレフィンポリマーが挙げられる。アクリル樹脂としては、例えばポリメタクリレートが挙げられる。透明樹脂フィルム11の材料としては、例えば透明性および強度の観点から、好ましくはポリエステル樹脂が用いられ、より好ましくはPETが用いられる。
【0017】
透明樹脂フィルム11における機能層12側表面は、表面改質処理されていてもよい。表面改質処理としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、オゾン処理、プライマー処理、グロー処理、およびカップリング剤処理が挙げられる。
【0018】
透明樹脂フィルム11の厚さは、好ましくは1μm以上、より好ましくは10μm以上、さらに好ましくは30μm以上である。透明樹脂フィルム11の厚さは、好ましくは300μm以下、より好ましくは200μm以下、さらに好ましくは100μm以下、とくに好ましくは75μm以下である。透明樹脂フィルム11の厚さに関するこれら構成は、透明導電性フィルムXの取り扱い性を確保するのに適する。
【0019】
透明樹脂フィルム11の全光線透過率(JIS K 7375-2008)は、好ましくは60%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは85%以上である。このような構成は、タッチセンサ、調光素子、光電変換素子、熱線制御部材、アンテナ部材、電磁波シールド部材、ヒーター部材、および画像表示装置などに透明導電性フィルムXが備えられる場合に当該透明導電性フィルムXに求められる透明性を確保するのに適する。透明樹脂フィルム11の全光線透過率は、例えば100%以下である。
【0020】
機能層12は、本実施形態では、透明樹脂フィルム11における厚さ方向Dの一方面上に位置する。また、本実施形態では、機能層12は、光透過性導電膜20の露出表面(図1では上面)に擦り傷が形成されにくくするためのハードコート層である。
【0021】
ハードコート層は、硬化性樹脂組成物の硬化物である。硬化性樹脂組成物が含有する樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アミド樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、およびメラミン樹脂が挙げられる。また、硬化性樹脂組成物としては、例えば、紫外線硬化型の樹脂組成物、および、熱硬化型の樹脂組成物が挙げられる。高温加熱せずに硬化可能であるために透明導電性フィルムXの製造効率向上に役立つ観点から、硬化性樹脂組成物としては、好ましくは、紫外線硬化型の樹脂組成物が用いられる。紫外線硬化型の樹脂組成物としては、具体的には、特開2016-179686号公報に記載のハードコート層形成用組成物が挙げられる。
【0022】
機能層12における光透過性導電膜20側表面は、表面改質処理されていてもよい。表面改質処理としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、オゾン処理、プライマー処理、グロー処理、およびカップリング剤処理が挙げられる。
【0023】
ハードコート層としての機能層12の厚さは、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.5μm以上である。このような構成は、光透過性導電膜20において充分な耐擦過性を発現させるのに適する。ハードコート層としての機能層12の厚さは、機能層12の透明性を確保する観点からは、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下である。
【0024】
透明基材10の厚さは、好ましくは1μm以上、より好ましくは10μm以上、さらに好ましくは15μm以上、特に好ましくは30μm以上である。透明基材10の厚さは、好ましくは310μm以下、より好ましくは210μm以下、さらに好ましくは110μm以下、特に好ましくは80μm以下である。透明基材10の厚さに関するこれら構成は、透明導電性フィルムXの取り扱い性を確保するのに適する。
【0025】
透明基材10の全光線透過率(JIS K 7375-2008)は、好ましくは60%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは85%以上である。このような構成は、タッチセンサ、調光素子、光電変換素子、熱線制御部材、アンテナ部材、電磁波シールド部材、ヒーター部材、および画像表示装置などに透明導電性フィルムXが備えられる場合に当該透明導電性フィルムXに求められる透明性を確保するのに適する。透明基材10の全光線透過率は、例えば100%以下である。
【0026】
透明基材10が加熱処理を経た場合に最も収縮する方向における、透明基材10の熱収縮率は、光透過性導電膜20の反りの抑制の観点からは、例えば1%以下であり、好ましくは0.6%以下、より好ましくは0.5%以下である。当該熱収縮率は、例えば0.0%以上である。透明基材10について、加熱処理と、常温での30分間の静置とを順次に経た後、透明基材10の寸法変化を測定することにより、上記熱収縮率を求めることができる。加熱処理における加熱温度は、光透過性導電膜20を結晶化させる時の温度と同温であり、例えば165℃である。加熱処理における加熱時間は、例えば1時間である。
【0027】
光透過性導電膜20は、本実施形態では、透明基材10における厚さ方向Dの一方面上に位置する。光透過性導電膜20は、本発明の光透過性導電膜の一実施形態であり、光透過性と導電性とを兼ね備えた非晶質膜である。非晶質の光透過性導電膜20は、加熱によって結晶質の光透過性導電膜(後記の光透過性導電膜20’)に転化されて、比抵抗が下がる。
【0028】
光透過性導電膜20は、希ガス原子として少なくともクリプトン(Kr)を含有する導電性酸化物を含み、好ましくは、希ガス原子として少なくともKrを含有する導電性酸化物からなる。光透過性導電膜20における希ガス原子は、本実施形態では、光透過性導電膜20を形成するための後述のスパッタリング法においてスパッタリングガスとして用いられる希ガス原子に由来する。本実施形態において、光透過性導電膜20は、スパッタリング法で形成された膜(スパッタ膜)である。
【0029】
導電性酸化物としては、例えば、In、Sn、Zn、Ga、Sb、Ti、Si、Zr、Mg、Al、Au、Ag、Cu、Pd、Wからなる群より選択される少なくとも一種類の金属または半金属を含有する金属酸化物が挙げられる。具体的には、導電性酸化物としては、インジウムスズ複合酸化物(ITO)、インジウム亜鉛複合酸化物(IZO)、インジウムガリウム複合酸化物(IGO)、インジウムガリウム亜鉛複合酸化物(IGZO)、およびアンチモンスズ複合酸化物(ATO)が挙げられる。高い透明性と良好な電気伝導性とを実現する観点からは、導電性酸化物としては、好ましくは、InおよびSnの両方を含有するインジウムスズ複合酸化物(ITO)が用いられる。このITOは、InおよびSn以外の金属または半金属を、InおよびSnのそれぞれの含有量より少ない量で含有してもよい。
【0030】
導電性酸化物としてITOが用いられる場合、当該ITOにおける酸化インジウム(In)および酸化スズ(SnO)の合計含有量に対する酸化スズの含有量の割合は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上、特に好ましくは7質量%以上である。用いられるITOにおけるインジウム原子数に対するスズ原子数の比率(スズ原子数/インジウム原子数)は、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.03以上、さらに好ましくは0.05以上、特に好ましくは0.07以上である。これら構成は、光透過性導電膜20の耐久性を確保するのに適する。また、用いられるITOにおける酸化インジウム(In)および酸化スズ(SnO)の合計含有量に対する酸化スズの含有量の割合は、好ましくは15質量%以下、より好ましくは13質量%以下、さらに好ましくは12質量%以下である。用いられるITOにおけるインジウム原子数に対するスズ原子数の比率(スズ原子数/インジウム原子数)は、好ましくは0.16以下、より好ましくは0.14以下、さらに好ましくは0.13以下である。これら構成は、加熱により結晶化しやすい光透過性導電膜20を得るのに適する。ITOにおけるインジウム原子数に対するスズ原子数の比率は、例えば、測定対象物について、X線光電子分光法(X-ray Photoelectron Spectroscopy)によってインジウム原子とスズ原子の存在比率を特定することにより、求められる。ITOにおける酸化スズの上記含有割合は、例えば、そのようにして特定されたインジウム原子とスズ原子の存在比率から、求められる。ITOにおける酸化スズの上記含有割合は、スパッタ成膜時に用いるITOターゲットの酸化スズ(SnO)含有割合から判断してもよい。
【0031】
光透過性導電膜20は、Krの含有割合が、好ましくは1.0原子%以下、より好ましくは0.7原子%以下、さらに好ましくは0.5原子%以下、ことさらに好ましくは0.3原子%以下、とても好ましくは0.2原子%以下、特に好ましくは0.1原子%未満の領域を、厚さ方向Dの少なくとも一部に含む。当該領域のKr含有割合は、例えば0.0001原子%以上である。好ましくは、光透過性導電膜20は、厚さ方向Dの全域において、このようなKr含有割合を充足する。具体的には、光透過性導電膜20におけるKrの含有割合は、厚さ方向Dの全域において、好ましくは1.0原子%以下、より好ましくは0.7原子%以下、さらに好ましくは0.5原子%以下、ことさらに好ましくは0.3原子%以下、とても好ましくは0.2原子%以下、特に好ましくは0.1原子%未満である。これら構成は、光透過性導電膜20に対する結晶化のための加熱の時に良好な結晶成長を実現して大きな結晶粒を形成するのに適し、従って、低抵抗の光透過性導電膜20’を得るのに適する(結晶質の光透過性導電膜20’内の結晶粒が大きいほど、光透過性導電膜20’の抵抗は低い)。
【0032】
光透過性導電膜20におけるKrなど希ガス原子の存否および含有量は、例えば、実施例に関して後述するラザフォード後方散乱分析(Rutherford Backscattering Spectrometry)によって同定される。光透過性導電膜20におけるKrなど希ガス原子の存否は、例えば、実施例に関して後述する蛍光X線分析によって同定される。分析対象の光透過性導電膜において、ラザフォード後方散乱分析によると、希ガス原子含有量が検出限界(下限)以上でないために定量できず、且つ、蛍光X線分析によると、希ガス原子の存在が同定される場合、当該光透過性導電膜は、Krなど希ガス原子の含有割合が0.0001原子%以上である領域を含む、と判断することとする。
【0033】
光透過性導電膜20は、Kr以外の希ガス原子を含んでもよい。Kr以外の希ガス原子としては、例えば、アルゴン(Ar)、キセノン(Xe)、およびラドン(Rn)が挙げられ、光透過性導電膜20および透明導電性フィルムXの製造コスト抑制の観点からは、好ましくはArが用いられる。
【0034】
光透過性導電膜20が、Krに加えて、Kr以外の希ガス原子を含む場合、光透過性導電膜20における希ガス原子の含有割合(例えば、KrとArの合計含有割合)は、厚さ方向Dの全域において、好ましくは1.2原子%以下、より好ましくは1.1原子%以下、一層好ましくは1.0原子%以下、より一層好ましくは0.8原子%以下、さらに好ましくは0.5原子%以下、ことさらに好ましくは0.4原子%以下、とても好ましくは0.3原子%以下、特に好ましくは0.2原子%以下である。このような構成は、光透過性導電膜20において、希ガス原子(不純物原子)の含有量が少ないことからキャリアの不純物散乱を低減するのに適し、従って、低抵抗な光透過性導電膜20’を得るのに適する。
【0035】
光透過性導電膜20は、厚さ方向Dの全域にわたってKrを含有してもよい。光透過性導電膜20は、厚さ方向Dの全域にわたって、希ガス原子としてはKrのみを含有してもよいし、Krに加えて、Kr以外の希ガス原子を含有してもよい。
【0036】
光透過性導電膜20は、図2に例示するように、厚さ方向Dの一部の領域でKrを含有してもよい。図2Aは、光透過性導電膜20が、第1領域21と第2領域22とを、厚さ方向Dの一方側に向かってこの順で含む場合を示す。第1領域21はKrを含有し、第2領域22はKrを含有しない。図2Bは、光透過性導電膜20が、第2領域22と第1領域21とを、厚さ方向Dの一方側に向かってこの順で含む場合を示す。図2Cは、光透過性導電膜20が、第1領域21と第2領域22と第1領域21とを、厚さ方向Dの一方側に向かってこの順で含む場合を示す。図2Dは、光透過性導電膜20が、第2領域22と第1領域21と第2領域22とを、厚さ方向Dの一方側に向かってこの順で含む場合を示す。図2では、第1領域21と第2領域22との境界が仮想線によって描出されているものの、含有量が微量である希ガス原子以外の組成において第1領域21と第2領域22とが有意には異ならない場合などには、第1領域21と第2領域22との境界は明確には判別できない場合もある。
【0037】
光透過性導電膜20が第1領域21および第2領域22を含む場合、第1領域21と第2領域22との合計厚さに対する第1領域21の厚さ(複数の第1領域21においては複数の第1領域21の合計厚さ)の割合は、好ましくは1%以上、より好ましくは20%以上、さらに好ましくは50%を超え、ことさらに好ましくは60%以上、特に好ましくは64%以上である。同割合は、100%未満である。また、第1領域21と第2領域22との合計厚さに対する第2領域22の厚さ(複数の第2領域22においては複数の第2領域22の合計厚さ)の割合は、好ましくは99%以下、より好ましくは80%以下、さらに好ましくは50%未満、ことさらに好ましくは40%以下、特に好ましくは36%以下である。第1領域21および第2領域22のそれぞれの厚さの割合に関する当該構成は、低抵抗の光透過性導電膜20’を光透過性導電膜20から形成するのに適する。
【0038】
第1領域21におけるKrの含有割合は、第1領域21の厚さ方向Dの全域において、好ましくは1.0原子%以下であり、より好ましくは0.7原子%以下、一層好ましくは0.5原子%以下、さらに好ましくは0.3原子%以下、ことさらに好ましくは0.2原子%、特に好ましくは0.1原子%未満である。このような構成は、光透過性導電膜20に対する結晶化のための加熱の時に良好な結晶成長を実現して大きな結晶粒を形成するのに適し、従って、低抵抗の光透過性導電膜20’を得るのに適する(結晶質の光透過性導電膜20’内の結晶粒が大きいほど、光透過性導電膜20’の抵抗は低い)。また、第1領域21におけるKrの含有割合は、第1領域21の厚さ方向Dの全域において、例えば0.0001原子%以上である。
【0039】
また、第1領域21におけるKrの含有割合は、第1領域21の厚さ方向Dにおいて非一様であってもよい。例えば、第1領域21の厚さ方向Dにおいて、透明基材10から遠ざかるほどKr含有割合が漸増または漸減してもよい。或いは、第1領域21の厚さ方向Dにおいて、透明基材10から遠ざかるほどKr含有割合が漸増する部分領域が透明基材10側に位置し、且つ、透明基材10から遠ざかるほどKr含有割合が漸減する部分領域が透明基材10とは反対側に位置してもよい。或いは、第1領域21の厚さ方向Dにおいて、透明基材10から遠ざかるほどKr含有割合が漸減する部分領域が透明基材10側に位置し、且つ、透明基材10から遠ざかるほどKr含有割合が漸増する部分領域が透明基材10とは反対側に位置してもよい。
【0040】
光透過性導電膜20の厚さは、例えば10nm以上である。光透過性導電膜20の厚さは、好ましくは40nmを超え、より好ましくは70nm以上、さらに好ましくは100nm以上、特に好ましくは130nm以上である。このような構成は、光透過性導電膜20を結晶化させて得られる光透過性導電膜20’の低抵抗化を図るのに適する。また、光透過性導電膜20の厚さは、好ましくは1000nm以下、より好ましくは250nm以下、さらに好ましくは200nm以下、特に好ましくは160nm以下、最も好ましくは150nm未満である。このような構成は、光透過性導電膜20を結晶化させて得られる光透過性導電膜20’を備える透明導電性フィルムXにおいて、反りを抑制するのに適する。
【0041】
光透過性導電膜20の表面抵抗は、例えば500Ω/□以下、好ましくは200Ω/□以下、より好ましくは100Ω/□以下、さらに好ましくは80Ω/□以下である。光透過性導電膜20の表面抵抗は、例えば1Ω/□以上である。表面抵抗は、JIS K7194に準拠した4端子法によって測定できる。
【0042】
光透過性導電膜20の比抵抗は、4×10-4Ω・cm以上であり、好ましくは4.3×10-4Ω・cm以上、より好ましくは4.5×10-4Ω・cm以上、さらに好ましくは4.8×10-4Ω・cm以上、ことさらに好ましくは5×10-4Ω・cm以上、特に好ましくは5.2×10-4Ω・cm以上である。光透過性導電膜20の比抵抗は、好ましくは20×10-4Ω・cm以下、より好ましくは12×10-4Ω・cm以下、さらに好ましくは11×10-4Ω・cm以下、特に好ましくは10.5×10-4Ω・cm以下、最も好ましくは8.5×10-4Ω・cm以下である。比抵抗に関するこのような構成は、低抵抗の光透過性導電膜20’を光透過性導電膜20から形成するのに適する。比抵抗は、表面抵抗に厚さを乗じて求められる。また、比抵抗は、例えば、光透過性導電膜20におけるKr含有割合の調整、および、光透過性導電膜20をスパッタ成膜する時の各種条件の調整により、制御できる。当該条件としては、例えば、光透過性導電膜20が成膜される下地(本実施形態では透明基材10)の温度、成膜室内への酸素導入量、成膜室内の気圧、および、ターゲット上の水平磁場強度が挙げられる。
【0043】
光透過性導電膜20の、165℃で1時間の加熱処理後の比抵抗は、好ましくは3×10-4Ω・cm以下、より好ましくは2.8×10-4Ω・cm以下、さらに好ましくは2.5×10-4Ω・cm以下、ことさらに好ましくは2×10-4Ω・cm以下、特に好ましくは1.8×10-4Ω・cm以下である。また、光透過性導電膜20の、165℃で1時間の加熱処理後の比抵抗は、好ましくは0.1×10-4Ω・cm以上、より好ましくは0.5×10-4Ω・cm以上、さらに好ましくは1.0×10-4Ω・cm以上である。このような構成は、タッチセンサ、調光素子、光電変換素子、熱線制御部材、アンテナ部材、電磁波シールド部材、ヒーター部材、および画像表示装置などに、光透過性導電膜20を結晶化させて得られる光透過性導電膜20’が備えられる場合に、当該光透過性導電膜20’に求められる低抵抗性を確保するのに適する。
【0044】
光透過性導電膜20の全光線透過率(JIS K 7375-2008)は、好ましくは60%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは85%以上である。このような構成は、光透過性導電膜20を結晶化させて得られる光透過性導電膜20’において透明性を確保するのに適する。また、光透過性導電膜20の全光線透過率は、例えば100%以下である。
【0045】
光透過性導電膜が非晶質であることは、例えば、次のようにして判断できる。まず、光透過性導電膜(透明導電性フィルムXでは、透明基材10上の光透過性導電膜20)を、濃度5質量%の塩酸に、20℃で15分間、浸漬する。次に、光透過性導電膜を、水洗した後、乾燥する。次に、光透過性導電膜の露出平面(透明導電性フィルムXでは、光透過性導電膜20における透明基材10とは反対側の表面)において、離隔距離15mmの一対の端子の間の抵抗(端子間抵抗)を測定する。この測定において、端子間抵抗が10kΩを超える場合、光透過性導電膜は非晶質である。
【0046】
透明導電性フィルムXは、例えば以下のように製造される。
【0047】
まず、図3Aに示すように、透明樹脂フィルム11を用意する。
【0048】
次に、図3Bに示すように、透明樹脂フィルム11の厚さ方向Dの一方面上に機能層12を形成する。透明樹脂フィルム11上への機能層12の形成により、透明基材10が作製される。
【0049】
ハードコート層としての上述の機能層12は、透明樹脂フィルム11上に、硬化性樹脂組成物を塗布して塗膜を形成した後、この塗膜を硬化させることによって形成できる。硬化性樹脂組成物が紫外線化型樹脂を含有する場合には、紫外線照射によって前記塗膜を硬化させる。硬化性樹脂組成物が熱硬化型樹脂を含有する場合には、加熱によって前記塗膜を硬化させる。
【0050】
透明樹脂フィルム11上に形成された機能層12の露出表面は、必要に応じて、表面改質処理される。表面改質処理としてプラズマ処理する場合、不活性ガスとして例えばアルゴンガスを用いる。また、プラズマ処理における放電電力は、例えば10W以上であり、また、例えば5000W以下である。
【0051】
次に、図3Cに示すように、透明基材10上に光透過性導電膜20を形成する。具体的には、スパッタリング法により、透明基材10における機能層12上に材料を成膜して光透過性導電膜20を形成する。
【0052】
スパッタリング法では、ロールトゥロール方式で成膜プロセスを実施できるスパッタ成膜装置を使用するのが好ましい。透明導電性フィルムXの製造において、ロールトゥロール方式のスパッタ成膜装置を使用する場合、長尺状の透明基材10を、装置が備える繰出しロールから巻取りロールまで走行させつつ、当該透明基材10上に材料を成膜して光透過性導電膜20を形成する。また、当該スパッタリング法では、一つの成膜室を備えるスパッタ成膜装置を使用してもよいし、透明基材10の走行経路に沿って順に配置された複数の成膜室を備えるスパッタ成膜装置を使用してもよい(上述の第2領域22を含む光透過性導電膜20を形成する場合には、複数の成膜室を備えるスパッタ成膜装置を使用する)。
【0053】
スパッタリング法では、具体的には、スパッタ成膜装置が備える成膜室内に真空条件下でスパッタリングガス(不活性ガス)を導入しつつ、成膜室内のカソード上に配置されたターゲットにマイナスの電圧を印加する。これにより、グロー放電を発生させてガス原子をイオン化し、当該ガスイオンを高速でターゲット表面に衝突させ、ターゲット表面からターゲット材料を弾き出し、弾き出たターゲット材料を透明基材10における機能層12上に堆積させる。
【0054】
成膜室内のカソード上に配置されるターゲットの材料としては、光透過性導電膜20を形成するための上述の導電性酸化物が用いられ、好ましくはITOが用いられる。ITOにおける酸化スズおよび酸化インジウムの合計含有量に対する酸化スズの含有量の割合は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上、一層好ましくは5質量%以上、特に好ましくは7質量%以上であり、また、好ましくは15質量%以下、より好ましくは13質量%以下、さらに好ましくは12質量%以下である。
【0055】
スパッタリング法は、好ましくは、反応性スパッタリング法である。反応性スパッタリング法では、スパッタリングガスに加えて反応性ガスが、成膜室内に導入される。
【0056】
厚さ方向Dの全域にわたってKrを含有する光透過性導電膜20を形成する場合(第1の場合)には、スパッタ成膜装置が備える1または2以上の成膜室に導入されるガスは、スパッタリングガスとしてのKrと反応性ガスとしての酸素とを含有する。スパッタリングガスは、Kr以外の不活性ガスを含有してもよい。Kr以外の不活性ガスとしては、例えば、Kr以外の希ガス原子が挙げられる。希ガス原子としては、例えば、Ar、Xe、およびRnが挙げられる。スパッタリングガスがKr以外の不活性ガスを含有する場合、その含有割合は、好ましくは80体積%以下、より好ましくは50体積%以下である。
【0057】
上述の第1領域21と第2領域22とを含む光透過性導電膜20を形成する場合(第2の場合)、第1領域21を形成するための成膜室に導入されるガスは、スパッタリングガスとしてのKrと反応性ガスとしての酸素とを含有する。スパッタリングガスは、Kr以外の不活性ガスを含有してもよい。Kr以外の不活性ガスの種類および含有割合については、第1の場合におけるKr以外の不活性ガスについて上述した種類および含有割合と同様である。
【0058】
また、上記第2の場合、第2領域22を形成するための成膜室に導入されるガスは、スパッタリングガスとしてKr以外の不活性ガスと反応性ガスとしての酸素とを含有する。Kr以外の不活性ガスとしては、第1の場合におけるKr以外の不活性ガスとして上記した不活性ガスが挙げられる。
【0059】
反応性スパッタリング法において成膜室に導入されるスパッタリングガスおよび酸素の合計導入量に対する、酸素の導入量の割合は、例えば0.01流量%以上であり、また、例えば15流量%以下である。
【0060】
スパッタリング法による成膜(スパッタ成膜)中の成膜室内の気圧は、例えば0.02Pa以上であり、また、例えば1Pa以下である。
【0061】
スパッタ成膜中の透明基材10の温度は、例えば100℃以下である。スパッタ成膜中の透明基材10の熱膨張を抑制するには、当該透明基材10を冷却するのが好ましい。スパッタ成膜中の透明基材10の熱膨張の抑制は、反りが抑制された低抵抗の光透過性導電膜20’(結晶質光透過性導電膜)を得るのに役立つ。このような観点から、スパッタ成膜中の透明基材10の温度は、好ましくは20℃以下、より好ましくは10℃以下、さらに好ましくは5℃以下、特に好ましくは0℃以下であり、また、例えば-50℃以上、好ましくは-20℃以上、より好ましくは-10℃以上、さらに好ましくは-7℃以上である。
【0062】
ターゲットに対する電圧印加のための電源としては、例えば、DC電源、AC電源、MF電源およびRF電源が挙げられる。電源としては、DC電源とRF電源とを併用してもよい。スパッタ成膜中の放電電圧の絶対値は、例えば50V以上であり、また、例えば500V以下、好ましくは400V以下である。
【0063】
例えば以上のようにして、透明導電性フィルムXを製造できる。
【0064】
透明導電性フィルムXにおける光透過性導電膜20は、図4に模式的に示すように、パターニングされてもよい。所定のエッチングマスクを介して光透過性導電膜20をエッチング処理することにより、光透過性導電膜20をパターニングできる。パターニングされた光透過性導電膜20は、例えば、配線パターンとして機能する。
【0065】
また、透明導電性フィルムXにおける光透過性導電膜20は、加熱により、結晶質の光透過性導電膜20’(図5に示す)に転化される。加熱の手段としては、例えば、赤外線ヒーターおよびオーブン(熱媒加熱式オーブン,熱風加熱式オーブン)が挙げられる。加熱時の環境は、真空環境および大気環境のいずれでもよい。好ましくは、酸素存在下での加熱が実施される。加熱温度は、高い結晶化速度を確保する観点からは、例えば100℃以上であり、好ましくは120℃以上である。加熱温度は、透明基材10への加熱の影響を抑制する観点から、例えば200℃以下であり、好ましくは180℃以下、より好ましくは170℃以下、さらに好ましくは165℃以下である。加熱時間は、例えば600分未満、好ましくは120分未満、より好ましくは90分以下、さらに好ましくは60分以下であり、また、例えば1分以上、好ましくは5分以上である。光透過性導電膜20の上述のパターニングは、結晶化のための加熱より前に実施されてもよいし、結晶化のための加熱より後に実施されてもよい。
【0066】
結晶質の光透過性導電膜20’の表面抵抗は、例えば200Ω/□以下、好ましくは100Ω/□以下、より好ましくは70Ω/□以下、さらに好ましくは50Ω/□以下、ことさらに好ましくは30Ω/□以下、とくに好ましくは20Ω/□以下である。光透過性導電膜20’の表面抵抗は、例えば1Ω/□以上である。表面抵抗は、JIS K7194に準拠した4端子法によって測定できる。
【0067】
光透過性導電膜20’の比抵抗は、好ましくは3×10-4Ω・cm以下、より好ましくは2.8×10-4Ω・cm以下、さらに好ましくは2.5×10-4Ω・cm以下、ことさらに好ましくは2×10-4Ω・cm以下、特に好ましくは1.8×10-4Ω・cm以下である。また、光透過性導電膜20’の比抵抗は、好ましくは0.1×10-4Ω・cm以上、より好ましくは0.5×10-4Ω・cm以上、さらに好ましくは1.0×10-4Ω・cm以上である。
【0068】
光透過性導電膜20’の全光線透過率(JIS K 7375-2008)は、好ましくは65%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは85%以上である。また、光透過性導電膜20の全光線透過率は、例えば100%以下である。
【0069】
透明導電性フィルムXの光透過性導電膜20は、上述のように、非晶質であり、クリプトンを含有する導電性酸化物を含み、比抵抗が4×10-4Ω・cm以上であって、好ましくは4.5×10-4Ω・cm以上、より好ましくは4.8×10-4Ω・cm以上、さらに好ましくは5×10-4Ω・cm以上、特に好ましくは5.2×10-4Ω・cm以上である。このような構成は、反りが抑制された低抵抗の光透過性導電膜20’(結晶質の光透過性導電膜)を得るのに適する。具体的には、後記の実施例および比較例をもって示すとおりである。透明導電性フィルムXは、このような光透過性導電膜20を備えるため、低抵抗の光透過性導電膜20’(結晶質の光透過性導電膜)を備え且つ反りを抑制するのに適する。
【0070】
透明導電性フィルムXにおいて、機能層12は、透明基材10に対する光透過性導電膜20(光透過性導電膜20の結晶化後では光透過性導電膜20’。以下同じ)の高い密着性を実現するための密着性向上層であってもよい。機能層12が密着性向上層である構成は、透明基材10と光透過性導電膜20との間の密着力を確保するのに適する。
【0071】
機能層12は、透明基材10の表面(厚さ方向Dの一方面)の反射率を調整するための屈折率調整層(index-matching layer)であってもよい。機能層12が屈折率調整層である構成は、透明基材10上の光透過性導電膜20がパターニングされている場合に、当該光透過性導電膜20のパターン形状を視認されにくくするのに適する。
【0072】
機能層12は、透明基材10から光透過性導電膜20を実用的に剥離可能にするための剥離機能層であってもよい。機能層12が剥離機能層である構成は、透明基材10から光透過性導電膜20を剥離して、当該光透過性導電膜20を他の部材に転写するのに適する。
【0073】
機能層12は、複数の層が厚さ方向Dに連なる複合層であってもよい。複合層は、好ましくは、ハードコート層、密着性向上層、屈折率調整層、および剥離機能層からなる群より選択される2以上の層を含む。このような構成は、選択される各層の上述の機能を、機能層12において複合的に発現するのに適する。好ましい一形態では、機能層12は、透明樹脂フィルム11上において、密着性向上層と、ハードコート層と、屈折率調整層とを、厚さ方向Dの一方側に向かってこの順で備える。好ましい他の形態では、機能層12は、透明樹脂フィルム11上において、剥離機能層と、ハードコート層と、屈折率調整層とを、厚さ方向Dの一方側に向かってこの順で備える。
【0074】
透明導電性フィルムXは、物品に対して固定され、且つ必要に応じて光透過性導電膜20’がパターニングされた状態で、利用される。透明導電性フィルムXは、例えば、固着機能層を介して、物品に対して貼り合わされる。
【0075】
物品としては、例えば、素子、部材、および装置が挙げられる。すなわち、透明導電性フィルム付き物品としては、例えば、透明導電性フィルム付き素子、透明導電性フィルム付き部材、および透明導電性フィルム付き装置が挙げられる。
【0076】
素子としては、例えば、調光素子および光電変換素子が挙げられる。調光素子としては、例えば、電流駆動型調光素子および電界駆動型調光素子が挙げられる。電流駆動型調光素子としては、例えば、エレクトロクロミック(EC)調光素子が挙げられる。電界駆動型調光素子としては、例えば、PDLC(polymer dispersed liquid crystal)調光素子、PNLC(polymer network liquid crystal)調光素子、および、SPD(suspended particle device)調光素子が挙げられる。光電変換素子としては、例えば太陽電池などが挙げられる。太陽電池としては、例えば、有機薄膜太陽電池および色素増感太陽電池が挙げられる。部材としては、例えば、電磁波シールド部材、熱線制御部材、ヒーター部材、およびアンテナ部材が挙げられる。装置としては、例えば、タッチセンサ装置、照明装置、および画像表示装置が挙げられる。
【0077】
上述の固着機能層としては、例えば、粘着層および接着層が挙げられる。固着機能層の材料としては、透明性を有し且つ固着機能を発揮する材料であれば、特に制限なく用いられる。固着機能層は、好ましくは、樹脂から形成されている。樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルエーテル樹脂、酢酸ビニル/塩化ビニルコポリマー、変性ポリオレフィン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、天然ゴム、および合成ゴムが挙げられる。凝集性、接着性、適度な濡れ性などの粘着特性を示すこと、透明性に優れること、並びに、耐候性および耐熱性に優れることから、前記樹脂としては、アクリル樹脂が好ましい。
【0078】
固着機能層(固着機能層を形成する樹脂)には、光透過性導電膜20’の腐食抑制のために、腐食防止剤を配合してもよい。固着機能層(固着機能層を形成する樹脂)には、光透過性導電膜20’のマイグレーション抑制のために、マイグレーション防止剤(例えば、特開2015-022397号に開示の材料)を配合してもよい。また、固着機能層(固着機能層を形成する樹脂)には、物品の屋外使用時の劣化を抑制するために、紫外線吸収剤を配合してもよい。紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン化合物、ベンゾトリアゾール化合物、サリチル酸化合物、シュウ酸アニリド化合物、シアノアクリレート化合物、および、トリアジン化合物が挙げられる。
【0079】
また、透明導電性フィルムXの透明基材10を、物品に対して固着機能層を介して固定した場合、透明導電性フィルムXにおいて光透過性導電膜20’(パターニング後の光透過性導電膜20’を含む)は露出する。このような場合、光透過性導電膜20’の当該露出面にカバー層を配置してもよい。カバー層は、光透過性導電膜20’を被覆する層であり、光透過性導電膜20’の信頼性を向上させ、また、光透過性導電膜20’の受傷による機能劣化を抑制できる。そのようなカバー層は、好ましくは、誘電体材料から形成されており、より好ましくは、樹脂と無機材料との複合材料から形成されている。樹脂としては、例えば、固着機能層に関して上記した樹脂が挙げられる。無機材料としては、例えば、無機酸化物およびフッ化物が挙げられる。無機酸化物としては、例えば、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化アルミニウム、二酸化ジルコニウム、および酸化カルシウムが挙げられる。フッ化物としては、例えばフッ化マグネシウムが挙げられる。また、カバー層(樹脂および無機材料の混合物)には、上記の腐食防止剤、マイグレーション防止剤、および紫外線吸収剤を配合してもよい。
【実施例
【0080】
本発明について、以下に実施例を示して具体的に説明する。本発明は実施例に限定されない。また、以下に記載されている配合量(含有量)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上述の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合量(含有量)、物性値、パラメータなどの上限(「以下」または「未満」として定義されている数値)または下限(「以上」または「超える」として定義されている数値)に代替することができる。
【0081】
〔実施例1〕
透明基材として、長尺の両面ハードコート層付きPETフィルム(品名「KBフィルムCANIA,厚さ54μm,きもと社製)を用意した。この透明基材について165℃で1時間の加熱処理を実施した後の、最も収縮する方向における同透明基材の熱収縮率(最大熱収縮率,本実施例では同基材のMD方向の熱収縮率)は、0.65%である。
【0082】
次に、反応性スパッタリング法により、透明基材におけるハードコート層上に、厚さ150nmの非晶質の光透過性導電膜を形成した。反応性スパッタリング法では、ロールトゥロール方式で成膜プロセスを実施できるスパッタ成膜装置(DCマグネトロンスパッタリング装置)を使用した。本実施例におけるスパッタ成膜の条件は、次のとおりである。
【0083】
ターゲットとしては、酸化インジウムと酸化スズとの焼結体(酸化スズ濃度は10質量%)を用いた。ターゲットに対する電圧印加のための電源としては、DC電源を用いた(ターゲット上の水平磁場強度は90mT)。成膜温度(光透過性導電膜が積層される透明基材の温度)は-5℃とした。また、装置が備える成膜室内の到達真空度が0.8×10-4Paに至るまで成膜室内を真空排気した後、成膜室内に、スパッタリングガスとしてのKrと、反応性ガスとしての酸素とを導入し、成膜室内の気圧を0.4Paとした。成膜室に導入されるKrおよび酸素の合計導入量に対する酸素導入量の割合は約2.5流量%であり、その酸素導入量は、図6に示すように、比抵抗-酸素導入量曲線の領域R内であって、形成される膜の比抵抗の値が6.2×10-4Ω・cmになるように調整した。図6に示す比抵抗-酸素導入量曲線は、酸素導入量以外の条件は上記と同じ条件で光透過性導電膜を反応性スパッタリング法で形成した場合の、光透過性導電膜の比抵抗の酸素導入量依存性を、予め調べて作成できる。
【0084】
以上のようにして、実施例1の透明導電性フィルムを作製した。実施例1の透明導電性フィルムの光透過性導電膜(厚さ150nm,非晶質)は、単一のKr含有ITO層からなる。
【0085】
〔実施例2~7,10〕
スパッタ成膜において、成膜室内の気圧を0.4Paに代えて0.2Paとしたこと、形成される光透過性導電膜の厚さを150nmに代えて130nmとしたこと、および、当該膜の比抵抗が6.2×10-4Ω・cmに代えて6.5×10-4Ω・cm(実施例2)、7.5×10-4Ω・cm(実施例3)、10.4×10-4Ω・cm(実施例4)、8.8×10-4Ω・cm(実施例5)、11.6×10-4Ω・cm(実施例6)、5.0×10-4Ω・cm(実施例7)、または8.2×10-4Ω・cm(実施例10)となるように酸素導入量を調整したこと以外は、実施例1の透明導電性フィルムと同様にして、実施例2~7,10の各透明導電性フィルムを作製した。実施例2~7,10の各透明導電性フィルムの光透過性導電膜(厚さ130nm)は、単一のKr含有ITO層からなる。
【0086】
〔実施例8〕
光透過性導電膜の形成において、透明基材上に光透過性導電膜の第1領域(厚さ85nm)を形成する第1スパッタ成膜と、当該第1領域上に光透過性導電膜の第2領域(厚さ45nm)を形成する第2スパッタ成膜とを順次に実施したこと以外は、実施例1の透明導電性フィルムと同様にして、実施例8の透明導電性フィルムを作製した。
【0087】
本実施例における第1スパッタ成膜の条件は、次のとおりである。ターゲットとしては、酸化インジウムと酸化スズとの焼結体(酸化スズ濃度は10質量%)を用いた。ターゲットに対する電圧印加のための電源としては、DC電源を用いた(ターゲット上の水平磁場強度は90mT)。成膜温度は-5℃とした。また、装置が備える第1成膜室内の到達真空度を0.8×10-4Paにした後、成膜室内に、スパッタリングガスとしてのKrと、反応性ガスとしての酸素とを導入し、成膜室内の気圧を0.2Paとした。成膜室への酸素導入量は、形成される膜の比抵抗の値が6.5×10-4Ω・cmになるように調整した。
【0088】
本実施例における第2スパッタ成膜の条件は、次のとおりである。装置が備える第2成膜室内の到達真空度を0.8×10-4Paにした後、成膜室内に、スパッタリングガスとしてのArと、反応性ガスとしての酸素とを導入し、成膜室内の気圧を0.4Paとした。本実施例において、第2スパッタ成膜における他の条件は、第1スパッタ成膜と同じである。
【0089】
以上のようにして、実施例8の透明導電性フィルムを作製した。実施例8の透明導電性フィルムの光透過性導電膜(厚さ130nm)は、Kr含有ITO層からなる第1領域(厚さ85nm)と、Ar含有ITO層からなる第2領域(厚さ45nm)とを、透明基材側から順に有する。
【0090】
〔実施例9〕
光透過性導電膜の形成において、透明基材上に光透過性導電膜の第2領域(厚さ42nm)を形成する第1スパッタ成膜と、当該第2領域上に光透過性導電膜の第1領域(厚さ76nm)を形成する第2スパッタ成膜とを順次に実施したこと以外は、実施例1の透明導電性フィルムと同様にして、実施例9の透明導電性フィルムを作製した。本実施例における第1スパッタ成膜の条件は、実施例8における第2スパッタ成膜の条件と同じである。本実施例における第2スパッタ成膜の条件は、実施例8における第1スパッタ成膜の条件と同じである。
【0091】
以上のようにして、実施例9の透明導電性フィルムを作製した。実施例9の透明導電性フィルムの光透過性導電膜(厚さ118nm)は、Ar含有ITO層からなる第2領域(厚さ42nm)と、Kr含有ITO層からなる第1領域(厚さ76nm)とを、透明基材側から順に有する。
【0092】
〔実施例11〕
スパッタ成膜における次のこと以外は、実施例1の透明導電性フィルムと同様にして、実施例11の透明導電性フィルムを作製した。スパッタリングガスとしてクリプトンとアルゴンとの混合ガス(Kr90体積%,Ar10体積%)を用いた。成膜室内の気圧を0.2Paとした。成膜室に導入される混合ガスおよび酸素の合計導入量に対する酸素導入量の割合を約2.7流量%とし、その酸素導入量は、形成される膜の比抵抗の値が5.7×10-4Ω・cmになるように調整した。形成される光透過性導電膜の厚さを146nmとした。
【0093】
実施例11の透明導電性フィルムの光透過性導電膜(厚さ146nm)は、KrおよびArを含有する単一のITO層からなる。
【0094】
〔比較例1〕
スパッタ成膜において成膜温度を-5℃に代えて30℃としたこと以外は、実施例1と同様にして、光透過性導電膜を形成した(比較例1でのKr導入量および酸素導入量は、実施例1でのKr導入量および酸素導入量と同じである)。これにより、比較例1の透明導電性フィルムを作製した。比較例1の透明導電性フィルムの光透過性導電膜(厚さ150nm)は、単一のKr含有ITO層からなる。
【0095】
〔比較例2〕
スパッタ成膜においてスパッタリングガスとしてKrに代えてArを用いたこと以外は、実施例2と同様にして、光透過性導電膜を形成した(比較例2でのAr導入量および酸素導入量は、実施例2でのKr導入量および酸素導入量と同じである)。これにより、比較例2の透明導電性フィルムを作製した。比較例2の透明導電性フィルムの光透過性導電膜(厚さ130nm)は、単一のAr含有ITO層からなる。
【0096】
〈光透過性導電膜の厚さ〉
実施例1~11および比較例1,2における各光透過性導電膜の厚さを、FE-TEM観察により測定した。具体的には、まず、FIBマイクロサンプリング法により、実施例1~11および比較例1,2における各光透過性導電膜の断面観察用サンプルを作製した。FIBマイクロサンプリング法では、FIB装置(商品名「FB2200」,Hitachi製)を使用し、加速電圧を10kVとした。次に、断面観察用サンプルにおける光透過性導電膜の厚さを、FE-TEM観察によって測定した。FE-TEM観察では、FE-TEM装置(商品名「JEM-2800」,JEOL製)を使用し、加速電圧を200kVとした。
【0097】
実施例8における光透過性導電膜の第1領域の厚さは、当該第1領域の上に第2領域を形成する前の中間作製物から断面観察用サンプルを作製し、当該サンプルのFE-TEM観察により測定した。実施例8における光透過性導電膜の第2領域の厚さは、実施例8における光透過性導電膜の総厚から第1領域の厚さを差し引いて求めた。実施例8の光透過性導電膜の厚さ方向における第1領域の割合は、65.4%であった。
【0098】
実施例9における光透過性導電膜の第2領域の厚さは、当該第2領域の上に第1領域を形成する前の中間作製物から断面観察用サンプルを作製し、当該サンプルのFE-TEM観察により測定した。実施例9における光透過性導電膜の第1領域の厚さは、実施例9における光透過性導電膜の総厚から第2領域の厚さを差し引いて求めた。実施例9の光透過性導電膜の厚さ方向における第1領域の割合は、64.4%であった。
【0099】
〈比抵抗〉
実施例1~11および比較例1,2における各光透過性導電膜について、加熱処理前の初期の比抵抗(第1比抵抗R1)と、加熱処理後の比抵抗(第2比抵抗R2)とを、調べた。加熱処理では、加熱手段として熱風オーブンを使用し、加熱温度を165℃とし、加熱時間を1時間とした。JIS K 7194(1994年)に準拠した四端子法により、光透過性導電膜の表面抵抗を測定した後、表面抵抗値と光透過性導電膜の厚さとを乗じることにより、比抵抗(Ω・cm)を求めた。その結果を表1に掲げる。
【0100】
〈反り抑制の評価〉
実施例1~11および比較例1,2の各透明導電性フィルムについて、加熱処理を経た場合の反りの程度を調べた。具体的には、まず、透明導電性フィルムからサンプル(短辺50mm×長辺400mm)を切り出した。次に、鉄板の表面の上にサンプルを載置し、サンプルの両短辺を、耐熱テープによって鉄板表面に固定した。次に、鉄板を加熱することにより、鉄板上のサンプルを加熱処理した。加熱処理では、加熱温度を165℃とし、加熱時間を1時間とした。次に、鉄板表面およびサンプルから耐熱テープを剥離した後、サンプルを、常温(24℃)環境下で10分静置した。次に、サンプルの長辺方向両端部から各175mm分を切り落とした。これにより、50mm×50mmのサイズの測定用サンプルを用意した。次に、測定用サンプルを、水平面を有する作業台の上に載置した(測定用サンプルの光透過性導電膜が、水平面とは反対側に位置するように載置した)。そして、測定用サンプルの四辺の各寸法(具体的には、各辺における二つの頂点の間の距離)を測定した。反りの抑制に関し、四辺の測定寸法のうち最も小さい寸法値が、30mm以上である場合を“○”と評価し、16mm以上かつ30mm未満である場合を“△”と評価し、16mm未満である場合を“×”と評価した。寸法値が50mmに近い程、反りが抑制されていることを示す。また、比較例2の透明導電性フィルムでは、測定用サンプルが寸法測定時に筒状の形態をとり、四辺の寸法を測定できなかった(そのため、実質的には“×”と評価できる)。評価結果を表1に掲げる。
【0101】
〈光透過性導電膜内の希ガス原子の定量分析〉
実施例1~11および比較例1,2における各光透過性導電膜に含有されるKrおよびAr原子の含有量を、ラザフォード後方散乱分光法(RBS)によって分析した。検出元素である、In+Sn(RBSでは、InとSnを分離しての測定が困難であるため、2元素の合算として評価した)、O、Ar、Krの5元素に関して、元素比率を求めることにより、光透過性導電膜におけるKr原子およびAr原子の存在量(原子%)を求めた。使用装置および測定条件は、下記のとおりである。分析結果として、Kr含有量(原子%)およびAr含有量(原子%を表1に掲げる。Kr含有量の分析に関し、実施例1~11および比較例1では、検出限界値(下限値)以上の確かな測定値が得られなかった(検出限界値は、測定に付される光透過性導電膜の厚さによって異なりうる)。そのため、表1では、光透過性導電膜のKr含有量について、同膜の厚さにおける検出限界値を下回っていることを示すため、「< 測定に付された光透過性導電膜の厚さにおける具体的な検出限界値」と表記する(希ガス原子含有量の表記の仕方についても同様である)。
【0102】
<使用装置>
Pelletron 3SDH(National Electrostatics Corporation製)
<測定条件>
入射イオン:He++
入射エネルギー:2300keV
入射角:0deg
散乱角:160deg
試料電流:6nA
ビーム径:2mmφ
面内回転:無
照射量:75μC
【0103】
〈光透過性導電膜内のKr原子の確認〉
実施例1~11および比較例1における各光透過性導電膜がKr原子を含有することは、次のようにして確認した。まず、走査型蛍光X線分析装置(商品名「ZSX PrimusIV」,リガク社製)を使用して、下記の測定条件にて蛍光X線分析測定を5回繰り返し、各走査角度の平均値を算出し、X線スペクトルを作成した。そして、作成されたX線スペクトルにおいて、走査角度28.2°近傍にピークが出ていることを確認することにより、光透過性導電膜にKr原子が含有されることを確認した。
【0104】
<測定条件>
スペクトル;Kr-KA
測定径:30mm
雰囲気:真空
ターゲット:Rh
管電圧:50kV
管電流:60mA
1次フィルタ:Ni40
走査角度(deg):27.0~29.5
ステップ(deg):0.020
速度(deg/分):0.75
アッテネータ:1/1
スリット:S2
分光結晶:LiF(200)
検出器:SC
PHA:100~300
【0105】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明の光透過性導電膜は、例えば、液晶ディスプレイ、タッチパネル、および光センサなどの各種デバイスにおける透明電極をパターン形成するための導体膜として用いることができる。本発明の透明導電性フィルムは、そのような導体膜の供給材として用いることができる。
【符号の説明】
【0107】
X 透明導電性フィルム
D 厚さ方向
10 透明基材
11 透明樹脂フィルム
12 機能層
20 光透過性導電膜
図1
図2
図3
図4
図5
図6